説明

自動弁装置およびそれに用いられる圧力調整弁

【課題】この発明は、異物の詰まりや生成物の生成を抑え、主弁が閉じられない事態の発生を回避できる自動弁装置および圧力調整弁を得る。
【解決手段】調圧機構部61が、一次圧導入室49と二次圧導入室47とを連通する連通路51のニードル弁60の一次圧導入室側に配設されている。調圧機構部61は、流入連通穴69を介して一次圧導入室49に連通する調圧室62、流入連通穴69に接離可能に配設された弁体65、および調圧室62内の圧力が設定圧力となると弁体65を流入連通穴69に接しさせ、調圧室62内の圧力が設定圧力より低くなると弁体65を流入連通穴69から離反させるように弁体65を駆動する弁体駆動手段を有し、流入連通穴69を介して調圧室62に導入された一次側加圧水を設定圧力に調圧してニードル弁60側に流出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば高速自動車道等のトンネルに設置されて放水ヘッドに加圧水を供給して放水させる自動弁装置およびそれに用いられる圧力調整弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の散水システムがトンネルに用いられる場合、トンネルの長手方向を所定の距離毎に区切って防火区画を設定し、火災発生時にその火元を含む防火区画を特定し、その防火区画の領域全体に散水する。この散水システムでは、加圧水供給源に接続された主配管が埋設されてトンネル内に敷設され、各防火区画において、分岐配管が主配管から分岐してトンネルの側壁に沿って立ち上がり、その先端に放水ヘッドが接続される。放水ヘッドは防火区画の大きさに合わせて必要な個数が設けられる。各分岐配管には、仕切り弁が設けられ、さらに、その二次側に自動弁装置が設けられる。この自動弁装置は、火災発生時に開いて放水ヘッドに加圧水を供給し、鎮火後閉じて放水ヘッドへの加圧水の供給を停止させる。
【0003】
このような従来の自動弁装置は、放水ヘッドに加圧水を供給する自動弁と、自動弁の弁体を開閉駆動するアクチュエータと、アクチュエータに所定圧力に調整された駆動用の加圧水を供給する圧力調整弁と、アクチュエータに対する加圧水の供給が停止した状態で圧力調整弁を経由してアクチュエータの加圧水を排水させる自動排水弁と、などを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−5240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の自動弁装置においては、放水ヘッドからの放水が終了し、アクチュエータに対する加圧水の供給が停止した状態となると、アクチュエータ内の加圧水が、圧力調整弁内に入り、オリフィスを通って圧力調整弁の配管側の部屋に移動する。ついで、圧力調整弁から配管に流れ出し、配管内を流れて自動排水弁からドレインに排水され、アクチュエータ内の圧力が低下し、自動弁の弁体が閉じられる。
【0006】
この圧力調整弁内のオリフィスは、アクチュエータによる圧力調整時に、アクチュエータの動作に影響を及ぼさず、かつ放水終了後に主弁を閉弁させるためにアクチュエータの加圧水を排水させるときに、過度の水撃を発生させないように、微小な隙間に調整されていた。そこで、加圧水中の異物がオリフィスに詰まり、さらには生成物がオリフィスに生成され、最悪の場合には、自動弁の弁体が閉じられなくなるという不具合が発生する。
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、調圧室内の圧力に応じて弁体を流入連通穴に接離させて調圧室内の圧力を設定圧力に調圧する調圧機構部をニードル弁の一次圧導入室側に配設しているので、異物の詰まりや生成物の生成に起因する、主弁が閉じられない事態の発生を回避できる自動弁装置およびそれに用いられる圧力調整弁を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による自動弁装置は、連通孔を有する隔離壁により仕切られた一次側流路と二次側流路とを有する胴体部、上記一次側流路側から上記連通孔を開閉する主弁、上記二次側流路を介して上記連通孔に対向するように上記胴体部に突設された筒状のシリンダ、および上記シリンダ内に摺動可能に配設され、該シリンダ内の上記二次側流路と反対側に画成される作動室内の圧力に応じて上記主弁を開閉駆動するピストンを有する自動弁と、一次圧導入室、二次圧導入室、上記一次圧導入室を大気に開閉する弁部、上記一次圧導入室と上記二次圧導入室とを連通する連通路、上記連通路に配設されて流路を絞るニードル弁、上記連通路の上記ニードル弁の上記一次圧導入室側に配設された調圧機構部、および上記二次圧導入室内の圧力に応じて上記弁部を開閉させる弁駆動機構を有する圧力調整弁と、上記一次側流路と上記作動室とを連通する第1配管と、上記第1配管の経路中に配設され、一次側加圧水の上記作動室への供給を制御する起動弁と、上記二次側流路と上記二次圧導入室とを連通する第2配管と、上記作動室と上記一次圧導入室とを連通する第3配管と、を備えている。上記圧力調整弁は、上記起動弁の開弁状態では、上記二次側流路から上記第2配管を介して供給される上記二次圧導入室内の二次側加圧水の圧力に応じて上記弁部を開閉させて、上記二次圧導入室内の二次側加圧水の圧力が所定圧力となるように上記主弁の開度を制御し、上記起動弁が閉弁されると、上記作動室内の一次側加圧水を上記第3配管、上記一次圧導入室、上記調圧機構部、および上記ニードル弁を介して上記二次圧導入室に流出させて上記作動室内の一次側加圧水の圧力を下げ、上記主弁を閉じるように構成されている。上記調圧機構部は、流入連通穴を介して上記一次圧導入室に連通する調圧室、上記流入連通穴に接離可能に配設された弁体、および上記調圧室内の圧力が設定圧力となると上記弁体を上記流入連通穴に接しさせ、該調圧室内の圧力が設定圧力より低くなると該弁体を上記流入連通穴から離反させるように該弁体を駆動する弁体駆動手段を有し、上記流入連通穴を介して上記調圧室に導入された上記一次側加圧水を上記設定圧力に調圧して上記ニードル弁側に流出するように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、弁体が、弁体駆動手段により、調圧室内の圧力が設定圧力となると流入連通穴に接し、調圧室内の圧力が設定圧力より低くなると流入連通穴から離反するように駆動されるので、弁体の流入連通穴に接する動作時に、異物が弁体と流入連通穴との間に挟まれても、弁体の流入連通穴からの離反動作時に外れる。また、弁体は調圧室内の圧力に応じて流入連通穴に接離するので、弁体の接離動作は弁体や流入連通穴に生成された生成物に影響されない。そこで、異物の詰まりや生成物の生成に起因する、主弁が閉じられない事態の発生が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明に係る自動弁装置を示す概略構成図である。
【図2】この発明に係る自動弁装置における放水時の2次側圧力の上昇動作を説明する図である。
【図3】この発明に係る自動弁装置における放水時の2次側圧力の低下動作を説明する図である。
【図4】この発明に係る自動弁装置における放水停止動作を説明する図である。
【図5】この発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁を示す断面図である。
【図6】この発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁を示す断面図である。
【図7】この発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁における調圧機構部の構成を説明する要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の自動弁装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0012】
図1はこの発明に係る自動弁装置を示す概略構成図である。
図1において、自動弁装置は、主弁7の開度を変化させて、一次側流路2から二次側流路3に流れる一次側加圧水の流量を調整する自動弁100と、自動弁100の主弁7の主弁駆動機構に一次側加圧水を供給して自動弁装置を起動する起動弁200と、二次側加圧水の圧力が所定圧力に達したことを感知して主弁7の開度を設定開度に制御する圧力調整弁400と、自動弁100の二次側に配置され、放水ヘッドから放水時には開放し、また放水ヘッドから放水せず、自動弁100のテストをするときなどに閉鎖する制水弁25と、二次側流路3内の二次側加圧水を排水する排水ユニット300と、自動弁100の二次側加圧水の圧力が所定の放水圧以上となると放水信号を監視室などに発信する圧力スイッチ20と、を備えている。
【0013】
この自動弁装置は、自動弁100の一次側流路2が主配管(図示せず)に接続され、二次側流路3が制水弁25を介して二次側配管15に接続され、放水ヘッド16が二次側配管15の先端に設けられている。この自動弁装置は、火災発生時に自動弁100が開いて放水ヘッド16に加圧水を供給し、鎮火後閉じて放水ヘッド16への加圧水の供給を停止させる。
【0014】
まず、自動弁100の構造について説明する。
自動弁100は、胴本体部1aと胴本体部1aの両側に同軸に相対して配設される一次側および二次側管路1b、1cとからなる胴体部1を備える。胴本体部1aは、同軸に配設された一次側および二次側管路1b,1cの軸心(以降、胴体部軸心とする)と直交する断面形状が円形であり、かつ該円形断面の直径が一次側管路1bから二次側管路1cに向かって徐々に大きくなり、最大値を経て徐々に小さくなる外形形状の膨出体形状に作製されている。
【0015】
隔離壁4が胴体部1内を一次側流路2と二次側流路3とに区画するように配設されている。連通孔5が一次側流路2と二次側流路3とを連通するように隔離壁4に穿設されている。一次側流路2には、一次側加圧水が一次側管路1bを介して供給され、二次側流路3は、二次側管路1cを介して二次側配管15に接続される。有底円筒状のシリンダ6が、軸心を連通孔5の孔中心に一致させて、かつ、二次側流路3を挟んで連通孔5と相対して、二次側流路3に開口するように胴本体部1aに形成されている。このシリンダ6は、シリンダ6の軸心を胴体部1の軸心と直交させて胴本体部1aの円形断面が最大径の部位に突設されている。
【0016】
主弁7が胴体部1の一次側流路2内に連通孔5の外周縁部に形成される弁座4aに胴体部1の軸心と直交する方向に接離可能に配設されている。また、付勢手段としてのスプリング8が主弁7を二次側流路3側に押圧するように一次側流路2内に縮設されている。これにより、主弁7が弁座4aに密接し、一次側流路2と二次側流路3との間の流路を閉止している。
【0017】
ピストン9がシリンダ6内に摺動可能に挿入され、Oリング10がピストン9の外周部に嵌装されて、シリンダ6内が二次側流路3側のピストン室6aと二次側流路3と反対側の作動室6bとに区画されている。さらに、ステム11が、一端をピストン9の中心位置に固着され、他端を主弁7の中心位置に嵌着されて、その軸心がシリンダ6の軸心に一致するように取り付けられている。ここで、シリンダ6、スプリング8、ピストン9およびステム11などにより主弁駆動機構が構成されている。そして、シリンダ6の軸心が主弁7の接離方向に一致している。
【0018】
起動弁200は、パイロット弁18と、手動起動弁19と、からなり、第1配管30に並列に配設されている。また、止め弁17が第1配管30の起動弁200の上流側に配設されている。
制水弁25は、制水弁取付フランジ27を用いて胴体部1の二次側管路1cに取り付けられている。
排水ユニット300は、自動排水弁21と、手動によるボール弁22とからなり、第2配管31に配設されている。圧力スイッチ20が第2配管31に配設されている。
【0019】
つぎに、圧力調整弁400の構造について図5乃至図7を参照しつつ説明する。図5および図6はそれぞれこの発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁を示す断面図、図7はこの発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁における調圧機構部の構成を説明する要部断面図である。
【0020】
圧力調整弁400は、ダイヤフラム40がダイヤフラムホルダ41に保持されてスプリングケース42と弁ボディ46とに挟持されて構成されている。スプリングケース42は、有底円筒状に作製されている。そして、自動弁100の二次側の規定圧力を設定するためのスプリング荷重を加えるスプリング43がスプリングシート44とダイヤフラムホルダ41との間に縮設されている。さらに、圧力調整用ボルト45がスプリングケース42の頂部を貫通するように螺着されており、圧力調整用ボルト45のスプリングケース42内への延出量を調整することによりスプリング43の収縮量を調整でき、スプリング荷重を調整できる。
【0021】
弁ボディ46には、ダイヤフラム40により画成される二次圧導入室47と、二次圧導入室47に二次圧を導入する二次圧導入ポート48と、一次圧導入室49と、一次圧導入室49に一次圧を導入する一次圧導入ポート50と、二次圧導入室47と一次圧導入室49とを連通する連通路51と、一次圧導入室49と大気とを連通する排水ポート52と、が形成されている。
軸棒53は、一端をダイヤフラムホルダ41に固着され、二次圧導入室47を通過して弁ボディ46を貫通して一次圧導入室49内に延出するように配設され、ダイヤフラム40の変位に連動して往復移動可能に構成されている。なお、軸棒53の弁ボディ46の貫通部にはOリング57が装着され、二次圧導入室47と一次圧導入室49との間のシールが確保されている。
【0022】
プラグ55は、有底円筒状に作製され、底部側を一次圧導入室49に向けて排水ポート52に嵌着保持されている。プラグ55の底部には、所定口径の弁座56が形成されており、軸棒53の先端部に形成された弁体54が軸棒53の往復移動により弁座56に接離可能となっている。
ここで、弁体54と弁座56が弁部を構成する。弁体54は円錐形状に作製され、弁座56と同軸に配置されている。また、ダイヤフラム40、スプリングケース42、スプリング43、軸棒53などにより、弁駆動機構を構成する。
【0023】
ニードル弁60は、連通路51に配設され、一次圧導入室49内の一次圧の流量を絞って二次圧導入室47に流出させる。調圧機構部61は、連通路51のニードル弁60の一次圧導入室49側に配設され、ニードル弁60により流出される圧力を所定の設定圧力Paに調圧する。
【0024】
調圧機構部61は、調圧室62と、調圧室62内に配設された有底円筒状のシリンダ63と、シリンダ63内に摺動可能に挿入されたピストン64と、一端がピストン64の中心位置に固着され、他端側がシリンダ63の底部を貫通するように配設され、ピストン64のシリンダ63内の摺動移動によりシリンダ63の軸心位置を往復移動する弁体65と、ピストン64とシリンダ63の底部との間に配設され、調圧室62内の圧力に応じて伸縮するばね66と、ピストン64の外周部に嵌装されてシリンダ63内を調圧室62に対してシールするOリング67と、シリンダ63の底部のピストン貫通穴の内周面に嵌装されてシリンダ63内を調圧室62に対してシールするOリング68と、を備えている。
【0025】
そして、調圧機構部61は、調圧室62が、シリンダ63の底部の軸心位置と対向するように調圧室62の壁面にあけられた流入連通穴69を介して一次圧導入室49に連通するように連通路51に配設される。そして、テーパ加工された弁体65の先端が流入連通穴69と接離して、流入連通穴69が開閉される。ピストン64により画成されたシリンダ63内は弁ボディ46に形成された貫通穴71を介して外部に連通され、外気圧に保持されている。なお、シリンダ63、ピストン64、およびばね65が弁体駆動手段を構成する。
ニードル弁60は、シリンダ63の有底円筒状の開口と対向するように調圧室62の壁面にあけられた流出連通穴70に二次圧導入室47側から接離するように弁ボディ46に配設されている。
【0026】
このように構成された圧力調整弁400では、圧力調整用ボルト45のスプリングケース42内への延出量が調整され、スプリング荷重が設定値となるように調整される。そして、ダイヤフラム40は、ダイヤフラムホルダ41を介して作用するスプリング荷重により一次圧導入室49側に変位し、弁体54が弁座56に当接し、閉弁状態となっている(初期状態)。
【0027】
また、二次圧が二次圧導入ポート48から二次圧導入室47に導入され、二次圧導入室47内の圧力が上昇する。そして、二次圧導入室47内の圧力がスプリング荷重に勝ると、ダイヤフラム40はスプリングケース42側に変位し、弁体54が弁座56から離反し、開弁状態となる。これにより、一次圧導入ポート50から一次圧導入室49内に導入されている一次圧が排水ポート52から排出される。また、二次圧導入室47内の圧力が低下してスプリング荷重より劣ると、ダイヤフラム40は一次圧導入室49側に変位し、弁体54が弁座56に当接し、閉弁状態となる。これにより、排水ポート52からの一次圧の排出が停止される。なお、圧力調整弁400は、常閉式の圧力調整弁である。
【0028】
つぎに、ニードル弁60および調圧機構部61に動作について図7を参照しつつ説明する。
【0029】
まず、調圧室62内の圧力Pが圧力Pa以上となると、ピストン64が図7中右側に移動し、弁体65が流入連通穴69に接し、流入連通穴69が全閉状態となるように、ばね66のばね力が設定されている。
【0030】
一次圧が一次圧導入室49内に導入されていない状態では、調圧室62内の圧力Pは外気圧(<Pa)と同等であり、ばね66は伸長し、ばね力が放勢された状態となる。これにより、弁体65が流入連通穴69から離反し、流入連通穴69が全開状態となる。
ついで、一次圧が一次圧導入室49内に導入されると、一次圧は流入連通穴69を介して調圧室62内に導入され、調圧室62内の圧力Pが上昇する。調圧室62内の圧力Pが圧力Paとなると、弁体65が流入連通穴69に接し、流入連通穴69からの一次圧の導入が停止される。
【0031】
そして、調圧室62内の一次圧が流出連通穴70を介して二次圧導入室47側に流出し、調圧室62内の圧力Pが圧力Paより低下する。すると、ばね66の反発力が圧力Pに勝り、弁体65が流入連通穴69から離反する。そこで、一次圧導入室49内の一次圧が流入連通穴69を介して調圧室62内に導入される。そして、調圧室62内の圧力Pが圧力Pa以上となると、弁体65が流入連通穴69に接し、流入連通穴69からの一次圧の導入が停止される。
【0032】
このように、調圧室62内の圧力Pに応じて弁体65による流入連通穴69の閉塞/開放動作が繰り返され、圧力Pが一次圧に拘らず圧力Paに保持される。その結果、流出連通穴70を介しての流出量が、一次圧の変動に影響されず、一定に保持される。
【0033】
ここで、流出連通穴70の流路断面積が大きすぎると、流出連通穴70を介しての二次圧導入室47への流出量が多くなり、調圧室62内の圧力Pがピストン64を動作させる圧力Paまで上昇できなくなる。そこで、調圧室62内の圧力Pが圧力Paまで上昇できるように、流出連通穴70とニードル弁60との間の隙間が予めニードル弁60により調整される。
【0034】
本発明では、調圧室62内の圧力Pは、機構上、一次圧導入室49内の圧力より低圧となる。一方、調圧機構部61が省略されている場合(以下、比較例とする)、流出連通穴70から流出する圧力は一次圧導入室49内の圧力となる。そこで、流出連通穴70から流出される流量が同じであれば、本発明は、比較例に比べて、流出連通穴70の流路断面積を大きくすることができる。このように、本発明は、比較例に対して、ニードル弁60と流出連通穴70との間の隙間を大きくできるので、異物の挟まりや生成物の生成を抑えることができる。
【0035】
また、調圧室62内の圧力Pが圧力Paより低くなると、弁体65が流入連通穴69から離反するようになっているので、異物が弁体65と流入連通穴69との間に詰まっても、弁体65が流入連通穴69から離反したときに、詰まった異物は外れる。また、流入連通穴69の流路断面積が縮小と増大を繰り返すので、生成物の生成が抑えられる。
【0036】
また、弁体65の流入連通穴69に対する接離動作は調圧室62内の圧力Pに応じて行われる。そこで、仮に生成物が弁体65の先端や流入連通穴69に生成しても、弁体65の接離動作は生成物に影響されずに行われ、調圧室62内の圧力Pを圧力Paに調圧できる。
【0037】
この圧力調整弁400は、後述するように、二次側流路3内の二次側加圧水の圧力が所定圧力に達したときに開弁し、放水の規定圧を設定する規定圧設定機構として機能する。そして、スプリング荷重を調整することで、放水の規定圧を調整できる。また、圧力調整弁400は、後述するように、作動室6b内の一次側加圧水を流入連通穴69および流出連通穴70から二次圧導入室47に流出して主弁7を閉弁させる放水停止後の主弁7の閉弁機構として機能する。
【0038】
ここで、流出連通穴70からの一次側加圧水の流出量が少なくなると、シリンダ6の作動室6b内への一次側加圧水の供給停止から自動弁100の主弁7の閉弁までの時間が長くなってしまう。流出連通穴70からの一次側加圧水の流出量が多くなると、作動室6b内の圧力が上昇せず、圧力調整弁400の規定圧設定機能に影響を及ぼしてしまう。流出連通穴70からの一次側加圧水の流出量がさらに多くなると、放水停止後、主弁7がすぐさま閉弁して、構成部品の耐久性に影響を及ぼす水撃が発生し、信頼性を低下させてしまう。
【0039】
そこで、自動弁装置の据付後、据付現場の水圧などの状況を考慮し、スプリング荷重およびニードル弁60と流出連通穴70との間の隙間が、圧力調整用ボルト45およびニードル弁60により、要求仕様を満足するように調整される。また、圧力Paは、ニードル弁60と流出連通穴70との間の隙間、主弁7の閉弁時間などに基づいて、設定される。なお、圧力Paは、放水停止時の作動室6b内の一次側加圧水の圧力より低い。
【0040】
つぎに、配管系統について説明する。
第1配管30は、一端が起動弁200を介して自動弁100の一次側流路2に接続され、他端が自動弁100の作動室6bに接続されている。そして、第2配管31は、一端が自動弁100の二次側流路3に接続され、他端が圧力調整弁400の二次圧導入室47に接続されている。また、第3配管32は、第1配管30から分岐し、圧力調整弁400の一次圧導入ポート50に接続されている。なお、第3配管32は、第1配管30を介さず、作動室6bに直接接続してもよい。
【0041】
つぎに、このように構成された自動弁装置の動作について図1乃至図4を参照しつつ説明する。図2はこの発明に係る自動弁装置における放水時の2次側圧力の上昇動作を説明する図、図3はこの発明に係る自動弁装置における放水時の2次側圧力の低下動作を説明する図、図4はこの発明に係る自動弁装置における放水停止動作を説明する図である。
【0042】
まず、監視状態では、図1に示されるように、制水弁25が操作ハンドル26を操作して開放され、止め弁17が開放され、自動排水弁21が大気圧により開放され、ボール弁22が閉止される。
【0043】
ついで、パイロット弁18または手動起動弁19が開放されると、主配管(図示せず)から一次側流路2内に供給された一次側加圧水が、第1配管30および第3配管32を介して一次圧導入室49内に流入、充水される。そして、一次圧導入室49に充水された一次側加圧水が流入連通穴69から調圧室62内に流入、充水される。
【0044】
また、パイロット弁18または手動起動弁19の開放と同時に、一次側加圧水が、第1配管30を介して作動室6b内に流入、充水される。これにより、作動室6b内の圧力が上昇し、ピストン9が図1中左側に移動する。このピストン9の移動力がステム11を介して主弁7に伝達され、主弁7がスプリング8の付勢力に抗して図1中左側に移動する。そして、主弁7が弁座4aから離反し、一次側加圧水が、一次側流路2内から二次側流路3内に流入する。そして、図2に示されるように、一次側加圧水が二次側流路3に充水され、二次側加圧水となって二次側配管15を流通し、放水ヘッド16から放水される。
【0045】
二次側流路3内の二次側加圧水は、自動排水弁21を閉止させるとともに、第2配管31を介して圧力調整弁400の二次圧導入室47に供給される。そして、二次側流路3内の二次側加圧水の圧力が上昇し、二次圧導入室47内の圧力が所定圧力より高くなると、圧力調整弁400が開弁される。これにより、第1配管30を介して自動弁100の作動室6b内に供給される一次側加圧水は、図3に示されるように、第3配管32および一次圧導入室49を介して圧力調整弁400の排水ポート52から排水される。そこで、作動室6b内の圧力が低下し、ピストン9が、図3中右側に移動し、主弁7の開度が小さくなる。
【0046】
ついで、主弁7の開度が小さくなり、一次側流路2内から二次側流路3内に流入する一次側加圧水の流量が少なくなる。そして、二次側流路3内の二次側加圧水の圧力が低下し、二次圧導入室47内の圧力が所定圧力より低くなると、圧力調整弁400が図2に示されるように閉弁される。これにより、一次側加圧水が、第1配管30を介して自動弁100の作動室6b内に供給され、作動室6b内の圧力が上昇し、ピストン9が、図2中左側に移動し、主弁7の開度が大きくなる。このように、圧力調整弁400の開弁/閉弁動作が繰り返され、二次側加圧水の圧力が所定圧力に調整される。そして、所定圧力に調整された二次側加圧水が放水ヘッド16から放水される。
【0047】
放水ヘッド16からの放水が終了し、パイロット弁18および手動起動弁19が閉弁されると、第1配管30を介して自動弁100の作動室6bへの一次側加圧水の供給がなくなる。そして、作動室6bおよび第1配管30内の一次側加圧水が、図4に矢印で示されるように、第3配管32、一次圧導入室49および流入連通穴69から調圧室62に入り、調圧機構部61により圧力Paに調圧されて、流出連通穴70を通って二次圧導入室47に流出する。これにより、作動室6b内の一次側加圧水の圧力が徐々に低下して圧力Paより低くなると、弁体65が流入連通穴69から離反する。そこで、作動室6b内の一次側加圧水は、調圧機構部61により圧力Paに調圧されることなく、第3配管32、一次圧導入室49、流入連通穴69、調圧室62、および流出連通穴70を通って二次圧導入室47に流出し、作動室6b内の一次側加圧水の圧力がさらに低下する。そして、スプリング8の付勢力が作動室6b内の一次側加圧水の圧力に勝り、主弁7が閉弁される。
【0048】
主弁7が閉弁されると、自動排水弁21が開放され、二次側配管15、二次側流路3および二次圧導入室47内の残水が第2配管31を介して自動排水弁21から排水される。
【0049】
ついで、自動弁100の開閉動作の確認や圧力調整弁400の設定確認を行う場合、操作ハンドル26を操作して制水弁25が閉止される。この時、自動排水弁21は大気圧により開放され、ボール弁22が閉止される。そして、起動弁200を操作し、主弁7を開閉して、自動弁100の開閉動作の確認や圧力調整弁400の設定確認を行う。
【0050】
このように構成された自動弁装置では、ニードル弁60を圧力調整弁400の一次圧導入室49と二次圧導入室47とを連通する連通路51に配設し、さらに調圧機構部61を連通路51のニードル弁60の一次圧導入室49側に配設して、放水停止後の主弁7の閉弁機構を構成している。そして、調圧機構部61は、調圧室62内の圧力Pが圧力Pa以上となると弁体65が流入連通穴69に接して流入連通穴69を閉塞し、圧力Paより低くなると弁体65が流入連通穴69から離反して流入連通穴69を開放して、調圧室62内の圧力Pを圧力Paに調圧するように構成されている。
【0051】
そこで、生成物が弁体65や流入連通穴69に生成されにくい。仮に、生成物が弁体65や流入連通穴69に生成されても、調圧機構部61の調圧動作は生成物に影響されない。また、異物が弁体65と流入連通穴69との間に詰まっても、弁体65が流入連通穴69から離反するときに、詰まっていた異物が外れる。したがって、異物の挟まりや生成物の生成により、主弁7の閉弁時間が長くなる、あるいは主弁7が閉じられなくなるという不具合の発生が未然に回避され、長期的に安定した動作を実現できる。
【0052】
調圧機構部61がニードル弁60の前段に配設されているので、作動室6b内の一次側加圧水の圧力変動に拘らず、圧力Paに調圧された一次側加圧水がニードル弁60により絞られて流出される。そこで、放水停止後の主弁7の閉弁時間を高精度に管理することができる。また、ニードル弁60による絞りを調整し、現場にて、水圧などの状況を考慮して、放水停止後の主弁7の閉弁時間を設定できる。
また、圧力調整用ボルト45がスプリングケース42に取り付けられ、スプリング43の長さ、即ちスプリング荷重を調整可能になっているので、現場毎に、放水の規定圧を設定できる。
【0053】
なお、上記実施の形態では、低圧放水を行わない自動弁装置を例にあげて説明しているが、規定圧放水前に低圧放水を行う自動弁装置にも本発明を適用することができる。
また、上記実施の形態では、シリンダ、シリンダ内に摺動可能に配設されたピストン、およびばねを用いて弁体駆動手段を構成するものとしているが、弁体駆動手段はこれに限定されるものではなく、ダイヤフラムおよびばねを用いて構成してもよい。
【0054】
また、上記実施の形態では、圧力調整弁は、調圧機構部を内蔵するものとして説明しているが、圧力調整弁と調圧機構部とを配管で接続するような別体の形態も、本発明の圧力調整弁に含まれる。なお、ニードル弁についても同様であり、圧力調整弁とニードル弁とが別体である形態も、本発明の圧力調整弁に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 胴体部、2 一次側流路、3 二次側流路、4a 弁座、6 シリンダ、6b 作動室、7 主弁、8 スプリング(付勢手段)、9 ピストン、18 パイロット弁(起動弁)、19 手動起動弁(起動弁)、30 第1配管、31 第2配管、32 第3配管、40 ダイヤフラム(弁駆動機構)、42 スプリングケース(弁駆動機構)、43 スプリング(弁駆動機構)、46 弁ボディ、47 二次圧導入室、48 二次圧導入ポート、49 一次圧導入室、50 一次圧導入ポート、51 連通路、60 ニードル弁、61 調圧機構部、62 調圧室、63 シリンダ(弁体駆動手段)、64 ピストン(弁体駆動手段)、65 弁体、66 ばね(弁体駆動手段)、69 流入連通穴、70 流出連通穴、100 自動弁、200 起動弁、400 圧力調整弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連通孔を有する隔離壁により仕切られた一次側流路と二次側流路とを有する胴体部、上記一次側流路側から上記連通孔を開閉する主弁、上記二次側流路を介して上記連通孔に対向するように上記胴体部に突設された筒状のシリンダ、および上記シリンダ内に摺動可能に配設され、該シリンダ内の上記二次側流路と反対側に画成される作動室内の圧力に応じて上記主弁を開閉駆動するピストンを有する自動弁と、
一次圧導入室、二次圧導入室、上記一次圧導入室を大気に開閉する弁部、上記一次圧導入室と上記二次圧導入室とを連通する連通路、上記連通路に配設されて流路を絞るニードル弁、上記連通路の上記ニードル弁の上記一次圧導入室側に配設された調圧機構部、および上記二次圧導入室内の圧力に応じて上記弁部を開閉させる弁駆動機構を有する圧力調整弁と、
上記一次側流路と上記作動室とを連通する第1配管と、
上記第1配管の経路中に配設され、一次側加圧水の上記作動室への供給を制御する起動弁と、
上記二次側流路と上記二次圧導入室とを連通する第2配管と、
上記作動室と上記一次圧導入室とを連通する第3配管と、を備え、
上記圧力調整弁は、
上記起動弁の開弁状態では、上記二次側流路から上記第2配管を介して供給される上記二次圧導入室内の二次側加圧水の圧力に応じて上記弁部を開閉させて、上記二次圧導入室内の二次側加圧水の圧力が所定圧力となるように上記主弁の開度を制御し、
上記起動弁が閉弁されると、上記作動室内の一次側加圧水を上記第3配管、上記一次圧導入室、上記調圧機構部、および上記ニードル弁を介して上記二次圧導入室に流出させて上記作動室内の一次側加圧水の圧力を下げ、上記主弁を閉じるように構成され、
上記調圧機構部は、
流入連通穴を介して上記一次圧導入室に連通する調圧室、上記流入連通穴に接離可能に配設された弁体、および上記調圧室内の圧力が設定圧力となると上記弁体を上記流入連通穴に接しさせ、該調圧室内の圧力が設定圧力より低くなると該弁体を上記流入連通穴から離反させるように該弁体を駆動する弁体駆動手段を有し、上記流入連通穴を介して上記調圧室に導入された上記一次側加圧水を上記設定圧力に調圧して上記ニードル弁側に流出するように構成されていることを特徴とする自動弁装置。
【請求項2】
一次圧導入室と、二次圧導入室と、上記一次圧導入室を大気に開閉する弁部と、上記一次圧導入室と上記二次圧導入室とを連通する連通路と、上記連通路に配設されて流路を絞るニードル弁と、上記連通路の上記ニードル弁の一次圧導入室側に配設された調圧機構部と、上記二次圧導入室内の圧力に応じて上記弁部を開閉させる弁駆動機構と、を備え、
上記調圧機構部は、
流入連通穴を介して上記一次圧導入室に連通する調圧室、上記流入連通穴に接離可能に配設された弁体、および上記調圧室内の圧力が設定圧力となると上記弁体を上記流入連通穴に接しさせ、該調圧室内の圧力が設定圧力より低くなると該弁体を上記流入連通穴から離反させるように該弁体を駆動する弁体駆動手段を有し、
上記流入連通穴を介して上記調圧室に導入された上記一次圧を上記設定圧力に調圧して上記ニードル弁側に流出するように構成されていることを特徴とする圧力調整弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−210380(P2012−210380A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78515(P2011−78515)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】