説明

自動的に作動される少なくとも1つのクラッチを有するトランスミッションを有する自動車のドライブトレインの内燃機関を制御するための方法

【課題】 自動的に作動される少なくとも1つのクラッチを備えるトランスミッションを有する自動車のドライブトレインの内燃機関を制御するための方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、自動的に作動される少なくとも1つのクラッチK1、K2を有するトランスミッション(14)を有する自動車のドライブトレイン(10)の内燃機関(12)を制御するための方法であって、内燃機関(12)の回転速度nMotが、トランスミッション(14)の変速比の変更中に、変速比の変更後に設定される目標値n_zielに調整され、目標値n_zielを達成するために内燃機関によって付与されるべきトルクの基本値MBが、認識されたトルク損失の関数として形成されかつ調整介入によって補正される方法を提供する。本方法は、基本値MBの形成の際に、変速比の変更中に生じる内燃機関(12)の回転力の変更に必要なトルク損失の寄与M(J、dn)が考慮されることを特徴とする。1つの独立請求項は、本方法を実施するように設定される制御ユニットを目的としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による方法に関する。前記種類の方法は、自動的に作動される少なくとも1つのクラッチを有するトランスミッションを有する自動車のドライブトレインの内燃機関を制御するために使用される。前記方法では、内燃機関の回転速度は、トランスミッションの変速比の変更中、変速比の変更後に設定される目標値に調整される。前記公知の目標回転速度の調整は、目標値を達成するために内燃機関によって付与されるべきトルクの基本値が、既知のトルク損失の関数として形成され、調整介入によって補正されることを特徴とする。本発明はまた、本方法を実施するように設定される制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
前記種類の方法及び前記種類の制御ユニットの各々は、大量生産される自動車から公知である。
【0003】
自動車では、トランスミッションは、公知の方法において、内燃機関の回転速度を走行速度に適合させるために使用される。それに応じて、ギヤシフトとも称されるトランスミッションの変速比を変更する場合、内燃機関の回転速度の変更が行われる。
【0004】
公知の方法では、変更された変速比を考慮してシフト過程後に設定されるであろう以下に目標回転速度とも称される内燃機関の回転速度は、高速の(迅速な)ギヤシフトの場合にもシフト過程を可能な限り滑らかにすることができるようにするために、シフト過程中に既に調整されている。
【0005】
この場合、エンジン回転速度をその目標値に調整することが、内燃機関の空気通路及び/又は点火通路への介入によって行われる。現在のエンジン制御器は、運転者によるトルク要求、又はドライブトレインのいくつかの機能に基づいて内燃機関を制御する。前記機能はまた回転速度の調整を含む。
【0006】
この場合、目標回転速度からの実際の回転速度の偏差はエンジン制御ユニットでトルク要求に変換され、次に、このトルク要求が、空気通路及び/又は点火通路の作動変数を形成するために処理される。同時に、エンジン制御ユニットは、内燃機関によって発生された実際のトルクを計算し、前記実際のトルクと、トルク要求の和として発生された基準値とを比較し、適切ならば、実際のトルクがトルク要求の和と整合されるように作動変数を補正する。
【0007】
パイロット制御(pilot control)によって、調整過程を加速できることが知られている。パイロット制御は、極めて一般的には、認識された(既知の)外乱変数がアクチュエータ作動の基本値により既に考慮されていることを特徴とする。前記基本値がより適切であれば、それだけ、調整により補償する必要がある偏差が小さくなる。
【0008】
公知の目標回転速度の調整では、内燃機関のエンジンブレーキトルク(drag torque)と現在のクラッチトルクとがパイロット制御で既に考慮されている。この場合、内燃機関のエンジンブレーキトルク(drag torque)は、シリンダ充填の燃焼によるトルクと、クラッチで最終的に利用可能な内燃機関のトルクとの差を意味すると理解すべきである。したがって、エンジンブレーキトルク(drag torque)は、摩擦、ガス交換、補助ユニットの駆動等の結果として内燃機関の運転に生じるすべての損失の和を表す。前記エンジンブレーキトルク(drag torque)の値は、内燃機関の回転速度及び他のエンジンパラメータに関係する。
【0009】
現在のクラッチトルクは、クラッチの現在の状態で伝達できるトルクの値である。クラッチがスリップしているとき、現在のクラッチトルクの値は、実際に伝達できるトルクに一致する。伝達可能なクラッチトルクの値は摩擦面の接触圧及び形状に関係する。摩擦面に作用する接触圧が大きくなり、摩擦面の半径が大きくなると、それだけ、伝達できるクラッチトルクが大きくなる。この場合、接触圧は、制御ユニットで認識される変数に関係する。このような変数の例は、クラッチが作動される油圧、又はクラッチ作動装置の機械的な作動レバーの偏位であり、この偏位は作動信号及び/又は行程変換器の信号から形成される。伝達可能なクラッチトルクは、公知のドライブトレイン制御器で計算され、内燃機関の制御におけるトルク要求として考慮される。
【0010】
高速の(迅速な)ギヤシフトは、特に二重クラッチトランスミッションで可能である。二重クラッチトランスミッションは、2つの部分トランスミッション及び2つのクラッチを有する。前記二重クラッチトランスミッションにより、2つのクラッチの一方を閉じ、同時に2つのクラッチの他方を開くことによって、実質的に牽引力の中断がないシフト過程が可能になる。
【0011】
高速の(迅速な)ギヤシフト中にエンジン回転速度を目標回転速度に相応して迅速に調整できるようにするために、公知の目標回転速度の調整の改良が望ましい。そして、このような改良は、二重クラッチトランスミッションを有するドライブトレインにおいてのみでなく、むしろ極めて一般的に、自動的に作動されるクラッチを有するドライブトレインにおいて利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許DE199 62 963A1号公報
【特許文献2】独国特許DE42 09 091A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この背景に対して、本発明の目的は、公知の目標回転速度の調整を改良する方法及び制御ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的は、各々の場合に独立請求項の特徴によって達成される。
【0015】
本発明は、変速比の変更中に行われる内燃機関の回転力の変更に必要なトルクが、目標値を達成するために内燃機関によって付与されるべきトルクの基本値を形成する際にトルク損失の寄与として既に考慮されていることを特徴とする。その結果、内燃機関がその慣性モーメントのために回転速度の変化に反応する抵抗トルクは、パイロット制御で既に考慮されている。これによって、調整に対する負担が低減される。
【0016】
エンジンの慣性は公知のパイロット制御で無視されるので、公知の方法では、調整段階の開始時に比較的大きな調整介入が生じる。このことは、調整介入の低減のために比較的長い時間が必要となり、また調整段階の終了時に回転速度がオーバシュート又はアンダシュートするというさらなる結果をもたらすことが多い。
【0017】
対照的に、本発明では、調整により生じる調整介入が低減され、これにより、同様に、望ましくない調整振動の傾向が低減され、全体的により迅速な目標回転速度の設定が可能になる。このようにして、また、以前よりも滑らかに非常に迅速なシフト過程が行われることが可能であり、これにより、快適性が向上しかつ摩耗が低減される。
【0018】
さらなる利点は、従属請求項から、詳細な説明から及び添付図から理解することができる。
【0019】
上述の特徴及びなお以下に説明する特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ指定された組み合せにおいてのみでなく、他の組み合せにおいても、あるいは単独でも利用できることが明らかである。
【0020】
本発明の例示的な実施形態が図面に示され、次の説明においてより詳細に説明される。図面は、各々の場合に概略図で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の技術的環境の図面である。
【図2】シフト過程中の内燃機関の回転速度の時間的推移の図面である。
【図3】信号フローチャートの形態の本発明の例示的な実施形態の図面である。
【図4】フローチャートの形態の本発明の例示的な実施形態の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、自動車のドライブトレイン10を詳細に示している。ドライブトレイン10は、内燃機関12と、二重クラッチトランスミッション14と、自動車の駆動輪16、18と内燃機関12との間で出力を伝達するための別のトランスミッション及び/又はシャフトとを有する。二重クラッチトランスミッションは、典型的に、自動的に作動されるクラッチと接続して操作される。
【0023】
しかし、本発明は、二重クラッチトランスミッションの使用に限定されず、自動化されたシフトトランスミッションを有するドライブトレインに、あるいはより一般的には、自動車の駆動エンジンとトランスミッションとの間でトルクを伝達し、かつトルクの流れを制御する自動的に作動される任意のクラッチに使用してもよい。
【0024】
図1では、シャフト20は、二重クラッチトランスミッション14とディファレンシャルギヤ22との間で出力を伝達するために使用され、一方、駆動シャフト24、26は、ディファレンシャルギヤ22と2つの駆動輪16、18との間で出力を伝達する。上記の種類の構成は、前部装着エンジン及び後輪駆動装置を有する自動車に典型的である。
【0025】
しかし、本発明は、図示したドライブトレイン10での使用に限定されず、前輪駆動装置、全輪駆動装置又はトランスアクスル構造の後輪駆動装置を有するドライブトレインに使用してもよい。
【0026】
二重クラッチトランスミッション14は、第1の部分トランスミッションTG1及び第2の部分トランスミッションTG2を有する。第1の部分トランスミッションTG1のインプットシャフト28と内燃機関12のクランクシャフト30との間のトルクの流れは、制御可能な第1のクラッチK1を介して行われる。第2の部分トランスミッションTG2のインプットシャフト32と内燃機関12のクランクシャフト30との間のトルクの流れは、制御可能な第2のクラッチK2を介して行われる。一改良形態では、第1の部分トランスミッションTG1は、1速ギヤ、3速ギヤ等のような奇数の変速比段(ギヤ)を提供し、一方、第2の部分トランスミッションTG2は、2速ギヤ、4速ギヤ等のような偶数の変速比段(ギヤ)を提供する。
【0027】
第1の部分トランスミッションTG1の主軸34及び第2の部分トランスミッションTG2の主軸36の両方は、シャフト20に回転するように固定して結合される。したがって、シャフト34と36は同一の回転速度で回転し、この回転速度は、自動車が駆動輪16、18のスリップなしに直線走行しているときに、駆動輪16、18の回転速度に線形的に関係(依存)し、したがって、車両の走行速度vに線形的に関係(依存)する。図1の概略図では、シャフト34と36のトルクが接合部38に加えられて、シャフト20で作用するトルクを形成する。
【0028】
図1の実施形態では、制御ユニット40は、ドライブトレイン10全体、すなわち、内燃機関12及び二重クラッチトランスミッション14を制御する。単一の制御ユニット40の代わりに、複数の制御ユニットの組み合せを使用することも可能であり、これらの制御ユニットそれら自体は、ドライブトレイン10への制御ユニットの個々の作動介入を調整するために、中央制御ユニットによって調整され得るか又はバスシステムを介して互いに通信し得ることが明らかである。
【0029】
ドライブトレイン10を制御するために、制御ユニット40は、ドライブトレイン10の動作パラメータを表す複数のセンサからの信号を処理する。この場合、本発明との関連において、以下の動作パラメータ、すなわち、運転者要求変換器42によって提供されかつ運転者によるトルク要求を表すスロットルペダル角度Wped、回転速度センサ43によって測定される内燃機関12のクランクシャフト30の回転速度nMot、及び走行速度変換器44によって測定される走行速度v、が特に重要である。一改良形態では、走行速度変換器44は、二重クラッチトランスミッション14の出力における回転速度、すなわちシャフト34、36又は20の1つの回転速度を測定する回転速度センサとして実現される。代わりに又は追加して、例えばアンチロックブレーキシステムのセンサ装置によって、車輪16、18の1つ以上で回転速度信号が測定される。
【0030】
部分トランスミッションTG1とTG2に各々の場合に設定される変速比がわかれば、第1の部分トランスミッションTG1のインプットシャフト28の回転速度nK1、及び第2の部分トランスミッションTG2のインプットシャフト32の回転速度nK2が、各々の場合に走行速度vの一次(線形)関数として決定される。
【0031】
制御ユニット40は、ドライブトレイン10の前記動作パラメータの関数として、適切ならば、別の動作パラメータの関数として、特に内燃機関12の動作パラメータの関数として、作動信号S_Mot、S_K1、S_K2、S_TG1及びS_TG2を形成する。この場合、作動信号S_Motは、内燃機関12のトルクを設定するように機能する。作動信号S_TG1は、第1の部分トランスミッションTG1のギヤを係合し、したがってその変速比を設定するように機能する。同様に、作動信号S_TG2は、第2の部分トランスミッションTG2の変速比を設定するように機能する。第1のクラッチK1を介したトルクの流れは、作動信号S_K1によって制御される。同様に、第2のクラッチK2を介したトルクの流れは、作動信号S_K2によって制御される。
【0032】
作動信号S_K1、S_K2と、所定の回転速度差で2つのクラッチK1、K2の各々を介してそれぞれ伝達されるトルクとの関係は、特性曲線又は特性マップの形態で制御ユニット40に記憶されることが好ましい。これは従来技術である。回転速度差は、回転速度値nMot及びnK1、nK2の評価から同様に制御ユニット40で認識される。また、制御ユニット40によって内燃機関12の運転特性変数から連続的に計算されるエンジントルクが認識されるが、この理由は、現在のエンジン制御器では、すべての作動変数が、例えば空気質量流、点火時間及びエンジンパラメータの関数として決定されるトルク要求に基づき決定されるからである。
【0033】
制御ユニット40は、クラッチK1、K2の各々における回転速度差の符号から、各々の場合に伝達されるトルクの方向を決定し、また最終的にクラッチの摩擦面の接触圧で表される作動信号S_K1、S_K2から、2つのクラッチK1、K2の各々を介して伝達されるトルクの値を決定する。
【0034】
したがって、制御ユニット40は、2つのクラッチK1、K2を介してトルクの流れを制御して分配し、これによって、結果として生じるトルクの流れ全体の方向及び大きさを制御する。
【0035】
その他の点で、本発明による方法又はその改良形態の1つを実施するために、制御ユニット40又は制御ユニットの対応する組み合せが設定され、特にプログラミングされる。この場合、「実施する」とは、ここに記載した方法過程の制御を意味する。
【0036】
図2は、比較的高いギヤから比較的低いギヤへのシフト過程中の内燃機関12の回転速度nMotの時間的推移を示している。この場合、ドライブトレイン10は、時間t1の前に、回転速度n_startで比較的高いギヤで操作され、時間t2の後に、目標回転速度n_zielで操作される。シフト過程は、時間t1とt2の間の時間tsynで実施される。この場合、時間tsynは制御ユニット40によって予め設定される。一改良形態では、制御ユニット40は、シフト過程が特に迅速に又は特に快適に行われるべきかどうかに応じて、比較的短い又は長い時間tsynを予め設定する。
【0037】
前記時間tsyn内で、内燃機関12の回転速度nMotは、スリップクラッチ又は開放クラッチK1及び/又はK2の際の現在値n_startから目標値n_zielに調整される。
【0038】
この場合、時間tsyn中の回転速度nMotの推移が単に概略的に示されているに過ぎないこと、及び実際の推移が図示した傾斜状の推移とは異なってもよいことは明らかである。常に、顕著な回転速度振動なしにエンジン回転速度の増加を行うこと、及び特に時間t2でエンジン回転速度nMotが連続的に目標回転速度n_zielに近づく(接合する)ことが求められる。
【0039】
図3は、信号フローチャートの形態の本発明の例示的な実施形態を示している。ブロック46は、意図するギヤシフトの目標回転速度n_zielを予め設定する制御ユニット40の機能を示している。制御ユニット40、又は複数の制御ユニットからなる制御ユニットの組み合せ40は、基本的に、所定の制御プログラムに従って、ギヤシフトが行われるべきかどうかを決定する。当該決定は、内燃機関12におけるトルク要求の和が、特に運転者による推進要求が、現在のエンジン回転速度で提供されることができるか、又は異なるギヤによって決定される異なるエンジン回転速度でより有効に提供されるかどうかに応じて、実質的に行われる。
【0040】
シフト過程が実施された場合、ブロック46は、時間t1から、内燃機関12の回転速度nMotの引き続く調整のための基準値として目標回転速度n_zielを出力する。ブロック48では、内燃機関12の現在の回転速度nMotは、回転速度センサ43によって測定されるように、前記基準値n_zielから差し引かれる。前記差dnは調整偏差として回転速度調整器50に供給され、この調整器は、前記差dnから、予め設定された特性に従って調整介入MRを形成する。前記調整介入MRはトルク値として形成されることが好ましい。
【0041】
調整介入MRの生成と同時に、目標回転速度n_zielがブロック52に供給され、このブロックで、シフト過程中に生じる内燃機関12の回転力の変更に必要なトルク損失の寄与M(J、dn)が決定される。ブロック54は、既知の現在のクラッチトルクMKの決定を示し、ブロック55は、目標回転速度n_zielにおける内燃機関12のエンジンブレーキトルク(drag torque)MSの値の形成を示している。
【0042】
ブロック56では、トルク値MK、MS(n_ziel)及びM(J、dn)が加算されて、目標値n_zielを達成するために内燃機関12によって付与されるべきトルクの基本値MBを形成する。
【0043】
このように、前記基本値MBはパイロット制御値を構成し、この制御値の形成において、変速比の変更中に行われる内燃機関12の回転力の変更に必要なトルク損失の寄与M(J、dn)が考慮される。調整介入MRは相応して小さくかつ比較的遅くてもよく、これにより、望ましくない調整振動の傾向が著しく低減される。
【0044】
調整介入MRと基本値MBとの和は、ブロック60で引き続き処理され、内燃機関12の空気通路及び/又は点火通路の作動変数S_Motを形成する。内燃機関12は、内燃機関の回転速度nMotの変化を伴う結果として生じる作動変数に反応し、この変化は回転速度センサ43によって測定される。回転速度センサ43によって測定されたエンジン回転速度nMotをブロック48にフィードバックすることにより、調整ループが閉じられる。
【0045】
図4は、制御ユニット40で実行される制御プログラムのフローチャートとしての本発明による方法の例示的な実施形態を示している。この場合、ステップ62は、ドライブトレイン10を制御するためのメインプログラムHPを示しており、このメインプログラムHPで、本出願に記載した作動変数が形成される。ステップ64では、シフト過程が行われるべきかどうかがチェックされる。前記質問が否定で応答された場合、メインプログラムHPが継続され、トランスミッション14で現在設定されている変速比が維持される。
【0046】
対照的に、ステップ64の質問が肯定で応答された場合、プログラムはステップ66に分岐し、このステップ66において、トランスミッション14で設定されるべき新たな変速比について内燃機関12の新たな目標回転速度n_zielが決定される。新たな目標回転速度n_zielは、走行速度vと、及び駆動輪16、18と内燃機関12との間に生じかつ制御ユニット40で認識される変速比の和によって規定される。
【0047】
次に、ステップ68で、目標回転速度n_zielと実際の回転速度n_istとの差、dn=n_ziel−n_istが形成される。さらに、ステップ70で、目標回転速度n_zielの調整に利用可能な時間tsynが決定される。
【0048】
次に、ステップ72で、商dn/tsynが計算される。ステップ74で、前記商dn/tsynと、制御ユニット40に記憶される内燃機関12のほぼ一定の慣性値Jとから、トルク損失の寄与M(J、dn)が計算される。次に、メインプログラムHPが前記トルク損失の寄与M(J、dn)を考慮して再び実行される。この場合、トルク損失の寄与M(J、dn)が、好ましくは図4に示した概略図に従って考慮される。
【符号の説明】
【0049】
10 ドライブトレイン
12 内燃機関
14 トランスミッション
28 インプットシャフト
32 インプットシャフト
40 制御ユニット
42 運転者要求変換器
43 回転速度センサ
44 走行速度変換器
50 回転速度調整器
K1、K2 クラッチ
nMot 回転速度
n_ziel 目標値
n_start 現在値
MB 基本値
MR 調整介入
M(J、dn) トルク損失の寄与
Wped スロットルペダル角度
v 走行速度
nK1 回転速度
nK2 回転速度
TG1 第1の部分トランスミッション
TG2 第2の部分トランスミッション
tsyn シフト過程が行われるべき時間
dn 差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動的に作動される少なくとも1つのクラッチ(K1、K2)を備えるトランスミッション(14)を有する自動車のドライブトレイン(10)の内燃機関(12)を制御するための方法であって、前記内燃機関(12)の回転速度(nMot)が、前記トランスミッション(14)の変速比の変更中に、前記変速比の変更後に設定される目標値(n_ziel)に調整され、前記目標値(n_ziel)を達成するために前記内燃機関によって付与されるべきトルクの基本値(MB)が、既知のトルク損失の関数として形成されかつ調整介入(MR)によって補正される方法において、前記基本値(MB)の形成の際に、前記変速比の変更中に行われる前記内燃機関(12)の回転力の変更に必要なトルク損失の寄与(M(J、dn))が考慮される方法。
【請求項2】
前記ドライブトレイン(10)を制御するために、前記ドライブトレイン(10)の動作パラメータを表す複数のセンサからの信号、特に、以下の動作パラメータ、すなわち、運転者要求変換器(42)によって提供されかつ運転者によるトルク要求を表すスロットルペダル角度(Wped)と、回転速度センサ(43)によって測定される回転速度(nMot)と、走行速度変換器(44)によって測定される走行速度(v)とを表す信号が処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
制御ユニット(40)が、第1の部分トランスミッション(TG1)のインプットシャフト(28)の回転速度(nK1)と、第2の部分トランスミッション(TG2)のインプットシャフト(32)の回転速度(nK2)とを各々の場合に前記走行速度(v)の一次関数として決定する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記制御ユニット(40)が、シフト過程が行われるべき時間(tsyn)を予め設定する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記内燃機関(12)の回転速度(nMot)が、前記時間(tsyn)内にスリップクラッチ(K1)及び/又は(K2)の場合の現在値(n_start)から目標値(n_ziel)に調整される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記エンジン回転速度(nMot)が、顕著な回転速度振動なしに、連続的にかつ単調な傾斜挙動で目標回転速度に適合されるように前記調整が行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
シフト過程中、最初に目標回転速度(n_ziel)が、前記内燃機関12の回転速度(nMot)の引き続く調整のための基準値として出力され、前記内燃機関(12)の現在の回転速度(nMot)が前記基準値(n_ziel)から差し引かれ、当該差(dn)が調整偏差として回転速度調整器(50)に供給され、回転速度調整器(50)が前記差(dn)から、予め設定された特性に従ってトルク値として調整介入(MR)を形成する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記調整介入(MR)の生成と同時に、シフト過程中に行われる前記内燃機関(12)の回転力の変更に必要なトルク損失の寄与(M(J、dn))が決定され、前記目標値(n_ziel)を達成するために内燃機関(12)によって付与されるべきトルクの基本値(MB)が、前記トルク損失の寄与の関数として形成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
自動的に作動されるクラッチ(K1、K2)を有するトランスミッション(14)を備える自動車のドライブトレイン(10)の内燃機関(12)を制御するように設定される制御ユニット(40)であって、前記制御ユニット(40)が、前記トランスミッション(14)の変速比の変更中に前記内燃機関(12)の回転速度(nMot)を前記変速比の変更後に設定される目標値(n_ziel)に調整するように設定され、このために、前記目標値(n_ziel)を達成するために前記内燃機関(12)によって付与されるべきトルクの基本値(MB)を形成するように設定され、かつ調整介入(MR)によって前記基本値(MB)を補正するように設定される制御ユニットにおいて、制御ユニット(40)が、前記基本値(MB)の形成の際に、前記変速比の変更中に生じる内燃機関(12)の回転力の変更に必要なトルク損失の寄与(M(J、dn))を考慮するように設定される、制御ユニット。
【請求項10】
前記制御ユニットが、請求項2乃至8のいずれか1項に記載の方法を実施するように設定される請求項9に記載の制御ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−65683(P2010−65683A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196513(P2009−196513)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】