説明

苗移植機

【課題】旋回操作連動で植付部を昇降制御する場合に、下降時の植付部の保護と圃場面の検出精度を損なうことなく、速やかに植付を再開できる苗移植機を提供する。
【解決手段】苗移植機は、圃場走行用の走行部(2,3)と、苗移植の作業高さを検出する圃場面センサ(6s)を備えて昇降リンク(5)により昇降可能な植付部(6)と、この植付部(6)を左右水平に角度調節するローリング機構(7)と、の旋回開始で植付部(6)を上昇保持し、旋回終了で作業高さに戻す旋回連動昇降機構とを設けて構成され、上記植付部(6)の高さ位置を検出する位置検知装置(5s)を設け、この位置検知装置(5s)により、旋回開始時の植付部(6)の作業高さを記憶するとともに、旋回終了時の植付部(6)の下降の際に、記憶による作業高さ位置から上方に所定距離の高さ位置を境にその上下で下降速度を切替え制御可能に上記旋回連動昇降機構を構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の旋回動作と連動して植付部が昇降動作する苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された苗移植機は、機体後部に昇降可能に植付部を備え、圃場端まで苗を植付けた後、隣接領域を逆方向に植付けする際に、旋回開始により植付部が自動上昇するとともに植付動作を停止し、旋回終了時に植付部が下降し、次いで植付装置が作動して苗の植付を再開する旋回連動昇降機能が設けられている。旋回の開始と終了はステアリング操作によって検出され、植付部は圃場面を検出するフロートセンサにより圃場面に合わせた作業高さに調節され、昇降速度は油圧バルブの送油量制御により、植付装置を高速上昇させて効率よく旋回を開始することができ、また、低速下降させて圃場面の検出精度の確保とフロートセンサその他機器の保護確保を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−239934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、植付部は、凹凸の多い圃場端における機体旋回に必要な待避高さに上昇させた位置から下降させて圃場面に達するまでに長時間を要し、植付け再開の遅れから作業能率が低下する問題があり、その一方で下降時間の短縮のために高速下降させると、フロートセンサによる圃場面の検出精度が悪化して植付部の適切な作業高さが確保できず、また、圃場面との接触のショックによりフロートセンサその他機器の破損を招くという問題があった。
【0005】
発明の目的は、旋回操作と連動で植付部を昇降制御する場合において、下降時の植付部の保護と圃場面の検出精度を損なうことなく、速やかに植付を再開できる苗移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、圃場を走行可能に機体を支持する走行部(2,3)と、苗移植に適合する作業高さを検出する圃場面センサ(6s)を備えて昇降可能に昇降リンク(5)によって支持された植付部(6)と、この植付部(6)を上記走行部(2,3)に対して左右方向を水平に角度調節するローリング機構(7)と、上記走行部(2,3)による機体の旋回開始から植付部(6)を待避高さに上昇保持し、旋回終了から作業高さに下降保持する旋回連動昇降機構とを設けた苗移植機において、上記植付部(6)の高さ位置を検出する位置検知装置(5s)を設け、この位置検知装置(5s)により、旋回開始時の植付部(6)の作業高さを記憶するとともに、旋回終了時の植付部(6)の下降の際に、記憶による作業高さ位置から上方に所定距離の高さ位置で高速から低速に下降制御可能に上記旋回連動昇降機構を構成したことを特徴とする。
【0007】
上記旋回連動昇降機構は、機体旋回の開始により植付部を高速上昇して待避高さに保持し、次いで旋回の終了により植付部を圃場面センサによる作業高さ位置に下降して植付けを再開し、この植付部の下降の際に、位置検知装置に基づいて、旋回直前に記憶した作業高さに応じた速度制御により、高速下降と低速下降とが切替えられる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成において、前記植付部(6)の昇降リンク(5)を電磁比例流量制御弁(42v)によって油圧駆動するとともに、昇降リンク(5)の角度を前記位置検知装置(5s)によって検出し、旋回終了の際は、記憶されている旋回直前の作業高さに所定値を加算した高さ以下の範囲を減速して植付部(6)を下降させることを特徴とする。
上記位置検知装置に基づく植付部の昇降リンクの油圧制御により、中間高さまで高速下降されてから下降速度が切替え制御されて新たな作業高さ位置まで低速下降される。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の構成において、前記ローリング機構(7)は、植付部(6)を支持するローリングフレーム(13)と、このローリングフレーム(13)を左右方向に傾斜可能に軸支するローリングハブ(14)と、このローリングハブ(14)に受ける作用力を検出する感圧センサ(14s)と、ローリングフレーム(13)の傾斜範囲を調節可能に規制するローリングロック部材(15)と、ローリングフレーム(13)の傾斜動作を調節可能に抑える調節ダンパ(16)とを設け、感圧センサ(14s)による圧力変化率の増加に応じてローリング許容範囲を拡大するようにローリングロック部材(15)の規制位置を移動するとともに、調節ダンパ(16)の作用力を低減制御することを特徴とする。
上記ローリング機構にローリングフレームを設けて植付部を支持し、ローリングロック部材と調節ダンパを設けてローリングのロック位置を上下に調節可能に構成したことにより、ローリングの頻度や移動規制の位置調節が可能となり、感圧センサによりローリングハブに受ける力に応じて調節可能となる。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の構成において、前記ローリングハブ(14)に油圧制御によって進退調節可能にローリング支軸(25)を軸支し、このローリング支軸(25)の進退動作に応じて回動摩擦力を調節可能な回動調節部(26a,26b)を設けたことを特徴とする。
上記ローリングハブに回動調節部を設けたことから、ローリング支軸の進退制御に応じてローリングフレームの回動摩擦が変化する。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の構成において、前記植付部(6)には複数条の植付装置(6a)を横並びに植付フレーム(31)によって支持するとともに同植付装置(6a)の後端部を補強フレーム(32)によって左右に連結し、植付フレーム(31)の両側端それぞれを接地支持可能に設けたスタンド部材(31a)と、補強フレーム(31)の左右中央部を接地支持する補助スタンド部材(32a)とを設け、この補助スタンド部材(32a)を補強フレーム(32)に沿う収納位置までの範囲について可動支持したことを特徴とする。
植付フレームの両側端の左右のスタンド部材に加え、補強フレームの中央部に補助スタンド部材を設けたことにより、三点支持によって植付部の接地が可能となる。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項2に記載の構成において、前記走行部(6)を静油圧式無段変速機(41)によって変速伝動し、そのトラニオン軸(41a)をサーボ回路(41s)によって駆動制御可能に構成し、かつ、静油圧式無段変速機(41)のチャージ回路(41c)には前記昇降リンク(5)の電磁比例流量制御弁(42v)のアンロード回路(42u)を接続するとともに、同電磁比例流量制御弁(42v)のポンプポート回路(42p)から上記サーボ回路(41s)に分岐圧(42e)を供給することを特徴とする。
昇降リンクの電磁比例流量制御弁のアンロード回路を静油圧式無段変速機のチャージ回路に接続すると共に、その電磁比例流量制御弁のPポートの分岐回路にサーボ回路を設けたことにより、機体の駆動を切った際に、アンロード回路の圧力で伸びようとする植付部の昇降シリンダがサーボ回路の圧力で伸びることが防止される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明により、上記旋回連動昇降機構は、機体旋回の開始により植付部を高速上昇して待避高さに保持し、次いで旋回の終了により植付部を圃場面センサによる作業高さ位置に下降して植付けを再開し、この植付部の下降の際に、位置検知装置に基づき、旋回直前に記憶した作業高さに応じて下降行程の途中の高さ位置を境に下降速度の切替えを行い、当初を高速下降としつつ、植付け再開時の新たな作業高さまでの範囲を低速下降とすることができるので、圃場面に対する植付部の保護および圃場面センサの検出精度を確保しつつ迅速な下降動作が可能となる。
【0014】
請求項2に係る発明により、請求項1に記載の効果に加え、上記植付部の昇降リンクの油圧制御により、下降当初を高速に、植付け再開時の作業高さ位置までの範囲を低速下降とすることができ、圃場面に対する植付部の保護を確保しつつ迅速な下降動作が可能となる。
【0015】
請求項3に係る発明により、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の効果に加え、上記ローリング機構に植付部を支持するローリングフレームを設け、ローリングロック部材と調節ダンパを設けてローリングのロック位置を上下位置調節可能に構成したことにより、ローリングの頻度や移動量を規制する位置を調節することができるので、圃場条件に合わないローリングの発生が防止され、苗の植付精度を向上することができる。
また、ローリングハブの感圧センサの検知により、ローリングの発生頻度を自動調節することにより、荒れた圃場では機体の左右高さ変化に即応して植付部をローリングさせることができるので、苗の植付深さが乱れたり、空植えされる苗が減少し、苗の植付精度がさらに向上することができ、一方、整った圃場では調節ダンパが強く効いてローリングフレームの動作をローリングロック部材で規制することにより、機体の振動等の微弱な揺れによってローリング機構が作動することを防止できるので、ローリング動作に伴う植え付けの乱れが防止され、植付精度を向上することができる。
【0016】
請求項4に係る発明により、請求項3に記載の効果に加え、上記ローリングハブに回動調節部を設けたことから、ローリング支軸の進退制御に応じてローリングフレームの回動摩擦が変化し、圃場が荒れているときは摩擦力を弱めてローリングが発生しやすくすることにより、苗の植付深さの乱れや空植えが防止されて苗の植付精度を向上することができ、また、圃場が整っているときは摩擦力を強めてローリングの発生を抑えて不要なローリングの発生による空植えが防止されるので、植付精度を向上することができる。
【0017】
請求項5に係る発明により、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の効果に加え、植付フレームの両側端の左右のスタンド部材と、補強フレームの中央部に補助スタンド部材とを設けたことにより、植付部の接地時に三点支持を行うことができるので、植付フレームや補強フレームの強度を過度に高くする必要がなくなるため、植付部の軽量化が図られる。
また、補強フレームの左右中央部を補助スタンド部材で支持することにより、補強フレームの撓みが防止されるため、強度が向上する。
【0018】
請求項6に係る発明により、請求項2に記載の効果に加え、上記昇降リンクの電磁比例流量制御弁のアンロード回路を静油圧式無段変速機のチャージ回路に接続すると共に、その電磁比例流量制御弁のPポートの分岐回路にサーボ回路を設けたことにより、機体の駆動を切った際に、アンロード回路の圧力で伸びようとする植付部の昇降シリンダがサーボ回路の圧力で伸びることを防止することができるので、メンテナンス時に植付部を外した際、昇降シリンダが突然伸びることが無く、メンテナンス性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】苗移植機の側面図(a)および平面図(b)
【図2】ローリング機構の分解斜視図
【図3】ローリング機構の要部拡大側面図
【図4】ローリング制御のフローチャート
【図5】別の構成例のローリング機構の分解斜視図
【図6】図5のローリング機構の類似構成の要部拡大平面図
【図7】図5のローリング機構のフローチャート
【図8】植付部の要部平面図
【図9】油圧駆動回路構成図
【図10】植付駆動系の内部構成図
【図11】植付伝動系入力部の伝動系の内部構成図
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施の適用対象となる苗移植機の側面図(a)と平面図(b)である。この苗移植機1は、圃場を走行可能に機体を支持する走行部である左右の前輪2,2および左右の後輪3,3と、前輪2,2を操舵するステアリングホイール4と、昇降可能に昇降リンク5によって支持された植付部6と、この植付部6を上記走行部2,3に対して左右水平に角度調節するローリング機構7等を備えて構成される。
【0021】
昇降リンク5は、機体後部に設けた複数のリンク部材によって植付部6の植付け姿勢を確保可能に構成し、電磁比例流量制御弁によって油圧制御される昇降シリンダ5aを連結して支持高さおよび昇降速度を調節可能に構成する。また、昇降リンク5の傾斜角を検出するポテンショメータ等によるリンクセンサ5sを設けて植付部6の高さ位置を把握するための位置検知装置を構成する。
【0022】
植付部6は、横並びに配置した複数条の植付装置6a…と圃場面を均平するフロート6b…を備え、このフロート6b…に圃場面センサ6sを設けて圃場面を検出することにより、植付走行の際に苗移植に適合する作業高さに昇降リンク5の支持高さを制御し、また、圃場端における機体旋回と対応して植付部6を昇降させる旋回連動昇降機構を設ける。
【0023】
旋回連動昇降機構による昇降制御は、ステアリングホイール4の旋回操舵操作によって機体の旋回開始が判定されると、リンクセンサ5sによって得られる植付部6の作業高さを記憶するとともに、昇降リンク5を所定の上昇速度で高速上昇駆動することによって植付部6を機体旋回に適する待避高さに保持し、また、ステアリングホイール4の直進復帰操作によって旋回終了が判定されると、下降当初を高速下降駆動し、その下降行程の途中の所定の高さ位置で減速して圃場面センサ6sによる作業高さまで植付部6を低速下降することにより植付を再開する。
【0024】
この下降行程の途中における減速は、記憶された旋回直前の植付部6の作業高さ位置から上方に所定距離の高さ位置、例えば、記憶による旋回直前の植付部6の作業高さ+100mmの高さ位置とし、位置検知装置5sに基づいて下降速度を変更して以降の下降行程を植付部6の保護と圃場面センサ6sの検出精度の確保が可能な低速の下降速度に減速する。
【0025】
詳細には、植付部6の昇降リンク5を電磁比例流量制御弁によって油圧駆動し、この昇降リンク5の角度を位置検知装置5sによって検出し、旋回終了の際は、記憶された旋回直前の作業高さに所定値を加算した高さ位置まで植付部6を下降すると油圧制御によって下降速度を減速させるように昇降リンク5の駆動を油圧制御し、下降当初を高速に、植付け再開時の作業高さまでその近傍範囲を低速下降させることにより、圃場面に対する植付部の保護を確保しつつ迅速な下降動作が可能となる。
【0026】
このように、上述の旋回連動昇降機構により、機体旋回の開始時に植付部6を高速上昇して待避高さに保持し、次いで旋回の終了により植付部6を圃場面センサ6sによる作業高さ位置に下降して植付けを再開し、この植付部6の下降の際に、旋回直前に記憶した作業高さに応じた高さ位置で下降速度を変更するように、位置検知装置5sに基づいて昇降リンク5を制御することにより、当初を高速下降とし、その下降行程の途中から植付け再開時の作業高さまでの範囲を低速下降とすることができるので、圃場面に対する植付部の保護を確保しつつ迅速な下降動作が可能となる。
【0027】
(ローリング機構)
ローリング機構は、植付部6を左右水平に角度調節するために、昇降リンク5の後端部または後輪3,3の支持部に構成する。後輪3,3の支持部に構成した例について説明すると、ローリング機構11は、図2の分解斜視図および図3の要部拡大側面図に示すように、機体フレーム12に対して左右の後輪3,3を一体に支持するローリングフレーム13と、このローリングフレーム13を左右方向に傾斜可能に軸支するローリングハブ14と、このローリングハブ14に受ける作用力を検出する感圧センサ14sと、ローリングフレーム13に形成した左右の受部13a,13aに臨んでの傾斜範囲を調節可能に規制する左右のローリングロック部材15,15と、ローリングフレーム13の傾斜動作を調節可能に抑える電子制御式の調節ダンパ16,16とを設ける。
【0028】
調節ダンパ16,16は、オリフィス開度制御によって流体移動量を増減することによりダンパ作用を調節を可能に構成し、感圧センサ14sによる圧力変化率に応じてローリングフレーム13のローリング範囲を拡大するようにローリングロック部材15,15の規制位置を制御するととともに、調節ダンパ16,16の作用力を低減するように制御する。
【0029】
詳細には、図4のフローチャートに示すように、圧力センサ値を入力する第1の処理ステップ(以下において、「S1」の如く略記する。)から得られた圧力変化について、閾値内の判定(S2)に該当しない場合、すなわち、閾値以上の場合は、さらに圧力が閾値をこえる判定(S3)により、該当すれば調節ダンパ16,16のダンパを弱く(S4a)、非該当であれば強く(S4b)制御する。
【0030】
上記構成のローリング機構11は、そのローリングフレーム13によって植付部6をローリング可能に支持し、ローリングロック部材15,15と調節ダンパ16,16を設けてローリングのロック位置を上下に位置調節可能に構成したことにより、ローリングの頻度や移動量を規制する位置を調節することができるので、圃場条件に合わないローリングの発生が防止され、苗の植付精度を向上することができる。
【0031】
このように、ローリングハブ14の感圧センサ14sの検知信号に応じてローリングの発生頻度を自動調節することにより、荒れた圃場では機体の左右高さ変化に即応して植付部6をローリングさせることができるので、苗の植付深さが乱れたり、空植えされる苗が減少し、苗の植付精度をさらに向上することができ、一方、整った圃場では調節ダンパが強く効いてローリングフレーム13の動作をローリングロック部材15,15で規制することにより、機体の振動等の微弱な揺れによってローリング機構が作動することを防止できるので、ローリング動作に伴う植え付けの乱れが防止され、植付精度が向上することができる。
【0032】
また、ローリング機構の別の構成例について説明すると、このローリング機構21は、図5の分解斜視図および図6の別形態による要部拡大平面図に示すように、機体フレーム22に対して左右の後輪3,3を一体に支持するローリングフレーム23と、このローリングフレーム23を左右方向に傾斜可能に軸支するローリングハブ24と、このローリングハブ24に進退調節可能に軸支したローリング支軸25と、このローリング支軸25の進退動作に応じて回動摩擦力を調節可能なブレーキシュー26a,26bによる回動調節部とによって構成する。
【0033】
ローリングフレーム23には前記同様に左右の受部23a,23aを形成し、ローリング支軸25は、油圧シリンダ25aと一体に、またはピストンロッドと連結して油圧制御によって進退動作可能に構成し、また、回動調節部は円錐面26aまたは平面26bにより、ブレーキ力を調節可能に構成することができ、図7のフローチャートに示すように、設定ダイヤルによるブレーキ力の設定値(S11)と対応して油圧シリンダ25aの引き量を制御(S12)して引き圧を調節するように構成する。また、ブレーキ力のダイヤル設定と同様に、油圧感度をダイヤル設定可能に構成し、油圧感度の硬軟に応じて引き量を大小に調節制御するように構成してもよい。
【0034】
上記構成のローリング機構21は、ローリングハブ24に回動調節部26a,26bを設けたことから、ローリング支軸25の進退制御に応じてローリングフレーム23の回動摩擦が変化し、圃場が荒れているときは摩擦力を弱めてローリングが発生しやすくすることにより、苗の植付深さの乱れや空植えが防止されて苗の植付精度を向上することができ、また、圃場が整っているときは摩擦力を強めてローリングの発生を抑えて不要なローリングの発生による空植えが防止されるので、植付精度を向上することができる。
【0035】
(植付部スタンド)
次に、植付部のスタンドについて説明する。
植付部6には、図8の要部平面図に示すように、複数条の植付装置6a…を横並びに植付フレーム31によって支持するとともに同植付装置6a…の後端部を補強フレーム32によって左右に連結し、植付フレーム31の両側端にそれぞれを接地支持可能に設けたスタンド部材31a,31aと、補強フレーム32の左右中央部を接地支持する補助スタンド部材32aとを設け、この補助スタンド部材32aを補強フレーム32に沿う収納位置までの範囲について可動支持する。
【0036】
上記構成の植付部6は、植付フレームの両側端の左右のガードを兼ねるスタンド部材31a,31aに加え、補強フレーム32の中央部に補助スタンド部材32aを設けたことにより、植付部6を三点支持で接地することができるので、植付フレーム31や補強フレーム32の強度を過度に高くする必要がなくなるため、植付部の軽量化が図られる。
また、補強フレーム32の左右中央部を補助スタンド部材32aで支持することにより、補強フレーム32の撓みが防止されるため、強度が向上する。
【0037】
(油圧制御)
油圧駆動系については、図9の回路構成図に示すように、走行部2,3を静油圧式無段変速機41によって変速伝動し、そのトラニオン軸41aをサーボ回路41sによって駆動制御可能に構成し、かつ、静油圧式無段変速機41のチャージ回路41cには、昇降リンク5のシリンダ5aを制御する駆動ブロック42に配置した電磁比例流量制御弁42vのアンロード回路42uを接続するとともに、同電磁比例流量制御弁42vのポンプポート回路42pからの分岐回路42eによりサーボ回路41sに油圧供給する。
【0038】
上記油圧駆動系の構成は、昇降リンク5の電磁比例流量制御弁42vのアンロード回路42uを静油圧式無段変速機41のチャージ回路41cに接続すると共に、昇降リンク5の電磁比例流量制御弁42vのPポート回路42pの分岐回路42eにサーボ回路41sを設けたことにより、機体の駆動を切った際に、アンロード回路42uの圧力で伸びようとする植付部6の昇降シリンダ5aがサーボ回路41sの圧力で伸びることを防止することができるので、メンテナンス時に植付部6を外した際、昇降シリンダ5aが突然伸びることが無く、メンテナンス性を向上することができる。
【0039】
また、電磁比例流量制御弁42vのPポート回路42pの分岐回路42eに減圧弁41rを介してサーボ回路41sに供給することにより、サーボ回路41sの圧力を確実に制御することができるとともに、昇降リンク5のシリンダ5aの駆動ブロック42における流量低下を防止することができる。
【0040】
(植付駆動)
次に、植付駆動系は、図10の伝動系の内部構成図に示すように、植付軸51を植付フレーム51fに内設して植付動力を左右に分配し、この植付フレーム51fからその後方に延びる植込杆伝動ケース52cに植込杆伝動軸52を内設するとともに、その後部に安全クラッチ54を介設する。植込杆伝動ケース52cの後端には左右の軸受ハウジング55b,55bをボルト固定して植込杆シャフト55を支持し、左右の植付装置6a,6aを駆動することにより、メンテナンスの際に植込杆シャフト55の抜取りができるので、安全クラッチ54のクラッチ爪の交換が容易となる。
【0041】
また、植込杆伝動軸52の前部にドライブシャフト駆動で畦クラッチ56を介設することにより、植込杆伝動ケース52cの左右幅寸法Wを小さく構成することができるので、条間の短い植付け、例えば25cmの条間植付けにも対応することができる。
【0042】
また、植付動力の入力部については、図11の伝動系の内部構成図に示すように、前方から入力軸57を植付軸51に伝動し、この植付軸51を介してその後方の植込杆伝動軸52に動力を分配伝動し、その回転方向を入力軸57に対して逆回転させることにより、駆動反力を相殺してローリング性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 苗移植機
2 前輪(走行部)
3 後輪(走行部)
4 ステアリングホイール
5 昇降リンク
5a 昇降シリンダ
5s リンクセンサ(位置検知装置)
6 植付部
6a 植付装置
6b フロート
6s 圃場面センサ
7 ローリング機構
11 ローリング機構
12 機体フレーム
13 ローリングフレーム
13a 受部
14 ローリングハブ
14s 感圧センサ
15 ローリングロック部材
16 調節ダンパ
21 ローリング機構
22 機体フレーム
23 ローリングフレーム
24 ローリングハブ
25 ローリング支軸
25a 油圧シリンダ
26a 円錐面ブレーキシュー(回動調節部)
26b 平面ブレーキシュー(回動調節部)
31 植付フレーム
31a スタンド部材
32 補強フレーム
32a 補助スタンド部材
41 静油圧式無段変速機
41a トラニオン軸
41c チャージ回路
41r 減圧弁
41s サーボ回路
42 駆動ブロック
42e 分岐回路
42p ポンプポート回路
42u アンロード回路
42v 電磁比例流量制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行可能に機体を支持する走行部(2,3)と、苗移植に適合する作業高さを検出する圃場面センサ(6s)を備えて昇降可能に昇降リンク(5)によって支持された植付部(6)と、この植付部(6)を上記走行部(2,3)に対して左右方向を水平に角度調節するローリング機構(7)と、上記走行部(2,3)による機体の旋回開始から植付部(6)を待避高さに上昇保持し、旋回終了から作業高さに下降保持する旋回連動昇降機構とを設けた苗移植機において、
上記植付部(6)の高さ位置を検出する位置検知装置(5s)を設け、この位置検知装置(5s)により、旋回開始時の植付部(6)の作業高さを記憶するとともに、旋回終了時の植付部(6)の下降の際に、記憶による作業高さ位置から上方に所定距離の高さ位置を境にその上下で下降速度を切替え制御可能に上記旋回連動昇降機構を構成したことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記植付部(6)の昇降リンク(5)を電磁比例流量制御弁(42v)によって油圧駆動するとともに、昇降リンク(5)の角度を前記位置検知装置(5s)によって検出し、旋回終了の際は、記憶されている旋回直前の作業高さに所定値を加算した高さ以下の範囲を減速して植付部(6)を下降させることを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記ローリング機構(7)は、植付部(6)を支持するローリングフレーム(13)と、このローリングフレーム(13)を左右方向に傾斜可能に軸支するローリングハブ(14)と、このローリングハブ(14)に受ける作用力を検出する感圧センサ(14s)と、ローリングフレーム(13)の傾斜範囲を調節可能に規制するローリングロック部材(15)と、ローリングフレーム(13)の傾斜動作を調節可能に抑える調節ダンパ(16)とを設け、感圧センサ(14s)による圧力変化率の増加に応じてローリング許容範囲を拡大するようにローリングロック部材(15)の規制位置を移動するとともに、調節ダンパ(16)の作用力を低減制御することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項4】
前記ローリングハブ(14)に油圧制御によって進退調節可能にローリング支軸(25)を軸支し、このローリング支軸(25)の進退動作に応じて回動摩擦力を調節可能な回動調節部(26a,26b)を設けたことを特徴とする請求項3記載の苗移植機。
【請求項5】
前記植付部(6)には複数条の植付装置(6a)を横並びに植付フレーム(31)によって支持するとともに同植付装置(6a)の後端部を補強フレーム(32)によって左右に連結し、植付フレーム(31)の両側端それぞれを接地支持可能に設けたスタンド部材(31a)と、補強フレーム(31)の左右中央部を接地支持する補助スタンド部材(32a)とを設け、この補助スタンド部材(32a)を補強フレーム(32)に沿う収納位置までの範囲について可動支持したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項6】
前記走行部(6)を静油圧式無段変速機(41)によって変速伝動し、そのトラニオン軸(41a)をサーボ回路(41s)によって駆動制御可能に構成し、かつ、静油圧式無段変速機(41)のチャージ回路(41c)には前記昇降リンク(5)の電磁比例流量制御弁(42v)のアンロード回路(42u)を接続するとともに、同電磁比例流量制御弁(42v)のポンプポート回路(42p)から上記サーボ回路(41s)に分岐圧(42e)を供給することを特徴とする請求項2記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−42747(P2013−42747A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185150(P2011−185150)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】