説明

耐酸化性重合体状材料の製造方法

本発明は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等の重合体状材料を含んでなる、耐酸化性の医療機器の製造方法に関する。本発明は、酸化防止剤が添加された医療用インプラントの製造方法、例えば架橋されたUHMWPEを含む医療機器に、拡散により、ビタミンEを添加し、添加後にアニーリングする方法、およびその方法に使用される材料も提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許仮出願第60/569,624号(2004年5月11日提出)の利益を主張するものであり、当前記出願は引用されることにより、本願明細書の開示の一部とされる。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、重合体状材料含んでなる、耐酸化性の医療機器の製造方法に関する。本発明は、ポリエチレンに酸化防止剤(例えばビタミンE)を添加する方法、添加後のアニーリング方法、および、その方法に使用される材料、も提供する。
【発明の背景】
【0003】
耐酸化性の架橋された重合体状材料、例えば超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、は、機器の耐摩耗性を著しく増加させことから、医療機器に望ましい。架橋の好ましい方法は、UHMWPEを電離放射線で露光することによるものである。しかしながら、電離放射線は、架橋に加えて残留フリーラジカルも発生させ、これが、酸化により誘発される脆化の前駆体となる。照射中または照射後に融解させて結晶を除去することが行われ、それにより、残留フリーラジカルが互いに再結合する。残留フリーラジカルによる副次的な酸化の可能性を低減するため、照射とともにその後に融解することが行われる。しかしながら、融解によってUHMWPEの結晶化度が低下するため、UHMWPEの降伏強度、極限引張強度、モジュラス、および、疲労強度が低下する。このような高度に架橋されたUHMWPE(すなわち、照射および融解させたもの)は、長期間における疲労破損が医療機器の性能を犠牲にすることがあるので、高い疲労強度を必要とする特定の用途には、好適ではない場合がある。したがって、残留フリーラジカルを無くすか、または融解させずに、残留フリーラジカルの酸化作用を排除する必要がある。このような方法は、照射されたUHMWPEの結晶化度を保ち、機械的特性および疲労耐性も維持されるであろう。
【0004】
一般的に、ポリエチレン粉末を、固化する前に酸化防止剤と混合することにより、ポリエチレン材料の耐酸化性を改善できることが知られている。何人かの研究者は、耐摩耗性を改良するため、ビタミンEおよびβ−カロテン等の酸化防止剤を、UHMWPEの粉末または粒子と混合することが、何人かの研究者らが試みている(Moriら, p.1017, the 47th Annual Meeting, Orthopaedic Res Soc, February 25-28, 2001, San Fransisco, CAで発表; McKellopらの国際特許公開WO 01/80778; Schaffnerらの 欧州特許第0995450号; Hahn D.の 米国特許第5,827,904号; Lidgenらの 米国特許第6,448,315号を参照)。Moriらは、照射によっては、酸化防止剤を添加されたポリエチレンの耐酸化性が低下しないことも開示している。これらの研究者(McKellopらの.国際特許公開WO 01/80778; Schaffnerらの 欧州特許第0995450号; Hahn D.の 米国特許第5,827,904号; Lidgenらの米国特許6,448,315号を参照)は、ポリエチレン粉末を酸化防止剤と混合し、次いで、酸化防止剤−粉末混合物を固化させて、耐酸化性ポリエチレンを得ることを記載している。樹脂粉末、フレーク、または、粒子を、ビタミンEと混合し、その後に固化させることにより、重合体状材料の色が黄変する(例えば、米国特許第6,448,315号参照)。さらに、照射の前に酸化防止剤をUHMWPEに加えることにより、照射の最中にUHMWPEが架橋するのを抑制することができる。しかしながら、重合体の耐摩耗性を増加するには架橋が必要である。したがって、固化した固体形態、例えば原料に、酸化防止剤を添加し、続いてアニーリングした、医療用インプラントまたはその重合体状部品、機械加工した部品または成形した部品が望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、一般的には、一種以上の重合体状材料を含んでなる耐酸化性医療機器の製造方法、およびその方法により製造された材料に関する。より詳細には、本発明は、架橋されたポリエチレン、例えば架橋された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、を含む、酸化防止剤が添加された医療機器の製造方法、およびその方法に使用される材料、ならびにその方法により製造された材料に関する。より詳細には、本発明は、酸化防止剤が添加された、残留フリーラジカルを含む架橋されたポリエチレン、例えば照射された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、を含む非酸化性医療機器の製造方法、およびその方法に使用される材料、ならびにその方法により製造された材料に関する。
【0006】
一実施態様において、本発明は、架橋された重合体状材料の製造方法であって、a)電離放射線を照射して、固化かつ架橋された重合体状材料を用意し、b)前記固化かつ架橋された重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、そしてc)前記酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングすることを含んでなる方法を提供する。これらの方法により得られる架橋された重合体状材料も提供する。
【0007】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料の製造方法であって、a)電離放射線を照射して、固化かつ架橋された重合体状材料を用意し、b)前記固化かつ架橋された重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、c)前記酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、そしてd)前記固化かつ架橋された重合体状材料を、前記固化かつ架橋された重合体状材料の融点未満の温度に加熱することを含んでなる方法を提供する。これらの方法により得られる架橋された重合体状材料も提供する。
【0008】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料の製造方法であって、架橋された重合体状材料を、約50重量%の酸化防止剤を含むアルコール溶液、例えばエタノール溶液中に浸漬し、前記架橋された重合体状材料に、超臨界流体中、例えばCO中で、酸化防止剤を拡散させる方法を提供する。この方法により得られる架橋された重合体状材料も提供する。
【0009】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料の製造方法であって、a)固化かつ架橋された重合体状材料を、圧力チャンバー中に入れ、b)前記チャンバーに、希釈していない状態の酸化防止剤(約100%)、または酸化防止剤とアルコールと50%混合液等の溶液を充填し、c)前記チャンバーを加圧して、固化かつ架橋された重合体状材料中への酸化防止剤の拡散を促進させ、そしてd)前記酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングする工程を含んでなる方法を提供する。これらの方法により得られる架橋された重合体状材料も提供する。
【0010】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料の製造方法であって、a)前記固化した重合体状材料を拡散により酸化防止剤を添加する工程、b)前記酸化防止剤を添加された重合体状材料を液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下で、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、c)前記固化した重合体状材料に電離放射線を照射することにより、固化かつ架橋された重合体状材料を形成し、そしてd)前記固化かつ架橋された重合体状材料を、前記固化かつ架橋された重合体状材料の溶融状態よりも低いまたは高い温度で、アニーリングする、ことを含んでなる方法を提供する。この方法により得られる架橋された重合体状材料も提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料の製造方法であって、a)重合体状材料を固化させ、b)前記重合体状材料に電離放射線を照射することにより、固化かつ架橋された重合体状材料を形成し、c)前記固化かつ架橋された重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、d)前記酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、そしてe)前記固化かつ架橋された重合体状材料を、前記固化かつ架橋された重合体状材料の融点未満の温度に加熱すること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる架橋された重合体状材料も提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を用意し、b)前記重合体状材料を固化させ、c)前記固化した重合体状材料に、電離放射線を照射することにより、固化かつ架橋された重合体状材料を形成し、d)前記固化かつ架橋された重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、e)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成し、そしてf)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングすること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる医療用インプラントも提供する。
【0013】
別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料を用意し、b)前記固化した重合体状材料に、電離放射線を照射することにより、固化かつ架橋された重合体状材料を形成し、c)前記固化かつ架橋された重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、d)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成し、そしてe)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングすること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる医療用インプラントも提供する。
【0014】
別の態様において、本発明は、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料に、電離放射線を照射することにより、架橋された重合体状材料を形成し、b)前記固化かつ架橋された重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、c)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加し、そしてd)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングすること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる医療用インプラントも提供する。
【0015】
別の態様において、本発明は、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、b)前記医療用インプラントに、拡散により酸化防止剤を添加し、c)前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下において、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、そしてd)前記医療用インプラントに照射することにより、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる医療用インプラントも提供する。
【0016】
別の態様において、本発明は、重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)前記重合体状材料に、電離放射線を照射することにより、架橋された重合体状材料を形成し、b)前記架橋された重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加して、前記架橋された重合体状材料を、固化かつ架橋された重合体状材料の溶融状態よりも低いまたは高い温度で、アニーリングし、そしてc)前記酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングすること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる医療用インプラントも提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を、別の部品に圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成し、b)前記連結ハイブリッド材料に、電離放射線を照射することにより、架橋された、連結ハイブリッド材料を形成し、c)前記架橋された、連結ハイブリッド材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、そしてd)前記酸化防止剤が添加された、架橋された、連結ハイブリッドを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングすること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる医療用インプラントも提供する。
【0018】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を、別の部品に圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成し、b)前記連結ハイブリッド材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、c)前記酸化防止剤が添加された、連結ハイブリッドを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、そしてd)前記連結ハイブリッド材料に、電離放射線を照射することにより、架橋された、連結ハイブリッド材料を形成すること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる医療用インプラントも提供する。
【0019】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する無菌医療用インプラントの製造方法であって、a)前記重合体状材料を、直接圧縮成形することにより、医療用インプラントを形成し、b)前記医療用インプラントに照射して、前記重合体状材料を架橋させ、c)前記照射された医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加し、d)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、e)前記照射された、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、包装し、そしてf)前記包装された、照射かつ酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、電離放射線またはガス滅菌により滅菌することにより、架橋された、無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントも提供する。
【0020】
別の態様において、本発明は、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を含有する、無菌医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、b)前記医療用インプラントに照射することにより、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントを形成し、c)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加し、d)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、e)前記照射された、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを包装し、そしてf)前記包装された医療用インプラントを、電離放射線またはガス滅菌により滅菌することにより、架橋された、無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる、医療用インプラントも提供する。
【0021】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)前記重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、b)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、c)前記重合体状材料を、別の部品に圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成し、そしてd)連結ハイブリッド材料に、電離放射線を照射することにより、架橋された、連結ハイブリッド材料を形成すること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントも提供する。
【0022】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)前記重合体状材料を直接圧縮成形することにより、医療用インプラントを形成し、b)前記医療用インプラントに電離放射線を照射することにより、固化かつ架橋された医療用インプラントを形成し、c)前記固化かつ架橋された医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加し、そしてd)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングすること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントも提供する。
【0023】
別の態様において、本発明は、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、b)前記医療用インプラントに照射することにより、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントをし、c)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加し、そしてd)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下で、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングする工程を含んでなる方法を提供する。これらの方法により得られる、酸化防止剤を添加された、架橋された重合体状材料を含む医療用インプラントも提供する。
【0024】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含む医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を直接圧縮成形することにより、医療用インプラントを形成する工程、b)前記医療用インプラントを拡散により酸化防止剤を添加する工程、c)前記酸化防止剤を添加された医療用インプラントを液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下で、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングする工程、d)前記医療用インプラントを包装する工程、e)前記包装された医療用インプラントを電離放射線により照射することにより、固化し、架橋された、無菌の医療用インプラントを形成する工程を含んでなる方法を提供する。これらの方法により得られる、架橋された重合体状材料を含む医療用インプラントも提供する。
【0025】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含む医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成する工程、b)前記医療用インプラントを拡散により酸化防止剤を添加する工程、c)前記酸化防止剤を添加された医療用インプラントを液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、d)前記医療用インプラントを包装し、そしてe)前記包装された医療用インプラントに、電離放射線を照射することにより、固化かつ架橋された、無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントも提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料の製造方法であって、a)固化し、架橋された重合体状材料を圧力チャンバーに入れる工程、b)前記チャンバーを酸化防止剤で満たす工程、c)前記チャンバーを加圧し、前記固化し、架橋された重合体状材料中への前記酸化防止剤の拡散を強化する工程、およびd)前記酸化防止剤を添加された、架橋された重合体状材料を液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下で、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングする工程を含んでなる方法を提供する。これらの方法により得られる酸化防止剤を添加された、架橋された重合体状材料を含む医療用インプラントも提供する。
【0027】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療機器の製造方法であって、a)製造された、固化した重合体状材料からなる医療機器に、電離放射線を照射することにより、固化かつ架橋された重合体状材料を形成し、b)前記固化かつ架橋された重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を形成し、c)前記酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングすること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる架橋された重合体状材料を含有する医療機器も提供する。
【0028】
別の態様において、本発明は、滅菌または架橋する放射線量の電離放射線を照射して、耐酸化性の医療機器用包装物を製造する方法であって、a)前記包装材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、b)前記酸化防止剤が添加された包装材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、c)前記包装材料中に、医療機器を挿入し、d)前記医療機器を含有する前記包装材料を密封することにより、包装された医療機器を形成し、そしてd)前記包装された医療機器に、電離放射線を照射するか、またはガス滅菌すること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる医療機器も提供する。
【0029】
別の態様において、本発明は、滅菌または架橋する放射線量の電離放射線を照射して、耐酸化性の医薬化合物用包装物を製造する方法であって、a)前記包装材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、b)前記酸化防止剤が添加された包装材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、c)前記包装材料中に医薬化合物を挿入し、d)前記医薬化合物を含有する前記包装材料を密封することにより、包装された医薬化合物を形成し、そしてe)前記包装された医薬化合物に、電離放射線を照射するか、またはガス滅菌すること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる包装材料も提供する。
【0030】
さらに別の態様においては、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、前記インプラントが、寛骨臼ライナー(acetabular liner)、肩関節窩(shoulder glenoid)、膝蓋骨成分(patellar component)、指関節成分、踝関節成分、肘関節成分、手首関節成分、足指関節成分、二極人工股関節、頸骨膝挿入物(tibial knee insert)、補強金属とポリエチレンポストとを備えた頸骨膝挿入物、椎間板、心臓弁、腱、ステント、および血管移植片を包含する医療機器を含んでなり、前記重合体状材料が、重合体状樹脂粉末、重合体状フレーク、重合体状粒子等、またはそれらの混合物である、方法を提供する。これらの方法により得られる、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントも提供する。
【0031】
さらに別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する、非永続性インプラントを包含する、医療用インプラントの製造方法であって、前記インプラントが、バルーンカテーテル、縫合、管、および静脈内管を包含する医療機器を含んでなり、前記重合体状材料が、重合体状樹脂粉末、重合体状フレーク、重合体状粒子等、またはそれらの混合物である、方法を提供する。本明細書に記載するように、重合体状バルーン、例えばポリエーテル−ブロックコ−ポリアミド重合体(PeBAX(登録商標))、ナイロン、およびポリエチレンテレフタレート(PET)バルーンに、ビタミンEを添加するとともに、添加前、添加中、または添加後に照射する。この方法により得られる医療用インプラントも提供する。
【0032】
さらに別の態様において、本発明は、電離放射線またはガス滅菌による滅菌に付して、耐酸化性の医療機器用包装物を製造する方法を提供する。前記包装物は、バリヤー材料、例えばブロー成形したブリスターパック、熱収縮性包装物、熱密封された包装物等、またはそれらの組合せを包含する。この方法により得られる医療機器用の包装材料も提供する。
【0033】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)前記固化した重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、b)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、そしてc)前記重合体状材料に電離放射線を照射することにより、固化かつ架橋された重合体状材料を形成すること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントも提供する。
【0034】
一態様においては、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを包装し、電離放射線またはガス滅菌により滅菌し、無菌の架橋された医療用インプラントを得る。
【0035】
別の態様において、本発明の重合体状材料は、重合体状樹脂粉末、重合体状フレーク、重合体状粒子等、またはそれらの混合物であり、照射を、約1%〜約22%の酸素を含む雰囲気中で行い、放射線量が約25kGy〜約1000kGyである。
【0036】
別の態様において、本発明の重合体状材料は、重合体状樹脂粉末、重合体状フレーク、重合体状粒子等、またはそれらの混合物であり、前記重合体状材料の固化の後に、ガス、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等、またはそれらの組合せを含む雰囲気中で、前記重合体状材料に照射し、放射線量が約25kGy〜約1000kGyである。
【0037】
別の態様において、本発明の重合体状材料は、固化した重合体状材料であり、前記固化を圧縮成形により行い、スラブを形成し、そのスラブから医療機器を機械加工することができる。
【0038】
別の態様において、本発明の重合体状材料は、固化した重合体状材料であり、前記固化を直接圧縮成形により行い、最終的な医療機器を形成することができる。
【0039】
さらに別の態様において、本発明の重合体状材料は、固化した重合体状材料であり、前記固化を、別の部品への圧縮成形により行い、界面および連結ハイブリッド材料を形成することができる。
【0040】
さらに別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を、別の部品に圧縮成形することにより、界面および連結ハイブリッド材料を形成し、b)前記連結ハイブリッド材料に、電離放射線を照射することにより、架橋された、連結ハイブリッド材料を形成し、c)前記架橋された、連結ハイブリッド材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、そしてd)前記酸化防止剤が添加された、架橋された、連結ハイブリッド材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングすること、を含んでなる方法を提供する。これらの方法により得られる架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントも提供する。
【0041】
一態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、重合体状材料を、別の部品、例えば金属、セラミック、または重合体等の金属性または非金属性の部品に圧縮成形することにより、界面および連結ハイブリッド材料を形成することを含んでなり、前記界面が、金属−重合体または金属−セラミック界面である、方法を提供する。
【0042】
さらに別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を、別の部品に圧縮成形することにより、界面および連結ハイブリッド材料を形成し、b)前記酸化防止剤が添加された、連結ハイブリッド材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、c)前記連結ハイブリッド材料に、拡散により、酸化防止剤、例えばビタミンE等のα−トコフェロール、を添加し、そしてd)前記連結ハイブリッド材料に、電離放射線を照射することにより、架橋された、連結ハイブリッド材料を形成することを含んでなる方法を提供する。この方法により得られる、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントも提供する。
【0043】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を圧縮成形することにより、医療用インプラントを形成し、b)前記医療用インプラントに照射して、前記重合体状材料を架橋させ、c)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、d)前記照射された医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加し、e)前記照射された、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、包装し、そしてf)前記包装され、照射された、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、電離放射線またはガス滅菌により滅菌することにより、架橋された無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる医療用インプラントも提供する。
【0044】
さらに別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、b)前記医療用インプラントに照射して、前記重合体状材料を架橋させ、c)前記照射された医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加し、d)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下も沸騰水中で、アニーリングし、e)前記照射され、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、包装し、そしてf)前記包装され、照射された、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、電離放射線またはガス滅菌により滅菌することにより、架橋された無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる医療用インプラントも提供する。
【0045】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を、別の部品に圧縮成形することにより、界面および連結ハイブリッド材料を形成し、b)前記連結ハイブリッド材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、c)前記酸化防止剤が添加された、連結ハイブリッド材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、そしてd)前記連結ハイブリッド材料に電離放射線を照射することにより、架橋された、連結ハイブリッド材料重合体状材料を形成する、ことを含んでなる方法を提供する。この方法により得られる架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントも提供する。
【0046】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を直接圧縮成形することにより医療用インプラントを形成し、b)前記医療用インプラントに電離放射線を照射することにより、固化かつ架橋された医療用インプラントを形成し、c)前記固化かつ架橋された医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加し、そしてd)前記酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングすること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントも提供する。
【0047】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、b)前記医療用インプラントに電離放射線を照射することにより、固化かつ架橋された医療用インプラントを形成し、c)前記固化かつ架橋された医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加し、そしてd)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングすること、を含んでなる方法を提供する。これらの方法により得られる医療用インプラントも提供する。
【0048】
別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を用意し、b)前記重合体状材料を固化させ、c)前記固化した重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、d)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、e)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料に、電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を形成し、そしてf)前記架橋された重合体状材料を機械加工することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる医療用インプラントも提供する。
【0049】
別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料を用意し、b)前記固化した重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、c)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、d)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料に、電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を形成し、そしてe)前記架橋された重合体状材料を機械加工することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。この方法により得られる医療用インプラントも提供する。
【0050】
別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を用意し、b)前記重合体状材料を固化させ、c)前記固化した重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、d)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、e)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を機械加工することにより、酸化防止剤が添加された重合体状材料を形成し、そしてf)前記酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料に、電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0051】
別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料を用意し、b)前記固化した重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、c)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、d)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を機械加工することにより、酸化防止剤が添加された重合体状材料を形成し、そしてe)前記酸化防止剤が添加された架橋された重合体状材料に、電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0052】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を直接圧縮成形することにより、医療用インプラントを形成し、b)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加し、c)前記医療用インプラントを包装し、d)前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、そしてe)前記包装された医療用インプラントに、電離放射線を照射することにより、固化かつ架橋された無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0053】
別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を用意し、b)前記重合体状材料を固化させ、c)前記固化した重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、d)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを形成し、e)前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、f)前記医療用インプラントを包装し、そしてg)前記包装された医療用インプラントに電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0054】
さらに別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料を用意し、b)前記固化した重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、c)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを形成し、d)前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、e)前記医療用インプラントを包装し、そしてf)前記包装された医療用インプラントに、電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0055】
別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を用意し、b)前記重合体状材料を固化させ、c)前記固化した重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された重合体状材料を形成し、d)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、e)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、f)前記医療用インプラントを包装し、そしてg)前記包装された医療用インプラントに、電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0056】
さらに別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料を用意し、b)前記固化した重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された重合体状材料を形成し、c)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、d)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を機械加工することにより医療用インプラントを形成し、e)前記医療用インプラントを包装し、そしてf)前記包装された医療用インプラントに、電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0057】
別の態様において、本発明は、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を含有する無菌医療用インプラントを製造する方法であって、a)固化した重合体状材料に照射することにより、架橋された重合体状材料を形成し、b)前記固化かつ架橋された重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、c)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加し、d)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、e)前記照射された、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを包装し、そしてf)前記包装された医療用インプラントを、電離放射線またはガス滅菌により滅菌することにより、架橋された無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0058】
別の態様において、本発明は、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を含有する無菌医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料に、酸化防止剤を添加し、b)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、c)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を固化させ、d)前記固化した、酸化防止剤が添加された重合体状材料を機械加工することにより、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを形成し、e)前記医療用インプラントに照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントを形成し、f)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを包装し、そしてg)前記包装された医療用インプラントを、電離放射線またはガス滅菌により滅菌することにより、架橋された無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0059】
別の態様において、本発明は、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を含有する無菌医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料に、酸化防止剤を添加し、b)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、c)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を固化させ、d)前記固化した重合体状材料に照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を形成し、e)前記固化かつ架橋された重合体状材料を機械加工することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントを形成し、f)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを包装し、そしてg)前記包装された医療用インプラントを、電離放射線またはガス滅菌により滅菌することにより、架橋された無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0060】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、b)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、c)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料に、電離放射線を照射することにより、架橋された、酸化防止剤が添加された重合体状材料を形成し、そしてd)前記架橋された、酸化防止剤が添加された重合体状材料を、別の部品に圧縮成形することにより、架橋された、連結ハイブリッド材料を形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0061】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料に、電離放射線を照射することにより、固化かつ架橋された重合体状材料を形成し、b)前記重合体状材料を直接圧縮成形することにより、固化かつ架橋された医療用インプラントを形成し、c)前記固化かつ架橋された重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、そしてd)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングすること、を含んでなる方法を提供する。
【0062】
別の態様において、本発明は、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料に、酸化防止剤を添加し、b)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、c)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を固化させ、d)前記固化した、酸化防止剤が添加された重合体状材料を機械加工することにより、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを形成し、そしてe)前記医療用インプラントに照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0063】
別の態様において、本発明は、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料に、酸化防止剤を添加し、b)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、c)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を固化させ、d)前記固化した重合体状材料に照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を形成し、そしてe)前記固化かつ架橋された重合体状材料を機械加工することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。上記の方法により得られる、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントも提供する。
【0064】
別の態様において、本発明は、架橋された重合体状材料を含有する非永続性医療機器を製造する方法であって、a)固化した重合体状材料を含有する、製造された医療機器に、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された重合体状材料を形成し、b)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、c)前記医療機器に、電離放射線を照射することにより、架橋された重合体状材料を形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0065】
別の態様において、本発明は、検出可能な残留フリーラジカルを含有する非酸化性の架橋された重合体状材料を提供する。
【0066】
別の態様において、本発明は、検出可能な残留フリーラジカルを含有する、永続性および非永続性の医療機器を包含する、非酸化性の架橋された医療用インプラントを提供する。
【0067】
別の態様において、本発明は、検出可能な残留フリーラジカルを含有し、酸化防止剤の濃度勾配を有する、永続性および非永続性の医療機器を包含する、非酸化性の架橋された医療用インプラントを提供する。
【0068】
別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を用意し、b)前記重合体状材料を固化させ、c)前記固化した重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、d)前記医療用インプラントに、電離放射線を照射することにより、架橋された医療用インプラントを形成し、e)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成し、そしてf)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングすること、を含んでなる方法を提供する。
【0069】
さらに別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料を用意し、b)前記固化した重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、c)前記医療用インプラントに、電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成し、d)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成し、そしてe)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングすること、を含んでなる方法を提供する。
【0070】
別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を用意し、b)前記重合体状材料を固化させ、c)前記固化した重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、d)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤を添加された医療用インプラントを形成し、e)前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、そしてf)前記医療用インプラントに、電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0071】
さらに別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料を用意し、b)前記固化した重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、c)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを形成し、d)前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、そしてe)前記医療用インプラントに、電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0072】
別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を用意し、b)前記重合体状材料を固化させ、c)前記重合体状材料に、電離放射線を照射することにより、架橋された重合体状材料を形成し、d)前記重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を形成し、e)前記酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、そしてf)前記重合体状材料を機械加工することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0073】
さらに別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)固化した重合体状材料を用意し、b)前記重合体状材料に、電離放射線を照射することにより、架橋された重合体状材料を形成し、c)前記重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を形成し、d)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、そしてe)前記重合体状材料を機械加工することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。
【0074】
別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)重合体状材料を用意し、b)前記重合体状材料を圧縮成形することにより、医療用インプラントを形成し、c)界面または連結ハイブリッド材料を含む前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを形成し、d)前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントを液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、e)前記医療用インプラントを包装し、そしてf)前記包装された医療用インプラントに、電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。別の態様においては、重合体状材料を、別の部品または医療用インプラントに圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成する。
【0075】
別の態様において、本発明は、医療用インプラントの製造方法であって、a)医療用インプラントを形成する圧縮成形された重合体状材料を用意し、b)界面または連結ハイブリッド材料を含む前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを形成し、c)前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中で、アニーリングし、d)前記医療用インプラントを包装し、そしてe)前記包装された医療用インプラントに電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された無菌医療用インプラントを形成すること、を含んでなる方法を提供する。別の態様においては、重合体状材料を、別の部品または医療用インプラントに圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成する。
【0076】
上記した全ての方法により得られる、架橋された重合体状材料を含有する医療用インプラントも提供する。
【0077】
本発明の別の態様においては、酸化防止剤が添加された重合体状材料を、前記添加された重合体状材料の融点未満でアニーリングすることにより、重合体状材料中の添加された酸化防止剤の均質性を向上させる方法を提供するものであり、例えば、液体または気体環境において、種々の温度および圧力条件下、例えば大気圧下の沸騰水中、または、100℃以上、かつUHMWPEの融点未満でアニーリングするために、加圧下の沸騰水中で、アニーリングする。別の態様においては、重合体状材料を機械加工する前の、添加またはアニーリングを、重合体状材料の融点よりも高い温度、例えば150℃、160℃、170℃、180℃以上で行うことができる。
【0078】
本発明の別の態様においては、酸化防止剤が添加された重合体状材料を、前記添加された重合体状材料の融点よりも高い温度でアニーリングすることにより、重合体状材料中の添加された酸化防止剤の均質性を向上させる方法を提供する。
【0079】
本発明の別の態様により、上記の酸化防止剤が添加された重合体状材料、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料、または酸化防止剤が添加された医療用インプラント、のアニーリングは、水または鉱油等の流体中で、加圧下、100℃よりも低いまたは高い温度であって、かつ重合体状材料の融点未満の温度において、行うことができる。
【0080】
本発明の別の態様により、上記の、医療用インプラント、または重合体状材料若しくは架橋された重合体状材料への酸化防止剤の添加は、酸化防止剤−エマルション中、酸化防止剤−NaCl溶液等の酸化防止剤−溶液中、またはその混合物中で行うことができる。
【0081】
本発明の別の態様により、上記の酸化防止剤が添加された重合体状材料、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料、または酸化防止剤が添加された医療用インプラント、のアニーリングは、酸化防止剤−エマルション中、酸化防止剤−NaCl溶液等の酸化防止剤−溶液中、またはその混合物中、大気圧または加圧下、100℃よりも低いまたは高い温度で、かつ重合体状材料の融点未満の温度において、約1分間〜約30日間、行うこともできる。別の態様においては、酸化防止剤が添加された重合体状材料、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を機械加工する前のアニーリングを、重合体状材料の融点よりも高い温度、例えば150℃、160℃、170℃、180℃以上、で行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【0082】
本発明は、永続性および非永続性の機器を包含する医療機器、を含んでなる耐酸化性の医療用インプラント、およびポリエチレン等の重合体状材料を含んでなる包装物の製造方法を提供する。本発明は、固化したUHMWPE等のポリエチレンに、その固化したポリエチレンを架橋させる前、架橋の最中、または架橋させた後に、酸化防止剤を添加し、続いて、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下で、アニーリングする方法に関する。
【0083】
本発明の一態様において、固化したポリエチレンへの添加は、酸化防止剤、例えばビタミンE等のα−トコフェロールを、拡散させることにより行うことができる。本発明の別の態様においては、酸化防止剤の拡散を、温度および/または圧力の増加により促進する。
【0084】
別の態様においては、酸化防止剤が添加された、固化したポリエチレンを、続いて液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下でアニーリングする。
【0085】
本発明の別の態様においては、純粋なビタミンのような純粋な形態、または溶剤に溶解させた形態を包含する、種々の形態において、酸化防止剤を送達する。
【0086】
本発明の別の態様においては、ポリエチレン中への酸化防止剤の拡散速度を、ビタミンE溶液等の酸化防止剤溶液の濃度を増加することにより、増加させる。
【0087】
本発明の別の態様においては、超臨界CO等の超臨界流体中で、すなわち温度を31.3℃の超臨界温度よりも高くして、圧力を73.8バールの超臨界圧よりも高くして、固化したポリエチレンを膨潤させることにより、ポリエチレン中への酸化防止剤の拡散速度を増加させる。
【0088】
酸化防止剤として、例えばビタミンEを用いた場合、樹脂粉末、フレーク、粒子、またはそれらの混合物を、ビタミンEと混合した後で固化させると、一般的に、重合体状材料の色が黄変する。本発明よれば、固化の後に添加することにより、ビタミンEが固化の高い温度および圧力に暴露されることがなく、重合体状材料の変色を防ぐことができる。本発明は、酸化防止剤に対する熱的影響も低減される。酸化防止剤の熱的影響により、重合体状材料を酸化から保護する効果が低減することがある。
【0089】
固化した状態で添加することにより、固化した重合体状材料中に、酸化防止剤の濃度勾配をつくることもできる。摩耗の観点で、医療機器における重合体状材料の酸化が問題となる特定の表面層厚さに、添加することができる。これは、完成した機器、例えば完成した医療用インプラントを、純粋なビタミンE中、またはビタミンEの溶液中若しくはビタミンEのエマルション中に、特定の温度で特定の時間、単純に浸漬することにより、達成することができる。
【0090】
架橋の後に添加することにより、酸化防止剤濃度を表面近傍で高くすることができ、酸化防止剤がポリエチレンから拡散する場合に、表面および表面近くのポリエチレンの酸化安定性を向上させることができる。一般的に、酸化防止剤(例えばビタミンE)は、貯蔵中および/または生体内で使用中に、ポリエチレンから拡散し、そのために、表面区域の酸化防止剤が欠乏し、表面の耐酸化性が低下する。ポリエチレン粉末を固化の前に酸化防止剤と混合すると、酸化防止剤の量を増加させ、表面の欠乏を防ぐことができる。しかしながら、混合物中の酸化防止剤濃度が高くなると、架橋密度のレベルが低下し、従って、摩耗速度が増加する恐れがある。本発明によれば、酸化防止剤の表面濃度を、全体よりも高くなるように、適切に調整することができる。従って、酸化防止剤がポリエチレンから拡散しても、酸化防止剤がそれほど欠乏せず、耐酸化性が維持される。
【0091】
ビタミンEのエマルションは、水とビタミンEとの混合物、および/またはジメチルスルホキシド(DMSO)とビタミンEとの混合物、鉱油または他の親水性流体とビタミンEとの混合物であってよい。エマルションは、攪拌により維持することができる。エマルション中での添加は、どのような温度で、どのような時間で行ってもよく、その両方を変化させて、UHMWPE試料またはインプラント中へのビタミンEの特定の浸透レベルを達成することができる。エマルション中のビタミンE濃度は、約1%〜99%(体積基準)で変えることができる。好ましくは、30%(体積基準)のビタミンEを使用することができる。エマルションは、ビタミンEを親水性流体の混合物、例えば水および/またはDMSOの混合物中に加えることにより、形成することもできる。エマルションは、ビタミンEの溶液、例えばビタミンE/エタノール混合物を、親水性流体または親水性流体の混合物中に加えることにより、形成することもできる。使用するビタミンEの溶液は、溶剤の混合物により形成することもできる。エマルションは、エマルション成分を個別に加熱し、加熱された成分を一緒に混合することによって調製することもでき、例えば水を約100℃に加熱し、ビタミンEを約100℃に加熱し、次いでこれらの加熱された2種類の材料を一緒に混合することにより、エマルションを調製することができる。
【0092】
本明細書に記載する方法により、ビタミンE等の酸化防止剤は、照射の前、照射中、または照射後に、重合体状材料中に添加することができる(例えば図4および5参照)。
【0093】
添加された酸化防止剤は、使用前の貯蔵中または生体内使用中に、医療用インプラントまたは医療機器の製造に使用する重合体状材料から浸出することがある。永続的な医療機器においては、生体内持続時間は、患者の残余寿命全体にわたることがあり、これは機器を植え込んでから患者が死亡するまでの、例えば1〜120年間、典型的には5〜30年間の長さである。酸化防止剤の浸出が問題になる場合、酸化防止剤を添加した後、医療用インプラント若しくは医療機器、またはそれらのいずれかの部分に照射することができる。これによって、ホスト重合体に、共有結合により酸化防止剤を架橋し、医療用インプラントまたは機器から酸化防止剤が浸出するのを確実に防止することができる。あるいは、酸化防止剤の浸出により、酸化防止剤の存在により得られるポリエチレンの耐酸化性および/または他の望ましい特性が悪影響受けないように、酸化防止剤の表面濃度を十分に高く維持することができる。本発明の一態様においては、アニーリング工程の後に、インプラントに、2回目の添加を行い、酸化防止剤の表面濃度レベルを増加することができる。
【0094】
本発明の別の態様においては、樹脂粉末、フレーク、粒子、またはそれらの混合物等である重合体状材料を、酸化防止剤と混合し、次いでその混合物を固化させる。固化した、酸化防止剤が添加された重合体状材料を、機械加工して、医療用インプラント中の部品として、または医療機器として使用する。
【0095】
本発明の別の態様においては、固化した樹脂粉末、成形されたシート、ブロー成形されたフィルム、チューブ、バルーン、フレーク、粒子、またはそれらの組合せ等である、固化した重合体状材料に、拡散により、α−トコフェロールの形態にあるビタミンE等の酸化防止剤を添加することができる。固化した重合体状材料、例えば固化したUHMWPEを、100%ビタミンE中に、あるいは、α−トコフェロールの、エタノールまたはイソプロパノール等のアルコール溶液中に、またはビタミンEと水および/またはジメチルスルホキシド(DMSO)とのエマルション若しくは混合物中に、浸漬することができる。約50重量%α−トコフェロールのエタノール溶液を使用し、CO等の超臨界流体と接触しているUHMWPE中に、拡散させることができる。バルーン、例えばPeBAX(登録商標)、ナイロン、およびPETバルーンに、ビタミンEを添加し、添加の前、添加中、または添加後に、照射することができる。
【0096】
別の態様においては、酸化防止剤が添加された、固化した重合体状材料を、続いて液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下でアニーリングする、例えば大気圧下の沸騰水中、または、100℃以上、かつUHMWPEの融点未満でアニーリングするために、加圧下の沸騰水中で、アニーリングする。別の態様においては、酸化防止剤が添加された、固化した重合体状材料、または酸化防止剤が添加された、固化かつ架橋された重合体状材料の、機械加工前のアニーリングを、重合体状材料の融点よりも高い温度、例えば150℃、160℃、170℃、180℃以上で行うことができる。
【0097】
本発明は、高度に架橋されたポリエチレンから製造される、金属片を含む医療機器、例えば二極人工股関節、補強金属とポリエチレンポストとを備えた頸骨膝挿入物、椎間板系、およびガス滅菌方法により容易に滅菌できない表面を含む全てのインプラント、を製造するための下記の処理工程にも関連する。
【0098】
本発明の一態様においては、医療用インプラントのポリエチレン成分は、別の材料、例えば金属製メッシュ若しくはバック、非金属製メッシュ若しくはバック、頸骨トレー、膝蓋骨トレー、または寛骨臼シェルと緊密に接触し、その際、樹脂粉末、フレークおよび粒子等のポリエチレンを、これらの対向面に直接圧縮成形する。例えば、ポリエチレン頸骨インプラントは、ポリエチレン樹脂粉末を、頸骨トレーに、金属製メッシュ若しくはバックに、または非金属製メッシュ若しくはバックに、圧縮成形することにより、製造される。後者の場合、メッシュは、成長骨(bony in-growth)を通して、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)骨セメント等の接着剤の使用により、骨との固定界面として役立つように成形する。これらの形状は、寛骨臼ライナー、全またはユニコンパートメント膝インプラント用の頸骨トレー、膝蓋骨トレー、および関節窩成分、踝、肘、または指成分を包含する種々の形態を有する。本発明の別の態様においては、成形されたポリエチレンと、インプラントの一部を形成する、金属または非金属片等の他の断片との機械的な連結(インターロック)に関する。
【0099】
ポリエチレンは、固化した形状で、その幾何学的構造を取るため、界面の幾何学的構造は、極めて重要である。ポリエチレンは、高密度の物理的絡み合いを生じる非常に高い分子量を有するために、「形状記憶」の顕著な特性を有する。固化に続く塑性変形により、恒久的形状が変化し、融解時の好ましい高エントロピー形状を達する。この、もとの固化形状に回復するのは、ポリエチレンを固化させた時に達成される「形状記憶」によるものである。
【0100】
残留フリーラジカルを消失させるためにアニーリング付した際の重合体状材料の回復も、高度の配向を有する医療機器においては、問題である。バルーンカテーテルにおいては、高分子鎖を軸方向および半径方向に意図的に整列させることがよく行われる。ポリエチレン製のバルーンカテーテルは、架橋により耐摩耗性が改良されているために、ステントと共に使用した時に有利である。さらに、薬物被覆されたカテーテルおよびステントの使用は、場合によりエチレンオキシド滅菌を阻害し、従って、電離放射線を使用する必要があるため、バルーンカテーテルを、フリーラジカルにより誘発される酸化の有害な影響から保護しなければならない。これらの材料を溶融転移温度近傍でアニーリングすると、材料全体の鎖運動が起こり、部品の寸法公差が失われることがある。架橋または滅菌のために電離放射線で露光する前、露光中、または露光後に、100%のビタミンE、またはα−トコフェロールの、エタノールまたはイソプロパノール等のアルコール溶液を、バルーンカテーテル等の医療機器の中に拡散させることにより、照射後の酸化に関する問題を、熱処理を行わずに、回避することができる。本明細書に記載するように、バルーン、例えばPeBAX(登録商標)、ナイロン、およびPETバルーンに、ビタミンEを添加し、添加前、添加中、または添加後に、照射することができる。
【0101】
本発明の別の態様においては、ポリエチレンを、機械的に噛み合わせながら対向面に圧縮成形した後、所望の線量レベル、例えば約25kGy〜役1000kGy、好ましくは約30kGy〜約150kGy、より好ましくは約50kGy〜約100kGyの電離放射線を使用して、ハイブリッド成分に照射する。本発明の別の態様においては、照射工程によって残留フリーラジカルが発生するため、その後に融解工程を導入し、残留フリーラジカルを消滅させる方法を開示する。ポリエチレンを界面の形状に固化させることにより、重合体の「形状記憶」を設定するので、ポリエチレンは対向面から分離することがない。
【0102】
本発明の別の態様においては、ポリエチレンを架橋させて、ポリエチレンを基材とする医療機器を形成する方法であって、前記機器を、不活性ガスまたは不活性流体等の非酸化性媒体中に浸漬し、前記媒体を、照射されたポリエチレンに融点よりも高い温度(例えば、UHMWPEの融点約137℃を超える温度)に加熱して、結晶性物質を除去し、残留フリーラジカルを再結合/除去する方法を提供する。圧縮成形された重合体を、機械的に連結した界面において形状記憶させて、その記憶を架橋工程により強化するため、ポリエチレンと対向面との間の界面で甚大な分離は起こらない。
【0103】
本発明の別の態様においては、上記したフリーラジカル除去工程に続く照射の際に、高レベルの照射線量が使用されるため、金属と重合体との間の界面が無菌になる。フリーラジカル除去または照射工程の際に、それに誘発されてポリエチレンの外側表面上が酸化された場合、機器表面をさらに機械加工し、酸化された表面層を除去することができる。本発明の別の態様においては、インプラントの融解後に機械加工する場合、融解工程を不活性ガスの存在下で行うことができる。
【0104】
本発明の別の態様においては、製造された機器を滅菌する方法であって、界面は無菌であるが、それ以外の部品が無菌ではない場合、前記機器を、エチレンオキシド、ガスプラズマ、または他のガスでさらに滅菌する、方法を包含する。
【0105】
別の態様において、本発明は、圧縮成形されたインプラントまたは機器を包含する、照射された、酸化防止剤を添加された医療用インプラントまたは機器を包装する方法であって、インプラントまたは機器を、電離放射線またはガス滅菌により滅菌し、無菌の架橋された医療用インプラントまたは医療機器を得る方法を開示する。
【0106】
添加条件
本発明の一態様において、ビタミンEを添加する工程は、UHMWPE製品、インプラント、原料(照射された、または未照射の)を、ビタミンE中、またはビタミンEの溶液中若しくはビタミンEのエマルション中に、浸漬することにより、行うことができる。ビタミンEを添加の際、異なった温度サイクルに付すことができる。例えば、ビタミンEを先ずピーク温度に加熱し、次いで最低温度に冷却し、次いで再度加熱することができる。ピーク温度は、約50℃〜約300℃、または約70℃〜約150℃、または約110℃、または約105℃、または約100℃でよい。最低温度は常にピーク温度より低い。最低温度は、約0℃〜約300℃、または約20℃〜約90℃、または約80℃、または約70℃、または約50℃、または約25℃でよい。UHMWPEを、各ピーク温度または最低温度に、種々の時間保持することができる。各ピーク温度のサイクルを、約1分間〜約30日間、好ましくは約1時間〜約3日間、より好ましくは約2時間〜約24時間、さらに好ましくは約12時間、保持することができる。各最低温度を、約1分間〜約30日間、好ましくは約1時間〜約3日間、より好ましくは2時間〜24時間、さらに好ましくは約2時間、保持することができる。サイクル間の冷却および加熱速度は、約1℃/分〜約100℃/分、好ましくは約10℃/分であってよい。加熱−冷却サイクルは、段階関数、正弦波関数、または他の関数とすることができる。添加サイクルは、少なくともピーク温度まで加熱する1工程、ピーク温度に保持する1工程、最低温度に冷却する1工程、または最低温度に保持する1工程であってよい。あるいは、工程数を増加して、UHMWPE中にビタミンEを所望のレベルまで浸透させることができる。これらの工程は、最低とピーク温度との間の連続サイクルにすることができる。例えば、30℃で1時間浸漬し、10℃/分で105℃または110℃に加熱し、105℃または110℃で1時間浸漬し、10℃/分で30℃に冷却し、同じ浸漬−加熱−浸漬−冷却サイクルを24回繰り返す。あるいは、サイクルを繰り返し、異なった温度で異なった時間、連続的に保持することもできる。例えば、30℃で1時間浸漬し、10℃/分で90℃に加熱し、90℃で1時間浸漬し、10℃/分で30℃に冷却し、同じ浸漬−加熱−浸漬−冷却サイクルを24回、ただし、サイクルごとに、90℃〜110℃の種々のピーク温度で繰り返す。
【0107】
上記の温度サイクルは、添加されたUHMWPE試料またはインプラントを、水、空気または他の媒体中でアニーリングする工程においても、行うことができる。
【0108】
上記の温度サイクルは、添加されたUHMWPE試料またはインプラントの、酸化防止剤/親水性溶剤の溶液またはエマルション媒体によるアニーリング工程においても、行うことができる。例えば、約30%のビタミンEと、約70%の水若しくは約70%のジメチルスルホキシド(DMSO)との混合液、または、約70%のビタミンEと約30%の水若しくは30%のDMSOと混合液を使用できる。混合物液の水は、NaClを含んでいてもよい。
【0109】
添加は、ビタミンE溶液中またはビタミンE−エマルション中で一回浸漬させることで完了させてもよく、例えば浸漬を室温で、または高温で、例えば約100℃で行うことができる。
【0110】
ビタミンEエマルションは、ビタミンEと親水性溶剤、例えば水および/またはジメチルスルホキシドおよび/またはNaCl等との混合液でよい。ビタミンEエマルションは、ビタミンE濃度が約1%〜約99%でよい。ビタミンEエマルションは、親水性流体の混合液、例えば水および/またはDMSOの混合液に、ビタミンEを入れて混合することにより、調製することもできる。ビタミンEエマルションは、ビタミンEの溶液を、親水性流体、または親水性流体の混合物若しくは親水性流体とNaClとの混合液の中に加えることにより、調製することもできる。
【0111】
重合体への添加は、ビタミンEエマルション中で、室温、または室温から親水性流体の沸点までの温度において、行うことができる。
【0112】
ビタミンEエマルションに、塩化ナトリウム(NaCl)を親水性流体に加えて塩添加することにより、添加を、塩添加したエマルション中で行うことができる。塩添加は、親水性流体の沸点を上昇させることができるため、塩添加していない親水性流体の沸点よりも高い温度で添加を行うこともできる。
【0113】
ビタミンEエマルションを高圧で添加して、エマルションの親水性流体成分の沸点を増加させることができる。
【0114】
ビタミンEエマルションに水酸化ナトリウム(NaOH)を混合して、添加をアルカリ性エマルション中で行うことができる。NaOHの添加により、親水性流体の沸点を上昇させることができるため、親水性流体の沸点よりも高い温度で添加を行うこともできる。ビタミンEエマルションまたは混合液の親水性成分の沸点を高くすることができるため、親水性成分の沸点よりも高い温度で添加を行うことができ、例えば沸騰しているビタミンE−水エマルションの添加温度を、100℃よりも高く、例えば約105℃または約110℃にすることができる。
【0115】
重合体を、ビタミンE中、ビタミンE溶液中、若しくはビタミンEエマルション中、またはそれらの混合液中に浸漬することにより、添加を高圧で行うこともできる。
【0116】
添加および添加後のアニーリング
図6Aおよび6Bを参照すると、UHMWPE中へのビタミンEの浸透深度は、添加温度の増加に伴い、増加している。添加に続いて沸騰水中でアニーリングすることにより、UHMWPE中へのビタミンEの浸透深度が増加した。これによって、ビタミンEの表面濃度も低下した。UHMWPE中のビタミンE分布の均一性を高めるために、沸騰水中でアニーリングする方法用いることができる。所望により、アニーリングの後に、追加のビタミンE添加サイクルを実施することにより、表面近傍で低下したビタミンE濃度を増加させることができる。所望により、追加の添加サイクルの後に、例えば沸騰水中でアニーリングサイクルを実施してもよい。
【0117】
酸化防止剤が添加されたUHMWPEのアニーリングは、水中において、他の温度で、例えば室温と水の沸点との間で行うこともできる。あるいは、水は、蒸気または液体の形態で、より高い温度にすることもできる。圧力を増加させて、通常の沸点よりも高い温度において、水を液体の形態とすることができる。水を、液体または蒸気/気体状態に保持しておくため、照射された、酸化防止剤が添加されたUHMWPEを、圧力チャンバー中の水中において、高温かつ高圧でアニーリングすることができる。
【0118】
図7Aおよび7Bを参照すると、ビタミンE感度指数(sensVitE)の深度プロファイルは、ビタミンEエマルション中100℃でUHMWPE立方体に添加した方が、ビタミンE単独中で添加した場合よりも、ビタミンE表面濃度がより高く、かつビタミンEの浸透がより深くなることを示している。ビタミンEエマルション中100℃で24時間添加することにより、ビタミンE単独中で72時間添加したのと同等の拡散プロファイルが得られた(図7B参照)。
【0119】
ビタミンEエマルション添加されたUHMWPEの、添加後の沸騰水中でのアニーリングにより、UHMWPE中への浸透深度を増加させることができる。これによって、ビタミンEの表面濃度も下げることができる。ビタミンEエマルション添加されたUHMWPEを沸騰水中でアニーリングする方法は、UHMWPE中のビタミンE分布の均一性を増加させるのに使用できる。所望により、アニーリングに続いて、追加のビタミンEまたはビタミンEエマルション添加サイクルを実施することにより、表面近傍で低下したビタミンE濃度を増加させることができる。所望により、追加の添加サイクルの後に、例えば沸騰水中で、または沸騰しているビタミンEエマルション中で、アニーリングサイクルを行うこともできる。
【0120】
酸化防止剤−エマルション添加されたUHMWPEのアニーリングは、酸化防止剤−エマルション中で、他の温度、例えば室温からエマルションの親水性成分の沸点までの間の温度において、行うこともできる。あるいは、酸化防止剤−エマルションは、蒸気または液体の形態で、より高い温度にすることもできる。例えば、圧力を増加させることにより、エマルションの親水性成分を、通常の沸点よりも高い温度において液体の形態とすることができる。照射された、酸化防止剤−エマルション添加されたUHMWPEを、エマルションを含む圧力チャンバー中において、高温かつ高圧でアニーリングすることができる。
【0121】
上記のアニーリング方法は、完成した製品、例えば医療用インプラントにも適用することができる。照射されたUHMWPEを機械加工してインプラントを得ることもできる。あるいは、UHMWPE粉末から直接圧縮成形し、次いで照射して、インプラントを得るkともできる。インプラントに、ビタミンEまたはビタミンEエマルションを添加し、続いてアニーリングしてもよい。別の態様においては、添加は、室温〜約145℃、好ましくは約50℃〜約140℃、より好ましくは約90℃〜約120℃、さらに好ましくは約105℃または約90℃に加熱した、ビタミンE中、ビタミンEエマルション中、またはビタミンE溶液中に、インプラントを浸漬することにより、行うことができる。添加は、約1分間〜約30日間、好ましくは約1時間〜約3日間、より好ましくは約10時間〜約3日間、さらに好ましくは約24時間、行うことができる。添加に続いて、水、鉱油、ビタミンEエマルション、ビタミンE溶液等の液体媒体中で、アニーリングを行うことができる。アニーリングは、水中またはビタミンEエマルション中、もしくはビタミンE溶液中等の液体媒体中、略室温〜約100℃、より好ましくは約50℃〜約100℃、さらに好ましくは約100℃の高温で、インプラントを浸漬することにより、行うことができる。水またはビタミンEエマルション等の液体媒体中でのアニーリングは、種々の温度で、蒸気中において、行うこともできる。アニーリングは、約1分間〜約30日間、好ましくは約1時間〜約3日間、より好ましくは約10時間〜約3日間、さらに好ましくは約24時間、行うことができる。
【0122】
添加後の、例えば沸騰水中でのアニーリングにより、酸化防止剤(例えば、ビタミンE等のα−トコフェロール)が、照射されたUHMWPE中により深く浸透する。酸化防止剤がより深く浸透することは、多くの点で有利である。酸化防止剤がより深く浸透することにより、ポリエチレンのより厚い表面層が酸化から保護される。浸透が十分に深ければ、照射されたUHMWPE全体の酸化防止剤濃度を最小限にでき、かつ照射されたUHMWPE全体に耐酸化性が付与される場合もある。
【0123】
アニーリングに続いて、ビタミンEまたはビタミンEエマルションを用いてインプラントにさらに添加を行い、アニーリングサイクル中で低下していることがあるビタミンEの表面濃度を増加させることができる。
【0124】
アニーリングサイクルに続いて、工業的な洗浄サイクル、例えば食器洗浄機サイクルを実施することができる。この洗浄サイクルは、アニーリングサイクルと考えることもできる。
【0125】
添加された重合体状材料のアニーリングは、いずれかの好適な液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下行うことができ、例えば大気圧下の沸騰水中、または、100℃以上、かつUHMWPEの融点未満でアニーリングするために、加圧下の沸騰水中で、アニーリングを行うことができる。別の態様においては、酸化防止剤が添加された重合体状材料、または酸化防止剤が添加された架橋された重合体状材料の、機械加工前のアニーリングは、重合体状材料の融点よりも高い温度、例えば150℃、160℃、170℃、180℃以上で行うことができる。
【0126】
添加された重合体状材料のアニーリングは、水、ビタミンEエマルション、ビタミンE溶液、または鉱油等の流体中において、加圧下、100℃よりも高く、重合体状材料の融点よりも低い温度で、または、機械加工の前は重合体状材料の融点よりも高い温度で、例えば150℃、160℃、170℃、180℃以上で行うことができる。
【0127】
添加および添加後のアニーリング工程は、上記したように、添加前アニーリング工程と共に行うことができ、例えば、重合体状材料または医療用インプラントを水中で煮沸し、次いで添加するか、または、水中で煮沸し、次いで添加およびアニーリングすることができる。
【0128】
上記の添加および添加後のアニーリング技術は、あらゆる酸化防止剤またはあらゆる他の添加剤と共に使用することができる。
【0129】
添加、添加後のアニーリング、および耐酸化性重合体状材料製造の方法は、米国特許出願第10/757,551号(2004年1月15日提出)にも記載されており、この文献は引用されることにより、本明細書の開示の一部とされる。
【0130】
定義
本発明の態様を説明するため、本願において使用する種々の用語の定義を記載する。
【0131】
「酸化防止剤」とは、当該分野で公知の内容を意味する(例えば、国際特許第WO01/80778号、米国特許第6,448,315号参照)。アルファ−およびデルタ−トコフェロール、プロピル、オクチル、またはドデシルガレート、乳酸、クエン酸、および酒石酸、ならびにそれらの塩、オルトホスフェート、トコフェロールアセテートである。好ましくはビタミンEである。
【0132】
「酸化防止剤−エマルション」または「酸化防止剤−溶液」、例えば「ビタミンE−エマルション」または「ビタミンE−溶液」の用語は、ビタミンE(α−トコフェロール)と水、鉱油、または他の親水性流体、および/またはジメチルスルホキシド(DMSO)および/またはNaClおよび/またはNaOH、またはそれらの混合物、との混合物または溶液を意味する。この混合物は、ビタミンE等の酸化防止剤を、エタノールまたはイソプロパノール等のアルコール、親水性流体または親水性流体の混合物、添加した混合物でよい。エマルション中のビタミンE等の酸化防止剤の濃度は、約1%(体積基準)〜99%(体積基準)でよい。
【0133】
「超臨界流体」とは、当該分野で公知である、超臨界プロパン、アセチレン、二酸化炭素(CO)等を意味する。これに関して、臨界温度とは、その温度を超えると、圧力のみではガスが液化できない温度である。臨界温度において、ある圧力未満で、ある物質がその液体と平衡状態にあるガスとして存在し得る場合、その圧力が臨界圧である。超臨界流体状態とは、一般的に、流体が、超臨界流体や超臨界流体混合物が得られるような温度および圧力にあることを意味し、その温度は超臨界温度よりも高く、COでは31.3℃であり、その圧力は超臨界圧よりも高く、COでは73.8バールである。より詳細には、超臨界条件とは、高温かつ高圧で、例えばUHMWPEと酸化防止剤とを混合する条件を意味し、超臨界流体混合物が形成された後、その混合物からCOが蒸発すると、酸化防止剤が添加されたUHMWPEが得られる(例えば、米国特許第6,448,315号および国際特許第WO02/26464号を参照)。
【0134】
本明細書において使用する用語「圧縮成形」とは、一般的には、当該分野で公知の内容、とりわけ重合体状材料を高温成形することに関連する内容を意味し、粉末形態を包含する、いずれかの物理的状態にある重合体状材料は、スラブ形態、または、頸骨挿入物、寛骨臼ライナー、関節窩ライナー、膝蓋骨、またはユニコンパートメントインプラント等の医療用インプラントの金型内で圧縮され、機械加工される。
【0135】
本明細書において使用する用語「直接圧縮成形」とは、一般的には、当該分野で公知の内容、とりわけポリエチレンを基材とする医療用インプラント等の機器に適用できる成形を意味し、粉末形態を包含するいずれかの物理的状態にあるポリエチレンは、個体の支持体、例えば金属製バック、金属製メッシュ、または溝、刻み目若しくは切り取り部を含む金属表面へ押圧される。圧縮成形には、ポリエチレンを、樹脂粉末、フレークおよび粒子を包含する種々の状態で、高温圧縮成形し、頸骨挿入物、寛骨臼ライナー、関節窩ライナー、膝蓋骨、またはユニコンパートメントインプラント等の医療用インプラントを形成することも、含まれる。
【0136】
用語「機械的に連結」とは、一般的には、ポリエチレンとその対向面とが連結していることを意味し、これは、圧縮成形、熱、および照射を包含する種々の方法で行われ、それによって、連結する界面を形成し、連結したポリエチレンを「形状記憶」させる。そのような連結した界面を有する機器の成分を「ハイブリッド材料」と呼ぶことができる。そのようなハイブリッド材料を有する医療用インプラントは、実質的に無菌の界面を含む。
【0137】
用語「実質的に無菌」とは、界面材料若しくはハイブリッド材料、または界面を含む医療用インプラント等の物体において、その界面が、医療用として許容できる程度に十分無菌である状態、すなわち感染を引き起こさないか、または修復手術を必要としない、状態を意味する。
【0138】
「金属製メッシュ」とは、種々の細孔径、例えば0.1〜3mmの多孔質金属表面を意味する。多孔質表面は、いくつかの異なった方法により得られ、例えば金属粉末を結合剤と共に焼結させ、次いでこの結合剤を除去して多孔質表面を残すか、直径0.1〜3mmの短い金属繊維を焼結させるか、または異なったサイズの金属製メッシュを重ね合わせて、連続開気孔構造を得る。
【0139】
「骨セメント」とは、当該分野で公知の、医療機器を骨に結合させるのに使用する接着剤を意味する。典型的には、骨セメントは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)から製造される。
【0140】
「高温圧縮成形」とは、樹脂粉末、フレーク、または粒子のような、いずれかの形態にあるポリエチレンに、圧力および温度をかけて圧縮成形し、新しい幾何学的構造を付与することを意味する。高温(ポリエチレンの融点より高い)圧縮成形の際、ポリエチレンをその融点よりも高い温度に加熱し、所望の形状を有する型の中に押し込み、加圧下で冷却して、所望の形状を保持する。
【0141】
「形状記憶」とは、当該分野で公知のように、UHMWPE等のポリエチレンが融解した時に、好ましい高エントロピー形状を取る特性を意味する。樹脂粉末を圧縮成形して固化させた時に、好ましい高エントロピー形状となる。
【0142】
「検出可能な残留フリーラジカルが実質的に無い」とは、ポリエチレン成分の、酸化的な劣化を避けるのに十分なフリーラジカルを排除した状態を意味し、これは電子スピン共鳴(ESR)により評価できる。「検出可能な残留フリーラジカル」とは、ESRにより検出可能なフリーラジカルの最低レベル以上であることを意味する。現状技術水準の計器で検出可能なフリーラジカルの最低レベルは、約1014スピン/グラムであり、従って、用語「検出可能な」とは、ESRによる1014スピン/グラムの検出限界を意味する。
【0143】
数値および範囲における用語「約」または「およそ」とは、本発明を意図した通りに実施できるように記載された値または範囲、例えば本明細書に含まれる開示から当業者には明らかなように、所望の程度の結晶化度または架橋を有する、および/または所望の程度にフリーラジカルが少なくなるように記載された値または範囲に、近似するかまたはそれに近い値または範囲であることを意味する。これは、少なくとも部分的に、重合体組成物の特性が異なることに起因する。従って、これらの用語は、系統的な誤差から生じる値を超える値を包含する。
【0144】
重合体状材料 超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)とは、分子量が約500,000を超える、好ましくは約1,000,000を超える、より好ましくは約2,000,000を超える、直鎖状の、分岐していないエチレン鎖を意味する。分子量は、約8,000,000以上に達する場合が多い。初期平均分子量とは、照射前のUHMWPE出発材料の平均分子量を意味する。米国特許第5,879,400号、PCT/US99/16070/号(1999年7月16日提出)、およびPCT/US97/02220/号(1997年2月11日提出)を参照。
【0145】
本発明の製品および方法は、種々の種類の重合体状材料、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、またはそれらの混合物を含む、すべてのポリオレフィンにも適用される。重合体状材料は、本明細書において使用するように、種々の形態のポリエチレン、例えば樹脂粉末、フレーク、粒子、粉末、若しくはそれらの混合物、または上記のいずれかに由来する固化した形態にも適用される。
【0146】
架橋性ポリエチレン重合体状材料
UHMWPE等の重合体状材料は、架橋薬品(例えば過酸化物および/またはシラン)および/または照射を使用する方法を含む、種々の手法により、架橋させることができる。架橋させるための好ましい手法としては、照射が挙げられる。架橋されたUHMWPEは、米国特許第5,879,400号、第6,641,617号、およびPCT/US97/02220/号の教示により得ることができる。
【0147】
固化した重合体状材料
「固化した重合体状材料」とは、固体の、固化した棒状原料、原料から機械加工した固体材料、または、固化させることができるいずれかの形態、例えば樹脂粉末、フレーク、粒子、またはそれらの混合物等の本明細書に記載したようないずれかの形態から得られる半固体形態の重合体状材料を意味する。固化した重合体状材料は、スラブ、ブロック、固体の棒状原料、機械加工した部品、フィルム、チューブ、バルーン、プリフォーム、インプラント、または完成した医療機器の形態でもよい。
【0148】
「非永続性機器」の用語は、当該分野で公知の、数ヶ月よりも短い期間において体内にインプラントされることを意図した機器を意味する。非永続性機器の中には、体内に数秒間〜数分間存在するものもあれば数日、数週間、または数ヶ月までインプラントすることができるものもある。非永続性装置としては、例えばカテーテル、チューブ、静脈内チューブ、および縫合がある。
【0149】
「医薬化合物」とは、本明細書において使用するように、粉末、懸濁液、エマルション、粒子、フィルム、ケーキ、または成形された形態にある薬物を意味する。薬物は、独立していても、医療機器の成分として組み込まれたものでもよい。
【0150】
「圧力チャンバー」の用語は、内部圧力を大気圧よりも高いレベルに加圧できる容器またはチャンバーを意味する。
【0151】
「包装物」の用語は、医療機器を中に入れて包装および/または輸送する容器を意味する。包装物としては、バッグ、ブリスターパック、熱収縮包装物、箱、アンプル、ビン、チューブ、トレー等、またはそれらの組合せを挙げることができる。一つの部品を複数の個々の種類の包装物で輸送することができ、例えば部品をバッグに入れ、それをトレーに載せ、それを箱に入れることができる。その組立構造全体を滅菌し、輸送することができる。包装物材料としては、植物性羊皮紙、多層ポリエチレン、ナイロン6、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびエチレン−酢酸ビニル(EVA)共重合体があるが、これらに限定されるものではない。
【0152】
「密封」の用語は、チャンバーまたは包装物中の開口部を閉鎖することにより、チャンバーまたは包装物を外部環境から隔離する工程を意味する。密封は、熱の作用(例えば熱的密封)、接着剤の使用、折り曲げ、冷間成形、打ち抜き、または圧力作用を包含する種々の手段により、行うことができる。
【0153】
「ブリスターパック」の用語は、硬質プラスチックボウルと、剥がすか破いて、包装された内容物を取り出す蓋とを含んでなる包装物を意味する。蓋は、アルミニウム、またはTyvek等のガス透過性メンブランから製造される場合が多い。ブリスターパックは、ブロー成形、すなわち、プラスチックをその変形温度よりも高い温度に加熱して、加圧ガスによりプラスチックを必要な形状に変形させる製法により、製造されることが多い。
【0154】
「熱収縮性包装物」の用語は、内部に高度の配向を有するプラスチックフィルム、バッグ、またはチューブを意味する。熱を作用させることにより、配向した鎖が縮むにつれて包装物が収縮し、医療機器の周囲を緊密に包み込む。
【0155】
「椎間板系」の用語は、脊柱の中で脊椎を分離する人造円盤を意味する。この系は、一種類の材料から構成されていても、複合材料構造、例えば金属縁部を含む架橋されたUHMWPEであってもよい。
【0156】
「バルーンカテーテル」の用語は、当該分野で公知の、血管または類似物の内側空間を拡張するために使用される機器を意味する。バルーンカテーテルは、通常、膨脹可能な先端を有する薄壁重合体機器であり、閉塞した動脈、ステントを広げることができるか、または血圧測定に使用できる。一般的に使用される重合体バルーンとしては、例えばポリエーテル−ブロックコ−ポリアミド重合体(PeBAX(登録商標))、ナイロン、およびポリエチレンテレフタレート(PET)バルーンがある。バルーンおよびカテーテルに一般的に使用される重合体材料としては、例えばポリエーテルとポリアミドの共重合体(例えばPeBAX(登録商標))、ポリアミド、ポリエステル(例えばPET)、およびカテーテル製造に使用されるエチレンビニルアルコール(EVA)がある。
【0157】
医療機器チューブ
静脈内チューブを包含する医療機器チューブに使用される材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびブレンドまたはアロイ、例えば熱可塑性エラストマー、ポリアミド/イミド、ポリエステル、ポリカーボネート、または各種のフルオロポリマーがある。
【0158】
「ステント」の用語は、当該分野で公知の、血管等の体内管を開いた状態に保持するのに使用される、金属製または重合体製の籠状の機器である。ステントは、通常、体内に潰れた状態で導入され、体内の所望の位置でバルーンカテーテルにより拡張され、そこにとどまる。
【0159】
「溶融転移温度」とは、材料中のすべての結晶性領域が消失する、最低温度を意味する。
【0160】
本発明における用語「界面」とは、インプラントが、ある部品と別の断片(例えば金属または非金属成分)とが接触した配置にある場合に形成される、医療機器中の隙間として定義され、重合体と、金属または別の重合体状材料との間に界面が形成される。例えば、重合体−重合体、または重合体−金属の界面は、医療用補欠物、例えば義関節および骨置換部品、例えば股、膝、肘または踝置換物中にある。
【0161】
工場で組み立てられた部品とポリエチレンとが緊密に接触した医療用インプラントには、界面が形成される。ガス滅菌工程の際、エチレンオキシドガスまたはガスプラズマが界面に容易に入り込むことはない。
【0162】
照射
本発明の一態様においては、好ましくはイオン化する種類の放射線を使用する。本発明の別の態様により、使用する電離放射線の線量は約25kGy〜約1000kGyである。放射線量は、約25kGy、約50kGy、約65kGy、約75kGy、約85kGy、約100kGy、約150kGy、約200kGy、約300kGy、約400kGy、約500kGy、約600kGy、約700kGy、約800kGy、約900kGy、若しくは約1000kGy、または約1000kGyを超える、あるいはそれらの値近傍の若しくはその間のすべての整数でよい。好ましくは、放射線量は、約25kGy〜約150kGyまたは約50kGy〜約100kGyでよい。ガンマ線および/または電子線を包含するこれらの種類の放射線が、細菌、ウイルス、または他の、界面を含む医療用インプラントを汚染する可能性がある微生物剤を殺すか、または不活性化させて、製品を無菌化する。本発明に応じて電子線またはガンマ線でよい照射は、酸素を含む空気雰囲気中で行うことができ、その際、雰囲気中の酸素濃度は少なくとも1%、2%、4%、または約22%まで、もしくはそれらの値の近傍またはその間のすべての整数である。別の態様においては、照射を不活性雰囲気中で行うことができ、その際、雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等、またはそれらの組合せからなる群から選択されるガスを含む。照射は、真空中で行うこともできる。
【0163】
本発明の好ましい態様においては、照射は、増感性雰囲気中で行うことができる。増感性雰囲気は、重合体中に拡散する十分に小さい分子サイズを有し、かつ照射によって、多官能性グラフト化部分として作用する、気体状物質を含んでなることができる。例としては、置換または未置換のポリ不飽和炭化水素、例えばアセチレン等のアセチレン系炭化水素、ブタジエンおよび(メタ)アクリレートモノマー等の共役または非共役オレフィン系炭化水素、一塩化硫黄が挙げられ、クロロ−トリ−フルオロエチレン(CTFE)またはアセチレンが特に好ましい。「気体状」とは、本明細書においては、増感性雰囲気が、照射温度で、その臨界温度よりも高温または低温で、気相にあることを意味する。
【0164】
金属断片
本発明においては、重合体状材料との界面を形成する断片は、例えば金属である。本発明により、ポリエチレンと機能的な関係にある金属断片は、例えばコバルトクロム合金、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、またはニッケルコバルト合金から製造することができる。
【0165】
非金属断片
本発明においては、重合体状材料との界面を形成する断片は、例えば非金属である。本発明により、ポリエチレンと機能的な関係にある非金属断片は、例えばセラミック材料から製造することができる。
【0166】
「不活性雰囲気」の用語は、酸素含有量が1%以下である環境、より好ましくは滅菌処理の際に、重合体状材料中のフリーラジカルが酸化しないで架橋を形成できるような、酸素フリーの条件、を意味する。不活性雰囲気は、重合体状材料、例えばUHMWPEを含んでなる医療機器を酸化させる恐れがあるOを避けるために使用する。不活性雰囲気条件、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、またはネオンは、電離放射線により重合体状医療用インプラントを滅菌処理するのに使用される。
【0167】
不活性雰囲気条件、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオンまたは真空は、電離放射線により医療用インプラント中の、重合体−金属および/または重合体−重合体の界面を滅菌処理することにも使用される。
【0168】
不活性雰囲気条件は、窒素ガスまたはシリコーン油等の、不活性ガス、不活性流体または不活性液体媒体も意味する。
【0169】
「無酸素環境」とは、酸素含有量が21%〜22%未満、好ましくは酸素含有量が2%未満の窒素等のガスを含む環境を意味する。無酸素環境中の酸素濃度は、少なくとも1%、2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、または約22%まで、あるいはその値の近傍またはその値の間のすべての整数でもよい。
【0170】
「真空」の用語は、滅菌処理の際に、重合体状材料中のフリーラジカルが酸化せずに架橋を形成できるような、感知できる量のガスを含まない環境を意味する。真空は、重合体状材料、例えばUHMWPEを含んでなる医療機器を酸化する恐れがあるOを避けるために使用する。真空条件は、電離放射線により重合体状医療用インプラントを滅菌処理するのに使用される。
【0171】
市販の真空ポンプを使用して真空条件とすことができる。真空条件は、電離放射線により、医療用インプラント中の重合体−金属および/または重合体−重合体の界面を滅菌処理する時にも、使用される。
【0172】
残留フリーラジカル
「残留フリーラジカル」とは、重合体を、ガンマ線またはe線照射等の電離放射線で露光した時に発生するフリーラジカルを意味する。フリーラジカルの中には、互いに再結合して架橋を形成するものもあれば、結晶性領域中に捕獲されるものもある。捕獲されたフリーラジカルは、残留フリーラジカルと呼ばれる。
【0173】
本発明の一態様によれば、電離放射線(例えばガンマ線または電子線)照射の際に発生した、重合体中の残留フリーラジカルのレベルは、好ましくは、電子スピン共鳴を使用して測定し、適切に処理し、フリーラジカルを減少させる。
【0174】
滅菌
本発明の一態様においては、架橋されたUHMWPE等の重合体状材料を含む医療用インプラントの滅菌方法を開示する。本方法は、例えば、線量レベルが約25〜70kGyのガンマ線または電子線放射でイオン化滅菌することにより、あるいはエチレンオキシドまたはガスプラズマでガス滅菌することにより、医療用インプラントを滅菌することを含んでなる。
【0175】
本発明の別の態様においては、架橋されたUHMWPE等の重合体状材料を含む医療用インプラントの滅菌方法を開示する。本方法は、例えば、線量レベルが約25〜200kGyのガンマ線または電子線放射で、イオン化滅菌することにより、医療用インプラントを滅菌することを含んでなる。この滅菌の線量レベルは、照射に使用する標準的なレベルよりも高い。これは、滅菌の際に医療用インプラントを架橋させるか、またはさらに架橋させるためである。
【0176】
別の態様において、本発明は、別の部品への圧縮成形により固化した重合体状材料を含む、別の部品と接触している、架橋されたUHMWPE等の重合体状材料を含み、それによって、界面および連結したハイブリッド材料を形成する医療用インプラントの滅菌方法であって、界面を電離放射線により滅菌し、媒体を照射されたUHMWPEの融点より高い温度(約137℃を超える)に加熱して、結晶性物質を除去し、残留フリーラジカルを再結合/排除し、そして医療用インプラントを、エチレンオキシドまたはガスプラズマ等のガスで滅菌する、ことを含んでなる、方法を開示する。
【0177】
加熱
本発明の一態様においては、製造の際に、医療用インプラントの重合体状部品における、添加された酸化防止剤の均一性を、重合体状材料の融解温度に応じた時間加熱することにより、高める方法を開示する。例えば、好ましい温度は約137℃以下である。本発明の別の態様においては、空気中の酸素濃度が、少なくとも1%、2%、4%、または約22%まで、あるいはそれらの値の近傍またはそれらの値の間のすべての整数である、酸素を含む雰囲気中で行うことができる加熱工程を開示する。別の態様において、本発明は、不活性雰囲気とインプラントとが接触させて実施できる加熱工程を開示するものであり、不活性雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等、またはそれらの組合せからなる群から選択されるガスを含む。別の態様において、本発明は、酸素含有量が1%以下である、不活性流体媒体等の非酸化性媒体と、インプラントとを接触させて実施し得る加熱工程を開示する。別の態様において、本発明は、インプラントが真空中にある間に実施得る加熱工程を開示する。
【0178】
別の態様において、本発明は、酸化防止剤の均一性を増減する、インプラントの加熱方法を記載する。UHMWPE等の重合体状原料を含んでなる医療機器を、酸化防止剤を添加した後に、通常、約137℃以下の温度に加熱する。酸化防止剤が所望の均一性になるまで、医療機器を不活性媒体中で加熱する。
【0179】
「融点未満」または「溶融状態より低い温度」の用語は、UHMWPE等のポリエチレンの融点よりも低い温度を意味する。「融点未満」または「溶融状態より低い温度」の用語は、145℃未満であり、これはポリエチレンの融解温度によって異なり、例えば145℃、140℃または135℃であり、処理しているポリエチレンの特性、例えば平均分子量および分子量範囲、バッチ変動等によっても異なる。融解温度は、典型的には示差走査熱量測定器(DSC)を使用し、毎分10℃の昇温速度で測定する。このようにして測定されるピーク融解温度を融点と呼び、あるグレードのUHMWPEでは約137℃になる。融解温度を測定し、照射およびアニーリング温度を決定するために、出発ポリエチレン材料に対して融解試験を行うのが好ましい場合がある。
【0180】
「アニーリング」の用語は、重合体をそのピーク融点よりも低い温度に加熱することを意味する。アニーリング時間は、少なくとも1分間〜数週間まで長くてよい。一態様においては、アニーリング時間は約4時間〜約48時間、好ましくは24〜48時間、より好ましくは約24時間である。「アニーリング温度」は、本発明によるアニーリングのための熱的条件を指す。
【0181】
「アニーリング」の用語は、酸化防止剤が添加された、または酸化防止剤−エマルションで添加された、重合体状材料またはUHMWPE系材料を、液体または気体状環境において、種々の温度および圧力条件下加熱することも意味する。例えば、アニーリングは、水中または酸化防止剤−エマルション中若しくは酸化防止剤−溶液中で、室温から、大気圧下での水またはエマルションの親水性成分の沸点まで、または、加圧下において、100℃以上、かつ重合体状材料の融点未満の温度で行うことができる。酸化防止剤が添加された重合体状材料、または酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料の、機械加工前のアニーリングも、重合体状材料の融点よりも高い温度、例えば150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃以上で、行うことができる。
【0182】
液体または気体状環境におけるアニーリングは、約1分間〜約30日間、好ましくは約1時間〜約3日間、より好ましくは約10時間〜約3日間、さらに好ましくは約24時間行うことができる。
【0183】
重合体状材料またはUHMWPE系材料のアニーリングも、加圧下にある流体中で、100℃以上、かつ重合体状材料の融点未満の温度で行うことができる。重合体状材料またはUHMWPE系材料の、機械加工前のアニーリングも、材料の融点よりも高い温度、例えば150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃以上で、行うことができる。
【0184】
「流体」の用語は、鉱油、水、アルコール、およびジメチルスルホキシド、スチーム、蒸気、エーロゾル、エマルション、溶液、混合物等を包含する、液体または気体を意味する。
【0185】
「接触した」の用語は、増感剤がその意図する機能を果たせるような、物理的な近傍または接触を包含する。好ましくは、ポリエチレン組成物またはプリフォームを、増感剤が浸漬されるように十分に接触さることにより、十分な接触が確保される。浸漬は、試料を特殊な環境中に十分な時間、適切な温度で、配置することとして定義され、例えば試料を酸化防止剤溶液中に浸漬する。この環境を、室温〜材料の融点よりも低い温度に加熱する。接触時間は、少なくとも約1分間〜数週間であり、この持続時間は、環境の温度によって異なる。
【0186】
「非酸化性」の用語は、重合体状材料を、空気中、80℃の加熱炉で5週間エージングさせた後の酸化指数(A.U.)が、約0.5未満である重合体状材料の状態を意味する。例えば、非酸化性の架橋された重合体状材料は、一般的に、エージング期間の後、約0.5未満の酸化指数(A.U.)を示す。
【0187】
「添加」の用語は、当該分野で周知の(例えば米国特許第6,448,315号および第5,827,904号を参照)、上記した過程である。これに関して、添加は、一般的に、本明細書で記載するように、重合体状材料または重合体状材料を含む医療用インプラントを酸化防止剤と特定の条件下で接触させることを意味し、例えばUHMWPEに、超臨界条件下で酸化防止剤を添加する。
【0188】
より詳しくは、固化した重合体状材料は、材料を酸化防止剤の溶液中に浸漬することにより、酸化防止剤を添加することができる。これによって、酸化防止剤を重合体中に拡散させることができる。例えば、材料を100%酸化防止剤中に浸漬することができる。また、材料を酸化防止剤溶液中に浸漬することもでき、その際、キャリヤー溶剤を使用して酸化防止剤濃度を希釈することができる。酸化防止剤の拡散深度を増加させるために、より長時間、より高温で、より高圧で、および/または超臨界流体の存在下で、材料に添加することができる。
【0189】
添加工程は、重合体状材料、医療用インプラント、または機器を、ビタミンE等の酸化防止剤中に、約1時間〜数日間、好ましくは少なくとも約1時間〜24時間、より好ましくは少なくとも1時間〜16時間、浸漬すること含んでもよい。酸化防止剤を室温から約160℃まで加熱することができ、添加を室温から約160℃までで行うことができる。好ましくは、酸化防止剤を105℃または110℃に加熱し、添加を105℃または110℃で行うことができる。
【0190】
添加工程に続いて、空気中または無酸素環境において加熱工程を実施し、重合体状材料、医療用インプラント、または機器中の酸化防止剤の均一性を改善することができる。加熱は、ピーク融点で、またはそれよりも上または下で行うことができる。例えば、重合体状材料の、機械加工前の添加は、重合体状材料の融点よりも高い温度、例えば150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃以上で、行うことができる。
【0191】
本発明の別の態様においては、医療機器を洗浄してから包装および滅菌する。
【実施例】
【0192】
下記の、本発明を全く制限しない例により、本発明をさらに説明する。
ビタミンE 他に指示がない限り、本明細書に記載する実験には、ビタミンE(Acros(商品名)99%D−α−トコフェロール、Fisher Brand)を使用した。使用したビタミンEは、色が非常に明るい黄色であり、室温で粘性の液体である。その融点は2〜3℃である。
【0193】
例1 ビタミンEと混合したUHMWPEの固化
ビタミンEをエタノールに溶解させ、ビタミンE濃度10%(w/v)の溶液を形成した。次いで、このビタミンE−エタノール溶液をGUR 1050超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)樹脂と乾燥ブレンドした。2つのバッチ、一方はビタミンE濃度0.1%(w/v)、他方が0.3%(w/v)、を調製した。ビタミンE濃度は、エタノールを蒸発させた後に測定した。次いで、両バッチをClaver実験室用ベンチプレスで、空気中、温度230℃で固化させた。固化したブロックは変色した。0.1%(w/v)溶液は暗黄色を呈し、0.3%(w/v)溶液は褐色であった。この変色は固化したUHMWPEブロック全体にわたっていた。
【0194】
変色は、酸素の存在下でビタミンEが分解した結果であると考えられた。
【0195】
例2 空気中または真空中で熱に暴露した時のビタミンEの変色
ビタミンEを高温で空気に暴露することにより変色するか、そして、ビタミンEを真空中で加熱することにより、変色を回避できるか、を確認するための実験を行った。
【0196】
上記のビタミンE溶液一滴を実験室用スライドガラス上に置いた。次いで、このスライドガラスを、180℃の空気対流式加熱炉中で、空気中で1時間加熱した。ビタミンEは暗褐色に変色した。この変色は、ビタミンEの分解によるものである可能性が最も高い。
【0197】
ビタミンE溶液一滴を実験室用スライドガラス上に置いた。次いで、このスライドガラスを、180℃の真空熱炉に入れ、真空中で1時間加熱した。空気中加熱と対照的に、ビタミンEは、真空中加熱に続いて、認識できる変色を示さなかった。従って、空気が存在しない場合、ビタミンEの熱処理は、認識できる変色を起こさない。
【0198】
例3 無酸素環境におけるUHMWPE/ビタミンEの固化
ビタミンEをエタノールに溶解させ、溶液を形成した。次いで、GUR 1050ポリエチレン樹脂を真空中で脱気するか、または無酸素環境中に保持し、溶解している酸素を実質的に除去する。次いで、ビタミンE−エタノール溶液をGUR 1050ポリエチレン樹脂と乾燥ブレンドする。2つのバッチ、一方は脱気したGUR 1050、他方は受領した状態のGUR 1050ポリエチレン樹脂、を調製した。次いで、乾燥ブレンドした混合物をClaver実験室用ベンチプレスで個別に固化させる。固化を無酸素環境で行い、固化した原料の変色を最少に抑えることができる。
【0199】
例4 0.1%および0.3%のビタミンEで処理したピンのピン−オン−ディスク(POD)摩耗試験
UHMWPEの架橋効率に対するビタミンEの影響を確認するための実験を行った。ビタミンE(α−トコフェロール)をGUR 1050UHMWPE粉末と、2種類の濃度、例えば0.1および0.3重量/体積%、で混合し、固化させた。UHMWPEは、圧縮成形によりブロックに固化させた。比較試料として使用するために、追加の固化を、ビタミンEを加えずに行った。3種類の固化したブロックを半分に機械加工し、それぞれの半分1個を、真空中で包装し、ガンマ放射線(Steris, Northborough, MA)で100kGyに照射した。
【0200】
直径9mm、長さ13mmの円筒形ピンを照射したブロックから切り出した。これらのピンを、先ず空気中、80℃で5週間の促進エージングにかけ、続いて、二方向ピン−オン−ディスク(POD)で試験した。POD試験は、合計2百万サイクル行い、50万サイクル毎に摩耗の重量評価を行った。試験は、子牛血清を潤滑剤として使用し、頻度2Hzで行った。
【0201】
放射線を照射せず、ビタミンEを添加しなかったUHMWPEの典型的な摩耗速度は、百万サイクルあたり約8.0ミリグラムである。ビタミンEを加え、100kGy照射したピンは、ビタミンE濃度0.1%および0.3%に対して、それぞれ百万サイクルあたり2.10±0.17および5.01±0.76ミリグラムであった。ビタミンE含有量が高い程、耐摩耗性の低下が少ない。
【0202】
ビタミンE含有量を増加することにより、放射線により誘発されるポリエチレンの長期間における酸化不安定性を低下させることができる。換言すると、ビタミンEとブレンドすることにより、UHMWPEの照射後の耐酸化性を改良することができる。しかし、高照射線量により達成されるUHMWPEの架橋密度は、混合物中に含まれるビタミンEの濃度増加と共に減少する。
【0203】
例5 固化したポリエチレン中へのビタミンE拡散
固化したGUR 1050UHMWPEの機械加工した表面上に空気中でビタミンE一滴を置いた。6時間以内に、機械加工した表面上にビタミンEの滴は最早見られず、ポリエチレン中に拡散したことを示している。
【0204】
例6 照射したポリエチレン中へのビタミンE拡散
圧縮成形したGUR 1050UHMWPE(Perplas, Lancashire, UK)を、ガンマ放射線を使用し、線量レベル100kGyで照射した。直径9mmおよび高さ13mmの円筒形ピン(n=10)を照射した原料から機械加工した。5本のピンの(n=5)基底表面の一方をビタミンEで濡らした。他の5本のピンは比較用試料として使用した。2グループのピンを空気中、室温で16時間放置した。次いで、これらのピンを80℃の対流加熱炉中に入れ、空気中で促進エージングにかけた。
【0205】
5週間後に、エージングしたピンを加熱炉から取り出し、酸化の程度を確認した。これらのピンを先ず円筒の軸に沿って半分に切断した。次いで、切断された表面の一方をマイクロトーム処理(150〜200マイクロメートル)し、BioRad UMA 500赤外顕微鏡を使用し、円筒の基底表面の一方に対応する縁部から離れる距離の関数として、赤外スペクトルを測定した。ビタミンE処理したピンの場合、酸化レベルを、ビタミンEで濡らした基底表面から定量的した。
【0206】
対応する基底線を差し引いた後、カルボニル振動(1740cm-1)下にある面積を、1370cm-1におけるメチレン振動下にある面積に対して正規化することにより、酸化指数を計算した。
【0207】
照射されたポリエチレンの表面上にビタミンEを塗布することにより、酸化レベルが実質的に低下した。従って、この方法は、照射されたポリエチレン、例えば重合体状材料を含む医療機器、の長期間の酸化安定性を改良するのに使用できる。
【0208】
例7 ポリエチレン中へのビタミンE拡散に続く照射
圧縮成形したGUR 1050UHMWPE(Perplas, Lancashire, UK)を、一片が19mmの立方体(n=4)に機械加工した。2個の立方体の表面をビタミンEで濡らし、室温で16時間放置した。他の2個の立方体はビタミンEを添加しなかった。ビタミンEを含む、または含まない各グループの立方体1個を無酸素環境(例えば酸素約2%)で包装し、残りの各グループの立方体5個を空気中で包装した。これらの立方体を、ガンマ放射線を使用し、線量レベル100kGyで、それぞれの包装物中で照射した。
【0209】
照射された立方体を包装物から取り出し、80℃の加熱炉中に入れ、空気中で促進エージングを行った。
【0210】
5週間後に、エージングした立方体を加熱炉から取り出し、酸化の程度を確認した。これらの立方体を先ず半分に切断した。次いで、切断された表面の一方をマイクロトーム処理(150〜200マイクロメートル)し、BioRad UMA 500赤外顕微鏡を使用し、縁部の一方から離れる距離の関数として、赤外スペクトルを測定した。
【0211】
対応する基底線を差し引いた後、カルボニル振動(1740cm-1)下にある面積を、1370cm-1におけるメチレン振動下にある面積に対して正規化することにより、酸化指数を計算した。
【0212】
空気または無酸素環境中で照射する前にポリエチレンの表面上にビタミンEを塗布することにより、酸化レベルが実質的に低下した。従って、この方法は、ポリエチレンの長期間の酸化安定性を改良するのに使用でき、そのポリエチレンを続いて照射し、重合体状材料、例えば重合体状材料を含む医療機器、を滅菌する/架橋させることができる。
【0213】
例8 高度に架橋した医療機器の製造
頸骨膝インプラントを、圧縮成形したGUR 1050UHMWPEから機械加工する。次いで、この挿入物を100%ビタミンEまたはビタミンE溶液に浸漬する。挿入物中へのビタミンEの拡散は、温度および/または圧力を増加することにより、促進することができ、これは空気中または不活性もしくは無酸素環境中で行うことができる。所望レベルのビタミンE拡散に達した後、挿入物を空気中または不活性もしくは無酸素環境中で包装する。次いで、包装した挿入物を100kGy線量に照射する。照射は、二つの目的、すなわち(1)ポリエチレンを架橋させ、耐摩耗性を改良すること、および(2)インプラントを滅菌することに役立つ。
【0214】
この例では、ポリエチレンインプラントは、他の材料、例えば金属、に突き合わせた界面を含む装置を包含する、全てのポリエチレン医療機器でよい。この一例は、全関節形成術(total joint arthroplasty)に使用する非モジュール式の、金属で裏打ちしたポリエチレン部品である。
【0215】
例9 ポリエチレンにおけるビタミンEの拡散
合成ビタミンE(DL−α−トコフェロール)のUHMWPE中への拡散を調査するため実験を行った。固化したGUR 1050UHMWPE(Perplas Ltd., Lancashire, UK)を2cm立方体に機械加工した。これらの立方体をα−トコフェロール(Fisher Scientific, Houston, TX)に浸漬して添加した。添加は、窒素掃気している加熱炉中で行った。立方体を、25℃、100℃、120℃、または130℃で16時間、0.5〜0.6気圧の窒素圧下で添加したが、その際、窒素は、先ず加熱炉を窒素掃気し、次いで真空を作用させ、さらに窒素量を調節した(空気中、常圧で行った25℃を除く全てにおいて)。添加の後、試料をエタノールですすぎ、過剰のα−トコフェロールを立方体の表面から除去した。ポリエチレン中へのα−トコフェロール拡散の程度は、赤外線顕微鏡を使用し、α−トコフェロールの特徴的吸収を、自由表面から離れる深度との関係で測定することにより、定量した。
【0216】
α−トコフェロールで添加した立方体を半分に機械加工し、LKB Sledge Microtome (Sweden)を使用して分割した(薄さ約100μmの断片)。これらの薄い断片を、BioRad UMA 500赤外顕微鏡(Natick, MA)を使用して分析した。赤外線スペクトルは、開口サイズ50x50μmで、立方体の自由表面と一致する縁部から離れる深度の関数として測定した。スペクトルは、ビタミンEにより典型的に発生する吸収、すなわち1226〜1275cm-1、を定量することにより、解析した。この吸収の下にある面積を積分し、1850〜1985cm-1に位置する基準吸収ピークの下にある面積に対して正規化した。ビタミンE吸収と基準吸収の両方の積分は、それぞれの基底線を除外した。この正規化された値をビタミンE指数と呼ぶ。
【0217】
図1は、4種類の異なった温度(25℃、100℃、120℃および130℃)で添加したポリエチレン立方体の拡散プロファイルを示す。ポリエチレン中のα−トコフェロール拡散の深度は、常圧で、温度と共に、25℃における400μmから130℃における3mmまで増加した。
【0218】
酸化防止剤、この場合はビタミンE、の拡散深度および一様性は、添加温度を変えることにより、変化させることができる。
【0219】
例10 ビタミンEを含む、および含まないUHMWPEの人工エージング
照射されたUHMWPEの熱−酸化安定性に対するビタミンEの効果を調査するための実験を行った。2個の等しい円筒形ピン(直径9mm、高さ13mm)を、ガンマ放射線で100kGyに照射したUHMWPEブロックから機械加工した。これらの円筒形ピンの一つの一方の基底部に天然ビタミンE(DL−α−トコフェロール)を塗布し、他方のピンは清浄なまま残した。次いで、両方のピンを加熱炉中、80℃で5週間の促進エージングにかけた。エージングに続いて、これらのピンをマイクロトーム処理し、両方の円筒形基底部に対して直角に薄さ200μmの断片を調製した。次いで、マイクロトーム処理した断片(各200μm)を、BioRad UMA 500赤外顕微鏡で分析した。マイクロトーム処理した断片の、ビタミンEに露出した円筒形基底部に対応する縁部から離れる深度の関数として赤外線スペクトルを測定した。これらのスペクトルを、1680〜1780cm-1波数のカルボニル吸収を定量することにより、解析した。この吸収の下にある面積を積分し、1330〜1390cm-1に位置する基準吸収ピークの下にある面積に対して正規化した。カルボニル吸収と基準吸収の両方の積分は、それぞれの基底線を除外した。この正規化された値を酸化指数と呼ぶ。
【0220】
清浄なUHMWPEは、ビタミンE処理したピンの酸化指数より約6倍高い酸化指数を示した。
【0221】
例11 ビタミンE添加により改良された耐酸化性
圧縮成形されたGUR 1050UHMWPEブロック(Perplas Ltd., Lancashire, UK)(直径3インチ)を、真空中で111kGyにガンマ線照射した(Steris Isomedix, Northborough, MA)。照射されたブロックを寸法約2cmx2cmx1cmの半立方体に機械加工した。
【0222】
4グループの半立方体をα−トコフェロール(α−D,L−T、Fisher Scientific, Houston, TX)中に浸漬して添加した。グループRT1の半立方体は、室温で1時間浸漬した。グループRT16の半立方体は、室温で16時間浸漬した。グループ100C1の半立方体は、100℃で1時間浸漬した。グループ100C16の半立方体は、100℃で16時間浸漬した。各グループに合計3個の半立方体があった。さらに、3グループの熱的比較試料を、各グループで3個の半立方体で調製した。グループTCRTは、照射されたブロックの一つから機械加工された半立方体からなる。グループTC100C1は、空気中で100℃に1時間加熱した半立方体からなる。グループTC100C16は、空気中で100℃に16時間加熱した半立方体からなる。
【0223】
次いで、上記の浸漬した、および熱的比較用半立方体を食器洗浄機で洗浄した。この洗浄は、持ち運び可能なKenmore食器洗浄機(Sears Inc., Hoffman Estates, IL)により、濯ぎおよび熱乾燥を含む通常サイクルで行った。クリーニングの際、すべての半立方体試験試料を、直径2”の円筒形非弾性ポリエチレンメッシュ中に入れ、末端を閉鎖した。これによって、確実に、試料は動き回らないが、洗浄媒体は中に入れるようにした。洗浄剤として、Electrasol(商品名)(Reckitt Benckiser Inc., Berkshire, UK)を使用した。
【0224】
洗浄に続いて、試料を促進エージングにかけ、照射されたUHMWPEの酸化安定性に対する、種々の条件下での、トコフェロール添加の効果を確認した。促進エージングは、試料を80℃の加熱炉中に、空気中で5週間入れることにより、行った。
【0225】
エージングに続いて、半立方体を半分に切断し、マイクロトーム処理し、2cmx2cm表面の一方に対して直角に薄さ200μmの断片を調製した。マイクロトーム処理した断片(各200μm)を、BioRad UMA 500赤外顕微鏡で分析した。マイクロトーム処理した断片の、トコフェロールに浸漬し、エージングの際に空気にも露出した表面に対応する縁部から離れる深度の関数として赤外線スペクトルを測定した。これらのスペクトルを、1680〜1780cm-1波数のカルボニル吸収を定量することにより、解析した。この吸収の下にある面積を積分し、1330〜1390cm-1に位置する基準吸収ピークの下にある面積に対して正規化した。カルボニル吸収と基準吸収の両方の積分は、それぞれの基底線を除外した。この正規化された値を酸化指数と呼ぶ。
【0226】
各マイクロトーム処理した断片の最大酸化値を計算し、上記の各グループから得た3個の断片の平均を表1に示す。トコフェロールで室温で添加したUHMWPEに対する、111kGy照射し、洗浄し、エージングした試料に対する熱的比較試料は、高レベルの酸化を示した。照射し、トコフェロール添加し、洗浄し、エージングした試料における、1時間および16時間に対する平均最大酸化レベルは、それぞれの、添加しなかったが、同じ熱履歴を有する熱的比較試料より低かった。
【0227】
トコフェロールで100℃で1時間添加したUHMWPEに対する、111kGy照射し、洗浄し、エージングした試料に対する熱的比較試料(グループTC100C1)は、対応するトコフェロール添加した試験試料(グループ100C1)より、高レベルの酸化を示した。同様に、トコフェロールで100℃で16時間添加したUHMWPEに対する、111kGy照射し、洗浄し、エージングした試料に対する熱的比較試料(グループTC100C16)は、トコフェロール添加した試験試料(グループ100C16)より、高レベルの酸化を示した。熱的比較試料および試験試料の酸化レベルは、1時間と16時間の浸漬時間の間で大きな差を示さなかった。100℃で添加した試料の酸化レベルは、室温で添加した試料よりも低かった。
【0228】
【表1】

【0229】
図2は、試験した各グループ(グループTCRT、グループRT1、グループRT16、グループTC100C16、グループ100C1、グループTC100C1、およびグループ100C16)の代表的なエージングした立方体の一つ中への深度と酸化指数の関係を示す。
【0230】
これらの結果は、洗浄による清浄化および乾燥により、UHMWPE中に拡散したトコフェロールを除去されず、トコフェロールは、厳しいエージング条件下で、高線量照射されたUHMWPEを酸化から保護することができることを示している。
【0231】
例12 バルーンカテーテルのイオン化滅菌
バルーンおよびステント上への薬物被覆が増加するにつれて、多くの場合、エチレンオキシド滅菌の使用が妨げられている。さらに、金属製ステントを拡張するために使用されるバルーンには、改良された摩耗挙動が望まれている。ポリエチレンバルーンをビタミンE中に室温および加圧下で16時間浸漬する。ついで、このバルーンを、電離放射線に25kGy〜100kGyの線量レベルで露出する。この放射線は、薬物に影響を及ぼさずに部品を滅菌し、ポリエチレンを架橋させ、摩耗挙動を改良する。残留フリーラジカルによる酸化は、ビタミンEの存在下で最少に抑えられる。
【0232】
例13 包装材料の改良された耐酸化性
ポリエチレンフィルムから製造された包装物をビタミンE中に、室温で浸漬し、16時間加圧下に保持する。次いで包装物を電離放射線により線量25〜40kGyで滅菌する。この包装物は、包装物の機械的一体性およびガスバリヤー特性の両方に影響を及ぼすことがある、酸化により誘発される脆化から保護される。
【0233】
例14 UHMWPEの照射および添加
下記のように、すなわち(1)65kGyにガンマ線照射、(2)100kGyにガンマ線照射、および(3)未照射、処理したGUR 1050UHMWPEから製造された3種類の異なったバー原料から立方体を機械加工した。ついで、これらの立方体を、ビタミンE(DL−α−トコフェロール)に室温で16時間浸漬して添加した。2グループの立方体、一方は65kGy照射した原料から、他方は100kGy照射した原料から機械加工、を、ビタミンE添加に続いて包装し、再度ガンマ線で線量レベル25〜40kGyで照射し、滅菌した。もう一つの、未照射原料から機械加工した立方体グループを、ビタミンE添加に続いて包装し、再度ガンマ線で線量レベル125〜140kGyで照射し、架橋させ、滅菌した。
【0234】
例15 照射し、ビタミンE添加したUHMWPEの、エージング前後のピン−オン−ディスク(POD)摩耗挙動
固化したGUR 1050UHMWPEバー原料を65kGyおよび100kGyで照射した。
POD摩耗試験用の円筒形ピン(直径9mm、長さ13mm)試料を照射したバー原料から機械加工した。これらの試料を、ビタミンE(α−トコフェロール)で、空気中、室温で16時間添加した。添加に続いて、試料を、線量27kGyでさらにガンマ線滅菌した。これらの2グループを、それぞれ総放射線量92kGyおよび127kGyの、α−T−92およびα−T−127と呼ぶ。
【0235】
円筒形試料の半分を空気中、80℃で5週間の促進エージングにかけた。エージングしていない、およびエージングした試料の両方をPOD摩耗試験にかけた。ピンの摩耗挙動は、特注二方向ピン−オン−ディスク(POD)摩耗試験機を使用し、頻度2Hzで、ピンをインプラント仕上げのコバルト−クロム対向面に対して、長方形摩耗経路で擦ることにより、試験した(Muratogluら, Biomaterials, 20(16)p. 1463-1470, 1999)。試験中のピーク接触応力は6MPaであった。子牛血清を潤滑剤として使用し、摩耗を重量的に0.5百万サイクル間隔で定量した。最初に、ピンを200,000サイクルのPOD試験にかけ、表面上の拡散または粗さと無関係の定常状態摩耗速度を達成した。その後、各グループから3個のピンを合計2百万サイクル試験した。摩耗速度は、0.2〜2百万サイクルまでの摩耗対サイクル数の直線回帰として計算した。添加し、エージングした、架橋されたポリエチレンの摩耗速度を表2に示す。
【0236】
【表2】

【0237】
添加した試料の摩耗挙動は、エージングの前後で同等であり、拡散により取り込まれた酸化防止剤の存在が、照射されたポリエチレンを酸化から保護し、エージング後の摩耗増加を阻止していることを示している。典型的には、100kGy照射したUHMWPEの摩耗速度は、百万サイクルあたり約1ミリグラムである(Muratogluら, Biomaterials, 20(16)p. 1463-1470, 1999)。105kGy照射したUHMWPEのエージングは、その摩耗速度を、20ミリグラム/サイクル強に増加し得る(Muratogluら, Clinical Orthopaedics & Related Research, 417:253-262, 2003)。
【0238】
例16 ポリエーテル−ブロック コ−ポリアミドバルーンの酸化安定化
ポリエーテル−ブロック コ−ポリアミド重合体(PeBAX(登録商標))から製造されたバルーンを、包装した後で、ガンマまたは電子線で滅菌する。これらの材料では、フリーラジカル発生による酸化性脆化が問題となるので、長期間の貯蔵寿命(例えば3年間の貯蔵寿命)を確保するには、フリーラジカルを消滅させることが不可欠である。これらの材料は、高温に露出すると、高度に整列した重合体鎖が弛緩し、半径方向および軸方向で収縮するので、照射に続いて熱処理することができない。
【0239】
ポリエーテル−ブロック コ−ポリアミドバルーンを、ビタミンE中に、またはビタミンEと溶剤、例えばアルコール、の溶液中に浸漬する。これらのバルーンを包装し、次いで線量25〜70kGyの滅菌にかける。より高い放射線量は、二倍の滅菌線量により得られる。滅菌は、空気中または低酸素雰囲気中で行うことができる。ビタミンEは、滅菌工程中に導入された残留フリーラジカルの酸化性挙動を最少に抑え、好ましくない架橋も低下させることができる。
【0240】
例17 ナイロンバルーンの酸化安定化
ナイロン重合体から製造されたバルーンを、包装した後で、ガンマまたは電子線で滅菌する。これらの材料では、フリーラジカル発生による酸化性脆化が問題となるので、3年間の貯蔵寿命を確保するには、フリーラジカルを消滅させることが不可欠である。これらの材料は、高温に露出すると、高度に整列した重合体鎖が弛緩し、半径方向および軸方向で収縮するので、照射に続いて熱処理することができない。
【0241】
ナイロンバルーンを、ビタミンE中に、またはビタミンEと溶剤、例えばアルコール、の溶液中に浸漬する。これらのバルーンを包装し、次いで線量25〜70kGyの滅菌にかける。より高い放射線量は、二倍の滅菌線量により得られる。滅菌は、空気中または低酸素雰囲気中で行うことができる。ビタミンEは、滅菌工程中に導入された残留フリーラジカルの酸化性挙動を最少に抑え、好ましくない架橋も低下させることができる。
【0242】
例18 ポリエチレンテレフタレートバルーンの酸化安定化
ポリエチレンテレフタレート(PET)重合体から製造されたバルーンを、包装した後で、ガンマまたは電子線で滅菌する。これらの材料では、フリーラジカル発生による酸化性脆化が問題となるので、長期間の貯蔵寿命(例えば3年間の貯蔵寿命)を確保するには、フリーラジカルを消滅させることが不可欠である。これらの材料は、高温に露出すると、高度に整列した重合体鎖が弛緩し、半径方向および軸方向で収縮するので、照射に続いて熱処理することができない。
【0243】
PETバルーンを、ビタミンE中に、またはビタミンEと溶剤、例えばアルコール、の溶液中に浸漬する。これらのバルーンを包装し、次いで線量25〜70kGyの滅菌にかける。より高い放射線量は、二倍の滅菌線量により得られる。滅菌は、空気中または低酸素雰囲気中で行うことができる。ビタミンEは、滅菌工程中に導入された残留フリーラジカルの酸化性挙動を最少に抑え、好ましくない架橋も低下させることができる。
【0244】
例19 多成分バルーンの酸化安定化
ポリエチレン、PET、ポリエーテル−ブロック コ−ポリアミド、ポリ酢酸ビニル、およびナイロンを包含する、重合体の組合せから製造されたバルーンを、包装した後で、ガンマまたは電子線で滅菌する。これらの材料では、フリーラジカル発生による酸化性脆化が問題となるので、長期間の貯蔵寿命(例えば3年間の貯蔵寿命)を確保するには、フリーラジカルを消滅させることが不可欠である。これらの材料は、高温に露出すると、高度に整列した重合体鎖が弛緩し、半径方向および軸方向で収縮するので、照射に続いて熱処理することができない。
【0245】
多成分バルーンを、ビタミンE中に、またはビタミンEと溶剤、例えばアルコール、の溶液中に浸漬する。これらのバルーンを包装し、次いで線量25〜70kGyの滅菌にかける。より高い放射線量は、二倍の滅菌線量により得られる。滅菌は、空気中または低酸素雰囲気中で行うことができる。ビタミンEは、滅菌工程中に導入された残留フリーラジカルの酸化性挙動を最少に抑え、好ましくない架橋も低下させることができる。
【0246】
例20 ポリプロピレン製医療機器の滅菌
ポリプロピレンは、医療工業で、注射器、バイアル、その他多くの装置を、多くの場合、射出成形により製造するのに、広く使用されている。ポリプロピレンは、ガンマ線または電子線によるイオン化滅菌、またはエチレンオキシドまたはガスプラズマによるガス滅菌にかけた時に、酸化性劣化を示すことが知られている。
【0247】
ポリプロピレン製注射器を、ビタミンE中に、またはビタミンEと溶剤、例えばアルコール、の溶液中に浸漬する。これらの注射器を包装し、次いで線量25〜70kGyの滅菌にかける。より高い放射線量は、二倍の滅菌線量により得られる。滅菌は、空気中または低酸素雰囲気中で行うことができる。ビタミンEは、滅菌工程中に導入された残留フリーラジカルの酸化性挙動を最少に抑え、好ましくない架橋も低下させることができる。
【0248】
例21 可撓性ポリ塩化ビニルチューブの滅菌
可撓性ポリ塩化ビニル(PVC)は、チューブを包含する種々の医療機器に使用されている。以前はエチレンオキシドで滅菌していたが、多くの製造業者が、ガンマ線または電子線を使用して滅菌している。電離放射線に露出すると、これらの材料は暗色になり、黄変することが多いが、これは酸化によるものであると考えられている(Medical Plastics and Biomaterials Magazine, March, 1996, Douglas W. Luther and Leonard A. Linsky)。機械的ミキサーまたは押出機で酸化防止剤をPVC中に混合することにより、黄変は低下する。
【0249】
PVCチューブを、ビタミンE中に、またはビタミンEと溶剤、例えばアルコール、の溶液中に浸漬する。これらの注射器を包装し、次いで線量25〜70kGyの滅菌にかける。より高い放射線量は、二倍の滅菌線量により得られる。滅菌は、空気中または低酸素雰囲気中で行うことができる。ビタミンEは、滅菌工程中に導入された残留フリーラジカルの酸化性挙動を最少に抑え、PVC成分の色を安定化させると共に、貯蔵寿命を改善する。
【0250】
例22 添加後のアニーリング
添加後のアニーリングを使用し、より一様な酸化防止剤分布を達成することができる。未照射UHMWPE立方体を、希釈していないα−トコフェロール中に、130℃で96時間浸漬することにより、添加した。1個の立方体を半分に機械加工し、マイクロトーム処理した。マイクロトーム処理した断片を、上記の例9に記載したように、赤外線顕微鏡法を使用して分析し、表面の、添加の際に自由であった一方から離れる深度の関数としてビタミンE指数を測定した。添加に続いて、他の添加した立方体を130℃で、時間を増加してアニーリングした。添加し、アニーリングした立方体も、赤外線顕微鏡を使用して分析し、アニーリング時間とビタミンE指数プロファイルの変化の関係を確認した。図3は、添加した、および添加し、アニーリングした立方体で測定した拡散プロファイルを示す。アニーリングしていない試料では、表面濃度が、材料全体に対する濃度よりも、はるかに高いが、同じ温度で100時間アニーリングした試料は、ほとんど一様なプロファイルを示した。従って、添加後のアニーリングを使用することにより、ホスト重合体全体にわたる酸化防止剤分布の一様性を高めることができる。アニーリングの温度および時間は、本明細書に記載するパラメータ解析を行うことにより、適切に調整することができる。
【0251】
例23 UHMWPEを処理する手順
UHMWPEは、例えば図4および5に示すように、種々の段階で、酸化防止剤を添加することができる。
【0252】
例24 添加後の、沸騰水中でのアニーリング
UHMWPEをガンマ線で100kGyに照射した。照射したUHMWPEから6個の立方体(一片が20mm)を機械加工した。次いで、これらの立方体をビタミンE(α−トコフェロール)中に種々の温度で浸漬した。2個の立方体は100℃でビタミンE中に24時間浸漬し、他の2個は105℃でビタミンE中に24時間浸漬し、残りの2個は110℃でビタミンE中に24時間浸漬した。ビタミンE添加に続いて、各温度グループの立方体1個を半分に切断し、薄さ200μmの断片をマイクロトーム処理した。次いでこの薄い断片を、BioRad UMA 500赤外顕微鏡を使用し、立方体表面の、添加の際にビタミンEに露出した方に対応する縁部から離れる深度の関数として分析した。各温度グループの他の立方体は、沸騰水中に24時間浸漬した。続いて、これらの沸騰水中に浸漬した立方体もマイクロトーム処理し、上記の用に赤外線顕微鏡で分析した。薄い断片から集めた赤外線スペクトルを解析し、
sensVitE=(1245〜1275cm−1を限度とする吸収ピークの下にある面積)/(1850〜1985cm−1を限度とする吸収ピークの下にある面積)
として定義されるビタミンE感度指数(sensVitE)を計算した。
【0253】
波数1245および1275cm−1を限度とする吸収ピークは、ビタミンEの特徴的ピークである。この吸収ピークの強度は、UHMWPE中のビタミンE含有量の増加と共に増加する。
【0254】
各立方体に対するsensVitEの深度プロファイルを図6Aおよび6Bに示す。図6Aは、100kGy照射されたUHMWPEから機械加工したビタミンE添加された立方体で得たビタミンEプロファイル(黒色記号)、および沸騰水中でアニーリングした後の添加された立方体のビタミンEプロファイル(白色記号)を示す。沸騰水中でアニーリングすることにより、照射されたUHMWPE中へのビタミンEの浸透深度が改良された(図6A参照)。
【0255】
図6Bは、より高い分解能におけるビタミンE浸透プロファイルを示す。この結果から、両方とも100〜105℃の高温に合計48時間あったにもかかわらず、105℃で24時間の添加および100℃で24時間は、105℃で48時間添加した試料よりも多くの浸透を示したことが分かる。
【0256】
例25 照射したUHMWPEのビタミンEエマルション中での添加
2個のUHMWPE原料を100および110kGyにガンマ線で照射した。照射したUHMWPE原料から4個の立方体(一片が20mm)を機械加工した。次いで、立方体一個(100kGy)を、30%ビタミンE(α−トコフェロール)と70%脱イオン水の混合物中に100℃で24時間浸漬した。残りの立方体3個(110kGy)を100%ビタミンE中に約100℃で浸漬した。100%ビタミンE浴から24、50および72時間の浸漬後に、立方体1個を取り出した。添加工程に続いて、すべての立方体を半分に切断し、薄さ200μmの断片をマイクロトーム処理した。次いでこの薄い断片を、BioRad UMA 500赤外顕微鏡を使用し、立方体表面の、添加の際にビタミンEまたはビタミンEエマルションに露出した方に対応する縁部から離れる深度の関数として分析した。薄い断片から集めた赤外線スペクトルを解析し、ビタミンE感度指数(sensVitE)を計算した。
【0257】
sensVitEの深度プロファイルを図7Aおよび7Bに示す。図7Aは、24時間添加された立方体から得たビタミンEプロファイルを示す。ビタミンEエマルション中100℃で添加することにより、100%ビタミンE中で添加した立方体より、ビタミンEの表面濃度が高くなり、ビタミンE浸透が深くなった。図7Bは、種々の時間添加した立方体のビタミンEプロファイルを示す。ビタミンEエマルション中、100℃で添加することにより、100%ビタミンE中、100℃で72時間の添加と同等の拡散プロファイルが得られた。従って、ビタミンEのエマルション中における添加は、純粋なビタミンE中における添加よりも、効果が高い。
【0258】
照射下UHMWPEの添加に続く、沸騰水中または沸騰NaCl水溶液中アニーリング
UHMWPE原料を100kGyにガンマ線で照射した。照射したUHMWPE原料から3個の立方体(一片が20mm)を機械加工した。次いで、3個の立方体全てを100%ビタミンE(α−トコフェロール)中に105℃で24時間浸漬した。次いで、立方体の1個を室温に冷却し、還流チャンバー中で、沸騰している8モル塩化ナトリウム水溶液中に24時間浸漬した。残りの2個の立方体一つを、還流チャンバー中で、沸騰している脱イオン水中に24時間浸漬した。第三の立方体は、最初のビタミンE添加工程の後、処理しなかった。次いで、3個の立方体すべてを半分に切断し、薄さ200μmの断片をマイクロトーム処理した。次いでこの薄い断片を、BioRad UMA 500赤外顕微鏡を使用し、立方体表面の、添加の際にビタミンEまたはビタミンEエマルションに露出した方に対応する縁部から離れる深度の関数として分析した。薄い断片から集めた赤外線スペクトルを解析し、ビタミンE感度指数(sensVitE)を計算した。
【0259】
sensVitEの深度プロファイルを図8に示す。ビタミンE浸透の深度は、添加後の沸騰水中アニーリングと共に増加し、同じことが沸騰しているNaCl溶液を使用した時にも当てはまる。ビタミンEの表面濃度は、沸騰水によるよりも、沸騰しているNaCl溶液に依存した。ビタミンE添加されたUHMWPEを沸騰水中でアニーリングすることは、ビタミンEの浸透深度を増加するのに有利である。同様に、ビタミンE添加されたUHMWPEを沸騰しているNaCl水溶液中でアニーリングすることも、ビタミンEの浸透深度を増加するのに有利である。ビタミンE添加されたUHMWPEを沸騰しているNaCl水溶液中でアニーリングすることは、ビタミンEの表面濃度を高く維持しながら、ビタミンEの浸透深度を増加するのに有利である。
【0260】
無論、本説明、具体例およびデータは、代表的な実施態様を示しているが、説明のために記載するのであって、本発明を制限するものではない。本明細書に含まれる考察、開示およびそこに含まれるデータから、種々の変形および修正が当業者には明らかであり、従って、本発明の一部と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0261】
【図1】室温、100℃、120℃、および130℃における、UHMWPE中へのビタミンEの浸透深度を示したものである。
【図2】試験した7つのグループ(グループTCRT、グループRT1、グループRT16、グループTC100C16、グループ100C1、グループTC100C1、およびグループ100C16)の、エージングした立方体中への深度と酸化指数の関係を示したものである。立方体は全て、照射されたポリエチレンから加工し、その中の4個は、種々の条件下でビタミンEで添加されている。熱的比較用立方体は、ビタミンEで処理していない。ビタミンE添加された立方体は、それらの対応する熱的比較試料よりも、試料の表面および全体における酸化が少なかった。
【図3】130℃で96時間添加した、照射していないUHMWPE全体への、ビタミンEの拡散プロファイルと、その後の130℃におけるアニーリング時間との関係を示したものである。
【図4】UHMWPE処理手順、および種々の工程における添加の例を、図式的に示したものである。
【図5】UHMWPE処理手順、および種々の工程における添加の例を、図式的に示したものである。
【図6A】ビタミンE添加されたUHMWPEに対するビタミンE感度指数(sensVitE)と深度の関係を示したものである。図6Aは、100kGy照射されたUHMWPEから機械加工したビタミンE添加された立方体で得たビタミンEプロファイル(黒色記号)、および沸騰水中でアニーリングした後の添加された立方体のビタミンEプロファイル(白色記号)を示したものである。
【図6B】ビタミンE添加されたUHMWPEに対するビタミンE感度指数(sensVitE)と深度の関係を示したものである。図6Bは、より高い分解能におけるビタミンE浸透プロファイルを示したものである。
【図7A】ビタミンE添加されたUHMWPE立方体およびビタミンE−水混合物で添加されたUHMWPE立方体に対するビタミンE感度指数(sensVitE)と深度の関係を示したものである。図7Aは、24時間添加された立方体から得たビタミンEプロファイルを示したものである。
【図7B】ビタミンE添加されたUHMWPE立方体およびビタミンE−水混合物で添加されたUHMWPE立方体に対するビタミンE感度指数(sensVitE)と深度の関係を示したものである。100℃で種々の時間添加された立方体のsensVitEプロファイルを示したものである。
【図8】ビタミンE添加されたUHMWPE立方体に対するビタミンE感度指数(sensVitE)、および沸騰水および沸騰NaCl溶液中で24時間の添加後アニーリングにかけたUHMWPE立方体のsensVitEと深度の関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用インプラントの製造方法であって、
a)重合体状材料を用意し、
b)前記重合体状材料を固化させ、
c)前記固化した重合体状材料に電離放射線を照射することにより、固化および架橋された重合体状材料を形成し、
d)前記固化および架橋された重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、
e)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成し、そして
f)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体環境中においてアニーリングする、
ことを含んでなる、方法。
【請求項2】
前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントを包装し、電離放射線またはガス滅菌により滅菌することにより、無菌かつ架橋された医療用インプラントを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重合体状材料を、別の部品または医療用インプラントに圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固化した重合体状材料を、別の部品に圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記添加が、前記医療用インプラントを、酸化防止剤中に約1時間または24時間浸漬することにより、行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化防止剤が約105℃または約110℃に加熱され、前記添加が105℃または約110℃で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化防止剤が略室温に加熱され、前記添加が室温で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記架橋された重合体状材料が、前記固化かつ架橋された重合体状材料の溶融状態よりも低いまたは高い温度で、アニーリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記重合体状材料が、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルケトン、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリオレフィンが、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、またはそれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記インプラントが、寛骨臼ライナー、肩関節窩、膝蓋骨成分、指関節成分、踝関節成分、肘関節成分、手首関節成分、足指関節成分、二極人工股関節、頸骨膝挿入物、補強金属とポリエチレンポストとを備えた頸骨膝挿入物、椎間板、縫合、腱、心臓弁、ステント、血管移植片からなる群から選択される医療機器を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記重合体状材料が、重合体状樹脂粉末、重合体状フレーク、重合体状粒子等または、それらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記照射が、約1%〜約22%の酸素を含む雰囲気中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記照射が不活性雰囲気中で行われ、前記不活性雰囲気が、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等、またはそれらの組合せからなる群から選択されるガスを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記照射が真空中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記架橋された重合体状材料が、約1%〜約22%の酸素を含む雰囲気中で加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記照射線量が約25〜約1000kGyである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記照射線量が約65kGy、約85kGy、または約100kGyである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記放射線がガンマ線照射である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記放射線が電子線照射である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記架橋された重合体状材料中のフリーラジカルの低減が、前記重合体状材料を非酸化性媒体と接触させて加熱することにより、達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記架橋された重合体状材料中のフリーラジカルの低減が、非酸化性媒体と接触させて、前記媒体を、前記架橋された重合体状材料の融解温度よりも高い温度に加熱することにより、達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記非酸化性媒体が不活性ガスである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記非酸化性媒体が不活性流体である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記媒体が、アセチレン等のアセチレン系炭化水素、ブタジエンおよび(メタ)アクリレートモノマー等の共役または非共役オレフィン系炭化水素、ならびに、クロロ−トリ−フルオロエチレン(CTFE)またはアセチレンを有する一塩化硫黄からなる群から選択されるポリ不飽和炭化水素である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記架橋された重合体状材料中のフリーラジカルの低減が、前記重合体状材料を、前記架橋された重合体状材料の融点以上に加熱することにより、達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記医療用インプラントが、約50重量%の酸化防止剤を含むエタノール溶液で浸漬される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記医療用インプラントに、超臨界流体中で酸化防止剤を拡散させる、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記超臨界流体がCOである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記酸化防止剤がビタミンEである、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記酸化防止剤がα−トコフェロールである、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記医療用インプラントが、非永続性の医療機器である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記非永続性医療機器が、カテーテル、バルーンカテーテル、チューブ、静脈内チューブ、または縫合である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
医療用インプラントの製造方法であって、
a)重合体状材料を用意し、
b)前記重合体状材料を固化させ、
c)前記固化した重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、
d)前記医療用インプラントに電離放射線を照射することにより、架橋された医療用インプラントを形成し、
e)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成し、そして
f)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体環境中においてアニーリングする、
ことを含んでなる、方法。
【請求項35】
照射され、かつ酸化防止剤が添加された前記医療用インプラントを包装し、電離放射線またはガス滅菌により滅菌することにより、無菌かつ架橋された医療用インプラントを形成する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記重合体状材料を、別の部品または医療用インプラントに圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記固化した重合体状材料を、別の部品に圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記添加が、前記医療用インプラントを、ビタミンE中に約1時間または約24時間浸漬することにより、行われる、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記ビタミンEが約105℃または約110℃に加熱され、前記添加が約105℃または約110℃で行われる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ビタミンEが略室温に加熱され、前記添加が室温で行われる、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
医療用インプラントの製造方法であって、
a)重合体状材料を用意し、
b)前記重合体状材料を固化させ、
c)前記固化した重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、
d)前記酸化防止剤が添加された、固化した重合体状材料を、液体環境中においてアニーリングし、
e)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料を、機械加工することにより、酸化防止剤が添加された重合体状材料を形成し、そして
f)前記酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料に、電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成する、
ことを含んでなる、方法。
【請求項42】
照射され、かつ酸化防止剤が添加された前記医療用インプラントを包装し、電離放射線またはガス滅菌により滅菌することにより、無菌かつ架橋された医療用インプラントを形成する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記重合体状材料を、別の部品または医療用インプラントに圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記固化した重合体状材料を、別の部品に圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記添加が、前記医療用インプラントをビタミンE中に約1時間または約24時間浸漬することにより、行われる、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記ビタミンEが約100℃または約135℃または約180℃に加熱され、前記添加が100℃または約135℃または約180℃で行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ビタミンEが略室温に加熱され、前記添加が室温で行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
医療用インプラントの製造方法であって、
a)重合体状材料を用意し、
b)前記重合体状材料を固化させ、
c)前記固化した重合体状材料に、拡散により、酸化防止剤を添加し、
d)前記酸化防止剤が添加された、固化した重合体状材料を、液体環境中においてアニーリングし、
e)前記酸化防止剤が添加された重合体状材料に電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された重合体状材料を形成し、そして
f)前記架橋された重合体状材料を機械加工することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成する、
ことを含んでなる、方法。
【請求項49】
照射され、かつ酸化防止剤が添加された前記医療用インプラントを包装し、電離放射線またはガス滅菌により滅菌することにより、無菌かつ架橋された医療用インプラントを形成する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記重合体状材料を、別の部品または医療用インプラントに圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記固化した重合体状材料を、別の部品に圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記添加が、前記医療用インプラントを、ビタミンE中に約1時間または約24時間浸漬することにより、行われる、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記ビタミンEが約100℃または約135℃または約180℃に加熱され、前記添加が100℃または約135℃または約180℃で行われる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記ビタミンEが略室温に加熱され、前記添加が室温で行われる、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
医療用インプラントの製造方法であって、
a)重合体状材料を用意し、
b)前記重合体状材料を固化させ、
c)前記固化した重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、
d)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを形成し、
e)前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、液体環境中においてアニーリングし、
f)前記医療用インプラントを包装し、そして
g)前記包装された医療用インプラントに電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された、無菌の医療用インプラントを形成する、
ことを含んでなる、方法。
【請求項56】
前記重合体状材料を、別の部品または医療用インプラントに圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記放射線量が約25kGy〜約150kGyである、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記固化した重合体状材料を、別の部品に圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記添加が、前記医療用インプラントを、ビタミンE中に約1時間または約24時間浸漬することにより、行われる、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記ビタミンEが約105℃または約110℃に加熱され、前記添加が105℃または約110℃で行われる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ビタミンEが略室温に加熱され、前記添加が室温で行われる、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
医療用インプラントの製造方法であって、
a)重合体状材料を用意し、
b)前記重合体状材料を圧縮成形することにより、医療用インプラントを形成し、
c)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された医療用インプラントを形成し、
d)前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントを、液体環境中でアニーリングし、
e)前記医療用インプラントを包装し、そして
f)前記包装された医療用インプラントに電離放射線を照射することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された、無菌の医療用インプラントを形成する、
ことを含んでなる、方法。
【請求項63】
前記重合体状材料を、別の部品または医療用インプラントに圧縮成形することにより、界面または連結ハイブリッド材料を形成する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記放射線量が約25kGy〜約150kGyである、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記添加が、前記医療用インプラントを、ビタミンE中に約1時間または約24時間浸漬することにより、行われる、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記ビタミンEが約105℃または約110℃に加熱され、前記添加が105℃または約110℃で行われる、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ビタミンEが略室温に加熱され、前記添加が室温で行われる、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記連結ハイブリッド材料が、前記架橋された重合体状材料の溶融状態よりも低いまたは高い温度で、アニーリングされる、請求項62に記載の方法。
【請求項69】
前記重合体状材料が、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルケトン、またはそれらの混合物である、請求項62に記載の方法。
【請求項70】
前記ポリオレフィンが、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、またはそれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項62に記載の方法。
【請求項71】
前記インプラントが、寛骨臼ライナー、肩関節窩、膝蓋骨成分、指関節成分、踝関節成分、肘関節成分、手首関節成分、足指関節成分、二極人工股関節、頸骨膝挿入物、補強金属とポリエチレンポストとを備えた頸骨膝挿入物、椎間板、縫合、腱、心臓弁、ステント、血管移植片からなる群から選択される医療機器を含んでなる、請求項62に記載の方法。
【請求項72】
前記重合体状材料が、重合体状樹脂粉末、重合体状フレーク、重合体状粒子等、またはそれらの混合物である、請求項62に記載の方法。
【請求項73】
前記部品が、金属性または非金属性である、請求項62に記載の方法。
【請求項74】
前記部品が、金属、セラミック、または重合体である、請求項62に記載の方法。
【請求項75】
前記界面が、金属−重合体である、請求項62に記載の方法。
【請求項76】
前記界面が、金属−セラミックである、請求項62に記載の方法。
【請求項77】
医療用インプラントの製造方法であって、
a)固化した重合体状材料を用意し、
b)前記固化した重合体状材料に電離放射線を照射することにより、固化した、架橋された重合体状材料を形成し、
c)前記固化し、架橋された重合体状材料を機械加工することにより、医療用インプラントを形成し、
d)前記医療用インプラントに、拡散により、酸化防止剤を添加することにより、酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを形成し、そして
e)前記酸化防止剤が添加された、架橋された医療用インプラントを、液体環境中でアニーリングする、
ことを含んでなる、方法。
【請求項78】
前記アニーリングする前の、酸化防止剤の添加が、酸化防止剤−エマルション中または酸化防止剤−溶液中において行われる、請求項1、34、41、48、55、62、または77に記載の方法。
【請求項79】
前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントまたは重合体状材料、のアニーリングが、水中、酸化防止剤−エマルション中、または、酸化防止剤−溶液中において、室温と、水、前記エマルションの親水性成分、または前記酸化防止剤溶液に使用する溶剤の沸点と、の間の温度で行われる、請求項1、34、41、48、55、62、77、または78に記載の方法。
【請求項80】
前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントまたは重合体状材料の、アニーリングが、水中、酸化防止剤−エマルション中、または酸化防止剤−溶液中において、約50℃〜約100℃の温度で行われる、請求項1、34、41、48、55、62、77、または78に記載の方法。
【請求項81】
前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントまたは重合体状材料の、アニーリングが、沸騰水中、沸騰している酸化防止剤−エマルション中、または沸騰している酸化防止剤−溶液中において行われる、請求項1、34、41、48、55、62、77、または78に記載の方法。
【請求項82】
前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントまたは重合体状材料の、アニーリングが、沸騰水中、沸騰している酸化防止剤−エマルション中、または沸騰している酸化防止剤−溶液中において、大気圧下で行われる、請求項1、34、41、48、55、62、77、または78に記載の方法。
【請求項83】
前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントまたは重合体状材料の、アニーリングが、沸騰水中、沸騰している酸化防止剤−エマルション中、または沸騰している酸化防止剤−溶液中において、加圧下で行われる、請求項1、34、41、48、55、62、77、または78に記載の方法。
【請求項84】
前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントまたは重合体状材料の、アニーリングが、水中、酸化防止剤−エマルション中、または酸化防止剤−溶液中において、約1分間〜約30日間行われる、請求項1、34、41、48、55、62、77、または78に記載の方法。
【請求項85】
前記酸化防止剤が添加された医療用インプラントまたは重合体状材料の、アニーリングが、沸騰水中、沸騰している酸化防止剤−エマルション中、または沸騰している酸化防止剤−溶液中において、約24時間行われる、請求項1、34、41、48、55、62、77、または78に記載の方法。
【請求項86】
前記酸化防止剤が添加された医療用インプラント、医療機器、または、重合体状材料が、ガンマ線、ガスプラズマ、または、エチレンオキシドガスにより滅菌される、請求項1、34、41、48、55、62、77、または78に記載の方法。
【請求項87】
前記添加が、前記医療用インプラント、医療機器、または、重合体状材料を、前記酸化防止剤中に少なくとも1時間浸漬することにより、行われる、請求項1、34、41、48、55、62、77、または78に記載の方法。
【請求項88】
非酸化性の、架橋された、検出可能な残留フリーラジカルを含有する重合体状材料、を含んでなる医療用インプラントであって、前記医療用インプラントが、請求項1、34、41、48、55、62、77、または78により製造される、医療用インプラント。
【請求項89】
非酸化性の、架橋された、検出可能な残留フリーラジカルを含有する重合体状材料、を含んでなり、酸化防止剤の濃度勾配を有する医療用インプラントであって、前記医療用インプラントが、請求項1、34、41、48、55、62、77、または78により製造される、医療用インプラント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2007−536998(P2007−536998A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513272(P2007−513272)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/016283
【国際公開番号】WO2005/110276
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(593030244)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション ディー ビー エイ マサチューセッツ ジェネラル ホスピタル (8)
【出願人】(505271116)ケンブリッジ、ポリマー、グループ、インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE POLYMER GROUP, INC.
【Fターム(参考)】