説明

蓄電装置及び車両

【課題】蓄電素子を早期に温度上昇させる。
【解決手段】蓄電装置は、それぞれ正極端子11a及び負極端子11bを有する複数の蓄電素子11と、これらの蓄電素子11を直列に接続する複数のバスバー13と、前記複数のバスバー13のうち少なくとも一つのバスバー13に設けられる発熱体16と、を有する。正極端子11aは、負極端子11bよりも熱伝導率が高く、正極端子11a及び負極端子11bの径方向の断面積をそれぞれS1及びS2としたときに、S1>S2なる条件を満足させるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関し、特に蓄電装置の昇温構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの蓄電素子からなるバッテリを動力源として用いたハイブリッド自動車、電気自動車などが提案されている。ハイブリッド自動車は、モータと内燃機関とを動力機構として兼用した自動車であり、モータはバッテリから出力された電流によって駆動される。
【0003】
バッテリを構成する蓄電素子は、温度によって内部抵抗が変動する。図8は、リチウムイオン電池(蓄電素子)の電池温度と内部抵抗との関係を示した内部抵抗−温度特性図である。同図に示すように、内部抵抗及び電池温度には相関関係があり、電池温度が下がるほど内部抵抗が高くなる傾向がある。特に、極低温(例えば−30℃)領域では、リチウムイオン電池の内部抵抗値が極めて高くなる。
【0004】
蓄電素子の内部抵抗が高くなると、入出力の電流値が制限される。このため、必要なバッテリ出力を得られなくなるおそれがある。また、車両の制動時に発生するエネルギを回生エネルギとしてバッテリに回収できなくなるおそれがある。この場合、車両のブレーキが、メカブレーキに切り替わるため、制動時のエネルギは熱エネルギとして失われ、エネルギ効率が低下する。
【0005】
そこで、蓄電素子の発電要素を昇温させる昇温手段が必要とされる。特許文献1は、複数の二次電池と、これらの二次電池を暖める加温プレートとを備えた車両用のバッテリ装置を開示する。
【0006】
複数の二次電池は、加温プレートの表面に接近して平行に並べて配設される。加温プレートは、絶縁基板と、この絶縁基板に固定されて互いに接続されてなる複数のヒータを備えており、複数の二次電池を収納するケースの外面に固定されている。バッテリ装置は、加温プレートのヒータに通電してジュール熱でヒータを加温し、各々のヒータの発熱で複数の二次電池を加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−223938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成では、加温プレートと円筒型電池との間にケースが介在しているため、円筒型電池の内部に向けて加温プレートの熱が伝熱しにくい構造となっている。そのため、円筒型電池の内部に収容された発電要素を昇温させるのに適した構造ではなかった。
【0009】
そこで、本願発明は、蓄電素子の内部に収容された発電要素を早期に昇温させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願発明の蓄電装置は、(1)それぞれ正極端子及び負極端子を有する複数の蓄電素子と、これらの蓄電素子を直列に接続する複数の導電板と、前記複数の導電板のうち少なくとも一つの導電板に設けられる発熱体と、を有することを特徴とする。
【0011】
(2)(1)の構成において、前記正極端子は、前記負極端子よりも熱伝導率が高く、前記正極端子及び前記負極端子の径方向の断面積をそれぞれS1及びS2としたときに、S1>S2なる条件を満足するように構成するのが好ましい。
【0012】
(2)の構成によれば、各蓄電素子の昇温速度のバラツキを抑制することができる。これにより、蓄電装置の寿命低下を抑制できる。
【0013】
(3)(2)の構成において、前記正極端子としてアルミニウムを用いることができる。また、前記負極端子として銅を用いることができる。
【0014】
(4)(1)〜(3)の構成において、前記正極端子及び負極端子にそれぞれ接続される二つの前記導電板のうち、いずれか一方にのみ前記発熱体を設けることができる。
【0015】
(4)の構成によれば、発電要素の昇温効果を損なうことなく、発熱体の削減による、蓄電装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0016】
(5)(1)〜(4)の構成において、前記複数の蓄電素子は、一対のエンドプレートの間に積層されており、前記エンドプレートに隣接して配置される第1の蓄電素子と、この第1の蓄電素子よりも前記エンドプレートから離間した位置に配置される第2の蓄電素子とを含み、前記複数の導電板は、前記第1の蓄電素子に接続される第1の導電板と、前記第2の蓄電素子に接続される第2の導電板とを含み、前記第1の導電板に設けられた前記発熱体は、前記第2の導電板に設けられた前記発熱体よりも発熱量が大きいことを特徴とする。
【0017】
(5)の構成では、第1の蓄電素子の熱がエンドプレートを介して放熱されやすいため、第1の導電板に設けられた発熱体の発熱量を、第2の導電板に設けられた発熱体よりも大きくすることによって、各蓄電素子の昇温速度のバラツキを抑制できる。これにより、蓄電装置の寿命低下を抑制できる。
【0018】
(6)(1)〜(5)の構成において、前記蓄電素子の温度に関する情報を取得する温
度情報取得部と、前記温度情報取得部で取得された情報に基づき、前記発熱体の発熱動作
を制御するコントローラと、を有し前記コントローラは、前記蓄電素子の温度が閾値以下
である場合に、前記発熱体を発熱させることを特徴とする。
【0019】
(6)の構成によれば、昇温制御が必要となる場面で、蓄電素子を昇温させることができる。
【0020】
(7)(6)の構成において、前記温度情報取得部は、前記蓄電素子の発電要素を収容する素子ケースに設けられており、前記コントローラは、前記素子ケースの温度が所定温度に達すると、前記発熱体による発熱動作を停止させ、前記所定温度は、前記発熱体の発熱動作による前記発電要素の目標温度よりも低いことを特徴とする。
【0021】
(7)の構成によれば、加熱効率を向上させ、昇温時間及び昇温に用いられる電力の無駄防止を図ることができる。
【0022】
(8)(1)〜(7)の構成において、前記発熱体は、抵抗体と、この抵抗体を収容する抵抗体収容ケースと、この抵抗体収容ケースに充填されるセメント材とを含むことを特徴とする。
【0023】
(8)の構成によれば、抵抗体から放熱された熱をセメント材の中により多く含熱させることができる。これにより、導電板を効果的に昇温させることができる。
【0024】
(9)(8)の構成において、前記抵抗体収容ケースを、前記導電板に対して面接触させることができる。
【0025】
(9)の構成によれば、発熱体の熱が導電板に伝熱しやすくなり、導電板を早期に温度上昇させることができる。
【0026】
(10)(6)又は(7)の構成において、導線を介して直列に接続された複数の前記発熱体をそれぞれ含む複数の発熱群を並列に接続し、前記複数の蓄電素子は、昇温速度に応じて複数の蓄電ブロックにグループ分けされており、各前記発熱群を各前記蓄電ブロックに対応して設けることができる。
【0027】
(10)の構成によれば、蓄電素子の昇温速度の低下を抑制できる。
【0028】
(11)(10)の構成において、各前記発熱群の断線及び短絡の少なくとも一方の故障情報を取得するための故障情報取得部を設けることができる。
【0029】
(12)(11)の構成において、前記故障情報取得部は、各前記蓄電ブロックに含まれる一つの前記蓄電素子にそれぞれ設けられる複数の前記温度情報取得部と、各前記発熱群内の前記導線にそれぞれ設けられる複数の温度ヒューズと、を含むように構成することができる。
【0030】
(12)の構成によれば、簡易な構成で発熱群の故障を検知することができる。
【0031】
(13)(12)の構成において、前記温度情報取得部が設けられる前記蓄電素子は、その蓄電素子が含まれる前記蓄電ブロックの中で最も昇温速度が遅い蓄電素子とすることができる。
【0032】
(13)の構成によれば、該蓄電装置の入出力制御に用いられる温度センサを前記温度情報取得部として兼用できるため、コストの削減及び小型化を図ることができる。
【0033】
(14)(12)又は(13)の構成において、前記コントローラは、前記複数の発熱群に発熱動作を指示した後に、前記複数の温度情報取得部において取得された情報に基づき、温度上昇がないことを検出した場合には、前記発熱動作の停止を指示する信号を出力する構成にしてもよい。
【0034】
(14)の構成によれば、全ての発熱体の発熱動作を停止できるため、消費電力を制限できる。
【0035】
(15)(11)の構成において、前記故障情報取得部は、各前記発熱群に含まれる前記発熱体間の電圧値に関する情報をそれぞれ取得するための複数の電圧検知部を含むように構成することもできる。
【0036】
(15)の構成によれば、簡易な構成で発熱群の故障を検知することができる。
【0037】
(16)(15)の構成において、前記コントローラは、前記複数の発熱群に発熱動作を指示した後に、前記複数の電圧検知部において取得された情報に基づき、電圧変化を検出した場合には、前記発熱動作の停止を指示する信号を出力するように構成することもできる。
【0038】
(16)の構成によれば、全ての発熱体の発熱動作を停止できるため、消費電力を制限できる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、発電素子を早期に温度上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】蓄電装置の平面図である。
【図2】蓄電素子の斜視図である。
【図3】蓄電素子の昇温回路を図示したブロック図である。
【図4】蓄電装置の昇温方法を示したフローチャートである。
【図5】実施例2の蓄電装置の平面図である。
【図6】エンドプレートの斜視図である。
【図7】実施例3の蓄電装置の昇温方法を示したフローチャートである。
【図8】リチウムイオン電池(蓄電素子)の電池温度と内部抵抗との関係を示した内部抵抗−温度特性図である。
【図9】実施例4の蓄電装置の平面図である。
【図10】実施例4の蓄電装置のブロック図である。
【図11】実施例4の変形例の蓄電装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0042】
図1を参照しながら、本発明の実施例である蓄電装置の概略構成を説明する。ここで、図1は、蓄電装置の平面図である。本実施例の蓄電装置は、運転席及び助手席の間に設けられたセンターコンソールボックス、助手席の下側、トランクルーム(いずれも図示しない)などに配置することができる。
【0043】
蓄電装置1は、複数の蓄電素子11からなる組電池12を含む。これらの蓄電素子11は、バスバー(導電板)13を介して直列に接続されている。Y軸方向に隣接する蓄電素子11の間には、冷媒移動通路14が形成されている。この冷媒移動通路14は、蓄電素子11の外面に沿ってZ軸方向に延びている。
【0044】
組電池12のZ軸方向の一端面には図示しない吸気チャンバが取り付けられており、他端面には図示しない排気チャンバが取り付けられている。この吸気チャンバから冷媒移動通路14の内部に冷却用の空気が導入される。
【0045】
冷媒移動通路14に流入した空気は、蓄電素子11の外面に沿って矢印方向に進み、蓄電素子11の発電要素(図2参照)111を冷却する。これにより、蓄電装置1が劣化するのを抑制できる。なお、蓄電素子11の冷却に用いられた空気は、排気チャンバから排気される。
【0046】
蓄電素子11の総プラス端子11a及び総マイナス端子11b(バスバー13が接続されていない端子)は、配線を介して図示しないインバータに電気的に接続されている。このインバータは、図示しないモータに電気的に接続されており、蓄電装置1の出力を用いてこのモータが駆動される。モータの駆動力は車輪に伝達され、車両を走行させることができる。
【0047】
各蓄電素子11には、温度センサ(温度情報取得部)15が設けられている。温度センサ15として、サーミスタ素子、熱電対を用いることができる。サーミスタ素子は、温度変化に応じて抵抗値が変化するため、サーミスタ素子の抵抗値の変化を検知することにより、蓄電素子11の温度を測定することができる。
【0048】
一部のバスバー13には、発熱体16が設けられている。発熱体16は、バスバー13の略中央に設けられている。発熱体16が発熱すると、バスバー13が加熱される。バスバー13は、蓄電素子11の正極端子11a又は負極端子11bに電気的に及び機械的に接続されているため、バスバー13が加熱されると、正極端子11a又は負極端子11bが加熱される。
【0049】
正極端子11aは、蓄電素子11の発電要素111(詳細については後述する)に接続されているため、正極端子11aが加熱されると、発電要素111が加熱される。これにより、発電要素111の内部抵抗が下がり、高電流の入出力が可能となる。
【0050】
同様に、負極端子11bは、蓄電素子11の発電要素111に接続されているため、負極端子11bが加熱されると、発電要素111が加熱される。これにより、発電要素111の内部抵抗が下がり、高電流の入出力が可能となる。
【0051】
図1乃至図3を参照して、蓄電素子11の昇温構造について詳細に説明する。図2は、蓄電素子11の斜視図であり、蓄電素子11の内部に収容された発電要素及びタブを点線により投影して図示している。図3は、蓄電素子11の昇温制御を行うための回路構成を図示したブロック図である。
【0052】
これらの図において、蓄電素子11は角型の素子ケース112を有する。素子ケース112の内部には、発電要素111が巻かれた状態で収納されている。発電要素111は、正極体と、負極体と、正極体及び負極体の間に配置されたセパレータとで構成されている。温度センサ15は、素子ケース112の外面に設けられている。
【0053】
ここで、正極体は、正極用集電体と、正極用集電体の表面に塗布された正極層とで構成されている。ただし、後述するように、正極側末塗工部は、正極用集電体のみで構成されている。
【0054】
正極層とは、正極に応じた活物質や導電剤等を含む層である。正極用集電体には、アルミニウムを用いることができる。正極層の活物質には、リチウム−遷移金属複合酸化物を用いることができる。また、導電剤として、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブを用いることができる。
【0055】
ここで、正極体は、図2に図示するように、発電要素111における右側の端部以外の領域、すなわち、正極体形成領域のみに形成されている。正極体形成領域の左側の端部には、正極側未塗工部111aが形成されている。正極側末塗工部111aとは、正極用集電体のうち正極層が塗布されていない領域部のことである。
【0056】
つまり、正極体形成領域のうち、ハッチングした領域には正極層を表面に塗布した正極用集電体が形成されており、ハッチングしていない領域(正極側末塗工部111a)には正極層を表面に塗布していない正極用集電体のみが形成されている。
【0057】
正極側末塗工部111aには、正極側タブ113が電気的及び機械的に接続されている。接続方法には、溶接を用いることができる。正極側タブ113には、アルミニウムを用いることができる。正極側タブ113のうち発電要素111に接続される側の端部とは反対側の端部には、正極端子11aが電気的及び機械的に接続されている。上述の構成によれば、正極側タブ113を介して正極端子11aの熱を発電要素111に伝熱することができる。
【0058】
負極体は、負極用集電体と、負極用集電体の表面に塗布された負極層とで構成されている。ただし、後述するように、負極側末塗工部は、負極用集電体のみで構成されている。
【0059】
負極層とは、負極に応じた活物質や導電剤等を含む層である。負極用集電体には、銅を用いることができる。負極層の活物質には、カーボンを用いることができる。また、導電剤として、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブを用いることができる。
【0060】
ここで、負極体は、図2に図示するように、発電要素111における左側の端部以外の領域、すなわち、負極体形成領域のみに設けられている。負極体形成領域の右側の端部には、負極側末塗工部111bが形成されている。負極側末塗工部111bとは負極用集電体111bのうち負極層が塗布されていない領域部のことである。
【0061】
つまり、負極体形成領域のうち、ハッチングした領域には負極層が表面に塗布された負極用集電体が形成されており、ハッチングしていない領域(負極側末塗工部111b)には負極層が表面に塗布されていない負極用集電体のみが形成されている。
【0062】
負極側末塗工部111bには、負極側タブ114が電気的及び機械的に接続されている。負極側タブ114には、ニッケルを用いることができる。負極側タブ114のうち発電要素111に接続される側の端部とは反対側の端部には、負極端子11bが電気的及び機械的に接続されている。上述の構成によれば、負極側タブ114を介して負極端子11bの熱を発電要素111に伝熱することができる。
【0063】
なお、集電体の一方の面に正極層を形成し、集電体の他方の面に負極層を形成した電極(いわゆるバイポーラ電極)を用いることもできる。また、本実施例では、電解液を用いているが、粒子で形成された固体電解質を用いることもできる。固体電解質としては、高分子固体電解質や無機固体電解質がある。
【0064】
さらに、本実施例では、蓄電素子11を角型の構成としているが、これに限るものではなく、いわゆる円筒型の構成とすることもできる。すなわち、素子ケース112を円筒形状とし、この素子ケース112の内部に収容されるように、発電要素111を巻いた状態とすればよい。
【0065】
さらに、蓄電素子11をリチウムイオン電池としたが、これに限るものではなく、ニッケル―水素電池とすることもできる。蓄電素子11がニッケル−水素電池である場合には、正極層の活物質として、ニッケル酸化物を用い、負極層の活物質として、MmNi(5−x−y−z)AlMnCo(Mm:ミッシュメタル)等の水素吸蔵合金を用いることができる。
【0066】
さらにまた、本実施例では、空冷タイプの蓄電装置を用いたが、これに限るものではなく、液冷却タイプの蓄電装置にも本願発明は適用することができる。ここで、液冷却タイプの蓄電装置とは、複数の蓄電素子をバスバーを介して直列に接続した組電池と、この組電池を冷却する冷却液と、これらの組電池及び冷却液を収容する収容容器とを含む蓄電装置のことである。
【0067】
発熱体16には、セメント型の抵抗体を用いることができる。図3に図示するように、発熱体16は、抵抗体収容ケース16cと、この抵抗体収容ケース16cの中に収容される抵抗体16aとを含む。抵抗体収容ケース16cの内部には、セメント材16bが充填されている。このセメント材16bによって抵抗体16aは封止される。なお、本実施例の発熱体16の構造は全て同じである。
【0068】
抵抗体16aは、金属板を折り曲げることにより構成されている。金属板には、銅及びニッケルを含む合金を用いることができる。抵抗体収容ケース16cには、セラミックを用いることができる。セラミックには、熱伝導性を高めるためにアルミナを含ませるとよい。セメント材16bには、アルミナ粉末やシリカ粉末を含むペースト状の絶縁封止材を用いることができる。
【0069】
各バスバー13に設けられる発熱体16は、導線17によって直列に接続されている。導線17はヒータ用電源18に接続されている。ヒータ用電源18から出力される電流によって抵抗体16aは発熱する。導線17の途中には、スイッチング部19が設けられている。スイッチング部19は、コントローラ31に接続されている。コントローラ31は、スイッチング部19のスイッチング動作を制御する。
【0070】
このように、抵抗体16aの周囲をセメント材16bで封止することによって、セメント材16bの中により多くの熱を含ませることができる。これにより、バスバー13を効果的に昇温させることができる。
【0071】
また、図2に図示するように、発熱体16をバスバー13に対して面接触させることにより、抵抗体16aをバスバー13に点接触させる加熱方式よりも、バスバー13に伝熱しやすくなり、バスバー13を早期に温度上昇させることができる。
【0072】
蓄電素子11(総プラス端子、総マイナス端子がある蓄電素子を除く)の正極端子11a及び負極端子11bにはそれぞれバスバー13が接続されているが、発熱体16はいずれか一方のバスバー13にのみ設けられている。正極端子11a及び負極端子11bはいずれもタブ113、114を介して発電要素111に接続されているため、いずれか一方のバスバー13を加熱することにより、発電要素111を早期に昇温させることができる。これにより、発熱体16の数が削減されるため、蓄電装置を小型化し、低コスト化を図ることができる。
【0073】
本実施例では、Z軸方向に隣接する蓄電素子11、つまり、蓄電素子11の積層方向に直交する方向に隣接する蓄電素子11を接続するバスバー13にのみ発熱体16が設けられており、全ての発熱体16を一方向(Y軸方向)に並べて配置することができる。これにより、各発熱体16を接続する導線17の引き回しなどが容易になる。
【0074】
各蓄電素子11に設けられた各温度センサ15は、コントローラ31に接続されている。コントローラ31は、これらの温度センサ15から出力される温度情報に基づき、複数の蓄電素子11のうちいずれかの蓄電素子11の温度が下限温度(閾値)よりも低くなると、スイッチング部19をオンにして、発熱体16の発熱動作を開始させる。
【0075】
ここで、下限温度は、蓄電素子11の内部抵抗と温度との相関関係に基づき、設計値として適宜定めることができる。例えば、図8に示す特性図では、電池温度が−30℃に低下したときに内部抵抗が大きくなるため、下限温度として−30℃を用いることができる。
【0076】
また、コントローラ31は、温度センサ15から出力される温度情報に基づき、全ての蓄電素子11の温度が目標温度に達すると、スイッチング部19をオフにして、発熱体16の発熱動作を停止させる。
【0077】
ここで、目標温度は、蓄電素子11の入出力の電流値が所望の値となるような内部抵抗値が得られればどのような値に設定してもよい。ただし、発熱体16の発熱に用いられる電力の消費量を削減する観点から、目標温度はより低い温度に設定するのが好ましい。本実施例では、目標温度を−10℃に設定している。なお、目標温度に到達した蓄電素子11は、充放電により発熱し、より使用に適した温度(例えば、30℃)に向けて自然に温度上昇する。
【0078】
次に、図4を参照して、蓄電装置の昇温方法について説明する。図4は、蓄電装置の昇温方法を示したフローチャートである。下記のフローチャートは、コントローラ31によって実行される。
【0079】
ステップS101において、イグニションスイッチ32がオンされたかどうかを判別する。ステップS101において、イグニションスイッチ32がオンされた場合には、ステップS102に進む。
【0080】
ステップS102では温度測定を開始する。コントローラ31は、温度センサ15から出力される温度に関する情報を1秒周期でサンプリングしている。本フローチャートでは、温度センサ15としてサーミスタを使用している。したがって、「温度に関する情報」は抵抗値である。
【0081】
ステップS103では温度センサ15から出力された情報に基づき、蓄電素子11の温度を算出し、蓄電素子11の温度が−30℃(下限温度)以下であるか否かを判定する。ここで、組電池12を構成するいずれかの蓄電素子11の温度が−30℃以下である場合には、ステップS104に進む。
【0082】
ステップS104では、スイッチング部19をオンにして、導線17を介して発熱体116の抵抗体16aに通電する。これにより、抵抗体16aが発熱する。発熱した抵抗体16aの熱は、抵抗体16aの周囲に充填されたセメント材16bに伝熱し、セメント材16bの熱は、セメント材16bを収容する抵抗体収容ケース16cに伝熱し、抵抗体収容ケース16cの熱はバスバー13に伝熱する。
【0083】
バスバー13の熱は正極端子11a又は負極端子11bに伝熱し、正極端子11a又は負極端子11bの熱は発電要素111に伝熱する。これにより、発電要素111を速やかに温度上昇させることができる。
【0084】
ステップS105では、蓄電素子11の温度が−10℃以上に温度上昇したか否かを判別する。−10℃以上に温度上昇した場合にはステップS106に進み、−10℃以上に温度上昇しなかった場合にはステップS104に戻り、発熱体16への通電動作を継続する。ステップS106では、発熱体16の抵抗体16aへの通電動作を停止し、このフローを終了する。
(実施例1の変形例)
本実施例では、抵抗値が同じ値である抵抗体16aを直列に接続しているため、全ての発熱体16の発熱量が同じとなる。発熱量は、電流の二乗と抵抗値との積に比例するからである。組電池12を構成する全ての蓄電素子11は、互いに昇温速度にバラツキが生じないように温度上昇させる必要がある。温度によって蓄電素子11の劣化速度が変わり、蓄電装置1の寿命低下を招くおそれがあるからである。
【0085】
したがって、正極端子11aをY−Z面で切断したときの断面積をS1、負極端子11bをY−Z面で切断したときの断面積をS2としたときに、S1>S2なる条件を満足するように、正極端子11a及び負極端子11bの寸法比を設定するのが好ましい。
【0086】
正極端子11aは、アルミニウムで構成されており、銅で構成された負極端子11bよりも熱伝導率が高いため、断面積の比率を、断面積S1>断面積S2に設定することにより、正極端子11a及び負極端子11bの昇温速度のバラツキをより効果的に抑制できる。
【実施例2】
【0087】
本実施例の蓄電装置は、発熱体を除いて実施例1と同じ構成である。したがって、発熱体についてのみ説明する。図5は、本実施例の蓄電装置の平面図である。本実施例の発熱体は、第1の発熱体161と、第2の発熱体162とからなる。第1の発熱体161は、エンドプレート25に隣接配置される蓄電素子(第1の蓄電素子)11に接続されたバスバー(第1の導電板)13に設けられている。
【0088】
第2の発熱体162は、第1の蓄電素子よりもエンドプレート25から離間した位置に配置される蓄電素子(第2の蓄電素子)11に接続されたバスバー(第2の導電板)13に設けられている。つまり、図5において、エンドプレート25に接する四個の蓄電素子11が第1の蓄電素子に相当し、残りの蓄電素子11が第2の蓄電素子に相当する。
【0089】
第1及び第2の発熱体161、162はともにセメント型の抵抗体であり、第2の発熱体162は、実施例1の発熱体16と同じ構成である。
【0090】
図6はエンドプレートの斜視図である。同図に示すように、エンドプレート25のZ軸方向の両端部には、脚部25bが形成されている。脚部25bは、Z軸方向に張り出している。脚部25bには、締結穴部25cが形成されている。締結穴部25cに差し込まれた不図示の締結ボルトは、不図示のロアケースに締結される。これにより、蓄電装置は固定される。
【0091】
エンドプレート25のX−Z面には、Y軸方向に延びる複数のリブ25aが形成されている。したがって、エンドプレート25に接触する蓄電素子11、つまり、第1の蓄電素子の熱は、リブ25aを介して放熱されやすい構造となっている。
【0092】
そこで、本実施例では、第2の発熱体162よりも第1の発熱体161の発熱量を大きくしている。具体的には、第2の発熱体162よりも第1の発熱体161の抵抗体の抵抗値を高く設定している。発熱体161、162の発熱量は、電流の二乗と抵抗値との積に比例するため、第1の発熱体161は、第2の発熱体162よりも発熱量が大きくなる。これにより、各蓄電素子11の昇温速度のバラツキが抑制され、蓄電装置の寿命低下を防止できる。
(実施例2の変形例)
本実施例では、発熱体の発熱量を変える手段として抵抗体の抵抗値を変えるという方法を用いたが、これに限定されるものではなく、他の手段を用いることもできる。例えば、第2の発熱体162において、第1の発熱体161よりもセメント材の熱伝導率を高く(抵抗体の抵抗値は同じとする)することによって、発熱量を変えることができる。また、第1の発熱体161及び第2の発熱体162の電源をそれぞれ別々に設けて、第1の発熱体161を流れる電流値を、第2の発熱体162を流れる電流値よりも高く設定することによって、発熱量を変えることができる。
【実施例3】
【0093】
発熱体16は、バスバー13及びタブ113(又はタブ114)を介して発電要素111に接続されているため、発熱体16が発熱動作を開始すると、素子ケース112よりも発電要素111のが、温度が先に上昇して高くなる。したがって、素子ケース112の外面に設けられた温度センサ15で検出された温度は、発電要素111の実際の温度よりも低い温度を示す。
【0094】
一方、図4のフローチャートのステップS105の処理では、発電要素111の温度が目標温度に達していても、素子ケース112の温度が目標温度に達していない場合には、発熱体16の発熱動作が継続される。そのため、発熱体16による加熱効率が低下し、昇温時間が無駄に長くなる。この課題を解決するために、本実施例では、下記の方法で昇温制御を行っている。
【0095】
図7は、本実施例の昇温制御の方法を示したフローチャートである。ステップS201〜ステップS204までの処理はそれぞれ、実施例1のステップS101〜ステップS104までの処理と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
ステップS205において、コントローラ31は、温度センサ15から出力された温度情報に基づき、蓄電素子11の素子ケース112の温度を算出し、その算出温度が目標温度(−10℃)よりもα(αは正の値)℃分だけ低い補正温度(所定温度)以上であるか否かを判別する。算出温度が補正温度以上である場合には、ステップS206に進み発熱体16への通電動作を停止し、算出温度が補正温度未満である場合には、ステップS204に戻り、発熱体16への通電動作を継続する。
【0097】
α℃については、発電要素111と素子ケース112との温度差を実験やシミュレーションなどで求めておくことにより、予め設定することができる。
【0098】
このように、発熱体16の発熱動作を停止させるときの停止温度として発電要素111の目標温度よりも低い補正温度を用いることにより、発電要素111を目標温度まで昇温させながら、加熱効率の向上及び昇温時間の無駄防止を図ることができる。なお、その他、実施例1で説明した他の効果も得ることができる。
【0099】
本実施例の構成は、当然のことながら実施例2の構成にも適用できる。
(実施例3の変形例)
ステップS205の処理において、温度センサ15から出力された抵抗値に基づき算出された算出温度にα℃を加算した別の補正温度を算出し、この別の補正温度が目標温度以上である場合には、発熱体16への通電動作を停止させるようにしてもよい。
(変形例)
上述の実施例1乃至3では、セメント型の発熱体16等を用いる構成としたが、これに限るものではなく、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ(発熱体)を用いることもできる。ここで、PTCヒータに電流を流すと自己発熱して抵抗が増大する。
【0100】
上述の実施例では、組電池12を構成する全ての蓄電素子11の温度を検出する構成としたが、これに限られるものではなく、エンドプレート25に隣接配置される蓄電素子11の温度のみを検出する構成にすることもできる。
【0101】
実施例2で説明したように、エンドプレート25に接する蓄電素子11は、他の蓄電素子11よりも温度が低くなりやすいため、エンドプレート25に接する蓄電素子11の温度情報のみで昇温制御は行えるからである。この場合、当該他の蓄電素子11に設けられる温度センサ15の一部又は全部を省略することもできる。これにより、コストを削減できる。
【0102】
また、発熱体16を、一つのバスバー13にのみ設ける構成であってもよい。この場合、温度の最も低くなると予想される蓄電素子11を予めシミュレーションなどにより調べておき、その蓄電素子11に接続されるバスバー13に発熱体16を設けることができる。これにより、コストを削減できる。さらに、発熱体16を全てのバスバー13に設ける構成であってもよい。
【実施例4】
【0103】
図9及び図10を参照して、実施例4の蓄電装置について説明する。図9は、実施例4の蓄電装置の平面図であり、図10は実施例4の蓄電装置のブロック図である。実施例1と同一の機能を有する構成要素には、同一符号を付して説明を省略する。組電池41を構成する複数の蓄電素子11は、エンドプレート25からの距離を基準としてグループ分けされている。ここで、図9を参照して、組電池41の右端に位置するエンドプレート25から数えて、1〜4列に含まれる複数の蓄電素子11(蓄電ブロック)をグループA、5〜8列に含まれる複数の蓄電素子11(蓄電ブロック)をグループB、9〜12列に含まれる複数の蓄電素子11(蓄電ブロック)をグループC、13〜16列に含まれる複数の蓄電素子11(蓄電ブロック)をグループD、17〜20列に含まれる複数の蓄電素子11(蓄電ブロック)をグループE、21〜24列に含まれる複数の蓄電素子11(蓄電ブロック)をグループFと定義する。
【0104】
グループAには発熱体511〜514を含む第1の発熱群51が設けられている。これらの発熱体511〜514はそれぞれ、Z軸方向に隣接する蓄電素子11の接続に用いられるバスバー13に設けられており、互いに直列に接続されている。したがって、各発熱体511〜514に流れる電流値は同じである。グループBには発熱体521〜524を含む第2の発熱群52が設けられている。これらの発熱体521〜524はそれぞれ、Z軸方向に隣接する蓄電素子11の接続に用いられるバスバー13に設けられており、互いに直列に接続されている。したがって、各発熱体521〜524に流れる電流値は同じである。グループCには発熱体531〜534を含む第3の発熱群53が設けられている。これらの発熱体531〜534はそれぞれ、Z軸方向に隣接する蓄電素子11の接続に用いられるバスバー13に設けられており、互いに直列に接続されている。したがって、各発熱体531〜534に流れる電流値は同じである。グループDには発熱体541〜544を含む第4の発熱群54が設けられている。これらの発熱体541〜544はそれぞれ、Z軸方向に隣接する蓄電素子11の接続に用いられるバスバー13に設けられており、互いに直列に接続されている。したがって、各発熱体541〜544に流れる電流値は同じである。グループEには発熱体551〜554を含む第5の発熱群55が設けられている。これらの発熱体551〜554はそれぞれ、Z軸方向に隣接する蓄電素子11の接続に用いられるバスバー13に設けられており、互いに直列に接続されている。したがって、各発熱体551〜554に流れる電流値は同じである。グループFには発熱体561〜564を含む第6の発熱群56が設けられている。これらの発熱体561〜564はそれぞれ、Z軸方向に隣接する蓄電素子11の接続に用いられるバスバー13に設けられており、互いに直列に接続されている。したがって、各発熱体561〜564に流れる電流値は同じである。
【0105】
第1〜第6の発熱群51〜56は互いに並列に接続されており、コントローラ31はこれら第1〜第6の発熱群51〜56に流れる電流を制御する。コントローラ31はDCDCコンバータ44に接続されている。DCDCコンバータ44は、組電池41で発電された電力を調整して、コントローラ31に出力する。各発熱体511〜564にはPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータを用いることもできる。ここで、PTCヒータに電流を流すと自己発熱して抵抗が増大する。
【0106】
組電池41を構成する複数の蓄電素子11をグレープA〜Fにグループ分けした理由について説明する。このグループ分けは、エンドプレート25に近づくほど外気に触れやすく放熱されやすいといった蓄電素子11の昇温条件に対応させたものである。比較例1を示して、より具体的に説明する。比較例1では、全ての発熱体をPTCヒータで構成して、実施例1と同様にこれらの発熱体を直列に接続している。これらの発熱体に通電した場合には、エンドプレート25から離れるほど蓄電素子11の昇温速度が速くなるため、より中央に位置する発熱体ほど抵抗値が高くなる。これにより、各発熱体に流れる電流値が小さくなり、エンドプレート25に近い領域に位置する発熱体の発熱量が低下するため、全体の昇温速度が遅くなる。
【0107】
これに対して、本実施例では、蓄電素子11の昇温条件に応じて発熱体511〜564をグループ化しているため、比較例1の構成よりも昇温時間を短くすることができる。すなわち、早期に昇温する蓄電素子11の発熱体(たとえば、発熱体534)の抵抗値が上昇しても、これに連動して昇温速度の遅い蓄電素子11の発熱体(たとえば、発熱体511)に流れる電流値は低下しないため、比較例1の構成よりも昇温時間を短くすることができる。
【0108】
グループA〜Fにはそれぞれ第1〜第6の温度センサ(温度情報取得部)516〜566が設けられている。第1〜第6の温度センサ516〜566は、各グループA〜Fに含まれる蓄電素子11の中で最もエンドプレート25に近い領域に位置する蓄電素子11(つまり、昇温速度が最も遅い蓄電素子11)に設けられている。コントローラ31は、実施例1と同様に、第1〜第6の温度センサ516〜566から出力される信号に基づき、第1〜第6の発熱群51〜56の発熱動作を制御する。
【0109】
これらの第1〜第6の温度センサ516〜566は組電池41の状態推定用温度センサと兼用することができる。すなわち、第1〜第6の温度センサ516〜566から出力される温度情報に基づき、組電池41の電圧の入出力が制御される。これにより、温度センサの数が削減され、低コスト化を図ることができる。なお、組電池41の電圧の入出力の制御は、コントローラ31が行ってもよいし、これとは異なる別のコントローラが行ってもよい。
【0110】
ここで、経年変化などを要因として発熱体511〜564が短絡又は断線する場合がある。例えば、発熱体511が断線した場合には、グループAに含まれる蓄電素子11を昇温させることができない。そのため、組電池41が過充電されるおそれがある。そこで、本実施例では、故障情報取得部を設けて、発熱体511〜564が短絡又は断線した場合には、全ての発熱体511〜564の発熱動作を停止させる。
【0111】
図10を参照して、故障情報取得部は、第1〜第6の発熱群51〜56にそれぞれ設けられる第1〜第6の温度ヒューズ515〜565、第1〜第6の温度センサ516〜566を含む。これら第1〜第6の温度ヒューズ515〜565は、通電加熱により可溶合金を強制的に溶断させることにより、第1〜第6の発熱群51〜56に流れる電流を遮断する。
【0112】
上述の構成において、例えば、発熱体511が断線した場合には、発熱体511を含む第1の発熱群51に電流が流れなくなり、グループAに含まれる蓄電素子11の昇温動作が停止する。コントローラ31は、第1の温度センサ516から出力される温度情報に基づき、グループAに含まれる蓄電素子11の昇温動作が停止したこと、すなわち第1の発熱群51が断線したか否かを判別することができる。さらに、コントローラ31は、第1の発熱群51が断線した場合には、全ての発熱体511〜564の通電動作を停止する。これにより、消費電力を削減することもできる。
【0113】
また、上述の構成において、例えば、発熱体511が短絡した場合には、第1の発熱群51に流れる電流値が上がり、第1の発熱群51に含まれる第1の温度ヒューズ515が溶解して断線する。したがって、上記と同様に、第1の温度センサ516から出力される温度情報に基づき、グループAに含まれる蓄電素子11の昇温動作が停止したことを判別することができる。
【0114】
ここで、全ての発熱体511〜564を並列に接続して、各発熱体511〜564に温度ヒューズを設ける構成も考えられる。しかしながら、この構成では、温度ヒューズの数が増加して、コスト高となり小型化の要請にも反する。これに対して、本実施例では、昇温速度に応じて複数の蓄電素子11をグループ化して、各グループに一つの温度ヒューズを設ける構成としているため、低コスト化及び小型化を図ることができる。
(実施例4の変形例)
次に、図11を参照して、故障情報取得部の変形例について説明する。図11は、変形例の蓄電装置のブロック図である。実施例4では、温度センサから出力される温度情報に基づき故障の有無を判別したが、本変形例では各第1〜第6の発熱群51〜56における電圧変化に基づき故障の有無を判別する。以下、具体的に説明する。
【0115】
第1の発熱群51では、隣接する発熱体511及び発熱体512の間に電圧検出部517を設けて電圧を検出している。上述の構成において、第1の発熱群51が断線も短絡もしていない場合には、電圧検出部517で検出される電圧値V1はV1≒1/4*V0となる。
【0116】
一方、発熱体511が断線した場合にはV1≒V0に変化し、発熱体511が短絡した場合にはV1≒0に変化し、発熱体512〜514のいずれかが断線した場合にはV1≒0に変化し、発熱体512〜514のいずれかが短絡した場合にはV1≒1/3*V0に変化する。このように、電圧検出部517で検出される電圧値が変化した場合には、実施例4と同様に直ちに、全ての発熱体511〜564への通電を停止する。上述の構成において、電圧検出部517の位置を発熱体513及び発熱体514の間に変更することもできる。
【0117】
第2の発熱群52では、隣接する発熱体521及び発熱体522の間に電圧検出部527を設けて電圧を検出している。第3の発熱群53では、隣接する発熱体531及び発熱体532の間に電圧検出部537を設けて電圧を検出している。第4の発熱群54では、隣接する発熱体541及び発熱体542の間に電圧検出部547を設けて電圧を検出している。第5の発熱群55では、隣接する発熱体551及び発熱体552の間に電圧検出部557を設けて電圧を検出している。第6の発熱群56では、隣接する発熱体561及び発熱体562の間に電圧検出部567を設けて電圧を検出している。これらの第2〜第6の発熱群52〜56の故障判定方法は、第1の発熱群51と同様であるため説明を省略する。
【0118】
実施例4(実施例4の変形例を含む)では、エンドプレート25からの距離に応じて蓄電素子11をグループ分けしたが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、蓄電素子11の近傍に熱源又は冷却源がある場合には、それに応じて蓄電素子11の昇温分布も変動するため、組電池個々の昇温条件に応じてグループ分けをするのが好ましい。
【0119】
実施例4では、故障を検知した際に、全ての発熱体511〜564の発熱動作を停止させたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、故障を検知したことを報知する報知手段を用いることもできる。ここで、報知手段として、例えば、音声出力による報知手段、ランプ点灯による報知手段を用いることができる。
【符号の説明】
【0120】
1 蓄電装置 11 蓄電素子 11a 正極端子 11b 負極端子
12 41 組電池 13 バスバー 14 冷媒移動通路
15 516〜566 温度センサ 16 511〜564 発熱体
16a 抵抗体 16b セメント材 16c抵抗体収容ケース
17 導線 18 ヒータ用電源
19 スイッチング部 25エンドプレート
31 コントローラ 32 IGスイッチ 51〜56 発熱群
111 発電要素 111a 正極側末塗工部 111b 負極側末塗工部
112 素子ケース 113 正極側タブ 114 負極側タブ
161 第1の発熱体 162 第2の発熱体
515〜565 温度ヒューズ 517〜567 電圧検出部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ正極端子及び負極端子を有する複数の蓄電素子と、
これらの蓄電素子を直列に接続する複数の導電板と、
前記複数の導電板のうち少なくとも一つの導電板に設けられる発熱体と、
を有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記正極端子は、前記負極端子よりも熱伝導率が高く、前記正極端子及び前記負極端子の径方向の断面積をそれぞれS1及びS2としたときに、
S1>S2
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記正極端子はアルミニウムからなり、前記負極端子は銅からなることを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記正極端子及び負極端子にそれぞれ接続される二つの前記導電板のうち、いずれか一方にのみ前記発熱体は設けられることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記複数の蓄電素子は、一対のエンドプレートの間に積層されており、前記エンドプレートに隣接して配置される第1の蓄電素子と、この第1の蓄電素子よりも前記エンドプレートから離間した位置に配置される第2の蓄電素子とを含み、
前記複数の導電板は、前記第1の蓄電素子に接続される第1の導電板と、前記第2の蓄電素子に接続される第2の導電板とを含み、
前記第1の導電板に設けられた前記発熱体は、前記第2の導電板に設けられた前記発熱体よりも発熱量が大きいことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記蓄電素子の温度に関する情報を取得する温度情報取得部と、
前記温度情報取得部で取得された情報に基づき、前記発熱体の発熱動作を制御するコントローラと、を有し
前記コントローラは、前記蓄電素子の温度が閾値以下である場合に、前記発熱体を発熱させることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記温度情報取得部は、前記蓄電素子の発電要素を収容する素子ケースに設けられており、
前記コントローラは、前記素子ケースの温度が所定温度に達すると、前記発熱体による発熱動作を停止させ、前記所定温度は、前記発熱体の発熱動作による前記発電要素の目標温度よりも低いことを特徴とする請求項6に記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記発熱体は、抵抗体と、この抵抗体を収容する抵抗体収容ケースと、この抵抗体収容ケースに充填されるセメント材とを含むことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一つに記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記抵抗体収容ケースは、前記導電板に対して面接触していることを特徴とする請求項8に記載の蓄電装置。
【請求項10】
導線を介して直列に接続された複数の前記発熱体をそれぞれ含む複数の発熱群を並列に接続し、前記複数の蓄電素子は、昇温速度に応じて複数の蓄電ブロックにグループ分けされており、各前記発熱群は各前記蓄電ブロックに対応して設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載の蓄電装置。
【請求項11】
各前記発熱群の断線及び短絡の少なくとも一方の故障情報を取得するための故障情報取得部を有することを特徴とする請求項10に記載の蓄電装置。
【請求項12】
前記故障情報取得部は、
各前記蓄電ブロックに含まれる一つの前記蓄電素子にそれぞれ設けられる複数の前記温度情報取得部と、
各前記発熱群内の前記導線にそれぞれ設けられる複数の温度ヒューズと、を含むことを特徴とする請求項11に記載の蓄電装置。
【請求項13】
前記温度情報取得部が設けられる前記蓄電素子は、その蓄電素子が含まれる前記蓄電ブロックの中で最も昇温速度が遅い蓄電素子であることを特徴とする請求項12に記載の蓄電装置。
【請求項14】
前記コントローラは、前記複数の発熱群に発熱動作を指示した後に、前記複数の温度情報取得部において取得された情報に基づき、温度上昇がないと判別した場合には、前記発熱動作の停止を指示する信号を出力することを特徴とする請求項12又は13に記載の蓄電装置。
【請求項15】
前記故障情報取得部は、
各前記発熱群に含まれる前記発熱体間の電圧値に関する情報をそれぞれ取得するための複数の電圧検知部を含むことを特徴とする請求項11に記載の蓄電装置。
【請求項16】
前記コントローラは、前記複数の発熱群に発熱動作を指示した後に、前記複数の電圧検知部において取得された情報に基づき、電圧変化したと判別した場合には、前記発熱動作の停止を指示する信号を出力することを特徴とする請求項15に記載の蓄電装置。
【請求項17】
請求項1乃至16のうちいずれか一つに記載の蓄電装置を搭載した車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−97923(P2010−97923A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76100(P2009−76100)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】