説明

薬液供給システム及び薬液供給ポンプ

【課題】薬液の吸引又は吐出の流量を高精度に制御し、しかも発熱による弊害等を排除することができる薬液供給システムを提供する。
【解決手段】薬液供給ポンプ10のポンプハウジング11内には容積可変部材としてのベローズ式仕切部材12が収容されており、このベローズ式仕切部材12によってポンプ室13と圧力作用室14とが区画形成されている。圧力作用室14には電空レギュレータ28が接続されている。ベローズ式仕切部材12にはロッド33が連結され、そのロッド33の移動量が位置検出器36により検出される。コントローラ40は、薬液の吸引又は吐出時においてベローズの目標作動量を設定するとともに、該目標作動量と位置検出器36による検出結果から求めた実際の作動量との偏差に基づいて電空レギュレータ28を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液供給ポンプによって薬液を吸入した上で吐出し、その吐出された薬液を滴下させるための薬液供給システムに関するものであり、具体的にはフォトレジスト液等の薬液塗布工程など半導体製造装置の薬液使用工程に用いるのに好適な薬液供給システムに関する。また、同じくフォトレジスト液等の薬液塗布工程など半導体製造装置の薬液使用工程に用いるのに好適な薬液供給ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の薬液使用工程においては、フォトレジスト液等の薬液を半導体ウエハに所定量ずつ塗布するために薬液供給ポンプが用いられる。その薬液供給ポンプとして、薬液を充填したポンプ室と圧縮空気を導入する圧力作用室とをベローズやダイアフラム等の可撓性膜で仕切り、圧力作用室内の空気圧力を可変調整することにより可撓性膜を変形させて薬液の吸引及び吐出を行うようにしたものがある。
【0003】
上記の如く空気圧力により可撓性膜を変形させる構成では、可撓性膜の変形速度を細かく調整することが困難であり、薬液の吐出流量を高精度に制御することができないという問題があった。
【0004】
これに対し、空気圧力に代えて電動モータにより可撓性膜を変形させ、その変形により薬液の吸入及び吐出を行うようにした薬液供給ポンプがある(例えば特許文献1参照)。こうした電動モータによる制御によれば、可撓性膜の変形速度を細かく制御することが可能となる。
【0005】
しかしながら、電動モータを使用した薬液供給ポンプの場合、高負荷又は高速で連続動作を行うと発熱するため、薬液の温度管理が必要となる場合には使用できないという問題があった。また、半導体製造工程で使用される薬液、特に塩酸を使用する場合、接液材質として4フッ化エチレン樹脂(商標名テフロン)等を使用して耐食を防いでも薬液が透過するおそれがあるため、電動モータの使用には不適であるという問題があった。その他、電動モータを有する構成では、動力伝達や減速のために複雑な機構を要する場合があることから高価なものとなり、しかもポンプの小型化が妨げられるといった問題があった。
【特許文献1】特開平10−54368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、薬液の吸引又は吐出の流量を高精度に制御し、しかも発熱による弊害等を排除することができる薬液供給システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下では、理解を容易にするため、発明の実施の形態において対応する構成例を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0008】
手段1.薬液を充填するためのポンプ室(ポンプ室13)と、容積可変部材(ベローズ式仕切部材12)により前記ポンプ室から仕切られてなる圧力作用室(圧力作用室14)とを有し、その圧力作用室内の気体圧力に応じて前記容積可変部材を作動させ、その作動に伴う前記ポンプ室の容積変化に基づいて前記薬液を吸引又は吐出する薬液供給ポンプ(薬液供給ポンプ10)と、
前記圧力作用室に供給される気体の圧力を調整する圧力調整手段(電空レギュレータ28)と、
前記容積可変部材の作動量を検出する作動量検出手段(位置検出器36)と、
前記薬液供給ポンプによる薬液の吸引又は吐出時において前記容積可変部材の目標作動量を設定するとともに、該目標作動量と前記作動量検出手段による検出結果から求めた実際の作動量との偏差に基づいて前記圧力調整手段を制御する制御手段(コントローラ40)と、
を備えたことを特徴とする薬液供給システム。
【0009】
手段1によれば、薬液供給ポンプによる薬液の吸引又は吐出時において、容積可変部材の目標作動量が設定され、該目標作動量と前記作動量検出手段による検出結果から求めた実際の作動量との偏差に基づいて圧力調整手段が制御される。かかる場合、容積可変部材の作動量とポンプ室の容積変化とは概ね相関を有するため、上記のように容積可変部材の作動量をフィードバック制御することで、実質的にはポンプ室の容積変化が望みとおりに制御できるようになる。これにより、薬液の吸引流量又は吐出流量を所望とする流量に高精度に制御することが可能となる。また、薬液供給ポンプは、圧力調整手段により調整される気体圧力(例えば空気圧力)を駆動源として薬液の吸引又は吐出を行うため、電動モータによる流量制御を行う電動式システムとは異なり、熱による弊害が生じるおそれがなく、温度管理を要する薬液であっても好適に使用できる。
【0010】
例えば、吐出流量のフィードバック制御手法としては、薬液の吐出通路に流量センサや可変絞り等を設ける構成も考えられるが、かかる構成では、センサや絞り等の設置部位における液溜まりに起因して薬液の劣化等が生じたり、薬液によるセンサ等の腐食を防ぐために特殊加工が強いられたりするといった不都合が生じる。この点、本手段の構成によれば上記不都合のおそれはなく、簡易なシステム構成が実現でき、ひいてはシステムの小型化や低コスト化を図ることができる。
【0011】
手段2.前記作動量検出手段による検出結果に基づいて薬液の吐出流量を算出する手段を更に備えたことを特徴とする手段1に記載の薬液供給システム。
【0012】
上記のとおり容積可変部材の作動量とポンプ室の容積変化とは相関を有するため、作動量検出手段による検出結果に基づいて薬液の吐出流量の算出が可能となる。仮に、例えば薬液の流通通路(吐出通路等)に設けた流量センサにより吐出流量を計測する構成では、温度変化等による薬液の特性変化(比重や粘性等の変化)を考慮する必要が生じるが、上記手段によれば、薬液の特性変化に影響されることなく、ポンプ室の容積変化に対応して吐出流量の算出が可能となる。
【0013】
手段3.前記制御手段は、前記目標作動量として容積可変部材の移動速度の目標値を設定するとともに、該目標値と、前記作動量検出手段による検出結果を基に求めた実際の容積可変部材の移動速度との偏差に基づいて前記圧力調整手段を制御することを特徴とする手段1又は2に記載の薬液供給システム。
【0014】
手段3によれば、容積可変部材の移動速度が望みとおりに制御できるため、薬液の吐出動作が繰り返し行われる場合にも、毎回適切な薬液吐出動作が実現できる。
【0015】
手段4.前記容積可変部材の作動量とポンプ吐出量との関係を規定しておき、前記制御手段は、前記関係を用い都度の流量指令値に基づいて前記移動速度の目標値を設定することを特徴とする手段3に記載の薬液供給システム。
【0016】
手段4によれば、容積可変部材の作動量とポンプ吐出量との関係を規定しておき、該関係を用い、都度の流量指令値に基づいて容積可変部材の移動速度の目標値を設定する。この場合、前記移動速度の目標値を容易に設定することができる。
【0017】
手段5.前記容積可変部材の作動範囲内において複数に分割した区間毎に容積可変部材の作動量とポンプ吐出量との関係を線形化する手段を備え、前記制御手段は、前記線形化した関係を用いて前記圧力調整手段を制御することを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0018】
前述したように、容積可変部材の作動量とポンプ室の容積変化(ポンプ吐出量)とは概ね相関を有するが、厳密には容積可変部材として何を使用するか等によっては容積可変部材の作動量とポンプ室の容積変化とが非線形になると考えられる。この点、手段5では、容積可変部材の作動範囲内において複数に分割した区間毎に容積可変部材の作動量とポンプ吐出量との関係を線形化し、該線形化した関係を用いて圧力調整手段を制御する。これにより、ポンプ室内の容積を適正に変化させることができ、ひいては薬液の吸引流量又は吐出流量の制御精度が向上する。
【0019】
手段6.前記薬液供給ポンプの容積可変部材として軸方向に伸縮自在のベローズ(ベローズ15)を用い、前記作動量検出手段により、前記容積可変部材の作動量として前記ベローズの伸縮量が検出される薬液供給システムであって、
前記制御手段は、前記ベローズの伸縮量に基づいて前記圧力調整手段を制御することを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0020】
ベローズはその軸方向に伸縮し、その際、ベローズの伸縮量に対するポンプ室の容積変化量(すなわち、吸引/吐出時の薬液量)がほぼ線形となる。故に、ベローズの伸縮量に基づいて圧力調整手段を制御することにより、ポンプ室内の容積を適正に変化させることができ、ひいては薬液の吸引流量又は吐出流量の制御精度が向上する。
【0021】
手段7.前記薬液供給ポンプの容積可変部材としてダイアフラム(ダイアフラム53)を用い、前記作動量検出手段により、前記容積可変部材の作動量として前記ダイアフラムの変形量が検出される薬液供給システムであって、
前記ダイアフラムの変形範囲内において複数に分割した区間毎にダイアフラム変形量とポンプ吐出量との関係を線形化する手段を備え、前記制御手段は、前記線形化した関係を用いて前記圧力調整手段を制御することを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0022】
ダイアフラムを用いた薬液供給システムでは、ベローズを用いたシステムとは異なり、ダイアフラム変形量に対するポンプ室の容積変化量(すなわち、吸引/吐出時の薬液量)が線形とならない。ただし、ダイアフラムの変形範囲を複数の区間に分割し、各区間について見れば、ダイアフラム変形量に対するポンプ室の容積変化量の関係を線形特性に近似することができる。かかる場合、手段7では、ダイアフラムの変形範囲内において複数に分割した区間毎にダイアフラム変形量とポンプ吐出量との関係を線形化し、該線形化した関係を用いて圧力調整手段を制御する。これにより、ポンプ室内の容積を適正に変化させることができ、ひいては薬液の吸引流量又は吐出流量の制御精度が向上する。
【0023】
容積可変部材としてダイアフラムを用いた構成では、ベローズを用いた構成と比して液溜まりが少ないといったメリットがある。故に、液溜まりが少なく、かつ高精度な薬液流量制御を可能とする薬液供給システムが実現できる。
【0024】
手段8.前記各区間の境界点でのダイアフラム変形量とポンプ吐出量とに基づく直線補間によりダイアフラム変形量とポンプ吐出量との関係を線形化することを特徴とする手段7に記載の薬液供給システム。
【0025】
手段8によれば、前記各区間の境界点でのダイアフラム変形量とポンプ吐出量との各データをあらかじめ用意しておけば、その各データに基づく直線補間によりダイアフラム変形量とポンプ吐出量との関係の線形化が可能となる。かかる場合、上記関係の線形化を簡易に実現することができる。
【0026】
手段9.前記圧力作用室側において前記容積可変部材に被検出体(ロッド33)を連結し、前記作動量検出手段は、前記容積可変部材の作動量として前記被検出体の移動量を検出することを特徴とする手段1乃至8のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0027】
手段9によれば、容積可変部材の作動に伴う被検出体の移動が、ポンプ室から隔離された圧力作用室側で検出されるため、作動量検出手段を構成する位置検出器等が薬液に晒されるおそれはない。故に、位置検出器等について薬液による腐食防止対策を施す必要はなく、簡易で且つ安価なシステムが実現できる。
【0028】
手段10.前記薬液供給ポンプを複数備え、これら各ポンプを交互に吸引動作及び吐出動作させることを特徴とする手段1乃至9のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0029】
上記構成の薬液供給ポンプでは、同一のポンプ室により薬液の吸引及び吐出が交互に繰り返されるため、単一の薬液供給ポンプを用いた構成では、薬液の吐出が間欠的に行われることになる。この点、手段10のように複数の薬液供給ポンプを交互に吸引動作及び吐出動作させることにより、薬液の吐出を途切れさせることなく連続的に実施することが可能となる。
【0030】
特に、既述したとおり容積可変部材の移動速度をフィードバック制御する構成では、各ポンプでの薬液吐出に要する時間を毎回一定とすることができるため、薬液供給の安定化を図ることができる。
【0031】
手段11.前記圧力作用室内の気体圧力とは相反する向きに前記容積可変部材を付勢する付勢手段(圧縮コイルバネ35)を設けた薬液供給ポンプを適用し、
前記作動量検出手段により検出した前記容積可変部材の作動量と前記圧力作用室内の気体圧力とに基づいて前記ポンプ室内の圧力を算出する手段と、
該算出したポンプ室内の圧力により当該ポンプ室の圧力制御を実施する手段とを備えたことを特徴とする手段1乃至10のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0032】
手段11では、容積可変部材には、その一方の側から圧力作用室内の気体圧力が作用し、他方の側から付勢手段による付勢力とポンプ室内の圧力とが作用する。そして、それらの力が均衡した位置に容積可変部材が制御される。この場合、圧力作用室内の気体圧力により容積可変部材が受ける力をFs、付勢手段により容積可変部材が受ける力をFb、ポンプ室内の圧力により容積可変部材が受ける力をFpとすると、
Fs=Fb+Fp
の関係が成立する。ここで、Fb(付勢手段により容積可変部材が受ける力)は、容積可変部材の作動量に相関しており、容積可変部材の作動量に基づいて算出できる。Fs(圧力作用室内の気体圧力により容積可変部材が受ける力)は、圧力作用室内の気体圧力から算出できる。また、ポンプ室内の圧力は、Fp(ポンプ室内の圧力により容積可変部材が受ける力)と容積可変部材の受圧面積とから算出できる。以上により、容積可変部材の作動量と圧力作用室内の気体圧力とに基づいてポンプ室内の圧力が算出できる。そして、このポンプ室内の圧力により当該ポンプ室内の圧力制御を実施することで、適正な圧力制御が可能となる。
【0033】
また、手段11の構成では、ポンプ室内の圧力を検出するための圧力センサが不要となる。これにより、薬液に直接晒されるセンサ装置等がなくなるために、薬液による腐食防止対策が強いられることはなく、構成の簡素化やコストの低減を図ることができる。
【0034】
手段12.前記圧力作用室内の気体圧力とは相反する向きに前記容積可変部材を付勢する付勢手段(圧縮コイルバネ35)を設けた薬液供給ポンプを適用し、
前記作動量検出手段により検出した前記容積可変部材の作動量と前記圧力作用室内の気体圧力とに基づいて前記ポンプ室内の圧力を算出する手段と、
該算出したポンプ室内の圧力により、該ポンプ室に通じる薬液吐出通路で目詰まりが発生したかどうかを判定する手段とを備えたことを特徴とする手段1乃至10のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0035】
前記手段11で説明したとおり、圧力作用室内の気体圧力により容積可変部材が受ける力(Fs)と、付勢手段により容積可変部材が受ける力(Fb)と、ポンプ室内の圧力により容積可変部材が受ける力(Fp)とのバランスにより、
Fs=Fb+Fp
の関係が成立し、かかる場合、容積可変部材の作動量と圧力作用室内の気体圧力とに基づいてポンプ室内の圧力が算出できる。このとき、薬液吐出経路で目詰まりが生じると、薬液吐出量が同一であっても、圧力損失によりポンプ室内の圧力上昇が生じる。そのため、目詰まりの発生が判定できる。
【0036】
例えば、所定の吐出流量で吐出量制御を行う場合の圧力判定値をあらかじめ定めておき、前記算出したポンプ室内の圧力が前記圧力判定値よりも大きくなった時に目詰まりが生じたと判定すると良い。圧力判定値は、初期(新品時)の圧力値を基に定められると良い。目詰まり判定を実施することにより、目詰まりに起因するプロセスの不具合を解消することができる。
【0037】
また、手段12の構成では、ポンプ室内の圧力を検出するための圧力センサが不要となる。これにより、薬液に直接晒されるセンサ装置等がなくなるために、薬液による腐食防止対策が強いられることはなく、構成の簡素化やコストの低減を図ることができる。
【0038】
手段13.前記ポンプ室に通じる吸引通路側に吸引バルブ(吸引バルブ23)を設けるとともに、同ポンプ室に通じる吐出通路側に吐出バルブ(吐出バルブ25)を設けた薬液供給ポンプを適用し、
前記容積可変部材の作動に伴う薬液の吐出時に前記吸引バルブを閉、前記吐出バルブを開とし、該吐出の終了後において前記吸引バルブを閉、前記吐出バルブを開とした状態を一時的に継続したまま前記容積可変部材の作動を反転させて薬液の吸引を開始することを特徴とする手段1乃至12のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0039】
手段13によれば、薬液供給ポンプにおいて薬液の吐出時には、吸引バルブが閉、吐出バルブが開とされ、容積可変部材の作動に伴いポンプ室から薬液が吐出される。そして、薬液の吐出終了後において吸引バルブが閉、吐出バルブが開とされた状態が一時的に継続され、その状態のまま容積可変部材の作動が反転されて薬液の吸引が開始される。このとき、吸引バルブが閉、吐出バルブが開とされた状態での薬液の吸引動作によりサックバックが行われる。これにより、薬液滴下ノズル等における液だれが防止できる。上記構成ではサックバック用の開閉弁が不要となるため、構成の簡素化が実現できる。
【0040】
手段14.薬液の吐出終了後において前記吸引バルブを閉、前記吐出バルブを開とした状態で薬液の吸引動作を実施する時間、又は吸引速度を可変に制御することを特徴とする手段13に記載の薬液供給システム。
【0041】
手段14によれば、薬液のサックバック動作を任意に制御でき、サックバック量を望みとおりに制御することが可能となる。
【0042】
手段15.薬液を充填するためのポンプ室(ポンプ室105)と、ダイアフラム(ダイアフラム103)により前記ポンプ室から仕切られてなるダイアフラム操作室(ダイアフラム操作室106)とを有し、そのダイアフラム操作室の容積変化に応じて前記ダイアフラムを撓み変形させ、その撓み変形に伴う前記ポンプ室の容積変化に基づいて前記薬液を吸引又は吐出する薬液供給ポンプであって、
前記ダイアフラム操作室と該ダイアフラム操作室に連通された流体室(流体室123)に非圧縮性流体を充填するとともに、前記流体室の容積を作動量に対してリニアに変化させる可動体(プランジャ119)を設け、該可動体を挟んで前記ダイアフラム操作室とは逆側に設けられた圧力操作室(空圧操作室122)に、該圧力操作室内における気体の圧力を調整するための圧力調整手段(電空レギュレータ127)を接続したことを特徴とする薬液供給ポンプ。
【0043】
手段15の薬液供給ポンプでは、圧力調整手段により圧力操作室内における気体の圧力が調整され、その圧力調整により可動体が作動する。可動体が作動すると、その作動量に対してリニアに流体室の容積が変化し、それに対応してダイアフラム操作室の容積が変化する。そして、ダイアフラム操作室の容積変化に応じてダイアフラムが撓み変形し、そのダイアフラム変形に伴うポンプ室の容積変化に基づいて薬液の吸引又は吐出が行われる。このとき、ダイアフラム操作室及び流体室には非圧縮性流体が充填されており、流体室の容積変化とダイアフラム操作室の容積変化とは一致する(一方の増加分が他方の減少分となる)。また、可動体の作動量に対する流体室の容積変化がリニア(線形)なものとなっている。したがって、可動体の作動量に基づいて薬液の吸引又は吐出時の流量を高精度に制御することが可能となる。
【0044】
手段16.前記ダイアフラムの有効断面積よりも前記可動体の有効断面積を小さくしたことを特徴とする手段15に記載の薬液供給ポンプ。
【0045】
手段16によれば、ダイアフラムの有効断面積よりも可動体の有効断面積が小さいため、ダイアフラムを撓み変形させる際、ダイアフラムの変形量に比して可動体の作動量は大きくなる。故に、ダイアフラムの撓み変形量を細かく制御することができる。
【0046】
手段17.前記可動体は、前記流体室に対向する側の面積が比較的小さく、前記圧力操作室に対向する側の面積が比較的大きい形状を有するプランジャであることを特徴とする手段15又は16に記載の薬液供給ポンプ。
【0047】
手段17によれば、プランジャにおいて圧力操作室側の受圧面積が比較的大きいことから、該プランジャを気体圧力で移動させる場合に十分な力を付与することができる。これにより、プランジャの応答性が向上し、ひいてはダイアフラムの変形速度(薬液の吐出量等)を任意に制御することができるようになる。
【0048】
手段18.手段15乃至17のいずれかに記載の薬液供給ポンプと、
前記可動体の作動量を検出する作動量検出手段(位置検出器135)と、
前記薬液供給ポンプによる薬液の吸引又は吐出時において前記可動体の目標作動量を設定するとともに、該目標作動量と前記作動量検出手段による検出結果から求めた実際の作動量との偏差に基づいて前記圧力調整手段を制御する制御手段(コントローラ140)と、
を備えたことを特徴とする薬液供給システム。
【0049】
手段18によれば、薬液供給ポンプによる薬液の吸引又は吐出時において、可動体(気体圧力により作動量が制御されるプランジャ等)の目標作動量が設定され、該目標作動量と前記作動量検出手段による検出結果から求めた実際の作動量との偏差に基づいて圧力調整手段が制御される。かかる場合、可動体の作動量とポンプ室の容積変化とは相関を有するため、上記のように可動体の作動量をフィードバック制御することで、実質的にはポンプ室の容積変化が望みとおりに制御できるようになる。これにより、薬液の吸引流量又は吐出流量を所望とする流量に高精度に制御することが可能となる。また、薬液供給ポンプは、圧力調整手段により調整される気体圧力(例えば空気圧力)を駆動源として薬液の吸引又は吐出を行うため、電動モータによる流量制御を行う電動式システムとは異なり、熱による弊害が生じるおそれがなく、温度管理を要する薬液であっても好適に使用できる。
【0050】
例えば、吐出流量のフィードバック制御手法としては、薬液の吐出通路に流量センサや可変絞り等を設ける構成も考えられるが、かかる構成では、センサや絞り等の設置部位における液溜まりに起因して薬液の劣化等が生じたり、薬液によるセンサ等の腐食を防ぐために特殊加工が強いられたりするといった不都合が生じる。この点、本手段の構成によれば上記不都合のおそれはなく、簡易なシステム構成が実現でき、ひいてはシステムの小型化や低コスト化を図ることができる。
【0051】
手段19.前記作動量検出手段による検出結果に基づいて薬液の吐出流量を算出する手段を更に備えたことを特徴とする手段18に記載の薬液供給システム。
【0052】
上記のとおり可動体の作動量とポンプ室の容積変化とは相関を有するため、作動量検出手段による検出結果に基づいて薬液の吐出流量の算出が可能となる。仮に、例えば薬液の流通通路(吐出通路等)に設けた流量センサにより吐出流量を計測する構成では、温度変化等による薬液の特性変化(比重や粘性等の変化)を考慮する必要が生じるが、上記手段によれば、薬液の特性変化に影響されることなく、ポンプ室の容積変化に対応して吐出流量の算出が可能となる。
【0053】
手段20.前記制御手段は、前記目標作動量として可動体の移動速度の目標値を設定するとともに、該目標値と、前記作動量検出手段による検出結果を基に求めた実際の可動体の移動速度との偏差に基づいて前記圧力調整手段を制御することを特徴とする手段18又は19に記載の薬液供給システム。
【0054】
手段20によれば、可動体の移動速度が望みとおりに制御できるため、薬液の吐出動作が繰り返し行われる場合にも、毎回適切な薬液吐出動作が実現できる。
【0055】
手段21.前記可動体の作動量とポンプ吐出量との関係を規定しておき、前記制御手段は、前記関係を用い都度の流量指令値に基づいて前記移動速度の目標値を設定することを特徴とする手段20に記載の薬液供給システム。
【0056】
手段21によれば、可動体の作動量とポンプ吐出量との関係を規定しておき、該関係を用い、都度の流量指令値に基づいて可動体の移動速度の目標値を設定する。この場合、前記移動速度の目標値を容易に設定することができる。
【0057】
手段22.前記薬液供給ポンプを複数備え、これら各ポンプを交互に吸引動作及び吐出動作させることを特徴とする手段18乃至21のいずれかに記載の薬液供給システム。
【0058】
上記構成の薬液供給ポンプでは、同一のポンプ室により薬液の吸引及び吐出が交互に繰り返されるため、単一の薬液供給ポンプを用いた構成では、薬液の吐出が間欠的に行われることになる。この点、手段22のように複数の薬液供給ポンプを交互に吸引動作及び吐出動作させることにより、薬液の吐出を途切れさせることなく連続的に実施することが可能となる。
【0059】
特に、既述したとおり可動体の移動速度をフィードバック制御する構成では、各ポンプでの薬液吐出に要する時間を毎回一定とすることができるため、薬液供給の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、半導体装置等の製造ラインにて使用される薬液供給システムについて具体化しており、該システムの基本的構成を図1に基づいて説明する。
【0061】
図1の薬液供給システムでは、薬液の吸引及び吐出を行うための薬液供給ポンプ10を備えている。薬液供給ポンプ10において、ポンプハウジング11内には容積可変部材としてのベローズ式仕切部材12が収容されており、このベローズ式仕切部材12によってポンプ室13と圧力作用室14とが区画形成されている。ベローズ式仕切部材12は、軸方向に伸縮自在のベローズ15と、該ベローズ15の一端部(図の下端部)に取り付けられた仕切板16とを有しており、ベローズ15の他端部(図の上端部)が環状の固定板17に固定されている。ベローズ15の伸縮により仕切板16が移動し、ポンプ室13と圧力作用室14との容積が各々変化する。この場合、ポンプ室13と圧力作用室14との合計容積は、ベローズ15の伸縮に関係なく不変であるため、例えばポンプ室13の容積増加量は圧力作用室14の容積減少量に相当する(もちろん増減が逆の場合も同様である)。
【0062】
ポンプハウジング11には、ポンプ室13に連通する吸引ポート18と吐出ポート19とが形成されており、吸引ポート18に吸引配管21が接続され、吐出ポート19に吐出配管22が接続されている。吸引配管21には吸引側開閉弁である吸引バルブ23が設けられており、吸引バルブ23は電磁弁24の通電状態に応じて開閉される。また、吐出配管22には吐出側開閉弁である吐出バルブ25が設けられており、吐出バルブ25は電磁弁26の通電状態に応じて開閉される。例えば、吸引バルブ23及び吐出バルブ25は、空気圧力により開閉操作されるエアオペレートバルブで構成されており、電磁弁24,26の通電状態に応じて各バルブ23,25に作用する空気圧力が調節され、それに伴い各バルブ23,25が開閉される。
【0063】
吸引配管21は、ポンプ室13に向けてレジスト液等の薬液を供給するための薬液供給通路を構成するものであり、図示しない薬液ボトル(薬液貯留容器)内に貯留された薬液、或いは工場の薬液配管より供給される薬液が吸引配管21を通じてポンプ室13に供給される。これにより、ポンプ室13内に薬液が充填される。また、吐出配管22は、ポンプ室13内に充填された薬液を排出するための薬液排出通路を構成するものであり、ポンプ室13から排出される薬液が吐出配管22を通じて薬液吐出ノズル(図示略)に供給される。薬液吐出ノズルは、下方に指向されるとともに、回転板等の上に載置された半導体ウエハの中心位置に薬液が滴下されるように配置されており、薬液吐出ノズルから半導体ウエハ上に適量の薬液が滴下されることで、ウエハ表面への薬液の塗布作業が行われるようになっている。
【0064】
同じくポンプハウジング11には、圧力作用室14に連通する給排ポート27が形成されており、この給排ポート27に電空レギュレータ28が接続されている。電空レギュレータ28は、圧力作用室14内の空気圧力を調整するための空気圧力調整手段を構成するものであり、内蔵された電磁式切替弁の切替操作によって、圧力作用室14に圧縮空気を供給する圧縮空気供給状態と、同圧力作用室14内の空気を外部に排出する大気開放状態とが切り替えられるようになっている。
【0065】
ポンプハウジング11にはケース体31が組み付けられており、ポンプハウジング11に形成された貫通孔32にはケース体31側に突出するようにして細長円柱状のロッド33が摺動可能に挿通されている。すなわち、ロッド33は、一端が圧力作用室14内に突出し、他端がケース体31で囲まれた内部空間に突出している。ロッド33の圧力作用室14側の端部にはベローズ式仕切部材12の仕切板16が結合されており、仕切板16の移動(すなわちベローズ15の伸縮動作)に伴いロッド33が図の上下方向に往復動する。
【0066】
また、ロッド33のケース体31側の端部にはバネ受け板34が連結されており、このバネ受け板34とポンプハウジング11の外壁面との間には圧縮コイルバネ35が介在されている。ロッド33は、圧縮コイルバネ35の付勢力により常に図の上方へ付勢されている。圧縮コイルバネ35は、圧力作用室14内の空気圧力とは相反する向きにベローズ式仕切部材12を付勢するための付勢手段に相当する。
【0067】
上記構成により、圧力作用室14内に圧縮空気が導入されない状態(大気開放状態)では、圧縮コイルバネ35の付勢力によりベローズ式仕切部材12のベローズ15が収縮状態とされ、ポンプ室13内の容積が増加する。このとき、吸引バルブ23を開弁、吐出バルブ25を閉弁させることにより、吸引配管21を通じてポンプ室13内に薬液が吸入される。また、圧縮空気供給状態では、図示しない空圧源から供給される圧縮空気が電空レギュレータ28と給排ポート27とを通じて圧力作用室14内に導入され、圧力作用室14内の空気圧力と圧縮コイルバネ35の付勢力とのバランスに応じてベローズ15が伸長されてポンプ室13内の容積が減少する。このとき、吸引バルブ23を閉弁、吐出バルブ25を開弁させることにより、ポンプ室13内に充填されている薬液が吐出配管22を通じて排出される。
【0068】
ケース体31内には、ロッド33の移動量(すなわちベローズ15の伸縮量)を検出するための位置検出器36が設けられている。なお図1において、符号37はロッド33を往復動可能に保持するためのリニアベアリングであり、符号38は圧力作用室14からの空気漏れを防止するための軸シールである。
【0069】
コントローラ40は、CPUや各種メモリ等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成される電子制御装置であり、薬液供給ポンプ10による薬液の吸引及び吐出の状態を制御する。コントローラ40には、本システム全体を統括して管理する管理コンピュータ(図示略)から吸引/吐出信号、吸引速度指令及び吐出流量指令が入力されるとともに、位置検出器36から位置検出信号が入力される。そして、コントローラ40は、都度入力される信号に基づいて電磁弁24,26を通電又は非通電の状態として吸引バルブ23と吐出バルブ25との開閉状態を制御する一方、電空レギュレータ28に対する制御指令値(操作空気圧力指令値)を算出して該指令値により電空レギュレータ28の状態を制御する。このとき特に、コントローラ40は、薬液の吸引時及び吐出時においてベローズ15の伸縮に伴う仕切板16(ロッド33)の移動速度が目標の移動速度となるよう電空レギュレータ28の状態をフィードバック制御する。加えて、コントローラ40は、位置検出器36の位置検出信号に基づいて吐出流量値を算出し、該算出値を管理コンピュータ等に出力する。
【0070】
次に、コントローラ40における吐出流量制御の概要を図2を用いて説明する。
【0071】
コントローラ40は、吸引速度指令に基づいて薬液吸引時における仕切板16の移動速度を算出するとともに、吐出流量指令に基づいて薬液吐出時における仕切板16の移動速度を算出する。ここで、薬液吐出時における移動速度の算出時には、移動速度と吐出流量との関係を表すポンプ吐出特性に基づいて同移動速度の算出が行われる。具体的には、仕切板16の移動量と薬液供給ポンプ10の吐出量とは図3に示す関係にある。図3によれば、仕切板16の移動量に対するポンプ吐出量が線形となり、この関係を用いて仕切板16の移動速度が算出される。
【0072】
ここで、吐出流量をQ、ベローズ有効面積をA、仕切板16の移動距離をX、仕切板16の移動時間をtとして、ポンプ吐出特性を数式化すると、同特性は、
Q=A*X/t
として表される。上記数式において「X/t」が仕切板16の移動速度に相当し、該式によっても移動速度算出が可能となる。
【0073】
また、コントローラ40は、吸引/吐出信号に基づいて吸引時の移動速度と吐出時の移動速度との何れかを選択する。このとき選択される移動速度が、仕切板16の目標移動速度に相当する。そして、仕切板16の目標移動速度と仕切板16の実際の移動速度(実移動速度)との偏差に基づいて操作空気圧力指令値を算出するとともに、その操作空気圧力指令値に基づいて電空レギュレータ28の駆動を制御する。
【0074】
一方、コントローラ40は、薬液供給ポンプ10に設けた位置検出器36の検出結果に基づいて仕切板16の実際の移動速度(実移動速度)を算出する。この実移動速度の算出値は、電空レギュレータ28のフィードバック制御に用いられる他、都度の吐出流量の演算に用いられる。吐出流量演算に関して、コントローラ40は、前述したポンプ吐出特性(例えば図3の関係)を用いて仕切板16の実移動速度を吐出流量に変換し、その結果を吐出流量値として管理コンピュータ等に出力する。
【0075】
現実の薬液供給システムとしては薬液供給ポンプ10を複数設けており、各ポンプ10が交互に吐出動作と供給動作とを繰り返し実行することにより、連続的な薬液供給動作が実現可能となっている。図4には、2つの薬液供給ポンプ10a,10bを有するシステムについての概略構成を示す。図4に示す2つの薬液供給ポンプ10a,10bはいずれも前記図1で説明した薬液供給ポンプ10と同様の構成を有するものであり、各ポンプの構成部材については同様の符号を付すとともにその説明を省略する。なお、各薬液供給ポンプ10a,10bの吸引配管21は共通の吸引口(薬液ボトル或いは工場の薬液配管)に接続されるとともに、吐出配管22は共通の吐出口(薬液吐出ノズル)に接続されている。
【0076】
図4において、左側の薬液供給ポンプ10aはベローズ15が収縮状態にあり、かかる状態では、その後ベローズ15が伸長することによりポンプ室13内に充填された薬液の吐出が行われる。また、右側の薬液供給ポンプ10bはベローズ15が伸長状態にあり、かかる状態では、その後ベローズ15が収縮することによりポンプ室13への薬液吸引が行われる。
【0077】
コントローラ40は、2つの薬液供給ポンプ10a,10bを制御対象として、前述したとおり都度入力される信号に基づいて吸引バルブ23と吐出バルブ25との開閉状態を制御する一方、各電空レギュレータ28に対する制御指令値(操作空気圧力指令値)を算出して該指令値により電空レギュレータ28の状態を制御する。
【0078】
図5は、本薬液供給システムにおける薬液吐出動作を説明するためのタイムチャートである。図5においては、2つの薬液供給ポンプ10a,10bが交互に吸引動作と吐出動作とを繰り返すことにより、半導体ウエハに対して連続的な薬液供給が実現される。なお図5の説明では便宜上、一方の薬液供給ポンプ10をポンプ(A)、他方の薬液供給ポンプ10をポンプ(B)とするとともに、吸引バルブ及び吐出バルブにも(A),(B)を付して区別する。
【0079】
さて、タイミングt1以前は、ポンプ(A)が図4の薬液供給ポンプ10aの状態、ポンプ(B)が図4の薬液供給ポンプ10bの状態にあり、吸引バルブ及び吐出バルブは何れも閉鎖されている。そして、タイミングt1以降、START信号の立ち上がりに伴い各ポンプでの薬液吸引及び吐出が行われる。
【0080】
すなわち、ポンプ(A)側では、タイミングt1で吐出バルブ(A)が開放された後、電空レギュレータ28による空気圧上昇に伴いベローズ15が伸長し、薬液吐出が行われる(タイミングt2〜t6)。また、ポンプ(A)での薬液吐出に並行して、ポンプ(B)側では、タイミングt3〜t4で吸引バルブ(B)が開放されて薬液の吸引が行われる。そして、薬液の吸引完了後のタイミングt5で吐出バルブ(B)が開放される。タイミングt6では、ポンプ(B)側で電空レギュレータ28による空気圧上昇に伴いベローズ15が伸長し、薬液吐出が行われる(タイミングt6〜t7)。以後、ポンプ(A),(B)で交互に吸引/吐出動作が行われ、薬液吐出ノズルの先端部からは連続的に薬液が吐出される。
【0081】
かかる場合、ポンプ(A)による薬液の吐出期間TAと、ポンプ(B)による薬液の吐出期間TBとが連続して設定され、途切れることなく薬液が連続吐出される。また、薬液の吐出速度が一定に制御されることから、各吐出期間TA,TBが同一となり、薬液の安定供給が可能となる。
【0082】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0083】
薬液の吸引又は吐出時において、ベローズ式仕切部材12を構成する仕切板16の移動速度をフィードバック制御する構成としたため、ポンプ室13の容積変化が望みとおりに制御できるようになる。これにより、薬液の吸引流量又は吐出流量を所望とする流量に高精度に制御することが可能となる。また、薬液供給ポンプ10は、電空レギュレータ28により調整される空気圧力を駆動源として薬液の吸引又は吐出を行うため、電動モータによる流量制御を行う電動式システムとは異なり、熱による弊害が生じるおそれがなく、温度管理を要する薬液であっても好適に使用できる。また、電動式アクチュエータの構成に比べて、ポンプ駆動系の構成の簡素化を図ることもできる。
【0084】
ベローズ式仕切部材12(仕切板16)に連結されたロッド33の移動量を位置検出器36により検出し、該検出したロッド33の移動量(仕切板16の移動量、ベローズ15の伸縮量も同意)をフィードバックパラメータとしたため、薬液吐出通路に流量センサや可変絞り等を設け、その結果をフィードバックパラメータとする他の構成と比較して、センサや絞り等の設置部位における液溜まりに起因して薬液の劣化等が生じたり、薬液によるセンサ等の腐食を防ぐために特殊加工が強いられたりするといった不都合が解消される。したがって、簡易なシステム構成が実現でき、ひいてはシステムの小型化や低コスト化を図ることができる。
【0085】
また、位置検出器36の検出結果に基づいて薬液の吐出流量を算出するようにしたため、薬液の特性変化に影響されることなく、吐出流量を精度良く算出することができる。
【0086】
位置検出器36をポンプ室13から隔離されたケース体31内に設けたため、当該位置検出器36が薬液に晒されるおそれはない。故に、位置検出器やその付属部品等について薬液による腐食防止対策を施す必要はなく、簡易で且つ安価なシステムが実現できる。
【0087】
薬液供給ポンプ10を複数設け、これら各ポンプ10を交互に吸引動作及び吐出動作させる構成としたため、薬液の吐出を途切れさせることなく連続的に実施することが可能となる。また、既述したとおりベローズ式仕切部材12(仕切板16)の移動速度をフィードバック制御する構成としたため、各ポンプでの薬液吐出に要する時間を毎回一定とすることができるため、薬液の安定供給が可能となる。
【0088】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について、上記第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。本実施の形態では、ダイアフラム式の薬液供給ポンプ50を用いる構成としており、図6には薬液供給ポンプ50とその周辺の概略構成を示す。
【0089】
図6において、薬液供給ポンプ50は、上下2つに分割されるボディ51,52を有しており、これら各ボディ51,52には各々対向する面に凹部51a,52aが形成されている。両ボディ51,52の間には略円形状の可撓性膜よりなるダイアフラム53が介在され、該ダイアフラム53の周縁部53aが両ボディ51,52にて挟持されている。ダイアフラム53の中心部には中央厚肉部53bが設けられている。この場合、ボディ51側の凹部51aとダイアフラム53との間に形成される空間がポンプ室55、ボディ52側の凹部52aとダイアフラム53との間に形成される空間が圧力作用室56となっている。
【0090】
ボディ51には、ポンプ室55に連通する吸引ポート58と吐出ポート59とが形成されており、吸引ポート58に吸引配管61が接続され、吐出ポート59に吐出配管62が接続されている。吸引配管61には吸引側開閉弁である吸引バルブ63が設けられており、吸引バルブ63は電磁弁64の通電状態に応じて開閉される。また、吐出配管62には吐出側開閉弁である吐出バルブ65が設けられており、吐出バルブ65は電磁弁66の通電状態に応じて開閉される。例えば、吸引バルブ63及び吐出バルブ65は、空気圧力により開閉操作されるエアオペレートバルブで構成されており、電磁弁64,66の通電状態に応じて各バルブ63,65に作用する空気圧力が調節され、それに伴い各バルブ63,65が開閉される。
【0091】
吸引配管61は、ポンプ室55に向けてレジスト液等の薬液を供給するための薬液供給通路を構成するものであり、図示しない薬液ボトル(薬液貯留容器)内に貯留された薬液、或いは工場の薬液配管より供給される薬液が吸引配管61を通じてポンプ室55に供給される。これにより、ポンプ室55内に薬液が充填される。また、吐出配管62は、ポンプ室55内に充填された薬液を排出するための薬液排出通路を構成するものであり、ポンプ室55から排出される薬液が吐出配管62を通じて薬液吐出ノズル(図示略)に供給される。
【0092】
他方のボディ52には、圧力作用室56に連通する給排ポート68が形成されており、この給排ポート68に電空レギュレータ69が接続されている。電空レギュレータ69は、圧力作用室56内の空気圧力を調整するための空気圧力調整手段を構成するものであり、内蔵された電磁式切替弁の切替操作によって、圧力作用室56に圧縮空気を供給する圧縮空気供給状態と、同圧力作用室56内の空気を外部に排出する大気開放状態とが切り替えられるようになっている。
【0093】
ボディ52にはケース体71が組み付けられており、ボディ52に形成された貫通孔72にはケース体71側に突出するようにして細長円柱状のロッド73が摺動可能に挿通されている。すなわち、ロッド73は、一端が圧力作用室56内に突出し、他端がケース体71で囲まれた内部空間に突出している。ロッド73の圧力作用室56側の端部にはダイアフラム53の中央厚肉部53bが結合されており、ダイアフラム53の変形に伴いロッド73が図の上下方向に往復動する。
【0094】
また、ロッド73のケース体71側の端部にはバネ受け板74が連結されており、このバネ受け板74とボディ52の外壁面との間には圧縮コイルバネ75が介在されている。ロッド73は、圧縮コイルバネ75の付勢力により常に図の上方へ付勢されている。圧縮コイルバネ75は、圧力作用室56内の空気圧力とは相反する向きにダイアフラム53を付勢するための付勢手段に相当する。
【0095】
上記構成により、圧力作用室56内に圧縮空気が導入されない状態(大気開放状態)では、圧縮コイルバネ75の付勢力によりダイアフラム53が図の上方に撓み変形し、ポンプ室55内の容積が増加する。このとき、吸引バルブ63を開弁、吐出バルブ65を閉弁させることにより、吸引配管61を通じてポンプ室55内に薬液が吸入される。また、圧縮空気供給状態では、図示しない空圧源から供給される圧縮空気が電空レギュレータ69と給排ポート68とを通じて圧力作用室56内に導入され、圧力作用室56内の空気圧力と圧縮コイルバネ75の付勢力とのバランスに応じてダイアフラム53が図の下方に撓み変形し、ポンプ室55内の容積が減少する。このとき、吸引バルブ63を閉弁、吐出バルブ65を開弁させることにより、ポンプ室55内に充填されている薬液が吐出配管62を通じて排出される。
【0096】
ケース体71内には、ロッド73の移動量(すなわちダイアフラム53の変形量)を検出するための位置検出器76が設けられている。なお図6において、符号77はロッド73を往復動可能に保持するためのリニアベアリングであり、符号78は圧力作用室56からの空気漏れを防止するための軸シールである。
【0097】
コントローラ80は、CPUや各種メモリ等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成される電子制御装置であり、薬液供給ポンプ50による薬液の吸引及び吐出の状態を制御する。コントローラ80には、本システム全体を統括して管理する管理コンピュータ(図示略)から吸引/吐出信号、吸引速度指令及び吐出流量指令が入力されるとともに、位置検出器76から位置検出信号が入力される。そして、コントローラ80は、都度入力される信号に基づいて電磁弁64,66を通電又は非通電の状態として吸引バルブ63と吐出バルブ65との開閉状態を制御する一方、電空レギュレータ69に対する制御指令値(操作空気圧力指令値)を算出して該指令値により電空レギュレータ69の状態を制御する。このとき特に、コントローラ80は、薬液の吸引時及び吐出時においてダイアフラム53の変形速度が目標の速度となるよう電空レギュレータ69の状態をフィードバック制御する。加えて、コントローラ80は、位置検出器76の位置検出信号に基づいて吐出流量値を算出し、該算出値を管理コンピュータ等に出力する。
【0098】
ところで、上記のようなダイアフラム式の薬液供給ポンプ50では、ベローズ式の薬液供給ポンプと比して液溜まりが少ないといったメリットがある反面、ダイアフラム53の変形量に対する薬液吐出量が非線形になり、吐出量制御が困難になるといった問題が懸念される。図7は、ダイアフラム変形量と薬液の吐出量との関係を示す図であり、同図によれば、ダイアフラム特性が理想の線形特性に対して非線形となるのが分かる。
【0099】
そこで本実施の形態では、ダイアフラム53の変形範囲内(フルストローク範囲内)において複数に分割した区間毎にダイアフラム変形量とポンプ吐出量との関係を線形化しておき、該線形化した関係を用いて電空レギュレータ69の状態を制御する。例えば、図7に示すように、ダイアフラム53の変形範囲(X0〜X5)を5等分して5つの区間を設定しておき、それら区間毎に線形特性を付加する。そして、薬液供給ポンプ50による薬液の吸引/吐出時には、その都度のダイアフラム53の変形量に応じて各区間の線形特性を使い分けて電空レギュレータ69の状態を制御する。なお、上記各区間の線形特性に関するデータは、計測等により取得され、コントローラ80内のメモリにあらかじめ記憶されていると良い。
【0100】
ここで、上記各区間における線形化の手法について説明する。
【0101】
ダイアフラム53の変形範囲を5等分する場合、各区間の境界点となるダイアフラム変形量はX0,X1,X2,X3,X4,X5であり、そのうちダイアフラム変形量X1〜X5に対応する吐出量q1,q2,q3,q4,q5を計測する(ダイアフラム変形量X0の場合の吐出量は0であり計測不要)。そして、各区間の境界点におけるダイアフラム変形量と吐出量とに基づく直線補間により、区間毎に線形化を実施する。このとき、ダイアフラム変形量Xから吐出量qへの変換式は、ダイアフラム変形量に応じて図8の(a)のように規定される。また、ダイアフラム変形速度X/tから吐出流量Qへの変換式は、ダイアフラム変形量に応じて図8の(b)のように規定される。
【0102】
上記のように区間毎に線形化された特性は、薬液吐出時におけるダイアフラム53の変形速度の算出(変形速度の目標値の算出)や、ダイアフラム変形量の検出値(位置検出器76の検出結果)に基づく実際の吐出流量値の算出に際して用いられる。すなわち、前記図2で説明した演算ロジックにおいては、吐出時の移動速度算出に際して前記区間毎の線形特性が用いられる。また、位置検出結果に基づき算出した移動速度から吐出流量への変換に際して前記区間毎の線形特性が用いられる。
【0103】
図9には移動速度算出に関するコントローラ80による処理フローを示し、図10には実際の吐出流量算出に関するコントローラ80による処理フローを示す。
【0104】
図9では、吐出流量指令値Qcを取り込むとともにダイアフラム変形量Xを計測する(ステップS11,S12)。その後、ダイアフラム変形量Xが上記各区間の何れにあるかを判定し(ステップS13〜S17)、その判定結果に応じて今回適用する変換式を決定する(ステップS18〜S22)。この場合、X<X1であれば変換式(1)を、X1≦X<X2であれば変換式(2)を、X2≦X<X3であれば変換式(3)を、X3≦X<X4であれば変換式(4)を、X≧X4であれば変換式(5)を適用する。
X/t=(X1−X0)/q1*Qc …(1)
X/t=(X2−X1)/(q2−q1)*Qc …(2)
X/t=(X3−X2)/(q3−q2)*Qc …(3)
X/t=(X4−X3)/(q4−q3)*Qc …(4)
X/t=(X5−X4)/(q5−q4)*Qc …(5)
上記のように今回適用する変換式を決定した後、該決定した変換式を用いてダイアフラム変形速度X/tを算出するとともに、そのX/t値に基づいて吐出量制御を実施する(ステップS23)。
【0105】
また、図10では、ダイアフラム変形量Xを計測するとともに、ダイアフラム変形速度X/tを算出する(ステップS31,S32)。その後、ダイアフラム変形量Xが上記各区間の何れにあるかを判定し(ステップS33〜S37)、その判定結果に応じて今回適用する変換式を決定する(ステップS38〜S42)。この場合、X<X1であれば変換式(6)を、X1≦X<X2であれば変換式(7)を、X2≦X<X3であれば変換式(8)を、X3≦X<X4であれば変換式(9)を、X≧X4であれば変換式(10)を適用する。
Q=q1/(X1−X0)*X/t …(6)
Q=(q2−q1)/(X2−X1)*X/t …(7)
Q=(q3−q2)/(X3−X2)*X/t …(8)
Q=(q4−q3)/(X4−X3)*X/t …(9)
Q=(q5−q4)/(X5−X4)*X/t …(10)
上記のように今回適用する変換式を決定した後、該決定した変換式を用いて吐出流量値Qを算出する(ステップS43)。
【0106】
吐出量q1〜q5の計測方法は任意であるが、例えば次の(1),(2)の手法が考えられる。
【0107】
(1)ダイアフラム変形量をX0〜X5の範囲内で変化させ、同変形量をX1,X2,X3,X4,X5とした時の吐出量をメスシリンダ等の計測器具でそれぞれ計測する。具体的には、まず吸引バルブ63を開、吐出バルブ65を閉とした状態で、ダイアフラム53を吸引側に変形させてポンプ室55内に薬液を吸引する。薬液の吸引完了後、吸引バルブ63を閉、吐出バルブ65を開とし、待機する。この状態がダイアフラム変形量=X0である。その後、ダイアフラム53を変形量X1になるまで吐出側にゆっくりと変形させ、変形量X1で変形動作を一旦停止させる。この時の吐出量をメスシリンダ等で計測し、吐出量q1として記録する。以後、ダイアフラム変形量をX2,X3,X4,X5とした場合についても同様に吐出量を計測し、それらを吐出量q2,q3,q4,q5として記録する。そして、上記の各データをコントローラ80に入力し、メモリに記憶させる。
【0108】
(2)ダイアフラム変形量をコントローラ80でフィードバック制御しつつ、該制御時の薬液の吐出量を順次計測しメモリに記憶する。かかる場合、薬液供給ポンプ50の吐出配管62(特に吐出バルブ65よりも下流側)に吐出量計測器が接続され、当該ポンプ50の吐出動作時における吐出量が吐出量計測器で計測される。そして、吐出量計測器の計測結果(計測信号)がコントローラ80に逐次入力される。吐出量計測器としては、例えば、該計測器内部に形成された薬液導入室に導入される薬液量に応じてプランジャのストローク量(プランジャ位置)を可変とし、該プランジャのスロトーク量を検出することにより吐出量を計測する、いわゆるシリンダ式吐出量計測器が用いられる。
【0109】
上記(2)の場合における吐出量計測手順を図11のタイムチャートを用いてより具体的に説明する。
【0110】
図11において、計測スタート信号のON出力がコントローラ80に入力されると、一連の吐出量計測処理が開始されるが、まずは薬液供給ポンプ50のポンプ室55と吐出量計測器の薬液導入室に薬液が供給され、それら各室が薬液で満たされる。すなわち、吸引→吐出→吸引といった順に動作が行われるよう、吸引バルブ63や吐出バルブ65の開閉、並びにダイアフラム変形量が図示の如く制御される。なお、計測用バルブは、吐出量計測器の薬液導入室の出口側に設けられる開閉弁であり、吸引及び吐出が1回ずつ行われる期間で開放され、その後閉鎖される。
【0111】
そして、タイミングt10以降、ダイアフラム53が吐出側に一定速度で変形され、それに伴いX1〜X5の各ダイアフラム変形量(ダイアフラム位置)に対する吐出流量が逐次計測される。このとき、まずタイミングt11では、ダイアフラム変形量=X1での吐出量q1が計測され、そのq1値がコントローラ80内のメモリに記憶される。その後同様に、タイミングt12,t13,t14,15では、ダイアフラム変形量=X2,X3,X4,X5での吐出量q2,q3,q4,q5が計測され、それらの各値がコントローラ80内のメモリに記憶される。
【0112】
上記第1の実施の形態で説明したように、薬液供給ポンプ50を複数設け、これら各ポンプ50を交互に吸引動作及び吐出動作させる構成としても良い。これにより、薬液の吐出を途切れさせることなく連続的に実施することが可能となる。また、各ポンプでの薬液吐出に要する時間を毎回一定とし、薬液の安定供給が実現することができる。
【0113】
以上詳述した第2の実施の形態では、ダイアフラム53の変形範囲内において複数に分割した区間毎にダイアフラム変形量とポンプ吐出量との関係を線形化し、該線形化した関係を用いて吐出量制御を実施するようにしたため、変形量と吐出量とが線形とならないダイアフラム式の薬液供給ポンプ50にあっても薬液の吸引流量又は吐出流量を高精度に制御することができる。
【0114】
容積可変部材としてダイアフラムを用いた薬液供給ポンプでは、ベローズを用いた薬液供給ポンプと比して液溜まりが少ないといったメリットがある。故に、液溜まりが少なく、かつ高精度な薬液流量制御を可能とする薬液供給システムが実現できる。
【0115】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、ダイアフラム式の薬液供給ポンプとして別の構成を説明する。
【0116】
図12において、薬液供給ポンプ100は、左右2つに分割されるボディ101,102を有しており、これら各ボディ101,102には各々対向する面に凹部101a,102aが形成されている。両ボディ101,102の間には略円形状の可撓性膜よりなるダイアフラム103が介在され、該ダイアフラム103の周縁部103aが両ボディ101,102にて挟持されている。この場合、ボディ101側の凹部101aとダイアフラム103との間に形成される空間がポンプ室105、ボディ102側の凹部102aとダイアフラム103との間に形成される空間がダイアフラム操作室106となっている。
【0117】
ボディ101には、ポンプ室105に連通する吸引ポート108と吐出ポート109とが形成されており、吸引ポート108に吸引配管111が接続され、吐出ポート109に吐出配管112が接続されている。吸引配管111には吸引側開閉弁である吸引バルブ113が設けられており、吸引バルブ113は電磁弁114の通電状態に応じて開閉される。また、吐出配管112には吐出側開閉弁である吐出バルブ115が設けられており、吐出バルブ115は電磁弁116の通電状態に応じて開閉される。例えば、吸引バルブ113及び吐出バルブ115は、空気圧力により開閉操作されるエアオペレートバルブで構成されており、電磁弁114,116の通電状態に応じて各バルブ113,115に作用する空気圧力が調節され、それに伴い各バルブ113,115が開閉される。
【0118】
吸引配管111は、ポンプ室105に向けてレジスト液等の薬液を供給するための薬液供給通路を構成するものであり、図示しない薬液ボトル(薬液貯留容器)内に貯留された薬液、或いは工場の薬液配管より供給される薬液が吸引配管111を通じてポンプ室105に供給される。これにより、ポンプ室105内に薬液が充填される。また、吐出配管112は、ポンプ室105内に充填された薬液を排出するための薬液排出通路を構成するものであり、ポンプ室105から排出される薬液が吐出配管112を通じて薬液吐出ノズル(図示略)に供給される。
【0119】
他方のボディ102には、ダイアフラム操作室106に連通する連通路117が形成され、この連通路117はシリンダ室118に連通されている。シリンダ室118は径の異なる2段の円柱状空間を形成するものであり、そのシリンダ室118内にはプランジャ119が摺動可能に収容されている。プランジャ119は先端部と中間部とに摺動部119a,119bを有しており、摺動部119bを挟んで一側(図の下側)には、一部が大気開放された大気開放室121が形成され、他側(図の下側)には空圧操作室122が形成されている。各摺動部119a,119bの外周部にはシール部材が組み付けられている。また、プランジャ119の先端側(摺動部119aの下側)は流体室123となっており、この流体室123から連通路117及びダイアフラム操作室106に至る空間内には非圧縮性流体(例えばシリコン油)が充填されている。また、プランジャ119の図の上端部は貫通孔124を通じてボディ102の上方に突出している。
【0120】
ボディ102には、空圧操作室122に連通する給排ポート125が形成されており、この給排ポート125に電空レギュレータ127が接続されている。電空レギュレータ127は、空圧操作室122内の空気圧力を調整するための空気圧力調整手段を構成するものであり、内蔵された電磁式切替弁の切替操作によって、空圧操作室122に圧縮空気を供給する圧縮空気供給状態と、同空圧操作室122内の空気を外部に排出する大気開放状態とが切り替えられるようになっている。
【0121】
ボディ102にはケース体131が組み付けられている。ケース体131内においてプランジャ119の先端部にはバネ受け板132が連結されており、このバネ受け板132とボディ102の外壁面との間には圧縮コイルバネ133が介在されている。プランジャ119は、圧縮コイルバネ133の付勢力により常に図の上方へ付勢されている。
【0122】
上記構成により、空圧操作室122内に圧縮空気が導入されない状態(大気開放状態)では、圧縮コイルバネ133の付勢力によりプランジャ119が図の上方に持ち上げられた状態で保持される。これにより、非圧縮性流体がダイアフラム操作室106から流体室123に移動してダイアフラム103が図の右方に撓み変形し、ポンプ室105内の容積が増加する。このとき、吸引バルブ113を開弁、吐出バルブ115を閉弁させることにより、吸引配管111を通じてポンプ室105内に薬液が吸入される。
【0123】
また、圧縮空気供給状態では、図示しない空圧源から供給される圧縮空気が電空レギュレータ127と給排ポート125とを通じて空圧操作室122内に導入され、空圧操作室122内の空気圧力と圧縮コイルバネ133の付勢力とのバランスに応じてプランジャ119が図の下方に移動する。これにより、非圧縮性流体が流体室123からダイアフラム操作室106に移動してダイアフラム103が図の左方に撓み変形し、ポンプ室105内の容積が減少する。このとき、吸引バルブ113を閉弁、吐出バルブ115を開弁させることにより、ポンプ室105内に充填されている薬液が吐出配管112を通じて排出される。
【0124】
ケース体131内には、プランジャ119の移動量を検出するための位置検出器135が設けられている。なお図12において、符号137はプランジャ119を往復動可能に保持するためのリニアベアリングであり、符号138は空圧操作室122からの空気漏れを防止するための軸シールである。
【0125】
コントローラ140は、CPUや各種メモリ等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成される電子制御装置であり、薬液供給ポンプ100による薬液の吸引及び吐出の状態を制御する。コントローラ140には、本システム全体を統括して管理する管理コンピュータ(図示略)から吸引/吐出信号、吸引速度指令及び吐出流量指令が入力されるとともに、位置検出器135から位置検出信号が入力される。そして、コントローラ140は、都度入力される信号に基づいて電磁弁114,116を通電又は非通電の状態として吸引バルブ113と吐出バルブ115との開閉状態を制御する一方、電空レギュレータ127に対する制御指令値(操作空気圧力指令値)を算出して該指令値により電空レギュレータ127の状態を制御する。このとき特に、コントローラ140は、薬液の吸引時及び吐出時においてプランジャ119の移動速度が目標の速度となるよう電空レギュレータ127の状態をフィードバック制御する。加えて、コントローラ140は、位置検出器135の位置検出信号に基づいて吐出流量値を算出し、該算出値を管理コンピュータ等に出力する。
【0126】
コントローラ140による演算処理の内容は、概ね前記図2の制御ロジックに準ずるものとなっており、ここでは簡単に説明する。
【0127】
コントローラ140は、吸引速度指令に基づいて薬液吸引時におけるプランジャ119の移動速度を算出するとともに、吐出流量指令に基づいて薬液吐出時におけるプランジャ119の移動速度を算出する。ここで、薬液吐出時における移動速度の算出時には、移動速度と吐出流量との関係を表すポンプ吐出特性に基づいて同移動速度の算出が行われる。つまり、プランジャ119の移動量とポンプ吐出流量とは相関を有しており、あらかじめ規定された線形特性を用いて吐出流量指令値からプランジャ119の移動速度が算出される。そして、プランジャ119の目標移動速度と実際の移動速度(実移動速度)との偏差に基づいて操作空気圧力指令値を算出するとともに、その操作空気圧力指令値に基づいて電空レギュレータ127の駆動を制御する。
【0128】
一方、コントローラ140は、位置検出器135の検出結果に基づいてプランジャ119の実際の移動速度(実移動速度)を算出する。この実移動速度の算出値は、電空レギュレータ127のフィードバック制御に用いられる他、都度の吐出流量の演算に用いられる。吐出流量演算に関して、コントローラ140は、プランジャ119の移動量とポンプ吐出流量との相関関係(線形特性)を用いてプランジャ119の実移動速度を吐出流量に変換し、その結果を吐出流量値として管理コンピュータ等に出力する。
【0129】
上記構成の薬液供給ポンプ100では、電空レギュレータ127により空圧操作室122内における空気圧力が調整され、その圧力調整によりプランジャ119が図の上下何れかに移動する。プランジャ119が移動すると、その移動量に対してリニアに流体室123の容積が変化し、それに対応してダイアフラム操作室106の容積が変化する。そして、ダイアフラム操作室106の容積変化に応じてダイアフラム103が撓み変形し、そのダイアフラム変形に伴うポンプ室105の容積変化に基づいて薬液の吸引又は吐出が行われる。このとき、ダイアフラム操作室106及び流体室123には非圧縮性流体が充填されており、流体室123の容積変化とダイアフラム操作室106の容積変化とは一致する(一方の増加分が他方の減少分となる)。また、プランジャ119の移動量に対する流体室123の容積変化はリニア(線形)なものとなっている。したがって、プランジャ119の移動量に基づいて薬液の吸引又は吐出時の流量を高精度に制御することが可能となる。
【0130】
また、薬液供給ポンプ100では、ダイアフラム103の有効断面積よりもプランジャ119の有効断面積が小さいものとなっている。これにより、ダイアフラム103を撓み変形させる際、ダイアフラム変形量に比してプランジャ移動量が大きくなる。故に、ダイアフラム103の撓み変形量を細かく制御することができる。またこのとき、ダイアフラム有効断面積をAd、ダイアフラム変形量Xdとすれば、ダイアフラム変形に伴う吐出量VはV≒Ad*Xdとなる。一方、プランジャ119の有効断面積をA、プランジャ移動量をXとすれば、プランジャ移動に伴う吐出量VはV≒A*Xとなる。したがって、X=Ad/A*Xdとなり、プランジャ移動量Xはダイアフラム変形量Xdに対して増幅率Ad/Aで増幅されることとなる。
【0131】
また、プランジャ119は、大小異なる2つの摺動部119a,119bを有しており、流体室123に対向する側の面積が比較的小さく、空圧操作室122に対向する側の面積が比較的大きい形状となっている。このとき、プランジャ119において空圧操作室122側の受圧面積が比較的大きいことから、該プランジャ119を空気圧力で移動させる場合に十分な力を付与することができる。これにより、プランジャ119の応答性が向上し、ひいてはダイアフラム103の変形速度(薬液の吐出量等)を任意に制御することができるようになっている。
【0132】
上記第1の実施の形態で説明したように、薬液供給ポンプ100を複数設け、これら各ポンプ100を交互に吸引動作及び吐出動作させる構成としても良い。これにより、薬液の吐出を途切れさせることなく連続的に実施することが可能となる。また、各ポンプでの薬液吐出に要する時間を毎回一定とし、薬液の安定供給が実現することができる。
【0133】
以上詳述した第3の実施の形態では、ダイアフラム変形量ではなく、プランジャ移動量をフィードバックパラメータとして吐出量制御を実施する構成とした。この場合、ダイアフラム変形量に対するポンプ吐出量は線形とならないが、プランジャ移動量に対するポンプ吐出量は線形となるため、薬液の吸引又は吐出時の流量を高精度に制御することが可能となる。また、薬液供給ポンプ100は、電空レギュレータ127により調整される空気圧力を駆動源として薬液の吸引又は吐出を行うため、電動モータによる流量制御を行う電動式システムとは異なり、熱による弊害が生じるおそれがなく、温度管理を要する薬液であっても好適に使用できる。また、電動式アクチュエータの構成に比べて、ポンプ駆動系の構成の簡素化を図ることもできる。
【0134】
また、薬液吐出通路に流量センサや可変絞り等を設け、その結果をフィードバックパラメータとする他の構成と比較して、センサや絞り等の設置部位における液溜まりに起因して薬液の劣化等が生じたり、薬液によるセンサ等の腐食を防ぐために特殊加工が強いられたりするといった不都合が解消される。したがって、簡易なシステム構成が実現でき、ひいてはシステムの小型化や低コスト化を図ることができる。
【0135】
また、位置検出器135の検出結果に基づいて薬液の吐出流量を算出するようにしたため、薬液の特性変化に影響されることなく、吐出流量を精度良く算出することができる。
【0136】
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
【0137】
位置検出器による位置検出結果(ベローズやダイアフラム等の作動量検出結果)に基づいてポンプ室内の圧力を算出し、該算出したポンプ室内の圧力に基づいて薬液吐出通路の目詰まり判定などを実施しても良い。これを、第1の実施の形態で説明した構成(図1)について説明する。
【0138】
図1において、ベローズ式仕切部材12には、その一方の側(図の上方側)から圧力作用室14内の空気圧力が作用し、他方の側(図の下方側)から圧縮コイルバネ35による付勢力とポンプ室13内の圧力とが作用する。そして、それらの力が均衡した位置にベローズ式仕切部材12が制御される。この場合、圧力作用室14内の気体圧力によりベローズ式仕切部材12が受ける力をFs、圧縮コイルバネ35によりベローズ式仕切部材12が受ける力をFb、ポンプ室13内の圧力によりベローズ式仕切部材12が受ける力をFpとすると、
Fs=Fb+Fp
の関係が成立する。ここで、Fb(圧縮コイルバネ35によりベローズ式仕切部材12が受ける力)は、ベローズ式仕切部材12の作動量に相関しており、バネ定数をk、吸引しきった時(完全収縮時)のベローズ位置をXa、作動中のベローズ位置をXとすると、
Fb=k*(Xa+X)
で与えられる。
【0139】
Fs(圧力作用室14内の空気圧力によりベローズ式仕切部材12が受ける力)は、圧力作用室14内の空気圧力から算出でき、ベローズ有効面積をA、圧力作用室14内の空気圧力をPsとすると、
Fs=A*Ps
で与えられる。
【0140】
また、Fp(ポンプ室13内の圧力によりベローズ式仕切部材12が受ける力)は、ポンプ室圧力をPとすると、
Fp=A*P
で与えられる。
この場合、Fp=Fs−Fbであたるため、ポンプ室圧力Pは、
P=Ps−k/A*(Xa+X)
となる。ここで、k,A,Xaは固定値であり、圧力作用室14内の空気圧力Psと作動中のベローズ位置Xとを計測することにより、ポンプ室圧力Pが算出できる。
【0141】
なお、ポンプ室圧力Pは、基本的には設計上の寸法データ等により演算できるが、個体差を考慮すると、固体毎に特性を計測しその計測データをコントローラに記憶しておくと良い。これにより、ポンプ室圧力Pが一層正確に算出できる。
【0142】
ここで、吐出側の圧力損失をSとすると、吐出流量Qは概略、
Q=α/S*√P
で与えられる(αは定数である)。したがって、圧力損失Sが大きくなるとポンプ室圧力Pが大きくなる。つまり、吐出配管で目詰まり(フィルタの目詰まり等)が生じると、薬液吐出量が同一であっても、圧力損失によりポンプ室圧力が上昇する。そのため、目詰まりの発生が判定できる。
【0143】
例えば、所定の吐出流量で吐出量制御を行う場合の圧力判定値をあらかじめ定めておき、ポンプ室圧力Pが圧力判定値よりも大きくなった時に目詰まりが生じたと判定すると良い。圧力判定値は、初期(新品時)の圧力値を基に定められると良い。目詰まり発生時には、例えば音声やランプ等での報知が行われ、それに伴い作業者によって吐出配管内のフィルタ等の交換が行われる。目詰まり判定を実施することにより、目詰まりに起因するプロセスの不具合を解消することができる。
【0144】
また、上記の如くポンプ室圧力Pを算出する構成では、ポンプ室圧力Pを検出するための圧力センサが不要となる。これにより、薬液に直接晒されるセンサ装置等がなくなるために、薬液による腐食防止対策が強いられることはなく、構成の簡素化やコストの低減を図ることができる。
【0145】
ポンプ室圧力Pの算出値に基づいて目詰まり判定を実施する以外に、同ポンプ室圧力Pの算出値に基づいてポンプ室圧力のフィードバック制御等を実施することも可能である。
【0146】
薬液の吐出終了時における液だれ防止のためにサックバック機能を付加するようにしても良い。図13は、サックバック動作を説明するためのタイムチャートである。
【0147】
図13において、薬液吐出時には、吸引バルブが閉、吐出バルブが開とされ、容積可変部材の作動に伴いポンプ室から薬液が吐出される。そして、薬液の吐出終了後において吸引バルブが閉、吐出バルブが開とされた状態が一時的に継続され、その状態のままベローズ等の容積可変部材の作動が反転されて薬液の吸引が開始される。このとき、吸引バルブが閉、吐出バルブが開とされた状態での薬液の吸引動作によりサックバックが行われる。図のTSがサックバック動作期間である。これにより、薬液滴下ノズル等における液だれが防止できる。上記構成ではサックバック用の開閉弁が不要となるため、構成の簡素化が実現できる。
【0148】
サックバック動作期間(図13のTS)や、サックバック時の吸引速度を可変に制御するようにしても良い。これにより、薬液のサックバック動作を任意に制御でき、サックバック量を望みとおりに制御することが可能となる。
【0149】
上記実施の形態では、ベローズ式の薬液供給ポンプを用いた場合、ベローズ伸縮量に対してポンプ吐出量が線形である旨説明したが、厳密には、ベローズの伸縮範囲内において非線形な特性が含まれることも考えられる。故に、ベローズの伸縮範囲内において複数に分割した区間毎にベローズ伸縮量とポンプ吐出量との関係を線形化し、該線形化した関係を用いて吐出量制御を実施するようにしても良い。これにより、薬液の吸引流量又は吐出流量の制御精度が向上する。なお、区間毎に線形化を行う手法については、第2の実施の形態で説明した手法が適宜用いられる。
【0150】
上記各実施の形態では、圧力作用室内の空気圧力を減圧する際、電空レギュレータを大気開放状態としたが、これを変更する。例えば、電空レギュレータに真空源を接続し、その真空源の作動により圧力作用室内を負圧とする。こうした空気圧力の操作によってベローズやダイアフラム等の作動量を任意に制御できる。この場合、ケース体内に設けた圧縮コイルバネを無くすことが可能となる。
【0151】
上記第3の実施の形態で説明した薬液供給ポンプ100では、流体室123の容積を作動量に対してリニアに変化させる可動体としてプランジャ119を用いたが、この構成を変更し、同可動体としてベローズを用いることも可能である。
【0152】
上記各実施の形態では、複数の薬液供給ポンプを具備する薬液供給システムの具体例として、複数個の薬液供給ポンプを組み合わせて各ポンプ間を配管等により接続する構成としたが、それら複数個の薬液供給ポンプが一体化されたポンプユニットを採用するようにしても良い。これにより、配管等の削減や省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】発明の実施の形態における薬液供給システムの概略を示す構成図である。
【図2】コントローラにおける吐出流量制御の概要を示す図である。
【図3】ポンプ吐出特性を示す図である。
【図4】2つの薬液供給ポンプを有するシステムの概略構成を示す図である。
【図5】薬液吐出動作を説明するためのタイムチャートである。
【図6】第2の実施の形態における薬液供給システムの概略を示す構成図である。
【図7】ダイアフラム変形量と薬液の吐出量との関係を示す図である。
【図8】(a)は、ダイアフラム変形量Xから吐出量qへの変換式を示す図であり、(b)はダイアフラム変形速度X/tから吐出流量Qへの変換式を示す図である。
【図9】移動速度算出に関するコントローラによる処理を示すフローチャートである。
【図10】実際の吐出流量算出に関するコントローラによる処理を示すフローチャートである。
【図11】吐出量計測手順を説明するためのタイムチャートである。
【図12】第3の実施の形態における薬液供給システムの概略を示す構成図である。
【図13】サックバック動作を説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
【0154】
10…薬液供給ポンプ、12…ベローズ式仕切部材、13…ポンプ室、14…圧力作用室、15…ベローズ、16…仕切板、23…吸引バルブ、25…吐出バルブ、28…電空レギュレータ、35…圧縮コイルバネ、36…位置検出器、40…コントローラ、50…薬液供給ポンプ、53…ダイアフラム、55…ポンプ室、56…圧力作用室、63…吸引バルブ、65…吐出バルブ、69…電空レギュレータ、73…ロッド、75…圧縮コイルバネ、76…位置検出器、80…コントローラ、100…薬液供給ポンプ、103…ダイアフラム、105…ポンプ室、106…ダイアフラム操作室、113…吸引バルブ、115…吐出バルブ、119…プランジャ、122…空圧操作室、123…流体室、127…電空レギュレータ、135…位置検出器、140…コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を充填するためのポンプ室と、容積可変部材により前記ポンプ室から仕切られてなる圧力作用室とを有し、その圧力作用室内の気体圧力に応じて前記容積可変部材を作動させ、その作動に伴う前記ポンプ室の容積変化に基づいて前記薬液を吸引又は吐出する薬液供給ポンプと、
前記圧力作用室に供給される気体の圧力を調整する圧力調整手段と、
前記容積可変部材の作動量を検出する作動量検出手段と、
前記薬液供給ポンプによる薬液の吸引又は吐出時において前記容積可変部材の目標作動量を設定するとともに、該目標作動量と前記作動量検出手段による検出結果から求めた実際の作動量との偏差に基づいて前記圧力調整手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする薬液供給システム。
【請求項2】
前記作動量検出手段による検出結果に基づいて薬液の吐出流量を算出する手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の薬液供給システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記目標作動量として容積可変部材の移動速度の目標値を設定するとともに、該目標値と、前記作動量検出手段による検出結果を基に求めた実際の容積可変部材の移動速度との偏差に基づいて前記圧力調整手段を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の薬液供給システム。
【請求項4】
前記容積可変部材の作動量とポンプ吐出量との関係を規定しておき、前記制御手段は、前記関係を用い都度の流量指令値に基づいて前記移動速度の目標値を設定することを特徴とする請求項3に記載の薬液供給システム。
【請求項5】
前記容積可変部材の作動範囲内において複数に分割した区間毎に容積可変部材の作動量とポンプ吐出量との関係を線形化する手段を備え、前記制御手段は、前記線形化した関係を用いて前記圧力調整手段を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項6】
前記薬液供給ポンプの容積可変部材として軸方向に伸縮自在のベローズを用い、前記作動量検出手段により、前記容積可変部材の作動量として前記ベローズの伸縮量が検出される薬液供給システムであって、
前記制御手段は、前記ベローズの伸縮量に基づいて前記圧力調整手段を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項7】
前記薬液供給ポンプの容積可変部材としてダイアフラムを用い、前記作動量検出手段により、前記容積可変部材の作動量として前記ダイアフラムの変形量が検出される薬液供給システムであって、
前記ダイアフラムの変形範囲内において複数に分割した区間毎にダイアフラム変形量とポンプ吐出量との関係を線形化する手段を備え、前記制御手段は、前記線形化した関係を用いて前記圧力調整手段を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項8】
前記各区間の境界点でのダイアフラム変形量とポンプ吐出量とに基づく直線補間によりダイアフラム変形量とポンプ吐出量との関係を線形化することを特徴とする請求項7に記載の薬液供給システム。
【請求項9】
前記圧力作用室側において前記容積可変部材に被検出体を連結し、前記作動量検出手段は、前記容積可変部材の作動量として前記被検出体の移動量を検出することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項10】
前記薬液供給ポンプを複数備え、これら各ポンプを交互に吸引動作及び吐出動作させることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項11】
前記圧力作用室内の気体圧力とは相反する向きに前記容積可変部材を付勢する付勢手段を設けた薬液供給ポンプを適用し、
前記作動量検出手段により検出した前記容積可変部材の作動量と前記圧力作用室内の気体圧力とに基づいて前記ポンプ室内の圧力を算出する手段と、
該算出したポンプ室内の圧力により当該ポンプ室の圧力制御を実施する手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項12】
前記圧力作用室内の気体圧力とは相反する向きに前記容積可変部材を付勢する付勢手段を設けた薬液供給ポンプを適用し、
前記作動量検出手段により検出した前記容積可変部材の作動量と前記圧力作用室内の気体圧力とに基づいて前記ポンプ室内の圧力を算出する手段と、
該算出したポンプ室内の圧力により、該ポンプ室に通じる薬液吐出通路で目詰まりが発生したかどうかを判定する手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項13】
前記ポンプ室に通じる吸引通路側に吸引バルブを設けるとともに、同ポンプ室に通じる吐出通路側に吐出バルブを設けた薬液供給ポンプを適用し、
前記容積可変部材の作動に伴う薬液の吐出時に前記吸引バルブを閉、前記吐出バルブを開とし、該吐出の終了後において前記吸引バルブを閉、前記吐出バルブを開とした状態を一時的に継続したまま前記容積可変部材の作動を反転させて薬液の吸引を開始することを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の薬液供給システム。
【請求項14】
薬液の吐出終了後において前記吸引バルブを閉、前記吐出バルブを開とした状態で薬液の吸引動作を実施する時間、又は吸引速度を可変に制御することを特徴とする請求項13に記載の薬液供給システム。
【請求項15】
薬液を充填するためのポンプ室と、ダイアフラムにより前記ポンプ室から仕切られてなるダイアフラム操作室とを有し、そのダイアフラム操作室の容積変化に応じて前記ダイアフラムを撓み変形させ、その撓み変形に伴う前記ポンプ室の容積変化に基づいて前記薬液を吸引又は吐出する薬液供給ポンプであって、
前記ダイアフラム操作室と該ダイアフラム操作室に連通された流体室に非圧縮性流体を充填するとともに、前記流体室の容積を作動量に対してリニアに変化させる可動体を設け、該可動体を挟んで前記ダイアフラム操作室とは逆側に設けられた圧力操作室に、該圧力操作室内における気体の圧力を調整するための圧力調整手段を接続したことを特徴とする薬液供給ポンプ。
【請求項16】
前記ダイアフラムの有効断面積よりも前記可動体の有効断面積を小さくしたことを特徴とする請求項15に記載の薬液供給ポンプ。
【請求項17】
前記可動体は、前記流体室に対向する側の面積が比較的小さく、前記圧力操作室に対向する側の面積が比較的大きい形状を有するプランジャであることを特徴とする請求項15又は16に記載の薬液供給ポンプ。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれかに記載の薬液供給ポンプと、
前記可動体の作動量を検出する作動量検出手段と、
前記薬液供給ポンプによる薬液の吸引又は吐出時において前記可動体の目標作動量を設定するとともに、該目標作動量と前記作動量検出手段による検出結果から求めた実際の作動量との偏差に基づいて前記圧力調整手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする薬液供給システム。
【請求項19】
前記作動量検出手段による検出結果に基づいて薬液の吐出流量を算出する手段を更に備えたことを特徴とする請求項18に記載の薬液供給システム。
【請求項20】
前記制御手段は、前記目標作動量として可動体の移動速度の目標値を設定するとともに、該目標値と、前記作動量検出手段による検出結果を基に求めた実際の可動体の移動速度との偏差に基づいて前記圧力調整手段を制御することを特徴とする請求項18又は19に記載の薬液供給システム。
【請求項21】
前記可動体の作動量とポンプ吐出量との関係を規定しておき、前記制御手段は、前記関係を用い都度の流量指令値に基づいて前記移動速度の目標値を設定することを特徴とする請求項20に記載の薬液供給システム。
【請求項22】
前記薬液供給ポンプを複数備え、これら各ポンプを交互に吸引動作及び吐出動作させることを特徴とする請求項18乃至21のいずれかに記載の薬液供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−316711(P2006−316711A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140705(P2005−140705)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【出願人】(502128800)株式会社オクテック (83)
【Fターム(参考)】