説明

耐熱性樹脂前駆体組成物の製造方法および耐熱性樹脂前駆体組成物用モノマーの製造方法

【課題】塩素イオンの含有量の少ない耐熱性樹脂前駆体組成物ならびに感光性耐熱性樹脂前駆体組成物の合成方法を提供すること。
【解決手段】一般式(1)で表される酸無水物を合成する際に、その原料であるトリカルボン酸一無水一塩化物とヒドロキシジアミノ化合物を、ナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量が1重量%以下である金属酸化物および/または金属炭酸塩を用いて脱塩酸し、その後、該酸無水物と一般式(2)で表されるジアミン化合物を反応させることを特徴とする耐熱性樹脂前駆体組成物の製造方法。




(式中、R7,R9は炭素数2から20の3価の有機基、R8は炭素数2から20の3価の有機基、qは1から4までの整数である。)




(式中、R10は炭素数2から30の2価の有機基である。)

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は半導体の表面保護膜として有用な感光性耐熱性樹脂前駆体組成物に関するもので、さらに水系の現像液で短時間に現像できる感光性耐熱性樹脂前駆体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、耐熱性ポジ型感光性樹脂としてフェノール性水酸基を有したポリアミド樹脂にナフトキノンジアジド化合物を添加したもの、フェノール性水酸基を有したポリアミド酸、あるいはポリアミド酸エステルにナフトキノンジアジド化合物を添加したもの、あるいはカルボキシル基を有したジアミンとジカルボン酸ジエステルを反応させたポリアミド酸エステルにナフトキノンジアジド化合物を添加したものが、露光部が溶解するポジ型の感光性耐熱性材料として注目を受けている。ここで、フェノール性水酸基を有したポリアミド樹脂、フェノール性水酸基を有したポリアミド酸エステル、カルボキシル基を有したジアミンとジカルボン酸ジエステルを反応させたポリアミド酸エステル化合物を合成する場合、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの双極性非プロトン性溶媒中、アミノフェノール化合物やカルボン酸ジアミン化合物と酸塩化物や酸エステル酸塩化物を、トリエチルアミンやピリジンのような3級アミンを脱塩酸剤として使用し反応させるのが一般的な合成法である。
【0003】
しかしながら、このような合成法においては、特にアミド基とフェノール性の水酸基が近接したポリヒドロキシアミド樹脂、ポリヒドロキシアミドアミド酸エステルを合成する場合、アミンあるいはアミンと塩酸により生成したアミンの塩酸塩が、アミド結合や水酸基と強固な水素結合を形成するために、得られる該化合物に塩素などのイオン性の不純物が多くなるという問題があった。
【0004】
この点を改良するために、イオン交換樹脂を脱塩酸剤として使用する方法が提案されている(例えば、特開平8−269198号公報)。しかしながら、イオン交換樹脂を脱塩酸剤として使用した場合、目的とするポリマーがイオン交換樹脂に吸着され収率が低下するという問題があった。
【0005】
また、別の合成方法として、塩化物を使用しない合成方法が提案されている。すなわち、ジカルボン酸化合物とジアミン化合物をジシクロヘキシルカルボジイミドなどの脱水縮合剤を使用し反応させる方法が提案されている(例えば、特開昭60−228537号公報)。
【0006】
しかしながら、ジシクロヘキシルカルボジイミドは、皮膚刺激性があるなどの問題があること、脱水反応の副生成物であるジシクロヘキシルウレア化合物がポリマー内に残存しやすいなどの問題があった。この問題を解決するため、その他の脱水縮合剤が数々報告されている(例えば、”生化学実験講座1 タンパク質の化学IV”、日本化学会編、東京化学同人(1977))。しかし、このような化合物は高価であり、工業的には適用しにくい問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
かかる状況を鑑み、本発明は、ポリマーのアミド結合や水酸基との相互作用が低い脱塩酸工程を確立することを目的とする。本発明により、得られるポリマーの塩素イオン濃度が低く、かつ反応収率が高い感光性耐熱性樹脂前駆体組成物、およびこれに用いるモノマー類の製造方法を提供することができる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明は、以下の構成をその骨子とする。すなわち、本発明は、一般式(1)で表される構造単位を主成分とするポリマーの製造工程において、一般式(2)で表される酸無水物を合成する際に、その原料であるトリカルボン酸塩化物とヒドロキシジアミノ化合物を反応させるときに、ナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量が1重量%以下である金属酸化物および/または金属炭酸塩を用いて脱塩酸し、その後、該酸無水物と一般式(3)で表されるジアミン化合物を反応させることを特徴とする耐熱性樹脂前駆体組成物の製造方法である。
【0009】
【化14】



【0010】
(式中、R1,R3は炭素数2から30の3価の有機基、R2は炭素数2から30の3価から6価の有機基、R4は炭素数2から30の2価の有機基、R5,R6はそれぞれ炭素数1から20までの有機基または水素原子。mは1から100000までの整数、nは1。pは1から4までの整数である。)
【0011】
【化15】



【0012】
(式中、R7,R9は炭素数2から30の3価の有機基、R8は炭素数2から30の3から6価の有機基、qは1から4までの整数である。)
【0013】
【化16】



【0014】
(式中、R10は炭素数2から30の2価の有機基である。)
また、本発明は、一般式(8)で表される構造単位を主成分とするポリマーの製造工程において、特定のジカルボン酸二塩化物と特定のヒドロキシジアミノ化合物を反応させるときに、ナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量が1重量%以下である金属酸化物および/または金属炭酸塩を用いて脱塩酸させることを特徴とする。
【0015】
【化17】



【0016】
(式中、R22は炭素数2から30の2価の有機基、R23は炭素数2から30の3価から6価の有機基、nは1から100000までの整数、wは1から4までの整数を表す。)
また、本発明は、一般式(11)で表される構造単位を主成分とするポリマーの製造工程において、特定のテトラカルボン酸ジエステル二塩化物と特定のジアミン化合物を反応させるときに、ナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量が1重量%以下である金属酸化物を用いて脱塩酸させることを特徴とする。
【0017】
【化18】



【0018】
(式中、R26は炭素数2から30の3価または4価の有機基、R27は、炭素数2から30の2価の有機基、R28は炭素数1から20までの有機基または水素原子、oは1から100000までの整数、yは1または2を表す。)
また、本発明は、特定の構造を有するヒドロキシジアミノ化合物を合成する際に、ナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量が1重量%以下である金属酸化物および/または金属炭酸塩を用いて脱塩酸し、その後、還元処理にてヒドロキシジアミノ化合物を得ることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、一般式(4)で表される酸無水物を合成する際に、その原料であるトリカルボン酸一無水一塩化物とヒドロキシジアミノ化合物を反応させるときに、ナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量が1重量%以下である金属酸化物および/または金属炭酸塩を用いて脱塩酸することを特徴とする。
【0020】
【化19】



【0021】
(式中、R11、R13は炭素数2から30の3価の有機基、R12は炭素数2から30の3価の有機基、rは1から4までの整数である。)
【0022】
【本発明の実施の形態】
本発明において、一般式(1)で表されるポリマーはポリヒドロキシアミド−アミド酸交互共重合体の構造を示している。一般式(1)で表されるポリマーは、一般式(2)で表される酸無水物と一般式(3)で表されるジアミン化合物とを縮合反応させることで得ることができる。
【0023】
【化20】



【0024】
(式中、R1,R3は炭素数2から30の3価の有機基、R2は炭素数2から30の3価から6価の有機基、R4は炭素数2から30の2価の有機基、R5,R6はそれぞれ炭素数1から20までの有機基または水素原子。mは1から100000までの整数、nは1。pは1から4までの整数である。)
【0025】
【化21】



【0026】
(式中、R7,R9は炭素数2から30の3価の有機基、R8は炭素数2から30の3から6価の有機基、qは1から4までの整数である。)
【0027】
【化22】



【0028】
(式中、R10は炭素数2から30の2価の有機基である。)
一般式(2)で表される酸無水物としては、例えば、以下の化合物などを挙げることができる。
【0029】
【化23】



【0030】
一般式(3)で表されるジアミン化合物としては、例えば、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジジアミノ安息香酸、ビス(アミノフェニル)プロパン、ビス(アミノフェニルヘキサフルオロプロパン、ビス(アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(アミノフェノキシフェニル)、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼンなどの芳香族ジアミン、ヘキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン、エチレンジアミン、シクロヘキサシルジアミン、メチレンビス(アミノシクロヘキサン)などの脂肪族ジアミンなどを挙げることができる。
【0031】
ここで、一般式(1)で表される構造単位を主成分とするポリマーとは、ポリマー成分中に該構造単位を50モル%以上含有することを言い、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。その他の成分には特に制限はなく、公知の共重合成分などを使用することができる。
【0032】
本発明では、トリカルボン酸一無水一塩化物とヒドロキシジアミノ化合物の反応で副成する塩酸を除去する脱塩酸剤として、金属酸化物および/または金属炭酸塩を用いる。このことで、塩酸を金属塩化物の形で除去することが出来る。金属塩化物は、アミド基、フェノール性水酸基との相互作用がほとんどなく、目的のフェノール性水酸基を有したテトラカルボン酸二無水物を高い収率と高い純度で得ることが出来る。
【0033】
本発明で使用する金属酸化物の例としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ビスマス、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化ガドリニウム、酸化ランタン、酸化イットリウムなどを挙げることが出来る。これらの中で特に好ましい金属酸化物として、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウムを挙げることができる。
【0034】
また、金属炭酸塩の例としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、、炭酸ビスマス、炭酸バリウム、炭酸ガリウム、炭酸ガドリニウム、炭酸ランタン、炭酸イットリウム、などを挙げることが出来る。これらの中で特に好ましい金属炭酸塩として、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムを挙げることができる。
【0035】
ナトリウム、カリウム、亜鉛、リチウム、鉄、ニッケル、クロム、銅、マンガン、カドニウム、アンチモンなどの酸化物、炭酸塩は、ポリマーに取り込まれると、耐熱性樹脂組成物被膜の絶縁特性に悪影響を与えたり、耐熱性樹脂組成物被膜に接する半導体素子に悪影響を与える。したがって、これらの含有量は、本発明の効果を損なわない範囲にする必要がある。具体的には、1重量%以下である必要があり、好ましくは0.5重量%以下であり、特に好ましくは100ppm以下である。これらの元素の含有量の測定は、公知の方法を使用することができる。例えば、原子吸光光度計を用いて好ましく測定される。
【0036】
本発明で使用する金属酸化物と金属炭酸塩の合計量は、発生する塩酸に対して当量以上加えるのが好ましい。当量未満では、発生する塩酸を完全には除去できない。さらに好ましくは2倍当量以上加えることである。生成する塩酸を除去するという目的から、なるべく多量に加えることが望ましいが、20倍当量以上加えると、カルボン酸との副反応が起こり、得られる目的物の収率が低下する恐れがある。このような点より、金属酸化物と金属炭酸塩の合計添加量は、トリカルボン酸一無水一塩化物1モルに対して、当量以上20倍当量以下が好ましく、さらに好ましくは2倍当量以上15倍当量以下である。
【0037】
このようにして得た、一般式(2)で表される水酸基含有酸二無水物と一般式(3)で表されるジアミン化合物を、例えば、N−メチルピロリドン、ガンマブチロラクトン、ジメチルアセトアミドなどの極性溶媒中、あるいは、これらにアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒やテトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒などを加えた混合溶媒中、−10℃〜100℃の範囲で反応させることで、一般式(1)で表されるポリマーを得ることが出来る。
【0038】
また、一般式(1)で表されるポリマーの前駆体は、一酸無水物一酸塩化物2当量とヒドロキシジアミノ化合物1当量を、金属酸化物および/または金属炭酸塩の存在下に反応させ、この溶液にジアミン化合物約1当量を反応させることでも作製することが出来る。ここで、一酸無水物一酸塩化物としては、一般式(14)で表される構造のものが好ましく使用される。具体的には、無水トリメリット酸塩化物を典型的なものとして挙げることが出来るが、トリカルボン酸の2つのカルボキシル基が酸無水物化して残りのカルボン酸が酸塩化物の形になっているものであれば、使用することが出来る。
【0039】
【化24】



【0040】
(式中、R32は炭素数2から30の3価の有機基を表す)。
【0041】
次に一般式(4)で表される酸無水物の合成について記載する。
【0042】
【化25】



【0043】
(式中、R11、R13は炭素数2から30の3価の有機基、R12は炭素数2から30の3価の有機基、rは1から4までの整数である)。
【0044】
一般式(4)で表される酸無水物を合成する際に、その原料であるトリカルボン酸一無水一塩化物とヒドロキシジアミノ化合物を反応させるときに、金属酸化物および/または金属炭酸塩を用いて脱塩酸する。
【0045】
ここで、トリカルボン酸一無水一塩化物としては、例えば、トリメリット酸クロリドなどが挙げられれる。
【0046】
また、ヒドロキシジアミノ化合物としては、例えば、ビス(アミノフェニル)プロパン、ビス(アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(アミノフェニル)スルホン、ビス(アミノフェニル)シクロヘキサン、ビス(アミノフェニル)シクロペンタン、ジアミノフェノール、ジアミノジヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。
【0047】
次に一般式(5),(6),(7)のいずれかの構造を有するヒドロキシジアミノ化合物の合成について記載する。
【0048】
【化26】



【0049】
(式中、R14、R16は炭素数2から30の3価から6価の有機基、R15は炭素数2から30の2価の有機基、s,tは1から4までの整数である。)
【0050】
【化27】



【0051】
(式中、R17は炭素数2から30の3価から6価の有機基、R18は炭素数2から30の2価の有機基、uは1から4までの整数である。)
【0052】
【化28】



【0053】
(式中、R19、R21は炭素数2から30の2価の有機基、R20は炭素数2から30の3価から6価の有機基、vは1から4までの整数である)。
【0054】
一般式(5),(6),(7)で表されるいずれかの構造を有するヒドロキシジアミノ化合物の合成は、一般式(5)の場合、原料であるニトロヒドロキシアミンとジカルボン酸二塩化物を金属酸化物および/または金属炭酸塩の存在下に脱塩酸反応を行い、ヒドロキシジニトロ体を合成する。ついで、パラジウム−炭素の存在下に水素を用いる接触還元法、塩化スズと塩酸による還元、ヒドラジンによる還元などの一般的な方法で還元することで、ヒドロキシジアミノ化合物を得ることができる。
【0055】
このようなニトロヒドロキシアミンとしては、ニトロアミノフェノール、ニトロアミノヒドロキシピリジン、ニトロアミノナフトールなどや、これらのアルキル基、ハロゲン原子置換体が好ましい。さらに、アミノ基とフェノール基は隣り合った位置にあることがより好ましい。ジカルボン酸二塩化物としては、イソフタル酸ジクロリド、テレフタル酸ジクロリド、ジフェニルスルホンカルボン酸ジクロリド、ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド、ベンゾフェノンジカルボン酸ジクロリド、ナフタレンジカルボン酸ジクロリド、ヘキサフルオロプロパンジフェニルジカルボン酸ジクロリド、ジフェニルプロパンジカルボン酸ジクロリド、およびこれらのアルキル基やハロゲン基が置換されたものが好ましい具体的な例として挙げることができる。
【0056】
一般式(6)の場合、原料であるニトロヒドロキシアミンとニトロカルボン酸塩化物を金属酸化物または金属炭酸塩の存在下に脱塩酸反応を行い、ヒドロキシジニトロ体を合成する。ついで、パラジウム−炭素の存在下に水素を用いる接触還元法、塩化スズと塩酸による還元、ヒドラジンによる還元など一般的な方法で還元することで、ヒドロキシジアミノ化合物を得ることができる。
【0057】
このようなニトロヒドロキシアミンとしては、ニトロアミノフェノール、ニトロアミノヒドロキシピリジン、ニトロアミノナフトールなどや、これらのアルキル基、ハロゲン原子置換体が好ましい。さらに、アミノ基とフェノール基は隣り合った位置にあることがより好ましい。また、ニトロカルボン酸塩化物の例としては、ニトロ安息香酸クロリド、ニトロナフタレンカルボン酸クロリド、およびこれらのアルキル基、ハロゲン原子にて置換した化合物などの芳香族ニトロカルボン酸塩化物化合物を挙げることができる。
【0058】
一般式(7)の場合、原料であるニトロカルボン酸塩化物とヒドロキシジアミンとを金属酸化物または金属炭酸塩の存在下に脱塩酸反応を行い、ヒドロキシジニトロ体を合成する。ついで、パラジウム−炭素の存在下に水素を用いるか、塩化スズと塩酸など一般的な方法で還元ずることで、ヒドロキシジアミノ化合物を得ることができる。
【0059】
ニトロカルボン酸塩化物としては、ニトロ安息香酸クロリド、ニトロナフタレンカルボン酸クロリド、およびこれらのアルキル基、ハロゲン原子にて置換した化合物などの芳香族ニトロカルボン酸塩化物化合物を挙げることができる。
【0060】
ヒドロキシジアミノ化合物の例としては、ヒドロキシジアミノベンゼン、ジヒドロキシジアミノベンゼン、トリヒドロキシジアミノベンゼン、テトラヒドロキシジアミノベンゼン、ビス(アミノ−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(アミノ−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(アミノ−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(アミノ−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(アミノ−ヒドロキシフェニル)カルボニル、ビス(アミノ−ヒドロキシフェニル)メチレン、ジアミノヒドロキシピリミジンや、これらのアルキル基やハロゲン原子で置換された化合物を好ましい具体的な例として挙げることができる。特にヒドロキシ基とアミノ基は隣り合う位置にあることが望ましい。このような位置関係にあることで、パターン形成後の熱処理中に、アミノ基がカルボン酸クロリドと反応して生成したアミド基と水酸基が脱水反応をすることで、オキサゾール環となるために得られる耐熱ポリマーの吸水性、機械特性が向上する。
【0061】
次に一般式(8)で表される構造単位を主成分とするポリマーについて記載する。ここで主成分とは50モル%以上であることを言い、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。その他の成分は特に限定されず、公知の共重合成分、添加剤等を用いることができる。
【0062】
一般式(8)で表されるポリマーは、ポリヒドロキシアミドといわれるものである。このポリマーの前駆体は、一般式(9)に示されたようなジカルボン酸二塩化物と一般式(10)に示されたヒドロキシジアミノ化合物の脱塩酸反応により得ることが出来る。
【0063】
【化29】



【0064】
(式中、R22は炭素数2から30の2価の有機基、R23は炭素数2から30の3価から6価の有機基、nは1から100000までの整数、wは1から4までの整数を表す。)
【0065】
【化30】



【0066】
(式中、R24は炭素数2から30の2価の有機基である。)
【0067】
【化31】



【0068】
(式中、R25は炭素数2から30の3価から6価の有機基、xは1から4までの整数を表す。)
一般式(9)で示されるジカルボン酸二塩化物としては、イソフタル酸ジクロリド、テレフタル酸ジクロリド、ジフェニルスルホンカルボン酸ジクロリド、ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド、ベンゾフェノンジカルボン酸ジクロリド、ナフタレンジカルボン酸ジクロリド、ヘキサフルオロプロパンジフェニルジカルボン酸ジクロリド、ジフェニルプロパンジカルボン酸ジクロリド、およびこれらのアルキル基やハロゲン基が置換されたものが好ましい具体的な例として挙げることができる。また、これ以外の脂肪族ジカルボン酸塩化物であるアジピン酸塩化物などを少量加えて変性することもできる。また、ピロメリット酸ジエチルエステル二カルボン酸塩化物などのテトラカルボン酸のジエステル二酸塩化物なども使用することが出来る。
【0069】
一般式(10)で表されるヒドロキシジアミノ化合物としては、ヒドロキシジアミノベンゼン、ジヒドロキシジアミノベンゼン、トリヒドロキシジアミノベンゼン、テトラヒドロキシジアミノベンゼン、ビス(アミノ−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(アミノ−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(アミノ−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(アミノ−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(アミノ−ヒドロキシフェニル)カルボニル、ビス(アミノ−ヒドロキシフェニル)メチレン、ジアミノヒドロキシピリミジンや、これらのアルキル基やハロゲン原子で置換された化合物を好ましい具体的な例として挙げることができる。特にヒドロキシ基とアミノ基は隣り合う位置にあることが望ましい。このような位置関係にあることで、パターン形成後の熱処理中に、アミノ基がカルボン酸塩化物と反応して生成したアミド基と水酸基が脱水反応をすることで、オキサゾール環となるために得られる耐熱ポリマーの吸水性、機械特性が向上する。
【0070】
ジカルボン酸二塩化物とヒドロキシジアミノ化合物との反応で用いる脱塩酸剤としては、前述した理由で金属酸化物および/または金属炭酸塩を用いる。金属酸化物と金属炭酸塩の添加総量については、ジカルボン酸二塩化物1モルに対して、当量以上20倍モル以下が好ましく、さらに好ましくは2倍モル以上15倍モル以下である。添加量が当量より少ないと反応により発生する塩酸の量より金属酸化物または金属炭酸塩が少ないために、反応が完全には進行せずに、塩素イオン濃度が相対的に高くなり、また、添加量が40倍モル量を越えると、金属酸化物または金属炭酸塩とアミノ基、カルボキシル基との副反応が生じ、収率が低下する傾向となる。
【0071】
次に一般式(11)で表される構造単位を主成分とするポリマーについて記載する。ここで主成分とは50モル%以上であることを言い、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上である。その他の成分は特に限定されず、公知の共重合成分、添加剤等を用いることができる。
【0072】
一般式(11)で表されるポリマーはポリアミド酸エステルと言われるものであり、一般式(11)は、ポリアミド酸エステルの構造を示している。
【0073】
一般式(11)で表されるポリマーの前駆体は、一般式(12)に示されたようなテトラカルボン酸ジエステル二酸塩化物と一般式(13)に示されたジアミン化合物の脱塩酸反応により得ることが出来る。
【0074】
【化32】



【0075】
(式中、R26は炭素数2から30の3価または4価の有機基、R27は、炭素数2から30の2価の有機基、R28は炭素数1から20までの有機基または水素原子、oは1から100000までの整数、yは1または2を表す。R26は好ましくは芳香族環を含有し、かつ、炭素数6〜50の3価または4価の基である。)
【0076】
【化33】



【0077】
(式中、R29は炭素数2以上30以下の3価または4価の有機基、R30は炭素数1から20までの有機基または水素原子、zは1または2である。)
【0078】
【化34】



【0079】
(式中、R31は炭素数2から30の2価の有機基である)。
【0080】
一般式(12)で表されるテトラカルボン酸ジエステル二酸塩化物としては、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ビス(フタル酸)ヘキサフルオロプロパンなどのジエステル二酸塩化物などが挙げることができる。
【0081】
一般式(13)で表されるジアミン化合物としては、例えば、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、アミノフェノキシベンゼン、ビス(アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパンなどを挙げることが出来る。
【0082】
一般式(11)について、さらに記載する。一般式(11)におけるR26は、3価から4価の炭素数2から30の有機基を表している。このような有機基として好ましいものは次のような有機基がある。
【0083】
【化35】



【0084】
一般式(11)で表される構造単位は、R26で表される骨格構造を有する酸無水物とR28に対応するアルコールをエステル化反応させ、その後、チオニルクロリド、オキシ塩化リンなどにより酸クロリドの形にしたものと、R27で表される骨格構造を有するジアミンとを反応させて製造することができる。ここで、、R28の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、エトキシメチル基、ブトキシメチル基、フェニル基などが挙げられる。
【0085】
また、一般式(11)で表されるポリマーをネガ型の感光性とする場合、R28は、不飽和結合を有する基とすることが必須である。このような基としては、例えば、下記式(15)、(16)、(17)、(18)に示すような基を挙げることが出来る。
【0086】
【化36】



【0087】
【化37】



【0088】
【化38】



【0089】
【化39】



【0090】
これらの不飽和結合を有する基は、単独で使用しても良いし、混合して使用しても良い。また、一般式(11)において、1から50モル%の割合でR26を水素原子とすることも出来る。
【0091】
また、R26成分としてイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸のような2価の基を共重合することもできる。このような2価の基をR26成分として使用する場合、R26成分として使用するのは全体の20モル%以下が好ましい。この範囲を外れると、熱処理後の膜の有機溶剤に対する耐性が低下するなどの問題が生じることがある。本発明において、R26成分は、ただ1種のみで構成されていても良いし、複数の組み合わせで構成されていても良い。
【0092】
また、R27成分に1、3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシリコーン系のジアミノ化合物、シクロヘキシルジアミンなどの脂肪族ジアミンなども、ジアミン成分の1から40モル%の範囲で使用する事が出来る。
【0093】
本発明の感光性耐熱性樹脂前駆体組成物を得るため、ポジ型にするためには、光酸発生剤を添加することが好ましい。光酸発生剤としては、ナフトキノンジアジドスルホン酸フェニルエステル化合物が好ましく使用される。ナフトキノンジアジドスルホン酸フェニルエステル化合物としては、テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、ビスフェノールAのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、没食子酸のナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、ナフトールのナフトキノンジアジドスルホン酸エステルなどの化合物を好ましく使用することが出来るが、これ以外のフェノール類のエステル、あるいはヒドロキシフタルイミド、ヒドロキシベンゾトリアゾールなどのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、ベンズアルドキシムなどのオキシム類とのナフトキノンジアジドスルホン酸エステルなどを使用することも出来る。また、ナフトキノンジアジドスルホン酸には、4位にスルホニル基が結合したものと5位にスルホニル基が結合したものがあり、本発明ではどちらの化合物でも使用することが出来る。また、その他の光酸発生剤として、トリフェニルスルホニウム塩、ジフェニルヨードニウム塩などを用いることもできるし、これらを混合して使用することも出来る。光酸発生剤の混合量としては、ポリマーに対して3重量%から30重量%が好ましい。
【0094】
ネガ型の感光性耐熱性樹脂前駆体組成物とする場合、一般式(11)のポリマーに、光重合開始剤、増感剤を加えることで製造することができる。光重合開始剤としては、N−フェニルグリシン、N−フェニルジエタノールアミンなどの芳香族アミン類、ミヒラーケトン、ビス(ジエチルアミノフェニル)ケトンなどの芳香族ケトン類、1−フェニル−1、2−プロパンジオン−2−(o−アセチル)オキシムなどのオキシム類などを単独あるいは併用して、一般式(11)にあるポリマー100重量部に対して、0.5重量部から10重量部添加する。さらに、光反応の進行を進めるために、アクリルモノマー化合物を添加することが出来る。このようなアクリルモノマー化合物としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのものを挙げることが出来る。本発明においては、これらのものを1種のみ用いても良いし、複数種を併用して用いても良い。
【0095】
また、増感剤として、7−ジエチルアミノベンゾイルクマリンなどのアミノクマリン類、5−ニトロアセナフテン、チオキサントン、ロイコクリスタルバイオレット、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンゾオキサゾールなどのスチリル類などを併用することもできる。これらの増感剤は単独または複数種を混合して、ポリマー100重量部に対して0.1〜10重量部添加することが好ましい。
【0096】
さらに、感光性能を向上させるために、N−フェニルジエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの芳香族アミン類、メルカプトベンゾオキサゾールなどのメルカプト類を一般式(11)で表されるポリマー100重量部に対して0.1から10重量部添加することもできる。
【0097】
本発明の樹脂前駆体組成物を合成するために用いられる溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ガンマブチロラクトン、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性の非プロトン溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などの溶剤を単独、または混合して使用することができる。
【0098】
また、粘度を上昇させるため、硬度を上昇させるためなどに、二酸化ケイ素、二酸化チタンなどの無機粒子、あるいはポリイミドの粉末などを添加することもできる。
【0099】
さらにシリコンウェハーなどの下地基板との接着性を高めるために、シランカップリング剤、チタンキレート剤などを、得られたポリマー溶液のワニスに0.5から10重量%添加したり、前もって下地基板をこのような薬液で処理したりすることもできる。ワニスに添加する場合、メチルメタクリロキシジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、テトラブトキシチタンなどのチタンキレート剤、アルミキレート剤を、ワニス中のポリマーに対して0.5から10重量%添加する。また基板を処理する場合、上記で述べたカップリング剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5から20重量%溶解させた溶液を、スピンコート、浸漬、スプレー塗布、蒸気処理などで表面処理をする。場合によっては、その後、50℃から300℃までの温度で処理することで、基板と上記カップリング剤との反応を進行させてから使用することもできる。
【0100】
次に、本発明の感光性耐熱性前駆体組成物を用いて耐熱性樹脂パタ−ンを形成する好ましい方法について説明する。
【0101】
感光性耐熱性前駆体組成物を基板上に塗布する。基板としてはシリコンウエハ−、セラミックス類、ガリウムヒ素基盤などが用いられるが、これらに限定されない。塗布方法としてはスピンナを用いた回転塗布、スプレ−塗布、ロ−ルコ−ティングなどの方法がある。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が、0.1から150μmになるように塗布される。
【0102】
次に感光性耐熱性前駆体組成物を塗布した基板を乾燥して、感光性耐熱性前駆体組成物皮膜を得る。乾燥はオ−ブン、ホットプレ−ト、赤外線などを使用し、50度から150度の範囲で1分から数時間行うのが好ましい。
【0103】
次に、この感光性耐熱性前駆体組成物皮膜上に所望のパタ−ンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いるのが好ましい。しかしながら、450〜550nmの可視光線、350nm以下の紫外線、電子線、X線などを使用することもできる。
【0104】
ポリイミドパタ−ンを形成するには、ポジ型の場合、露光後、現像液を用いて露光部を除去することによって達成される。現像液としては、テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノ−ルなどのアルコ−ル類、乳酸エチル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−トなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像後は水にてリンス処理をする。ここでもエタノ−ル、イソプロピルアルコ−ルなどのアルコ−ル類、乳酸エチル、プロピレングリコ−ルモノメチルエ−テルアセテ−トなどのエステル類、酢酸、2酸化炭素、シュウ酸、リン酸などを水に加えてリンス処理をしても良い。
【0105】
ネガ型の場合、N−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒に、メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類を1種から複数種混合したものを現像液に用いることが出来る。このような溶液により、露光部分が残り、露光していない部分が溶解するパターンを得ることが出来る。
【0106】
一般に、現像処理後、水、メタノール、エタノール、プロパノールなどでリンス処理し、膜の膨潤を無くし、パターンを得る。
【0107】
パターンを得た後、200度から500度の温度を加えて耐熱性樹脂皮膜に変換する。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分から5時間実施する。具体例としては、130度、200度、350度で各30分づつ熱処理する。あるいは室温より400度まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。
【0108】
本発明による感光性耐熱性前駆体組成物により形成した耐熱性樹脂皮膜は、半導体のパッシベ−ション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜などの用途に好適に用いられる。
【0109】
【実施例】
以下発明をより詳細に説明するために、実施例で説明する。
【0110】
特性の測定方法
A.塩素イオンの測定
試料3gを水100mlに分散させた。この分散液を90から100℃にて2時間抽出処理をした。この抽出液を堀場製作所(株)製イオンメーターN−8Mを用いて、塩素イオン電極8002を用いて、溶出した塩素イオン濃度を測定した。塩素イオン濃度が5ppmを越えると、得られたポリマーを半導体装置の表面保護膜などに用いたときに塩素イオンのために電極などに腐食が発生し、好ましくない。
【0111】
B.融点の測定
(株)島津製作所製示差熱分析装置DSC−50を用いて、試料量約50mgをアルミセルに入れて、昇温速度20℃/分で室温より350℃までの範囲で測定した。示差熱曲線の吸熱のピークを融点とした。
【0112】
C.ナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量の測定
金属酸化物または金属炭酸塩1gを超純水100mLに溶解あるいは分散し、室温で24時間放置した。この溶液あるいは分散液を孔径0.45μmのポリパーフルオロエチレン製フィルター(アドバンテック(株)製)を用いてろ過した。ろ液を日立製作所(株)製偏光ゼーマン原子吸光光度計Z−8000を用いて測定した。この測定により、各元素の含有量が出るので、これを合計した。
【0113】
実施例1
酸無水物の酸化マグネシウムによる脱塩酸反応による合成である。
ここで、使用した酸化マグネシウム中のナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量は0.5重量%であった。
【0114】
500mlの4つ口フラスコに、かき混ぜ機、温度計、窒素流入管を取り付け、2、2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(セントラル硝子(株)製、BAHF)18.3g(0.05モル)と酸化マグネシウム(和光純薬(株)製)20.1g(1倍当量)とアセトン(林純薬(株)製、特級)70mlの混合分散液とし、−10℃に冷却した。ついで、無水トリメリット酸クロリド(東京化成(株)製、TMC)23.1g(0.11モル)をアセトン50mlに溶かした溶液を作り、これを上記の混合分散液に、内容温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、−10℃で2時間攪拌を続けた後、反応分散液を室温にまで戻した。この分散液を濾過し、濾液をトルエン1.5l中に注ぎ、生じた黄色の沈殿をろ過で集め、50℃で20時間の真空乾燥をした。このものの収量は31.4g(収率:88%)、融点は281℃であった。また、塩素イオン濃度は1.5ppmと良好な値であった。
【0115】
比較例1
酸無水物のトリエチルアミンによる脱塩酸反応による合成である。
500mlの4つ口フラスコに、かき混ぜ機、温度計、窒素流入管を取り付け、BAHF18.3g(0.05モル)をトリエチルアミン(和光純薬(株)製、TEA)11.1g(1.1倍当量)とアセトン100mlの混合液に溶かした溶液を作り、−10℃に冷却した。ついで、TMC23.1g(0.11モル)をアセトン50mlに溶かした溶液を作り、これを上記のBAHFの溶液に、内容温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、−10℃で2時間攪拌を続けた後、反応溶液を室温にまで戻した。この溶液をろ過して、トリエチルアミンの塩酸塩を除き、ろ液をロータリーエバポレーターで全体量を約50mlに濃縮して、トルエン(林純薬(株)製、特級)1.5l中に注ぎ、生じた黄色の沈殿をろ過で集め、50℃で20時間の真空乾燥をした。このものの収量は37.5gであり、理論量に対して収率105%と不純物を内部に取り込んでいるのがわかる。また、塩素イオン濃度は500ppmであり、半導体用のポリマー原料とするには問題があった。
【0116】
比較例2
酸無水物の炭酸ナトリウムによる脱塩酸反応による合成である。
500mlの4つ口フラスコに、かき混ぜ機、温度計、窒素流入管を取り付け、BAHF18.3g(0.05モル)を炭酸ナトリウム(和光純薬(株)製)10.6g(2倍当量)とアセトン100mlの混合液に溶かした溶液を作り、−10℃に冷却した。ついで、TMC23.1g(0.11モル)をアセトン50mlに溶かした溶液を作り、これを上記のBAHFの溶液に、内容温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、−10℃で2時間攪拌を続けた後、反応溶液を室温にまで戻した。この溶液をろ過して、沈殿物を除き、ろ液をロータリーエバポレーターで全体量を約50mlに濃縮して、トルエン(林純薬(株)製、特級)1.5l中に注ぎ、生じた黄色の沈殿をろ過で集め、50℃で20時間の真空乾燥をした。このものの収量は35.3gであり、理論量に対して収率99%であった。また、塩素イオン濃度は2ppmであった。得られた酸無水物1gを超純水100mLに分散させ24時間室温で放置した。この分散液を孔径0.45μmのポリパーフルオロエチレン製フィルターでろ過したろ液をZ−8000を用いて測定したところ、ナトリウムイオンが0.1重量%含まれており、半導体用材料の原料としては問題があった。
【0117】
実施例2
ポリヒドロキシアミド−アミド酸交互共重合体の重合である。
ここで、使用した炭酸バリウム中のナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量は0.8重量%であった。
【0118】
500mlの4つ口フラスコに、かき混ぜ機、温度計、窒素流入管を取り付け、BAHF18.3g(0.05モル)を炭酸バリウム(和光純薬(株)製)19.7g(1モル当量)とアセトン50mlの混合分散液とし、−10℃に冷却した。次いで、TMC21.1g(0.1モル)をアセトン50mlに溶かした溶液を作り、これを上記のBAHFの分散液に、内容温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、−10℃で2時間攪拌を続け、次いで4、4’−ジアミノジフェニルエーテル(和歌山製化(株)製、4−DAE)9.01g(0.045モル)、1、3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学(株)製、SiDA)1.24g(0.005モル)をN−メチル−2−ピロリドン(三菱化学(株)製、NMP)100gに溶かした溶液を一度に加えた。この分散液を室温で3時間反応させ、次いで50℃まで昇温して1時間反応させた。この分散液を室温に冷却し、濾過して沈殿物を除き、濾液を水5l中に注ぎ、ポリヒドロキシアミド−アミド酸交互共重合体の沈殿を得た。この沈殿を濾過で集め、さらに水で洗浄した後、50℃で20時間の真空乾燥をした。塩素イオン濃度は1ppm、ナトリウムイオン濃度は1ppm以下であった(収率98%)。
【0119】
比較例3
ポリヒドロキシアミド−アミド酸交互共重合体のトリエチルアミンを脱塩酸剤として用いた重合である。
500mlの4つ口フラスコに、かき混ぜ機、温度計、窒素流入管を取り付け、BAHF18.3g(0.05モル)をTEA11.1g(0.11モル)とアセトン90mlの混合液に溶かし、この液を−10℃に冷却した。次いで、TMC21.1g(0.1モル)をアセトン50mlに溶かした溶液を作り、これを上記のBAHFの溶液に、内容温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、−10℃で2時間攪拌を続け、次いで4DAE9.01g(0.045モル)、SiDA1.24g(0.005モル)をNMP100gに溶解させた溶液を一度に加えた。この溶液を室温で3時間反応させ、次いで50℃で1時間反応させた。反応溶液を水5l中に注ぎ、ポリヒドロキシアミド−アミド酸交互共重合体の沈殿を得た。この沈殿をろ過で集め、さらに水で洗浄して、その後50℃で20時間、真空乾燥した。塩素イオン含有量は300ppmであった。このものの収率110%と、理論量を越え、副生成物を取り込んでいることがわかった。
【0120】
実施例3
ポリヒドロキシアミドの重合である。
ここで使用した炭酸バリウム中のナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量は0.8重量%であった。
【0121】
500mlの4つ口フラスコに、かき混ぜ機、温度計、窒素流入管を取り付け、BAHF18.3g(0.05モル)と炭酸バリウム(和光純薬(株)製)19.7g(1倍モル当量)とジメチルアセトアミド(林純薬(株)製、特級、DMA)120mlの混合分散液とし、−10℃に冷却した。次いで、イソフタル酸ジクロリド(東京化成(株)製)20.3g(0.1モル)をアセトン100mlに溶かした溶液を作り、これを上記の分散液に、温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、−10℃で2時間攪拌を続け、次いでこの分散液を室温にまで温度を上昇させ、さらに3時間攪拌した。この反応液を濾過し、濾液を水3l中に注ぎ、ポリヒドロキシアミドの沈殿を得た。この沈殿をろ過で集め、さらに水で洗浄した後、50℃で20時間、真空乾燥した。塩素イオン含有量は2.0ppmであった(収率:95%)。
【0122】
比較例4
ポリヒドロキシアミドの重合である。
500mlの4つ口フラスコに、かき混ぜ機、温度計、窒素流入管を取り付け、BAHF18.3g(0.05モル)をピリジン(和光純薬(株)製)10g(0.13モル)とDMA150mlの混合液に溶かし、−10℃に冷却した。
【0123】
イソフタル酸ジクロリド20.3g(0.1モル)をアセトン100mlに溶かした溶液を作り、これを上記のBAHFの溶液に、内容温度が0℃を越えないように滴下した。次いで、滴下終了後、−10℃で2時間攪拌を続けた後、この溶液を室温にまで温度を上昇させ、さらに3時間攪拌した。反応溶液を水5l中に注ぎ、ポリヒドロキシアミドの沈殿を得た。この沈殿をろ過で集め、さらに水で洗浄して50℃で20時間の真空乾燥をした。塩素イオン含有量は500ppmであった。また、収率は108%と理論量を超えており、副生成物を取り込んでいた。
【0124】
実施例4
ポリアミド酸エステルの合成である。
300mlの四つ口フラスコに、かき混ぜ機、温度計、乾燥空気流入管を取り付け、無水ピロメリット酸(ダイセル化学(株)製、PMDA)10.9g(0.05モル)と3、3’、4、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(ダイセル化学(株)製、BTDA)16.1g(0.05モル)をガンマブチロラクトン(三菱化学(株)製、GBL)100mlとピリジン14.1g(0.2モル)に溶かし、30℃にした。 ここに2−ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成(株)製)26.2g(0.2モル)を加え、30℃で8時間反応させた。この溶液を水2l中に注ぎ、生じた沈殿をろ過で集めた。沈殿をさらに水で洗浄して、50℃で20時間、真空乾燥した。次いで、300mlの四つ口フラスコに、かき混ぜ機、温度計、乾燥空気流入管を取り付け、乾燥した沈殿をGBL100mlに溶かした。ここにチオニルクロリド(東京化成(株)製)47.6g(0.4モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル(東京化成(株)製)0.2gを加えて、60℃で2時間反応させた。反応終了後、ロータリーエバポレーターで残った過剰のチオニルクロリドを除去した。
【0125】
1lの4つ口フラスコに、かき混ぜ機、温度計、乾燥空気流入管を取り付けたものに、4−DAE20.0g(0.1モル)を入れ、酸化マグネシウム 40.3g(2.0g当量)とGBL150mlを加え、混合分散液とした。この分散液を5℃に冷却して、上記テトラカルボン酸のジエステルジクロリドのGBL溶液を、反応溶液の温度が10℃を越えないように滴下した。滴下終了後、5℃で2時間反応させた後、30℃で2時間反応させた。この反応液を濾過し、沈殿物を除いたあと、この濾液を水10l中に注いで、ポリアミド酸エステルの沈殿を得た。この沈殿を50℃で20時間の真空乾燥をした。このポリマーの塩素イオン含有量は2ppmであった(収率:93%)。ここで使用した酸化マグネシウム中のナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量は0.5重量%であった。
【0126】
比較例5
ポリアミド酸エステルの合成である。
300mlの4つ口フラスコに、かき混ぜ機、温度計、乾燥空気流入管を取り付け、PMDA10.9g(0.05モル)とBTDA16.1g(0.05モル)をGBL100mlとピリジン14.1g(0.2モル)に溶かし、この溶液を30℃にした。 ここに2−ヒドロキシエチルメタクリレート26.2g(0.2モル)を加え、30℃で8時間反応させた。この溶液を水2l中に注ぎ、生じた沈殿をろ過で集めた。沈殿をさらに水で洗浄して、50℃で20時間の真空乾燥をした。次いで、300mlの4つ口フラスコに、かき混ぜ機、温度計、乾燥空気流入管を取り付け、乾燥した沈殿をガンマブチロラクトン100mlに溶解させた。ここにチオニルクロリド47.6g(0.4モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2gを加えて、60℃で2時間反応させた。反応終了後、ロータリーエバポレーターで、残った過剰のチオニルクロリドを除去した。
【0127】
1lの4つ口フラスコに、かき混ぜ機、温度計、乾燥空気流入管を取り付けたものに、4−DAE20.0g(0.1モル)を入れ、ピリジン31.6g(0.4モル)とNMP150mlに溶かした。この溶液を5℃に冷却して、上記テトラカルボン酸のジエステルジクロリドのGBL溶液を、反応溶液の温度が10℃を越えないように滴下した。滴下終了後、5℃で2時間反応させた後、さらに、30℃で2時間反応させた。この溶液を水10l中に注ぎ、ポリアミド酸エステルの沈殿を得た。この沈殿を濾過して集め、水で洗浄した後、50℃で20時間、真空乾燥した。このポリマーの塩素イオン含有量は60ppmであった(収率:97%)。
【0128】
実施例5
ポジ型感光性ポリイミド前駆体の合成およびその組成物の調製である。
500mlの4つ口フラスコにかき混ぜ機、温度計、窒素流入管を取り付け、ここに4−DAE)6.0g(0.03モル)、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン(和歌山製化(株)製、BAPS)13.0g(0.03モル)、SiDA2.48g(0.01モル)をGBL100gに溶かした。ここに実施例1で合成した酸無水物28.6g(0.04モル)、3、3’、4、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱化学(株)製、BPDA)5.9g(0.02モル)をGBL68gとともに加え、25℃で1時間攪拌した後、50℃で2時間反応させた。この溶液に東洋合成(株)製のナフトキノンジアジド化合物4NT−300を11.2g(ポリマー成分に対して20重量%)を加え、露光した部分がアルカリ水溶液で溶解するポジ型の感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスを得た。塩素イオン含有量は1ppm以下であった。
【0129】
実施例6
ポジ型感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体の調製である。
実施例3で合成したポリヒドロキシアミドのポリマー10gと東洋合成(株)製ナフトキノンジアジド化合物4NT−300 2.5gをNMP28gに溶解させ、ポジ型感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体のワニスを調製した。塩素イオン含有量は1ppm以下であった。
【0130】
実施例7
感光性ポリアミド酸エステルの調製である。
実施例4で合成したポリアミド酸エステル10gとエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学(株)製、1G)1.0gと2,6−t−ブチルカテコール(東京化成(株)製)0.05gとN−フェニルジエタノールアミン(東京化成(株)製)0.3g、メルカプトベンゾチアゾール(東京化成(株)製)0.1g、ミヒラーケトン(東京化成(株)製)0.1gをNMP25gに溶解させ、感光性ポリアミド酸エステルのワニスを調製した。塩素イオン含有量は1ppm以下であった。
【0131】
実施例8
ヒドロキシアミド基を有したジアミン化合物の合成である。
ここで使用した酸化マグネシウム中のナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量は0.5重量%であった。
【0132】
500mlの4つ口フラスコにかき混ぜ機、温度計、窒素流入管を取り付け、BAHF18.3g(0.05モル)と酸化マグネシウム20.2g(0.5モル)とNMP100gの混合分散液とし、5℃に冷却した。ここに、3−ニトロ−ベンゾイルクロリド(東京化成(株)製)19.30g(0.104モル)をアセトン50gに溶かした溶液を、反応液の温度が10℃を越えないように滴下した。滴下終了後、5℃で2時間、20℃で2時間反応させた。この反応混合液をろ過して沈殿物を除き、水2.0l中に注いだ。生じた沈殿を濾過して集め、これを安息香酸メチルで再結晶した(収量33g、収率99%)。次いで、500mlのナス型フラスコにこの再結晶した化合物20.0gをテトラヒドロフラン100gとエタノール50gに分散させ、ここに5%パラジウム−炭素を加え、マグネチック撹拌子で撹拌しながら水素をゴム風船より供給して室温にて12時間還元反応を行った。反応終了後、ろ過してパラジウム−炭素を除去し、ろ液を濃縮しジオキサンを用いて再結晶し、50℃で5時間真空乾燥した。このものの融点は320.3℃、塩素濃度は1ppm以下であった。
【0133】
引き続き、ポジ型感光性ポリイミド前駆体の合成およびその組成物の調製である。
500mlの4つ口フラスコにかき混ぜ機、温度計、窒素流入管を取り付け、上記で得たジアミン18.1g(0.03モル)、4−DAE6.1g(0.03モル)、SiDA2.48g(0.01モル)をGBL100gに溶かした。ここにBTDA25.8g(0.08モル)をGBL50gとともに加え、40℃で3時間反応させた。この溶液に東洋合成(株)製のナフトキノンジアジド化合物4NT−300を10.5g(ポリマー成分に対して20重量%)を加え、露光した部分がアルカリ水溶液で溶解するポジ型の感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスを得た。塩素イオン含有量は1ppm以下であった。
【0134】
実施例9
ヒドロキシアミド基を2個有するジアミン化合物の合成である。
ここで使用した酸化カルシウム中のナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量は0.8重量%であった。
【0135】
500mlの4つ口フラスコにかき混ぜ機、温度計、窒素流入管を取り付け、ここに2−アミノ−4−ニトロフェノール(東京化成(株)製)15.41g(0.1モル)と酸化カルシウム28.04g(1g当量)とDMA100gをとり混合分散液とし、0℃に冷却した。ここに、イソフタル酸ジクロリド10.15g(0.05モル)をアセトン50gに溶かした溶液を、反応液の温度が5℃を越えないように滴下した。滴下終了後、0℃で2時間反応し、さらに20℃で2時間反応させた。この反応混合液をろ過して沈殿物を除き、水2.0l中に注いだ。生じた沈殿を濾過して集め、エタノールで洗浄し、50℃で2時間、真空乾燥した(収量 21.7g、収率99%)。次いで、500mlのナス型フラスコにこの化合物19.0gをテトラヒドロフラン100gとエタノール30gに分散させ、ここに5%パラジウム−炭素を加え、マグネチック撹拌子で撹拌しながら水素をゴム風船より供給して室温にて12時間還元反応を行った。反応終了後、ろ過してパラジウム−炭素を除去し、ろ液を濃縮しGBLとジオキサンの混合溶媒から再結晶した。50℃で20時間真空乾燥をした。このジアミンの融点は350℃以上、塩素濃度は1ppm以下であった。
【0136】
引き続き、ポジ型感光性ポリイミド前駆体の合成およびその組成物の調製である。
300mlの4つ口フラスコにかき混ぜ機、温度計、窒素流入管を取り付け、上記で得たジアミン11.3g(0.03モル)、SiDA2.48g(0.01モル)をNMP60gに溶かした。ここに3、3’、4、4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ダイセル化学(株)製、ODPA)13.9g(0.045モル)をNMP45gとともに加え、40℃で3時間反応させた。この溶液に東洋合成(株)製のナフトキノンジアジド化合物4NT−300を10.5g(ポリマー成分に対して20重量%)を加え、露光した部分がアルカリ水溶液で溶解するポジ型の感光性ポリイミド前駆体組成物のワニスを得た。塩素イオン含有量は1ppm以下であった。
【0137】
実施例10
ヒドロキシアミド基を2個有するジアミン化合物の合成である。
ここで使用した炭酸マグネシウム中のナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量は0.6重量%であった。
【0138】
500mlの4つ口フラスコにかき混ぜ機、温度計、窒素流入管を取り付け、ここに2−アミノフェノール(東京化成(株)製)10.9g(0.1モル)と炭酸マグネシウム8.43g(2倍モル量)とDMA50gをとり混合分散液とし、0℃に冷却した。ここに、3,5−ジニトロ安息香酸クロリド(東京化成(株)製)23.05g(0.1モル)をアセトン100gに溶かした溶液を、反応液の温度が5℃を越えないように滴下した。滴下終了後、0℃で2時間反応し、さらに20℃で2時間反応させた。この反応混合液をろ過して沈殿物を除き、水2.0l中に注いだ。生じた沈殿を濾過して集め、エタノールで洗浄し、50℃で2時間、真空乾燥した(収量 30.6g、収率99%)。次いで、500mlのナス型フラスコにこの化合物15.5gをテトラヒドロフラン100gとエタノール30gに分散させ、ここに5%パラジウム−炭素を加え、マグネチック撹拌子で撹拌しながら水素をゴム風船より供給して室温にて12時間還元反応を行った。反応終了後、ろ過してパラジウム−炭素を除去し、ろ液を濃縮しジオキサンから再結晶し、50℃で20時間真空乾燥をした。このジアミンの塩素濃度は1ppm以下であった。
【0139】
【発明の効果】
本発明によって、塩素イオン濃度を低く抑えるだけでなく、収率よく目的の耐熱性樹脂前駆体およびその原料モノマー、感光性耐熱性樹脂前駆体組成物を得ることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される構造単位を主成分とするポリマーの製造工程において、一般式(2)で表される酸無水物を合成する際に、その原料であるトリカルボン酸一無水一塩化物とヒドロキシジアミノ化合物を反応させるときに、ナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量が1重量%以下である金属酸化物および/または金属炭酸塩を用いて脱塩酸し、その後、該酸無水物と一般式(3)で表されるジアミン化合物を反応させることを特徴とする耐熱性樹脂前駆体組成物の製造方法。
【化1】



(式中、R1,R3は炭素数2から30の3価の有機基、R2は炭素数2から30の3価から6価の有機基、R4は炭素数2から30の2価の有機基、R5,R6はそれぞれ炭素数1から20までの有機基または水素原子。mは1から100000までの整数であり、nは1。pは1から4までの整数である。)
【化2】



(式中、R7、R9は炭素数2から30の3価の有機基、R8は炭素数2から30の3から6価の有機基、qは1から4までの整数である。)
【化3】



(式中、R10は炭素数2から30の2価の有機基である。)
【請求項2】
一般式(4)で表される酸無水物を合成する際に、その原料であるトリカルボン酸一無水一塩化物とヒドロキシジアミノ化合物を反応させるときに、ナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量が1重量%以下である金属酸化物および/または金属炭酸塩を用いて脱塩酸することを特徴とする耐熱性樹脂前駆体組成物用のモノマーの製造方法。
【化4】



(式中、R11、R13は炭素数2から30の3価の有機基、R12は炭素数2から30の3価の有機基、rは1から4までの整数である。)
【請求項3】
一般式(5),(6),(7)で表されるいずれかの構造を有するヒドロキシジアミノ化合物を合成する際に、原料であるニトロヒドロキシアミノ化合物とジカルボン酸二塩化物,ニトロヒドロキシアミノ化合物とニトロカルボン酸塩化物,ニトロカルボン酸塩化物とヒドロキシジアミンを反応させるときに、ナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量が1重量%以下である金属酸化物および/または金属炭酸塩を用いて脱塩酸し、その後、還元処理にてヒドロキシジアミノ化合物を得ることを特徴とする耐熱性樹脂前駆体組成物用モノマーの製造方法。
【化5】



(式中、R14、R16は炭素数2から30の3価から6価の有機基、R15は炭素数2から30の2価の有機基、s,tは1から4までの整数である。)
【化6】



(式中、R17は炭素数2から30の3価から6価の有機基、R18は炭素数2から30の2価の有機基、uは1から4までの整数である。)
【化7】



(式中、R19、R21は炭素数2から30の2価の有機基、R20は炭素数2から30の3価から6価の有機基、vは1から4までの整数である。)
【請求項4】
一般式(8)で表される構造単位を主成分とするポリマーの製造工程において、一般式(9)で表されるジカルボン酸二塩化物と一般式(10)で表されるヒドロキシジアミノ化合物を反応させるときに、ナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量が1重量%以下である金属酸化物および/または金属炭酸塩を用いて脱塩酸させることを特徴とする耐熱性樹脂前駆体組成物の製造方法。
【化8】



(式中、R22は炭素数2から30の2価の有機基、R23は炭素数2から30の3価から6価の有機基、nは1から100000までの整数、wは1から4までの整数を表す。)
【化9】



(式中、R24は炭素数2から30の2価の有機基である。)
【化10】



(式中、R25は炭素数2から30の3価から6価の有機基、xは1から4までの整数を表す。)
【請求項5】
一般式(11)で表される構造単位を主成分とするポリマーの製造工程において、一般式(12)で表されるテトラカルボン酸ジエステル二酸塩化物と一般式(13)で表されるジアミン化合物を反応させるときに、ナトリウム,カリウム,亜鉛,リチウム,鉄,ニッケル,クロム,銅,マンガン,カドニウム,アンチモンの総量が1重量%以下である金属酸化物を用いて脱塩酸させることを特徴とする耐熱性樹脂前駆体組成物の製造方法。
【化11】



(式中、R26は炭素数2から30の3価または4価の有機基、R27は炭素数2から30の2価の有機基、R28は炭素数1から20までの有機基または水素原子、oは1から100000までの整数、yは1または2を表す。)
【化12】



(式中、R29は炭素数2以上30以下の3価または4価の有機基、R30は炭素数1から20までの有機基または水素原子、zは1または2である。)
【化13】



(式中、R31は炭素数2から30の2価の有機基である。)
【請求項6】
請求項1記載の製造方法で得られた一般式(1)で表される構造単位を有する耐熱性樹脂前駆体と光酸発生剤を含有することを特徴とする感光性耐熱性樹脂前駆体組成物。
【請求項7】
請求項2記載の製造方法で得られた一般式(4)で表される酸無水物とジアミン化合物とを反応させて得られる耐熱性樹脂前駆体と光酸発生剤を含有することを特徴とする感光性耐熱性樹脂前駆体組成物。
【請求項8】
請求項3記載の製造方法で得られたヒドロキシジアミノ化合物と、テトラカルボン酸二酸無水物,テトラカルボン酸ジエステル二酸塩化物およびジカルボン酸塩化物から選ばれる1種以上を反応させて得られる耐熱性樹脂前駆体と光酸発生剤を含有することを特徴とする感光性耐熱性樹脂前駆体組成物。
【請求項9】
請求項4記載の製造方法で得られた一般式(8)で表される構造単位を有する耐熱性樹脂前駆体と光酸発生剤を含有することを特徴とする感光性耐熱性樹脂前駆体組成物。
【請求項10】
請求項5記載の製造方法で得られた一般式(11)で表される構造単位を有し、かつ、一般式(11)におけるR28の全部または一部が重合可能な不飽和基を有する有機基で置換されている耐熱性樹脂前駆体と光重合開始剤および増感剤を含有することを特徴とする感光性耐熱性樹脂前駆体組成物。

【公開番号】特開2004−12659(P2004−12659A)
【公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−163999(P2002−163999)
【出願日】平成14年6月5日(2002.6.5)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】