説明

絶縁樹脂組成物および絶縁電線

【課題】電線やケーブルに要求される難燃性と機械特性を有し、体積固有抵抗が高く、絶縁特性に優れた樹脂組成物及びこの組成物を被覆材とする電線やケーブルを提供する。
【解決手段】エチレン系共重合体またはエチレン系共重合体とアクリルゴムを含む樹脂成分100質量部に対して、金属水和物100〜300質量部およびメラミンシアヌレート化合物0〜70質量部を含有する樹脂組成物であって、さらに、その樹脂成分中に、ポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体に(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーが側鎖として導入されたグラフト共重合体が1〜30質量%含有されている絶縁樹脂組成物、およびその絶縁樹脂組成物を被覆した電線。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋立て、焼却などの廃棄時において、重金属化合物の溶出や、多量の煙、腐食性ガスの発生がない難燃性の絶縁樹脂組成物およびその組成物を被覆材とする電気・電子機器の内部および外部配線に使用される絶縁電線等に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器の内部および外部配線に使用される絶縁電線の被覆材料には、難燃性、引張特性、耐熱性など種々の特性が要求される。このため、これら絶縁電線の被覆材料として、ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンドやエチレン系共重合体を主成分とするベース樹脂に分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を含有した、樹脂組成物を使用することがよく知られている。
近年、このような被覆材料を用いた絶縁電線を適切な処理をせずに廃棄した場合の種々の問題が提起されている。例えば、埋立てにより廃棄した場合には、被覆材料に含有されている可塑剤や重金属安定剤の溶出、また焼却した場合には、多量の腐食性ガスの発生、ダイオキシンの発生などという問題が起こる。
【0003】
このため、有害な重金属やハロゲン系ガスなどの発生がないノンハロゲン難燃材料で電線を被覆する技術の検討が盛んに行われている。
従来のノンハロゲン難燃材料は、ハロゲンを含有しない難燃剤を樹脂に配合することで難燃性を発現させたものであり、このような被覆材料の難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水和物が、また、樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体などが用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
ところで電子機器内に使用される電子ワイヤハーネスには、安全性の面から高い難燃性が要求されており、非常に厳しい難燃性規格である、UL1581(Reference Standard for Electrical Wires,Cables,and Flexible Cords)などに規定される垂直燃焼試験(Vertical Flame Test)のVW−1規格や水平難燃規格、JIS C3005に規定される60度傾斜難燃特性試験をクリアするものでなければならない。さらに、難燃性以外の特性についても、ULや電気用品取締規格などで、破断伸び100%以上、破断抗張力(引張り強さ)10MPa以上という高い機械特性が要求されている。
【特許文献1】特開2000−129049号公報
【特許文献2】特開2001−060414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような規格試験の特性を満足させるために、ベース材料としてエチレン系共重合体を用い、難燃剤として金属水和物を大量に加える検討が進められてきた。しかしながらこのような系は絶縁抵抗が低いという問題があり、この解決は大きな課題となっていた。
特に金属水和物とメラミンシアヌレートを併用すると難燃性の点では大きな効果があるが、絶縁抵抗の大幅な低下が生じるという問題があった。
本発明は、これらの問題を解決し、電線やケーブルに要求される難燃性と優れた機械特性を有し、体積固有抵抗が高く、絶縁特性に優れた樹脂組成物及びこの組成物を被覆材とする電線やケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、被覆材のベース樹脂としてエチレン系共重合体を含み、上記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、ベース樹脂の一成分として特殊な変性樹脂を含有し、金属水和物と必要に応じてメラミンシアヌレート化合物を難燃材として含有するエチレン系共重合体樹脂組成物により、VW−1規格に適合する優れた難燃特性を有し、しかも機械特性、絶縁特性に優れ、燃焼時にダイオキシンなどの有害物質を発生しない絶縁電線が得られることを見出した。
本発明はこの知見に基づくものである。
【0007】
すなわち本発明は、
(1)エチレン系共重合体またはエチレン系共重合体とアクリルゴムを含む樹脂成分100質量部に対して、金属水和物100〜300質量部およびメラミンシアヌレート化合物0〜70質量部を含有する樹脂組成物であって、さらに、その樹脂成分中に、ポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体に(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーが側鎖として導入されたグラフト共重合体が1〜30質量%含有されていることを特徴とする絶縁樹脂組成物、
(2)上記樹脂成分100質量%中に、アクリルゴムが5〜60質量%含有されていることを特徴とする(1)記載の絶縁樹脂組成物、
(3)上記樹脂成分100質量%中に、さらに、不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂が2〜30質量%含有されていることを特徴とする(1)または(2)記載の絶縁樹脂組成物、
(4)上記樹脂成分が酸およびエステル部分を総計として25〜60質量%含有し、樹脂成分100質量部に対して、金属水和物を150〜300質量部含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載の絶縁樹脂組成物
(5)上記金属水和物がその少なくとも50質量%以上はシラン処理された水酸化マグネシウムであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項記載の絶縁樹脂組成物、
(6)上記エチレン系共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体を含むものであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項記載の絶縁樹脂組成物、
(7)上記(1)〜(6)のいずれか1項記載の絶縁樹脂組成物を導体の周りに被覆したことを特徴とする電線またはケーブル、
(8)前記絶縁樹脂組成物が架橋されていることを特徴とする(7)記載の電線またはケーブル、および
(9)上記(1)〜(6)のいずれか1項記載の絶縁樹脂組成物を光ファイバの回りに被覆したことを特徴とする光ファイバコードまたは光ファイバケーブル
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の絶縁樹脂組成物は、電気・電子機器に要求される極めて高い難燃性と機械特性、電気特性を共に満足することができる。そして、埋立て、焼却などの廃棄時において、重金属化合物の溶出や、多量の煙、腐食性ガスの発生がないノンハロゲン難燃材である。
そして、これを被覆した本発明の絶縁電線等は、難燃性に優れ、体積固有抵抗が高く、電気絶縁性が良好で、特に浸水による絶縁抵抗の悪化が防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の絶縁樹脂組成物は、(a)エチレン系共重合体または(a)エチレン系共重合体と(b)アクリルゴムを含み、これに(c)ポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体に(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーが側鎖として導入されたグラフト共重合体を含有し、場合により(d)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィンを含有する樹脂成分(A)と、金属水和物(B)を含有するものであり、機械特性、難燃性、絶縁特性、電気特性に優れた樹脂組成物で、メラミンシアヌレート化合物を含有することによりさらに難燃性が向上する。
【0010】
本発明の絶縁樹脂組成物においては、アクリルゴムを含有することにより、皮むきの際にひげ状に被覆層を伸ばすことがなく皮むき性が良好になるとともに、さらに難燃性を向上させることが可能になる。さらにエチレン系共重合体とアクリルゴムを併用することにより難燃性を保つだけでなく、絶縁特性と機械的強度を高いレベルに維持することができる。また、アクリルゴムはポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体に(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーが側鎖として導入されたグラフト共重合体と併用することにより高い難燃性を維持出来るのみならず、多量に加えても電気特性も維持することが可能となる。
また不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体に(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーが側鎖として導入されたグラフト共重合体と併用することにより湿熱を加えたり、浸水させた後においてもさらに絶縁抵抗を高く保つことが可能となる。
特に高い難燃性を有する材料において、ポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体に(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーが側鎖として導入されたグラフト共重合体を加えると絶縁抵抗が格段に良好になり、特に樹脂成分中の酸及びエステル部分の量が25〜60質量%であり、金属水和物、例えば水酸化マグネシウムの量が樹脂成分100質量部に対し、150〜300質量部の材料では、垂直難燃性と電気特性の両立が可能となる。
【0011】
さらに難燃性を向上させる手法として、メラミンシアヌレートを併用すればよい。
これは燃焼したときに金属水和物が水を発生しつつ表面に殻を形成したうえで、メラミンシアヌレート化合物が内部からガスを発生することにより完全に消火できるため、非常に高い難燃性を有すると考えられる。また、この金属水和物がビニル基又はエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤で表面処理を行ったものであることにより、組成物を架橋したときにVW−1規格適合レベルの非常に高い難燃性を発現し、さらに、金属水和物の含有量を増やしても、要求される高い力学的強度を維持できる。またエチレン系共重合体やアクリルゴムは難燃性を補助する働きをしており、これらの材料により高い難燃性を維持することが可能となる。
【0012】
先ず、本発明の絶縁樹脂組成物のうち、樹脂成分(A)を構成する各成分およびその含有量にについて説明する。
(a)エチレン系共重合体
本発明の絶縁樹脂組成物は、樹脂の主体成分としてエチレン系共重合体を含有する。
本発明に用いることのできるエチレン系共重合体として、具体的には例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メタクリレート共重合体(EMA)、エチレン−αオレフィン共重合体などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。難燃性および機械特性向上の点からは、本発明で用いるエチレン系重合体として好ましいものはエチレン−酢酸ビニル共重合体である。また、エチレン−αオレフィン共重合体としては、メタロセン触媒を用いて合成されたリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
また、難燃性を向上させるうえでエチレンに対し共重合させた共重合成分の含有量(例えばEVAでは酢酸ビニル(VA)含有量、EEAではエチルアクリレート(EA)含有量)が、20質量%以上のものを使用するのが好ましく、さらに好ましくは25〜90質量%である。また、エチレン系共重合体のMFR(メルトフローレイト、JIS K6730)は、強度の面、樹脂組成物の混練り加工性の面から0.1〜20、さらに好ましくは0.2〜5程度が好ましい。
【0013】
(b)アクリルゴム
本発明の絶縁樹脂組成物には、アクリルゴムは含まれても含まれなくてもよく、樹脂成分100質量%中0〜60質量%の範囲内で含まれるのが好ましい。
アクリルゴムは、単量体成分としてはアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルと各種官能基を有する単量体を少量共重合させて得られるゴム弾性体であり、共重合させる単量体としては、2−クロルエチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、アクリル酸、アクリロニトリル、ブタジエン等を適宜使用することができる。具体的には、「Nipol AR」(商品名、日本ゼオン(株)製)、「JSR AR」(商品名、JSR(株)製)等を使用することができる。
特に単量体成分としてはアクリル酸メチルを使用するのが好ましく、その場合には、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルや、これにさらに(メタ)アクリル酸をモノマーとして共重合させた3元共重合体を特に好適に使用することができる。具体的には、2元共重合体の場合には「ベイマックD」や「ベイマックDP」(商品名、いずれも三井・デュポンポリケミカル(株)製)を、3元共重合体の場合には「ベイマックG」、「ベイマックHG」、「ベイマックGLS」(商品名、いずれも三井・デュポンポリケミカル(株)製)を使用することができる。
【0014】
これらのアクリルゴムを含有することにより、電線、ケーブル等の皮むきの際にひげ状に被覆材を伸ばすことなく皮むき性が良好になる。またアクリルゴムの含有により著しく難燃性が向上する。
本発明において、アクリルゴムは樹脂成分中0〜60質量%の割合で使用することができ、好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは5〜50質量%である。アクリルゴムが60質量%を越えると電線の押し出し加工性が著しく低下するだけではなく、未架橋時の電線同士の粘着が著しく大きくなり生産性が大幅に低下するためである。さらに高い難燃性を維持するためには5質量%以上加えた方がよい。
【0015】
またアクリルゴムとして、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸の3元共重合体を使用することにより難燃性の大幅な向上を達成することができる。しかしながら、3元共重合体を大量に使用すると押出負荷の増大や伸びの低下を生じさせるため、3元系アクリルゴムの量は好ましくは、50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下に抑えた方がよい。
【0016】
(c)ポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体に(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーが側鎖として導入されたグラフト共重合体
主鎖のポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体に、(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸をモノマー成分とするポリマーが側鎖として導入されたグラフト共重合体である。ここで、側鎖として導入されるポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル又はポリ(メタ)アクリル酸でもよく、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体でもよい。特に、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体が好ましい。
主鎖となりうるポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等が挙げられる。また、同様に主鎖となりうるエチレン系共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メタクリレート共重合体(EMA)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ブタジエンゴム、ポリプロピレンとエチレン−プロピレンゴムの共重合体、スチレン系エラストマー等が挙げられる。
側鎖としてグラフトされるポリマーのモノマー成分としての(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル等が挙げられる。
側鎖としてグラフトされる(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーの量は特には限定しないが、それぞれグラフト共重合体の0.1〜12質量%、好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜7質量%である。
【0017】
このポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体に(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーが側鎖として導入されたグラフト共重合体の含有量は、樹脂成分100質量%中1〜30質量%、好ましくは3〜25質量%、さらに好ましくは3〜20質量%である。このグラフトポリマーが少ないと実質的に効果がなく、また多過ぎると伸びが著しく低下する。
このポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体に(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーが側鎖として導入されたグラフト共重合体を少量加えるだけで、飛躍的に絶縁抵抗が向上し、また浸水した後の絶縁抵抗も飛躍的に高くなる。この理由は、金属水和物、例えば水酸化マグネシウムと(メタ)アクリル酸部位が結合し、このグラフトポリマーにより金属水和物が表面処理された形となる。さらにグラフト部位には疎水性の高い(メタ)アクリル酸エステルがあるため、金属水和物が疎水基で保護されることにより、高い絶縁抵抗及び高い耐水絶縁抵抗特性を示すと考えられる。
また、このグラフト共重合体を加えることにより、耐酸性も向上する。グラフト共重合体により金属水和物がコーティングされているため、長期の耐酸特性も優れている。さらに、このグラフトポリマーを使用することにより難燃性も向上する。
【0018】
ポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体に(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーが側鎖として導入されたグラフト共重合体を特に樹脂成分として酸やエステル部分の多いエチレン系共重合体やアクリルゴムをベース材料とし、金属水和物、例えば水酸化マグネシウム、の混合量が比較的多い材料に加えると、絶縁抵抗や浸水後の絶縁抵抗が大幅に良好となり、高い難燃性と電気特性の両立を図ることができる。
特に樹脂成分として、酸およびエステル部分を総計として25〜60質量%含有し、水酸化マグネシウムの量が、樹脂成分100質量部に対し、150〜300質量部含有する樹脂組成物の場合、ポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体に(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーが側鎖として導入されたグラフト共重合体を導入することにより高い難燃性と電気特性/浸水後の電気特性の両立を図ることができる。
ここでいう、酸およびエステル部分とは、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体の場合酢酸ビニル量、エチレン−(メタ)アクリル酸エステルであれば、(メタ)アクリル酸エステル量、エチレン−(メタ)アクリル酸であれば(メタ)アクリル酸部位、不飽和カルボン酸をグラフとしたポリオレフィンの場合不飽和カルボン酸、アクリルゴムの場合、アクリル部位(例えば、アクリル酸アルキル、アクリル酸)等のことである。
【0019】
(d)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン及びエチレン系共重合体
不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン及びエチレン系共重合体とは、直鎖状ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンやエチレン−酢酸ビニル(VA)共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート(EEA)共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体等のエチレン系共重合体やスチレン系エラストマーが不飽和カルボン酸やその誘導体で変性された樹脂のことであり、変性に用いられる不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸の誘導体としては、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸などがある。
【0020】
ポリオレフィンの変性は、例えば、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸等を有機パーオキサイドの存在下に溶融、混練することにより行うことができる。マレイン酸の変性量は通常0.1〜7質量%程度である。
不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィンは、樹脂とフィラーの接着、エチレン系共重合体やその他の樹脂との相溶化剤としての効果があり、電気特性の向上や浸水させたときの絶縁抵抗の低下を抑える効果やコンパウンドの強度を高める効果がある。
好ましい含有量は樹脂成分100質量%のうち2〜30質量%、さらに好ましくは5〜15質量%で使用することができる。この成分が2質量%より少ないと実質的に効果がなく、また30質量%を越えると端末加工性が大幅に低下する。
【0021】
なお、本発明の絶縁樹脂組成物の樹脂成分(A)は、(a)エチレン系共重合体および(c)ポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体に(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーが側鎖として導入されたグラフト共重合体を必須成分として含有し、必要に応じ(b)アクリルゴム、(d)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体を含有するが、本発明の目的を損なわない範囲で他の樹脂を含有させてもよい。
他の樹脂としてはポリプロピレン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブテンゴム、スチレン系エラストマー、ポリプロピレンとエチレンプロピレンゴムの共重合体が挙げられる。これらの量は樹脂成分(A)100質量%中40質量%以下、好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。特にポリプロピレンは耐熱性を向上させるために加えられる。ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、その他不飽和カルボン酸や(メタ)アクリル酸で変性されているポリプロピレン樹脂を導入しても良い。高い耐熱性を得るためには樹脂成分(A)100質量%中このポリプロピレンを10質量%以上加えることが好ましい。
【0022】
本発明の絶縁樹脂組成物は、樹脂成分(A)および金属水和物(B)を含有し、必要に応じ難燃性向上のためメラミンシアヌレート化合物(C)を含有してもよい。次に、金属水和物およびメラミンシアヌレート化合物について記載する。
(B)金属水和物
本発明の絶縁樹脂組成物において用いることのできる金属水和物の種類は、特に制限はないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、オルト珪酸アルミニウム、ハイドロタルサイトなどの水酸基あるいは結晶水を有する金属化合物があげられ、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの金属水和物のうち、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、さらに水酸化マグネシウムが好ましい。
【0023】
上記金属水和物は無処理でもよいが、表面処理をされたものを用いても良い。金属水和物の表面処理としては、シランカップリング剤、脂肪酸、チタネートカップリング剤等による処理が挙げられる。特にこの中でも、シランカップリング剤を使用したものが好ましい。
上記金属水和物の表面処理に用いられるシランカップリング剤としては、例えば、末端にアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ビニル基(メタクロキシル基)、エポキシ基を有するものが挙げられる。これらのシランカップリング剤は単独でも2種以上併用してもよい。その中でも末端にビニル基またはエポキシ基を有するものをその一成分として用いることが好ましく、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤を用いた金属水和物は全金属水和物中の50質量%以上が好ましい。
【0024】
本発明で用いることができるシランカップリング剤表面処理水酸化アルミニウムとしては、表面未処理の水酸化アルミニウム(ハイジライトH42M(商品名、昭和電工社製)など)を上記のビニル基又はエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤により表面処理したものなどがあげられる。
また、本発明で用いることができるシランカップリング剤表面処理水酸化マグネシウムとしては、表面無処理のもの(市販品としては、キスマ5(商品名、協和化学(株)製)など)、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸で表面処理されたもの(キスマ5A(商品名、協和化学(株)製)など)、リン酸エステル処理されたもの(キスマ5J(商品名、協和化学(株)製))などを上記のビニル基又はエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤により表面処理したもの、またはビニル基又はエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤によりすでに表面処理された水酸化マグネシウムの市販品(キスマ5L、キスマ5P(いずれも商品名、協和化学(株)製)など)がある。
また、上記以外にも、予め脂肪酸やリン酸エステルなどで部分的に表面処理した水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムに追加的にビニル基又はエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤を用い表面処理を行った金属水和物なども用いることができる。
【0025】
金属水和物の表面処理を行う場合は、未処理又は部分表面処理金属水和物に予め又は混練りの際シランカップリング剤をブレンドして行うことができる。このときのシランカップリング剤は、表面処理するに十分な量が適宜加えられるが、具体的には金属水和物に対し0.1〜3.0質量%、好ましくは0.15〜2質量%、さらに好ましくは0.15〜1質量%である。
本発明においてこの金属水和物の配合量は、樹脂成分100質量部に対して、100質量部〜300質量部、好ましくは120〜280質量部である。この金属水和物の配合量が少なすぎると要求される難燃性が確保できず、また多すぎると力学的強度が著しく低下する。
【0026】
(C)メラミンシアヌレート化合物
本発明で用いるメラミンシアヌレート化合物は、粒径が細かい物が好ましい。本発明で用いるメラミンシアヌレート化合物の平均粒径は好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。また、分散性の面から表面処理されたメラミンシアヌレート化合物が好ましく用いられる。
本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物としては、例えばMCA−0、MCA−1(いずれも商品名、三菱化学(株)製)、MC6000(商品名、日産化学(株)製)などがある。
本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物として、例えば以下のような構造のメラミンシアヌレートがある。
【0027】
【化1】

【0028】
本発明において、メラミンシアヌレート化合物は含有してもしなくてもよく、その含有量は、樹脂成分100質量部に対して0〜70質量部、好ましくは0〜60質量部である。メラミンシアヌレート化合物が多すぎると力学的強度、特に伸びが低下し、電線としたときの外観が著しく悪くなる。メラミンシアヌレート化合物はアクリルゴムとの相乗作用により難燃性を大幅に向上させる効果があるため、高難燃性が必要な場合には加えるのが好ましい。
【0029】
本発明の絶縁樹脂組成物には、必要に応じスズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛及びホウ酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種を含有することができ、さらに難燃性を向上することができる。これらの化合物を用いることにより、燃焼時の殻形成の速度が増大し、殻形成がより強固になる。従って、燃焼時に内部よりガスを発生するメラミンシアヌレート化合物とともに、難燃性を飛躍的に向上させることができる。
本発明で用いるホウ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛は平均粒子径が5μm以下が好ましく、3μm以下がさらに好ましい。
本発明で用いることのできるホウ酸亜鉛として、具体的には例えば、アルカネックスFRC−500(2ZnO/3B・3.5HO)、アルカネックスFRC−600(いずれも商品名、水澤化学(株)製)などがある。また、スズ酸亜鉛(ZnSnO)、ヒドロキシスズ酸亜鉛(ZnSn(OH))として、アルカネックスZS、アルカネックスZHS(いずれも商品名、水澤化学(株)製)などがある。
【0030】
本発明の絶縁樹脂組成物には、電線やケ−ブルの被覆材において、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜含有することができる。
酸化防止剤としては、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンゾイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤などがあげられる。
【0031】
金属不活性剤としては、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’−オキサミドビス−(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などがあげられる。
難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどがあげられる。
【0032】
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系などがあげられ、なかでも、ワックスE、ワックスOP(いずれも商品名、ヘキスト社製)などの内部滑性と外部滑性を同時に示すエステル系、アルコール系、金属石けん系などが挙げられる。その中でもステアリン酸亜鉛やステアリン酸は、絶縁抵抗の向上の効果があり、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸マグネシウムは、目やにを防ぐ効果がある。さらに滑剤として脂肪酸アミドを併用することにより、簡単に導体や光ファイバ等との密着性を制御することが可能となる。
【0033】
本発明の絶縁樹脂組成物は、組成物を構成する上記の各成分を、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど、通常用いられる混練装置で溶融混練して得ることができる。
【0034】
次に、本発明の電線、ケーブル、光ファイバコードおよび光ファイバケーブルについて説明する。
本発明の難燃性を有する絶縁樹脂組成物は電気・電子機器の内部および外部配線に使用される配線材導体や光ファイバ心線、光ファイバコードなどの成形部品被覆、製造に適する。
本発明の難燃性を有する絶縁樹脂組成物を導体、配線材や光ファイバの被覆材として使用する場合には、好ましくは押出被覆により、導体等の外周に形成した少なくとも1層の被覆層を有すること以外、特に制限はない。
例えば、導体としては軟銅の単線又は撚線などの公知の任意のものを用いることができる。また、導体としては裸線の他に、錫メッキしたものやエナメル被覆絶縁層を有するものを用いてもよい。
本発明の電線またはケーブルは、汎用の押出被覆装置を用いて、前述した難燃性を有する絶縁樹脂組成物を導体周囲や絶縁電線周囲に押出被覆することにより製造することができる。このときの押出被覆装置の温度は、シリンダー部で約180℃、クロスヘッド部で約200℃程度にすることが好ましい。
本発明の電線またはケーブルにおいては、導体等の周りに形成される絶縁層(本発明の絶縁樹脂組成物からなる被覆層)の肉厚は特に限定しないが通常0.15mm〜5mm程度である。
【0035】
また、本発明の電線またはケーブルにおいては、本発明の難燃性を有する絶縁樹脂組成物を押出被覆してそのまま被覆層を形成することが好ましいが、さらに耐熱性を向上させることを目的として、押出後の被覆層を架橋させることも可能である。但し、この架橋処理を施すと、被覆層の押出材料としての再利用は困難になる。
架橋の方法として、常法による電子線照射架橋法や化学架橋法が採用できる。
電子線架橋法の場合は、本発明の絶縁樹脂組成物を押出成形して被覆層とした後に常法により電子線を照射することにより架橋をおこなう。電子線の線量は1〜30Mradが適当であり、効率よく架橋をおこなうために、被覆層を構成する絶縁樹脂組成物に、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として含有してもよい。
化学架橋法の場合は、絶縁樹脂組成物に有機パーオキサイドを架橋剤として配合し、押出成形して被覆層とした後に常法により加熱処理により架橋をおこなう。
【0036】
本発明の光ファイバコードまたは光ケーブルは、汎用の押出被覆装置を使用して、本発明の絶縁樹脂組成物を被覆層として、光ファイバ心線の周囲に、または抗張力繊維を縦添えもしくは撚り合わせた光ファイバコードの周囲に押出被覆することにより、製造される。このときの押出被覆装置の温度は、シリンダー部で180℃、クロスヘッド部で約200℃程度にすることが好ましい。
本発明の光ファイバコードは、用途によってはさらに周囲に被覆層を設けないでそのまま使用される。
なお、本発明の光ファイバコードまたはケーブルは本発明の難燃性を有する絶縁樹脂組成物を被覆層として、光ファイバ心線またはコードの外周に被覆されたものすべてを包含し、特にその構造を制限するものではない。被覆層の厚さ、光ファイバコードに縦添えまたは撚り合わせる抗張力繊維の種類、量などは、光ファイバケーブルの種類、用途などによって異なり、適宜に設定することができる。
【0037】
図1〜3に、本発明の光ファイバコードおよびケーブルの構造例を示す。
図1は、光ファイバ心線1の外周に直接、絶縁樹脂組成物からなる被覆層2を設けた本発明の光ファイバコードの一実施例の断面図である。
図2は、複数の抗張力繊維4を縦添えした1本の光ファイバコード3の外周に被覆層5を形成した本発明の光ファイバケーブルの一実施例の断面図である。
図3は、2本の光ファイバコード3および3の外周にそれぞれ複数の抗張力繊維4を縦添えし、さらにその外周に絶縁樹脂組成物からなる被覆層6を形成した本発明の光ファイバケーブル(光ファイバ2心ケーブル)の一実施例の断面図である。
【0038】
また、本発明の難燃性を有する絶縁樹脂組成物から通常の射出成形等の成形方法により、例えば、電源プラグ、コネクター、スリーブ、ボックス、テープ基材、チューブ、シート等を成形することができ、その成形部品の形状は制限されるものではなる。
例えば電線部品等の射出成形品を得る場合は、シリンダー温度220℃程度、ヘッド温度230℃程度で射出成形可能である。射出成形装置としては通常のPVC樹脂等の成形に用いられている射出成形機を用いることにより、成形可能である。
なお、シートやチューブ等についても電線被覆と同様な方法で押し出し可能であり、電線と同様、化学架橋法や電子線架橋法により架橋を行ってもよい。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明をするが、本発明はこれに制限されるものではない。
[実施例1〜7、比較例1〜3]
表1に実施例1〜7および比較例1〜3の樹脂組成物の各成分およびその含有量(表中の数字は、断りのない限り質量部である)を示す。表に示す各成分を室温にてドライブレンドし、バンバリーミキサーを用いて溶融混練して、各樹脂組成物を製造した。
【0040】
表に示す各成分材料は下記のものを使用した。
(a)エチレン系共重合体
エチレン−酢酸ビニル共重合体
「エバフレックスEV180」 (商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)
(酢酸ビニル含有量:33質量%)
「YX−21K」 (商品名、東ソー(株)製)
(酢酸ビニル含有量:41質量%)
「レバプレン800HV」 (商品名、バイエル社製)
(酢酸ビニル含有量:80質量%)
メタロセン触媒ポリエチレン
「カーネルKF−360」 (商品名、日本ポリケム(株)製)
(密度:898kg/m
(b)アクリルゴム
エチレンアクリル酸エステル共重合体アクリルゴム
「ベイマックDP」 (商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)
(アクリル酸エステル含有量:70質量%)
(c)メタクリル酸メチルとメタクリル酸とをモノマー成分とするポリマーがグラフトされたエチレン−酢酸ビニル共重合体
「モディパーA6600」 (商品名、日本油脂(株)製)
(酢酸ビニル含有量:28質量%)
(d)マレイン酸変性ポリエチレン
「アドマーXE070」 (商品名、三井化学(株)製)
(マレイン酸変性量:1質量%)
(e)ブロックポリプロピレン
「PB−170A」 (商品名、サンアロマー(株)製)
(B)金属水和物
シラン処理水酸化マグネシウム
「キスマ5L」 (商品名、協和化学(株)製)
(C)メラミンシアヌレート
「MC6000」 (商品名、日産化学(株)製)
その他の添加剤
ヒンダートフェノール系老化防止剤
「イルガノックス1010」 (商品名、チバガイギー社製)
銅害防止剤
「CDA−1」 (商品名、(株)ADECA製)
【0041】
次に、電線製造用の押出被覆装置を用いて、導体(導体径0.78mmφの錫メッキ軟銅撚線 構成:7本/0.26mmφ)上に、予め溶融混練した上記樹脂組成物を押し出し法により被覆して、各々絶縁電線を製造した。外径は2.44mm(被覆層の肉厚0.83mm)とした。被覆後、一部の電線については5Mradで電子線照射して架橋を行った。
【0042】
得られた各絶縁電線に対して、以下の物性を測定した。得られた各実施例、比較例の結果を表1に示した。
1)引張り強さ、伸び
UL1571に準拠し、各絶縁電線から被覆層の管状片を作成し、その伸び(%)と引張り強さ(MPa)を、標線間25mm、引張速度500mm/分の条件で測定した。伸びおよび引張り強さの要求特性は、それぞれ100%以上、10MPa以上である。
2)難燃性1
各絶縁電線について、UL1581の「Vertical Flame Test」をおこなった。3本試験を行い3本共に合格したものを「合格」、それ以外を「不合格」とした。なお本テストは合格が好ましいが、必ずしも合格する必要はない。
3)難燃性2
各絶縁電線について、JIS C 3005に規定される60度傾斜難燃試験を行った。3本試験を行い3本共に合格したものを合格とした。
4)絶縁抵抗
各絶縁電線について、JIS C 3005に規定される絶縁抵抗の初期値および1週間浸水後の絶縁抵抗を測定した。初期値は150MΩ・km以上、1週間後は10MΩ・km以上は必要である。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例1〜7は、UL等で規定されているいずれの評価項目においても満足な結果が得られている。
これに対して、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーが導入されたグラフト共重合体を含有しない比較例1、2は、浸水後の絶縁抵抗が特に低く規定を満たすことができない。また、実施例5と同じ樹脂成分組成を有するが、金属水和物含有量が本発明の規定の範囲を外れた比較例3は、引張り強さおよび伸びの項目で満足することができず、本発明の効果が得られないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の成形物品の一例である光ファイバコードの断面図である。
【図2】本発明のケーブルの一例の断面図である。
【図3】本発明のケーブルの他の例の断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 光ファイバ心線
2 被覆層
3 光ファイバコード
4 抗張力繊維
5 被覆層
6 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系共重合体またはエチレン系共重合体とアクリルゴムを含む樹脂成分100質量部に対して、金属水和物100〜300質量部およびメラミンシアヌレート化合物0〜70質量部を含有する樹脂組成物であって、さらに、その樹脂成分中に、ポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体に(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸とをモノマー成分とするポリマーが側鎖として導入されたグラフト共重合体が1〜30質量%含有されていることを特徴とする絶縁樹脂組成物。
【請求項2】
上記樹脂成分100質量%中に、アクリルゴムが5〜60質量%含有されていることを特徴とする請求項1記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項3】
上記樹脂成分100質量%中に、さらに、不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン及び/又はエチレン系共重合体樹脂が2〜30質量%含有されていることを特徴とする請求項1または2記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項4】
上記樹脂成分が酸およびエステル部分を総計として25〜60質量%含有し、樹脂成分100質量部に対して、金属水和物を150〜300質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の絶縁樹脂組成物
【請求項5】
上記金属水和物がその少なくとも50質量%以上はシラン処理された水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項6】
上記エチレン系共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体を含むものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の絶縁樹脂組成物を導体の回りに被覆したことを特徴とする電線またはケーブル。
【請求項8】
前記絶縁樹脂組成物が架橋されていることを特徴とする請求項7記載の電線またはケーブル。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項記載の絶縁樹脂組成物を光ファイバの回りに被覆したことを特徴とする光ファイバコードまたは光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−150532(P2008−150532A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341669(P2006−341669)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】