耐食性及び加工性を有する金属薄板の製造方法
本発明は、塗装されていない鋼板(1,1´)からなる耐食性及び加工性を有する金属薄板の製造方法に関し、下記のステップを備える;鋼板(1,1´)を突き合せた状態で配置し、各接合溶接開先(14)に沿った溶接部(2)を形成するために、溶接ビーム(13)による突合せ溶接により、一方の溶接開先又は両方の溶接開先(14)を溶接し、溶接部(2)の形成中又は溶接部(2)が形成された直後に、焼きなましビーム(15)により、一方の溶接部(2)又は両方の溶接部(2)を熱処理し、接合された鋼板(1,1´)の一方の溶接部(2)又は両方の溶接部(2)を含む全表面をメタリック塗装により塗装する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1及び2による耐食性及び加工性を有する金属薄板の製造方法に関し、また、請求項17の導入部(preamble)による、鋼板の突合せ溶接にメタリック塗装を適用する装置に関する。本方法により製造された金属薄板は、例えば、食料を梱包する容器の製造、缶詰食品の缶、飲料品の缶、或いは、例えば自動車の本体パネルの製造などの、良好な加工性を有する耐食性金属薄板が要求される他の分野においても用いられる。食品の包装又は自動車の本体パネルに用いられる鋼板は、耐食性を有していなければならない。食品の包装の場合、金属薄板の表面が侵食性のある添加物により攻撃されないように耐食性を有する金属薄板でなければならない。この理由から、食品の包装の製造に用いられる鋼板は、耐食性塗装が施される。この場合、缶の板(缶鋼板)はメタリック塗装にすることができる。
【背景技術】
【0002】
食品の包装では、塗装された金属薄板は、例えば引抜き処理(deep−drawing process)により再加工されなければならない。塗装された金属薄板の製造の間、金属薄板の欠陥又は損傷を受けた部位は取り除かれ、その後、リールに巻かれた規格長さの鋼片を形成するために欠陥のない金属薄板の部位が相互に溶接される。多くの金属薄板から相互に溶接されたそれらの金属薄板片は、溶接した領域が満足な状態で加工されないため不満足な状態となる。例えば、耐食性を有する鋼板は、1つの溶接された本体と2つの折り曲げられた蓋から構成される缶詰の缶の製造に用いられる。金属薄板は、溶接された領域において個々の鋼板自体よりも極めて高い硬度を有し、その結果、溶接領域において金属薄板の加工性が劣化する。
【0003】
従って、先行技術において、この加工性を改善するために相互に溶接される少なくとも2つの鋼板の溶接による硬化を減少させる加工性の良い鋼板の製造方法が推奨されている。特許文献1には、縁部がビーム溶接により溶接された少なくとも2つの要素から形成される引抜き鋼板(deep−drawn steel sheet)で、溶接による硬化を防ぐために、溶接前に溶接される縁部にレーザ光線が照射され、同時に酸素が供給されるという製造方法が記載されている。このようにして、縁部の脱炭及び酸化が行われる。
【0004】
準備段階においてレーザ光線を照射すると、材料が熱エネルギの付加によりその塑性限界よりも高く伸ばされ、薄い厚さのシートに好ましくない方法でその縁部の組成に悪影響を及ぼす。これは、内部応力を増加させ、縁部の要素にそり(warping)を生じさせる。高さをオフセットせずに溶接幅を変え、一様な溶接線により引き続いて精密なレーザ溶接を行うことは達成し難いが、最善な加工の結果を得るには有効である。さらに、材料の脱炭と組み合わされたこのタイプの熱処理は、多くの場合、加工時に材料が降伏して軟弱な微細構造を有する明確な熱影響部が形成される。また、溶接領域への酸素の投与は、材料の脆性破壊、及び溶接に近接した領域において、二酸化鉄(FeO2)が鉄(Fe)と酸素(O2)に分解される温度以下に留まることで生じる表面の酸化現象の危険性を隠蔽する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第540382号機器1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらに基づき、発明の目的は、耐食性を有し、相互に溶接される個々の鋼板から取り出された加工性の良い金属薄板を可能な限り製造することである。
【0007】
この問題は、請求項1及び請求項2に示された方法により解決される。この方法の好ましい実施形態は従属する請求項に示される。
【0008】
本発明は、添付された図面を参照する下記の実施形態により、より分かりやすく説明される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法によると、耐食性を有し容易に加工できる金属薄板は、厚さが0.10mmから0.70mmの範囲であり2つ以上の塗装されていない鋼板から製造され、まず塗装されていない鋼板が突き合わせられた状態で相互に並べられ、次に溶接部を形成する溶接ビームを使用して突き合わせ溶接により各溶接部の開先が溶接される。溶接ビームはレーザ溶接ビーム又は電子溶接ビームとすることが可能である。各溶接部の熱処理は、溶接中又は溶接直後に焼きなましビームにより行われ、この焼きなましビームは、好ましくはレーザビームにより形成される。溶接部の冷却後、相互に溶接された鋼板からなる金属薄板は、少なくとも片面、又は両面がメタリック塗装され、各溶接部も片側又は両側が塗装される。
【0010】
本発明の他の方法によると、耐食性を有し容易に加工できる金属薄板は、2つ以上のメタリック塗装された鋼板から製造され、塗装された鋼板は、まず鋼板同士が突き合わせられた状態で相互に並べられ、次に、それぞれの接合開先に沿って溶接部を形成する溶接ビームを使用して突合せ溶接により溶接開先又は各溶接開先が溶接される。溶接中又は溶接直後に、各溶接部は焼きなましビームにより熱処理が施される。溶接部の冷却後、各溶接部は、その片側又は両側に片状のメタリック塗装により覆われる。この場合に、溶接部の塗装は個々の溶接部に電着により行うのが好ましい。
【0011】
溶接中又は溶接直後の熱処理により、冷却中の溶接部の温度変化は、制御により設定された時間内に行うことができる。マルテンサイト(martensite)及びバイナイト(bainite)の形成、及び溶接部の冷却の間での残留溶接応力により溶接部の硬度が増加するのが観察される。800℃から500℃の間の冷却範囲が、マルテンサイト形成にとって特に臨界である。溶接部の冷却の間にこの冷却範囲が制御され、自然な冷却率よりもより遅い速度であると、マルテンサイト及びバイナイトの形成は抑えられ、内部の溶接応力は減少し、このようにして溶接部の硬化の増加が避けられる。より低い溶接部の硬度により、鋼板を共に溶接した金属薄板はよりよい加工性を有することになる。
【0012】
最後に、溶接部は、引き続く処理ステップで溶接部へのメタリック塗装により腐食に対して防御され、本発明の方法により、容易に加工でき同時に耐食性を有する金属薄板が製造できる。
【0013】
冷却の間に溶接部の温度が、焼きなましビームにより1〜3秒、好ましくは1.5〜2秒の間、構造要素にとって臨界温度である800℃から500℃の間の冷却範囲に保持されると、溶接部のマルテンサイト及びバイナイトの形成を効果的に抑制することができる。
【0014】
レーザビームは、好ましくは、溶接ビーム又は焼きなましビームであり、溶接ビームは、接合される鋼板の表面の接合開先領域に対して高度に集中した点に直接当てられ、一方、焼きなましビームは、直接溶接部の表面上に線上の焦点、或いは丸、四角又は楕円の焦点として当てられ、溶接ビームの焦点と比較してかなり大きな適用領域となる。焼きなましビームは、溶接方向に溶接ビームを後追いするのが好ましい。その後、溶接部の後熱処理は、溶接ピリオドの終了後に短時間だけ行われる。焼きなましビームの焦点の直径は、少なくとも溶接部の全ての幅が焼きなましビームの焦点内に入るように選択されるのが好ましい。焼きなましビームの焦点の直径は、例えば、溶接方向の溶接部の周囲の熱影響部、又はその熱影響部の外側の領域さえも包含するためにより拡大して調整できる。焼きなましビームの投射時間は、溶接の速度を通じて、又は一定の溶接速度での焼きなましビームの焦点の長さにより調節可能である。焼きなましビームは、溶接部へ与える熱エネルギの多様なバリエーションがあるレーザ光線から形成されるのが好ましい。誘導的な或いは電導的な熱源を焼きなましビームの生成に使用できるが、それらの低いエネルギ密度ゆえに、同様の結果を得るためには明確により大きなエネルギが要求される。このことは、より高い内部応力及び溶接領域に生じるそり又は湾曲により不利であることが証明されている。
【0015】
溶接の間に溶接部の熱処理に二重レーザシステムを使用することが好ましい。このシステムは、溶接レーザビームの形で溶接ビームを、焼きなましレーザビームの形で焼きなましビームを提供する。このように、この熱処理は、溶接の間に溶接の方向において先行する溶融池の前面において直接的に同期して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の方法について、相互に接合される2つの鋼板の溶接部の長手方向の断面を用いた部分的なステップの説明図である。
【図2】本発明の部分的なステップの間に相互に接合される鋼板の平面図である。
【図3】本発明の方法の手順のステップの間の温度―時間冷却ダイアグラムを示す説明図である。
【図4a】メタリック塗装された鋼板の溶接部における電着機器の断面図である。
【図4b】電気塗装された溶接部を清掃する清掃処理を行う図4機器の断面図である。
【図4c】図4機器のアノード片を上部から見た平面図である。
【図5】溶接部に電解質を塗布する図1の機器の塗布機器の自動再生のための機器の説明図である。
【図6】図4の機器の清掃ユニットの説明図である。
【図7】図6の清掃ユニットの断面図である。
【図8】図4の機器のアノードの可能な実施形態の断面図である。
【図9】溶接部に電解質を適用する図4の機器の塗布機器の説明図である。
【図10】電気塗装され清掃された溶接部を乾燥させるステップの実施の間における図4の機器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1において、突き合わされた状態で相互に配置された2枚の鋼板1,1´の間の接合開先14の長手方向の断面の説明図を示す。これは、溶接ビーム13の放射による突合せ溶接であり、このビームは、接合開先14に集中した焦点を示している。この溶接ビーム13は、事前にセットされた溶接速度により溶接方向Sに進行する。溶融池16は、溶融された鉄の様態で溶接ビーム13に先行した領域に形成される。焼きなましビーム15は、溶接ビーム13の直後で溶接方向Sに向かい、形成されつつある溶接部2に沿って鋼板1,1´の表面に向けられ、焼きなましビームの焦点の直径は、溶接ビームの焦点の直径と比較するとかなり大きい。
【0018】
図2において、図1の相互に接合される鋼板1,1´の構成を上側からみた図で示す。焼きなましビームの焦点の形状は、図2に示されるように長円形及び/又は楕円形とすることができる。好ましくは、焼きなましビーム15の焦点は、線状の焦点の形状であり、線状の焦点の長軸は、形成された溶接部2の長さ方向に向く。焼きなまし領域17は、焼きなましビームの焦点の周囲に形成される。この焼きなまし領域17において、接合開先14の溶接により形成された溶接部2は、溶接時間の最後以降にすぐに、すなわち溶接部2の冷却の間に、後熱処理を受ける。焼きなましビーム15が鋼板の表面を投射する傾き角αは、調整可能なことが好ましい。焼きなましビーム15の投射時間、強度、及び傾斜角度は、溶接部2は、1−3秒の冷却の間に温度が500℃から800℃の範囲に保持されるように調節されることが好ましい。溶接ビーム13は、図1に示されるように鋼板の表面に垂直な方向から傾いていることが好ましく、また斜めに傾いて入射することができる。
【0019】
図3に、溶接中及び溶接後における接合開先14の特定点での溶接部2の時間ごとの温度履歴を示す。この溶接の間、溶接ビーム13がその点を通過すると温度はまず急激に上昇する。その温度は、鋼板が溶融する溶融温度Ts以上の値に到達する。溶接ビーム13が通過すると、すなわち溶接時間が終了すると温度はふたたび低下し、溶接部2における溶接ビームの影響により発生する温度の時間履歴曲線は、図3に示すように、理想化されたガウス曲線の形状となる。本発明の方法によれば、溶接部2への焼きなましビーム15による熱の入力は、長時間500℃から800℃の間の温度範囲内に溶接温度を保持するために、溶接ビームの間、及び溶接の影響後にも行われる。この500℃から800℃の温度範囲は、マルテンサイトが自然状態での冷却速度により直ぐに通過する溶接冷却期間に形成される遷移範囲である。焼きなましビーム15の影響は、溶接部2を、例えば1−3秒の長時間において遷移温度範囲に保持させる。これは、図3に示す時間ごとの温度遷移曲線により示される。溶接部の温度は、焼きなましビーム放射の期間や強度により、遷移範囲において、より短時間又はより長時間になるかが決定される。マルテンサイトの形成は、溶接部の温度が、少なくとも1.5−2秒の間保持できれば大いに抑制できることが観察される。
【0020】
焼きなましビームにより溶接部に対して同時の又は引き続く熱処理を行うという上述した突合せ溶接法は、本発明の双方の方法に同様なやり方で適用できる。本発明の第1の方法においては、2枚の塗装されていない鋼板1,1´は、最初にこの方法で相互に溶接され、引き続き溶接後にメタリック塗装により全表面が塗装され、一方又は双方の溶接部2も、メタリック塗装が施される。接合された鋼板1,1´の全表面の塗装は、この場合公知の方法で行われ、例えば、公知のスズメッキ片、及び/又は焼付けクロム鋼板片の設備で、亜鉛メッキ又はクロム焼付けにより行われる。
【0021】
本発明の第2の方法においては、既にメタリック塗装が施された鋼板1,1´は、上述した突合せ溶接法により溶接され、焼きなましビーム15により、溶接中又は溶接後に熱処理される。溶接部の冷却後、電着により片状のメタリック塗装が施される。図4に、溶接部2の両面のメタリック塗装に用いられる機器が示され、図4aは、溶接部の電着の間の処理ステップにおける機器を示し、図4bは、電着された溶接部の清掃ステップを実施する間の同様な機器を示す。
【0022】
図4に示す機器は、鉛直方向を向き鋼板1,1´の表面に対して垂直に移動可能な2つのアノード片4,5から構成される。アドード片4,5の双方は、鋼板1,1´の逆の面に相互に整列して相互に浮いていることが好ましい。その機器は、さらに、溶接部2の電着に用いる電解質の溶液を送る送り装置を備える。この送り装置は、電解質の容器に連結される。さらに、この機器は、溶接部2に電解質を塗布する塗布装置を備え、鋼板1,1´に対して電位差を与えるアノード8を備える。2つのアノード片4,5が鋼板に対して平行であり接合開先14の長さ方向に向き、鋼板1,1´の上側及び下側に配置されるように、鋼板1,1´を締め付けて固定する締結装置11が供給される。
【0023】
2つのアノード片4,5の長さは、処理される鋼板1の少なくとも最大幅である(処理される溶接部2の最大長さに対応する)。図4cには、図4aに示される2個のアノード片のうちの上部アノード片4を、下に配置される鋼板1及びアノード片4がガイドされる2個の鉛直ガイド30とともに上方から見た図が示されている。アノード片4,5は、腐食に対して安定した材料、例えば、鋼材、特に耐酸性のステンレス鋼、又は非鉄金属、特にセラミックから製造される。実用的な目的から、アノード片4,5は、アノード片4,5の電荷に対する防御装置が省略できるため電気的な絶縁材から製造される。アノード片4,5は、図4aの断面図から分かるように、好ましくは中空の形状を有する。
【0024】
溶接部2に電解質を塗布する塗布装置は、中空のアノード片4,5の内部に配置され、図4aに示される実施形態の塗布装置は、電気的に非導電性を有し、開放気泡(open cell)材料からなるパッド7を備える。このパッド7は、開放気泡の泡又はフェルト又はフリース(fleece)素材であり得る。このパッド7は、各アノード片4,5に対して長さ方向に向かい、鋼板1,1´に面するアノード片4,5の下方の縁の反対方向に少しだけはみ出している。このパッド7は、各アノード片4,5の中空形状内の管6に接続する。排水口は管6に接続され、そこから管に流れる電解液はパッド7に流入し、それから吸収される。さらに、アノード8は、各アノード片4,5内に配置される。図4aに示される実施形態では、アノード8は、長手方向において各アノード片4,5内に向かう電気的に導電性を有する管、好ましくは、メタリック管から形成される。
【0025】
上述した突合せ溶接法により相互に接合された鋼板1,1´は、溶接部2への電着のために処理装置に案内され、溶接部2が2個のアノード片4,5に平行になるように配置される。処理装置は、この位置で鋼板1,1´の位置決めをして固定する締結装置を備える。この締結装置11は、図4aの実施形態に示す2組の締付顎11a及び11bを備える。これらは、鋼板1,1´の上部及び/又は下部に設置される。締付顎は、アノード片4,5と同様に鋼板1,1´の表面に対して垂直に動作可能であり、各々鋼板1,1´に面する下端の縁にガスケット12を有する。ガスケット12は、鋼板1,1´の位置決め及び固定のために1組の締付顎11a,11bの間に締め付けられ、鋼板がセットされる際にその表面に機械的な損傷が生じるのを回避し、さらに、溶接部2の回りの領域の処理スペースを気密な状態で密封する。締結装置11において鋼板1,1´の締付けをする間、内部応力により溶接及び圧延の方向に垂直な波形を有する溶接鋼板の表面は、滑らかになる。
【0026】
鋼板を締結装置11により位置決めして固定した後(又はその前でも)、2個のアノード片4,5は、溶接部2の領域において鋼板1,1´のいずれかの側に設置され、アノード片4,5は、鋼板1,1´の表面に垂直な方向にそれぞれのガイド30により移動する。この場合、パッド7は設定された圧力で溶接部2に押え付けられる。その後、アノード8と鋼板1,1´に電圧が印加され、同時に、電解質の溶液が送り装置から塗布装置へと送られ、これにより、パッド7は電解質の溶液に浸される。電解質のフィルムは、鋼板1,1´の表面に形成される。これは、図4aの参照番号3で示される。鋼板1,1´(及び/又は溶接部2)とアノード8との間に印加された電圧により、電解質のイオンは、陰極として接続された鋼板、特に溶接部2に移動する。鋼板の表面上及び/又は溶接の表面上の電解質のイオンは、電子による取り込みにより付着する。溶接部2に付着したメタリック塗装の厚さは、処理時間、与えられた一定の電気的な特性値、及び規定された電気的な導電性を有する電解質の安定的なイオンの集中度によってのみ決定される。この処理時間はタイマにより予めセットできる。
【0027】
パッド7の構造が開泡であるために、特に塩析により逆に悪影響し、このようにして鋼板の表面上の電解質の定常的な流れが局所的に妨害され得るので、溶接部2の各電着処理の一定の処理パラメータを確実にするために、パッド7は一定の時間間隔で新しいものに取り替えなければならず、及び/又は再生しなければならない。パッド7の交換及び/又は再生は、アノード片4,5の交換により効果を生じ得る。代替として、図5に説明されるように自動パッド交換ユニットが使用され得る。このパッド交換ユニットは、パッドの素材が巻かれる供給ロール18を備える。この供給ロール18は、各アノード片4,5に隣接して配置される。パッド7を使い切ると、新たなパッド素材を手動により、又は事前にセットされた時間管理により自動的に供給ロール18から引き出すことができ、各アノード片4,5のパッド受け器に引き落とされ、一方、使い切ったパッド7の領域は、同時に取上げロール19に巻かれる。取上げロール19は、供給ロール18の反対側に各アノード片4,5に隣接して配置される。
【0028】
溶接部に十分に厚いメタリック層が電着されると直ぐに、鋼板1,1´とアノード8との間の電圧が落とされ、電解質の供給が停止される。鋼板の表面に残った電解質の溶液は、塩析を避けるために循環が維持され、アノード片4,5は、図4bに示すように、電圧の切断、及び電解質の供給停止後に、鋼板の表面から離れた初期の位置に移動する。
【0029】
最終的に、鋼板の表面に残留した電解質の残留物を除去することで鋼板の表面の清掃が行われる。この目的のために、本装置は、鋼板の表面に平行な水平方向に向かい、清掃用スライド13a,13bを有する清掃装置13を持ち、各々鋼板の上部及び下部に配置される。図6には、説明用に清掃用のスライド13a,13bの移動の様子が示される。清掃用のスライド13a,13bは、締付顎11の溝にガイドされる。溝は、図4bの断面図に示すように、清掃用のスライド13のガイドウェブ28が挿入される溝部27の形状に設計される。
【0030】
図7には、清掃用のスライド13aが断面で示される。各清掃用のスライド13a,13bは、水を鋼板1の表面に吹き付ける高圧スプレイノズル15に耐え得る。さらに、各清掃用のスライド13a,13bは、真空圧により操作される吸引装置16を有する。ガスケット14が各掃用のスライド13a,13bの底に配置されて鋼板の表面に接触し、このようにして、防水仕様により表面への損傷を回避し、溶接部2の周囲の処理スペースを密封する。防水シールにより、洗浄水は逃げ込むことができず、外気は外部から吸込まれない。
【0031】
清掃ステップを行うために、各清掃用のスライド13a,13bは、鋼板の表面を図6に示す初期位置から水平に溶接部2の長手方向に移動する。鋼板の表面の清掃用に、ノズル15を通じて水が鋼板の表面に吹き付けられ、それにより形成される水と電解質の混合液が吸引装置16に同時に吸引される。必要であれば、清掃処理は数回繰り返される。この必要な清掃回数は、制御装置により初期設定される。最終の清掃処理の後、各清掃用のスライド13a,13bは、初期位置に戻される。
【0032】
電解質の溶液は、図4に示す塗布装置の実施形態により管6を通じて供給される。代替の実施形態として、電解質の溶液は、管の形状をしたアノード8を通じて供給でき、管の形状をしたアノード8は、さらにアノード8の周囲のパッド7に浸透できる電解質が経由する出口開口を有する。アノード管8は、本実施形態では、好ましくは耐酸性、電気的導電性を有する、例えばステンレス鋼素材から製作される。
【0033】
他の実施形態では、図8及び図9に示すように、アノード8は、その底部側にシーリング片21が配置された細長く長方形の管20(図8参照)から形成される。長方形の管20は、アノード8としてその目的に使用され、鋼板1に対して電圧を有し、同時に電解質の溶液を供給する供給装置として用いられ、電解質を溶接部に塗布する塗布装置として用いられる。そのような長方形の管20は、溶接部2に沿って向かう鋼板の頂部側に配置され、構造的に同じ長方形の管26は、図9に示すように底部側に配置される。
【0034】
長方形の管20,26の双方は、電解質の溶液の容器22に接続される(図9参照)。電解質の溶液は、ポンプを介して長方形の管に吸引され、スプレイノズルを介して溶接部2の領域の鋼板の表面に吹きつけられる。このようにして、ガスケット21により溶接部2の周囲を密封した処理スペースは、電解質の溶液に満たされる。余剰な電解質の溶液は、吸引装置により処理中に鋼板1の表面から吸引でき、再使用するため容器22に送られる。前述した実施形態で述べたように、鋼板表面の清掃は、溶接部2の電着の終了後に水により洗浄し、電解質―水の溶液を吸引することで行われる。この目的のために、本実施形態では、各長方形の管20,26は水循環ユニット25に接続される(図9参照)。清掃サイクルの終了後、好ましくは、鋼板表面、特に電気塗装された溶接部2の領域の乾燥が行われる。乾燥処理は、圧縮空気又は高温空気により行われ得る。この目的のために、図10に示すように、締付顎11a,11bに空気ノズル17が備えられる。乾燥空気は、調節された角度で空気ノズル17により鋼板1に噴きかけられ得る。乾燥の程度は、乾燥時間により調節され、制御装置により調節される。
【0035】
溶接部2は、その腐食を防止するために上述した装置により片状のメタリック塗装が供給され得る。溶接中や溶接後の溶接部の熱処理により、接合された鋼板1,1´は、溶接部2においても容易に加工性が良好となり、同時に腐食に対して防御可能となる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1及び2による耐食性及び加工性を有する金属薄板の製造方法に関し、また、請求項17の導入部(preamble)による、鋼板の突合せ溶接にメタリック塗装を適用する装置に関する。本方法により製造された金属薄板は、例えば、食料を梱包する容器の製造、缶詰食品の缶、飲料品の缶、或いは、例えば自動車の本体パネルの製造などの、良好な加工性を有する耐食性金属薄板が要求される他の分野においても用いられる。食品の包装又は自動車の本体パネルに用いられる鋼板は、耐食性を有していなければならない。食品の包装の場合、金属薄板の表面が侵食性のある添加物により攻撃されないように耐食性を有する金属薄板でなければならない。この理由から、食品の包装の製造に用いられる鋼板は、耐食性塗装が施される。この場合、缶の板(缶鋼板)はメタリック塗装にすることができる。
【背景技術】
【0002】
食品の包装では、塗装された金属薄板は、例えば引抜き処理(deep−drawing process)により再加工されなければならない。塗装された金属薄板の製造の間、金属薄板の欠陥又は損傷を受けた部位は取り除かれ、その後、リールに巻かれた規格長さの鋼片を形成するために欠陥のない金属薄板の部位が相互に溶接される。多くの金属薄板から相互に溶接されたそれらの金属薄板片は、溶接した領域が満足な状態で加工されないため不満足な状態となる。例えば、耐食性を有する鋼板は、1つの溶接された本体と2つの折り曲げられた蓋から構成される缶詰の缶の製造に用いられる。金属薄板は、溶接された領域において個々の鋼板自体よりも極めて高い硬度を有し、その結果、溶接領域において金属薄板の加工性が劣化する。
【0003】
従って、先行技術において、この加工性を改善するために相互に溶接される少なくとも2つの鋼板の溶接による硬化を減少させる加工性の良い鋼板の製造方法が推奨されている。特許文献1には、縁部がビーム溶接により溶接された少なくとも2つの要素から形成される引抜き鋼板(deep−drawn steel sheet)で、溶接による硬化を防ぐために、溶接前に溶接される縁部にレーザ光線が照射され、同時に酸素が供給されるという製造方法が記載されている。このようにして、縁部の脱炭及び酸化が行われる。
【0004】
準備段階においてレーザ光線を照射すると、材料が熱エネルギの付加によりその塑性限界よりも高く伸ばされ、薄い厚さのシートに好ましくない方法でその縁部の組成に悪影響を及ぼす。これは、内部応力を増加させ、縁部の要素にそり(warping)を生じさせる。高さをオフセットせずに溶接幅を変え、一様な溶接線により引き続いて精密なレーザ溶接を行うことは達成し難いが、最善な加工の結果を得るには有効である。さらに、材料の脱炭と組み合わされたこのタイプの熱処理は、多くの場合、加工時に材料が降伏して軟弱な微細構造を有する明確な熱影響部が形成される。また、溶接領域への酸素の投与は、材料の脆性破壊、及び溶接に近接した領域において、二酸化鉄(FeO2)が鉄(Fe)と酸素(O2)に分解される温度以下に留まることで生じる表面の酸化現象の危険性を隠蔽する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第540382号機器1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらに基づき、発明の目的は、耐食性を有し、相互に溶接される個々の鋼板から取り出された加工性の良い金属薄板を可能な限り製造することである。
【0007】
この問題は、請求項1及び請求項2に示された方法により解決される。この方法の好ましい実施形態は従属する請求項に示される。
【0008】
本発明は、添付された図面を参照する下記の実施形態により、より分かりやすく説明される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法によると、耐食性を有し容易に加工できる金属薄板は、厚さが0.10mmから0.70mmの範囲であり2つ以上の塗装されていない鋼板から製造され、まず塗装されていない鋼板が突き合わせられた状態で相互に並べられ、次に溶接部を形成する溶接ビームを使用して突き合わせ溶接により各溶接部の開先が溶接される。溶接ビームはレーザ溶接ビーム又は電子溶接ビームとすることが可能である。各溶接部の熱処理は、溶接中又は溶接直後に焼きなましビームにより行われ、この焼きなましビームは、好ましくはレーザビームにより形成される。溶接部の冷却後、相互に溶接された鋼板からなる金属薄板は、少なくとも片面、又は両面がメタリック塗装され、各溶接部も片側又は両側が塗装される。
【0010】
本発明の他の方法によると、耐食性を有し容易に加工できる金属薄板は、2つ以上のメタリック塗装された鋼板から製造され、塗装された鋼板は、まず鋼板同士が突き合わせられた状態で相互に並べられ、次に、それぞれの接合開先に沿って溶接部を形成する溶接ビームを使用して突合せ溶接により溶接開先又は各溶接開先が溶接される。溶接中又は溶接直後に、各溶接部は焼きなましビームにより熱処理が施される。溶接部の冷却後、各溶接部は、その片側又は両側に片状のメタリック塗装により覆われる。この場合に、溶接部の塗装は個々の溶接部に電着により行うのが好ましい。
【0011】
溶接中又は溶接直後の熱処理により、冷却中の溶接部の温度変化は、制御により設定された時間内に行うことができる。マルテンサイト(martensite)及びバイナイト(bainite)の形成、及び溶接部の冷却の間での残留溶接応力により溶接部の硬度が増加するのが観察される。800℃から500℃の間の冷却範囲が、マルテンサイト形成にとって特に臨界である。溶接部の冷却の間にこの冷却範囲が制御され、自然な冷却率よりもより遅い速度であると、マルテンサイト及びバイナイトの形成は抑えられ、内部の溶接応力は減少し、このようにして溶接部の硬化の増加が避けられる。より低い溶接部の硬度により、鋼板を共に溶接した金属薄板はよりよい加工性を有することになる。
【0012】
最後に、溶接部は、引き続く処理ステップで溶接部へのメタリック塗装により腐食に対して防御され、本発明の方法により、容易に加工でき同時に耐食性を有する金属薄板が製造できる。
【0013】
冷却の間に溶接部の温度が、焼きなましビームにより1〜3秒、好ましくは1.5〜2秒の間、構造要素にとって臨界温度である800℃から500℃の間の冷却範囲に保持されると、溶接部のマルテンサイト及びバイナイトの形成を効果的に抑制することができる。
【0014】
レーザビームは、好ましくは、溶接ビーム又は焼きなましビームであり、溶接ビームは、接合される鋼板の表面の接合開先領域に対して高度に集中した点に直接当てられ、一方、焼きなましビームは、直接溶接部の表面上に線上の焦点、或いは丸、四角又は楕円の焦点として当てられ、溶接ビームの焦点と比較してかなり大きな適用領域となる。焼きなましビームは、溶接方向に溶接ビームを後追いするのが好ましい。その後、溶接部の後熱処理は、溶接ピリオドの終了後に短時間だけ行われる。焼きなましビームの焦点の直径は、少なくとも溶接部の全ての幅が焼きなましビームの焦点内に入るように選択されるのが好ましい。焼きなましビームの焦点の直径は、例えば、溶接方向の溶接部の周囲の熱影響部、又はその熱影響部の外側の領域さえも包含するためにより拡大して調整できる。焼きなましビームの投射時間は、溶接の速度を通じて、又は一定の溶接速度での焼きなましビームの焦点の長さにより調節可能である。焼きなましビームは、溶接部へ与える熱エネルギの多様なバリエーションがあるレーザ光線から形成されるのが好ましい。誘導的な或いは電導的な熱源を焼きなましビームの生成に使用できるが、それらの低いエネルギ密度ゆえに、同様の結果を得るためには明確により大きなエネルギが要求される。このことは、より高い内部応力及び溶接領域に生じるそり又は湾曲により不利であることが証明されている。
【0015】
溶接の間に溶接部の熱処理に二重レーザシステムを使用することが好ましい。このシステムは、溶接レーザビームの形で溶接ビームを、焼きなましレーザビームの形で焼きなましビームを提供する。このように、この熱処理は、溶接の間に溶接の方向において先行する溶融池の前面において直接的に同期して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の方法について、相互に接合される2つの鋼板の溶接部の長手方向の断面を用いた部分的なステップの説明図である。
【図2】本発明の部分的なステップの間に相互に接合される鋼板の平面図である。
【図3】本発明の方法の手順のステップの間の温度―時間冷却ダイアグラムを示す説明図である。
【図4a】メタリック塗装された鋼板の溶接部における電着機器の断面図である。
【図4b】電気塗装された溶接部を清掃する清掃処理を行う図4機器の断面図である。
【図4c】図4機器のアノード片を上部から見た平面図である。
【図5】溶接部に電解質を塗布する図1の機器の塗布機器の自動再生のための機器の説明図である。
【図6】図4の機器の清掃ユニットの説明図である。
【図7】図6の清掃ユニットの断面図である。
【図8】図4の機器のアノードの可能な実施形態の断面図である。
【図9】溶接部に電解質を適用する図4の機器の塗布機器の説明図である。
【図10】電気塗装され清掃された溶接部を乾燥させるステップの実施の間における図4の機器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1において、突き合わされた状態で相互に配置された2枚の鋼板1,1´の間の接合開先14の長手方向の断面の説明図を示す。これは、溶接ビーム13の放射による突合せ溶接であり、このビームは、接合開先14に集中した焦点を示している。この溶接ビーム13は、事前にセットされた溶接速度により溶接方向Sに進行する。溶融池16は、溶融された鉄の様態で溶接ビーム13に先行した領域に形成される。焼きなましビーム15は、溶接ビーム13の直後で溶接方向Sに向かい、形成されつつある溶接部2に沿って鋼板1,1´の表面に向けられ、焼きなましビームの焦点の直径は、溶接ビームの焦点の直径と比較するとかなり大きい。
【0018】
図2において、図1の相互に接合される鋼板1,1´の構成を上側からみた図で示す。焼きなましビームの焦点の形状は、図2に示されるように長円形及び/又は楕円形とすることができる。好ましくは、焼きなましビーム15の焦点は、線状の焦点の形状であり、線状の焦点の長軸は、形成された溶接部2の長さ方向に向く。焼きなまし領域17は、焼きなましビームの焦点の周囲に形成される。この焼きなまし領域17において、接合開先14の溶接により形成された溶接部2は、溶接時間の最後以降にすぐに、すなわち溶接部2の冷却の間に、後熱処理を受ける。焼きなましビーム15が鋼板の表面を投射する傾き角αは、調整可能なことが好ましい。焼きなましビーム15の投射時間、強度、及び傾斜角度は、溶接部2は、1−3秒の冷却の間に温度が500℃から800℃の範囲に保持されるように調節されることが好ましい。溶接ビーム13は、図1に示されるように鋼板の表面に垂直な方向から傾いていることが好ましく、また斜めに傾いて入射することができる。
【0019】
図3に、溶接中及び溶接後における接合開先14の特定点での溶接部2の時間ごとの温度履歴を示す。この溶接の間、溶接ビーム13がその点を通過すると温度はまず急激に上昇する。その温度は、鋼板が溶融する溶融温度Ts以上の値に到達する。溶接ビーム13が通過すると、すなわち溶接時間が終了すると温度はふたたび低下し、溶接部2における溶接ビームの影響により発生する温度の時間履歴曲線は、図3に示すように、理想化されたガウス曲線の形状となる。本発明の方法によれば、溶接部2への焼きなましビーム15による熱の入力は、長時間500℃から800℃の間の温度範囲内に溶接温度を保持するために、溶接ビームの間、及び溶接の影響後にも行われる。この500℃から800℃の温度範囲は、マルテンサイトが自然状態での冷却速度により直ぐに通過する溶接冷却期間に形成される遷移範囲である。焼きなましビーム15の影響は、溶接部2を、例えば1−3秒の長時間において遷移温度範囲に保持させる。これは、図3に示す時間ごとの温度遷移曲線により示される。溶接部の温度は、焼きなましビーム放射の期間や強度により、遷移範囲において、より短時間又はより長時間になるかが決定される。マルテンサイトの形成は、溶接部の温度が、少なくとも1.5−2秒の間保持できれば大いに抑制できることが観察される。
【0020】
焼きなましビームにより溶接部に対して同時の又は引き続く熱処理を行うという上述した突合せ溶接法は、本発明の双方の方法に同様なやり方で適用できる。本発明の第1の方法においては、2枚の塗装されていない鋼板1,1´は、最初にこの方法で相互に溶接され、引き続き溶接後にメタリック塗装により全表面が塗装され、一方又は双方の溶接部2も、メタリック塗装が施される。接合された鋼板1,1´の全表面の塗装は、この場合公知の方法で行われ、例えば、公知のスズメッキ片、及び/又は焼付けクロム鋼板片の設備で、亜鉛メッキ又はクロム焼付けにより行われる。
【0021】
本発明の第2の方法においては、既にメタリック塗装が施された鋼板1,1´は、上述した突合せ溶接法により溶接され、焼きなましビーム15により、溶接中又は溶接後に熱処理される。溶接部の冷却後、電着により片状のメタリック塗装が施される。図4に、溶接部2の両面のメタリック塗装に用いられる機器が示され、図4aは、溶接部の電着の間の処理ステップにおける機器を示し、図4bは、電着された溶接部の清掃ステップを実施する間の同様な機器を示す。
【0022】
図4に示す機器は、鉛直方向を向き鋼板1,1´の表面に対して垂直に移動可能な2つのアノード片4,5から構成される。アドード片4,5の双方は、鋼板1,1´の逆の面に相互に整列して相互に浮いていることが好ましい。その機器は、さらに、溶接部2の電着に用いる電解質の溶液を送る送り装置を備える。この送り装置は、電解質の容器に連結される。さらに、この機器は、溶接部2に電解質を塗布する塗布装置を備え、鋼板1,1´に対して電位差を与えるアノード8を備える。2つのアノード片4,5が鋼板に対して平行であり接合開先14の長さ方向に向き、鋼板1,1´の上側及び下側に配置されるように、鋼板1,1´を締め付けて固定する締結装置11が供給される。
【0023】
2つのアノード片4,5の長さは、処理される鋼板1の少なくとも最大幅である(処理される溶接部2の最大長さに対応する)。図4cには、図4aに示される2個のアノード片のうちの上部アノード片4を、下に配置される鋼板1及びアノード片4がガイドされる2個の鉛直ガイド30とともに上方から見た図が示されている。アノード片4,5は、腐食に対して安定した材料、例えば、鋼材、特に耐酸性のステンレス鋼、又は非鉄金属、特にセラミックから製造される。実用的な目的から、アノード片4,5は、アノード片4,5の電荷に対する防御装置が省略できるため電気的な絶縁材から製造される。アノード片4,5は、図4aの断面図から分かるように、好ましくは中空の形状を有する。
【0024】
溶接部2に電解質を塗布する塗布装置は、中空のアノード片4,5の内部に配置され、図4aに示される実施形態の塗布装置は、電気的に非導電性を有し、開放気泡(open cell)材料からなるパッド7を備える。このパッド7は、開放気泡の泡又はフェルト又はフリース(fleece)素材であり得る。このパッド7は、各アノード片4,5に対して長さ方向に向かい、鋼板1,1´に面するアノード片4,5の下方の縁の反対方向に少しだけはみ出している。このパッド7は、各アノード片4,5の中空形状内の管6に接続する。排水口は管6に接続され、そこから管に流れる電解液はパッド7に流入し、それから吸収される。さらに、アノード8は、各アノード片4,5内に配置される。図4aに示される実施形態では、アノード8は、長手方向において各アノード片4,5内に向かう電気的に導電性を有する管、好ましくは、メタリック管から形成される。
【0025】
上述した突合せ溶接法により相互に接合された鋼板1,1´は、溶接部2への電着のために処理装置に案内され、溶接部2が2個のアノード片4,5に平行になるように配置される。処理装置は、この位置で鋼板1,1´の位置決めをして固定する締結装置を備える。この締結装置11は、図4aの実施形態に示す2組の締付顎11a及び11bを備える。これらは、鋼板1,1´の上部及び/又は下部に設置される。締付顎は、アノード片4,5と同様に鋼板1,1´の表面に対して垂直に動作可能であり、各々鋼板1,1´に面する下端の縁にガスケット12を有する。ガスケット12は、鋼板1,1´の位置決め及び固定のために1組の締付顎11a,11bの間に締め付けられ、鋼板がセットされる際にその表面に機械的な損傷が生じるのを回避し、さらに、溶接部2の回りの領域の処理スペースを気密な状態で密封する。締結装置11において鋼板1,1´の締付けをする間、内部応力により溶接及び圧延の方向に垂直な波形を有する溶接鋼板の表面は、滑らかになる。
【0026】
鋼板を締結装置11により位置決めして固定した後(又はその前でも)、2個のアノード片4,5は、溶接部2の領域において鋼板1,1´のいずれかの側に設置され、アノード片4,5は、鋼板1,1´の表面に垂直な方向にそれぞれのガイド30により移動する。この場合、パッド7は設定された圧力で溶接部2に押え付けられる。その後、アノード8と鋼板1,1´に電圧が印加され、同時に、電解質の溶液が送り装置から塗布装置へと送られ、これにより、パッド7は電解質の溶液に浸される。電解質のフィルムは、鋼板1,1´の表面に形成される。これは、図4aの参照番号3で示される。鋼板1,1´(及び/又は溶接部2)とアノード8との間に印加された電圧により、電解質のイオンは、陰極として接続された鋼板、特に溶接部2に移動する。鋼板の表面上及び/又は溶接の表面上の電解質のイオンは、電子による取り込みにより付着する。溶接部2に付着したメタリック塗装の厚さは、処理時間、与えられた一定の電気的な特性値、及び規定された電気的な導電性を有する電解質の安定的なイオンの集中度によってのみ決定される。この処理時間はタイマにより予めセットできる。
【0027】
パッド7の構造が開泡であるために、特に塩析により逆に悪影響し、このようにして鋼板の表面上の電解質の定常的な流れが局所的に妨害され得るので、溶接部2の各電着処理の一定の処理パラメータを確実にするために、パッド7は一定の時間間隔で新しいものに取り替えなければならず、及び/又は再生しなければならない。パッド7の交換及び/又は再生は、アノード片4,5の交換により効果を生じ得る。代替として、図5に説明されるように自動パッド交換ユニットが使用され得る。このパッド交換ユニットは、パッドの素材が巻かれる供給ロール18を備える。この供給ロール18は、各アノード片4,5に隣接して配置される。パッド7を使い切ると、新たなパッド素材を手動により、又は事前にセットされた時間管理により自動的に供給ロール18から引き出すことができ、各アノード片4,5のパッド受け器に引き落とされ、一方、使い切ったパッド7の領域は、同時に取上げロール19に巻かれる。取上げロール19は、供給ロール18の反対側に各アノード片4,5に隣接して配置される。
【0028】
溶接部に十分に厚いメタリック層が電着されると直ぐに、鋼板1,1´とアノード8との間の電圧が落とされ、電解質の供給が停止される。鋼板の表面に残った電解質の溶液は、塩析を避けるために循環が維持され、アノード片4,5は、図4bに示すように、電圧の切断、及び電解質の供給停止後に、鋼板の表面から離れた初期の位置に移動する。
【0029】
最終的に、鋼板の表面に残留した電解質の残留物を除去することで鋼板の表面の清掃が行われる。この目的のために、本装置は、鋼板の表面に平行な水平方向に向かい、清掃用スライド13a,13bを有する清掃装置13を持ち、各々鋼板の上部及び下部に配置される。図6には、説明用に清掃用のスライド13a,13bの移動の様子が示される。清掃用のスライド13a,13bは、締付顎11の溝にガイドされる。溝は、図4bの断面図に示すように、清掃用のスライド13のガイドウェブ28が挿入される溝部27の形状に設計される。
【0030】
図7には、清掃用のスライド13aが断面で示される。各清掃用のスライド13a,13bは、水を鋼板1の表面に吹き付ける高圧スプレイノズル15に耐え得る。さらに、各清掃用のスライド13a,13bは、真空圧により操作される吸引装置16を有する。ガスケット14が各掃用のスライド13a,13bの底に配置されて鋼板の表面に接触し、このようにして、防水仕様により表面への損傷を回避し、溶接部2の周囲の処理スペースを密封する。防水シールにより、洗浄水は逃げ込むことができず、外気は外部から吸込まれない。
【0031】
清掃ステップを行うために、各清掃用のスライド13a,13bは、鋼板の表面を図6に示す初期位置から水平に溶接部2の長手方向に移動する。鋼板の表面の清掃用に、ノズル15を通じて水が鋼板の表面に吹き付けられ、それにより形成される水と電解質の混合液が吸引装置16に同時に吸引される。必要であれば、清掃処理は数回繰り返される。この必要な清掃回数は、制御装置により初期設定される。最終の清掃処理の後、各清掃用のスライド13a,13bは、初期位置に戻される。
【0032】
電解質の溶液は、図4に示す塗布装置の実施形態により管6を通じて供給される。代替の実施形態として、電解質の溶液は、管の形状をしたアノード8を通じて供給でき、管の形状をしたアノード8は、さらにアノード8の周囲のパッド7に浸透できる電解質が経由する出口開口を有する。アノード管8は、本実施形態では、好ましくは耐酸性、電気的導電性を有する、例えばステンレス鋼素材から製作される。
【0033】
他の実施形態では、図8及び図9に示すように、アノード8は、その底部側にシーリング片21が配置された細長く長方形の管20(図8参照)から形成される。長方形の管20は、アノード8としてその目的に使用され、鋼板1に対して電圧を有し、同時に電解質の溶液を供給する供給装置として用いられ、電解質を溶接部に塗布する塗布装置として用いられる。そのような長方形の管20は、溶接部2に沿って向かう鋼板の頂部側に配置され、構造的に同じ長方形の管26は、図9に示すように底部側に配置される。
【0034】
長方形の管20,26の双方は、電解質の溶液の容器22に接続される(図9参照)。電解質の溶液は、ポンプを介して長方形の管に吸引され、スプレイノズルを介して溶接部2の領域の鋼板の表面に吹きつけられる。このようにして、ガスケット21により溶接部2の周囲を密封した処理スペースは、電解質の溶液に満たされる。余剰な電解質の溶液は、吸引装置により処理中に鋼板1の表面から吸引でき、再使用するため容器22に送られる。前述した実施形態で述べたように、鋼板表面の清掃は、溶接部2の電着の終了後に水により洗浄し、電解質―水の溶液を吸引することで行われる。この目的のために、本実施形態では、各長方形の管20,26は水循環ユニット25に接続される(図9参照)。清掃サイクルの終了後、好ましくは、鋼板表面、特に電気塗装された溶接部2の領域の乾燥が行われる。乾燥処理は、圧縮空気又は高温空気により行われ得る。この目的のために、図10に示すように、締付顎11a,11bに空気ノズル17が備えられる。乾燥空気は、調節された角度で空気ノズル17により鋼板1に噴きかけられ得る。乾燥の程度は、乾燥時間により調節され、制御装置により調節される。
【0035】
溶接部2は、その腐食を防止するために上述した装置により片状のメタリック塗装が供給され得る。溶接中や溶接後の溶接部の熱処理により、接合された鋼板1,1´は、溶接部2においても容易に加工性が良好となり、同時に腐食に対して防御可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装されていない鋼板(1,1´)からなる耐食性及び加工性を有する金属薄板の製造方法において、
鋼板(1,1´)を突き合せた状態で配置するステップと、
各接合溶接開先(14)に沿った溶接部(2)を形成するために、溶接ビーム(13)による突合せ溶接により、一方の溶接開先又は両方の溶接開先(14)を溶接するステップと、
溶接部(2)の形成中又は溶接部(2)が形成された直後に、焼きなましビーム(15)により、一方の溶接部(2)又は両方の溶接部(2)を熱処理するステップと、
接合された鋼板(1,1´)の一方の溶接部(2)又は両方の溶接部(2)を含む全表面をメタリック塗装により塗装するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
メタリック塗装が塗布された鋼板(1,1´)からなる耐食性及び加工性を有する金属薄板の製造方法において、
鋼板(1,1´)を突き合せた状態で配置するステップと、
各接合溶接開先(14)に沿って溶接部(2)を形成するために、溶接ビーム(13)による突合せ溶接により一方の溶接開先又は両方の溶接開先(14)を溶接するステップと、
溶接部(2)の形成中又は溶接部(2)が形成された直後に、焼きなましビーム(15)により、一方の溶接部(2)又は両方の溶接部(2)を熱処理するステップと、
冷却後に、各溶接部(2)に片状のメタリック塗装を塗布するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、鋼板(1,1´)の塗装は電着により行われ、特に、スズメッキ、亜鉛メッキ、又はクロム焼付けにより行われることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法であって、焼付けビーム(15)は、溶接方向(S)に溶接ビーム(13)を後追いすることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1に記載の方法であって、焼付けビーム(15)は、線状の焦点により入射することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1に記載の方法であって、溶接部(2)の温度は、溶接部(2)の領域においてマルテンサイトの形成を回避するために、溶接後の冷却期間は、焼きなましビーム(15)により、1−3秒、好ましくは1.5−2秒の時間間隔で800℃及び500℃の間の温度範囲を保持することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法であって、溶接部(2)の塗装は、溶接部(2)への電着によることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、溶接部(2)上の電着のために溶接部(2)から距離をおき、溶接部(2)に沿って配置されるアノード(8)に対応する鋼板(1、1´)には電圧が印加され、電解質は溶接部(2)に同時に塗布されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、塗装された鋼板(1,1´)は、スズメッキされた、又は特殊なクロムメッキされた鋼板であり、電解質は電解されたススのイオン、又はクロムのイオンを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の方法であって、電解質は、電気的な導電性として50−500mS/cmを有することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか1に記載の方法であって、電解質は、パッド(7)を経由して溶接部(2)に適用され、このパッドは溶接部(2)に接触し、電気的に非伝導性を有する開泡(open−cell)素材からなることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、パッド(7)は、溶接部(2)の表面に所定の圧力で接触して前面を覆うことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれか1に記載の方法であって、電解質は、少なくとも1つのスプレイ開口又はスプレイノズルが供給された管(20)を介して溶接部(2)に吹き付けられることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項7乃至13のいずれか1に記載の方法であって、鋼板(1,1´)は、溶接部(2)の周囲の領域にある締結要素(11)により、溶接部(2)の電着の間に1つの面にほとんどフラットに保持されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項8乃至14のいずれか1に記載の方法であって、鋼板(1,1´)は、溶接部(2)への電着後に、その表面、少なくとも溶接部(2)の領域において残留した電解質の残留物が清掃されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1に記載の方法であって、溶接部(2)の冷却期間は、溶接部(2)の冷却が保持される速度が、溶接部の領域に焼きなましビーム(15)の効果がない場合にマルテンサイトの形成が生じる速度より低くなるように、焼きなましビーム(15)により延長されることを特徴とする方法。
【請求項17】
鋼板(1)に対して電位差を印加する少なくとも1つのアノード(8)と、溶接部(2)の電着に対して電解質を供給する送り装置と、溶接部(2)に電解質を塗布する塗布装置とを備え、溶接部(2)に電着することで鋼板(1)の突合せ溶接部(2)にメタリック塗装を行う機器において、
アノード(8)は、アノード片(4)の形状に形成され、又はアノード片(4)として配置され、締結装置(11)は、片状のアノード(8)が鋼板(1)から距離を置いて溶接部(2)に沿うように、鋼板(1)及びアノード片(4)を隣同士に配置して固定するために、鋼板(1)を位置決めして固定するために供給されることを特徴とする機器。
【請求項18】
請求項9に記載の機器であって、他のアノード片(5)がアノード(8)と共に供給され、2つのアノード片(4,5)は、鋼板(1)の相対する面に配置されることを特徴とする機器。
【請求項19】
請求項9又は10に記載の機器であって、一方のアノード片又は両方のアノード片(4,5)は、鋼板(1)の表面に垂直方向に移動することを特徴とする機器。
【請求項20】
請求項10又は11に記載の機器であって、両方のアノード片(4,5)は、相互に浮いて搭載されることを特徴とする機器。
【請求項21】
請求項9乃至12のいずれか1に記載の機器であって、一方のアノード片又は両方のアノード片(4,5)の塗布装置は、電気的に非伝導性を有する開泡(open−cell)素材からなるパッド(7)により形成されることを特徴とする機器。
【請求項22】
請求項9乃至12のいずれか1に記載の機器であって、一方のアノード片又は両方のアノード片(4,5)の塗布装置(7)は、少なくとも1つのスプレイ開口又はスプレイノズルを持つ少なくとも1つの排出管(20)から形成されることを特徴とする機器。
【請求項23】
請求項9乃至14のいずれか1に記載の機器であって、送り装置は、アノード片(4又は5)に配置され電気的に導電性を有する管(8,20)を備え、アノード(8)として同時に使用され、鋼板(1)に対して電圧が印加されることを特徴とする機器。
【請求項24】
請求項13に記載の機器であって、送り装置は、パッド(7)に挿入される排出開口を有するアノード片(4又は5)に配置される管(6)を備え、パッド(7)は電解質により浸ることを特徴とする機器。
【請求項25】
請求項9乃至16のいずれか1に記載の機器であって、送り装置は、電解質の循環ユニットに接続され、このユニットは、電着処理の間に付着しなかった電解質の残留物を再度送り装置に送ることを特徴とする機器。
【請求項26】
請求項9乃至17のいずれか1に記載の機器であって、溶接部(2)の電着後に、溶接部又は鋼板(1)に残留した電解質の残留物を除去するための清掃装置(13)を有することを特徴とする機器。
【請求項27】
請求項18に記載の機器であって、清掃装置(13)は、鋼板の表面に平行に水平方法に移動する少なくとも1つの清掃用のスライド(13,13b)を備えることを特徴とする機器。
【請求項28】
請求項19に記載の機器であって、1つ又は各清掃用のスライド(13a,13b)は、鋼板の表面に吹き付けるスプレイノズル(15)を有することを特徴とする機器。
【請求項29】
請求項19又は20に記載の機器であって、1つ又は各清掃用のスライド(13,13b)は吸引装置(16)を有し、それにより清掃ステップの間に鋼板の表面に形成される電解質と水との混合水が吸引可能なことを特徴とする機器。
【請求項1】
塗装されていない鋼板(1,1´)からなる耐食性及び加工性を有する金属薄板の製造方法において、
鋼板(1,1´)を突き合せた状態で配置するステップと、
各接合溶接開先(14)に沿った溶接部(2)を形成するために、溶接ビーム(13)による突合せ溶接により、一方の溶接開先又は両方の溶接開先(14)を溶接するステップと、
溶接部(2)の形成中又は溶接部(2)が形成された直後に、焼きなましビーム(15)により、一方の溶接部(2)又は両方の溶接部(2)を熱処理するステップと、
接合された鋼板(1,1´)の一方の溶接部(2)又は両方の溶接部(2)を含む全表面をメタリック塗装により塗装するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
メタリック塗装が塗布された鋼板(1,1´)からなる耐食性及び加工性を有する金属薄板の製造方法において、
鋼板(1,1´)を突き合せた状態で配置するステップと、
各接合溶接開先(14)に沿って溶接部(2)を形成するために、溶接ビーム(13)による突合せ溶接により一方の溶接開先又は両方の溶接開先(14)を溶接するステップと、
溶接部(2)の形成中又は溶接部(2)が形成された直後に、焼きなましビーム(15)により、一方の溶接部(2)又は両方の溶接部(2)を熱処理するステップと、
冷却後に、各溶接部(2)に片状のメタリック塗装を塗布するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、鋼板(1,1´)の塗装は電着により行われ、特に、スズメッキ、亜鉛メッキ、又はクロム焼付けにより行われることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法であって、焼付けビーム(15)は、溶接方向(S)に溶接ビーム(13)を後追いすることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1に記載の方法であって、焼付けビーム(15)は、線状の焦点により入射することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1に記載の方法であって、溶接部(2)の温度は、溶接部(2)の領域においてマルテンサイトの形成を回避するために、溶接後の冷却期間は、焼きなましビーム(15)により、1−3秒、好ましくは1.5−2秒の時間間隔で800℃及び500℃の間の温度範囲を保持することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法であって、溶接部(2)の塗装は、溶接部(2)への電着によることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、溶接部(2)上の電着のために溶接部(2)から距離をおき、溶接部(2)に沿って配置されるアノード(8)に対応する鋼板(1、1´)には電圧が印加され、電解質は溶接部(2)に同時に塗布されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法であって、塗装された鋼板(1,1´)は、スズメッキされた、又は特殊なクロムメッキされた鋼板であり、電解質は電解されたススのイオン、又はクロムのイオンを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の方法であって、電解質は、電気的な導電性として50−500mS/cmを有することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか1に記載の方法であって、電解質は、パッド(7)を経由して溶接部(2)に適用され、このパッドは溶接部(2)に接触し、電気的に非伝導性を有する開泡(open−cell)素材からなることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、パッド(7)は、溶接部(2)の表面に所定の圧力で接触して前面を覆うことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれか1に記載の方法であって、電解質は、少なくとも1つのスプレイ開口又はスプレイノズルが供給された管(20)を介して溶接部(2)に吹き付けられることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項7乃至13のいずれか1に記載の方法であって、鋼板(1,1´)は、溶接部(2)の周囲の領域にある締結要素(11)により、溶接部(2)の電着の間に1つの面にほとんどフラットに保持されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項8乃至14のいずれか1に記載の方法であって、鋼板(1,1´)は、溶接部(2)への電着後に、その表面、少なくとも溶接部(2)の領域において残留した電解質の残留物が清掃されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1に記載の方法であって、溶接部(2)の冷却期間は、溶接部(2)の冷却が保持される速度が、溶接部の領域に焼きなましビーム(15)の効果がない場合にマルテンサイトの形成が生じる速度より低くなるように、焼きなましビーム(15)により延長されることを特徴とする方法。
【請求項17】
鋼板(1)に対して電位差を印加する少なくとも1つのアノード(8)と、溶接部(2)の電着に対して電解質を供給する送り装置と、溶接部(2)に電解質を塗布する塗布装置とを備え、溶接部(2)に電着することで鋼板(1)の突合せ溶接部(2)にメタリック塗装を行う機器において、
アノード(8)は、アノード片(4)の形状に形成され、又はアノード片(4)として配置され、締結装置(11)は、片状のアノード(8)が鋼板(1)から距離を置いて溶接部(2)に沿うように、鋼板(1)及びアノード片(4)を隣同士に配置して固定するために、鋼板(1)を位置決めして固定するために供給されることを特徴とする機器。
【請求項18】
請求項9に記載の機器であって、他のアノード片(5)がアノード(8)と共に供給され、2つのアノード片(4,5)は、鋼板(1)の相対する面に配置されることを特徴とする機器。
【請求項19】
請求項9又は10に記載の機器であって、一方のアノード片又は両方のアノード片(4,5)は、鋼板(1)の表面に垂直方向に移動することを特徴とする機器。
【請求項20】
請求項10又は11に記載の機器であって、両方のアノード片(4,5)は、相互に浮いて搭載されることを特徴とする機器。
【請求項21】
請求項9乃至12のいずれか1に記載の機器であって、一方のアノード片又は両方のアノード片(4,5)の塗布装置は、電気的に非伝導性を有する開泡(open−cell)素材からなるパッド(7)により形成されることを特徴とする機器。
【請求項22】
請求項9乃至12のいずれか1に記載の機器であって、一方のアノード片又は両方のアノード片(4,5)の塗布装置(7)は、少なくとも1つのスプレイ開口又はスプレイノズルを持つ少なくとも1つの排出管(20)から形成されることを特徴とする機器。
【請求項23】
請求項9乃至14のいずれか1に記載の機器であって、送り装置は、アノード片(4又は5)に配置され電気的に導電性を有する管(8,20)を備え、アノード(8)として同時に使用され、鋼板(1)に対して電圧が印加されることを特徴とする機器。
【請求項24】
請求項13に記載の機器であって、送り装置は、パッド(7)に挿入される排出開口を有するアノード片(4又は5)に配置される管(6)を備え、パッド(7)は電解質により浸ることを特徴とする機器。
【請求項25】
請求項9乃至16のいずれか1に記載の機器であって、送り装置は、電解質の循環ユニットに接続され、このユニットは、電着処理の間に付着しなかった電解質の残留物を再度送り装置に送ることを特徴とする機器。
【請求項26】
請求項9乃至17のいずれか1に記載の機器であって、溶接部(2)の電着後に、溶接部又は鋼板(1)に残留した電解質の残留物を除去するための清掃装置(13)を有することを特徴とする機器。
【請求項27】
請求項18に記載の機器であって、清掃装置(13)は、鋼板の表面に平行に水平方法に移動する少なくとも1つの清掃用のスライド(13,13b)を備えることを特徴とする機器。
【請求項28】
請求項19に記載の機器であって、1つ又は各清掃用のスライド(13a,13b)は、鋼板の表面に吹き付けるスプレイノズル(15)を有することを特徴とする機器。
【請求項29】
請求項19又は20に記載の機器であって、1つ又は各清掃用のスライド(13,13b)は吸引装置(16)を有し、それにより清掃ステップの間に鋼板の表面に形成される電解質と水との混合水が吸引可能なことを特徴とする機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−545455(P2009−545455A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523238(P2009−523238)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057729
【国際公開番号】WO2008/015158
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(501186966)ラッセルシュタイン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057729
【国際公開番号】WO2008/015158
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(501186966)ラッセルシュタイン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【Fターム(参考)】
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