説明

薄膜形成装置

【課題】薄膜の屈折率と薄膜に添加される希土類元素の量とを独立して制御して薄膜を形成できる薄膜形成装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る薄膜形成装置は、プラズマ生成室とスパッタリング室とが互いに異なる位置且つ前記基板台上に固定された基板表面を見込める位置で前記成膜室に接続されている。さらに、本発明に係る薄膜形成装置は、薄膜の形成に使用されるプラズマとは別に薄膜に添加される希土類元素のスパッタリングのためのプラズマを発生させている。そのため、両プラズマ間に干渉が無く、薄膜の屈折率に影響のあるプラズマ生成室のプラズマのガス条件とスパッタリングのための電力とを独立して制御でき、薄膜を形成させつつ希土類元素のスパッタリングをすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類元素を取り込みつつ薄膜であるSiO膜又はSiON膜を基板上に形成する薄膜形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信ネットワークでは、波長分割多重(WDM)方式により大容量伝送が可能となっている。WDM方式では、入力される光信号を光のまま増幅できる光増幅器が重要な役割を担っている。光増幅器は異なる波長の光を一括して増幅でき、かつ、ビットレートなどの信号方式に無関係に増幅できる。そのため、従来の光電変換して中継する方式に比べて光増幅器を用いて中継する方式では、中継器を簡単な構成とすることができる。
【0003】
現在、Cバンド(1530〜1565nm)の光増幅器として最も利用されているのが、エルビウム添加光ファイバ(EDF)を内蔵したエルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)である。EDFは石英系光ファイバのコア中心部にエルビウム(Er)を添加したファイバである。半導体レーザーからの光をEDFに結合するとEDF中のEr原子が励起する。Er原子を励起させたEDF中に信号光を入射することで誘導放出が生じ、簡易に信号光を増幅できる。そのため、EDFAは単純な構造で光増幅ができる光増幅器である。しかし、コアとクラッドとの比屈折率差が0.3%程度の石英系光ファイバを用いているため、EDFAで40dB以上の利得を得るためにはEDFの長さが数10〜数100m必要であり、光増幅器の小型化を阻害している。
【0004】
コアとクラッドとの比屈折率差を大きくすれば、光をより小さな領域に閉じ込めてより高いパワー密度の光で励起することが可能になるため、導波路長を短くでき、光増幅器の小型化が可能となる。例えば、コアとクラッドとの比屈折率差の大きな導波路として、シリコン量が過剰な酸化シリコン膜SiOもしくは酸窒化シリコン膜SiONをコアに、酸化シリコンSiOをクラッドに用いた導波路が知られている。
【0005】
導波路型の光増幅器を実現するためには希土類元素が添加されたSiO膜やSiON膜を基板上に安定に形成する技術を必要とする。我々は先に希土類元素を添加したSiON膜を形成する装置として電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタリング法を応用した装置を特許文献1に提案している。
【0006】
図10に特許文献1に記載した従来装置の概略図を示す。従来装置は次のようにして基板上に薄膜を形成する。まず、希土類元素を含むターゲット111が固定された成膜室102の内部に膜形成対象の基板105を固定する。プラズマ生成室101において、導入されたアルゴンガス、酸素ガス及び窒素ガスの供給ガスを基に電子サイクロトロン共鳴法でプラズマを生成し、前記プラズマを発散磁場によりプラズマ引出口115より引き出す。
【0007】
基板105表面にはシリコンソースガスが供給されており、引き出されたプラズマの照射によって基板105表面にSiO膜またはSiON膜を堆積する。同時に、ターゲット111に電力を印加してプラズマ生成室101内で発生させたプラズマ中のイオンをターゲット111に衝突させてスパッタリング現象を起こさせ、ターゲット111から希土類元素を基板105方向に飛び出させて基板105に到達させる。以上の説明のように従来装置は基板表面に希土類元素が添加されたSiO膜またはSiON膜を形成することができる。
【0008】
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【特許文献1】特開2005−307222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
基板上に形成されるSiO膜またはSiON膜の屈折率はプラズマの基となる供給ガスの供給量や比率などのガス条件を変化させることで調節することができる。また、光増幅に影響を及ぼす希土類元素の添加量はターゲットに印加する電力で調節することができる。
【0010】
しかし、従来装置はプラズマ生成室で発生させたプラズマをSiO膜またはSiON膜の形成と希土類元素のスパッタリングとの両方に利用しているため、屈折率などの薄膜の特性と薄膜中の希土類元素の量とを独立して制御できなかった。具体的には、屈折率を変化させようとしてガス条件を変えるとプラズマが変化するためスパッタリングが影響を受け薄膜中の希土類元素の量が変化する。逆に薄膜中の希土類元素の量を変えようとしてターゲットに印加する電力を変化させるとプラズマに影響して薄膜の屈折率が変化する。従って、従来装置には、薄膜の屈折率と薄膜中の希土類元素の量を同時に制御して所望の値にすることが困難であるという課題があった。
【0011】
本発明は、上記の課題を解消するためになされたものであり、薄膜の屈折率と薄膜に添加される希土類元素の量とを独立して制御して薄膜を形成できる薄膜形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明に係る薄膜形成装置は、薄膜を形成するプラズマと別のプラズマにより希土類元素のスパッタリングを行うこととした。
【0013】
具体的には、本発明は、基板が固定される基板台を内蔵する成膜室と、前記成膜室の前記基板台に固定される基板表面を見込める位置にプラズマ引出口を介して前記成膜室に接続され、第一ガス供給手段で酸素、窒素又は希ガスの少なくとも一つの供給ガスが供給されるプラズマ生成室と、前記プラズマ生成室に供給された前記供給ガスに基づくプラズマを前記プラズマ生成室内で発生させる第一プラズマ発生手段と、前記第一プラズマ発生手段で発生させたプラズマを前記プラズマ生成室の前記プラズマ引出口から引き出し、前記成膜室の前記基板台に固定される基板へ向けて供給するプラズマ引き出し手段と、前記プラズマ生成室が接続する位置と異なる位置且つ前記成膜室の前記基板台に固定される基板表面を見込める位置において前記成膜室に接続され、希土類元素を含むターゲットを内蔵するスパッタリング室と、前記スパッタリング室内の前記ターゲット近傍にプラズマを発生させる第二プラズマ発生手段と、前記第二プラズマ発生手段で発生させたプラズマ中のイオンを前記ターゲットへ衝突させるスパッタリング現象で生じた希土類元素の粒子を、前記ターゲットから前記成膜室の前記基板台に固定される基板へ向けて供給するスパッタリング手段と、前記成膜室、前記プラズマ生成室及び前記スパッタリング室を排気する排気手段と、前記成膜室の前記基板台と前記プラズマ生成室の前記プラズマ引出口との間で前記基板台に固定された基板にシリコンソースガスを供給するシリコンソースガス供給手段と、を備える薄膜形成装置である。
【0014】
本発明に係る薄膜形成装置は、前記プラズマ生成室と前記スパッタリング室とが互いに異なる位置且つ前記基板台上に固定された基板表面を見込める位置で前記成膜室に接続されている。さらに、本発明に係る薄膜形成装置は、薄膜の形成に使用されるプラズマとは別に薄膜に添加される希土類元素のスパッタリングのためのプラズマを発生させている。そのため、両プラズマ間に干渉が無く、薄膜の屈折率に影響のあるプラズマのガス条件とスパッタリングのための電力とを独立して制御でき、薄膜を形成させつつ希土類元素のスパッタリングをすることができる。
【0015】
従って、本発明は、薄膜の屈折率と薄膜に添加される希土類元素の量とを独立して制御して薄膜を形成できる薄膜形成装置を提供することができる。
【0016】
また、本発明に係る薄膜形成装置は、前記第一プラズマ発生手段は前記プラズマ生成室に印加される電子サイクロトロン共鳴に合致する強度の磁界による電子サイクロトロン共鳴放電でプラズマを発生し、前記プラズマ引き出し手段は前記プラズマ生成室から前記成膜室の前記基板台へ向けて強度が弱くなる磁界分布の発散磁界を利用してプラズマを引き出し、前記電子サイクロトロン共鳴に合致する強度の磁界及び前記発散磁界を発生させる磁気発生手段をさらに備える。
【0017】
本発明に係る薄膜形成装置は、前記磁気発生手段を備えるため、前記プラズマ生成室を低圧にして電子サイクロトロン共鳴(ECR)を利用してプラズマを発生できる。さらに、前記磁気コイルが発生する前記発散磁界を利用して、発生させたプラズマを効率よく成膜室の基板台に固定された基板表面へ供給することができる。また、成膜室の真空度を高めることで、スパッタリング室からのスパッタリングされた希土類元素の粒子は、成膜室内で他の粒子と衝突することなく基板に到着できる。
【0018】
従って、本発明は、薄膜の屈折率と薄膜に添加される希土類元素の量とを独立して制御でき、且つ成膜室の真空度を高めた状態で希土類元素の粒子を効率よく薄膜に添加することができる薄膜形成装置を提供することができる。
【0019】
本発明に係る薄膜形成装置は、前記スパッタリング室又は前記成膜室の前記基板台と前記プラズマ生成室との間に、前記磁気発生手段が発生させる磁気が前記プラズマ生成室から前記成膜室へ漏れ出すことを抑制する磁場シールド機構をさらに備えることを特徴とする。前記磁場シールド機構を備えることで、前記磁気発生手段からの磁場のうち、プラズマを引き出す発散磁界以外の磁場の漏れ出しを抑制でき、形成される薄膜の膜厚と屈折率の面内均一性を向上させることができる。
【0020】
本発明に係る薄膜形成装置は、前記プラズマ引き出し手段で引き出されたプラズマが前記成膜室の前記基板台に固定される基板へ向けて供給される方向に対する前記成膜室の前記基板台に固定された基板面の傾斜角度を変える基板傾斜手段又は/及び前記成膜室の前記基板台に固定された基板を回転させる基板回転手段をさらに備える。
【0021】
本発明は、薄膜の屈折率と薄膜に添加される希土類元素の量とを独立して制御できる装置を提供することができる。さらに、本発明は、基板台を傾けること又は/及び基板台を回転させることで、薄膜の均一性を向上及び薄膜に添加させる希土類元素の量の均一性を向上させる薄膜形成装置を提供することができる。
【0022】
本発明に係る薄膜形成装置は、前記成膜室の前記基板台に固定された基板面と前記スパッタリング室の前記ターゲットとの距離を変える距離調整手段をさらに備える。
【0023】
ターゲットと基板との距離を変えることでも薄膜に取り込まれる希土類元素の量が変化する。従って、本発明は、薄膜の屈折率と薄膜に添加される希土類元素の量とを独立して制御できる装置を提供することができるとともに、前記ターゲット距離とターゲットに印加する電力とを組み合わせることで薄膜に添加する希土類元素の量の制御範囲を広げることができる。
【0024】
本発明に係る薄膜形成装置は、前記成膜室の前記基板台に固定された基板を加熱する加熱手段をさらに備える。
【0025】
ECRを利用して薄膜であるSiO膜またはSiON膜を堆積すると、薄膜中にO−H結合が含まれる場合がある。O−H結合の伸縮振動の第一倍音が波長1450nm付近にあるため、コアを構成しているSiO膜またはSiON膜中にO−H結合が存在すると、光通信に用いられる1.55μm帯の光を吸収して減衰させることになる。そのため、従来、成膜後にアニール処理を行い、水素原子を脱離させO−H結合を低減させていた。
【0026】
本発明は、前記加熱手段を備えており、前記基板台に固定された基板を加熱しながらSiO膜またはSiON膜を成長させることができる。加熱しながらSiO膜またはSiON膜を成長させることでO−H結合の含有量を低減できる。
【0027】
従って、本発明は、薄膜の屈折率と薄膜に添加される希土類元素の量とを独立して制御できる装置を提供することができるとともに、成膜後のアニール処理の時間を短縮又は省略することができ、製造工程の短縮を図ることができる。
【0028】
本発明に係る薄膜形成装置の前記スパッタリング室に希ガスを供給する第二ガス供給手段をさらに備えることが好ましい。前記ターゲットの元素を効率よくスパッタリングすることができる。
【0029】
本発明に係る薄膜形成装置の前記スパッタリング室と前記成膜室との間に、前記スパッタリング室に供給される希ガスの前記成膜室への流出量を調整するガスコンダクタンス制御手段をさらに備えることが好ましい。前記ガスコンダクタンス制御手段により、前記スパッタリング室の圧力を調節して、前記スパッタリング室内の前記ターゲット近傍に高密度のプラズマを発生できるため、前記ターゲットの元素を効率よくスパッタリングすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ECRプラズマを用いたCVD法によるSiO膜またはSiON膜の堆積時に、別のプラズマによるスパッタリングにより希土類元素を供給するようにし、かつ2つのプラズマが干渉しないようにしたので、SiO膜またはSiON膜の屈折率と添加する希土類元素の量を独立に制御でき、実用的な希土類元素添加の薄膜が容易に形成できるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0032】
(第一の実施形態)
本実施形態は、基板が固定される基板台を内蔵する成膜室と、前記成膜室の前記基板台に固定される基板表面を見込める位置にプラズマ引出口を介して前記成膜室に接続され、第一ガス供給手段で酸素、窒素又は希ガスの少なくとも一つの供給ガスが供給されるプラズマ生成室と、前記プラズマ生成室に供給された前記供給ガスに基づくプラズマを前記プラズマ生成室内で発生させる第一プラズマ発生手段と、前記第一プラズマ発生手段で発生させたプラズマを前記プラズマ生成室の前記プラズマ引出口から引き出し、前記成膜室の前記基板台に固定される基板へ向けて供給するプラズマ引き出し手段と、前記プラズマ生成室が接続する位置と異なる位置且つ前記成膜室の前記基板台に固定される基板表面を見込める位置において前記成膜室に接続され、希土類元素を含むターゲットを内蔵するスパッタリング室と、前記スパッタリング室内の前記ターゲット近傍にプラズマを発生させる第二プラズマ発生手段と、前記第二プラズマ発生手段で発生させたプラズマ中のイオンを前記ターゲットへ衝突させるスパッタリング現象で生じた希土類元素の粒子を、前記ターゲットから前記成膜室の前記基板台に固定される基板へ向けて供給するスパッタリング手段と、前記成膜室、前記プラズマ生成室及び前記スパッタリング室を排気する排気手段と、前記成膜室の前記基板台と前記プラズマ生成室の前記プラズマ引出口との間で前記基板台に固定された基板にシリコンソースガスを供給するシリコンソースガス供給手段と、を備える薄膜形成装置である。
【0033】
本発明に係る薄膜形成装置11の構成図を図1に示す。薄膜形成装置11は、プラズマ生成室101、成膜室102、スパッタリング室103とを備え、排気口133を通じ図示しない真空排気装置により内部が真空排気されるプラズマCVD(PECVD:Plasma Enhanced CVD)装置である。
【0034】
プラズマ生成室101は希ガス(アルゴン、クリプトン又はキセノン)、酸素、窒素の少なくとも1つの供給ガスを導入するための第一ガス供給手段106が設けられている。プラズマ生成室101は供給ガスに基づいてプラズマを発生させる。プラズマを発生させる第一プラズマ発生手段としては、アフターグロー等の公知の手段を利用できる。なお、薄膜形成装置11は第一プラズマ発生手段としてECRを利用している。
【0035】
プラズマ生成室101は石英窓110を介して導波管109と接続し、導波管109はマイクロ波発振器108と接続している。マイクロ波発振器108はマイクロ波(2.45GHz)を発生し、導波管109及び石英窓110を介してプラズマ生成室101にマイクロ波を結合する。
【0036】
プラズマ生成室101の周囲には、磁気コイル(磁界発生手段)114が備えられている。磁気コイル114はプラズマ生成室101の内部にECR条件を満たす磁界強度875Gの磁界を形成する。また、磁気コイル114はプラズマ引き出し手段としてプラズマ生成室101から基板台104に向かって磁場が徐々に弱くなる発散磁界を形成する。
【0037】
成膜室102には、SiO膜あるいはSiON膜が形成される対象となる基板105が固定される基板台104が設けられている。薄膜形成装置11の基板台104には、基板台104から見たプラズマ引出口115の方向と基板105表面の法線との成す傾斜角度を変える基板傾斜手段又は/及び基板105を回転させる基板回転手段が備えられている。前記基板傾斜手段及び前記基板回転手段は薄膜の膜厚均一性及び薄膜内の希土類元素の添加量の均一性を改善するために使われる。基板105として、例えば表面に酸化シリコン膜が形成されているシリコンウエハが例示できる。
【0038】
基板台104とプラズマ引出口115との間にはシリコンソースガス供給手段107が配置されている。図2はシリコンソースガス供給手段107の一例である。シリコンソースガス供給手段107は、図2に示すように、成膜室102の外部に貫通する導入管171と、基板台104の上に配置されるリング状の配管部172と、配管部172に設けられた複数のノズル173とを備えている。導入管171は、図示しないシリコンソースガス供給手段に連通している。
【0039】
また、配管部172の下流にはシャッタ116とスパッタリング室103出口付近にシャッタ117が設置されている。
【0040】
スパッタリング室103は基板105表面を見込む位置に成膜室102に連通して配置され、スパッタリング室103の内部にはターゲット121が設置される。ターゲット121には、第二プラズマ発生手段として高周波電力(RFパワー)を印加する高周波電源122が接続される。ターゲット121は、例えば、エルビウム、ツリウム、ホルミウム、イッテルビウム、ネオジウム、プラセオジウム、ジスプロシウムのいずれかを含むもの、もしくはそれらの希土類元素の酸化物を含むものである。
【0041】
次に、希土類元素が添加されたSiO膜(0<x≦2)の形成を例に、図1及び図2を用いて薄膜形成装置11による薄膜の製造方法について説明する。まず、シャッタ116とシャッタ117を閉じた状態(プラズマ生成室101からのプラズマ及びスパッタリング室103からの希土類元素の粒子が基板105の方向への供給を遮る状態)で、成膜室102及びプラズマ生成室101の内部を所定の圧力(真空度)にまで排気(真空排気)した後、第一ガス供給手段106より供給ガスとして酸素及びアルゴンを導入する。成膜室102の内部の圧力が所定の値になるまで供給ガスを導入する。例えば、成膜室102の内部の圧力は0.1Pa程度とすることができる。
【0042】
次いで、磁気コイル114よりプラズマ生成室101内に875Gの磁界を発生させる。同時に、マイクロ波発振器108より2.45GHzのマイクロ波をプラズマ生成室101内に結合し、ECRによりプラズマを発生させる。
【0043】
ついで、シリコンソースガス供給手段107(ノズル173)より、シリコンソースガスとしてシランガスを導入し、ガスが安定したところでシャッタ116を開く。プラズマ生成室101内で生成されたプラズマは、磁気コイル114により形成される発散磁場によりプラズマ引出口115より引き出され、基板台104の方向に流れるプラズマ流120を形成する。プラズマ流120は、配管部172のリング中央部を通過し、基板台104に到達する。
【0044】
以上のことによりプラズマ生成室101内でプラズマが生成されている状態において、基板105の表面で、供給されているシリコンソースガス供給手段107(ノズル173)より導入されたシランガスとプラズマ引出口115からのプラズマ中の酸素イオンとが反応し、基板105の上にSiOが堆積されるようになる。
【0045】
次に、SiO膜に希土類元素を添加する方法について説明する。希土類元素添加する場合は上述のSiO膜の堆積中に、スパッタリング室103のターゲット121に高周波電源122より13.56MHzのRFパワーを印加することで、ターゲット121近傍にマグネトロン放電によりプラズマを発生させる。一般的にマグネトロン放電は安定に放電を維持するためには数Pa程度以上の圧力を必要とするものであり、0.1Pa程度の本成膜条件では安定に放電しない。しかし、本装置ではプラズマ生成室101から成膜室102に供給されたプラズマ引出口115からのプラズマ中のイオン、電子がスパッタリング室103内に入り、プラズマ発生に寄与するため、スパッタリング室103内では低圧力にかかわらずRFパワーの印加でプラズマが発生し且つ該プラズマが安定に維持される。さらに、前記プラズマ中のアルゴンイオンを希土類元素ターゲット121の表面に引き寄せてスパッタリングを行う。
【0046】
スパッタリングによりターゲット121の表面より希土類元素の粒子が飛び出す。シャッタ117を開くことで図1に示すように、イオン引出口125から基板105表面に希土類元素の粒子123が到達する。図1に示すように、希土類元素の粒子123はプラズマ流120と異なる方向から基板105に到達する。また、マグネトロン放電によるプラズマ中の酸素でターゲット121の表面が一部酸化されるため、希土類元素だけでなくその酸化物も希土類元素の粒子123とともに基板105表面に到達する。
【0047】
前述したように、基板105の表面では、シランガスと酸素イオンとが反応したSiOが堆積中であり、スパッタリング室103からの希土類元素及びこの酸化物が堆積中のSiOの中に取り込まれる。従って、基板105の表面に希土類元素が添加されたSiO膜が形成される。
【0048】
マグネトロンプラズマによるスパッタリングをECRプラズマと合わせて使用する薄膜形成装置11は、0.1Pa程度の低い圧力でマグネトロンプラズマが安定に維持できスパッタリングできるためスパッタリングされた粒子を飛行中に他の粒子と衝突することなく基板に到着させることができる。従って、薄膜形成装置11は効率的にSiO膜の中に希土類元素の粒子を添加することができる。
【0049】
なお、ターゲット121がエルビウムから構成されたものであれば、エルビウムが添加されたSiO膜が形成される。また、ターゲット121が、ツリウムから構成されたものであれば、ツリウムが添加されたSiO膜が形成され、ホルミウムから構成されたものであれば、ホルミウムが添加されたSiO膜が形成され、イッテルビウムから構成されたものであれば、イッテルビウムが添加されたSiO膜が形成され、ネオジウムから構成されたものであれば、ネオジウムが添加されたSiO膜が形成され、プラセオジウムから構成されたものであれば、プラセオジウムが添加されたSiO膜が形成され、ジスプロシウムから構成されたものであれば、ジスプロシウムが添加されたSiO膜が形成される。
【0050】
薄膜形成装置11で得られるSiO膜の屈折率はシランガス供給の流量に対する酸素ガスの供給流量の比で変化する。シランガス供給の流量とSiO膜の屈折率との関係を測定するため、薄膜形成装置11で基板105上にエルビウム添加のSiO膜を形成した。エルビウム添加のSiO膜の形成条件は次の通りである。エルビウムが含まれるターゲット121をスパッタリング室103に設置し、ターゲット121に印加するRFパワーを200Wで一定とした。第一ガス供給手段106から酸素15sccm及びアルゴン35sccmを導入し、マイクロ波パワー500Wを入射してプラズマを生成した。パラメータとしてシリコンソースガス供給手段107からのシランガスの流量を12sccmから14sccmまで変化させている。
【0051】
以上の条件で形成したエルビウム添加のSiO膜の屈折率を波長632nmの光を用いたエリプソメータで測定した。シランガス供給の流量とエルビウム添加のSiO膜の屈折率との関係を測定した結果を図5に示す。シランガス供給の流量を制御することで光増幅器における導波路のコアとして要求される屈折率(たとえば1.50〜1.60)のSiO膜を形成できる。なお、シランガス供給の流量を変化させてもSiO膜に添加される希土類元素(エルビウム)の量はほとんど変化しないことを確認した。
【0052】
一方、薄膜形成装置11で形成されるSiO膜の希土類元素の添加濃度は、アルゴンガスの供給流量又はターゲット121に対して印加するRFパワーで変化する。RFパワーとSiO膜の希土類元素の添加濃度との関係を測定するため、基板105上にエルビウム添加のSiO膜を形成した。エルビウム添加のSiO膜の形成条件は次の通りである。第一ガス供給手段106から酸素15sccm及びアルゴン35sccmを導入し、シリコンソースガス供給手段107からのシランガスを12.5sccmの流量で導入し、マイクロ波パワー500Wを入射してプラズマを生成した。エルビウムが含まれるターゲット121をスパッタリング室103に設置し、RFパワーを150Wから230Wまで変化させている。
【0053】
以上の条件で形成した膜厚2μmのSiO膜のエルビウム濃度を測定した結果を図6に示す。測定結果のエルビウム量は、イオン注入法で形成されエルビウム量が既知のSiO膜を基準としてSIMS分析により絶対値が見積もられている。図6よりRFパワーを150〜230Wの範囲で制御することで、光増幅器における導波路のコアとして要求される1×1019〜20atoms/cm程度のエルビウム量のSiO膜を形成できる。なお、RFパワーを変動させても形成されるSiO膜の屈折率は1.525で一定であった。
【0054】
以上のように、薄膜形成装置11でSiO膜を形成すれば、SiO膜の屈折率とSiO膜に添加される希土類元素量を独立に制御が可能である。そのため、薄膜形成装置11は、所望の屈折率且つ所望の量の希土類元素を含むSiO膜を形成できる。従って、SiO膜をコア、SiOをクラッドとした導波路において、コアとクラッドとの比屈折率差の大きくすることができ、前記導波路の小型化及び前記導波路を利用する光増幅器の小型化を図ることができる。
【0055】
(第二の実施形態)
本実施形態に係る薄膜形成装置は、前記成膜室の前記基板台に固定された基板面と前記スパッタリング室の前記ターゲットとの距離を変える距離調整手段をさらに備える。
【0056】
本発明に係る薄膜形成装置13の構成図を図3に示す。図1の薄膜形成装置11と薄膜形成装置13との違いは、スパッタリング室103内に距離調整手段321をさらに備えていることである。
【0057】
距離調整手段321は、成膜室102の基板台104に固定された基板105の表面とスパッタリング室103のターゲット121との距離を変えることができる。距離調整手段321がターゲット121と基板105との距離を短くすれば、基板105に供給される希土類元素量が増加する。逆に当該距離を長くすれば基板105に供給される希土類元素量が減少する。すなわち、距離調整手段321でターゲット121と基板105との距離を制御することで基板105表面に形成される薄膜中に取り込まれる希土類元素の量を制御することができる。
【0058】
従って、薄膜形成装置13は距離調整手段321を備えたことで図1の薄膜形成装置11で説明した効果に加え、ターゲット121の位置とRFパワーとを組み合わせることで薄膜に添加される希土類元素の量の制御範囲をさらに拡大できるという効果がある。
【0059】
(第三の実施形態)
本実施形態に係る薄膜形成装置は、前記成膜室の前記基板台に固定された基板を加熱する加熱手段をさらに備える。
【0060】
本発明に係る薄膜形成装置14の構成図を図4に示す。図1の薄膜形成装置11と薄膜形成装置14との違いは、基板台104の内部に加熱手段としてヒータ405をさらに備えていることである。
【0061】
ヒータ405は、基板105を裏面から加熱して基板105の表面に形成されているSiO膜を効率的に加熱することが可能である。また、SiO膜の形成中に基板105を加熱してもよい。SiO膜形成後又はSiO膜形成中に加熱することでSiO膜中に取り込まれる水素の量を低減でき、O−H結合の少ない希土類元素添加SiO膜が形成できる。
【0062】
SiO膜の形成中、プラズマ引出口115からのプラズマを照射することによって基板105表面は200℃程度上昇するため、ヒータ405で予め300℃程度に基板105を加熱しておくことが好ましい。SiO膜中に添加されたErを活性化するため、加熱しながらSiO膜を形成する。このように処理するとSiO膜形成後のアニール処理を省略あるいはアニール処理の処理時間を短くできる。なお、ヒータ405ではなく、他の手段を利用して基板105を加熱してもよい。
【0063】
(第四の実施形態)
本実施形態の薄膜形成装置は、前記スパッタリング室に希ガスを供給する第二ガス供給手段をさらに備える。
【0064】
本実施形態の薄膜形成装置15の構成図を図7に示す。図1の薄膜形成装置11と薄膜形成装置15との違いは、プラズマ生成室101への供給とは別にスパッタリング室103に直接希ガス(アルゴン、クリプトン又はキセノン)を導入するガス導入口をもつ第二ガス供給手段706をさらに備えていることである。
【0065】
スパッタリング室103で適度のエネルギーを持ったイオン、特に希ガスイオンがターゲットに照射されると効率よくターゲット元素がスパッタリングされる。第一から三の実施形態では、第一ガス供給手段106からプラズマ生成室101に導入したアルゴンガスのうち、スパッタリング室103まで拡散したアルゴンガスで希土類元素をスパッタリングしている。薄膜形成装置15では、希ガスとしてアルゴンガスを第二ガス供給手段706からスパッタリング室103に直接導入する。
【0066】
SiO膜形成に必要な酸素及びシランガスは、第一から三の実施形態と同様に第一ガス供給手段106及びシリコンソースガス供給手段107からそれぞれ供給する。スパッタリング室103にアルゴンガスを直接供給するとスパッタリング室103内のアルゴンガスの分圧が高くなる。スパッタリング室103内のプラズマはアルゴンプラズマに近くなる。従って、ターゲット121に入射するアルゴンイオンの数が増えスパッタリング効率が上がる。さらにスパッタリングを阻害する成膜ガスの酸素、シランガスの分圧が下がることもスパッタリング効率の増加に効果をもたらす。よって基板105上に形成されるSiO膜にさらに効率よくErをドープすることができる。その結果、スパッタリング室103内のプラズマを発生させるためのRFパワーを下げることも可能になる。
【0067】
一方、希ガスを第二ガス供給手段706からスパッタリング室103に直接導入する場合、スパッタリング室103と成膜室102との間に、スパッタリング室103に供給される希ガスの成膜室102への流出量を調整するガスコンダクタンス制御手段をさらに備えることが好ましい。
【0068】
ガスコンダクタンス制御手段は、例えば、イオン引出口125の大きさとすることができる。イオン引出口125の大きさを変えることでスパッタリング効率を調整できる。例えば、イオン引出口125を少し小さくするとスパッタリング室103の圧力を成膜室102及びプラズマ生成室101よりも高くできる。その結果スパッタリング室103でのマグネトロン放電により高密度のアルゴンプラズマが生成されるので効率よいスパッタリングを起こすことが可能になる。具体的には、プラズマ生成室101でのECR放電は0.1Pa程度の低ガス圧がプラズマ生成に適しているが、スパッタリング室103でのマグネトロン放電は1Pa以上のガス圧がプラズマ生成に適している。そのため、第二ガス供給手段706を備え、イオン引出口125の大きさを調整することで2つのプラズマが安定に放電する条件を作ることができる。ガスコンダクタンス制御手段は、イオン引出口125を覆うメッシュとしてもよい。その目の細かさを変えることでプラズマ生成室101とスパッタリング室103との圧力差を作ることができる。
【0069】
薄膜形成装置15を用い、基板105として熱酸化膜の付いたSi基板上に約2μm厚のEr添加SiO膜を形成した。このSiO膜の添加Er量の深さ方向の分布をSIMS分析で評価した結果を図8に示す。1020atom/cmの密度でErを2μm厚のSiO膜にほぼ均一に添加できた。
【0070】
アルゴンガスをスパッタリング室103に直接導入しない場合、成膜条件によっては、成膜開始時には効率よくスパッタされErが十分膜中に添加されるがスパッタを阻害する酸素、シランガスも同時にターゲットに入射してしまうことで成膜中に徐々にスパッタ効率が下がり添加されるEr量が膜の上部ほど少なくなる傾向が生ずる。一方、薄膜形成装置15では図8のように膜厚方向にEr量の変化が少ない均一なSiO膜を形成することができた。
【0071】
(第五の実施形態)
本実施形態の薄膜形成装置は、前記スパッタリング室又は前記成膜室の前記基板台と前記プラズマ生成室との間に、前記磁気発生手段が発生させる磁気が前記プラズマ生成室から前記成膜室へ漏れ出すことを抑制する磁場シールド機構をさらに備える。
【0072】
本実施形態の薄膜形成装置16の構成図を図9に示す。図1の薄膜形成装置11と薄膜形成装置16との違いは、薄膜形成装置16が磁気シールド機構としてプラズマ生成室101と基板台105との間にECRのための磁気コイル114が作る磁場の漏れを抑制する磁気シールド板905をさらに備えていることである。具体的には、磁気シールド板905は、成膜室102の内壁のうち、プラズマ引出口115をもつ内壁の全面を覆うように密着させて設置される。また、磁気シールド板905は、プラズマ流120が通過できるようにプラズマ引出口115の位置に同径またはそれよりやや大きい孔を有する。磁気シールド板905は、磁場を遮断する効果をもつ金属たとえば鉄の板を加工して作られている。
【0073】
磁気シールド板905は、ECRのための磁気コイル114が作る磁場のうち、プラズマ流120を引き出す発散磁界以外の磁場の漏れ出しを抑制する。その結果、成膜室102内でプラズマ流120は発散磁界以外の磁場からの影響が低減され、基板105上に形成されるEr添加のSiO膜の膜厚と屈折率の面内均一性をさらに向上させることができる。
【0074】
また、磁気シールド板905は、ECRのための磁気コイル114が作るプラズマ生成室101の磁場とマグネトロン放電によるスパッタリング室103の磁場との干渉を抑制することができる。その結果、成膜室102内のプラズマ流120はマグネトロン放電による磁場の影響が低減され、基板上に形成されるEr添加のSiO膜の膜厚と屈折率の面内均一性をさらに向上させることができる。
【0075】
薄膜形成装置16で実際に形成したSiO膜のエリプソメータで評価したところ、磁気シールド板905を設置することで膜厚分布の均一性を±5%から±2%に改善できることが確認された。
【0076】
第一から第五の実施形態までSiO膜を例に説明したが、供給ガスとして酸素とアルゴンだけでなく窒素を加えれば、屈折率と希土類元素添加量を独立に制御しつつ、希土類元素添加SiON膜を形成できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の薄膜形成装置は、供給ガスを選択することでSiO膜やSiON膜以外の薄膜形成にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係る薄膜形成装置の一の構成を示す構成図である。
【図2】本発明に係る薄膜形成装置に使用されるシリコンソースガス供給手段の平面図である。
【図3】本発明に係る薄膜形成装置の他の構成を示す構成図である。
【図4】本発明に係る薄膜形成装置の他の構成を示す構成図である。
【図5】本発明に係る薄膜形成装置を用いて成膜したエルビウム添加SiO膜の屈折率を評価した結果である。
【図6】本発明に係る薄膜形成装置を用いて成膜したエルビウム添加SiO膜のエルビウム添加量を評価した結果である。
【図7】本発明に係る薄膜形成装置の他の構成を示す構成図である。
【図8】本発明に係る薄膜形成装置で成膜したエルビウム添加SiO膜の深さ方向のエルビウム添加量を評価した結果である。
【図9】本発明に係る薄膜形成装置の他の構成を示す構成図である。
【図10】従来の薄膜形成装置の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0079】
11、13、14、15、16 薄膜形成装置
101 プラズマ生成室
102 成膜室
103 スパッタリング室
104 基板台
105 基板
106 第一ガス供給手段
107 シリコンソースガス供給手段
108 マイクロ波発振器
109 導波管
110 石英窓
114 磁気コイル(磁気発生手段)
115 プラズマ引出口
116、117 シャッタ
120 プラズマ流
111、121 ターゲット
122 高周波電源
123 希土類元素の粒子
125 イオン引出口
133 排気口
171 導入管
172 配管部
173 ノズル
321 距離調整手段
706 第二ガス供給手段
405 ヒータ
905 磁気シールド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が固定される基板台を内蔵する成膜室と、
前記成膜室の前記基板台に固定される基板表面を見込める位置にプラズマ引出口を介して前記成膜室に接続され、第一ガス供給手段で酸素、窒素又は希ガスの少なくとも一つの供給ガスが供給されるプラズマ生成室と、
前記プラズマ生成室に供給された前記供給ガスに基づくプラズマを前記プラズマ生成室内で発生させる第一プラズマ発生手段と、
前記第一プラズマ発生手段で発生させたプラズマを前記プラズマ生成室の前記プラズマ引出口から引き出し、前記成膜室の前記基板台に固定される基板へ向けて供給するプラズマ引き出し手段と、
前記プラズマ生成室が接続する位置と異なる位置且つ前記成膜室の前記基板台に固定される基板表面を見込める位置で前記成膜室に接続され、希土類元素を含むターゲットを内蔵するスパッタリング室と、
前記スパッタリング室内の前記ターゲット近傍にプラズマを発生させる第二プラズマ発生手段と、
前記第二プラズマ発生手段で発生させたプラズマ中のイオンを前記ターゲットへ衝突させるスパッタリング現象で生じた希土類元素の粒子を、前記ターゲットから前記成膜室の前記基板台に固定される基板へ向けて供給するスパッタリング手段と、
前記成膜室、前記プラズマ生成室及び前記スパッタリング室を排気する排気手段と、
前記成膜室の前記基板台と前記プラズマ生成室の前記プラズマ引出口との間で前記基板台に固定された基板にシリコンソースガスを供給するシリコンソースガス供給手段と、
を備える薄膜形成装置。
【請求項2】
前記第一プラズマ発生手段は前記プラズマ生成室に印加される電子サイクロトロン共鳴に合致する強度の磁界による電子サイクロトロン共鳴放電でプラズマを発生し、
前記プラズマ引き出し手段は前記プラズマ生成室から前記成膜室の前記基板台へ向けて強度が弱くなる磁界分布の発散磁界を利用してプラズマを引き出し、
前記電子サイクロトロン共鳴に合致する強度の磁界及び前記発散磁界を発生させる磁気発生手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記スパッタリング室又は前記成膜室の前記基板台と前記プラズマ生成室との間に、前記磁気発生手段が発生させる磁気が前記プラズマ生成室から前記成膜室へ漏れ出すことを抑制する磁場シールド機構をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
前記プラズマ引き出し手段で引き出されたプラズマが前記成膜室の前記基板台に固定される基板へ向けて供給される方向に対する前記成膜室の前記基板台に固定された基板面の傾斜角度を変える基板傾斜手段又は/及び前記成膜室の前記基板台に固定された基板を回転させる基板回転手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から3に記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
前記成膜室の前記基板台に固定された基板面と前記スパッタリング室の前記ターゲットとの距離を変える距離調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から4に記載のいずれかの薄膜形成装置。
【請求項6】
前記成膜室の前記基板台に固定された基板を加熱する加熱手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から5に記載のいずれかの薄膜形成装置。
【請求項7】
前記スパッタリング室に希ガスを供給する第二ガス供給手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から6に記載のいずれかの薄膜形成装置。
【請求項8】
前記スパッタリング室と前記成膜室との間に、前記スパッタリング室に供給される希ガスの前記成膜室への流出量を調整するガスコンダクタンス制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の薄膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−19506(P2008−19506A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152424(P2007−152424)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】