説明

組成物、ドライフィルム、硬化物及びプリント配線板

【課題】表面硬化性と硬化深度との両立を図ることができる組成物、特にレジスト組成物を提供する。
【解決手段】露光前乾燥塗膜厚25μmあたり、レーザー波長400nmの吸光度L400が0.5−1.2、かつ、レーザー波長410nmにおける吸光度L410が0.01−0.5であり、かつ、L400>L410であることを特徴とする組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー発振波長が400〜410nmのレーザー発振光源によって直接パターン描画し、希アルカリ水溶液により現像、形成されたパターンを光硬化および熱硬化する工程に使用するレジストに好適な組成物、及びその組成物を適用したドライフィルム、硬化物及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源あるいは省エネルギーといった環境を配慮したフォトリソグラフィー法として、レーザー光を光源とした直接描画方式(レーザーダイレクトイメージング)が実用化されている。マスクパターンを必要としないことが特長であり、製造工程の短縮とコストの大幅な削減が可能となり、多品種小ロット、短納期に適した手法である。
【0003】
直接描画装置は、従来のマスクパターン露光のような露光部全面を同時に露光することができないため、従来のマスクパターン露光と同等の露光時間を得るためには高感度なレジストとハイパワーの光源を選択する必要がある。さらには、従来のマスクパターン露光に使用されている光源はメタルハライドランプ等の波長が300〜500nmと広いものなのに対して、直接描画装置の光源と波長はガスレーザー、レーザーダイオード、固体レーザーなどであり波長としては、355nm、405nm、488nmが使用されることが多い。
【0004】
この中でも最近、レーザーダイオードを用いた405nmの直接描画装置が注目を浴びており、この発振波長のレーザー発振光源として青紫レーザーダイオードが広く知られている。しかしながら青紫レーザーダイオードは、単独では直接パターン描画するための露光光源として充分なパワーがない。このため、実際のレーザー直描装置は、数十個から百数個のレーザーダイオードを束ねて光源としている。各レーザーダイオードは単一波長の光線を発振するが、その波長は400nmから410nmまで個々に異なる。このため、青紫レーザーダイオードを用いた直描装置から発せられるレーザー光は400nm〜410nmの範囲で分布を持っている。
【0005】
従って、たとえば、レジスト組成物の吸光度を中心波長である405nmに適合させるように調節しても、所望する表面硬化性と硬化深度とを両立することができず、両立させるために多くの露光量を必要とする。このことは、400nmや410nmに適合させるように調整しても同様である。
【0006】
一方、400nm〜410nmのレーザー直描装置に対応するレジストとして特許文献1:特開2007−78893号公報がある。この公報に記載された発明は、400〜410nmの範囲中において各波長での感度差を比較的少なくすることによって安定した皮膜を形成することを目的として、極大吸収波長が340〜500nmである増感剤を2種以上含有することを特徴とする感光性組成物を提案している。この発明では380〜420nmの波長域に分光感度の極大値を有すると共に、400〜410nmの領域におけるパターン形成可能な最小露光量Sが210mJ/cm以下であり、かつ該領域での最小露光量の最大値Smaxと、最小露光量の最小値Sminとが、次式、Smax/Smin≦1.2を満たすことが示されており、この手法により感度をあわせることはできる。
【0007】
しかし、レジストの解像性(レジストのパターン形状)、特にソルダーレジストごとき比較的厚膜の着色系レジストの場合、着色剤の吸収領域も存在するため、異なる光源で感度が同じであるから各波長のラインの形状が一定であるとは限らず、解像性の問題は解決されたといえない。
【0008】
また、特許文献2:特開2007−102184号公報には365nm及び405nmの光に対する吸光度がそれぞれ0.1以上0.9以下の範囲内となることを特徴とする感光性樹脂組成物が開示されている。この公報に記載された発明では、365nmと405nmの光源を使用したときにそれぞれ解像性の良好な画像が得られるようであるが、本発明で課題としている400nmから410nmまで光源が分布を持っている場合、露光量を多くかけないときれいな形状が得られない。さらにソルダーレジストごとき比較的厚膜の着色系レジストの場合、着色するために使用する耐熱性の着色剤の吸収量も考慮しなければならない。すなわち、着色剤は本発明の範囲である400−410nmにおいて必ず無視できないほどの吸収スペクトルを有しており、それが吸光度に現れる。このとき、吸光度が所定の範囲であってもほとんどが着色剤の吸収によるものであった場合、感度が得られず、解像性も悪くなる。
【0009】
そこで、本発明者らは、レーザー光の400nm〜410nmの範囲での分布に応じて、組成物の吸光度を調整することにより、多くの露光量を必要とすることなく、所望する表面硬化性と硬化深度とを両立することができることを見出し、本発明を完成した。
【特許文献1】特開2007−78893号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献2】特開2007−102184号公報(特許請求の範囲など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、400nmから410nmの分布を有するレーザー光に対して、短波長側では吸光度を高く設計し、長波長側では吸光度を低く設計することにより、表面硬化性と硬化深度との両立を図ることができる組成物、特にレジスト組成物を提供することにある。
【0011】
更に本発明の目的は、効果的に着色剤を選択することにより着色系レジストであっても解像性を良好とすることができる組成物、特にプリント配線板用ソルダーレジスト組成物を提供することにある。
【0012】
更に本発明の目的は、この組成物を適用したドライフィルム、硬化物及びプリント配線板を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)乾燥塗膜形成後レーザー露光される組成物であって、波長400nmの吸光度をL400とし、波長410nmにおける吸光度をL410とした時に、露光前乾燥塗膜厚25μmあたり、吸光度L400が0.5−1.2、吸光度L410が0.01−0.5であり、かつ、吸光度L400>吸光度L410であることを特徴とする組成物。
【0014】
(2)レジスト組成物である(1)記載の組成物。
【0015】
(3)波長405nmの吸光度をL405とした時に、露光前乾燥塗膜厚25μmあたり、吸光度L405が0.3−0.9であり、且つ吸光度L400>吸光度L405>吸光度L410であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の組成物。
【0016】
(4)露光前乾燥塗膜厚25μmあたり、吸光度L400と吸光度L400の差(L400−L410)が0.1〜0.5の範囲内であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
【0017】
(5) (A)カルボン酸含有樹脂、(B)光重合開始剤、及び(C)着色剤を含有する(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
【0018】
(6)(B)光重合開始剤が、
下記一般式(I)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤、
下記一般式(II)で表されるアミノアセトフェノン系光重合開始剤、
下記一般式(III)で表されるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、及び
下記一般式(IV)で表されるチタノセン系光重合開始剤
からなる群から選ばれた1種以上の光重合開始剤であることを特徴とする(1)〜(5)]
のいずれかに記載の組成物。
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わし、Rは、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わす。R、Rは、炭素数1〜12のアルキル基又はアリールアルキル基を表わし、R、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は2つが結合した環状アルキル基を表わす。R、Rは、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルコシ基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アリール基、又はハロゲン原子、アルキル基もしくはアルコキシ基で置換されたアリール基、又はいずれか一方が炭素数1〜20のカルボニル基を表わす。R、R10は、ハロゲン原子、アリール基、ハロゲン化アリール基、複素環含有ハロゲン化アリール基を表わす。)
(7)前記一般式(I)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤(B1)が、下記式(V)であらわされるオキシムエステル系光重合開始剤であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の組成物。
【0021】
【化2】

【0022】
(8) 着色剤(C)がフタロシアニン・ブルーであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の組成物。
【0023】
(9) (D)増感剤を更に含む(1)〜(8)のいずれかに記載の組成物。
【0024】
(10)(D)増感剤がチオキサントン系、及び/又はジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物であることを特徴とする(9)に記載の組成物。
【0025】
(11)前記ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物がジアルキルアミノベンゾフェノンまたはクマリン化合物であることを特徴とする(10)に記載の組成物。
【0026】
(12)(1)〜(11)のいずれかに記載の組成物を、キャリアフィルムに塗布・乾燥して得られる光硬化性・熱硬化性のドライフィルム。
【0027】
(13)(1)〜(11)のいずれかに記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、又は前記請求項12記載のドライフィルムを、銅上にて光硬化して得られる硬化物。
【0028】
(14)(1)〜(11)のいずれかに記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、又は前記請求項12記載のドライフィルムを、波長が400〜410nmのレーザー光によって光硬化して得られる硬化物。
【0029】
(15)(1)〜(11)のいずれかに記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、又は前記請求項12記載のドライフィルムを、膜厚10μmから最大で100μmの範囲で波長が400〜410nmのレーザー光によって光硬化させた後、熱硬化して得られるプリント配線板。
【発明の効果】
【0030】
本発明の組成物は、複数のレーザーダイオードを束ねて露光光源とした400〜410nmの分布を持つレーザー光に対して、その短波長側では吸光度を高く設計し、長波長側では吸光度を低く設計することにより、表面硬化性と硬化深度の両立を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
まず、本発明の組成物を構成する各成分について説明する。
【0032】
(A)カルボン酸含有樹脂
本発明の組成物に含まれるカルボン酸含有樹脂(A)としては、下記に列挙するような樹脂が挙げられる。
【0033】
(1)多官能エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボン酸含有樹脂、
(2)ポリオール誘導体などの水酸基含有ポリマーに、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた水酸基及びカルボン酸含有樹脂、
(3)多官能エポキシ化合物と、不飽和モノカルボン酸と、一分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と、エポキシ基と反応するアルコール性水酸基以外の1個の反応性基を有する化合物との反応生成物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボン酸含有樹脂、
(4)一分子中に少なくとも2個のオキセタン環を有する多官能オキセタン化合物に不飽和モノカルボン酸を反応させ、得られた変性オキセタン樹脂中の第一級水酸基に対して飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボン酸含有樹脂。
【0034】
ただしこれら列挙したカルボン酸含有樹脂に限定されるものではなく、ポリエステル構造、ポリエーテル構造、ポリカーボネート構造、ポリウレタン構造を有しているのでも良い。
【0035】
これらの中で(1)、(3)及び(4)は既に不飽和二重結合を有しており感光性の点から好ましい。
【0036】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0037】
上記のようなカルボン酸含有樹脂(A)は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0038】
また、上記カルボン酸含有樹脂(A)の酸価は、40〜200mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは45〜120mgKOH/gの範囲である。カルボン酸含有樹脂の酸価が40mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、200mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せ、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。
【0039】
また、上記カルボン酸含有樹脂(A)の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000、さらには5,000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると、タックフリー性能が劣ることがあり、露光後の塗膜の耐湿性が悪く現像時に膜減りが生じ、解像度が大きく劣ることがある。一方、重量平均分子量が150,000を超えると、現像性が著しく悪くなることがあり、貯蔵安定性が劣ることがある。
【0040】
このようなカルボン酸含有樹脂(A)の配合量は、全組成物中に、20〜60質量%、好ましくは30〜50質量%である。上記範囲より少ない場合、塗膜強度が低下したりするので好ましくない。一方、上記範囲より多い場合、粘性が高くなったり、塗布性等が低下したりするので好ましくない。
【0041】
(B)光重合開始剤
光重合開始剤(B)としては、上記一般式(I)で表される基を有するオキシムエステル系光重合開始剤(B1)、上記一般式(II)で表される基を有するα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤(B2)、上記式(III)で表される基を有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(B3)、及び上記式(IV)で表わされるチタノセン系光重合開始剤からなる群から選択される1種以上の光重合開始剤を使用することが好ましい。
【0042】
(B1)オキシムエステル系光重合開始剤
上記一般式(I)で表わされる基を有するオキシムエステル系光重合開始剤としては、上記一般式(V)で表わされる、2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オンの他に、下記一般式(VI)で表される化合物
【0043】
【化3】

【0044】
(式中、R9は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基(アルコキシル基を構成するアルキル基の炭素数が2以上の場合、アルキル基は1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、またはフェノキシカルボニル基を表し、
R10、R12は、それぞれ独立に、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基またはベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表し、
R11は、水素原子、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基またはベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表す)、
下記一般式(VII)で表される化合物
【0045】
【化4】

【0046】
(式中、R13およびR14は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基を表し、
R15、R16、R17、R18およびR19は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、MはS、O、-NHを表しおよびn及びmは0〜5の整数を表す)
が挙げられる。
【0047】
これらの化合物のうち特に好ましくは、上記一般式(V)で表される2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン、および式(VI)で表される化合物がより好ましい。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のCGI−325、イルガキュアー OXE01、イルガキュアー OXE02等が挙げられる。これらのオキシムエステル系光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
(B2)アミノアセトフェノン系光重合開始剤
α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379などが挙げられる。
【0049】
(B3)アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−
ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなど
が挙げられる。市販品としては、BASF社製のルシリンTPO、ルシリンTPO−L、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー819などが挙げられる。
【0050】
(B4)チタノセン系光重合開始剤
前記一般式(VI)で表されるチタノセン系光重合開始剤としては、ビス(η−シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウムが挙げられる。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー784などが挙げられる。
【0051】
(光重合開始剤の配合)
このような光重合開始剤(B)の配合量は、前記カルボン酸含有樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜30質量部、好ましくは0.5〜15質量部の範囲から選ぶことができる。0.01質量部未満であると、銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離したり、耐薬品性等の塗膜特性が低下したりするので好ましくない。一方、30質量部を超えると、光重合開始剤(B)のソルダーレジスト塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向があるために好ましくない。
【0052】
なお、前記式(I)で表される基を有するオキシムエステル系光重合開始剤の場合、その配合量は、前記カルボン酸含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.01〜5質量部の範囲から選ぶことが望ましい。
【0053】
(C)着色剤
(着色剤の種類)
本発明の特徴の一つである着色剤(C)は、通常着色目的として使用されるものであるが、本発明における400〜410nmのレーザー光を用いた場合、青色顔料(例えば、フタロシアニン・ブルー)を添加したものの方が、より低露光量で光沢感度が得られること見出した。
【0054】
この青色顔料(例えば、フタロシアニン・ブルー系顔料)の増感効果の理由は、明らかでないが、例えば本発明の範囲である25μm当たりの吸光度が0.5以下の樹脂組成物に、フタロシアニン・ブルーを添加し、吸光度を0.5以上にするだけで十分な表面硬化性が低露光量で得られることが明らかとなった。また、この増感効果は、表面の反応性(光沢改善)に効果があり、硬化深度は逆に悪くなる。すなわち、レーザー光を反射するような働きをする。この働きはレジストの形状の安定化にも有効である。
【0055】
例えば、レジストの断面形状を見た場合、フタロシアニン・ブルーを含まず、吸光度が0.5よりも低い場合は、レジストの断面形状は底部が大きく広がった形状であり、また、塗膜表面部の光沢もない状況にある。また、フタロシアニン・ブルーが含まず、吸光度が0.5よりも大きな場合は、表層部が大きく広がり底部は細くなる状況がある。しかし、本発明の吸光度の適正範囲内で、青色顔料(C’)、を含有する場合、レジスト膜厚が10〜100μmの範囲内で、レーザー光源の照射寸法とほぼ同じ寸法の底部を有するレジスト形状が得られ且つ表面の光沢が得られることを見出した。
【0056】
このような着色剤(C)の適正なの添加量は、乾燥塗膜の400nmの波長における吸光度が、25μm当たり0.5〜1.2となる範囲であれば任意に添加することができる。
【0057】
このような青色顔料(E)としては、α型銅フタロシアニン・ブルー、α型モノクロル銅フタロシアニン・ブルー、β型銅フタロシアニン・ブルー、ε型銅フタロシアニン・ブルー、コバルトフタロシアニン・ブルー、メタルフリーフタロシアニン・ブルーなどのフタロシアニン・ブルー系顔料、紺青などの無機顔料が挙げられるが、特にフタロシアニン・ブルー系顔料が好ましい。
【0058】
他にも本発明の範囲を超えない範囲で加えても良い着色剤は以下のとおりである。
【0059】
青色着色剤
青色着色剤は上記のフタロシアニン系以外にも、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)番号が付されているものを挙げることができる。
【0060】
Pigment Blue 15、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:6、Pigment Blue 16、Pigment Blue 60、
染料系としては
Solvent Blue 35 、Solvent Blue 63 、Solvent Blue 68 、Solvent Blue 70 、Solvent Blue 83、Solvent Blue 87、Solvent Blue 94、Solvent Blue 97、Solvent Blue 122、Solvent Blue 136、Solvent Blue 67、Solvent Blue 70
等を使用することができる。上記以外にも金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0061】
緑色着色剤
緑色着色剤としては同様にフタロシアニン系、アントラキノン系があり、具体的には
Pigment Green 7、Pigment Green 36、Solvent Green 3、Solvent Green 5
Solvent Green 20、Solvent Green 28
等を使用することができる。上記以外にも金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0062】
黄色着色剤
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等があり具体的には以下のものが挙げられる。
【0063】
(アントラキノン系)
Solvent Yellow 163、Pigment Yellow 24、Pigment Yellow 108、Pigment Yellow 193、Pigment Yellow 147、Pigment Yellow 199、Pigment Yellow 202
(イソインドリノン系)
Pigment Yellow 110、Pigment Yellow 109、Pigment Yellow 139、Pigment Yellow 179、Pigment Yellow 185
(縮合アゾ系)
Pigment Yellow 93、Pigment Yellow 94、Pigment Yellow 95、Pigment Yellow 128、Pigment Yellow 155、Pigment Yellow 166、Pigment Yellow 180
(ベンズイミダゾロン)
Pigment Yellow 120、Pigment Yellow 151、Pigment Yellow 154、Pigment Yellow 156、Pigment Yellow 175、Pigment Yellow 181
(モノアゾ)
PigmentYellow1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,100,104,105,111,116,167,168,169,182,183,
(ジスアゾ)
PigmentYellow12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,172,174,176,188,198
赤色着色剤
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがあり、具体的には以下のものが挙げられる。
【0064】
(モノアゾ系)
Pigment Red
1,2,3,4,5,6,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,112,114,146,147,151,170,184,187,188,193,210,245,253,258,266,267,268,269,
(ジスアゾ系)
Pigment Red 37,38,41
(モノアゾレーキ)
Pigment Red
48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:2,57:1,58:4,63:1,63:2,64:1,68
(ベンズイミダゾロン)
Pigment Red 171、Pigment Red 175、Pigment Red 176、Pigment Red 185、Pigment Red 208
(ぺリレン)
Solvent Red 135、Solvent Red 179、Pigment Red 123、Pigment Red 149、Pigment Red 166、Pigment Red 178、Pigment Red 179、Pigment Red 190、Pigment Red 194、Pigment Red 224
(ジケトピロロピロール系)
Pigment Red 254、Pigment Red 255、Pigment Red 264、Pigment Red 270、Pigment Red 272
(縮合アゾ)
Pigment Red 220、Pigment Red 144、Pigment Red 166、Pigment Red 214、Pigment Red 220、Pigment Red 221、Pigment Red 242
(アンスラキノン系)
Pigment Red 168、Pigment Red 177、Pigment Red 216、Solvent Red 149、Solvent Red 150、Solvent Red 52、Solvent Red 207
(キナクリドン系)
Pigment Red 122、Pigment Red 202、Pigment Red 206、Pigment Red 207、Pigment Red 209
その他色調を調整する目的で紫、オレンジ、茶色、黒などの着色剤を加えても良い。
【0065】
具体的に例示すれば、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet 13、36
C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ14、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ46、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ63、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73
C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25;C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7等がある。
【0066】
(着色剤の配合)
着色剤の配合割合は、カルボン酸含有樹脂(A)100質量部に対して、0.010〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部、特に好ましくは0.5〜2質量部とする。
【0067】
(D)増感剤
本発明に用いる増感剤としてはチオキサントン化合物および3級アミン化合物が好ましい。(D1)チオキサントン系
チオキサントン化合物の具体例を挙げると、例えば、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンである。
【0068】
(D2)ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物
(ジアルキルアミノベンゾフェノール/クマリン化合物など)
ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物として、例えば、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達社製ニッソキュアーMABP)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(7−(ジエチルアミノ)−4−メチルクマリン)等のジアルキルアミノ基含有クマリン化合物、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアーEPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬社製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)である。
【0069】
上記した中でも、本発明の組成物には、チオキサントン化合物が含まれることが深部硬化性の面から好ましく、中でも、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物が好ましい。
【0070】
このようなチオキサントン化合物の配合量としては、上記カルボン酸含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下の割合である。チオキサントン化合物の配合量が多すぎると、厚膜硬化性が低下して、製品のコストアップに繋がるので、好ましくない。
【0071】
3級アミン化合物としては、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物が好ましく、中でも、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、最大吸収波長が350〜410nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物が特に好ましい。ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物としては、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンが、毒性も低く好ましい。最大吸収波長が350〜410nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物は、最大吸収波長が紫外線領域にあるため、着色が少なく、無色透明な感光性組成物はもとより、着色顔料を用い、着色顔料自体の色を反映した着色ソルダーレジスト膜を提供することが可能となる。特に、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンが波長400〜410nmのレーザー光に対して優れた増感効果を示すことから好ましい。
【0072】
このような3級アミン化合物の配合量としては、上記カルボン酸含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部の割合である。3級アミン化合物の配合量が0.1質量部以下であると、十分な増感効果を得ることができない傾向にある。20質量部を超えると、3級アミン化合物による乾燥ソルダーレジスト塗膜の表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。
これらの光重合開始剤、光開始助剤および増感剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
【0073】
(E)その他の光重合開始剤、光開始助剤、増感剤
他に本発明の組成物に好適に用いることができる光重合開始剤、光開始助剤および増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、キサントン化合物、および3級アミン化合物等を挙げることができる。
【0074】
ベンゾイン化合物の具体例を挙げると、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルである。
【0075】
アセトフェノン化合物の具体例を挙げると、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンである。
【0076】
アントラキノン化合物の具体例を挙げると、例えば、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンである。
【0077】
ケタール化合物の具体例を挙げると、例えば、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールである。
【0078】
ベンゾフェノン化合物の具体例を挙げると、例えば、ベンゾフェノン、4−ベンゾイルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−エチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−プロピルジフェニルスルフィドである。
【0079】
これらの光重合開始剤、光開始助剤および増感剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
【0080】
このような光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤の総量は、前記カルボン酸含有樹脂(A)100質量部に対して35質量部以下となる範囲であることが好ましい。35質量部を超えると、これらの光吸収により深部硬化性が低下する傾向にある。
【0081】
(分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物)
本発明の組成物は分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を含むことができる。この化合物は、活性エネルギー線照射により、光硬化して、前記エチレン性不飽和基含有カルボン酸含有樹脂(A)を、アルカリ水溶液に不溶化、又は不溶化を助けるものである。このような化合物としては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。
【0082】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などが、挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる
このような分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物の配合量は、前記エチレン性不飽和基含有カルボン酸含有樹脂(A)100質量部に対して、5〜100質量部、より好ましくは、1〜70質量部の割合である。前記配合量が、5質量部未満の場合、光硬化性が低下し、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像により、パターン形成が困難となるので、好ましくない。一方、100質量部を超えた場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が低下して、塗膜が脆くなるので、好ましくない。
【0083】
(熱硬化性樹脂組成物)
本発明の組成物には、耐熱性を付与するために、熱硬化性樹脂を加えることができる。特に好ましいのは分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有する熱硬化性成分である。
【0084】
このような分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4または5員環の環状エーテル基、又は環状チオエーテル基のいずれか一方又は2種類の基を2個以上有する化合物であり、例えば、分子内に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に少なくとも2つ以上のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に2個以上のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0085】
前記多官能エポキシ化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、大日本インキ化学工業社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドGY250、アラルダイドGY260、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコートYL903、大日本インキ化学工業社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート152、エピコート154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン社製エピコート807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート604、東都化成社製のエポトートYH−434、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY−350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、旭電化工業社製EPX−30、大日本インキ化学工業社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコート157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のエピコートYL−931、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドPT810、日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄化学社製ESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB−3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR−102、YR−450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はそれらの混合物が好ましい。
【0086】
前記多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0087】
前記分子中に2個以上の環状チオエーテル基を有する化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂 YL7000などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0088】
前記分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量は、前記カルボン酸含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して、好ましくは0.6〜2.5当量、より好ましくは、0.8〜2.0当量となる範囲にある。分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量が0.6未満である場合、ソルダーレジスト膜にカルボキシル基が残り、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが低下するので、好ましくない。一方、2.5当量を超える場合、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することにより、塗膜の強度などが低下するので、好ましくない。
【0089】
(熱硬化性触媒)
上記分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を使用する場合、熱硬化触媒を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物など、また市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を前記熱硬化触媒と併用する。
【0090】
これら熱硬化触媒の配合量は、通常の量的割合で充分であり、例えばカルボン酸含有樹脂(A)または分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
【0091】
(フィラーの配合)
本発明の組成物は、その塗膜の物理的強度等を上げるために、必要に応じて、フィラーを配合することができる。このようなフィラーとしては、公知慣用の無機又は有機フィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、球状シリカおよびタルクが好ましく用いられる。さらに、1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物や前記多官能エポキシ樹脂(D−1)にナノシリカを分散したHanse−Chemie社製のNANOCRYL(商品名) XP 0396、XP 0596、XP 0733、XP 0746、XP 0765、XP 0768、XP 0953、XP 0954、XP 1045(何れも製品グレード名)や、Hanse−Chemie社製のNANOPOX(商品名) XP 0516、XP 0525、XP 0314(何れも製品グレード名)も使用できる。これらを単独で又は2種以上配合することができる。
【0092】
これらフィラーの配合量は、上記カルボン酸含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは300質量部以下、より好ましくは0.1〜300質量部、特に好ましくは、0.1〜150質量部である。フィラーの配合量が、300質量部を超えた場合、組成物の粘度が高くなり印刷性が低下し、硬化物が脆くなるので好ましくない。
【0093】
(有機溶剤の配合)
さらに、本発明の組成物は、上記カルボン酸含有樹脂(A)の合成や組成物の調整のため、又は基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。
【0094】
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0095】
(その他の成分の配合)
本発明の組成物は、さらに必要に応じて、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、酸化防止剤、防錆剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0096】
(組成物の吸光度分布特性)
本発明の組成物は、波長400〜410nmの範囲内において、短波長側では吸光度を高く設計し、長波長側では吸光度を低く設計している。組成物の露光前乾燥塗膜厚25μmあたり,発信波長が400nmにおける吸光度をL400、同405nmにおける吸光度をL405、410nmにおける吸光度をL410とすると、L400>L405>L410である。吸光度が低くなると表面硬化性が低下し、吸光度が高くなると硬化深度が得にくくなるので、発信波長400nmにおける吸光度L400は0.5〜1.2が好ましい。発信波長405nmにおける吸光度L405は0.3〜0.9であることが好ましい。発信波長が410nmにおける吸光度L410は0.01〜0.5、特に0.3〜0.9であることが好ましい。
【0097】
吸光度L400と吸光度L410との差L400−L410は、0.1〜0.5であることが好ましい。差が小さすぎると表面硬化と硬化深度を両立するために多くの露光量を必要とする。差が大きすぎると表面硬化と硬化深度が出来なくなる。
【0098】
(ドライフィルム)
本発明の組成物は、キャリアフィルムと、該キャリアフィルム上に形成された上記組成物からなる層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。
【0099】
ドライフィルム化に際しては、本発明の感光性樹脂組成物を適切な粘度に前記有機溶剤で希釈し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で支持体上に均一な厚さに塗布し、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10〜100μm、好ましくは15〜40μmの範囲で適宜選択される。
【0100】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。
【0101】
キャリアフィルム上に成膜した後、さらに、膜の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、膜の表面に剥離可能なカバーフィルムを積層することが望ましい。
【0102】
剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、カバーフィルムを剥離するときに膜と支持体との接着力よりも膜とカバーフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0103】
(組成物の一使用例)
本発明の組成物は、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。また、上記組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったものを基材上に張り合わせることにより、樹脂絶縁層を形成できる。青紫レーザーダイレクト露光機により直接パターン露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。さらに、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、前記カルボン酸含有樹脂(A)のカルボキシル基と、分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0104】
上記基材としては、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層版等の材質を用いたもので全てのグレード(FR−4等)の銅張積層版、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0105】
本発明の組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0106】
以下のように本発明の光硬化性樹脂組成物を塗布し、揮発乾燥した後、得られた塗膜に対し、露光(活性エネルギー線の照射)を行う。塗膜は、露光部(活性エネルギー線により照射された部分)が硬化する。
【0107】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、直接描画装置(コンピューターからのCADデータにより直接活性エネルギー線照射で画像を描くダイレクトイメージング装置)を用いることができる。活性エネルギー線としては、青紫レーザーダイオードを光源としている直描装置が使用できる。また、その露光量は膜厚等によって異なるが、一般には5〜200mJ/cm2、好ましくは5〜100mJ/cm2、さらに好ましくは5〜50mJ/cm2の範囲内とすることができる。上記直接描画装置としては、例えば日立ビアメカニクス社製、富士フィルム社製、ORC製作所製等のものを使用することができ、青紫レーザーダイオードだけでなく、波長の異なる光源を併用している場合でもレーザーダイオードを用いた装置であればいずれの装置を用いてもよい。
【0108】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【実施例】
【0109】
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。また、配合量はいずれも質量部を示す。
【0110】
樹脂合成例1
攪拌機、温度計、環流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、EOCN−104S、軟化点92℃、エポキシ当量220)660g、カルビトールアセテート 421.3g、及びソルベントナフサ 180.6gを導入し、90℃に加熱・攪拌し、溶解した。次に、一旦60℃まで冷却し、アクリル酸 216g、トリフェニルホスフィン 4.0g、メチルハイドロキノン1.3gを加えて、100℃で12時間反応させ、酸価が0.2mgKOH/gの反応生成物を得た。これにテトラヒドロ無水フタル酸 241.7gを仕込み、90℃に加熱し、6時間反応させた。これにより、酸価50mgKOH/g、二重結合当量(不飽和基1モル当りの樹脂のg重量)400、重量平均分子量7,000のカルボン酸含有樹脂(A)の溶液を得た。以下、このカルボン酸含有樹脂の溶液を、A−1ワニスと称す。
【0111】
配合例
実施例及び比較例に示す種々の成分を配合例の割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、ソルダーレジスト用感光性樹脂組成物を調製した。ここで、得られた感光性樹脂組成物の分散度をエリクセン社製グラインドメータによる粒度測定にて評価したところ15μm以下であった。
【0112】
実施例、比較例を表1に示す。
【0113】
【表1−1】

【0114】
【表1−2】

【0115】
【表2】

【0116】
レジスト性能評価:
<吸光度>
吸光度の測定には、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製 Ubest−V−570DS)、及び積分球装置(日本分光株式会社製 ISN−470)を使用した。配合例1〜10の光硬化性・熱硬化性の樹脂組成物をガラス板にアプリケーター塗布後、熱風循環式乾燥炉を用いて80℃,30分乾燥し、光硬化性・熱硬化性の樹脂組成物の乾燥塗膜をガラス板上に作製した。紫外可視分光光度計及び積分球装置を用いて、光硬化性・熱硬化性の樹脂組成物を塗布したガラス板と同一のガラス板で、500〜300nmにおける吸光度ベースラインを測定した。作製した乾燥塗膜付きガラス板の吸光度を測定し、ベースラインから乾燥塗膜の吸光度を算出でき、目的の光の波長405nmにおける吸光度を得た。塗布膜厚のずれによる吸光度のずれを防ぐため、この作業をアプリケーターによる塗布厚を4段階に変えて行い、塗布厚と405nmにおける吸光度のグラフを作成し、その近似式から膜厚25μmの乾燥塗膜の吸光度を算出して、それぞれの吸光度とした。
【0117】
その吸光度の評価結果を表2に示す。
<適正露光量>
前記実施例及び比較例の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、銅厚70μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスクリーン印刷法により全面に塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で60分間乾燥させる。乾燥後、青紫レーザーダイオードを搭載した直接描画装置(PENTAX社製DI-μ)を用いてステップタブレット(KodakNo2)を介して露光し、現像(30℃、0.2MPa、1質量%炭酸ナトリウム水溶液)を60秒で行った際残存するステップタブレットのパターンが6段の時を最適露光量とした。
【0118】
<表面硬化性>
前記実施例及び比較例の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、銅厚35μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスクリーン印刷法により全面に塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で60分間乾燥させる。乾燥後、青紫レーザーダイオードを搭載した直接描画装置(PENTAX社製DI-μ)を用いて各最適露光量で露光し、現像(30℃、0.2MPa、1質量%炭酸ナトリウム水溶液)を60秒で行った。その後循環式熱風乾燥炉にて150℃で60分間加熱してソルダーレジスト層を形成する。このとき目視で表面の光沢度合いを確認した。評価結果は以下のとおり。
【0119】
○:表面に均一に光沢がある。
【0120】
×:表面に部分的もしくは全面に光沢が無い部分が存在する。
【0121】
<断面形状>
配合例1〜10の光硬化性・熱硬化性の樹脂組成物を、ライン/スペースが300/300μm、銅厚50μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスクリーン印刷法により塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させる。乾燥後、高圧水銀灯を搭載した露光装置を用いて露光した。露光パターンは、スペース部に100μmのラインを描画させるパターンを使用した。露光量は、下記適正露光量評価によって得られた露光量とした。露光後、炭酸ナトリウム水溶液によって現像を行ってパターンを形成し、高圧水銀灯で1000mJ/cmの紫外線照射後、150℃,60分の熱硬化をすることにより硬化塗膜を得た。このとき硬化塗膜の設計値100μmライン部のクロスセクションを観察した。
【0122】
この断面形状を図1に記載した模式図のように、A〜Eの5段階に別けて評価した。図1中、評価A〜Eは、以下のような現象が発生した時の模式図を示す。特に、A評価の場合、設計値からのずれがライン上部、下部ともに5μm以内のものとした。その結果を表2に示す。ここで最も悪い評価はEである。
【0123】
A評価:設計幅通りの理想状態
B評価:耐現像性不足等による表面層の食われ発生
C評価:アンダーカット状態
D評価:ハレーション等による線太り発生
E評価:表面層の線太りとアンダーカットが発生。
【0124】
ここで、A評価がソルダーレジストとしては良好なレベルである。これに対し、D評価はソルダーレジストとして使用は可能であるが、寸法の再現性の観点から好ましくなく、膜厚によっては(薄い場合)無視できない程度に寸法が大きくなる。また、E評価のものは、ライン、アンダーカット部が剥離しやすく、ソルダーレジストとして使用不可能なレベルである。
【0125】
表1,2から、波長400〜410の範囲における吸光度特性が本発明の範囲内にある実施例1−6の組成物は、いずれも表面硬化性と断面形状(硬化深度の指標)がいずれも良好である。これに対し、吸光度特性が本発明の範囲から外れる比較例のうち、L400が小さく青色着色剤を有していない比較例1は、断面形状は比較的良好であるが、表面硬化性に劣る。比較例2は、表面硬化性に優れているが、断面形状(硬化深度)に劣ることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】露光・現像によって得られた実施例及び比較例の樹脂組成物の断面形状の模式図で、A乃至Eはそれぞれ異なる評価(硬化深度特性の指標)の形状を示す。
【符号の説明】
【0127】
1a ライン幅の設計値
1b 露光・現像後の樹脂組成物
1c 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥塗膜形成後レーザー露光される組成物であって、波長400nmの吸光度をL400とし、波長410nmにおける吸光度をL410とした時に、露光前乾燥塗膜厚25μmあたり、吸光度L400が0.5−1.2、吸光度L410が0.01−0.5であり、かつ、吸光度L400>吸光度L410であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
レジスト組成物である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
波長405nmの吸光度をL405とした時に、露光前乾燥塗膜厚25μmあたり、吸光度L405が0.3−0.9であり、且つ吸光度L400>吸光度L405>吸光度L410であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
露光前乾燥塗膜厚25μmあたり、吸光度L400と吸光度L400の差(L400−L410)が0.1〜0.5の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
(A)カルボン酸含有樹脂、(B)光重合開始剤、及び(C)着色剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
(B)光重合開始剤が、
下記一般式(I)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤、
下記一般式(II)で表されるアミノアセトフェノン系光重合開始剤、
下記一般式(III)で表されるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、及び
下記一般式(IV)で表されるチタノセン系光重合開始剤
からなる群から選ばれた1種以上の光重合開始剤であることを特徴とする請求項1〜5
のいずれかに記載の組成物。
【化1】

(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わし、Rは、炭素数1〜7のアルキル基、又はフェニル基を表わす。R、Rは、炭素数1〜12のアルキル基又はアリールアルキル基を表わし、R、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は2つが結合した環状アルキル基を表わす。R、Rは、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルコキシ基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アリール基、又はハロゲン原子、アルキル基もしくはアルコキシ基で置換されたアリール基、又はいずれか一方が炭素数1〜20のカルボニル基を表わす。R、R10は、ハロゲン原子、アリール基、ハロゲン化アリール基、複素環含有ハロゲン化アリール基を表わす。)
【請求項7】
前記一般式(I)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤(B1)が、下記式(V)であらわされるオキシムエステル系光重合開始剤であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【化2】

【請求項8】
着色剤(C)がフタロシアニン・ブルーであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
(D)増感剤を更に含む請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
(D)増感剤がチオキサントン系、及び/又はジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物であることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物がジアルキルアミノベンゾフェノンまたはクマリン化合物であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を、キャリアフィルムに塗布・乾燥して得られる光硬化性・熱硬化性のドライフィルム。
【請求項13】
前記請求項1乃至11のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、又は前記請求項12記載のドライフィルムを、銅上にて光硬化して得られる硬化物。
【請求項14】
前記請求項1乃至11のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、又は前記請求項12記載のドライフィルムを、波長が400〜410nmのレーザー光によって光硬化して得られる硬化物。
【請求項15】
前記請求項1乃至11のいずれか一項に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、又は前記請求項12記載のドライフィルムを、膜厚15μmから最大で100μmの範囲で波長が400〜410nmのレーザー光によって光硬化させた後、熱硬化して得られるプリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2009−86460(P2009−86460A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257930(P2007−257930)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】