説明

粘着シート及び電子部品の製造方法

【課題】ダイシングテープの粘着剤表面の塗工性を向上した粘着シート、及び、この粘着シートを用いた電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、基材フィルムと、基材フィルムの一方の面に積層した粘着剤層と、粘着剤層の露出面に積層されたダイアタッチフィルムを有する粘着シートである。粘着剤層の粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体、多官能(メタ)アクリレート、光重合開始剤、及び、イソシアネートを含有したものである。(メタ)アクリル酸エステル重合体、多官能(メタ)アクリレート、及び、光重合開始剤の各々が水酸基を有する。イソシアネートが3個以上のイソシアネート基を有する。イソシアネートのイソシアネート基mol量が、「(メタ)アクリル酸エステル重合体、多官能(メタ)アクリレート、及び、光重合開始剤の全ての水酸基mol量」の0.8倍乃至1.2倍である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、及び、粘着シートを用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC等の電子部品の製造方法として、シリコン、ガリウム−ヒ素等の半導体ウエハや絶縁物基板上に回路パターンを形成して電子部品集合体とし、この電子部品集合体を粘着シートに貼り付け、リングフレームに固定してから個々のチップにダイシングする。その後、必要に応じて粘着シートを引き延ばし、ダイシングされたチップをピックアップし、ピックアップしたチップに接着剤を塗布してリードフレーム等に固定するという方法が広く行われている。
【0003】
ここで、チップに接着剤を塗布する工程を省略するために、ダイシング用の粘着シートと、チップをリードフレーム等に固定する接着剤の機能を兼ね備えた粘着シートであるダイアタッチフィルム一体型シートを用いる方法が提案されている。ダイアタッチフィルム一体型シートは、粘着シートとダイアタッチフィルムを一体化した粘着シートである(特許文献1〜3等参照)。
【0004】
電子部品集合体をダイシングする際に用いられる粘着シートの粘着剤として、(メタ)アクリル酸エステルと水酸基含有重合性単量体の共重合体に、不飽和結合を2個以上有する放射線重合性化合物を使用する方法が知られている(特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平2−248064号公報
【特許文献2】特開平8−053655号公報
【特許文献3】特開2004−186429号公報
【特許文献4】特許第3410202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダイシングテープの粘着剤成分が相分離すると、粘着剤表面に塗工ムラが発生し、これがダイアタッチフィルムへ転写されるなど、品質が不安定になる。
【0007】
本発明は、ダイシングテープの粘着剤表面の塗工性を向上させた粘着シート、及び粘着シートを用いた電子部品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材フィルムと、基材フィルムの一方の面に積層した粘着剤層と、粘着剤層の露出面に積層されたダイアタッチフィルムを備え、粘着剤層を形成する粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体、多官能(メタ)アクリレート、光重合開始剤、及び、イソシアネートを含有したものであり、(メタ)アクリル酸エステル重合体、多官能(メタ)アクリレート、及び、光重合開始剤が水酸基を有するものであり、イソシアネートが3個以上のイソシアネート基を有するものであり、イソシアネートのイソシアネート基mol量が、「(メタ)アクリル酸エステル重合体、多官能(メタ)アクリレート、及び、光重合開始剤の全ての水酸基mol量」の0.8倍乃至1.2倍である粘着シートである。
【0009】
多官能(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリロイル基を3個以上有するものが好ましく、光重合開始剤は、水酸基を2個以上有するものが好ましい。
【0010】
上述の粘着剤にあっては、(メタ)アクリル酸エステル重合体の配合比が100質量部、多官能(メタ)アクリレートの配合比が20質量部以上200質量部以下、光重合開始剤の配合比が0.05質量部以上20質量部以下であるのが好ましい。
が好ましい。
【0011】
他の発明は、上述の粘着シートのうちのいずれかの粘着シートのダイアタッチフィルム表面にシリコンウエハを貼り合わせる貼合工程と、貼合工程後のシリコンウエハのダイシングを行うダイシング工程と、ダイシング工程後にシリコンウエハ及びダイアタッチフィルムとを併せて粘着剤層からピックアップするピックアップ工程を有する電子部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ダイシングテープの粘着剤成分が相分離を抑制することにより、粘着剤表面の塗工性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の粘着シート、及び、粘着シートを用いた電子部品の製造方法を模式的に示した断面図であり、貼合工程後の状態を示した図である。
【図2】図1の貼合工程後に行われたダイシング工程後の状態を示した図である。
【図3】図2のダイシング工程後に行われるピックアップ工程時の状態を示した図である。
【図4】ピックアップ工程後の状態を示した図である。
【符号の説明】
【0014】
1 粘着シート
2 基材フィルム
3 粘着剤層
4 ダイアタッチフィルム
5 シリコンウエハ
51 ダイチップ
6 リングフレーム
7 ダイシングブレード
71 切り込み
8 リードフレーム
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
<用語の説明>
本明細書において、「部」及び「%」は特に記載がない限り質量基準であり、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びメタアクリロイル基の総称であり、さらに、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0017】
<実施形態の概要>
図1乃至図4は、本発明の粘着シートの使用方法を模式的に示した断面図である。
本実施形態の粘着シートは、図1に示すように、基材フィルム2と、基材フィルム2の一方の面に積層した粘着剤層3と、粘着剤層3の露出面に積層されたダイアタッチフィルム4を備えた粘着シート1である。
【0018】
<粘着剤>
粘着剤層3を形成する粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体、多官能(メタ)アクリレート、光重合開始剤、及び、イソシアネートを含有したものである。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合して得られる重合体である。(メタ)アクリル酸エステル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体以外のビニル化合物単量体を含んでもよい。(メタ)アクリル酸エステル重合体は、水酸基を有する必要がある。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステルの単量体としては、ブチル(メタ)アクリレート、2−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、及びエトキシ−n−プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがある。これら以外のビニル化合物単量体としては、水酸基及びカルボキシル基からなる官能基群の1種以上を有するものを好適に用いることができ、水酸基を有するビニル化合物単量体としては、ビニルアルコールがあり、カルボキシル基を有するビニル化合物単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリルアミドN−グリコール酸、及び、ケイ皮酸がある。
【0021】
多官能(メタ)アクリレートは、水酸基と、少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有するものである。水酸基と2個以上の(メタ)アクリレート基を含有する多官能(メタ)アクリレートとしては、グリセロール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ヒドロキシプロピル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ビス(ペンタエリスリトール)テトラアクリレート、テトラメチロールメタン−トリアクリレートがある。多官能(メタ)アクリレートの(メタ)アクリレート基の数は、3個以上が好ましく、5個以上であることがより好ましい。(メタ)アクリレート基を3個以上有することで、放射線照射後にダイアタッチフィルム4と粘着剤層3との剥離が容易になり、ダイチップ51のピックアップ性を向上させることができる。(メタ)アクリレート基の数の上限は特に限定されない。
【0022】
多官能(メタ)アクリレートの配合比は20質量部以上200質量部以下が好ましく、特に好ましくは60質量部以上100質量部以下である。
【0023】
多官能(メタ)アクリレートの配合量は、少な過ぎると後述するピックアップ工程での粘着シートとダイアタッチフィルムとの剥離性が低下する傾向にあり、多過ぎるとダイシング工程時に粘着剤の掻き上げが生じ、掻き上げられた粘着剤がピックアップ工程での精度低下を引き起こす傾向にある。
【0024】
光重合開始剤は、少なくとも1個の水酸基を有するものである。1個の水酸基を有する光重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−メチルー1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製Darocur1173(登録商標))、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・ジャパン社製Irgacure184(登録商標))があり、2個以上の水酸基を有する光重合開始剤として、1−[4−(ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製Irgacure2959(登録商標))、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製Irgacure127(登録商標))がある。光重合開始剤の水酸基の数は、2個以上が好ましい。2個以上有することで、放射線照射後に開裂した光開始剤が(メタ)アクリル酸エステル単量体のアクリロイル基の反応系に取り込むことができ、ダイアタッチフィルム4へのマイグレーションが抑制できるためである。水酸基の数の上限は特に限定されない。
【0025】
光重合開始剤の配合量は、少な過ぎるとピックアップ工程での粘着シートとダイアタッチフィルムとの剥離性が低下する傾向にあり、多過ぎるとピックアップ工程時にピンの突き上げにより粘着剤が割れ、被着体への糊残りを引き起こす傾向にあるため、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して0.05質量部以上20質量部以下が好ましく、特に好ましくは0.5質量部以上5質量部以下である。
【0026】
イソシアネートは、水酸基を有する必要があり、3個以上のイソシアネート基を有することが必要である。係るイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及び、脂肪族ジイソシアネートがあり、芳香族イソシアネート又は脂環族イソシアネートが好ましい。イソシアネート化合物の形態としては単量体、二量体、及び三量体があり、三量体が好ましい。
【0027】
芳香族ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、及び、キシリレンジイソシアネートがあり、脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)がある。
【0028】
脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートがある。
【0029】
ジイソシアネートにあっては、トリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体等も好適に用いることができる。
【0030】
イソシアネートの配合量は「(メタ)アクリル酸エステル重合体、多官能(メタ)アクリレート、及び、光重合開始剤の全ての配合比」に応じて決定されず、mol量に基づいて決定される。イソシアネート基mol量が「(メタ)アクリル酸エステル重合体、多官能(メタ)アクリレート、及び、光重合開始剤の全ての水酸基mol量」に比べてあまりに少ないと未反応の水酸基を有する成分がダイアタッチフィルムへ移行し、ダイアタッチフィルムの特性低下を引き起こす場合があり、あまりに多いと、テープとして保管した時に経時変化が生じ、品質安定性に問題が発生する場合があるため、イソシアネートのイソシアネート基mol量は、「(メタ)アクリル酸エステル重合体、多官能(メタ)アクリレート、及び、光重合開始剤の全ての水酸基mol量」の0.8倍乃至1.2倍である。
【0031】
粘着剤には、発明の効果に悪影響を与えない範囲で、粘着付与剤、剥離付与剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、又は、光安定剤等の添加剤を添加することができる。
【0032】
粘着剤層の厚さの下限は、あまりに薄いと、粘着力の低下によってダイシング時のチップ保持性が低下する傾向にあり、リングフレームと粘着シートとの間の剥離が生じなくなる傾向にあるので、好ましくは1μm、より好ましくは2μmである。粘着剤層の厚さの上限は、あまりに厚いと、粘着力が高くなり過ぎ、ピックアップ不良が発生する傾向にあるので、好ましくは100μm、より好ましく40μmである。
【0033】
<粘着シート>
粘着シート1は、図1に示すように、基材フィルム2と、基材フィルム2上に塗布された上述の粘着剤で形成された粘着剤層3と、粘着剤層3に積層されたダイアタッチフィルム4で形成されたものである。
【0034】
基材フィルム2の素材は、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸−アクリル酸エステルフィルム、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、及び、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やエチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を金属イオンで架橋してなるアイオノマ樹脂の単体又はこれらの樹脂の混合物、共重合体があり、さらに、これら素材の多層体がある。
【0035】
基材フィルム2の素材は、上述の樹脂のうち、アイオノマ樹脂を用いることが好ましい。アイオノマ樹脂の中でも、ヒゲ状の切削屑発生を抑制できる「エチレン単位、(メタ)アクリル酸単位、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を有する共重合体をNa、K、Zn2+等の金属イオンで架橋したアイオノマ樹脂」がより好ましい。
【0036】
基材フィルム2には、基材フィルム2のダイアタッチフィルム4接触面又は非接触面の双方又は両方に帯電防止処理を施こすか、基材フィルムを構成する合成樹脂に帯電防止剤を配合することにより、ダイアタッチフィルム4の剥離時における帯電を防止することができる。
【0037】
帯電防止剤としては、四級アミン塩単量体がある。四級アミン塩単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、p−ジメチルアミノスチレン四級塩化物、及びp−ジエチルアミノスチレン四級塩化物があり、これらのうち、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級塩化物が好ましい。
【0038】
基材フィルム2には、基材フィルム2のダイアタッチフィルム4非接触面に滑剤を積層するか、基材フィルムを構成する合成樹脂に滑剤を配合することにより、ダイシング工程後のエキスパンド性を向上させることができる。
【0039】
滑剤は、粘着シート1とエキスパンド装置(不図示)の摩擦係数を低下させる物質であり、例えばシリコーン樹脂や(変性)シリコーン油等のシリコーン化合物、フッ素樹脂、六方晶ボロンナイトライド、カーボンブラック、又は、二硫化モリブデンの単体又は混合体があり、好ましくは、シリコーン化合物又はフッ素樹脂が好ましい。シリコーン化合物の中でも、シリコーンマクロモノマ単位を有する共重合体が、好ましい。シリコーンマクロモノマ単位を有する共重合体を用いると、帯電防止層との相溶性が良く帯電防止性とエキスパンド性のバランスを図ることができる。
【0040】
基材フィルム2は、粘着剤層3の積層側とは反対の面を、平均表面粗さ(Ra)0.3μm以上1.5μm以下のエンボス面とするのが好ましい。エンボス面にすることにより、エキスパンド工程で基材フィルム2を容易に拡張することができる。
【0041】
基材フィルム2の厚さは、30μm以上300μm以下が好ましく、さらに好ましくは60μm以上200μm以下である。
【0042】
基材フィルム2上に粘着剤層3を形成する方法は、例えばグラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、ナイフコーター、又はロールコーター等のコーターで基材フィルム2上に粘着剤を直接塗布する方法がある。凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、又はスクリーン印刷等で基材フィルム2上に粘着剤を印刷してもよい。
【0043】
<ダイアタッチフィルム>
ダイアタッチフィルム4は、粘着剤や接着剤をフィルム状に成形した粘着性のシートである。ダイアタッチフィルム4の材質は、例えば、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、ポリスルホン、ポリアミド酸、シリコーン、フェノール樹脂、ゴムポリマー、フッ素ゴムポリマー、又は、フッ素樹脂の単体、これらの混合体、これらの共重合体、又は、これらの積層体があり、これらのうち、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂が好ましい。さらに、これら合成樹脂に、光重合開始剤、帯電防止剤、架橋促進剤等の添加物を混合するのが好ましい。
【0044】
<電子部品の製造方法>
他の発明である電子部品の製造方法について、図を参照しつつ、詳細に説明する。
この発明は、上述の粘着シートのうちのいずれかの粘着シート1のダイアタッチフィルム4の表面にシリコンウエハ5を貼り合わせる貼合工程と、貼合工程後のシリコンウエハ5のダイシングを行うダイシング工程と、ダイシング工程後にシリコンウエハ5及びダイアタッチフィルム4とを併せて粘着剤層3からピックアップするピックアップ工程を有する電子部品の製造方法である。
【0045】
<貼合工程>
貼合工程は、上述の粘着シートのうちのいずれかの粘着シート1のダイアタッチフィルム4の表面にシリコンウエハ5を貼り合わせる工程であり、具体的には、シリコンウエハ5を粘着シート1に貼付けて固定し、粘着シート1をリングフレーム6に固定する工程である。図1に、貼合工程後の状態を示す。
【0046】
<ダイシング工程>
ダイシング工程は、貼合工程後のシリコンウエハ5のダイシングを行うであり、ダイシング工程後の状態を図2に示す。ダイシングにあっては、ダイシングブレード7でシリコンウエハ5をダイシングする。図2の符号71は、切れ込みである。
【0047】
<ピックアップ工程>
ピックアップ工程は、ダイシング工程後にシリコンウエハ5及びダイアタッチフィルム4とを併せて粘着剤層3からピックアップする工程であり、ピックアップ工程の際の状態を図3に示す。また、図4に、ピックアップ工程後のダイチップ51の状態を示す。ピックアップ工程は、具体的には、次の工程である。
【0048】
粘着シート1の基材フィルム2側から紫外線又は放射線の一方又は双方を照射し、次いで、粘着シート1を放射状に拡大してダイチップ51間隔を広げた後、ダイチップ51をニードル等(不図示)で突き上げる。その後、真空コレット又はエアピンセット等(不図示)でダイチップ51を吸着し、粘着シート1とダイアタッチフィルム4との間で剥離し、ダイアタッチフィルム4が付着したダイチップ51をピックアップする。
【0049】
ピックアップされたダイチップ51は、ダイアタッチフィルム4と共にリードフレーム8に搭載される。この搭載にあっては、ダイアタッチフィルム4の粘着力により、安定的に固定される。搭載後、ダイアタッチフィルム4を加熱し、ダイチップ51とリードフレーム8とを加熱接着する。最後に、リードフレーム8に搭載したダイチップ51を樹脂(不図示)でモールドする。
【0050】
上述の工程を有する製造方法を行っても、粘着剤の塗工性が向上したため、粘着剤成分のダイアタッチフィルム4への転写が抑制され、これにより、チップ保持性、ピックアップ性、汚染防止性の全体の優れた製造方法を得ることができた。
【0051】
図4では、リードフレーム8を示したが、リードフレーム8の代わりに回路パターンを形成した回路基板であってもよい。
【0052】
紫外線又は放射線の一方又は双方を照射することは、粘着剤層3を構成する化合物分子内のビニル基を三次元網状化させて、粘着剤層3の粘着力を低下させるためである。これにより、照射前には、高い初期粘着力を有する粘着剤層3によって優れたチップ保持性を与え、照射によって粘着剤層3の粘着力を低下させてダイアタッチフィルム4と粘着剤層3との間の剥離が容易にして、ダイチップ51のピックアップ性を与えている。
【0053】
紫外線の光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプがあり、放射線の光源としては、電子線、α線、β線、γ線がある。
【0054】
本発明に係る粘着シートによれば、ダイアタッチフィルム4に対する粘着剤成分の移行マが少ないため、図4に示すようにダイアタッチフィルム4が付着したダイチップ51をリードフレーム8上にマウントさせ加温することによって接着しても、汚染による接着不良の発生が少ない。
【0055】
<シリコンウエハ>
本発明の電子部品の製造方法は、シリコンウエハを対象としたが、他のウエハ、例えガリウムナイトライドウエハ、炭化ケイ素ウエハ、サファイアウエハを用いてもよい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を、表1を用いて説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。表1は粘着剤の配合及びその評価をまとめたものである。
【0057】
【表1】



【0058】
表1中に記載した化合物は、以下のものである。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)A1:2−エチルヘキシルアクリレート95%、2−ヒドロキシエチルアクリレート5%の共重合体からなり、溶液重合により得られる市販品(綜研化学社製、製品名SKダイン1496)。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)A2:2−エチルヘキシルアクリレート95%、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート5%の共重合体からなり、溶液重合により得られる自社重合品。
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)A3:2−エチルヘキシルアクリレート100%からなり、溶液重合により得られる自社重合品。
多官能アクリレート(B)B1:モノヒドロキシジペンタエリスリトールペンタアクリレート(新中村化学社製、製品名NK−A−9550)
多官能アクリレート(B)B2:モノヒドロキシペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学社製、製品名NKエステル−A−TMM−3LM−N)。
多官能アクリレート(B)B3:モノヒドロキシジグリセロール(メタ)アクリレート
多官能アクリレート(B)B4:モノヒドロキシジペンタエリスリトールペンタメタクリレート
多官能アクリレート(B)B5:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学社製、製品名NKエステルA−DPH)
光重合開始剤(C)C1:2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン社製、製品名Irgacure127)
光重合開始剤(C)C2:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・ジャパン社製、製品名Irgacure184)
光重合開始剤(C)C3:ベンジルジメチルケタール(チバ・ジャパン社製、製品名Irgacure651)
イソシアネート(D):トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(日本ポリウレタン社製、製品名コロネートL−45E)
ウレタンアクリレートオリゴマ(E):ヘキサメチレンジイソシアネート(脂肪族ジイソシアネート)にジペタエリスリトールペンタアクリレートを反応させてなる末端アクリレートオリゴマであって、平均分子量(Mw)が4,900でアクリレート官能基数10個のウレタンアクリレートオリゴマの市販品(根上工業社製、製品名UN−904M)。
【0059】
各実施例及び比較例に対応する粘着剤の主な成分とその配合量は、表1に示すとおりである。各粘着剤の調製にあたっては、これらの表1に示した成分に加えたものである。例えば、実施例1のイソシアネートの配合量は、表1に示すように、(A)+(B)+(C)の−OH基mol量に対して(D)の−NCO基mol量が1倍になるようにしたものである。
【0060】
次いで、得られた粘着剤をPETセパレーターフィルム上に塗布し、乾燥後の粘着剤層の厚みが10μmとなるように塗工し、100μmの基材フィルムに積層し粘着シートを得た。30μm厚さのダイアタッチフィルムを、粘着シートの粘着剤層上にラミネートして粘着シートとした。
【0061】
基材フィルムは、エチレン−メタアクリル酸−メタアクリル酸アルキルエステル共重合体のZn塩を主体とするアイオノマ樹脂からなり、メルトフローレート(MFR)が1.5g/10分(JIS K7210、210℃)、融点が96℃、Zn2+イオンを含有するフィルム(三井・デュポンポリケミカル社製、製品名ハイミラン1650)を用いた。
【0062】
2.ダイアタッチフィルムとして、以下のものを揃えた。
ダイアタッチフィルム:厚さ30μmのフィルムであり、その組成は、エポキシ接着剤である。
【0063】
3.電子部品集合体として、以下のものを揃えた。
電子部品の製造には、ダミーの回路パターンを形成した直径8インチ×厚さ0.1mmのシリコンウエハを用いた。
【0064】
<ダイシング工程>
粘着シートへの切り込み量は30μmとした。ダイシングは10mm×10mmのチップサイズで行った。
ダイシング装置はDISCO社製 DAD341を用いた。ダイシングブレードはDISCO社製NBC−ZH205O−27HEEEを用いた。
ダイシングブレード形状:外径55.56mm、刃幅35μm、内径19.05mm。
ダイシングブレード回転数:40,000rpm。
ダイシングブレード送り速度:80mm/秒。
切削水温度:25℃。
切削水量 :1.0L/分。
【0065】
ピックアップはニードルピンで突き上げた後、真空コレットでチップを吸着し、粘着シートとダイアタッチフィルムとの間で剥離し、ダイアタッチフィルムが付着したチップを得た。ピックアップ装置はキャノンマシナリー社製CAP−300ロを用いた。
ニードルピン形状:250μmR
ニードルピンの数:5
ニードルピン突き上げ高さ:0.5mm
エキスパンド量 :8mm
【0066】
<実験結果の評価>
1.塗工性:1mあたりの粘着シート表面の塗工スジについて目視で評価した。
◎(優):長さ10mm以上の塗工スジが無い
○(良):長さ10mm以上の塗工スジが1〜5か所観測された
×(不可):長さ10mm以上の塗工スジが6か所以上観測された
【0067】
2.チップ保持性:シリコンウエハを前記条件にてダイシングした際に、チップが粘着シートに保持されている数を評価した。
◎(優):粘着シートに保持されているチップが95%以上
○(良):粘着シートに保持されているチップが90%以上95%未満
×(不可):粘着シートに保持されているチップが90%未満
【0068】
3.ピックアップ性:シリコンウエハを前記条件にてダイシング後、図3に示すように、ダイアタッチフィルムが付着した状態でチップをピックアップできた数を評価した。
◎(優):95%以上のチップがピックアップできた
○(良):80%以上95%未満のチップがピックアップできた
×(不可):80%未満のチップがピックアップできた
【0069】
4.汚染防止性:粘着シートの粘着剤面をダイアタッチフィルムに貼り付けて、1週間保管後、高圧水銀灯で紫外線を500mJ/cm照射した後、1週間保管後、又は4週間保管後に粘着シートを剥離した。剥離したダイアタッチフィルムのGC−MS分析を行い、光重合性開始剤由来のピークを確認した。
◎(優):紫外線を照射した後、1週間保管後、及び4週間保管後に粘着シートを剥離したダイアタッチフィルムから光重合性開始剤由来のピークなし
○(良):紫外線を照射した後、1週間保管後に粘着シートを剥離したダイアタッチフィルムから光重合性開始剤由来のピークなし。及び、紫外線を照射した後、4週間保管後に粘着シートを剥離したダイアタッチフィルムから光重合性開始剤由来のピークあり。
×(不可):紫外線を照射した後、1週間保管後及び4週間保管後の双方に粘着シートを剥離したダイアタッチフィルムから光重合性開始剤由来のピークあり
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に用いる粘着シートは、ダイシング時のチップ保持に優れ、ピックアップ作業時にチップの剥離が容易であり、微少な糊残りによる汚染防止性も低いという効果を奏するため、ダイシング後にチップ裏面にダイアタッチフィルム層を付けた状態でピックアップし、リードフレーム等にマウントして接着させる電子部品の製造方法に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、基材フィルムの一方の面に積層した粘着剤層と、粘着剤層の露出面に積層されたダイアタッチフィルムを備え、
粘着剤層を形成する粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体、多官能(メタ)アクリレート、光重合開始剤、及び、イソシアネートを含有したものであり、
(メタ)アクリル酸エステル重合体、多官能(メタ)アクリレート、及び、光重合開始剤のそれぞれが水酸基を有するものであり、
イソシアネートが3個以上のイソシアネート基を有するものであり、
イソシアネートのイソシアネート基mol量が、「(メタ)アクリル酸エステル重合体、多官能(メタ)アクリレート、及び、光重合開始剤の全ての水酸基mol量」の0.8倍乃至1.2倍である粘着シート。
【請求項2】
多官能(メタ)アクリレートが、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
光重合開始剤が、水酸基を2個以上有する請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項記載の粘着剤における(メタ)アクリル酸エステル重合体の配合比が100質量部、多官能(メタ)アクリレートの配合比が20質量部以上200質量部以下、光重合開始剤の配合比が0.05質量部以上20質量部以下である粘着シート。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項記載の粘着シートのダイアタッチフィルム表面にシリコンウエハを貼り合わせる貼合工程と、貼合工程後のシリコンウエハのダイシングを行うダイシング工程と、ダイシング工程後にシリコンウエハ及びダイアタッチフィルムとを併せて粘着剤層からピックアップするピックアップ工程を有する電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−225706(P2011−225706A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96252(P2010−96252)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】