説明

緊急遮断弁装置

【課題】設備の稼働に支障を来さない状態で、弁体の作動確認が簡易な構造でもって速やかに行うことができるとともに、故障を少なくし、コストの低減化を図ることができるようにした緊急遮断弁装置を提供する。
【解決手段】第1シリンダ6内のピストン8に連結したピストンロッド9を、第2シリンダ7内に設けたストッパピストン12と対峙しうるように、第2シリンダ7内に臨ませる。弁体の全開状態において、ピストンロッド9とストッパピストン12との間に間隙aが形成されるようにする。弁体の作動確認時に、ピストン8を、弁体2の全開状態の位置から閉弁方向に駆動させたとき、ピストンロッド9をストッパピストン12に当接させて、弁体を、予め定めた所望の中間開度に維持しうるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油精製プラント等における流体の流路や、ガス等のパイプラインなどの途中に設けられる緊急遮断弁装置に係り、特に、プラント等の設備を稼働させながら、弁体の作動を確認しうるようにした緊急遮断弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプラインに接続される緊急遮断弁は、プラント等の設備が正常に稼働されているときには弁体を全開状態に維持し、地震等により、設備に異常が発生するなどした際には、弁体を全閉状態となるように作動させて、事故等を未然に防止している。
そのため、緊急遮断弁の信頼性を確保するためには、弁体が正常に作動するか否かの確認を、設備の稼働を中断して、定期的に点検することが行われているが、設備の稼働中にも点検することが要求されている。
【0003】
従来の緊急遮断弁においては、図8および図9に示すように、設備のパイプラインWに接続されたボールバルブからなるバルブ本体01内における弁体02の弁軸03を臨ませたボディ本体04の両端部に、左右1対のシリンダ05、06を、互いに同一直線上に位置するように左右対称的に隣設するとともに、これらシリンダ05、06内に、ピストンロッド07によって連結された左右1対のピストン08、09をそれぞれ摺動自在に設けた、複動式トルクシリンダからなるものがある。
【0004】
このように緊急遮断弁は、設備の稼動による通常時には、これら左右のピストン08、09における左側方のシリンダ室05a、06aに、流体供給源(図示せず)からの圧力流体を供給し、右側方のシリンダ室05b、06bの圧力流体を排出させ、左右のピストン08、09を右方の開弁方向に駆動させることにより、ピストンロッド07に連係させた揺動アーム010を介して、弁軸03を回動させて、弁体02が全開状態に維持されるようにしている。
また、緊急時にあっては、左右のピストン08、09における右側方のシリンダ室05b、06bに圧力流体を供給し、左側方のシリンダ室05a、06aの圧力流体を排出させ、左右のピストン08、09を左方の閉弁方向に駆動させることにより、弁体02を全閉状態にして、プラント設備等におけるパイプラインWの緊急遮断が行われるようになっている。
【0005】
しかし、前記した緊急遮断弁は、弁体02の開度を、全開(100%)と全閉(0%)との2つの動作しか選択し得ないため、設備の稼働中に、弁体02の作動確認を行うことはできない。
【0006】
この問題を解決しうるものとしては、例えばプラント等の設備の稼働中でも緊急遮断動作を確認しうるようにした緊急遮断弁装置もある(特許文献1参照)。
【0007】
前記特許文献1に記載の緊急遮断弁装置は、緊急遮断弁駆動用シリンダに圧力流体を供給する逆止弁や電磁切換弁を実際に動かして、それらの作動のみを確認するものであり、弁体自身が正常に作動するか否かを確認することはできない。
そのため、流体の性質等により、万一、弁体もしくは弁ケースの内部が錆付いたり、腐食するなどしていると、緊急時に流路を遮断することができなくなる恐れがある。
【0008】
また、弁体の開度を全開、中開および全閉状態の二段階に開閉する弁装置が知られている(特許文献2参照)。
【0009】
この二段開閉弁装置は、複動式トルクシリンダにおける一方のシリンダに、開度規制用シリンダを隣接し、この開度規制用シリンダ内に設けたストッパピストンのピストンロッドを、トルクシリンダにおける一方のシリンダ内に臨ませて、往復動ピストンの一方に対峙させるとともに、往復動ピストンの閉弁方向の摺動を規制することにより、弁体が全開、全閉状態の他に中間開度に維持されるような構成となっている。
これにより、例えばロータリ車やタンク車、ドラム缶等への定量給油作業時における初期給油段階において、弁体を中間開度にして給油し、弁体の全開状態での急激な給油による静電気の発生を防止し、火災の危険性を回避している。
【0010】
しかし、前記特許文献2に記載の二段開閉弁装置は、本発明の緊急遮断弁装置における設備稼働中の弁体の作動確認とは目的が異なるばかりでなく、複動式トルクシリンダに開度規制用のシングルピストン式シリンダを付設して構成しているために、装置全体の構造が複雑化し、コスト高になるとともに、トルクシリンダにおけるピストンの摺動抵抗も大きく、動作速度が遅いばかりでなく、頻繁に故障し易いという問題があった。
【特許文献1】特開平10−61812号公報
【特許文献2】実公昭61−19206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記の現状に鑑み、設備の稼働に支障を来さない状態で、弁体の作動確認が簡易な構造でもって速やかに行うことができるとともに、故障を少なくし、コストの低減化を図ることができるようにした緊急遮断弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は「特許請求の範囲」における各請求項に記載するように、次のような構成からなる発明によって解決される。
(1) パイプラインに接続されたバルブ本体内における弁体の弁軸を臨ませたボディ本体の両端部に、第1シリンダと第2シリンダとを、互いに同一直線上に位置するように配設した複動式シリンダからなる緊急遮断弁装置において、通常時には、第1シリンダ内を摺動自在なピストンの一側方のシリンダ室に流体供給源からの圧力流体を供給して、前記ピストンを開弁方向に駆動させることにより、前記ピストンに連結したピストンロッドに連係する前記弁軸を介して、前記弁体を全開状態にするとともに、緊急時には、前記ピストンの他側方のシリンダ室に前記圧力流体を切換え供給して、前記ピストンを閉弁方向に駆動させることにより、前記弁体を全閉状態にする弁体開閉機構と、前記第2シリンダ内に、前記圧力流体の作用により駆動するストッパピストンを設け、前記第1シリンダ内におけるピストンのピストンロッドを、前記ストッパピストンと対峙しうるように、前記第2シリンダ内に臨ませるとともに、前記弁体の全開状態において、前記ストッパピストンの一側方のシリンダ室に前記圧力流体を供給して、前記ストッパピストンをピストンロッド側に駆動させることにより、前記ピストンロッドとストッパピストンとの間に間隙が形成されるようにし、かつ、前記弁体の作動確認時に、前記第1シリンダ内のピストンを、前記弁体の全開状態の位置から閉弁方向に駆動させたとき、前記ピストンロッドをストッパピストンに当接させて、前記弁体を、予め定めた所望の中間開度に維持しうる弁体作動確認機構とによって構成する。
【0013】
(2) 上記(1)項において、弁体開閉機構を、第1シリンダ内におけるピストンの一側方のシリンダ室に流体供給源からの圧力流体を供給し、かつ前記ピストンの他側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、前記ピストンを弁体の開弁方向に駆動させて、弁体を全開状態にする第1流体作動切換弁と、この第1流体作動切換弁を、緊急遮断時の非通電状態において、前記ピストンの他側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ前記ピストンの一側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、前記ピストンを弁体の閉弁方向に駆動させて、弁体を全閉状態にするように切換える緊急遮断用の第1電磁切換弁と、この第1電磁切換弁と前記第1流体作動切換弁との間に設けられ、かつ第1電磁切換弁に連動する第1流体作動切換弁を介して、非通電状態にあるとき、弁体の全開状態および全閉状態を許容するとともに、通電状態にあるとき、前記ピストンを弁体の全開状態から閉弁方向に向けて駆動しうるように、第1流体作動切換弁を切換える、弁体作動確認用の第2電磁切換弁とにより構成する。
【0014】
(3) 上記(1)項または(2)項において、弁体作動確認機構を、第1電磁切換弁に連動する第2流体作動切換弁によって構成し、この第2流体作動切換弁を、第2シリンダ内におけるストッパピストンの一側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ前記ストッパピストンの他側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、ストッパピストンを、第1電磁切換弁の通電状態における弁体の全開状態において、前記第1シリンダ内におけるピストンのピストンロッドとの間に間隙が形成されるように、弁体の開度規制位置に停止させ、弁体の作動確認時における第2電磁切換弁の通電状態において、弁体の閉弁方向に駆動するピストンロッドを、ストッパピストンに当接させることにより、弁体を予め定めた所望の中間開度に維持しうるようにするとともに、緊急遮断時における第1電磁切換弁の非通電状態において、前記ストッパピストンの他側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ、前記ストッパピストンの一側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、ストッパピストンを、弁体の全閉状態において、ピストンロッドから離間した位置に停止させるように切換制御する。
【0015】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、弁体開閉機構における第1電磁切換弁と第2電磁切換弁との間に、弁設置現場において弁体作動確認の手動操作を可能にする手動切換弁を設ける。
【0016】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、ストッパピストンを、ピストンロッド側を開放させた有底円筒体に形成するとともに、この有底円筒体におけるピストンロッド側の周壁の長さによって、ストッパピストンのストローク幅を規制し、ストッパピストンとピストンロッドとの間隙を設定しうるようにする。
【0017】
(6) 上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、弁体の弁軸に、弁体の中間開度動作を検知する検知手段を設ける。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
請求項1記載の発明によれば、ボディ本体の両端部に、第1シリンダと第2シリンダとを、互いに同一直線上に位置するように配設した複動式シリンダを用い、弁体の開閉動作を速やかに行うことができる。
また、弁体開閉機構における第1シリンダ内のピストンに連結したピストンロッドを、弁体作動確認機構における第2シリンダ内のストッパピストンと対峙しうるように、第2シリンダ内に臨ませ、弁体の全開状態において、ピストンロッドとストッパピストンとの間に間隙が形成されるようにし、かつ弁体の作動確認時に、第1シリンダのピストンを、弁体の全開状態の位置から閉弁方向に駆動させたとき、ピストンロッドをストッパピストンに当接させて、弁体を、予め定めた所望の中間開度に維持しうるようにしてあるため、弁体は、予め定めた一定の開度以上に閉弁されることはなく、パイプライン等の流路を、設備の稼働に支障を来さない状態で、弁体の作動確認を簡易な構造でもって速やかに行うことができるとともに、故障を少なくすることができる。
さらに、ストッパピストンとピストンロッドコストを代えるだけで、外見が従来型と同様の複動式シリンダを用いることができるため、コストの低減化を図ることができるとともに、弁体の作動確認を安価に行うことができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、弁体開閉機構を、第1シリンダ内のピストンを弁体の開弁方向に駆動させて、弁体を全開状態にする第1流体作動切換弁と、この第1流体作動切換弁を、緊急遮断時の非通電状態において、ピストンを弁体の閉弁方向に駆動させて、弁体を全閉状態にするように切換える緊急遮断用の第1電磁切換弁と、この第1電磁切換弁と第1流体作動切換弁との間に設けられ、かつ第1電磁切換弁に連動する第1流体作動切換弁を介して、非通電状態にあるとき、弁体の全開状態および全閉状態を許容するとともに、通電状態にあるとき、ピストンを弁体の全開状態から閉弁方向に向けて駆動しうるように、第1流体作動切換弁を切換える、弁体作動確認用の第2電磁切換弁とにより構成してあるため、ピストンの駆動による弁体の開閉を速やかに行うことができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、弁体作動確認機構を構成する第2流体作動切換弁を、第2シリンダ内におけるストッパピストンを、第1電磁切換弁の通電状態における弁体の全開状態において、第1シリンダ内におけるピストンのピストンロッドとの間に間隙が形成されるように、弁体の開度規制位置に停止させ、弁体の作動確認時における第2電磁切換弁の通電状態において、弁体の閉弁方向に駆動するピストンロッドを、ストッパピストンに当接させることにより、弁体を予め定めた所望の中間開度に維持しうるようにするとともに、緊急遮断時における第1電磁切換弁の非通電状態において、ストッパピストンを、弁体の全閉状態において、ピストンロッドから離間した位置に停止させるように切換制御しているため、弁体の作動確認時に、ピストンロッドを、弁体の開度規制位置に正確に停止させることができ、弁体を、設備の稼動に支障を来たさない中間開度に維持させることができ、弁体の作動確認テストを、随時簡単に行うことができるとともに、緊急遮断時における弁体の全閉動作も速やかに行うことができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、弁体開閉機構における第1電磁切換弁と第2電磁切換弁との間に、弁設置現場において弁体作動確認の手動操作を可能にする手動切換弁を設けてあるため、弁体の作動確認を、緊急遮断弁装置より離れた位置からのオンラインと、その設置現場での手動操作との両方で行うことができる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、ストッパピストンを、ピストンロッド側を開放させた有底円筒体に形成するとともに、この有底円筒体におけるピストンロッド側の周壁の長さによって、ストッパピストンのストローク幅を規制し、ストッパピストンとピストンロッドとの間隙を設定しうるようにしてあるため、弁体の開度調整を簡単に行うことができる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、弁体の弁軸に、弁体の中間開度動作を検知する検知手段を設けてあるため、弁体が正常に作動するか否かを、緊急遮断弁装置より離れた遠隔地からでも、容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の緊急遮断弁装置における第1実施形態のシリンダ系を縦断して示す弁体全閉状態の正面図、図2は、同じく、シリンダ系を横断して示す弁体全閉状態の平面図、図3は、同じく、シリンダ系を横断して示す弁体全開状態の平面図、図4は、弁体の全開状態におけるシリンダ制御系の概略図、図5は、同じく、弁体の全閉状態におけるシリンダ制御系の概略図、図6は、同じく、弁体の作動確認時におけるシリンダ制御系の概略図である。
【0025】
本発明の緊急遮断弁装置は、図1および図2に示すように、例えばプラント設備等におけるパイプラインWの途中に接続されたボールバルブからなる公知のバルブ本体1と、このバルブ本体1の内部に収容されたボール形の弁体2を、弁軸3を介して開閉制御するシリンダ系の弁駆動制御機構4とにより構成している。
【0026】
弁駆動制御機構4は、弁体2の弁軸3を臨ませたボディ本体5の左右両端部に、第1シリンダ6と第2シリンダ7とを、互いに同一直線上に位置するように左右対称的に配設した複動式シリンダを用いるとともに、通常時には、第1シリンダ6内を摺動自在なピストン8の左側方のシリンダ室6aに、ポートP1を介して、流体供給源からの圧力空気を供給し、ピストン8の右側方のシリンダ室6bの圧力空気を、ポートP2を介して排出して、ピストン8を右方の開弁方向に駆動させることにより、ピストン8に連結したピストンロッド9に、揺動アーム10を介して連係する弁体2の弁軸3を反時計回りに回動させて、図3に示すように、バルブ本体1内の弁体2を全開状態に許容する、シングルピストン式トルクシリンダからなる弁体開閉機構11を有する。
【0027】
また、弁駆動制御機構4は、第2シリンダ7内に、前記圧力空気と同圧の下で共用して駆動するストッパピストン12が設けられ、このストッパピストン12と対峙しうるように、前記ピストン8のピストンロッド9を、第2シリンダ7内に臨ませるとともに、弁体2の全開状態において、ストッパピストン12の左側方のシリンダ室7aに、ポートP3を介して、圧力空気を供給し、ストッパピストン12における右側方のシリンダ室7bの圧力空気を、ポートP4を介して排出して、ストッパピストン12を右方のピストンロッド9側に駆動させることにより、図3に示すように、ピストンロッド9とストッパピストン12との間に間隙aが形成されるようにする、シングルピストン式ストッパシリンダからなる弁体作動確認機構13を有する。
【0028】
ストッパピストン12は、ピストンロッド9側を開放させた有底円筒体に形成するとともに、この有底円筒体におけるピストンロッド9側の周壁12aの長さLによって、ストッパピストン12のストローク幅を規制し、ストッパピストン12とピストンロッド9との間隙aを設定しうるようになっている。
これにより、バルブ本体1における弁体2の開度調整を簡単に行うことができる。
【0029】
弁体開閉機構11は、緊急時には、ピストン8の右側方のシリンダ室6bに、ポートP2を介して、圧力流体を切換え供給し、ピストン8の左側方のシリンダ室6aの圧力流体を、ポートP1を介して排出して、ピストン8を左方の閉弁方向に駆動させることにより、バルブ本体1の弁体2を全閉状態となるように許容して、設備のパイプラインWを遮断しうるようになっている。
このとき、弁体作動確認機構13は、第2シリンダ7内におけるストッパピストン12の右側方のシリンダ室7bに、ポートP4を介して、圧力空気を供給し、ストッパピストン12における左側方のシリンダ室7aの圧力空気を、ポートP3を介して排出して、ストッパピストン12を左方に駆動させることにより、バルブ本体1における弁体2の全閉状態において、ピストンロッド9から離間した位置に停止させるようにしてある。
【0030】
弁体作動確認機構13は、バルブ本体1における弁体2の作動確認時に、ピストン8を、弁体2の全開状態の位置から閉弁方向に駆動させたとき、ピストンロッド9をストッパピストン12に当接させて、弁体2が、予め定めた所望の中間開度に維持されるようにしている。
【0031】
弁体開閉機構11の駆動制御回路は、図4に示すように、第1空気作動切換弁14と、この第1空気作動切換弁14を切換動作させる緊急遮断用の第1電磁切換弁15と、この第1電磁切換弁15と前記第1空気作動切換弁14との間に接続された弁体作動確認用の第2電磁切換弁16とを接続することにより構成してある。
【0032】
第1空気作動切換弁14は、プラント設備の稼動中における通常時に、第2電磁切換弁16の非通電状態において、第1電磁切換弁15を通電状態にすることにより、ピストン8の左側方のシリンダ室6aに、流体供給源17からの圧力空気を、フィルタレギュレータ18を通して供給し、ピストン8の右側方のシリンダ室6bの圧力空気を排出するように切換え連動させることにより、ピストン8を、右方の開弁方向に駆動させて、バルブ本体1の弁体2が全開状態に維持されるようになっている。
【0033】
弁体作動確認機構13の駆動制御回路は、第1電磁切換弁15に連動しうるように接続される第2空気作動切換弁19を有する。
【0034】
第2空気作動切換弁19は、前記したバルブ本体1における弁体2の全開状態において、ストッパピストン12の左側方のシリンダ室7aに、流体供給源17からの圧力空気を、フィルタレギュレータ18を通して供給し、ストッパピストン12における右側方のシリンダ室7bの圧力空気を排出して、ストッパピストン12を右方のピストンロッド9側に駆動させることにより、ピストンロッド9とストッパピストン12との間に間隙aが形成されるように切換えられている。
【0035】
また、第1空気作動切換弁14は、図5に示すように、第2電磁切換弁16の非通電状態において、緊急遮断時に、第1電磁切換弁15を非通電状態にすると、第1シリンダ6におけるピストン8の右側方のシリンダ室6bに、エアタンク等の流体供給源17からの圧力空気を、フィルタレギュレータ18を通して供給し、ピストン8の左側方のシリンダ室6aの圧力空気を排出して、ピストン8を左方の閉弁方向に駆動させることにより、バルブ本体1の弁体2が全閉状態となるように切換えられている。
このとき、第2空気作動切換弁19は、第1電磁切換弁15の非通電状態によって、第2シリンダ7におけるストッパピストン12の右側方のシリンダ室7bに、流体供給源17からの圧力空気を、フィルタレギュレータ18を通して供給するとともに、ストッパピストン12における左側方のシリンダ室7aの圧力空気を排出して、ストッパピストン12を左方に駆動させることにより、バルブ本体1における弁体2の全閉状態において、ピストンロッド9から離間した位置に停止させるように切換えられている。
【0036】
第1電磁切換弁15、第2電磁切換弁16の通電操作は、プラント設備の制御室に設置されたロジックコントローラ20によって行われるようになっているとともに、このロジックコントローラ20には、ボディ本体5に取り付けられたリミットスイッチ21が接続されている。
このリミットスイッチ21は、弁軸3の回動動作、すなわち弁体2の開閉動作を検知して、ロジックコントローラ20にフィードバックし、後記するバルブ本体1における弁体2の作動確認が遠隔操作の下に行われるようになっている。
また、弁体作動確認後、このフィードバック信号により、第2電磁切換弁16の通電状態が解除され、通常時における弁体2の全開状態に戻される。
【0037】
図4に示す通常時のバルブ本体1における弁体2の全開状態において、弁体2の作動確認作業を行う場合には、図6に示すように、第1電磁切換弁15の通電状態の下で、第2電磁切換弁16を通電すると、第2空気作動切換弁19は通常状態を維持して、第1空気作動切換弁14のみが切換わり、弁体開閉機構11を構成する第1シリンダ6におけるピストン8の右側方のシリンダ室6bに、流体供給源17からの圧力空気を、フィルタレギュレータ18を通して供給し、ピストン8の左側方のシリンダ室6aの圧力空気を排出して、ピストン8が、弁体2の全開状態の位置から左方の閉弁方向に駆動される。
このとき、ピストン8に連結されたピストンロッド9が、ストッパピストン12に当接され、両者間の間隙aに応じて、揺動アーム10の時計回り方向の回動が規制されることによって、バルブ本体1の弁体2が、100%の全開状態から、例えば15〜30%程度閉弁しうるように作動し、予め定めた所望の中間開度に維持される。
この場合、ピストンロッド9には、弁軸3を回動させる揺動アーム10が連係されており、その負荷が、同圧の流体圧の下で、ピストン8の推力をストッパピストン12の推力よりも低下させるため、ストッパピストン12によって、ピストンロッド9を、所望の停止位置に確実に停止させることができる。
これにより、バルブ本体1の弁体2は、予め定めた一定の開度以上に閉弁されることはなく、プラント設備におけるパイプラインWの流路を、設備の稼働に支障を来さない状態で、弁体作動確認が、簡易な構造で速やかに行うことができる。
【0038】
弁体作動確認中において、本来の緊急遮断信号が第1電磁切換弁15に入力されると、第1電磁切換弁15は非通電状態となって、第2空気作動切換弁19が切り換り、図5に示すように、ストッパピストン12を左方に駆動させることにより、ピストン8の左方への閉弁方向の駆動を許容し、バルブ本体1の弁体2を全閉状態する。
【0039】
また、弁体作動確認後は、リミットスイッチ21からロジックコントローラ20にフィードバックされたフィードバック信号により、第2電磁切換弁16の通電状態が解除され、通常時における弁体2の全開状態に戻される。
【0040】
図7は、本発明の第2実施形態における弁体全開状態のシリンダ制御系の概略図である。
なお、以下の説明において、前記第1実施形態と構成が重複する部分は、説明を省略する。
【0041】
本実施形態の緊急遮断弁装置では、弁体駆動制御機構22の弁体開閉機構23における駆動制御回路を構成する緊急遮断用の第1電磁切換弁24と、弁体作動確認用の第2電磁切換弁25との間に、弁設置現場において弁体作動確認の手動操作を可能にする手動切換弁26を設けるとともに、この手動切換弁26の押動操作により、第1空気作動切換弁27を切換えて、弁体作動確認を行うようになっている。
これにより、バルブ本体における弁体の作動確認を、緊急遮断弁装置より離れた位置からの遠隔操作と、その設置現場での手動操作との両方で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の緊急遮断弁装置における第1実施形態のシリンダ系を縦断して示す正面図である。
【図2】同じく、シリンダ系を横断して示す弁体全閉状態の平面図である。
【図3】同じく、シリンダ系を横断して示す弁体全開状態の平面図である。
【図4】弁体の全閉状態におけるシリンダ制御系の概略図である。
【図5】同じく、弁体の全開状態におけるシリンダ制御系の概略図である。
【図6】同じく、弁体の作動確認時におけるシリンダ制御系の概略図である。
【図7】本発明の第2実施形態における弁体全開状態のシリンダ制御系の概略図である。
【図8】従来の緊急遮断弁装置におけるシリンダ系を縦断して示す弁体全閉状態の正面図である。
【図9】同じく、シリンダ系を横断して示す平面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 バルブ本体
2 弁体
3 弁軸
4 弁駆動制御機構
5 ボディ本体
6 第1シリンダ
6a シリンダ室
6b シリンダ室
7 第2シリンダ
7a シリンダ室
7b シリンダ室
8 ピストン
9 ピストンロッド
10 揺動アーム
11 弁体開閉機構
12 ストッパピストン
12a 周壁
13 弁体作動確認機構
14 第1空気作動切換弁
15 第1電磁切換弁
16 第2電磁切換弁
17 流体供給源
18 フィルタレギュレータ
19 第2空気作動切換弁
20 ロジックコントローラ
21 リミットスイッチ
22 弁駆動制御機構
23 弁体開閉機構
24 第1電磁切換弁
25 第2電磁切換弁
26 手動切換弁
27 第1空気作動切換弁
01 バルブ本体
02 弁体
03 弁軸
04 ボディ本体
05 シリンダ
05a シリンダ室
05b シリンダ室
06 シリンダ
06a シリンダ室
06b シリンダ室
07 ピストンロッド
08 ピストン
09 ピストン
010 揺動アーム
a 間隙
L ストッパピストンの周壁の長さ
P1〜P4 ポート
W パイプライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプラインに接続されたバルブ本体内における弁体の弁軸を臨ませたボディ本体の両端部に、第1シリンダと第2シリンダとを、互いに同一直線上に位置するように配設した複動式シリンダからなる緊急遮断弁装置において、
通常時には、第1シリンダ内を摺動自在なピストンの一側方のシリンダ室に流体供給源からの圧力流体を供給して、前記ピストンを開弁方向に駆動させることにより、前記ピストンに連結したピストンロッドに連係する前記弁軸を介して、前記弁体を全開状態にするとともに、緊急時には、前記ピストンの他側方のシリンダ室に前記圧力流体を切換え供給して、前記ピストンを閉弁方向に駆動させることにより、前記弁体を全閉状態にする弁体開閉機構と、
前記第2シリンダ内に、前記圧力流体の作用により駆動するストッパピストンを設け、前記第1シリンダ内におけるピストンのピストンロッドを、前記ストッパピストンと対峙しうるように、前記第2シリンダ内に臨ませるとともに、前記弁体の全開状態において、前記ストッパピストンの一側方のシリンダ室に前記圧力流体を供給して、前記ストッパピストンをピストンロッド側に駆動させることにより、前記ピストンロッドとストッパピストンとの間に間隙が形成されるようにし、かつ、前記弁体の作動確認時に、前記第1シリンダ内のピストンを、前記弁体の全開状態の位置から閉弁方向に駆動させたとき、前記ピストンロッドをストッパピストンに当接させて、前記弁体を、予め定めた所望の中間開度に維持しうる弁体作動確認機構とによって構成したことを特徴とする緊急遮断弁装置。
【請求項2】
弁体開閉機構を、第1シリンダ内におけるピストンの一側方のシリンダ室に流体供給源からの圧力流体を供給し、かつ前記ピストンの他側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、前記ピストンを弁体の開弁方向に駆動させて、弁体を全開状態にする第1流体作動切換弁と、
この第1流体作動切換弁を、緊急遮断時の非通電状態において、前記ピストンの他側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ前記ピストンの一側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、前記ピストンを弁体の閉弁方向に駆動させて、弁体を全閉状態にするように切換える緊急遮断用の第1電磁切換弁と、
この第1電磁切換弁と前記第1流体作動切換弁との間に設けられ、かつ第1電磁切換弁に連動する第1流体作動切換弁を介して、非通電状態にあるとき、弁体の全開状態および全閉状態を許容するとともに、通電状態にあるとき、前記ピストンを弁体の全開状態から閉弁方向に向けて駆動しうるように、第1流体作動切換弁を切換える、弁体作動確認用の第2電磁切換弁とにより構成した請求項1記載の緊急遮断弁装置。
【請求項3】
弁体作動確認機構を、第1電磁切換弁に連動する第2流体作動切換弁によって構成し、この第2流体作動切換弁を、第2シリンダ内におけるストッパピストンの一側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ前記ストッパピストンの他側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、ストッパピストンを、第1電磁切換弁の通電状態における弁体の全開状態において、前記第1シリンダ内におけるピストンのピストンロッドとの間に間隙が形成されるように、弁体の開度規制位置に停止させ、弁体の作動確認時における第2電磁切換弁の通電状態において、弁体の閉弁方向に駆動するピストンロッドを、ストッパピストンに当接させることにより、弁体を予め定めた所望の中間開度に維持しうるようにするとともに、緊急遮断時における第1電磁切換弁の非通電状態において、前記ストッパピストンの他側方のシリンダ室に圧力流体を供給し、かつ、前記ストッパピストンの一側方のシリンダ室の圧力流体を排出することにより、ストッパピストンを、弁体の全閉状態において、ピストンロッドから離間した位置に停止させるように切換制御した請求項1または2記載の緊急遮断弁装置。
【請求項4】
弁体開閉機構における第1電磁切換弁と第2電磁切換弁との間に、弁設置現場において弁体作動確認の手動操作を可能にする手動切換弁を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の緊急遮断弁装置。
【請求項5】
ストッパピストンを、ピストンロッド側を開放させた有底円筒体に形成するとともに、この円筒体におけるピストンロッド側の周壁の長さによって、ストッパピストンのストローク幅を規制し、ストッパピストンとピストンロッドとの間隙を設定しうるようにした請求項1〜4のいずれかに記載の緊急遮断弁装置。
【請求項6】
弁体の弁軸に、弁体の中間開度動作を検知する検知手段を設けた請求項1〜5のいずれかに記載の緊急遮断弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−97539(P2009−97539A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267161(P2007−267161)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(390006242)タイコ フローコントロールジャパン株式会社 (9)
【Fターム(参考)】