説明

粘着性コーティング組成物

A)ビスフェノール−A−型および/またはビスフェノール−F−型をベースとする少なくとも1種のエポキシ樹脂(固形分100%)100重量部と、B)2〜600nmの範囲の平均半径を有するナノ粒子0.1〜200重量部と、C)ジシアンジアミド、ブロックトイソシアネートおよびルイス酸からなる群から選択される、またはフェノール樹脂、カルボン酸、無水物およびルイス酸からなる群から選択される、少なくとも1種の硬化剤(固形分100%)0〜25重量部と、D)少なくとも1種の添加剤0.1〜10重量部と、E)水または少なくとも1種の有機溶剤50〜200重量部とを含み、コーティングの優れた結合強度、耐腐食性および電気絶縁性と共に、高い再軟化温度を保障する電気鋼板コアを製造するための粘着性コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器に用いられる電気鋼板コアを製造するための粘着性コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
焼付エナメルとも称される粘着性コーティング組成物(高温での焼成を必要とするエナメルまたはコーティング組成物)が、個別の電気鋼板を一緒に結合して、変圧器、発電機およびモータなどの電気機器に用いられる中実コアを形成し、ならびに、コアにおける金属板の間の電気絶縁性を提供するために用いられる。コートされた金属板は、ホットプレスにより一緒に結合される。
【0003】
通常、焼付エナメルの使用は、比較的低い再軟化温度のために限定的である。コーティングの高い再軟化温度を提供し、および従って電気機器の分野において幅広い用途範囲を提供する新しい製品の開発が望まれている。さらに、コーティング特性における以下の向上が望まれている:より高い表面絶縁抵抗、機械的応力に対する耐性および結合強度。
【0004】
米国特許第5,500,461号明細書および米国特許第5,500,462号明細書は、微粉化ジシアンジアミドおよび表面活性化剤を含有する安定な水性エポキシ樹脂分散体に関する。これらの分散体は、ほとんどの多様な種類の基材のコーティングに好適である。これらの組成物は、一般に、電気モータおよび変圧器における使用に必要とされる高耐腐食性および高再軟化温度などの特定の特性が高レベルで要求される電気鋼板については有用ではない。
【0005】
特開平11−193475号公報および特開平11−193476号公報には、潜伏性成分としてのジシアンジアミドと共に架橋剤として特定のレゾール型フェノール樹脂を含有する水性エポキシ樹脂系をベースとする、板金属スタックを製造するための電気鋼板の製造手法が記載されている。フェノール樹脂を伴うエポキシの重縮合により架橋が実施される。コーティングは、高温へ曝露された際の高度な接着および耐腐食性を提供することを意図している。
【0006】
特開平07−33696号公報、特開2000−345360号公報およびEP−A923 088号明細書は、電気鋼板をコーティングするためのエナメルに関し、ここで、エナメルがシリカまたはアルミナコロイド粒子などの粒子を含有している。この組成物により、良好な耐引掻性、不粘着性、耐薬品性および耐腐食性および高表面絶縁性などの特性を有するコーティングが得られる。しかしながら、このようなコーティングは結合能を有せず、中実コアを形成するための追加の結合手段(溶接、クランピング、インターロック、アルミニウムダイカストまたはリベット打ち)が必要とされる。
【0007】
国際公開第00/54286号パンフレットにおいては、部分的な放電抵抗および、コートされたワイヤの柔軟性を増加させるために、金属ワイヤのコーティングのためのコーティング組成物において反応性粒子を用いることが記載されている。反応性粒子はエレメント−酸素ネットワークから組成されており、その表面上に反応性官能基がネットワークの酸素を介して結合されている。これらの場合には、結合強度の要求条件がコアにおける金属ワイヤの電気負荷ほど厳しくなく、むしろ、金属板のものより低い。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コーティングの優れた結合強度、耐腐食性および電気絶縁性と共に、高い再軟化温度を保障する、電気鋼板コアを製造するための粘着性コーティング組成物を提供し、この組成物は、
A)ビスフェノール−A−型および/またはビスフェノール−F−型をベースとする少なくとも1種のエポキシ樹脂100重量部(固形分100%)と、
B)2〜600nmの範囲の平均半径を有するナノ粒子0.1〜200重量部と、
C)ジシアンジアミドおよび/または少なくとも1種のブロックトイソシアネートまたは少なくとも1種のフェノール樹脂、カルボン酸および/または無水物および/またはルイス酸0〜25重量部(固形分100%)と、
D)少なくとも1種の添加剤0.1〜10重量部と、
E)水または少なくとも1種の有機溶剤50〜200重量部と
を含む。
【0009】
本発明による組成物は、モータ、発電機または変圧器などの電気機器に用いられたときに、コーティングの向上した再軟化温度を提供すると共に、電圧変動に対して曝された場合にも電気絶縁性を提供することにより、前記機器の長い耐用寿命を許容する電気鋼板コアを製造することを可能とする。コートされた鋼板の、良好な耐腐食性、優れた結合強度および増強された穿孔可能性に対する要求条件もまた満たされている。本発明による組成物を用いることにより、圧力加重下でのコーティングの圧縮は小さく、および機械的応力に対する高い耐性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明による組成物は、水性または溶剤型コーティング組成物として塗布することが可能である。
【0011】
水性組成物に関して、成分A)〜E)に追加して、少なくとも1種の流動化剤が成分F)として0.1〜120重量部(固形分100%)の量で用いられる。
【0012】
溶剤型組成物に関して、成分A)〜E)に追加して、少なくとも1種の変性フェノールノボラック樹脂が成分G)として1〜20重量部(固形分100%)の量で用いられる。
【0013】
成分A)として、ビスフェノールA型および/またはビスフェノールF型をベースとするエポキシ樹脂の1種以上が用いられる。組成物A)〜E)は、エポキシ樹脂の固形分の100重量部と関連している。
【0014】
エポキシ樹脂の数平均分子量Mnは、約350〜50,000であり、エポキシ換算重量は約200〜60,000g/equ(グラム/当量)である。
【0015】
本発明による溶剤型組成物に関して、エポキシ樹脂の数平均分子量Mnは約3000〜4000であることが好ましく、エポキシ換算重量が約1500〜3000g/equであることが好ましい。
【0016】
ビスフェノール−A−型および/またはビスフェノール−F−型をベースとするエポキシ樹脂の製造は専門文献から公知である。ビスフェノール−A−型エポキシ樹脂は、ビスフェノール−Aおよびエピクロロヒドリンの縮合物であり、ビスフェノール−F−型エポキシ樹脂は、ビスフェノール−Fおよびエピクロロヒドリンの縮合物である。例えば、ビスフェノール−Aは、酸−触媒されたアセトンとフェノールの縮合により得られる。反応は、クロロヒドリン中間体化学生成物(例えばエピクロロヒドリン)を介して進行し、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル(DGEBA)が得られる。まだ存在しているDGEBAは、ビスフェノール−Aと混合されたときに、高分子量直鎖ポリエーテルにさらに反応することができる。より高分子量のエポキシ樹脂はまた、「taffy」(一工程法を意味する)として専門家に公知の一工程法の手段により合成することができる。
【0017】
本発明による水性組成物に関して、成分A)のエポキシ樹脂は好ましくは水性分散体として用いられる。エポキシ樹脂は、40〜70重量%の量で水性分散体において用いられる。
【0018】
成分A)のエポキシ樹脂はまた、例えば、エポキシノボラック樹脂などの自己架橋性エポキシ樹脂、ならびに公知のエポキシ混成樹脂(例えばウレタン−変性エポキシ樹脂、アクリル−変性エポキシ樹脂およびエポキシエステル)の少なくとも1種であることができる。
【0019】
フェノールノボラック樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル、ポリオレフィン、フッ素樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などの上述のエポキシ樹脂以外のバインダが、本発明による組成物において追加的に有用である。本発明による水性組成物に関して、追加のバインダは、水性組成物として、組成物A)〜D)に比して20重量%未満の量で用いられることが好ましい。
【0020】
本発明による溶剤系組成物において追加的に用いられる、成分G)の変性フェノールノボラックは、多官能エポキシ化フェノールノボラックであり、および約160〜180g/equのエポキシ換算重量を有する。エポキシ官能価は、2.0〜2.5である。この成分G)は、成分A)〜E)に追加して、1〜20重量部、好ましくは、2〜12重量部、特に好ましくは、3〜7重量部(固形分100%)の量で用いられる。
【0021】
成分B)として、エレメント−酸素ネットワークをベースとする反応性粒子であることができるナノ粒子が用いられ、ここで、エレメントは、シリコン、アルミニウム、亜鉛、錫、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属、ランタニドおよびアクチニドからなる群から選択され、特に、チタン、セリウムおよび/またはジルコニウムを含む系列からなる群から選択される。表面反応性官能基R1および非反応性または部分反応性官能基R2およびR3が、反応性粒子の表面に存在する酸素ネットワークによって結合され、ここで、R1は、98重量%以下、好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下の量であり、R2およびR3は、0〜97重量%、好ましくは0〜40、特に好ましくは0〜10重量%の量であり、ここでR1は、R4含有金属酸エステル(例えばOTi(OR43、OZr(OR43、OSi(OR43、OSi(R43;OHf(OR43);NCO;ウレタン−、エポキシ、炭素酸無水物;C=C−二重結合系(例えばメタクリレート、アクリレート);OH;酸素が結合されたアルコール(例えばビス(1−ヒドロキシメチル−プロパン)−1−メチロレート、2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)−1−プロパノール−3−プロパノレート、2−ヒドロキシ−プロパン−1−オル−3−オレート)、エステル、エーテル(例えば2−ヒドロキシエタノレート、C24OH、ジエチレングリコレート、C24OC24OH、トリエチレングリコレート、C24OC24OC24OH);キレートビルダー(例えばアミノトリエタノレート、アミノジエタノレート、アセチルアセトネート、アセト酢酸エチル、乳酸塩);COOH;NH2;NHR4;および/またはエステル、反応性バインダ(例えばOH−、SH−、COOH−、NCO−、ブロックトNCO−、NH2−、エポキシ−、炭素酸無水物−、C=C−、金属酸エステル−、シラン−含有ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(THEIC)エステル、ポリ(THEIC)エステルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリスルフィド、ポリビニルホルマール、重合体(例えばポリアクリレート))のラジカルを表し、R2は、芳香族化合物(例えばフェニル、クレジル、ノニルフェニル)、脂肪族化合物(例えば分岐、直鎖、飽和、不飽和アルキルであってC1〜C30を有するもの)、脂肪酸誘導体;直鎖または分岐エステルおよび/またはエーテルのラジカルを表し、R3は、樹脂ラジカル(例えばポリウレタン−、ポリエステル−、ポリエステルイミド−、THEIC−ポリエステルイミド−、ポリチタンエステル樹脂およびそれらの誘導体;有機誘導体を備えるポリシロキサン樹脂;ポリスルフィド−、ポリアミド−、ポリアミドイミド−、ポリビニルホルマール樹脂、および/またはポリマー(例えばポリアクリレート、ポリヒダントイン、ポリベンゾイミダゾール))を表し、R4は、アクリレート、フェノール、メラミン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリスルフィド、エポキシ、ポリアミド、ポリビニルホルマール樹脂;芳香族化合物(例えばフェニル、クレジル、ノニルフェニル);脂肪族(例えばC1〜C30を有する分岐、直鎖、飽和、不飽和アルキル);エステル;エーテル(例えばメチルグリコレート、メチルジグリコレート、エチルグリコレート、ブチルジグリコレート、ジエチレングリコレート、トリエチレングリコレート);アルコラート(例えば1−ヒドロキシメチル−プロパン−1,1−ジメチロレート、2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオレート、2−ヒドロキシ−プロパン−1,3−ジオレート、エチレングリコレート、ネオペンチルグリコレート、ヘキサンジオレート、ブタンジオレート);脂肪(例えば脱水ひまし油)および/またはキレートビルダー(例えばアミノトリエタノレート、アミノジエタノレート、アセチルアセトネート、アセト酢酸エチル、乳酸塩)のラジカルを表す。
【0022】
このような粒子の調製は、適切なエレメント−有機またはエレメント−ハロゲン化合物の従来の加水分解および縮合反応ならびに火炎熱分解により行われ得る。同様に、反応性粒子と対応させるために、有機樹脂を対応するエレメント−オキシド化合物と反応させ得る。粒子形成の間または粒子形成の後に、表面処理を実施することができる。このような調製手法は文献に記載されている。(例えばR.KeIler、John Wiley and Sons、「The Chemistry of Silica」、New York、第312頁、1979年を参照のこと。)
【0023】
好適反応性粒子の例は、Degussa AGからのAerosil製品、好ましくはAerosil(登録商標)R100−8000である。
【0024】
成分B)として、非反応性粒子もまた用いることができ、ここで、前記粒子はエレメント−酸素ネットワークをベースとし、エレメントは、シリコン、アルミニウム、亜鉛、錫、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属、ランタニドおよびアクチニドからなる群から選択され、特に、粒子を反応性とすることができるいかなる官能基をも含まない、チタン、セリウムおよび/またはジルコニウムを含む系統からなる群から選択される。有用な粒子は、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、好ましくはコロイダルシリカ(これらは、例えば、Nyacol(登録商標)Corp.、Grace Davison (Ludox(登録商標)水中のコロイダルシリカ)、Nissan Chemicalから市販されている)などのこのような粒子の例えば、コロイド状溶液または分散体である。
【0025】
成分B)のナノ粒子は、2〜600nm、好ましくは、2〜100nm、特に好ましくは4〜80nmの範囲の平均半径を有する。
【0026】
本発明によれば、ナノ粒子は、0.1〜200重量部、好ましくは、0.1〜50重量部、特に好ましくは、0.2〜12重量部の量でコーティング組成物に導入される。
【0027】
ジシアンジアミドおよび/または少なくとも1種のブロックトイソシアネートまたは少なくとも1種のフェノール樹脂、カルボン酸および/または無水物および/またはルイス酸が、硬化剤成分として、成分C)として用いられる。成分C)は、ジシアンジアミドおよび/またはブロックトイソシアネートの使用に関しては0〜25重量部、好ましくは2〜15重量部の量で用いられ、およびフェノール樹脂の使用に関しては好ましくは1〜20重量部の量で用いられ、ならびに炭素酸、無水物および/またはルイス酸の使用に関しては0.1〜10重量部の量で用いられる。
【0028】
ジシアンジアミドを本発明による水性組成物において用いることができ、好ましくは、微粉化ジシアンジアミドである。微粉化されているとは、ジシアンジアミドが、0.1および50μmの間の、好ましくは、1および20μmの間の平均粒径を有するよう、適切に処理されていることを意味する。ジシアンジアミドの粒径は、特に好ましくは8μm以下、特に、6μm以下である。ジシアンジアミドの微粉化は、通常、粒子が空気によって互いに向けて撃ち出され、このプロセスにより粒子自身が微粉砕される圧気粉砕機で行われる。分級は本明細書による粒子の所望の粒度分級を促進する。
【0029】
ブロックトイソシアネートもまた本発明による水性組成物において用いることができる。ポリウレタン化学において従来用いられるジイソシアネート(ジイソシアネートとの、ポリオール、アミンおよび/またはCH−酸化合物の付加物など)を、イソシアネートとして用いることができる。これらとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−(2,6)−トルイレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が挙げられる。異性体、同族体またはプレポリマーなどのMDIの誘導体であって、例えば、Desmodur PF(登録商標)などもまた用いることができる。4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0030】
イソシアネートのブロックは、例えばフェノールまたはクレゾールで、例えばブタノンオキシム、フェノール、4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、エタン酸エステル、マロン酸エステル、ジメチルピラゾールおよび/またはカプロラクタムで、従来の手段によって達成することができる。カプロラクタムが好ましく用いられる一方、上述の化合物の数種の組み合わせもまた可能である。
【0031】
本発明による溶剤型組成物において、少なくとも1種のフェノール樹脂を成分C)として用いることができる。これらは、フェノールおよびアルデヒド、特にホルムアルデヒドの重合縮合物であり、公知のノボラックおよび/またはレゾールであることができる。
【0032】
カルボン酸および/または無水物もまた、本発明による溶剤型組成物において成分C)として用いることができる。これらは、脂肪族、芳香族分岐および非分岐カルボン酸および/またはエステルおよび/または無水物であって、例えば、ギ酸、酢酸、吉草酸、カプロン酸、イソ酪酸、ピバル酸、イソ吉草酸、トリメリト酸、ピロメリット酸、ナフタル酸、エステルおよび無水物であることができる。
【0033】
例えば、三フッ化ホウ酸、塩化アルミニウムなどのルイス酸もまた本発明による水性および溶剤型組成物において有用である。
【0034】
例えば、レベリング剤、触媒、顔料、充填材、非イオン性界面活性剤およびイオン性界面活性剤ならびに滑剤などの添加剤の、成分D)としての、0.1〜10重量部の量での添加は、例えば表面用途、焼付け速度の増加または塗装などのコーティングの質に関して、コーティングシステムを最適化することを可能とする。
【0035】
本発明による溶剤型コーティング組成物に関して、成分E)として、有機溶剤が用いられる。好適な有機溶剤の例は、例えば1−メトキシプロピルアセテート−2、n−ブタノール、n−プロパノール、ブチルグリコールアセテートなどの、芳香族炭化水素、n−メチルピロリドン、クレゾール、フェノール、アルコール、スチレン、酢酸塩、ビニルトルエン、メチルアクリレートである。
【0036】
流動化剤としては、成分F)、有機溶剤およびポリグリコールが有用である。好ましくは2〜70重量部の量で、ポリグリコールおよびその誘導体が好ましく用いられる。
【0037】
例えばオルト−チタン酸エステルまたはオルト−ジルコニウム酸エステル、ならびにシラン、ケイ酸エチル、チタン酸塩などの、単量体有機金属化合物の1種以上が、本発明によるコーティング組成物中に含有され得る。
【0038】
本発明による組成物は、個別の成分を一緒に単に混合することにより製造され得る。例えば、エポキシ樹脂を水と混合することによりエポキシ樹脂分散体を製造することが可能である。次いで、ジシアンジアミドおよびさらなる成分が、任意により加熱および分散剤と共に、例えば攪拌下に添加されて安定な分散体が製造される。有機溶剤とのエポキシ樹脂の混合物を製造することも可能である。次いで、フェノール樹脂およびさらなる成分が、例えば攪拌により添加される。その後、反応性粒子がそれぞれの分散体混合物に添加される。
【0039】
水または有機溶剤が成分E)として、最終組成物について30〜60%の固形分含有量が得られるような量で添加される。
【0040】
本発明による方法による組成物の塗布は、公知の態様(例えば吹付け、ロールまたは浸漬コーティング)で、電気鋼板表面の一面または両面上に、1つ以上の層として、層毎に1〜20μm、好ましくは、2〜12μm、特に好ましくは、3〜8μmの乾燥層厚さで、進行する。
【0041】
ここで、電気鋼板の表面はコートされていてもコートされていなくてもよく、前処理されていてもまたは前処理されていなくてもよい。鋼板は、例えば汚れ、油および他の堆積物を除去するために洗浄することにより、前処理され得る。好ましくは、予備洗浄されたおよびコートされていない電気鋼板が用いられ、本発明による組成物で、好ましくは単層−コーティングによりコートされる。
【0042】
続いて、コーティングの乾燥工程が行われ、230〜260℃の範囲のPMT(最高金属温度)を与える温度での強制乾燥方法により果たされることが好ましい。乾燥フィルムはいわゆる保護層を形成し、これによりコーティングの活性状態が維持される。これは、化学的架橋は開始されておらず、コーティングは、ホットプレス下で活性化されて、結合能を発揮することができることを意味する。活性状態においては、保管中、コートされた電気鋼板は安定である。
【0043】
乾燥工程の後、コートされた鋼板から部品が打ち抜かれることができる、および次いで、スタックされおよび組み立てられて鋼板コアを形成することができる。熱および圧力の供給により、個別の鋼板のコーティングが、一定の硬化条件(好ましくは100〜300℃の温度および1.0〜6.0N/mm2の圧力で、例えば60〜120分間の固定された時間の間)下での熱硬化による架橋反応によって、一緒に結合される。必要な熱は、例えば、誘導加熱、IR放射線および/またはホットエアの手段によるオーブン中において供給することができる。
【0044】
コートされた電気鋼板の結合は、異なる態様で果たされることができる。使用され得る、両面に活性状態にあるコーティングを備える鋼板;一面に活性状態にあるコーティングを備える鋼板を、硬化コーティング(受動状態)を他の面に有する鋼板と結合することができる。さらに、活性状態にあるコーティングを有する鋼板を、コートされていない鋼板と結合することができる。
【0045】
硬化プロセスが終了した後、コアにおける鋼板間のコーティングは受動状態を示し、これは化学的架橋反応が完了していることを意味する。
【0046】
本発明による組成物は、モータおよび変圧器などの電気機器の長い耐用寿命を保障することを可能とする。
【0047】
本発明による粘着性組成物はまた、すべての種類の電気的用途のための高性能マグネットワイヤを得るために、ワイヤなどのコートされた金属導体の製造のために用いることができる。粘着性組成物は、溶剤を硬化プロセス中に蒸発させて可撓性コーティングとすることにより、液体溶液としてワイヤ(例えば予備コートされたワイヤ)に塗布することができる。
【実施例】
【0048】
実施例1
水性組成物をベースとする本発明によるコーティングの製造
結合剤として、固形分含有量51〜55%のビスフェノール−A−型エポキシ樹脂、および7%の1−メトキシ−2−プロパノールおよび3%未満のベンジルアルコールならびに水から構成される水性分散体が用いられる。微粉化ジシアンジアミドが、表1に示される量(100%固体エポキシ樹脂の100部で算出される)で用いられる。従って、2重量部の流動化剤BYK(登録商標)−341および12重量部のジエチレングリコールモノブチルエーテルの添加が処理される。混合物は均一になるまで攪拌される。最後の工程において、ナノ粒子としてのAerosil(登録商標)R7200が表1に示される量で添加される。
【0049】
コーティング組成物が電気鋼板にロールによって塗布され、およびPMT(最高金属温度)240〜250℃での強制乾燥の後、活性状態にあるコーティングが、およそ4μmのフィルム厚で得られる。続いて、鋼板が一定のサイズに切り取られ、および3N/mm2の圧力および200℃のPMTで90分スタックされて結合されて鋼板コアが製造される。
【0050】
結合強度は、DIN EN1464に準拠した浮動ローラ剥離テストによって計測される。
【0051】
再軟化温度(RT)は、室温でのDIN EN1465に準拠した剪断強度テストで計測された結合強度の少なくとも50%の結合強度が維持される温度として規定される。
【0052】
塩水噴霧テストは、DIN ENISO7253に準拠して計測される。このテストはISO4628に準拠して評価される。










【0053】
表1

【0054】
実施例2
溶剤型組成物をベースとする本発明によるコーティングの製造
結合剤として、ビスフェノールAをベースとする固体、高分子量エポキシ樹脂の溶剤溶液が用いられる。40〜50%の固形分含有量は、1−メトキシプロピルアセテート−2の適用で達成される。架橋剤として、160〜170g/equのエポキシ換算重量および2.0のエポキシ官能価を備える、レゾール−型のフェノール樹脂および変性フェノールノボラックが、表2に示されるように用いられる(各々が100%固体エポキシ樹脂の100部で算出される)。従って、1重量部の流動化剤BYK(登録商標)−310の添加が処理される。最後の工程において、ナノ粒子としてのAerosil(登録商標)R7200が処方に表2に示される量で添加される。混合物は均一になるまで攪拌される。
【0055】
コーティング組成物が電気鋼板にロールによって塗布され、およびPMT220〜230℃での強制乾燥の後、活性状態にあるコーティングがおよそ4μmフィルム厚で得られる。続いて、鋼板が一定のサイズに切り取られ、および3N/mm2の圧力および200℃のPMTで90分スタックされて結合されて鋼板コアが製造される。



【0056】
表2

【0057】
実施例3:
従来技術と比較した電気鋼鋼板のコーティング
特開平11−193475号公報による組成物No.7は、100重量部(固形分)の水分散性ビスフェノール−A−型エポキシ樹脂と、15重量部(固形分)の、1molビスフェノールAおよび7molホルムアルデヒドの反応生成物をベースとするフェノール樹脂(ジメチロレート化成分より高いメチロレート化成分の含有量が98.3重量%である)とを含み、水と共に混合されおよび攪拌されて、20重量%の組成物の固形分含有量を有するコーティング組成物が得られる。
【0058】
米国特許出願第10/788,985号明細書の組成物No.4は、組成物中にナノ粒子を含まないこと以外は、ジシアンジアミドを5重量部の量で含有する本発明による実施例1の組成物No.4と同一の成分を含む。
【0059】
塗布および乾燥手順ならびに鋼板コアの製造は、実施例1および2における記載と同一である。



【0060】
表3

【0061】
結合強度および塩水噴霧に対する耐性のテストは、本発明による組成物No.4について、特開平11−193475号公報による組成物より良好な結果を示す。表面絶縁抵抗および再軟化温度は、本発明による組成物No.4について、米国特許出願第10/788,985号明細書(表3、および図1および2を参照のこと)の組成物No.4と比較して、より良い数値を示す。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】従来技術のコーティング組成物を有する鋼板のコアと比較した、本発明によるコーティング組成物を有する鋼板のコアについての結合強度の基材の温度との依存関係を示す。
【図2】従来技術のコーティング組成物を有する鋼板のコアと比較した、本発明によるコーティング組成物を有する鋼板のコアについての表面絶縁抵抗のフィルム厚との依存関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ビスフェノール−A−型、ビスフェノール−F−型またはこれらの混合物をベースとする少なくとも1種のエポキシ樹脂100重量部(固形分100%)と、
B)2〜600nmの範囲の平均半径を有するナノ粒子0.1〜200重量部と、
C)ジシアンジアミド、ブロックイソシアネートおよびルイス酸からなる群から選択されるか、またはフェノール樹脂、カルボン酸、無水物およびルイス酸からなる群から選択される、少なくとも1種の硬化剤0〜25重量部(固形分100%)と、
D)少なくとも1種の添加剤0.1〜10重量部と、
E)水または少なくとも1種の有機溶剤50〜200重量部と
を含む電気鋼板コア製造用粘着性コーティング組成物。
【請求項2】
水性組成物に関して、成分A)〜E)に追加して、成分F)として、少なくとも1種の流動化剤が0.1〜120重量部(固形分100%)の量で用いられる、請求項1に記載の粘着性コーティング組成物。
【請求項3】
溶剤型組成物に関して、成分A)〜E)に追加して、成分G)として、少なくとも1種の変性フェノールノボラック樹脂が1〜20重量部(固形分100%)の量で用いられる、請求項1に記載の粘着性コーティング組成物。
【請求項4】
ナノ粒子が2〜100nmの範囲の平均半径を有する、請求項1に記載の粘着性コーティング組成物。
【請求項5】
ナノ粒子がエレメント−酸素ネットワークをベースとする反応性粒子であり、エレメントが、シリコン、アルミニウム、亜鉛、錫、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属、ランタニドおよびアクチニドからなる群から選択され、表面反応性官能基R1および非反応性または部分反応性官能基R2およびR3が酸素ネットワークによって結合され、ここで、反応性粒子の表面上において、R1は98重量%以下の量であり、R2およびR3は0〜97重量%の量であり、ここでR1は、R4含有金属酸エステル;NCO;ウレタン基、エポキシ、炭素酸無水物;C=C−二重結合系;OH;酸素が結合された、アルコール、エステル、エーテル;キレートビルダー;COOH;NH2;NHR4および反応性バインダからなる群から選択されるラジカルを含み、
2は、芳香族化合物、脂肪族化合物、脂肪酸誘導体;エステルおよびエーテルからなる群から選択されるラジカルを含み、
3は樹脂ラジカルを含み、
4は、アクリレート、フェノール、メラミン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリスルフィド、エポキシ、ポリアミド、ポリビニルホルマール樹脂、芳香族化合物、脂肪族化合物、エステル、エーテル、アルコラート、脂肪およびキレートビルダーからなる群から選択されるラジカルを含む、請求項1に記載の粘着性コーティング組成物。
【請求項6】
ナノ粒子がエレメント−酸素ネットワークをベースとする非反応性粒子であり、エレメントが、シリコン、アルミニウム、亜鉛、錫、ホウ素、ゲルマニウム、ガリウム、鉛、遷移金属、ランタニドおよびアクチニドからなる群から選択される、請求項1に記載の粘着性コーティング組成物。
【請求項7】
ナノ粒子として、シリカ、酸化アルミニウムおよび/または酸化チタンが、コロイド状溶液または分散体において用いられる、請求項6に記載の粘着性コーティング組成物。
【請求項8】
ジシアンジアミド、ブロックトイソシアネートおよびルイス酸からなる群から選択される少なくとも1種の硬化剤(固形分100%)が用いられる、請求項2に記載の粘着性コーティング組成物。
【請求項9】
フェノール樹脂、カルボン酸、無水物およびルイス酸からなる群から選択される少なくとも1種の硬化剤(固形分100%)が用いられる、請求項3に記載の粘着性コーティング組成物。
【請求項10】
オルト−チタン酸エステル、オルト−ジルコニウム酸エステル、シラン、ケイ酸エチルおよびチタネートからなる群から選択される1種以上の有機金属化合物が追加で用いられる、請求項1に記載の粘着性コーティング組成物。
【請求項11】
a)請求項1に記載の組成物の少なくとも1つのコーティング層を電気鋼板の表面に塗布する工程と、
b)塗布した層を高温下で乾燥する工程と、
c)コートされた鋼板を組み立てて鋼板コアを形成し且つ鋼板を熱硬化により相互に結合する工程と
を含む、電気鋼板コアの製造方法。
【請求項12】
a)請求項2に記載の組成物の少なくとも1つのコーティング層を電気鋼板の表面に塗布する工程と、
b)塗布した層を高温下で乾燥する工程と、
c)コートされた鋼板を組み立てて鋼板コアを形成し且つ鋼板を熱硬化により相互に結合する工程と
を含む、電気鋼板コアの製造方法。
【請求項13】
a)請求項3に記載の組成物の少なくとも1つのコーティング層を電気鋼板の表面に塗布する工程と、
b)塗布した層を高温下で乾燥する工程と、
c)コートされた鋼板を組み立てて鋼板コアを形成し且つ鋼板を熱硬化により相互に結合する工程と
を含む、電気鋼板コアの製造方法。
【請求項14】
組成物が、エポキシ樹脂を水と混合することによってエポキシ分散体を製造し、または少なくとも1種の有機溶剤を有するエポキシ混合物を製造し、次いで、カレント剤(current agent)ならびに組成物のさらなる成分を追加することによって製造される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
組成物が、3〜8μmの乾燥層厚さを有する単層コーティングとして鋼板上に塗布される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法により製造される、電気機器において用いられる電気鋼板コア。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−518087(P2008−518087A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539025(P2007−539025)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/038210
【国際公開番号】WO2006/049935
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】