説明

管端開先加工部の検査方法及び装置

【課題】 管端部の開先加工部の表面健全性を速やかに検査する。
【解決手段】 暗空間形成容器内側の暗空間に、検査対象管1の管端部に設けた開先加工部2を配置し、照明装置で照明された周方向の一部におけるルート面3と開先面4のR部分4a及び斜面部分4bを、撮影装置で一緒に撮影する。得られた画像9上の開先加工部2のルート面3と開先面4のR部分4aと斜面部分4bに対応する個所に、それぞれの明るさの差を基に、ルート面用計測領域10aと開先面R部分用計測領域10bと、開先面斜面部分用計測領域10cを設定する。各計測領域10a,10b,10cについて個別のコントラスト変換を行い、個々の濃淡変化、色の濃さが、予め正常な表面健全性を備えた開先加工部を有する管について同処理を実施したときの濃淡の変化、色の濃さの基準値に比して或るしきい値を越えると、開先加工部2における表面健全性に不良があると判定させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管の端部における開先加工した部分の表面状態を検査するために用いる管端開先加工部の検査方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等におけるヘッダ(管寄せ)の1つの形式として、ヘッダ管に、ループ管となる複数の鋼管を接続した形式のものがある。
【0003】
この種のヘッダを製造する場合は、上記ヘッダ管における上記鋼管の接続個所に孔を設け、該孔の周縁部に上記鋼管の端部を突き当てるように配置した状態で、該鋼管の端部の外周と、上記ヘッダ管の対応する孔の周縁部とを周方向の全周に亘り溶接するようにしてある。
【0004】
そのため、上記溶接を行う鋼管の端部には、通常、上記ヘッダ管に設けた対応する孔の周縁部との間にJ形やレ形の開先を形成するための開先加工を施すようにしてある。
【0005】
又、2本の鋼管の端部同士を溶接により接続する場合は、接続対象となる2本の鋼管の端部同士の突合せ部分に、予めU形やV形の開先を形成しておき、この開先を周方向の全周に亘り溶接するようにしてある。
【0006】
上記のような溶接対象となる鋼管の端部の開先加工には、切削あるいは研削加工が広く用いられている。
【0007】
ところで、切削加工や研削加工では、加工機における切削用や研削用の工具と、被加工物との間で継続的なビビリ(ビビリ振動)が生じることがある。又、上記工具と被加工物との間で過剰な温度上昇が生じて焼き付きを生じることもある。
【0008】
そのため、上記鋼管の端部の開先加工時に、該開先加工に用いる切削用や研削用の工具と被加工物である鋼管との間に上記したような継続的なビビリが生じると、該鋼管の端部に開先加工により形成するルート面や開先面の表面に、上記開先加工時に生じたビビリに起因する周期的に波打った形状の痕跡(以下、ビビリマークと云う)が周方向に沿って発生してしまう。
【0009】
このようなビビリマークが生じたルート面や開先面は、その表面に、該ビビリマークの存在による周方向に周期的な凹凸が生じていて、表面状態が均一ではないため、後の工程で上記鋼管の端部の開先加工部におけるルート面と開先面によって形成させる開先を溶接する際に、鋼管の周方向の全周に亘り均等な溶接を行うことが困難になるという問題が生じる。
【0010】
又、上記鋼管の端部の開先加工時に、該開先加工に用いる切削用や研削用の工具と被加工物である鋼管との間で温度上昇が生じて、該鋼管の端部に開先加工により形成するルート面や開先面の表面に焼き付きが生じると、該焼き付きが生じた部分では、表面の金属組織が酸化されているため、後の工程で、上記鋼管の端部の開先加工部のルート面と開先面によって形成させる開先を溶接しても、溶接部分に所望される溶接品質が得られないという可能性が生じてしまう。
【0011】
そのために、鋼管の端部に開先加工を施した場合は、形成されたルート面や開先面について作業者が目視による検査を行って、ビビリマークや焼き付きが生じていない正常な表面健全性が得られていることを確認することが一般に行われている。
【0012】
ところで、管端部に開先を形成するための面取り加工部を設けた被測定管について、その面取り加工部におけるルートフェイス寸法と、ベベル角度を測定するための手法として、たとえば、上記面取り加工部を設けた測定管の長手方向と直交する方向の管端位置に設けた撮像装置により、被測定管を挟んで上記撮像装置の反対側に設けた光照射装置で照明される該被測定管の管端最下部のシルエット形状を撮影し、該シルエット形状の静止画像を基に、画像処理により上記被測定管の面取り加工部のルートフェイス寸法と、ベベル角度を求める手法が従来提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0013】
又、鋼管端部に設けた面取り部分について、不良の有無の検査を行う手法の1つとして、被検査鋼管を一定速度で回転させながら、該被検査鋼管の面取端面からの反射光を一定の時間間隔で撮影して、撮影された反射光に基いて上記面取端面の残肉寸法及び外径寸法を電気信号として検出し、その検出された電気信号を予め設定した設定値と比較して、検出信号が設定値と異なっている場合は、上記被検査鋼管の面取りが正常に行われていないと判断するようにする手法が従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0014】
更に、金属板を外形加工して作成されたリードフレーム等の金属試料について、金属試料表面を3つの異なる仰角位置から照明手段により順次照明し、それぞれの照明手段によって照明された同一領域の反射光を撮影手段で撮影し、各照明手段からの反射照明による撮影画像を、それぞれR,G,Bに割り当ててから各画像をカラー合成することにより、上記金属試料表面の角度が変化している部分を、欠陥部として検出する手法が従来提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第2600567号公報
【特許文献2】実開昭58−162011号公報
【特許文献3】特開平11−83455号公報(図8,図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところが、前記したように、鋼管の端部に開先加工を施した後、形成されたルート面や開先面について、作業者が目視によりビビリマークや焼き付きの有無を検査して該ルート面や開先面の表面健全性を検査する手法では、作業者の手間が嵩むと共に、ライティングの影響や目視検査する作業者の個人差により、上記ビビリマークや焼き付きの有無の判断の基準が一定にならないため、上記鋼管の端部に設けた開先加工部の品質にばらつきが生じてしまう。
【0017】
なお、上記特許文献1に示された手法は、被測定管のシルエット形状の画像を基に、該被測定管の端部の面取り加工部におけるルートフェイス寸法とベベル角度という形状のデータについての測定を行うためのものであるため、鋼管の端部の開先加工部におけるルート面と開先面のビビリマークの有無や焼き付きの有無のような表面健全性の検査を行うことができるものではない。
【0018】
又、特許文献2及び特許文献3に示されたものは、いずれも検査対象とする部分で生じる反射光を撮影した画像を基にして処理を行うものであるが、鋼管の端部の開先加工部に形成するルート面と開先面のような角度が異なる複数の面については、該各面での反射光の画像を一緒に撮影することはできない。そのため、上記特許文献2及び特許文献3に記載された手法は、上記鋼管の端部の開先加工部に形成するルート面と開先面という角度が異なる面についての表面健全性を一度に検査する手法に適用することができるものではない。
【0019】
そこで、本発明は、管端部に形成した開先加工部に正常で均一な表面健全性を備えた管(鋼管)の選定を容易に実施できるように、管端部の開先加工部におけるルート面と開先面を一緒に撮影した画像を基に、該ルート面と開先面のそれぞれの表面健全性を一度に且つ機械的に検査することができて、検査作業に要する手間を削減することができるようにするための管端開先加工部の検査方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、検査対象管の管端部に設けた開先加工部を暗空間内に配置し、上記開先加工部の周方向の一部を、照明装置により照明すると共に、照明された開先加工部の周方向の一部におけるルート面と開先面を撮影装置で一緒に撮影し、得られる画像上の上記開先加工部のルート面に対応する個所と開先面に対応する個所に、ルート面用計測領域と開先面用計測領域をそれぞれ設定し、次いで、設定された各計測領域について個別のコントラスト変換を行い、該コントラスト変換により各計測領域ごとに得られる濃淡変化及び色の濃さが、予め正常な表面健全性を備えた開先加工部を有する管に対して同様の処理を実施したときに得られている対応する計測領域の濃淡の変化、色の濃さの基準値に比して或るしきい値を越えると、上記検査対象管の開先加工部における表面健全性に不良があると判定する管端開先加工部の検査方法とする。
【0021】
又、上記構成において、検査対象管の開先加工部の周方向の一部を照明装置により照明するとき、該開先加工部のルート面と開先面に明るさの差を生じさせるような照射角度で該照明装置より上記開先加工部の周方向の一部へ照明光を照射して、上記開先加工部のルート面と開先面に異なる角度で照射光が当たるようにし、撮影装置で上記ルート面と開先面を一緒に撮影して得られる画像上における上記ルート面と開先面の明るさの差に基づいて、該画像上の上記ルート面に対応する個所と開先面に対応する個所に、ルート面用計測領域と開先面用計測領域をそれぞれ設定するようにする。
【0022】
更に、上記構成において、検査対象管の開先加工部を、U形開先又はJ形開先用のルート面と、その外周側のR部分及び斜面部分からなる開先面を備えた開先加工部とし、該開先加工部の周方向の一部を照明装置により照明するとき、該開先加工部のルート面と開先面のR部分と斜面部分に明るさの差を生じさせるような照射角度で該照明装置より上記開先加工部の周方向の一部へ照明光を照射して、上記開先加工部のルート面と開先面の斜面部分に異なる角度で照射光が当たるようにすると共に、上記開先加工部の開先面のR部分に上記照明装置からの照明光が直接当たらないで陰になるようにし、撮影装置で上記ルート面と開先面のR部分及び斜面部分を一緒に撮影して得られる画像上における上記ルート面と開先面のR部分と斜面部分の明るさの差に基づいて、該画像上の上記ルート面に対応する個所と、開先面のR部分に対応する個所と、開先面の斜面部分に対応する個所に、ルート面用計測領域と、開先面R部分用計測領域と、開先面斜面部分用計測領域をそれぞれ設定するようにする。
【0023】
又、請求項4に対応して、検査対象管の管端部の開先加工部の周辺に外部からの光を遮った暗空間を形成するための暗空間形成容器と、上記暗空間形成容器内に配置された検査対象管の開先加工部の周方向の一部を照明するための照明装置と、上記照明装置により照明された検査対象管の開先加工部のルート面と開先面を一緒に撮影するための撮影装置を備え、更に、上記撮影装置で撮影して得られた画像上にて、上記開先加工部のルート面に対応する個所と開先面に対応する個所に、ルート面用計測領域と開先面用計測領域をそれぞれ設定する機能と、該設定された各計測領域について個別のコントラスト変換を行う機能と、該コントラスト変換により各計測領域ごとに得られる濃淡変化及び色の濃さが、予め正常な表面健全性を備えた開先加工部を有する管に対して同様の処理を実施したときに得られている対応する計測領域の濃淡の変化、色の濃さの基準値に比して或るしきい値を越えると、上記検査対象管の開先加工部における表面健全性に不良があると判定する機能を有してなる処理装置を備えた構成を有する管端開先加工部の検査装置とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)検査対象管の管端部に設けた開先加工部を暗空間内に配置し、上記開先加工部の周方向の一部を、照明装置により照明すると共に、照明された開先加工部の周方向の一部におけるルート面と開先面を撮影装置で一緒に撮影し、得られる画像上の上記開先加工部のルート面に対応する個所と開先面に対応する個所に、ルート面用計測領域と開先面用計測領域をそれぞれ設定し、次いで、設定された各計測領域について個別のコントラスト変換を行い、該コントラスト変換により各計測領域ごとに得られる濃淡変化及び色の濃さが、予め正常な表面健全性を備えた開先加工部を有する管に対して同様の処理を実施したときに得られている対応する計測領域の濃淡の変化、色の濃さの基準値に比して或るしきい値を越えると、上記検査対象管の開先加工部における表面健全性に不良があると判定する管端開先加工部の検査方法及び装置としてあるので、検査対象管の管端部の開先加工部のルート面と開先面について、ビビリマークや焼き付き等による表面健全性の不良が生じているか否かの検査を行うことができる。
(2)又、撮影装置により開先加工部のルート面と開先面を一緒に撮影して得られる画像を基に、上記ルート面と開先面の表面健全性の検査を並行して一緒に行うことができるため、上記検査対象管の開先加工部全体の表面健全性の検査に要する時間を削減することができる。
(3)更に、上記開先加工部の表面健全性の検査を、作業者の目視により行う必要をなくすことができて、検査作業に要する手間と時間を削減することができる。しかも、上記開先加工部の表面健全性が正常か又は不良かの判断を機械的に行わせることができて、判断基準を一定にすることができる。
(4)したがって、開先加工部の表面健全性に不良があると判定されたものを除くことで、開先加工部の表面健全性が正常で且つ該開先加工部の品質が均一な管を選定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の管端開先加工部の検査装置の実施の一形態として、U形又はJ形開先用の開先加工部を備えた管を検査対象管とする場合を示す概略側面図である。
【図2】図1のA−A方向矢視図である。
【図3】図1の装置における照明装置による検査対象管の照明状態を示す概要図である。
【図4】図1の装置を用いて実施する本発明の管端開先加工部の検査方法の手順を示すフロー図である。
【図5】図1の装置における撮影装置で撮影される画像の概要を示す図である。
【図6】本発明の実施の他の形態として、V形又はレ形の開先用の開先加工部を備えた管を検査対象管とする場合を示す概略側面図である。
【図7】図6の装置における照明装置による検査対象管の照明状態を示す図である。
【図8】図6の装置を用いて実施する本発明の管端開先加工部の検査方法の手順を示すフロー図である。
【図9】図6の装置における撮影装置で撮影される画像の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0027】
図1乃至図5は本発明の管端開先加工部の検査方法及び装置の実施の一形態として、管端部にU形開先又はJ形開先を形成するための開先加工部2として、軸心方向に垂直なルート面3を内周側端縁部に備え、且つ該ルート面3の外周側に、開先面4として、R部分(軸心方向に沿って湾曲した部分)4aと斜面部分4bからなる開先面4を備えた形式の管(鋼管)を検査対象管1とする場合の適用例を示すもので、以下のようにしてある。
【0028】
すなわち、本発明の管端開先加工部の検査装置は、図1に示すように、内部に暗空間を形成するための暗空間形成容器5を備えて、該暗空間形成容器5の内側に配置する検査対象管1の開先加工が施してある管端部の周辺に、外部からの光を遮った暗空間を形成できるようにする。
【0029】
上記暗空間形成容器5の内部には、上記検査対象管1の管端部の開先加工部2における周方向の一部を照明するための照明装置6と、該照明装置6により照明された上記検査対象管1の開先加工部2のルート面3と開先面4を同時に撮影できるようにした撮影装置7とを、上記検査対象管1に対し周方向に相対移動できるように備える。これにより、上記照明装置6及び撮影装置7を、上記検査対象管1に対し、周方向に後述する所定の角度間隔で順次相対移動させることで、上記検査対象管1の開先加工部2におけるルート面3と開先面4について、周方向のすべての個所を網羅する画像(静止画像)を得ることができるようにする。
【0030】
更に、上記撮影装置7より入力される画像の信号を処理するための処理装置8を備えてなる構成とする。
【0031】
詳述すると、上記暗空間形成容器5は、暗室等のように、上記検査対象管1全体を収納可能なサイズを備えた形式としてもよく、あるいは、検査対象管1の長手方向における検査対象となる開先加工部2が設けてある管端部側を挿入して、上記開先加工部2を含む検査対象管1の長手方向の一部を部分的に覆う(取り囲む)形式としてもよい。なお、上記暗空間形成容器5を、検査対象管1の長手方向における検査対象となる開先加工部2が設けてある管端部側を部分的に覆う形式とする場合は、上記検査対象管1における検査対象となる開先加工部2が設けてある管端部とは反対側の管端部に、蓋又は栓(詰物)をすることにより、該検査対象管1の管内を通して外部の光が上記暗空間形成容器5内へ入らないようにしてあるものとする。
【0032】
又、上記暗空間形成容器5により上記検査対象管1の検査対象となる開先加工部2が設けてある管端部の周辺に暗空間を形成させる場合、検査対象管1の長手方向の全長が長い場合であっても本発明の管端開先加工部の検査装置の設置のための上下方向の空間を大きくとる必要がないようにするためには、図1に示すように、上記検査対象管1を横に延びる姿勢で配置させることが望ましい。
【0033】
なお、図示してないが、上記検査対象管1の長さ寸法が比較的短く限定されている場合は、該検査対象管1を、検査対象となる開先加工部2が設けてある管端部を上又は下に向けた姿勢に配置した状態で、暗空間形成容器5により、上記検査対象管1の検査対象となる開先加工部2が設けてある管端部の周辺に暗空間を形成させるようにした構成としてもよい。この場合は、以下で説明する照明装置6及び撮影装置7と、検査対象管1の開先加工部2との相対的な配置が維持されるように、検査対象管1の検査対象となる開先加工部2を上向き、あるいは、下向きとする姿勢の変化に応じて、上記照明装置6と撮影装置7の位置を適宜変化させるようにすればよい。
【0034】
上記照明装置6は、上記検査対象管1の開先加工部2の周方向の1個所に向けて配置するようにしてあり、この際、該照明装置6が発する照明光6aを、上記検査対象管1の開先加工部2に対し、後述するように処理装置8にて撮影装置7で撮影された図5に示す如き画像9上で設定するルート面用、開先面R部分用、及び、開先面斜面部分用の各計測領域10a,10b,10cに所望される或る中心角、たとえば、中心角20度に応じた周方向領域よりもやや広い範囲に当てることができるようにしてある。
【0035】
具体的には、上記照明装置6は、図1及び図2に示すように、上記検査対象管1の肉厚寸法と、開先加工部2における周方向に中心角20度の領域に対応する弦の寸法よりもやや大きな寸法を縦横寸法とする矩形状の面で面発光する形式の照明装置6としてある。これにより、上記開先加工部2の上記中心角20度よりもやや広い範囲に対して、ほぼ均一な照明光6aを照射することができるようにしてあり、よって、該開先加工部2における上記照明装置6で照明された個所を上記撮影装置7で撮影する際に、ハレーションが生じる虞を回避できるようにしてある。
【0036】
更に、上記照明装置6は、上記検査対象管1の開先加工部2における上記所定の中心角範囲に対して照明を行う際に、該開先加工部2に形成されているルート面3と、開先面4のR部分4aと、斜面部分4bを、それぞれ異なる明るさで照明できるようにするために、たとえば、上記開先加工部2における上記所定の中心角の範囲の領域より検査対象管1の軸心位置Oに寄った位置に、上記ルート面3に対して斜め45度の角度で照明光6aを照射するように配置してある。これにより、図3に示すように、上記ルート面3に対しては、上記照明装置6より発せられた照明光6aを斜め45度の角度で直接当てるのに対し、上記開先面4のR部分4aは、上記照明装置6より発せられる照明光6aに対しては陰になるようにすることで、周辺に存在するものの散乱光による照明が行われようにし、又、上記開先面4の斜面部分4bは、上記照明装置6より発せられた照明光6aを該斜面部分4bの傾斜角度に応じて斜め45度よりも小さい角度で直接当てるようにすることで、上記照明装置6により照明される上記検査対象管1の開先加工部2の上記所定の中心角範囲にて、上記ルート面3と開先面4のR部分4aと斜面部分4bに、それぞれ明るさの違いが生じるようにしてある。
【0037】
上記撮影装置7は、図1に示すように、上記照明装置6によって照明される上記検査対象管1の開先加工部2の上記中心角20度よりもやや広い範囲について、ルート面3と、開先面4のR部分4a及び斜面部分4bを一緒に撮影することができるように、たとえば、上記開先加工部2における上記照明装置6により照明される範囲を、検査対象管1の外側で且つ該検査対象管1の軸心方向に対し45度傾いた角度で撮影できる位置に配置してある。
【0038】
上記照明装置6と、上記撮影装置7は、連結手段11で連結すると共に、該連結手段11で連結された上記照明装置6及び撮影装置7を、上記検査対象管1の軸心位置Oに旋回軸を有する旋回装置12に取り付けてある。これにより、上記検査対象管1の開先加工部2が形成してある管端部の位置を上記暗空間形成容器5内で回転しないよう固定した状態で、上記旋回装置12を運転することにより、上記照明装置6及び撮影装置7を、上記検査対象管1の軸心位置Oを中心に円周動作させて、該照明装置6及び撮影装置7を、上記検査対象管1の開先加工部2に向いた姿勢を維持したまま、該開先加工部2に倣って周方向の全周に亘り移動させることができるようにしてある。
【0039】
したがって、上記旋回装置12により上記照明装置6及び撮影装置7を上記検査対象管1の開先加工部2の周方向の或る個所に対応させて配置した状態で、上記照明装置6により照明された開先加工部2を上記撮影装置7で撮影し、その後、上記旋回装置12により、上記照明装置6及び撮影装置7を周方向の一方向へ中心角20度間隔となる位置まで移動させてから、該位置にて上記照明装置6により照明された開先加工部2を上記撮影装置7で撮影するという操作を、順次17回繰り返して行うことにより、上記検査対象管1における開先加工部2の周方向のすべての個所(周方向360度の個所)を、上記照明装置6により照明された状態として、18枚の画像(静止画像)9に分けて撮影できるようにしてある。
【0040】
上記撮影装置7は、上記のようにして検査対象管1の開先加工部を撮影すると、その画像9の信号を上記処理装置8へ出力するようにしてある。
【0041】
上記処理装置8は、上記撮影装置7より入力される画像9の信号を処理する機能を備えると共に、上記撮影装置7に指令C1を与えて該撮影装置7の撮影を制御する機能、及び、上記旋回装置12へ指令C2を与えて該旋回装置12の運転を制御する機能を備えるようにしてある。
【0042】
ここで、図4に示すフロー図を用いて、上記処理装置8による処理手順に即して本発明の管端開先加工部の検査方法について詳述する。
【0043】
上記処理装置8は、計測開始に伴い、先ず、上記旋回装置12へ指令C2を与えて、該旋回装置12により、上記照明装置6及び撮影装置7を上記検査対象管1の開先加工部2の周方向の或る1個所に対応させて配置させる(ステップS1)。
【0044】
次いで、この状態で、上記処理装置8は、撮影装置7へ指令C1を与えて上記検査対象管1の開先加工部2における上記照明装置6によって照明された個所を撮影させ、この撮影に伴って撮影装置7より入力される信号を基に、上記開先加工部2における撮影個所の画像9を取得する(ステップS2)。この際、上記撮影装置7より取得した画像9では、図5に示すように、検査対象管1の開先加工部2における中心角20度よりもやや広い範囲のみが、上記照明装置6からの照明光6a(図1、図3参照)によって均一に照明されて明るく写った状態となっている。(なお、図5では、図示する便宜上、画像9上における上記検査対象管1の明るく写る部分と暗く写る部分の明暗の差を、ドットの粗密で示してある。又、上記画像9上における上記検査対象管1の背景は、暗空間形成容器5により外部の光を遮断した暗空間であるため、本来は暗く写るが、図5では、上記検査対象管1の外形を図示する便宜上、上記検査対象管1の背景は白抜きで示してある。後述する図9も同様。)
その後、上記処理装置8は、上記画像9上にて、上記開先加工部2の周方向における上記照明光6a(図1、図3参照)によって均一に照射されている中心角20度の部分を選択し、更に、該選択部分において、前述したように上記照明装置6からの照明光6aの当たり方が違うことに起因して開先加工部2のルート面3と、開先面4におけるR部分4aと、斜面部分4bについて生じる明るさの差を基に、上記ルート面3と、開先面4のR部分4aと、斜面部分4bにそれぞれ対応する個所に、図5に二点鎖線で示すように、ルート面用計測領域10aと、開先面R部分用計測領域10bと、開先面斜面部分用計測領域10cを分割して設定する(ステップS3)。
【0045】
上記のようにして各計測領域10a,10b,10cが設定されると、上記処理装置8は、該各計測領域10a,10b,10cごとに個別のコントラスト変換を行ってから(ステップS4)、該コントラスト変換されたデータを基に、上記各計測領域10a,10b,10cのそれぞれについて、焼き付き及びビビリマークを検査する(ステップS5)。
【0046】
具体的には、予め、開先加工部2のルート面3、開先面4のR部分4a及び斜面部分4bについて、すべてビビリマークや焼き付きがないという表面健全性が確認されている管を対象として、上記ステップS1〜ステップS3と同様の処理を行うことで、上記表面健全性が確認されているルート面3と、開先面4のR部分4aと、斜面部分4bに各々対応するルート面用計測領域10aと、開先面R部分用計測領域10bと、開先面斜面部分用計測領域10cを設定した後、上記表面健全性が得られている状態の上記各計測領域10a,10b,10cについて、該各計測領域10a,10b,10cごとに、最明部と最暗部との比を或る一定値に揃えるコントラスト変換を行い、このコントラスト変換後の上記各計測領域10a,10b,10cにおける濃淡の変化や、色の濃さを、該各計測領域10a,10b,10cの個別の基準値として、上記処理装置8に備えた図示しない記憶部に記憶しておく。
【0047】
ところで、上記開先加工部2に焼き付きが存在すると、この焼き付きが生じた部分は、表面の金属組織が酸化されていることに伴って表面が着色されている。このため、開先加工部2のルート面3や、開先面4のR部分4aや、斜面部分4bに焼き付きが存在していて、その部分が撮影装置7により撮影される場合は、処理装置8に取得される画像9にて、上記焼き付きの部分が、表面健全性が得られている部分に比して暗く写るようになる。
【0048】
そのため、上記開先加工部2のルート面3や、開先面4のR部分4aや、斜面部分4bに焼き付きが存在している場合に、開先加工部2に表面健全性が確認されている場合と同一の処理条件で上記ステップS1〜ステップS4の処理を行うと、コントラスト変換後の上記各計測領域10a,10b,10cにおける上記焼き付きが生じている部分の色の濃さが、上記処理装置8の図示しない記憶部に記憶してある各計測領域10a,10b,10cの個別の基準値よりも濃くなる。
【0049】
そこで、上記処理装置8では、上記図示しない記憶部に記憶してある各計測領域10a,10b,10cの個別の基準値に対し、或るしきい値をそれぞれ定めるようにしてあり、これにより、実際の検査対象管1について上記処理装置8で上記ステップS1〜ステップS4の処理を行った後に、上記各計測領域10a,10b,10cのいずれかで、上記処理装置8の図示しない記憶部に記憶してある各計測領域10a,10b,10cの個別の基準値に比して、上記予め設定してある上記或るしきい値を越えて色の濃くなる部分が検出されると、該部分を焼き付きであると判断するようにしてある。
【0050】
一方、上記開先加工部2にビビリマークが存在する場合は、上記照明装置6による照明光6aを当てると、上記ビビリマークによる表面の波打った形状に応じて、その表面には、周方向に周期的な濃淡が生じるようになる。
【0051】
そのため、上記開先加工部2のルート面3や、開先面4のR部分4aや、斜面部分4bにビビリマークが存在している場合に、開先加工部2に表面健全性が確認されている場合と同一の処理条件で上記ステップS1〜ステップS4の処理を行うと、コントラスト変換後の上記各計測領域10a,10b,10cにおける上記ビビリマークが生じている部分は、上記処理装置8の図示しない記憶部に記憶してある各計測領域10a,10b,10cの個別の基準値に比して、周方向に色の濃淡が周期的に変化するパターンが生じるようになる。
【0052】
そこで、上記処理装置8では、上記図示しない記憶部に記憶してある各計測領域10a,10b,10cの個別の基準値に対し、周方向の濃淡変化についての或るしきい値をそれぞれ定めるようにしてあり、これにより、実際の検査対象管1について上記処理装置8で上記ステップS1〜ステップS4の処理を行った後に、上記各計測領域10a,10b,10cのいずれかで、上記処理装置8の図示しない記憶部に記憶してある各計測領域10a,10b,10cの個別の基準値に比して、上記予め設定してある周方向の濃淡変化についての或るしきい値を越える濃淡の周期的な変化が検出されると、該部分にビビリマークが生じていると判断するようにしてある。なお、上記ビビリマークの検査を行う際は、上記コントラスト変換に加えて、エッジ抽出や2値化のフィルタを使用して表面の波打った形状をより浮かび上がらせるようにした上で、上記処理装置8の図示しない記憶部に記憶してある各計測領域10a,10b,10cの個別の基準値との比較を行うようにしてもよい。
【0053】
上記処理装置8は、上記のようにしてステップS5で焼き付きとビビリマークの検査が終了すると、その後、ステップS6に進んで、上記ステップS5で焼き付きあるいはビビリマークが検出されたか否かの判定を行い、焼き付き及びビビリマークのいずれも検出されない場合は、直接ステップS8に進む一方、上記ステップS5で焼き付きあるいはビビリマークが検出されていた場合は、一旦ステップS7へ進んで、該処理装置8に接続してある異常判定出力部(図示せず)にて異常判定出力を行わせてから、上記ステップS8へ進むようにしてある。
【0054】
その後、上記処理装置8は、上記ステップS8にて、上記検査対象管1の開先加工部2について、360度の検査が行われたか否かの判断を行い、360度の検査が未だ行われていない場合は、ステップS9へ進み、該ステップS9にて、旋回装置12へ指令C2を与えて、該旋回装置12の運転により、上記照明装置6及び撮影装置7を周方向の一方向へ20度回転させて次の撮影位置へ移動させ、しかる後、上記ステップS2へ戻って、ステップS2から上記ステップS8までの処理を再度行うようにしてある。
【0055】
これにより、検査対象管1の開先加工部2における中心角20度の範囲についてのルート面3と開先面4のR部分4a及び斜面部分4bについてのビビリマークと焼き付きの検査が、周方向に中心角20度で位置をずらしながら、検査範囲が360度に達するまで繰り返し行われるようになる。
【0056】
上記のようにして開先加工部2の360度の検査が行われると、ステップS8に進んだ時点で360度の検査が終了したと判断されるようになることから、上記処理装置8は計測を終了するようにする。
【0057】
このように、本発明の管端開先加工部の検査方法及び装置によれば、検査対象管1の管端部に設けてある開先加工部2のルート面3、開先面4のR部分4a及び斜面部分4bについて、ビビリマークや焼き付きの検査を行うことができ、上記開先加工部2のルート面3、開先面4のR部分4a及び斜面部分4bのいずれかにビビリマークや焼き付きが生じている場合は、処理装置8に接続してある異常判定出力部(図示せず)に異常判定出力を行わせることができる。
【0058】
よって、或る検査対象管1に対して本発明の管端開先加工部の検査方法及び装置による検査を実施する際に、上記処理装置8に接続してある異常判定出力部(図示せず)で異常判定出力が生じた場合は、そのとき検査した検査対象管1が、開先加工部2のルート面3と、開先面4のR部分4aと、斜面部分4bの少なくとも1個所にビビリマークや焼き付きによる表面状態の不良を生じているものであると容易に判定することができる。
【0059】
一方、或る検査対象管1に対して本発明の管端開先加工部の検査方法及び装置による検査を実施しても、上記異常判定出力部(図示せず)における異常判定出力が生じない場合は、そのとき検査した検査対象管1が、開先加工部2のルート面3、開先面4のR部分4a及び斜面部分4bのすべてに正常な表面健全性を有するものであると容易に判定することができる。
【0060】
更に、本発明の管端開先加工部の検査方法及び装置では、撮影装置7により開先加工部2のルート面3と開先面4のR部分4aと斜面部分4bにおける照明装置6で照明された範囲を一緒に撮影し、得られる画像9上で、上記ルート面3と、開先面4のR部分4aと、斜面部分4bについて、それぞれの明るさの差を基にルート面用計測領域10aと、開先面R部分用計測領域10bと、開先面斜面部分用計測領域10cを個別に設定して、該各計測領域10a,10b,10cごとに、独立したコントラスト変換を行うことによるビビリマークや焼き付きの有無を検査する処理を行うようにしてあり、しかも、この各計測領域10a,10b,10cごとのビビリマークや焼き付きの有無を検査する処理は、並行して一緒に行うことが可能なため、上記検査対象管1の開先加工部2全体の表面健全性の検査に要する時間を削減することができる。
【0061】
なお、上記開先加工部2の開先面4のR部分4aは、上記照明装置6からの照明光6aは直接当たらない陰になるようにして、周辺からの散乱光による照明を行うようにしてあるため、上記処理装置8で取得する画像9における上記開先面4のR部分4aは、上記照明装置6からの照明光6aが直接当たるようにしてあるルート面3や、開先面4の斜面部分4bに比して暗く写ることになるが、該画像9上で、上記R部分4aに対応する開先面R部分用計測領域10bを、上記ルート面3に対応するルート面用計測領域10aや、上記開先面4の斜面部分4bに対応する開先面斜面部分用計測領域10cと分けて設定した上で、該開先面R部分用計測領域10bについて独立したコントラスト変換を行うようにしてあるため、上記開先面4のR部分4aが、ルート面3や開先面4の斜面部分4bに比して暗く写ることの影響を受けることなく、開先面R部分用計測領域10bについてのビビリマークや焼き付きの有無を検査することができるようになる。
【0062】
又、上記開先加工部2の表面健全性の検査を、作業者の目視により行う必要をなくすことができるため、検査作業に要する手間と時間を削減することができる。しかも、上記開先加工部の表面健全性が正常であるか又は不良であるかの判断は機械的に行わせることができることから、判断基準を一定にすることができる。したがって、開先加工部2における表面健全性が正常であるとされた検査対象管1は、開先加工部2の品質を均一なものとすることができる。
【0063】
次に、図6乃至図9は本発明の実施の他の形態として、管端部にV形開先又はレ形開先を形成するための開先加工部2Aとして、軸心方向に垂直なルート面3を内周側端縁部に備え、且つ該ルート面3の外周側に、径方向に一定の角度で傾斜する斜面となる開先面4cを備えた形式の管(鋼管)を検査対象管1Aとする場合の適用例を示すもので、以下のようにしてある。
【0064】
すなわち、本実施の形態における管端開先加工部の検査装置は、図1及び図2に示したと同様の構成において、照明装置6を、上記検査対象管1Aの開先加工部2Aに形成されているルート面3と斜面である開先面4cをそれぞれ異なる明るさで照明できるようにする。具体的には、たとえば、上記検査対象管1Aの軸心位置Oに寄った位置に、上記ルート面3に対して斜め45度の角度で照明光6aを照射するように配置する。これにより、図7に示すように、上記ルート面3に対しては、上記照明装置6より発せられた照明光6aを斜め45度の角度で当てるのに対し、上記開先面4cには、斜面である該開先面4cの傾斜角度に応じて上記照明装置6より発せられる照明光6aを斜め45度よりも小さい角度で当てるようにすることで、上記照明装置6により照明される範囲の上記検査対象管1Aの開先加工部2Aにおける上記ルート面3と開先面4cに、それぞれ明るさの違いが生じるようにしてある。
【0065】
又、撮影装置7は、図6に示すように、上記検査対象管1Aの開先加工部2Aにおける上記照明装置6によって照明される範囲について、ルート面3と開先面4cを一緒に撮影することができるように、たとえば、上記開先加工部2Aにおける上記照明装置6により照明される範囲を、検査対象管1Aの外側で且つ該検査対象管1Aの軸心方向に対し45度傾いた角度で撮影できる位置に配置する。
【0066】
上記照明装置6と撮影装置7は、図1に示したと同様に、連結手段11を介して連結すると共に、旋回装置12により、該照明装置6と撮影装置7を一緒に上記検査対象管1Aの開先加工部2Aに倣って周方向の全周に亘り移動させることができるようにする。
【0067】
更に、処理装置8Aを、図4に示したフロー図に代えて、図8に示すフロー図の如き処理機能を備えてなるものとする。
【0068】
その他の構成は図1乃至図5に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0069】
以下、上記処理装置8Aにおける処理手順について具体的に説明する。
【0070】
上記処理装置8Aは、計測開始に伴い、先ず、図4に示したステップS1と同様に、上記旋回装置12により、上記照明装置6及び撮影装置7を上記検査対象管1の開先加工部2の周方向の或る1個所に対応させて配置させた後、この状態で、処理装置8Aは、図4に示したステップS2と同様に、撮影装置7へ指令C1を与えて上記検査対象管1の開先加工部2における上記照明装置6によって照明された個所を撮影させて、該開先加工部2における撮影個所の画像9を取得する。この際、上記撮影装置7より取得した画像9では、図9に示すように、検査対象管1Aの開先加工部2Aの周方向の一部が、上記照明装置6からの照明光6a(図6、図7参照)によって均一に照明されて明るく写った状態となっている。
【0071】
その後、上記処理装置8Aは、上記画像9上にて、上記開先加工部2Aの周方向における上記照明光6a(図6、図7参照)によって均一に照射されている所定の中心角の部分、たとえば、中心角20度の部分を選択し、更に、該選択部分において、前述したように上記照明装置6からの照明光6aの当たり方が違うことに起因して開先加工部2Aのルート面3と、開先面4cについて生じる明るさの差を基に、上記ルート面3と、開先面4cにそれぞれ対応する個所に、図9に二点鎖線で示すように、ルート面用計測領域10aと、開先面用計測領域10dを分割して設定する(ステップS3a)。
【0072】
上記のようにして各計測領域10a,10dが設定された後は、上記処理装置8Aは、図4に示したフロー図におけるステップS4からステップS7までの手順と同様に、該各計測領域10a,10dごとに個別のコントラスト変換を行ってから、該コントラスト変換されたデータを基に、上記各計測領域10a,10dのそれぞれについて、予め正常な表面健全性が得られている場合のデータとの比較により、焼き付き及びビビリマークを検査してから、焼き付きあるいはビビリマークが検出されたか否かの判定を行い、焼き付きあるいはビビリマークが検出された場合は、処理装置8Aに接続してある異常判定出力部(図示せず)にて異常判定出力を行わせる。
【0073】
その後、上記処理装置8Aは、図4のフロー図におけるステップS8と同様に、上記検査対象管1Aの開先加工部2Aについて、360度の検査が行われたか否かの判断を行い、360度の検査が未だ行われていない場合は、ステップS9へ進み、該ステップS9にて、旋回装置12へ指令C2を与えて、該旋回装置12の運転により、上記照明装置6及び撮影装置7を周方向の一方向へ20度回転させて次の撮影位置へ移動させ、しかる後、上記ステップS2へ戻って、ステップS2から上記ステップS8までの処理を再度行うようにしてある。
【0074】
しかる後、上記ステップS8で上記開先加工部2Aの360度の検査が終了したと判断されると、上記処理装置8Aは計測を終了するようにする。
【0075】
このように、本実施の形態の管端開先加工部の検査方法及び装置によれば、検査対象管1Aの管端部に設けてある開先加工部2Aのルート面3、及び、斜面となる開先面4cについて、ビビリマークや焼き付きの検査を行うことができ、上記開先加工部2Aのルート面3、開先面4cのいずれかにビビリマークや焼き付きが生じている場合は、処理装置8Aに接続してある異常判定出力部(図示せず)に異常判定出力を行わせることができる。
【0076】
よって、或る検査対象管1Aに対して本実施の形態の管端開先加工部の検査方法及び装置による検査を実施する際に、上記処理装置8Aに接続してある異常判定出力部(図示せず)での異常判定出力の有無に基いて、そのとき検査した検査対象管1Aが、開先加工部2Aのルート面3及び開先面4cにビビリマークや焼き付きによる表面状態の不良を生じているものか、あるいは、開先加工部2のルート面3及び開先面4cの双方に正常な表面健全性を有するものであるかを容易に判定することができる。
【0077】
以上により、本実施の形態の管端開先加工部の検査方法及び装置によっても、図1乃至図5の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、管端部に開先加工を施すようにしてある管であれば、ループ管以外のいかなる用途の管を検査対象管1,1Aとして、その開先加工部2,2Aの検査に適用してもよい。
【0079】
検査対象管1,1Aの開先加工部2,2Aの周方向について、照明装置6により照明する範囲、撮影装置7により撮影する範囲、上記計測領域10a,10b,10c,10dを設定する中心角の範囲は、検査対象管1,1Aの径寸法に応じて変化する開先加工部2,2Aの円周寸法、照明装置6のサイズ、撮影装置7の撮影範囲(視野)の大小に応じて、適宜変更してもよい。
【0080】
上記撮影装置7を検査対象管1,1Aの開先加工部2,2Aの周方向に所要間隔で移動させて撮影する画像の数は、上記検査対象管1,1Aの開先加工部2,2Aの周方向について照明装置6による照明を行いながら撮影装置7により撮影可能となる範囲の中心角の大小に応じて、周方向のすべての個所の画像を得ることができるように適宜増減してもよい。
【0081】
開先加工部2にU形開先又はJ形開先用のルート面3と、R部分4a及び斜面部分4bからなる開先面4を設けた場合は、上記ルート面3と、開先面4のR部分4aと、斜面部分4bに明るさの差が生じるように照明でき、又、開先加工部2AにV形開先又はレ形開先用のルート面3と斜面となる開先面4cを設けた場合は、上記ルート面3と、開先面4cに明るさの差が生じるように照明できるようにしてあれば、照明装置6の配置は、図示した以外の任意の位置に設定してよい。又、面発光する形式以外のいかなる形式の照明装置6を採用してもよい。
【0082】
開先加工部2にU形開先又はJ形開先用のルート面3と、R部分4a及び斜面部分4bからなる開先面4を設けた場合は、上記開先加工部2における照明装置6により照明された周方向の一部にて、上記ルート面3と、開先面4のR部分4aと、斜面部分4bを一緒に撮影することができ、又、開先加工部2AにV形開先又はレ形開先用のルート面3と斜面となる開先面4cを設けた場合は、上記開先加工部2Aにおける照明装置6により照明された周方向の一部にて、上記ルート面3と、開先面4cを一緒に撮影することができるようにしてあれば、撮影装置7の位置や姿勢(向き)を適宜変更してもよい。
【0083】
照明装置6及び撮影装置7を検査対象管1,1Aの周方向に相対移動させる手段としては、検査対象管1,1Aの開先加工部2,2Aの周方向の一部に臨むように配置した照明装置6及び撮影装置7を位置固定した状態で、上記検査対象管1,1Aを回転させるようにしてもよい。
【0084】
本発明の管端開先加工部の検査方法及び装置は、処理装置8,8Aにて、検査対象管1,1Aの開先加工部2,2Aのルート面3や開先面4,4cの画像上におけるコントラスト変換後に、予め正常な表面健全性が得られている場合のデータとの比較により部分的に変色した部分を検出させるようにすることで、上記開先加工部2,2Aのルート面3や開先面4,4cの表面に存在する傷等の欠陥部を検査する処理に適用してもよい。
【0085】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0086】
1,1A 検査対象管
2,2A 開先加工部
3 ルート面
4 開先面
4a R部分
4b 斜面部分
4c 開先面
5 暗空間形成容器
6 照明装置
6a 照明光
7 撮影装置
8,8A 処理装置
9 画像
10a ルート面用計測領域
10b 開先面R部分用計測領域
10c 開先面斜面部分用計測領域
10d 開先面用計測領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象管の管端部に設けた開先加工部を暗空間内に配置し、上記開先加工部の周方向の一部を、照明装置により照明すると共に、照明された開先加工部の周方向の一部におけるルート面と開先面を撮影装置で一緒に撮影し、得られる画像上の上記開先加工部のルート面に対応する個所と開先面に対応する個所に、ルート面用計測領域と開先面用計測領域をそれぞれ設定し、次いで、設定された各計測領域について個別のコントラスト変換を行い、該コントラスト変換により各計測領域ごとに得られる濃淡変化及び色の濃さが、予め正常な表面健全性を備えた開先加工部を有する管に対して同様の処理を実施したときに得られている対応する計測領域の濃淡の変化、色の濃さの基準値に比して或るしきい値を越えると、上記検査対象管の開先加工部における表面健全性に不良があると判定することを特徴とする管端開先加工部の検査方法。
【請求項2】
検査対象管の開先加工部の周方向の一部を照明装置により照明するとき、該開先加工部のルート面と開先面に明るさの差を生じさせるような照射角度で該照明装置より上記開先加工部の周方向の一部へ照明光を照射して、上記開先加工部のルート面と開先面に異なる角度で照射光が当たるようにし、撮影装置で上記ルート面と開先面を一緒に撮影して得られる画像上における上記ルート面と開先面の明るさの差に基づいて、該画像上の上記ルート面に対応する個所と開先面に対応する個所に、ルート面用計測領域と開先面用計測領域をそれぞれ設定するようにする請求項1記載の管端開先加工部の検査方法。
【請求項3】
検査対象管の開先加工部を、U形開先又はJ形開先用のルート面と、その外周側のR部分及び斜面部分からなる開先面を備えた開先加工部とし、該開先加工部の周方向の一部を照明装置により照明するとき、該開先加工部のルート面と開先面のR部分と斜面部分に明るさの差を生じさせるような照射角度で該照明装置より上記開先加工部の周方向の一部へ照明光を照射して、上記開先加工部のルート面と開先面の斜面部分に異なる角度で照射光が当たるようにすると共に、上記開先加工部の開先面のR部分に上記照明装置からの照明光が直接当たらないで陰になるようにし、撮影装置で上記ルート面と開先面のR部分及び斜面部分を一緒に撮影して得られる画像上における上記ルート面と開先面のR部分と斜面部分の明るさの差に基づいて、該画像上の上記ルート面に対応する個所と、開先面のR部分に対応する個所と、開先面の斜面部分に対応する個所に、ルート面用計測領域と、開先面R部分用計測領域と、開先面斜面部分用計測領域をそれぞれ設定するようにする請求項2記載の管端開先加工部の検査方法。
【請求項4】
検査対象管の管端部の開先加工部の周辺に外部からの光を遮った暗空間を形成するための暗空間形成容器と、上記暗空間形成容器内に配置された検査対象管の開先加工部の周方向の一部を照明するための照明装置と、上記照明装置により照明された検査対象管の開先加工部のルート面と開先面を一緒に撮影するための撮影装置を備え、更に、上記撮影装置で撮影して得られた画像上にて、上記開先加工部のルート面に対応する個所と開先面に対応する個所に、ルート面用計測領域と開先面用計測領域をそれぞれ設定する機能と、該設定された各計測領域について個別のコントラスト変換を行う機能と、該コントラスト変換により各計測領域ごとに得られる濃淡変化及び色の濃さが、予め正常な表面健全性を備えた開先加工部を有する管に対して同様の処理を実施したときに得られている対応する計測領域の濃淡の変化、色の濃さの基準値に比して或るしきい値を越えると、上記検査対象管の開先加工部における表面健全性に不良があると判定する機能を有してなる処理装置を備えた構成を有することを特徴とする管端開先加工部の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−47454(P2012−47454A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186792(P2010−186792)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】