説明

粒子付着層の形成方法及び装置

【課題】メンテナンス作業を低減することができ、マスクを不要にすることができ、かつ分散媒の使用量を低減することができる粒子付着層の形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の粒子付着層の形成方法は、分散媒中に粒子を分散させたスラリーをノズルのスリット形状の吐出口から基板に対して供給することによって前記吐出口と前記基板の間に前記スラリーのメニスカスを形成し、前記吐出口と前記基板とを相対移動させることによって前記メニスカスを移動させて前記基板上にスラリー層を形成し、前記ノズルに近接して配置された乾燥部によって前記スラリー層中の前記分散媒を蒸発させることによって前記基板上に粒子付着層を形成する工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に粒子を離散的に付着させることができる粒子付着層の形成方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラット・ディスプレイ・パネル製造工程の中に、物理的スペーサの役目を担う粒子、或いは電子物性的な機能を有する粒子を、大型基板面の所望領域に粒子の凝集を抑制しながら、好適な付着密度で離散的に布置、付着させるプロセス工程がある。
【0003】
例えば、液晶ディスプレイ・パネルのセルギャップを保持するためのスペーサ粒子を低粘度の揮発性分散媒に分散させて、スプレーノズルによりパネル大型基板面上にスプレー散布する方法が適用されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
しかしながら、スプレーによる散布方法では、スプレーノズルから噴出した全てのスペーサ粒子がパネル基板面に布置、付着するわけではなく、ブース内を浮遊、拡散して、スプレーガンを含む散布ロボットなどに付着、凝集して異物の発生源になる。そのため、ブース及び散布ロボットのこまめなメンテナンス清掃作業が必要になる。
【0005】
このようなブース内における粒子の浮遊、拡散を抑制するには、ダウンフロー排気による気流制御、及びフィルターによる粒子捕集を行うことが有効である。しかし、フィルターが目詰まりしてくると、ブース内の気流バランスが乱れるため、適宜、交換メンテナンスする必要がある。
【0006】
また、大型基板の所望の領域に限定して粒子を付着させる場合には、通常、所望領域に開口部を有するマスクを用いて大型基板を覆ってスプレーによる散布を行う。マスクにもスプレー散布することになり、スラリー材料の利用効率が低いだけでなく、不要な粒子が付着、蓄積したマスクの交換及びメンテナンス清掃が不可欠になる。
【0007】
地球環境的には、スプレー散布に用いる低粘度揮発性分散媒(アルコールなど)の多くは揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)規制対象であり、使用量及び排出量を削減する必要がある。スプレー散布方法では、粒子の付着過程に真に必要な量より多いアルコールを大型基板の外側の空間、或いは大型基板上に設置したマスク上にも散布、排気することになるため、地球環境に優しい製造技術とは言い難い。
【特許文献1】特開平11−2817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スプレー散布技術を用いて大型基板上に粒子を離散的に布置、付着すると、スプレーノズルから噴出した粒子の一部はブース内に浮遊、拡散し散布ロボットなど付着し、異物の発生源になるため、メンテナンス清掃が必要になる。また、ブース内に浮遊する粒子を捕集するためのフィルター、及び粒子の付着面を限定するためのマスクなども交換、清掃などのメンテナンス作業が必要であり、生産性低下の要因となる。
【0009】
また、スプレー散布に用いる低粘度揮発性分散媒の多くは、揮発性有機化合物(VOC)規制の対象であり、使用量及び排出量を最小限化しなければならない。スプレー散布では大型基板の外側、或いはマスク上にも散布する必要があり、余分な量の低粘度揮発性分散媒を使用、排出することになる。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、メンテナンス作業を低減することができ、マスクを不要にすることができ、かつ分散媒の使用量を低減することができる粒子付着層の形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0011】
本発明の粒子付着層の形成方法は、分散媒中に粒子を分散させたスラリーをノズルのスリット形状の吐出口から基板に対して供給することによって前記吐出口と前記基板の間に前記スラリーのメニスカスを形成し、前記吐出口と前記基板とを相対移動させることによって前記メニスカスを移動させて前記基板上にスラリー層を形成し、前記ノズルに近接して配置された乾燥部によって前記スラリー層中の前記分散媒を蒸発させることによって前記基板上に粒子付着層を形成する工程を備える。
【0012】
本発明では、メニスカスを形成し、このメニスカスを移動させることによってスラリー層を形成し、ノズルに近接して配置された乾燥部によってスラリー層中の分散媒を蒸発させることによって粒子付着層を形成する。なお、「メニスカス」とは、物体間にできる液体架橋を意味する
本発明は、スラリー散布によって粒子付着層を形成する方法と比べて以下の利点を有している。
(1)メンテナンス作業の低減
スプレー散布では粒子が大気中を浮遊、拡散するので粉の付着、蓄積に伴う各種メンテナンス作業が発生するが、本発明ではこのようなメンテナンス作業が発生しない。
(2)マスクが不要
本発明では、マスクを用いなくても基板上の所望領域に粒子付着層を形成することができる。従って、本発明では、スプレー散布において必要となる所望領域に開口部を有するマスク、及びそれに伴うメンテナンス作業は一切不要になる
(3)分散媒の使用量の低減
本発明では、スプレー散布のように大気中、大型基板の外側空間、或いはマスク上のような無益な領域に散布することはない。従って、分散媒(例:揮発性有機化合物(VOC))の使用量を大幅に(例えば1割以下に)低減することができる。
以下、本発明の種々の実施形態等を例示する。
【0013】
前記スラリーの供給前に前記ノズル内に粒子を含まない液体を供給して前記ノズルを洗浄する工程をさらに備えてもよい。
前記メニスカスが所望の距離を移動した時点で前記吐出口と前記基板の間の距離を大きくして前記メニスカスを消滅させる工程をさらに備えてもよい。
前記メニスカスが所望の距離を移動した時点で前記ノズル内に粒子を含まない液体を供給して前記ノズル内の前記スラリーを前記液体で置換する工程をさらに備えてもよい。
【0014】
本発明は、基板を保持するホルダーと、前記ホルダーに対向するように配置されたスリット形状の吐出口を有するノズルと、分散媒中に粒子を分散させたスラリーをノズルに供給するスラリー供給部と、前記ホルダーと前記吐出口とを相対移動させる駆動部と、前記ノズルに近接して配置された乾燥部とを備える粒子付着層形成装置も提供する。
粒子を含まない液体を前記ノズルに供給する液体供給部をさらに備え、この液体の供給と前記スラリーの供給を切り替える切り替え部をさらに備えてもよい。
前記ノズルのスラリーが接する部分は、硬質セラミック又はダイアモンドによりコーティングされていてもよい。
ここで示した種々の実施形態等は、互いに組み合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す内容は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0016】
本発明の一実施形態の粒子付着層の形成方法は、分散媒中に粒子を分散させたスラリーをノズルのスリット形状の吐出口から基板に対して供給することによって前記吐出口と基板の間に前記スラリーのメニスカスを形成し、前記吐出口と前記基板とを相対移動させることによって前記メニスカスを移動させて前記基板上にスラリー層を形成し、ノズルに近接して配置された乾燥部によってスラリー層中の分散媒を蒸発させることによって前記基板上に粒子付着層を形成する工程を備える。
【0017】
以下、最初に、図1を用いて本実施形態の方法の実施に適した粒子付着層形成装置について説明し、次に、本実施形態の粒子付着層の形成方法について詳細に説明する。
【0018】
1.粒子付着層形成装置
図1を用いて本実施形態の方法の実施に適した粒子付着層形成装置1について説明する。図1は、粒子付着層形成装置1のシステム構成図である。なお、図1に示す装置は、例示であり、本実施形態の方法は、図1以外の構成の装置を用いて実施することも可能である。
【0019】
粒子付着層形成装置1は、基板を保持するホルダー17と、ホルダー17に対向するように配置されたスリット形状の吐出口3を有するノズル5と、分散媒中に粒子を分散させたスラリー9をノズル5に供給するスラリー供給部21と、ホルダー17と吐出口3とを相対移動させる駆動部(図示せず)と、ノズル5に近接して配置された乾燥部13とを備える。また、この装置は、ノズル5に対して粒子を含まない液体(粒子非含有液体)8を供給する液体供給部23も備える。
【0020】
スラリー供給部21は、スラリー9を収容するスラリータンク25と、スラリータンク25内のスラリー9をノズル5に供給する定量吐出ポンプ27を備える。また、スラリー供給部21は、スラリー9を循環させるためのスラリー循環ポンプ29と、凝集粗粒子を除去するフィルター31と、スラリー9の濃度及び粒径分布をモニターするスラリーモニター33のうちの1つ以上を任意的に備える。また、スラリータンク25は、内部のスラリー9を攪拌するための攪拌装置34(例:攪拌羽根)を任意的に備える。
【0021】
液体供給部23は、粒子非含有液体8を収容する液体タンク35と、液体タンク35中の粒子非含有液体8をノズル5に供給する液体供給ポンプ37を備える。
【0022】
また、粒子付着層形成装置1は、ノズル5に供給される液体の流量の計測及び制御を行う流量計39と、ノズル5から排出された不要な液体を回収する回収タンク41のうちの1つ以上を任意的に備える。粒子付着層形成装置1の液体の流れは、各分岐点に設けられたバルブ43と、ポンプ27、29、37を用いて制御される。例えば、ノズル5に供給される液体の種類(スラリー9又は粒子非含有液体8)は、各分岐点に設けられたバルブ43と、スラリー定量吐出ポンプ27及び液体供給ポンプ37を用いて切り替えられる。以下の説明では、各バルブの開閉動作の説明は省略する。
【0023】
2.粒子付着層の形成方法
図2(a)〜(g)、図3(a)〜(g)を用いて本実施形態の粒子付着層の形成方法について説明する。図2(a)〜(g)、図3(a)〜(g)は、それぞれ、本発明の実施形態の粒子付着層の形成方法の各工程を示す断面図である。図2(a)〜(g)は、ホルダーが可動である場合を示し、図3(a)〜(g)は、ノズルが可動である場合を示す。
【0024】
1−1.基板固定工程
まず、図2(a)、図3(a)に示すように、ホルダー17に基板7を固定する。
【0025】
図2(a)の実施形態では、ホルダー17は可動型であり、ホルダー17が図2(a)の矢印Xの方向に移動することによって基板7と吐出口3とが相対移動して後述するスラリー層11が形成される。この場合は、ノズル5を移動させる必要がないので、ノズル5への粒子非含有液体8及びスラリー9の供給ラインの構成がシンプルになる。また、図3(a)の実施形態では、ホルダー17は固定型であり、この場合、ノズル5が図3(a)の矢印Yの方向に移動することによって基板7と吐出口3とが相対移動して後述するスラリー層11が形成される。この場合、ホルダー17を移動させるための大掛かりな装置が不要になるので、装置をコンパクトにすることができる。なお、ホルダー17とノズル5を互いに逆方向に移動させてもよい。この場合、それぞれの移動距離を小さくすることができる。
【0026】
基板7の固定方法は、特に限定されないが、基板7は、例えば真空チャックによって固定することができる。また、基板7は、粒子付着層15を形成する面が下向き(フェースダウン)になるように固定することが好ましい。この場合、ノズル5の吐出口3が上向きになるので、粒子非含有液体8やスラリー9が吐出口3から漏れることを防ぐことができるという利点がある。基板7は、粒子付着層15を形成する面が上向き(フェースアップ)になるように固定してもよい。この場合、前後の工程がフェースアップで行われる場合に、基板7を裏返す必要がないという利点がある。基板7のサイズは、特に限定されないが、サイズが30型以上(例えば32型の外形寸法は縦446×横776mm)の大型基板であることが好ましい。大型基板の場合、本実施形態の方法によって粒子付着層を形成する必要性が特に大きいからである。基板7の材質は、特に限定されないが、例えば、ガラスである。基板7は、例えば、フラット・ディスプレイ・パネル製造において粒子付着層形成工程の直前の工程までが完了したものである。
【0027】
ノズル5の形状は、特に限定されず、一例では、吐出口3に連通する空間を内部に有する円筒(シリンダ)形である。吐出口3は、スラリー9を吐出可能なスリット形状であればよい。スリット形状は、直線状であることが好ましい。吐出口3の長さ(図2(a)、図3(a)の紙面に垂直な方向の距離)は、粒子を付着させる矩形エリアの第1の辺の長さに一致させる。吐出口3の幅は特に限定されないが、例えば、3〜50μm程度であり、5〜15μmが好ましい。この幅は、具体的には例えば、3,5,10,15,20,30,40,50μmである。この幅は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
ノズル5のスラリー9が接する部分は、摩耗を防ぐために、硬質セラミック又はダイアモンドによりコーティングすることが好ましい。
【0029】
1−2.洗浄工程
次に、図2(b)、図3(b)に示すように、ノズル5内に粒子非含有液体8を供給してノズル5を洗浄する。
【0030】
洗浄工程を行うことによってノズル5内の残留粒子を除去できるという利点がある。洗浄工程は、任意であり、省略可能である。また、洗浄工程は、ノズル5へのスラリー9の供給前に行えばよく、基板固定前後のどちらに行ってもよい。
【0031】
粒子非含有液体8は、液体供給部23によってノズル5に供給される。より具体的には、粒子非含有液体8は、液体タンク35から液体供給ポンプ37を用いて、流量計39により流量を計測及び制御しながらノズル5に供給される。粒子非含有液体8の一部は、回収タンク41に送り込まれる。
【0032】
粒子非含有液体8の種類は、特に限定されないが、スラリー9の分散媒と同じ種類の液体であることが好ましく、一例では、イソプロピルアルコール(IPA)である。
【0033】
1−3.メニスカス形成工程
次に、図2(c)、図3(c)に示すように、分散媒中に粒子を分散させたスラリー9をノズル5の吐出口3から吐出して基板7に付着させることによって吐出口3と基板7の間にスラリー9のメニスカス10を形成する。スラリー9は、吐出口3からわずかに滲み出す程度に吐出される。
【0034】
スラリー9は、スラリー供給部21によってノズル5に供給される。より具体的には、スラリー9は、スラリータンク25から(好ましくはスラリータンク25の底部から)定量吐出ポンプ27を用いてスラリー9を送り出し、フィルター31により凝集粗粒子を除去し、スラリーモニター33によりスラリー9の濃度及び粒径分布を、流量計39により流量を各々モニターしながらノズル5に供給される。スラリータンク25内でのスラリー9中の粒子の凝集及び沈降を抑制するためにスラリータンク25内で攪拌装置34を用いてスラリー9の攪拌を行うことが好ましい。また、撹拌動力の投入によるスラリー温度上昇を防ぐためにスラリー9の温度を制御する温度制御装置を設けることが好ましい。スラリーの沈降をさらに確実に抑制するために、スラリー循環ポンプ29を用いてスラリータンク25の底部からスラリー9を排出し、タンク25の上部にフィルター31を通してリターン循環させることが好ましい。
【0035】
ノズル5に供給されたスラリー9は、一部が吐出口3から滲み出し、残りがフィルター31を経由してスラリータンク25に戻されて再利用される。吐出口3からの滲み出しの程度は、定量吐出ポンプ27の吐出流量を設定することにより制御することができる。吐出口3からスラリー9が滲み出ている状態で吐出口3と基板7を十分に接近させることによって吐出口3と基板7の間にスラリー9のメニスカス10を形成することができる。
なお、吐出口3と基板7を十分に接近させてからスラリー9をノズル5へ供給してもよい。吐出口3と基板7との間の距離は、メニスカス10が形成可能な距離であれば限定されないが、例えば、3〜50μmであり、5〜15μmが好ましい。この距離は、具体的には例えば、3,5,10,15,20,30,40,50μmである。この距離は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。この距離は、例えば、レーザー変位計を用いて測定することができる。
【0036】
スラリー9の分散媒は、特に限定されないが、低粘度(室温での粘度が1〜5mPa・s)であることが好ましい。この場合、後述するスラリー層11が均一に形成されやすいからである。スラリー9の分散媒の室温での粘度は、例えば、1、2、3、4、5mPa・sである。この粘度は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、スラリー9の分散媒は、高揮発性(沸点が40〜95℃)であることが好ましい。この場合、スラリー層11中に分散媒を蒸発させるのが容易であるからである。スラリー9の分散媒の沸点は、例えば、40、45、50、55、60、65、70、75、80、95、90、95℃である。この沸点は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。スラリー9の分散媒は、例えば、炭素数が1〜4のアルコールであり、具体的には例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコールであり、比較的安価なイソプロピルアルコールが好ましい。
【0037】
スラリー9の粒子の種類は、特に限定されず、例えば、酸化物セラミック、金属酸化物、樹脂である。酸化物セラミックとしては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、マグネシアが挙げられる。この粒子の平均粒子径は、例えば、0.1〜20μmであり、好ましくは0.8〜1.5μmである。この粒子の平均粒子径は、具体的には例えば0.10.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2、5、10、20μmである。本発明において平均粒子径は、光学素子を用いた粒度分布測定装置によって測定する。また、粒子径に対する分級処理を行って微粉側成分と粗粉側成分の一方又は両方を除去する工程を備えることが好ましい。これによって、分級前の粒径の分布が大きい場合(例えば、体積基準によるD10とD90の差が50倍以上の場合、例:D10:0.2μmでD90:10μm)や突発的な凝集粒子の混入があった場合でも、粒径の分布を小さくすることができる。分級処理を行うために、粒子付着層形成装置1に分級装置(例:液体サイクロン装置)を導入することが好ましい。
【0038】
スラリー9の粒子の濃度は、特に限定されず、例えば0.1〜10wt%の範囲で所望の粒子付着密度に応じて適宜調整すればよい。スラリー9の粒子の濃度は、具体的には例えば0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10wt%である。この濃度は、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0039】
1−4.スラリー層形成及び乾燥工程
次に、図2(d)〜(e)、図3(d)〜(e)に示すように、吐出口3と基板7とを相対移動させることによってメニスカス10を移動させて基板7上にスラリー層11を形成し、ノズル5に近接して配置された乾燥部13によってスラリー層11中の分散媒を蒸発させる。これによって、スラリー層11中の粒子は凝集することなく基板7上に付着して粒子付着層15が形成される。
【0040】
メニスカス10の移動は、吐出口3と基板7とを相対移動させることによって行うことができる。吐出口3と基板7との相対移動は、ホルダー17を移動させることによって行ってもよく(図2(d)〜(e))、ノズル5を移動させることによって行ってもよく(図3(d)〜(e))、ホルダー17とノズル5の両方を互いに逆向きに移動させることによって行ってもよい。ノズル5を移動させる場合、乾燥部13もノズル5と共に移動させる。乾燥部13は、ノズル5に固定されていてもよく、ノズル5とは別の駆動系によってノズル5と共に移動するように構成されていてもよい。
【0041】
メニスカス10は、粒子を付着させる矩形エリアの第2の辺と平行な方向に移動させる。粒子を付着させる矩形エリアの限定は、吐出口3の長さにより第1の辺の長さが決まり、メニスカス10の移動距離で第2の辺の長さが決まる。このようにして、基板7の所望の矩形エリアに対して粒子を離散的に布置、付着させることができる。
【0042】
また、メニスカス10の移動中にメニスカス10が消失しないように吐出口3と基板7の間の距離を精密に制御する必要がある。
【0043】
乾燥部13は、スラリー層11が形成されると速やかにスラリー層11中の分散媒を蒸発させる。乾燥部13は、分散媒を蒸発させる機能を有するものであればよく、例えば、減圧チャンバーや、ラミナー気流(層流)などの制御された気流をスラリー層11に吹き付ける送風器や、加熱器である。また、乾燥部13は、温度制御機能を有する減圧チャンバーであることが好ましい。この場合、蒸発過程の再現性が高いからである。
本実施形態では、乾燥部13がノズル5に近接して配置されているので、スラリー層11の一部が形成されるとその部分の乾燥が即座に行われ、それと同時にスラリー層11の次の一部が形成されるというプロセスが繰り返されることによって粒子付着層15の全体が形成される。スラリー層11の全体が形成された後にスラリー層11の乾燥を開始して粒子付着層15を形成する場合にはスラリー層11の乾燥時に粒子が凝集するという問題が生じやすいが、本実施形態の方法ではそのような問題が生じにくい。
【0044】
1−6.スラリー層形成終了工程
次に、図2(f)〜(g)、図3(f)〜(g)に示すように、メニスカス10が所望の距離を移動した時点で吐出口3と基板7の間の距離を大きくしてメニスカス10を消滅させる。これによって、スラリー層11の形成が終了する。また、吐出口3と基板7の間の距離を大きくするには、基板7を固定して吐出口3を基板7から離れる方向に移動させてもよく、吐出口3を固定して基板7を吐出口3から離れる方向に移動させてもよく、両方を互いに反対方向に移動させてもよい。また、吐出口3と基板7の間の距離を大きくする代わりに又はこれと共にノズル5内に粒子非含有液体8を供給してノズル5内のスラリー9を粒子非含有液体8で置換してもよい。この方法によってもスラリー層11の形成を終了させることができる。粒子非含有液体8は、スラリー9の分散媒と同じ種類の液体であることが好ましく、一例では、イソプロピルアルコール(IPA)である。また、ここで供給する粒子非含有液体は、ノズル5の洗浄時に供給する粒子非含有液体と同じ種類の液体であることが好ましいが、異なる種類の液体であってもよい。
【0045】
粒子付着層15を形成するエリアについては、図4(a)、(b)に示すように、ノズル5に設けた吐出口3の分割数及びメニスカス10を形成し消滅させるタイミングを制御することにより、マスクを用いることなく矩形状の粒子付着層15を選択的に形成することが可能である。吐出口3を1本具備したノズル5を用いて基板7に対して1つの矩形状エリアの粒子付着層15を形成したレイアウト例が図4(a)である。図4(b)は吐出口3を2本具備したノズル5を用いて基板7に対して4つの矩形状エリアの粒子付着層15を形成したレイアウト例である。
【0046】
以上の装置及び方法により、スラリーの分散状態を良好に維持、監視しながら、高い利用効率で粒子付着層15を形成することができる。
【0047】
粒子付着層15における粒子の付着密度の指標としては、『粒子の付着率』=〔付着粒子の占める面積の総計/粒子付着が必要なエリアの面積〕として定義し、粒子付着層15の上面からの顕微鏡観察像を画像処理することにより評価することができる。一例では、粒子の付着率を3〜30%の範囲で制御する。また、粒子の付着率に伴う基板7の表面での光の散乱、反射状態の変化を検知することにより、付着率を光沢計、明度計などによる光学的に評価することも可能である。また、これらの付着率評価手段を用いて、形成直後の粒子付着層の粒子の付着率をリアルタイム計測して、スラリーのモニターリングと組み合わせることにより、メニスカスの移動速度、スラリー供給流量などのプロセス条件をリアルタイムで最適化制御することが好ましい。
【0048】
以上の実施形態で示した種々の特徴は、互いに組み合わせることができる。1つの実施形態中に複数の特徴が含まれている場合、そのうちの1又は複数個の特徴を適宜抜き出して、単独で又は組み合わせて、本発明に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態の粒子付着層の形成方法に好適に用いられる粒子付着層形成装置の構成図である。
【図2】図2(a)〜(g)は、本発明の一実施形態の粒子付着層の形成方法の各工程を示す断面図である。
【図3】図3(a)〜(g)は、本発明の別の実施形態の粒子付着層の形成方法の各工程を示す断面図である。
【図4】図4(a)、(b)は、本発明の一実施形態の粒子付着層の形成方法によって粒子付着層が形成される領域の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0050】
1:粒子付着層形成装置 3:吐出口 5:ノズル 7:基板 8:粒子を含まない液体(粒子非含有液体) 9:スラリー 10:メニスカス 11:スラリー層 13:乾燥部 15:粒子付着層 17:ホルダー 21:スラリー供給部 23:液体供給部 25:スラリータンク 27:定量吐出ポンプ 29:スラリー循環ポンプ 31:フィルター 33:スラリーモニター 34:攪拌装置 35:液体タンク 37:液体供給ポンプ 39:流量計 41:回収タンク 43:バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒中に粒子を分散させたスラリーをノズルのスリット形状の吐出口から基板に対して供給することによって前記吐出口と前記基板の間に前記スラリーのメニスカスを形成し、
前記吐出口と前記基板とを相対移動させることによって前記メニスカスを移動させて前記基板上にスラリー層を形成し、前記ノズルに近接して配置された乾燥部によって前記スラリー層中の前記分散媒を蒸発させることによって前記基板上に粒子付着層を形成する工程を備える粒子付着層の形成方法。
【請求項2】
前記スラリーの供給前に前記ノズル内に粒子を含まない液体を供給して前記ノズルを洗浄する工程をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メニスカスが所望の距離を移動した時点で前記吐出口と前記基板の間の距離を大きくして前記メニスカスを消滅させる工程をさらに備える請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記メニスカスが所望の距離を移動した時点で前記ノズル内に粒子を含まない液体を供給して前記ノズル内の前記スラリーを前記液体で置換する工程をさらに備える請求項1〜3の何れか1つに記載の方法。
【請求項5】
基板を保持するホルダーと、前記ホルダーに対向するように配置されたスリット形状の吐出口を有するノズルと、分散媒中に粒子を分散させたスラリーを前記ノズルに供給するスラリー供給部と、前記ホルダーと前記吐出口とを相対移動させる駆動部と、前記ノズルに近接して配置された乾燥部とを備える粒子付着層形成装置。
【請求項6】
粒子を含まない液体を前記ノズルに供給する液体供給部をさらに備え、
この液体の供給と前記スラリーの供給を切り替える切り替え部をさらに備える請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ノズルのスラリーが接する部分は、硬質セラミック又はダイアモンドによりコーティングされている請求項5又は6に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−269000(P2009−269000A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123518(P2008−123518)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(599132708)日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】