説明

自己潤滑性の表面被覆複合材料

【課題】優れた特性を有する自己潤滑性の表面被覆複合材料を提供する。
【解決手段】軸受は、表面と当該表面の上に配置される自己潤滑性の表面被覆複合材料とを備える。当該自己潤滑性の表面被覆複合材料は、金属性の複合材料を有する硬化性アクリレート組成物を有する。当該金属性の複合材料は、化学式1に従う金属性アクリレート化合物を有する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己潤滑性の表面被覆複合材料に関し、より具体的には、少なくとも一部分において自己潤滑性の表面被覆材料により表面が被覆されている軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
しばしば他の部材と互いに滑りながら接触する金属の表面において、一般に「摩耗」と呼ばれる、使用もしくは応力による劣化が生じる。圧力、高負荷の荷重、そして繰り返し行われる移動により摩耗の速度は加速される。他の部材と滑りながら互いに接触する表面を有する構成部が機械中に用いられていれば、摩耗により、当該構成部の修理もしくは交換を必要とする様々な問題をもたらす。表面に生じる摩耗により、その機械それ自体の交換が必要となる場合もある。
【0003】
摩耗量を減らし、構成部および/もしくは機械の頻繁な修理や交換の必要性を緩和させるために、そのような構成部の表面を被覆複合材料で処理する技術が知られている。また、当該技術分野において、被覆複合材料は、ライナーシステム、自己潤滑性の表面被覆複合材料、もしくは潤滑剤と呼ばれる場合もある。既知の自己潤滑性の表面被覆複合材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイト、および硫化モリブデン等のような潤滑性の充填剤を伴った、ゴム、セラミック、織物、および樹脂などがあるが、それらに限られない。自己潤滑性の表面被覆材料は、当該被覆が接触する表面に生じる摩耗および摩擦の量を減らし、結果として当該表面を有する構成部の耐用性および有用性に貢献する。
【0004】
被覆複合材料の技術における近年の改良にも関わらず、多くの自己潤滑性の表面被覆複合材料は、当該被覆の有用性を損なうような亀裂や流体吸収の生じやすさ等の特性を有している。多くの知られている自己潤滑性の表面被覆複合材料は、軸受上の表面等といった表面上における使用の全てにおいて必ずしも適用可能ではない。たとえ自己潤滑性の表面被覆複合材料が一つの軸受の形状もしくは一つの軸受のサイズにおいて有用であるとしても、同じ自己潤滑性の表面被覆複合材料は、異なる軸受の形状もしくはサイズにおいて有用でない場合があることが分かっている。したがって、多くの表面に対して適用可能であり亀裂や流体吸収が起きにくい自己潤滑性の表面被覆複合材料は、表面に生じる摩耗および摩擦の量をバランスさせること、および表面被覆複合材料の全般的な性能を改良することが要求されており、そのような改良が必要となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、優れた特性を有する自己潤滑性の表面被覆複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後述する本発明の一側面において、表面と当該表面の上に配置される自己潤滑性の表面被覆複合材料とを有する軸受が提供される。当該自己潤滑性の表面被覆複合材料は、金属性の複合材料を有する硬化性アクリレート組成物を有している。当該金属性の複合材料は、以下の化学式1に従う金属性アクリレート化合物を有している。
【0007】
【化1】

ここで、
R=HもしくはCH
M=Zn、Ca
である。
【0008】
後述する本発明の他の側面において、金属性の複合材料を有する硬化性アクリレート組成物を形成するステップを備える自己潤滑性の表面被覆複合材料を製造する方法が提供される。当該方法において、金属性の複合材料は、上述の化学式1に従った金属性アクリレート化合物を含む。また当該方法は、潤滑性の充填剤、構造的な充填剤、および揺変剤を、硬化性アクリレート組成物と組み合わせて、自己潤滑性の表面被覆複合材料を形成するステップを備える。
【0009】
後述する本発明の他の側面において、自己潤滑性の表面被覆複合材料は、金属性の複合材料を有する硬化性アクリレート組成物を有する。当該金属性の複合材料は、上述の化学式1に従った金属性アクリレート化合物を有する。自己潤滑性の表面被覆複合材料は、また、ポリテトラフルオロエチレン、銅粉、二硫化モリブデン、窒化ホウ素の粉、グラファイトの粉、もしくはそれらの組み合わせ等のような潤滑性の充填剤、並びにグラスファイバー、カーボンファイバー、ミクロウールファイバー、およびそれらの組み合わせ等のような構造的な充填剤を含む。自己潤滑性の表面被覆複合材料は、さらに、ヒュームドシリカ、ポリテトラフルオロエチレンの粉、もしくはそれらの組み合わせ等のような揺変剤、並びに過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトン過酸化物、もしくはそれらの組み合わせ等のような開始剤を含む。
【0010】
後述する本発明の他の側面において、自己潤滑性の被覆複合材料は、亜鉛モノメタクリル樹脂、亜鉛ジメタクリル樹脂、および酸化亜鉛、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリル樹脂、トリメタクリラート酸エステル、トリエチレングリコールジメタクリル樹脂、並びにエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリル樹脂を含む金属性の複合材料を有する硬化性アクリレート組成物を有する。自己潤滑性の被覆複合材料は、また、ポリテトラフルオロエチレン、銅粉、二硫化モリブデン、窒化ホウ素の粉、グラファイトの粉、もしくはそれらの組み合わせ等のような潤滑性の充填剤、並びにグラスファイバー、カーボンファイバー、ミクロウールファイバー、もしくはそれらの組み合わせ等のような構造的な充填剤を含む。自己潤滑性の被覆複合材料は、さらに、ヒュームドシリカ、細かいポリテトラフルオロエチレンの粉、もしくはそれらの組み合わせ等のような揺変剤、並びに過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトン過酸化物、もしくはそれらの組み合わせ等のような開始剤を含む。
上述したもの、およびその他の特徴は、以下の図面および詳細な説明によって例示される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の説明において、図面が参照される。それらの図面は例示的な具体例であり、同じ構成部には同じ参照番号が付されている。
【図1】図1は、本願に開示の一具体例にかかる一般的なジャーナル軸受の斜視図である。
【図2】図2は、本願に開示の一具体例にかかる一般的なジャーナル軸受の断面図である。
【図3】図3は、本願に開示の一具体例にかかるフランジ付きのジャーナル軸受の断面図である。
【図4】図4は、本願に開示の一具体例にかかる転輪の内側のリングの断面図である。
【図5】図5は、本願に開示の一具体例にかかる転輪の外側のリングの断面図である。
【図6】図6は、本願に開示の一具体例にかかる球面軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図6に示されるように、一般的に参照番号10によって指定される軸受は、少なくとも一つの表面20を有している。表面20は、適切な材料であればいかなる材料で形成されていてもよい。それらの材料の例としては、チタン、チタン合金、錫もしくは鉛の合金、アルミニウム合金、スチール、ステンレス鋼、真ちゅう、青銅、鋳鉄、もしくは柔らかい軸受材料の薄い被覆を施した薄い銀の層があるが、それらに限定されるものではない。表面20は、典型的には(図示せぬ)他の表面に対して移動可能なように接触している。
【0013】
軸受10の種類もしくは形状はどのようなものであってもよい。それらの種類および形状には、(図1および2に例示される)一般的なジャーナル軸受、(一般的に図4および5に例示される)スタッドタイプもしくはヨークタイプの転輪、スタッドタイプもしくはヨークタイプのカム従動子、スリーブ軸受、(図3に例示される)フランジ付きのジャーナル軸受、(図6に例示される)一般的な球面軸受、ボール軸受、軸受筒、スラット軸受、ローラー軸受、およびそれらに類するものが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0014】
少なくとも1つの表面20には、少なくともその一部分の上に自己潤滑性の表面被覆複合材料22が配置されている。自己潤滑性の表面被覆複合材料22の被覆に先立って、表面20は表面が望ましい状態に仕上がるように処理が施されてもよい。一具体例において、表面20には吹き付け加工が施され、表面に望ましい粗さが与えられる。当該吹き付け加工の方法としては、適用可能ないかなる方法が採用されてもよい。また、そのような方法には、硬い粒による加工、サンドブラスティング(砂の吹き付け)、もしくはビーズによる加工等のような適用可能な様々な媒体が伴い得る。一具体例において、硬い粒による加工は、20粒度を有する酸化アルミニウムによって実行される。また、他の具体例において、炭化ケイ素等のような異なる媒体および異なる大きさの媒体が、吹き付け加工において利用されてもよい。
【0015】
表面20が望ましい状態に仕上げられた後に、その表面は、潤滑油および異物の除去が行われきれいな状態にされる。表面20から潤滑油および異物を取り除き、きれいにする方法としては、効果的なあらゆるクリーニング方法が採用され得る。そのようなクリーニング方法の例としては、アルカリ洗浄、乳剤洗浄、容剤洗浄、蒸気脱脂、酸洗浄、ピクリング、塩浴スケーリング、および同様なものがあるが、それらに限られるものではない。表面20がきれいにされた後に、その表面は自己潤滑性の表面被覆複合材料22による被覆に先立って乾燥される。
【0016】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22を表面20の上に配置するための適切な方法としては、吹き付け、スピニング、浸し塗り、注入、および被覆材料で表面上を被覆する効果的な様々な方法があるが、それらに限られるものではない。表面20の上の被覆が行われると、自己潤滑性の表面被覆複合材料22には、表面上の被覆複合材料を硬化するための硬化処理が施される。その硬化処理としては、効果的ないかなる方法が採用されてもよい。自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、続いて細部に渡って望ましい寸法に機械加工される。
【0017】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、一般的に、そのような被覆による効果を得られるどのような適用においても利用され得る。自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、金属性アクリレート化合物を含む金属性の複合材料を有する硬化性アクリレート組成物を含む。自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、また、硬化性アクリレート組成物に加えて、潤滑性の充填剤、および適用対象に応じて、構造的な充填剤、揺変剤、および開始剤等のようなその他の付加的な成分を含んでもよい。
【0018】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22において利用される硬化性アクリレート組成物は、硬化性アクリル樹脂および金属性の複合材料のうちの1以上等のような様々な化合物を含み得る。硬化性アクリレート組成物の中に存在する化合物の種類および量は、自己潤滑性の表面被覆複合材料22がいかなる適用対象に対して用いられるか、ということに依存して変更され得る。
【0019】
典型的には、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約3質量パーセントから約50質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。一実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約4質量パーセントから約50質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。また別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約5質量パーセントから約50質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。また別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約10質量パーセントから約50質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。さらに別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約15質量パーセントから約50質量パーセントまでの硬化性アクリレート組成物を含んでいる。またさらに別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約20質量パーセントから約50質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。また別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約25質量パーセントから約50質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。またさらに別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約30質量パーセントから約50質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。さらに別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約35質量パーセントから約50質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。また別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約40質量パーセントから約50質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。さらに別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約4質量パーセントから約45質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。またさらに別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約4質量パーセントから約40質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。またさらに別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約4質量パーセントから約35質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。さらにまた別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約4質量パーセントから約30質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。さらに別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約4質量パーセントから約25質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料22の総質量に基づいて、約4質量パーセントから約20質量パーセントまでの範囲内に入る硬化性アクリレート組成物を含んでいる。
【0020】
硬化性アクリレート組成物は、金属性の複合材料を含み得る。また、当該金属性の複合材料は、金属性アクリレート化合物を含み得る。自己潤滑性の表面被覆複合材料22において金属性アクリレート化合物を用いることにより、自己潤滑性の表面被覆複合材料の表面20に対する粘着性が増大する場合がある。
【0021】
既知の金属性アクリレート化合物のうちの様々なものが使用され得る。しかしながら、一具体例において、金属性アクリレートは化学式1に従う構造を有している。
【0022】
【化2】

ここで、
R=HもしくはCH
M=Zn、Ca
である。
【0023】
硬化性アクリレート組成物の中の金属性の複合材料は、また、金属酸化物を含み得る。金属酸化物の例としては、酸化亜鉛および酸化カルシウムがあるが、それらに限られるものではない。
【0024】
一具体例において、金属性の複合材料は、金属性アクリレート化合物として亜鉛モノメタクリル樹脂および亜鉛ジメタクリル樹脂、金属性酸化化合物として酸化亜鉛を含む。酸化亜鉛は、例えば米国のペンシルバニア州のエクストン(Exton)にあるサルトマー社(Sartomer Company)によって販売されており、SR709として購入することが可能である。
【0025】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、典型的には、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約3質量パーセントから約10質量パーセントまでの範囲内に入る金属性の複合材料を含む。別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約4質量パーセントから約8質量パーセントまでの範囲内に入る金属性の複合材料を含んでいる。さらに別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約4質量パーセントから約5質量パーセントまでの範囲内に入る金属性の複合材料を含んでいる。さらにまた別の実施例においては、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、4.43質量パーセントの金属性の複合材料を含んでいる。
【0026】
金属性の複合材料に加えて、硬化性アクリレート組成物は、また、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリル樹脂を含み得る。エトキシ化ビスフェノールAジメタクリル樹脂は、例えば、2モル、4モル、8モル、もしくは10モルのうちのいずれかのモノマー(単量体)である。一具体例において、4モルのエトキシ化ビスフェノールAジメタクリル樹脂が用いられるが、それは例えば米国のペンシルバニア州のエクストンにあるサルトマー社によって販売されており、SR540として購入することが可能である。
【0027】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、例えば、約10質量パーセントから約20質量パーセントまでの範囲内に入るエトキシ化ビスフェノールAジメタクリル樹脂を含む。一実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約12質量パーセントから約18質量パーセントまでの範囲内に入るエトキシ化ビスフェノールAジメタクリル樹脂を含む。別の実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約10質量パーセントから約14質量パーセントまでの範囲内に入るエトキシ化ビスフェノールAジメタクリル樹脂を含む。さらに別の実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、13.44質量パーセントのエトキシ化ビスフェノールAジメタクリル樹脂を含む。
【0028】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22の中に存在する硬化性アクリレート組成物は、さらに、トリメタクリラート酸エステルを含み得る。それは、例えば米国のペンシルバニア州のエクストンにあるサルトマー社によって販売されており、CD9053として購入することが可能である。一般的に、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約3質量パーセントから約20質量パーセントまでの範囲内に入るトリメタクリラート酸エステルを含む。一実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約3パーセントから約15パーセントまでの範囲内に入るトリメタクリラート酸エステルを含む。別の実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約4質量パーセントから約10質量パーセントまでの範囲内に入るトリメタクリラート酸エステルを含む。さらに別の実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約4.43質量パーセントのトリメタクリラート酸エステルを含む。
【0029】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22の中に存在する硬化性アクリレート組成物は、また、トリエチレングリコールジメタクリル樹脂を含み得る。それは、例えば米国のペンシルバニア州のエクストンにあるサルトマー社によって販売されており、SR205として購入することが可能である。自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約10質量パーセントから約20質量パーセントまでの範囲内に入るトリエチレングリコールジメタクリル樹脂を含む。一実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約12質量パーセントから約18質量パーセントまでの範囲内に入るトリエチレングリコールジメタクリル樹脂を含む。さらに別の実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約10質量パーセントから約14質量パーセントまでの範囲内に入るトリエチレングリコールジメタクリル樹脂を含む。さらにまた別の実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約13.44質量パーセントのトリエチレングリコールジメタクリル樹脂を含む。
【0030】
必要に応じて、自己潤滑性の表面被覆複合材料22の中に存在する硬化性アクリレート組成物は、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリル樹脂を含み得る。それは、例えば米国のペンシルバニア州のエクストンにあるサルトマー社によって販売されており、SR454として購入することが可能である。自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約10質量パーセントから約20質量パーセントまでの範囲内に入るエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリル樹脂を含む。一実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約12質量パーセントから約18質量パーセントまでの範囲内に入るエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリル樹脂を含む。別の実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約10質量パーセントから約14質量パーセントまでの範囲内に入るエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリル樹脂を含む。さらに別の実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約13.44質量パーセントのエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリル樹脂を含む。
【0031】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、また、潤滑性の充填剤を含み得る。潤滑性の充填剤は、一般的に当該技術分野において知られている、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、銅粉、二硫化モリブデン、窒化ホウ素の粉、グラファイトの粉、およびそれらの組み合わせを含み得るが、それらに限られるものではない。自己潤滑性の表面被覆複合材料22の一具体例において、潤滑性の充填剤はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。PTFEは、硬化性アクリレート組成物との結びつきを高めるために、水酸基もしくはカルボキシル基を持つ酸のグループを含む化合物、もしくはグリコールエーテルの中のナフタレンナトリウムの合成物によって処理されてもよい。
【0032】
PTFEは、フロックの状態、粉の状態、もしくはそれらの組み合わせにおいて用いられ得る。PTFEは、例えば米国のアラバマ州のデカター(Decatur)にあるトライフルオロファイバーズ(Toray Fluorofibers)から処理されていないフロックの状態で購入することが可能であり、また、米国のペンシルバニア州のピットストン(Pittston)にあるアクトンテクノロジーズ(Acton Technologies)からアクトン(登録商標)として表面処理をされたフロックの状態で購入することが可能である。粉の状態のPTFEは、例えば米国のペンシルバニア州のエルバーサン(Elverson)にあるローレルプロダクツ社(Laurel Products LLC)によって販売されており、UF-8TAとして購入することが可能である。フロックの状態と粉の状態の組み合わせが利用される場合、粉に対するフロックの質量の比率は約3:1から約8:1までの範囲内に入る。一実施例において、粉に対するフロックの比率は5:1である。フロックの状態のPTFEの平均的なフロックの長さは、約0.008インチから0.015インチまでの間である。
【0033】
使用に際して、潤滑性の充填剤が自己潤滑性の表面被覆複合材料22に添加される。添加の量は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の低摩擦特性を促進する量である。一般的に、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、少なくとも20質量パーセントの潤滑性の充填剤を含む。一実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約20質量パーセントから約50質量パーセントまでの範囲内に入る潤滑性の充填剤を含む。別の実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約20質量パーセントから約35質量パーセントまでの範囲内に入る潤滑性の充填剤を含む。
【0034】
上述の成分に加えて、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、また、構造的な充填剤を含み得る。構造的な充填剤は、被覆複合材料を強化し、当該複合材料の全般的な摩耗の減少を促進する。構造的な充填剤は、例えば、当該技術分野において一般的に知られている、グラスファーバー、カーボンファイバー、ミクロウールファイバー、およびそれらの組み合わせであるが、それらに限られるものではない。自己潤滑性の表面被覆複合材料22の一具体例において、構造的な充填剤は、シランによって処理されたグラスファイバーである。グラスファイバーは、例えば米国のマサチューセッツ州のブリッジウォーターにあるファイバーテック社(Fibertec, inc.)によって販売されており、ミクログラス(Microglass)(登録商標)9007Dとして購入することが可能である。当該グラスファイバーは、典型的には、約0.005インチから約0.015インチまでの間の長さを有している。一実施例において、グラスファイバーは、約0.005インチから約0.008インチまでの間の長さを有している。
【0035】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約15質量パーセントから約50質量パーセントまでの範囲内に入る構造的な充填剤を含み得る。一実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約15質量パーセントから約30質量パーセントまでの範囲内に入る構造的な充填剤を含む。別の実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約15質量パーセントから約20質量パーセントまでの構造的な充填剤を含む。別の実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約17質量パーセントの構造的な充填剤を含む。
【0036】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22において用いられる構造的な充填剤および潤滑性の充填剤の両方の量は、自己潤滑性の被覆複合材料の粘性を増加させたり、もしくは減少させたりするために、調整されてもよい。自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、充填剤を浮遊状態で保持するために十分な厚さを有すると同時に、表面に対して容易に配置可能なように十分な薄さを有さなければならない。一般的に、自己潤滑性の表面被覆複合材料22の中に含まれる充填剤の総量は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、少なくとも40質量パーセントである。一実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22の中に存在する充填剤の総量は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、40質量パーセントと60質量パーセントとの間である。
【0037】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22の粘性は、また、揺変剤を加えることによって変化され得る。揺変剤は、圧力下において流れが生じることを許容する一方で、物質の粘性もしくは厚さを増加させる化学物質もしくは化合物である。揺変剤は、自己潤滑性の表面被覆複合材料22の取り扱いにおいて助けとなる。揺変剤は、例えば、当該技術分野において知られている、ヒュームドシリカ、細かいPTFEの粉、およびそれらの組み合わせであるが、それらに限られるものではない。ヒュームドシリカは、例えばドイツのエッセンにあるエボニク(Evonik)によって販売されており、エアロシル(登録商標)200として購入することが可能である。細かいPTFEの粉は、例えば米国のペンシルバニア州のエルバーサンにあるローレルプロダクツ社によって販売されており、UF-8TAとして購入することが可能である。一実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、ヒュームドシリカおよび細かいPTFEの粉の両方を含む。自己潤滑性の表面被覆複合材料22に細かいPTFEの粉が利用される場合には、それは揺変剤および潤滑性の充填剤の両方として働き得る。
【0038】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22に用いられる揺変剤の量は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の粘性および揺変剤の特性に応じて変化し得る。典型的には、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約0.5質量パーセントと約10質量パーセントとの間の1以上の揺変剤を含む。一実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約0.5質量パーセントと約7質量パーセントとの間の1以上の揺変剤を含む。別の実施例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約1.5質量パーセントと約6.5質量パーセントとの間の1以上の揺変剤を含む。
【0039】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、また、開始剤を含み得る。当該開始剤は、自己潤滑性の表面被覆複合材料が完全に硬化することを促進することによって、自己潤滑性の表面被覆複合材料22における架橋結合の密度を増加させる。開始剤は、例えば当該技術分野において一般的に知られている、有機過酸化物の複合材料であるが、それに限られるものではない。開始剤の一具体例は、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトン過酸化物、およびそれらの組み合わせであるが、それらに限られるものではない。自己潤滑性の表面被覆複合材料22の一具体例において、クメンヒドロペルオキシドが開始剤として用いられる。それは、例えば米国のミズーリ州のセントルイスにあるシグマアルドリッヒ社(Sigma Aldrich Corporation)から購入することが可能である。
【0040】
開始剤を過剰に加えると、自己潤滑性の表面被覆複合材料22の寿命が短くなってしまう。しかしながら、開始剤の量が不十分であると、自己潤滑性の表面被覆複合材料22が完全に硬化しない、という結果がもたらされる。したがって、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、一般的に、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約0.5質量パーセントと約3.0質量パーセントとの間の開始剤を含む。一つの特定の例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に基づいて、約1質量パーセントと約1.5質量パーセントとの間の開始剤を含む。
【0041】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22の製造は、表面被覆複合材料を製造するために適用可能などのような方法によって行われてもよい。一般的に、自己潤滑性の表面被覆複合材料22の製造方法としては、上述したような様々な成分を様々な量において組み合わせる方法が考えられる。典型的な例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22の成分は、いかなる順序において、加えられ、混ぜ合わされ、もしくは組み合わされてもよい。しかしながら、自己潤滑性の表面被覆複合材料22に使用されるいかなる開始剤も、典型的には、自己潤滑性の表面被覆複合材料が表面20の上に配置される直前に加えられる。
【0042】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22の製造方法は、例えば、硬化性アクリレート組成物を形成する成分を組み合わせるステップと、その後、当該硬化性アクリレート組成物を潤滑性の充填剤、構造的な充填剤、および揺変剤のうちの1以上に組み合わせるステップとを備える。上述したように、自己潤滑性の表面被覆複合材料22の各成分を開始剤と組み合わせることは、例えば、自己潤滑性の表面被覆複合材料を表面上に配置する直前に行われる。
【0043】
一具体例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、各成分を組み合わせて硬化性アクリレート組成物を形成することによって製造される。例えば、硬化性アクリレート組成物は、金属性の複合材料を、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリル樹脂、トリメタクリラート酸エステル、およびエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリル樹脂のうちの1以上と組み合わせることによって製造される。なお、当該金属性の複合材料は、金属性アクリレート化合物を含む。
【0044】
潤滑性の充填剤、構造的な充填剤、および揺変剤等といった、自己潤滑性の表面被覆複合材料22の付加的な成分は、硬化性アクリレート組成物と組み合わされる。当該成分は、典型的には、均一になるまで混ぜ合わされる。その混合には、遊星ミキサー、手動混合、竿や棒による撹拌、高せん断ミキサー、もしくはそれらに類するものを含むいかなる方法や装置によるものが採用されてもよい。
【0045】
一般的に、潤滑性の充填剤、構造的な充填剤、および揺変剤を、硬化性アクリレート組成物と組み合わせるに先立って、実質的な乾燥状態の確保が行われる。乾燥状態を確保するために、充填剤および揺変剤は、例えば、使用前の少なくとも1日間、オーブンの中で華氏120度と華氏140度との間の温度で保持される。しかしながら、真空室や乾燥剤等のような他の既知の様々な方法や装置が利用されてもよい。
【0046】
自己潤滑性の表面被覆複合材料22を表面20の上に配置するに先立って、開始剤が、充填剤、揺変剤、および硬化性アクリレート組成物の混合物と組み合わされる。その組み合わされたものは、濃度が均一になるまで混ぜ合わされる。その混ぜ合わされたものは、混ぜ合わせるための真空室に置かれ、脱気が行われ、その混ぜ合わされたもの、およびそれに引き続いて生じる最終製品の中の隙間を減少させる。混合物を真空室の中に置いておく時間の量は、さまざまに変化し得る。しかし、典型的には、当該混合物は、15分から45分までの間の時間だけ真空室の中に置かれる。当該真空の程度は、典型的には、27から29インチまでの水銀柱高さ相当の圧力(inHg)である。
【0047】
各成分を混ぜ合わせて自己潤滑性の表面被覆複合材料22を製造した後に、当該複合材料は、軸受10の表面20等の様々な表面に配置され得る状態となる。上述したように、表面20は望ましい状態に仕上げられ準備され、その後に潤滑油および異物の除去が行われ、きれいにされていることが望ましい。自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、吹き付け、スピニング、浸し塗り、注入、およびその他の表面上に被覆を施すために適用可能な様々な方法を含む一般的に適用できるいかなる被覆方法によって表面上に配置されてもよいが、それらに限られるものではない。
【0048】
一般的に、表面上に配置される自己潤滑性の表面被覆複合材料22の量は、その表面が利用される適用の対象に応じて調整される。典型的には、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、少なくとも0.001インチの厚さを得られるように表面に被覆するために十分な量において、表面上に配置される。ただし、必要に応じて、それより多くの、もしくはそれより少ない量の自己潤滑性の複合材料が用いられてもよい。
【0049】
表面20等の表面上に被覆が行われると、自己潤滑性の表面被覆複合材料22には、例えば硬化処理が施される。硬化処理は、圧力を伴う熱、圧力を伴わない熱、誘導もしくは熱風によるスピニングおよび硬化処理、およびそれらと同様のものを含んだ適用可能ないかなる方法によっても達成され得るが、それらに限られるものではない。一具体例において、自己潤滑性の表面被覆複合材料は、熱および圧力を用いることによって硬化処理される。この場合、その温度は華氏約250度であり、その圧力は60PSIG(単位平方インチ当たりの重量ポンドのゲージ圧)より大きく、その時間は、自己潤滑性の表面被覆複合材料を硬化処理するために十分な期間である。硬化処理のための時間は、自己潤滑性の表面被覆複合材料が被覆される軸受10の配置および形状や、自己潤滑性の表面被覆複合材料22を硬化処理するために用いられる方法に応じて変化する。一具体例において、硬化処理は熱および圧力を伴って実行され、硬化処理のための時間は、約20分から約60分までの間である。硬化処理の後に、自己潤滑性の表面被覆複合材料22は、例えば機械加工されて精密な寸法に整形される。
【0050】
自己潤滑性の表面被覆複合材料および軸受を準備するための、本発明を制限する意図のない具体例を以下に示す。特に断らない限り、量は質量パーセント(質量%)で与えられ、温度は華氏で与えられる。
【0051】
[具体例]
具体例1−自己潤滑性の表面被覆複合材料の製造
自己潤滑性の表面被覆複合材料を、容器の中において以下の成分を組み合わせることによって硬化性アクリレート組成物を形成することにより製造した。
【表1】

1:CD9053、米国のペンシルバニア州のエクストンにあるサルトマー社によって販売されている。
2:金属性のジアクリル樹脂、SR709としてサルトマー社から購入可能。
3:SR205、サルトマー社によって販売されている。
4:SR454、サルトマー社によって販売されている。
5:SR540、サルトマー社によって販売されている。
【0052】
同じ容器内において、硬化性アクリレート組成物を、以下の構造的な充填剤、潤滑性の充填剤、および揺変剤と組み合わせた。
【表2】

6:アクトン(登録商標)、米国のペンシルバニア州のピットストンにあるアクトンテクノロジーズによって販売されている。
7:ミクログラス(登録商標)9007D、米国のマサチューセッツ州のブリッジウォーターにあるファイバーテック社により販売されている。
8:エアロシル(登録商標)200、ドイツのエッセンにあるエボニクにより販売されている。
9:UF-8TA、ペンシルバニア州のエルバーサンにあるローレルプロダクツ社により販売されている。
【0053】
構造的な充填剤、潤滑性の充填剤、および揺変剤は、硬化性アクリレート組成物と組み合わされる前に、実質的に乾燥状態とされなければならない。充填剤および揺変剤の乾燥の程度を確かなものとするために、構造的な充填剤、潤滑性の充填剤、および揺変剤を、例えば、少なくとも24時間オーブンの中で華氏120度から華氏140度の間の温度で保持することが望ましい。
【0054】
硬化性アクリレート組成物、充填剤、および揺変剤の混合物は、開始剤としての1.33質量パーセントのクメンヒドロペルオキシドと組み合わせられることによって、自己潤滑性の表面被覆複合材料となる。自己潤滑性の表面被覆複合材料は、当該複合材料から全ての空気が脱気されるまで、約27から29inHgの間の圧力の真空室の中に配置され、混ぜ合わせられる。
【0055】
具体例2−自己潤滑性の表面被覆複合材料を伴う軸受の製造
自己潤滑性の表面被覆複合材料が配置された少なくとも1以上の表面を有する軸受を、具体例1にかかる自己潤滑性の表面被覆複合材料を準備して、以下のように軸受の表面上にそれを被覆することによって、製造した。
【0056】
0.5インチの口径から1.5インチの口径までの範囲内に入る大きさのいくつかのフランジ付きの軸受筒を、自己潤滑性の表面被覆複合材料の被覆のために準備した。なお、当該軸受筒の表面には、硬い粒による加工を施した。当該硬い粒は、20粒度の酸化アルミニウムである。その後、アルカリ性のクリーニング方法によって表面を洗浄した。軸受筒をアルカリ性のクリーナーに浸した後に、当該軸受筒を水に浸し、軸受上に滞留しているアルカリ性のクリーナーを除去した。その後、例えば軸受筒を、自己潤滑性の表面被覆複合材料の被覆に先立ち乾燥する。
【0057】
用いられる軸受筒は、M81934/2-D(alloy)LというRBCパーツナンバーを有するAS81934/2である。ここで、「D」は、16分の1インチの名目上の口径であり、「alloy」は、A(アルミニウム合金SAE-AMS-QQ-A-200/3もしくはSAE-AMS-QQ-A-225/6A(2024T851もしくは2024T8511))もしくはC(耐食鋼、SAE AMS 5643(17-4 PH)条件SAE-AMS-H-6875当たりH1150)のどちらか、そして「L」は、32分の1インチの名目上の軸受筒の長さである。
【0058】
軸受筒を収容している型の中に具体例1にかかる自己潤滑性の表面被覆複合材料を注入することによって、軸受筒の表面上を被覆した。当該軸受筒は、硬化処理のための容器において、華氏250度で少なくとも60psi(単位平方インチ当たりのポンド)の圧力で約30分間、養生した。その後、当該軸受筒を1時間、オーブンの中で華氏350度の温度下に置いた。その後、被覆を機械加工し、約0.008から0.009インチまでの間に入る最終的な厚さに整形した。
【0059】
具体例3
具体例2にかかる0.5インチの口径から1.5インチの口径までの範囲内に入る大きさのフランジ付きの軸受筒を数本、SAE-AS81934に従った振動試験にかけた。具体例2にかかる軸受筒を、非標準的な寸法を有する市販のフランジ付きの軸受筒と比較した。当該市販のフランジ付きの軸受筒は、パートナンバーM81934/2-08C012およびM81934/2-16C022に最も類似するものである。それらは、SAE-AS81934に従っていると思われる自己潤滑性の表面被覆複合材料を含んでいる。市販のフランジ付きの軸受筒は、チャート内において「カスタム」と表示されている。
【0060】
具体例2かかる自己潤滑性の表面被覆複合材料を有する全てのテスト軸受は、37.5KSI(1,000psi)の負荷条件において華氏325度の温度において25,000回のサイクルで、0.006インチという最大限許容可能な摩耗を下まわった。
【0061】
自己潤滑性の表面被覆複合材料の摩耗の測定結果は第1表に示される通りである。
【0062】
【表3】

「−」は、軸受筒が、37.5KSIの負荷条件において華氏325度の温度において25,000回のサイクルで、0.006インチという最大限許容可能な摩耗を上回ったことを示している。
「*」は、この大きさのサンプルに対して試験が行われなかったということを示している。
【符号の説明】
【0063】
10…軸受、20…表面、22…自己潤滑性の表面被覆複合材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と、
前記表面上に配置される自己潤滑性の表面被覆複合材料と
を備え、
前記自己潤滑性の表面被覆材料は、金属性の複合材料を有する硬化性アクリレート組成物を有し、
前記金属性の複合材料は、以下の化学式1に従う金属性アクリレート化合物を有する
軸受。
【化1】

ただし、化学式1において、
R=HもしくはCH
M=Zn、Ca、
である。
【請求項2】
前記硬化性アクリレート組成物は、さらに
エトキシ化ビスフェノールAジメタクリル樹脂と、
トリメチルアクリル樹脂の酸エステルと、
トリエチレングリコールジメタクリル樹脂と、
エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリル樹脂と
を有する
請求項1に記載の軸受。
【請求項3】
前記自己潤滑性の表面被覆複合材料は、前記自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に対し、3質量パーセントから50質量パーセントまでの範囲内に入る質量の前記硬化性アクリレート組成物を有する
請求項1に記載の軸受。
【請求項4】
前記金属性の複合材料は、さらに、酸化亜鉛および酸化カルシウムの中から選択された金属酸化物を有する
請求項1に記載の軸受。
【請求項5】
前記金属性の複合材料は、亜鉛モノメタクリル樹脂、亜鉛ジメタクリル樹脂、および酸化亜鉛を有する
請求項4に記載の軸受。
【請求項6】
前記自己潤滑性の表面被覆複合材料は、さらに、潤滑性の充填剤を有する
請求項1に記載の軸受。
【請求項7】
前記自己潤滑性の表面被覆複合材料は、前記自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に対し、少なくとも20質量パーセントの質量の前記潤滑性の充填剤を有する
請求項6に記載の軸受。
【請求項8】
前記潤滑性の充填剤は、ポリテトラフルオロエチレン、銅粉、二硫化モリブデン、窒化ホウ素の粉、グラファイトの粉、およびそれらの組み合わせの中から選択されたものである
請求項6に記載の軸受。
【請求項9】
前記潤滑性の充填剤は、ポリテトラフルオロエチレンである
請求項8に記載の軸受。
【請求項10】
前記ポリテトラフルオロエチレンは、粉の状態、フロックの状態、およびそれらを組み合わせた状態のうちのいずれかである
請求項9に記載の軸受。
【請求項11】
前記自己潤滑性の表面被覆複合材料は、さらに、構造的な充填剤を有する
請求項1に記載の軸受。
【請求項12】
前記構造的な充填剤は、グラスファイバー、カーボンファイバー、ミクロウールファイバー、およびそれらの組み合わせの中から選択されたものである
請求項11に記載の軸受。
【請求項13】
前記構造的な充填剤は、グラスファイバーである
請求項12に記載の軸受。
【請求項14】
前記自己潤滑性の表面被覆複合材料は、さらに、揺変剤を有する
請求項1に記載の軸受。
【請求項15】
前記揺変剤は、ヒュームドシリカ、細かいポリテトラフルオロエチレンの粉、およびそれらの組み合わせの中から選択されたものである
請求項14に記載の軸受。
【請求項16】
前記自己潤滑性の表面被覆複合材料は、さらに、開始剤を有する
請求項1に記載の軸受。
【請求項17】
前記開始剤は、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトン過酸化物、およびそれらの組み合わせの中から選択されたものである
請求項16に記載の軸受。
【請求項18】
前記開始剤は、クメンヒドロペルオキシドである
請求項17に記載の軸受。
【請求項19】
金属性の複合材料を有する硬化性アクリレート組成物を形成するステップと、
潤滑性の充填剤、構造的な充填剤、および揺変剤を前記硬化性アクリレート組成物と組み合わせて、自己潤滑性の表面被覆複合材料を形成するステップと
を備え、
前記金属性の複合材料は、以下の化学式1に従う金属性アクリレート化合物を有する
前記自己潤滑性の表面被覆複合材料を製造する方法。
【化2】

ただし、化学式1において、
R=HもしくはCH
M=Zn、Ca、
である。
【請求項20】
a.)以下の化学式1に従う金属性アクリレート化合物を有する金属性の複合材料を有する硬化性アクリレート組成物と、
b.)ポリテトラフルオロエチレン、銅粉、二硫化モリブデン、窒化ホウ素の粉、グラファイトの粉、およびそれらの組み合わせの中から選択される潤滑性の充填剤と、
c.)グラスファイバー、カーボンファイバー、ミクロウールファイバー、およびそれらの組み合わせの中から選択される構造的な充填剤と、
d.)ヒュームドシリカ、細かいポリテトラフルオロエチレンの粉、およびそれらの組み合わせの中から選択される揺変剤と、
e.)過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトン過酸化物、およびそれらの組み合わせの中から選択される開始剤と
を備える
自己潤滑性の表面被覆複合材料。
【化3】

ただし、化学式1において、
R=HもしくはCH
M=Zn、Ca、
である。
【請求項21】
前記硬化性アクリレート組成物は、さらに、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリル樹脂、トリメチルアクリル樹脂の酸エステル、トリエチレングリコールジメタクリル樹脂、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリル樹脂、およびそれらの組み合わせの中の少なくとも1つを有する
請求項20に記載の自己潤滑性の表面被覆複合材料。
【請求項22】
前記金属性の複合材料は、さらに、金属酸化物を有する
請求項20に記載の自己潤滑性の表面被覆複合材料。
【請求項23】
前記金属酸化物は、酸化亜鉛および酸化カルシウムの中から選択されたものである
請求項22に記載の自己潤滑性の表面被覆複合材料。
【請求項24】
前記金属性の複合材料は、亜鉛モノメタクリル樹脂、亜鉛ジメタクリル樹脂、および酸化亜鉛を有する
請求項23に記載の自己潤滑性の表面被覆複合材料。
【請求項25】
前記自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に対し、3質量パーセントから50質量パーセントまでの範囲内に入る質量の前記硬化性アクリレート組成物を有する
請求項20に記載の自己潤滑性の表面被覆複合材料。
【請求項26】
前記自己潤滑性の表面被覆複合材料の総質量に対し、少なくとも20質量パーセントの質量の前記潤滑性の充填剤を有する
請求項20に記載の自己潤滑性の表面被覆複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−520074(P2011−520074A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507670(P2011−507670)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/042459
【国際公開番号】WO2009/135094
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(507080950)ローラー ベアリング カンパニー オブ アメリカ インコーポレーテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】Roller Bearing Company of America, Incorporated
【住所又は居所原語表記】United States of America 06478 Connecticut, Oxford, One Tribology Center
【Fターム(参考)】