薄膜形成装置
【課題】シートフィルムなどの担持体に形成された薄膜材料を基板に転写することで基板に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、薄膜形成のために必要な真空度が得られ、しかもメンテナンス性に優れた装置を提供する。
【解決手段】上側ブロックと下側ブロックとの間で、薄膜を形成されたシートフィルムと基板とを挟み込んで薄膜を基板に転写させる薄膜形成装置である。上側ブロックを装着される上板11と下側ブロックを装着される底板19とが、アングル101により組まれたフレーム10により結合される。その側面の開口部に、パネル状の前板13、側板14および裏板16がシール部材138、148および168を介して取り付けられて処理チャンバ1が構成される。
【解決手段】上側ブロックと下側ブロックとの間で、薄膜を形成されたシートフィルムと基板とを挟み込んで薄膜を基板に転写させる薄膜形成装置である。上側ブロックを装着される上板11と下側ブロックを装着される底板19とが、アングル101により組まれたフレーム10により結合される。その側面の開口部に、パネル状の前板13、側板14および裏板16がシール部材138、148および168を介して取り付けられて処理チャンバ1が構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に薄膜を形成する薄膜形成装置に関するものである。なお、薄膜が形成される基板としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや液晶表示用ガラス基板などの基板の表面に薄膜を形成する技術として、近年、シートフィルム上に形成した薄膜を基板表面に加圧転写するものが提案されている。例えば、特許文献1に記載の技術においては、真空容器内で、上プレートに保持した基板に、下プレートに保持した薄膜材料を塗布されたシートフィルムとを密着させて加圧することにより、基板表面に薄膜材料を転写させている。
【0003】
真空容器の構造について特許文献1には具体的な記載がないが、この種の基板処理装置において用いられる真空処理容器の構造は、金属ブロックから削り出したハウジングに機構部品を取り付けるための取り付け孔や資材を出し入れするための窓を設けたものが一般的である。このような構造の真空容器では、気密性を確保するために、ハウジングに設けられる開口部ができるだけ少なく、また小さくなるように構成される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−186292号公報(例えば、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された装置のように、基板とシートフィルムとを重ね合わせて加圧することで薄膜を基板に転写する薄膜形成装置において要求される真空度は例えば数Pa程度であり、これは基板処理装置の真空処理容器において要求される一般的な真空度と比べると低度のものである。その一方、この種の薄膜形成装置では、基板とシートフィルムとを挟む上下プレートの平行度を確保することが重要となっており、そのために位置調整等のメンテナンスを容易に行えることが要求されている。
【0006】
このように、薄膜形成装置においては、真空容器に対して求められる性能が他の装置とは異なっているにもかかわらず、処理チャンバの構造まで含めた薄膜形成装置の構成については、これまであまり検討されてこなかった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、例えばシートフィルムのような担持体に形成された薄膜材料を基板に転写することで基板に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、薄膜形成のために必要な真空度が得られ、しかもメンテナンス性に優れた装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる薄膜形成装置は、上記目的を達成するため、離当接可能に構成された上側ブロックと下側ブロックとの間に、表面に薄膜を形成された担持体と基板とを挟み込むことにより、前記薄膜を前記基板表面に転写させる転写ユニットと、前記上側ブロックおよび前記下側ブロックを内部に収容する処理チャンバとを備え、前記処理チャンバは、前記上側ブロックを支持する上側プレート部と、前記下側ブロックを支持する下側プレート部とを側面に開口を有する連結部によって連結した構造を有するチャンバ主部と、前記チャンバ主部に対し着脱自在に構成され、シール部材を介して前記連結部の前記開口を塞ぐように装着される側面パネル部材とを備えることを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、転写ユニットを収容した処理チャンバの側面に着脱自在の側面パネル部材を設けている。そのため、側面パネル部材を取り外すことによって転写ユニットを露出させることができるので、メンテナンス性に優れている。その一方、転写ユニットの上側ブロックを支持する上側プレート部と、転写ユニットの下側ブロックを支持する下側プレート部とについては、両者を連結する連結部によりチャンバ主部として一体化している。そのため、基板および薄膜の担持体を挟み込んで均一に加圧するために高い平行度が要求される転写ユニットの上側および下側ブロックの相対的な位置関係を変化させることなく、側面パネル部材の着脱を行うことができる。また、処理チャンバの一部を着脱自在とすることにより気密性の低下が問題となり得るが、この種の薄膜形成装置に必要な数Pa程度の真空度を達成可能であることが本願発明者らの実験により確認されている。
【0010】
なお、チャンバ主部を構成する上側プレート部、下側プレート部および連結部については、削り出し、鋳造等により初めから一体のものとして形成されてもよく、またそれぞれ個別に作成された部品を溶接、接着、ネジ止め等により互いに組み付けることによって一体化されたものであってもよい。
【0011】
この装置においては、前記チャンバ主部は、前記上側プレート部と前記下側プレート部との間を前記連結部としての複数の柱状部材によって連結した構造を有するようにしてもよい。このようにすると、上側プレート、下側プレートおよび柱状部材により囲まれた大きな開口を設けることができ、よりメンテナンス性を向上させることができる。
【0012】
この場合、さらに、前記複数の柱状部材は梁部材によって連結されて該梁部材とともに一体的に前記連結部としての枠体を構成しており、前記梁部材と前記柱状部材とにより囲まれて前記開口が形成されるとともに、前記枠体に前記上側プレート部と前記下側プレート部とがそれぞれ取り付けられて前記チャンバ主部を構成してもよい。このように、一体化された枠体に上側プレート部と下側プレート部とを取り付けることにより、上側プレート部および下側プレート部にそれぞれ取り付けられる転写ユニットの上側ブロックと下側ブロックとの位置決め精度を向上させることができる。
【0013】
また、開閉自在の扉を有する前記側面パネル部材を備えてもよい。こうすることで、基板の出し入れ等の頻繁に行う簡単な操作については扉を介して行うことができるようになる。側面パネル部材を複数備える場合においては、扉はそれらの一部のみに設けられてもよい。
【0014】
また、排気口を穿設された前記側面パネル部材と、前記排気口を介して前記処理チャンバ内を減圧する減圧手段とを備えてもよい。こうすることで、処理チャンバ内を所望の真空度まで減圧することができる。また、減圧手段に接続される排気口を側面パネル部材に設けることによって、排気口を穿設するための加工が容易となり、また処理チャンバの設計自由度が高くなる。
【0015】
また、前記上側ブロックと前記下側ブロックとを離当接させるための駆動機構を備え、該駆動機構が前記上側プレート部および前記下側プレート部の少なくとも一方に取り付けられてもよい。本発明の処理チャンバにおいては、上側プレート部と下側プレート部との間の位置関係が固定されているため、これらの一方または両方に駆動機構を取り付けて上側ブロックおよび/または下側ブロックを駆動することにより、上側ブロックと下側ブロックとを優れた位置精度で離当接させることができる。この場合において、上側ブロックを駆動するための駆動機構については上側プレート部に、下側ブロックを駆動するための駆動機構については下側プレート部に取り付けることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、薄膜形成装置を構成し転写ユニットを内部に収容する処理チャンバの側面を、チャンバ主部に対して着脱自在の側面パネル部材により構成している。そのため、側面パネル部材を取り外すことによって転写ユニットを露出させることができ、メンテナンス性に優れている。また、側面パネル部材の着脱を行っても、基板および担持体を挟み込んで均一に加圧するために高い平行度が要求される転写ユニットの上側および下側ブロックの相対的な位置関係を変化させることがない。また、真空度については、この種の薄膜形成装置に必要とされる数Pa程度の真空度を達成可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1はこの発明にかかる薄膜形成装置の一実施形態を示す図である。この薄膜形成装置は、半導体ウエハなどの基板の表面に例えばSOG(Spin-On-Glass)などの薄膜を形成するための装置である。この装置では、処理チャンバ1の内部に形成される処理空間内に後述する転写ユニットが設置されており、基板表面への薄膜形成は、減圧された処理空間内でこの転写ユニットにより行われる。最初に処理チャンバ1の構成について説明する。説明の便宜上、図1に示すようにX、Y、Zの各方向を定義する。
【0018】
図2および図3は処理チャンバの構造を示す分解斜視図である。処理チャンバ1では、図2に示すように、例えばステンレス製で断面L字形状のアングル101を組み合わせて各辺を構成された直方体形状のフレーム10の上部に、例えばステンレス製の上板11が固着されている。各辺を構成するアングル101同士の継ぎ目、およびフレーム10と上板11との間は例えば溶接により隙間のないように接合されている。また溶接後のアングル101同士の継ぎ目の外面は研磨により平滑に仕上げられている。
【0019】
フレーム10を構成するアングル101のうち側面に当たる部分には、後述する側板等を取り付けるために、複数の雄ネジ102が外側に向けて立設されている。一方、フレーム10の底部となる面には、底板19と締結するネジを挿通するための複数の貫通孔103が穿設されている。上板11には、後述する転写ユニットやその他の部品を取り付けるための複数の取り付け孔や切り欠き等の加工がなされている。
【0020】
こうして上板11と一体化されたフレーム10は、上面が略水平面となるよう装置フレーム99(図1)に取り付けられた底板19上に、弾性を有する例えばシリコーンゴム製のシール部材198を挟んで載置される。底板19にはネジ孔195がフレーム10の貫通孔103に対応して設けられており、フレーム10の貫通孔103に挿通された複数のネジ199によりフレーム10と底板19とが締結される。なお、底板19のネジ孔195は側面にネジ溝が螺刻されているが、底板19の下面まで貫通していない。このため、底板19に対するフレーム10の取り付けや取り外し作業を上部側から行うことができるとともに、ネジ孔195を介した空気漏れが防止される。また、底板19には、後述する転写ユニットの支持軸を挿通するための貫通孔191や該ユニットを取り付けるためのネジ孔等が穿設されている。
【0021】
こうして、上板11、フレーム10および底板19が一体化される。以下の説明では、上板11、フレーム10および底板19を上記のように一体化してなる組立体を「チャンバ主部」と称する。ここまでの状態では、直方体形状のフレーム10のうち上面、下面がそれぞれ上板11、底板19によって塞がれ、これらを除く他の4面が大きく開口した状態となっている。言い換えると、底板19から直立する4本の柱(アングル101)によって上板11がその四隅で底板19と平行に支持されている。さらに見方を変えると、アングル101を梁および柱として組まれた直方体のフレーム10の上下に、上板11と底板19とをそれぞれ取り付けた構造となっているとも言える。
【0022】
こうして一体化されたチャンバ主部の4つの側面に対し、図3に示すように、それぞれが例えばステンレス板により形成された側面パネル部材としての前板13、一対の側板14および裏板16がそれぞれシール部材138、148、168を挟んで装着される。なお、図3では一対の側板14のうち1枚のみを示し他方を省略しているが、図示した側板14と同一構造のもう1枚の側板がフレーム10の他の一面に装着される。
【0023】
前板13には、後述する転写ユニットに対し基板をY方向に出し入れするための開口部134が設けられており、この開口部134に対し開閉自在の扉131が取り付けられている。扉131の周縁部にはパッキン132が取り付けられる一方、前板13の開口部134近傍にはロック機構133が設けられており、扉131が閉じた状態で扉131と前板13との隙間からの空気漏れが防止されている。また、前板13の周縁部には複数の貫通孔135が穿設されており、フレーム10に立設された雄ネジ102がシール部材138を介してこの貫通孔135に挿通され、雌ネジ139によって前板13がフレーム10の前面に固定される。フレーム10に雄ネジ102を立設しておき、前板13の上から雌ネジ139によって固定する構造とすることで、ネジ孔周辺からの空気漏れを防止することができる。
【0024】
同様に、側板14もシール部材148を挟んでフレーム10に取り付けられ、雌ネジ149によってフレーム10の側面に固定される。また、裏板16も同様に、シール部材168を挟んでフレーム10の後面に雌ネジ169によって固定されている。裏板16には、後述する排気管を取り付けるための排気口161やリークバルブ等他の部品を装着するための貫通孔が設けられている。
【0025】
このように、この実施形態では、装置フレーム99上に設置された底板19に対し上板11と一体化されたフレーム10が取り付けられることによってチャンバ主部が形成され、さらにチャンバ主部の開口した4つの側面に前板13、側板14および裏板16がそれぞれ装着されることで処理チャンバ1が構成され、該チャンバ内に処理空間SPが形成される。こうして形成された処理空間SP内に、以下に説明する転写ユニットが設置される。
【0026】
図4はこの発明にかかる薄膜形成装置の転写ユニットの構成を示す図である。この転写ユニットは、処理チャンバ1を構成する上板11に固定された上側ブロック3と、底板19に固定された下側ブロック5とを備えており、薄膜形成対象である基板Wと、薄膜材料を塗布された担持体としてのシートフィルムFとを上下ブロック3、5で挟み込むことにより、シートフィルムF上の薄膜を基板Wに転写する。なお、薄膜の担持体としては、シートフィルムに代えて例えば石英板を用いてもよい。
【0027】
なお、以下の説明において、各構成要素に付した符号が「3」から始まるものは当該要素が上側ブロック3を構成するものであることを意味する一方、「5」から始まるものは当該要素が下側ブロック5を構成するものであることを意味するものとする。
【0028】
処理空間SP内は、排気管951を介して処理チャンバ1と接続された真空ポンプ95によって真空排気可能になっている。この真空ポンプ95は装置全体を制御する制御ユニット91に制御されており、制御ユニット91からの動作指令に応じて作動して処理空間SP内を排気減圧することができるようになっている。また、制御ユニット91は真空ポンプ95による処理空間SPからの排気量を調整し、処理空間SP内の圧力(真空度)を制御可能となっている。これにより、薄膜の乾燥状態をコントロールしながら該薄膜を基板Wに転写することができる。処理空間SP内の圧力は、薄膜の種類等に応じて大気圧から数Paまでの範囲内の所定の圧力に設定される。
【0029】
処理空間SPには、第1、第2プレート34、54が上下に対向して収容されている。第1プレート34は処理チャンバ1を構成する上板11の下面に固定された上ベース部材31によって水平に固定支持されており、第2プレート54の上方に位置している。第1プレート34は基板Wが装着される試料台を構成し、第2プレート54と対向する下面342が基板Wの装着面を形成している。第1プレート34の下面342は円形に形成されている。ここで、薄膜形成対象となる基板Wとしては、例えば円板状に形成された半導体ウエハと、この半導体ウエハ上に電極配線をパターニングした構造を有するものがあり、基板Wのパターン形成面側に絶縁膜などの薄膜が転写される。
【0030】
第1プレート34の下面342は、平坦性を確保するために研磨された石英板によって形成されており、この石英板に基板Wが装着される。石英は基板Wを汚染する物質を含まないこと、および加工性がよく、必要とする平坦性が容易に得られることなどから基板Wを装着する材料として優れている。第1プレート34は、内部に加熱手段として加熱ヒータ341を具備している。この加熱ヒータ341はヒータコントローラ93と電気的に接続されており、制御ユニット91からの基板温度情報に基づきヒータコントローラ93が加熱ヒータ341を25℃〜300℃の間で加熱制御する。
【0031】
また、上板11には、複数本(この実施形態では2本)のリフタ344が昇降自在で、しかも水平方向に移動自在に支持されている。各リフタ344の下端部には爪部材345が固着されている。爪部材345はその上面が基板Wの周縁部と係合可能に仕上げられ、基板Wを爪部材345上に載置させることができる。各リフタ344にはリフタ駆動機構92が接続されており、制御ユニット91からの動作指令に応じてリフタ駆動機構92が作動する。これにより、処理空間SP内に搬入された基板Wを爪部材345上に載置可能な基板搬入位置と、爪部材345上に載置された基板Wを第1プレート34の下面342に装着する基板装着位置(図4で示す位置)とに複数のリフタ344を一体的に移動させることができる。
【0032】
具体的には、リフタ駆動機構92に対して制御ユニット91から下降指令が与えられると、リフタ344は下方に移動し、爪部材345を第1プレート34の下面342の下方側に移動させた後、さらにリフタ344を水平移動させて爪部材345を第1プレート34の下面周縁部と離間して対向させる。これにより、爪部材345が基板搬入位置に位置決めされ、爪部材345への基板Wの載置が可能となる。この状態で、オペレータにより扉131を介して搬入される基板Wを受け入れる。
【0033】
そして、制御ユニット91からリフタ駆動機構92に上昇指令が与えられると、リフタ駆動機構92はリフタ344を上方に移動させて爪部材345上に載置された基板Wを第1プレート34の下面342に密着させる。これにより、爪部材345が基板装着位置に位置決めされ、第1プレート34に基板Wが装着される。
【0034】
第2プレート54は、移動方向Z(鉛直方向)に沿って昇降自在に設けられた昇降ユニット52に装備され、第1プレート34の下方に軸線を一致させて対向して配置されている。昇降ユニット52は底板19に取り付けられた下ベース部材51を有し、下ベース部材51上に第2プレート54が固定支持されている。第2プレート54はシートフィルムFが装着される転写板を構成し、第1プレート34と対向する上面542がシートフィルムFの装着面を形成している。第2プレート54の上面542は円形に形成されている。シートフィルムFは基板Wより大きい円形に形成され、その表面(薄膜形成面)には薄膜が形成されている。また、第2プレート54の上面542の平面サイズはシートフィルムFの平面サイズよりも小さく形成されている。このシートフィルムFは後述する上側挟持部および下側挟持部によって移動方向Zに挟み込まれることによって保持されており、第2プレート54はシートフィルムFの裏面(シートフィルムの両主面のうち薄膜形成面に対して反対の非薄膜形成面)側に配置されている。第2プレート54の上面542は、第1プレート34と同様に石英板によって形成されている。また、第2プレート54には加熱手段として加熱ヒータ541が内蔵されている。この加熱ヒータ541はヒータコントローラ94と電気的に接続されており、制御ユニット91からの基板温度情報に基づきヒータコントローラ94が加熱ヒータ541を25℃〜300℃の間で加熱制御する。
【0035】
シートフィルムFは、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)もしくはETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)などの可撓性を有し、また可塑性を有する有機材料からなるシート状のフィルムである。
【0036】
昇降ユニット52は、下ベース部材51の下面中央部に一体に垂設された支持軸513を有している。支持軸513は移動方向Zに沿って昇降自在に軸支され、加重モータ53によって昇降されるように構成されている。すなわち、支持軸513の下端には加重モータ53が接続されており、制御ユニット91からの動作指令に応じて加重モータ53が作動することで、昇降ユニット52を移動方向Zに沿って昇降させることができる。昇降ユニット52の昇降により、下ベース部材51上に支持された第2プレート54が移動方向Zに沿って昇降する。
【0037】
また、この実施形態ではシートフィルムFのハンドリング性を向上させるために図5に示すように一対のリングRup,Rdwを用いて一体化したリング体RFを形成し、このリング体RFの状態でシートフィルムFの搬送を実行している。以下では、図4および図5を参照しつつ、シートフィルムFのハンドリング構成について説明する。
【0038】
図5はリング体およびリング体を挟持する構成を説明するための断面図である。このリング体RFは、上リングRupと下リングRdwとでシートフィルムFの周縁部を全周にわたって挟み込むことによってシートフィルムFを保持したものである。上リングRupと下リングRdwとは同一形状を有する円環状部材であり、シートフィルムFを挟んで上リングRupおよび下リングRdwを配置させることにより、シートフィルムFを磁力吸着により保持可能となっている。
【0039】
また、第1、第2プレート34、54の周囲には、一対のリングRup,Rdwを上下から挟み込んでリング体RFを保持する上クランプ35および下クランプ55が設けられている。上クランプ35および下クランプ55はそれぞれ、一対のリングRup,Rdwとほぼ同じ内径を有する円環状部材であり、上クランプ35の外径が一対のリングRup,Rdwの外径よりも小さく形成される一方、下クランプ55の外径が一対のリングRup,Rdwの外径よりも大きく形成されている。
【0040】
このような構成により、上クランプ35および下クランプ55によってリング体RFが上下方向(移動方向Z)に挟んで保持されると、結果的にシートフィルムFは上リングRupおよび上クランプ35からなる上側挟持部UHと、下リングRdwおよび下クランプ55からなる下側挟持部DHとにより保持(挟持)された状態となる(図5(b))。つまり、下側挟持部DHに載置されたシートフィルムFが上側挟持部UHにより上方から押圧されることによって該シートフィルムFが下側挟持部DHと上側挟持部UHとにより挟持される。以下、下側挟持部DHと上側挟持部UHとをあわせて「一対の挟持部」という。
【0041】
一対の挟持部UH,DHに挟持されたシートフィルムFは第1プレート34と第2プレート54との間に配置される。具体的には、薄膜が形成されたシートフィルムFの表面(薄膜形成面)が第1プレート34に対向する一方、シートフィルムFの裏面(非薄膜形成面)側が第2プレート54に対向するように、シートフィルムFが一対の挟持部UH,DHにより挟持される。
【0042】
図6は図4のA−A’切断面を上方から見たときの薄膜形成装置を示す図である。2つのクランプのうち下クランプ55は、底板19に立設された複数本(この実施形態では3本)の円柱体よりなるクランプ受け555上に水平姿勢で支持される。クランプ受け555は第2プレート54の上面542の中心を通り移動方向Zに伸びる軸(以下、単に「中心軸」という)J回りに互いに等角度(120°)間隔で放射状に配置されている。下クランプ55の上面周縁部(円環部)にはリング体RFの下端部(下リングRdw)を収容可能な内部に向けて窪んだ窪部551が形成されている(図5(a))。そして、リング体RFの下端部を窪部551に収容させることによって、窪部551の周囲を取り囲む周面部552によってリング体RFの水平方向の移動を規制することができる。
【0043】
また、下ベース部材51上には、複数本(この実施形態では3本)の突き上げピン56が中心軸J回りに互いに等角度(120°)間隔で放射状に、しかも円周方向に沿ってクランプ受け555の間に位置するように立設されている。一方、下クランプ55の下面には各突き上げピン56に対応して突き上げピン56の先端部を挿入させることが可能なピン挿入孔553(図4)が形成されている。このため、昇降ユニット52が上昇駆動されると、突き上げピン56の先端部がピン挿入孔553に挿入されるとともに、突き上げピン56の先端部と後端部との間に形成された段差面が下クランプ55の下面と当接する。これにより、突き上げピン56と下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)とが互いに係合する。この状態で昇降ユニット52がさらに上昇駆動されると、下クランプ55がクランプ受け555から離れ、突き上げピン56と下クランプ55とが係合した状態で一体的に上昇する。これにより、第2プレート54と一対の挟持部、つまり上側挟持部UHおよび下側挟持部DHとが一定の位置関係を保ったまま上昇する。
【0044】
図7は突き上げピンと下クランプとが係合した状態を示した図である。突き上げピン56と下クランプ55とが係合した時点では、第2プレート54が一対の挟持部UH,DHに挟持されたシートフィルムFに接触して該シートフィルムFが上方に突き上げられる。これにより、シートフィルムFが緊張し、該シートフィルムFに張力を発生させることができる。ここで、第2プレート54の上面542が円形に形成されるとともに、一対の挟持部UH,DHによりシートフィルムFの周縁部が全周にわたって保持(挟持)されているため、シートフィルムFに対して周方向に均一な張力を付与することができる。
【0045】
また、この実施形態では、突き上げピン56が下クランプ55と係合する係合部位の第2プレート54に対する移動方向Zにおける相対距離(以下、単に「相対距離」という)Dを調整することによって、シートフィルムFに発生させる張力の大きさをコントロールすることが可能となっている。具体的には、突き上げピン56の先端部と後端部との間に形成された段差面(突き上げピン56が下クランプ55と係合する係合部位)から第2プレート54の上面542までの距離(相対距離D)を調整することにより、シートフィルムFに発生させる張力の大きさを変更することが可能となっている。つまり、相対距離Dに応じて、第2プレート54がシートフィルムFと接触を開始してから突き上げピン56と下クランプ55とが係合するまでの間にシートフィルムFが第2プレート54によって移動方向Zに沿って突き上げられる量(以下、単に「突き上げ量」という)Qが変化する。したがって、相対距離Dが調整されることで、突き上げ量Qを変更し、シートフィルムFに発生する張力の大きさを調整することができる。
【0046】
図8は突き上げピンの構造を示す図である。下ベース部材51には移動方向Zに沿って貫通孔511が形成されており、貫通孔511に突き上げピン56が挿通されている。これにより、その先端側に係合部位(段差面)が設けられた突き上げピン56が下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)に向けて突設される。突き上げピン56の後端部561にはネジ溝が刻まれる一方、貫通孔511の内壁には突き上げピン56のネジと螺合するネジ溝が刻まれている。また、下ベース部材51の上面側に2つのナットからなるダブルナット516が突き上げピン56の後端部561に螺嵌されており、ダブルナット516により突き上げピン56が下ベース部材51に緩みなく締め付け固定される。突き上げピン56の先端部562は下クランプ55のピン挿入孔553に挿入可能とされている。そして、突き上げピン56の先端部562がピン挿入孔553に挿入されることで、突き上げピン56の後端部561と先端部562とを結合する段差面563(係合部位)が下クランプ55の下面554に当接する。段差面563と下クランプ55の下面554とは平行に形成され、面接触状態で当接する。
【0047】
このような構成によれば、ダブルナット516を緩めて突き上げピン56の頭部564を回転させていくことで、下ベース部材51の上面から段差面563までの移動方向Zにおける長さLが調整される。すなわち、突き上げピン56と下クランプ55とが互いに係合している状態では、下ベース部材51と下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)との間の間隙が調整される。そして、下ベース部材51の上面から段差面563までの移動方向Zにおける長さLを所定の長さに調整した後、ダブルナット516を締めることによって突き上げピン56を下ベース部材51に固定する。このように、下ベース部材51の上面から段差面563までの移動方向Zにおける長さLが調整されることで、相対距離Dが調整される。これにより、突き上げ量Qを変更し、シートフィルムFに発生する張力の大きさを自在に、しかも簡素な構成により調整することができる。したがって、使用するシートフィルムFの種類や膜厚に応じて最適な張力をシートフィルムFに与えることができる。
【0048】
図4に戻って説明を続ける。下クランプ55の下面周縁部には下クランプ55の水平方向における位置を固定するために、複数本の位置決めピン514が下方に延びるように取り付けられている。これら位置決めピン514は下ベース部材51に移動方向Zに沿って形成された貫通孔512に挿通されている。位置決めピン514と貫通孔512の内壁との間にはボールスプライン機構等が介在しており、位置決めピン514はボールスプライン機構等を介して移動方向Zに沿ってのみ可動(昇降)自在に支持される。つまり、下クランプ55は移動方向Zに直交する方向(水平方向)に移動するのを規制されながら下ベース部材51に対して移動方向Zに沿って昇降自在に支持される。このような構成によれば、昇降ユニット52(第2プレート54)を移動方向Zに沿って移動させたとしても、水平方向において第2プレート54と下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)との間の相対位置関係を確実に固定することができる。このため、第2プレート54と一対の挟持部UH,DHとが互いに水平方向にずれるのを防止することができる。
【0049】
また、もう一方のクランプ、つまり上クランプ35は昇降自在に支持された複数本のロッド356の下端に固着されている。この実施形態では、3本のロッド356が中心軸J回りに互いに等角度(120°)間隔で放射状に、上クランプ35から上方に伸びるように設けられている。複数本のロッド356の各々には、上クランプ35を移動方向Zに沿って昇降駆動させるためのエアシリンダ357が連結されている。そして、制御ユニット91からの動作指令に応じてエアシリンダ357が作動することで、上クランプ35を移動方向Zに沿って昇降させることができる。具体的には、上クランプ35を上昇させて第2プレート54に対するリング体RFの搬入出を可能とする一方、上クランプ35を下降させて下クランプ55とでリング体RFを挟持して固定することができる。
【0050】
このエアシリンダ357は、処理チャンバ1の外部に突設された支柱311により固定された円板状のプレート312に配設されており、エアシリンダ357から発生するパーティクル等の汚染物質が処理空間SP内に混入するのを防止することができる。なお、上クランプ35を昇降駆動させる駆動機構としては、エアシリンダに限らず、エアシリンダ以外の他の昇降駆動用アクチュエータを用いるようにしてもよい。
【0051】
また、エアシリンダ357と、該エアシリンダ357に圧縮空気を供給するための圧縮空気供給源との間には調圧弁358が介装されている。そして、制御ユニット91からの動作指令に応じて調圧弁358の開度が調整されることにより、ロッド356の推力を一定に保つことが可能となっている。この実施形態では、支持軸513が移動方向Zにおいて受ける加重圧力を検出する荷重センサ96が設けられており、後述するようにして荷重センサ96によって検出された加重圧力に基づいて制御ユニット91が調圧弁358の開度を調整し、ロッド356の推力を一定に保つようにフィードバック制御する。これにより、下クランプ55に載置されたリング体RFを上クランプ35により一定の押圧力で押圧することができる。すなわち、下側挟持部DH上に配置されたシートフィルムFを上側挟持部UHにより上方から一定の押圧力で押圧することが可能となっている。
【0052】
次に、上記のように構成された薄膜形成装置の組み立て手順およびメンテナンスについて説明する。上記した転写ユニットは、上側ブロック3と下側ブロック5とにより、より具体的には、上側ブロック3に設けられた第1プレート34と、下側ブロック5に設けられた第2プレート54とにより薄膜を形成されたシートフィルムFおよび基板Wを挟み込むことによって薄膜を基板Wに転写する。そのため、第1プレート34の上面と第2プレート54の下面との間の平行度が保たれていることが必要である。ここで、上側ブロック3は処理チャンバ1の上板11に、下側ブロック5は底板19にそれぞれ取り付けられている。そのため、上側ブロック3および下側ブロック5が処理チャンバ1に組み付けられた後で、両者の位置関係を調整することが必要となる。また、前記したように、シートフィルムFに適切な張力を与えるために突き上げピン56の高さ調整も必要である。
【0053】
従来、この種の基板処理装置において基板を減圧下で処理するための処理チャンバとしては、例えば金属ブロックを削り出して内部に処理空間となる空洞を形成したものが一般的に用いられていた。しかしながら、このような処理チャンバは非常に高コストであり、さらに上記のような組み付け後の調整やメンテナンスが難しいという問題があった。この実施形態では、以下の手順で組み立てを行うことにより、メンテナンス性を向上させている。
【0054】
図9はこの実施形態にかかる薄膜形成装置の組立手順を示すフローチャートである。この薄膜形成装置は、例えば以下の手順により組み立てることができる。まず、装置フレーム99に底板19を取り付ける(ステップS101)。次に、チャンバのフレーム10を底板19に取り付ける(ステップS102)。底板19へのフレーム10の固定は、上方からネジ199を締結することによって行い、しかも、この時点ではフレーム10の側面は全て開口しているので、作業を容易に行うことができる。
【0055】
そして、転写ユニットの上側ブロック3を、フレーム10と一体化された上板11に取り付ける。また、下側ブロック5を、装置フレーム99に取り付けられた底板19に取り付ける。これにより、上側ブロック3と下側ブロック5とが処理空間SP内で対向配置される。このように、上板11と一体化されたフレーム10、上側ブロック3、下側ブロック5を個別に搬入し据え付けることで、搬入時の重量を分散させて軽量の状態で各部を移動させれば済むので作業性が向上する。なお、ステップS102、S103についてはその順序を入れ替えてもよい。すなわち、上板11に上側ブロック3を装着しフレーム10と一体化したものを底板19に取り付けるようにしてもよい。
【0056】
この状態で、上側ブロック3と下側ブロック5との相対的な位置調整(例えば平行度の調整)や、突き上げピン56の高さ調整などの各種調整を行う(ステップS104)。この場合、フレーム10の側面は全て開口しているため、任意の方向から処理空間SP内へアクセスすることができるので、優れた作業性で調整作業を行うことができる。また、この時点でチャンバ主部を構成するフレーム10、上板11および底板19の位置関係は確定されているので、高い精度で位置調整を行うことができる。
【0057】
こうして位置調整を行った後、各側面パネル部材、すなわち前板13、一対の側板14および裏板16をフレーム10に装着すると(ステップS105)、図1に示す薄膜形成装置が完成する。
【0058】
なお、組み立て後においても、転写ユニットの微調整や処理チャンバ1内部の清掃などのメンテナンス作業が必要となる場合がある。このような場合には、必要に応じて側面パネル部材のうちいくつかを取り外せば転写ユニットへのアクセスが可能となりメンテナンス作業を行うことができる。この場合、側面パネル部材のみを取り外しフレーム10と底板19との間を切り離さないようにすることで、上側ブロック3と下側ブロック5との相対的な位置関係を維持することができる。したがって微調整のみを行えばよい。
【0059】
このように、この実施形態の処理チャンバ1では、側面パネル部材を着脱自在となっているため、転写ユニットを構成する上下ブロックの位置関係を動かすことなく転写ユニットにアクセスすることが可能であり、メンテナンス性に優れている。
【0060】
なお、このように処理チャンバ1をフレームとパネル部材との組み合わせにより構成し多くの開口部を設けることにより、処理チャンバ1の気密性の低下が懸念される。しかしながら、この種の薄膜形成装置において要求される真空度は数Pa程度であり、いわゆる高真空状態は必要とされない。各部の加工精度を適切に設定する等の配慮により、この程度の真空度を達成可能であることは本願発明者らの実験により確認済みである。
【0061】
次に、上記した薄膜形成装置の動作について図10ないし図12を参照しつつ説明する。図10ないし図12は図4の薄膜形成装置の動作を説明するための模式図である。本実施形態においては、処理空間SPへの基板WおよびシートフィルムFの搬入に先立って、各突き上げピン56において、下ベース部材53の上面から段差面563までの移動方向Zにおける長さLが使用されるシートフィルムFの種類や膜厚等に応じて予め調整されているものとする。
【0062】
最初に第1プレート34側に基板Wが搬入される。すなわち、制御ユニット91はリフタ駆動機構92に下降指令を与え、図10(a)に示すように、爪部材345を基板搬入位置に位置決めする。それに続いて、薄膜を形成すべき基板Wが扉131を通じて処理空間SP内に搬入され、爪部材345の上に載置される。その後、制御ユニット91はリフタ駆動機構92に対して上昇指令を与え、爪部材345を基板装着位置に移動させて基板Wの上面(非パターン形成面)を第1プレート34の下面342に密着させた状態で基板Wを位置決めする(図10(b))。これにより、第1プレート34に基板Wが装着される。
【0063】
一方、第2プレート54側では、シートフィルムFがリング体RFにより挟持された状態で処理空間SP内に搬入される。ここで、リング体RFを構成する一対のリングRup,Rdwに挟まれたシートフィルムFの表面(薄膜形成面)には予め薄膜が形成されており、薄膜形成面を上方に向けてシートフィルムFが扉131を通じて搬入される。このとき、上クランプ35はリング体RFの搬入を妨げることのないように上方に退避している。また、第2プレート54の上面542は下クランプ55(リング体RFが載置される載置面)の下方に位置している。このため、シートフィルムFが搬入される際に、シートフィルムFと第2プレート54とが接触するのを回避することができる。その結果、シートフィルムFに張力が発生していない状態で薄膜が部分的に乾燥して薄膜の均一な乾燥が阻害されてしまうのを防止することができる。
【0064】
そして、リング体RFが下クランプ55上に載置された後、上クランプ35が下降して下クランプ55に載置されたリング体RFが上クランプ35によって押圧される(図10(c))。これによって、シートフィルムFの周縁部が全周にわたって所定の押圧力で均一に押圧され、シートフィルムFにしわや折り曲げが発生するのを防止しながら、シートフィルムFが一対の挟持部、つまり上側挟持部UHおよび下側挟持部DHにより挟持された状態となる。
【0065】
こうして、基板WおよびシートフィルムFの搬入が完了すると、制御ユニット91は装置各部を制御し、以下に示すように薄膜を基板Wに転写する転写工程を実行する。まず、真空ポンプ95による処理空間SPの排気減圧を開始する。また、ヒータコントローラ93によって加熱ヒータ341に通電して第1プレート34を加熱して基板Wを所望の温度に加熱するとともに、ヒータコントローラ94によって加熱ヒータ541に通電して第2プレート54を加熱してシートフィルムFを所望の温度に加熱する。
【0066】
そして、処理空間SPが所望の圧力まで減圧されると、制御ユニット91より加重モータ53に信号が送られ、昇降ユニット52(第2プレート54)の上昇駆動を開始する。第2プレート54が上昇すると、一対の挟持部UH,DHに挟持されたシートフィルムFの裏面(非薄膜形成面)と第2プレート54の上面542とが接触して第2プレート54にシートフィルムFが装着される。このとき、第2プレート54の上面542の平面サイズはシートフィルムFの平面サイズよりも小さく形成されているため、第2プレート54上面542の全面がシートフィルムFにより覆われる。そして、第2プレート54の上面542がシートフィルムFに接触した状態で第2プレート54がさらに上昇すると、シートフィルムFが緊張し、該シートフィルムFに張力が発生する。つまり、一対の挟持部UH,DHに挟持されたシートフィルムFに第2プレート54が突き当てられてシートフィルムFに張力が発生する。その結果、シートフィルムFが加熱ヒータ541によって加熱され、熱膨張により伸張して弛んでいても、その弛みが取り除かれる。
【0067】
また、昇降ユニット52の上昇によって突き上げピン56がクランプ受け555上に載置された下クランプ55と係合する(図11(a))。これによって、移動方向Zにおける下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)に対する第2プレート54の相対位置が固定される。その結果、シートフィルムFに発生する張力の大きさが決定されて固定される。また、第2プレート54の上昇により、下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)がクランプ受け555から突き上げピン56に受け渡される。
【0068】
そして、第2プレート54の上昇とともに一対の挟持部UH,DHがシートフィルムFを挟持しながら移動方向Zに沿って変位する。このとき、上クランプ35に連結されたロッド356がエアシリンダ357内に後退してストロークが短くなると、エアシリンダ357内の圧力が上昇してロッド356の推力が増大する。その結果、シートフィルムFに対する押圧力が増大し、荷重センサ96によって検出される加重圧力が上昇する。そこで、制御ユニット91は荷重センサ96によって検出される加重圧力が一定となるように調圧弁358の開度を調整し、ロッド356の推力を一定に保つようにフィードバック制御する。つまり、シートフィルムFに対する押圧力が一定になるように、つまり第2プレート54がシートフィルムFに接触する前にシートフィルムFに与えられた押圧力に等しくなるように、制御ユニット91からの動作指令によって調圧弁358が制御される。そして、制御ユニット91は昇降ユニット52を上昇させるとともに、シートフィルムFへの押圧力が一定となるように調圧弁358を制御しながらロッド356をエアシリンダ357内に後退させてストロークを短くしていく。これにより、第2プレート54の上昇を阻害することなく、かつ一対の挟持部UH,DHによりシートフィルムFが良好かつ確実に保持される。
【0069】
また、下クランプ55(一対の挟持部)と突き上げピン56とが互いに係合した状態で一対の挟持部UH,DHと第2プレート54とが一体的に移動方向Zに沿って移動することで、決定された張力をシートフィルムFに付与した状態を維持したままシートフィルムFが上昇する。つまり、第2プレート54と一対の挟持部UH,DHとが一定の位置関係を保ったまま上昇するので、シートフィルムFに与えられた張力の大きさが変化するのを防止することができる。このため、シートフィルムFに張力を安定して与えながらシートフィルムFを基板Wに近接させていくことができる。
【0070】
また、下クランプ55と突き上げピン56とは、突き上げピン56の先端部562が下クランプ55のピン挿入孔553に挿入されることで係合している。このため、下クランプ55と突き上げピン56とが係合した状態で移動方向Zに沿って移動する際に、互いの位置関係がずれるのを防止することができる。
【0071】
そして、第2プレート54がさらに上昇すると、シートフィルムF上の薄膜が基板Wに密着し、基板Wへの薄膜の転写が開始される(図11(b))。また、処理空間SPを排気減圧したまま、基板WとシートフィルムFとが所定の加重で一定時間互いに押し付けられる。その間も基板WとシートフィルムFは所定の温度となるように加熱されている。薄膜が基板Wに押し付けられている間もシートフィルムFは一対の挟持部UH,DHにより挟持されながら、一定の張力、つまり下クランプ55と突き上げピン56とが係合することによって決定された張力が付与された状態となっている。このため、シートフィルムFにしわや折り曲げが発生するのを防止して、平坦で均一な膜厚の薄膜を基板Wに形成することができる。
【0072】
そして、一連の加重操作が終了して転写処理が完了すると、ヒータコントローラ93、94により加熱ヒータ341、541の作動を停止させて第1、第2プレート34,54の加熱を停止すると同時に、爪部材345を側方に退避させて爪部材345による基板保持を解除する(図11(c))。続いて、加重の状態が零となるように制御ユニット91から加重モータ53に信号を送り、昇降ユニット52および一対の挟持部UH,DH(上クランプ35、リング体RF、下クランプ55)を一体的に下降させる(図12(a))。すなわち、制御ユニット91はシートフィルムFに対する押圧力が一定となるように調圧弁358を制御しながらロッド356をエアシリンダ357内から進出させてストロークを長くしていく。その後、昇降ユニット52が下降し、上クランプ35により上方から押圧された状態で下クランプ55およびリング体RFがクランプ受け555上に受け渡される(図12(b))。さらに、昇降ユニット52が下降し、昇降ユニット52(第2プレート54)が転写前の初期位置に復帰すると、突き上げピン56が下クランプ55から離れる。また、上クランプ35によるリング体RFへの押圧が解除される(図12(c))。これにより、下クランプ55およびリング体RFがクランプ受け555上に支持された状態となる。
【0073】
こうして、第2プレート54が転写前の初期位置に戻った後、真空ポンプ95を停止させる。なお、上記のようにして薄膜の密着が完了すると、基板Wは薄膜を挟んでシートフィルムFと一体となっており、この一体化状態のままリング体RFを処理チャンバ1から取り出し、シートフィルムFを剥離する剥離装置(図示せず)に搬送する。
【0074】
以上のように、この実施形態によれば、転写ユニットを収容する処理チャンバ1の側面を着脱自在のパネル部材により構成している。そのため、転写ユニットの調整を行う際には必要に応じて側面パネル部材のいくつかを取り外すことにより転写ユニットが露出し、作業性よくメンテナンスを行うことが可能である。また、転写ユニットの上側ブロック3が固定された上板13と下側ブロック5が固定された底板19とをフレーム10により一体的に結合したチャンバ主部に対して側面パネル部材を取り付ける構成としているので、チャンバ主部に取り付けられた上側ブロック3と下側ブロック5との位置関係が変動することがなく、調整作業を容易に行うことが可能となる。
【0075】
また、処理チャンバ1をフレーム10と板材との組み合わせにより構成し、またフレーム10をアングル101の組み合わせによって構成しているため、金属ブロックを削り出して製造する従来の処理チャンバよりも、その製造コストを大きく低減することが可能である。
【0076】
また、必要に応じて側面パネル部材を交換可能であるため、外部装置との組み合わせに応じて変更する必要のある部位、例えば排気管951を接続する排気口161などを側面パネル部材に設けておくことによって、装置の仕様変更にも側面パネル部材の変更のみで容易に対応することができる。
【0077】
また、この実施形態の転写ユニットでは、昇降ユニット52の移動により、一対の挟持部UH,DHに保持されたシートフィルムFに対して第2プレート54が突き当ててシートフィルムFに張力を発生させている。また、一対の挟持部UH,DH(下クランプ55)と突き上げピン56(段差面563)とを互いに係合させて移動方向Zにおける一対の挟持部UH,DHに対する第2プレート54の相対位置を固定している。ここで、突き上げピン56(段差面563)は第2プレート54に対する移動方向Zにおける相対位置が規定された状態で昇降ユニット52に設けられているため、一対の挟持部UH,DHと突き上げピン56とが係合することで、移動方向Zにおける一対の挟持部UH,DHに対する第2プレート54の相対位置が固定される。これにより、シートフィルムFに発生した張力が決定されるとともに固定される。したがって、シートフィルムFに発生させた張力を該シートフィルムFに安定して付与することができる。しかも、第2プレート54の上昇とともに、一対の挟持部UH,DH(下クランプ55)と突き上げピン56(段差面563)とを単に物理的に係合させることのみにより、シートフィルムFに付与する張力を安定させることができ、装置を簡素に構成することができる。
【0078】
また、この実施形態によれば、一対の挟持部UH,DHが移動方向Zに沿って移動自在に設けられており、昇降ユニット52の移動によって、互いに係合した下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)と突き上げピン56とを一体的に移動方向Zに沿って移動させて転写処理を実行している。このため、移動方向Zにおける一対の挟持部UH,DHに対する第2プレート54の相対位置を固定した状態で昇降ユニット52が移動され、決定された張力をシートフィルムFに付与した状態を維持したまま転写処理が実行される。したがって、シートフィルムFに付与される張力を一定値(決定された張力)に保ったまま該シートフィルムF上の薄膜を基板Wに転写することができ、基板W上に薄膜を良好に形成することができる。
【0079】
また、この実施形態によれば、突き上げピン56の段差面563の第2プレート54に対する移動方向Zにおける相対距離Dが調整可能とされ、相対距離Dを調整することで、段差面563に係合した下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)に対する第2プレート54の移動方向Zにおける相対位置を変更することができる。これにより、シートフィルムFに発生する張力の大きさを自在に調整することができる。したがって、使用するシートフィルムFの種類や膜厚に応じて最適な張力をシートフィルムFに付与することができる。
【0080】
以上説明したように、この実施形態では、上側ブロック3および下側ブロック5が本発明の「転写ユニット」を構成している。また、処理チャンバ1を構成する上板11および底板19がそれぞれ本発明の「上側プレート部」および「下側プレート部」として機能している。また、前板13、側板14および裏板16が本発明の「側面パネル部材」として機能している。また、フレーム10が本発明の「連結部」として機能しており、フレーム10を構成するアングル101が本発明の「柱部材」および「梁部材」に相当している。
【0081】
また、上記実施形態においては、真空ポンプ95が本発明の「減圧手段」として機能する一方、底板19に取り付けられた昇降ユニット52が本発明の「駆動機構」として機能している。
【0082】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態の処理チャンバ1は略直方体形状のものであるが、例えば側面が湾曲した円柱形状のものやその他の形状のものであってもよい。また、上記実施形態の処理チャンバ1は4つの側面を構成する側面パネル部材が全て着脱自在に構成されているが、少なくとも1つがフレームに固定されていてもよい。また側面パネル部材の枚数も上記に限定されず任意である。
【0083】
また、上記実施形態では、チャンバ主部を上板11、底板19および両者を結合するフレーム10とにより構成しているが、このような構成に限定されない。例えば、金属ブロックの内部をくり抜いて形成したチャンバ主部の側面に開口部を設け上板、底板およびフレームを初めから一体のチャンバ主部として構成し、該開口部に着脱自在のパネルを取り付ける構成としてもよい。また、板状の材料に開口窓を設けたものを組み合わせてフレームを構成するようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、装置フレーム99に固定された底板19上にフレーム10を取り付けることにより処理チャンバ1を実現するようにしているが、このような構成に限定されず、例えば上板11とほぼ同じサイズの底板でフレーム10の下面を覆うことで処理チャンバの下面を構成するようにしてもよい。またフレーム10と底板19との間を溶接等により固定してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、上板11、底板19、フレーム10および側面パネル部材13等をいずれも金属製としているが、必要に応じて、あるいは目的に応じて、これらのいずれかを樹脂により形成してもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、側板14等の側面パネル部材をフレーム10にネジ止めする際にシート状のシール部材148を挟み込むことによって空気漏れを防止しているが、処理空間SPを密封するシール方法はこれに限定されず、例えば図13に示すようにしてもよい。
【0087】
図13はシール方法の他の例を示す図である。この例では、裏板16の周縁部に設けられたネジ止め用の貫通孔165同士を結んだ仮想線よりも内側に環状の溝を形成し、この溝に例えばゴム製でリング状のOリングにより構成されたシール部材167を嵌め込んでフレーム10に取り付けることにより空気漏れを防止している。同様に、前板13および側板14にも溝を設けOリング137、147を嵌め込むことができる。特に着脱を行う頻度が高い場合には、着脱の繰り返しに伴うシール部材の変形や劣化を抑え、また作業性も良好であるという点で、シール部材をOリングにより構成することが好ましい。
【0088】
また、上記実施形態では、前板13の開口部134に対し開閉自在に設けた扉131を開閉することにより基板等の出し入れを行うように構成しているが、図14に示すように、ゲートバルブによって開口部を開閉するようにしてもよい。このようにすると、扉の開閉を自動で行うことが容易となり、装置の自動化にも対応することができる。
【0089】
図14は扉構造の他の例を示す図である。この例では、上記実施形態における前板13に代えて設けられた前板15に穿設された開口部154を取り囲むように環状の溝が形成され、この溝にOリング152が嵌め込まれている。扉151は溝の外周よりも一回り大きな板状部材であり、装置フレーム99に固定された駆動機構153により移動可能に支持されている。駆動機構153は扉151をZ方向に沿って図の上方に移動させた後、Y方向に沿って扉151を前板15に向けて前進させることにより、開口部154を扉151により覆う。また、これとは逆の動作により開口部154を露出させる。扉151と前板15との隙間はOリング152によって塞がれ空気漏れが防止される。このようなゲートバルブの構造およびその駆動機構としては公知のものを適用可能であるので、詳しい説明を省略する。
【0090】
また、本発明は、上記実施形態のように半導体基板に薄膜を転写する場合に限らず、電子部品材料関係であればマルチチップモジュール等の実装関係の基板や液晶関係の基板に薄膜を転写する場合にも適用できる。また、薄膜についても絶縁膜に限らず、金属系の薄膜を基板に転写してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板に薄膜を形成する薄膜形成装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】この発明にかかる薄膜形成装置の一実施形態を示す図である。
【図2】処理チャンバの構造を示す第1の分解斜視図である。
【図3】処理チャンバの構造を示す第2の分解斜視図である。
【図4】この発明にかかる薄膜形成装置の転写ユニットの構成を示す図である。
【図5】リング体およびリング体を挟持する構成を説明するための断面図である。
【図6】図4のA−A’切断面を上方から見たときの薄膜形成装置を示す図である。
【図7】突き上げピンと下クランプとが係合した状態を示した図である。
【図8】突き上げピンの構造を示す図である。
【図9】この実施形態にかかる薄膜形成装置の組立手順を示すフローチャートである。
【図10】図4の薄膜形成装置の動作を説明するための第1の模式図である。
【図11】図4の薄膜形成装置の動作を説明するための第2の模式図である。
【図12】図4の薄膜形成装置の動作を説明するための第3の模式図である。
【図13】シール方法の他の例を示す図である。
【図14】扉構造の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
1…処理チャンバ
3…上側ブロック(転写ユニット)
5…下側ブロック(転写ユニット)
10…フレーム(連結部、枠体)
11…上板(上側プレート部)
19…底板(下側プレート部)
13…前板(側面パネル部材)
14…側板(側面パネル部材)
16…裏板(側面パネル部材)
52…昇降ユニット(駆動機構)
95…真空ポンプ(減圧手段)
101…アングル(柱部材、梁部材)
131…扉
137、147、167…Oリング(シール部材)
138、148、168…シール部材
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に薄膜を形成する薄膜形成装置に関するものである。なお、薄膜が形成される基板としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや液晶表示用ガラス基板などの基板の表面に薄膜を形成する技術として、近年、シートフィルム上に形成した薄膜を基板表面に加圧転写するものが提案されている。例えば、特許文献1に記載の技術においては、真空容器内で、上プレートに保持した基板に、下プレートに保持した薄膜材料を塗布されたシートフィルムとを密着させて加圧することにより、基板表面に薄膜材料を転写させている。
【0003】
真空容器の構造について特許文献1には具体的な記載がないが、この種の基板処理装置において用いられる真空処理容器の構造は、金属ブロックから削り出したハウジングに機構部品を取り付けるための取り付け孔や資材を出し入れするための窓を設けたものが一般的である。このような構造の真空容器では、気密性を確保するために、ハウジングに設けられる開口部ができるだけ少なく、また小さくなるように構成される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−186292号公報(例えば、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された装置のように、基板とシートフィルムとを重ね合わせて加圧することで薄膜を基板に転写する薄膜形成装置において要求される真空度は例えば数Pa程度であり、これは基板処理装置の真空処理容器において要求される一般的な真空度と比べると低度のものである。その一方、この種の薄膜形成装置では、基板とシートフィルムとを挟む上下プレートの平行度を確保することが重要となっており、そのために位置調整等のメンテナンスを容易に行えることが要求されている。
【0006】
このように、薄膜形成装置においては、真空容器に対して求められる性能が他の装置とは異なっているにもかかわらず、処理チャンバの構造まで含めた薄膜形成装置の構成については、これまであまり検討されてこなかった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、例えばシートフィルムのような担持体に形成された薄膜材料を基板に転写することで基板に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、薄膜形成のために必要な真空度が得られ、しかもメンテナンス性に優れた装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる薄膜形成装置は、上記目的を達成するため、離当接可能に構成された上側ブロックと下側ブロックとの間に、表面に薄膜を形成された担持体と基板とを挟み込むことにより、前記薄膜を前記基板表面に転写させる転写ユニットと、前記上側ブロックおよび前記下側ブロックを内部に収容する処理チャンバとを備え、前記処理チャンバは、前記上側ブロックを支持する上側プレート部と、前記下側ブロックを支持する下側プレート部とを側面に開口を有する連結部によって連結した構造を有するチャンバ主部と、前記チャンバ主部に対し着脱自在に構成され、シール部材を介して前記連結部の前記開口を塞ぐように装着される側面パネル部材とを備えることを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、転写ユニットを収容した処理チャンバの側面に着脱自在の側面パネル部材を設けている。そのため、側面パネル部材を取り外すことによって転写ユニットを露出させることができるので、メンテナンス性に優れている。その一方、転写ユニットの上側ブロックを支持する上側プレート部と、転写ユニットの下側ブロックを支持する下側プレート部とについては、両者を連結する連結部によりチャンバ主部として一体化している。そのため、基板および薄膜の担持体を挟み込んで均一に加圧するために高い平行度が要求される転写ユニットの上側および下側ブロックの相対的な位置関係を変化させることなく、側面パネル部材の着脱を行うことができる。また、処理チャンバの一部を着脱自在とすることにより気密性の低下が問題となり得るが、この種の薄膜形成装置に必要な数Pa程度の真空度を達成可能であることが本願発明者らの実験により確認されている。
【0010】
なお、チャンバ主部を構成する上側プレート部、下側プレート部および連結部については、削り出し、鋳造等により初めから一体のものとして形成されてもよく、またそれぞれ個別に作成された部品を溶接、接着、ネジ止め等により互いに組み付けることによって一体化されたものであってもよい。
【0011】
この装置においては、前記チャンバ主部は、前記上側プレート部と前記下側プレート部との間を前記連結部としての複数の柱状部材によって連結した構造を有するようにしてもよい。このようにすると、上側プレート、下側プレートおよび柱状部材により囲まれた大きな開口を設けることができ、よりメンテナンス性を向上させることができる。
【0012】
この場合、さらに、前記複数の柱状部材は梁部材によって連結されて該梁部材とともに一体的に前記連結部としての枠体を構成しており、前記梁部材と前記柱状部材とにより囲まれて前記開口が形成されるとともに、前記枠体に前記上側プレート部と前記下側プレート部とがそれぞれ取り付けられて前記チャンバ主部を構成してもよい。このように、一体化された枠体に上側プレート部と下側プレート部とを取り付けることにより、上側プレート部および下側プレート部にそれぞれ取り付けられる転写ユニットの上側ブロックと下側ブロックとの位置決め精度を向上させることができる。
【0013】
また、開閉自在の扉を有する前記側面パネル部材を備えてもよい。こうすることで、基板の出し入れ等の頻繁に行う簡単な操作については扉を介して行うことができるようになる。側面パネル部材を複数備える場合においては、扉はそれらの一部のみに設けられてもよい。
【0014】
また、排気口を穿設された前記側面パネル部材と、前記排気口を介して前記処理チャンバ内を減圧する減圧手段とを備えてもよい。こうすることで、処理チャンバ内を所望の真空度まで減圧することができる。また、減圧手段に接続される排気口を側面パネル部材に設けることによって、排気口を穿設するための加工が容易となり、また処理チャンバの設計自由度が高くなる。
【0015】
また、前記上側ブロックと前記下側ブロックとを離当接させるための駆動機構を備え、該駆動機構が前記上側プレート部および前記下側プレート部の少なくとも一方に取り付けられてもよい。本発明の処理チャンバにおいては、上側プレート部と下側プレート部との間の位置関係が固定されているため、これらの一方または両方に駆動機構を取り付けて上側ブロックおよび/または下側ブロックを駆動することにより、上側ブロックと下側ブロックとを優れた位置精度で離当接させることができる。この場合において、上側ブロックを駆動するための駆動機構については上側プレート部に、下側ブロックを駆動するための駆動機構については下側プレート部に取り付けることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、薄膜形成装置を構成し転写ユニットを内部に収容する処理チャンバの側面を、チャンバ主部に対して着脱自在の側面パネル部材により構成している。そのため、側面パネル部材を取り外すことによって転写ユニットを露出させることができ、メンテナンス性に優れている。また、側面パネル部材の着脱を行っても、基板および担持体を挟み込んで均一に加圧するために高い平行度が要求される転写ユニットの上側および下側ブロックの相対的な位置関係を変化させることがない。また、真空度については、この種の薄膜形成装置に必要とされる数Pa程度の真空度を達成可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1はこの発明にかかる薄膜形成装置の一実施形態を示す図である。この薄膜形成装置は、半導体ウエハなどの基板の表面に例えばSOG(Spin-On-Glass)などの薄膜を形成するための装置である。この装置では、処理チャンバ1の内部に形成される処理空間内に後述する転写ユニットが設置されており、基板表面への薄膜形成は、減圧された処理空間内でこの転写ユニットにより行われる。最初に処理チャンバ1の構成について説明する。説明の便宜上、図1に示すようにX、Y、Zの各方向を定義する。
【0018】
図2および図3は処理チャンバの構造を示す分解斜視図である。処理チャンバ1では、図2に示すように、例えばステンレス製で断面L字形状のアングル101を組み合わせて各辺を構成された直方体形状のフレーム10の上部に、例えばステンレス製の上板11が固着されている。各辺を構成するアングル101同士の継ぎ目、およびフレーム10と上板11との間は例えば溶接により隙間のないように接合されている。また溶接後のアングル101同士の継ぎ目の外面は研磨により平滑に仕上げられている。
【0019】
フレーム10を構成するアングル101のうち側面に当たる部分には、後述する側板等を取り付けるために、複数の雄ネジ102が外側に向けて立設されている。一方、フレーム10の底部となる面には、底板19と締結するネジを挿通するための複数の貫通孔103が穿設されている。上板11には、後述する転写ユニットやその他の部品を取り付けるための複数の取り付け孔や切り欠き等の加工がなされている。
【0020】
こうして上板11と一体化されたフレーム10は、上面が略水平面となるよう装置フレーム99(図1)に取り付けられた底板19上に、弾性を有する例えばシリコーンゴム製のシール部材198を挟んで載置される。底板19にはネジ孔195がフレーム10の貫通孔103に対応して設けられており、フレーム10の貫通孔103に挿通された複数のネジ199によりフレーム10と底板19とが締結される。なお、底板19のネジ孔195は側面にネジ溝が螺刻されているが、底板19の下面まで貫通していない。このため、底板19に対するフレーム10の取り付けや取り外し作業を上部側から行うことができるとともに、ネジ孔195を介した空気漏れが防止される。また、底板19には、後述する転写ユニットの支持軸を挿通するための貫通孔191や該ユニットを取り付けるためのネジ孔等が穿設されている。
【0021】
こうして、上板11、フレーム10および底板19が一体化される。以下の説明では、上板11、フレーム10および底板19を上記のように一体化してなる組立体を「チャンバ主部」と称する。ここまでの状態では、直方体形状のフレーム10のうち上面、下面がそれぞれ上板11、底板19によって塞がれ、これらを除く他の4面が大きく開口した状態となっている。言い換えると、底板19から直立する4本の柱(アングル101)によって上板11がその四隅で底板19と平行に支持されている。さらに見方を変えると、アングル101を梁および柱として組まれた直方体のフレーム10の上下に、上板11と底板19とをそれぞれ取り付けた構造となっているとも言える。
【0022】
こうして一体化されたチャンバ主部の4つの側面に対し、図3に示すように、それぞれが例えばステンレス板により形成された側面パネル部材としての前板13、一対の側板14および裏板16がそれぞれシール部材138、148、168を挟んで装着される。なお、図3では一対の側板14のうち1枚のみを示し他方を省略しているが、図示した側板14と同一構造のもう1枚の側板がフレーム10の他の一面に装着される。
【0023】
前板13には、後述する転写ユニットに対し基板をY方向に出し入れするための開口部134が設けられており、この開口部134に対し開閉自在の扉131が取り付けられている。扉131の周縁部にはパッキン132が取り付けられる一方、前板13の開口部134近傍にはロック機構133が設けられており、扉131が閉じた状態で扉131と前板13との隙間からの空気漏れが防止されている。また、前板13の周縁部には複数の貫通孔135が穿設されており、フレーム10に立設された雄ネジ102がシール部材138を介してこの貫通孔135に挿通され、雌ネジ139によって前板13がフレーム10の前面に固定される。フレーム10に雄ネジ102を立設しておき、前板13の上から雌ネジ139によって固定する構造とすることで、ネジ孔周辺からの空気漏れを防止することができる。
【0024】
同様に、側板14もシール部材148を挟んでフレーム10に取り付けられ、雌ネジ149によってフレーム10の側面に固定される。また、裏板16も同様に、シール部材168を挟んでフレーム10の後面に雌ネジ169によって固定されている。裏板16には、後述する排気管を取り付けるための排気口161やリークバルブ等他の部品を装着するための貫通孔が設けられている。
【0025】
このように、この実施形態では、装置フレーム99上に設置された底板19に対し上板11と一体化されたフレーム10が取り付けられることによってチャンバ主部が形成され、さらにチャンバ主部の開口した4つの側面に前板13、側板14および裏板16がそれぞれ装着されることで処理チャンバ1が構成され、該チャンバ内に処理空間SPが形成される。こうして形成された処理空間SP内に、以下に説明する転写ユニットが設置される。
【0026】
図4はこの発明にかかる薄膜形成装置の転写ユニットの構成を示す図である。この転写ユニットは、処理チャンバ1を構成する上板11に固定された上側ブロック3と、底板19に固定された下側ブロック5とを備えており、薄膜形成対象である基板Wと、薄膜材料を塗布された担持体としてのシートフィルムFとを上下ブロック3、5で挟み込むことにより、シートフィルムF上の薄膜を基板Wに転写する。なお、薄膜の担持体としては、シートフィルムに代えて例えば石英板を用いてもよい。
【0027】
なお、以下の説明において、各構成要素に付した符号が「3」から始まるものは当該要素が上側ブロック3を構成するものであることを意味する一方、「5」から始まるものは当該要素が下側ブロック5を構成するものであることを意味するものとする。
【0028】
処理空間SP内は、排気管951を介して処理チャンバ1と接続された真空ポンプ95によって真空排気可能になっている。この真空ポンプ95は装置全体を制御する制御ユニット91に制御されており、制御ユニット91からの動作指令に応じて作動して処理空間SP内を排気減圧することができるようになっている。また、制御ユニット91は真空ポンプ95による処理空間SPからの排気量を調整し、処理空間SP内の圧力(真空度)を制御可能となっている。これにより、薄膜の乾燥状態をコントロールしながら該薄膜を基板Wに転写することができる。処理空間SP内の圧力は、薄膜の種類等に応じて大気圧から数Paまでの範囲内の所定の圧力に設定される。
【0029】
処理空間SPには、第1、第2プレート34、54が上下に対向して収容されている。第1プレート34は処理チャンバ1を構成する上板11の下面に固定された上ベース部材31によって水平に固定支持されており、第2プレート54の上方に位置している。第1プレート34は基板Wが装着される試料台を構成し、第2プレート54と対向する下面342が基板Wの装着面を形成している。第1プレート34の下面342は円形に形成されている。ここで、薄膜形成対象となる基板Wとしては、例えば円板状に形成された半導体ウエハと、この半導体ウエハ上に電極配線をパターニングした構造を有するものがあり、基板Wのパターン形成面側に絶縁膜などの薄膜が転写される。
【0030】
第1プレート34の下面342は、平坦性を確保するために研磨された石英板によって形成されており、この石英板に基板Wが装着される。石英は基板Wを汚染する物質を含まないこと、および加工性がよく、必要とする平坦性が容易に得られることなどから基板Wを装着する材料として優れている。第1プレート34は、内部に加熱手段として加熱ヒータ341を具備している。この加熱ヒータ341はヒータコントローラ93と電気的に接続されており、制御ユニット91からの基板温度情報に基づきヒータコントローラ93が加熱ヒータ341を25℃〜300℃の間で加熱制御する。
【0031】
また、上板11には、複数本(この実施形態では2本)のリフタ344が昇降自在で、しかも水平方向に移動自在に支持されている。各リフタ344の下端部には爪部材345が固着されている。爪部材345はその上面が基板Wの周縁部と係合可能に仕上げられ、基板Wを爪部材345上に載置させることができる。各リフタ344にはリフタ駆動機構92が接続されており、制御ユニット91からの動作指令に応じてリフタ駆動機構92が作動する。これにより、処理空間SP内に搬入された基板Wを爪部材345上に載置可能な基板搬入位置と、爪部材345上に載置された基板Wを第1プレート34の下面342に装着する基板装着位置(図4で示す位置)とに複数のリフタ344を一体的に移動させることができる。
【0032】
具体的には、リフタ駆動機構92に対して制御ユニット91から下降指令が与えられると、リフタ344は下方に移動し、爪部材345を第1プレート34の下面342の下方側に移動させた後、さらにリフタ344を水平移動させて爪部材345を第1プレート34の下面周縁部と離間して対向させる。これにより、爪部材345が基板搬入位置に位置決めされ、爪部材345への基板Wの載置が可能となる。この状態で、オペレータにより扉131を介して搬入される基板Wを受け入れる。
【0033】
そして、制御ユニット91からリフタ駆動機構92に上昇指令が与えられると、リフタ駆動機構92はリフタ344を上方に移動させて爪部材345上に載置された基板Wを第1プレート34の下面342に密着させる。これにより、爪部材345が基板装着位置に位置決めされ、第1プレート34に基板Wが装着される。
【0034】
第2プレート54は、移動方向Z(鉛直方向)に沿って昇降自在に設けられた昇降ユニット52に装備され、第1プレート34の下方に軸線を一致させて対向して配置されている。昇降ユニット52は底板19に取り付けられた下ベース部材51を有し、下ベース部材51上に第2プレート54が固定支持されている。第2プレート54はシートフィルムFが装着される転写板を構成し、第1プレート34と対向する上面542がシートフィルムFの装着面を形成している。第2プレート54の上面542は円形に形成されている。シートフィルムFは基板Wより大きい円形に形成され、その表面(薄膜形成面)には薄膜が形成されている。また、第2プレート54の上面542の平面サイズはシートフィルムFの平面サイズよりも小さく形成されている。このシートフィルムFは後述する上側挟持部および下側挟持部によって移動方向Zに挟み込まれることによって保持されており、第2プレート54はシートフィルムFの裏面(シートフィルムの両主面のうち薄膜形成面に対して反対の非薄膜形成面)側に配置されている。第2プレート54の上面542は、第1プレート34と同様に石英板によって形成されている。また、第2プレート54には加熱手段として加熱ヒータ541が内蔵されている。この加熱ヒータ541はヒータコントローラ94と電気的に接続されており、制御ユニット91からの基板温度情報に基づきヒータコントローラ94が加熱ヒータ541を25℃〜300℃の間で加熱制御する。
【0035】
シートフィルムFは、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)もしくはETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)などの可撓性を有し、また可塑性を有する有機材料からなるシート状のフィルムである。
【0036】
昇降ユニット52は、下ベース部材51の下面中央部に一体に垂設された支持軸513を有している。支持軸513は移動方向Zに沿って昇降自在に軸支され、加重モータ53によって昇降されるように構成されている。すなわち、支持軸513の下端には加重モータ53が接続されており、制御ユニット91からの動作指令に応じて加重モータ53が作動することで、昇降ユニット52を移動方向Zに沿って昇降させることができる。昇降ユニット52の昇降により、下ベース部材51上に支持された第2プレート54が移動方向Zに沿って昇降する。
【0037】
また、この実施形態ではシートフィルムFのハンドリング性を向上させるために図5に示すように一対のリングRup,Rdwを用いて一体化したリング体RFを形成し、このリング体RFの状態でシートフィルムFの搬送を実行している。以下では、図4および図5を参照しつつ、シートフィルムFのハンドリング構成について説明する。
【0038】
図5はリング体およびリング体を挟持する構成を説明するための断面図である。このリング体RFは、上リングRupと下リングRdwとでシートフィルムFの周縁部を全周にわたって挟み込むことによってシートフィルムFを保持したものである。上リングRupと下リングRdwとは同一形状を有する円環状部材であり、シートフィルムFを挟んで上リングRupおよび下リングRdwを配置させることにより、シートフィルムFを磁力吸着により保持可能となっている。
【0039】
また、第1、第2プレート34、54の周囲には、一対のリングRup,Rdwを上下から挟み込んでリング体RFを保持する上クランプ35および下クランプ55が設けられている。上クランプ35および下クランプ55はそれぞれ、一対のリングRup,Rdwとほぼ同じ内径を有する円環状部材であり、上クランプ35の外径が一対のリングRup,Rdwの外径よりも小さく形成される一方、下クランプ55の外径が一対のリングRup,Rdwの外径よりも大きく形成されている。
【0040】
このような構成により、上クランプ35および下クランプ55によってリング体RFが上下方向(移動方向Z)に挟んで保持されると、結果的にシートフィルムFは上リングRupおよび上クランプ35からなる上側挟持部UHと、下リングRdwおよび下クランプ55からなる下側挟持部DHとにより保持(挟持)された状態となる(図5(b))。つまり、下側挟持部DHに載置されたシートフィルムFが上側挟持部UHにより上方から押圧されることによって該シートフィルムFが下側挟持部DHと上側挟持部UHとにより挟持される。以下、下側挟持部DHと上側挟持部UHとをあわせて「一対の挟持部」という。
【0041】
一対の挟持部UH,DHに挟持されたシートフィルムFは第1プレート34と第2プレート54との間に配置される。具体的には、薄膜が形成されたシートフィルムFの表面(薄膜形成面)が第1プレート34に対向する一方、シートフィルムFの裏面(非薄膜形成面)側が第2プレート54に対向するように、シートフィルムFが一対の挟持部UH,DHにより挟持される。
【0042】
図6は図4のA−A’切断面を上方から見たときの薄膜形成装置を示す図である。2つのクランプのうち下クランプ55は、底板19に立設された複数本(この実施形態では3本)の円柱体よりなるクランプ受け555上に水平姿勢で支持される。クランプ受け555は第2プレート54の上面542の中心を通り移動方向Zに伸びる軸(以下、単に「中心軸」という)J回りに互いに等角度(120°)間隔で放射状に配置されている。下クランプ55の上面周縁部(円環部)にはリング体RFの下端部(下リングRdw)を収容可能な内部に向けて窪んだ窪部551が形成されている(図5(a))。そして、リング体RFの下端部を窪部551に収容させることによって、窪部551の周囲を取り囲む周面部552によってリング体RFの水平方向の移動を規制することができる。
【0043】
また、下ベース部材51上には、複数本(この実施形態では3本)の突き上げピン56が中心軸J回りに互いに等角度(120°)間隔で放射状に、しかも円周方向に沿ってクランプ受け555の間に位置するように立設されている。一方、下クランプ55の下面には各突き上げピン56に対応して突き上げピン56の先端部を挿入させることが可能なピン挿入孔553(図4)が形成されている。このため、昇降ユニット52が上昇駆動されると、突き上げピン56の先端部がピン挿入孔553に挿入されるとともに、突き上げピン56の先端部と後端部との間に形成された段差面が下クランプ55の下面と当接する。これにより、突き上げピン56と下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)とが互いに係合する。この状態で昇降ユニット52がさらに上昇駆動されると、下クランプ55がクランプ受け555から離れ、突き上げピン56と下クランプ55とが係合した状態で一体的に上昇する。これにより、第2プレート54と一対の挟持部、つまり上側挟持部UHおよび下側挟持部DHとが一定の位置関係を保ったまま上昇する。
【0044】
図7は突き上げピンと下クランプとが係合した状態を示した図である。突き上げピン56と下クランプ55とが係合した時点では、第2プレート54が一対の挟持部UH,DHに挟持されたシートフィルムFに接触して該シートフィルムFが上方に突き上げられる。これにより、シートフィルムFが緊張し、該シートフィルムFに張力を発生させることができる。ここで、第2プレート54の上面542が円形に形成されるとともに、一対の挟持部UH,DHによりシートフィルムFの周縁部が全周にわたって保持(挟持)されているため、シートフィルムFに対して周方向に均一な張力を付与することができる。
【0045】
また、この実施形態では、突き上げピン56が下クランプ55と係合する係合部位の第2プレート54に対する移動方向Zにおける相対距離(以下、単に「相対距離」という)Dを調整することによって、シートフィルムFに発生させる張力の大きさをコントロールすることが可能となっている。具体的には、突き上げピン56の先端部と後端部との間に形成された段差面(突き上げピン56が下クランプ55と係合する係合部位)から第2プレート54の上面542までの距離(相対距離D)を調整することにより、シートフィルムFに発生させる張力の大きさを変更することが可能となっている。つまり、相対距離Dに応じて、第2プレート54がシートフィルムFと接触を開始してから突き上げピン56と下クランプ55とが係合するまでの間にシートフィルムFが第2プレート54によって移動方向Zに沿って突き上げられる量(以下、単に「突き上げ量」という)Qが変化する。したがって、相対距離Dが調整されることで、突き上げ量Qを変更し、シートフィルムFに発生する張力の大きさを調整することができる。
【0046】
図8は突き上げピンの構造を示す図である。下ベース部材51には移動方向Zに沿って貫通孔511が形成されており、貫通孔511に突き上げピン56が挿通されている。これにより、その先端側に係合部位(段差面)が設けられた突き上げピン56が下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)に向けて突設される。突き上げピン56の後端部561にはネジ溝が刻まれる一方、貫通孔511の内壁には突き上げピン56のネジと螺合するネジ溝が刻まれている。また、下ベース部材51の上面側に2つのナットからなるダブルナット516が突き上げピン56の後端部561に螺嵌されており、ダブルナット516により突き上げピン56が下ベース部材51に緩みなく締め付け固定される。突き上げピン56の先端部562は下クランプ55のピン挿入孔553に挿入可能とされている。そして、突き上げピン56の先端部562がピン挿入孔553に挿入されることで、突き上げピン56の後端部561と先端部562とを結合する段差面563(係合部位)が下クランプ55の下面554に当接する。段差面563と下クランプ55の下面554とは平行に形成され、面接触状態で当接する。
【0047】
このような構成によれば、ダブルナット516を緩めて突き上げピン56の頭部564を回転させていくことで、下ベース部材51の上面から段差面563までの移動方向Zにおける長さLが調整される。すなわち、突き上げピン56と下クランプ55とが互いに係合している状態では、下ベース部材51と下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)との間の間隙が調整される。そして、下ベース部材51の上面から段差面563までの移動方向Zにおける長さLを所定の長さに調整した後、ダブルナット516を締めることによって突き上げピン56を下ベース部材51に固定する。このように、下ベース部材51の上面から段差面563までの移動方向Zにおける長さLが調整されることで、相対距離Dが調整される。これにより、突き上げ量Qを変更し、シートフィルムFに発生する張力の大きさを自在に、しかも簡素な構成により調整することができる。したがって、使用するシートフィルムFの種類や膜厚に応じて最適な張力をシートフィルムFに与えることができる。
【0048】
図4に戻って説明を続ける。下クランプ55の下面周縁部には下クランプ55の水平方向における位置を固定するために、複数本の位置決めピン514が下方に延びるように取り付けられている。これら位置決めピン514は下ベース部材51に移動方向Zに沿って形成された貫通孔512に挿通されている。位置決めピン514と貫通孔512の内壁との間にはボールスプライン機構等が介在しており、位置決めピン514はボールスプライン機構等を介して移動方向Zに沿ってのみ可動(昇降)自在に支持される。つまり、下クランプ55は移動方向Zに直交する方向(水平方向)に移動するのを規制されながら下ベース部材51に対して移動方向Zに沿って昇降自在に支持される。このような構成によれば、昇降ユニット52(第2プレート54)を移動方向Zに沿って移動させたとしても、水平方向において第2プレート54と下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)との間の相対位置関係を確実に固定することができる。このため、第2プレート54と一対の挟持部UH,DHとが互いに水平方向にずれるのを防止することができる。
【0049】
また、もう一方のクランプ、つまり上クランプ35は昇降自在に支持された複数本のロッド356の下端に固着されている。この実施形態では、3本のロッド356が中心軸J回りに互いに等角度(120°)間隔で放射状に、上クランプ35から上方に伸びるように設けられている。複数本のロッド356の各々には、上クランプ35を移動方向Zに沿って昇降駆動させるためのエアシリンダ357が連結されている。そして、制御ユニット91からの動作指令に応じてエアシリンダ357が作動することで、上クランプ35を移動方向Zに沿って昇降させることができる。具体的には、上クランプ35を上昇させて第2プレート54に対するリング体RFの搬入出を可能とする一方、上クランプ35を下降させて下クランプ55とでリング体RFを挟持して固定することができる。
【0050】
このエアシリンダ357は、処理チャンバ1の外部に突設された支柱311により固定された円板状のプレート312に配設されており、エアシリンダ357から発生するパーティクル等の汚染物質が処理空間SP内に混入するのを防止することができる。なお、上クランプ35を昇降駆動させる駆動機構としては、エアシリンダに限らず、エアシリンダ以外の他の昇降駆動用アクチュエータを用いるようにしてもよい。
【0051】
また、エアシリンダ357と、該エアシリンダ357に圧縮空気を供給するための圧縮空気供給源との間には調圧弁358が介装されている。そして、制御ユニット91からの動作指令に応じて調圧弁358の開度が調整されることにより、ロッド356の推力を一定に保つことが可能となっている。この実施形態では、支持軸513が移動方向Zにおいて受ける加重圧力を検出する荷重センサ96が設けられており、後述するようにして荷重センサ96によって検出された加重圧力に基づいて制御ユニット91が調圧弁358の開度を調整し、ロッド356の推力を一定に保つようにフィードバック制御する。これにより、下クランプ55に載置されたリング体RFを上クランプ35により一定の押圧力で押圧することができる。すなわち、下側挟持部DH上に配置されたシートフィルムFを上側挟持部UHにより上方から一定の押圧力で押圧することが可能となっている。
【0052】
次に、上記のように構成された薄膜形成装置の組み立て手順およびメンテナンスについて説明する。上記した転写ユニットは、上側ブロック3と下側ブロック5とにより、より具体的には、上側ブロック3に設けられた第1プレート34と、下側ブロック5に設けられた第2プレート54とにより薄膜を形成されたシートフィルムFおよび基板Wを挟み込むことによって薄膜を基板Wに転写する。そのため、第1プレート34の上面と第2プレート54の下面との間の平行度が保たれていることが必要である。ここで、上側ブロック3は処理チャンバ1の上板11に、下側ブロック5は底板19にそれぞれ取り付けられている。そのため、上側ブロック3および下側ブロック5が処理チャンバ1に組み付けられた後で、両者の位置関係を調整することが必要となる。また、前記したように、シートフィルムFに適切な張力を与えるために突き上げピン56の高さ調整も必要である。
【0053】
従来、この種の基板処理装置において基板を減圧下で処理するための処理チャンバとしては、例えば金属ブロックを削り出して内部に処理空間となる空洞を形成したものが一般的に用いられていた。しかしながら、このような処理チャンバは非常に高コストであり、さらに上記のような組み付け後の調整やメンテナンスが難しいという問題があった。この実施形態では、以下の手順で組み立てを行うことにより、メンテナンス性を向上させている。
【0054】
図9はこの実施形態にかかる薄膜形成装置の組立手順を示すフローチャートである。この薄膜形成装置は、例えば以下の手順により組み立てることができる。まず、装置フレーム99に底板19を取り付ける(ステップS101)。次に、チャンバのフレーム10を底板19に取り付ける(ステップS102)。底板19へのフレーム10の固定は、上方からネジ199を締結することによって行い、しかも、この時点ではフレーム10の側面は全て開口しているので、作業を容易に行うことができる。
【0055】
そして、転写ユニットの上側ブロック3を、フレーム10と一体化された上板11に取り付ける。また、下側ブロック5を、装置フレーム99に取り付けられた底板19に取り付ける。これにより、上側ブロック3と下側ブロック5とが処理空間SP内で対向配置される。このように、上板11と一体化されたフレーム10、上側ブロック3、下側ブロック5を個別に搬入し据え付けることで、搬入時の重量を分散させて軽量の状態で各部を移動させれば済むので作業性が向上する。なお、ステップS102、S103についてはその順序を入れ替えてもよい。すなわち、上板11に上側ブロック3を装着しフレーム10と一体化したものを底板19に取り付けるようにしてもよい。
【0056】
この状態で、上側ブロック3と下側ブロック5との相対的な位置調整(例えば平行度の調整)や、突き上げピン56の高さ調整などの各種調整を行う(ステップS104)。この場合、フレーム10の側面は全て開口しているため、任意の方向から処理空間SP内へアクセスすることができるので、優れた作業性で調整作業を行うことができる。また、この時点でチャンバ主部を構成するフレーム10、上板11および底板19の位置関係は確定されているので、高い精度で位置調整を行うことができる。
【0057】
こうして位置調整を行った後、各側面パネル部材、すなわち前板13、一対の側板14および裏板16をフレーム10に装着すると(ステップS105)、図1に示す薄膜形成装置が完成する。
【0058】
なお、組み立て後においても、転写ユニットの微調整や処理チャンバ1内部の清掃などのメンテナンス作業が必要となる場合がある。このような場合には、必要に応じて側面パネル部材のうちいくつかを取り外せば転写ユニットへのアクセスが可能となりメンテナンス作業を行うことができる。この場合、側面パネル部材のみを取り外しフレーム10と底板19との間を切り離さないようにすることで、上側ブロック3と下側ブロック5との相対的な位置関係を維持することができる。したがって微調整のみを行えばよい。
【0059】
このように、この実施形態の処理チャンバ1では、側面パネル部材を着脱自在となっているため、転写ユニットを構成する上下ブロックの位置関係を動かすことなく転写ユニットにアクセスすることが可能であり、メンテナンス性に優れている。
【0060】
なお、このように処理チャンバ1をフレームとパネル部材との組み合わせにより構成し多くの開口部を設けることにより、処理チャンバ1の気密性の低下が懸念される。しかしながら、この種の薄膜形成装置において要求される真空度は数Pa程度であり、いわゆる高真空状態は必要とされない。各部の加工精度を適切に設定する等の配慮により、この程度の真空度を達成可能であることは本願発明者らの実験により確認済みである。
【0061】
次に、上記した薄膜形成装置の動作について図10ないし図12を参照しつつ説明する。図10ないし図12は図4の薄膜形成装置の動作を説明するための模式図である。本実施形態においては、処理空間SPへの基板WおよびシートフィルムFの搬入に先立って、各突き上げピン56において、下ベース部材53の上面から段差面563までの移動方向Zにおける長さLが使用されるシートフィルムFの種類や膜厚等に応じて予め調整されているものとする。
【0062】
最初に第1プレート34側に基板Wが搬入される。すなわち、制御ユニット91はリフタ駆動機構92に下降指令を与え、図10(a)に示すように、爪部材345を基板搬入位置に位置決めする。それに続いて、薄膜を形成すべき基板Wが扉131を通じて処理空間SP内に搬入され、爪部材345の上に載置される。その後、制御ユニット91はリフタ駆動機構92に対して上昇指令を与え、爪部材345を基板装着位置に移動させて基板Wの上面(非パターン形成面)を第1プレート34の下面342に密着させた状態で基板Wを位置決めする(図10(b))。これにより、第1プレート34に基板Wが装着される。
【0063】
一方、第2プレート54側では、シートフィルムFがリング体RFにより挟持された状態で処理空間SP内に搬入される。ここで、リング体RFを構成する一対のリングRup,Rdwに挟まれたシートフィルムFの表面(薄膜形成面)には予め薄膜が形成されており、薄膜形成面を上方に向けてシートフィルムFが扉131を通じて搬入される。このとき、上クランプ35はリング体RFの搬入を妨げることのないように上方に退避している。また、第2プレート54の上面542は下クランプ55(リング体RFが載置される載置面)の下方に位置している。このため、シートフィルムFが搬入される際に、シートフィルムFと第2プレート54とが接触するのを回避することができる。その結果、シートフィルムFに張力が発生していない状態で薄膜が部分的に乾燥して薄膜の均一な乾燥が阻害されてしまうのを防止することができる。
【0064】
そして、リング体RFが下クランプ55上に載置された後、上クランプ35が下降して下クランプ55に載置されたリング体RFが上クランプ35によって押圧される(図10(c))。これによって、シートフィルムFの周縁部が全周にわたって所定の押圧力で均一に押圧され、シートフィルムFにしわや折り曲げが発生するのを防止しながら、シートフィルムFが一対の挟持部、つまり上側挟持部UHおよび下側挟持部DHにより挟持された状態となる。
【0065】
こうして、基板WおよびシートフィルムFの搬入が完了すると、制御ユニット91は装置各部を制御し、以下に示すように薄膜を基板Wに転写する転写工程を実行する。まず、真空ポンプ95による処理空間SPの排気減圧を開始する。また、ヒータコントローラ93によって加熱ヒータ341に通電して第1プレート34を加熱して基板Wを所望の温度に加熱するとともに、ヒータコントローラ94によって加熱ヒータ541に通電して第2プレート54を加熱してシートフィルムFを所望の温度に加熱する。
【0066】
そして、処理空間SPが所望の圧力まで減圧されると、制御ユニット91より加重モータ53に信号が送られ、昇降ユニット52(第2プレート54)の上昇駆動を開始する。第2プレート54が上昇すると、一対の挟持部UH,DHに挟持されたシートフィルムFの裏面(非薄膜形成面)と第2プレート54の上面542とが接触して第2プレート54にシートフィルムFが装着される。このとき、第2プレート54の上面542の平面サイズはシートフィルムFの平面サイズよりも小さく形成されているため、第2プレート54上面542の全面がシートフィルムFにより覆われる。そして、第2プレート54の上面542がシートフィルムFに接触した状態で第2プレート54がさらに上昇すると、シートフィルムFが緊張し、該シートフィルムFに張力が発生する。つまり、一対の挟持部UH,DHに挟持されたシートフィルムFに第2プレート54が突き当てられてシートフィルムFに張力が発生する。その結果、シートフィルムFが加熱ヒータ541によって加熱され、熱膨張により伸張して弛んでいても、その弛みが取り除かれる。
【0067】
また、昇降ユニット52の上昇によって突き上げピン56がクランプ受け555上に載置された下クランプ55と係合する(図11(a))。これによって、移動方向Zにおける下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)に対する第2プレート54の相対位置が固定される。その結果、シートフィルムFに発生する張力の大きさが決定されて固定される。また、第2プレート54の上昇により、下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)がクランプ受け555から突き上げピン56に受け渡される。
【0068】
そして、第2プレート54の上昇とともに一対の挟持部UH,DHがシートフィルムFを挟持しながら移動方向Zに沿って変位する。このとき、上クランプ35に連結されたロッド356がエアシリンダ357内に後退してストロークが短くなると、エアシリンダ357内の圧力が上昇してロッド356の推力が増大する。その結果、シートフィルムFに対する押圧力が増大し、荷重センサ96によって検出される加重圧力が上昇する。そこで、制御ユニット91は荷重センサ96によって検出される加重圧力が一定となるように調圧弁358の開度を調整し、ロッド356の推力を一定に保つようにフィードバック制御する。つまり、シートフィルムFに対する押圧力が一定になるように、つまり第2プレート54がシートフィルムFに接触する前にシートフィルムFに与えられた押圧力に等しくなるように、制御ユニット91からの動作指令によって調圧弁358が制御される。そして、制御ユニット91は昇降ユニット52を上昇させるとともに、シートフィルムFへの押圧力が一定となるように調圧弁358を制御しながらロッド356をエアシリンダ357内に後退させてストロークを短くしていく。これにより、第2プレート54の上昇を阻害することなく、かつ一対の挟持部UH,DHによりシートフィルムFが良好かつ確実に保持される。
【0069】
また、下クランプ55(一対の挟持部)と突き上げピン56とが互いに係合した状態で一対の挟持部UH,DHと第2プレート54とが一体的に移動方向Zに沿って移動することで、決定された張力をシートフィルムFに付与した状態を維持したままシートフィルムFが上昇する。つまり、第2プレート54と一対の挟持部UH,DHとが一定の位置関係を保ったまま上昇するので、シートフィルムFに与えられた張力の大きさが変化するのを防止することができる。このため、シートフィルムFに張力を安定して与えながらシートフィルムFを基板Wに近接させていくことができる。
【0070】
また、下クランプ55と突き上げピン56とは、突き上げピン56の先端部562が下クランプ55のピン挿入孔553に挿入されることで係合している。このため、下クランプ55と突き上げピン56とが係合した状態で移動方向Zに沿って移動する際に、互いの位置関係がずれるのを防止することができる。
【0071】
そして、第2プレート54がさらに上昇すると、シートフィルムF上の薄膜が基板Wに密着し、基板Wへの薄膜の転写が開始される(図11(b))。また、処理空間SPを排気減圧したまま、基板WとシートフィルムFとが所定の加重で一定時間互いに押し付けられる。その間も基板WとシートフィルムFは所定の温度となるように加熱されている。薄膜が基板Wに押し付けられている間もシートフィルムFは一対の挟持部UH,DHにより挟持されながら、一定の張力、つまり下クランプ55と突き上げピン56とが係合することによって決定された張力が付与された状態となっている。このため、シートフィルムFにしわや折り曲げが発生するのを防止して、平坦で均一な膜厚の薄膜を基板Wに形成することができる。
【0072】
そして、一連の加重操作が終了して転写処理が完了すると、ヒータコントローラ93、94により加熱ヒータ341、541の作動を停止させて第1、第2プレート34,54の加熱を停止すると同時に、爪部材345を側方に退避させて爪部材345による基板保持を解除する(図11(c))。続いて、加重の状態が零となるように制御ユニット91から加重モータ53に信号を送り、昇降ユニット52および一対の挟持部UH,DH(上クランプ35、リング体RF、下クランプ55)を一体的に下降させる(図12(a))。すなわち、制御ユニット91はシートフィルムFに対する押圧力が一定となるように調圧弁358を制御しながらロッド356をエアシリンダ357内から進出させてストロークを長くしていく。その後、昇降ユニット52が下降し、上クランプ35により上方から押圧された状態で下クランプ55およびリング体RFがクランプ受け555上に受け渡される(図12(b))。さらに、昇降ユニット52が下降し、昇降ユニット52(第2プレート54)が転写前の初期位置に復帰すると、突き上げピン56が下クランプ55から離れる。また、上クランプ35によるリング体RFへの押圧が解除される(図12(c))。これにより、下クランプ55およびリング体RFがクランプ受け555上に支持された状態となる。
【0073】
こうして、第2プレート54が転写前の初期位置に戻った後、真空ポンプ95を停止させる。なお、上記のようにして薄膜の密着が完了すると、基板Wは薄膜を挟んでシートフィルムFと一体となっており、この一体化状態のままリング体RFを処理チャンバ1から取り出し、シートフィルムFを剥離する剥離装置(図示せず)に搬送する。
【0074】
以上のように、この実施形態によれば、転写ユニットを収容する処理チャンバ1の側面を着脱自在のパネル部材により構成している。そのため、転写ユニットの調整を行う際には必要に応じて側面パネル部材のいくつかを取り外すことにより転写ユニットが露出し、作業性よくメンテナンスを行うことが可能である。また、転写ユニットの上側ブロック3が固定された上板13と下側ブロック5が固定された底板19とをフレーム10により一体的に結合したチャンバ主部に対して側面パネル部材を取り付ける構成としているので、チャンバ主部に取り付けられた上側ブロック3と下側ブロック5との位置関係が変動することがなく、調整作業を容易に行うことが可能となる。
【0075】
また、処理チャンバ1をフレーム10と板材との組み合わせにより構成し、またフレーム10をアングル101の組み合わせによって構成しているため、金属ブロックを削り出して製造する従来の処理チャンバよりも、その製造コストを大きく低減することが可能である。
【0076】
また、必要に応じて側面パネル部材を交換可能であるため、外部装置との組み合わせに応じて変更する必要のある部位、例えば排気管951を接続する排気口161などを側面パネル部材に設けておくことによって、装置の仕様変更にも側面パネル部材の変更のみで容易に対応することができる。
【0077】
また、この実施形態の転写ユニットでは、昇降ユニット52の移動により、一対の挟持部UH,DHに保持されたシートフィルムFに対して第2プレート54が突き当ててシートフィルムFに張力を発生させている。また、一対の挟持部UH,DH(下クランプ55)と突き上げピン56(段差面563)とを互いに係合させて移動方向Zにおける一対の挟持部UH,DHに対する第2プレート54の相対位置を固定している。ここで、突き上げピン56(段差面563)は第2プレート54に対する移動方向Zにおける相対位置が規定された状態で昇降ユニット52に設けられているため、一対の挟持部UH,DHと突き上げピン56とが係合することで、移動方向Zにおける一対の挟持部UH,DHに対する第2プレート54の相対位置が固定される。これにより、シートフィルムFに発生した張力が決定されるとともに固定される。したがって、シートフィルムFに発生させた張力を該シートフィルムFに安定して付与することができる。しかも、第2プレート54の上昇とともに、一対の挟持部UH,DH(下クランプ55)と突き上げピン56(段差面563)とを単に物理的に係合させることのみにより、シートフィルムFに付与する張力を安定させることができ、装置を簡素に構成することができる。
【0078】
また、この実施形態によれば、一対の挟持部UH,DHが移動方向Zに沿って移動自在に設けられており、昇降ユニット52の移動によって、互いに係合した下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)と突き上げピン56とを一体的に移動方向Zに沿って移動させて転写処理を実行している。このため、移動方向Zにおける一対の挟持部UH,DHに対する第2プレート54の相対位置を固定した状態で昇降ユニット52が移動され、決定された張力をシートフィルムFに付与した状態を維持したまま転写処理が実行される。したがって、シートフィルムFに付与される張力を一定値(決定された張力)に保ったまま該シートフィルムF上の薄膜を基板Wに転写することができ、基板W上に薄膜を良好に形成することができる。
【0079】
また、この実施形態によれば、突き上げピン56の段差面563の第2プレート54に対する移動方向Zにおける相対距離Dが調整可能とされ、相対距離Dを調整することで、段差面563に係合した下クランプ55(一対の挟持部UH,DH)に対する第2プレート54の移動方向Zにおける相対位置を変更することができる。これにより、シートフィルムFに発生する張力の大きさを自在に調整することができる。したがって、使用するシートフィルムFの種類や膜厚に応じて最適な張力をシートフィルムFに付与することができる。
【0080】
以上説明したように、この実施形態では、上側ブロック3および下側ブロック5が本発明の「転写ユニット」を構成している。また、処理チャンバ1を構成する上板11および底板19がそれぞれ本発明の「上側プレート部」および「下側プレート部」として機能している。また、前板13、側板14および裏板16が本発明の「側面パネル部材」として機能している。また、フレーム10が本発明の「連結部」として機能しており、フレーム10を構成するアングル101が本発明の「柱部材」および「梁部材」に相当している。
【0081】
また、上記実施形態においては、真空ポンプ95が本発明の「減圧手段」として機能する一方、底板19に取り付けられた昇降ユニット52が本発明の「駆動機構」として機能している。
【0082】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態の処理チャンバ1は略直方体形状のものであるが、例えば側面が湾曲した円柱形状のものやその他の形状のものであってもよい。また、上記実施形態の処理チャンバ1は4つの側面を構成する側面パネル部材が全て着脱自在に構成されているが、少なくとも1つがフレームに固定されていてもよい。また側面パネル部材の枚数も上記に限定されず任意である。
【0083】
また、上記実施形態では、チャンバ主部を上板11、底板19および両者を結合するフレーム10とにより構成しているが、このような構成に限定されない。例えば、金属ブロックの内部をくり抜いて形成したチャンバ主部の側面に開口部を設け上板、底板およびフレームを初めから一体のチャンバ主部として構成し、該開口部に着脱自在のパネルを取り付ける構成としてもよい。また、板状の材料に開口窓を設けたものを組み合わせてフレームを構成するようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、装置フレーム99に固定された底板19上にフレーム10を取り付けることにより処理チャンバ1を実現するようにしているが、このような構成に限定されず、例えば上板11とほぼ同じサイズの底板でフレーム10の下面を覆うことで処理チャンバの下面を構成するようにしてもよい。またフレーム10と底板19との間を溶接等により固定してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、上板11、底板19、フレーム10および側面パネル部材13等をいずれも金属製としているが、必要に応じて、あるいは目的に応じて、これらのいずれかを樹脂により形成してもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、側板14等の側面パネル部材をフレーム10にネジ止めする際にシート状のシール部材148を挟み込むことによって空気漏れを防止しているが、処理空間SPを密封するシール方法はこれに限定されず、例えば図13に示すようにしてもよい。
【0087】
図13はシール方法の他の例を示す図である。この例では、裏板16の周縁部に設けられたネジ止め用の貫通孔165同士を結んだ仮想線よりも内側に環状の溝を形成し、この溝に例えばゴム製でリング状のOリングにより構成されたシール部材167を嵌め込んでフレーム10に取り付けることにより空気漏れを防止している。同様に、前板13および側板14にも溝を設けOリング137、147を嵌め込むことができる。特に着脱を行う頻度が高い場合には、着脱の繰り返しに伴うシール部材の変形や劣化を抑え、また作業性も良好であるという点で、シール部材をOリングにより構成することが好ましい。
【0088】
また、上記実施形態では、前板13の開口部134に対し開閉自在に設けた扉131を開閉することにより基板等の出し入れを行うように構成しているが、図14に示すように、ゲートバルブによって開口部を開閉するようにしてもよい。このようにすると、扉の開閉を自動で行うことが容易となり、装置の自動化にも対応することができる。
【0089】
図14は扉構造の他の例を示す図である。この例では、上記実施形態における前板13に代えて設けられた前板15に穿設された開口部154を取り囲むように環状の溝が形成され、この溝にOリング152が嵌め込まれている。扉151は溝の外周よりも一回り大きな板状部材であり、装置フレーム99に固定された駆動機構153により移動可能に支持されている。駆動機構153は扉151をZ方向に沿って図の上方に移動させた後、Y方向に沿って扉151を前板15に向けて前進させることにより、開口部154を扉151により覆う。また、これとは逆の動作により開口部154を露出させる。扉151と前板15との隙間はOリング152によって塞がれ空気漏れが防止される。このようなゲートバルブの構造およびその駆動機構としては公知のものを適用可能であるので、詳しい説明を省略する。
【0090】
また、本発明は、上記実施形態のように半導体基板に薄膜を転写する場合に限らず、電子部品材料関係であればマルチチップモジュール等の実装関係の基板や液晶関係の基板に薄膜を転写する場合にも適用できる。また、薄膜についても絶縁膜に限らず、金属系の薄膜を基板に転写してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板に薄膜を形成する薄膜形成装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】この発明にかかる薄膜形成装置の一実施形態を示す図である。
【図2】処理チャンバの構造を示す第1の分解斜視図である。
【図3】処理チャンバの構造を示す第2の分解斜視図である。
【図4】この発明にかかる薄膜形成装置の転写ユニットの構成を示す図である。
【図5】リング体およびリング体を挟持する構成を説明するための断面図である。
【図6】図4のA−A’切断面を上方から見たときの薄膜形成装置を示す図である。
【図7】突き上げピンと下クランプとが係合した状態を示した図である。
【図8】突き上げピンの構造を示す図である。
【図9】この実施形態にかかる薄膜形成装置の組立手順を示すフローチャートである。
【図10】図4の薄膜形成装置の動作を説明するための第1の模式図である。
【図11】図4の薄膜形成装置の動作を説明するための第2の模式図である。
【図12】図4の薄膜形成装置の動作を説明するための第3の模式図である。
【図13】シール方法の他の例を示す図である。
【図14】扉構造の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
1…処理チャンバ
3…上側ブロック(転写ユニット)
5…下側ブロック(転写ユニット)
10…フレーム(連結部、枠体)
11…上板(上側プレート部)
19…底板(下側プレート部)
13…前板(側面パネル部材)
14…側板(側面パネル部材)
16…裏板(側面パネル部材)
52…昇降ユニット(駆動機構)
95…真空ポンプ(減圧手段)
101…アングル(柱部材、梁部材)
131…扉
137、147、167…Oリング(シール部材)
138、148、168…シール部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離当接可能に構成された上側ブロックと下側ブロックとの間に、表面に薄膜を形成された担持体と、基板とを挟み込むことにより、前記薄膜を前記基板表面に転写させる転写ユニットと、
前記上側ブロックおよび前記下側ブロックを内部に収容する処理チャンバと
を備え、
前記処理チャンバは、
前記上側ブロックを支持する上側プレート部と、前記下側ブロックを支持する下側プレート部とを、側面に開口を有する連結部によって連結した構造を有するチャンバ主部と、
前記チャンバ主部に対し着脱自在に構成され、シール部材を介して前記連結部の前記開口を塞ぐように装着される側面パネル部材と
を備えることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項2】
前記チャンバ主部は、前記上側プレート部と前記下側プレート部との間を前記連結部としての複数の柱状部材によって連結した構造を有する請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記複数の柱状部材は梁部材によって連結されて該梁部材とともに一体的に前記連結部としての枠体を構成しており、前記梁部材と前記柱状部材とにより囲まれて前記開口が形成されるとともに、前記枠体に前記上側プレート部と前記下側プレート部とがそれぞれ取り付けられて前記チャンバ主部を構成している請求項2に記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
開閉自在の扉を有する前記側面パネル部材を備える請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
排気口を穿設された前記側面パネル部材と、前記排気口を介して前記処理チャンバ内を減圧する減圧手段とを備える請求項1ないし4のいずれかに記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記上側ブロックと前記下側ブロックとを離当接させるための駆動機構を備え、該駆動機構が前記上側プレート部および前記下側プレート部の少なくとも一方に取り付けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の薄膜形成装置。
【請求項1】
離当接可能に構成された上側ブロックと下側ブロックとの間に、表面に薄膜を形成された担持体と、基板とを挟み込むことにより、前記薄膜を前記基板表面に転写させる転写ユニットと、
前記上側ブロックおよび前記下側ブロックを内部に収容する処理チャンバと
を備え、
前記処理チャンバは、
前記上側ブロックを支持する上側プレート部と、前記下側ブロックを支持する下側プレート部とを、側面に開口を有する連結部によって連結した構造を有するチャンバ主部と、
前記チャンバ主部に対し着脱自在に構成され、シール部材を介して前記連結部の前記開口を塞ぐように装着される側面パネル部材と
を備えることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項2】
前記チャンバ主部は、前記上側プレート部と前記下側プレート部との間を前記連結部としての複数の柱状部材によって連結した構造を有する請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記複数の柱状部材は梁部材によって連結されて該梁部材とともに一体的に前記連結部としての枠体を構成しており、前記梁部材と前記柱状部材とにより囲まれて前記開口が形成されるとともに、前記枠体に前記上側プレート部と前記下側プレート部とがそれぞれ取り付けられて前記チャンバ主部を構成している請求項2に記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
開閉自在の扉を有する前記側面パネル部材を備える請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
排気口を穿設された前記側面パネル部材と、前記排気口を介して前記処理チャンバ内を減圧する減圧手段とを備える請求項1ないし4のいずれかに記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記上側ブロックと前記下側ブロックとを離当接させるための駆動機構を備え、該駆動機構が前記上側プレート部および前記下側プレート部の少なくとも一方に取り付けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の薄膜形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−135485(P2010−135485A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308598(P2008−308598)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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