説明

置換1−(2−アミノ−1−フェニル−エチル)−シクロヘキサノールのエナンチオマーを選択的に合成するための方法

(S)−または(R)−1−[2−ジメチルアミノ)−1−(メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノールおよびそれらの類似体または塩のエナンチオ選択的合成プロセスを記載する。前記方法は、(a)オキサゾリジノン、すなわち(4S)−または(4R)−4−ベンジル−3−[メトキシフェニル]アセチル]−オキサゾリジン−2−オンを形成する条件下において、(S)または(R)4−ベンジルオキサゾリジノンをメトキシフェニル酢酸の混合無水物と反応させる工程、(b)前記対応するアニオンを形成することができる条件下において、塩素化溶媒中で、非プロトン性アミン塩基および塩化チタンにより(4S)−または(4R)−4−ベンジル−3−[(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを処理する工程などを包含する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
ベンラファキシン、(±)1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル]−シクロヘキサノールは、うつ病、全般性不安障害および血管運動神経症状の治療用途が記載されている非三環系化合物である。
【0002】
ベンラファキシンおよびその酸付加塩については、特許文献1に記載されている。これらの化合物は広く研究されており、例えば、特許文献2および非特許文献1に記載されている。
【0003】
現在、ベンラファキシンの塩酸塩は、商標名Effexor(登録商標)のもとに米国で市販されている。Effexor(登録商標)は、ベンラファキシンの(+)および(−)エナンチオマーのラセミ混合物であり、うつ病の治療に適応されている。本薬剤は通常、75〜350mg/日の範囲内で1日2回または3回服用する圧縮錠剤の形態で成人に経口投与される。
【0004】
欧州特許第0639374号には、肥満、恐怖障害、外傷後ストレス障害、黄体期後期違和障害、注意欠陥障害、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、神経性過食症、全般性不安障害またはシャイ・ドレーガー症候群の治療にベンラファキシンを使用することが記載されている。欧州特許出願公開第654264号には、失禁治療にベンラファキシンを使用することが教示されている。特許文献3(Uptonら)は、うつ状態ではない女性の視床下部性無月経を治療する方法にベンラファキシンを使用することを主張している。特許文献4(Husbandsら)は、ベンラファキシンの認知増強用途を主張している。
【0005】
ほてりおよび寝汗を指す血管運動神経症状(VMS)は、更年期に伴う最もよくみられる症状であり、自然閉経後または外科的に誘発した閉経後の女性全体の60%〜80%に発症する。このような症状は、例えば乳癌の化学療法を受けた患者でも報告されている。例えば、米国特許出願公開第2005/01435979号およびその中で引用された文献では、VMSの治療に関してベンラファキシンが記載されている。
【0006】
ベンラファキシンをはじめとする2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミン類似体の合成は、例えば、JP Yardleyら、J Med Chem,1990,33,2899−2905に記載されている。
【0007】
さらに有用な2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンは、例えば、特許文献6に記載されている。
【特許文献1】米国特許第4,535,186号明細書
【特許文献2】米国特許第4,761,501号明細書
【特許文献3】米国特許第5,506,270号明細書
【特許文献4】米国特許第5,530,013号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0143394号明細書
【非特許文献1】Pento, J.T.Drugs of the Future(1988)13(9):839−840
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上により、ベンラファキシン化合物の合成に有用な代替の方法および中間体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(要旨)
本発明は、以下の式I:
【0010】
【化11】

(式中、XはOCHまたはCFであり、RおよびRはそれぞれC〜Cアルキルから独立して選択されるか、あるいはそれらが結合する窒素と一緒になって0〜2個のメチル基で置換される1,4−ピペラジン環を形成する)
の2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンの生成に有用な中間体である所望のエナンチオマーを選択的に合成するプロセスを提供する。
【0011】
一実施形態において、本発明のプロセスは、
対応するアニオンを形成することができる条件下において、塩基により、以下の構造:
【0012】
【化12】

(式中、Xはメトキシまたはトリフルオロメトキシからなる群から選択される)を有する(4Sまたは4R)−4−ベンジル−3−[(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを処理する工程;および
アルドール反応が可能な条件下において、対応するアニオンをシクロヘキサノンと混合して、対応する(4Sまたは4R)−4−ベンジル−3−[(2Rまたは2S)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−メトキシフェニル]アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを形成する工程を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、塩基は非プロトン性アミンである。
【0014】
いくつかの実施形態において、アニオンは、少なくとも一つの塩素系炭化水素を含む溶媒中で形成される。
【0015】
いくつかの実施形態において、アニオンとシクロヘキサノンとの反応は、ルイス酸の存在下で実施される。
【0016】
いくつかの実施形態において、アニオンとシクロヘキサノンとの反応は、TiClの存在下で実施される。
【0017】
別の態様において、本発明は、4−ベンジル−3−[2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(3−トリフルオロメトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンであって、前記化合物が以下の構造:
【0018】
【化13】

を有する、化合物を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明は、4−ベンジル−3−[2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(3−トリフルオロメトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンのほぼ単一ジアステレオマーであって、前記ジアステレオマーが
【0019】
【化14】

である、ジアステレオマーを提供する。
別の実施形態において、本発明は、以下の構造:
【0020】
【化15】

を有する化合物を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明は、ほぼ単一ジアステレオマーであって、前記ジアステレオマーが、
【0021】
【化16】

である、ジアステレオマーを提供する。
【0022】
特定の実施形態において、本発明は、以下の式:
【0023】
【化17】

の化合物を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明は、ほぼ単一エナンチオマーであって、前記エナンチオマーが、
【0025】
【化18】

である、エナンチオマーを提供する。
【0026】
さらなる態様において、本発明は式Iの化合物またはその誘導体または塩のエナンチオマーの選択的合成プロセスを提供する。前記方法は、
(a)以下の構造:
【0027】
【化19】

(式中、Xはメトキシまたはトリフルオロメトキシである)
を有する(4Sまたは4R)−4−ベンジル−3−[(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを形成する条件下において、(S)−または(R)−4−ベンジルオキサゾリジノンをメトキシフェニル酢酸の混合無水物と反応させる工程;
(b)対応するアニオンを形成することができる条件下において、塩素化溶媒中で、非プロトン性アミン塩基および塩化チタンにより、(4S)−または(4R)−4−ベンジル−3−[(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを処理する工程;
(c)アルドール反応が可能な条件下において、対応するアニオンを塩化チタンおよびシクロヘキサノンと混合して、以下に示す構造:
【0028】
【化20】

(式中、XはOCHまたはOCFである)
を有する対応する(4S)−または(4R)−4−ベンジル−3−[(2Rまたは2S)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを形成する工程;
(d)(4S)−または(4R)−4−ベンジル−3−[(2Rまたは2S)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを加水分解して、以下に示す構造:
【0029】
【化21】

(式中、XはOCHまたはOCFである)
を有するキラル(2Rまたは2S)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−メトキシフェニル)酢酸を形成する工程;
(e)キラル酢酸を第二級アミンNRにカップリングさせて、以下に示す構造:
【0030】
【化22】

(式中、XはOCHまたはOCFであり、RおよびRはそれぞれ独立してC〜Cアルキルから選択されるか、あるいはそれらが結合する窒素と一緒になって0〜2個のメチル基で置換される1,4−ピペラジン環を形成する)
を有するアミドを形成する工程;ならびに
(f)アミドを還元して、(S)−または(R)−1−[(2−アミノ)−1−(メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール(式Iの化合物)またはそれらの薬学的に許容される塩を形成する工程を含む。
【0031】
なおさらなる態様において、本発明は、(2R)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)(メトキシフェニル)酢酸を提供する。一実施形態において、化合物は、(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(4−メトキシフェニル)酢酸および(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(3−トリフルオロメトキシフェニル)酢酸から選択してもよい。
【0032】
なおさらなる態様において、本発明は、化合物(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(メトキシフェニル)−NRジメチルアセトアミドを提供する。一実施形態において、化合物は、(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(4−メトキシフェニル)−N,N−ジメチルアセトアミド、および1−(3,5−ジメチル−ピペラジン−1−イル)−2−(R)−(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−2−(3−トリフルオロメトキシフェニル)−エタノンから選択してもよい。
【0033】
本発明はまた、ベンラファキシンの特定またはその塩のエナンチオマーまたは誘導体を生成するエナンチオ選択的プロセスも提供する。
【0034】
本願の他の態様および利点は、以下の発明の詳細な説明から容易に明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
(発明の詳細な説明)
一態様において、本発明は、本明細書に記載の手順を含むベンラファキシンのエナンチオマー特異的合成方法を提供する。
【0036】
好都合なことに、本発明は、ベンラファキシンRまたはSエナンチオマーの選択を可能にすることにより、これらのいずれかがベンラファキシンのノルエピネフリン再取り込み阻害/セロトニン阻害の割合を調節することを可能にする。例えば、ベンラファキシンのRエナンチオマーは、ノルエピネフリントランスポーターよりもセロトニントランスポーターに対する選択性の方が約10倍高い。一方、ベンラファキシンのSエナンチオマーは、ノルエピネフリントランスポーターよりもセロトニントランスポーターに対する選択性の方が約75倍高いのに対して、ベンラファキシンのラセミ体は、ノルエピネフリントランスポーターよりもセロトニントランスポーターに対する選択性の方が約20倍高い。選択的なセロトニン/ノルエピネフリン再取り込み阻害剤の種々の用途は、当業者に周知である。
【0037】
本発明によれば、「エナンチオマー特異的」または「ほぼ単一エナンチオマー」は、化合物の(S)エナンチオマーを90%〜100%、または化合物の(R)エナンチオマーを90%〜100%優先的に発生させる反応を指す。例えば、本発明の反応は、化合物の(R)−エナンチオマーを少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%発生させることがあり、この場合本発明は(S)−エナンチオマーを5%未満、3%未満または1%未満有する。別の例において、本発明の反応は、化合物の(S)−エナンチオマーを少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99%発生させることがあり、この場合本発明は(R)−エナンチオマーを5%未満、3%未満または1%未満である。
【0038】
本発明の方法は、光学的に純粋なベンラファキシン、すなわち、(S)−または(R)−のベンラファキシンを発生させる。さらに、反応は光学的に純粋なデスメチルベンラファキシンを産生するために使用することができる。本化合物は、記載した方法を使用して、本発明に従って調製したベンラファキシンを脱メチル化することにより産生することができる。一方、この他にも、本発明の方法を使用して光学的に純粋な2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンを合成することができる。このように、(S)−2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンまたは(R)−2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミン、およびこれらの混合物は、本発明の方法を利用して、場合により既知の技法に従って選択された誘導体を産生するために利用される手順を追加して合成することができる。
【0039】
「光学的に純粋な」という用語は、例えば、本明細書に定義されるベンラファキシンまたは他の2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンを指し、これは、それらの(S)−立体異性体を実質的に含まない(R)−ベンラファキシンまたは他の(R)−2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンであるか、あるいはそれらの(R)−立体異性体を実質的に含まない(S)−ベンラファキシンまたは他の(S)−2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンである。
【0040】
本明細書で使用される「実質的に含まない」とは、重量比が少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%もしくは少なくとも99%または100%の単一旋光を有する(R)−または(S)−ベンラファキシンと、重量比が10%、3%、1%未満の逆旋光を有するベンラファキシンとを含む組成物を意味する。これらの百分率は、組成物中のベンラファキシンの総量に基づくものである。「ベンラファキシンの実質的に光学的に純粋な(R)−異性体」または「実質的に光学的に純粋な(S)−ベンラファキシン」および「ベンラファキシンの光学的に純粋な(R)−異性体」および「光学的に純粋な(S)−ベンラファキシン」という用語も、上述の量に包含される。
【0041】
本発明の光学的に純粋な化合物はさらに、ほぼ単一ジアステレオマーであってもよい化合物を包含する。「ほぼ単一ジアステレオマー」という用語は、別のジアステレオマーを実質的に含まない化合物、すなわち前段落で定めた範囲内にある化合物を指す。
【0042】
本明細書で使用されるベンラファキシンという用語は、1−[2−ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノールまたはその塩を指す。例えば、本用語には、1−[2−ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノールの塩酸塩および薬学的に許容される酸に由来する他の塩が包含される。本発明はさらに、種々のメトキシまたはトリフルオメトキシ異性体が調製されるか、ジメチルアミン以外のアミンが存在するさらなる2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンおよびその薬学的に許容される塩も企図する。本発明のいくつかの実施形態において、本発明のプロセスは、以下に示す式Iの化合物:
【0043】
【化23】

(式中、XはOCHまたはCFであり、RおよびRはそれぞれC〜Cアルキルから独立して選択されるか、あるいはそれらが結合する窒素と一緒になって0〜2個のメチル基で置換される1,4−ピペラジン環を形成する)
を調製するのに有用である。
【0044】
本明細書に記載のプロセスにより好都合に調製される場合がある2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンの具体例には、米国特許出願公開第2005−0143579号に記載されている1−{(1S)−2−[シス−3,5−ジメチルピペラジン−1−イル]−1−[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}シクロヘキサノールと、O−デスメチルベンラファキシン[米国特許出願公開第20030105358号]と、米国特許出願公開第20050096479号、米国特許出願公開第20040190952号、米国特許出願第11/486,324号(PCT/US06/27106として国際出願)、米国特許出願第11/485,693号、米国特許出願第11/486,336号、および米国特許出願第11/485,663号(PCT/US06/26991として出願)に記載されているO−デスメチルベンラファキシンのコハク酸塩がある。
【0045】
本発明において、メトキシ基の場所を示さずに指定の構造の一部として使用される「メトキシフェニル」という用語は、フェニル環の任意の位置で、フェニル環がメトキシ基またはトリフルオロメトキシ基で置換される総称的な構造を指す。また、本発明において、アミノ基が詳細に定義されずに指定の構造の一部として使用される「アミノ」という用語は、アミノ基が第三級アミンである化合物を総称して指す。非限定例として、未だ定義されていない「アミノ」は、ジメチルアミノまたはシス−3,5−ジメチルピペラジン−1−イルであってもよい。
【0046】
ベンラファキシンの塩および誘導体には、以下の酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、塩酸、臭酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸および類似の既知の許容される酸などの有機酸塩および無機酸塩、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。その他の塩には、ナトリウム(例えば、水酸化ナトリウム)、カリウム(例えば、水酸化カリウム)、カルシウムまたはマグネシウムなどのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が含まれる。
【0047】
これらの塩、ならびに本明細書に記載の他の化合物は、エステル、カルバミン酸塩および他の従来の「プロドラッグ」形態であってもよく、このような形態で投与された場合は、in vivoで活性部位に転化する。最近の好ましい一実施形態において、プロドラッグはエステルである。例えば、B.Testa and J.Caldwell, “Prodrugs Revisited: The “Ad Hoc” Approach as a Complement to Ligand Design”, Medicinal Research Reviews, 16(3):233−241, ed., John Wiley & Sons (1996)を参照。
【0048】
合成
一実施形態において、(4S)−4−ベンジル−3−[(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンは、対応するアニオンを形成することができる条件下において、溶媒、例えば、塩素系溶媒中で、塩基により、場合によっては非プロトン性アミン塩基およびルイス酸により、場合によっては塩化チタンにより処理される。次にアニオンは、ルイス酸と、場合によっては塩化チタンおよびシクロヘキサノンと場合により混合し、(4S)−4−ベンジル−3−[(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを形成する。
【0049】
本化合物は、例えば、オキサゾリジノンの加水分解、第三級アミドの形成、および所望の第三級アミンへの還元を介して、式Iの化合物(例えば、(S)−ベンラファキシン)を合成することをはじめとする種々の目的に利用してもよい。あるいは、光学対掌体(例えば、(R)−ベンラファキシン)を調製するために(4R)−4−ベンジル−3−[(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを使用してもよい。
【0050】
本発明で使用される試薬は、購入して入手してもよければ、文献に記載されている標準的な手順により調製してもよい。本発明で使用される化合物は、有機合成の技術分野では既知の合成法または当業者によるこれらの方法の変法とともに下記の方法を使用して調製してもよい。「一般的に、Comprehensive Organic Synthesis, “Selectivity, Strategy & Efficiency in Modern Organic Chemistry”, ed., I.Fleming, Pergamon Press, New York (1991); Comprehensive Organic Chemistry, “The Synthesis and Reactions of Organic Compounds”, ed.J.F.Stoddard, Pergamon Press, New York (1979)を参照]。適切な方法には、以下に概説する方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明によれば、S−1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール塩酸塩((S)−ベンラファキシン塩酸塩)は、以下の反応スキーム(スキーム1)により生成してもよい。あるいは、R−1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール塩酸塩(R(−)−ベンラファキシン塩酸塩)の作成を所望であれば、(S)−4−ベンジルオキサゾリジノンを(R)−4−ベンジルオキサゾリジノンに代える以外はスキーム1の化学反応を使用してこれを達成してもよい。
【0052】
同様に、塩を含む他の2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンは、本発明の方法を使用し、還元工程の4−メトキシフェニル酢酸(化合物I)および/またはHClの代わりに適切な酸を併用して産生してもよい。
【0053】
別の実施形態において、2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンの単一エナンチオマーは、スキームのアミンおよびフェニル酢酸の代わりに適切な出発原料が置換される本発明の方法に従って産生される。例えば、スキーム1にも示す通り、一実施形態において、アミンは(ジメチルアミンではなく)2,6−(シス)−ジメチルピペラジンであり、出発原料は4−メトキシフェニル酢酸の代わりに3−(トリフルオロメトキシ)フェニル酢酸である。得られた2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンは、1−{(1S)−2−[シス−3,5−ジメチルピペラジン−1−イル]−1−[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}−シクロヘキサノールであり、強力なノルエピネフリン再取り込み阻害剤である。当然ながら、所望であれば、同じ方法を使用してその光学対掌体を調製してもよい。
【0054】
別の実施形態において、2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンの単一エナンチオマーは、本発明の方法に従って生成した2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンのエナンチオマーに1つ以上の変更を加えて生成される。例えば、O−デスメチルベンラファキシンを産生させるために、最終還元工程、すなわち、メトキシフェニル基からメチルを除去する工程の後にさらに工程を追加してもよい。これを、芳香族メトキシ基をフェノールに変換するいずれかの従来の方法により達成してもよい。適切な試薬はルイス酸を含んでもよい。例えば、HBrのスカベンジャーとして三臭化ホウ素をシクロヘキセンと組み合わせて利用してもよければ、三塩化ホウ素をヨウ化テトラブチルアンモニウムと組み合わせて利用してもよい[PR Brooksら、J Org Chem,1999,64:97619]。
【0055】
【化24】

オキサゾリジノン(化合物II)は、文献に記載されているような標準的な手順に従って、メトキシフェニル酢酸(化合物I)から形成してもよい。
【0056】
最初に、塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下で、化合物Iを酸クロリド(例えば、塩化ピバロイル)とともに使用して、メトキシフェニル酢酸の混合無水物を形成してもよい。次に、混合無水物を所望のキラリティーを有するベンジルオキサゾリジノンのリチウムアニオンと反応させる。リチウムベンジルオキサゾリジノンは、−50℃〜−90℃の温度にて、ベンジルオキサゾリジノンをn−ブチルリチウムと予備混合することにより形成してもよい。−78℃〜20℃の温度にてこの反応を行うと、例えば、(4S)−4−ベンジル−3−[(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オン、(化合物II)が得られる。
【0057】
スキーム1に図示する通り、本発明の一実施形態において、4−メトキシフェニル酢酸の混合無水物(−78℃〜20℃の温度にて、塩基、例えば、トリエチルアミンまたは水酸化ナトリウムの存在下で、酸クロリド、好ましくは塩化ピバロイルとともに形成される)から(4Sまたは4R)−4−ベンジル−3−[(4−メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オン(化合物II)を形成し、所望のキラリティーを有するベンジルオキサゾリジノンのリチウムアニオンと反応させる。本発明の別の実施形態において、(4Sまたは4R)−4−ベンジル−3−{[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリドン−2−オンは、上記の工程を使用して、3−トリフルオロメトキシフェニル酢酸の混合無水物から形成される。一実施形態においては、トリエチルアミン媒介混合無水物の工程が望ましい。
【0058】
化合物IIは、−50℃〜−90℃の温度にて、塩素化溶媒、例えば、塩化メチレン中で、非プロトン性アミン塩基、例えば、ジイソプロピルエチルアミンおよび塩化チタン(IV)により処理される。次に、−20℃〜20℃の温度にて、アニオンを形成させる。形成後、アニオンを−50℃〜−90℃の温度に再冷却し、同当量の塩化チタン(IV)を追加した後にシクロヘキサノンを添加し、アルドール反応が起こる−20℃〜20℃の温度に反応物を加温する。
【0059】
本発明の方法によれば、エナンチオマーに関して特異的なベンラファキシン合成のキラル中心は、(4S)−4−ベンジル−3−[(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オン(化合物II)とシクロヘキサノンとのチタン媒介アルドール反応[Takacsら、J Org Chem, 1998, 63, 2742−2748]を介して形成され、中間体オキサゾリジノンである(4S)−4−ベンジル−3−[(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オン(化合物III)を形成する。この反応は、適切な急冷試薬、例えば、重炭酸ナトリウム水溶液、リン酸カリウム水溶液、塩化アンモニウムなどを使用して中止できるのが好適である。通常、水相の最終pHは、約3を超えるか、あるいは約2〜約6の範囲である。その他の適切な反応条件は、当業者に容易に明らかになるであろう。
【0060】
望ましい一実施形態においては、文献に記載されているアルドール反応とは対照的に、反応時間を短縮させると、出発原料と本発明の反応による生成物との割合が良好になることが判明している(例えば、反応時間が長めの場合は35:65であるのに対し、短い場合は17:83)。このため、文献には60分以上の反応時間が望ましいまたは必要であると記載されているが、反応時間を短くするほど(例えば、15〜25分、または15〜20分、または18分)、出発原料に対して所望の割合の生成物が得られる。
【0061】
キラル酸、例えば、(2R)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)(メトキシフェニル)酢酸(化合物IV)は、オキサゾリジノンの加水分解を介して、(4S)−4−ベンジル−3−[(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オン(化合物III)から合成される。本発明の一実施形態によれば、[1−ヒドロキシシクロヘキシル)(メトキシ)フェニル]酢酸は、キラル4−ベンジル−2−オキサゾリジノンをリチウムヒドロペルオキシド加水分解することにより合成される。リチウムヒドロペルオキシドは、水酸化リチウムおよび過酸化水素を予備混合することにより形成してもよい。一実施形態においては、水酸化リチウム一水和物の2当量が使用される。好適には、オキサゾリジノンおよび過酸化水素のTHF中溶液に水酸化リチウム一水和物の1当量を緩徐に添加すると、収率および不純物プロファイルの向上が実現されると思われる。これにより、逆アルドール経路が短縮され、しかも副産物と生成物との割合が向上する。
【0062】
しかし、この変換には、ラセミ化反応を起こさない従来の他のオキサゾリジノン加水分解法を利用してもよい。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、S)−1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール(Sベンラファキシン)は、カップリング反応に続きアミド還元を介して、キラル酸である(2R)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)(メトキシフェニル)酢酸(化合物IV)から合成される。
【0064】
キラルフェニル酢酸を第二級アミンにカップリングする従来のいずれの手段も、この変換に利用してよい。同様に、アミドを還元してアミンを形成する従来のいずれの方法も、この変換に利用してよい。
【0065】
本発明の実施形態によれば、(2R)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)(4−メトキシフェニル)酢酸(化合物IV)は、塩素化溶媒、例えば、塩化メチレン中、塩基の存在下で、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを使用して、ジメチルアミンとカップリングされる。一実施形態においては、反応を完了させるために、過剰のジメチルアミン、過剰のトリエチルアミンまたはトリメチルアミン(例えば、約10当量)が添加される。この原料は、クロマトグラフィーまたはその他の適切な手段により精製してもよい。このカップリング反応も、文献に報告されているようなアミンと(2R)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)(4−メトキシフェニル)酢酸(化合物IV)の酸クロリドとの反応により実施してもよい。[Yardley, John P.; Husbands, G.E.Morris; Stack, Gary; Butch, Jacqueline; Bicksler, James; Moyer, John A.; Muth, Eric A.; Andree, Terrance; Fletcher, Horace, IIIら、J.Med.Chem.1990, 33(10), 2899−905]。
【0066】
一実施形態において、アミド(V)は、テトラヒドロフラン中で、55℃〜85℃の温度にて、ホウ素テトラヒドロフラン錯体を使用して還元される。得られたホウ素錯体は、稀酸、例えば2N塩酸またはメタノールで溶解してもよい。この原料は、エタノールおよびジエチルエーテルの混合溶媒から再結晶化により二塩酸塩として精製した後、これを熱エタノールで2回粉砕してもよい。他の精製工程は、当業者に容易に明らかになるであろう。
【0067】
本発明は、エナンチオマーに関して純粋な化合物を産生することによって、現在市販されているデュアルセロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)とは異なるセロトニン再取り込み阻害とノルエピネフリン再取り込み阻害との割合の化合物を得る方法を提供する。この特質は、副作用に便秘があるためにSNRIのNE活性が高くなるほど適応が制限されている過敏性腸症候群(IBS)のような症状にはきわめて魅力的なものである。このNE活性の低さは、高血圧の副作用に関連した心臓血管のリスクを有する患者にも魅力的である。また、尿失禁の処置にも適応するものである。本発明の組成物は、うつ病(大うつ病性障害、双極性障害および気分変調を含むがこれらに限定されない)、線維筋肉痛、不安、恐怖障害、空間恐怖症、外傷後ストレス障害、月経前不快気分障害(月経前症候群としても知られる)、注意欠陥障害(多動の有無を問わない)、強迫性障害(抜毛癖を含む)、社会性不安障害、全般性不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、神経性無食欲症、神経性過食症、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、血管性紅潮、コカインおよびアルコール濫用、性機能障害(早発射精を含む)、境界性人格障害、慢性疲労症候群、失禁(便失禁、溢流性失禁、受動性失禁、反射性失禁、緊張性尿失禁、緊迫性失禁、労作性尿失禁および尿失禁を含む)、疼痛(偏頭痛、慢性腰痛、幻想肢痛、中枢性疼痛、ならびに糖尿病性ニューロパシーおよびヘルペス感染後ニューロパシーなどの神経因性疼痛を含むがこれらに限定されない)、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群、パーキンソン病、てんかんなどを含むがこれらに限定されない中枢神経障害を治療または予防するために使用してもよい。本発明の化合物および組成物はまた、うつ病が再燃または再発の予防、認知障害の治療、老人性痴呆、アルツハイマー病、記憶喪失、健忘および健忘症症候群に罹患する患者の認知強化の誘発、喫煙をはじめとする煙草の使用を中止する療法に使用してもよい。さらに、本発明の化合物および組成物は、うつ病の有無を問わずヒト女性の視床下部性無月経を治療するのに使用してもよい。
【0068】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供されるものであり、それらの適用範囲に限定するものではない。以下の実施例に具体的な試薬および条件が概説されていても、変更は可能であり、それらの変更が本発明の趣旨および適用範囲に包含されるものとして意図されることは、当業者に理解されるであろう。
【実施例】
【0069】
(実施例1 (S)−1−[2−(ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール塩酸塩の合成)
【0070】
【化25】

窒素下で、4−メトキシフェニル酢酸(1.0g、6.02mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(15mL)中溶液を−78℃に冷却し、トリエチルアミン(1.01mL、7.23mmol)に続き塩化ピバロイル(0.78mL、6.32mmol)で滴下処理した。得られた溶液を−78℃にて15分間撹拌した後、0℃に加温したところで、これを1.5時間撹拌して混合無水物を形成した。その間に、別のフラスコでは、窒素下で、(S)−4−ベンジルオキサゾリジノン(2.13g、12.04mmol)の乾燥テトラヒドロフラン中溶液を−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(2.35Mヘキサン溶液、4.86mL、12.16mmol)で滴下処理した。この溶液を−78℃にて15分間撹拌してから、これをカニューレを介して、−78℃に再冷却した混合無水物を含有する混合物内に移した。添加後、反応混合物を−78℃にて15分間撹拌してから室温に加温したところで、これを12時間撹拌した。次に重炭酸ナトリウム飽和水性溶液を添加することにより反応物を急冷し、テトラヒドロフランを真空除去した。得られた残渣を水(20mL)と酢酸エチル(30mL)とに分配し、層を分離した。水層を酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、結合した有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させて濃縮した。得られた残渣をBiotageTM Horizonクロマトグラフィー(FLASH 40M、シリカ、勾配5%酢酸エチル/ヘキサン〜40%酢酸エチル/ヘキサン)を介して精製し、淡黄色固体の(4S)−4−ベンジル−3−[2−(4−メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オン1.88g(96%)を得た。
【0071】
【化26】

(4S)−4−ベンジル−3−[2−(4−メトキシフェニル)アセチル1−1,3−オキサゾリジン−2−オン(2.5g、7.68mmol)の乾燥塩化メチレン(50mL)中溶液を−78℃に冷却して、ジイソプロピルエチルアミン(1.09g、8.45mmol)に続き四塩化チタン(0.88mL、8.06mmol)で処理した。得られた反応物を0℃に加温したところで、反応物が暗紫色に変わるまで1時間これを撹拌した。次に、この反応物を−78℃に再冷却し、別に分けておいた四塩化チタン(0.88mL、8.06mmol)に続きシクロヘキサノンの塩化メチレン(10mL)中溶液(0.91mL、8.83mmol)で処理した。添加後、反応物を0℃に加温したところで、これを2時間撹拌し、その後、重炭酸ナトリウムの飽和水性溶液を添加して反応物を慎重に急冷し、混合物を0℃にて30分間撹拌した。反応物を濾過して沈殿したチタニウム塩を除去し、濾過した層を分離した。水層を塩化メチレン(3×30mL)で洗浄した。次に固体沈殿物を回収し、2N塩酸水溶液(50mL)中で20分間勢いよく撹拌した後、水層から残りの生成物を塩化メチレン(3×60mL)で抽出し、(濾過物および遊離した塩から)結合した有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空濃縮した。生成物をBiotageTM Horizonクロマトグラフィー(FLASH 40M、シリカ、勾配10%酢酸エチル/ヘキサン〜45%酢酸エチル/ヘキサン)を介して精製し、無色の泡状物の(4S)−4−ベンジル−3−[(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(4−メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オン2.67g(82%)を得た。
【0072】
【化27】

0℃にて、(4S)−4−ベンジル−3−[(2R)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(4−メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オン(1.02g、2.4mmol)の4:1テトラヒドロフラン/水(25mL)中溶液を、水(1mL)中で過酸化水素(水中50%、0.59mL、9.6mmol)および水酸化リチウム一水和物(115mg、4.8mmol)を予備混合した溶液で滴下処理した。反応物を25℃にて2時間撹拌した後、テトラヒドロフランを真空蒸発させ、水層を2Nの水酸化ナトリウム水溶液(5mL)で処理した。水層を酢酸エチル(2×15mL)に続いて塩化メチレン(2×15mL)で抽出し、水層を2Nの塩酸水溶液でpH=2に酸性化した。生成物を酢酸エチル(3×50mL)で抽出し、結合した有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させて濃縮し、酢酸エチル/ヘキサンから再結晶化した白色固体を得て、(2R)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(4−メトキシフェニル)酢酸565mg(89%)を得た。
【0073】
【化28】

以下の超臨界流体クロマトグラフィー条件の下、分析用超臨界流体クロマトグラフィー法(Berger Instruments,Inc.[米国デラウエア州ニューアーク])を使用してラセミ体を比較し、エナンチオマー純度を測定した。
【0074】
カラム: Chiralpak AD−H、5μ、250mm×4.6mm ID(Chiral Technologies,Inc.[米国ペンシルベニア州エクストン])
カラム温度: 35℃
SFCモディファイヤー: 20% MeOH
流速: 2.0mL/分
吐出し風圧: 100bar
検出器: 220nm UV。
【0075】
(2R)(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(4−メトキシフェニル)酢酸(156mg、0.59mmol)の塩化メチレン(1mL)中溶液を、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(313mg、0.71mmol)およびジメチルアミン(テトラヒドロフラン中2.0M、1.5mL、2.95mmol)で処理した。反応物を25℃にて1.5時間撹拌した後、溶媒を蒸発させ、生成物をBiotageTM Horizonクロマトグラフィー(FLASH 25M、シリカ、勾配5%酢酸エチル/ヘキサン〜36%酢酸エチル/ヘキサン650mL超)を介して精製し、白色固体の(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル−2−(4−メトキシフェニル)−N,N−ジメチルアセトアミド160mg(93%)を得た。
【0076】
【化29】

(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(4−メトキシフェニル)−N,N−ジメチルアセトアミド(135mg、0.46mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(1mL)中溶液を、ホウ素溶液(テトラヒドロフラン中1.0M、1.02mL、1.02mmol)で処理した。反応物を75℃にて1.5時間加熱し、0℃に冷却し、2N塩酸水溶液で滴下処理した。次に反応物を75℃にて20分間加熱し、反応物を冷却し、テトラヒドロフランを真空除去した。得られた残渣を水(3mL)で希釈し、酢酸エチル(6mL)で洗浄した。次に、水層を2N水酸化ナトリウム水溶液でpH=10に塩基性化し、生成物を塩化メチレン(3×15mL)で抽出した。結合した有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空濃縮し、無色の油状物の(1S)−1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノールを得た。メタノール(0.5mL)中に油状物を溶解して飽和メタノール性塩酸溶液で処理し、続いて十分量のジエチルエーテルで再結晶化させて、白色固体のS−1[2−(ジメチルアミノ)−1−(4−メトキシフェニル)エチル]シクロヘキサノール塩酸塩127mg(88%)を得た。
【0077】
【化30】

(Yardley, JohnP.; Husbands, G.E.Morris; Stack, Gary; Butch, Jacqueline; Bicksler, James; Moyer, John A.; Muth, Eric A.; Andree, Terrance; Fletcher, Horace, IIIら、J.Med.Chem.1990,33(10), 2899−905([α]25=−4°、c=0.095g/mL、EtOH)、エナンチオマー過剰率>99%。超臨界流体クロマトグラフィー条件の下、以下の分析用超臨界流体クロマトグラフィー法(Berger Instruments,Inc.[米国デラウエア州ニューアーク)を使用してラセミ体を比較し、エナンチオマー純度を測定した。
【0078】
カラム: Chiralpak AD−H、5μ、250mm×4.6mm ID(Chiral Technologies,Inc.[米国ペンシルベニア州エクストン)
カラム温度: 35℃
SFCモディファイヤー: 100% EtOH(0.1% DEA含有)
流速: 2.0mL/分
吐出し風圧: 100bar
検出器: 220nm UV。
【0079】
(実施例2 1−[{(1S)−2−[シス−3,5−ジメチルピペラジン−1−イル]−1−3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}−シクロヘキサノールの合成)
実施例1に記載した工程とほぼ同じ工程を使用し、アミン、すなわち、ジメチルアミンよりも2,6−ジメチルピペラジンに置換される適切な出発原料および4−メトキシフェニル酢酸の代わりにフェニル酢酸、すなわち、3−(トリフルオロメトキシ)フェニル酢酸を使用して、本化合物を調製した。その他の工程の変更は、本実施例に記載の通りである。
【0080】
A.(4S)−4−ベンジル−3−{[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリジン−2−オンの合成
(4S)−4−ベンジル−3−{[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリジン−2−オンを形成する2通りの方法を検討した。
【0081】
最適化したプロセス条件(全試薬をそれぞれ1当量)を使用して(4S)−4−ベンジル−3−{[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリジン−2−オンを調製する2通りの反応物5gを検討した。EtN媒介混合無水物の工程を使用すると、クロマトグラフィーにより分離した(4S)−4−ベンジル−3−{[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリジン−2−オン5.75g(分析純度69.6%)が得られた。さらに、NaH媒介混合無水物をこの工程で使用すると、クロマトグラフィーにより分離した(4S)−4−ベンジル−3−{[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリジン−2−オン5.16g(分析的純度、63.1%)が得られた。NaH媒介混合無水物は水素ガスを産生するのに対して、EtN媒介混合無水物の工程は、−78℃にてリチウムキラル補助試薬と反応しないとされる不均一混合物を作り出すトリエチル塩化アンモニウムを沈殿させる条件を使用する。
【0082】
EtN媒介混合無水物の工程からは、NaH媒介混合無水物の工程よりもわずかに純度が高く、透明な生成物が得られた(69.6%対63.1%)。
【0083】
B.チタン媒介アルドール濃縮
チタン媒介アルドール濃縮により、(4S)−4−ベンジル−3−{(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリジン−2−オンを合成した。反応時間を短縮させると、参考文献とは対照的に、出発原料と生成物との良好な割合(17:83対35:65)が得られることが判明した。クロマトグラフにおいて純粋な出発原料を使用することも重要であった。さらに、本実施例は、最終pHが3.0未満または8.5ではなく6.0である急冷を例示している。(4S)−4−ベンジル−3−{(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリジン−2−オンを全量36.8g合成した。最終原料はシクロヘキサノンを2.7%〜5.5%含有しており、次の工程ではこれ以上最終原料を精製せずに使用した。
【0084】
以下の実験は、これらの結論を裏付けるデータの一部を説明するものである。
【0085】
メカニカルスターラー、窒素送込管、およびセプタムを取り付けた2Lの三つ口ネックフラスコに、塩化メチレン(344mL)中の(4S)−4−ベンジル−3−[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリジン−2−オン(19.56g、51.6mmol)を入れた。窒素下で反応物を静置し、−78℃に冷却した。15分後、ジイソプロピルエチルアミン(9.89mL、56.8mmol)に続いて四塩化チタン(5.94mL、54.18mmol)を添加した。塩化メチレンの1M溶液よりも純TiClが好まれた。5分後、紫色の反応混合物を0℃にて20分間撹拌した。
【0086】
紫色反応混合物を−78℃に再冷却した。15分後、四塩化チタン(5.94mL、54.18mmol)に続いてシクロヘキサノン(6.4mL、61.9mmol)を添加した。総添加時間は5分であった。氷浴に紫色の反応混合物を静置したところ、8分後に溶液は紫色が退色し、褐色を帯びてきた。さらに7分後(総時間は0℃にて15分間)、反応物を氷(500g)、リン酸二水素カリウム(74g)、重炭酸ナトリウム(23g)、水(1L)および酢酸エチル(800mL)の撹拌溶液に注いだ。勢いよく撹拌した後、内部温度は5.7℃であり、水溶液のpHは6.0であったが、すぐに3.0に低下した。追加の重炭酸ナトリウム(20.8g)を添加してpH6.0を維持した。内部温度は6.4℃である。溶液を分液漏斗に注ぎ、勢いよく振盪させた。濁りのある水層を除去し、濁りのある酢酸エチル層を塩水(300mL)で洗浄してから乾燥させた(硫酸ナトリウム)。濁りのある酢酸エチル層を、CeliteTMパッドまたはWhatman I濾紙に通し、溶媒を減圧除去した。粗原料26gをヘキサン中10%酢酸エチル(画分1〜5、1.8L分)とともに2Lブフナー漏斗内のシリカゲル充填物(1kg)に通し、次に20%酢酸エチル入りヘキサン(画分6、1.8L分)とともに通した。画分2〜5からは油状物15.58g(63%)が得られ、シクロヘキサノン生成物2.7%を含有していた。次の工程では、この材料をこれ以上精製せずに使用した。
【0087】
C.加水分解反応
キラル(S)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノンをリチウムヒドロペルオキシド加水分解することにより、(2R)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]酢酸を合成した。(4S)−4−ベンジル−3−{[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリジン−2−オン25.5gから、(2R)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]酢酸の全量14.9gを合成した。
【0088】
以下の実験は、これらの結論を裏付けるデータの一部を説明するものである。
【0089】
磁気撹拌子、窒素送込アダプター、温度計およびペリスタルティックポンプ入口を取り付けた2Lの三口ネックフラスコに、THF(142mL)中の(4S)−4−ベンジル−3−{(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アセチル}−1,3−オキサゾリジン−2−オン(13.56g、28.4mmol)を入れた。反応物を窒素下で静置し、0℃に冷却した(氷/乾燥氷浴)。
【0090】
内部温度が0.5℃に達したところで、水酸化リチウム一水和物(1.19g、28.4mmol)およびH水(56.8mL)を0.3mL/分の割合で添加した。添加は3時間で完了した。さらに45分間反応を撹拌した(内部温度は1℃)。CHCN(1mL)中の反応混合物(0.1mL未満)を希釈することにより、アリコートを断続的に採取した(表を参照)。
【0091】
【化31】

230nmで見えるピーク;副産物は254nmよりも230nmの方がよく見えた。
【0092】
硫酸ナトリウム(63g)が入った水(500mL)および氷(200g)の撹拌溶液に、冷たい反応混合物を少しずつ注いだ。内部温度は1℃から26℃に上昇した。低温に保つため、氷(200g)を加えた。水性溶液の最終pHは8.5であった。一実施形態において、過酸化水素の量は、10当量から4当量まで減らして、発熱反応を減少させてもよい。
【0093】
水性溶液を塩化メチレン(400mL)で抽出した。現時点でキラル補助剤を含有したわずかに不透明な塩化メチレン層を除去した。水層をビーカーに注ぎ、固体クエン酸一水和物(59.7g)でpH3に酸性化してから、酢酸エチル(400mL)で抽出した。
【0094】
硫酸ナトリウムで酢酸エチル層を乾燥させた後、減圧下で溶媒を濾過して除去したところ、油状物9.27gが得られた。H NMRは、所望の生成物ならびにクエン酸、酢酸および酢酸エチルの存在を示した。塩化メチレン(80mL)中で油状物を取り、室温に静置して、クエン酸の針状結晶を析出させた。
【0095】
12時間後、塩化メチレン溶液をろ過し、減圧濃縮し、真空ポンプの上に一晩放置して、酢酸エチルおよび酢酸の残渣を除去した。これにより(2R)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]酢酸7.9g(87.8%)が得られ、もう一方の12gを反応させて得られた7g(87.5%)と合わせた。
【0096】
D.アミノ化反応:
ある実験では、室温にて、塩化メチレン(150mL)中の(R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(3−(トリフルオロメトキシ)フェニル)酢酸(20.0g、62.9mmol)およびシス−2,6−ジメチルピペラジン(7.17g、62.9mmol)の混合物に、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(41.73g、94.35mmol)およびトリエチルアミン(88mL、630mmol)を添加した。18時間撹拌した後、混合物を真空濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン中50〜100%酢酸エチル)にかけて精製し、1−(3,5−ジメチル−ピペラジン−1−イル)−2−(R)−(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−2−(3−トリフルオロメトキシ−フェニル)−エタノン(24.3g、93%)を得た。
【0097】
【化32】

E.還元反応
1−(3,5−ジメチル−ピペラジン−1−イル)−2−(R)−(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−2−(3−トリフルオロメトキシ−フェニル)−エタノン(24.7g、59.6mmol)のTHF(140mL)中溶液に、BHを添加した。THF(300mL、IM、300mmol)。得られた混合物を22時間加熱還流した。比較的小規模の場合、この反応は約2時間しかかからない。冷却後、2NのHCl水溶液(500mL)を混合物に添加した。1時間の加熱還流後に、混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(300mL)で抽出した。水相を50%NaOHでpH=12に塩基性化し、酢酸エチル(4×400mL)で抽出した。有機抽出物をNaSOで乾燥させ、真空濃縮し、粗い1−{(1S)−2−[シス−3,5−ジメチルピペラジン−1−イル]−1−[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}−シクロヘキサノール(14.6g、61%)を提供した。
【0098】
粗い1−[{(1S)−2−[シス−3,5−ジメチルピペラジン−1−イル]−1−[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}−シクロヘキサノール(11.4g)に、EtOH(プルーフ200、140mL)を添加した。若干の不溶性原料を濾過により除去した。室温にて、エーテル(75mL)中2NのHClを、得られた透明溶液に滴下した。緩徐に形成された結晶を濾過により回収し、まずEtOHとEtOAcの混合物で洗浄した後、ヘプタンで洗浄して、1−{(1S)−2−[シス−3,5−ジメチルピペラジン−1−イル]−1−[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}−シクロヘキサノール(8.2g、HPLC純度95.23%)を得た。
【0099】
上述の材料をEtOH(80mL、プルーフ200)中で1時間加熱還流した。冷却の際に、混合物を濾過して純度97.43%の1−{(1S)−2−[シス−3,5−ジメチルピペラジン−1−イル]−1−[3−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エチル}−シクロヘキサノールを得た。この材料を、EtOH(80mL、プルーフ200)中で1時間以上加熱還流した。冷却時に、混合物を濾過して生成物(6.9g、HPLC純度99.1%、HPLCキラル純度100%)を得た。
【0100】
本明細書で引用する刊行物はいずれも、参考として本明細書で援用される。以上では特に好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で変更可能であることが理解されるであろう。このような変更は、添付の特許請求の範囲に含まれるものとして意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:
【化1】

(式中、Xはメトキシまたはトリフルオロメトキシである)
を有する(4Sまたは4R)−4−ベンジル−3−[(2Rまたは2S)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンの立体選択的合成プロセスであって、
対応するアニオンを形成することができる条件下において、塩素化溶媒中で、非プロトン性アミン塩基および四塩化チタンにより、
構造:
【化2】

(式中、Xはメトキシまたはトリフルオロメトキシである)
を有する(4Sまたは4R)−4−ベンジル−3−[(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを処理する工程;および
アルドール反応が可能な条件下において、該対応するアニオンを四塩化チタンおよびシクロヘキサノンと混合して、該(4Sまたは4R)−4−ベンジル−3−[(2Rまたは2S)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを形成する工程
を含む、
プロセス。
【請求項2】
前記(4Sまたは4R)−4−ベンジル−3−[(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンが、(4Sまたは4R)−4−ベンジル−3−[(トリフルオロメトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記非プロトン性アミン塩基がジイソプロピルエチルアミンである、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記塩素化溶媒が塩化メチレンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
構造:
【化3】

を有する化合物。
【請求項6】
構造:
【化4】

(式中、XはOCHまたはOCFであり、RおよびRはそれぞれC〜Cアルキルから独立して選択されるか、あるいはそれらが結合する窒素と一緒になって、0〜2個のメチル基で置換される1,4−ピペラジン環を形成する)
を有する2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンまたはその塩のエナンチオマーの立体選択的合成プロセスであって、
(a)構造:
【化5】

(式中、XはOCHまたはOCFである)
を有する(4Sまたは4R)−4−ベンジル−3−[(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを形成する条件下において、(S)−または(R)−4−ベンジル−1,3−オキサゾリジン−2−オンをメトキシフェニル酢酸の混合無水物と反応させる工程;
(b)対応するアニオンを形成することができる条件下において、塩素化溶媒中で、非プロトン性アミン塩基および四塩化チタンにより該(4S)−または(4R)−4−ベンジル−3−[(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを処理する工程;
(c)アルドール反応が可能な条件下において、該対応するアニオンを四塩化チタンおよびシクロヘキサノンと混合して、式:
【化6】

(式中、XはOCHまたはOCFである)
を有する対応する(4S)−または(4R)−4−ベンジル−3−[(2Rまたは2S)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを形成する工程;
(d)該(4S)−または(4R)−4−ベンジル−3−[(2Rまたは2S)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(メトキシフェニル)アセチル]−1,3−オキサゾリジン−2−オンを加水分解して、式:
【化7】

(式中、XはOCHまたはOCFである)
を有するキラル(2Rまたは2S)−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−メトキシフェニル)酢酸を形成する工程;
(e)該キラルフェニル酢酸を第二級アミンNRでカップリングして、式:
【化8】

(式中、XはOCHまたはOCFであり、RおよびRはそれぞれC〜Cアルキルから独立して選択されるか、あるいはそれらが結合する窒素と一緒になって0〜2個のメチル基で置換される1,4−ピペラジン環を形成する)
を有するアミドを形成する工程;
(f)該アミドを還元して、(S)−または(R)−2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンを形成する工程;ならびに
(g)場合により該遊離塩基をその塩に変換する工程
を含む、プロセス。
【請求項7】
前記反応工程(a)が、−78℃〜20℃の温度にて、メトキシフェニル酢酸の混合無水物をベンジル−1,3−オキサゾリジン−2−オンのリチウムアニオンと反応させることを含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
工程(b)の前記塩基がジイソプロピルエチルアミンである、請求項6または7に記載のプロセス。
【請求項9】
工程(b)の前記塩素化溶媒が塩化メチレンである、請求項6〜8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記カップリング工程(e)が、塩素化溶媒中の塩基の存在下で、前記キラルフェニル酢酸をベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)とカップリングすることを含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記還元工程(f)が、55℃〜85℃の温度にて、テトラヒドロフラン中のホウ素を使用して工程(e)により形成されたアミドを還元して、ホウ素錯体を形成し、該ホウ素錯体を解離して、2−フェニル−2−(1−ヒドロキシシクロアルキル)エチルアミンのエナンチオマーを得ることを含む、請求項6〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
Xが4−メトキシである、請求項6〜11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
Xが3−トリフルオロメトキシである、請求項6〜11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
式:
【化9】

(式中、XはOCHまたはOCFである)
を有する化合物であって、他のエナンチオマーを実質的に含まない、化合物。
【請求項15】
(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(4−メトキシフェニル)酢酸および(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(3−トリフルオロメトキシフェニル)酢酸からなる群から選択される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
式:
【化10】

(式中、XはOCHまたはOCFであり、RおよびRはそれぞれC〜Cアルキルから独立して選択されるか、あるいはそれらが結合する窒素と一緒になって0〜2個のメチル基で置換される1,4−ピペラジン環を形成する)
を有する化合物であって、他のエナンチオマーを実質的に含まない、化合物。
【請求項17】
(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(4−メトキシフェニル)−N,N−ジメチルアセトアミド、および(2R)−2−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−(3−トリフルオロメトキシフェニル)−N,N−ジメチルアセトアミドからなる群から選択される、請求項16に記載の化合物。

【公表番号】特表2009−518407(P2009−518407A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544423(P2008−544423)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/046291
【国際公開番号】WO2007/067501
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】