説明

膜形成用組成物、絶縁膜および半導体装置

【課題】低誘電率で、かつ、強度に優れ、膜厚の不本意なばらつきが抑制された絶縁膜を提供すること、前記絶縁膜の形成に好適に用いることができる膜形成用組成物を提供すること、また、前記絶縁膜を備えた半導体装置を提供すること。
【解決手段】本発明の膜形成用組成物は、重合性の官能基を有する重合性化合物および/または当該重合性化合物が部分的に重合した重合体を含むものであり、前記重合性化合物は、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造Aと、重合反応に寄与する2つの重合性反応基とを有するものであり、前記重合性反応基は、芳香環と、当該芳香環に直接結合する2つのビニル基とを有するものであり、前記重合性化合物は、前記部分構造Aを中心に、前記重合性反応基が対称的に結合した構造を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成用組成物、絶縁膜および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、半導体デバイスの高集積化、高速化、高性能化が進むにしたがって、半導体集積回路の配線間抵抗の増大や電気容量の増大による遅延時間が大きな問題となってきている。この遅延時間を減少させ、半導体デバイスをより高速化させるためには、低誘電率の絶縁膜を回路に用いることが必要である。
【0003】
上記絶縁膜の低誘電率化を図る上で、エチレン性二重結合を含むアダマンタンモノマーから得た重合体を利用した絶縁膜(例えば、特許文献1〜3参照。)が知られているが、これらの手法においては、半導体分野で求められている2.3未満の誘電率は実現されていないという問題があった。
さらに、近年、半導体集積回路の微細化が進むことで、これに用いる絶縁膜の薄膜化(例えば、厚み100nm程度)が必要となってきているが、上記特許文献2、3に記載されるような熱分解性成分(空孔形成材)を含む組成物を用いて薄膜を形成させた場合、不本意な膜厚のばらつきを生じやすく、絶縁膜の各部位での特性差が大きくなるという問題もあった。また、実用として用いられている直径300mmのシリコンウェハにおいても、上記特許文献2、3に記載されるような絶縁膜を形成させても、不本意な膜厚のばらつきを生じやすく、同様な問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−292878号公報
【特許文献2】特開2007−91844号公報
【特許文献3】特開2006−241237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、低誘電率で、かつ、強度に優れ、膜厚の不本意なばらつきが抑制された絶縁膜を提供すること、前記絶縁膜の形成に好適に用いることができる膜形成用組成物を提供すること、また、前記絶縁膜を備えた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(14)に記載の本発明により達成される。
(1) 重合性の官能基を有する重合性化合物および/または当該重合性化合物が部分的に重合した重合体を含む膜形成用組成物であって、
前記重合性化合物は、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造Aと、重合反応に寄与する2つの重合性反応基Bとを有するものであり、
前記重合性反応基Bが、芳香環と、当該芳香環に直接結合する2つのビニル基とを有するものであり、
前記重合性化合物は、前記部分構造Aを中心に、前記重合性反応基Bが対称的に結合した構造を有するものであることを特徴とする膜形成用組成物。
【0007】
(2) 前記芳香環は、前記かご型構造に直接結合したものである上記(1)に記載の膜形成用組成物。
【0008】
(3) 前記重合性反応基Bにおいて、一方の前記ビニル基は、他方の前記ビニル基のメタ位に存在するものである上記(1)または(2)に記載の膜形成用組成物。
【0009】
(4) 2つの前記ビニル基は、いずれも、前記芳香環が前記かご型構造に結合する部位のメタ位に存在するものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【0010】
(5) 前記部分構造Aは、それ自体が対称性を有する構造のものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【0011】
(6) 前記部分構造Aは、ビアダマンタン構造を有するものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【0012】
(7) 前記部分構造Aは、ジアマンタン構造を有するものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【0013】
(8) 前記部分構造Aは、置換基としてメチル基を有するものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【0014】
(9) 前記重合性化合物は、下記式(1)で示される構造を有するものである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【0015】
【化1】

【0016】
(10) 膜形成に際して熱分解することにより、膜中に空孔を形成する機能を有する空孔形成材を含まない上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【0017】
(11) 前記ビニル基の一部が前記ビニル基に水素が付加した飽和炭化水素基である、上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【0018】
(12) 上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて形成されたことを特徴とする絶縁膜。
【0019】
(13) 絶縁膜は、SiOC、SiCNまたはSiOで構成された部材に接触するものである上記(12)に記載の絶縁膜。
【0020】
(14) 上記(12)または(13)に記載の絶縁膜を備えたことを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低誘電率で、かつ、強度に優れ、膜厚の不本意なばらつきが抑制された絶縁膜を提供することができる。また、前記絶縁膜の形成に好適に用いることができる膜形成用組成物を提供することができる。また、前記絶縁膜を備えた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
<膜形成用組成物>
まず、本発明の膜形成用組成物について説明する。
【0024】
本発明の膜形成用組成物は、重合性の官能基を有する重合性化合物Xおよび/または当該重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(プレポリマー)を含むものである。そして、重合性化合物Xは、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造Aと、重合反応に寄与する2つの重合性反応基Bとを有するものであり、重合性反応基Bは、芳香環と、当該芳香環に直接結合する2つのビニル基とを有するものであり、重合性化合物Xは、部分構造Aを中心に、重合性反応基Bが対称的に結合した構造を有するものである。
【0025】
膜形成用組成物が、このような構造を有する重合性化合物Xおよび/または当該重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(プレポリマー)を含むことにより、低誘電率で、かつ、強度に優れ、不本意な厚さのばらつきが抑制された膜を好適に形成することができる。
【0026】
以下、重合性化合物Xについて説明する。
[1]重合性化合物X
重合性化合物Xは、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造Aと、重合反応に寄与する2つの重合性反応基Bとを有するものである。
【0027】
[1.1]部分構造A
重合性化合物Xが有する部分構造Aは、アダマンタン型のかご型構造を含むものである。これにより、膜形成用組成物を用いて形成される膜を、低密度のものとすることができ、形成される膜の誘電率を低いものとすることができる。また、後に詳述するような重合性反応基Bを備える重合性化合物Xの反応性を適切なものとすることができるため、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度を確実に好適なものとし、形成される膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきを抑制することができるとともに、最終的に形成される膜の強度を優れたものとすることができる。
【0028】
重合性化合物Xが有する部分構造Aとしては、例えば、アダマンタン、ポリアダマンタン(例えば、ビアダマンタン、トリアダマンタン、テトラアダマンタン、ヘプタアダマンタン、ヘキサアダマンタン等)、ポリアマンタン(例えば、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、ペンタマンタン、ヘキサマンタン、ヘプタマンタン等)、これらの化合物を構成する水素原子の少なくとも一部をアルキル基またはハロゲン原子で置換した化合物等の二価基(上記化合物を構成する2つの水素原子を除いた部分の構造)や、これらの二価基を2つ以上備えたもの(例えば、ビ(ジアマンタン)骨格、トリ(ジアマンタン)骨格、テトラ(ジアマンタン)骨格等の複数のジアマンタン骨格が連なったもの(ポリ(ジアマンタン)骨格を有するもの);ビ(トリアマンタン)骨格、トリ(トリアマンタン)骨格、テトラ(トリアマンタン)骨格等の複数のトリアマンタン骨格が連なったもの(ポリ(トリアマンタン)骨格を有するもの);アダマンタン骨格(またはポリアダマンタン骨格)とポリアマンタン骨格とが連なったもの等)等が挙げられる。以下に、部分構造Aの例の一部を、化学構造式で示すが、部分構造Aはこれらに限定されるものではない。ただし、式(A−1)〜式(A−7)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン基を示し、l、m、nは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。
【0029】
【化2】

【0030】
また、部分構造Aは、それ自体が対称性を有する構造のものであるのが好ましい。これにより、重合性化合物Xの反応性をより適切なものとすることができ、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される膜の強度を特に優れたものとすることができる。
【0031】
また、部分構造Aは、ビアダマンタン構造を有するものであるのが好ましい。これにより、膜形成用組成物を用いて形成される膜の誘電率を特に低いものとすることができる。また、重合性化合物Xの反応性をより好適なものとすることができ、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される膜の強度を特に優れたものとすることができる。
【0032】
また、ビアダマンタン構造は、置換基としてメチル基を有するものであるのが好ましい。これにより、膜形成用組成物を用いて形成される膜の誘電率を特に低いものとすることができる。また、重合性化合物Xの反応性をより好適なものとすることができ、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される膜の強度を特に優れたものとすることができる。
【0033】
部分構造Aとしては、特に、下記式(2)で示される構造を有するものであるのが好ましい。ただし、下記式(2)中のMeは、メチル基を表す。
【0034】
【化3】

【0035】
これにより、膜形成用組成物を用いて形成される膜の誘電率を特に低いものとすることができる。また、重合性化合物Xの反応性をより好適なものとすることができ、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される膜の強度を特に優れたものとすることができる。
【0036】
また、部分構造Aは、ジアマンタン構造を有するものであってもよい。これにより、膜形成用組成物を用いて形成される膜の誘電率を特に低いものとすることができる。また、重合性化合物Xの反応性をより好適なものとすることができ、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される膜の強度を特に優れたものとすることができる。
【0037】
[1.2]重合性反応基B
重合性化合物Xは、上記のような部分構造Aに加え、重合反応に寄与する2つの重合性反応基Bを有している。
【0038】
2つの重合性反応基Bは、それぞれ、芳香環と、当該芳香環に直接結合する2つのビニル基とを有するものであり、これらの重合性反応基Bは、重合性化合物Xにおいて、部分構造Aを中心に対称的に結合している。重合性反応基Bが有する当該ビニル基は、ビニル基以外のアルケニル基であってもよく、具体例としては、1,3−ブタジエニル基などの無置換アルケニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基及び1−デセニル基などの鎖状脂肪族置換アルケニル基、2−シクロヘキシルビニル基及び2−(ビシクロ[2,2,1]ヘプチル)ビニル基などの環状脂肪族置換アルケニル基及びスチリル基、2−トリルビニル基、2−キシリルビニル基、2−ナフチルビニル基及び2−アントラセニルビニル基などの芳香族置換アルケニル基、などが挙げられるが、これらに限定されない。
重合性化合物Xが、このような重合性反応基Bを有することにより、重合性化合物Xの反応性を適切なものとすることができ、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度を確実に好適なものとし、形成される膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきを抑制することができるとともに、最終的に形成される膜の強度を優れたものとすることができる。
【0039】
重合性反応基Bを構成する芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ナフタセン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ペリレン環、コロネン環、ビフェニル環、テルフェニル環、アズレン環等の炭化水素環式芳香環や、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、インドール環、プリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、キノリン環、テルチエニル環等の複素環式芳香環等が挙げられる。中でも、芳香環としては、ベンゼン環が好ましい。これにより、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物の付与をより容易に行うことができる。また、膜形成用組成物を用いて形成される膜の弾性率を好適なものとすることができ、形成される膜の強度、前記部材(半導体基板等)への密着性等を特に優れたものとすることができる。
【0040】
重合性反応基Bを構成する芳香環は、少なくとも1つの他の原子を介して部分構造Aを構成するかご型構造に結合したものであってもよいが、部分構造Aを構成するかご型構造に直接結合したものであるのが好ましい。これにより、重合性化合物Xの反応性をより好適なものとすることができ、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される膜の強度を特に優れたものとすることができる。
【0041】
重合性反応基Bは、上記のような芳香環に、2つのビニル基が直接結合したものである。例えば下記式(3)〜(6)等のようにビニル基の一部がビニル基に水素が付加した飽和炭化水素基に置き換わってもよく、その場合、ビニル基と前記ビニル基由来の飽和炭化水素基の総数に対する前記ビニル基由来の飽和炭化水素基の上限値の比率は75%が好ましく、50%がより好ましい。またビニル基の一部が前記ビニル基由来の飽和炭化水素基に置き換わった化合物は1種であっても、複数種の混合物であっても構わない。上記の比率の範囲であると、重合性化合物Xの反応性をより好適なものとすることができ、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される膜の強度を特に優れたものとすることができる。また膜形成用組成物の保存性に関しては、全ビニル基に対する前記ビニル基由来の飽和炭化水素基の下限値の比率が、好ましくは5%以上、より好ましくは25%以上の場合、重合性化合物Xが、過度に反応し、膜形成用組成物が極端に高粘度化すること(例えば、ゲル化すること)を確実に防止することができるため好適である。
【0042】
【化4】

【0043】
また、重合体中に残存するビニル基を架橋反応させることにより、最終的に形成される膜の耐熱性と弾性率を優れたものにすることができる。
重合性反応基Bが反応部位としてのビニル基を、2つ有することにより、重合性化合物Xについての初期の反応が起こりやすくなる。その一方で、重合性反応基Bが有する2つのビニル基のうち一方のビニル基が反応(重合反応)すると、芳香環についての電子状態が変化し、他方のビニル基の反応性は、急激に低下する。このため、比較的穏やかな条件で、重合性反応基Bが有する2つのビニル基のうち一方のビニル基のみを選択的に反応させることができる。そして、重合性化合物Xは、分子内に2つの重合性反応基Bを有している。このため、重合性化合物Xの分子内に存在する2つの重合性反応基Bについて、それぞれ、一方のビニル基のみを選択的に反応させることができ、例えば、下記式(7)〜(9)に示すような反応により、複数の重合性化合物Xが一次元的に重合した重合体(鎖状のプレポリマー)が得られる。
【0044】
【化5】

(式(7)〜(9)中、Aは部分構造Aを示し、Arは重合性反応基Bを構成する芳香環を示す。また、nは、2以上の整数を表す。)
【0045】
上記のような反応が起こることにより、膜形成用組成物の保存時等において、重合性化合物Xが、過度に反応し、膜形成用組成物が極端に高粘度化すること(例えば、ゲル化すること)を確実に防止することができ、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度を確実に好適なものとすることができる。その結果、形成される膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきの発生を確実に抑制することができる。
【0046】
その一方で、上記のような反応により得られる重合体(部分的な重合反応により得られたプレポリマー)は、未反応のビニル基を有しているため、後に詳述するような焼成条件(半導体基板上での加熱条件)において、残存するビニル基を確実に反応させることができ、最終的に形成される膜中においては、三次元的に架橋反応した構造を有するものとなる。その結果、形成される膜は、耐熱性等に優れたものとなる。
【0047】
上記のように、重合性化合物Xを構成する各重合性反応基Bは、それぞれ、2つのビニル基を有するものであるが、各重合性反応基Bにおいて、芳香環上のビニル基は、他方のビニル基のメタ位に存在するものであるのが好ましい。これにより、重合性反応基Bが有する2つのビニル基のうち一方のビニル基が反応(重合反応)した状態において、芳香環等の電子的な効果がより顕著に発揮され、他方のビニル基の反応性をより効果的に低下させることができるとともに、当該反応した部位が適度な立体的な障害となり、他方のビニル基(未反応のビニル基)の反応性をより好適に制御することができる。その結果、重合性反応基Bが有する2つのビニル基についての反応性(第1段目の反応についての反応性と第2段目の反応についての反応性)の選択性をより高いものとすることができるとともに、後に詳述するような焼成工程を、より好適な条件(半導体基板へのダメージを防止しつつ、優れた生産性で膜を形成することができる条件)で行うことができる。
【0048】
また、重合性反応基Bが有する2つのビニル基は、いずれも、芳香環がかご型構造に結合する部位のメタ位に存在するものであるのが好ましい。これにより、重合性反応基Bが有する2つのビニル基のうち一方のビニル基が反応(重合反応)した状態において、芳香環等の電子的な効果がより顕著に発揮され、他方のビニル基の反応性をより効果的に低下させることができるとともに、当該反応した部位、および、前述した部分構造Aが適度な立体的な障害となり、他方のビニル基(未反応のビニル基)の反応性をより好適に制御することができる。その結果、重合性反応基Bが有する2つのビニル基についての反応性(第1段目の反応についての反応性と第2段目の反応についての反応性)の選択性をより高いものとすることができるとともに、後に詳述するような焼成工程を、より好適な条件(半導体基板へのダメージを防止しつつ、優れた生産性で膜を形成することができる条件)で行うことができる。
【0049】
上記のような条件を満足する重合性化合物Xとしては、例えば、下記式(1)で示される構造を有するものが挙げられる。
【0050】
【化6】

【0051】
重合性化合物Xがこのような構造を有するものであることにより、膜形成用組成物を用いて形成される膜の誘電率を特に低いものとすることができる。また、膜の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成される膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができる、最終的に形成される膜の強度を特に優れたものとすることができる。
【0052】
なお、重合性化合物Xは、部分構造Aおよび重合性反応基Bの他に、それら以外の部分構造を有するものであってもよい。
【0053】
上記のような重合性化合物Xは、例えば、以下のようにして合成することができる。すなわち、部分構造Aに対応する化合物A’(二価基としてのAに水素原子が2つ接合した化合物)を臭素と反応させ、A’のジブロモ体(部分構造Aに2つのブロモ基が結合した化合物)を得る工程と、A’のジブロモ体をジブロモベンゼンと反応させ、A’のビス(ジブロモフェニル)体(部分構造Aに2つのジブロモフェニル基が結合した化合物)を得る工程と、A’のジブロモフェニル体をトリメチルシリルアセチレンと反応させ、A’のビス(ジ(トリメチルシリルエチニル)フェニル)体(部分構造Aに2つのジ(トリメチルシリルエチニル)フェニル基が結合した化合物)を得る工程と、A’のビス(ジ(トリメチルシリルエチニル)フェニル)体を加水分解(脱トリメチルシリル化)する工程と、A’のビス(ジ(エチニル)フェニル)体を還元する工程、例えば、特に限定されないが、水素ガスを用いたLindlar還元、ナトリウムと液体アンモニアを用いたBrich還元、ジイミドを用いたジイミド還元を有する方法により、目的とする重合性化合物Xを得ることができる。
【0054】
膜形成用組成物は、上述したような重合性化合物Xを含むものであってもよいし、重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(例えば、重合性反応基Bが有する2つのビニル基のうち一方のビニル基のみが重合反応したプレポリマー)を含むものであってもよい。膜形成用組成物が重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(プレポリマー)を含むものであると、膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される膜の強度を特に優れたものとすることができる。また、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに先立って膜形成用組成物に加熱処理を施すことにより、形成すべき膜が比較的厚いものであっても好適に形成することができる。また、膜形成用組成物が重合性化合物Xのプレポリマーを含むものであると、部材(例えば、半導体基板)上に膜を形成する際に、当該部材上において加える熱量を少なくすることができるため、当該部材への加熱によるダメージをより確実に防止することができる。このような重合性化合物Xのプレポリマーを含む膜形成用組成物は、絶縁膜用ワニスとして好適に用いることができる。
【0055】
重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(プレポリマー)の調製としては、特に限定されることはなく、公知の重合方法を適用することが可能である。
前記重合方法としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシド及びアゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤を用いたラジカル重合による方法、光照射等を用いた光ラジカル重合による方法、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリド及びテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)などのパラジウム触媒を用いた重合による方法、触媒を用いないで加熱して反応させる熱重合による方法、酢酸銅(II)などの遷移触媒を用いた重合による方法、塩化モリブデン(V)、塩化タングステン(VI)及び塩化タンタル(V)などの遷移金属塩化物を用いた重合による方法などを挙げることができる。これらの中でも、反応を制御しやすく所望の重合体が得られ、また、触媒等の残存による不純物除去が不要なことから、熱重合による方法が望ましい。
前記熱重合の方法で調製する場合、熱処理の条件としては、加熱温度:120〜190℃、加熱時間:3〜11時間であるのが好ましく、加熱温度:140〜180℃、加熱時間:3〜9時間であるのがより好ましい。また、重合性化合物Xに対する加熱処理は、異なる条件を組み合わせて行ってもよい。例えば、重合性化合物Xに対しては、加熱温度:150〜190℃、加熱時間:1〜6時間という条件で行う第1の熱処理と、加熱温度:120〜160℃、加熱時間:2〜9時間という条件で行う第2の熱処理とを施してもよい。なお、上記のような加熱処理は、重合性化合物Xを溶媒に溶解した状態で行うのが好ましい。また、上記のような加熱処理によるプレポリマーの合成は、後述するような膜形成用組成物の構成成分としての溶媒中で行うものであってもよいし、膜形成用組成物の構成成分とは異なる組成の溶媒中で行うものであってもよい。すなわち、所定の溶媒を用いて重合性化合物Xを重合させプレポリマーを得た後、当該溶媒を、目的とする膜形成用組成物の構成成分としての溶媒に置換してもよい。重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(プレポリマー)の合成に用いることのできる溶媒(反応溶媒)としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン等のエーテル系溶剤;ベンゼン、トルエン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ヘプタン、ヘキサン、n−オクタン等の芳香族および脂肪族炭化水素系溶剤;クロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化物系溶剤;N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
また、膜形成用組成物が重合性化合物Xのプレポリマーを含むものである場合、未反応の重合性化合物Xは精製により除去されている(未反応の重合性化合物Xが実質的に含まれていない)のが好ましい。これにより、膜形成用組成物を用いて形成される膜の強度等の諸特性を、より確実に優れたものとすることができる。
【0057】
膜形成用組成物中における重合性化合物Xおよび/または重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(例えば、重合性反応基Bが有する2つのビニル基のうち一方のビニル基がのみが重合反応したプレポリマー)の含有率は、1.0〜30wt%であるのが好ましい。
【0058】
[2]溶媒
膜形成用組成物は、上述したような重合性化合物Xおよび/または重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(例えば、重合性反応基Bが有する2つのビニル基のうち一方のビニル基のみが重合反応したプレポリマー)を含むものであればよいが、通常、前記重合性化合物Xおよび/または前記重合体(プレポリマー)を溶解する溶媒を含むものである。
【0059】
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アニソール、メシチレン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、溶媒としては、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンが好ましい。膜形成用組成物を構成する溶媒としては、例えば、重合性化合物Xの合成や上述した重合体(重合性化合物Xが部分的に重合したプレポリマー)の合成に用いた溶媒(反応溶媒)等を含むものであってもよい。
【0060】
膜形成用組成物における溶媒の含有率は、特に限定されないが、70〜99wt%であるのが好ましい。
【0061】
[3]その他の成分
膜形成用組成物は、上記以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、界面活性剤;シランカップリンク剤等のカップリング剤;ラジカル開始剤、ジスルフィド類等の触媒等が挙げられる。
【0062】
また、膜形成用組成物は、感光剤してのナフトキノンジアジド化合物等を含むものであってもよい。これにより、膜形成用組成物を、感光性を有する表面保護膜の形成に好適に用いることができる。
【0063】
なお、本発明において、膜形成用組成物は、熱分解性により発泡し、形成される膜中に空孔を形成する空孔形成材を含まないものであるのが好ましい。従来、膜の誘電率を低下させる目的で空孔形成材が用いられていたが、このような空孔形成材を用いた場合、形成される膜の強度が低下したり、膜の各部位での不本意な厚さのばらつき、特性のばらつきを招く等の問題があったが、本発明においては、上述したような重合性化合物Xおよび/または当該重合性化合物Xのプレポリマーを含むことにより、空孔形成材を用いなくても、形成される膜の誘電率を十分に低いものとすることができる。そして、空孔形成材を含まないことにより、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。
【0064】
上記のような膜形成用組成物は、そのまま、膜の形成に用いるものであってもよいが、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上に付与するのに先立ち、加熱処理に供されるものであってもよい。これにより、膜形成用組成物を、重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(プレポリマー)を含むものとすることができ、膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される膜の強度を特に優れたものとすることができる。また、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに先立って膜形成用組成物に加熱処理を施すことにより、形成すべき膜が比較的厚いものであっても好適に形成することができる。また、膜を形成すべき部材(例えば、半導体基板)上への膜形成用組成物を付与するのに先立って膜形成用組成物に加熱処理を施すことにより、当該部材上において加える熱量を少なくすることができるため、当該部材への加熱によるダメージをより確実に防止することができる。このような熱処理を施す場合、熱処理の条件としては、加熱温度:120〜190℃、加熱時間:3〜11時間であるのが好ましく、加熱温度:140〜180℃、加熱時間:3〜9時間であるのがより好ましい。また、上記のような加熱処理は、異なる条件を組み合わせて行ってもよい。例えば、加熱温度:150〜190℃、加熱時間:1〜6時間という条件で行う第1の熱処理と、加熱温度:120〜160℃、加熱時間:2〜9時間という条件で行う第2の熱処理とを施してもよい。
【0065】
<絶縁膜>
本発明の絶縁膜は、上述したような膜形成用組成物を用いて形成されるものである。
【0066】
本発明の絶縁膜は、例えば、上述したような膜形成用組成物を、半導体基板等の部材上に付与し、これに対し、加熱や活性エネルギー線の照射等の処理(焼成処理)を施すことにより形成される。
【0067】
上記部材上に付与されるのに際し、膜形成用組成物は、重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(プレポリマー)を含むものであるのが好ましい。これにより、部材上に付与される膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される膜の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される膜の強度を特に優れたものとすることができる。また、形成すべき膜が比較的厚いものであっても好適に形成することができる。
【0068】
上記のような焼成処理を行うことにより、重合性化合物Xや重合性化合物Xが部分的に重合したプレポリマーが有する未反応のビニル基が重合反応し、三次元的に架橋反応した構造を有する重合体(硬化物)で構成された膜(絶縁膜)が得られる。このような化学構造を有する重合体(硬化物)で構成された膜(絶縁膜)は、強度、耐熱性等に優れている。また、上記のようにして得られる膜は、誘電率が低いものである。また、上記のようにして得られる膜は、各部位での膜厚や特性についての不本意なばらつきが抑制されたものである。このようなことから、上記のような膜は、半導体装置を構成する絶縁膜として好適に用いることができる。
【0069】
膜形成用組成物を部材上に付与する方法としては、例えば、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等による方法が挙げられる。
【0070】
焼成処理に先立ち、例えば、部材上に付与された膜形成用組成物から溶媒を除去する処理(脱溶媒処理)を施してもよい。このような脱溶媒処理は、例えば、加熱処理、減圧処理などにより行うことができる。
【0071】
焼成処理は、例えば、処理温度:300〜450度、処理時間:15〜60分間という条件で行うのが好ましく、処理温度:330〜420度、処理時間:20〜50分間という条件で行うのがより好ましい。また、焼成工程では、異なる条件の加熱処理を組み合わせて行ってもよい。
【0072】
絶縁膜は、SiOC、SiCNまたはSiOで構成された部材(例えば、半導体基板、中間膜等)に接触するものであるのが好ましい。これにより、当該部材に対する絶縁膜の密着性等を特に優れたものとすることができる。
【0073】
絶縁膜の厚さは、特に限定されないが、当該絶縁膜を半導体用層間絶縁膜として用いる場合においては、0.01〜20μmであるのが好ましく、0.02〜10μmであるのがより好ましく、0.05〜0.7μmであるのがさらに好ましくい。
【0074】
また、絶縁膜を半導体用の保護膜として用いる場合においては、当該絶縁膜の厚さは、0.01〜70μmであるのが好ましく、0.05〜50μmであるのがより好ましい。
【0075】
<半導体装置>
次に、本発明の半導体装置について好適な実施の形態に基づいて説明する。
【0076】
図1は、本発明の半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、半導体装置100は、素子が形成された半導体基板1と、半導体基板1の上側(図1上側)に設けられたSiN膜2と、SiN膜2の上に設けられた層間絶縁膜3およびバリア層6で覆われた銅配線層7を有している。本実施形態の半導体装置100は、本発明の絶縁膜として、層間絶縁膜3を備えている。
【0077】
層間絶縁膜3には、配線すべきパターンに対応した凹部が形成されており、その凹部内には銅配線層7が設けられている。
【0078】
また、層間絶縁膜3と、銅配線層7との間には、改質処理層5が設けられている。
また、層間絶縁膜3の上側(SiN膜2と反対側面)には、ハードマスク層4が形成されている。
【0079】
上記のような半導体装置100は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、シリコンウエハにトランジスタ等のデバイスが設けられた半導体基板1を用意し、その上に、SiN膜2、層間絶縁膜3およびハードマスク層4などを形成する。
【0080】
さらにその上にフォトレジスト層を形成し、ドライエッチングにより、前記層間絶縁膜およびハードマスク層からなる絶縁層の所定の位置に貫通した配線溝を加工する。
【0081】
次に、前記配線溝の内面に、プラズマ処理等により、改質処理層5を形成し、さらにPVD法やCVD法等の方法により、Ta、Ti、TaN、TiN、WN等で構成されるバリア層6を形成する。
【0082】
さらに、電解めっき法等により、配線層となる銅配線層7を形成し、その後、CMP法により配線部以外の銅配線層およびバリアメタル層を研磨除去、平坦化することで、半導体装置100を得ることができる。
【0083】
なお、層間絶縁膜3は、上記の本発明の絶縁膜についての説明で述べたような方法により形成することができるが、予め、樹脂膜のドライフィルムを用意し、これを半導体基板1のSiN膜2の上に積層するように形成することもできる。より具体的には、予め、膜形成用組成物を用いて、部材上に樹脂膜を形成して乾燥し、ドライフィルムを得、このドライフィルムを前記部材から剥離し、これを、上記半導体基板1のSiN膜2の上に、積層して、加熱および/または放射線を照射することにより、層間絶縁膜3を形成してもよい。
【0084】
上述した本発明の半導体装置は、上記のような層間絶縁膜(本発明の絶縁膜)を用いているので寸法精度に優れ、絶縁性を十分に発揮できるので、それにより接続信頼性が優れている。
【0085】
また、上述したような層間絶縁膜(本発明の絶縁膜)は、配線層との密着性に優れるので、半導体装置の接続信頼性をさらに向上できる。
【0086】
また、上述したような層間絶縁膜(本発明の絶縁膜)は、弾性率に優れているので、半導体装置の配線を形成するプロセス(例えば、焼成工程)に好適に適合することができる。
【0087】
また、上述したような層間絶縁膜(本発明の絶縁膜)は、誘電特性に優れているので、半導体装置の信号損失を低下することができる。
【0088】
また、上述したような層間絶縁膜(本発明の絶縁膜)は、誘電特性に優れているので、配線遅延を低下することができる。
【0089】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
例えば、上記の説明においては、本発明の絶縁膜としての層間絶縁膜3をSiN膜2の上に形成する例について代表的に説明したが、絶縁膜を形成する位置はこれに限定されない。
【0091】
また、上述した実施形態では、本発明の絶縁膜として層間絶縁膜を備えたものについて代表的に説明したが、本発明の絶縁膜は、層間絶縁膜以外に適用されるものであってもよい。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0093】
[1]重合性化合物の合成
(合成例1)
まず、温度計、撹拌機および還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、金属ナトリウム:28g(1.2mol)とn−オクタン:1200mlとを入れ、内温を0℃に冷やした。
【0094】
次に、4つ口フラスコの内容物を激しく撹拌しながら、n−オクタン:600mlに1−ブロモ−3,5−ジメチルアダマンタン:145.9g(0.6mol)を溶解した溶液を徐々に滴下した。滴下中、内温は、0〜5℃に保った。滴下終了後、温度が上昇しなくなってから、さらに1時間反応させた。
【0095】
その後、冷水:約3000mLに注いで、粗生成物を濾別し、純水で洗い、乾燥した。
さらに粗生成物を、熱ヘキサンにより、再結晶した。得られた再結晶物を、減圧乾燥することにより、生成物:65.2gを得た。赤外分光(IR)分析によりBr基の吸収(690〜515cm−1付近)が消失し、質量分析による分子量が326である結果より、生成物が3,3’,5,5’−テトラメチル−1,1’−ビアダマンタンであることが示された。
【0096】
次に、温度計、撹拌機および還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、四塩化炭素:700mL、臭素:35g(0.22mol)を入れ、撹拌しながら、上記で得た3,3’,5,5’−テトラメチル−1,1’−ビアダマンタン:54.1g(0.2mol)を、少量ずつ添加した。添加中、内温は20〜30℃に保った。
添加終了後、温度が上昇しなくなってから、さらに1時間反応させた。
【0097】
その後、冷水:約2000mLに注いで、粗生成物を濾別し、純水で洗い、乾燥した。
さらに粗生成物を、熱エタノールにより再結晶した。得られた再結晶物を、減圧乾燥することにより、生成物:58.0gを得た。IR分析によりブロモ基の吸収が690〜515cm−1に見られること、質量分析による分子量が484である結果より、生成物が3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ジブロモ−1,1’−ビアダマンタンであることが示された。
【0098】
次に、フラスコ内で、上記で得た3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ジブロモ−1,1’−ビアダマンタン:50g(103.2mmol)および1,3−ジブロモベンゼン:1217g(5161.6mmol)を攪拌し、乾燥窒素下25℃において、臭化アルミニウム(III):24.8g(93.0mmol)を少量ずつ添加した。これを60℃に昇温して8時間攪拌した後、室温に戻し、反応液を得た。5%塩酸水溶液:700mlに、反応液を投入し、攪拌した。水層を除去し、有機層をアセトン:2000mlに投入した。析出物をろ過し、アセトン:1000mlで3回洗浄することにより、3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:70gを得た。質量分析による分子量が794である結果より、生成物が3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることが示された。
【0099】
次に、上記で得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:50g(62.9mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム:3.53g(5.0mmol)、トリフェニルホスフィン:6.60g(25.2mmol)、ヨウ化銅(II):4.79g(25.2mmol)、トリエチルアミン:750mlをフラスコに添加し、攪拌した。これを75℃に昇温した後、トリメチルシリルアセチレン:37.1g(377.7mmol)をゆっくり添加した。これを75℃において7時間攪拌した後、120℃に昇温してトリエチルアミンを留去した。その後、室温に戻し、ジクロロメタン:1000mlを反応液に添加し、20分攪拌した。析出物をろ過により除去し、ろ液に5%塩酸水溶液:1000mlを加えて分液した。有機層を水:1000mlで3回洗浄した後、有機層の溶媒を減圧除去した。得られた化合物をヘキサン:1500mlに溶解させた。不溶物をろ過により除去し、ろ液部のヘキサンを減圧除去した。これにアセトン:1000mlを投入し、析出物をアセトンで3回洗浄することにより、3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン43gを得た。質量分析による分子量が863である結果より、生成物が3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることが示された。
【0100】
さらに、上記で得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:39.8g(46.1mmol)と炭酸カリウム:1.46g(10.6mmol)とを、テトラヒドロフラン:600mlとメタノール:300mlとの混合溶媒中において、窒素雰囲気下、室温で4時間攪拌させた。これを10%塩酸水溶液:1000mlに投入して、析出物をろ過し、得られた析出物を水:1000mlで洗浄、さらにアセトン:1000mlで洗浄したのち乾燥させることにより、3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:21.2gを得た。質量分析による分子量が574である結果より、生成物が3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることが示された。
【0101】
さらに5Lナスフラスコに、上記で得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン20.0g(34.8mmol)、キノリン67.4g(522mmol)、5%パラジウム−炭酸カルシウム0.37g(0.174mmol)、テトラヒドロフラン(1000mL)及び攪拌子をそれぞれ投入し、水素気流下、室温で攪拌を開始し、水素3.35L(139mmol)が消費された時点で、窒素を導入して反応を停止させた。それぞれの反応液を濾過した後、ろ液の溶媒を減圧除去し、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、重合性化合物Xとして化合物aを18.1g得た。
得られた化合物は、外観、質量分析(MS(FD))、元素分析、H−NMRによるエチル基の官能基比率等により同定した。以下に結果を示す。
【0102】
化合物a
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):582(M
元素分析:理論値(/%):C,90.66;H,9.34、実測値(/%):C,90.59;H,9.41
エチル基の官能基比率pの評価:H−NMR(400MHz)より、化学シフトが5.20ppm〜5.28ppmあるいは5.73ppm〜5.80ppmあるいは6.69ppm〜6.90ppmの範囲にあるビニル基の芳香環側のプロトン(1つ)の積分値をX、2.63ppm〜2.67ppmの範囲にあるエチル基の芳香環側のプロトン(2つ)の積分値をYとしたとき、エチル基の官能基比率pをp=(Y/2)/{X+(Y/2)}×100で求めたところ、p=0であった。
これらの結果は、化合物aが下記(1)式に示す3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジビニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることを示している。
【0103】
【化7】

【0104】
(合成例2)
合成例1において、水素3.35L(139mmol)が消費された時点で、窒素を導入して反応を停止させるのを、水素5.03L(209mmol)が消費された時点で、窒素を導入して反応を停止させる以外は、合成例1と同様にして、重合性化合物Xとして化合物bを18.5g得た。
得られた化合物は、外観、質量分析(MS(FD))、元素分析、H−NMRによるエチル基の官能基比率等により同定した。以下に結果を示す。
【0105】
化合物b
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):主スペクトル582(M)、584(M)、586(M)、588(M
エチル基の官能基比率pの評価:p=50
これらの結果は化合物bが3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジビニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンのビニル基の一部が置き換わっており、ビニル基とエチル基の総数に対するエチル基の比率が50%の平均構造をもつことを示している。
【0106】
(合成例3)
合成例1において、水素3.35L(139mmol)が消費された時点で、窒素を導入して反応を停止させるのを、水素5.86L(243mmol)が消費された時点で、窒素を導入して反応を停止させる以外は、合成例1と同様にして、重合性化合物Xとして化合物cを18.9g得た。
得られた化合物は、外観、質量分析(MS(FD))、元素分析、H−NMRによるエチル基の官能基比率等により同定した。以下に結果を示す。
【0107】
化合物c
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):主スペクトル586(M)、588(M
エチル基の官能基比率pの評価:p=75
これらの結果は化合物cが3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジビニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンのビニル基の一部が置き換わっており、ビニル基とエチル基の総数に対するエチル基の比率が75%の平均構造をもつことを示している。
【0108】
(合成例4)
まず、Journal of Organic Chemistry.39,2987-3003(1974)に記載の合成法に従って、4,9−ジブロモジアマンタンを合成した。IR分析によりブロモ基の吸収が690〜515cm−1に見られること、質量分析による分子量が346である結果より、生成物が4,9−ジブロモジアマンタンであることが示された。
【0109】
次に、合成例1における合成中間体としての3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタンの合成において、3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ジブロモ−1,1’−ビアダマンタンに代えて上記で得られた4,9−ジブロモジアマンタン:35.7g(103.1mmol)を用いた以外は、前記合成例1と同様な方法で反応させることにより、4,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタン:56gを得た。質量分析による分子量が656である結果より、生成物が4,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0110】
次に、合成例1における合成中間体としての3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンの合成において、3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタンに代えて、上記で得られた4,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタン:41.2g(62.8mmol)を用いた以外は合成例1と同様な反応で反応させることにより、4,9−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタン:35.5gを得た。質量分析による分子量が725である結果より、生成物が4,9−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0111】
さらに合成例1における合成中間体としての3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンの合成において、3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンに代えて、上記で得られた4,9−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタン38.8g(53.5mmol)を用いた以外は合成例1と同様な反応で反応させることにより、4,9−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタン:14.3gを得た。質量分析による分子量が436である結果より、生成物が4,9−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0112】
さらに合成例1における最終生成物としての化合物aの合成において、3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンに代えて、上記で得られた4,9−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタン:15.2g(34.8mmol)を用いたこと以外は合成例1での同様な反応をさせることにより、重合性化合物Xとして化合物eを13.0g得た。
得られた化合物は、外観、質量分析(MS(FD))、元素分析、H−NMRによるエチル基の官能基比率等により同定した。以下に結果を示す。
【0113】
化合物e
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):444(M
元素分析:理論値(/%):C,91.84;H,8.16、実測値(/%):C,91.77;H,8.22
エチル基の官能基比率pの評価:p=0
これらの結果は、化合物eが下記式(10)に示す4,9−ビス(3,5−ジビニルフェニル)ジアマンタンであることを示している。
【0114】
【化8】

【0115】
(合成例5)
合成例2における最終生成物としての化合物bの合成において、3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンに代えて、上記合成例4と同様にして得られた4,9−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタン:15.2g(34.8mmol)を用いたこと以外は合成例2と同様な反応をさせることにより、重合性化合物Xとして化合物fを12.4g得た。
得られた化合物は、外観、質量分析(MS(FD))、元素分析、H−NMRによるエチル基の官能基比率等により同定した。以下に結果を示す。
【0116】
化合物f
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):主スペクトル444(M)、446(M)、448(M)、450(M
エチル基の官能基比率pの評価:p=50
これらの結果は化合物fが4,9−ビス(3,5−ジビニルフェニル)ジアマンタンのビニル基の一部が置き換わっており、ビニル基とエチル基の総数に対するエチル基の比率が50%の平均構造をもつことを示している。
【0117】
(合成例6)
合成例3における最終生成物としての化合物cの合成において、3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンに代えて、上記合成例4と同様にして得られた4,9−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタン:15.2g(34.8mmol)を用いたこと以外は合成例3と同様な反応をさせることにより、重合性化合物Xとして化合物gを12.7g得た。
得られた化合物は、外観、質量分析(MS(FD))、元素分析、H−NMRによるエチル基の官能基比率等により同定した。以下に結果を示す。
【0118】
化合物g
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):主スペクトル448(M)、450(M
エチル基の官能基比率pの評価:p=75
これらの結果は化合物gが4,9−ビス(3,5−ジビニルフェニル)ジアマンタンのビニル基の一部が置き換わっており、ビニル基とエチル基の総数に対するエチル基の比率が75%の平均構造をもつことを示している。
【0119】
(合成例7)
まず、温度計、攪拌器および還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、4−ブロモジアマンタン:50g(187.1mmol)と1,3−ジブロモベンゼン:1217g(5161.6mmol)とを入れて攪拌し、乾燥窒素下25℃において、臭化アルミニウム(III):24.8g(93.0mmol)を少量ずつ添加した。これを60℃に昇温して8時間攪拌した後、室温に戻し、反応液を得た。
【0120】
次に、5%塩酸水溶液:700mLに、反応液を投入し、攪拌した。水層を除去し、有機層をアセトン:2000mLに投入した。析出物をろ過し、アセトン:1000mLで3回洗浄することにより、4−(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタン:56gを得た。質量分析による分子量が422である結果より、生成物が4−(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0121】
次に、上記で得られた4−(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタン:50g(118.4mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム:6.66g(9.5mmol)、トリフェニルホスフィン:179.5g(47.3mmol)、ヨウ化銅(II):248.7g(47.3mmol)、トリエチルアミン:750mLをフラスコに添加し、攪拌した。これを75℃に昇温した後、トリメチルシリルアセチレン:34.9g(355.2mmol)をゆっくり添加した。これを75℃において7時間攪拌した後、120℃に昇温してトリエチルアミンを留去した。その後、室温に戻し、ジクロロメタン:1000mLを反応液に添加し、20分攪拌した。析出物をろ過により除去し、ろ液に5%塩酸水溶液:1000mLを加えて分液した。有機層を水:1000mLで3回洗浄した後、有機層の溶媒を減圧除去した。得られた化合物をヘキサン:1500mLに溶解させた。不純物をろ過により除去し、ろ液部のヘキサンを減圧除去した。これにアセトン:1000mLを投入し、析出物をアセトンで3回洗浄することにより、4−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタン:41gを得た。質量分析による分子量が456である結果より、生成物が4−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0122】
さらに上記で得られた4−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタン:40g(87.6mmol)および炭酸カリウム:2.7g(19.3mmol)を、テトラヒドロフラン:600mLとメタノール:300mLとの混合溶媒中において、窒素雰囲気下、室温で4時間攪拌させた。これを10%塩酸水溶液:1000mLに投入して、析出物をろ過し、得られた析出物を水:1000mLで洗浄、さらにアセトン:1000mLで洗浄したのち乾燥させることにより、4−(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタン:24.6gを得た。質量分析による分子量が312である結果より、生成物が4−(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0123】
さらに5Lナスフラスコに、上記で得られた4−(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタン20.0g(64.1mmol)、キノリン124.1g(962mmol)、5%パラジウム−炭酸カルシウム0.68g(0.321mmol)、テトラヒドロフラン(1000mL)及び攪拌子をそれぞれ投入し、水素気流下、室温で攪拌を開始した。水素3.09L(128mmol)が消費された時点で、窒素を導入して反応を停止させた。反応液を濾過した後、ろ液の溶媒を減圧除去し、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、重合性化合物Xとしての4−(3,5−ジビニルフェニル)ジアマンタン:17.1gを得た。
【0124】
得られた化合物は、外観、質量分析(MS(FD))、元素分析等により同定した。以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。
【0125】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):316(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.08、H;8.92、実測値(/%)C;91.01、H;8.99
これらのデータは、上記で得られた化合物が下記式(11)で表される4−(3,5−ジビニルフェニル)ジアマンタンであることを示している。
【0126】
【化9】

【0127】
(合成例8)
まず、合成例1での合成中間体である3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ジブロモ−1,1’−ビアダマンタン:25g(51.6mmol)およびフェノール:354g(3.8mol)を温度計、撹拌機および還流管を備えたフラスコに入れ、60℃に昇温して30分攪拌し、続いて160℃に昇温して30分攪拌した。内温を50℃にした後、水を2500mL添加し、添加後すぐに内温を75℃にして30分攪拌した。析出物を熱時ろ過したのち、得られた析出物を水:7000mLで洗浄し乾燥させることにより、3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:24gを得た。質量分析による分子量が510である結果より、生成物が3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることが示された。
【0128】
次に、上記を繰り返して得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:50g(97.9mmol)、および、ピリジン:220gをフラスコに入れ、室温で攪拌し溶解させた。ドライアイス/メタノールを使用し、内温が−5℃以下になるまで冷却した。その後、内温を5℃以下に保ちながら、無水トリフルオロメタンスルホン酸:74.5g(264.3mmol)を少量ずつ滴下した。滴下終了後、内温を5〜10℃で30分攪拌、さらに室温に戻して4時間攪拌した。次に、2000mLのビーカーに1000mLの1%塩酸水溶液を入れて0〜10℃に冷却し、上記の反応液を滴下後、30分攪拌した。析出物をろ別し、メタノール:400mLで再結晶操作したのち乾燥させることにより、3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−トリフルオロメチルスルホニルフェニル)−1、1’−ビアダマンタン:68gを得た。質量分析による分子量が774である結果より、生成物が3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−トリフルオロメチルスルホニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることが示された。
【0129】
さらに上記で得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−トリフルオロメチルスルホニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:50g(64.5mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム:4.56g(6.6mmol)、トリフェニルホスフィン:6.80g(25.8mmol)、ヨウ化銅(II)4.91g(25.8mmol)、トリエチルアミン:760mlをフラスコに添加し、攪拌した。これを75℃に昇温した後、トリメチルシリルアセチレン:38.1g(387.2mmol)をゆっくり添加した。これを75℃において7時間攪拌した後、120℃に昇温してトリエチルアミンを留去した。その後、室温に戻し、ジクロロメタン:1200mLを反応液に添加し、20分攪拌した。析出物をろ過により除去し、ろ液に5%塩酸水溶液:1000mLを加えて分液した。有機層を水:1000mLで3回洗浄した後、有機層の溶媒を減圧除去した。得られた化合物をヘキサン:1500mLに溶解させた。不溶物をろ過により除去し、ろ液部のヘキサンを減圧除去した。これにアセトン:1000mLを投入し、析出物をアセトンで3回洗浄することにより、3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−トリメチルシリルエチニルフェニル)−1、1’−ビアダマンタン:36gを得た。質量分析による分子量が671である結果より、生成物が3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−トリメチルシリルエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることが示された。
【0130】
さらに上記で得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−トリメチルシリルエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:35g(52.1mmol)と炭酸カリウム:1.58g(11.5mmol)とを、テトラヒドロフラン:700mLとメタノール:350mLとの混合溶媒中において、窒素雰囲気下、室温で4時間攪拌させた。これを10%塩酸水溶液:1100mLに投入して、析出物をろ過し、得られた析出物を水:1100mLで洗浄、さらにアセトン:1100mLで洗浄したのち乾燥させることにより、3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−エチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:24.2gを得た。質量分析による分子量が526である結果より、生成物が3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−エチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることが示された。
【0131】
さらに合成例7での最終生成物としての化合物4−(3,5−ジビニルフェニル)ジアマンタンの合成において、4−(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタンに代えて、上記で得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−エチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:33.8g(64.1mmol)を用いたこと以外は合成例3での同様な反応をさせることにより、重合性化合物Xとしての化合物3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−ビニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:26.9gを得た。
得られた化合物は、外観、質量分析(MS(FD))、元素分析等により同定した。以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。
【0132】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):530(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.51、H;9.49、実測値(/%)C;90.45、H;9.56
これらのデータは、上記で得られた化合物が下記式(12)で表される3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−ビニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることを示している。
【0133】
【化10】

【0134】
(合成例9)
まず、合成例1での合成中間体である3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ジブロモ−1,1’−ビアダマンタン:50g(90.8mmol)、1,3−ジブロモベンゼン:21.4g(90.8mmol)、クロロホルム:1000mLをフラスコに入れて攪拌し、乾燥窒素下25℃において、臭化アルミニウム(III):24.8g(93.0mmol)を少量ずつ添加した。これを50℃に昇温して18時間攪拌した後、室温に戻し、反応液を得た。5%塩酸水溶液:700mLに、反応液を投入し、攪拌した。水層を除去し、有機層をアセトン:2000mLに投入した。析出物をろ過し、アセトン:1000mLで3回洗浄して固形分を得た。固形分をクロロホルム:600mL、ジクロロエタン:400mLの混合液で30分攪拌し、不溶物をろ過により除去し、ろ液部を得た。ろ液部のクロロホルム、ジクロロエタンを減圧除去し、アセトン:1000mLで2回洗浄することにより、3,3’,5,5’−テトラメチル−7−ブロモ−7’−(3,5−ジブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:5.8gを得た。質量分析による分子量が639である結果より、生成物が3,3’,5,5’−テトラメチル−7−ブロモ−7’−(3,5−ジブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることが示された。
【0135】
次に、上記操作を繰り返して得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−7−ブロモ−7’−(3,5−ジブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタン20g(31.3mmol)、および、フェノール:107g(1.1mol)を温度計、攪拌機および還流管を備えたフラスコに入れ、60℃に昇温して30分攪拌し、続いて160℃に昇温して30分攪拌した。内温を50℃にした後、水:2000mLに添加、添加後すぐに内温を75℃にして30分攪拌した。析出物を熱時ろ過したのち、得られた析出物を水:6500mLで洗浄し乾燥させることにより、3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−ヒドロキシフェニル)−7’−(3,5−ジブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:18.2gを得た。質量分析による分子量が652である結果より、生成物が3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−ヒドロキシフェニル)−7’−(3,5−ジブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることが示された。
【0136】
次に、上記操作を繰り返して得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−ヒドロキシフェニル)−7’−(3,5−ジブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:50g(76.6mmol)と、ピリジン:170gをフラスコに入れ、室温で攪拌し溶解させた。ドライアイス/メタノールを使用し、内温が−5℃以下になるまで冷却した。その後、内温を5℃以下に保ちながら、無水トリフロルオロメタンスルホン酸:29.2g(103.4mmol)を少量ずつ滴下した。滴下終了後、内温を5〜10℃で30分攪拌、さらに室温に戻して4時間攪拌した。次に、2000mLのビーカーに1000mLの1%塩酸水溶液を入れて0〜10℃に冷却し、上記の反応液を滴下後、30分攪拌した。析出物をろ別し、メタノール:500mLで再結晶操作したのち乾燥させることにより、3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−トリフルオロメチルスルホニルフェニル)−7’−(3,5−ジブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:54gを得た。質量分析による分子量が784である結果より、生成物が3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−トリフルオロメチルスルホニルフェニル)−7’−(3,5−ジブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることが示された。
【0137】
さらに上記で得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−トリフルオロメチルスルホニルフェニル)−7’−(3,5−ジブロモフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:50g(63.7mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム:4.50g(6.4mmol)、トリフェニルホスフィン:6.73g(25.5mmol)、ヨウ化銅(II):4.85g(25.5mmol)、トリエチルアミン:700mlをフラスコに添加し、攪拌した。これを75℃に昇温した後、トリメチルシリルアセチレン:37.6g(382.4mmol)をゆっくり添加した。これを75℃において7時間攪拌した後、120℃に昇温してトリエチルアミンを留去した。その後、室温に戻し、ジクロロメタン1100mLを反応液に添加し、20分攪拌した。析出物をろ過により除去し、ろ液に5%塩酸水溶液:1000mLを加えて分液した。有機層を水:1000mLで3回洗浄した後、有機層の溶媒を減圧除去した。得られた化合物をヘキサン:1500mLに溶解させた。不溶物をろ過により除去し、ろ液部のヘキサンを減圧除去した。これにアセトン:1000mLを投入し、析出物をアセトンで3回洗浄することにより、3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−トリメチルシリルエチニルフェニル)−7’−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:42gを得た。質量分析による分子量が767である結果より、生成物が3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−トリメチルシリルエチニルフェニル)−7’−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることが示された。
【0138】
さらに上記で得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−トリメチルシリルエチニルフェニル)−7’−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:40g(52.1mmol)と炭酸カリウム:1.58g(11.5mmol)をテトラヒドロフラン:700mLとメタノール:350mLとの混合溶媒中において、窒素雰囲気下、室温で4時間攪拌させた。これを10%塩酸水溶液:1100mLに投入して、析出物をろ過し、得られた析出物を水:1100mLで洗浄、さらにアセトン:1100mLで洗浄したのち乾燥させることにより、3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−エチニルフェニル)−7’−(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:24.7gを得た。質量分析による分子量が550である結果より、生成物が3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−エチニルフェニル)−7’−(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることが示された。
【0139】
さらに合成例7での最終生成物としての化合物4−(3,5−ジビニルフェニル)ジアマンタンの合成において、4−(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタンに代えて、上記で得られた3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−エチニルフェニル)−7’−(3,5−ジエチニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:35.3g(64.1mmol)を用い、水素4.63L(192mmol)が消費された時点で、窒素を導入して反応を停止させた以外は、合成例7での同様な反応をさせることにより、重合性化合物Xとしての化合物3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−ビニルフェニル)−7’−(3,5−ジビニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:28.9gを得た。
得られた化合物は、外観、質量分析(MS(FD))、元素分析等により同定した。以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。
【0140】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):556(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.59、H;9.41、実測値(/%)C;90.42、H;9.38
これらのデータは、上記で得られた化合物が下記式(13)で表される3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−ビニルフェニル)−7’−(3,5−ジビニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンであることを示している。
【0141】
【化11】

【0142】
[2]膜形成用組成物の調製
(実施例1)
上記合成例1で合成された化合物a:5gを1,3−ジメトキシベンゼン:45gに溶解させ、乾燥窒素下170℃で3時間反応させ、反応液を一旦室温まで冷却した。反応追跡のため、GPCにより分子量測定を行ったところ、数平均分子量がa=42,000であった。再び反応液を加熱し、150℃で6時間反応させ、反応液を、10倍の体積のメタノール/テトラヒドロフラン=3/1の混合溶媒に滴下して沈殿物を集めて乾燥し、化合物aのプレポリマー:2.7g(収率:54%)を得た。得られたプレポリマー:2gを、シクロペンタノン:18gに溶解させ、フィルターでろ過することにより、有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物とした。
【0143】
(実施例2)
実施例1において、合成例1で合成された化合物a:5gに代えて、合成例2で合成された化合物b:5gを用いた以外は実施例1と同様にして、化合物bのプレポリマー:2.7g(収率:54%)を得た。反応追跡のため、GPCにより分子量測定を行った結果は、数平均分子量がb=43,000であった。
上記で得られたプレポリマーの2gを、シクロペンタノン18gに、それぞれ溶解させ、フィルターでろ過することにより、有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物とした。
【0144】
(実施例3)
実施例1において、合成例1で合成された化合物a:5gに代えて、合成例3で合成された化合物c:5gを用いた以外は実施例1と同様にして、化合物cのプレポリマー:2.8g(収率:56%)を得た。反応追跡のため、GPCにより分子量測定を行った結果は、数平均分子量がc=41,000であった。
上記で得られたプレポリマーの2gを、シクロペンタノン18gに、それぞれ溶解させ、フィルターでろ過することにより、有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物とした。
【0145】
(実施例4)
実施例1において、合成例1で合成された化合物a:5gに代えて、合成例4で合成した化合物e:5gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして重合反応を行い、化合物eのプレポリマー:2.4g(収率:48%)を得、さらに、当該プレポリマー:2gを用いて、前記実施例1と同様にして有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を得た。
【0146】
(実施例5)
実施例1において、合成例1で合成された化合物a:5gに代えて、合成例5で合成した化合物f:5gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして重合反応を行い、化合物fのプレポリマー2.7g(収率:54%)を得、さらに、当該プレポリマー:2gを用いて、前記実施例1と同様にして有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を得た。
【0147】
(実施例6)
実施例1において、合成例1で合成された化合物a:5gに代えて、合成例6で合成した化合物g:5gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして重合反応を行い、化合物gのプレポリマー2.6g(収率:52%)を得、さらに、当該プレポリマー:2gを用いて、前記実施例1と同様にして有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を得た。
【0148】
(比較例1)
実施例1において、合成例1で合成された化合物a:5gに代えて、合成例7で合成した4−(3,5−ジビニルフェニル)ジアマンタンを用いた以外は、前記実施例1と同様にして重合反応を行い、プレポリマー:3.8g(収率:76%)を得、さらに、当該プレポリマー:2gを用いて、前記実施例1で述べたのと同様の処理を施すことにより有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を得た。
【0149】
(比較例2)
実施例1において、合成例1で合成された化合物a:5gに代えて、合成例8で合成した3,3’,5,5’−テトラメチル−7,7’−ビス(4−ビニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンを用いた以外は、前記実施例1と同様にして重合反応を行い、プレポリマー:3.4g(収率:68%)を得、さらに、当該プレポリマー:2gを用いて、前記実施例1で述べたのと同様の処理を施すことにより有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を得た。
【0150】
(比較例3)
実施例1において、合成例1で合成された化合物a:5gに代えて、合成例9で合成した3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−ビニルフェニル)−7’−(3,5−ジビニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタン:5gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして重合反応を行い、プレポリマー:2.3g(収率:46%)を得、さらに、当該プレポリマー:2gを用いて、前記実施例1で述べたのと同様の処理を施すことにより有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を得た。
【0151】
(比較例4)
前記比較例3で調製したのと同様にして、3,3’,5,5’−テトラメチル−7−(4−ビニルフェニル)−7’−(3,5−ジビニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンのプレポリマーを得た後、得られたプレポリマー:2gと、空孔形成材としてのポリプロピレングリコールジオールタイプ(和光純薬工業(株)社製、Polypropylene Glycol, Diol Type, 400):0.7gとを、シクロペンタノン:18gに溶解させ、さらに、フィルターでろ過することにより、有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物とした。すなわち、本比較例では、空孔形成材を含むものとした以外は、前記比較例3と同様にして有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を得た。
【0152】
[3]絶縁膜の形成(膜付き基板の作製)
前記各実施例および各比較例で得られた有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を用い、以下のようにして絶縁膜を形成した。
【0153】
まず、有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を、スピンコーターにより、シリコンウエハ上に塗布した。この際、熱処理後の絶縁膜の厚さが、100nmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。
【0154】
次に、上記のようにして塗膜が設けられたシリコンウエハを、200℃のホットプレート上に1分間置き、塗膜中に含まれる溶媒(シクロペンタノン)を除去した。
【0155】
その後、乾燥した塗膜が設けられたシリコンウエハについて、400℃のオーブン中で窒素雰囲気下30分間の熱処理(焼成処理)を施すことにより、塗膜を構成するプレポリマーを硬化させ、絶縁膜を形成し、膜付き基板(絶縁膜付き基板)を得た。
【0156】
[4]絶縁膜(膜付き基板)についての評価
前記各実施例および各比較例にかかる絶縁膜(膜付き基板)について、誘電率、破壊電圧、リーク電流、ガラス転移温度、弾性率、耐熱性および密着性のそれぞれの特性を、下記の評価方法により、評価を行った。
【0157】
[4.1]誘電率
誘電率は、日本エス・エス・エム(株)製、自動水銀プローブCV測定装置SSM495を用いて評価した。
【0158】
[4.2]破壊電圧、リーク電流
破壊電圧、リーク電流は、誘電率と同様に、日本エス・エス・エム(株)製、自動水銀プローブCV測定装置SSM495を用いて評価した。
【0159】
破壊電圧は、1×10−2Aの電流が流れた時に印加した電圧を破壊電圧とし、電界強度(1×10−2Aの電流が流れた時に印加した電圧(MV)を膜厚(cm)で除した値。単位:MV/cm)で示した。
【0160】
リーク電流は、1MV/cmの電界強度の時に流れる電流値をリーク電流とし、電流密度(1MV/cmの電界強度の時に流れる電流値(A)を、自動水銀プローブCV測定装置の水銀電極面積(cm)で除した値。単位:A/cm)で示した。
【0161】
[4.3]ガラス転移温度(Tg)
Tgは、上記で得たシリコンウエハ上の絶縁膜を削り取り、これを測定試料として、ティー・エイ・インスツルメント社製の示差走査熱量計DSC−Q1000装置で評価した。測定温度範囲を、250〜450℃とし、昇温速度を2℃/分とした。ガラス転移温度の評価は、250〜450℃の温度範囲においてリバースヒートフローに変極点がないかを解析して求めた。
【0162】
[4.4]弾性率
弾性率は、MTS社製薄膜機械的特性測定装置ナノインデンターで薄膜測定用プログラムを用いて、押し込み深さが膜厚の10分の1までの信号が安定した領域で評価した。
【0163】
[4.5]耐熱性
耐熱性は、熱分解温度で評価した。得られた絶縁膜をTG/DTA測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製、TG/DTA220)を用いて、窒素ガス200mL/min.フロー下、昇温速度10℃/min.の条件により測定し、重量の減少が5%に到達した温度を、熱分解温度とした。
【0164】
[4.6]密着性
上記[3]で作製した各実施例および各比較例にかかる膜付き基板(シリコンウエハ/有機絶縁膜の積層体)について、JIS K 5600−5−6 付着性(クロスカット法)に従い、テープテストにより密着性を評価した。すなわち、カッターナイフで、絶縁膜に1mm角の正方形の升目を100個作り、その上にセロテープ(登録商標)を張った。1分後、基板を抑えてセロテープ(登録商標)を剥がし、基板から樹脂膜がいくつ剥がれるかを数えた。
【0165】
また、上記と同様にして、前記各実施例および各比較例の膜形成用組成物を用いて、シリコンウエハ上に、SiOC膜、有機絶縁膜(前記各実施例および各比較例の膜形成用組成物を用いて形成された絶縁膜)をこの順で積層した膜付き基板、シリコンウエハ上に、SiCN膜、有機絶縁膜(前記各実施例および各比較例の膜形成用組成物を用いて形成された絶縁膜)をこの順で積層した膜付き基板、および、シリコンウエハ上に、SiCN膜、有機絶縁膜(前記各実施例および各比較例の膜形成用組成物を用いて形成された絶縁膜)、SiO膜をこの順で積層した膜付き基板を、それぞれ作製し、これらの膜付き基板についても上記と同様の方法(テープテスト)により密着性を評価した。なお、これらの膜付き基板の作製において、SiOC膜は、厚さが100nmとなるようにプラズマCVD法により形成し、SiCN膜は、厚さが60nmとなるようにプラズマCVD法により形成し、SiO膜は、厚さが30nmとなるようにプラズマCVD法により形成した。また、各膜の形成条件は、各実施例および各比較例で同一とした。
【0166】
[4.7]面内均一性
上記[3]に記載した絶縁膜の形成に従って、直径300mmのシリコンウエハ上に絶縁膜を形成し、n&k Technology,Inc.製、n&k Analyzer 1500を用いて膜厚を測定した。測定ポイントは、中心座標を(0,0)、ノッチ部座標を(0,−150)とし、座標(−150,0)から座標(150,0)の直線座標を等間隔で25ポイントとした。25ポイントの標準偏差(σ)を3倍し、平均値で除した数値を面内均一性の尺度とした。
【0167】
これらの結果を、表1、表2に示した。また、各実施例および各比較例の有機絶縁膜用ワニス(膜形成用組成物)を構成するプレポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散比(Mw/Mn)を表3に示した。なお、プレポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散比(Mw/Mn)については、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)装置(東ソー株式会社製、HLC−8220GPC)を用い、また、カラムとして、TSKgel GMHXL(ポリスチレン換算排除限界4×10(推定))×2本およびTSKgel G2000HXL(ポリスチレン換算排除限界1×10)×2本を直列接続して、検出器として、屈折率計(RI)または紫外・可視検出器(UV(254nm))を用いて測定を行い、RIまたはUVで得られた結果を解析することにより求めた。また、測定条件としては、移動相:テトラヒドロフラン、温度:40℃、流量:1.00mL/min、試料濃度:0.1wt%テトラヒドロフラン溶液とした。また、表中、シリコンウエハを「Si」で示し、有機絶縁膜(前記各実施例および各比較例の膜形成用組成物を用いて形成された絶縁膜)を「Org」で示し、SiOC膜を「SiOC」で示し、SiCN膜を「SiCN」で示し、SiO膜を「SiO」で示した。
【0168】
【表1】

【0169】
【表2】

【0170】
【表3】

【0171】
表1、表2から明らかなように、本発明では、誘電率が低く、破壊電圧が高く、リーク電流も少ないことから絶縁膜として優れた電気特性を示している。また、ガラス転移温度が高く、耐熱性に優れ、かつ弾性率が高く機械強度に優れている。また、本発明では、絶縁膜の半導体基板等への密着性に優れていた。特に、上層部、下層部との密着性に優れていることから、半導体装置の製造プロセスでの適合性に優れていることが分かる。また、本発明では、形成された膜の各部位での不本意な厚みのばらつきが十分に防止されていた(膜厚の均一性に優れていた)。このことから、本発明では、膜の各部位での不本意な特性のばらつきが防止されているといえる。また、表3から、本発明では、膜形成用組成物を構成するプレポリマーの分散比が小さかった。
これに対し、各比較例では満足のいく結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0172】
1 半導体基板
2 SiN膜
3 層間絶縁膜
4 ハードマスク層
5 改質処理層
6 バリア層
7 銅配線層
100 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性の官能基を有する重合性化合物および/または当該重合性化合物が部分的に重合した重合体を含む膜形成用組成物であって、
前記重合性化合物は、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造Aと、重合反応に寄与する2つの重合性反応基Bとを有するものであり、
前記重合性反応基Bが、芳香環と、当該芳香環に直接結合する2つのビニル基とを有するものであり、
前記重合性化合物は、前記部分構造Aを中心に、前記重合性反応基Bが対称的に結合した構造を有するものであることを特徴とする膜形成用組成物。
【請求項2】
前記芳香環は、前記かご型構造に直接結合したものである請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項3】
前記重合性反応基において、一方の前記ビニル基は、他方の前記ビニル基のメタ位に存在するものである請求項1または2に記載の膜形成用組成物。
【請求項4】
2つの前記ビニル基は、いずれも、前記芳香環が前記かご型構造に結合する部位のメタ位に存在するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項5】
前記部分構造Aは、それ自体が対称性を有する構造のものである請求項1ないし4のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項6】
前記部分構造Aは、ビアダマンタン構造を有するものである請求項1ないし5のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項7】
前記部分構造Aは、ジアマンタン構造を有するものである請求項1ないし6のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項8】
前記部分構造Aは、置換基としてメチル基を有するものである請求項1ないし7のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項9】
前記重合性化合物は、下記式(1)で示される構造を有するものである請求項1ないし8のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【化1】

【請求項10】
膜形成に際して熱分解することにより、膜中に空孔を形成する機能を有する空孔形成材を含まない請求項1ないし9のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項11】
前記ビニル基の一部が前記ビニル基に水素が付加した飽和炭化水素基である、請求項1ないし10のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて形成されたことを特徴とする絶縁膜。
【請求項13】
絶縁膜は、SiOC、SiCNまたはSiOで構成された部材に接触するものである請求項12に記載の絶縁膜。
【請求項14】
請求項12または13に記載の絶縁膜を備えたことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−26515(P2011−26515A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175746(P2009−175746)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】