説明

薄膜トランジスタ用誘電性組成物

【課題】より低温、より短期間で処理することができる誘電体層、誘電性組成物を提供することである。
【解決手段】電子デバイスの製造方法は、誘電性材料、架橋剤、及び赤外線吸収剤を含有する誘電性組成物を基材上に成膜する工程と、誘電性組成物を赤外線に暴露して誘電性組成物を硬化させ、基材上に誘電体層を形成する工程と、基材上に半導体層を形成する工程とを含むことを特徴とする。また、電子デバイスは、架橋された誘電性材料及び赤外線吸収剤を含有する誘電体層を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゲート誘電体層を備える薄膜トランジスタ(TFT)、又は他の電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にTFTは、基材、導電性ゲート電極、ソース及びドレイン電極、ゲート電極をソース及びドレイン電極と分離する絶縁性ゲート誘電体層、及びゲート誘電体層と接触してソース及びドレイン電極をブリッジする半導電性層から成る。その性能は電界効果移動度とトランジスタ全体の電流オン/オフ比によって決定される。移動度が高くオン/オフ比が高いことが望ましい。
【0003】
無線周波数識別(RFID)タグやディスプレイ、例えば、サイネージ、リーダ及び液晶ディスプレイ用のバックプレーンスイッチング回路といった用途では、高いスイッチング速度及び/又は高密度は重要ではないので、有機薄膜トランジスタ(OTFT)に関心がある。OTFTは、低コストの溶液又は液体製造技術を用いて形成することができる。また、これらは、物理的に小型で、軽量かつ柔軟性があるといった魅力的な機械特性を有する。
【0004】
近年、溶液ベースのパターニングと成膜技術、例えば、スピンコーティング、溶液キャスティング、ディップコーティング、ステンシル/スクリーン印刷、フレキソ、グラビア、オフセット印刷、インクジェット印刷、マイクロコンタクト印刷等、又はこれらの方法の組み合わせを用いて製造することができる可能性があることから、有機薄膜トランジスタへの関心は高まっている。このような方法は、一般的に、電子デバイス用のシリコンベースの薄膜トランジスタ回路を製造するのに使用される複雑なフォトリソグラフ法に比べて、より簡単でよりコスト効率がよい。したがって、薄膜トランジスタ回路の製造において、これら溶液ベースプロセスの使用を可能にするために、溶液処理可能な材料が求められる。
【0005】
これに関して、ゲート誘電体層は、溶液ベースプロセスで製造することができる。しかし、このように製造されたゲート誘電体層は、ピンホールがなく、表面粗さが低く(表面滑らかさが高く)、リーク電流が低く、誘電率が高く、降伏電圧が高く、ゲート電極に良好に付着し、室温、溶液状態で安定であることが望まれる。また、誘電体層と有機半導体層間の界面は、TFTの機能に非常に影響するので、半導体材料とも適合すべきである。
【0006】
ロール・ツー・ロール(roll−to−roll)製造とは、まだ開発中であるが、紙を用いたグラビア、オフセット及びフレキソ印刷法と同様に、柔軟性のあるプラスチック又は金属ホイルのロール上に電子デバイスを製造する方法である。薄膜トランジスタ及び他の素子を用いて形成される大型回路を、これらの大きな基材上に容易にパターン化することができるものと考えられ、基材は幅数メートルで長さ50kmまで可能である。このタイプの製造によって、特にフォトリソグラフ技術を用いる通常の半導体製造法に比べた場合に、大規模で低コストな素子が可能となる。
【0007】
低温かつ高速処理がロール・ツー・ロール製造では重要である。これに関して、溶液処理可能な誘電体層は、一般的に、溶液として塗付され、次に硬化される。熱硬化は、一般的に、得られる組成物の最適機能を確保するために、例えば、約140℃〜180℃の温度で、例えば、10分〜30分間行われる。これらの硬化温度及び時間は、大抵の場合、ロール・ツー・ロール製造に適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,573,063号明細書
【特許文献2】米国特許第7,652,339号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
より低温、より短期間で処理することができる誘電体層、誘電性組成物を提供し、ロール・ツー・ロール製造及び他の方法を用いて、電子デバイスの製造を可能にすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電子デバイスの製造方法は、誘電性材料、架橋剤、及び赤外線吸収剤を含有する誘電性組成物を基材上に成膜する工程と、誘電性組成物を赤外線に暴露して誘電性組成物を硬化させ、基材上に誘電体層を形成する工程と、基材上に半導体層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る電子デバイスは、架橋された誘電性材料及び赤外線吸収剤を含有する誘電体層を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る誘電性組成物は、誘電性材料、架橋剤、及び赤外線吸収剤を含有することを特徴とする。
【0011】
誘電体層は、赤外線(IR)吸収剤(IR吸収剤)を含有する誘電性組成物から形成される。硬化処理時に、この組成物によって、誘電性組成物は電子デバイスの他の成分、特に基材より高温になる。このため、基材の熱による劣化を低減する。電子デバイスは、架橋性誘電性材料と赤外線吸収剤とを含有する誘電体層を備える。電子デバイスは、例えば、薄膜トランジスタ、特に柔軟性のある基材、例えば、低コストポリエチレンテレフタレート(PET)上の薄膜トランジスタである。
【0012】
つまり、ゲート誘電体層を構成する誘電性組成物は、赤外線(IR)吸収剤(IR吸収剤)を含有する。これによって、誘電性組成物を選択的に硬化するとともに、その基材は比較的低温を保持して、基材の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態であるTFTを示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態であるTFTを示す図である。
【図3】本発明の第3の実施形態であるTFTを示す図である。
【図4】本発明の第4の実施形態であるTFTを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本開示によるボトム−ゲート、ボトム−コンタクトTFT構造を示す。TFT10は、ゲート電極18及びゲート誘電体層14に接触する基材16を備える。ここでゲート電極18は、基材16上に図示しているが、基材内部に配置されてもよい。ゲート誘電体層14は、ソース電極20、ドレイン電極22、及び半導体層12からゲート電極18を分離する。半導体層12は、ソース電極20及びドレイン電極22上及びその間に設けられる。半導体は、ソース電極20及びドレイン電極22間のチャネル長さを有する。
【0015】
図2は、本開示による別のボトム−ゲート、トップ−コンタクトTFT構造を示す。TFT30は、ゲート電極38及びゲート誘電体層34に接触する基材36を備える。半導体層32は、ゲート誘電体層34上に配置され、ゲート誘電体層34と、ソース電極40及びドレイン電極42とを分離する。
【0016】
図3は、本開示による別のボトム−ゲート、ボトム−コンタクトTFT構造を示す。TFT50は、ゲート電極としての機能も果たす基材56を備え、この基材はゲート誘電体層54に接触する。ソース電極60、ドレイン電極62、及び半導体層52は、ゲート誘電体層54上に配置される。
【0017】
図4は、本開示によるトップ−ゲート、トップ−コンタクトTFT構造を示す。TFT70は、ソース電極80、ドレイン電極82、及び半導体層72と接触する基材76を備える。半導体層72は、ソース電極80及びドレイン電極82上及びその間に設けられる。ゲート誘電体層74は、半導体層72上にある。ゲート電極78は、ゲート誘電体層74上にあり、半導体層72とは接触しない。
【0018】
本開示の態様は、誘電体層を備える電子デバイス(例えば、薄膜トランジスタ)であって、誘電体層は赤外線吸収剤を含有する。ある実施の形態では、誘電体層は単一の均一層であり、又は言い換えれば複数の相分離された材料から成るものではない。本開示のさらなる態様は、相分離された誘電体構造を備える電子デバイスであって、誘電体構造は赤外線吸収剤を含有する。薄膜トランジスタの文脈で、相分離された誘電体構造も「ゲート誘電体」と言うことができる。相分離された誘電体構造をいずれの好適な電子デバイスに用いてもよい。薄膜トランジスタ以外で、好適な他のタイプの電子デバイスには、例えば、埋込式コンデンサ及びエレクトロルミネッセントランプがある。
【0019】
本誘電体構造を製造する際には、誘電性材料、架橋剤、赤外線吸収剤、任意の溶媒又は液体を含有する誘電性組成物を調製する。実施の形態では、いずれの好適な絶縁性材料を誘電性材料として使用してもよい。さらなる実施の形態では、誘電性材料は、熱架橋可能な誘電性材料である。「熱架橋可能な」という用語は、誘電性材料が、追加の架橋剤と、又は誘電性材料自身の他の官能基と反応することができる官能基を備えて、加熱時に架橋ネットワークを形成することを言う。誘電性材料は、異なる誘電率を有する2以上の異なる材料を含有してもよい。例えば、誘電性材料は、低誘電材料(lower‐k)と高誘電材料(higher‐k)とを含有してもよい。
【0020】
「低誘電(ローk)」及び「高誘電(ハイk)」という用語を用いて、誘電性組成物中及び相分離された誘電体構造中の(誘電率に基づく)2つのタイプの材料を区別する。
【0021】
実施の形態では、低誘電材料は絶縁性であり、デバイス内の半導体層と適合性があり、又は良好な適合性を有する。「適合性がある」及び「適合性」という用語は、半導体層が、低誘電性ポリマーに富んだ表面と隣接する又は接触する場合に、半導体層が如何に良好に電気的に機能するかを言う。
【0022】
実施の形態では、低誘電材料は、疎水性表面を有し、ポリチオフェン半導性ポリマーと非常に優れた適合性を有し得る。実施の形態では、低誘電材料は、例えば、4.0未満、又は約3.5未満、又は特に約3.0未満の誘電率を有する。
低誘電材料は、無極性又は弱い極性基、例えば、メチル基、フェニレン基、エチレン基、Si−C、Si−O−Si等を有してもよい。実施の形態では、低誘電材料はポリマーである。代表的な低誘電性ポリマーには、これに限定されないが、例えば、ポリスチレン、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(a−メチルスチレン)、ポリシロキサン、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)及びポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリシルセスキオキサン、例えば、ポリ(エチルシルセスキオキサン)、ポリ(メチルシルセスキオキサン)、及びポリ(フェニルシルセスキオキサン)、ポリフェニレン、ポリ(1,3−ブタジエン)、ポリ(アルファ−ビニルナフタレン)、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリエチレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(p−キシレン)、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、ポリ(プロピルメタクリルPOSS−コ−メチルメタクリレート)、ポリ(プロピルメタクリルPOSS−コ−スチレン)、ポリ(スチリルPOSS−コ−スチレン)、ポリ(ビニルシンナマート)等がある。特定の実施の形態では、低誘電性ポリマーは、ポリシルセスキオキサン、特にポリ(メチルシルセスキオキサン)である。誘電率は室温で1kHzの周波数で測定される。別の実施の形態では、低誘電材料は分子化合物、例えば、分子ガラス化合物である。
【0023】
実施の形態では、低誘電性ポリマーの表面は、フィルムとしてキャストした場合には、低い表面エネルギーを有する。表面エネルギーを特徴付けするために、前進水接触角を用いる。高い接触角は低い表面エネルギーを示す。実施の形態では、接触角は80°以上、又は約90°以上、又は特に約95°以上である。
【0024】
実施の形態では、高誘電材料は、絶縁性で、極性基、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、C=O基等を含有する。実施の形態では、高誘電材料は、4.0以上、5.0以上、又は特に6.0以上の誘電率を有する。
実施の形態では、高誘電材料はポリマーである。高誘電性ポリマーの一般的タイプには、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリケトン、及びポリスルホンがある。特定の代表的な高誘電性ポリマーには、これに限定されないが、例えば、ポリ(4−ビニルフェノール)(PVP)、ポリ(ビニルアルコール)及びポリ(2−ヒドロキシルエチルメタクリレート)(PHEMA)、シアノエチレート化ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、シアノエチレート化セルロース、ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVDF)、ポリ(ビニルピリジン)、そのコポリマー等がある。実施の形態では、高誘電材料はPVP、PVA又はPHEMAである。他の実施の形態では、高誘電材料は分子化合物、例えば、分子ガラス化合物である。
【0025】
実施の形態では、高誘電性ポリマーは、フィルムとしてキャストした場合には、高い表面エネルギーを有する。前進水接触角の点から、その角は、例えば、80°未満、又は約60°未満、又は約50°未満である。
【0026】
実施の形態では、高誘電材料と低誘電材料との誘電率の大きさの差は、少なくとも約0.5、又は少なくとも約1.0、又は少なくとも約2.0、例えば、約0.5〜約200である。
【0027】
実施の形態では、誘電体構造は約4.0以上、又は約5.0以上、特に約6.0以上の全体誘電率を有する。全体誘電率は、金属/誘電体構造/金属コンデンサを特徴付けることができる。特に薄膜トランジスタ用途では、デバイスを比較的低電圧で動作させることができるように、高い全体誘電率が、実施の形態では望ましい。
【0028】
架橋剤が誘電性組成物中に存在する。誘電性組成物は2以上の材料、例えば、高誘電材料と低誘電材料とを含有し、これらが硬化時に2以上の相に分離し得る場合には、架橋剤は高誘電材料と低誘電材料との間で相全体にわたって架橋を生じさせる。他の材料を誘電性組成物中に添加してもよい。代表的な架橋剤には、ポリ(メラミン−コ−ホルムアルデヒド)樹脂、オキサゾリン官能性架橋剤、ブロックポリイソシアネート、ある種のジアミン化合物、ジチオール化合物、ジイソシアネート等がある。架橋用触媒、例えば、トルエンスルホン酸が含まれてもよい。
【0029】
赤外線吸収剤も存在する。「赤外線」という用語は、約700nm〜約3000nmの波長を有する電磁波を言う。実施の形態では、好適な赤外線吸収剤には、約700〜1400nmの波長を有する「近赤外線吸収剤」と、約1400nm〜約3000nmの波長を有する「熱赤外線吸収剤」とがある。赤外線吸収剤は、誘電体層中に、又は誘電性組成物中に、液体を除く誘電体層又は誘電性組成物の重量で、約0.001重量%〜約5重量%の量で、例えば、約0.1〜約3重量%、又は約0.5〜約2重量%、又は約0.5〜約3重量%、又は約1〜約2重量%存在してもよい。実施の形態では、赤外線吸収剤はポリメチン、例えば、シアニン、スクアライン、又はクロコナイン;フタロシアニン、ナフタロシアニン、キノン−ジインモニウム又はアミニウム塩、又はジチオーレン金属錯体であってもよい。
【0030】
誘電性組成物には、液体成膜を容易にする液体又は溶媒が使用できる。実施の形態では、液体/溶媒は、低誘電性ポリマーと高誘電性ポリマーとを溶解させる。代表的な液体には、これに限定されないが、水;アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、ドワノール、及びメトキシエタノール;アセテート、例えば、 エチルアセテート及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート;ケトン、例えば、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルプロピルケトン;エーテル、例えば、石油エーテル、テトラヒドロフラン、及びメチルt−ブチルエーテル;炭化水素、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ヘキサデカン、及びイソ−オクタン;芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、及びメシチレン;塩素化溶媒、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びトリクロロベンゼン;及び他の溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、トリフルオロ酢酸、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピリジン、及び n−メチル-アルファ−ピロリジノンがある。
【0031】
無機ナノ粒子を任意に含有して、誘電体層の全体誘電率を上げてもよい。これらのナノ粒子は誘電性ポリマーと反応せず、一般的に誘電体層全体に分散する。ナノ粒子は、約3nm〜約500nm、又は約3nm〜約100nmの粒子サイズを有する。いずれの好適な無機ナノ粒子を用いてもよい。例示的ナノ粒子には、金属ナノ粒子、例えば、Au、Ag、Cu、Cr、Ni、Pt及びPd;金属酸化物ナノ粒子、例えば、Al23、TiO2、ZrO2、La23、Y23、Ta25、ZrSiO4、SrO、SiO、SiO2、MgO、CaO、HfSiO4、BaTiO3、及びHfO2;及び他の無機ナノ粒子、例えば、ZnS及びSi34がある。無機ナノ粒子の添加にはいくつかの利点がある。まず、ゲート誘電体層全体の誘電率を増加させることができる。第2に、金属ナノ粒子を添加した場合には、粒子が電子トラップとして機能し、ゲート誘電体層のゲート漏電を低下させることができる。
【0032】
誘電性材料内における上に挙げた各成分の濃度は、組成物の約0.001〜約99重量%で変化する。低誘電材料の濃度は、例えば、約0.1〜約30重量%、又は約1〜約20重量%である。高誘電材料の濃度は、例えば、約0.1〜約50重量%、又は約5〜約30重量%である。架橋剤(及び架橋反応用のいずれかの触媒)の濃度は、誘電性ポリマーの濃度に依存する。架橋剤の誘電性ポリマーに対する比は、重量で、例えば、約1:99〜約50:50、又は約5:95〜約30:70である。触媒の誘電性ポリマーに対する比は、重量で、例えば、約1:9999〜約5:95、又は約1:999〜約1:99である。無機ナノ粒子は、例えば、約0.5〜約30重量%、又は約1〜約10重量%であってもよい。
【0033】
実施の形態では、低誘電材料及び高誘電材料は、誘電性組成物内で相分離していない。「相分離していない」という表現は、低誘電材料及び高誘電材料が液体中に溶解していることを意味する。「溶解する」という用語は、低誘電材料及び高誘電材料の液体中への全体的溶解又は部分的溶解を示す。低誘電性ポリマー、高誘電性ポリマー、及び液体が混和し、ある温度、圧力及び組成の範囲にわたって単一相を形成することができる。その温度範囲は、例えば、0〜150℃、特に約室温である。その圧力は一般的に約1大気圧である。液体成膜の前の誘電性組成物では、低誘電材料及び高誘電材料は、低誘電性ポリマー、高誘電性ポリマー、及び液体の全重量に基づいて、例えば、約0.1〜約90重量%、又は約0.5〜約50重量%存在してもよい。低誘電材料と高誘電材料との比は、例えば、約1:99〜約99:1、又は約5:95〜約95:5、特に約10:90〜約40:60であってもよい(各比で最初に述べた値は低誘電性ポリマーを示す)。
【0034】
実施の形態では、液体成膜の前に、低誘電性ポリマー、高誘電材料及び液体が混和し、単一相(典型的に透明な溶液)を形成する場合には、単一相は光散乱技術によって確認してもよく、又は全く器具によらずに人間の目視で視覚的に検出してもよい。
【0035】
液体成膜の前に、誘電性組成物は、実施の形態では、低誘電材料及び/又は高誘電性ポリマーの集合体を含有してもよい。これらの集合体は、例えば、可視光の波長未満、又は100nm未満、特に50nm未満の大きさであってもよい。本開示の目的では、これらの集合体が、誘電性組成物中に存在するなら、これらを相分離の結果又は相分離されたものとは考えず;さらにこれらの集合体を「第1相」及び/又は「第2相」と考えない。
【0036】
誘電性組成物を基材上に液体成膜する。いずれの好適な液体成膜技術を用いてもよい。実施の形態では、液体成膜には、ブランケットコーティング、例えば、スピンコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、ディップコーティング等、及び印刷、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スタンピング、ステンシル印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等がある。
【0037】
実施の形態では、液体成膜は単一工程で達成されてもよい。「単一工程」という用語は、第1及び第2の両方の誘電性材料を同時に1つの誘電性組成物から液体成膜することを言う。これは、2つの異なる誘電性材料を2つの異なる誘電性組成物から別々に液体成膜する常套の2層の誘電体構造を製造する方法とは異なる。「単一工程」の「工程」は「過程(pass)」という用語とは異なる。実施の形態では、誘電体構造の厚さを増やすために、誘電性組成物の単一工程の成膜時に、これを1過程以上行ってもよい。
【0038】
誘電体構造を製造する際、本方法は、低誘電材料及び高誘電材料の相分離を生じ、2相を備える誘電体構造を形成することを包含する。「生じる」という用語は、液体成膜時、液体が蒸発したときの相分離の自発的発生を含む。「生じる」という用語は、また、液体成膜時及びその後に相分離を促進する外的援助を含む。実施の形態では、相分離は、例えば、熱アニール(熱焼成)や溶媒アニール(溶媒焼成)によって生じる。熱アニールはいずれの好適な温度、例えば、誘電性ポリマーの1つのガラス転移温度又は沸点より高い温度で行われてもよい。熱アニール時間は、特に誘電体の組み合わせに依存して、約1分〜約1日、又は約1分〜1時間で変化してもよい。溶媒アニールは、いずれかの温度、例えば、室温また高温で、成膜された誘電体構造を1以上の溶媒の蒸気に暴露することによって行われてもよい。代表的な溶媒は、例えば、液体成膜についてここで記載される液体から選択されてもよい。溶媒アニール時間は、特に誘電体の組み合わせに依存して、約数秒〜約1週間、又は約1分〜2時間でもよい。
【0039】
「第1相」及び「第2相」での「相」という用語は、化学的組成といった特性が比較的均一な材料のドメインを意味する。したがって、「中間層」という用語は、組成物中に勾配が存在する場合の相分離された誘電体構造における第1相と第2相の間の領域を言う。実施の形態では、誘電体構造は、第1相、任意の中間層、及び第2相の順序を備える。
【0040】
実施の形態では、相分離された誘電体構造の「相分離」の特徴は、第1相と第2相の以下の可能な代表的形態のいずれかによって示される。(1)第1相(層の形態)と第2相(層の形態)の間に中間層(層の形態)が存在する;(2)ある相が他の相の連続的マトリックス中に複数の「ドット」を形成する;(3)ある相が他の相の連続的マトリックス中に複数のロッド形状の要素(例えば、筒状)を形成する;(4)ある相が他の相内に浸透して共連続型ドメインを形成する。実施の形態は、形態(2)、(3)又は(4)であり、(1)ではない。
【0041】
第1相及び第2相の形態に関して、相分離された誘電体構造の「相分離」の特徴は、例えば、以下のような各種分析によって決定されてもよい。誘電体構造の表面及び断面の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)及び原子力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)分析;及び誘電体構造の断面の透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy:TEM)分析。他の機器、例えば、光散乱及びX線(広角及び小角度X線)散乱を用いてもよい。
【0042】
実施の形態では、中間層を含む形態(1)は、界面層を有する常套の2層ゲート誘電体とは異なっており、形態(1)では中間層は勾配のある組成変化を含むのに対して、界面層は不連続な組成変化を含み、勾配のある組成変化を有さない。実施の形態では、中間層は、約10nm〜約50nmの範囲と比較的厚さが厚く、これは典型的に約5nm未満、特に約3nm未満の界面層厚さを有する2層ゲート誘電体に見られるいずれの界面層よりも著しく大きい。
【0043】
実施の形態では、低誘電材料が第1相の大部分を構成し、高誘電材料は第2相の大部分を構成する。同様に、高誘電材料が第1相の一部分であり、低誘電材料は第2相の一部分である。「大部分」という用語は、相分離された誘電体構造の相内の低誘電材料と高誘電材料の全重量の50重量%以上を意味する。「一部分」という用語は、相分離された誘電体構造の相内の低誘電材料と高誘電材料の全重量の50重量%未満を意味する。
【0044】
実施の形態では、低誘電材料は、半導体層と最も近い誘電体構造領域において、高誘電層よりも高濃度である。言い換えれば、第1相は第2相より半導体層に近い。
【0045】
「領域」という用語は、半導体層に最も近い相分離された誘電体構造の(誘電体構造の表面に平行な)薄片、又は薄膜層、薄膜領域を言う。この領域を調査して、低誘電材料及び高誘電性ポリマーの濃度を決定する。実施の形態では、領域は第1相の一部又は全部と、任意に第2相の一部又は全部を含有する。実施の形態では、任意の界面層が相分離された誘電体構造に存在してもよく、領域は界面層を含んでもよく、さらに領域は、第1相の一部又は全部と、任意に第2相の一部又は全部を含むのに十分な厚さを有する。領域は、分析技術で使用できるいずれかの好適な厚さ、例えば、約1nm〜約100nm、又は約5nm〜約100nm、又は特に約5nm〜約50nmを有する。
【0046】
各種方法を用いて、2つの誘電性ポリマーの濃度を決定してもよい。例えば、X線光電子分光法(X−Ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)を用いて、領域中の各原子の濃度を分析してもよい。AFMを用いて異なる相のドメインサイズを決定してもよい。領域断面についてTEMを用いて、異なる相のドメインサイズと異なる誘電性材料の各原子の濃度を決定してもよい。ある実施の形態では、異なる方法を組み合わせて用いてもよい。異なる方法からの結果に著しい違いがある場合には、TEMからの結果が好ましい。
【0047】
「領域」の実施の形態では、低誘電材料は、例えば、約60%〜100%、又は約80%〜100%の範囲の濃度であり、高誘電材料は、約40%〜0%、又は約20%〜0%の範囲の濃度である。濃度は各種因子、例えば、低誘電材料及び高誘電材料の誘電性組成物中での初期の比、誘電性組成物中での誘電性ポリマーの濃度、誘電性ポリマーの混和性、焼成時間及び焼成温度のような処理条件によって制御されてもよい。
【0048】
相分離を達成するために、実施の形態では、低誘電材料及び高誘電材料を、固体状態で非混和又は部分混和するように、意図的に選択する。2つの誘電性ポリマーの混和性(単一相を形成する混合物の能力)はその相互作用パラメータXにより予測してもよい。一般的に言えば、材料は、その材料に近い別の材料と混合する。
【0049】
実施の形態では、相分離された誘電体構造が層を形成する場合には(形態(1))、第1相は、例えば、約1nm〜約500nm、又は約5nm〜約200nm、又は約5nm〜約50nmの厚さを有する。第2相は、例えば、約5nm〜約2μm、又は約10nm〜約500nm、又は約100nm〜約500nmの厚さを有する。誘電体構造は、例えば、約10nm〜約2μm、又は約200nm〜約1μm、又は約300〜約800nmの全体厚さを有する。
【0050】
実施の形態では、相分離された誘電体構造は材料混合物を備える。実施の形態では、相分離された材料混合物は2つの混合物である。他の実施の形態では、相分離された材料混合物は、第3又は第4の誘電性材料を添加した場合には、それぞれ3個の混合物又は4個の混合物である。「混合物」という用語は、2以上のポリマーの存在を示しているにすぎず、低誘電材料と高誘電材料の第1相及び第2相中での濃度又は分布を示すものではない。さらに、本開示の態様は、相分離された材料混合物のゲート誘電体を備える薄膜トランジスタに関する。
【0051】
任意の界面層が半導体層と相分離された誘電体構造の間に存在してもよい。
【0052】
本開示の誘電性組成物はいくつかの利点を有する。まず、この組成物は単一工程の特徴を用いて、異なる誘電性材料の多段階成膜を排除する。第2に、相分離された材料混合物誘電体は、異なるポリマーの利益を組み合わせることで、良好な特性を提供することができる。
【0053】
誘電性組成物を選択された基材と合わせて使用する場合には、さらなる利益が生じる。ロール・ツー・ロール製造では、基材は実質的に柔軟性でなければならない。実施の形態では、基材はプラスチックであり、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)である。基材の厚さは約10μm〜約10mmであってもよく、例示的厚さは約50〜約400μmである。
【0054】
通常、誘電性組成物は、液体/溶媒を除去し、誘電性組成物を硬化するために、熱源、例えば、ホットプレート又はオーブン加熱を用いて硬化される。しかし、再度図面を参照すると、これらの加熱方法は典型的に、誘電性組成物が塗付された時点で基材上に存在する電子デバイス/トランジスタの全ての部品を加熱する。それぞれの部品/層の構成が異なるために、この熱印加は、例えば、基材の劣化につながる。さらに、これらの方法をロール・ツー・ロール処理と統合するのは、特に、比較的長い硬化時間、例えば、10分以上を要する誘電性材料にとっては、典型的に困難である。したがって、硬化時間を減らすことが望ましい。また、基材が受ける処理温度を下げて基材の劣化を防ぐことも望まれる。一般的に硬化時間は、硬化温度を上げることによって短縮することができる。
【0055】
誘電性組成物中に赤外線吸収剤が含まれることによって、硬化時間の低減と基材が受ける処理温度の低減を共に可能にする。これに関して、PETは赤外線を十分に吸収しない。赤外線を、例えば、レーザ又は赤外線ランプによって照射する手法は、ロール・ツー・ロール製造との適合性もあり、誘電性組成物を赤外線に暴露することができる。そして、誘電性組成物を、選択的に加熱することができる。これによって基材温度を比較的低く保持できると共に、誘電性組成物の温度を、組成物を硬化し誘電体層を形成するのに十分高くすることができる。実施の形態では、誘電性組成物を約1秒〜約30分間、例えば、約30秒〜約10分間、又は約1分〜約5分間赤外線に暴露する。他の実施の形態では、照射時間は約μ秒〜約1秒間、例えば、約10μ秒〜約500m秒である。
【0056】
実施の形態では、パルスレーザを用いて誘電性組成物を赤外線に暴露する。パルス長さと放射線周波数を制御することによって、誘電性組成物を選択的に所望どおりに加熱することができる。特に、例えば、高エネルギー出力を有する短パルスレーザでは、誘電性組成物を、例えば、μ秒オーダー〜数m秒の短時間照射する場合、誘電性組成物中に発生する熱は誘電性組成物を架橋するのに十分である。一方、短い照射時間内では、熱が基材へ拡散することがなく、又は基材のごく一部(例えば、基材厚さの10%未満の領域)にしか拡散しない。この熱拡散がないことによって、基材はその寸法安定性を保持することができる。
【0057】
レーザが赤外線吸収剤のλmax(最大吸収波長)と等しい波長を放射するのが最適であるが、実際にはレーザは赤外線吸収剤の吸収ピーク内の波長を放射すればよい。好ましくは、レーザは、赤外線吸収剤が、最大吸収効率の少なくとも5%の吸収効率を達成する波長を放射し、好ましくは、レーザは、赤外線吸収剤が、その最大吸収効率の20%を達成する波長を放射する。他の実施の形態では、他のパルス照射機器、例えば、ノバセントリックスのパルスフォーグ(登録商標)を用いてもよい。
【0058】
特に、赤外線吸収剤を含有する本開示の誘電性組成物によって、最終の誘電体層を赤外線レーザ照射によってパターン化することができる。レーザを所望のサイズに集束させて、所望の最終パターン設計に従って、成膜された誘電性組成物をスキャンしてもよい。照射領域は架橋され、非照射領域は架橋されない。非照射領域の誘電性組成物をある溶媒で除去して、パターン化された誘電体構造(例えば、ホールの周囲に形成された誘電体層)を形成してもよい。
【0059】
所望なら、誘電性組成物を、赤外線以外に、別の熱源を用いて加熱してもよい。
【0060】
誘電性組成物の硬化時に、基材は誘電性組成物より低温である。特定の実施の形態では、基材は室温〜約160℃、例えば、室温〜約120℃、又は室温〜約100℃の温度である。一方、誘電性組成物の温度は、例えば、約100℃〜約300℃、又は約120℃〜約180℃、又は約160℃〜約200℃であってもよい。誘電性組成物の温度と基材の温度との差は、少なくとも20℃、例えば、少なくとも40℃である。
【0061】
赤外線硬化は、また、典型的に共役ポリマー/分子、例えば、ポリチオフェンである有機半導体と適合性がある。このような有機半導体は、赤外線波長に低い吸収を有する又は吸収を有さないので、赤外線に耐性がある。しかし、有機半導体は紫外線(UV)波長に高い吸収を有するので、誘電体層の硬貨にUV波長は使用しない。
【0062】
特定の実施の形態では、誘電体層は、ポリ(メチルシルセスキオキサン)、ポリ(4−ビニルフェノール)、架橋剤、及び赤外線吸収剤を含有する誘電性組成物から形成される。この誘電性組成物をPET基材上に成膜する。
【0063】
<電極について>
【0064】
ゲート電極は、金属薄膜、導電性ポリマーフィルム、導電性インク又はペーストから製造された導電性フィルムであってもよく、又は基材自身がゲート電極、例えば、高濃度ドープシリコンであってもよい。ゲート電極材料の例には、これに限定されないが、アルミニウム、金、クロム、インジウム、酸化錫、導電性ポリマー、例えば、ポリスチレン、スルホネート−ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)、ポリマーバインダにおけるカーボンブラック/グラファイト又はコロイド状銀の分散体から成る導電性インク/ペースト、例えば、ELECTRODAG(登録商標)(アチェソン・コロイズ社から入手可能)がある。ゲート電極層は、金属又は導電性金属酸化物の真空蒸着、スパッタリング、導電性ポリマー溶液又は導電性インクからスピンコーティングによるコーティング、キャスティング又は印刷によって調製されてもよい。ゲート電極層の厚さは、例えば、金属フィルムでは約10〜約200nm、ポリマー導電体では約1〜約10μmの範囲である。
【0065】
ソース及びドレイン電極層は、半導体層に対してオーム接触(オーミック接触)して、低い抵抗値を提供する材料から製造される。ソース及びドレイン電極として使用するのに好適な典型的材料には、ゲート電極材料に使用される材料、例えば、金、ニッケル、アルミニウム、白金、導電性ポリマー及び導電性インクがある。ソース及びドレイン電極の典型的厚さは、例えば、約40nm〜約10μmであり、より特定の厚さは約100〜約400nmである。
【0066】
<半導体層について>
【0067】
有機半導体層として使用するのに好適な材料には、アセン、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、及び置換ペンタセン、ペリレン、フレレン、フタロシアニン、オリゴチオフェン、ポリチオフェン、及びその置換誘導体がある。実施の形態では、有機半導体層は液体処理可能な材料から形成される。
【0068】
半導体層はいずれの好適な手段によって形成されてもよく、これに限定されないが、蒸着、スピンコーティング、溶液キャスティング、ディップコーティング、ステンシル/スクリーン印刷、フレレン、グラビア、オフセット印刷、インクジェット印刷、マイクロコンタクト印刷、これらの方法の組み合わせ等がある。実施の形態では、半導体層は液体成膜法によって形成される。実施の形態では、半導体層は約10nm〜約1μmの厚さを有する。さらなる実施の形態では、有機半導体層は約30〜約150nmの厚さを有する。他の実施の形態では、半導体層は約40〜約100nmの厚さを有する。
【0069】
<ゲート誘電体について>
【0070】
ゲート誘電体の組成及び構造をここで記載する。実施の形態では、誘電体は、赤外線吸収剤を含有する高度に架橋された剛直な層である。いくつかの実施の形態では、誘電体は相分離のない均一層である。他の実施の形態では、誘電体は相分離されたゲート誘電体であり、ゲート誘電体の第1相と第2相は互いに接触する。他の実施の形態では、中間層が第1相と第2相の間に存在する。実施の形態では、ゲート誘電体の第1相は半導体層と接触する。他の実施の形態では、界面層が第1相と半導体層の間に存在する。実施の形態では、ゲート誘電体の第1相と第2相は共に半導体層と接触する。他の実施の形態では、ゲート誘電体の第1相と第2相は共に半導体層と接触し、薄膜トランジスタのチャネル領域(ソース及びドレイン電極間の領域)において、半導体層と第1相間の接触領域(接触面積)は、半導体層と第2相間の接触領域(接触面積)より大きい。
【0071】
ゲート誘電体、ゲート電極、半導体層、ソース電極、及びドレイン電極は、基材上にいずれかの順序で形成される。
【実施例】
【0072】
3ミル(0.003インチ、76.2μm)の厚さを有するPET基材を準備した。アルミニウム薄層はゲート電極として機能した。
【0073】
ポリ(メチルシルセスキオキサン)、ポリ(4−ビニルフェノール)、架橋剤、赤外線吸収剤及び溶媒を含有する誘電性組成物を調製した。0.08gのポリ(4−ビニルフェノール)(アルドリッチ、Mw=25000)を1.0gのn−ブタノールに溶解した。0.08gのメチレート化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(アルドリッチ、n−ブタノール中に84重量%)と、0.12gのポリ(メチルシルセスキオキサン)(n−ブタノール中に26重量%)を混合物に添加した。0.003gの赤外線吸収剤(ADS815EI、アメリカン・ダイ・ソース社)も添加した。0.2μmのシリンジフィルタを通じて濾過した後、誘電性組成物を基材上に2000rpmで60秒間スピンコートした。成膜された誘電性組成物をホットプレートの上に80℃で配置し、その上から5分間赤外線ランプで赤外線を照射して、誘電体層を形成した。誘電体層は完全に架橋して剛直な層を形成したことを確認すると共に、PET基材に劣化は見られなかった。
【0074】
トランジスタを、PQT−12(ポリチオフェン)の半導体層をスピンコーティングし、金を真空蒸着して、ソース及びドレイン電極を形成することによって、完成させた。トランジスタを、キースレイ4200 SCSを用いて、大気条件下で性能評価した。0.07cm2/V・秒の移動度と105のオン/オフ比を測定した。結果は、誘電体層内の赤外線吸収剤の存在及び二重の加熱は、トランジスタの電気性能全体に影響しないことを示していた。
【符号の説明】
【0075】
10,30,50,70 TFT、12,32,52,72 半導体層、14,34,54,74 ゲート誘電体層、16,36,56,76 基材、18,38,78 ゲート電極、20,40,60,80 ソース電極、22,42,62,82 ドレイン電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電性材料、架橋剤、及び赤外線吸収剤を含有する誘電性組成物を基材上に成膜する工程と、
誘電性組成物を赤外線に暴露して誘電性組成物を硬化させ、基材上に誘電体層を形成する工程と、
基材上に半導体層を形成する工程と、
を含む電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
架橋された誘電性材料及び赤外線吸収剤を含有する誘電体層を備える電子デバイス。
【請求項3】
誘電性材料、架橋剤、及び赤外線吸収剤を含有する誘電性組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−233884(P2011−233884A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90611(P2011−90611)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】