説明

自動車内装用基材の製造方法

【課題】変性PPE系樹脂を基材とする発泡積層シートを用い、接着剤層であるホットメルトフィルムを熱溶融した非発泡層と同一ラインでかつ一括に積層することにより、生産性に優れ、かつ軽量で、しかも安定した品質と環境適合性を兼ね備えた自動車内装用基材の製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂発泡積層シートの室内側面非発泡層に、ホットメルトフィルム接着剤を介して表皮材を積層してなる自動車内装用基材を製造するにあたり、押出機より押し出された溶融状態の非発泡層用熱可塑性樹脂を、発泡層とホットメルトフィルム接着剤との間に挟み込んで積層した後、ラミネートロールおよびバックロールにて圧着する工程において、ラミネートロールの表面温度を、ホットメルトフィルムの10%延伸時の引張強度が15N/50mm以上である温度に制御することにより、上記特性を有する自動車内装材用基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内装用基材の製造方法に関する。さらに詳しくは、発泡層及び非発泡層から構成される発泡積層シートよりなる自動車内装用基材に、インラインでホットメルトフィルムを効率良く積層加工でき、生産性に優れ、軽量かつ環境適合性を兼ね備えた自動車内装用基材を安価に提供する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車天井材などの自動車内装用基材として、ウレタンフォームにガラス繊維を積層したシートや、ポリプロピレン樹脂にガラス繊維を混合または積層した積層シートが広く用いられている。これらの内装用基材は、成形加工性、耐熱特性及び吸音特性に優れているという特徴がある。一方で、これらの内装用基材は、ガラス繊維を構成材料とするため、リサイクル性、特にマテリアルリサイクル性に劣り、また、軽量化が図れず、自動車の燃費が上昇することによりCO量が増加するという面から環境適合性に劣るものである。これに対し、ガラス繊維代替として、カーボン繊維や天然繊維として、サイザル繊維/ジュート繊維を混合または積層した積層シートが登場している。しかし、これらの積層シートは、価格面、品質安定性を確保するために、構成繊維の使用量を増加せざるを得ず、結果として、軽量化が図れず、自動車の燃費が上昇することによりCO量が増加するので、やはり環境適合性を十分満足するものではない。
【0003】
近年、地球温暖化防止策として、自動車のCO排出量の削減、自動車の更なる燃費向上要求に対し、より一段の自動車内装材の軽量化が求められている。更に、自動車居室内の暑さ、寒さ等の車室内の温度に対する快適性は自動車内装材の断熱性能に影響され、従来の自動車内装材は、この特性に劣るものであった。
【0004】
上記の問題を解決するため、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、「変性PPE系樹脂」と記す)を基材樹脂とする発泡シートの両面もしくは片面に、熱可塑性樹脂からなる非発泡層を積層した発泡積層シートからなる自動車内装用基材、さらにその表面に接着剤を介して表皮層を設けた自動車内装用基材が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0005】
このような熱可塑性樹脂からなる発泡積層シートは、接着剤層として加熱成形時に溶融軟化し、意匠層である不織布表皮材とアンカー効果接着を発現するホットメルトフィルムが適宜用いられている。
【0006】
発泡積層シートからなる自動車内装用基材に、接着剤層を介して意匠層となる表皮材を積層する場合、押出機を用い、発泡層に熱溶融した非発泡層樹脂を押出しラミネートにて積層加工する時に、ホットメルトフィルム接着剤層を同一ラインでかつ一括で積層することにより、生産性の向上が図れる。しかしながら、ホットメルトフィルム接着剤を熱溶融した非発泡層に積層する際において、非発泡層が有している熱によりホットメルトフィルムが熱軟化し、さらにはフィルム破断となるため、生産効率よくインラインで積層することは困難であった。そのため、発泡層と非発泡層とを積層した発泡積層シートを一旦作製した後、別工程でホットメルトフィルム接着剤層を熱ラミネートにて積層した後、表皮材を積層する等の加工方法がとられ、表皮材が積層された自動車内装用基材が製造されていた。
【0007】
この方法では、発泡層に非発泡層を積層する加工ラインとホットメルトフィルム接着剤層及び意匠層である表皮材を積層加工するラインとを別々に設定しなければならず、工程を最低2つ以上有する必要があって、生産性に劣るだけではなく、多額の設備投資が必要となるため、生産性向上及び生産コストの低減のためには、ホットメルトフィルムを発泡層への非発泡層の積層時に、一括して積層する加工方法の出現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−29875号公報
【特許文献2】特開平9−174729号公報
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係わる自動車内装材の要部拡大断面説明図である。
【図2】室内側非発泡層およびホットメルトフィルムの押出(バインダー)ラミネート法による同時積層時のロール配置の概略図である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、接着剤層であるホットメルトフィルムを熱溶融した非発泡層と同一ラインでかつ一括に積層することにより、生産性に優れ、かつ軽量で、しかも安定した品質と環境適合性を兼ね備えた自動車内装用基材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、熱可塑性樹脂発泡積層シートの室内側面非発泡層に、ホットメルトフィルム接着剤を介して表皮材が、室外側面非発泡層に、ラテックス接着剤を介して異音防止層が積層した自動車内装用基材を製造するにあたり、発泡層からなる発泡シートに押出機を用い、熱溶融樹脂を押出(バインダー)ラミネート法にて室内側非発泡層を積層する際に、ホットメルトフィルムを同時に積層するにおいて、ホットメルトフィルムをラミネートにて積層するロールの温度を、積層するホットメルトの伸度10%時の引張強度が15N/50mm以上を保持するに必要な温度以下になるようロール温度を制御することにより、ホットメルトフィルムの熱軟化による破断を防止でき、かつホットメルトフィルムの皺等外観不良を抑制でき、インラインで非発泡層用樹脂とホットメルトフィルムとを一括で効率よく積層することを見出した。
【0012】
さらに、本発明者は、熱可塑性樹脂として、耐熱性樹脂、特に、ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、「PPE系樹脂」と記す)およびポリスチレン系樹脂(以下、「PS系樹脂」と記す)との混合樹脂である変性PPE系樹脂を押出発泡成形して得られた発泡層の表面に、PPE系樹脂およびポリスチレン系樹脂との混合樹脂である変性PPE系樹脂や、耐熱PS系樹脂からなる非発泡層を形成した熱可塑性樹脂発泡積層シートの室内面の非発泡層に、インラインで積層されたホットメルトフィルム接着剤を介し表皮材を、室外面の非発泡層にラテックスを介して異音防止層を積層してなる自動車内装材であるため、生産性に優れ、ガラス成分を含まず、軽量で、安定した品質、環境適合性を備えた自動車内装用基材および自動車内装部品が低コストで得られることができる。
【0013】
すなわち、本発明は、
[1] 熱可塑性樹脂を押出発泡成形して得られる発泡層の表面に、押出ラミネート法にて熱可塑性樹脂からなる非発泡層を積層してなる熱可塑性樹脂発泡積層シートに、ホットメルトフィルム接着剤を介して表皮材が積層されてなる自動車内装用基材の製造方法であって、押出機より押し出された溶融状態の非発泡層用熱可塑性樹脂を、発泡層とホットメルトフィルム接着剤との間に挟み込んで積層した後、ラミネートロールおよびバックロールにて圧着する工程において、ラミネートロールの表面温度を、ホットメルトフィルムの10%延伸時の引張強度が15N/50mm以上である温度に制御することを特徴とする、自動車内装用基材の製造方法、
[2] 前記熱可塑性樹脂発泡積層シートの発泡層を構成する熱可塑性樹脂が、ポリフェニレンエーテル系樹脂25〜70重量%およびポリスチレン系樹脂75〜30重量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂であることを特徴とする、[1]に記載の自動車内装用基材の製造方法、
[3] 前記熱可塑性樹脂発泡積層シートの発泡層の厚さが1〜5mm、発泡倍率が3〜20倍および目付が100〜300g/mであることを特徴とする、[1]または[2]に記載の自動車内装用基材の製造方法、
[4] 前記熱可塑性樹脂発泡積層シートの非発泡層を構成する熱可塑性樹脂が、ポリフェニレンエーテル系樹脂5〜70重量%およびポリスチレン系樹脂95〜30重量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、および耐熱ポリスチレン系樹脂、の少なくとも一種であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の自動車内装用基材の製造方法、および
[5] 前記熱可塑性樹脂発泡積層シートの非発泡層の目付が50〜300g/mであることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の自動車内装用基材の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の自動車内装用基材の製造方法によると、熱可塑性樹脂を押出発泡成形して得られる発泡シートの表面に熱可塑性樹脂からなる非発泡層を積層してなる熱可塑性樹脂発泡積層シートにおいて、ホットメルトフィルム接着剤を、室内側非発泡層積層加工時に一括で積層することができるため、生産性に優れ、熱可塑性樹脂発泡積層シートからなる自動車内装用基材の積層加工プロセスを簡略化できることから自動車内装用基材を低コストで得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る自動車内装用基材の製造方法は、熱可塑性樹脂を押出発泡成形して得られる発泡層の表面に、熱可塑性樹脂からなる非発泡層を押出ラミネート加工にて積層してなる熱可塑性樹脂発泡積層シートに、ホットメルトフィルム接着剤を非発泡層の積層時に一括で積層し、ホットメルトフィルム積層時のラミネート加工ロール温度をホットメルトフィルムの10%延伸時の引張強度が15N/50mm以上になるように温度制御することにより、積層加工時に非発泡層が有する熱によりホットメルトフィルムが熱軟化し、フィルム破断する不具合を抑制でき、積層時の皺等の発生を防止できるフィルム張力を有しつつ、発泡層への非発泡層積層加工とホットメルトフィルム接着剤層を一括で積層加工できるものである。
【0016】
以下、本発明の自動車内装用基材並びに自動車内装用基材の製造方法を、図面に基づいて説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係わる自動車内装用基材1の断面の構成を示している。なお、これを成形した自動車内装部品も同様の断面構造を有するので、以下、自動車内装用基材1の構造について説明する。自動車内装用基材1は、熱可塑性樹脂発泡積層シート50の室外側に異音防止層20が積層され、室内側に表皮材30が積層されている。熱可塑性樹脂発泡積層シート50は、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする押出発泡シートである発泡層10の両面に、熱可塑性樹脂を基材樹脂とする非発泡層11(室内側)および13(室外側)が形成されている。異音防止層20は、熱可塑性樹脂発泡積層シート50の室外側非発泡層13の表面に、接着剤層18を介して積層され、表皮材30は、室内側非発泡層11の表面に、ホットメルトフィルム系接着剤層32を介して積層されている。
【0018】
発泡シートである発泡層10の基材樹脂として使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−イタコン酸共重合体等の耐熱性ポリスチレン系樹脂;ポリスチレンあるいは耐熱性ポリスチレンとポリフェニレンエーテル(PPE)とのブレンド体、PPEへのスチレングラフト重合体等のスチレン・フェニレンエーテル共重合体等の変性PPE系樹脂;、ポリカーボネート樹脂;ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートで例示されるポリエステル系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独または、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
これらのなかでも、耐熱性、剛性等の品質に優れ、加工性および製造が容易である点で、変性PPE系樹脂が好ましい。さらに、前記変性PPE系樹脂は、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂が好ましい。
【0020】
変性PPE系樹脂中のPPE系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)などがあげられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
また、PPE系樹脂に重合、好ましくはグラフト重合させるスチレン系単量体の具体例としては、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせてもよい。これらのなかでも、汎用性およびコストの点で、スチレンが好ましい。
【0022】
変性PPE系樹脂中においてPPE系樹脂と混合樹脂を形成するPS系樹脂としては、スチレンまたはその誘導体、例えばα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどを主成分とする樹脂があげられる。したがって、PS系樹脂はスチレンまたはスチレン誘導体だけからなる単独重合体に限らず、他の単量体と共重合することによって得られた共重合体であってもよい。
【0023】
発泡層10に使用される基材樹脂として、変性PPE系樹脂を使用する場合は、通常、PPE系樹脂25〜70重量%およびPS系樹脂75〜30重量%であることが好ましく、PPE系樹脂35〜60重量%およびPS系樹脂65〜40重量%であることがより好ましく、PPE系樹脂38〜58重量%およびPS系樹脂62〜42重量%であることがさらに好ましい。変性PPE系樹脂中のPPE系樹脂が25重量%より少ないと、耐熱性が劣る傾向にあり、PPE系樹脂が70重量%を超えると、加熱流動時の粘度が上昇して発泡成形が困難になる傾向がある。
【0024】
発泡層10としての発泡シートは、発泡剤として炭化水素系発泡剤を用いて押出発泡成形して得られるものが、基材樹脂との相溶性の点で好ましい。使用される炭化水素系発泡剤としては、基材樹脂の発泡性の点から揮発性発泡剤が好ましく、具体的には、例えば、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンなどがあげられる。なかでも、発泡剤の溶解度を示すカウリブタノール値(KB値)が20〜50である炭化水素系発泡剤が基材樹脂との相溶性と良好な発泡性及び発泡性の経時変化が小さい点から好ましい。KB値が20未満の場合、基材樹脂との相溶性が不足し、基材樹脂への発泡剤の含有量が少なくなる傾向にある。一方で、KB値が50を超える場合、基材樹脂へ包含された発泡剤の逸散性が大きくなる傾向にある。また、この範囲よりもKB値の高いものと低いものとを2種以上適宜混合して前記範囲としたものも使用することができる。さらに、前記発泡剤の具体例のなかでも、発泡剤の適度な溶解性および発泡剤の逸散性が小さく、発泡層の経時変化に伴う発泡性の変化が小さい点で、イソブタン、または、イソブタンおよびノルマルブタンの混合体であって、イソブタンの比率が高いもの、さらには、イソブタン含有量が50重量%以上の前記混合体が好ましい。前記混合体中のイソブタン含有量が50重量%より少ないと発泡剤の逸散性が大きく、発泡層の経時変化に伴う発泡性の変化が大きくなる傾向がある。
【0025】
発泡層10の発泡シートを押出発泡成形する時の炭化水素系発泡剤の添加量は、耐熱性樹脂100重量部に対し、2.0〜5.0重量部であることが好ましく、2.5〜4.5重量部であることがより好ましい。炭化水素系発泡剤の添加量が2.0重量部より少ないと、成形加熱時の二次発泡倍率が低くなりすぎることもあり、良好な成形性を得るのに悪影響を与える傾向があり、5.0重量部を超えると、押出発泡が不安定になったり、発泡シートの表面荒れが発生する傾向がある。
【0026】
本発明の自動車内装用基材1を成形して自動車内装部品を製造する際、成形時に熱がかかり、発泡層10(1次発泡シート)は、さらに発泡(2次発泡)する。発泡層10(1次発泡層)の厚さとしては、1.0〜5.0mmが好ましく、1.5〜3.5mmがより好ましい。発泡層10(1次発泡シート)の厚さが1.0mmより小さいと、強度および断熱性に劣り、自動車内装材用発泡積層シートとして適当でない場合がある。一方、5.0mmを超えると、成形時に熱がかかって発泡層10(1次発泡シート)がさらに発泡(2次発泡)する際に、発泡層10の厚み方向の中心部まで熱が伝わり難く、そのため充分な加熱が行えず、成形性が低下する傾向がある。また、充分な加熱を行うべく加熱時間を長くすると、発泡層10表面のセルに破泡などが生じ、製品として許容できるものが得られ難くなる傾向がある。
【0027】
発泡層10(1次発泡シート)の発泡倍率は3〜20倍が好ましく、5〜15倍がより好ましい。発泡層10(1次発泡シート)の発泡倍率が3倍より低いと、柔軟性に劣り、曲げなどによる破損が生じ易く、また、軽量化の効果が少なくなる傾向がある。発泡層10(1次発泡シート)の発泡倍率が20倍を超えると、強度が低下し、また、成形時に熱が伝わり難くなり中心部まで加熱し難いことにより、成形性が低下する傾向がある。
【0028】
発泡層10(1次発泡シート)を形成する1次発泡層のセルの厚み方向の大きさであるセル径は0.05〜0.9mmが好ましく、0.1〜0.7mmがより好ましい。セル径が0.05mmより小さいと、充分な強度が得られ難くい傾向があり、0.9mmを超えると、断熱性に劣る傾向がある。
【0029】
発泡層10(1次発泡シート)の目付は100〜300g/mが好ましく、120〜200g/mがより好ましい。目付が100g/mより低いと、内装材としての剛性が不足する傾向があり、目付が300g/mを超えると、重量増により軽量性の効果が低下する傾向がある。
【0030】
発泡層10(1次発泡シート)中の残存揮発成分の量は、発泡層10の全重量に対して1.0〜5.0重量%が好ましく、2.0〜4.0重量%がより好ましい。残存揮発成分が1.0重量%より少ないと、内装品を成形する際の2次発泡倍率が低くなりすぎることも有り得るため、良好な成形性を得るのに影響を与える傾向がある。また、残存揮発成分が5.0重量%を超えると、非発泡層11、13との間に空気溜まりが発生したり、経時により寸法安定性が低下する傾向がある。なお、発泡層10中の残存揮発成分の量は、ガスクロマトグラフィーにより測定しても良いが、通常、発泡層10の試験片を耐熱性樹脂が軟化をはじめる温度以上で分解温度以下の温度範囲で加熱して揮発成分を充分に揮発させ、加熱前後の重量差により測定することができる。
【0031】
一般に、発泡層10(1次発泡シート)においては、押出発泡成形時に延伸され扁平となっていたセルが、成形加熱時に扁平率を解消する方向にその形状を変化させることにより、加熱収縮が発現する。その加熱収縮が、結果的に自動車内装部品の熱変形(以下、「耐熱変形」と記す)を起こす。
耐熱変形とは、自動車内装部品を加熱試験した場合に、加熱前後での発泡セルの加熱収縮による形状変形等により自動車内装部品の寸法変化が発生することを意味し、例えば、自動車天井材の場合、加熱試験後の天井成形体の屈曲部において、加熱試験で変形が発生し、フロント及びリア部の端末部位が変形する現象をいう。
【0032】
耐熱変形等の形状変化は、発泡層10(1次発泡シート)の表裏面表層部のセルの密度を発泡層の中心層部のセルの密度より大きくすることにより抑制できる。具体的には、押出発泡成形シート化時に発泡層10の表裏面の表層部とも均一に冷却することにより、発泡層の表裏面の表層部をハードスキン層として形成することにより、発泡層の表層部を剛直化することで加熱収縮する量を抑制することができる。
【0033】
さらに、発泡層10のセル内圧の変化をなるべく小さくすることにより、加熱収縮量を小さくできる。例えば、発泡層10の押出発泡シート化後、非発泡層11、13を積層加工するまでの時間(養生時間)を30日以上確保することにより、セル内圧の変化をなるべく小さくすることができる。
【0034】
なお、発泡シートである発泡層10の基材樹脂には、必要に応じて気泡調整剤、耐衝撃性改良剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤、タルクなどを添加してもよい。
【0035】
次に、非発泡層11および13について説明する。
非発泡層11および13は、発泡層10への積層により、発泡層10の加熱による熱変形での動きが、非発泡層11、13で制御され、発泡積層シートの高温下での熱変形制御および成形時の成形体形状の安定性が図られ、さらに、曲げ剛性を向上させ、自動車内装材のハンドリング性が改善される。
非発泡層11または13に用いられる熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、PS系樹脂、耐熱PS系樹脂、変性PPE系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリアミド(ナイロン)系樹脂などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうちでも、発泡層10との接着性の観点から、変性PPE系樹脂および耐熱PS系樹脂が好ましく使用される。
【0036】
非発泡層11または13として変性PPE系樹脂を使う場合は、非発泡層11または13として使用される変性PPE系樹脂は、上述の発泡層10の場合と同様に、PPE系樹脂に対しスチレン系化合物を主体とする単量体による重合またはその重合体との混合による変性を行ったものであり、例えば、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂、PPE系樹脂にスチレン系単量体を重合させたPPE−スチレン共重合体、この共重合体とPS系樹脂またはPPE系樹脂との混合物、その共重合体とPPE系樹脂とPS系樹脂との混合物などが挙げられる。これらのうちでは、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂が、製造が容易であるなどの点から好ましい。
【0037】
前記PPE系樹脂、PS系樹脂またはスチレン系単量体の具体例や好ましいものの例示や、PS系樹脂やスチレン単量体と重合可能な単量体の具体例、それを使用する理由などは、発泡層10において説明した場合と同様である。ただし、PS系樹脂の好ましい具体例として、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)で代表されるスチレン−ブタジエン共重合体が、非発泡層11、13の耐衝撃性改善効果が大きいという点から好ましい。
【0038】
ところで、本発明者らの研究により、自動車内装部品の熱変形による寸法変化は、二次成形等の成形加工時に、非発泡層11、13に残留歪みが存在し、高温下等の使用条件において、その残留歪みが緩和することにより発生していることがわかっている。
【0039】
発泡積層シートを加熱成形により成形加工する場合、非発泡層11、13の残留歪みを除去する程度に発泡積層シートを過加熱した場合、発泡層10で破泡が生じ、表面荒れや非発泡層11、13の発泡層10からの剥離が発生し外観を損ねる。一方で、発泡層10の破泡を抑制する程度の低い温度で加熱した場合、非発泡層11、13の熱軟化が不足し、充分な伸び性を発現できず、結果、残留歪みとなり熱変形による寸法変化を引き起こすことになる。
【0040】
そこで、非発泡層11、13の熱軟化程度の1つの指標である非発泡層11、13を構成する熱可塑性樹脂のガラス移転温度(以下、「Tg」と記す)を、発泡層10を構成する熱可塑性樹脂のTg以下にすることで前記問題を解決することができるに至った。具体的には、非発泡層11または13を構成する熱可塑性樹脂は、ポリフェニレンエーテル系樹脂5〜70重量%およびポリスチレン系樹脂95〜30重量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物であることが好ましく、発泡層を構成するポリフェニレンエーテル系樹脂のPPE比率以下にすることがより好ましい。
【0041】
一方で、発泡層11または13を構成する熱可塑性樹脂として、変性PPE系樹脂を使用する場合、耐熱性評価温度以上のビカット軟化温度以上を有するものが好ましい。その理由として、非発泡層11または13が耐熱性評価温度において軟化してしまうと、発泡層10のセルの動きを制御する働きを担えなくなるためである。
【0042】
非発泡層11、13として耐熱PS系樹脂を使う場合は、非発泡層11、13として使用される耐熱PS系樹脂としては、スチレンまたはその誘導体と他の単量体との共重合体である。耐熱性の改善効果を有し、スチレンまたはその誘導体と共重合可能な単量体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体およびその酸無水物、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル化合物またはその誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。また、スチレンまたはスチレン誘導体を重合させる際に、合成ゴムまたはゴムラテックスを添加して重合させたものと、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体およびその酸無水物、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル化合物との共重合体であってもよい。このうちでは、スチレン−無水マレイン酸系共重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、スチレン−メタアクリル酸系共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体が、その耐熱性改善効果、汎用性およびコストの面から好ましい。
【0043】
非発泡層11または13の基材樹脂として、前記耐熱PS系樹脂を単独で用いても良く、または2種類以上組み合わせても良い。また、耐熱PS系樹脂は、他の熱可塑性樹脂とブレンドして用いてもよい。ブレンドする熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、HIPS、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミドやそれらの共重合体などがあげられる。これらのうちでは、汎用性、均一分散が可能であること、非発泡層の耐衝撃性改善効果が大きいこと、コストの面等からHIPSが好ましい。HIPSとしては公知のものが使用でき、ゴム成分の含有量は通常1〜15重量%である。
【0044】
発泡層11または13を構成する熱可塑性樹脂として、耐熱PS系樹脂を使用する場合、変性PPE系樹脂を使用する場合と同様に、耐熱性評価温度以上のビカット軟化温度以上を有するものが好ましい。
【0045】
非発泡層11および13の目付は50〜300g/mが好ましく、75〜200g/mがより好ましい。これら非発泡層の目付が50g/mより低い場合には、強度、剛性、耐熱性などが低下する傾向があり、300g/mより高い場合には、発泡積層シートの成形性が劣る傾向がある。
【0046】
非発泡層11、13を形成する熱可塑性樹脂には、必要に応じて、耐衝撃性改良剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤等を単独または2種以上組み合わせて添加してもよい。前記耐衝撃性改良剤は、非発泡層11および13を発泡層10に積層し、加熱成形時に2次発泡させた積層シートを自動車内装部品として成形する際のパンチング加工や、内装用基材(発泡積層シート)や内装部品(成形体)を輸送する際に、非発泡層11および13の割れなどを防止するのに有効である。使用される耐衝撃性改良剤としては、基材樹脂に混合することによってその効果を発揮するものであれば、特に限定なく使用し得る。耐衝撃性改良剤は、重合による変性で熱可塑性樹脂に導入した耐衝撃性改良効果を発揮し得る成分であってもよく、例えば、HIPSなどのように耐衝撃性改良成分を含むものを混合して非発泡層に使用する場合も、非発泡層11または13に耐衝撃性を付与することができる。
【0047】
本発明における自動車用内装用基材1は、図1に示すように、発泡層10の両面に積層される非発泡層11、13のうち、一方の室外側非発泡層13の表面に、接着剤層18を介して異音防止材20が積層されている。異音防止材20は、自動車用内装材1における室外側最外層に積層される部材であり、自動車の車体鋼板と接触する部分であり、自動車内装材1と自動車鋼板との接触による擦れ音を防止する機能が要求され、繊維素材が好適に用いられる。
【0048】
異音防止材20としては、不織布系、織布系の繊維素材であれば何れも用いることができる。異音防止材20に使用される不織布としては、原料繊維を接着剤、溶融繊維、あるいは機械的方法により接合させた布状物であれば、いずれの種類でもよい。原料繊維の種類も特に限定されず、合成繊維、半合成繊維、あるいは天然繊維のいずれをも用いることができる。具体的には、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリル等の合成繊維や、羊毛、木綿、セルロース等の天然繊維を使用することができるが、中でもポリエステル繊維が好ましく、特に耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。不織布の種類として、その製造加工方法により、接合バインダー接着布、ニードルパンチ布、スパンポンド布、スプレファイバー布、ウォーターニードル布あるいはステッチボンド布等が挙げられ、いずれの不織布も用いることができる。
異音防止材として合成繊維を含む不織布が好ましい理由としては、製造が容易であり、安価かつ大量に製造することができ、比較的軽目付けで擦れ音を有効に防止できるためである。
【0049】
異音防止材20に使用される不織布は、品質およびコストを考慮すると、15〜100g/mの目付けを有していることが好ましく、20〜60g/mの目付けを有していることがより好ましい。不織布の目付が15g/m未満では、自動車車体鋼板との接触による擦れ音を防止する機能が低下する傾向がある。一方、不織布の目付が100g/mを超えると、いたずらに重量が増加し、コストアップする傾向にある。
次に、異音防止材20を熱可塑性樹脂発泡積層シートに接着する接着剤18について説明する。
【0050】
本発明において、接着剤層18の樹脂成分としては、室外側非発泡層13を構成する樹脂に対して相溶性を有する熱可塑性樹脂(以下、「接着樹脂」と記す場合がある。)があげられる。相溶性を有する熱可塑性樹脂の具体例としては、非発泡層11または13が変性PPE系樹脂または耐熱PS系樹脂の場合、PS系樹脂、耐熱PS系樹脂、変性PPE系樹脂、スチレン・ブタジエン系共重合体樹脂(以下、「SB系樹脂」と記す場合がある。)、カルボキシル化変性スチレン・ブタジエン系共重合体樹脂(以下、「カルボキシル化変性SB系樹脂」と記す場合がある。)、カルボキシル化変性アクリロニトリル・スチレン系共重合体樹脂(以下、「カルボキシル化変性AS系樹脂」と記す場合がある。)、等があげられる。これらの中でも、加工性、汎用性、コストの点より、PS系樹脂、SB系樹脂、カルボキシル化変性SB系樹脂およびカルボキシル化変性AS系樹脂が特に好ましい。
【0051】
接着樹脂としてのPS系樹脂は、スチレンまたはその誘導体、例えばα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン等を主成分とする樹脂である。従って、PS系樹脂はスチレンまたはスチレン誘導体だけからなる単独重合体に限らず、他の単量体と共重合することによって作られた共重合体であってもよい。
【0052】
接着樹脂としてのSB系樹脂は、スチレンまたはその誘導体(スチレン系単量体)とブタジエンの単量体との共重合体である。重合されるスチレン系単量体およびブタジエン単量体の比率は、耐熱性がスチレン系単量体の比率が高くなること、非発泡層11との相溶性がスチレン系単量体の比率が高くなるほど良好になることより、スチレン系単量体の比率が高くなるほど好ましく、具体的にはSB系樹脂中のスチレン系成分含有量が60重量%以上のものが好ましい。SB系樹脂中のスチレン系成分含有量が60重量%未満では、耐熱性の悪化により、高温下の使用時に異音防止材20の剥離が発生する可能性がある。
【0053】
なお、SB系樹脂の物性は、単量体の比率による組成以外に、ブタジエンの二重構造に基づく分子構造(1,2付加構造、1,4付加構造(シスおよびトランス)、橋掛け構造)にも依存しており、ゴム的な性質は、1,4付加構造からもたらされている。そのため、橋掛け構造は多すぎるとゴム的な伸び特性を失い、少なすぎると耐溶剤性等の特性が発揮されないため、この橋掛け構造の量調整、分子量の設計により最終的な樹脂物性が設計される。
【0054】
接着樹脂としてのカルボキシル化変性SB系樹脂は、スチレンまたはその誘導体(スチレン系単量体)、ブタジエン系単量体および不飽和カルボン酸単量体からなる共重合体である。使用される不飽和カルボン酸の単量体としては、一塩基酸および二塩基酸のいずれを使用することも可能で、例えばマレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等があげられる。導入されるカルボキシル基含有単量体の組成比は、強度、熱および光安定性の点から、樹脂全体を100重量%とした場合、1〜10重量%が好ましい。また、カルボキシル化変性SB系樹脂中のスチレン系成分含有量は、SB系樹脂と同様な理由により、60重量%以上のものが好ましい。
【0055】
接着剤層18の接着樹脂としては、前記のようなPS系樹脂ラテックス、SB系樹脂ラテックス、カルボキシル化変性SB系樹脂ラテックス、カルボキシル化変性AS系樹脂ラテックスを単独で用いることも可能であるが、自動車内装材としての種々の要求特性を満たすためには、数種のラテックスを混合して使用することが好ましい。それらの中で、低温成膜性の良好なバインダーラテックスおよび耐熱性が高いレジンラテックスとの混合物を使用することにより、製造工程内の乾燥処理条件に依存しない安定で強固な初期接着強度とラテックス接着剤層18の耐熱性を両立することができ、また、接着剤18を熱可塑性樹脂発泡積層シートに塗布する場合の塗布時に接着剤樹脂にかかるせん断力などの機械的な力に対する安定性の向上により製造工程での取扱い性を改善することができることから、より好ましい。
【0056】
前記バインダーラテックスとしては、カルボキシル化変性SB系樹脂を構成樹脂とするラテックスが、機械安定性が良好な点および非発泡層11または13と相溶性を有する点から好ましい。前記カルボキシル化変性SB系樹脂を構成樹脂とするラテックスのなかでも、本発明においては、乾燥後、ラテックス粒子が融着し連続層を形成する温度である最低成膜温度が20℃以下のものが好ましく、0℃以下のものがより好ましい。SB系樹脂ラテックス等のバインダーラテックスの最低成膜温度が20℃を超える場合、乾燥工程で乾燥不良が発生した際、室温での乾燥によりフィルムの形成が起こらず接着不良が発生する可能性がある。ただし、カルボキシル化変性SB系樹脂ラテックスの最低成膜温度は、SB系樹脂ラテックスのスチレン成分とブタジエン成分の比率にほぼ依存し、最低成膜温度が低いほどブタジエン成分の比率が高くなる結果、スチレン系樹脂からなる非発泡層11または13との相溶性が悪化するため、最低成膜温度は、計算上[計算式:最低成膜温度=2.9×(スチレン成分(wt%))−175]、スチレン成分が50%以上となる−30℃以上が好ましい。
【0057】
前記レジンラテックスとしては、非発泡層11または13と相溶性を有するカルボキシル化変性AS系共重合体樹脂を構成樹脂とするラテックスが、機械安定性が良好な点および非発泡層11と相溶性を有する点から好ましい。前記カルボキシル化変性AS系樹脂は、スチレンまたはその誘導体(スチレン系単量体)、アクリロニトリル系単量体およびカルボキシル基含有単量体の共重合体である。導入されるアクリロニトリル系単量体およびカルボキシル基含有単量体の組成比は、強度、熱および光安定性の点から、樹脂全体を100重量%とした場合、1〜10重量%が好ましい。
【0058】
前記ラテックス混合物中でのレジンラテックスの混合割合は、20〜50重量%が好ましく、30〜50重量%がさらに好ましい。レジンラテックスの混合割合が20重量%未満では、接着剤層の耐熱性が低下し、内装材の実用特性として要求されるレベルに達しない場合があり、50重量%を超えると、バインダーラテックスが連続相とならず、ラテックス混合物の最低成膜温度が20℃以上となり、室温での乾燥によりフィルムの形成が起こらず接着不良が発生する可能性がある。
【0059】
また、前記ラテックス混合物などのラテックス接着剤の最低成膜温度は、20℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。ラテックス混合物の最低成膜温度が20℃を超えると、室温での乾燥によりフィルムの形成が起こらず、接着不良が発生する場合がある。
【0060】
前記のようなラテックス接着剤からなる接着剤層18による室外側非発泡層13と異音防止材20の接着方法としては、
(1)ラテックス接着剤を室外側非発泡層13の表面に塗布し、未乾燥状態の塗布面に異音防止材20を積層した状態で乾燥し、仮接着させた後、加熱プレスすることで接着させる方法、
(2)異音防止材20に予めラテックス接着剤を塗布し、未乾燥状態の塗布面に室外側非発泡層13が接するように熱可塑性樹脂発泡積層シート50を積層した状態で乾燥し、仮接着させた後、加熱プレスすることで接着させる方法、
(3)異音防止材20に、予めラテックス接着剤を塗布し乾燥させた後、溶融した室外側非発泡層13の基材樹脂と接触させた後、溶融した非発泡層の基材樹脂を発泡層10と異音防止材20で挟み込み、圧着することで接着させる方法
のいずれかが好ましい。
前記のようにラテックス接着剤を塗布し、未乾燥状態で室外側非発泡層13と異音防止材20とを積層させることにより、変性PPE系樹脂発泡シート等を使用した場合、発泡シートの破泡が起こらない加熱温度での加熱成形(プレス)によっても、要求される接着性が安定的に発現される。
【0061】
本発明で接着剤として使用するラテックスとしては、カーペットバッキング用、塗工紙用、不織布繊維処理用として公知のいずれのラテックスを使用することが可能である。
【0062】
ラテックス原液中の固形分濃度としては、通常40重量%以上であるが、塗布量および塗布方法に応じて適当に水で希釈したうえで使用することが可能である。但し、ラテックス水希釈溶液の固形分濃度が低すぎると、工程内での乾燥が不十分となり、接着不良を引き起こす可能性があるため、その固形分濃度は20重量%以上であることが好ましい。
【0063】
本発明において使用するバインダーラテックスおよびレジンラテックスは、製造工程でポンプ輸送、配合の際の攪拌、コーティングの際のロールコーターによる剪断等間断なく機械的操作を受けるため機械安定性が良好なラテックスが好ましい。ラテックスの機械安定性を改善する方策としては、乳化剤の添加量を増加させる、pHをアルカリ側に調整する、ラテックスをカルボキシル化変性する等があげられるが、カルボキシル化変性が最も有効であるため、カルボキシル化変性のラテックスの使用が好ましい。
【0064】
本発明におけるラテックス接着剤の塗布方法としては、各種ロールコーター法、スプレー法、泡噴霧法等の方法が挙げられ、塗布量、塗布面の形状により適宜選択される。
【0065】
また、本発明に使用するラテックス接着剤には、配合添加剤として、必要に応じて、安定剤、老化防止剤、加硫促進剤、分散剤、充填剤、増粘剤、着色剤、消泡剤、ゲル化剤、凍結防止剤、軟化剤、増粘樹脂等を含有してもよい。
接着剤層18を構成するラテックス樹脂の塗布量は、ラテックス接着剤として用いられる熱可塑性樹脂の種類、必要とされる異音防止材20との接着強度により適宜決定されるが、ラテックス中の構成樹脂(接着樹脂)の固形分として、1mあたり5〜50gが好ましく、10〜30gがより好ましい。ラテックス接着剤層18の構成樹脂塗布量が5g/m未満の場合は、必要な接着性が得られない場合が有り、50g/mを超える場合は、成形時に異音防止材20からラテックス接着剤層18が染み出して金型を汚染する可能性がある。
【0066】
本発明における自動車用内装用基材1は、図1に示すように、発泡層10の両面に積層される非発泡層11、13のうち、一方の室内側非発泡層11の表面に、接着剤層32を介して表皮材30が積層されている。表皮材30は、自動車用内装用基材1における室内側最外層に積層される部材であり、自動車室内から見え、触れられる部分に配置されるため、特に意匠性、耐傷つき性、触感等が要求される。
【0067】
表皮材30の構成としては、不織布、不織布とニットの積層体、不織布とパッド材とニットの積層体、パッド材とニットの積層体等、内装材に使用されているものであれば何れも使用することができる。
【0068】
表皮材30に使用される不織布としては、原料繊維を接着剤、溶融繊維、あるいは機械的方法により接合させた布状物であればいずれの種類でもよい。原料繊維の種類も特に限定されず、合成繊維、半合成繊維、あるいは天然繊維のいずれをも使用することができる。具体的には、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリル等の合成繊維や、羊毛、木綿、セルロース等の天然繊維を使用することができるが、中でもポリエステル繊維が好ましく、特に耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。
【0069】
表皮材30に使用される不織布の種類としては、その製造加工方法により、接合バインダー接着布、ニードルパンチ布、スパンポンド布、スプレファイバー布、あるいはステッチボンド布等が挙げられ、いずれの不織布も使用することができる。
表皮材として合成繊維を含む不織布が好ましい理由としては、製造が容易であり、安価かつ大量に製造することができ、加工性と意匠性を経済的に両立付与できる点である。
【0070】
表皮材30に使用される不織布は、品質およびコストを考慮すると、100〜300g/mの目付けを有していることが好ましく、120〜200g/mの目付けを有していることがより好ましい。不織布の目付が100g/m未満では、内装材としての充分な感触を得ることができない傾向がある。一方、不織布の目付が300g/mを超えると、表皮材の成形歪みが熱変形に影響を与える傾向がある。
【0071】
表皮材30に使用されるパッド材は、表皮材の触感(高級感)を向上させる目的に使用され、緩衝材としての性質を有するフォームが使用される。パッド材として使用されるフォームの種類としては、ポリウレタンフォーム、ポリ塩化ビニルフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリブタジエンフォーム等が使用可能である。
【0072】
表皮材30に使用されるニットは、トリコット、ダブルラッセル、ビロード等、内装材に使用されるものであれば、いずれも使用することができる。
次に、表皮材30を熱可塑性樹脂発泡積層シートに接着するホットメルト系接着剤32について説明する。
【0073】
本発明で使用されるホットメルト系接着剤層32は、結晶性を有するオレフィン系フィルムが好ましく、ホットメルト系接着剤の融点(JIS K 7121 プラスチックの転移温度測定方法に準じた測定)は90〜160℃であることが好ましい。さらに、2次発泡積層成形体を得る2次成形時の成形性及びサーマルコストの点から、融点は90〜125℃であることがより好ましい。ホットメルト系接着剤の融点が90℃未満の場合は、得られた自動車内装材用基材が実用上の高温とされる90℃の雰囲気下で表皮材20の剥離が発生する傾向がある。ホットメルト系接着剤の融点が160℃より大きい場合は、表皮材20との接着を付与するためにホットメルト系接着剤層32の溶融する温度、つまりホットメルトフィルム系接着剤層32が積層された自動車内装材用基材1の加熱温度を高くする必要があり、高温の過熱により自動車内装材用基材の発泡層10が破泡し、外観不良および自動車内装材用基材の剛性が低下する傾向がある。
【0074】
また、該結晶性を有するホットメルト系接着剤は、その結晶化エネルギー(JIS K7121 プラスチックの転移温度測定方法に準じた測定)が35J/g以上であることが好ましい。さらには35J/g以上100J/g以下であることが好ましい。結晶エネルギーが35J/g未満の場合、自動車内装材用積層発泡シートと表皮材との接着安定性が悪く、表皮材が剥離する傾向がある。一方、結晶化エネルギーが100J/gより大きい場合は、表皮材20との接着性を付与するために自動車内装材用積層発泡シートから2次成形により2次発泡積層成形体を得る時の接着剤層32が積層された自動車内装材用積層発泡シートの加熱に多大の熱量を必要とする傾向がある。
【0075】
このように、表皮材20との良好な接着性を得るには、ポリオレフィン系フィルムを用いるのが好ましいが、更に好ましくは線状低密度ポリエチレン系樹脂からなるポリエチレンフィルムを用いるのがよい。線状低密度ポリエチレン系樹脂は結晶性を有し、加熱により安定して低粘度状態が維持できるため、表皮材に、溶融した線状低密度ポリエチレン系樹脂が良好にしみ込むことによるアンカー効果が効果的に発揮され、表皮材20との強固な接着性を示すことを可能とする。
【0076】
ポリオレフィン系フィルムの厚みは、15〜100μmであることが好ましく、20〜50μmであることがさらに好ましい。ポリオレフィン系フィルムの厚みが15μmより薄い場合、加熱により低粘度化したポリオレフィン系フィルムが表皮材20の中に浸透せず、適度なアンカー効果が発揮できず表皮材との良好な接着性を示さない傾向がある。一方、100μmより厚い場合、加熱により低粘度化したポリオレフィン系フィルムが大量に表皮材20に浸透し表皮材の触感を悪化させる傾向がある。
【0077】
次に、本発明の自動車内装材1および自動車内装部品を製造する方法について説明する。
【0078】
本発明における発泡層10(1次発泡シート)は、例えば、以下のように製造することができる。すなわち、基材樹脂である耐熱性樹脂に対し、必要に応じて各種添加剤をブレンドしたものを、押出機を用いて樹脂温度150〜400℃にて溶融・混練する。次いで、高温高圧(樹脂温度150〜400℃および樹脂圧3〜50MPa)下にある押出機内へ、耐熱性樹脂100重量部に対して炭化水素系発泡剤2.0〜5.0重量部を圧入し、さらに、樹脂温度を発泡最適温度域(150〜300℃)に調節した後、サーキュラーダイなどを用い、低圧帯(通常は大気中)に押出し発泡させて円筒状発泡体を得る。その後、例えば0.5〜40m/分の速度でマンドレル(円筒状冷却筒)などに接触させて延伸、冷却した後、切り開いてシート状にして巻き取る などの方法により製造することができる。
【0079】
前記発泡層10に非発泡層11および13を形成して熱可塑性樹脂発泡積層シート1を製造する方法、さらにこれに異音防止材20、ホットメルトフィルム層32並びに表皮材30を積層する方法として、予め発泡成形して巻き取られた発泡層10を繰出しながら、押出機から供給される溶融状態の非発泡層13の基材樹脂を、発泡層10とラテックス接着剤18が塗布された異音防止材20で挟み込む形で層状に積層した後、ラミネートロールおよびバックロールからなる冷却ロールなどによって圧着し片面側に非発泡層13および異音防止材20が積層された発泡積層シートを形成する。その後、積層加工面を反転させ、図2に例示するように、押出機から供給される溶融状態の非発泡層11の基材樹脂を、発泡層10とホットメルトフィルム接着剤層32で挟み込む形で層状に積層した後、ラミネートロールおよびバックロールからなる冷却ロール等によって圧着し、両面に非発泡層11または13、異音防止材20またはホットメルトフィルム接着剤層32が形成された熱可塑性樹脂発泡積層シートを作製する。その後、熱可塑性樹脂発泡積層シートに積層されたホットメルトフィルム層32を遠赤外線ヒータ、加熱ロール等を用い加熱により表面軟化させ、表皮材30を冷却ローラーなどのより圧着し、表皮材30を熱可塑性樹脂発泡積層シートに形成する方法が挙げられる。
【0080】
なかでも、図2に例示するように、発泡層10の押出発泡シートへの非発泡層11または13の押出をインラインで行って積層し、異音防止材20またはホットメルト接着剤層32も、非発泡層11または13を発泡層10へ積層する際に一括で積層する方法が、製造工程の簡略化という点で好ましい。
【0081】
本発明におけるホットメルトフィルム接着剤層32の積層方法として、押出機から供給される溶融状態の非発泡層11の基材樹脂を発泡層10にバインダーラミネートする際において、ラミネートするラミネートロールの表面温度を、積層するホットメルトフィルムの10%延伸時の引張強度が15N/50mm以上である温度となるように、温調器を用いて制御された温冷水をラミネートロール内に通水させて温度制御することにより、押し出された熱溶融状態にある非発泡層11の構成樹脂が保有している熱によりホットメルトフィルム接着剤層32が溶融軟化し、ライン中のフィルム張力(繰出バックテンション)によりフィルムが破断することを防止することができ、かつ、ホットメルトフィルムに発生する皺を防止するために、繰出バックテンション(以降、「繰出機張力」と称する場合がある)を適宜かけることができる。
【0082】
押出ラミネート工程におけるラミネートロールの表面温度が、該温度におけるホットメルトフィルムの10%延伸時の引張強度として15N/50mm未満である温度の場合、ホットメルトフィルムの破断が発生し、効果的にホットメルトフィルムを積層することができなくなる場合がある。
なお、ラミネートロールの表面温度におけるホットメルトフィルムの10%延伸時の引張強度とは、例えば、ホットメルトフィルムから切り出した幅50mm、長さ150mmの試験片を、引張試験機(島津製作所社製、オートグラフDSS2000)を用い、表面温度に設定された恒温器中にて、評点間距離100mm、引張速度200mm/分の条件にて引張試験を行った際の、10%延伸時での引張強度である。
【0083】
他方、ホットメルトフィルムの繰出し張力を低下させても、ホットメルトフィルムの破断は回避できるものの、ライン中でのホットメルトフィルムのたるみが発生し、積層する位置精度が低下するだけではなく、ホットメルトフィルムに皺が入り、ホットメルトフィルム折れ等の外観不良が発生する。
【0084】
積層するホットメルトフィルムの10%延伸時の引張強度が15N/50mm以上になるよう、冷却ローラーの温度を制御する範囲としては、用いるホットメルトフィルム接着剤種の引張特性(伸び、強度)およびフィルム厚みにもよるが、一般的には、60℃未満が好ましい。
【0085】
上記のように得られた自動車内装用基材1(1次発泡積層シート)から賦型により自動車内装部品(2次発泡積層成形体)を得る成形方法としては、上下にヒータを備えた加熱炉の中央に自動車内装材1をクランプして導き、成形に適した温度(例えば、発泡積層シートの表面温度を135〜155℃)になるように加熱させた後、表皮材30が室内側となるようにして、温度調節した金型にてプレス冷却し、賦形する方法が挙げられる。
【0086】
成形方法の例としては、具体的には、例えば、プラグ成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形などの方法があげられる。
【0087】
自動車内装用基材1中の発泡層10(1次発泡シート)を、自動車内装部品を成形する際の加熱により2次発泡させる場合には、1次発泡シートに対して、通常1.2〜4倍に2次発泡させるのが好ましく、さらには1.5〜3倍に2次発泡させるのが好ましい。従って、2次発泡後の発泡層(2次発泡シート)の発泡倍率は、3.6〜80倍が好ましく、7.5〜45倍がより好ましく、10〜40倍がさらに好ましい。2次発泡倍率が1.2倍未満では、柔軟性に劣り、曲げ等による破損が生じ易い傾向がある。2次発泡倍率が4倍を超えると、強度が低下する傾向がある。また、2次発泡後の発泡層(2次発泡シート)の厚さは、1.2〜20.0mmが好ましく、2.25〜10.5mmがより好ましく、3.0〜7.0mmがさらに好ましい。2次発泡後の発泡層の厚さが1.2mmより小さいと、強度および断熱性に劣り、自動車内装部品として適当でない場合がある。厚さが20mmを超えると、成形賦型時の形状発現性が劣ったり、必要以上に嵩高くなり車室内が狭くなる傾向がある。
【0088】
自動車内装用基材1の全体の目付けは、200〜850g/mが好ましく、240〜600g/mがさらに好ましい。自動車内装用基材1の全体の目付けが200g/m未満では、強度が劣り、曲げ等による破損が生じ易い傾向がある。850g/mを超えると、重量増に伴う取扱い性(内装作業者のハンドリング性)が低下し、本発明の課題である軽量性に反する傾向がある。
【0089】
以上、本発明に係わる自動車内装用基材及び自動車内装用基材の製造方法の実施態様を種々説明したが、本発明は前記の態様に限定されるものではない。例えば、自動車内装用基材は用途として電車、航空機、建築物の室内など、自動車以外の内装材としても使用することができ、広義に解釈されるべきものである。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施し得るものである。
【実施例】
【0090】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
なお、実施例または比較例に用いた樹脂を表1に、接着剤層および表皮層の材料を表2に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
なお、表1〜表2に示した各略号に関する記載は次の通りである。
PPE :ポリフェニレンエーテル樹脂
PS :ポリスチレン樹脂
SMAA :スチレン−メタクリル酸共重合体(耐熱ポリスチレン樹脂)
HIPS :ハイインパクトポリスチレン樹脂
実施例または比較例にて実施した評価方法を、以下に示す。
【0094】
(発泡層および成形体の厚さ)
得られた1次発泡シートおよび成形体(自動車天井材)について、幅方向に20ヵ所の厚さを測定し、その測定値の平均値を算出した。
【0095】
(発泡倍率)
得られた1次発泡シートの密度dfをJIS K7222に準じて測定し、別途、変性PPE系樹脂の密度dpをJIS K7112に準じて測定し、発泡倍率=dp/dfの式により算出した。
【0096】
(セル径)
得られた1次発泡シートの発泡層の断面を、光学顕微鏡を用いて観察して20個のセル径を測定し、その測定値の平均値を算出した。
【0097】
(目付)
得られた1次発泡シートの任意の5ヵ所より、100mm×100mmの大きさの試験片を切り出し、それらの重量を測定した後、平均値を算出し、1平方メートル当たりに換算した。
【0098】
(ホットメルトフィルムの引張強度)
用いるホットメルトフィルムの任意の5箇所より、幅50mm、長さ150mmの試験片を切り出し、その試験片を引張試験機(島津製作所社製、オートグラフDSS2000)を用い、ラミネートロールの表面温度に該当する温度に設定した恒温器中にて、評点間距離100mm、引張速度200mm/分にて、以下の条件下での引張試験を実施した。
【0099】
(実施例1)
[発泡シートの作製]
PPE樹脂成分40重量%およびPS樹脂成分60重量%となるようにPPE樹脂(A)57.1重量部およびPS樹脂(B)42.9重量部とを混合した混合樹脂100重量部に対して、イソブタンを主成分とする炭化水素系発泡剤(イソブタン/ノルマルブタン=85/15重量%)3.5重量部およびタルク0.32重量部を押出機により樹脂温度270℃にて混練し、樹脂温度を196℃まで冷却し、圧力10MPaでサーキュラーダイスにより押出し、引き取りロールを介して巻取りロールにロール状に巻取り、厚さ2.3mm、発泡倍率13.8倍、独立気泡率88%、セル径0.16mm、目付150g/mの発泡シート(1次発泡シート)の巻物を得た。
[非発泡層13および異音防止層20の積層]
次いで、前記発泡シートをロールより繰り出しながら、スチレン−メタクリル酸共重合体(C)50.0重量部およびHIPS(D)50.0重量部を混合した混合樹脂を、押出機を用い樹脂温度250℃にて溶融・混練し、Tダイを用いてフィルム状に押出し、前記発泡シート(発泡層10)と異音防止層(20)との間に挟むように、溶融状態でフィルム状の室外側非発泡層を積層し、ら目付150g/mの耐熱PS系樹脂非発泡層(13)を形成した。
この際、異音防止層(20)としては、スパンレース不織布[(株)ユウホウ社製、セレスWAI−R8020、目付20g/m]に、カルボキシル化変性SB系樹脂ラテックス(E)80重量%およびカルボキシル化変性AS系樹脂ラテックス(F)20重量%を混合したラテックス接着剤を面目付5g/m(固形分量)になるよう塗布したものを用い、ラテックス接着剤塗布面が非発泡層(13)に接するように積層した。
[非発泡層11および接着剤層32の積層]
次いで、得られた耐熱PS系樹脂非発泡層(13)を形成し、異音防止層(20)を積層した積層シートを繰り出しながら、PPE系樹脂成分が20重量%となるようPPE樹脂(A)28.6重量部、PS樹脂(B)66.4重量部およびHIPS樹脂(D)5.0重量部を混合した混合樹脂を、樹脂温度が250℃となるようフィルム状に押出し、耐熱PS系樹脂室外側非発泡層(13)を形成したシートの反対面と、ホットメルト接着剤(32)との間に挟むように、目付120g/mの変性PPE系樹脂非発泡層(11)を形成した。
変性PPE系樹脂非発泡層(11)を、Tダイを用いてフィルム状に押出して積層する際に、図2に示すように、テフロン(登録商標)表面加工処理されたラミネートロール側斜め上方よりホットメルトフィルム(32)を繰出し、皺取り用のロールを経由して、ラミネートロールとバックロール間では挟み込むように、積層した。この際、ラミネートロールの表面温度が40℃となるよう、温調器の設定温度を38℃とした。<なお、ラミロール表面温度である40℃におけるホットメルトフィルムの10%伸長時の引張強度は、18.3N/50mmである。>また、ホットメルトフィルムを繰り出す際の張力設定値は2.5Nとした。
ここで、ラミネートロールの温度調整は、以下のように行った。ラミネートロール内部に設けた通水用配管に対して、ロータリージョイントを介し、フレキシブルホースにて配管接続された箱型温調器(株式会社サーモテック社製、金型温度調整機KCT II−10012HHDN/B)を用いて、温度調整された温水を通水した。その際、ラミネートロールの表面温度を、非接触型温度計[SSC(株)製、非接触温度センサーSST104−P0020]を用いて測定し、表面温度が所定温度となるように、温調器の設定温度を調整した。
ホットメルトフィルムの積層時にフィルムの破断、皺等の外観不良は、認められなかった。製造条件および評価結果を、表3に示す。
【0100】
(実施例2)
変性PPE系樹脂室内側非発泡層(11)の積層加工時のホットメルトフィルム接着剤(32)積層に用いられるテフロン(登録商標)表面加工処理されたラミネートロールの表面温度を23℃になるよう、温調器の設定温度を20℃にした以外は、実施例1と同様な方法にて、ホットメルトフィルムを積層した。<なお、ラミロール表面温度である23℃における、ホットメルトフィルムの10%伸長時の引張強度は、22.5N/50mmである。>
ホットメルトフィルムの積層時にフィルムの破断、皺等の外観不良は、認められなかった。製造条件および評価結果を、表3に示す。
【0101】
(実施例3)
変性PPE系樹脂室内側非発泡層(11)の積層加工時のホットメルトフィルム接着剤(32)積層に用いられるテフロン(登録商標)表面加工処理されたラミネートロールの表面温度を50℃になるよう、温調器の設定温度を47℃にした以外は、実施例1と同様な方法にて、ホットメルトフィルムを積層した。<なお、ラミロール表面温度である50℃における、ホットメルトフィルム10%伸長時の引張強度は、15.5N/50mmである。>
ホットメルトフィルムの積層時にフィルムの破断、皺等の外観不良は、認められなかった。製造条件および評価結果を、表3に示す。
【0102】
(比較例1)
変性PPE系樹脂室内側非発泡層(11)の積層加工時のホットメルトフィルム接着剤(32)積層に用いられるテフロン(登録商標)表面加工処理されたラミネートロールの表面温度を60℃になるよう、温調器の設定温度を58℃にした以外は、実施例1と同様な方法にて、ホットメルトフィルムを積層しようとした。<なお、ラミロール表面温度である60℃における、ホットメルトフィルム10%伸長時の引張強度は、11.8N/50mmである。>
しかし、ホットメルトフィルムの破断が発生し、安定的にホットメルトフィルムを積層することはできなかった。製造条件および評価結果を、表3に示す。
【0103】
(比較例2)
比較例1にて、ホットメルトフィルム破断が発生したため、ホットメルトフィルムの繰出張力を2N(比較例1に対して20%減した条件)とした以外は、比較例1と同様な方法にて、ホットメルトフィルムを繰出し積層を行った。
フィルムの破断は解消されたが、フィルムに皺が発生し、外観良好な積層品を得ることができなかった。製造条件および評価結果を、表3に示す。
【0104】
【表3】

【符号の説明】
【0105】
1 自動車内装用基材
10 発泡層
11 室内側非発泡層
13 室外側非発泡層
18 接着剤層
20 異音防止材
30 表皮材
32 ホットメルトフィルム系接着剤層
50 熱可塑性樹脂発泡積層シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を押出発泡成形して得られる発泡層の表面に、押出ラミネート法にて熱可塑性樹脂からなる非発泡層を積層してなる熱可塑性樹脂発泡積層シートに、ホットメルトフィルム接着剤を介して表皮材が積層されてなる自動車内装用基材の製造方法であって、押出機より押し出された溶融状態の非発泡層用熱可塑性樹脂を、発泡層とホットメルトフィルム接着剤との間に挟み込んで積層した後、ラミネートロールおよびバックロールにて圧着する工程において、ラミネートロールの表面温度を、ホットメルトフィルムの10%延伸時の引張強度が15N/50mm以上である温度に制御することを特徴とする、自動車内装用基材の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂発泡積層シートの発泡層を構成する熱可塑性樹脂が、ポリフェニレンエーテル系樹脂25〜70重量%およびポリスチレン系樹脂75〜30重量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の自動車内装用基材の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂発泡積層シートの発泡層の厚さが1〜5mm、発泡倍率が3〜20倍および目付が100〜300g/mであることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車内装用基材の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂発泡積層シートの非発泡層を構成する熱可塑性樹脂が、ポリフェニレンエーテル系樹脂5〜70重量%およびポリスチレン系樹脂95〜30重量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、および耐熱ポリスチレン系樹脂の少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の自動車内装用基材の製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂発泡積層シートの非発泡層の目付が50〜300g/mであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の自動車内装用基材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−93149(P2011−93149A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247916(P2009−247916)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】