説明

苗移植機

【課題】本発明では、作業時の燃料消費を抑えた、低燃費の苗移植機を提供することを課題とする。
【解決手段】
走行車体2にエンジン20と油圧無段変速装置23を設け、走行車体2の後部に圃場に苗を植え付ける苗植付装置52を設け、油圧無段変速装置23の出力を切り替えて機体の前後進及び走行速度を操作する変速操作レバー8を設けた苗移植機において、油圧無段変速装置23に駆動容量を変更可能な可変アクチュエータ29を設け、走行車体2の走行状態を検知する第1走行検知部材14と第2走行検知部材9を設け、第1走行検知部材14の検知する走行状態に合わせて可変アクチュエータ29の駆動容量とエンジン20の回転数を制御する制御装置6を設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機や野菜移植機やイ草移植機等の苗移植機で、油圧無段変速装置を備えた苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2007−319024号公報には、油圧無段変速装置でエンジン回転を変速する苗移植機が搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−319024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記乗用苗移植機の無段変速装置は、一定容量型の油圧モータが使用され、苗移植作業時にはエンジンの回転が無段変速装置とミッションケースで変速されて走行装置に伝動されて、圃場の走行や旋回に支障のない充分な駆動トルクが走行装置に生じるようにしている。
【0005】
近年、農作業機においても燃料消費の低減が課題となっているので、植付作業における駆動負荷の変動を調査したところ、圃場内における旋回走行時に最大の駆動負荷が生じ、直進植付作業中にはあまり駆動負荷がかかっていないことが分った。
【0006】
そこで、本発明では、燃料消費を抑えた低燃費の苗移植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、走行車体(2)にエンジン(20)と油圧無段変速装置(23)を設け、該走行車体(2)の後部に圃場に苗を植え付ける苗植付装置(52)を設け、前記油圧無段変速装置(23)の出力を切り替えて機体の前後進及び走行速度を操作する変速操作レバー(8)を設けた苗移植機において、前記油圧無段変速装置(23)に駆動容量を変更可能な可変アクチュエータ(29)を設け、前記走行車体(2)の走行状態を検知する第1走行検知部材(14)と第2走行検知部材(9)を設け、該第1走行検知部材(14)の検知する走行状態に合わせて前記可変アクチュエータ(29)の駆動容量とエンジン(20)の回転数を制御する制御装置(6)を設けたことを特徴とする苗移植機とした。
【0008】
上記構成により、第1走行検知部材(14)または第2走行検知部材(9)が検出する走行状態に合わせて、可変アクチュエータ(29)の駆動容量とエンジン(20)の回転を制御して充分な駆動トルクを発生させることができるので、軽負荷時には燃料消費を抑えた、低燃費での走行が可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記第1走行検知部材(14)で変速操作レバー(8)の変速位置を検知し、該第1走行検知部材(14)が変速位置を植付作業位置(S)と検出すると、前記可変アクチュエータ(29)の駆動容量とエンジン(20)の回転数を低減させる構成とすると共に、前記第1走行検知部材(14)が変速位置を路上走行位置(R)と検出すると、前記可変アクチュエータ(29)の駆動容量とエンジン(20)の回転数を増大させる構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とした。
【0010】
上記構成により、変速操作レバー(8)を植付作業位置(S)や路上走行位置(R)に移動させると、可変アクチュエータ(29)の駆動容量とエンジン(20)の回転数を充分な駆動トルクが発生する状態に自動的に制御されるため、植付走行時よりも大きな駆動負荷のかかる路上走行を支障なく行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記第2走行検知部材(9)でハンドル(34)の切角度を検知し、該第二走行検知部材(9)が所定角度以上の切角度を検出すると、前記可変アクチュエータ(29)の駆動容量とエンジン(20)の回転数を増大させる構成としたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機とした。
【0012】
上記構成により、ハンドル(34)の切角度が所定値以上になると、駆動力を増大させることにより、大きな駆動負荷のかかる旋回動作を支障なく行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明は、第1走行検知手段(14)と第2走行検知手段(9)が検出した走行状態に合わせて可変アクチュエータ(29)の駆動容量とエンジン(20)の回転数を変更制御することにより、エンジン(20)の回転数を走行負荷に適した回転数に制御されるので、安定した走行を行なう駆動トルクを確保することができ、走行速度及び姿勢が安定して作業能率が向上すると共に、低トルクで走行するときには燃料消費量が少なくなるので、燃費が向上する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、変速操作レバー(8)が植付作業位置(S)に移動したことを第1走行検知手段(14)が検知すると、可変アクチュエータ(29)の駆動容量を低下させると共にエンジン(20)の回転数を低下させる制御が行なわれるため、植付作業に必要な最低限の駆動トルクを確保することができるので、植付作業が安定して行われて作業能率が向上すると共に、植付走行で消費される燃料が減少するため、燃費が向上する。
【0015】
また、変速操作レバー(8)が路上走行位置(R)に移動したことを第1走行検知手段(14)が検知すると、可変アクチュエータ(29)の駆動容量を増大させると共にエンジン(20)の回転数を上昇させる制御が行なわれるため、路上等を高速で走行する際に必要となる駆動トルクを十分に確保することができるので、路上走行の高速化や姿勢の安定が図られる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、ハンドル(34)の切角度を検出する第2走行検知手段(9)が所定角度以上の切角度を検知し、旋回動作が開始されたことを検知すると、可変アクチュエータ(29)の駆動容量を増大させると共にエンジン(20)の回転数を上昇させる制御が行なわれるため、泥土等の抵抗により多大な走行付加のかかる旋回動作に必要な駆動トルクを十分に確保することができるので、旋回速度が遅くなり必要以上に時間がかかることや旋回中に機体が停止してしまうことが防止され、作業能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】乗用型の苗移植機の側面図
【図2】乗用型の苗移植機の平面図
【図3】油圧無段変速装置の油圧回路図
【図4】自動制御のブロック図
【図5】自動制御のフローチャート
【図6】(a)リードカム軸の分解状態を表す側面図、(b)リードカム軸の使用形態を表す側面図、(c)取付軸部を取り外し、中央カム部を反転させた分解状態としたリードカム軸を示す側面図、(d)中央カム部を反転させて取付軸部を接続し、使用形態としたリードカム軸を示す側面図
【図7】苗載台の部分拡大背面図
【図8】予備苗載台の側面図
【図9】予備苗載台の部分拡大平面図
【図10】予備苗載台の部分拡大側断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願発明の実施の一形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1及び図2は、本発明を用いた一実施例である施肥装置5を装着した乗用型田植機1の側面図と平面図である。
【0019】
この施肥装置5を備えた乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付装置52が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0020】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。
【0021】
また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして左右後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その左右後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸17に後輪11,11が取り付けられている。
【0022】
なお、左右後輪ギヤケース18,18には、ミッションケース12の後壁から突出して左右後輪ギヤケース18,18に連結した左右後輪伝動軸18a,18aにて動力が伝達される構成となっている。
【0023】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧無段変速装置(以下、「HST」という)23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12内のトランスミッションにより変速された走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
【0024】
そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが左右後輪ギヤケース18,18に伝達されて左右後輪11,11を駆動する。なお、後述する施肥装置5の肥料繰出し機構へは、右後輪ギヤケース18から動力が駆動軸にて取出されて伝動される。
【0025】
また、ミッションケース12の右側側面より取出された外部取出動力は、植付伝動軸26によって苗植付装置52へ伝動される。植付伝動軸26の回転は、HST23から一方クラッチを介して正回転が苗植付装置52側へ伝動される。
【0026】
さらに、植付昇降レバー65を操作して苗植付装置52を植付け作業位置まで昇降リンク装置3で降下させている時は、一方クラッチ66が入りで植付伝動軸26が正転して苗植付装置52が駆動している状態となり、植付昇降レバー65で苗植付装置52を非植付け作業状態まで昇降リンク装置3で上げた時は、クラッチ切り保持機構で一方クラッチが切り状態を保持されて植付伝動軸26が停止している状態となる。
【0027】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作する旋回ハンドル34が設けられている。なお、エンジンカバー30はエンジン20の本体部分のみを覆う小型のカバーとして、むき出した燃料タンクの上に直接座席31を設ける構成も考えられる。
【0028】
また、旋回ハンドル34の周りには、ミッションを変速するチェンジレバーや変速レバー、植付部の伝動入・切及び苗植付装置52を昇降させる植付昇降レバー65、苗植付装置52の作業状態と非作業状態とを切り替えるフィンガアップレバー、植付部昇降制御の感度を調節する副感度調節レバー、苗植付装置52の下降を規制する下降ロックレバー、対地昇降制御の感度を調節する感度調節ダイヤル等を設けている。
【0029】
エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。
該フロアステップ35の左右前部には複数の貫通孔35a…が形成されており、座席31に着座して走行車体2を操縦する操縦者が左右前輪10,10を見通せることができて操縦が容易な構成となっていると共に、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。
【0030】
また、前記フロアステップ35の後部は、リヤステップを兼ねる後輪フェンダ36となっている。尚、28,28は左右補助ステップであり、作業者が機体に乗り降りする時に足を載せるステップである。
【0031】
図1及び図2で示すように、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
【0032】
また、昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、先端側には縦リンク43が連結されている。
【0033】
そして、縦リンク43の下端部に苗植付装置52に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付装置52がローリング自在に連結されている。苗植付装置52のフレーム94に囲まれた位置にセンターフロート55の昇降を感知する感知部材が設けられている。
【0034】
メインフレーム15に基部を回動自在に枢支した昇降油圧シリンダ46の先端を上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部に連結して設けており、該昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付装置52がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0035】
苗植付装置52は4条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50と、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a…に供給すると苗送りベルト51b…により苗を下方に移送する苗載台51と、苗取出口51a…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52…と、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。
【0036】
苗植付装置52の下部には中央にセンターフロート55を配置し、該センターフロート55の左右両側に左右一対のサイドフロート56,56がそれぞれ設けられる。そして、該センターフロート55とサイドフロート56,56よりも前側に、圃場の乱れた泥土面を整地して均す整地ロータ27が取り付けられている。
【0037】
前記センターフロート55とサイドフロート56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、整地ロータ27で圃場面を均し、センターフロート55とサイドフロート56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52…により苗が植付けられる。
【0038】
また、各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が前記感知部材に設ける迎角制御センサにより検出され、その検出結果に応じて前記昇降油油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付装置52を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0039】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を操出装置57の繰出装置61…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド62a…まで導き、施肥ガイド62a…の前側に設けた作溝体62b…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込む構成としている。
【0040】
電動モータで駆動するブロア58で発生させた空気の流れが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62…に吹き込まれ、施肥ホース62…内の肥料を風圧で施肥ガイド62aへ強制的に搬送するようになっている。
【0041】
また、該ブロア58の空気吸引口は、機体内側のエンジン20に向けて開口し、エンジン20の排気ガスを吸引する構成としている。これにより、排気ガスの熱で供給される空気に熱を加えることができるので、水気により軟化した肥料が施肥ホース62…内に付着して、ホース内に肥料詰まりが生じることを防止できる。
【0042】
図3は、HST23の油圧回路を示し、吐出容量可変の油圧ポンプ47と駆動容量可変の可変油圧モータ29を閉回路で構成し、油圧モータ制御バルブ67で油圧モータ駆動シリンダ66を制御して可変油圧モータ29の駆動容量を変更する。
【0043】
図4は、自動制御のブロック図で、変速操作レバー8の変速位置をポテンショメータ14で検出してその変速位置を制御装置6に入力する。変速位置は、植付作業位置Sと路上走行位置Rがある。また、ハンドル34の回動角度を検出する切れ角センサ9から旋回切れ角を制御装置6に入力する。
【0044】
制御装置6からは、エンジン20のスロットルバルブ25に回転制御信号が出力され、油圧モータ制御バルブ67に駆動容量制御信号が出力されて油圧モータ駆動シリンダ66を制御する。
【0045】
図5は自動制御のフローチャートで、変速操作レバー8を植付作業位置Sにして圃場内での植付走行にすると、エンジン20の回転数を一定低速とし可変油圧モータ29の駆動容量を小さくし、変速操作レバー8を路上走行位置Rにして路上の移動走行にすると、エンジン20の回転をHSTレバーの変速に連動して低速から高速まで変動し可変油圧モータ29の駆動容量を大きくする。
【0046】
変速操作レバー8が植付作業位置Sであっても路上走行位置Rであっても、切れ角センサ22から所定以上の切れ角が入力されると、旋回動作を開始したと認識して、エンジン20の回転数を増大させると共に、可変油圧モータ29の駆動容量を大きくする。
【0047】
油圧モータ29の駆動容量を小さくすると駆動軸の回転は増加するが、駆動トルクは小さくなって燃料消費が少なくなる。駆動軸の回転増加はミッションケース12で減速して走行速度を調整する。
【0048】
なお、吐出容量可変の油圧ポンプ47の吐出量をエンジン20の回転が低下すると増加させ、エンジン20の回転が上昇すると減少させるようにしてHST23の油圧回路にオイルが不足しないようにする。
【0049】
上記の制御構成により、変速操作レバー8が植付作業位置Sに移動したことをポテンショメータ14が検知すると、可変油圧モータ29の駆動容量を低下させると共に、エンジン20の回転数を低下させる制御が制御装置6で行なわれるため、圃場を略一直線に低速で走行しながら苗を植え付けて行く植付作業に必要な最低限の駆動トルクが確保されるので、植付作業が安定して行われて作業能率が向上する。
【0050】
また、エンジン20の回転数を低下させることにより、消費される燃料の量を減らすことができるので、植付走行時に消費される燃料が減少し、燃費が向上する。
そして、変速操作レバー8が路上走行位置Rに移動したことをポテンショメータ14が検知すると、可変油圧モータ29の駆動容量を増大させると共に、エンジン20の回転数を増大させる制御が制御装置6で行なわれるため、路上等を高速で走行する際に必要となる駆動トルクを十分に確保することができるので、路上走行の高速化や姿勢の安定が図られる。
【0051】
このとき、エンジン20の回転数が増大することにより、植付作業時よりも燃料の消費量は多くなるが、苗移植機をエンジン20を起動した状態で使用する時間のうち、もっとも長いのは低燃費化を図ることのできる植付走行であるため、相対的に低燃費化が図られることに代わりはない。なお、路上走行速を用いるのは、基本的に苗移植機を圃場から軽トラック等の移送手段まで移動させるとき、あるいは移送手段から下ろして倉庫等収納場所に移動させるときである。
【0052】
さらに、旋回ハンドル34の切り角を検出する切り角センサ9が所定角度以上の切り角を検知し、旋回動作が開始されたことを検知すると、可変油札モータ29の駆動容量を増大させると共に、エンジン20の回転数を増大させる制御が行なわれるため、泥土等の抵抗により多大な走行付加のかかる旋回動作に必要な駆動トルクを十分に確保することができるので、旋回速度が遅くなり必要以上に時間がかかることや、旋回中に機体が停止してしまうことが防止され、作業能率が向上する。
【0053】
従来の苗移植機は、圃場端での旋回動作に必要な駆動トルクを確保できるエンジン回転数を最低限度としていたため、植付作業中にも過剰な駆動トルク及びエンジン回転数を確保し続けていたために若干ながら燃費が低下していたが、本件の制御構成により、必要なときに必要な駆動トルクが確保されるエンジン回転数に自動的に変更することができるので、燃費が向上する。
【0054】
図6(a)〜(d)は、苗載台51を左右に往復移動させるリードカム軸27を示し、左右両端部27a,27cと中間カム部27bとをネジ連結で分離して中間カム部27bに対して左端側の第1取付軸27aと、右端側の第2取付軸27cを位置交換可能に構成している。
【0055】
上記構成により、中間カム部27bのリードカム溝が長期間のリードメタル(図示せず)との接触で偏って摩耗した場合、左右の第1及び第2取付軸部27a,27cを中間カム部27bから取り外し、中間カム部27bを左右方向に反転させ、反転させた中間カム部27bの左側端部、即ち反転前の右側端部に第1取付軸部27aをねじ込んで連結し、中間カム部27bの右側端部、即ち反転前の左側端部に第2取付軸部27cをねじ込んで連結することにより、摩耗していない側のリードカム溝をリードメタルに接触させることができるので、苗載台51の左右移動が能率的に行なわれる、
また、リードカム軸27の使用時間が単純に考えて約2倍となるため、耐久性が向上すると共に、部品の交換頻度が減って、メンテナンス性が向上する。
【0056】
図7は、苗載台51の背面図で、横幅Hを広幅苗マットを載せる幅にし、左右下端部に幅寄せプレート33を設けている。狭幅苗マットを使用する場合には、左右ガイド枠37,37を取り付けて苗載せ面を狭める。広幅苗マットを使用する場合には、左右ガイド枠37,37を取り外す。
【0057】
この構成で、苗載台51の左右移動幅を変えなくても(リードカム軸を交換しなくても)広幅苗マットと狭幅苗マットが使用できるようになる。
図8は、予備苗載台38の側面図を示し、走行車体2に立設する台支持フレーム39に前後二本の縦アーム39a,39bを垂直から水平に起伏回動固定可能に枢支軸48a,48bで設け、この縦アーム39a,39bに上段支持台45aと中段支持台45bと下段支持台45cを縦アーム39a,39bを起伏しても水平状態を保つように設けている。縦アーム39a,39bを垂直にすると上段支持台45aと中段支持台45bと下段支持台45cが上下に等間隔で保持され、縦アーム39a,39bを水平にすると上段支持台45aと中段支持台45bと下段支持台45cが一列の水平状態に保持され、苗マットを載せて横スライドが容易になる。
【0058】
上段支持台45aと中段支持台45bと下段支持台45cの合わせ部には、苗マットの横移動を止めるストッパプレートを設け、一列の水平状態にするとこのストッパプレートが下へ沈み込むようにしているので、この構造を図9と図10に示す上段支持台45aと中段支持台45bの合わせ部で説明する。
【0059】
上段支持台45aには枢支軸53aにストッパプレート49aと解除プレート54aを一体としてトーションバネ57aでストッパプレート49aが上段支持台45aの水平面から上に突出するようにしている。これに対して、中段支持台45bに上段支持台45a側に向けてストッパ解除ピン57bを設け、一列の水平状態にする際にストッパ解除ピン57bが上段支持台45aの解除プレート54aに下から当たってストッパプレート49aを上段支持台45aの水平面から下に沈み込むようになる。
【0060】
同様に中段支持台45bにも枢支軸53bにストッパプレート49bと解除プレート54bを一体としてトーションバネ57bでストッパプレート49bが中段支持台45bの水平面から上に突出するようにしている。これに対して、上段支持台45aに中段支持台45b側に向けてストッパ解除ピン57aを設け、一列の水平状態にする際にストッパ解除ピン57aが中段支持台45bの解除プレート54bに上から当たってストッパプレート49bを中段支持台45bの水平面から下に沈み込むようになる。
【0061】
中段支持台45bと下段支持台45cとの間にも同様にストッパプレートと解除プレートとストッパ解除ピンを設けている。
【符号の説明】
【0062】
4 走行装置
6 自動制御装置
7 走行検知手段
8 変速レバー
9 切れ角センサ
20 エンジン
23 油圧無段変速装置
29 油圧モータ
34 旋回ハンドル
S 植付作業位置
R 路上走行位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)にエンジン(20)と油圧無段変速装置(23)を設け、該走行車体(2)の後部に圃場に苗を植え付ける苗植付装置(52)を設け、前記油圧無段変速装置(23)の出力を切り替えて機体の前後進及び走行速度を操作する変速操作レバー(8)を設けた苗移植機において、
前記油圧無段変速装置(23)に駆動容量を変更可能な可変アクチュエータ(29)を設け、前記走行車体(2)の走行状態を検知する第1走行検知部材(14)と第2走行検知部材(9)を設け、該第1走行検知部材(14)の検知する走行状態に合わせて前記可変アクチュエータ(29)の駆動容量とエンジン(20)の回転数を制御する制御装置(6)を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記第1走行検知部材(14)で変速操作レバー(8)の変速位置を検知し、該第1走行検知部材(14)が変速位置を植付作業位置(S)と検出すると、前記可変アクチュエータ(29)の駆動容量とエンジン(20)の回転数を低減させる構成とすると共に、前記第1走行検知部材(14)が変速位置を路上走行位置(R)と検出すると、前記可変アクチュエータ(29)の駆動容量とエンジン(20)の回転数を増大させる構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記第2走行検知部材(9)でハンドル(34)の切角度を検知し、該第二走行検知部材(9)が所定角度以上の切角度を検出すると、前記可変アクチュエータ(29)の駆動容量とエンジン(20)の回転数を増大させる構成としたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−10636(P2012−10636A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149412(P2010−149412)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】