説明

自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙

【課題】耐熱強度や難燃性を損なうことなく、さらに、発火温度の低下を招くことなく、塩化ビニルバインダー、酢酸ビニルホットメルト剤を他材料に代替する。
【解決手段】自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙は、無機質紙にホットメルト剤をコーティングしている。無機質紙は、有機パルプ2重量%〜30重量%と、有機繊維3重量%〜30重量%と、無機繊維0.5重量%〜15重量%と、全体の20重量%以上の水酸化アルミニウムを含む無機粉体20重量%〜75重量%と、ポリアクリル酸エステル系とウレタン系とポリエステル系のいずれかからなるバインダー樹脂3重量%〜15重量%を定着担持してなるシート状材としている。さらに、ホットメルト剤コーティング無機質紙は、ホットメルト剤を、アクリル系とウレタン系とポリエステル系のいずれかのホットメルト剤としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、自動車のワイヤーハーネスや配管のカバー、あるいは空気の通路に使用される耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙に関し、特に、表面にガラスクロスやアルミテープを積層してジャバラ構造に加工してコルゲートチューブに使用され、あるいは、そのままの状態でジャバラ構造に加工されてコルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙に関する。
【背景技術】
【0002】
ジャバラ構造に加工してなるコルゲートチューブは開発されている(特許文献1及び2参照)。コルゲートチューブは、ジャバラ構造として自由に変形できるフレキシブルチューブとして、自動車のワイヤーハーネスのカバーに、あるいは配管のカバーに、あるいは又、空気ダクト等として自動車用に使用される。この用途に使用されるコルゲートチューブは、プラスチックシートをジャバラ構造に加工して製造できるが、自動車用のコルゲートチューブは、エンジンルームなどの高温環境に使用されて十分な耐熱性が要求されることから、プラスチックに代わって多量の無機質材を含む無機質紙が使用される。無機質紙のコルゲートチューブは、無機質紙そのままではジャバラ構造に加工できず、また、ガラスクロスやアルミテープなどを積層して接着できないので、ホットメルト剤コーティング無機質紙としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−346414号公報
【特許文献2】特開平10−148279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホットメルト剤コーティング無機質紙は、セルロース繊維等の有機パルプと、ポリエステル繊維、アクリル繊維等の有機繊維、ガラス繊維等の無機繊維の混合物に、セピオライト等の含水珪酸塩、塩化ビニルバインダー樹脂、ノンハロゲン難燃剤を定着担持せしめた無機質紙に、酢酸ビニル系ホットメルト剤をコーティングしたホットメルト剤コーティング無機質紙が主なものであるが、塩化ビニルバインダー、酢酸ビニル接着剤は配合量が比較的多く、また当然のことながら、約200℃以上の高温下において熱分解により塩素ガス、酢酸ガスが発生する。これらの塩素ガス、酢酸ガスは極性の強い酸性ガスであるため、コルゲートチューブの使用構成によっては他の金属部品を腐食させる主要因となり問題が生じている。
【0005】
上記のような従来の問題点を解決するためには、腐食性ガスである塩素ガス、酢酸ガスの主要原因物質となる塩化ビニルバインダー、酢酸ビニルホットメルト剤を他材料へ代替しなければならないが、一方で塩化ビニルバインダー、酢酸ビニルホットメルト剤はコルゲートチューブ用原紙として重要である耐熱強度、難燃性、高い発火温度に効果的に寄与している。本発明は、さらにこれらの性能を損なうことなく、特に発火温度の低下を招くことなく塩化ビニルバインダー、酢酸ビニルホットメルト剤を他材料に代替したコルゲートチューブ構成シート材であるホットメルト剤コーティング無機質紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載する自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙は、無機質紙にホットメルト剤をコーティングしている。無機質紙は、有機パルプ2重量%〜30重量%と、有機繊維3重量%〜30重量%と、無機繊維0.5重量%〜15重量%と、全体の20重量%以上の水酸化アルミニウムを含む無機粉体20重量%〜75重量%と、ポリアクリル酸エステル系とウレタン系とポリエステル系のいずれかからなるバインダー樹脂3重量%〜15重量%を定着担持してなるシート状材としている。さらに、ホットメルト剤コーティング無機質紙は、ホットメルト剤を、アクリル系のホットメルト剤としている。
【0007】
本発明の請求項2に記載する自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙は、無機質紙にホットメルト剤をコーティングしている。無機質紙は、有機パルプ2重量%〜30重量%と、有機繊維3重量%〜30重量%と、無機繊維0.5重量%〜15重量%と、全体の20重量%以上の水酸化アルミニウムを含む無機粉体20重量%〜75重量%と、ポリアクリル酸エステル系とウレタン系とポリエステル系のいずれかからなるバインダー樹脂3重量%〜15重量%を定着担持してなるシート状材としている。さらに、ホットメルト剤コーティング無機質紙は、ホットメルト剤を、ウレタン系のホットメルト剤としている。
【0008】
本発明の請求項3に記載する自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙は、無機質紙にホットメルト剤をコーティングしている。無機質紙は、有機パルプ2重量%〜30重量%と、有機繊維3重量%〜30重量%と、無機繊維0.5重量%〜15重量%と、全体の20重量%以上の水酸化アルミニウムを含む無機粉体20重量%〜75重量%と、ポリアクリル酸エステル系とウレタン系とポリエステル系のいずれかからなるバインダー樹脂3重量%〜15重量%を定着担持してなるシート状材としている。さらに、ホットメルト剤コーティング無機質紙は、ホットメルト剤を、ポリエステル系のホットメルト剤としている。
【0009】
本発明の請求項4に記載する自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙は、無機質紙にホットメルト剤をコーティングしている。無機質紙は、有機パルプ2重量%〜30重量%と、有機繊維3重量%〜30重量%と、無機繊維0.5重量%〜15重量%と、全体の20重量%以上の水酸化アルミニウムを含む無機粉体20重量%〜75重量%と、ポリアクリル酸エステル系とウレタン系とポリエステル系のいずれかからなるバインダー樹脂3重量%〜15重量%を定着担持してなるシート状材としている。さらに、ホットメルト剤コーティング無機質紙は、ホットメルト剤を、アクリル系とウレタン系とポリエステル系からなる複数のホットメルト剤としている。
【0010】
本発明の請求項5に記載する自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙は、有機パルプをアラミドパルプとしている。
【0011】
本発明の請求項6に記載する自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙は、有機繊維が、ポリエステル繊維とアクリル繊維のいずれか又は両方を含んでいる。
【0012】
本発明の請求項7に記載する自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙は、無機質紙が、ノンハロゲン難燃剤を抄紙オンマシン装置でサイズプレスにより含浸もしくは両面コートしてなる無機質紙であって、この無機質紙にホットメルト剤をコーティングしている。
【0013】
本発明の請求項8に記載する自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙は、無機質紙が、表面紙力剤を抄紙オンマシン装置でサイズプレスにより含浸もしくは両面コートしてなる無機質紙であって、この無機質紙にホットメルト剤をコーティングしている。
【0014】
本発明の請求項9に記載する自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙は、無機質紙を表面紙力剤をポリアクリルアミドとしている。
【0015】
本発明の請求項10に記載する自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙は、無機質紙が、ノンハロゲン難燃剤縮合物を1重量%〜5重量%含んでいる。
【0016】
本発明の請求項11に記載する自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙は、ノンハロゲン難燃剤縮合物をリン系としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙は、無機質紙を、上記の通り塩化ビニルバインダーの代替と同時に、従来の含水珪酸塩を水酸化アルミニウムに代替することにより、発火温度、難燃性は従来無機質紙と同等以上レベルとすることが可能となり、さらにこの無機質紙に選定した代替ホットメルト剤をコートすることにより、従来ホットメルト剤コーティング無機質紙と同等レベルの発火温度、難燃性にすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙を例示するものであって、本発明はホットメルト剤コーティング無機質紙を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0019】
自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙は、無機質紙にホットメルト剤をコーティングしている。
【0020】
無機質紙は、アラミドパルプ等の有機パルプ2重量%〜30重量%と、ポリエステル繊維やアクリル繊維等の有機繊維3重量%〜30重量%と、無機繊維0.5重量%〜15重量%に、無機粉体として水酸化アルミニウム単独もしくは含水珪酸マグネシウム、含水珪酸アルミニウム等の混合物20重量%〜75重量%、ポリアクリル酸エステル系、ウレタン系、ポリエステル系等のバインダー樹脂3重量%〜15重量%を定着担持せしめたシート状材料である。無機粉体中の水酸化アルミニウム割合は20重量%以上としている。
【0021】
無機質紙の有機パルプには、アラミドパルプのほか、セルロース繊維、アクリルパルプ、叩解型レーヨン等を使用できる。これらの有機パルプは、無機質紙製造上、粉体担持、薬品定着の役割があり、コルゲートチューブ用途の無機質紙性能上、機械強度を付与する役割を持つ。出来うればアラミドパルプのような耐熱強度があり、しかも自己消化性を有するパルプを使用することが望ましい。有機パルプの含有量は、2重量%〜30重量%とし、好ましくは5重量%〜25重量%、さらに好ましくは10重量%〜20重量%とする。有機パルプの添加量が少な過ぎると、機械強度が低下して無機粉体の担持力が低下し、反対に多すぎると難燃性、耐熱性と高温下における保形形が低下する。したがって、有機パルプの含有量は、機械強度、無機粉体の担持力、難燃性、耐熱性と高温下における保形性を考慮して用途に最適な値に設定する。
【0022】
さらに、無機質紙のバインダー樹脂は、ポリアクリル酸エステル系のほか、極性の高い腐食性ガスを発生しないウレタン系、ポリエステル系等も使用できる。これらのバインダー樹脂は、加熱により未反応官能基が反応し、3次元架橋構造を発達させ、無機質紙の諸強度を大きく向上させるが、塩化ビニルバインダーのように高温下で難燃効果のある塩素ガスを発生しないため、無機質紙の難燃性を低下させることになる。バインダー樹脂の添加量は、3重量%〜15重量%、好ましくは4重量%〜10重量%とする。バインダー樹脂の添加量が少ないと十分な強度を実現できず、反対に多すぎると難燃性が低下する。したがって、バインダー樹脂の添加量は、要求される強度と難燃性を考慮して前述の範囲に設定される。
【0023】
さらに、無機質紙は、高い難燃効果を有する水酸化アルミニウムを配合することにより難燃性を改善している。水酸化アルミニウムは、加熱下で結晶水放出による吸熱反応を起こすため、ホットメルト剤接着性を阻害しないように、ウレタン系のような極性の高い官能基をもつ接着剤を使用し、あるいは、無機質中にもアラミドパルプのような材料表面の極性の高い材料を使用することが望ましい。
【0024】
無機粉体は、分子構造中に結晶水を持つ含水無機化合物である。含水珪酸化合物は良好な耐熱性保型性を有し、また、水酸化アルミニウムは結晶水を多く含み、270℃付近の高温下で結晶水を放出するため良好な難燃性を示す。無機質紙は、20重量%以上の水酸化アルミニウムを添加して良好な難燃性を実現している。水酸化アルミニウムを含む無機粉体の添加量は、20重量%〜75重量%、好ましくは50重量%〜70重量%とする。無機粉体の添加量が少なすぎると難燃性と高温下の保形性が低下し、反対に多すぎると要求される強度が低下する。したがって、無機粉体の添加量は、難燃性と要求される強度を考慮して前記の範囲で最適値に設定される。無機粉体の添加量を20重量%とする無機質紙は、20重量%の水酸化アルミニウムを添加する。20重量%以上の無機粉体を添加している無機質紙は、20重量%以上の水酸化アルミニウムに加えて、水酸化アルミニウム以外の無機粉体、例えばケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムを添加することができる。
【0025】
無機粉体に含まれる水酸化アルミニウムは、結晶水放出後に、耐熱強度を低下させる物性を示すが、本発明では、無機質紙は、アラミドパルプなど高耐熱性の有機パルプを配合して、耐熱強度の低下を防止している。
【0026】
無機質紙に含まれる有機繊維として、ポリエステル繊維、アクリル繊維のほかレーヨン繊維、アラミド繊維などの人工、合成繊維を挙げることが可能である。これらの有機繊維は無機質紙中で骨材として分布するため、フレキシブル性を持たせながら強度を確保するために重要である。有機繊維としてポリエステル繊維を使用する無機質紙は、ポリエステル繊維が耐熱強度に優れることから、水酸化アルミニウムの結晶水放出後の耐熱強度の低下を補うことができる。有機繊維の添加量は、3重量%〜30重量%、好ましくは4重量%〜20重量%、さらに好ましくは4重量%〜15重量%とする。有機繊維の添加量が少ないと可撓性が少なくなって加工性が悪くなり、またコルゲートチューブとして使用される状態でのフレキシブル性が低下する。反対に多すぎると難燃性が低下する。したがって、有機繊維の添加量は要求される可撓性と難燃性を考慮して前述の範囲で最適値に設定される。
【0027】
無機質紙の無機繊維には、ガラス繊維のほか、ロックウール、セラミック、マイクロガラスなどの無機繊維等が使用できる。無機繊維は、高温下、骨材としての役割をすることから、ガラス繊維のように繊維径が太く、かつ繊維径、繊維長が均一なものを使用することが望ましい。無機繊維の添加量は、0.5重量%〜15重量%、好ましくは1重量%〜10重量%、さらに好ましくは1.5重量%〜5重量%とする。無機繊維の添加量が少な過ぎると耐熱強度が低下し、多すぎると可撓性が低下する。したがって、無機繊維の添加量は要求される耐熱強度と可撓性を考慮して前述の範囲で最適値に設定される。
【0028】
ホットメルト剤は、ウレタン系のほか、アクリル系、ポリエステル系など酸性度の高い腐食性ガスを発生しないものが使用できる。ウレタン系のホットメルト剤を使用して、発火温度を低くすることができる。ホットメルト剤は、接着強度が良好なものほどTg値が低く、表面タックによる問題が生じ易いため、接着強度と表面タック、発火温度の兼ね合いが取れる品番の選定により解決することができる。ホットメルト剤の添加量は、100重量部の無機質紙に対して、7重量部〜30重量部、好ましくは10重量部〜25重量部とする。ホットメルト剤の添加量が少なすぎると接着強度が低下し、反対に多すぎると難燃性と発火温度低下する。したがって、ホットメルト剤の添加量は難燃性と発火温度を考慮して前述の範囲に設定される。
【0029】
さらに、難燃性を向上させるため、無機質紙の内添配合材としてリン系、ホウ素系、チッソ系などの難燃剤を1種または2種以上混合添加することが可能であることは言うまでもない。同様に、難燃性を向上させるため、サイズプレスコーター、ロールコーター、ブレードコーター等の装置をオンマシンあるいはオフマシンで用いて難燃剤を含浸、コートすることが可能である事は言うまでもない。この場合、無機質紙の表面紙力を向上させるため、難燃剤にポリアクリルアミド等の表面紙力剤を混合することも可能である。
【実施例】
【0030】
以下の実施例において、有機パルプとしてNBKPパルプを使用する場合は、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を常法によりフリーネス530mlCSFまで叩解して、叩解されたNBKPパルプとして使用する。
【実施例1】
【0031】
無機質紙は以下の工程で製造する。無機質紙は、17重量%の有機パルプのパラ系アラミドパルプと、10重量%の有機繊維のポリエステル繊維1.6dtex×5mmと、5重量%の無機繊維のガラス繊維6μm×3mmと、56重量%の無機粉体の水酸化アルミニウム粉体を混合した水懸濁液に、バインダー樹脂としてポリアクリル酸エステル樹脂を8重量%使用し、さらに水懸濁液に、硫酸バンド/スチレンアクリルサイズ剤/ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂/ポリアクリルアミド樹脂を、1重量%/1重量%/1重量%/1重量%と、カチオン系歩留助剤とアニオン系歩留助剤を0.1重量%と0.05重量%の割合で添加混合した後、手抄シートマシンを用いて抄紙し、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して製作する。以上の工程で、坪量を123g/mとする無機質紙が得られる。
【0032】
得られた無機質紙に、難燃剤のリン酸グアニジン樹脂と、表面紙力剤のポリアクリルアミド樹脂を70重量%:30重量%の割合で混合した混合液を含浸する。含浸量は、固形分として2g/mとする。得られた無機質紙を、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥し、難燃剤と表面紙力剤を含浸してなる含浸無機質紙を得る。この含浸無機質紙は、坪量が125g/mとなる。
【0033】
さらに、この含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、ダイセル化学製の酢酸ビニルホットメルト剤樹脂25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【実施例2】
【0034】
実施例1で得られる難燃剤と表面紙力剤が含浸された含浸無機質紙であって、坪量を125g/mとする含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、DIC製、アクリル系ホットメルト剤樹脂25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【実施例3】
【0035】
実施例1で得られる難燃剤と表面紙力剤が含浸された含浸無機質紙であって、坪量を125g/mとする含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、DIC製、ウレタン系ホットメルト剤樹脂25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【実施例4】
【0036】
有機パルプをパラ系アラミドパルプから9重量%の叩解NBKPパルプと7重量%のパラ系アラミドパルプとし、有機繊維を10重量%のポリエステル繊維1.6dtex×5mmとし、無機繊維を3重量%のガラス繊維6μm×3mmとし、無機粉体を59重量%の水酸化アルミニウム粉体とする以外は、実施例1と同様にして坪量を125g/mとする含浸無機質紙を作製する。
【0037】
この含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、実施例1のダイセル化学製、酢酸ビニルホットメルト剤25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【実施例5】
【0038】
実施例4で得られる坪量125g/mの含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、実施例2のDIC製、アクリル系ホットメルト剤樹脂25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【実施例6】
【0039】
実施例4で得られる坪量125g/mの含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、実施例3のDIC製、ウレタン系ホットメルト剤樹脂25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【実施例7】
【0040】
有機パルプをパラ系アラミドパルプから28重量%の叩解NBKPパルプとし、有機繊維を3重量%のポリエステル繊維1.6dtex×5mmとし、無機繊維を3重量%のガラス繊維6μm×3mmとし、無機粉体を54重量%の水酸化アルミニウムとする以外は、実施例1と同様にして坪量を125g/mとする含浸無機質紙を作製する。
【0041】
この含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、実施例1のダイセル化学製、酢酸ビニルホットメルト剤樹脂25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【実施例8】
【0042】
実施例7で得られる坪量125g/mの含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、実施例2のDIC製、アクリル系ホットメルト剤樹脂25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【実施例9】
【0043】
実施例7で得られる坪量125g/mの含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、実施例3のDIC製、ウレタン系ホットメルト剤樹脂25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【実施例10】
【0044】
バインダー樹脂をポリアクリル酸エステル樹脂からウレタン樹脂に変更する以外は、実施例1と同様にして坪量を125g/mとする含浸無機質紙を作製する。
【0045】
この含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、実施例3のDIC製、ウレタン系ホットメルト剤樹脂25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【実施例11】
【0046】
バインダー樹脂をポリアクリル酸エステル樹脂からポリエステル樹脂に変更する以外は、実施例1と同様にして坪量を125g/mとする含浸無機質紙を作製する。
【0047】
この含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、実施例3のDIC製、ウレタン系ホットメルト剤樹脂25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【比較例1】
【0048】
有機パルプとして20重量%の叩解NBKPパルプと、有機繊維として10重量%のポリエステル繊維1.6dtex×5mmと、無機繊維として5重量%のガラス繊維6μm×3mmと、無機粉体として15重量%のアタパルジャイトと、5重量%のタルクと、30重量%のカオリンと、難燃剤として3重量%のリン窒素系縮合物難燃剤を混合した水懸濁液に、バインダー樹脂として8重量%の旭化成製ポリ塩化ビニリデン樹脂と、硫酸バンド/スチレンアクリルサイズ剤/ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂/ポリアクリルアミド樹脂を1重量%/1重量%/1重量%/1重量%と、カチオン系歩留助剤とアニオン系歩留助剤を0.1重量%と0.05重量%の割合で添加混合した後、手抄シートマシンを用いて抄紙し、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を123g/mとする無機質紙を作製する。
【0049】
この紙に、難燃剤のリン酸グアニジン樹脂と、表面紙力剤のポリアクリルアミド樹脂を70重量%:30重量%の割合で混合した混合液を含浸する。含浸量は固形分2g/mとする。得られた無機質紙を100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を125g/mとする含浸無機質紙を作製する。
【0050】
この含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、実施例1のダイセル化学製、酢酸ビニルホットメルト剤25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【比較例2】
【0051】
比較例1で得られる坪量125g/mの含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、実施例2のDIC製、アクリル系ホットメルト剤樹脂25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【比較例3】
【0052】
比較例1で得られる坪量125g/mの含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、実施例3のDIC製、ウレタン系ホットメルト剤樹脂25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【比較例4】
【0053】
比較例1の水懸濁液に、バインダー樹脂として8重量%のポリアクリル酸エステル樹脂と、硫酸バンド/スチレンアクリルサイズ剤/ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂/ポリアクリルアミド樹脂を1重量%/1重量%/1重量%/1重量%と、カチオン系歩留助剤とアニオン系歩留助剤を0.1重量%と0.05重量%の割合で添加混合した後、手抄シートマシンを用いて抄紙し、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を125g/mとする無機質紙を作製する。
【0054】
得られた無機質紙に、難燃剤としてリン酸グアニジン樹脂と、表面紙力剤としてポリアクリルアミド樹脂を70重量%:30重量%の割合で混合した混合液を固形分2g/m含浸し、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を125g/mとする含浸無機質紙を作製する。
【0055】
この含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、実施例1のダイセル化学製、酢酸ビニルホットメルト剤25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【比較例5】
【0056】
比較例4で得られる坪量125g/mの含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、実施例2のDIC製、アクリル系ホットメルト剤樹脂25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【比較例6】
【0057】
比較例4で得られる坪量125g/mの含浸無機質紙の片面に、バーコーターにて、ホットメルト剤として、実施例3のDIC製、ウレタン系ホットメルト剤樹脂25g/mをコートし、100℃に設定した俵型蒸気乾燥機にて乾燥して坪量を150g/mとするホットメルト剤コーティング無機質紙を作製する。
【0058】
実施例1〜11、及び比較例1〜6より得られる結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1の結果が示すとおり、本発明の実施例のホットメルト剤コーティング無機質紙は、塩化ビニルバインダーや酢酸ビニル接着剤を使用しないことから、高温下において熱分解により塩素ガス、酢酸ガスが発生しないにもかかわらず、発火温度、難燃性は、従来同等レベルを維持することが可能である。
なお、実施例1〜9で得られる無機質紙に、リン窒素系縮合物を内添した場合も同様に、塩化ビニルバインダーや酢酸ビニル接着剤を使用しないことから、高温下において熱分解により塩素ガス、酢酸ガスが発生しないにもかかわらず、発火温度、難燃性は、従来同等レベルを維持することが可能である。
また、以上の実施例の無機質紙は、耐熱強度も従来同等レベルを維持することができ、同時に接着強度も維持することが可能である。
【0061】
表1において、ウレタン系ホットメルト剤を選定してコートしたホットメルト剤コーティング無機質紙は、従来レベルの発火温度を示す。ただ、接着剤自体の発火温度は、ウレタン系ホットメルト剤がアクリル系ホットメルト剤より良好であるため、ウレタン系ホットメルト剤を使用する無機質紙は、アクリル系ホットメルト剤を使用した無機質紙に比較して、発火温度が高くなるという発火特性も良好な結果が得られる。
【0062】
実施例3、6、9、10、11で使用するウレタン接着剤、および実施例2、5、8で使用するアクリル接着剤の選定経緯を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
表2−1の結果が示すとおり、ウレタン系、アクリル系ホットメルト剤ともに同成分であってもホットメルト剤メーカー、品番により発火温度が異なる。
【0065】
その内、ウレタン系ホットメルト剤の場合、従来の酢酸ビニルホットメルト剤と同等以上の発火温度、接着強度を維持できる品番がDIC製ハイドランHW337である。
【0066】
さらに、表2−2に、ハイドランHW337の表面タック改善結果を示す。このように、他品番を混合して発火温度、接着強度、表面タックの兼ね合いを取り使用することが望ましい。
【0067】
以上の実施例は、ホットメルト剤としてアクリル系とウレタン系を使用したが、これらのホットメルト剤に代わってポリエステル系のホットメルト剤も使用できる。また、ホットメルト剤として、アクリル系とウレタン系とポリエステル系からなる複数のホットメルト剤を混合して使用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質紙にホットメルト剤をコーティングしてなる自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙であって、
前記無機質紙が、有機パルプ2重量%〜30重量%と、有機繊維3重量%〜30重量%と、無機繊維0.5重量%〜15重量%と、全体の20重量%以上の水酸化アルミニウムを含む無機粉体20重量%〜75重量%と、ポリアクリル酸エステル系とウレタン系とポリエステル系のいずれかからなるバインダー樹脂3重量%〜15重量%を定着担持してなるシート状材であって、
前記ホットメルト剤がアクリル系のホットメルト剤である自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙。
【請求項2】
無機質紙にホットメルト剤をコーティングしてなる自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙であって、
前記無機質紙が、有機パルプ2重量%〜30重量%と、有機繊維3重量%〜30重量%と、無機繊維0.5重量%〜15重量%と、全体の20重量%以上の水酸化アルミニウムを含む無機粉体20重量%〜75重量%と、ポリアクリル酸エステル系とウレタン系とポリエステル系のいずれかからなるバインダー樹脂3重量%〜15重量%を定着担持してなるシート状材であって、
前記ホットメルト剤がウレタン系のホットメルト剤である自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙。
【請求項3】
無機質紙にホットメルト剤をコーティングしてなる自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙であって、
前記無機質紙が、有機パルプ2重量%〜30重量%と、有機繊維3重量%〜30重量%と、無機繊維0.5重量%〜15重量%と、全体の20重量%以上の水酸化アルミニウムを含む無機粉体20重量%〜75重量%と、ポリアクリル酸エステル系とウレタン系とポリエステル系のいずれかからなるバインダー樹脂3重量%〜15重量%を定着担持してなるシート状材であって、
前記ホットメルト剤がポリエステル系のホットメルト剤である自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙。
【請求項4】
無機質紙にホットメルト剤をコーティングしてなる自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙であって、
前記無機質紙が、有機パルプ2重量%〜30重量%と、有機繊維3重量%〜30重量%と、無機繊維0.5重量%〜15重量%と、全体の20重量%以上の水酸化アルミニウムを含む無機粉体20重量%〜75重量%と、ポリアクリル酸エステル系とウレタン系とポリエステル系のいずれかからなるバインダー樹脂3重量%〜15重量%を定着担持してなるシート状材であって、
前記ホットメルト剤が、アクリル系とウレタン系とポリエステル系からなる複数のホットメルト剤である自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙。
【請求項5】
前記有機パルプがアラミドパルプである請求項1ないし4のいずれかに記載される自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙。
【請求項6】
前記有機繊維がポリエステル繊維とアクリル繊維のいずれか又は両方を含む請求項1ないし4のいずれかに記載される自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙。
【請求項7】
前記無機質紙が、ノンハロゲン難燃剤を抄紙オンマシン装置でサイズプレスにより含浸もしくは両面コートせしめてなる無機質紙であって、この無機質紙にホットメルト剤をコーティングしてなる請求項1ないし4のいずれかに記載される自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙。
【請求項8】
前記無機質紙が、表面紙力剤を抄紙オンマシン装置でサイズプレスにより含浸もしくは両面コートせしめてなる無機質紙であって、この無機質紙にホットメルト剤をコーティングしてなる請求項1ないし4のいずれかに記載される自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙。
【請求項9】
前記表面紙力剤がポリアクリルアミドである請求項8に記載される自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙。
【請求項10】
前記無機質紙が、ノンハロゲン難燃剤縮合物を1重量%〜5重量%含む請求項1ないし4のいずれかに記載される自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙。
【請求項11】
前記ノンハロゲン難燃剤縮合物がリン系である請求項10に記載される自動車用の耐熱コルゲートチューブに使用されるホットメルト剤コーティング無機質紙。

【公開番号】特開2010−222748(P2010−222748A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73262(P2009−73262)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000116404)阿波製紙株式会社 (19)
【Fターム(参考)】