説明

絶縁膜形成用組成物、絶縁膜の製造方法、及びそれによって得られる絶縁膜

【課題】絶縁膜形成用組成物を提供すること。
【解決手段】絶縁膜形成用組成物は、ポリマーAと、ポリマーBと、溶媒A及び大気圧における沸点が溶媒Aよりも低い溶媒Bと、を含み、かつ、以下の式(i)及び(ii)を満たす。
前記ポリマーAの溶媒Aへの溶解度>前記ポリマーAの前記溶媒Bへの溶解度
・・・(i)
前記ポリマーBの溶媒Aへの溶解度<前記ポリマーBの前記溶媒Bへの溶解度
・・・(ii)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁膜形成用組成物、絶縁膜の製造方法、及びそれによって得られる絶縁膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模半導体集積回路(ULSI)は、増大する情報処理量や機能の複雑さに対応するため、さらなる高速処理が強く望まれている。ULSIの高速化は、チップ内素子の微細化・高集積化や膜の多層化により実現されてきている。しかしながら、素子の微細化に伴い配線抵抗や配線間寄生容量が増大し、配線遅延がデバイス全体の信号遅延の支配的要因となりつつある。この問題を回避するために、低抵抗率配線材料や低誘電率(Low−k)層間絶縁膜材料の導入が必須の技術となっている。
【0003】
低誘電率の層間絶縁膜としては、例えば、シリカ(SiO)の膜密度を低下させたポーラスシリカ膜、Fをドープしたシリカ膜であるFSG、CをドープしたSiOC膜等の無機系層間絶縁膜や、ポリイミド、ポリアリーレン、ポリアリーレンエーテル等の有機系層間絶縁膜が挙げられる。
【0004】
また、より均一な層間絶縁膜を形成することを目的として、SOG膜と呼ばれるテトラアルコキシシランの加水分解縮合生成物を主成分とする塗布型の層間絶縁膜や、有機アルコキシシランを加水分解縮合して得られるポリシロキサンからなる有機SOG膜が提案されている。
【特許文献1】特開2007−324283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
層間絶縁膜は2層以上の異なる層から構成されている場合がある。しかしながら、2種類以上の異なる層から形成される層間絶縁膜を塗布により形成する場合、各層を別々に塗布して成膜する必要があるため、手間が多くかかる。
【0006】
本発明は、上記従来の状況に鑑み、簡便に2層以上の異なる層を有する絶縁膜を形成するための組成物、絶縁膜の製造方法、及びそれによって得られる絶縁膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる絶縁膜を形成するための組成物は、
下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、及び加水分解性基を有するポリカルボシランからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を加水分解縮合して得られた加水分解縮合物(以下、ポリマーAという)と、
Si(OR4−a ・・・・・(1)
(式中、Rは水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を示し、Rは1価の有機基を示し、aは0〜2の整数を示す。)
(RO)3−bSi−(R−Si(OR3−c ・・・(2)
(式中、R〜Rは独立して、1価の有機基を示し、b及びcは独立して、0〜2の数を示し、Rは酸素原子、フェニレン基又は(CH−で表される基(ここで、mは1〜6の整数である)を示し、dは0又は1を示す。)
下記一般式(3)で表されるポリカルボシラン(以下、ポリマーBという)と、
【0008】
【化3】

・・・・・(3)
【0009】
(式中、R及びRは独立して、水素原子、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基を表し、R10はメチレン基又はメチン基を表し、m及びnはそれぞれ、10<m+n<1000及びn/m<0.3の条件を満たす正の整数を表す。)
溶媒A及び大気圧における沸点が溶媒Aよりも低い溶媒Bと、
を含み、かつ、以下の式(i)及び(ii)を満たす。
【0010】
前記ポリマーAの溶媒Aへの溶解度>前記ポリマーAの前記溶媒Bへの溶解度
・・・(i)
前記ポリマーBの溶媒Aへの溶解度<前記ポリマーBの前記溶媒Bへの溶解度
・・・(ii)
上記組成物において、前記溶媒Aの沸点と前記溶媒Bの沸点との差が40℃以上であることができる。
【0011】
上記組成物において、前記加水分解性基を有するポリカルボシランは、下記一般式(4)で表される化合物であることができる。
【0012】
【化4】

・・・・・(4)
【0013】
(式中、R11は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、アルキル基、アリール基、アリル基、及びグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、Rはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、アルキル基、アリール基、アリル基、及びグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、R12及びR13は独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、炭素数2〜6のアルキル基、アリール基、アリル基、及びグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、R14〜R16は独立して、置換又は非置換のメチレン基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基からなる群より選ばれる基を示し、e,f,gはそれぞれ、10<e+f+g<10,000の条件を満たす0〜10,000の数を示す。)
【0014】
本発明の一態様にかかる絶縁膜の形成方法は、
上記組成物を基材に塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜から前記溶媒A及び前記溶媒Bを除去する工程と、
前記塗膜に対して硬化処理を行う工程と、
を含む。
【0015】
本発明の一態様にかかる絶縁膜は、上記絶縁膜の形成方法により得られ、組成が異なる二層を有する。
【発明の効果】
【0016】
上記組成物を用いて、例えば塗布法による1回の塗布によって、組成が異なる二層を有する絶縁膜を簡便に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明について具体的に説明する。
【0018】
1.絶縁膜形成用組成物
本発明の一実施形態に係る組成物は、絶縁膜を形成するための組成物であり、ポリマーA及びポリマーBと、溶媒A及び大気圧における沸点が溶媒Aよりも低い溶媒Bと、を含み、かつ、以下の式(i)及び(ii)を満たす。
【0019】
前記ポリマーAの溶媒Aへの溶解度>前記ポリマーAの前記溶媒Bへの溶解度
・・・(i)
前記ポリマーBの溶媒Aへの溶解度<前記ポリマーBの前記溶媒Bへの溶解度
・・・(ii)
本実施形態に係る組成物を基材に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を硬化させることにより、組成が異なる二層を有する絶縁膜を1回の塗布で簡便に形成することができる。この場合、絶縁膜を構成する各層は、特定成分(例えば炭素原子)の濃度が異なっていてもよい。
【0020】
本実施形態に係る組成物において、溶媒Aと溶媒Bの混合比(溶媒A/溶媒B)は重量比にして0.01〜100であることが好ましく、0.1〜10であることが特に好ましい。
【0021】
本実施形態に係る組成物において、溶媒Aの沸点と前記溶媒Bの沸点との差は40℃以上であることがより好ましい。溶媒Aの沸点と前記溶媒Bの沸点との差が40℃未満であると、膜を形成した際にポリマーAを含む層とポリマーBを含む層との分離が十分でない場合がある。
【0022】
また、ポリマーAとポリマーBの混合比は、形成する膜の厚みの比に応じて適宜設定することができるが、ポリマーAの完全加水分解縮合物100重量部に対して、ポリマーBが0.01〜100重量部であることが好ましく、特に0.1〜10重量部であることがより好ましい。ポリマーBが0.01重量部未満である場合、膜形成後に十分な薬液耐性を発現することができない場合があり、また、100重量部を超えると、膜の低誘電率化を達成できない場合がある。
【0023】
また、ポリマーAとポリマーBの混合比は、形成する膜の厚みに応じて適宜設定することが可能で、通常0.01重量%〜50重量%であり、好ましくは0.1重量%〜30重量%であり、特に好ましくは0.5重量%〜20重量%である。
【0024】
1.1.ポリマーA
ポリマーAは、下記一般式(1)で表される化合物(以下「化合物1」ともいう)、下記一般式(2)で表される化合物(以下「化合物2」ともいう)、及び加水分解性基を有するポリカルボシラン(以下「化合物3」ともいう)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を加水分解縮合して得られた加水分解縮合物である。
【0025】
Si(OR4−a ・・・・・(1)
(式中、Rは水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を示し、Rは1価の有機基を示し、aは0〜2の整数を示す。)
(RO)3−bSi−(R−Si(OR3−c ・・・(2)
(式中、R〜Rは独立して、1価の有機基を示し、b及びcは独立して、0〜2の数を示し、Rは酸素原子、フェニレン基又は(CH−で表される基(ここで、mは1〜6の整数である)を示し、dは0又は1を示す。)
ポリマーAの好ましい例としては、後述するテトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、及びジメトキシポリカルボシランを加水分解縮合して得られた加水分解縮合物が挙げられる。
【0026】
1.1.1.化合物1
前記一般式(1)において、R,Rで表される1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基などを挙げることができる。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜5であり、これらのアルキル基は鎖状でも、分岐していてもよい。前記一般式(1)において、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基などが挙げられる。また、前記一般式(1)において、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基などを挙げることができる。
【0027】
化合物1の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−sec−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ−n−プロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリ−n−ブトキシシラン、イソプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、イソプロピルトリ−tert−ブトキシシラン、イソプロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリイソプロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルイソトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリイソプロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、tert−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、tert−ブチルトリイソプロポキシシラン、tert−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、tert−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、tert−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、tert−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、ビニルトリ−tert−ブトキシシラン、ビニルトリフェノキシシランなどのトリアルコキシシラン類;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−フェノキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジイソプロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−フェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−フェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−フェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジ−エトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ジビニルジメトキシシランなどのジアルコキシシラン類が挙げられる。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0028】
化合物1として特に好ましい化合物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどである。
【0029】
1.1.2.化合物2
一般式(2)において、R〜Rの1価の有機基としては、前記一般式(1)においてR,Rとして例示した1価の有機基と同様の基を挙げることができる。
【0030】
また、Rがフェニレン基又は(CH−で表される基であることにより、一般式(2)においてb又はcが0である場合において、1つのケイ素原子が4つの酸素原子で置換された部位の生成を防止することができる。
【0031】
一般式(2)において、d=0の化合物としては、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ヘキサフェノキシジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−フェニルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−フェニルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−フェニルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシランなどを挙げることができる。
【0032】
これらのうち、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシランなどを、好ましい例として挙げることができる。
【0033】
さらに、化合物2として、一般式(2)において、Rが−(CH−で表される基の化合物としては、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−ブトキシシリル)メタン、ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)メタン、ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)エタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−1−(トリメトキシシリル)メタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−1−(トリエトキシシリル)メタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−1−(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、1−(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)−1−(トリ−iso−プロポキシシリル)メタン、1−(ジ−n−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−n−ブトキシシリル)メタン、1−(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−sec−ブトキシシリル)メタン、1−(ジ−tert−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−tert−ブトキシシリル)メタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−2−(トリメトキシシリル)エタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−2−(トリエトキシシリル)エタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−2−(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、1−(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)−2−(トリ−iso−プロポキシシリル)エタン、1−(ジ−n−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−n−ブトキシシリル)エタン、1−(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−sec−ブトキシシリル)エタン、1−(ジ−tert−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−tert−ブトキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−n−プロポキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−n−ブトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−tert−ブトキシメチルシリル)メタン、1,2−ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−n−プロポキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−n−ブトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−tert−ブトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)ベンゼンなど挙げることができる。
【0034】
これらのうち、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−1−(トリメトキシシリル)メタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−1−(トリエトキシシリル)メタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−2−(トリメトキシシリル)エタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−2−(トリエトキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、1,2−ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼンなどを好ましい例として挙げることができる。前記化合物1〜3は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0035】
化合物1及び/又は化合物2を加水分解縮合させる際に、上記一般式(1)及び上記一般式(2)において、RO−、RO−及びRO−で表される基1モル当たり、0.1〜100モルの水を用いることが好ましい。なお、本発明において、「完全加水分解縮合物」とは、縮合物成分中、RO−、RO−及びRO−で表される基が100%加水分解されてOH基となり、完全に縮合したものを示す。
【0036】
1.1.3.化合物3
化合物3は、加水分解性基を有し、下記一般式(4)で表される化合物であり、ポリマーAを形成するための他のモノマーと縮合して、Si−O−Si結合を形成することができる。なお、ここでいう加水分解基とは、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、又はトリフルオロメタンスルホン基を示す。
【0037】
【化5】

・・・・・(4)
【0038】
(式中、R11は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、アルキル基、アリール基、アリル基、及びグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、Rはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、アルキル基、アリール基、アリル基、及びグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、R12及びR13は独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、炭素数2〜6のアルキル基、アリール基、アリル基、及びグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、R14〜R16は独立して、置換又は非置換のメチレン基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基からなる群より選ばれる基を示し、e,f,gはそれぞれ、10<e+f+g<10,000の条件を満たす0〜10,000の数を示す。)
【0039】
化合物3のポリスチレン換算重量平均分子量は、500〜10,000であることが好ましく、600〜5,000であることがより好ましく、600〜3,000であることがさらに好ましい。化合物3のポリスチレン換算重量平均分子量が10,000を超えると、ポリマーAを形成するための他のモノマーと層分離を起こし、均一な膜を形成しないことがある。
【0040】
1.2.ポリマーB
ポリマーBは、下記一般式(3)で表されるポリカルボシラン(以下「化合物4」ともいう)である。
【0041】
【化6】

・・・・・(3)
【0042】
(式中、R及びRは独立して、水素原子、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基を表し、R10はメチレン基又はメチン基を表し、m及びnはそれぞれ、10<m+n<1000及びn/m<0.3の条件を満たす正の整数を表す。)
化合物4において、R15及びR16のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ドデカニル基、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロメチル基、アミノメチル基、ヒドロキシメチル基、シリルメチル基、2−メトキシエチル基等などが挙げられ、R15及びR16のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ピラジニル基、4−メチルフェニル基、4−ビニルフェニル基、4−エチニルフェニル基、4−アミノフェニル基、4−クロロフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シリルフェニル基が挙げられる。
【0043】
化合物4の重量平均分子量に特に制限はないが、好ましくは500〜500,000である。これらのポリカルボシランの形態は通常、常温で固体もしくは液状である。
【0044】
化合物4の製造方法としては、例えば、塩基性酸化物、金属水素化物、金属化合類物を触媒としてジエチニル化合物とシラン化合物の脱水素共重合を行う方法(特開平7−90085号公報、特開平10−120689号公報、特開平11−158187号公報)、塩基性酸化物を触媒としてエチニルシラン化合物の脱水素重合を行う方法(特開平9−143271号公報)、有機マグネシウム試薬とジクロロシラン類とを反応させる方法(特開平7−102069号公報、特開平11−029579号公報)、塩化第一銅及び三級アミンを触媒としてジエチニル化合物とシラン化合物の脱水素共重合を行う方法(Hua Qin Liu and John F. Harrod, The Canadian Journal of Chemistry, Vol. 68, 1100−1105(1990))、酸化マグネシウムを触媒としてジエチニル化合物とシラン化合物との脱水素共重合を行う方法(特開平7−90085号公報及び特開平10−204181号公報)等が使用できるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
【0045】
1.3.溶媒A
溶媒Aとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのプロピレングリコール系溶媒が好ましい。
【0046】
また、溶媒Aの大気圧下での沸点は、100℃〜250℃であることが好ましく、100℃〜180℃であることがより好ましい。
【0047】
1.4.溶媒B
溶媒Bとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イッソプロピルエーテル、エチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ビニル、塩化メチレン、クロロホルム、ベンゼンが好適に用いられる。
【0048】
また、溶媒Bの大気圧下での沸点は、30℃〜100℃であることが好ましく、50℃〜90℃であることがより好ましく、60〜80℃であることが特に好ましい。例えば、沸点が30℃よりも低い場合には、組成物を塗布して塗膜を形成する前に溶媒が蒸発して、均一な塗膜を形成できない場合がある。一方、溶媒Bの沸点が100℃よりも高い場合には、十分に加熱を行う必要が生じる。
【0049】
また、本発明で用いる溶媒Aと溶媒Bとは、相溶性であることが必要である。相溶性は、組成物の具体的構成において、溶媒Aと溶媒Bとが分離しない程度の相溶性があれば足りる。
【0050】
2.絶縁膜の形成方法
本発明の一実施形態に係る絶縁膜の形成方法は、上記組成物を基材に塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜から溶媒A及び溶媒Bを除去する工程と、前記塗膜に対して硬化処理を行う工程と、を含む。
【0051】
本実施形態において、組成物を基材に塗布して塗膜を形成する場合、塗装手段としては、例えば、スピンコート、浸漬法、ロールコート法、スプレー法、スキャン塗布法等が挙げられる。
【0052】
塗膜からの溶媒A及び溶媒Bの除去は、具体的には溶媒を蒸発させることで行われる。具体的には、必要に応じて加熱することで溶媒A及びBを蒸発させることができるが、沸点の高い溶媒Aについては加熱により蒸発させることが好ましい。なお、溶媒の除去は溶媒が完全に無くなった状態でなくてもよく、硬化膜としての特性が得られる範囲で溶媒が残存していてもよい。
【0053】
本実施形態にかかる絶縁膜の形成方法によれば、ポリマーAが高密度に存在する下層(例えば、溶媒Bよりも溶媒Aとの相溶性が高いポリマーAから主に構成される下層)と、ポリマーAが実質的に存在しない上層(例えば、溶媒Aよりも溶媒Bとの相溶性が高いポリマーBから主に構成される上層)とを有する絶縁膜を形成することができる。ここで、溶媒Bの大気圧における沸点が溶媒Aより低いことにより、溶媒Aおよび溶媒Bを効率よく除去することができる。
【0054】
また、塗膜の硬化は、加熱、紫外線照射、及び電子線照射から選ばれる少なくとも1種を用いて行われることができ、加熱及び紫外線照射を同時に用いて行われるのが好ましい。
【0055】
塗膜の硬化を加熱により行う場合、300〜450℃で行われるのが好ましく、350℃〜400℃であるのがより好ましい。この場合、加熱時間は通常、60分間未満であることが好ましく、30分間であるのがより好ましい。また、塗膜の硬化を紫外線照射により行う場合、紫外線照射に使用される紫外線の波長が300nm以下であるのが好ましく、220〜270nmであるのがより好ましい。また、この場合、加熱及び紫外線照射の時間は10分間未満であることが好ましく、1〜5分間であることがより好ましい。
【0056】
加熱手段としては、例えば、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することができる。
【0057】
酸素以外の雰囲気の構成成分としては、例えば、窒素、アルゴン等が挙げられる。また、圧力は常圧であることが好ましい。
【0058】
3.絶縁膜
本発明の一実施形態に係る絶縁膜は、上記絶縁膜の形成方法により得られたものである。上述の絶縁膜を形成するための組成物を通常の方法で塗布し、その後溶媒を除去すると、2以上の層に分離する。ここで、2以上の層とは、「ポリマーAが高密度に存在する層」と、「ポリマーAが実質的に存在しない層」を共に含む2以上の層である場合が挙げられる。本実施形態に係る絶縁膜は、例えば、組成が異なる二以上の層を有する。組成が異なる二以上の層を有する絶縁膜は、例えば、銅ダマシン配線構造体に使用される絶縁膜として好適に使用できる。
【0059】
この場合、組成が異なる二層は、特定成分(例えば炭素原子)の濃度が各々の層において深さ方向で異なっていてもよい。炭素原子の濃度が絶縁膜の深さ方向で異なる絶縁膜としては、例えば、表面に近づくにつれて炭素原子の濃度が高くなる絶縁膜、あるいは、表面に近づくにつれて炭素原子の濃度が低くなる絶縁膜が挙げられる。このうち、絶縁層の表面に近づくにつれて炭素原子の濃度が高くなる絶縁膜は、表面付近の炭素原子の濃度が高いため、組成が均一な絶縁膜と比較して、エッチングや薬液処理などのプロセス耐性に優れている。
【0060】
本実施形態に係る絶縁膜の一例を図1に示す。図1に示される絶縁膜100は、上記組成物を基材に塗布して塗膜を形成し、該塗膜に対して硬化処理を行うことにより得られ、主にポリマーAを硬化して得られる第1の膜20と、主にポリマーBを含む塗膜を硬化して得られる第2の膜10からなる。
【0061】
4.実施例
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特記しない限り、それぞれ重量部及び重量%であることを示している。
【0062】
4.1.評価方法
4.1.1.接触角
ポリマー膜の疎水性を評価する目的で、協和界面科学社製接触角測定装置(DropMaster500)を用いて、ポリマー膜の表面に超純水液滴を滴下し、接触角の測定を行った。疎水性が高いと、RIEや薬液に対する耐性が良い(プロセス耐性が良い)とされている。
【0063】
4.1.2.薬液耐性
ポリマー膜が形成された8インチウエハを、室温で0.2%の希フッ酸水溶液中に3分間浸漬し、ポリマー膜の浸漬前後の膜厚変化を観察した。下記に定義する残膜率が99%以上である場合、薬液耐性が良好である(「A」)と判断し、残膜率が99%未満である場合、薬液耐性が良好でない(「B」)と判断する。
残膜率(%)=(浸漬後の膜の膜厚)÷(浸漬前の膜の膜厚)×100
【0064】
4.1.3.二層観察
TEM観察により、ポリマー膜が1回の塗布で二層に分離しているかを確認した。二層分離が確認された場合を「A」、二層分離が確認されなかった場合を「B」とする。
【0065】
4.1.4.溶解度
溶媒100gに対してポリマーがx[g]溶解したときの溶解度をx[g/100g]として、各溶媒へのポリマーの溶解度を測定した。その結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
4.2.調製例
4.2.1.調製例1(反応液1の調製)
温度計、冷却コンデンサー、滴下ロート及び攪拌装置を取り付けた内容量が4Lの4つ口フラスコ内をアルゴンガスで置換した後、乾燥したテトラヒドロフラン1.5L及び金属マグネシウム71gを仕込み、アルゴンガスでバブリングした。その後、20℃で攪拌しながら、クロロメチルトリエトキシシラン500gを滴下ロートからゆっくりと添加した。滴下終了後、0℃でさらに12時間攪拌を続けた。この反応液にヘキサンを添加した後セライトで濾過し、濾液を真空乾燥することにより真空オーブンで有機溶媒を完全に除去し、褐色固体の加水分解性基を有するポリカルボシランを得た。このようにして得られたポリカルボシランの重量平均分子量は420であった。
【0068】
石英製セパラブルフラスコ中で、メチルトリメトキシシラン40g、テトラメトキシシラン18g、上記で得られた加水分解性基を有するポリカルボシラン26g、及びテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの20%水溶液17gを、エタノール500gに溶解させたのち、スリーワンモーターで攪拌させ、溶液温度を55℃に安定させた。次に、イオン交換水47g及びプロピレングリコールモノプロピルエーテル(沸点150℃、以下「溶媒A」とする。)500gの混合溶液を1時間かけて溶液に添加した。
【0069】
その後、55℃で4時間反応させたのち、酢酸の10%プロピレングリコールモノプロピルエーテル溶液24gを添加し、さらに30分間反応させ、反応液を室温まで冷却した。50℃で反応液からメタノールと水とを含む溶液をエバポレーションで除去し、ポリマーAが溶媒Aに溶解している反応液1(固形分濃度10%)を得た。
【0070】
4.2.2.調製例2(反応液2の調製)
石英製セパラブルフラスコ中へ、原料ポリマー((株)日本カーボン社製、商品名「ニプシType−S」)10g及びテトラヒドロフラン(沸点65℃、以下「溶媒B」とする。)90gを仕込み、25℃で2時間攪拌を行った。その後含有メタル低減のためにゼータ電位フィルター濾過を行い、ポリマーBが溶媒Bに溶解している反応液2を得た。
【0071】
4.3.実施例
4.3.1.実施例1
反応液1と反応液2をポリマーの重量比が50:50になるようにブレンドし、レベリング剤としてジメチルポリシロキサンを0.1phr添加し、ミックスローターで30分攪拌して、実施例1の膜形成用組成物を得た。
【0072】
実施例1で使用したポリマーAの溶媒A、Bへの溶解度、ポリマーBの溶媒A、Bへの溶解度、ならびに、溶媒Aの沸点と溶媒Bの沸点との関係は以下の通りである。
【0073】
・溶媒Aに対する溶解度:ポリマーA>ポリマーB
・溶媒Bに対する溶解度:ポリマーA<ポリマーB
・沸点:溶媒A>溶媒B
4.3.2.比較例1
50gの反応液1に対してポリマーBを5g及びプロピレングリコールモノエチルエーテル45gを加えて、ブレンドし、レベリング剤としてジメチルポリシロキサンを0.1phr添加し、ミックスローターで30分間攪拌した。しかしながら、攪拌して得られた組成物にはポリマーの沈殿が観察された。
【0074】
4.3.3.膜の形成
8インチシリコンウエハ上に、スピンコート法を用いて膜形成用組成物1及び反応液2をそれぞれ塗布し、ホットプレート上にて90℃で3分間、窒素雰囲気下200℃で3分間基板を乾燥した後、420℃のホットプレートで基板を30分間焼成して、実施例1、参考例1のポリマー膜(膜厚0.5μm)を形成した。
【0075】
【表2】

【0076】
表2によれば、実施例1の膜形成用組成物を用いて得られた膜は、疎水性が高く、薬液耐性に優れ、ポリマーAが高密度に存在する下層と、ポリマーAが実質的に存在しない上層との二層からなる。このことは、ポリマーBのみを用いて得られた参考例1の膜の性質と比較すると明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁膜を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0078】
10…第2の膜(上層)、20…第1の膜(下層)、100…絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物、及び加水分解性基を有するポリカルボシランからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を加水分解縮合して得られた加水分解縮合物(以下、ポリマーAという)と、
Si(OR4−a ・・・・・(1)
(式中、Rは水素原子、フッ素原子又は1価の有機基を示し、Rは1価の有機基を示し、aは0〜2の整数を示す。)
(RO)3−bSi−(R−Si(OR3−c ・・・(2)
(式中、R〜Rは独立して、1価の有機基を示し、b及びcは独立して、0〜2の数を示し、Rは酸素原子、フェニレン基又は(CH−で表される基(ここで、mは1〜6の整数である)を示し、dは0又は1を示す。)
下記一般式(3)で表されるポリカルボシラン(以下、ポリマーBという)と、
【化1】

・・・・・(3)
(式中、R及びRは独立して、水素原子、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基を表し、R10はメチレン基又はメチン基を表し、m及びnはそれぞれ、10<m+n<1000及びn/m<0.3の条件を満たす正の整数を表す。)
溶媒A及び大気圧における沸点が溶媒Aよりも低い溶媒Bと、
を含み、かつ、以下の式(i)及び(ii)を満たす、絶縁膜形成用組成物。
前記ポリマーAの溶媒Aへの溶解度>前記ポリマーAの前記溶媒Bへの溶解度
・・・(i)
前記ポリマーBの溶媒Aへの溶解度<前記ポリマーBの前記溶媒Bへの溶解度
・・・(ii)
【請求項2】
前記溶媒Aの沸点と前記溶媒Bの沸点との差が40℃以上である、請求項1に記載の絶縁膜形成用組成物。
【請求項3】
前記加水分解性基を有するポリカルボシランは、下記一般式(4)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の絶縁膜形成用組成物。
【化2】

・・・・・(4)
(式中、R11は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、アルキル基、アリール基、アリル基、及びグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、Rはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、アルキル基、アリール基、アリル基、及びグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、R12及びR13は独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシロキシ基、スルホン基、メタンスルホン基、トリフルオロメタンスルホン基、炭素数2〜6のアルキル基、アリール基、アリル基、及びグリシジル基からなる群より選ばれる基を示し、R14〜R16は独立して、置換又は非置換のメチレン基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基からなる群より選ばれる基を示し、e,f,gはそれぞれ、10<e+f+g<10,000の条件を満たす0〜10,000の数を示す。)
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の組成物を基材に塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜から前記溶媒A及び前記溶媒Bを除去する工程と、
前記塗膜に対して硬化処理を行う工程と、
を含む、絶縁膜の形成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の絶縁膜の形成方法により得られ、組成が異なる二層を有する絶縁膜。


【図1】
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【公開番号】特開2009−231678(P2009−231678A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77302(P2008−77302)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】