説明

自動車用のトルクロッド

【課題】衝撃荷重で好適に変形・破壊可能で、かつ生産性を高めることができる自動車用のトルクロッドを提供する。
【解決手段】自動車用のトルクロッド20は、連結ロッド部42のうち内筒32側に設けられた先端部44がブラケット30に埋設され、埋設された先端部44の傾斜先端45がブラケット30を破壊可能に先端鋭利形状に傾斜され、傾斜先端45からブラケット30に向けて衝撃荷重F1が作用した場合に、傾斜先端45が内筒32を回避してブラケット30を破壊することにより連結ロッド部42がブラケット30を貫通可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源となるパワープラントを車体に連結してパワープラントや車体の振動を絶縁(緩和)する自動車用のトルクロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のトルクロッドは、一対のブッシュがロッド部で連結され、連結された一方のブッシュが車体に取り付けられ、連結された他方のブッシュがパワープラントに取り付けられることで、パワープラントおよび車体を連結している。
このトルクロッドのなかには、所定部位にノッチ(くぼみ、切欠)を設けて脆弱部を形成し、パワープラントからトルクロッドに衝撃荷重が作用した際に、脆弱部を変形・破壊させて衝撃荷重を吸収するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−112537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、脆弱部の変形・破壊条件(すなわち、強度)は、ノッチの形状やノッチを設ける部位などに影響を受ける。
よって、トルクロッドに作用した衝撃荷重で脆弱部を好適に変形・破壊させるためには、ノッチの形状やノッチを設ける部位などを十分に検討する必要があり、そのことがトルクロッドの生産性を高める妨げになっていた。
【0005】
本発明は、衝撃荷重で好適に変形・破壊可能で、かつ生産性を高めることができる自動車用のトルクロッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、ロッド部の少なくとも一端部に外筒を有するブラケットが設けられ、前記外筒の内部において前記ロッド部の延長線上に内筒が設けられ、前記内筒がパワープラントまたは車体に取り付けられる自動車用のトルクロッドにおいて、前記ロッド部のうち前記内筒側に設けられた前記一端部が前記ブラケットに埋設され、前記埋設された前記一端部の傾斜先端が前記ブラケットを破壊可能に先端鋭利形状に傾斜され、前記傾斜先端から前記ブラケットに向けて衝撃荷重が作用した場合に、前記傾斜先端が前記内筒を回避して前記ブラケットを破壊することにより前記ロッド部が前記ブラケットを貫通可能としたことを特徴とする。
【0007】
ここで、外筒の内部においてロッド部の延長線上に内筒が設けられている。この内筒は金属製の部材である。
よって、パワープラントに衝撃荷重が作用した場合、ロッド部がブラケット側に貫通して移動することを内筒で遮られることが考えられる。
そこで、請求項1において、ロッド部のうち内筒側に設けられた一端部をブラケットに埋設し、埋設した一端部に先端鋭利形状に傾斜された傾斜先端を備え、傾斜先端でロッド部の進行方向を変えるとともにブラケットを破壊可能とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、ブラケットに埋設した傾斜先端を先端鋭利形状に傾斜し、ブラケットを破壊可能とした。
このように、ブラケットに埋設した傾斜先端を先端鋭利形状に傾斜することで、ロッド部にブラケット(外筒)の方向への衝撃荷重が作用した場合に、ロッド部の進行方向を傾斜先端で変えることができる。
【0009】
ロッド部の進行方向を変えることで、傾斜先端が内筒を回避して移動することが可能になり、傾斜先端でブラケットを破壊することができる。ブラケットを破壊することで、破壊したブラケットを連結ロッド部が貫通する。
これにより、パワープラントをブラケット側に移動させてパワープラントに作用した衝撃荷重を吸収することができる。
【0010】
さらに、ロッド部の一端部に傾斜先端を備えることで、この一端部でブラケットを好適に変形・破壊することができる。
これにより、従来技術で説明したように、ノッチ(くぼみ、切欠)を設ける部位やノッチの形状などを十分に検討する必要がなく、トルクロッドの生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る自動車用のトルクロッドを備えた車体前部構造体を示す斜視図である。
【図2】図1の自動車用のトルクロッドを示す斜視図である。
【図3】図2のトルクロッドのうち大ブッシュの破断状態を示す平面図である。
【図4】図3の4部拡大図である。
【図5】図2のトルクロッドの大ブッシュを示す断面図である。
【図6】本発明に係る自動車用のトルクロッドに衝撃荷重が作用した例を説明する図である。
【図7】本発明に係る自動車用のトルクロッドの大ブッシュを破壊する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例】
【0013】
実施例に係る自動車用のトルクロッド20について説明する。
図1に示すように、車体前部構造体10は、車体前後方向に向けて配置された左右のサイドフレーム11,12と、左右のサイドフレーム11,12の下方に取り付けられたフロントサブフレーム13と、フロントサブフレーム(車体)13の上部13aに取り付けられたステアリングギヤボックス16と、フロントサブフレーム13およびパワープラント19を連結する自動車用のトルクロッド(以下、「トルクロッド」という)20とを備えている。
【0014】
ステアリングギヤボックス16は、ステアリングギヤ(図示せず)などを収容する円筒状のケースである。
このステアリングギヤボックス16は、フロントサブフレーム13の上部13aに車体幅方向を向いて取り付けられている。
ステアリングギヤボックス16から延出されたステアリングシャフト17にステアリングホイール18が取り付けられている。
【0015】
フロントサブフレーム13の上部13aのうち車体幅方向の中央部にトルクロッド20を介してパワープラント19のうち車体幅方向の後中央部19aが連結されている。
パワープラント19は、一例として、エンジンとトランスミッションとが一体に形成され、左右のサイドフレーム11,12間に横向きに配置されたエンジン/トランスミッションユニットである。
このパワープラント19は、左サイドフレーム11に左取付ブラケット(図示せず)を介して取り付けられ、右サイドフレーム12に右取付ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。
【0016】
図1、図2に示すように、トルクロッド20は、フロントサブフレーム13に取り付けられる大ブッシュ21と、パワープラント19に取り付けられる小ブッシュ22と、大ブッシュ21および小ブッシュ22を連結する連結部23とを備えている。
【0017】
フロントサブフレーム13に大ブッシュ21がボルト26を介して取り付けられ、パワープラント19に小ブッシュ22がボルト28を介して取り付けられることで、フロントサブフレーム13およびパワープラント19がトルクロッド20で連結されている。
フロントサブフレーム13およびパワープラント19をトルクロッド20で連結することで、パワープラント19やフロントサブフレーム13の振動を絶縁(緩和)する。
【0018】
加えて、車体前部構造体10に車体前方側から衝撃荷重が作用し、衝撃荷重がパワープラント19に伝わった場合、トルクロッド20の大ブッシュ21を破壊させて、パワープラント19をフロントサブフレーム13側に移動させることができる。
このように、フロントサブフレーム13側にパワープラント19を移動させることで、パワープラント19に伝わった衝撃荷重を好適に吸収することができる。
【0019】
図3に示すように、大ブッシュ21は、樹脂製の外筒(外筒ブラケット)31と、外筒31内に同軸上に配置された金属製の内筒32と、内筒32を外筒31に保持するゴム弾性体(弾性体)33とを備えている。
大ブッシュ21の外筒31を樹脂製の部材とすることでトルクロッド20の軽量化を図ることができる。
【0020】
内筒32の貫通孔32aにボルト26を差し込み、ねじ部26a(図2参照)をナット27にねじ結合することで内筒32(すなわち、大ブッシュ21)がフロントサブフレーム13の上部13aのうち車体幅方向の中央部(具体的には、上部13aのうち車体幅方向の中央部)に取り付けられている。
【0021】
小ブッシュ22は、アルミニウム合金製の外筒36と、外筒36内に同軸上に配置された金属製の内筒37と、内筒37を外筒36に保持するゴム弾性体38とを備えている。
内筒37の貫通孔37aにボルト28を差し込み、ねじ部をナット(図示せず)にねじ結合することで小ブッシュ22がパワープラント19(具体的には、車体幅方向の後中央部19a)に取り付けられている。
【0022】
連結部23は、大ブッシュ21の外筒31に一体形成された連結ブラケット41と、小ブッシュ22の外筒36に一体形成されたアルミニウム合金製の連結ロッド部(ロッド部)42とを備えている。
連結ロッド部42の先端部(少なくとも一端部)44に連結ブラケット41が一体に設けられることで、大ブッシュ21および小ブッシュ22が連結部23で連結されている。
【0023】
図3〜図5に示すように、連結ロッド部42は、車体前後方向に向けて延出されたアルミニウム合金製の部材で、基端部43が小ブッシュ22の外筒36に一体形成されている。
連結ロッド部42をアルミニウム合金製の部材とすることで、連結ロッド部42の重量を鋼製の部材と比較して軽量化を図るとともに、樹脂製の部材と比較して剛性を高めることができる。
【0024】
さらに、連結ロッド部42は、先端部44が連結ブラケット41および外筒31(すなわち、後述するブラケット30)に埋設されている。
連結ロッド部42の先端部44は、先端鋭利形状に傾斜された傾斜先端45と、傾斜先端45および左側壁42aで形成された鋭角部46と、傾斜先端45近傍に円形状に形成された充填孔47とを有している。
【0025】
傾斜先端45は、連結ロッド部42の右側壁42b(すなわち、連結ロッド部42の軸線53)に対して傾斜角θ(θ<90°)で傾斜されている。
傾斜角θは、軸線53に対して直交する方向から傾斜先端45が大きく(十分に)傾斜するように設定されている。傾斜先端45を大きく(十分に)傾斜させることで、鋭角部46がブラケット30を破壊可能に先細状に形成されている。
【0026】
傾斜先端45を大きく(十分に)傾斜させることで、連結ロッド部42に衝撃荷重が作用した際に、連結ロッド部42の進行方向を傾斜先端45で変えることができる。
連結ロッド部42の進行方向を傾斜先端45で変えることで、傾斜先端45を内筒32から確実に回避できる。
これにより、連結ロッド部42に衝撃荷重が作用した際に、連結ロッド部42の進行(移動)を内筒32で遮らないようにして傾斜先端45(鋭角部46)でブラケット30(大ブッシュ21)を確実に破壊できる。
【0027】
さらに、連結ロッド部42の先端部44に傾斜先端45(鋭角部46)を備えることで、この傾斜先端45(鋭角部46)でブラケット30(大ブッシュ21)を好適に変形・破壊することができる。
これにより、従来技術で説明したように、ノッチ(くぼみ、切欠)を設ける部位やノッチの形状などを十分に検討する必要がなく、トルクロッド20の生産性を高めることができる。
【0028】
鋭角部46は、傾斜先端45および左側壁42aで形成されることで、平面視で十分に尖った先細状に形成されている。
鋭角部46は、内筒32の軸線51に対して距離S1寸法だけ左側にずれた位置に配置されている。
内筒32の軸線51は連結ロッド部42の延長線52上に設けられている。
延長線52は、連結ロッド部42の軸線53から同軸上に延ばされた線である。
【0029】
この鋭角部46は、後述する環状の枠部55の外周面(弾性体の外周面)55aのうち近接部位55bに比較的近接して設けられている。
この状態において、鋭角部46(傾斜先端45)が内筒32(具体的には、軸線51)から距離S2だけ離れた位置に配置されている。
【0030】
ここで、連結ロッド部42の進行方向を傾斜先端45で変える際に、進行方向の変化量は連結ロッド部42の移動距離に対応する。
すなわち、連結ロッド部42の移動距離を比較的大きく確保することで、連結ロッド部42の進行方向の変化量を大きく確保できる。
そこで、鋭角部46(傾斜先端45)を内筒32(具体的には、軸線51)から距離S2だけ離して配置した。
【0031】
よって、連結ロッド部42の進行方向を変えるために必要とする距離S2を比較的大きく確保できる。
これにより、連結ロッド部42に衝撃荷重が作用して連結ロッド部42の進行方向を傾斜先端45で変える際に、連結ロッド部42の進行方向を十分に変えて傾斜先端45を内筒32から確実に回避できる。
【0032】
加えて、鋭角部46を内筒32(具体的には、軸線51)から距離S1だけ離して配置した。
これにより、連結ロッド部42に衝撃荷重が作用して連結ロッド部42の進行方向を傾斜先端45で変える際に、連結ロッド部42の進行方向をさらに十分に変えて傾斜先端45を内筒32から一層確実に回避できる。
【0033】
円形状の充填孔47には樹脂が充填されている。
すなわち、連結ロッド部42の先端部44をブラケット30に埋設する際に、円形状の充填孔47に樹脂が充填され、充填孔47にアンカ部48が形成される。
充填孔47にアンカ部48が形成されることで、連結ロッド部42の先端部44にブラケット30を一層良好に一体的に設けることができる。
さらに、アンカ部48が先端部44の抜け防止部材を兼ねており、先端部44がブラケット30から抜け出さないように、ブラケット30に先端部44を接着剤で接着する必要がない。
【0034】
大ブッシュ21の外筒31および連結ブラケット41が同じ樹脂で一体に形成されている。一体形成された大ブッシュ21の外筒31および連結ブラケット41でブラケット30が構成されている。
このブラケット30の成形後、ブラケット30の外筒31内に内筒32およびゴム弾性体33が設けられ、大ブッシュ21および連結ブラケット41が一体に形成される。
【0035】
連結ブラケット41に連結ロッド部42の先端部44が埋設された状態において、連結ロッド部42の車体後方側で、かつ、連結ロッド部42の延長線52上に大ブッシュ21の内筒32が設けられている。
【0036】
大ブッシュ21のゴム弾性体33は、外筒31の内周31aに沿って環状に形成された枠部55と、枠部55内に一体に形成された内筒支持部56とを有している。
枠部55および内筒支持部56間に開口部33a,33bが形成されている。
【0037】
環状の枠部55は、外筒31の内周31aに沿って環状に形成された外周面(弾性体の外周面)55aを有している。
この外周面55aのうち連結ロッド部42の先端部44側に対峙する近接部位55bが鋭角部46に比較的近接して設けられている。
【0038】
内筒支持部56は、枠部55の内周に両側部が一体に形成され、車体幅方向の中央に内筒32が設けられている。
この内筒支持部56は、連結ロッド部42の先端部44側の部位(すなわち、開口部33a側の部位)に先端部44に向けて先端鋭利形状に突出した突出部56aを有している。
【0039】
突出部56aは、延長線52に頂部56bが突出するように形成されることで、略山形(略富士山型)に形成されている。
よって、突出部56aは、頂部56bの左側に形成された左傾斜面57と、頂部56bの右側に形成された右傾斜面58とを有している。
左傾斜面57は、連結ロッド部42の傾斜先端45のうち鋭角部46側の部位45aに対向するように設けられ、かつ、傾斜先端45と略平行に設けられている。
【0040】
このように、連結ロッド部42の傾斜先端45に対向する位置に左傾斜面57を設けることで、連結ロッド部42に衝撃荷重が作用した際に、左傾斜面57で傾斜先端45を受けて、連結ロッド部42の移動方向を左傾斜面57で一層確実に変えることができる。
これにより、傾斜先端45が内筒32を一層確実に回避することが可能になり、傾斜先端45でブラケット30(大ブッシュ21)を一層確実に破壊することができる。
【0041】
つぎに、トルクロッド20で車体前方側から後方に向けて作用した衝撃荷重を吸収する例を図6、図7に基づいて説明する。
図6(a)に示すように、車体前方側から車体後方に向けて衝撃荷重が作用することにより、パワープラント19に衝撃荷重F1が矢印の如く作用する。
ここで、パワープラント19に小ブッシュ22の内筒37がボルト28およびナット(図示せず)で取り付けられている。
よって、パワープラント19に作用した衝撃荷重F1がボルト28およびナット(図示せず)を経て小ブッシュ22に伝わる。そして、小ブッシュ22に伝わった衝撃荷重が連結ロッド部42に衝撃荷重F2として矢印の如く伝わる。
【0042】
図6(b)に示すように、連結ロッド部42に衝撃荷重F2が伝わることで、先端部44のアンカ部48(具体的には、アンカ部48の端部48a,48a)が剪断(破損)される。
先端部44のアンカ部48の端部48a,48aが破損することで、先端部44が大ブッシュ21(環状の枠部55)に向けて矢印Aの如く移動する。
連結ロッド部42の先端部44が枠部55に向けて移動することで、先端部44の鋭角部46が枠部55(具体的には、枠部55の近接部位55b)を押圧する。
【0043】
図7(a)に示すように、近接部位55bを鋭角部46で押圧することで、近接部位55bや近接部位55bの近傍が破壊される。
よって、連結ロッド部42の先端部44が矢印Aの如く継続して移動することで、傾斜先端45が内筒支持部56の突出部56aに当接する。
ここで、傾斜先端45は傾斜角θ(図4参照)で傾斜されている。よって、連結ロッド部42の移動方向を傾斜先端45で内筒32から離れる方向に変えることができる。
【0044】
この状態で、連結ロッド部42の傾斜先端45が内筒支持部56の突出部56aに当接する。
突出部56aに当接した傾斜先端45が左傾斜面57に案内され、大ブッシュ21の内筒32から離れる方向に矢印Bの如く移動する(すなわち、傾斜先端45が内筒32から離れる方向に移動する)。
このように、傾斜先端45が内筒32から離れる方向に移動することで、傾斜先端45が内筒支持部56(具体的には、内筒支持部56のうち内筒32から離れた部位56c)に向けて移動する。
【0045】
図7(b)に示すように、内筒支持部56の部位56cを傾斜先端45で破壊し、傾斜先端45を継続して矢印Bの如く移動することで、枠部55の部位55cおよび外筒31の部位31bを破壊する。
よって、連結ロッド部42の傾斜先端45で大ブッシュ21を破壊することができる。
【0046】
このように、連結ロッド部42の傾斜先端45を内筒32から回避させて傾斜先端45で大ブッシュ21を破壊することで、内筒32に遮られることなく連結ロッド部42を大ブッシュ21に貫通させることができる。
連結ロッド部42を大ブッシュ21に貫通させることで、小ブッシュ22を車体後方に向けて移動することができる。
【0047】
小ブッシュ22を車体後方に向けて移動することで、パワープラント19を移動前位置P1から移動後位置P2まで移動量(L1−L2)分だけ車体後方に向けて移動させることができる。
このように、連結ロッド部42の傾斜先端45で大ブッシュ21を破壊させてパワープラント19を車体後方に向けて移動することで、パワープラント19に作用した衝撃荷重F1を好適に吸収することができる。
【0048】
なお、本発明に係る自動車用のトルクロッド20は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、大ブッシュ21の内筒32をフロントサブフレーム13に取り付けるとともに小ブッシュ22の内筒37をパワープラント19に取り付けた例について説明したが、これに限定するものではない。
例えば、大ブッシュ21の内筒32をパワープラント19に取り付けるとともに小ブッシュ22の内筒37をフロントサブフレーム13に取り付けることも可能である。
【0049】
また、前記実施例では、大ブッシュ21の外筒31を樹脂で形成し、小ブッシュ22の外筒36をアルミニウム合金で形成した例について説明したが、これに限らないで、大ブッシュ21および小ブッシュ22の両方の外筒31,36を樹脂で形成することも可能である。
【0050】
さらに、前記実施例では、突出部56aの頂部56bを延長線52に配置して左右の傾斜面57,58を備え、左傾斜面57を連結ロッド部42の傾斜先端45と略平行に形成した例について説明したが、これに限定するものではない。
例えば、突出部56aの傾斜面全域を連結ロッド部42の傾斜先端45と略平行に形成することも可能である。
【0051】
また、前記実施例では、大ブッシュ21に備えたゴム弾性体33の内筒支持部56に突出部56aを設けた例について説明したが、これに限らないで、内筒支持部56に突出部56aを設けないように構成することも可能である。
この場合でも、連結ロッド部42の先端部44に傾斜先端45を設けることで、傾斜先端45で連結ロッド部42の進行方向を変えて、傾斜先端45を内筒32から確実に回避できる。
【0052】
また、前記実施例で示した車体前部構造体10、フロントサブフレーム13、パワープラント19、自動車用のトルクロッド20、ブラケット30、外筒31、内筒32、ゴム弾性体33、連結ロッド部42、先端部44、傾斜先端45、外周面55aおよび突出部56aなどの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、動力源となるパワープラントを車体に連結してパワープラントや車体の振動を絶縁(緩和)する自動車用のトルクロッドを備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0054】
10…車体前部構造体、13…フロントサブフレーム(車体)、19…パワープラント、20…自動車用のトルクロッド、30…ブラケット、31…外筒、32…内筒、33…ゴム弾性体(弾性体)、42…連結ロッド部(ロッド部)、44…先端部(少なくとも一端部)、45…傾斜先端、52…延長線、55a…外周面(弾性体の外周面)、56a…突出部、F1…衝撃荷重。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド部の少なくとも一端部に外筒を有するブラケットが設けられ、前記外筒の内部において前記ロッド部の延長線上に内筒が設けられ、前記内筒がパワープラントまたは車体に取り付けられる自動車用のトルクロッドにおいて、
前記ロッド部のうち前記内筒側に設けられた前記一端部が前記ブラケットに埋設され、
前記埋設された前記一端部の傾斜先端が前記ブラケットを破壊可能に先端鋭利形状に傾斜され、
前記傾斜先端から前記ブラケットに向けて衝撃荷重が作用した場合に、
前記傾斜先端が前記内筒を回避して前記ブラケットを破壊することにより前記ロッド部が前記ブラケットを貫通可能としたことを特徴とする自動車用のトルクロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−169342(P2011−169342A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31362(P2010−31362)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】