説明

結合性モチーフおよび細胞機能を調整する方法

本発明は、結合性モチーフおよび細胞機能を調整する方法であって、GM−CSF/IL−3/IL−5受容体の共通β鎖(βc)のモチーフに等価な結合性モチーフ中の単一アミノ酸残基、好ましくはTyrを標的にする方法に関する。細胞機能は、細胞中の細胞生存および増殖に影響を与えるものが好ましい。方法は、細胞生存および増殖に関与する条件を処置するために使用することができ、さらに、たとえば移植の目的で、前駆細胞を増やすために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、結合性モチーフおよび細胞機能を調整する方法であって、GM−CSF/IL−3/IL−5受容体の共通β鎖(βc)のモチーフに等価な結合性モチーフ中の単一アミノ酸残基を標的にする方法に関する。細胞機能は、細胞中の細胞生存および増殖に影響を与えるものが好ましい。方法は、細胞生存および増殖に関する条件を処置するために使用することができ、さらに、たとえば移植の目的で、前駆細胞を増やすために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
背景
生体外および生体内で産生する造血細胞の数は、生存、増殖および成長因子受容体から発生する分化シグナルの集成によって、厳重に調整される。これらの過程を調整する分子機構を規定することは、造血前駆細胞およびそれらの骨髄移植用の子孫を増やす新しい方針を設計する上で、および我々が白血病、骨髄増多症、細胞製造および機能の正常なバランスが壊れる慢性的炎症を理解する上で、欠かせないものである。
【0003】
IL−3、GM−CSFおよびIL−5のような多くのサイトカインと、PDGFおよびIGF−1のような多くの成長因子は、当初、細胞増殖を促進する能力のため、分裂促進因子として発見されたが、後に、これら因子の多くはまた、プログラムされた細胞死、すなわちアポトーシスを抑制する能力によって、細胞生存の強力な調整因子としても知られた。これらの生物学的活性は、受容体二量化、チロシンキナーゼの活性、続いて起こる受容体細胞質尾部のチロシンリン酸化、src−ホモロジー2(SH2)ドメインまたはホスフォチロシン結合(PTB)ドメインを介して起こる多タンパク質シグナル伝達複合体の受容ホスフォチロシン残基への結合、および細胞応答を促進する下流シグナル伝達カスケードの活性化を含む、規則正しい一連のシグナル伝達事象を開始する、サイトカインまたは成長因子が同種の細胞表面受容体へ結合することによって調整される。
【0004】
サイトカインを始めとする多くの因子が細胞生存および増殖に寄与することができ、制御を簡単に操作するためのこれらの制御は、単純なものではない。1つの制御因子の識別は、有用な治療の開発および細胞製造と機能とがバランスを崩している状態の診断において手助けとなりうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サイトカインのようなシグナル伝達分子の作用は、あまり理解されていなかった。これらの細胞タンパク質は細胞内で活性を作動させるようである。しかし、実際の誘因メカニズムおよびこれらがどのようにして中継して、最終的な活性に至るのかについては知られていない。細胞周期は明らかに関与しているが、細胞生存、増殖および分化のようなシグナル伝達分子と受容体と作用との間のリンクは明らかではない。
【0006】
ヒト顆粒球−マクロファージコロニー−刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン−3(IL−3)およびIL−5を含むタンパク質は、正常な形質転換造血細胞を刺激することができる。各々について、シグナル形質導入のための開始事象は、その受容体表面へタンパク質が結合することである。これらの受容体は、α鎖および共通β鎖(βc)のようなサブユニットから構成されてもよい。細胞質タンパク質が表面受容体に結合することによってβcの関与が起こる結果、細胞生存、増殖、適切な系列における分化および成
熟細胞エフェクター機能が起こり、生物学的活性が誘発された受容体の媒介においてβcによって果たされる主なシグナル伝達を強調する事体となる。
【0007】
受容体の活性化およびシグナル伝達カスケードの開始における第1事象の1つは、βcのチロシンリン酸化である。これは、受容体シグナル伝達サブユニットの間の共通のテーマであり、エリスロポエチン(EPO)受容体、トロンボポエチン(TPO)受容体および顆粒球コロニー刺激性因子(G−CSF)受容体のようなホモ二量体受容体、IL−6およびIL−2受容体、GM−CSF、IL−3およびIL−5受容体システムのようなヘテロ二量体受容体中で見ることができる。
【0008】
受容体シグナル伝達サブユニットのチロシンリン酸化は、シグナル伝達分子の関連のためのドッキング部位の創造において、重要なステップのようであった。受容体のチロシンリン酸化の重要性は、認知されているにもかかわらず、ある細胞においては、それがなくてもシグナル伝達は進むことができることが明らかになってきている。これは、全チロシンの置換がそれらの活性を止めることができない、EPOおよびTPO受容体において実証される。
【0009】
どのようにしてタンパク質がそれらの受容体に結合してこれらの分子およびそれらの受容体と関連した特定された機能となることができるのか、今まで、明らかではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要約
本発明の第1態様では、細胞質タンパク質に結合することができる結合性モチーフが提供され、モチーフは、下記アミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンまたはその等価物である)からなるモチーフである。
【0011】
GM−CSF受容体のβcのTyr577に対応する単一アミノ酸は、細胞活性化の調整において制御因子として同定されている。この理由により、本発明は、GM−CSFサイトカインのGM−CSF受容体と関連する細胞活性化を調節するこのアミノ酸残基を標的にする。
【0012】
好ましい実施形態では、受容体の結合性モチーフが提供される。受容体は、細胞外分子またはタンパク質に結合しうる任意の受容体であって、Shcのような細胞質分子またはタンパク質、細胞のシグナル伝達経路および、有糸分裂誘発、増殖、形質転換、分化および細胞生存のような生物学的機能に導く事象のカスケードを活性化することができるシグナル伝達分子とさらに結合することができる任意の細胞質分子またはタンパク質、または任意の他の細胞質分子またはタンパク質の結合によってその機能を媒介する受容体であってもよい。
【0013】
他の本発明の態様では、細胞内で活性を調節する方法であって、
細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフを修飾することを含み、モチーフは、下記配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなるモチーフである方法が提供される。
【0014】
他の本発明の態様では、細胞内で活性化を調節する方法であって、
細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンを修飾することを含み、モチー
フは、下記配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなるモチーフであり、チロシンは、GM−CSF受容体またはその等価物の共通β鎖(βc)のTyr577に等価である方法が提供される。
【0015】
したがって、さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、細胞内で活性を調節する方法であって、細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンのリン酸化を修飾することを含み、モチーフは、下記配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなるモチーフである方法が提供される。
【0016】
さらに他の好ましい本発明の態様では、細胞成長を増大する方法であって、
細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンの活性化を阻害することを含み、モチーフは、下記配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなるモチーフである方法が提供される。
【0017】
さらに他の本発明の態様では、細胞の移植または移植効率を増加する方法であって、細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンの1またはそれ以上の細胞において活性化を阻害することと;
細胞をそのような治療を必要とする患者に移植することとを含み、モチーフは、下記配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなるモチーフである方法が提供される。
【0018】
他の本発明の態様では、患者の創傷治癒を改善する方法であって、
細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンの活性化を阻害することを含み、モチーフは、下記配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yは創傷部内のチロシンである)からなるモチーフである方法が提供される。
【0019】
さらに他の本発明の態様では、細胞成長を促進する化合物をスクリーニングする方法であって、
Tyr577またはその等価物のリン酸化を誘発する細胞を提供することと;
細胞を化合物に曝露することと;
細胞のコロニー形成を評価することとを含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明の第1態様では、細胞質タンパク質に結合することができる結合性モチーフであって、モチーフは、下記アミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンまたはその等価物である)からなるモチーフが提供される。
【0021】
本明細書で使用される用語「モチーフ」は、保存され、アミノ酸が相互作用する単位を形成する識別可能なアミノ酸配列を意味する。
【0022】
シグナル伝達分子は、増殖、生存または分化に関与する経路のような、しかし、これらの経路に限定されないが、細胞経路に関与する分子であってもよい。このような経路の例示として、JAK/STAT経路、ras/MAPキナーゼ経路またはPI−3−キナーゼ経路が挙げられる。全ての経路は、これらの機能と直接または間接的に関与していてもよい。
【0023】
本明細書で使用される用語「細胞のシグナル伝達経路」は、細胞の機能の一因となる全ての細胞経路および細胞反応を含む。それは、受容体へのサイトカイン媒介結合から生じる反応に限定されない。しかし、活性は、サイトカイン結合によって活性化される活性が最も好ましい。
【0024】
細胞質タンパク質は、特定のアミノ酸、すなわちチロシンによって細胞受容体と相互作用するものであるが、アミノ細胞に結合する細胞質タンパク質は、14−3−3タンパク質、Shc、SHIP−2、プロリルイソメラーゼのWWドメイン、Pin1およびユビキチンリガーゼ、NEDD4および好ましくは、細胞のシグナル伝達経路、または他の経路、および有糸分裂誘発、増殖、形質転換、分化および細胞生存のような細胞内での生物学的機能に導く事象のカスケードを活性化する他のシグナル伝達分子を結合しうる任意の細胞質タンパク質を含む群から選択されることが好ましい。さらに好ましくは、細胞質タンパク質はShcである。最も好ましくは、Shcがチロシンに結合するものである。
【0025】
用語「シグナル伝達分子」は、細胞シグナル伝達経路において活性化をシグナルで送ることのできる任意の分子である。
【0026】
Shcは、そのPTBドメインを介してTyrに結合し、細胞内シグナル伝達を正におよび負に調整する潜在能力を有する。たとえば、Shcは、grb2/sosの漸加によるRas/Mapキナーゼ経路とgrb2/GAB2/PI3−キナーゼ複合体の漸加によるPI3−キナーゼ経路とを介するシグナル伝達の促進において、正の役割が示唆されていることに加え、フォスファターゼSHP2およびSHIPを含むシグナル伝達の負のレギュラータを漸加することも知られている。
【0027】
アミノ酸に結合する細胞質タンパク質は、さらに、細胞のシグナル伝達経路およびこれらに限定されないが、有糸分裂誘発、増殖、形質転換、分化および細胞生存のような生物学的機能に導く事象のカスケードを活性化することができるシグナル伝達分子、またはシグナルを送らない他の細胞質分子またはタンパク質に結合する。
【0028】
チロシン残基は、細胞質タンパク質と反応することができ、次にチロシンと細胞質タンパク質とが相互作用し、細胞活性を活性化できることが好ましい。
【0029】
チロシンに結合する細胞質タンパク質は、ShcまたはSHIP−2がさらに好ましい。
【0030】
好ましい実施形態では、受容体の結合性モチーフが提供される。受容体は、細胞外の分子またはタンパク質に結合することができ、Shcのような細胞質分子あるいはタンパク質、細胞のシグナル伝達経路および有糸分裂誘発、増殖、形質転換、分化および細胞生存のような生物学的機能に導く事象のカスケードを活性化する他のシグナル伝達分子を結合しうる他の任意の細胞質分子あるいはタンパク質、または他の任意の細胞質分子あるいはタンパク質の結合によってその機能を媒介する、任意の受容体であってよい。
【0031】
本明細書で使用される受容体は、以下のものを含む群から選択されてもよい。
(1) GM−CSF/IL−3/IL−5受容体
(2) IL6ヒトインターロイキン−6受容体β鎖前駆体(IL−6R−β)
(3) LEPRヒトレプチン受容体前駆体(LEP−R)(OB受容体)(OBR).(4) TNR2ヒト腫瘍壊死因子受容体2前駆体(腫瘍壊死因子)
(5) VGR1ヒト血管内皮成長因子受容体1前駆体
(6) TRK3ヒト受容体タンパク質−チロシンキナーゼTKT前駆体(EC2.7.1.112)
(7) Q01974タンパク質−チロシンキナーゼ膜貫通型受容体ROR2前駆体
(8) FGR1ヒト塩基性線維芽細胞成長因子受容体1前駆体(BFGF−R)
(9) Q15426タンパク質−チロシンフォスファターゼ、受容体型、H前駆体(EC3.1.3.48)
(10) PTPMヒトタンパク質−チロシンフォスファターゼミュー前駆体(EC3.1.3.48)(R−PTP−MU)
(11) PDGSヒトα血小板由来成長因子受容体前駆体(EC2.7.1.112)(12) FGR4ヒト線維芽細胞成長因子受容体4前駆体(FGFR−4)(EC2.7.1.112)
(13) FGR2ヒト線維芽細胞成長因子受容体2前駆体(FGFR−2)(EC2.7.1.112)
(14) Q13635パッチタンパク質相同体(PTC)
(15) MANRヒトマクロファ−ジマンノース受容体前駆体.
(16) LRP2ヒト低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質2前駆体(メガリン)
(17) IDDヒト統合膜タンパク質dgcr2/idd前駆体(KIAA0163)(18) AMFRヒト自己分泌運動性因子受容体前駆体(AMF受容体)(gp78)(19) ACH5ヒト神経細胞アセチルコリン受容体タンパク質、α−5鎖前駆体
(20) KKITヒト:幹細胞成長因子受容体(癌原遺伝子チロシンタンパク質キナーゼキット)(C−KIT)(CD117抗原)
(21) TPORヒト:トロンボポイエチン受容体前駆体(TPO−R)(骨髄増殖性白血病タンパク質(C−MPL).TPORまたはMPL.
(22) TPORマウス:トロンボポイエチン受容体前駆体(TPO−R)(骨髄増殖性白血病タンパク質)(C−MPL).TPORまたはMPL.
(23) アセチルコリンR
(24) アセチルコリンRα−5
(25) C−Cケモカイン受容体6
(26) ミドルT抗原
(27) インテグリンα1
(28) FGFR2(KGF R)
(29) FGFR1(flg)
(30) FGFR5
(31) Erb4
(32) ワクシニアウィルスタンパク質A36R
(33) マクロファ−ジマンノースR(MRC1)
(34) LDLR
(35) VLDL(ラット)
(36) LRP1低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1
(37) インテグリンβ1
(38) インテグリンβ7
(39) インテグリンβ3
(40) インテグリンβ5
(41) インテグリンβ6
(42) G−CSFR1(第2)
(43) G−CSFR1
(44) g−csf−r
(45) IL−6B(gp130)
(46) レプチンR
(47) プロラクチンR
(48) インシュリンR
(49) irs−1
(50) IGFI R
(51) flt3R
(52) VEGFR2(FLK1)
(53) PDGF R−α
(54) IL−9R
(55) βR
またはこれらの機能的等価物または類似体。
【0032】
受容体はサイトカイン受容体が好ましい。さらに好ましくは、βcを含むGM−CSF/IL−3/IL−5受容体である。
【0033】
モチーフの結合容量は、当業者が使用できる任意の結合技術または実験によって分析してもよい。そのような実験として、指定された細胞質タンパク質の結合性モチーフへの結合能力の測定が挙げられる。たとえば、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSAまたはバンドシフトアッセイ)または、フットプリント分析またはプルダウン実験が特定の結合を測定するものとして入手可能である。
【0034】
モチーフ(N−X−X−)は、好ましくはアミノ酸配列N−X−X−Y中のチロシンの存在と、指定された細胞質タンパク質を結合する能力とによって、同定することができる。指定された細胞質タンパク質として、Shc、SHIP−2または細胞のシグナル伝達経路および有糸分裂誘発、増殖、形質転換、分化および細胞生存のような生物学的機能へ導く事象のカスケードを活性化する他のシグナル伝達分子を結合しうる任意の細胞質タンパク質が挙げられる。細胞質タンパク質としてShcまたはSHIP−2がさらに好ましい。
【0035】
受容体としては、共通β鎖(βc)を含むGM−CSF/IL−3/IL−5受容体が好ましい。サイトカインGM−CSF、IL−3およびIL−5は、βcを介する表面受容体によってそれらの作用を合図することが発見された。結合性モチーフは、図6による共通βcのアミノ酸Tyr577に対応するアミノ酸Tyr、またはその機能的等価物または類似体を含む配列を含むことが最も好ましい。
【0036】
本明細書で使用される用語「その機能的等価物または類似体」は、配列の活性または機能は実質的に変化せずに、同様の方法で(しかし欠損、付加、または置換があってもよい)機能する配列を意味する。
【0037】
共通β鎖(βc)は、サイトカインシグナル受容体の構成成分であり、該受容体のシグナル伝達サブユニットの一部である。サイトカインは、βcを通じてその機能を示し、細胞生存、増殖、分化および成熟細胞エフェクター機能のような同定可能な生物学的機能においてカスケードし、完結する事象を開始すると考えられている。しかし、本発明は、βcのモチーフに限定されず、受容体およびβcに類似した配列を有し、等価位置にチロシ
ン残基を含む細胞の範囲内の他のタンパク質のモチーフも含む。2座配位子モチーフが上記のように同定された構造を持ち、この構造によって、細胞上でサイトカインがその効果を発揮するものも本発明の範囲内である。好ましくは、Tyr577を含むβcの領域で結合モチーフが見出されることである。これをガイドとして有することで、Tyr577を含むβcの領域に対応する類似のモチーフをもつタンパク質全てが本発明の範囲内に入る。
【0038】
βcのアミノ酸Tyr577またはその機能的等価物を含む領域またはモチーフは、好ましくは、14−3−3タンパク質、Shc、SHIP−2、プロリルイソメラーゼのWWドメイン、Pin1およびユビキチンリガーゼ、NEDD4または細胞のシグナル伝達経路および有糸分裂誘発、増殖、形質転換、分化および細胞生存のような生物学的機能へ導く事象のカスケードを活性化する他のシグナル伝達分子を結合しうる任意の細胞質タンパク質から選択される細胞質タンパク質と相互作用する残基を含んでもよい。しかし、本発明は、この配列に限定されるのではなく、同じ機能を発揮しうる別の等価の配列も含む。
【0039】
本明細書および請求の範囲を通して使用される語「含む」およびその変形である「含んでいる」および「含む」は他の添加剤、構成成分、整数および工程を排除するものではない。
【0040】
2座配位子モチーフは、細胞のどのような形ででも存在してよい。上記のアミノ酸配列を含むモチーフ構造は、どのような細胞でもスクリーニングすることができる。しかし、GM−CSFによって効果をもたらされうる、またはβcを含む細胞であることが好ましい。最も好ましくは、該細胞は、Tyrに場所を提供するβcへシグナル伝達分子が結合することによって効果を発揮する細胞、さらに好ましくはβcのTyr577に対応する細胞である。細胞としては、リンパ系細胞、骨髄系細胞、および赤血球系細胞(これらに限定されない)のような造血細胞が最も好ましい。特に、B細胞およびT細胞を含むリンパ系列は、抗体を産生し、細胞免疫を調整し、血液中の病原微生物のような異物剤を検出する。単核細胞、顆粒球および巨核球を含む骨髄系列は、異物に関し血液をモニターし、腫瘍細胞に対して保護し、異物を廃棄し、血小板を生成する。赤血球系列は酸素を運ぶ赤血球を含む。したがって、2座配位子モチーフは最も好ましくは造血細胞ラインに影響を与えるので、これらの任意の細胞ラインと関連する細胞活性が、GM−CSF/IL−5/IL−3のβcのTyr577の修飾を標的とすることによって調節することも本発明の範囲内である。
【0041】
本発明の他の実施形態では、モチーフが以下の配列のいずれか1つから選ばれることが好ましい。
【0042】
【表1】

【0043】
配列は以下に対応してもよい。
【0044】
【表2】

【0045】
さらに好ましくは、結合性モチーフまたは等価物は、以下の配列のいずれか1つを有していてもよい。
【0046】
【表3】

【0047】
本発明で、Tyr577の変異は、GM−CSFに応答した造血細胞生存を消失させることが必要であることが発見された。このことは、これらの残基が独立して細胞生存を調整することができることを示唆する。
【0048】
出願人はさらにShcはPl−3キナーゼ活性化に必要なTyr179を介して、14−3−3と相互作用することを発見している。このシグナル伝達分子を介して、さらにシグナル伝達経路が活性化され、有糸分裂誘発、増殖、形質転換、分化、細胞生存、細胞遊走、運動能、増強された食作用、細菌殺菌、スーパーオキシドの産生および細胞毒性のような細胞活性を導く。
【0049】
他の本発明の態様では、細胞内で活性を調節する方法であって、該方法は細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフを修飾することを含み、モチーフは下記配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなる方法が提供される。
【0050】
本発明の好ましい態様では、細胞内で活性を調節する方法であって、該方法は細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンを修飾することを含み、モチーフは下記配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなり、チロシンは、GM−CSF受容体またはその等価物の共通β鎖(βc)のTyr577に等価である方法が提供される。
【0051】
用語「受容体の共通β鎖(βc)のTyr577に等価な」または「Tyr577または等価物」を使用する場合、βcまたは他の残基のTyr577、好ましくは図6のような共通βcアミノ酸配列に基づくTyr577と整列させることのできる位置にあるチロシンを意味する。等価物は、共通βc上のTyr577に似たように振舞い、同じ効果を持つものを言う。
【0052】
GM−CSF受容体のβcのTyr577に対応する単一アミノ酸は、細胞活性化の調
整において制御因子として同定されていた。この理由で、本発明は、このアミノ酸残基および細胞活性化を調節するこの残基を取り囲み、支持するモチーフを標的にする。
【0053】
GM−CSF受容体の殆どは、受容体のβcへの細胞質タンパク質の結合からカスケードする、数多くの細胞活性化の原因である。βcへのシグナル伝達分子の進入は、数多くの細胞活性化の刺激となる。
【0054】
共通β鎖(βc)は、サイトカイン受容体の構成成分であり、該受容体のシグナル伝達サブユニットである。サイトカインは、βcによってその機能を示し、細胞生存、増殖、分化および成熟細胞エフェクター機能のような同定可能な生物学的機能においてカスケードし、完結する事象を開始すると考えられている。しかし、本発明は、GM−CSFのβcに限定されず、βcに類似した配列を有し、Tyr577残基に似た位置に残基を含む受容体のモチーフも含む。
【0055】
本明細書で使用される「細胞活性化」または「細胞内での活性化」は、細胞生存、増殖、分化、有糸分裂誘発、形質転換、細胞遊走、運動能、増強された食作用、増強された細菌殺菌、スーパーオキシドの産生および細胞毒性を含む群から選択されてもよい。細胞活性化は、受容体に直接関係する任意の活性化が好ましい。最も好ましくは、細胞活性化は、細胞成長、コロニー成長および細胞生存および増殖に導く活性である。
【0056】
しかし、これらの活性は、細胞活性化の制御因子として、βcのTyr577または等価物残基を標的にすることによって調節することができる。この残基は、予め、受容体のアダプタータンパク質ShcおよびチロシンフォスファターゼSHIP−2にカップリングで関係づけられている。
【0057】
細胞活性化に関して本明細書で使用される「調節」または「調節する」は、修飾されていないレベルと比較して、活性が修飾され、変更され、あるいは変化することを意味する。活性は増加されてもよいし、減少されてもよい。たとえば、増殖は増加しても、減少してもよい。調節は、細胞活性を増強してもあるいは低下させてもよい。どのような場合でも、細胞活性は、βcのアミノ酸残基Tyr577で受容体の修飾の効能によって変化させられる。
【0058】
任意の細胞がチロシン、好ましくは共通β鎖(βc)のTyr577、への修飾によって影響されてもよい。しかし、GM−CSFによって影響される細胞、またはβcを含む細胞が一般的である。細胞としては、シグナル伝達分子がTyr577をかくまうβcに結合することによって影響を受ける細胞が最も好ましい。細胞としては、リンパ系細胞、骨髄系細胞、および赤血球系細胞(これらに限定されない)のような造血細胞が最も好ましい。特に、B細胞およびT細胞を含むリンパ系列は、抗体を産生し、細胞免疫を制御し、血液中の病原微生物のような異物剤を検出する。単核細胞、顆粒球および巨核球を含む骨髄系列は、異物に関し血液をモニターし、腫瘍細胞に対して保護し、異物を廃棄し、血小板を生成する。赤血球を含む赤血球系列は、酸素を運ぶ。したがって、Tyr577は最も好ましく造血細胞ラインに影響を与えるので、これらの任意の細胞ラインと関連する細胞活性が、GM−CSFのβcのTyr577の修飾を標的とすることによって調節することも本発明の範囲内である。
【0059】
本明細書で使用される細胞は、単離された細胞でもよく、あるいは体内組織あるいは体液中に含まれている細胞でもよい。好ましくは、細胞は、前記造血細胞である。一般に、細胞はGM−CSFのようなサイトカインのための受容体を持つことになるものである。最も好ましくは、細胞はGM−CSF受容体を持ち、βcを介して活性化されることになるものである。
【0060】
造血細胞は、骨髄または末梢血、細胞培養物または組織検体のようなどのような産生源から由来してもよい。それらは当業者に入手しうる方法で単離される。
【0061】
本発明の方法では、Tyr、好ましくはβcのTyr577の等価物を修飾することによる少なくとも1つの細胞活性化の調節を必要とする。本発明で使用される修飾の導入としては、βcのTyr577に等価な残基に変異を導入すること、あるいはβc上のTyr577の位置に変異を有するβc変異を形質導入するが挙げられる。細胞活性化を調節するためにTyr577の効果をブロックする方法もまた、本発明の範囲内であり、Tyr577を修飾するという精神の範囲内である。この場合、結合することによって起こる事象のカスケードを活性化する、ShcまたはSHIP−2の結合をブロックするTyr577残基に関する分子、またはTyr577のリン酸化を阻止することも含まれる。
【0062】
Tyr577が唯一の標的であり、細胞活性の調節は、Tyr577の修飾のみに依存するのが好ましい。
【0063】
好ましい実施形態の1つでは、修飾は、βc上のTyr577に等価な位置で変異を誘発することによって行われる。変異には、βc上のTyr577に等価な位置が弱体化し、結合性細胞質タンパク質のようにその正常な機能を行うことができないということではもはや機能的ではなくなるような、置換、欠失または他のアミノ酸の挿入が含まれる。
【0064】
アミノ酸「置換」は、1つのアミノ酸を類似の構造および/または化学的特性をもつ他のアミノ酸で置換した結果、すなわち、保存的アミノ酸置換が好ましい。「保存的」アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に基づいてなされる。たとえば、非極性(疎水性)アミノ酸として、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニン;極性中性アミノ酸として、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミン;正に帯電した(塩基性)アミノ酸として、アルギニン、リジン、およびヒスチジン;および負に帯電した(酸性)アミノ酸として、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。
【0065】
「欠失」は、アミノ酸が物理的に除かれる結果である。位置は、変異形成を示す部位に使用されるような、当業者に知られている方法によって、標的とされてもよい。
【0066】
「挿入」は、類似のアミノ酸は挿入されないが別のアミノ酸が挿入される場合が挙げられる。したがってそれは非保存的アミノ酸変化である。
【0067】
好ましくは、置換は、Tyr577または等価物を、他のアミノ酸で置き換える。好ましくは、該Tyr577または等価物をフェニルアラニン(Tyr577Phe)で置き換える。
【0068】
さらに他の好ましい実施形態では、Tyr577または等価物の修飾は、Tyr577または等価物の拮抗剤、阻害剤、模倣物または誘導体を使用することによって達成する。本明細書で使用される用語「拮抗剤」または「阻害剤」は、Tyr577または等価物に結合した時、Tyr577または等価物の活性化をブロックするまたは調節する分子を言う。拮抗剤および阻害剤として、タンパク質、核酸、炭水化物、抗体、またはTyr577または等価物に結合するリガンドを含む他の任意の分子が挙げられる。Tyr577または等価物の活性化および/または発現の他の調節剤として、合理的に設計された合成阻害剤の範囲のものが挙げられる。
【0069】
Tyr577または等価物での修飾は、直接または間接的な方法によって達成される。Tyr577または等価物の活性化の調節は、当業者に知られている直接的な方法を用いて達成されてもよい。ノックアウト技術、標的変異、遺伝子治療が挙げられるがこれらに限定されない。Tyr577または等価物の活性化を調節する間接的方法として、細胞質タンパク質ShcまたはSHIP−2調整剤のような、上流または下流標的調整剤が挙げられる。
【0070】
さらに他の好ましい実施形態では、細胞活性化を調節するTyr577または等価物の修飾は、Tyr577または等価位置に変異を有するβc変異体を含む細胞にコンストラクトを導入することによって達成される。
【0071】
出願人は、GM−CSF/IL−3/IL−5受容体の共通β鎖における単一アミノ酸置換は、細胞生存および増殖を増やす結果となり、造血細胞の挙動で顕著な効果を有することを発見した。内因性β共通およびβIL−3を欠いているマウスからのプライマリーの胎児肝臓を使用し、ヒトGM−CSF受容体のα鎖とβ鎖とを含むIRESコンストラクトで形質導入した。β鎖変異体Tyr577Pheで形質導入された胎児肝臓細胞によって、ヒトGM−CSFの非存在下でも存在下でも生存の増加が発揮された。さらにそれらはサイズがより大きい、14日目コロニーを非常に数多く形成した。デルタアッセイは、7日間GM−CSFを含む液体培養液で培養した後、細胞を形成した14日目コロニーの膨張を示した。増加した細胞増殖は、また、ヒトGM−CSFに応答して、左にシフトしたことによって実証されるように、Tyr577Phe変異体受容体で形質導入されたCTL−EN細胞においても見られた。Tyr577Phe変異体は、受容体、JAK−2の活性化またはSTAT−5のリン酸化に対するSHIP−2の漸加を変更しなかったが、Tyr577の変異は、受容体へShcを補い、そのチロシンリン酸化を促進することはできなかった。
【0072】
ラットの活性化およびSH−2含有イノシトールフォスファターゼSHIPの活性化において、重大な効果が発見されたことは重要なことである。
【0073】
受容体の、好ましくは受容体のβcのTyr577または等価物残基の導入された変異を有する細胞を、細胞生存に影響を及ぼすことができる化合物をスクリーニングするアッセイで使用してもよい。
【0074】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、細胞内で増殖を調節する方法であって、該方法は細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフを修飾することを含み、モチーフは、下記アミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなる方法を提供する。
【0075】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、細胞内で増殖を調節する方法であって、細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンを修飾することを含み、モチーフは下記配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなり、チロシンは、GM−CSF受容体またはその等価物の共通β鎖(βc)のTyr577に等価である方法を提供する。
【0076】
Tyr577または等価物の修飾は、本明細書で記載した任意の方法で行ってもよい。しかし、Tyr577または細胞質タンパク質ShcまたはSHIP−2の等価物の相互作用を開放する方法であればどれも増殖を調節するためには最も好ましい。Shcまたは
SHIP−2細胞質タンパク質の完全開放は、Tyr577または等価物のリン酸化の完全な阻害へ導くことを出願人は発見した。この事象を弱体化することによって、細胞の活性化および増殖が増大し、生存およびより大きなコロニーが増える結果となる。
【0077】
したがって、さらに他の好ましい実施形態では、本発明は、細胞内で活性を調節する方法であって、
細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンのリン酸化を修飾することを含み、モチーフは、下記アミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなる方法を提供する。
【0078】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、細胞内で活性を調節する方法であって、細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンのリン酸化を修飾することを含み、モチーフは下記アミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなり、チロシンは、GM−CSF受容体またはその等価物の共通β鎖(βc)のTyr577に等価である方法を提供する。
【0079】
細胞活性は細胞成長および/または増殖であることが好ましい。両活性ともより大きな細胞、より大きなコロニーへと導く。
【0080】
結合性モチーフ上のチロシンをリン酸化するリン酸化事象の調整は、細胞質タンパク質の結合に影響し、これは次にシグナル伝達分子の活性化に影響し、細胞シグナル伝達経路および細胞活性化に導く事象のカスケードを活性化する。細胞活性は、有糸分裂誘発、増殖、形質転換、差別化、細胞生存、細胞遊走、運動能、増強された食作用、細菌殺菌、スーパーオキシドの産生および細胞毒性を含む群から選択されることが好ましい。細胞活性は、増殖または細胞生存が最も好ましい。さらに好ましいのは、細胞生存である。
【0081】
Tyrまたは等価物のリン酸化の修飾は、残基のリン酸化を増やしてもよいし、減らしてもよい。リン酸化を増やすあるいは減らす(阻害する)方法は、当業者に知られている。しかし、具体的には、特定のキナーゼ阻害剤を使用してリン酸化を抑制するのに好ましい。
【0082】
最も好ましくは、βcのTyr577はリン酸化によって修飾される。Tyr577のリン酸化を阻害することによって、細胞増殖を増やすことができる。逆に言えば、リン酸化を誘発することによって、細胞成長を阻害することができる。
【0083】
理論に拘束されるものではないが、βcのTyr577のリン酸化は残基に対するShcやSHIP−2のような細胞質タンパク質の結合を改善するため、細胞質タンパク質が残基またはその等価物と結合する時、結合は、他の細胞質タンパク質やシグナル伝達分子を受容体の隣に持っていくように起こることが明らかにされている。リン酸化は、フォスフォリル(フォスフェート)基をTyr577に移動する任意の手段によって起こってもよい。
【0084】
さらに他の好ましい本発明の態様では、細胞成長を増やす方法であって、
細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンの活性化を阻害することを含み、モチーフは下記のアミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなる方法を提供する。
【0085】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、細胞成長を増やす方法であって、
細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンの活性化を阻害することを含み、モチーフは下記アミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなり、チロシンは、GM−CSF受容体またはその等価物の共通β鎖(βc)のTyr577に等価である方法を提供する。
【0086】
本発明において発見されたように、モチーフのチロシン、さらに好ましくはTyr577または等価物は、細胞の生存に不可欠なメカニズムの、最も好ましくは細胞成長および増殖の活性化において中心的なものである。細胞成長を増やすことは、細胞コロニーを増大することになり、本明細書で記載した方法は、また、細胞内のコロニーのサイズを大きくすることにも有用である。
【0087】
細胞として最も好ましいものは、上記したように造血細胞であり、GM−CSF受容体を、さらに具体的には共通βcを組み込む細胞である。しかし、他の細胞を本明細書で記載したモチーフを使用して修飾してもよい。
【0088】
置換、欠失または挿入、阻害による、またはリン酸化の非活性化によるTyr577または等価物の効果の損失が、細胞成長およびコロニーサイズにおける増加を起こすことは上記した通りである。Tyr577または等価物の活性化を阻害するこれらの型は、本発明の範囲内である。
【0089】
リン酸化されたまたはリン酸化されていない型においてTyr577または等価物に結合する拮抗剤は、Tyr577または等価物の活性化を阻害するために使用することができることが好ましい。これによって、TyrまたはTyr577または等価物は、細胞質タンパク質を結合し、さらに細胞シグナル伝達経路を活性化する能力を失うことができることを意味する。これは細胞生存または活性化を増やすために有用であるかもしれない。好ましくは、拮抗剤は、リン酸化を阻止する、好ましくはTyr577またはβcの等価リン酸化またはまたは等価物を阻止することによって細胞生存または活性化を増やし、そうすることで、結合性モチーフへの細胞質タンパク質結合を阻止するために、有用である。あるいは、それらは、Shcまたは等価物を結合するフォスフォチロシンに結合するシグナル伝達分子の結合の相互作用を阻止してもよい。
【0090】
上記したβcまたはTyr577または等価物のリン酸化の阻止は、Tyr577または等価物の活性化も阻害してよく、これは、Tyr577または等価物残基のリン酸化に関与する特定のキナーゼの阻害によって達成されてもよく、または、ShcまたはSHIP−2のような細胞質タンパク質を細胞周期経路の結合および活性化させないように、残基の変異を含んでもよい。PKAに結合するH89のようなキナーゼ 阻害剤を使用してもよい。好ましくは細胞浸透性キナーゼ阻害剤が使用される。
【0091】
拮抗剤として、抗体、小ペプチド、低分子、ペプチド模倣剤、または当業者に知られている任意の型の分子であって、Tyr577または等価物に向けられ、Shc、SHIP−2のような細胞質タンパク質がTyr残基へ、またはシグナル伝達分子に結合するのを防ぐ分子が挙げられる。抗体は、前記Tyr577または等価物の任意のものに応答して、当業者に知られ入手可能な方法によって、生成されてもよい。
【0092】
しかし、本発明はさらにTyr577または等価物にも結合する細胞質タンパク質を修飾することを包含してもよい。細胞内でTyr577または等価物を影響することなく、
修飾は、細胞質タンパク質または等価物のリン酸化を起こすかもしれない他の因子に対して行うことができる。本発明では、Tyr577または等価物と細胞質タンパク質、すなわちShcとSHIP−2との間の相互作用の開放を起こす任意の手段を含むことが効果的である。
【0093】
さらに他の本発明の態様では、細胞の移植方法であって、
細胞内で細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンの活性化を阻害することと;
該細胞をそのような治療を必要とする患者に移植することとを含み、モチーフは、下記アミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなる方法を提供する。
【0094】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、細胞の移植方法であって、
細胞内で細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンの活性化を阻害することと;
該細胞をそのような治療を必要とする患者に移植することとを含み、モチーフは、下記アミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなり、チロシンは、GM−CSF受容体またはその等価物の共通β鎖(βc)のTyr577に等価である方法が提供される。
【0095】
細胞成長を増やすためにTyr577または等価物の活性化を阻害するこの方法は、生体内でも生体外でも行ってよい。細胞数を増やすための細胞培養技術は、本明細書に記載された方法で、Tyr577または等価物と細胞質タンパク質ShcまたはSHIP−2との相互作用を阻害することによって増強してもよい。これは、細胞のコロニーを増やし、患者に注射する前に生体外で前駆細胞を増やすために、特に有用である。しかし、Tyr577または等価物の相互作用は、特定のキナーゼ阻害剤の使用により生体内で進めてもよい。
【0096】
細胞内の活性化の阻害は、移植効率を増加するために有用であるかもしれない。活性化を阻害することで細胞の増殖を増やすことによって、移植において、より多くの細胞が首尾よく合体し相和する。
【0097】
同様に、移植領域内の細胞は、細胞成長を増強し移植の拒絶を減らすために、その領域内の細胞増殖および成長を増やすように、Tyr577または等価物の活性化を阻害する処理がされてもよい。これは、移植片を「取り出す」際、手助けをし、移植するために必要な細胞の数を減らすかもしれない。もし、より少ない数の細胞を移植するのであれば、該方法は、骨髄移植の後、特に、幹細胞の定着と骨髄回復との間の時間に保護を提供するのに有用なコロニー形成細胞を増やすために有用である。
【0098】
移植を受ける患者は、細胞成長を増やすように、あるいは移植組織の生存の機会を改良する細胞成長を増強するように、リン酸化の阻害剤で処置され、移植の領域に対して行われてもよい。
【0099】
他の本発明の態様では、患者の創傷治癒を改善する方法であって、
細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンの活性化を阻害することを含み、モチーフは、下記アミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yは創傷部内にあるチロシンである)からなる方法が提供される。
【0100】
本発明のさらに好ましい実施形態では、細胞の移植方法であって、
細胞内で細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフのチロシンの活性化を阻害することを含み、モチーフは、下記アミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなり、チロシンは、創傷部内にある、GM−CSF受容体またはその等価物の共通β鎖(βc)のTyr577に等価である、である方法が提供される。
【0101】
βcのTyr577または等価物の活性化を阻害することによって、細胞は、損傷部内で増殖を誘発されることができる。上記したように、Tyr577または等価物の活性化を阻害する方法があり、上記したこれらの方法のいかなるものでも、Tyr577または等価物を阻害するために使用してよく、それによってShcまたはSHIP−2からTyr577を開放する。Tyr577または等価物のリン酸化の阻害が最も好ましい。好ましくは、これは、特定のキナーゼ阻害剤を使用することによって達成する。
【0102】
しかし、リン酸化は多くの細胞活性化に共通の方法であるので、一般的な脱リン酸化剤の使用は有害であるかもしれない。
【0103】
したがって、Tyr577または細胞質タンパク質ShcまたはSHIP−2の等価物の結合を阻害する、Tyr577または等価物の拮抗剤を利用することも好ましい。これらの分子を使用することによって、リン酸化および創傷治癒のための細胞成長および増殖の増加において手助けすることができる次の事象の阻害を標的にし、具体的に方向付づけることができる。
【0104】
さらに他の本発明の態様では、細胞成長を促進する化合物をスクリーニングする方法であって、
Tyr577残基または等価物を有するβcを含む受容体をもつ細胞を提供することと;Tyr577または等価物のリン酸化を誘発することと;
前記細胞を前記化合物に曝露することと;
細胞のコロニー形成を評価することとを含む方法が提供される。
【0105】
本発明のこの態様は、Tyr577または等価物は、より大きなコロニーに導く細胞成長および生存の誘発の中核を成し、リン酸化の阻害は細胞生存を増やすこととより大きなコロニーを産生することを必要とするという発見を利用している。化合物がコロニー形成を増やし、誘発されたリン酸化の効果を覆すと化合物は成長促進特性を有すると推定できる。
【0106】
細胞は前記造血細胞が好ましい。
本発明は、増殖性疾患のモデルとして使用してもよい。結合性モチーフと細胞質タンパク質との間の相互作用が与えられると、相互作用の任意の部分がモニターされ、問題の細胞と正常細胞との間のいかなる異常も検出される。モデルの態様は、チロシン残基のリン酸化能力を分析してもよく、あるいはShcおよびSHIP−2のそれぞれの細胞質タンパク質とチロシンとの間の相互作用を分析してもよい。
【0107】
モデルは上記した造血細胞の基づくのが好ましい。しかし、モチーフを含む他の任意の細胞を使用してもよい。細胞は、モデルが基礎とするTyr577または等価物を含むGM−CSF受容体を有することがさらに好ましい。
【0108】
文献、行為、材料、装置および製品などの検討は、本発明の内容を提供する目的のためだけに、本明細書に含まれる。これら事柄のどれも全て、従来技術のを形成し、あるいは本願の各請求項の優先日前にオーストラリアに存在したような、本発明に関連する分野における共通の一般的知識であるとは示唆されていないし、意味されてもいない。
【0109】
本発明で使用された操作の実施例をさらに詳しく記載する。しかし、以下の記載は、説明のためだけにあるものであり、上記した本発明の普遍性を限定するように解釈すべきでないことは、理解されるべきである。
【実施例】
【0110】
(実施例1)
Y577F変異は、GM−CSFに応答する数多くのコロニーの増大へと導く。
(a)細胞ラインおよびプライマリーの細胞
先に記載されたネズミ因子性細胞ラインCTL{Le,Stomski,et al.2000 4135/id}を、増殖試験のために使用した。これらの細胞は、10%胎仔牛血清(FCS)および大腸菌発現システムから産生されたネズミIL−2とともにRPMI−1640中に維持された。
【0111】
Psi−2エコトロピックレトロウイルス含有細胞{Mann, Mulligan,
et al. 1983 3888/id}を10%FCSが添加されたDMEM中に維持した。細胞のトランスフェクトプールを選択し、400μg/mlのジェネテシン硫酸塩(G418)が加えられた上記の溶媒中で維持され、野生型または変異体hβcを含むRufNeoレトロウイルスベクター{Rayner&Gonda1994 4136/id}でトランスフェクトした。
【0112】
ネズミの胎児肝臓細胞を、共通β鎖(βc)とIL−3−特異性β鎖(βIL−3){Scott,Robb,et al2000 2960/id}の両方のために、ノックアウトマウスからdpc13.5で収穫した。15%FCSが補給されたIMDM中でこれらの細胞を培養した。
(b)ヒトGM−CSF受容体を発現するマウス細胞の産生
CTL−ENまたはネズミの胎児肝臓細胞を処理し、レトロウィルス形質導入システムを使用して、GM−CSF受容体のαおよびβ鎖を発現させた。
【0113】
レトロウィルス粒子を産生するため、プラスミド骨格をpRUFneoにおける基礎とし、GM−CSF受容体サブユニットを複数のクローン部位にクローン化した。さらに、IRESを挿入し、単感染事象において両受容体サブユニットの発現を可能にした。プロデューサ細胞株が、リン酸カルシウムトランスフェクション、次いでFACSによってpsi−2細胞中で産生され、両受容体サブユニットの高発現を有する細胞株が作成された。
【0114】
標的細胞(CTLまたは胎児肝臓)を照射psi−2細胞と48時間共培養し、次いで採取し、さらに新しい培地を加えて24時間培養した。免疫蛍光分析を使用して、GM−CSF受容体α鎖に特異的なビオチン化抗体で形質導入レベルを評価し、ストレプトアビジン−PE5000〜10000個の細胞を、コールターエピックスXLを使用して分析した。
(c)コロニーアッセイ
未成熟細胞のGM−CSFへの応答は、コロニー形成アッセイを使用して、分析した。胎児肝臓細胞は形質導入され、GM−CSF受容体の発現は、上記のように定量化した。コロニー形成細胞は、二重層寒天アッセイを使用して分析した。プレートは、図に示すサ
イトカインを含む0.5%寒天(ディフコ)を補給されたIMDMを含む下部層を持つ。上部層は、0.3%寒天中、100,000個/皿の濃度の形質導入された細胞を加えた。全ての培地は、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加された10%熱不活性化FCS(JRHバイオサイエンス)とを含んでいた。
【0115】
サイトカインは全てPBS中に希釈され、PBSのコントロールだけが各アッセイに加えられ、コロニーがサイトカイン刺激に応答して形成されことを検証した。
【0116】
さらに、アッセイは全て、IL−6(100ng/ml)、SCF(100ng/ml)およびエリスロポエチン(4U/ml)の反応混液で構成される一般的な刺激物を含んでいた。
【0117】
プレートを37℃で5%CO下14日間培養し、倒立顕微鏡を使用して、コロニーを数えた。
【0118】
図1はGM−CSF受容体が形質導入された胎児肝臓からのコロニー形成を示す。100,000個の細胞を35mm皿中100ng/mlのGM−CSFで平板培養した。37℃で5%CO下14日間培養した後、コロニー数を数えた。図は各々3枚のプレートを用いた9つの別々の試験からのデータを示す。平均および標準偏差を図中に記載する。
【0119】
(実施例2)
Y577F点変異は野生型GM−CSF受容体β鎖より大きなコロニーを生じさせることができる。
【0120】
図2は、実施例1で示したアッセイの2からのコロニーを、それらの全体サイズに従って分析した。染色された皿を1)2mmを超えるコロニー、2)1mmと2mmとの間、3)1mm未満のコロニーの3つのグループに分類した。データは、各グループに関しコロニーの合計に対する比率として表し、図2は平均値と標準偏差を示す。
【0121】
(実施例3)
β鎖のY577F変異体で形質導入された胎児肝臓細胞はGM−CSFの全濃度でより多数のコロニーを形成する。
【0122】
上で報告したより高い濃度に加えて、サイトカインのより低い濃度に対する細胞の応答を評価するために、GM−CSFの滴定を使用した。図3はより多数のコロニーが存在することを示す。
【0123】
(実施例4)
コロニー形成の前に7日間または14日間培養した細胞のデルタアッセイ
(a)デルタアッセイ
細胞を上記したように平板培養した0日目、またはGM−CSF中またはIL−6(100ng/ml)、SCF(100ng/ml)およびG−CSF(10ng/ml)の反応混液中で7日間または14日間培養する延長したコロニーアッセイを行った。7日目または14日目、細胞を正確に上記したようにコロニーアッセイにおいて平板培養した。全コロニーを37℃5%COの14日培養の後に数えた。
(b)コロニー形成前の7日間
寒天中で平板培養する前に、細胞をGM−CSFか反応混液を補給された液体培地中で7日間培養した。GM−CSF中および図4a中の成長グループからわかるように、X軸上のGMに表されているように、Y577Fグループは、野生型受容体に比べて反応混液刺激に対するより大きな応答がある。応答は、平板培養前に7日間反応混液中で成長した
細胞に関しても同様である。
(c)コロニー形成前の14日間
寒天中で平板培養する前に、細胞をGM−CSFか反応混液を補給された液体培地中で14日間培養した。GM−CSF中および図4b中の成長グループからわかるように、X軸上のGMに表されているように、Y577Fグループは、野生型受容体に比べて反応混液刺激に対するより大きな応答がある。GM−CSFではなく反応混液に対する応答も、平板培養前に14日間反応混液中で成長させた細胞のこのグループはより大きい。
【0124】
(実施例5)
Y577がフェニルアラニンに変異する場合、ヒトGM−CSF受容体を発現するCTL細胞は、GM−CSFに対するより大きな応答を持つ。
(a)増殖アッセイ
野生型または変異体GM−CSF受容体β鎖を発現するCTL細胞の増殖応答を、連続的に希釈された量のGM−CSFで刺激された1000個の細胞のマイクロウェルアッセイ中で計測した。CTL細胞はIL−2中で成長するが、先に記載されたように、増殖アッセイが始まる前24時間は、成長因子を与えなかった{Sun,Woodcock,et al.1996 3188/id}。H−チミジン導入は液体シンチレーションによって測定した。
【0125】
図5は、ヒトGM−CSF受容体で形質導入されたCTL細胞の増殖アッセイを示す。細胞には24時間サイトカインを与えず、次いで、ヒトGM−CSFまたはネズミIL−2の滴定で48時間刺激した。増殖をH−チミジン導入および液体シンチレーションによって計測して定量した。Y577Fは、IL−2ではなくGM−CSFへの応答に関し、野生型β鎖と比べた時、ED50の減少が明らかに見ることができる。
【0126】
最後に、本明細書で概要を述べた本発明の範囲を逸脱しない限り、種々のほかの変形および/または変更がなされてもよいことは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】Y577F変異がGM−CSFに応答してコロニーの数を増やすことになることを示す。
【図2】Y577F点変異が野生型GM−CSF受容体β鎖に比べて、より大きいコロニーを生じさせることができることを示す。
【図3】GM−CSFの全濃度でのコロニーの数がより多いβ鎖型のY577F変異体で形質導入された胎児肝臓細胞を示す。
【図4a】コロニー形成の前に7日間培養された細胞のデルタアッセイを示す。
【図4b】コロニー形成の前に14日間培養された細胞のデルタアッセイを示す。
【図5】図5a、5bは、Y577がフェニルアラニンに変異を起こす時、ヒトGM−CSF受容体を発現するCTL細胞がGM−CSFに対しより大きな応答を有することを示す。
【図6】βcのアミノ酸配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞質タンパク質に結合することができる結合性モチーフであって、モチーフは、下記アミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンまたはその等価物である)からなるモチーフ。
【請求項2】
細胞質タンパク質に結合することができる受容体分子の結合性モチーフであって、モチーフは、アミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンまたはその等価物である)からなるモチーフ。
【請求項3】
以下を含む群から選択される受容体に由来する請求項1または2に記載の結合性モチーフ。
(1) GM−CSF/IL−3/IL−5受容体
(2) IL6ヒトインターロイキン−6受容体β鎖前駆体(IL−6R−β)
(3) LEPRヒトレプチン受容体前駆体(LEP−R)(OB受容体)(OB−R).
(4) TNR2ヒト腫瘍壊死因子受容体2前駆体(腫瘍壊死因子)
(5) VGR1ヒト血管内皮成長因子受容体1前駆体
(6) TRK3ヒト受容体タンパク質−チロシンキナーゼTKT前駆体(EC2.7.1.112)
(7) Q01974タンパク質−チロシンキナーゼ膜貫通型受容体ROR2前駆体
(8) FGR1ヒト塩基性線維芽細胞成長因子受容体1前駆体(BFGF−R)
(9) Q15426タンパク質−チロシンフォスファターゼ、受容体型、H前駆体(EC3.1.3.48)
(10) PTPMヒトタンパク質−チロシンフォスファターゼミュー前駆体(EC3.1.3.48)(R−PTP−MU)
(11) PDGSヒトα血小板由来成長因子受容体前駆体(EC2.7.1.112)(12) FGR4ヒト線維芽細胞成長因子受容体4前駆体(FGFR−4)(EC2.7.1.112)
(13) FGR2ヒト線維芽細胞成長因子受容体2前駆体(FGFR−2)(EC2.7.1.112)
(14) Q13635パッチタンパク質相同体(PTC)
(15) MANRヒトマクロファ−ジマンノース受容体前駆体.
(16) LRP2ヒト低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質2前駆体(メガリン)
(17) IDDヒト統合膜タンパク質dgcr2/idd前駆体(KIAA0163)(18) AMFRヒト自己分泌運動性因子受容体前駆体(AMF受容体)(gp78)(19) ACH5ヒト神経細胞アセチルコリン受容体タンパク質、α−5鎖前駆体
(20) KKITヒト:幹細胞成長因子受容体(癌原遺伝子チロシンタンパク質キナーゼキット)(C−KIT)(CD117抗原)
(21) TPORヒト:トロンボポイエチン受容体前駆体(TPO−R)(骨髄増殖性白血病タンパク質(C−MPL).TPORまたはMPL.
(22) TPORマウス:トロンボポイエチン受容体前駆体(TPO−R)(骨髄増殖性白血病タンパク質)(C−MPL).TPORまたはMPL.
(23) アセチルコリンR
(24) アセチルコリンRα−5
(25) C−Cケモカイン受容体6
(26) ミドルT抗原
(27) インテグリンα1
(28) FGFR2(KGF R)
(29) FGFR1(flg)
(30) FGFR5
(31) Erb4
(32) ワクシニアウィルスタンパク質A36R
(33) マクロファ−ジマンノースR(MRC1)
(34) LDLR
(35) VLDL(ラット)
(36) LRP1低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1
(37) インテグリンβ1
(38) インテグリンβ7
(39) インテグリンβ3
(40) インテグリンβ5
(41) インテグリンβ6
(42) G−CSFR1(第2)
(43) G−CSFR1
(44) g−csf−r
(45) IL−6B(gp130)
(46) レプチンR
(47) プロラクチンR
(48) インシュリンR
(49) irs−1
(50) IGFI R
(51) flt3R
(52) VEGFR2(FLK1)
(53) PDGF R−α
(54) IL−9R
(55) βR
またはこれらの機能的等価物または類似体。
【請求項4】
以下を含む群から選択される配列に由来する請求項1〜3のいずれか1つに記載の結合性モチーフまたはその等価物。
【表1】

【請求項5】
以下を含む群から選択される配列を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の結合性モチーフ。
【表2】

【請求項6】
配列がサイトカイン受容体に由来する請求項1〜5のいずれか1つに記載の結合性モチーフ。
【請求項7】
受容体がGM−CSF/IL−3/IL−5受容体である請求項1〜6のいずれか1つに記載の結合性モチーフ。
【請求項8】
配列が共通β鎖(βc)を含む請求項1〜7のいずれか1つに記載の結合性モチーフ。
【請求項9】
Tyr残基が共通β鎖(βc)のTyr577に等価である請求項1〜8のいずれか1つに記載の結合性モチーフ。
【請求項10】
Tyr残基に等価な残基における変性を有する請求項1〜9のいずれか1つに記載の結合性モチーフ。
【請求項11】
Tyr残基に等価な残基がPhe残基で置換されている請求項1〜10のいずれか1つに記載の結合性モチーフ。
【請求項12】
14−3−3タンパク質、Shc、SHIP−2、プロリルイソメラーゼのWW−ドメイン、Pin1およびユビキチンリガーゼ、NEDD4を含む群から選択される細胞質タンパク質に結合する請求項1〜11のいずれか1つに記載の結合性モチーフ。
【請求項13】
細胞質タンパク質がShcまたはSHIP−2である請求項1〜12のいずれか1つに記載の結合性モチーフ。
【請求項14】
細胞内で活性を調節する方法であって、
細胞質タンパク質に結合しうる結合性モチーフを修飾することを含み、モチーフは、下記アミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなるモチーフである方法。
【請求項15】
細胞内で活性を調節する方法であって、
請求項1〜13のいずれか1つに記載の結合性モチーフを修飾することを含む方法。
【請求項16】
チロシン残基が共通β鎖(βc)のTyr577に等価である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
共通β鎖が(βc)がGM−CSF/IL−3/IL−5受容体のそれである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
活性化がモチーフのTyrのリン酸化の修飾の導入によって調節される請求項15〜17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
リン酸化が細胞をリン酸化剤で処理することによって増加される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
リン酸化剤がキナーゼである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
Tyrを変異する、置換するまたは欠失することによってリン酸化を減少させる請求項18に記載の方法。
【請求項22】
TyrがPheの代わりに置換されている請求項23記載の方法。
【請求項23】
細胞をTyrのリン酸化を阻害する拮抗剤で処理することによってリン酸化を減少させる請求項18に記載の方法。
【請求項24】
細胞をキナーゼ阻害剤で処理してTyrのリン酸化を阻害することによってリン酸化を減らす請求項18に記載の方法。
【請求項25】
細胞活性化を阻害する請求項21〜24のいずれか1つに記載の方法であって、Tyrモチーフのリン酸化の減少あるいは阻害を含む方法。
【請求項26】
細胞内で活性を阻害する請求項25に記載の方法であって、モチーフへの細胞質タンパク質のモチーフへの結合の阻害を含む方法。
【請求項27】
細胞質タンパク質が、14−3−3タンパク質、Shc、SHIP−2、プロリルイソメラーゼのWW−ドメイン、Pin1およびユビキチンリガーゼ、NEDD4を含む群から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
細胞質タンパク質がShcである請求項27に記載の方法。
【請求項29】
細胞活性を活性化する請求項19または20に記載の方法であって、モチーフのTyrのリン酸化を誘発することを含む方法。
【請求項30】
細胞活性が、細胞生存、増殖、分化、有糸分裂誘発、形質転換、細胞遊走、運動能、増強された食作用、増強された細菌殺菌、スーパーオキシドの産生および細胞毒性を含む群から選択される請求項14〜29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項31】
細胞活性が細胞生存である請求項14〜30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
細胞活性が増殖である請求項14〜30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項33】
細胞が造血細胞である請求項14〜32のいずれか1つに記載の方法。
【請求項34】
増殖を増大させる請求項32記載の方法であって、Tyrのリン酸化を阻害することを含む方法。
【請求項35】
増殖を阻害する請求項32に記載の方法であって、Tyrのリン酸化を誘発することを含む方法。
【請求項36】
細胞成長を増加する請求項32に記載の方法であって、Tyrの活性化を阻害することを含む方法。
【請求項37】
細胞内で活性を調節する方法であって、
細胞質タンパク質に結合することができる受容体の結合性モチーフへの修飾の導入を含み、モチーフは、下記アミノ酸配列:
N−X−X−
(式中、Xは任意の残基であり、Yはチロシンである)からなる方法。
【請求項38】
チロシン残基が共通β鎖(βc)のTyr577に等価である請求項34に記載の方法。
【請求項39】
共通β鎖(βc)がGM−CSF/IL−3/IL−5受容体のそれである請求項35に記載の方法。
【請求項40】
増殖を増大する請求項37に記載の方法であって、Tyrのリン酸化を阻害することを含む方法。
【請求項41】
増殖を阻害する請求項37に記載の方法であって、Tyrのリン酸化を誘発することを含む方法。
【請求項42】
細胞成長を増加する請求項37に記載の方法であって、Tyrの活性化を阻害することを含む方法。
【請求項43】
細胞の移植方法であって、
細胞内で請求項1〜13のいずれか1つに記載の結合性モチーフのTyrの活性化を阻害することと、
前記細胞を移植することとを含む方法。
【請求項44】
移植効率を増加する方法であって、
細胞内で請求項1〜13のいずれか1つに記載の結合性モチーフのTyrの活性化を阻害することと、
前記細胞を移植することとを含む方法。
【請求項45】
Tyrの活性化が移植の前に生体外で阻害される請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
Tyrの活性化が移植領域内で阻害される請求項43または44に記載の方法。
【請求項47】
活性化が、Tyrのリン酸化を阻害することによって阻害される請求項43〜46のいずれか1つに記載の方法。
【請求項48】
TyrがGM−CSF/IL−3/IL−5受容体の共通β鎖(βc)のTyr577
に等価である請求項43〜47のいずれか1つに記載の方法。
【請求項49】
共通β鎖(βc)がGM−CSF/IL−3/IL−5受容体のそれである請求項48に記載の方法。
【請求項50】
患者の創傷治癒を改善する方法であって、
創傷部内にある請求項1〜13のいずれか1つに記載の結合性モチーフのTyrの活性化を阻害することを含む方法。
【請求項51】
活性化が、Tyrのリン酸化を阻害することによって阻害される請求項36に記載の方法。
【請求項52】
Tyrが、GM−CSF/IL−3/IL−5受容体の共通β鎖(βc)のTyr577に等価である請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
共通β鎖(βc)がGM−CSF/IL−3/IL−5受容体のそれである請求項52に記載の方法。
【請求項54】
創傷の治癒用の医薬の存在下での、請求項1〜13のいずれか1つに記載の結合性モチーフのTyrの活性化の阻害剤としての使用。
【請求項55】
阻害剤が、Tyrのリン酸化を阻害する請求項54に記載の使用。
【請求項56】
Tyrが共通β鎖(βc)のTyr577に等価である請求項54または55に記載の使用。
【請求項57】
共通β鎖(βc)がGM−CSF/IL−3/IL−5受容体のそれである請求項56に記載の使用。
【請求項58】
細胞成長を促進する化合物のスクリーニング方法であって、
Tyr577残基または等価物を有するβcを含む受容体をもつ細胞を得ることと;
請求項1〜13のいずれか1つに記載の結合性モチーフ中のTyrまたは等価物のリン酸化を誘発することと;
前記細胞を前記化合物に曝露することと;
細胞のコロニー形成を評価することとを含む方法。
【請求項59】
Tyrが共通β鎖(βc)のTyr577に等価である請求項58に記載の方法。
【請求項60】
共通β鎖(βc)がGM−CSF/IL−3/IL−5受容体のそれである請求項56に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−500954(P2008−500954A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535918(P2006−535918)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001480
【国際公開番号】WO2005/040198
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(501315854)メドベット・サイエンス・プロプライエタリー・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】