説明

草刈機

【課題】 モーアを連結した走行機体の後部に、ラジエータを前置きした水冷式のエンジン8を収容した原動部を設け、この原動部の前方に配置された運転座席の後方からラジエータ7への冷却用外気を取り込むよう構成するとともに、ラジエータの前部に箱形に構成された除塵網を配備した草刈機において、清掃作業やメンテナンス作業を容易に行えるようにするとともに、エンジンボンネットの振動変形を抑制することができるようにする。
【解決手段】 天板部9aと左右の側板部9bを一連に備えたエンジンボンネット9を後部支点pを中心に上下揺動可能に支持するとともに、このエンジンボンネット9の前端に除塵網33を連結して、除塵網33をエンジンボンネット9と一体に揺動開閉可能に構成し、エンジンルームの前壁部となる隔壁37をラジエータの周囲に配備し、エンジンボンネット9における天板部9aと側板部9bの前端内面を隔壁37の外周縁で受止め圧接支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーアを連結した走行機体の後部に、ラジエータを前方に位置させた水冷式のエンジンを搭載し、走行機体の前後中間に配置された運転座席の後方からラジエータへの冷却用外気を取り込むよう構成した草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記草刈機としては、ラジエータの前部に箱形に構成された除塵網を配備して、この除塵網を通過した清浄外気をラジエータに導くよう構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−154857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成の草刈機においては、箱形の除塵網はラジエータに装着されるとともに、閉じ位置にあるエンジンボンネットの前端部を除塵網に備えられたフランジ部の外周部に被せるように構成されており、エンジンボンネットを持上げ開放しないと除塵網を脱着することができず、除塵網の清掃操作が煩わしいものとなっていた。
【0004】
また、エンジンボンネットは天板部と左右の側板部を一連に形成し、これらの後端部を縦壁状の後部グリルでつなぐ薄板構造であるために、後端側に比べて前端部が剛性が低く、機体振動などを受けて振動変形しやすいものとなっている。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、清掃作業やメンテナンス作業を容易に行えるようにするとともに、エンジンボンネットの振動変形を抑制することができるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、モーアを連結した走行機体の後部に、ラジエータを前置きした水冷式のエンジンを収容した原動部を設け、この原動部の前方に配置された運転座席の後方から前記ラジエータへの冷却用外気を取り込むよう構成するとともに、ラジエータの前部に箱形に構成された除塵網を配備して、この除塵網を通過した清浄外気をラジエータに導くよう構成した草刈機において、
天板部と左右の側板部を一連に備えた前記エンジンボンネットを後部支点を中心に上下揺動可能に支持するとともに、このエンジンボンネットの前端に前記除塵網を連結して、除塵網をエンジンボンネットと一体に揺動開閉可能に構成し、エンジンルームの前壁部となる隔壁を前記ラジエータの周囲に配備し、前記エンジンボンネットにおける前記天板部と側板部の前端内面を前記隔壁の外周縁で圧接支持するよう構成してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、エンジンボンネットを開けることでエンジンのみならずラジエータの周囲も大きく開放することができ、除塵網の清掃が用意になるとともに、メンテナンス性に優れたものとなる。
【0008】
また、薄板構造のエンジンボンネットの前端部に箱形の除塵網を連結することで、立体構造の除塵網の剛性を利用してエンジンボンネットの前端部を補強することができ、しかも、閉じ状態のエンジンボンネットにおける前記天板部と側板部の前端内面を、固定配備された隔壁の外周縁で受止め支持することでエンジンボンネットの振動変形を抑止することができる。
【0009】
従って、第1の発明によると、清掃作業やメンテナンス作業を容易に行えるようにするとともに、エンジンボンネットの振動変形を効果的に抑制することができるようになった。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記エンジンボンネットにおける前記側板部の前端を前記ラジエータよりも後方に設定し、除塵網の横側部をラジエータの後方にまで延出して前記エンジンボンネットの前端に接続してあるものである。
【0011】
上記構成によると、除塵網の上部および横側部がラジエータの後方にまで延長されたことになり、除塵網を前方に張り出すことなく吸気面積が増大し、その分、防塵網を通過する冷却風の風速を抑制することができる。
【0012】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
前記隔壁の上部に設けた係止部材に係脱可能なロック機構を前記エンジンボンネットにおける前記天板部の前端近くに設け、このロック機構を解除操作する操作具を前記天板部の上方に配備してあるものである。
【0013】
上記構成によると、エンジンボンネットにおける天板部の前端付近は、下端が自由状態にある側板部に比べて剛性が高い上に除塵網との連結によって更に剛性が高められており、この箇所を係止部材に係止連結することで確実なエンジンボンネットの固定が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に本発明に係る草刈機の側面が、また、図2にその平面がそれぞれ示されている。この草刈機は、向き固定の大径の前輪1と操向可能な小径の後輪2を備えて四輪駆動型に構成された走行機体3の前部に、バーブレード式のモーア4が油圧駆動されるリフトアーム5を介して昇降可能に連結された基本構成を備えている。
【0015】
前記走行機体3の下部に配備された主フレーム6の後部には、ラジエータ7を前置きにした水冷式のエンジン8が搭載されて、後部支点p周り上下に揺動開閉可能なエンジンボンネット9で覆われた原動部Aが構成され、この原動部Aの前方に運転座席10が配備されている。また、原動部Aと運転座席10との間に位置させてアーチ形の転倒保護フレーム11が立設配備されるとともに、運転座席10の前方に後輪2を操向するステアリングハンドル12が配備されている。ここで、エンジン8からの出力は機体前部に配備された油圧式無段変速装置(HST)13に入力されて無段に変速された後、その前部に直結されたミッションケー14で減速されて前輪1に伝達されるとともに、ミッションケー14内で分岐された走行系動力が伝動軸15を介して後輪2に伝達されるようになっている。
【0016】
図9に示すように、走行機体3の上部には前下がり傾斜の案内レール20を介して座席支持台21が前後位置調節可能に装着され、この座席支持台21の上にサスペンションリンク機構22を介してシートベルト23付きの前記運転座席10が支持されている。ここで、前記座席支持台21は、板材で箱型に成形されて、その内部が工具などを収納しておくことができるように構成されるとともに、その前端開口を開閉する前蓋24が下部支点q周りに揺動開閉自在に取り付けられている。この前蓋24の上面内部にはバネ材を屈曲してなる左右一対の係止金具25が備えられるとともに、座席支持台21の左右内面には係止ピン26が突設されている。従って、前蓋24を閉じると前記係止金具25が係止ピン26に弾性係合して前蓋24の閉じ姿勢が保持され、また、前蓋24をその上端に折り出し形成した指掛け部24aを持って前方に強く引くことで前蓋24を開放することができるようになっている。
【0017】
本発明は、上記構成の草刈機における冷却風取入れ部の構造に特徴を有しており、その構造を図3〜図7に基づいて詳細に説明する。
【0018】
ラジエータ7とエンジン8との間には、図示されていないエンジン出力軸にベルト掛け連動された冷却ファン31が配備され、運転座席10の後方空間から外気を吸引してラジエータ7に導いた後、エンジンルームR内を後方に流動させて、エンジンボンネット9の後端に形成したメッシュ状の排気口32から機外に流出させるよう構成されている。また、ラジエータ7の前部には箱型に形成された除塵網33が配備され、この除塵網33を通過して浄化された吸引外気を冷却風としてラジエータ7に供給するようになっている。なお、ラジエータ7の前面には上方に抜き出し可能に細かい目合いのフィルタ34が配備されるとともに、ラジエータ7への冷却風路中に油圧系の作動油を冷却する蛇行パイプ状のオイルクーラ35が配備されている。
【0019】
前記ラジエータ7の背面には、前記冷却ファン31を囲繞するファンシュラウド36が設けられるとともに、このファンシュラウド36の周囲にエンジンルームRの前壁部となる隔壁37が取付けられ、エンジンルームRの熱気がラジエータ7の前方に逆流することが阻止されている。この隔壁37は、図4に示すように、ファンシュラウド36につながる中央部がラジエータ7の後端近くに位置するのに対して、左右部位が大きく後方に屈折されている。
【0020】
前記エンジンボンネット9は、天板部9a、左右の側板部9b、および、前記排気口32を形成する後端グリル9cとを備えて構成されており、このエンジンボンネット9の前端に箱型の前記除塵網33が連結されている。この除塵網33は、細孔が無数に打ち抜き形成されたパンチング鋼板を下方に開放された箱型に形成したものであり、エンジンボンネット9と一体化されて上下に揺動開閉されるようになっている。
【0021】
エンジンボンネット9が所定姿勢に閉じられた状態では、天板部9a、および左右の側板部9bの前端部が前記隔壁37の外周縁にゴムシール38を介して圧接支持されている。ここで、エンジンボンネット9の前端は隔壁37の外周形状に沿った形状に形成されており、側板部9bの前端がラジエータ7より大きく後方に後退され、その分、除塵網33の側部での後端位置が後方に延長された状態になっている。
【0022】
上記のように構成された冷却風取入れ部構造によると、除塵網33はその吸気面である上面および左右両側面がラジエータ7を後方に越えた大きいものとなって、除塵網33全体の吸気面積の増大が図られている。
【0023】
前記隔壁37の後端上部は、中央の屈曲箇所をつなぐステー37aで補強されており、このステー37aを貫通して隔壁37の中央部に連結固定されたピン状の係止部材39が後向きに突設され、この係止部材39に係脱作用するロック機構40がエンジンボンネット9の前端中央部に備えられている。図8に示すように、前記ロック機構40は、前後向き支点r周りに揺動自在に支持されたフック状のロック金具41をバネ42によって前記係止部材39に付勢係止させるよう構成されたものであり、このロック金具41から上方に延出した操作具43がエンジンボンネット9の上方に突設されている。従って、エンジンボンネット9を下方揺動するだけでロック機構40が働いて自動的に閉じ位置で係合ロックされ、操作具43をバネ42に抗して横に回動操作してロック解除することで、エンジンボンネット9および除塵網33を上方に開放揺動することができる。
【0024】
〔別実施例〕
【0025】
(1)前記モーア4としては、縦軸駆動されるバーブレード式の他に、横軸駆動されるリール式、バリカン式、等の仕様のものを利用することができる。
【0026】
(2)前記モーア4を前後輪の間に装備する形態のものに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】草刈機の全体側面図
【図2】草刈機の全体平面図
【図3】冷却用外気取り入れ構造の縦断側面図
【図4】冷却用外気取り入れ構造の横断平面図
【図5】冷却用外気取り入れ構造の縦断正面図
【図6】除塵網付きエンジンボンネットの斜視図
【図7】隔壁と除塵網付きエンジンボンネットとの分解斜視図
【図8】ロック機構の正面図
【図9】運転座席支持部の縦断側面図
【図10】運転座席支持部の正面図
【符号の説明】
【0028】
3 走行機体
4 モーア
7 ラジエータ
8 エンジン
9 エンジンボンネット
9a 天板部
9b 側板部
10 運転座席
33 除塵網
37 隔壁
39 係止部材
40 ロック機構
43 操作具
A 原動部
p 後部支点
R エンジンルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーアを連結した走行機体の後部に、ラジエータを前置きした水冷式のエンジンを収容した原動部を設け、この原動部の前方に配置された運転座席の後方から前記ラジエータへの冷却用外気を取り込むよう構成するとともに、ラジエータの前部に箱形に構成された除塵網を配備して、この除塵網を通過した清浄外気をラジエータに導くよう構成した草刈機において、
天板部と左右の側板部を一連に備えた前記エンジンボンネットを後部支点を中心に上下揺動可能に支持するとともに、このエンジンボンネットの前端に前記除塵網を連結して、除塵網をエンジンボンネットと一体に揺動開閉可能に構成し、エンジンルームの前壁部となる隔壁を前記ラジエータの周囲に配備し、前記エンジンボンネットにおける前記天板部と側板部の前端内面を前記隔壁の外周縁で受止め支持するよう構成してあることを特徴とする草刈機。
【請求項2】
前記エンジンボンネットにおける前記側板部の前端を前記ラジエータよりも後方に設定し、除塵網の横側部をラジエータの後方にまで延出して前記エンジンボンネットの前端に接続してある請求項1記載の草刈機。
【請求項3】
前記隔壁の上部に設けた係止部材に係脱可能なロック機構を前記エンジンボンネットにおける前記天板部の前端近くに設け、このロック機構を解除操作する操作具を前記天板部の上方に配備してある請求項1または2記載の草刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−341743(P2006−341743A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169670(P2005−169670)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】