説明

自律走行ロボット、自律走行ロボットを用いた追走システム、及び追走方法

【課題】本発明は、被追走体を見失う事象が曲がり角以外の環境において生じる場合であっても、被追走体への追走を継続して行うことができるようにする。
【解決手段】本発明は、被追走体検出部37により、被追走体を見失ったか否かを判定する見失判定手段34aと、見失ったと判定したときには、見失った後の被追走体位置を推定する被追走体位置推定手段70bと、被追走体を見失う前の被追走体位置、被追走体を見失った後の被追走体推定位置及び遮視物の位置の相対的な位置関係に基づいて、その被追走体が遮視物に遮られたか否かを判定する遮視判定手段70aと、被追走体が遮視物に遮られたと判定したときには、その被追走体の被追走体推定位置を目標とした走行経路を生成する走行経路生成手段100aと、生成した上記走行経路に沿い、走行機構により移動させる走行手段110aとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行ロボット、自律走行ロボットを用いた追走システム、及び追走方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の自律走行ロボットとして、搬送ロボットとした名称で特許文献1に記載された構成のものがある。
特許文献1に記載されている従来の自律走行ロボットは、被追走体である誘導者を認識して所定距離を保って追尾する機能を有するものであり、前記誘導者及び周囲の障害物等を検知する検知手段と、走行手段と、前記走行手段を制御する走行制御部を具備し、前記走行制御部は、前記検知手段で誘導者を認識して追従する。
そして、検知部が誘導者を認識できなくなった場合、認識できなくなった場所の近傍に曲がり角の存在を認識すると、当該曲がり角を曲がるように走行手段を制御する構成のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004‐126802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の自律走行ロボットでは、この自律走行ロボットが誘導者を見失う事象が、曲がり角を曲がるという限定した環境に限られるものである。
すなわち、誘導者が曲がり角を曲がること以外において、誘導者を見失う事象が生じる場合、自律走行ロボットが誘導者を見失い、かつ、その近傍に曲がり角が存在するときには、当該自律走行ロボットは、誘導者を見失ったことに気づくことなく、従ってまた、誘導者の移動方向とは関わりなく、その曲がり角を曲がってしまうという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、被追走体を見失う事象が曲がり角以外の環境において生じる場合であっても、被追走体への追走を継続して行うことができる自律走行ロボット、自律走行ロボットを用いた追走システム、及び追走方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の構成は、次のとおりである。
請求項1に記載した自律走行ロボットは、被追走体を検出するための被追走体検出部と、移動するための走行機構とを有し、被追走体の移動に自律して追走する自律走行ロボットにおいて、被追走体検出部によって、被追走体を見失ったか否かを判定する見失判定手段と、被追走体を見失ったと判定したときには、その被追走体を見失った後の被追走体位置を推定する位置推定手段と、被追走体を見失う前の位置、被追走体を見失った後の被追走体推定位置及び遮視物の位置の相対的な位置関係に基づいて、その被追走体が遮視物に遮られたか否かを判定する遮視判定手段と、被追走体が遮視物に遮られたと判定したときには、その被追走体の被追走体推定位置を目標として、走行経路を生成する走行経路生成手段と、生成した上記走行経路に沿い、走行機構により走行させる走行手段とを有することを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の自律走行ロボットは、請求項1に記載した被追走体を見失ったときの自己と遮視物の両位置を結ぶ第一の遮視判別用直線と、被追走体を見失う前の被追走体位置と、その被追走体を見失った後の被追走体推定位置を結ぶ第二の遮視判別用直線とを生成する判別用直線生成手段が設けられており、遮視判定手段は、生成した第一,第二の遮視判別用直線どうしが交差するか否かを判定している。
【0008】
請求項3に記載の追走システムは、請求項3に記載した被追走体と、この被追走体を検出するための被追走体検出部及び移動するための走行機構とを有し、被追走体の移動に自律して追走するものであり、被追走体検出部によって、被追走体を見失ったか否かを判定する見失判定手段と、被追走体を見失ったと判定したときには、その被追走体を見失った後の被追走体位置を推定する位置推定手段と、被追走体を見失う前の被追走体位置、被追走体を見失った後の相対的な被追走体推定位置及び遮視物の位置の相対的な位置関係に基づいて、その被追走体が遮視物に遮られたか否かを判定する遮視判定手段と、被追走体が遮視物に遮られたと判定したときには、その被追走体の被追走体推定位置を目標として、走行経路を生成する走行経路生成手段と、生成した上記走行経路に沿い、走行機構により移動させる走行手段とを自律走行ロボットに設けたことを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の追走方法は、被追走体に、自律走行ロボットを自律して追走させる追走方法において、被追走体を見失ったか否かを判定する見失判定ステップと、被追走体を見失ったと判定したときには、その被追走体を見失った後の被追走体位置を推定する位置推定ステップと、被追走体を見失う前の被追走体位置、被追走体を見失った後の相対的な被追走体推定位置及び遮視物の位置の相対的な位置関係に基づいて、その被追走体が遮視物に遮られたか否かを判定する遮視判定ステップと、被追走体が遮視物に遮られたと判定したときには、その被追走体の被追走体推定位置を目標として、走行経路を生成する走行経路生成ステップと、走行機構により生成した上記走行経路に沿って移動させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜4に記載した各発明によれば、被追走体を見失ったか否かを判定し、被追走体を見失ったと判定したときには、その被追走体を見失った後の被追走体位置を推定し、被追走体を見失う前の被追走体位置、被追走体を見失った後の相対的な被追走体推定位置及び遮視物の位置の相対的な位置関係に基づいて、その被追走体が遮視物に遮られたか否かを判定する。
また、被追走体が遮視物に遮られたと判定したときには、その被追走体の被追走体推定位置を目標として走行経路を生成し、走行機構により生成した上記走行経路に沿って移動させているので、被追走体を見失う事象が曲がり角以外の環境において生じる場合であっても、被追走体への追走を継続して行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、被追走体を見失ったときの自己と遮視物の両位置を結ぶ第一の遮視判別用直線と、被追走体を見失う前の被追走体位置と、その被追走体を見失った後の被追走体推定位置を結ぶ第二の遮視判別用直線とを生成し、遮視判定手段が、生成した第一,第二の遮視判別用直線どうしが交差するか否かを判定しているので、被追走体が遮視物に遮られたことを容易確実に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る自律走行ロボットを用いた追走システムの概略構成を示す説明図である。
【図2】同上の自律走行ロボットの概略構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す追走システムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】(A)は、同上の自律走行ロボットが遮視物を検出する動作を示す説明図、(B)は、被追走体を見失う前の被追走体位置、被追走体を見失った後の被追走体推定位置及び遮視物の位置の相対的な位置関係に基づいて、その被追走体が遮視物に遮られたか否かを判定する原理を示す説明図である。
【図5】遮視物に被追走者が遮られたことを検出するアルゴリズムを説明するためのフローチャートである。
【図6】同上の自律走行ロボットの動作を示すフローチャートである。
【図7】(A)は、他例に係る遮視物に被追走者が遮られた様子を示す説明図、(B)は、被追走体を見失う前の被追走体位置、被追走体を見失った後の被追走体推定位置及び遮視物の位置の相対的な位置関係に基づいて、その被追走体が他例に係る遮視物に遮られたか否かを判定する原理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自律走行ロボットを用いた追走システムの概略構成を示す説明図、図2は、自律走行ロボットの概略構成を示すブロック図である。また、図3は、図1に示す追走システムの詳細な構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る自律走行ロボットを用いた追走システムAは、被追走体Bと、自律走行ロボットCとを有して構成されている。
本実施形態における被追走体Bは例えば人(以下、「被追走者」という。)であり、コントローラ10と、腕に装着した反射マーカ12とを装備している。
【0015】
コントローラ10は、図3に示すように、自律走行ロボットCから送信されるメッセージを聞くためのイヤホン11、コントローラ兼通信部13及び無線LAN14を有して構成されており、詳細を後述する自律走行ロボットCとの間において所要の通信を行うものである。
【0016】
自律走行ロボットCは、図1に示すように、円筒形の本体30の上部に略半球形の頭部31を搭載しているとともに、その本体30の下部に4つの走行輪32a(32a)、32b(32b)を配設した外観構成になっている。
なお、走行輪32a(32a)、32b(32b)は、図示しないモータ等を含む走行機構36により、所謂スキッドステア方式によってそれぞれ独立して回転駆動されるようになっている。
【0017】
本体30の外殻には、この内部に区画形成した荷持収容部(図示しない)の開閉扉30aと、この開閉扉30aの上側位置に互いに所要の角度間隔で配列された複数のスピーカ30bとが設けられている。
【0018】
頭部31は、これの頭頂部31aが全方位的に、また、移動方向α前側に横長方形領域31bがそれぞれ透明に区画形成されており、それらのうちの頭頂部31aの内側にPTZカメラ37、また、横長方形領域31bの内側に三次元レーザスキャナ35がそれぞれ内設されている。
【0019】
頭部31内には、ロボット位置・速度計測部40、走行路検出部50、被追走体位置・速度計測部60、ミッション環境評価部70、被追走体通信部80、行動制御部D、及び外部通報部90が配設されている。
【0020】
ロボット位置・速度計測部40は、図3に示すように、デットレコニング41、ロボットGPS(Global Positioning System)42、及びロボット速度演算部43を有して構成されている。
デットレコニング41は、走行情報に基づいて基準位置からの相対移動ベクトルを出力して、自己位置を推定するためのもであり、本実施形態においては例えばオドメトリを採用している。
【0021】
ロボットGPS42は、自律走行ロボットCの自己位置を計測するためのものである。
ロボット速度演算部43は、所要のプログラムの実行により、
デットレコニング41からの出力情報と、ロボットGPS42からの位置情報に基づいて、自律走行ロボットCの移動速度を算出する機能を有している。この機能を「移動速度演算手段43a」という。
また、後述する被追走者Bを見失ったときの自己の位置を取得する機能。この機能を「ロボット位置取得手段43b」という。
【0022】
走行路検出部50は、上記した三次元レーザスキャナ35と、障害物検知・地図作成部51とを有して構成されている。
本実施形態においては、三次元レーザスキャナ35が、測距領域の測距データを取得するための測距部である。
【0023】
障害物検知・地図作成部51は、所要のプログラムの実行により、次の機能を発揮する。
・測距部である三次元レーザスキャナ35により取得した測距データに基づいて、遮視物の位置を取得する機能。この機能を「遮視物位置取得手段51a」という。
【0024】
・三次元レーザスキャナ35により取得した測距データに基づいて、走行の可否を判断することにより、障害物(遮視物)を含む環境地図を作成する機能。この機能を「地図作成手段51a」という。
例えば所定の高さを基準として、測距領域における移動可能領域、移動不可能領域及び障害物(遮視物)を含む環境地図を作成している。
【0025】
被追走体位置・速度計測部60は、上記したPTZカメラ37と、被追走体位置認識部34とを有して構成されている。
PTZカメラ37は、パンチルトズームレンズ一体型カメラのことであり、被追走者Bを撮影するためのものである。
【0026】
被追走体位置認識部34は、所要のプログラムの実行により、次の機能を有している。
・被追走体検出部であるPTZカメラ37によって、被追走者Bを見失ったか否かを判定する機能。この機能を「見失判定手段34a」という。
・被追走体検出部であるPTZカメラ37により、被追走者Bを見失うまでの、その被追走者Bの位置を取得する機能を有している。この機能を「被追走体位置取得手段34b」という。
【0027】
具体的には、撮影した被追走者Bの画像に含まれる反射マーカ12に基づいて、被追走者Bの位置(座標)を認識取得している。
なお、反射マーカとしては、発光マーカでもよく、また、反射マーカをLRFによって検出するようにしてもよい。
【0028】
ミッション環境評価部70は、追走を実行する環境を評価し、その評価結果に基づいて、被追走者B及び周囲の人への告知情報を選択して報知する機能を有している。
【0029】
・被追走者Bを見失う前の自己位置、被追走者Bを見失った後の被追走体推定位置及び被追走者Bの位置の相対的な位置関係に基づいて、その被追走者Bが遮視物130(図4(A),(B)参照)に遮られたか否かを判定する機能。この機能を「遮視判定手段70a」という。
本実施形態においては、下記の判別用直線生成手段70bによって生成した第一,第二の遮視判別用直線L1,L2どうしが交差するか否かを判定している。
【0030】
・被追走者Bを見失ったと判定したときには、その被追走者Bを見失った後の自己位置を推定する機能。この機能を「被追走者位置推定手段70b」という。
【0031】
・被追走者Bを見失ったときの自己と遮視物130の両位置を結ぶ第一の遮視判別用直線L1と、被追走者Bを見失う前の被追走体位置と、その被追走者Bを見失った後の被追走体推定位置を結ぶ第二の遮視判別用直線L2とを生成する機能。この機能を「判別用直線生成手段70c」という。
【0032】
・評価結果に基づいて、予め設定した複数の告知情報を選択する機能。この機能を「告知情報選択手段70d」という。
「告知情報」としては、第一の遮視判別用直線L1と第二の遮視判別用直線L2とが交差しないと判定した場合、すなわち、評価結果に対応した例えば「見失いました」や「停止します」等である。
【0033】
・選択された告知情報を、被追走者B及び周囲の人に報知する機能。この機能を「告知情報報知手段70e」という。
具体的は、外部通報部90に配設したスピーカ30bや被追走者Bのイヤホン11を介して告知情報を報知している。
【0034】
行動制御部Dは、経路生成部100、車体制御部110、及び車体駆動部120を有して構成されている。
経路生成部100は、所要のプログラムの実行により、次の機能を発揮する。
・被追走者Bが遮視物130に遮られると判定したときには、被追走者Bを見失った後の被追走者Bの推定座標位置を目標として走行経路を生成する機能。この機能を「走行経路生成手段100a」という。
本実施形態においては、上述した環境地図に基づき、ホテンシャル法や最急降下法等により走行経路を生成している。
【0035】
以下に、被追走体を見失う前の被追走体位置、被追走体を見失った後の被追走体推定位置及び遮視物の位置の相対的な位置関係に基づいて、その被追走体が遮視物に遮られたか否かを判定する詳細な原理について、図4,5を参照して説明する。
【0036】
図4(A)は、自律走行ロボットが遮視物を検出する動作を示す説明図、(B)は、被追走体を見失う前の被追走体位置、被追走体を見失った後の被追走体推定位置及び遮視物の位置の相対的な位置関係に基づいて、その被追走体が遮視物に遮られたか否かを判定する原理を示す説明図、図5は、遮視物に被追走者が遮られたことを検出するアルゴリズムを説明するためのフローチャートである。
【0037】
ステップ1(図中、「S1」と略記する。以下同様。):三次元レーザスキャナ35の測距値の位相方向に関する微分値の大きな箇所を遮視物である建物130の角130bと認識する(図4(A)参照)。
なお、図中「b」はレーザ光軸、また、「β」は位相方向を示している。また、本実施形態においては、建物130の角130bを遮視物として説明するが、当該「角」に限るものではない。
【0038】
ステップ2:位相と測距値とにより、建物130の角130bの座標E(t+Δt)(図4(B)参照)を算出してステップ3に進む。
ステップ3:デッドレコニング41により、自律走行ロボットCの位置の座標P(t+Δt)を取得してステップ4に進む。
【0039】
なお、デッドレコニング41に代えて、GPS、環境地図を用いた自己位置推定によって自己位置の座標P(t+Δt)を計測するようにしてもよい。
【0040】
ステップ4:図4(B)に示すライン(遮視判別用直線)L1を生成する。そのライン(遮視判別用直線)L1は、自律走行ロボットCの位置座標と、建物130の角130bの位置座標とを通る直線である。
【0041】
ステップ5:自律走行ロボットCから被追走者Bを見失う直前の、その被追走者Bの移動速度を算出する。
被追走者Bの移動速度V(t)=R(t)−R(t−Δt)
R(t)は、被追走者Bを見失う直前の位置座標。
R(t−Δt)は、被追走者Bを見失う前の一つ前の位置座標。
速度の算出は、過去複数点の平均等を使ってもよい。すなわち、見失う直前の速度が確からしく算出できればよい。
【0042】
ステップ6:見失った時刻における被追走者Bの位置R(t+Δt)を推定する。
R(t+Δt)=R(t)+V(t)×Δt
なお、Δtは、演算周期である。
【0043】
ステップ7:図4(B)に示すラインL2を生成する。
すなわち、見失う直前の被追走者Bの位置座標R(t)と、見失ったときの時刻における被追走者Bの推定位置R(t+Δt)を結ぶライン(被追走者移動直線)L2を生成する。
【0044】
ステップ8:ラインL1とラインL2との交点の有無を判定する。
ステップ9:交点が存在すると判定した場合にはステップ10に進み、そうでなければステップ12に進む。
【0045】
ステップ10:被追走者Bを見失った旨を報知して、ステップ11に進む。
ステップ11:走行機構36によって停止制御する。
ステップ12:移動目標点をR(t+Δt)に設定する。
【0046】
車体制御部110は、生成した走行経路に沿い、走行機構36によって移動させる機能。この機能を「走行手段110a」という。
具体的には、上記した走行輪32a(32a)、32b(32b)のそれぞれ回転数を決定する機能を有している。
車体駆動部120は、上記した走行機構36によって、走行輪32a(32a)、32b(32b)を、それぞれ決定した回転数だけ回転駆動する機能を有するものである。
【0047】
次に、自律走行ロボットの動作について、図6を参照して説明する。図6は、自律走行ロボットの動作を示すフローチャートである。
ロボット位置・速度計測部40のPTZカメラ37によって撮影した被追走者Bの画像から反射マーカ12を抽出し、反射マーカ12の抽出結果と環境地図内の障害物情報により、被追走者Bが位置する座標と移動速度を取得するとともに、三次元レーザスキャナ35による測距領域の幾何形状を計測し、例えば高さに基づく移動の可否を判定して、環境地図を作成する。また、ロボットGPS42によって自律走行ロボットCの座標を計測し、それらのデータがミッション環境評価部70に適宜出力される。
【0048】
ステップ1(図中、「Sa1」と略記する。以下同様。):時刻情報を更新して、ステップ2に進む。
ステップ2:ミッション環境評価部70において、ミッション環境評価を行う。
具体的には、被追走者Bの位置が検出できなかった場合、建物120に遮られたか又はその他の要因で被追走者を見失ったか否かを判定する。
なお、他の要因で被追走者を見失ったと判定した場合には、図5のステップ10に示すように、評価結果に対応した告知情報を報知する。
【0049】
ステップ3:建物120に遮られたと判定した場合、図5のステップ12において説明したように、移動目標点を設定する。
ステップ4:上述した環境地図に基づいて、ホテンシャル場を生成する。
ステップ5:最急降下法により、走行経路を生成する。
【0050】
ステップ6:制動距離を算出する。
具体的には、自律走行ロボットCの制動距離+被追走者Bの位置及び自律走行ロボットCの位置計測誤差により、制動距離を算出する。これにより、最適な速度設定を行うことができる。
ステップ7:各走行輪の回転数の設定等の車両制御の演算を行う。
ステップ8:走行機構36によって移動する。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、次のような変形実施が可能である。
・本実施形態においては、遮視物として建物を例として説明するが、これに限るものではなく、次のような状況においても適用することができることは勿論である。図7(A)は、他例に係る遮視物に被追走者が遮られた様子を示す説明図、(B)は、被追走体を見失う前の被追走体位置、被追走体を見失った後の被追走体推定位置及び遮視物の位置の相対的な位置関係に基づいて、その被追走体が他例に係る遮視物に遮られたか否かを判定する原理を示す説明図である。なお、上述した実施形態において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
図7(A)に示すように、他例に係る遮視物である自動車130の近傍で被追走者Bを見失った場合、その自動車130に遮られたか否かを判定する。
すなわち、上述したように、三次元レーザスキャナ35の測距値の位相方向に関する微分値の大きな箇所を自動車130の角130aと認識し、レーザの位相と測距値とにより、自動車130の角130aの座標を算出する。
そして、デッドレコニング41により、自律走行ロボットCの位置の座標を取得し、上記したライン(遮視判別用直線)L1を生成する。
また、自律走行ロボットCから被追走者Bを見失う前の、その被追走者Bの移動速度を算出し、見失った時刻における被追走者Bの位置を推定して、ラインL2を生成する。
そして、ラインL1とラインL2との交点の有無を判定することにより、自動車130に遮られたか否かを判定するのである。
【0053】
・上述した実施形態においては、被追走体として人を例として説明したが、これに限るものではなく、車両や他のロボット等をも含むものである。
【符号の説明】
【0054】
34a 見失判定手段
34b 被追走体位置取得手段
35 測距部(三次元レーザスキャナ)
36 走行機構
37 被追走体検出部(PTZカメラ)
43a 移動速度演算手段
43b ロボット位置取得手段
70a 遮視判定手段
70b 被追走体位置推定手段
70c 判別用直線生成手段
100a 走行経路生成手段
110a 走行手段
130 障害物(遮視物)
A 追走システム
B 被追走体(被追走者)
C 自律走行ロボット
L1 第一の遮視判別用直線
L2 第二の遮視判別用直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被追走体を検出するための被追走体検出部と、走行するための走行機構とを有し、被追走体の移動に自律して追走する自律走行ロボットにおいて、
被追走体見出部によって、被追走体を見失ったか否かを判定する見失判定手段と、
被追走体を見失ったと判定したときには、その被追走体を見失った後の被追走体位置を推定する位置推定手段と、
被追走体を見失う前の被追走体位置、被追走体を見失った後の被追走体推定位置及び遮視物の位置の相対的な位置関係に基づいて、その被追走体が遮視物に遮られたか否かを判定する遮視判定手段と、
被追走体が遮視物に遮られたと判定したときには、その被追走体の被追走体推定位置を目標とした走行経路を生成する走行経路生成手段と、
生成した上記走行経路に沿い、走行機構により移動させる走行手段とを有していることを特徴とする自律走行ロボット。
【請求項2】
被追走体を見失ったときの自己と遮視物の両位置を結ぶ第一の遮視判別用直線と、被追走体を見失う前の被追走体位置と、その被追走体を見失った後の被追走体推定位置を結ぶ第二の遮視判別用直線とを生成する判別用直線生成手段が設けられており、
遮視判定手段は、生成した第一,第二の遮視判別用直線どうしが交差するか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の自律走行ロボット。
【請求項3】
被追走体と、この被追走体を検出するための被追走体検出部及び移動するための走行機構とを有し、被追走体の移動に自律して追走する自律走行ロボットにおいて、
被追走体検出部によって、被追走体を見失ったか否かを判定する見失判定手段と、被追走体を見失ったと判定したときには、その被追走体を見失った後の被追走体位置を推定する位置推定手段と、被追走体を見失う前の被追走体位置、被追走体を見失った後の被追走体推定位置及び遮視物の位置の相対的な位置関係に基づいて、その被追走体が遮視物に遮られたか否かを判定する遮視判定手段と、被追走体が遮視物に遮られたと判定したときには、その被追走体の被追走体推定位置を目標とした走行経路を生成する走行経路生成手段と、生成した上記走行経路に沿い、走行機構により移動させる走行手段とを自律走行ロボットに設けたことを特徴とする自律走行ロボットを用いた追走システム。
【請求項4】
被追走体に、自律走行ロボットを自律して追走させる追走方法において、
被追走体を見失ったか否かを判定する見失判定ステップと、
被追走体を見失ったと判定したときには、その被追走体を見失った後の被追走体位置を推定する位置推定ステップと、
被追走体を見失う前の被追走体位置、被追走体を見失った後の被追走体推定位置及び遮視物の位置の相対的な位置関係に基づいて、その被追走体が遮視物に遮られたか否かを判定する遮視判定ステップと、
被追走体が遮視物に遮られたと判定したときには、その被追走体の被追走体推定位置を目標として、遮視物側に回り込むための走行経路を生成する走行経路生成ステップと、
走行機構により生成した上記走行経路に沿って移動させることを特徴とする追走方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−277236(P2010−277236A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127633(P2009−127633)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】