説明

自動走行制御装置

【課題】運転者の自動走行運転への適正な関わりを検出するとともに、運転者の自動走行運転に対する監視放棄を抑制することのできる自動走行制御装置を提供すること。
【解決手段】自動走行制御中の第1所定時間経過後に(S1)、車速を自動走行制御に基づく目標車速から運転監視確認用車速に減速させ(S2、S3)、所定期間内に運転者の反応が検出されなかった場合には(S4〜S9)、運転者への警告を発するとともに自動走行制御を停止する(S10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行制御装置に係り、詳しくは自動的に車両を運転する自動走行制御実行中において運転者の運転への適正な関わりを確認する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者の負担軽減等を目的として、運転者が任意に指定した車速を保って自動的に走行を行ういわゆるオートクルーズ機能を備えた車両が開発されている。また、当該オートクルーズ機能に加えて、自車両前方に前走車がある場合には、当該前走車と自車両との車間距離を保つよう車速を調整する車間距離維持機能を備えた車両も開発されている。
【0003】
一方で、このようなオートクルーズ機能や車間距離維持機能を用いた自動走行運転が長時間に亘って行われると、運転者が直接行う動作が少なくなるために運転者の注意力が低下する傾向にある。これにより、居眠り運転を招いたり、緊急時の対処が遅れる等の問題が生じる。
そこで運転者の集中力や注意力を推定する技術が開発されており、例えば運転者による運転操作の反応を検出することで運転者の集中力を推定する技術がある。具体的には、運転者の運転操作の時系列データを記憶しておき、車間距離に応じて、運転者が理想とする追従操作と実際の追従操作からの反応強度または反応時間から運転者の集中力を判定する技術がある(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、自動走行運転中にはオートクルーズ機能により車速は一定に保持され、車間距離維持機能によって前走車への追従操作も自動的に行われる。このため、運転者による運転操作はほとんど行われず、運転操作状況から運転者の注意力を正確に判定することはできない。
また、運転者の集中力や注意力を推定する方法の他の例として、運転者の覚醒度を測定する方法も提案されているが、単調な走行状況において、運転者が運転以外のこと(会話、食事等)に集中するケースも生じる。このような場合、運転者の覚醒度は高いため運転者の集中力や注意力を推定する方法では、運転者が自動走行運転を監視しているか否かを把握することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−92285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、自動走行運転により車両を走行させている場合であっても、運転者には運転が適正であるか否かを監視・監督する責任があるところ、上記従来技術では、運転者による自動走行運転の適正な監視の有無を判断することができない。このため、上記従来技術では、自動走行運転に対する適正な監視がなされていない場合に運転者に注意喚起することもできないという問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、運転者の自動走行運転への適正な関わりを検出するとともに、運転者の自動走行運転に対する監視放棄を抑制することのできる自動走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1の自動走行制御装置では、車両の車速を自動的に調整する自動走行制御を行う自動走行制御装置であって、前記自動走行制御における目標車速を設定する目標車速設定手段と、前記自動走行制御中の所定の時期に、車速を前記目標車速設定手段により設定された目標車速と異なる速度に変化させる車速変化手段と、前記車速変化手段による車速変化に対する運転者の反応を検出する運転者反応検出手段と、前記車速変化開始から所定期間内に、前記運転者反応検出手段により運転者の反応が検出されなかった場合に、前記運転者へ注意喚起する注意喚起手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項2の自動走行制御装置では、請求項1において、前記車速変化手段は、前記車速変化開始から所定期間内に、前記運転者反応検出手段により運転者の反応が検出された場合には、車速を前記目標車速設定手段により設定された目標車速に戻すことを特徴としている。
請求項3の自動走行制御装置では、請求項1または2において、前記車速変化手段は、前記自動走行制御中の所定の時期に、車速を前記目標車速設定手段により設定された目標車速より低い車速に変化させることを特徴としている。
【0010】
請求項4の自動走行制御装置では、請求項1から3のいずれかにおいて、前記注意喚起手段は、運転者への警告を発する警報器であることを特徴としている。
請求項5の自動走行制御装置では、請求項1から4のいずれかにおいて、前記注意喚起手段は、前記自動走行制御を停止させる自動走行制御停止手段であることを特徴としている。
【0011】
請求項6の自動走行制御装置では、請求項1から5のいずれかにおいて、前記運転者反応検出手段は、前記運転者のスイッチ操作により当該運転者の反応を検出するスイッチであることを特徴としている。
請求項7の自動走行制御装置では、請求項1から6のいずれかにおいて、前記運転者反応検出手段は、前記運転者の発した声により前記運転者の反応を検出する受音手段であることを特徴としている。
【0012】
請求項8の自動走行制御装置では、請求項1から7のいずれかにおいて、前記運転者反応検出手段は、前記運転者によるアクセル操作により前記運転者の反応を検出するアクセル操作検出手段であることを特徴としている。
請求項9の自動走行制御装置では、請求項1から8のいずれかにおいて、前記自動走行制御は、前走車がない場合には、任意にされた設定車速を前記目標車速とし、前走車がある場合には、当該前走車と自車両との車間距離を所定距離に保つ車速を前記目標車速として、前記車両の車速を調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
上記手段を用いる本発明の請求項1の自動走行制御装置によれば、自動走行制御中の所定の時期に、車速を自動走行制御に基づく目標車速と異なる速度に変化させることで、運転者の自動走行運転に対する監視の有無を判定し、運転者が運転へ適正に関わっているかを確認する。そして、当該車速変化開始から所定期間に運転者の反応が検出されなかった場合には、運転者への注意喚起を行う。
【0014】
このように運転者が直接運転操作を行うことが少ない自動走行制御中においても、定期的に自動走行制御における目標車速から車速を意図的に変化させることで運転者に運転への適正な関わりを促し、当該変化に対する運転者の反応を確かめることで、運転者の注意力を確認することができる。そして、車速変化開始から所定期間、運転者の反応がない場合には、運転者への注意喚起を行うことで、運転者に再び自動走行運転を監視させることができる。
【0015】
こうして、自動走行中における運転者の運転への適正な関わりの有無を確認するとともに、運転者の自動走行運転に対する監視放棄を抑制することができる。
請求項2の自動走行制御装置によれば、車速変化開始から所定期間に運転者の反応が検出された場合には、車速を前記目標車速設定手段により設定された目標車速に戻すことで、自動走行制御に速やかに復帰させることができる。
【0016】
請求項3の自動走行制御装置によれば、車速を変化させる際には、目標車速より低い車速に変化させることで、走行の安全性を確保しつつ運転者の運転への適正な関わりを確認することができる。
請求項4の自動走行制御装置によれば、車速を変化させても運転者の反応がない場合に警報器により運転者に警告を発することで、運転者の注意を喚起することができる。
【0017】
請求項5の自動走行制御装置によれば、車速を変化させても運転者の反応がない場合に自動走行制御を停止させることで、運転者の注意力が低下している状態で自動走行制御が継続されるのを早期に解消することができる。
請求項6の自動走行制御装置によれば、運転者が直接的にスイッチ操作することで当該運転者の反応を検出するため、確実に運転者の反応を検出することができる。
【0018】
請求項7の自動走行制御装置によれば、運転者の発した声により運転者の反応を検出することで、運転者による直接的な操作等必要なく容易に運転者の反応を検出することができる。
請求項8の自動走行制御装置によれば、アクセル操作により運転者の反応を検出することで、新たな装置等設けることなく容易に運転者の反応を検出することができる。
【0019】
請求項9の自動走行制御装置によれば、自動走行制御として、前走車がない場合には、自動走行制御は任意に設定された設定車速を目標車速としたいわゆるオートクルーズ制御を行い、前走車がある場合には車間距離を所定距離に保つ車速を目標車速とする車間距離維持制御を行う。
これにより、オートクルーズ機能及び車間距離維持機能を持つ自動走行制御においても運転者の運転への適正な関わりの確認を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態における自動走行制御装置の概略構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る自動走行制御装置の自動走行ECUが実行する運転監視確認制御ルーチンを表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態における自動走行制御装置の概略構成を示したブロック図であり、同図に基づき説明する。
図1に示す自動走行ECU(電子コントロールユニット)1は、車両に搭載される各種ECUのうちの一つであり、自動走行制御を行う制御装置である。ここで、自動走行制御とは、運転者の操作によらず自動的に車速を調整して車両を走行させる制御のことである。例えば、自動走行制御として、エンジン出力制御やブレーキ制御により、車速をあらかじめ設定された速度に維持したり、前走車との車間距離を一定距離に維持して車速や車間を制御するACC(Adaptive Cruise Control)等がある。具体的には、自動走行ECU1は、図示しない入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)及び中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成されている。
【0022】
自動走行ECU1の入力側には、車速センサ2、ミリ波レーダ4、自動走行操作部6、注意力監視部8、応答スイッチ10、マイク12、アクセル開度センサ14等の各種デバイスが接続されている。出力側には、エンジン20、トランスミッション22、ブレーキ24、警報器26(注意喚起手段)等の各種デバイスが接続されている。
【0023】
詳しくは、車速センサ2は自車両の車速を検出するセンサであり、ミリ波レーダ4はミリ波帯の電波を用いて自車両の前方にある前走車等の障害物を検知し、自車両に対しての前走車の相対距離及び相対速度を測定するものである。
自動走行操作部6は、運転席に設けられており、自動走行制御のON、OFFの切り換え及び当該自動走行制御における任意の車速及び車間時間を運転者が設定可能なものである。
【0024】
注意力監視部8は、例えば車両のふらつきや、運転者の修正操舵、ウィンカーの操作等から総合的に判断して、運転者の運転注意力のレベルを判定するものである。
応答スイッチ10及びマイク12はそれぞれ運転席に設けられており、応答スイッチ10は運転者の押下操作によりON、OFFが切り換えられるスイッチであり、マイク12は車内の音を検知するものである。アクセル開度センサ14は、運転者によるアクセルの踏込量を検知するものである。
【0025】
これら応答スイッチ10、マイク12、アクセル開度センサ14はそれぞれ運転者の反応を検出するための手段(運転者反応検出手段)である。応答スイッチ10は運転者の直接的な操作により運転者の反応を検出するため、確実に運転者の反応を検出することができ、マイク12は逆に運転者の直接的な操作等必要なく容易に運転者の反応を検出でき、アクセル開度センサ14は、既存の装備品を用いつつ容易に運転者の反応を検出できるものである。また、減速に対しての運転者の反応として、運転者はアクセルを踏み込む可能性が高く、アクセル開度センサ14であれば減速に対する運転者の反応を早期に検出することができる。
【0026】
エンジン20、トランスミッション22、ブレーキ24は、それぞれ車両の走行に関わる主要な装置であり、自動走行ECU1は、エンジン20の出力、トランスミッション22の変速ギヤ段、ブレーキ24による制動力等をそれぞれ調整して車両の走行を制御する。
警報器26は、運転者に視覚的に警告を発するよう運転席のメータ部分等に表示される表示灯及び警告音を発するスピーカからなる。
【0027】
ここで、自動走行ECU1の内部構成について詳しく説明する。
図1では、自動走行ECU1の内部構成が概念的に示されており、同図に示すように自動走行ECU1は、目標車速設定部30(目標車速設定手段)、監視有無確認部32(車速変化手段)、タイマ34、運転者反応検出部36(運転者反応検出手段)を有している。
【0028】
目標車速設定部30には、車速センサ2により検出される自車両の車速情報、ミリ波レーダ4により検出される前走車との相対距離情報及び相対速度情報等、自動走行操作部6において運転者により設定された自動走行制御のON、OFF情報、設定車速及び車間時間の情報等が入力される。
目標車速設定部30は、自動走行操作部6により自動走行制御がONにされると、ミリ波レーダ4により前走車が検出されていない場合は、自動走行操作部6において運転者により設定された設定車速を目標車速とする。前走車がある場合には、自動走行操作部6において運転者により選択された車間時間に基づく目標車速として制御を行う。そして、目標車速設定部30は、目標車速を達成するためのエンジン出力、変速ギヤ段、制動力等を演算し、これらの演算結果と目標車速情報とを監視有無確認部32に出力する。
【0029】
監視有無確認部32には、目標車速設定部30からの情報、タイマ34による計時情報、注意力監視部8により判定された運転者の注意力レベル情報、運転者反応検出部36からの運転者の反応情報等が入力される。
監視有無確認部32は、自動走行制御開始から、タイマ34により計時される所定の時期毎に、運転者の運転への適正な関わり、すなわち自動走行制御運転に対する監視・監督の有無の確認(以下、運転監視という。)を行う。この運転者の運転監視の確認は、具体的には、目標車速設定部30で設定された目標車速から所定速度減速させた運転監視確認用車速で車両を走行させることで行う。このように監視有無確認部32は、自動走行制御中に自動走行制御に基づく車速を変化させ、この変化に運転者が気付くか否かで運転者の運転への適正な関わりを確認する。この目標車速からの減速度合いは注意力監視部8により判定された注意力レベルに応じて設定されるものとし、例えば注意力レベルが低い場合、即ち運転者における運転への意識が低い場合には運転者が気づきにくいことを考慮して、大きな減速度とする。または当該減速度合いを車速に応じて設定してもよく、例えば車速が高いほど、大きな減速度となるよう設定しても構わない。
【0030】
そして、監視有無確認部32は、運転者反応検出部36により運転者の反応が検出された場合には、再び目標車速に基づく自動走行制御に切り換える。一方、車速変化を開始してから一定期間、運転者の反応がない場合には、運転者に注意を喚起すべく警報器26を用いて運転者に警告したり、自動走行制御を強制的に停止する等の制御を行う。なお、監視有無確認部32は、運転監視を確認する所定の時期以外のときには、目標車速設定部30から入力されるエンジン出力等に基づきそのままエンジン20等を制御する。
【0031】
運転者反応検出部36は、応答スイッチ10、マイク12、アクセル開度センサ14からの各種情報が入力され、これらの情報から運転者の反応を検出する。つまり、上記監視有無確認部32による目標車速の減速が開始されてからの一定期間内に、運転者により応答スイッチ10が押下されたり、マイク12により運転者による所定の発話が検出されたり、アクセル開度センサ14により運転者によるアクセル踏込みが検出された場合には、運転者の反応があったものとして、監視有無確認部32に出力する。
【0032】
このように構成された自動走行ECU1は、通常時においては目標車速設定部30におけるオートクルーズ制御及び車間距離維持制御を行いつつ、定期的に監視有無確認部32により車速を減速させて、運転者反応検出部36において運転者の運転への適正な関わりの確認を行う。
以下、このように構成された本発明の実施形態に係る自動走行制御装置の作用及び効果について詳細に説明する。
【0033】
図2には、本発明の一実施形態に係る自動走行制御装置の自動走行ECUが実行する運転監視確認制御ルーチンを表したフローチャートが示されており、以下同フローチャートに沿って説明する。図2に示す運転監視確認制御ルーチンは、自動走行制御が開始されると同時に、主に自動走行ECU1の監視有無確認部32において実行される。
【0034】
図2に示すように、まずステップS1として監視有無確認部32は、運転者の運転監視の確認を行う第1所定時間を経過したか否かを判別する。これは例えばタイマ34により、自動走行制御の開始又は前回の運転監視の確認実行からの時間を計時し、当該計時が第1所定時間(例えば30分)を経過したか否かで判別する。当該判別結果が偽(No)である場合は再度ステップS1を繰り返し、第1所定時間経過して真(Yes)となった場合には次のステップS2に進む。
【0035】
ステップS2では、監視有無確認部32は、注意力監視部8から注意力判定レベルを取得し、当該注意力判定レベルに応じた減速度合い(例えば10km減速)で運転監視確認用車速を設定する。
続くステップS3では、監視有無確認部32は、設定された運転監視確認用車速となるエンジン出力、変速ギヤ段、又は制動力でエンジン20、トランスミッション22、又はブレーキ24等を制御することで減速を実行する。
【0036】
そして、ステップS4では、監視有無確認部32は、当該減速に対する運転者の反応がないか否かを判別する。運転者の反応は運転者反応検出部36からの情報に基づいて判別するものであり、つまり応答スイッチ10の押下、マイク12による運転者の所定の発話の検出、アクセル開度センサ14によるアクセル踏込の有無等から運転者の反応の有無が検出される。当該判別結果が偽(No)である場合、即ち運転者の反応が検出された場合には、ステップS5に進む。
【0037】
ステップS5では、監視有無確認部32は、タイマ34による第1所定時間の計時をリセットするとともに、車速を目標車速設定部30で設定された自動走行制御に基づく目標車速に復帰させるようエンジン20等を制御し、当該ルーチンをリターンする。
一方ステップS4の判別結果が真(Yes)である場合、即ち運転者の反応がない場合には、ステップS6に進む。
【0038】
ステップS6では、監視有無確認部32は、車速が運転監視確認用車速に到達するまで減速されたか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合は上記ステップS3に戻り、減速の実行を継続しつつ上記ステップS4にて運転者の反応を確認する。一方、ステップS6の判別結果が真(Yes)である場合は、ステップS7に進む。
【0039】
ステップS7では、監視有無確認部32は、運転監視確認用車速に達してからの時間を計時すべくタイマ34をリセットし、次のステップS8に進む。
ステップS8では、監視有無確認部32は、ステップS4と同様に運転者反応検出部36の情報に基づき運転者の反応を確認する。当該判別結果が偽(No)である場合は上記ステップS5に進み、タイマ34をリセットし、通常の自動走行制御に復帰して当該ルーチンをリターンする。
【0040】
一方、ステップS8の判別結果が真(Yes)である場合は、ステップS9に進む。
ステップS9では、タイマ34により第2所定時間(例えば5分)を経過したか否かを判別する。監視有無確認部32は、当該判別結果が偽(No)である場合は、ステップS8に戻り運転者の反応を確認する。
【0041】
一方、当該判別結果が真(Yes)である場合、即ち運転監視確認用車速まで減速し第2所定時間まで経過した所定期間内に、依然として運転者の反応がない場合は、ステップS10に進む。
第2所定時間は運転監視確認用車速に達してからの所定時間であり、当該第2所定時間を経過しても運転者の反応がないということは運転者が居眠り等して運転に関与してないと判断し、ステップS10では、警報器26により警告表示及び警報音を発するとともに、自動走行制御をOFFにして、当該ルーチンを終了する。
【0042】
以上のように、自動走行ECU1は、自動走行制御中の第1所定時間経過毎に、車速を自動走行制御に基づく目標車速から運転監視確認用車速まで減速させることで、運転者の運転監視の確認を行う。そして、自動走行ECU1は、減速を開始し運転監視確認用車速に達してから第2所定時間経過するまでに運転者の反応が検出されなかった場合には、警報器26による警告や自動走行制御を停止して運転者への注意喚起を行う。
【0043】
このように運転者が直接運転操作を行うことが少ない自動走行制御中においても、定期的に自動走行制御に基づく目標車速から車速を意図的に減速させて運転への注意を促し、当該減速に対する運転者の反応を確かめることで、運転者の運転監視を確認することができる。そして、減速開始から所定期間、運転者の反応がない場合には、運転者への注意喚起を行うことで、運転者を再び運転に集中させることができることができる。
【0044】
一方で、運転者の反応が検出された場合には、車速を目標車速に戻すことで、自動走行制御に速やかに復帰させることができる。
また、運転者の運転監視の確認のために車速を変化させているが、目標車速より低い車速に変化させることから、走行の安全性を確保しつつ運転者の運転への適正な関わりを確認することができる。
【0045】
さらに、運転者の反応がない場合に自動走行制御を停止させることで、運転者の注意力が低下している状態で自動走行制御が継続されるのを早期に解消することができる。
これらのことから、本発明の一実施形態に係る自動走行制御装置は、自動走行中における運転者の運転への適正な関わりを確認でき、運転者の自動走行運転に対する監視放棄を抑制することができる。
【0046】
以上で本発明に係る自動走行制御装置の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
上記実施形態では、監視有無確認部32において、運転者の運転監視の確認を、目標車速から所定速度減速させた運転監視確認用車速にすることで行っているが、当該運転監視確認用車速は目標車速から所定速度増速させた速度しても構わない。また、上記実施形態では、目標車速からの減速度合いを注意力レベルが低いほど大きくしているが、逆に運転者の注意力の低下に対する予防的効果を高めるべく運転者の注意力が低下する初期段階で注意喚起を行えるよう、注意力レベルが高いほど減速度合いを大きくしても構わない。
【0047】
また、上記実施形態では注意喚起手段として、表示灯及びスピーカからなる警報器26を用いているが、注意喚起手段はこれに限られるものではなく、例えば運転席に振動を生じさせるような装置を用いても構わない。
【符号の説明】
【0048】
1 自動走行ECU
2 車速センサ
4 ミリ波レーダ
6 自動走行操作部
8 注意力監視部
10 応答スイッチ(運転者反応検出手段)
12 マイク(運転者反応検出手段)
14 アクセル開度センサ(運転者反応検出手段)
20 エンジン
22 トランスミッション
24 ブレーキ
26 警報器(注意喚起手段)
30 目標車速設定部(目標車速設定手段)
32 監視有無確認部(車速変化手段)
34 タイマ
36 運転者反応検出部(運転者反応検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車速を自動的に調整する自動走行制御を行う自動走行制御装置であって、
前記自動走行制御における目標車速を設定する目標車速設定手段と、
前記自動走行制御中の所定の時期に、車速を前記目標車速設定手段により設定された目標車速と異なる速度に変化させる車速変化手段と、
前記車速変化手段による車速変化に対する運転者の反応を検出する運転者反応検出手段と、
前記車速変化開始から所定期間内に、前記運転者反応検出手段により運転者の反応が検出されなかった場合に、前記運転者へ注意喚起する注意喚起手段と、
を備えることを特徴とする自動走行制御装置。
【請求項2】
前記車速変化手段は、前記車速変化開始から所定期間内に、前記運転者反応検出手段により運転者の反応が検出された場合には、車速を前記目標車速設定手段により設定された目標車速に戻すことを特徴とする請求項1記載の自動走行制御装置。
【請求項3】
前記車速変化手段は、前記自動走行制御中の所定の時期に、車速を前記目標車速設定手段により設定された目標車速より低い車速に変化させることを特徴とする請求項1または2に記載の自動走行制御装置。
【請求項4】
前記注意喚起手段は、運転者への警告を発することで注意喚起を行う警報器であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動走行制御装置。
【請求項5】
前記注意喚起手段は、前記自動走行制御を停止させることで注意喚起を行う自動走行制御停止手段であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の自動走行制御装置。
【請求項6】
前記運転者反応検出手段は、前記運転者のスイッチ操作により当該運転者の反応を検出するスイッチであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の自動走行制御装置。
【請求項7】
前記運転者反応検出手段は、前記運転者の発した声により前記運転者の反応を検出する受音手段であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の自動走行制御装置。
【請求項8】
前記運転者反応検出手段は、前記運転者によるアクセル操作により前記運転者の反応を検出するアクセル操作検出手段であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の自動走行制御装置。
【請求項9】
前記自動走行制御は、前走車がない場合には、任意に設定された設定車速を前記目標車速とし、前走車がある場合には、当該前走車と自車両との車間距離を所定距離に保つ車速を前記目標車速として、前記車両の車速を調整することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の自動走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−39891(P2013−39891A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179455(P2011−179455)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】