説明

絶縁塗膜の非破壊評価の装置

【課題】 対象物(12)の基材(16)上に塗布された絶縁塗膜(14)の厚みと熱伝導率を決定するための装置(10)を提供する。
【解決手段】 この装置には、表面が絶縁塗膜(14)を含む対象物(12)の表面に、複数の光学パルス(24)を高速照射する光源(20)が含まれる。このシステムには、対象物(12)の中の光学パルスの伝播を示すデータ(26)を集めるために設定された記録システム(28)がさらに含まれる。この装置には、記録システム(28)に結合され、記録システム(28)からデータ(36)を受け取るように設定され、絶縁塗膜(14)の厚みと熱伝導率を決定するように設定された、プロセッサ(34)がさらに含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
いくつかの実施形態に基づく本発明は、絶縁塗膜の厚みおよび伝導率を決定するための非破壊検査技術に関する。より詳細には、本技術は、絶縁塗膜の厚みと伝導率を測定するための、高速赤外線過渡的サーモグラフィーの方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長年に亘り、さまざまな非破壊超音波測定技術が、鋳物または他の固体対象物の横断的厚さを決定するのに使用されてきた。残念ながら、横断的厚さを検査するために超音波測定を実施することは、振動子を使い、厄介で時間のかかる表面全体の機械的走査を通常必要とする。加えて、超音波を対象物中に適切に伝播させるために、振動子と対象物表面との間での密接な音波接触を促進するのに、液状接触媒質を表面に塗布しなければならないか、あるいは対象物全体を接触媒質に浸漬しなければならない。しかし、このような適応化は、多くの構造的および物質的理由から実用的でなく、実施可能性がない。さらに、形状が複雑な部分を走査および解析できる超音波システムは、大概極めて高価であり複雑である。しかも大きな対象物の表面上で振動子を機械的に走査することは時間がかかるプロセスであり、費用と製造時間を増す。
【0003】
対照的に、赤外線(IR)過渡的サーモグラフィーは、対象物の構造および完全性に関する情報をもたらす、対象物を通過する熱移動の経時的測定に基づく幾分汎用性のある非破壊検査技術である。対象物を通る熱流は、対象物質の微細構造や単結晶の配向によっては基本的に影響を受けないので、赤外線過渡的サーモグラフィー分析は、超音波測定で形成された制限に本質的に拘束されない。さらに過渡的サーモグラフィー分析の方法は、試験する対象物の大きさ、粗さ、形状にあまり妨げられないし、さらに大きな表面積をもつ試験対象物の場合は特に、ごく普通の超音波法より10〜100倍早く遂行できるであろう。
【0004】
通常、赤外線(IR)ビデオカメラは、加熱後の対象物表面の連続熱画像(フレーム)を記録して保存するために使用されてきた。各ビデオ画像は一定数のピクセルから構成され、各ピクセルは、画像配列あるいはフレーム内の小画像素子を表す。各ピクセルは、画像化される対象物表面上の解像エレメントと呼ばれる矩形領域に対応する。各解像エレメントの温度が、対応するピクセルの強度に直接関連するという理由から、対象物表面の各解像エレメントの温度変化が、ピクセルのコントラスト変化によって分析できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近頃知られている過渡的サーモグラフィーの一つの応用は、固体で非金属複合体内部の欠陥の大きさや相対位置(深度)の決定能力であり、過渡的サーモグラフィーのもう一つの応用は、金属対象物の厚みの決定能力である。しかも最近、絶縁塗膜の厚みを測定するために、いくつか試みがなされている。これらには、塗膜データをモデルに適合させ、それを既知の厚さ標準と比較して絶縁塗膜の厚みを得るというモデリング技法が含まれる。残念なことには、これらの技術には塗膜の厚みを一点ずつ測定することが含まれ、従って時間を要し、計算が複雑である。絶縁塗膜の厚み測定のもう一つの側面は、塗膜の時間経過に伴って塗膜の熱伝導率が変化し、塗膜の厚みに影響を与えることである。従ってまた、正確な厚み測定のためには、絶縁塗膜の熱伝導率を決定する必要性がある。
【0006】
よって、厚さ標準を使用せずに、絶縁塗膜の絶対的な厚みを定量的に測定できる技術に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様により、対象物の基材上に塗布された絶縁塗膜の厚みと熱伝導率を決定する装置が提供される。この装置には、表面に絶縁塗膜が含まれる対象物表面に、複数の光学パルスを高速照射するための光源が含まれる。更にシステムには、対象物中の光学パルスの伝播を示すデータを集めるように設定された記録システムが含まれる。更に装置には、記録システムに連結され、記録システムからデータを受け取るように設定され、絶縁塗膜の厚みおよび熱伝導率を決定するように設定されたプロセッサが含まれる。
【0008】
本技術により、絶縁塗膜のための厚みおよび熱伝導率を決定する方法が開示される。この方法には、絶縁塗膜が基材表面に塗布されている場合に、絶縁塗膜および基材に対する時間−温度の各応答を得ることが含まれる。この方法にはまた、塗膜および基材に対する時間−温度の各応答から、デルタログ値を計量すること、および変曲点の値を計量することが含まれる。更にこの方法には、デルタログ値または変曲点の値を使い、一つまたは複数の塗膜特性値を計算することが含まれる。この方法には最後に、その一つまたは複数の塗膜特性値を使用して、熱伝導率または塗膜厚さを決定することが含まれる。
【0009】
同じ数字が複数の図面を通して同じ箇所を示す添付図面を参考に、本発明の様々な特徴、態様および優位性が、以下の詳細な説明を読めばよりよく理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
一実施例として、本発明は、高速赤外線(IR)過渡的サーモグラフィーを使い、絶縁塗膜の実質厚みと熱伝導率を決定して表示するための非破壊検査方法と装置に関する。
【0011】
図1は、対象物12の厚みと熱伝導率を決定するための装置10の概略図である。より具体的には、図1の典型的な装置が、対象物12の基材16上に塗布された絶縁塗膜14の、厚みと熱伝導率を決定するために使用できる。基材16は、一実施例では熱伝導性基材である。塗膜14は、一実施例では熱保護塗膜(TBC)であり、別の実施例では環境保護塗膜(EBC)である。一実施例において対象物12には、効果的画像化のため絶縁塗膜14上に塗布された黒色外面塗膜18が含まれる。一実施例では、実質的には煤であって塗布すると素早く乾燥するカーボンスプレーが、黒色外面塗膜18として使用される。別の実施例では、対象物12には、最初にグラファイト、カーボンまたはカーボンブラックなどのカーボンを主成分とする物質の水性塗料など、高圧紫外光、可視光および赤外線を吸収する物質の希薄速乾性塗膜18が(スプレー、ブラシまたはローラなどで)塗布される。黒色外面塗膜が、絶縁塗膜14のいかなる特性をも変えないこと、空気中で別途に、または操作温度での1回目のサイクルで焼却除去できることが、当該技術分野の技術者には理解できるであろう。
【0012】
この装置10にはまた、表面に絶縁塗膜14が含まれる対象物12の表面の上に、複数の光学パルス24を高速照射するための光源20が含まれる。一実施例では、光源20に、対象物12の表面に高エネルギー光学パルスを照射する1個または複数個のフラッシュランプが含まれる。典型的な実施形態では、測定される対象物12の表面を高速加熱するために、フラッシュランプの熱パルス光源20が起動される。例えば、フラッシュランプ熱パルス源20の適切な配置は、4個または8個の高速高出力の写真用フラッシュランプであり、それぞれが約4.8キロジュールの出力が可能であり、個別の電源をもつセット(例えば、イリノイ州シカゴのスピードトロン(Speedotron)社製のもの)である。
【0013】
具体的実施例における装置10には、光源20と対象物12の間に置かれ、光源20から発した約2ミクロン超の光学波長を除去するために設定されたフィルター22が含まれる。一実施例では、フラッシュランプのフィルター22には、パイレックス(Pyrex)(登録商標)ガラス(コーニング社)、溶融石英、BK7(BK7は、レンズ、窓、鏡用の基材として広く使用されているホウケイ酸クラウンガラスである)、または可視およびUV(紫外)光に対して透過性のある他の光学材料を含めることができ、3〜5ミクロン範囲の全ての放射線をフラッシュランプに反射して戻すために、フラッシュランプに面した側を赤外線反射塗膜で被覆されている。光学ガラスおよび塗布されたフィルターは、コネチカット州のオリエルオブストラフォード(Oriel of Strafford)など、汎用科学レンズおよび光学ガラスの製造者から入手できたり特殊製造されている。
【0014】
一つの光学パルスまたは複数の光学パルスは一般に参照番号24で示されているが、黒色表面18上に照射され、一つの熱パルスまたは複数の熱パルスが塗膜内に伝播し、塗膜/基材の界面25で反射される。この反射波は、全般に参照番号26で示される。
【0015】
さらに装置10には、対象物12中を熱パルスが伝播するのを表すデータを含む反射波26を集めるように設定された記録システム28が含まれる。一実施例では、対象物12内の温度または温度プロファイルを観測し画像化する記録システム28として、高速IRの焦平面アレイカメラが使用される。IRカメラ(例えば、アンバーエンジニアリングオブゴレタ(Amber Engineering of Goleta)、カリフォルニア−レイセオン(Raytheon)社から入手できるラディアンス(Radiance)HSカメラ)が、フラッシュまたは光源20による光学パルスのアプリケーションとして、対象物12の同じ側面上の熱または温度プロファイルを捕捉することは、注目されてよい。典型的な実施形態では、装置10で、対象物12内での熱パルス伝播を表し、記録システム28に保存される熱画像を受け取るために、赤外線過渡的サーモグラフィー画像化法が使用される。
【0016】
また装置10には、通信回線32および33を介して記録システム28および光源20とそれぞれ交信するための記録システムおよび光源コントロール30が含まれる。別の実施例では、記録システムおよび光源コントロール30は、記録システム28内部に含まれる。熱データの取得は、光学的起動または他の適切な方法のいずれかにより、フラッシュランプの発光時点で開始するのが好ましい。システムコンピュータまたはプロセッサ34(例えばアンバー(Amber)社からイメージデスク(ImageDesk)(登録商標)フレーム取得システムで提供されているもの、あるいは、例えば、ミシガン州ラスラップビレッジ(Lathrup Village)のサーマルウエーブイメージング(Thermal Wave Imaging)社から購入できるような、フレーム取得およびフラッシュランプ制御を行う別の従来型ソフトウエアなど)の上で実行される従来型ビデオフレーム取得ソフトウエアで管理され、記録システムおよび光源コントロール30として示される、従来型フラッシュランプ電子工学によってフラッシュランプの発光が制御される。
【0017】
一実施例においては、システムの制御用コンピュータ/画像プロセッサ34は、デジタル画像処理およびディスプレイに加えて、周辺装置の制御および通信機能が可能なプログラム化された汎用デジタルコンピュータである。プロセッサ34は、所定数の連続熱画像フレームを対象物の表面から取得するために、記録システムおよび光源コントロール30を制御するが、それらは後の分析のためにメモリー(図示せず)に保存される。
【0018】
プロセッサ34は、記録システム28または記録システムおよび光源コントロール30から、データ36を受け取るように設定される。プロセッサ34はさらに、絶縁塗膜の厚みおよび熱伝導率を決定するように設定される。そうするために、プロセッサ34はさらに、記録システム28で受け取ったデータ26から、塗膜14および基材16に対する時間−温度応答を取得するように設定される。一実施例において、このプロセッサは、時間−温度の各応答からデルタログ値および変曲点の値を計量するように設定される。本明細書の以下で数式を参照しながら、これらの値をより詳細に記述する。プロセッサ34は、デルタログ値または変曲点の値を使って、一つまたは複数の塗膜特性値をさらに計算するように設定される。プロセッサで計算される値のいくつかは、例えば、塗膜の浸透率、反射率、変数、塗膜固有時間、あるいは熱拡散率である。これら値の一つまたは複数は、本明細書の以下の数式により、絶縁塗膜の厚みおよび熱伝導率を決定するために使用される。一具体的実施例では、プロセッサ34は、厚みと熱伝導率を同時に決定するように設定される、すなわち、プロセッサの出力には厚みと伝導率の双方が含まれる。
【0019】
一実施例において、装置10にはまた、プロセッサ34からの出力40を受け取り、表示するためのディスプレイモニター38が含まれる。このディスプレイモニターには、プロセッサ34の出力を表示するために、プリンタまたはその他任意のデバイスが結合されていてもよい。
【0020】
記録システム28から得られたままの測定データより、塗膜の熱伝導率と厚みを決定するために、プロセッサ34により、以下の数式で記述するような一定の計算が行われる。塗膜の密度ρおよび比熱Cが時間経過でほとんど変化しないことは、当業者には理解できるであろう。式(1)で示されているように、これら2つの数値の積は一定であると考えられ、試験前に別々に決定される。
【0021】
ρc=一定 ・・・(1)
図1を参照して説明すると、熱波は塗膜に侵入し、塗膜/基材の界面から反射されるが、反射係数あるいは反射率Rは式(2)で与えられる、
【0022】
【数1】

・・・(2)
ただし、EおよびEは、それぞれ次式で与えられる塗膜および基材の「浸透率」である、
【0023】
【数2】

・・・(3)
ただし、Kは塗膜の熱伝導率であり、Kは基材の熱伝導率である。一実施例での測定単位は、密度(ρ)に対してg/cm、比熱cに対してはcal/g−℃、熱伝導率に対してはcal/s−cm−℃である。
【0024】
発光させた後の、塗膜表面での塗膜/基材系の温度−時間応答は次式で与えられる、
【0025】
【数3】

・・・(4)
ただし、T1/2cは発光パルスに対する塗膜の「半空間」応答であって式(6)で与えられ、τは厚さLで熱拡散率αの塗膜の「固有時間」であり、次式で与えられる。
【0026】
【数4】

・・・(5)
式(6)および(7)で示される半空間関数は、塗膜または基材の無限「半空間」表面における、熱衝撃に対する「時間の平方根分の1」温度応答である。式(4)で示されるように、応答関数は、式(6)のt=0で示される塗膜半空間から、式(7)のt=∞で示される基材半空間まで動く。
【0027】
【数5】

・・・(6)
【0028】
【数6】

・・・(7)
このことは、式(2)のRの定義を使用して、t→0およびt→∞などの極限における式(4)の無限和をとることで容易に示される。
【0029】
一実施例では、t=0近傍での対数の差を「デルタログ(deltalog)」として定義する。
【0030】
【数7】

・・・(8)
次に、式(6)および(7)からデルタログに関連して、塗膜拡散の基材拡散に対する比率を定義する。
【0031】
【数8】

・・・(9)
反射率はデルタログからでも定義できる。
【0032】
【数9】

・・・(10)
時間での変曲点は、式(4)で示されるT−t曲線を微分して、結果をゼロとおくことで理論的に誘導できる。次に変数「p」を使い、下式(12)を解いて、最大勾配の時点(変曲時間、「tinflection」)を見出だす。
【0033】
当業者なら、「p」が以下のように定義されることに気付くであろう。
【0034】
【数10】

・・・(11)
ただし、τは塗膜の固有時間である。
【0035】
「p」に対して解くべき式は次式で与えられる。
【0036】
【数11】

・・・(12)
当業者なら、式(12)への代入値は実験値Rであり、これは式(10)から得られることを理解するであろう。式(12)から変数「p」を見出したら、曲線を微分して時間での最大値を見つけることにより、T−t曲線の変曲点、すなわち変曲時間「tinflection」が実験的に得られる。次に、その変曲時間は式(11)において、塗膜固有時間τの決定に使用される。
【0037】
塗膜の熱拡散率αは、次のように定義される。
【0038】
【数12】

・・・(13)
熱伝導率Kは、式(3)の塗膜浸透率の定義から見出され、
【0039】
【数13】

・・・(14)
ρCが式(1)から、Eが式(9)から分かるので、式(13)で与えられるαを決定できる。
【0040】
最後に、塗膜の厚みLは式(15)から見出される。
【0041】
【数14】

・・・(15)
図2−3は、図1を参照して、上述のプロセッサ34によって具体的模擬操作をした、時間−温度応答グラフの例示である。図2は、X軸が秒で表す時間で全般的に参照番号72で示され、Y軸は任意の単位での温度であって全般的に参照番号74で示されるグラフ70である。グラフ70は、全般的に参照番号76で示される塗膜の時間−温度応答を例示し、全般的に参照番号78で示される基材の時間−温度応答を例示する。グラフ70から分かるように曲線79は、接線80で示された塗膜半空間から、接線82で示された基材の半空間に連続的に遷移する。このことは、温度対時間の対数−対数プロットで一層明らかとなり、図3に示す。
【0042】
図3は上述のように、直線軸上の温度対時間の対数−対数プロット84である。X軸は参照番号86で示され、秒で計測された時間の対数値を表し、Y軸は参照番号88で示され、任意の単位の温度の対数値を表す。破線90は、式(6)で示される塗膜の半空間曲線である。下方の破線92は、式(7)で示された基材の半空間曲線であり、式(4)は遷移曲線100である。すなわち図3は、参照番号94および96で示される曲線100の一部分が、対数−対数プロット上で−1/2に等しい勾配を有することを明示する。曲線100はまた、2直線90と92の間で、最大勾配の点102、すなわち変曲点(あるいは変曲時間「tinflection」)をもつ。
【0043】
グラフ84の二番目の重要な特徴は、2本の(対数−対数での)線形半空間曲線の間に、偏差104があることである。この偏差は、対数空間での直線90と直線92の間の差であり、線形空間での比率であり、本明細書で記述しているようにデルタログとして定義され、式(8)で与えられる。塗膜温度と基材温度との比をとることで、式(6)および式(7)に示されているように浸透率を除く全てが相殺されることが、当業者なら理解できるであろう。すなわち、この比率は塗膜および基材の熱特性のみに依存し、フラッシュの強度に依存しない。基材の熱特性は既知であるか、予め決定されている。それゆえ、もしこの比率が実験的に求められたら、図3の偏差104に示されているように、塗膜浸透率が、そしてそれによって反射率が求まる。
【0044】
図4は、絶縁塗膜の厚みおよび熱伝導率を決定するための、非破壊検査または点検方法の具体的ステップを例示する流れ図106である。この方法には、図1に関連して本明細書で上述したように、対象物表面に光学パルスを当てるステップ108が含まれる。ステップ110では、この方法に、対象物の表面に熱パルスの伝播を示すデータを得ることが含まれる。ステップ112で、塗膜および基材に対する時間−温度の各応答が、図2および図3に示されるデータから得られる。
【0045】
ステップ114の時間−温度応答から得られる値の一つは、式(8)に関連して上述したデルタログ値であり、基材および塗膜に対する時間−温度の各応答の対数値の差である。ステップ116では、式(9)で与えられるようにして、塗膜浸透率がデルタログの値から計算される。次にステップ118で熱伝導率が、塗膜浸透率を使って式(3)で与えられるようにして計算される。
【0046】
また、ステップ120では、デルタログの値を使って、式(10)で与えられるようにして反射率が計算される。ステップ122では反射率を使って、式(12)で与えられるようにして変数「p」が計算される。ステップ124では、各時間−温度応答から変曲点「tinflection」が得られる。変曲点は、時間−温度応答における最大勾配の点であり、図3を参考にグラフで示される。ステップ126では、変曲点「tinflection」および変数「p」から、式(11)で与えられるようにして塗膜固有時間が得られる。
【0047】
ステップ128では、式(13)で与えられるようにして、塗膜の熱拡散率αが熱伝導率を使って計算される。最後にステップ130で、式(15)で与えられるようにして、塗膜の厚みが熱拡散率および塗膜固有時間を使って計算される。本明細書に記述した技術を使って決定できる厚みの限界が、フラッシュの出力および塗膜の気孔率に依存することを、当業者は注目するかも知れない。
【0048】
本発明の特徴のいくつかを例示し、記述してきたが、当業者は数多くの修正や変更を想到するであろう。したがって、これら全ての修正や変更は本発明の真の精神の範囲に入るものとして、添付の特許請求の範囲に包含されると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の態様により、絶縁塗膜の厚みおよび熱伝導率を決定して表示するための、典型的な赤外線過渡的サーモグラフィーシステムの概略図である。
【図2】図1のシステムを使用して得た塗膜および基材に対する、時間−温度応答の模擬的なグラフ表示である。
【図3】図1のシステムを使用して得た塗膜および基材に対する、時間−温度応答の対数での模擬的なグラフ表示である。
【図4】本発明の態様による、絶縁塗膜の厚みと熱伝導率を決定する非破壊検査法の典型的なステップを示す流れ図である。
【符号の説明】
【0050】
10 装置
12 対象物
14 絶縁塗膜
16 基材
18 黒色外面塗膜
20 光源
22 フィルター
24 光学パルス
25 塗膜−基材界面
26 熱パルスの伝播を表すデータ
28 記録システム
30 記録システムおよび光源コントロール
32 通信回線
33 制御シグナル
34 プロセッサ
36 記録システムからのデータ
38 ディスプレイモニター
40 プロセッサからの出力
70 グラフ
72 X軸
74 Y軸
76 塗膜応答曲線
78 基材応答曲線
79 曲線
80 塗膜半空間の直線
82 基材半空間の直線
84 グラフ(logT−logt)
86 X軸
88 Y軸
90 塗膜半空間の直線
92 基材の半空間の直線
94 塗膜応答曲線
96 基材応答曲線
100 曲線
102 変曲点
104 デルタログ値
106 流れ図
108−130 具体的ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(12)の基材(16)上に塗布された絶縁塗膜(14)の厚みと熱伝導率を決定する装置(10)であって、
絶縁塗膜(14)を含む対象物(12)の表面上に、複数の光学パルス(24)を高速照射する光源(20)、
対象物(12)の内部で複数の光学パルス(24)の伝播を示すデータ(36)を集めるために設定された記録システム(28)、および
前記記録システム(28)に連結され、該記録システム(28)から前記データ(36)を受け取り、前記絶縁塗膜(14)の厚みと熱伝導率を決定するように構成されたプロセッサ(34)を含む装置。
【請求項2】
前記対象物(12)の表面が前記絶縁塗膜(14)上に処理された黒色外面塗膜(18)を含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光源(20)と前記対象物(12)の間に置かれ、前記光源(20)から発せられる2ミクロン超の光学波長を除去するために設定されたフィルター(22)を含む請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサ(34)は、前記記録システム(28)で受け取られたデータ(36)から前記絶縁塗膜(14)および基材(16)の時間−温度応答を得るように設定されている請求項1に記載の装置。
【請求項5】
時間−温度応答を使用して反射率および塗膜固有時間を決定するように前記プロセッサ(34)が設定され、厚みと熱伝導率を決定するために前記反射率および前記塗膜固有時間が使用される請求項4に記載の装置。
【請求項6】
それぞれの時間−温度応答からデルタログ値および変曲点の値を測定するように前記プロセッサ(34)が設定されている請求項4に記載の装置。
【請求項7】
デルタログ値または変曲点の値を使用して複数の塗膜特性値を計算するように前記プロセッサ(34)が設定されている請求項6に記載の装置。
【請求項8】
複数の塗膜特性値が塗膜浸透率、反射率、変数、塗膜固有時間、または熱拡散率の少なくとも1つを含む請求項6に記載の装置。
【請求項9】
厚みと熱伝導率を同時に決定するように前記プロセッサ(34)が設定されている請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記絶縁塗膜が熱保護塗膜(TBC)または環境保護塗膜(EBC)の少なくとも1つである請求項1に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−178429(P2007−178429A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−339759(P2006−339759)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】