説明

細胞障害抑制剤とその用途

【課題】 細胞障害性物質によって引き起こされる細胞の障害を抑制する手段を提供する。
【解決手段】 α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する細胞障害性物質に対する細胞障害抑制剤、或いは、この細胞障害抑制剤を配合してなる細胞障害抑制用の組成物により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な細胞障害抑制剤及び細胞障害抑制用の組成物、詳細には、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体を含んでなる、煙などに含まれる物質によって引き起こされる、ヒトを含む動物や植物の細胞障害の抑制剤(以下、「細胞障害抑制剤」という。)及び当該細胞障害抑制剤を含有する細胞障害抑制用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
煙にはタール類、アルデヒド類をはじめとするカルボニル類、フェノール類、ジエン類、ニトロソアミン類、シアン、ダイオキシン、窒素酸化物、硫黄酸化物をはじめとして、細胞を障害(以下、「細胞障害」と略記する。)する物質(以下、「細胞障害性物質」と略記する。)が種々含まれていることが知られている。なかでも、近年、喫煙による健康被害が問題なり、公共の施設や乗り物はもちろんのこと、特定地域や一般の会社の事務所などでも禁煙の場所が広がっている。しかしながら、依然として、喫煙は続けられており、非喫煙者であっても、この細胞障害性物質を含む煙を吸引する機会が存在する。また、喫煙のみでなく、自動車の排気ガスや、合成高分子素材を含むゴミなどの焼却による煙の中にも、ダイオキシン、窒素酸化物、硫黄酸化物をはじめとする、ヒトを含む動物や植物の細胞に対して細胞障害性を有する物質が増加しており、これら細胞障害性物質と接触する機会が増加している。
【0003】
これらの細胞障害性物質を体内に吸引或いは摂取するなどして、この物質に接触した細胞は、傷つき、或いは、破壊されてしまい、この状態が継続すると、肌荒れ、鼻炎、口内炎、アレルギー、喘息、肺炎などの疾患の誘発やその増悪、さらには、悪性新生物の発生や肺における肺気腫や慢性気管支炎などの慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症などのリスクも増大するといわれている。また、植物では、葉や根などに萎縮が起こったり、葉枯れの発生や、植物そのものが立ち枯れてしまう場合すらある。なかでも、ヒトを含む動物の喉、口腔、鼻腔、喉、気道、気管、気管支、肺などの粘膜の上皮細胞は、これらの細胞障害性物質の影響を特に受けやすく、細胞の障害が発生し、口腔、鼻腔、喉、気道、気管、気管支、肺などに不快感や痛みなどを伴うことが知られている。
【0004】
一方、口腔内や喉などの痛みや炎症を抑制するための製品が多数提案されている(例えば特許文献1参照)ものの、異味や異臭があり、繰り返し使用するには難点があるものが多い。また、特許文献2には、トレハロースとコンドロイチン硫酸を含有する抗炎症用食品が開示されており、トレハロースがコンドロイチン硫酸の苦みや臭みを抑制すると共に、喉などに潤いを与えることが開示されている。しかしながら、これらの特許文献には、α,α−トレハロースやその糖質誘導体が、細胞障害性物質による細胞障害を抑制することについては、何ら開示も示唆もされていない。
【0005】
【特許文献1】特開平11−79984号公報
【特許文献2】特開2000−93122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、細胞障害性物質による、ヒトを含む動物や植物の細胞に対する細胞障害を効果的に抑制する手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、食品素材として汎用されている糖質に着目して、鋭意研究を重ねた結果、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体が、極めて効率よく、細胞障害性物質による、ヒトを含む動物や植物の細胞に対する細胞障害を抑制するという予想外の知見を見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体が、細胞障害性物質による、ヒトを含む動物や植物の細胞に対する細胞障害を抑制する作用を示すという知見に基づくものである。また、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体は、安定で、かつ、副作用の懸念もないので、安全で快適に、長期間、継続的に、細胞障害性物質による、ヒトを含む動物や植物の細胞に対する細胞障害抑制のために利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明でいう細胞障害性物質とは、ヒトを含む動物や植物が、その生体内に吸引或いは摂取するなどした場合に、この物質に接触した部位で、細胞が障害を受け、細胞の機能に障害がでたり、さらには、細胞が死滅してしまう作用を有する物質をいう。具体的には、タバコの煙、自動車の排気ガス、工場、焼却炉などなから排出される煙などの煙に含まれる物質で、タール類、アルデヒド類をはじめとするカルボニル類、フェノール類、ジエン類、ニトロソアミン類、シアン、ダイオキシン、窒素酸化物、硫黄酸化物などを含むいわゆる大気の汚染物質をいう。また、本発明の細胞障害性物質は、アスコルビン酸や酢酸をはじめとする酸の類やアルコール類などのように、通常は、飲食品として摂取しているような物質であっても、高濃度のものを摂取した場合には、喉や口腔内などの細胞に障害を与えたり、細胞を死滅させてしまう作用を有する物質も含む。また、乾燥や放射線のように皮膚や粘膜細胞などに対して細胞障害を引き起こす物理的な要因を含む。
【0010】
本発明でいう細胞とは、ヒトを含む動物及び植物の細胞であって、煙に含まれる細胞障害性物質と直接接触する機会のある細胞、これらの物質を吸引するなどした場合に接触する機会のある細胞、更には、これらの物質が体液等の循環により運搬されて接触する機会のある細胞も含む。具体的には、ヒトを含む動物の場合には、皮膚の細胞、鼻腔内、喉、気管、気道、口腔内などの粘膜の上皮細胞、肺や消化器の粘膜の細胞、他の組織や臓器に存在する細胞も含む。植物の場合は、葉、茎、根、花、果実などの表皮の細胞はもとより、その組織や器官の内部の細胞も含む。
【0011】
本発明の細胞障害抑制剤に使用するα,α−トレハロース及びα,α−トレハロースの糖質誘導体は、細胞障害を抑制するものであればよく、これらの1種又は2種以上が全体として有効量含まれてさえいれば、その由来や調製方法、純度及び性状は問わず、調製の過程で共存する他の糖質との未分離組成物としての形態、それらを部分精製、或いは、高度に精製したものであってもよく、また、製造工程で共存する還元性糖質を水素添加して糖アルコールに変換したものであってもよく、細胞障害を抑制する作用を実質的に妨げない他の適宜の成分との混合物の形態であってもよい。これらの糖質は、発酵法、酵素法、合成法など種々の方法で調製することができ、シラップ、マスキット、非晶質粉末、含蜜結晶粉末、結晶粉末などの形態のものが有利に利用できる。
【0012】
本発明は、α,α−トレハロースやその糖質誘導体の調製に関するものではないので詳細な説明は略するけれども、α,α−トレハロースの調製方法は、経済性を問題にするのであれば、例えば、非還元性糖質生成酵素及びα,α−トレハロース遊離酵素を澱粉部分加水分解物に作用させる方法が好適である。この方法によると、廉価な材料である澱粉から、α,α−トレハロースが高収率で得られる。ちなみに、斯かる方法により調製された市販品としては、食品級の含水結晶α,α−トレハロース粉末(株式会社林原商事販売、商品名「トレハ」)がある。
【0013】
また、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、分子内にα,α−トレハロース構造を有する3個以上のグルコースからなる非還元性オリゴ糖から選ばれる1種又は2種以上の糖質であれば、いずれでもよい。例えば、α,α−トレハロース分子の少なくとも一方のグルコースに、モノ−グルコース、ジ−グルコース、トリ−グルコース及びテトラ−グルコースから選ばれる何れかが結合したものを挙げることができる。なかでも、α−グルコシルα,α−トレハロースをはじめとするモノ−グルコシルトレハロースや、α−マルトシルα,α−トレハロースをはじめとするジ−グルコシルトレハロース、α−マルトトリオシルα,α−トレハロースをはじめとするトリ−グルコシルトレハロース、α−マルトテトラオシルα,α−トレハロースをはじめとするテトラ−グルコシルトレハロースなど、グルコース重合度が3乃至6からなるα,α−トレハロースの糖質誘導体が好ましい。
【0014】
上記のα,α−トレハロースの糖質誘導体のなかでも、α−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトシルα,α−トレハロース、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース及びα−マルトテトラオシルα,α−トレハロースなどの、分子の末端にトレハロース構造を持つ糖質が、細胞障害性物質による細胞障害を抑制する作用が強く、本発明に有利に利用できる。とりわけ、α−マルトシルα,α−トレハロースを主成分として含有し、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース、α−マルトテトラオシルα,α−トレハロースから選ばれる1種又は2種以上を含有する糖質が望ましい。この場合、全糖質に対して、α−マルトシルα,α−トレハロースを、無水物換算で、約5質量%以上、望ましくは約10質量%以上、さらに望ましくは約30質量%以上含有する糖質が望ましい。また、上記糖質としては、例えば、市販のシラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(株式会社林原商事販売、商品名「ハローデックス」)や、これを水素添加して共存する還元性糖質をその糖アルコールに変換した糖質(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「トルナーレ」)を使用することも随意である。
【0015】
また、本発明の細胞障害抑制剤を使用する組成物が、アミノ酸などのように分子内にアミノ基を有する物質を含む場合には、グルコースをはじめとする還元性糖類が混在するとメーラード反応などにより当該組成物中の有効成分及び/又は当該組成物自体の品質低下が特に問題となることが予想されるので、本発明の細胞障害抑制剤に配合されるα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を、98質量%以上、望ましくは99質量%以上、さらに望ましくは99.5質量%以上含有するものや、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存する還元性糖質に水素添加して、その還元性を低減したものが好適である。
【0016】
本発明の細胞障害抑制剤には、その作用を妨げない範囲で、当該細胞障害抑制剤の味質・物性改善や細胞障害抑制効果の増強などの目的で、ブドウ糖、果糖、ラクトース、蔗糖、グルコサミン、α,β−トレハロース、β,β−トレハロース、ラクトスクロース、マルトオリゴ糖をはじめとするオリゴ糖、水飴などの糖類、サイクロデキストリンや同じ出願人による国際公開WO 02/10361号明細書などに記載のサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖、或いは、特願2004−174880号明細書などに記載のサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖などの環状の糖類、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、還元水飴などの糖アルコール類、アスパルテーム、ステビア抽出物、スクラロース、アセスルファムKなどの高甘味度甘味料、プルラン、カラギーナン、ヒアルロン酸をはじめとするムコ多糖類やその塩類、天然ガム類、カルボキシメチルセルロースをはじめとする合成高分子ポリマー、コラーゲン、ゼラチンなどの増粘剤、グリセロール、エタノールなどの溶媒のいずれか1種又は2種以上を添加することができる。
【0017】
また、本発明の細胞障害抑制剤には、当該細胞障害抑制剤の味質・物性改善や細胞障害抑制効果の増強に加えて、細胞障害抑制以外の効果の賦与、栄養補給など目的で、α,α−トレハロース及びα,α−トレハロースの糖質誘導体以外のもの、例えば、パントテン酸カルシウム、トコフェロール、副腎皮質ホルモン、甘草エキス、シソエキス、藍エキス、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、プロポリス、ヘスペリジン、ナリンジン、ルチン、グルコシルヘスペリジン、グルコシルナリンジン、グルコシルルチンなどのような、皮膚、喉や口腔内の荒れや炎症、痛みなどを軽減する作用や抗菌作用を持つ成分も、必要に応じて配合することができる。さらに必要に応じて、抗酸化剤、乳化剤、香料、香辛料、色素、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、L−アスコルビン酸、ビタミンE、或いは、これらに糖転移などした誘導体などのビタミン類、アミノ酸類、CoQ10(コエンザイムQ10)、α−リポ酸、L−カルニチン、アデノシンやそのモノフォスフェイト、ジフォスフェイト或いはトリフォスフェイトなどの塩基類、ローヤルゼリーなどの成分を1種又は2種以上含有させることも有利に実施できる。
【0018】
本発明の細胞障害抑制剤の使用方法について、ヒトの場合を例にとって説明すると、本発明の細胞障害抑制剤は経口的に使用しても非経口的に使用しても細胞障害の抑制作用を発揮する。また、本発明の細胞障害抑制剤は、上述のような作用故に、経口的及び非経口的使用のいずれの場合にも、細胞障害の抑制に有効である。使用目的にもよるが、通常、固形、粉末、液状、ペーストなどの飲食品又は液剤、シロップ剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤などの形態で経口的或いは経管的(経胃、経腸など)に使用するか、皮膚外用剤として経皮的に投与してもよく、場合によっては、粉末、スプレー液、噴霧液、点鼻液、点眼液、洗口液、うがい薬、注射液、輸液、透析液、灌流液などの形態で経口的又は非経口的に投与することもできる。なお、本発明でいう皮膚外用剤は、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体を配合した組成物が直接皮膚に接触するものであれば、何れでもよく、化粧品、医薬部外品、医薬品だけでなく、洗剤などの雑貨類なども含む。また、本発明の細胞障害抑制剤は、ヒトを含む動物において、皮膚以外の部位に非経口的に投与する場合には、生体の浸透圧に近い浸透圧やpHに調整することが望ましいが、電解質の種類や含量は、必ずしも、動物の体液に近いものに調整する必要はない。
【0019】
本発明の細胞障害抑制剤は、ヒトを含む動物類に、経口、経皮、点眼、ネブライザーや粉末吸引装置などの器具を用いる経鼻や経肺などの経粘膜、或いは、注射(腹腔内や胸腔内などへの灌流や透析を含む)のいずれの経路で投与した場合にも、投与部位或いは吸収されて到達した部位において、細胞障害の抑制効果を発揮して、細胞障害性の因子や乾燥などの物理的な因子に起因する細胞のダメージを抑制することができるので、ひいては、肌荒れ、鼻炎、口内炎、アレルギー、喘息、肺炎を始めとする組織や期間の炎症などの疾患の誘発やその増悪、さらには、悪性新生物の発生や肺における肺気腫や慢性気管支炎などの慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症などの種々のリスクを軽減することができる。また、特に、経皮投与にあっては、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体が、煙などに含まれる細胞障害性物質による皮膚のダメージを抑制し、張りや潤いのある皮膚を保持することができる。さらに、本発明の細胞障害抑制剤及び/又はそれを含有する組成物を化粧品などとして皮膚に直接塗布する場合は、必要に応じて、例えば、同じ出願人による国際公開WO 01/60388号明細書などに開示されたイオン導入具を用いることによって、皮膚への浸透を促進してもよい。しかも、本発明の細胞障害抑制剤及びこれを配合した組成物は、ヒトを含む動物が簡便に利用できて、健康の維持・増進にも利用でき、例えば、強壮剤や、健康食品、健康補助食品、特別用途食品、保健機能食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、ペットフード、雑貨などとしてもとりわけ有用である。
【0020】
また、本発明の細胞障害抑制剤は、その有効成分であるトレハロースやその糖質誘導体が、粘膜や皮膚などの細胞表面の乾燥に対しても、優れた細胞保護効果を示すことから、ドライアイやドライマウスなどのような、粘膜の乾燥を伴う細胞障害の抑制にも著効を示す。
【0021】
また、本発明の細胞障害抑制剤は、魚介類や甲殻類などの飼育(養殖を含む)時の海水や淡水、細胞の培養液や臓器の保存液、肥料、植物の葉面散布液、水耕栽培用の栄養液などに入れて使用することにより、水中に溶解した煙などに含まれる細胞障害性物質などによる、これら動植物の細胞障害を抑制することも可能である。
【0022】
本発明の細胞障害抑制剤の使用量は、対象とするヒトをはじめとする動物、ペット、植物、それらの細胞、組織、器官、臓器などの種類や、この抑制剤の使用形態、使用法などによって異なるものの、対象部位におけるα,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体の濃度が、細胞障害を抑制できる濃度になるようにすればよく、通常、無水物換算でα,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体を、生体質量1kgあたり、通常、0.001g乃至2g、望ましくは、0.01g乃至1gを経口的(経管投与を含む)或いは非経口的に、1日1回又は数回に分けて、効果に応じて、連日又は1日以上の間隔をおいて摂取するか、あるいは、投与すればよい。経口的に投与される強壮剤、健康食品、健康補助食品、特別用途食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、ペットフードなどでは、例えば、液剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤、ペースト剤、シラップ剤、カプセル剤など、各々の用途に応じた形態のものを用いることができる。また、本発明の細胞障害抑制剤を、非経口的に化粧品などとして皮膚に直接接触させる皮膚外用剤の場合や、喉、口腔内、鼻などに直接使用する液剤や注射剤や、植物の根、茎、葉、花、果実などに直接使用する肥料、散布液、水耕栽培の栄養液などの場合には、1日1回又は数回に分けて、効果に応じて、連日又は1日以上の間隔をおいて対象部位に噴霧、塗布、点鼻、吸入、灌流、洗浄、注入、散布などの方法で接触させればよい。これらの場合、本発明の細胞障害抑制剤は、通常、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、合計0.1質量%以上、望ましくは、0.5質量%以上含有する。なお、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体の合計の配合量の上限については、無水物換算で、10質量%未満の配合量で、十分な細胞障害の抑制効果が得られるものの、物性などの面で好ましくない場合や本発明の作用効果を妨げる場合以外は、特にその上限に制限はない。また、細胞障害を抑制する対象部位におけるα,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体の濃度は、細胞障害が抑制できる濃度であればよく、通常は、0.001質量%以上が望ましく、0.1質量%以上が特に望ましい。
【0023】
本発明の細胞障害抑制剤は、上記で述べたようにそれ自体で有用である一方、他の成分に配合してなる組成物の形態としても有利に利用できる。本発明の細胞障害抑制剤を含有する組成物を製造するには、対象とする動植物の種類やその摂取方法又は投与方法などに応じて選ばれる適宜の組成にしたがって、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体と、以上に示したような飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、ペットフードの分野の何れかにおいて使用することのできる1種又は2種以上の成分とを、個々の含量に基づいて、目的に応じて混合するなどの工程を適宜実施し、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する組成物を調製し、必要に応じて所望の形状に成形すればよい。
【0024】
本発明の細胞障害抑制剤或いはこれを含有せしめた組成物の調製は、その各成分を、原料の段階から製品の段階に至るまでの適宜の工程、或いは、既存の製品に対して、例えば、希釈、濃縮、乾燥、濾過、遠心分離、混和、混捏、溶解、融解、分散、懸濁、乳化、浸漬、浸透、散布、塗布、被覆、噴霧、注入、晶出、固化、逆ミセル化などの方法の1種又は2種以上を適宜組み合わせて、実施することができる。なお、上記医薬品などのように、経口・経腸摂取や皮膚への適用以外の方法による動物の生体内への投与目的の製剤などは、菌及びパイロジェンを除去しておくのが望ましい。
【0025】
本発明で用いる、ヒトを含む動物や植物へ使用する組成物に許容される成分としては、上記或いは上記以外の、本発明の組成物の個々の利用分野で通常使用される、例えば、水、アルコール、有機溶媒、澱粉質、蛋白質、アミノ酸、繊維質、糖質、脂質、脂肪酸、ビタミン、ミネラル、着香料、着色料、甘味料、調味料、香辛料、抗菌剤、乳化剤、酸化防止剤、界面活性剤などを挙げることができる。
【0026】
本発明の細胞障害抑制剤を配合した組成物の形態には特に制限はない。望ましい皮膚外用剤の形態としては、例えば、ローション、乳液、クリーム、固形、粉末、ジェル、ムース、パック、フェイスマスク、マウスウオッシュ、口中清涼剤、口中清涼フィルム、歯磨きなどの形態の基礎化粧品、洗浄用化粧品、入浴用化粧品、口腔化粧品、日焼け・日焼け止め化粧品、メークアップ化粧品、頭髪化粧品(発毛剤、育毛剤など)、浴用剤、石鹸や、台所用洗剤のように肌に直接影響を及ぼす雑貨類などが挙げられる。また、医薬品としては、皮内、皮下、血管内投与用の注射液、腹腔や胸腔内灌流液・洗浄液、点鼻剤、外用剤、トローチ、シラップ、錠剤、散剤、顆粒剤、ハップ剤、軟膏剤などを挙げることができる。食品の場合は、例えば、細胞障害の抑制のために用いられるものである旨の表示をしたアイスクリーム、アイスキャンディ、シャーベットなどの氷菓、氷蜜などのシロップ、バタークリーム、カスタードクリーム、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペーストなどのスプレッド及びペースト、チョコレート、ゼリー、のど飴をはじめとするキャンディ、グミゼリー、キャラメル、チューインガム、プリン、シュークリーム・スポンジケーキをはじめとする焼き菓子などの洋菓子、ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖菓などの加工果実ないしは加工野菜、まんじゅう、ういろう、あん、羊羮、水羊羮、カステラ、飴玉、米菓などの和菓子、麺類、求肥、米飯、総菜、乾燥食品、レトルト食品、冷凍食品、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなどの調味料などが挙げられる。望ましい飲料の形態としては、例えば、合成酒・醸造酒・ビール・発泡酒・果実酒・洋酒などの酒類、ジュース・ミネラル飲料・ペプチド飲料・炭酸飲料・乳酸飲料・乳酸菌飲料・スポーツドリンク・栄養ドリンク剤、緑茶・紅茶・ウーロン茶などの茶飲料・コーヒー・ココアなどの清涼飲料などとすることができる。また、植物の根、茎、葉、花、果実などに直接使用する肥料、散布液、水耕栽培の栄養液、農薬などの組成物の形態とすることも随意である。以上のような本発明の組成物は、本発明の細胞障害抑制剤を、製品質量あたり、通常、0.01質量%以上、望ましくは、0.5質量%以上含有する。なお、本発明の細胞障害抑制剤の組成物へのα,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体の合計の配合量の上限は、通常、無水物換算で、10質量%未満の配合量で、十分な細胞障害の抑制効果が得られるものの、風味、物性などの面で好ましくない場合や本発明の作用効果を妨げる場合以外は、特に制限はない。また、上記皮膚外用剤において、α,α−トレハロースの糖質誘導体の配合により、べた付き感が認められる場合には、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウムなどの増粘剤やエタノールの1種又は2種以上を併用するか、ブチレングリコールとグリセロールとを1:10乃至10:1の配合比率で併用することにより、このべた付き感を低減することができる。
【0027】
以下、実験に基づいて、より詳細に本発明を説明する。
【0028】
<実験1>
<タバコ煙エキス及びフェノールによる細胞障害に及ぼすα,α−トレハロース及びその糖質誘導体の影響の検討>
タバコ煙エキス及びタバコ煙エキスに含まれる細胞障害性物質の一つであるフェノールによる細胞障害に及ぼすα,α−トレハロース及びその糖質誘導体の影響を調べる実験を、正常ヒト気管支/気管上皮細胞(Cambrex Bioscience社販売、以下、「NHBE細胞」と略記する。)を使用して、以下のような方法で行った。なお、以下の実験では、α,α−トレハロースの糖質誘導体として、α−マルトシルα,α−トレハロース(株式会社林原生物化学研究所製造、純度98質量%)を使用した。
<タバコ煙エキス及びフェノール溶液の調製>
市販のタバコ(日本たばこ産業株式会社販売、商品名「マイルドセブン10」)に着火し、フィルターの直前まで燃焼させ、その間、吸引ポンプ(イワキ株式会社販売、型式AP−115)を用いてタバコの煙を吸引し、6mlのダルベッコのリン酸緩衝液(pH7.35、日本製薬株式会社販売)に通気して、煙に含まれる成分をリン酸緩衝液に溶解させた。この操作を5本のタバコを使用して行い、タバコの煙を通気したリン酸緩衝液を回収して、タバコ煙エキスとした。また、上記ダルベッコのリン酸緩衝液に、フェノール(片山化学工業株式会社販売、試薬級)を120mMとなるように溶解したフェノール溶液を調製した。
<糖質含有溶液>
10容量%牛胎児血清及び抗生物質を含むダルベッコのMEM培地(以下、「D−MEM培地」と略記する。)に、α,α−トレハロース(株式会社林原生物化学研究所販売、試薬級)、α−マルトシルα,α−トレハロース或いはマルトース(株式会社林原生物化学研究所販売、試薬級)を、各々、無水物換算で、100mg/mlとなるように溶解して糖質含有溶液を調製した。
<試験液>
糖質の濃度が、25mg/mlとなるように試験液を調製した。すなわち、D−MEM培地2容量部と上記糖質含有溶液1容量部とを混合し、これに、タバコ煙エキス、或いは、フェノール溶液1容量部を加え、試験液を調製した。また、D−MEM培地3容量部にタバコ煙エキス或いはフェノールの何れかを1容量部を加えた試験液を調製した。
<NHBE細胞に対する細胞障害の測定方法>
BEGM培地キット(Cambrex Bioscience社販売、以下、「BEGM培地」と略記する。)を用いて継代培養したNHBE細胞を回収し、BEGM培地に再懸濁し、96ウエルマイクロプレートに、1.6×10細胞/200μl/ウエルで播種して一晩培養して、細胞がウエルの70%を占める状態とした。その後、培養液を吸引除去し、上記試験液の何れか1種を200μl/ウエル添加して、3時間培養を行った。対照として、D−MEM培地3容量部とリン酸緩衝液1容量部とを混合した溶液を200μl/ウエル添加して3時間培養を行った。その後、培養液を吸引除去し、セル カウンティング キット−8(CELL COUNTING KIT−8、株式会社同人化学研究所販売)を、D−MEM培地で40倍希釈した溶液を200μl/ウエルで加えて、37℃で培養して、呈色反応を行った。なお、添加したタバコ煙エキス、或いは、フェノールの添加量は、予備実験により、これらを無添加の場合に比して、NHBE細胞の生存率を約60%減じる濃度とした。結果は、リン酸緩衝液とD−MEM培地とを混合した溶液を添加して培養した対照のNHBE細胞の呈色量を100とする相対値を求め細胞の生存率(%)として、タバコ煙エキスを添加して培養した場合を表1に、フェノールを添加した場合を表2に示す。また、本実験及び以下の実験では、細胞の培養は何れの場合も、37℃、5容量%炭酸ガス培養装置を使用し、試験は1種類の試験液について3ウエルを使用した。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
表1から明らかなように、糖質を含まないタバコ煙エキスのみを添加した試験液で培養したNHBE細胞は、培地とリン酸緩衝液のみを添加して培養した対照の細胞に比べて、その生存率が約38%にまで減少した。また、タバコ煙エキスとマルトースとを添加した試験液で培養した場合の生存率は43%となり、タバコ煙エキスのみを加えた試験液で培養した場合とほぼ同じ生存率であった。これに対して、タバコ煙エキスとα,α−トレハロースとを添加した試験液で培養した場合には、生存率が55%となり、タバコ煙エキスとα−マルトシルα,α−トレハロースとを添加した試験液で培養した場合には生存率が48%となって、何れも、タバコ煙エキスのみを加えた試験液で培養した場合に比して、細胞の生存率の有意(p<0.05)な上昇が認められた。また、表2から明らかなように、糖質を含まないフェノールのみを添加した試験液で培養したNHBE細胞は、培地とリン酸緩衝液のみを添加して培養した対照の細胞に比べて、その生存率が約40%にまで減少した。これに対して、フェノールとα,α−トレハロースとを添加した試験液で培養した場合、フェノールとα−マルトシルα,α−トレハロースを添加した試験液で培養した場合、或いは、フェノールとマルトースとを添加した試験液では、生存率が、各々72%、69%、或いは、68%となって、フェノールのみを加えた試験液で培養した場合に比して、何れも、細胞の生存率の有意(p<0.05)な上昇が認められ、α,α−トレハロース及びα,α−トレハロースの糖質誘導体が、タバコの煙の中に含まれているフェノール及びそれ以外の細胞障害性物質による細胞障害を抑制することが確認された。
【0032】
<実験2>
<タバコ煙エキスによる細胞障害に及ぼすα,α−トレハロース及びその糖質誘導体の濃度の影響の検討>
試験液中の添加した糖質の無水物換算の濃度を、表3に示す濃度とした以外は、実験1と同じ方法により、タバコ煙エキスによる細胞障害に及ぼすα,α−トレハロース及びその糖質誘導体の濃度の影響を調べる実験を行った。その結果を表3に併せて示す。
【0033】
【表3】

【0034】
表3から明らかなように、α,α−トレハロース及びα,α−トレハロースの糖質誘導体は、何れも、0.001質量%以上の濃度で、タバコ煙エキスの添加によるNHBE細胞の生存率低下を有意(P<0.05)に上昇させた。この生存率は、α,α−トレハロース或いはα,α−トレハロースの糖質誘導体の濃度に依存して上昇し、0.1質量%以上の添加で、ぼほ横這いとなった。この実験結果は、α,α−トレハロース或いはα,α−トレハロースの糖質誘導体は、0.001質量%以上の濃度でタバコ煙エキス中に含まれる細胞障害性物質による細胞障害を抑制でき、その効果は、0.1質量%以上の濃度で顕著となることを物語っている。
【0035】
<実験3>
<L−アスコルビン酸による細胞障害に及ぼすα,α−トレハロース及びその糖質誘導体の影響の検討>
L−アスコルビン酸による細胞障害に及ぼすα,α−トレハロース及びその糖質誘導体の影響を調べる実験を、KB細胞(ヒト鼻咽頭癌細胞株、株式会社林原生物化学研究所所有)を使用して、以下のような方法で行った。
<試験液>
10mMのL−アスコルビン酸を含有するD−MEM培地に、α,α−トレハロース(株式会社林原生物化学研究所販売、試薬級)、α−マルトシルα,α−トレハロース、マルトース(株式会社林原生物化学研究所販売、試薬級)、或いは、スクロース(蔗糖)を、各々、無水物換算で、1.25mg/ml、2.5mg/ml、或いは、5mg/mlとなるように溶解して試験液を調製した。
<KB細胞に対する細胞障害の測定方法>
D−MEM培地を用いて継代培養したKB細胞を回収し、D−MEM培地に再懸濁し、96ウエルマイクロプレートに、5×10細胞/200μl/ウエルで播種して一晩培養して、細胞がウエル全体を占める状態とした。その後、培養液を吸引除去し、試験液を、200μl/ウエル添加して、3時間培養を行った。対照として、D−MEM培地を、200μl/ウエル添加して3時間培養を行った。その後、培養液を吸引除去し、常法により、グルタールアルデヒド固定し、メチレンブルー染色して、その細胞の形態を観察した。なお、L−アスコルビン酸の濃度は、予備実験により、KB細胞の細胞質が萎縮、濃縮して核の周辺のみにわずかに認められ、細胞の間隙が開く10mMとした。結果は、細胞障害の程度を、KB細胞の細胞質が濃縮して核の周辺のみにわずかに認められ、細胞の間隙が開いている場合を細胞障害が「強い」、KB細胞の細胞質の萎縮が認められるものの、細胞質の大幅な濃縮はなく、細胞の間隙が少し開いている場合を細胞障害が「弱い」、KB細胞の萎縮や細胞間隙が開いていない場合を細胞障害が「無し」とする3段階で評価し、その結果を表4に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
表4から明らかなように、α,α−トレハロース或いはα,α−トレハロースの糖質誘導体を、1.25mg/ml添加した10mMのL−アスコルビン酸含有D−MEM培地で培養した場合には、弱い細胞障害が認められたのに対して、同じ濃度のマルトース或いはスクロースを添加した10mMのL−アスコルビン酸含有D−MEM培地で培養した場合には、強い細胞障害が認められた。このことは、α,α−トレハロース或いはα,α−トレハロースの糖質誘導体が、マルトースやスクロースに比して、細胞障害性物質による細胞障害の抑制効果において優れていることを示している。また、2.5mg/mlの糖質を添加した10mMのL−アスコルビン酸含有D−MEM培地で培養した場合には、何れの糖質の場合も弱い細胞障害が認められ、5mg/mlの糖質を添加した10mMアスコルビン酸含有D−MEM培地で培養した場合には、何れの糖質の場合も細胞障害は認められず、2.5mg/ml以上の糖質を添加した場合には、L−アスコルビン酸に起因する細胞障害を抑制する効果に、試験に使用した4種類の糖質間で差は認められなかった。
【0038】
これらの実験結果は、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体が、細胞障害性物質による細胞障害を抑制する細胞障害抑制剤として利用できることを物語っている。
【0039】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
<細胞障害抑制剤>
以下の成分・配合で、これらを均一に混合して、シラップ状の細胞障害抑制剤を調製した。また、本品を、上記実験1で使用したものと同じD−MEM培地で希釈し、実験1に準じて、本品の細胞障害の抑制活性を測定し、当該活性が発揮されることを確認した。
L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生
物化学研究所販売、商品名「AA2G」) 1質量部
α,α−トレハロース(株式会社林原生物化学研究所
販売販売、医薬用) 20質量部
炭酸水素カリウム 0.5質量部
【0041】
本品は、細胞障害抑制作用を示し、細胞障害性物質と接触した、喉、気管、気道や口腔内などの細胞をはじめとする動植物の組織、器官、臓器などに存在する細胞が受けるダメージを軽減する目的に使用することができる。本品は、このままで、さらに微粉にして、又は、水、生理食塩水やリン酸緩衝生理食塩水などに希釈・溶解して、経口、点眼、粉末吸引装置やネブライザーなどの器具を用いる経鼻や経肺などの経路で投与することも、さらには、注射液、灌流液、透析液などとして使用することも自由である。また、本品は、飲食品、特別用途食品、保健機能食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、ペットフード、雑貨、植物用の肥料や栄養液などに配合して、これらに細胞障害の抑制作用を付与することも自由である。
【実施例2】
【0042】
<細胞障害抑制剤>
以下の成分・配合で、これらを均一に混合して、シラップ状の細胞障害抑制剤を調製した。また、本品を、上記実験1で使用したものと同じD−MEM培地で希釈し、実験1に準じて、本品の細胞障害の抑制活性を測定し、当該活性が発揮されることを確認した。
L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生
物化学研究所販売、商品名「AA2G」) 1質量部
α,α−トレハロースの糖質誘導体含有シラップ(株
式会社林原商事販売、商品名「ハローデックス」) 20質量部
炭酸水素ナトリウム 0.5質量部
【0043】
本品は、細胞障害抑制作用を示し、細胞障害性物質と接触した、喉、気管、気道や口腔内などの細胞をはじめとする動植物の組織、器官、臓器などに存在する細胞が受けるダメージを軽減する目的に使用することができる。本品は、このままで又、水、生理食塩水やリン酸緩衝生理食塩水などに希釈・溶解して、経口、点眼、ネブライザーなどの器具を用いる経鼻や経肺などの経路で投与することも、注射液、灌流液、透析液などとして使用することも自由である。さらに、本品は、飲食品、特別用途食品、保健機能食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、ペットフード、雑貨、植物用の肥料や栄養液などに配合して、これらに細胞障害の抑制作用を付与することも自由である。
【実施例3】
【0044】
<細胞障害抑制剤>
以下の成分・配合で均一に混合して、粉末状の細胞障害抑制剤を調製した。本品を、上記実験1で使用したものと同じD−MEM培地で希釈し、実験1に準じて、本品の細胞障害の抑制活性を測定し、当該活性が発揮されることを確認した。
L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原商
事販売、商品名「アスコフレッシュ」) 6質量部
ヒアルロン酸 0.5質量部
鹿角霊芝(株式会社林原生物化学研究所販売) 1.5質量部
藍(株式会社林原生物化学研究所販売) 1.5質量部
含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販
売、商品名「トレハ」) 41質量部
【0045】
本品は、ヒトのみならず、家畜、ペットなどの動物のための経口投与又は経管投与用組成物として、或いは、魚、貝、エビ、カニなどの養殖動物用にも直接、餌に混合したり、養殖用の水或いは海水に溶解するなどして有利に利用できる。また、本品は、簡便に利用できかつ著効を示す細胞障害抑制剤である。本品は、まろやかな甘味と適度な酸味により良好な呈味を示すだけでなく、褐変することもなく、長期保存安定性に優れていることから、日常的に利用する健康食品としても利用することができる。
【0046】
また、この細胞障害抑制剤に、1質量%となるようにショ糖脂肪酸エステルを添加し、打錠機を用いて1錠あたり約300mgの錠剤に成形した。本品は、細胞障害の抑制作用を示す、長期間安定な、携帯にも便利で、かつ、経口摂取の容易な、著効を示す細胞障害抑制剤である。
【実施例4】
【0047】
<細胞障害抑制剤>
以下の成分を以下の配合で均一に混合後、減圧乾燥して粉末状の細胞障害抑制剤を調製した。調製後、本品を、上記実験1で使用したものと同じD−MEM培地で希釈し、実験1に準じて、本品の細胞障害の抑制活性を測定し、当該活性が発揮されることを確認した。
L−アスコルビン酸ナトリウム 1.5質量部
ローヤルゼリー 18質量部
ヒアルロン酸 0.1質量部
キトサン 1質量部
糖転移ルチン(株式会社林原商事販売、商品名「αG
ルチン」 1質量部
糖転移ヘスペリジン(株式会社林原商事販売、商品名
「林原ヘスペリジンS」 1質量部
含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販
売、商品名「トレハ」) 1.5質量部
【0048】
本品は、簡便に利用できかつ著効を示す細胞障害抑制剤である。本品は、細胞障害の抑制のために用いられる旨の表示を付して細胞障害の抑制に使用することができる。また、本品は、まろやかな甘味と適度な酸味により良好な呈味を示す、日常的に利用する健康食品としても好適である。
【実施例5】
【0049】
<細胞障害抑制剤>
以下の成分を以下の配合で均一に混合後、常法により、500mgずつ打錠して、細胞障害抑制剤を調製した。
高純度麦芽糖(株式会社林原商事販売、商品名「サン
マルトS」) 64質量
含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販
売、商品名「トレハ」) 25質量部
ショ糖脂肪酸エステル 5質量部
ヒアルロン酸 3質量部
牡蠣殻カルシウム 1質量部
L−アスコルビン酸 0.2質量部
糖転移ルチン(株式会社林原商事販売、商品名「αG
ルチン」 0.5質量部
無水クエン酸 0.5質量部
リンゴ酸 0.5質量部
レモンフレーバー 適 量
ライムフレーバー 適 量
全量を100質量部とする。
【0050】
本品は、簡便に利用できかつ著効を示す細胞障害抑制剤である。本品は、細胞障害の抑制のために用いられる旨の表示を付して細胞障害の抑制に使用することができる。また、本品は、まろやかな甘味と適度な酸味により良好な呈味を示す、関節痛の改善に顕著な効果を示す、健康食品としても好適である。
【実施例6】
【0051】
<細胞障害抑制剤>
以下の成分を以下の配合で均一に混合後、常法により、500mgずつ打錠して、細胞障害抑制剤を調製した。
粉末マルチトール(株式会社林原商事販売、商品名「
粉末マビット」) 87質量部
含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販
売、商品名「トレハ」) 5質量部
ショ糖脂肪酸エステル 3質量部
グルコサミン 2.5質量部
コンドロイチン硫酸 1.5質量部
ヒアルロン酸 1質量部
【0052】
本品は、簡便に利用できかつ著効を示す細胞障害抑制剤である。本品は、細胞障害の抑制のために用いられる旨の表示を付して細胞障害の抑制に使用することができる。また、本品は、関節痛の改善に顕著な効果を示す、健康食品としても好適である。
【実施例7】
【0053】
<アイスクリーム>
生クリーム(油脂含量約46質量%) 18質量部
脱脂粉乳 7質量部
全乳 51質量部
蔗糖 13質量部
プルラン 2質量部
グアガム 1質量部
上記配合の組成の混合物を溶解し、70℃で30分間保持して殺菌した後、ホモゲナイザーで乳化分散させ、次いで、3℃乃至4℃にまで急冷し、これに、さらに、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有シラップ(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「トルナーレ」)5質量部を加えて混合し、一夜熟成した後、フリーザーで凍結させてアイスクリームを得た。
【0054】
本品は、細胞障害の抑制のために用いられる旨の表示を付して煙などに含まれる物質による細胞障害の抑制に使用することができる、適度な甘味と上品な風味を示す細胞障害の抑制に奏効するアイスクリームである。
【実施例8】
【0055】
<フルーツゼリー>
蔗糖 12質量部
ラクトスクロース含有シラップ(株式会社林原商事販
売、商品名「乳果オリゴ」) 2質量部
含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販
売、商品名「トレハ」) 4質量部
ゼラチン 2.5質量部
オレンジジュース 34質量部
水 45.5質量部
上記配合組成に基づき、蔗糖、ラクトスクロース含有シラップ、α,α−トレハロース、ゼラチン、水を加えて、95℃に加熱し溶解後、オレンジジュースを加えて混合し、さらに、80℃で30分間殺菌を行った後、冷却して、フルーツゼリーを調製した。
【0056】
本品は、細胞障害の抑制のために用いられる旨の表示を付して細胞障害の抑制に使用することができる適度な甘味となめらかなテクスチャーを示す、フルーツゼリーである。
【実施例9】
【0057】
<健康飲料>
粉末マルチトール 500質量部
実施例2の方法で調製した細胞障害抑制剤 100質量部
粉末卵黄 180質量部
脱脂粉乳 200質量部
粉末ペプチド 8質量部
塩化ナトリウム 4.4質量部
L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生
物化学研究所販売、商品名「AA2G」) 2質量部
塩化カリウム 1.85質量部
硫酸マグネシウム 4質量部
ヒアルロン酸 0.1質量部
チアミン 0.01質量部
ビタミンEアセテート 0.6質量部
ニコチン酸アミド 0.04質量部
糖転移ヘスペリジン(東洋精糖株式会社販売、商品名
「αGヘスペリジンPS」) 0.02質量部
上記配合組成からなる配合物を調製した。この配合物25質量部を精製水150質量部に均一に分散・溶解させ、200gずつ褐色ガラス瓶に封入した。
【0058】
本品は、細胞障害の抑制のために用いられる旨の表示を付して細胞障害の抑制に使用することのできる健康飲料である。また、本品は、細胞障害を抑制する上に、栄養源が補足されており、しかも、これらの成分に由来する異味や異臭の低減された美味しい飲料で、美容や健康などの目的でも有利に利用できる。なお、本品は、ヒトのみならず、家畜、ペットなどの動物のための経口摂取又は経管投与用組成物としても有利に利用できる。
【実施例10】
【0059】
<のど飴>
粉末結晶マルチトール(株式会社林原商事販売、商品名「結晶マビット」)270質量部と、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有シラップ(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「ハローデックス」)40質量部に、水90質量部を加えて加熱溶解し、減圧下で140℃まで煮詰め、この煮詰め終了直前に、L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「AA2G」)0.5質量部、南天エキス0.1質量部、カリンエキス0.1質量部、藍エキスの凍結乾燥粉末(株式会社林原生物化学研究所製造)0.5質量部を混合した。この煮詰液を常法に従って、その約1gずつをデポジット成形し、乾燥条件下で、個包装を行い、この15個をまとめて外装し、水分含有量約0.9質量%、硬度約8.5kgのスティックタイプのハードキャンディを得た。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、口腔内や喉などにおける細胞障害の抑制のために用いられる旨の表示を付して細胞障害の抑制に使用することのできるのど飴である。
【実施例11】
【0060】
<のど飴>
粉末結晶マルチトール(株式会社林原商事販売、商品名「結晶マビット」)270質量部と、含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商品名「トレハ」)30質量部に、水100質量部を加えて加熱溶解し、減圧下で140℃まで煮詰め、この煮詰め終了直前に、L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「AA2G」)0.5質量部、南天エキス0.1質量部、カリンエキス0.1質量部、藍エキス噴霧乾燥粉末(サイクロデキストリン含有、株式会社林原生物化学研究所製造)0.1質量部を混合した。この煮詰液を常法に従って、その約1.5gずつをデポジット成形し、乾燥条件下で、個包装を行い、水分含有量約1.3質量%、硬度約8.3kgのスティックタイプのハードキャンディを得た。本品は、α,α−トレハロースを含有しているので、口腔内や喉などにおける細胞障害性物質などによる細胞障害の抑制のために用いられる旨の表示を付して細胞障害の抑制に使用することのできるのど飴である。
【実施例12】
【0061】
<チューインガムガム>
ガムベース20質量部をニーダーに入れ、約120℃にて溶解攪拌し、50℃まで温度を下げた後に混合機に投入した。混合機に移されたガムベースに、蔗糖(砂糖)55部、ブドウ糖12質量部、α、α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商品名「トレハ」)5質量部、シラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(株式会社林原商事販売、商品名「ハローデックス」)4質量部、藍エキスの噴霧乾燥粉末(サイクロデキストリン含有、株式会社林原生物化学研究所製造)1.5質量部、軟化剤1質量部、色素適量、香料0.5質量部を、順次投入して、同温度で、よく攪拌混合した後、射出成型器に入れブロック状に押し出し、さらにロールにかけて徐々に圧延し、細断してチューインガムを調製した。本品は、α,α−トレハロース、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、口腔内や喉などにおける細胞障害性物質などによる細胞障害の抑制のために用いられる旨の表示を付して細胞障害の抑制に使用することのできるのど飴である。
【実施例13】
【0062】
<口中用フィルム>
精製水71質量部にプルラン(株式会社林原商事販売、商品名「プルランPI−20」)22.5質量部、カラギーナン1質量部、キサンタンガム0.15質量部、ローカストビーンガム0.15質量部、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有シラップ(株式会社林原商事販売、商品名「ハローデックス」)3.75質量部、プロポリスエキス0.5質量部、スクラロース0.2質量部、L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売)0.25質量部、藍エキス0.25質量部、シソエキス0.25質量部を加えて撹拌溶解してコーティング層溶液とする。別に適量のエタノールに、塩化セチルピリジニウム1.5質量部、マレイン酸クロルフェニラミン1.5質量部、及びヒドロキシプロピルセルロース89質量部を加えて撹拌溶解し、これに適量の精製水にグリチルリチン酸二カリウム3.8質量部を加えて撹拌溶解したものを加えて、更に撹拌混合して薬物層I溶液とする。これらとは別に適量のエタノールに、塩化セチルピリジニウム4.5質量部、マレイン酸クロルフェニラミン4.5質量部、タンニン酸7質量部及びヒドロキシプロピルセルロース272質量部を加えて撹拌溶解し、これに適量の精製水にグリチルリチン酸二カリウム11.2質量部を加えて撹拌溶解したものを加えて、更に撹拌混合して薬物層II溶液とする。次に、コーティング層溶液をポリエステル剥離フィルム上に展延乾燥して厚さ約15μmのフィルムとする。その上に薬物層I溶液を展延乾燥して厚さ約10μmのフィルムとする。その上に薬物層II溶液を展延乾燥して厚さ約10μmのフィルムとする。最後にその上にコーティング層溶液を展延乾燥して厚さ約15μmのフィルムとする。このように積層し全体として約50μmのフィルム状製品とする。このフィルム状製品から、ポリエステルフィルムを剥離し、15×25mmの方形に切断し、10枚ずつ携帯用の容器に充填して口中用フィルム製品を得た。
【0063】
本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、口腔内、喉、気管、気道などにおける細胞障害性物質などによる細胞障害の抑制のために用いられる旨の表示を付して細胞障害の抑制に使用することのできる口中用フィルム製品である。本品は、口中清涼用フィルムとしても使用できる。
【実施例14】
【0064】
<皮膚外用クリーム 下記に述べる配合物Aに、配合物Bを常法に従って添加・混合し、30℃以下にまで冷却した後に、水酸化カリウムで、pHを弱酸性に調製し、ホモゲナイザーにより乳化して、皮膚外用クリームを製造した。
<配合物A>
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 2質量部
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 5質量部
ベヘニン酸エイコサニル 1質量部
流動パラフィン 1.9質量部
トリオクタン酸トリメチロールプロパン 10質量部
<配合物B>
1,3−ブチレングリコール 4質量部
α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(株式林
原生物化学研究所販売、商品名「トルナーレ」) 5質量部
乳酸ナトリウム液 10質量部
L−アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生
物化学研究所販売、商品名「AA2G」) 2質量部
アマモエキス 0.5質量部
ダイズエキス 0.5質量部
アロエベラエキス 0.5質量部
パラオキシ安息香酸メチル 0.1質量部
コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.1質量部
グルコシルヘスペリジン(株式会社林原生物化学研究
所販売、商品名「アルファグルコシルヘスペリジン」) 0.2質量部
藍エキス(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「
アイルーロス」) 0.2質量部
甘草エキス 0.5質量部
精製水 62質量部
なお、本クリームは、さらに、必要に応じて、水酸化カリウムを加えて弱アルカリ性のクリームとしてもよい。
【0065】
本クリームは、細胞障害の抑制抑制剤として有利に利用できる。また、本品は、ブチレングリコールによりα,α−トレハロースの糖質誘導体に起因するべた付きが抑制されるので、べた付きが無く、また、本品は、グルコシルヘスペリジン、藍エキス、甘草エキスを含有しているので、抗炎症作用に優れ、さらに、優れた保湿性を示すので、基礎化粧品としても有用である。
【実施例15】
【0066】
<ローション>
以下に示す配合処方に基づき、常法により、ローションを調製した。
α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(株式林
原生物化学研究所販売、商品名「トルナーレ」) 3質量部
グリセリン(化粧用濃グリセリン) 3.5質量部
ポリアクリル酸ナトリウム(0.5質量%水溶液) 3.2質量部
1,3−ブチレングリコール 3質量部
エタノール 10質量部
メチルパラベン 0.12質量部
クエン酸 0.01質量部
クエン酸ナトリウム 0.3質量部
精製水を適量加えて、全量を100質量部とする。
【0067】
本品は、細胞障害の抑制剤として有利に利用できる。また、本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体によるべた付きが抑制され、優れた保湿性を示すローションであり、基礎化粧品としても有用である。
【実施例16】
【0068】
<D相調製物>
下記に述べる配合物Aを加熱溶解し、これに、配合物B加熱溶解したものを均質になるよう攪拌溶解し、さらに、精製水をゆっくり加えながら攪拌・混合し、室温まで冷却して、常法により、D相調製物を調製した。
<配合物A>
ステアリン酸ポリグリセリル−10 1.75質量部
ミリスチン酸ポリグリセリル−10 5.2質量部
α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(株式林
原生物化学研究所販売、商品名「トルナーレ」) 17.4質量部
グリセリン 8.7質量部
メチルパラベン 0.13質量部
<配合物B>
トリオクタノイン 52.22質量部
トコフェロール 0.05質量部
プロピルバラベン 0.05質量部
精製水を加えて全量を100質量部とする。
【0069】
本品は、細胞障害抑制剤として有利に利用できる。また、本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を使用しているので、表面張力が低下し、従来の多価アルコールを使用したD相調製物に比べて、微細で、かつ、その状態が安定な乳化液滴状となるという特徴を有しており、クレンジングジェル、化粧水、クリーム、乳液、入浴剤などへ配合して使用できる。
【実施例17】
【0070】
<歯磨き>
以下に示す構成処方に基づき、常法により歯磨きを調製した。本品は、α,α−トレハロース及びその糖質誘導体を含有しているので、細胞障害抑制剤として有利に利用できる。しかも、本品は、泡立ちがよく、すっきりした洗浄後感で、歯垢もきれいに除去することのできる歯磨きである。
β−グリチルレチン酸 0.4質量部
塩化セチルピリジウム 0.2質量部
酢酸トコフェロール 0.1質量部
濃グリセリン 10質量部
α,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(株式会
社林原商事販売、商品名「ハローデックス」) 20質量部
精製水 23.5質量部
エタノール 3質量部
プロポリスエキス 1質量部
藍水抽出エキス(株式会社林原生物化学研究所製造) 1質量部
ヒアルロン酸ナトリウム 0.2質量部
カラギーナン 0.3質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.3質量部
第二リン酸カルシウム 20質量部
ハイドロキシアパタイト 3.5質量部
炭酸カルシウム 1質量部
酸化チタン 0.4質量部
無水ケイ酸 0.1質量部
ラウリル硫酸ナトリウム 1質量部
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.5質量部
【実施例18】
【0071】
<口腔・喉用スプレー>
以下に示す構成処方に基づき、常法により口腔・喉用スプレーを調製した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、口腔内、喉、気管、気道などの細胞障害抑制剤として有利に利用できる。本品は、口臭などの防止効果にも優れた、清涼感のある口腔・喉用スプレーである。また、本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体が、キレート作用、保存安定化作用を有していることから、保存安定性にも優れている。
アズレンスルホン酸ナトリウム 0.02質量部
塩化デカリニウム 0.001質量部
α,α−トレハロースの糖質誘導体含有シラップ(株
式会社林原生物化学研究所販売、商品名「トルナー
レ)」 35質量部
プロポリスエキス 2質量部
クエン酸ナトリウム 0.2質量部
エタノール(95%) 15質量部
l−メントール 0.01質量部
精製水を加えて、全量を100質量部とする。
【実施例19】
【0072】
<口腔・喉用スプレー>
以下に示す構成処方に基づき、常法により口腔・喉用スプレーを調製した。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、口腔内、喉、気管、気道などの細胞障害抑制剤として有利に利用できる。本品は、口臭などの防止効果にも優れた、清涼感のある口腔・喉用スプレーである。また、本品は、α,α−トレハロースが、キレート作用、保存安定化作用を有していることから、保存安定性にも優れている。
アズレンスルホン酸ナトリウム 0.02質量部
塩化デカリニウム 0.001質量部
α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商品
名「トレハ」) 25質量部
プロポリスエキス 2質量部
藍エキス 1質量部
クエン酸ナトリウム 0.2質量部
エタノール(95%) 15質量部
l−メントール 0.01質量部
精製水を加えて、全量を100質量部とする。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本発明は、α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体を含んでなる細胞障害抑制剤が、ヒトを含む動物や、植物の細胞に対する、細胞障害性物質による細胞障害を抑制する顕著な作用を有するという全く独自の知見に基づくものである。また、当該細胞障害抑制剤は、重篤な副作用の懸念がなく、ヒトを含む動物類や植物類に簡便かつ快適に利用することができる。また、以上のような特長を有する本発明の細胞障害抑制剤は、他の成分と配合することにより、食品、飲料、特別用途食品、保健機能食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、ペットフード、雑貨、肥料、栄養液などの各種組成物として利用することも有利に実施できる。本発明は、斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に多大の貢献をする、誠に意義のある発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてα,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体を含んでなる細胞障害抑制剤。
【請求項2】
細胞障害が煙に含まれる物質に起因する細胞障害であることを特徴とする請求項1記載の細胞障害抑制剤。
【請求項3】
細胞が口腔内、鼻腔内、喉、気管、気道及び/又は肺の上皮細胞であることを特徴とする請求項1又は2に記載の細胞障害抑制剤。
【請求項4】
α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体と共に、飲食品、特別用途食品、保健機能食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、ペットフード、雑貨、肥料、栄養液の分野の何れかにおいて使用可能な1種又は2種以上の他の成分を含んでなる請求項1乃至3の何れかに記載の細胞障害抑制剤。
【請求項5】
他の成分が、増粘剤、糖類、糖アルコール類、ビタミン類、抗酸化剤及びローヤルゼリーから選ばれる何れか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項4に記載の細胞障害抑制剤。
【請求項6】
増粘剤がコラーゲン、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸の塩類から選ばれる何れか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5記載の細胞障害抑制剤。
【請求項7】
ビタミン類が、L−アスコルビン酸2−グルコシド、糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン、糖転移ナリンジンから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5に記載の細胞障害抑制剤。
【請求項8】
α,α−トレハロース及び/又はα,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、合計0.1質量%以上含有することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の細胞障害抑制剤。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の細胞障害抑制剤を含有する細胞障害抑制用の組成物。
【請求項10】
飲食品、特別用途食品、保健機能食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、ペットフード、雑貨、肥料、栄養液の何れかであることを特徴とする請求項9記載の組成物。
【請求項11】
細胞障害を抑制する旨を表示を付して細胞障害の抑制に使用することを特徴とする請求項9又は10に記載の組成物。

【公開番号】特開2006−316053(P2006−316053A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111293(P2006−111293)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】