説明

粒状製品の評価方法

【課題】概ね一定の大きさの粒状製品が概ね等間隔に配置されている粒状製品の大きさの均一性と個数を全体の傾向として評価する方法を提供する。
【解決手段】粒状製品を撮像して得られる濃淡画像を所定の閾値により二値化し、抽出した粒領域にラベリング処理を行い、各粒領域の面積を求め、予め設定した第1の面積閾値に満たない面積をもつ粒領域をノイズとして評価対象から除外し、第1の面積閾値以上で第2の面積閾値未満の面積をもつ粒領域を正常粒領域として抽出し、その数および正常粒領域の面積の総和を求め、第2の面積閾値以上の面積をもつ粒領域を異常粒領域として抽出し、その数および異常粒領域の面積の総和を求め、正常粒数、正常粒総面積、異常粒数および異常粒総面積について基準値と比較し、正常粒数または正常粒総面積が基準値に満たない場合、あるいは異常粒数異常粒総面積が基準値を超える場合に当該粒状製品の品質が不均一であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね一定の大きさの粒状製品が概ね等間隔に配置されている粒状製品の大きさの均一性の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
概ね一定の大きさの粒状製品の個々の大きさを計測する場合においては、従来は、粒状製品が多数撮像された画像を所定の閾値で二値化することによって背景と粒状製品とを識別し、得られた二値画像に対してラベリング処理を行い、個々の粒状製品の特徴量(面積、外接長方形の辺長など)を画像解析によって求め、各特長量の値が予め設定された許容範囲内にあるか否かに基づいて粒状製品の良否を判定する手法がよく用いられる。ラベリングとは、二値画像中の連結する明領域または暗領域を1つの塊として取り扱い個々の連結領域にラベル(連番)を付与する一般的な手法である。
【0003】
概ね一定の大きさの粒状製品の個数をカウントする場合においては、従来は、粒状製品が多数撮像された画像を適当な閾値によって二値化することにより背景と粒状製品とを識別し、得られた二値画像に対してラベリング処理を行い、ラベルの数が予め設定された許容範囲内にあるか否かに基づいて粒状製品の個数をカウントする手法がよく用いられる。
【0004】
また、二値画像をラベリングし、ラベリングされた各領域内の白画素と黒画素の数をカウントし、白画素の数に基づいてパターンが異物かどうかを判定し、白および/または黒画素を基準画素数で除算することにより粒が単独で存在しているかどうかを判定して、粒状製品の個数判定精度を向上させる方法が知られている(特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、大型の造粒機等により粒状製品を製造する場合などに、粒の大きさの全体的な傾向や粒数の概ね数に基づいて品質を管理する必要がある。このような場合、個々の粒の大きさや粒数を正確に計測するのではなく、正常な粒の概ね数、異常な大きさの粒の概ね数や全体粒数の概ね数等を把握しなければならない。
【特許文献1】特開平5−165959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、概ね一定の大きさの粒状製品が概ね等間隔に配置されている粒状製品の大きさの均一性を、全体の傾向として評価する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はかかる課題を解決するために、粒状製品の大きさの均一性を評価する方法について鋭意検討した結果、粒状製品を撮像して得られる濃淡画像を二値化し、二値化処理して抽出した粒領域にラベリング処理を行い、ラベリングした各粒領域の面積を求め、面積閾値を設定して粒領域のノイズを除去、正常粒領域の抽出および正常粒数カウント、正常粒領域の面積の総和を求め、異常粒領域の抽出および異常粒数カウントを行い、および異常粒領域の面積の総和を求め、正常粒数、正常粒総面積、異常粒数または異常粒総面積について予め設定した基準値に満たない場合、当該粒状製品の大きさが不均一であると判定することによって、粒状製品の大きさの均一性を、全体の傾向として評価できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、概ね一定の大きさの粒状製品が概ね等間隔に配置されている粒状製品の大きさの均一性を評価する方法であって、(1)粒状製品を撮像して濃淡画像を生成する撮像工程と、(2)濃淡画像を所定の閾値により二値化する二値化工程と、(3)二値化処理によって抽出された粒領域にラベリング処理を行うラベリング工程と、(4)ラベリングされた各粒領域の面積を求める面積算出工程と、(5)予め設定した第1の面積閾値に満たない面積をもつ粒領域をノイズとして評価対象から除外するノイズ除去工程と、(6)第1の面積閾値以上で第2の面積閾値未満の面積をもつ粒領域を正常粒領域として抽出し、その数をカウントする正常粒数カウント工程と、(7)正常粒領域の面積の総和を求める正常粒総面積算出工程と、(8)第2の面積閾値以上の面積をもつ粒領域を異常粒領域として抽出し、その数をカウントする異常粒数カウント工程と、(9)異常粒領域の面積の総和を求める異常粒総面積算出工程と、(10)正常粒数、正常粒総面積、異常粒数および異常粒総面積のそれぞれについて予め設定した基準値と比較し、正常粒数が基準値に満たない場合、正常粒総面積が基準値に満たない場合、異常粒数が基準値を超える場合または異常粒総面積が基準値を超える場合に、当該粒状製品の大きさが不均一であると判定する均一性評価工程と、を備えることを特徴とする粒状製品の均一性の評価方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、所定の範囲の面積値をもつ正常粒の個数およびその総面積、および所定の値を超える面積値をもつ異常粒の個数およびその総面積を特徴量として、正常粒については予め設定した基準値に満たない場合に、異常粒については予め設定した基準値を超える場合に、当該粒状製品の大きさが不均一であると判断するので、粒全体の大きさの傾向に基づいて均一性を判断することができる。
【0010】
また、本発明は、所定の範囲の面積値をもつ正常粒の総面積が予め設定した基準値に満たない場合に当該粒状製品の大きさが不均一であると判断されるので、撮像範囲内の粒の数が異常に減少した場合にもこれを検出することができる。
【0011】
さらに、本発明は、所定の値を超える面積値をもつ異常粒の総面積が予め設定した基準値を超える場合に当該粒状製品の大きさが不均一であると判断されるので、非常に大きな粒が1個発生した場合でも、また、所定の値をわずかに超える程度の異常粒が多数発生した場合でも、不均一と判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の粒状製品の均一性評価方法の一実施形態を示す。ベルト型造粒機の造粒ベルト1の上面に、粒状製品2は、概ね等間隔に配置されて粒を形成し、搬送される。粒状製品2は、造粒ベルト1の上方に設置されたカメラ3により撮像され、画像データが画像解析装置4へ送信される。
【0013】
図2は、画像解析装置4において実施される画像解析の手順を示す。ステップs0から手順を開始し、ステップs1(撮像)では、例えば画像キャプチャボード等を使用して1フレーム分の画像を入力する。入力された画像は、通常、1画素あたり8ビット(256階調)の濃淡画像データとして画像解析装置4のメモリに格納される。
ステップs2(二値化)では、入力された濃淡画像に対して所定の閾値を用いて二値化処理を行う。例えば、閾値未満の濃度値をもつ画素を暗(濃度値=0)、閾値以上の濃度値をもつ画素を明(濃度値=1)とする。本実施形態では暗領域が粒領域である。ここで用いる閾値としては、予め固定値を入力してもよいし、各種の閾値決定アルゴリズムを用いて動的に決定してもよい。
【0014】
ステップs3(ラベリング)では、二値化処理によって抽出された粒領域にラベリング処理を行う。ラベリングとは、二値画像中の連結する明領域または暗領域を1つの塊として取り扱い個々の連結領域にラベル(連番)を付与することである。本実施形態では暗領域が粒領域であるので、暗領域に対してラベリングを行う。
ステップs4(面積算出)では、ラベリングした各粒領域の画素数から面積を求める。
ステップs5(ノイズ除去)では、粒領域面積が予め設定した第1の面積閾値に満たない領域をノイズと判断して以後の処理対象から除外する。
【0015】
ステップs6(正常粒数カウント)では、粒領域面積が第1の面積閾値以上でかつ第2の面積閾値未満である領域を正常粒領域として抽出し、その数をカウントする。
ステップs7(正常粒総面積算出)では、ステップs6で抽出された正常粒領域の総面積を算出する。
ステップs8(異常粒数カウント)では、領域面積が第2の面積閾値以上であるラベルを異常粒領域として抽出し、その数をカウントする。
ステップs9(異常粒総面積算出)では、ステップs8で抽出された異常粒領域の総面積を算出する。
【0016】
ステップs10(均一性評価)では、正常粒数、正常粒総面積、異常粒数および異常粒総面積のそれぞれについて予め設定した基準値と比較し、正常粒数が基準値に満たない場合、正常粒総面積が基準値に満たない場合、異常粒数が基準値を超える場合または異常粒総面積が基準値を超える場合に、当該粒状製品の大きさが不均一であると判定する。
以上の処理を連続して実行した後、ステップs11のエンド状態に移行し、待機状態を維持し、予め設定した計測間隔(単位:ミリ秒)に基づいて次回の計測時刻に達した時点でステップs0へ移行する。
【0017】
図2のステップs2において、原画像中に照明むらなどに起因する濃淡むらが含まれる場合、二値化処理に先立って適当なシェーディング補正処理を行うと効果的な場合がある。シェーディング補正とは、例えば多数の画像の加算平均等により背景の濃淡むらのみの画像を作成しておき、毎回の計測時に入力された原画像から差し引くことにより濃淡むらを除去する手法であり、一般的な画像処理手法である。
【0018】
図2のステップs3において、粒領域の内部に空洞が生じる、あるいは粒と粒とが近接しているために画像上で擬似的に連結してしまう、等の画像処理上の問題が生じることがある。このような場合には画像の膨張・収縮処理を施すことにより空洞を埋めたり、擬似的に連結した粒領域を切り離したりすることができる。膨張・収縮とは、例えば、明画素の周囲8画素を強制的に明とする(明画素の膨張)などの処理であり、一般的な画像処理手法である。
【0019】
図3はカメラ3で撮像され画像解析装置4へ入力された原画像の一例およびその原画像を二値化した画像を示している。図3の例では、画素毎にその画素を中心として15画素×15画素の局所領域の平均値を求め、その値をその画素に対する閾値として二値化を行った。この方法では、画像の周囲7画素の領域では15画素×15画素の局所領域を得ることができない。このため画像の周囲7画素の領域は、二値化処理の後、無効領域として評価対象から除外する。図3の二値化画像では無効領域を黒で表示した。これ以降の図では無効領域は表示しない。ここで示した二値化方法は一例であり、対象とする画像の背景やコントラストに応じて、適当な二値化方法を選択することができる。
【0020】
次に、二値化処理によって抽出した粒領域にラベリング処理を行う。本実施形態では黒領域をラベリング対象として、全ての粒領域に連番を付与する。さらに、ラベリングした各粒領域の面積を求める。
【0021】
表1に、ノイズ除去工程以降で使用する第1の面積閾値、第2の面積閾値、正常粒数の基準値、正常粒総面積の基準値、異常粒数の基準値および異常粒総面積の基準値の例を示す。なお、基準値は、150画素×150画素の評価範囲に対するものである。
【0022】
【表1】

【0023】
本実施形態において、ノイズ除去工程では、上記の第1の面積閾値に満たない面積をもつ粒領域をノイズとして評価対象から除外する。
正常粒数カウント工程では、全粒領域のうち上記の第1の面積閾値以上で第2の面積閾値未満の面積をもつ粒領域を正常粒領域として抽出しその数をカウントする。正常粒総面積算出工程では、正常粒領域の面積の総和を求める。
異常粒数カウント工程では、上記第2の面積閾値以上の面積をもつ粒領域を異常粒領域として抽出しその数をカウントする。異常粒総面積算出工程では、異常粒領域の面積の総和を求める。
【0024】
均一性評価工程では、正常粒数、正常粒総面積、異常粒数および異常粒総面積のそれぞれについて上記の基準値と比較し、正常粒数が基準値に満たない場合、正常粒総面積が基準値に満たない場合、異常粒数が基準値を超える場合または異常粒総面積が基準値を超える場合に当該粒状製品の大きさが不均一であると判定する。判定結果は画像解析装置4のモニタ画面に表示してもよいし、必要に応じて外部機器でディジタル信号等を出力してもよい。
【0025】
図4から図8は、他の例における、二値化画像および正常粒数、正常粒総面積、異常粒数、異常粒総面積を示したものである。
図4の例は、全ての項目について正常と判定される例であり、図5〜図8の例は、いずれかの項目を満たさないため、不均一であると判定された例である。図5は正常粒数が65個であり、表1に示した正常粒数基準値70個に満たない。図6は正常粒数は72個であり基準値の70個を満たしているが、個々の粒の面積が全体的に小さいため正常粒総面積の値が3493画素となっており、正常粒総面積の基準値5000画素を満たしていない。図7はいくつかの粒が連結したような異常粒がいくつか見られ、異常粒数が7個となっており、異常粒数の基準値5個を超えている。図8は非常に多数の粒が連結したような領域が1箇所見られる。このため、異常粒数は1個であり基準値5個を超えてはいないが、異常粒総面積が8717画素となっており、異常粒総面積の基準値3500画素を超えている。また同時に正常粒数がこれに対応して減少している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の粒状製品の均一性評価方法の一実施形態を示す図である。
【図2】画像解析装置4における解析手順を示す図である。
【図3】原画像とそれを二値化した画像の例を示す図である。
【図4】正常状態と判定される粒状態を示す画像の例およびその判定結果を示す図である。
【図5】正常粒数が基準値を満たさないために不均一状態と判定される画像およびその判定結果を示す図である。
【図6】正常粒総面積が基準値を満たさないために不均一状態と判定される画像およびその判定結果を示す図である。
【図7】異常粒数が基準値を超えるために不均一状態と判定される画像およびその判定結果を示す図である。
【図8】異常粒総面積が基準値を超えるために不均一状態と判定される画像およびその判定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 造粒ベルト
2 粒状製品
3 カメラ
4 画像解析装置




【特許請求の範囲】
【請求項1】
概ね一定の大きさの粒状製品が概ね等間隔に配置されている粒状製品の大きさの均一性を評価する方法であって、
(1)粒状製品を撮像して濃淡画像を生成する撮像工程と、
(2)濃淡画像を所定の閾値により二値化する二値化工程と、
(3)二値化処理によって抽出された粒領域にラベリング処理を行うラベリング工程と、
(4)ラベリングされた各粒領域の面積を求める面積算出工程と、
(5)予め設定した第1の面積閾値に満たない面積をもつ粒領域をノイズとして評価対象から除外するノイズ除去工程と、
(6)第1の面積閾値以上で第2の面積閾値未満の面積をもつ粒領域を正常粒領域として抽出し、その数をカウントする正常粒数カウント工程と、
(7)正常粒領域の面積の総和を求める正常粒総面積算出工程と、
(8)第2の面積閾値以上の面積をもつ粒領域を異常粒領域として抽出し、その数をカウントする異常粒数カウント工程と、
(9)異常粒領域の面積の総和を求める異常粒総面積算出工程と、
(10)正常粒数、正常粒総面積、異常粒数および異常粒総面積のそれぞれについて予め設定した基準値と比較し、正常粒数が基準値に満たない場合、正常粒総面積が基準値に満たない場合、異常粒数が基準値を超える場合または異常粒総面積が基準値を超える場合に、当該粒状製品の大きさが不均一であると判定する均一性評価工程と、を備えることを特徴とする粒状製品の均一性の評価方法。





【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−17163(P2007−17163A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195827(P2005−195827)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】