説明

縁取りマット及びその製造方法

【課題】 ほつれを十分に防止することができると共に、外観美に優れ、かつ生産性にも優れた縁取りマットの製造方法を提供する。
【解決手段】 この発明の製造方法は、基布2の一方の面にパイル3が植設されると共に該基布2の他方の面に不織布層4が積層一体化されてなるマット本体5を、上面にキャビティー21が形成された成形型20の該キャビティー内に、前記パイル3を下側にして且つ前記不織布層4の周側面と前記キャビティー21の内周側面との間に縁取部形成用空間22が存在する状態に配置せしめる工程と、前記縁取部形成用空間22に溶融した熱可塑性樹脂を充填して固化させることによってマット本体5の不織布層4の周側面に縁取部を一体化する工程とを包含することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車用フロアーマットとして好適に用いられる縁取りマット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用フロアーマットとしては、従来より、表面側にパイルが植設された基布の裏面側に不織布をラテックスエマルジョンで貼り合わせた構成のもの(特許文献1参照)が多く用いられるようになってきている。しかして、従来の自動車用フロアーマットでは、端縁からの糸のほつれ等を防止すべく、マットの周縁部が、オーバーロック糸によって縫製(かがり縫い)されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−17882号公報(請求項1、段落0021〜0023)
【特許文献2】特開2002−356124号公報(請求項4、段落0020)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のようにマットの周縁部をオーバーロック加工した構成では、このオーバーロック縫製糸自体がほつれてしまうことがあり、縁部における糸のほつれを十分に防止することはできなかった。
【0004】
例えば、近年特にミニバンタイプの自動車では、運転席側(フロント側)は床置き式が用いられ、後部座席側(リアー側)は装着式(例えばマットの周縁部を断面形状がコの字状の固定レール内に差し込み、面ファスナーで固定する等の装着式)のものが用いられることが多いが、このような装着式を採用した場合には特にオーバーロック縫製糸のほつれ発生が非常に生じやすく問題となっていた。即ち、マットを固定レール内に差し込む操作を行う際及びマットを固定レールから取り外す操作を行う際にオーバーロック縫製糸のほつれ発生を非常に生じやすかった。また、オーバーロック加工で装着式の構成を採用した場合、差し込み部の厚さの制御が非常に難しかった。
【0005】
また、マット周縁部がオーバーロック縫製されたものは縫製糸によるかがり縫い状態が外観されるので、外観美に劣るという問題もあった。特に2枚以上のマットを突き合わせ状態で隣接配置する配置形態では、突き合わせ位置でオーバーロック縫製糸によるかがり縫い状態が外観されて外観美が顕著に低下する。
【0006】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、ほつれを十分に防止することができると共に、外観美に優れ、かつ生産性にも優れた縁取りマット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]基布の一方の面にパイルが植設されると共に該基布の他方の面に不織布層が積層一体化されてなるマット本体を、上面にキャビティーが形成された成形型の該キャビティー内に、前記パイルを下側にして且つ前記不織布層の周側面と前記キャビティーの内周側面との間に縁取部形成用空間が存在する状態に配置せしめる工程と、
前記縁取部形成用空間に溶融した熱可塑性樹脂を充填して固化させることによって前記マット本体の不織布層の周側面に縁取部を一体化する工程とを包含することを特徴とする縁取りマットの製造方法。
【0009】
[2]前記成形型のキャビティー内に前記マット本体を配置せしめた状態時において、前記縁取部形成用空間の底面の位置は、前記マット本体の基布の位置よりも下側にある前項1に記載の縁取りマットの製造方法。
【0010】
[3]前記成形型のキャビティー内に前記マット本体を配置せしめた状態時において、前記マット本体の不織布層の上面は、前記成形型のキャビティーの上面の位置よりも下側にあり、前記マット本体の不織布層の上面の中央部に堰き止め用板を載置して、該堰き止め用板の上面と前記成形型のキャビティーの上面が略面一となる状態とし、この状態で前記縁取部形成用空間に溶融した熱可塑性樹脂を充填して固化させる前項1または2に記載の縁取りマットの製造方法。
【0011】
[4]前記成形型のキャビティーにおける縁取部形成用空間の内周側面は、その少なくとも上端縁部が下から上に向けて内方側に傾斜する傾斜面に形成されている前項1〜3のいずれか1項に記載の縁取りマットの製造方法。
【0012】
[5]前記成形型のキャビティーにおける縁取部形成用空間の底面の少なくとも一部が凹凸面に形成されている前項1〜4のいずれか1項に記載の縁取りマットの製造方法。
【0013】
[6]基布の一方の面にパイルが植設されると共に該基布の他方の面に不織布層が積層一体化されてなるマット本体を、上面にキャビティーが形成された成形型の該キャビティー内に、前記パイルを上側にして且つ前記不織布層の周側面と前記キャビティーの内周側面との間に縁取部形成用空間が存在する状態に配置せしめる工程と、
前記縁取部形成用空間に溶融した熱可塑性樹脂を充填して固化させることによって前記マット本体の不織布層の周側面に縁取部を一体化する工程とを包含することを特徴とする縁取りマットの製造方法。
【0014】
[7]前記熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用いる前項1〜6のいずれか1項に記載の縁取りマットの製造方法。
【0015】
[8]前項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法で製造された縁取りマット。
【0016】
[9]基布の上面にパイルが植設されると共に該基布の下面に不織布層が積層一体化されてなるマット本体の該不織布層の周側面に、熱可塑性樹脂からなる側面縁取部が型成形により一体化されていることを特徴とする縁取りマット。
【0017】
[10]前記側面縁取部の上面は、前記マット本体の基布の位置よりも上側にある前項9に記載の縁取りマット。
【0018】
[11]前記不織布層の下面の周縁部に熱可塑性樹脂からなる底面縁取部が型成形により形成され、該底面縁取部は、前記側面縁取部の型成形時に同時に一体成形されたものである前項9または10に記載の縁取りマット。
【0019】
[12]前記側面縁取部の外側側面は、その少なくとも下端縁部が上から下に向けて内方側に傾斜する傾斜面に形成されている前項9〜11のいずれか1項に記載の縁取りマット。
【0020】
[13]前記側面縁取部の上面の少なくとも一部が凹凸面に形成されている前項9〜12のいずれか1項に記載の縁取りマット。
【発明の効果】
【0021】
[1]の発明では、不織布層の周側面に熱可塑性樹脂からなる側面縁取部が一体化された縁取りマットを生産性良く製造することができる。得られたマットは、不織布層の周側面に縁取部が一体化されているので、ほつれ発生を効果的に防止することができる。また、オーバーロック縫製をしないので、外観美に優れている。また、側面縁取部の上面及び外側側面は、型成形によって成形するので、所望の表面形状(例えば平滑面、凹凸面等)に精密に成形できる利点もある。
【0022】
[2]の発明では、側面縁取部の上面がマット本体の基布の位置よりも上側にある縁取りマットを製造することができるので、縁取りマットのほつれ発生を確実に防止することができる。
【0023】
[3]の発明では、側面縁取部と共に、不織布層の下面の周縁部に底面縁取部を型成形時に同時に一体成形するから、縁取部の固着安定性をさらに向上させることができる。
【0024】
[4]の発明では、側面縁取部の外側側面を、上から下に向けて内方側に傾斜する傾斜面(例えば円弧面、平面)に形成できるから、例えば装着式の固定レール内にマットの縁取部を差し込む操作を行う際及びマットの縁取部を固定レールから取り外す操作を行う際の操作性が格段に向上する、即ち固定レールへの着脱操作が容易化することができる。
【0025】
[5]の発明では、側面縁取部の上面の少なくとも一部に凹凸面を形成できるから、例えば装着式の固定レール内にマットの縁取部が差し込み装着された状態時において該固定レールからのマットの離脱を効果的に防止できる。
【0026】
[6]の発明では、不織布層の周側面に熱可塑性樹脂からなる側面縁取部が一体化された縁取りマットを生産性良く製造することができる。得られたマットは、不織布層の周側面に縁取部が一体化されているので、ほつれ発生を効果的に防止することができる。また、オーバーロック縫製をしないので、外観美に優れている。
【0027】
[7]の発明では、熱可塑性樹脂として冷却効果の高いポリアミド樹脂を用いるから、生産性をさらに向上できる利点がある。
【0028】
[8]の発明では、良好な吸音性を有し、ほつれを十分に防止することができると共に、外観美に優れ、かつ生産性にも優れた縁取りマットが提供される。
【0029】
[9]の発明では、不織布層の周側面に、熱可塑性樹脂からなる側面縁取部が型成形により一体化されているので、ほつれ発生を効果的に防止することができる。また、縁処理としては、型成形により縁取部を一体化するだけで良いので、生産性を向上できる。また、オーバーロック縫製は採用しないのでかがり縫い状態は外観されないことから、外観美が向上する。更に、不織布層を有するので、良好な吸音性能を確保できる。
【0030】
[10]の発明では、側面縁取部の上面は、マット本体の基布の位置よりも上側にある構成が採用されているから、ほつれ発生を確実に防止できる。
【0031】
[11]の発明では、不織布層の下面の周縁部に熱可塑性樹脂からなる底面縁取部が型成形により形成され、該底面縁取部は、側面縁取部の型成形時に同時に一体成形されたものであるから、縁取部の固着安定性をさらに向上できる。
【0032】
[12]の発明では、側面縁取部の外側側面は、その少なくとも下端縁部が上から下に向けて内方側に傾斜する傾斜面(例えば円弧面、平面)に形成されているから、例えば装着式の固定レール内にマットの縁取部を差し込む操作を行う際及びマットの縁取部を固定レールから取り外す操作を行う際の操作性が格段に向上する、即ち固定レールへの着脱操作が容易なものとなる。
【0033】
[13]の発明では、側面縁取部の上面の少なくとも一部が凹凸面に形成されているから、例えば装着式の固定レール内にマットの縁取部が差し込み装着された状態時において該固定レールからのマットの離脱が効果的に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
この発明に係る縁取りマット(1)の一実施形態を図1、2に示す。この縁取りマット(1)は、基布(2)の上面にパイル(3)が植設されると共に該基布(2)の下面に不織布層(4)が積層一体化されてなるマット本体(5)の該不織布層(4)の周側面に、熱可塑性樹脂からなる側面縁取部(6A)が型成形により一体化されてなる。
【0035】
本実施形態では、さらに前記不織布層(4)の下面の周縁部にも熱可塑性樹脂からなる底面縁取部(6B)が型成形により一体化されている(図2参照)。この底面縁取部(6B)は、前記側面縁取部(6A)の型成形時に同時に一体成形されたものであり、これら(6A)(6B)によって縁取部(6)が形成されている。
【0036】
なお、前記縁取部(6)は、型成形により不織布層(4)に一体化されたものであり、型に注入された溶融熱可塑性樹脂の一部は、不織布層(4)内に含浸された状態で硬化する(図2参照)ので、アンカー効果によって前記縁取部(6)は不織布層(4)に強固に一体化されている。このような縁取部(6)形成のための型成形としては、後述するもの(第1、2製造方法)以外に、例えば射出成形等が挙げられる。
【0037】
前記側面縁取部(6A)の上面は、前記マット本体(5)の基布(2)の上面位置よりも上側に位置するように構成されている(図2参照)。また、前記側面縁取部(6A)の外側側面の下端部は、上から下に向けて内方側に傾斜する傾斜面(例えば円弧面)に形成されている(図2参照)。また、前記側面縁取部(6A)の上面は、縁取部(6A)の幅方向において凹凸を有する凹凸面(10)に形成されている(図2参照)。
【0038】
上記構成の縁取りマット(1)によれば、不織布層(4)の周側面に、熱可塑性樹脂からなる縁取部(6)が型成形により一体化されているので、ほつれ発生を効果的に防止することができる。また、縁処理としては、型成形により縁取部(6)を一体化するだけで良いので、生産性を向上できる。また、オーバーロック縫製は採用しないのでかがり縫い状態は外観されないことから、良好な外観美を呈する。更に、不織布層(4)を有するので、良好な吸音性能を確保できる。
【0039】
また、前記不織布層(4)の下面の周縁部に設けられた底面縁取部(6B)は、前記側面縁取部(6A)の型成形時に同時に一体成形されたものであるから、縁取部(6A)の固着安定性をさらに向上させることができる。また、前記側面縁取部(6A)の上面は、前記マット本体(5)の基布(2)の上面位置よりも上側に位置するから、ほつれ発生を確実に防止できる。更に、前記側面縁取部(6A)の外側側面の少なくとも下端縁部が、上から下に向けて内方側に傾斜する傾斜面に形成されているから、例えば装着式の固定レール内にマットの縁取部を差し込む操作を行う際及びマットの縁取部を固定レールから取り外す操作を行う際の操作性が格段に向上する。加えて、前記側面縁取部(6A)の上面は、縁取部(6A)の幅方向において凹凸を有する凹凸面(10)に形成されているので、例えば装着式の固定レール内にマットの縁取部が差し込み装着された状態時において該固定レールからのマットの離脱が効果的に防止される。
【0040】
この発明に係る縁取りマットの製造方法の好適な一例(第1製造方法)について説明する。この第1製造方法で用いる成形型(20)を図3に示す。この成形型(20)は、外形形状が略直方体の金型からなる。前記成形型(20)の上面に上面開放のキャビティー(21)が形成されている。このキャビティー(21)の内周側面には、図4に示すように、段部(24)が形成されており、これによってマット本体(5)をキャビティー(21)内に配置せしめた際に、マット本体(5)の不織布層(4)の周側面とキャビティー(21)の内周側面との間に縁取部形成用空間(22)が形成されるものとなる。また、前記段部(24)の上面は、即ち縁取部形成用空間(22)の底面は、その幅方向において凹凸を有する凹凸面に形成されている(図4参照)。また、前記キャビティー(21)における縁取部形成用空間(22)の内周側面の上端部は、下から上に向けて内方側に傾斜する円弧面に形成されている(図4参照)。
【0041】
なお、前記成形型(20)は、中央部に略矩形状の凹部が設けられた主体型(51)の周縁部の各コーナー部にそれぞれ平面視略L字状の第1分割型(52)(52)(52)(52)が載置されると共に、これら各第1分割型(52)(52)(52)(52)のそれぞれの上に平面視略L字状の第2分割型(53)(53)(53)(53)が載置され、更に前記主体型(51)の中央の凹部の上面に第3分割型(54)(54)(54)が載置された構成の分割型からなる。
【0042】
しかして、図5に示すように、基布(2)の一方の面にパイル(3)が植設されると共に該基布(2)の他方の面に不織布層(4)が積層一体化されてなるマット本体(5)を、前記成形型(20)のキャビティー(21)内に、前記パイル(3)を下側にして且つ前記不織布層(4)の周側面と前記キャビティー(21)の内周側面との間に縁取部形成用空間(22)が存在する状態に配置せしめる。この配置状態において、前記縁取部形成用空間(22)の底面の位置は、前記マット本体(5)の基布(2)の下面(パイル側の面)の位置よりも下側にある。
【0043】
次に、前記マット本体(5)の不織布層(4)の上面の中央部(周縁部を除く部分)に平面視矩形状の堰き止め用板(30)を載置する(図5参照)。これにより、前記堰き止め用板(30)の上面と前記成形型(20)のキャビティー(21)の上面が略面一となる状態にする。
【0044】
次いで、図6に示すように、前記縁取部形成用空間(22)に溶融した熱可塑性樹脂(31)を充填していく。この溶融熱可塑性樹脂(31)の充填は、ノズル底面が平坦面であるノズル(23)を用いて行う。即ち、前記ノズル(23)の底面の中央部に設けられたノズル注入孔(23a)から前記縁取部形成用空間(22)内に溶融した熱可塑性樹脂(31)を充填していく。この時、前記ノズル(23)の底面の一端縁は、前記堰き止め用板(30)の上面に当接する一方、ノズル(23)の底面の他端縁は、前記成形型(20)の上面に当接している。なお、充填した溶融熱可塑性樹脂(31)の一部は、不織布層(4)内に含浸される(図6、7参照)。
【0045】
しかして、前記縁取部形成用空間(22)内に溶融した熱可塑性樹脂(31)が満たされると、図7に示すように、前記ノズル(23)の底面(平坦面)の存在によって前記キャビティー(21)の上面を超える熱可塑性樹脂(31)の盛り上がり充填が阻止され得て、前記縁取部形成用空間(22)内に充填した熱可塑性樹脂(31)の上面は前記キャビティー(21)の上面と略面一となる平坦面に形成される。
【0046】
前記ノズル(23)は、溶融熱可塑性樹脂(31)の注入充填を行いつつ、図面奥行き方向に移動せしめる。前記縁取部形成用空間(22)内に充填した熱可塑性樹脂は、自然冷却されて順次固化していく。こうして、マット本体(5)の不織布層(4)の周側面に熱可塑性樹脂からなる側面縁取部(6A)及び不織布層(4)の底面の周縁部に熱可塑性樹脂からなる底面縁取部(6B)が型成形により同時に一体化されて縁取部(6)が形成される。即ち、図1、2に示す構成からなる縁取りマット(1)が製造される。なお、縁取りマット(1)の成形型(20)からの取り出しは、第2分割型(53)(53)(53)(53)をそれぞれ成形型(20)から離脱せしめることによって可能となる。
【0047】
次に、この発明に係る縁取りマットの製造方法の好適な他の例(第2製造方法)について説明する。この第2製造方法で用いる成形型(40)を図9に示す。この成形型(40)は、外形形状が略直方体の金型からなる。前記成形型(40)の上面に上面開放のキャビティー(41)が形成されている。前記キャビティー(41)の大きさは、マット本体(5)をキャビティー(41)内に配置せしめた際に、マット本体(5)の不織布層(4)の周側面とキャビティー(41)の内周側面との間に縁取部形成用空間(42)が形成されるように設計されている。また、前記キャビティー(41)の底面の周縁部には、所定幅の縁溝(43)が設けられている(図9(イ)参照)。
【0048】
しかして、図9(ロ)に示すように、基布(2)の一方の面にパイル(3)が植設されると共に該基布(2)の他方の面に不織布層(4)が積層一体化されてなるマット本体(5)を、前記成形型(40)のキャビティー(41)内に、前記パイル(3)を上側にして且つ前記不織布層(4)の周側面と前記キャビティー(41)の内周側面との間に縁取部形成用空間(42)が存在する状態に配置せしめる。
【0049】
次に、図9(ロ)に示すように、前記縁取部形成用空間(42)に溶融した熱可塑性樹脂(31)を充填していく。この時、充填した熱可塑性樹脂(31)の上面が、前記マット本体(5)の基布(2)の上面(パイル側の面)の位置よりも上側の位置になるところまで充填するのが好ましい。なお、充填した溶融熱可塑性樹脂(31)の一部は不織布層(4)内に含浸される(図9(ロ)参照)。
【0050】
前記縁取部形成用空間(42)内への溶融熱可塑性樹脂(31)の充填を全周にわたって順次行っていく。前記縁取部形成用空間(42)内に充填した熱可塑性樹脂は、自然冷却されて順次固化する。こうして、マット本体(5)の不織布層(4)の周側面に熱可塑性樹脂からなる側面縁取部(6A)及び不織布層(4)の底面の周縁部に熱可塑性樹脂からなる底面縁取部(6B)が型成形により同時に一体化されて縁取部(6)が形成されて、図8に示すような縁取りマット(1)が得られる。
【0051】
即ち、図8に示す縁取りマット(1)は、基布(2)の上面にパイル(3)が植設されると共に該基布(2)の下面に不織布層(4)が積層一体化されてなるマット本体(5)の該不織布層(4)の周側面に熱可塑性樹脂からなる側面縁取部(6A)及び不織布層(4)の底面の周縁部に熱可塑性樹脂からなる底面縁取部(6B)が型成形により同時に一体化されて縁取部(6)が形成された構成からなる。
【0052】
この発明において、前記成形型(20)(40)の材質は、特に限定されないが、加工のし易さから、アルミニウム又はアルミニウム合金製の成形型を用いるのが好ましい。また、前記成形型(20)(40)は、図3に示す実施形態のような割り重ね型の上下分割成形型を用いるのが好ましく、この場合には、マットの厚さや不織布の厚さが異なる縁取りマットの製作においても成形型を共用とすることができるので、成形型(20)(40)の製作コストを大幅に低減することができ、ひいては縁取りマット(1)を安価に製造することができる。
【0053】
前記縁取部(6)を構成する熱可塑性樹脂としては、即ち、縁取部形成用空間(22)(42)に充填する熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリアミド、ポリオレフィン(ポリエステル、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等)、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル樹脂、熱可塑性エラストマー(オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等)、SBR、NBR等が挙げられる。中でも、冷却効果の高いポリアミドを用いるのが生産性を向上できる点で好ましい。
【0054】
前記基布(2)としては、特に限定されるものではないが、例えば織基布、編基布、不織布等を例示できる。具体的には、例えばヘッシャン、キャップ、ニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。この基布(2)を構成する繊維の種類も特に限定されず、例えばPET等のポリエステル繊維、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維等が挙げられる。
【0055】
また、前記パイル(3)としては、特に限定されるものではなくどのような構成のものも採用でき、例えばカットパイル、ループパイル等が挙げられる。このパイル(3)を構成する糸の種類は特に限定されず、例えばBCF糸、スパン糸、モノフィラ糸等が挙げられ、またその繊維の種類も特に限定されず、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、綿、羊毛等が挙げられる。
【0056】
また、前記不織布層(4)を構成する不織布としては、特に限定されるものではないが、例えばニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布等を例示できる。また、この不織布(4)を構成する繊維の種類も特に限定されず、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、レーヨン、綿、麻等が挙げられる。なお、十分な吸音性能を確保するために、不織布層(4)の厚さは3〜30mmとし、かつ不織布(4)の目付を200〜1000g/m2 の範囲に設定するのが好ましい。
【0057】
この発明に係る縁取りマット(1)は、自動車用フロアーマットとして好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。また、自動車用フロアーマット等として用いられる場合には、例えば固定レール内への差込装着仕様として用いられるし、或いはオーバーロックレス仕様としても用いられる。
【実施例】
【0058】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、この発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
前項で説明した第1製造方法(図3〜7参照)で図1、2に示す構成の縁取りマット(1)を製造した。マット本体(5)としては、目付100g/m2 のPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維製スパンボンド不織布からなる基布(2)の一方の面に、ナイロンBCF糸からなるパイル(3)が目付1500g/m2 でタフトされると共に、基布(2)の他方の面に厚さ5mm、目付500g/m2 のPET繊維製ニードルパンチ不織布が積層一体化されたものを用いた。また、熱可塑性樹脂としてはポリアミド樹脂を用いた。また、ノズル(23)から吐出する際のポリアミド樹脂の温度は約210℃であった。また、堰き止め用板(30)の厚さは1mmであった。
【0060】
得られた縁取りマット(1)の側面縁取部(6A)の幅は8mmであり、底面縁取部(6B)の高さは1mmであった。
【0061】
<実施例2>
前項で説明した第2製造方法(図9参照)で図8に示す構成の縁取りマット(1)を製造した。マット本体(5)としては、実施例1と同様のものを用いた。また、熱可塑性樹脂としてはポリアミド樹脂を用いた。得られた縁取りマット(1)の側面縁取部(6A)の幅は10mmであり、底面縁取部(6B)の高さは1.5mmであった。
【0062】
実施例1、2で得られた縁取りマットは、不織布層の側面及び底面の周縁部に縁取部が一体化されているので、ほつれが発生することがないし、縁取部と不織布層との固着性にも優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明に係る縁取りマットの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線の断面図である。
【図3】成形型の一例を示す斜視図である。
【図4】図3におけるY−Y線の断面図である。
【図5】成形型のキャビティー内にマット本体を配置せしめ、さらに堰き止め用板を載置した状態を示す断面図である。
【図6】成形型のキャビティー内の縁取部形成用空間に熱可塑性樹脂を充填している途中状態を示す断面図である。
【図7】成形型のキャビティー内の縁取部形成用空間への熱可塑性樹脂の充填を完了した状態を示す断面図である。
【図8】この発明に係る縁取りマットの他の実施形態を示す断面図である。
【図9】(イ)は成形型のキャビティー内にマット本体を配置せしめた状態を示す断面図、(ロ)は縁取部形成用空間への熱可塑性樹脂の充填を完了した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1…縁取りマット
2…基布
3…パイル
4…不織布層
5…マット本体
6…縁取部
6A…側面縁取部
6B…底面縁取部
10…凹凸面
20…成形型
21…キャビティー
22…縁取部形成用空間
30…堰き止め用板
31…熱可塑性樹脂
40…成形型
41…キャビティー
42…縁取部形成用空間
43…縁溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布の一方の面にパイルが植設されると共に該基布の他方の面に不織布層が積層一体化されてなるマット本体を、上面にキャビティーが形成された成形型の該キャビティー内に、前記パイルを下側にして且つ前記不織布層の周側面と前記キャビティーの内周側面との間に縁取部形成用空間が存在する状態に配置せしめる工程と、
前記縁取部形成用空間に溶融した熱可塑性樹脂を充填して固化させることによって前記マット本体の不織布層の周側面に縁取部を一体化する工程とを包含することを特徴とする縁取りマットの製造方法。
【請求項2】
前記成形型のキャビティー内に前記マット本体を配置せしめた状態時において、前記縁取部形成用空間の底面の位置は、前記マット本体の基布の位置よりも下側にある請求項1に記載の縁取りマットの製造方法。
【請求項3】
前記成形型のキャビティー内に前記マット本体を配置せしめた状態時において、前記マット本体の不織布層の上面は、前記成形型のキャビティーの上面の位置よりも下側にあり、前記マット本体の不織布層の上面の中央部に堰き止め用板を載置して、該堰き止め用板の上面と前記成形型のキャビティーの上面が略面一となる状態とし、この状態で前記縁取部形成用空間に溶融した熱可塑性樹脂を充填して固化させる請求項1または2に記載の縁取りマットの製造方法。
【請求項4】
前記成形型のキャビティーにおける縁取部形成用空間の内周側面は、その少なくとも上端縁部が下から上に向けて内方側に傾斜する傾斜面に形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の縁取りマットの製造方法。
【請求項5】
前記成形型のキャビティーにおける縁取部形成用空間の底面の少なくとも一部が凹凸面に形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の縁取りマットの製造方法。
【請求項6】
基布の一方の面にパイルが植設されると共に該基布の他方の面に不織布層が積層一体化されてなるマット本体を、上面にキャビティーが形成された成形型の該キャビティー内に、前記パイルを上側にして且つ前記不織布層の周側面と前記キャビティーの内周側面との間に縁取部形成用空間が存在する状態に配置せしめる工程と、
前記縁取部形成用空間に溶融した熱可塑性樹脂を充填して固化させることによって前記マット本体の不織布層の周側面に縁取部を一体化する工程とを包含することを特徴とする縁取りマットの製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用いる請求項1〜6のいずれか1項に記載の縁取りマットの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法で製造された縁取りマット。
【請求項9】
基布の上面にパイルが植設されると共に該基布の下面に不織布層が積層一体化されてなるマット本体の該不織布層の周側面に、熱可塑性樹脂からなる側面縁取部が型成形により一体化されていることを特徴とする縁取りマット。
【請求項10】
前記側面縁取部の上面は、前記マット本体の基布の位置よりも上側にある請求項9に記載の縁取りマット。
【請求項11】
前記不織布層の下面の周縁部に熱可塑性樹脂からなる底面縁取部が型成形により形成され、該底面縁取部は、前記側面縁取部の型成形時に同時に一体成形されたものである請求項9または10に記載の縁取りマット。
【請求項12】
前記側面縁取部の外側側面は、その少なくとも下端縁部が上から下に向けて内方側に傾斜する傾斜面に形成されている請求項9〜11のいずれか1項に記載の縁取りマット。
【請求項13】
前記側面縁取部の上面の少なくとも一部が凹凸面に形成されている請求項9〜12のいずれか1項に記載の縁取りマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−45011(P2007−45011A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232131(P2005−232131)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000120696)永大化工株式会社 (22)
【Fターム(参考)】