説明

蛍光検出装置

【課題】焦点調整を行った後の蛍光検出時に焦点のずれが生じることを抑え、精度良く蛍光検出を行う。
【解決手段】蛍光検出装置が、投影光学系29と、焦点検出光学系34と蛍光検出光学系33を有する。投影光学系29は、レーザー光源1aからのレーザー光を集光してDNAアレイ31に照射する。焦点検出光学系34は、レーザー光がDNAアレイ31の焦点合わせ位置に照射された際に生じる反射光を、光電変換器であるPMT11に導く。蛍光検出光学系33は、レーザー光がDNAアレイ31のDNAプローブ31aに照射された際に、DNAプローブに捕捉された蛍光物質から発せられた蛍光をPMT11に導く。蛍光検出光学系33と焦点検出光学系34は、いずれか一方が穴明きミラー3とPMT11の間に選択的に位置するように切り替え可能であり、焦点検出光学系34は蛍光検出光学系33よりも浅い焦点深度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床検査におけるDNA診断等に用いられる蛍光検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、DNAマイクロアレイ中に検体を注入し、DNAマイクロアレイのプローブに捕捉された標識物質の発する蛍光強度を検出することによって検体の分析を行うための蛍光検出装置が用いられている。このような蛍光検出装置において高精度の蛍光検出を行うためには、励起光をDNAマイクロアレイに照射する際、また、蛍光を受光装置にて受光する際に、それぞれ合焦している必要がある。そのため、このような蛍光検出装置には焦点調整装置が設けられており、公知の焦点調整装置の例としては、以下のものが挙げられる。第1の例は、操作者が蛍光強度を実際に検出しながら焦点合わせをする装置である。第2の例は、受光光学系から分岐した光路上に専用の焦点検出光学系を有し、励起光を走査させながら焦点位置を検出しリアルタイムに焦点調整を行う装置(特許文献1参照)である。第3の例は、DNAマイクロアレイ上に位置合わせマークを形成しておき、その位置合わせマークからの蛍光の強度に基づいて焦点位置を検出する装置(特許文献2参照)である。
【特許文献1】特開2001−242081号公報
【特許文献2】特開2001−305058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記した従来例のうち、操作者が蛍光強度を実際に検出しながら焦点合わせをする装置では、焦点合わせに時間がかかり、しかも熟練を要するため、再現性が悪いという問題があった。
【0004】
専用の焦点検出光学系を用いる装置では、光路分岐装置と、蛍光検出用と焦点検出用にそれぞれ別個に設けられたセンサーおよび光学系と、リアルタイムに焦点合わせをするためのボイスコイル等の機構が必要である。したがって、構造が複雑で高価であるという問題があった。
【0005】
DNAマイクロアレイ上の位置合わせマークからの蛍光強度によって焦点位置を検出する装置では、褪色により蛍光強度が、時間とともに弱くなるため、正確にピント位置を検知できないという問題があった。また、蛍光検出光学系と焦点検出光学系の焦点深度が等しく、焦点合わせの精度が悪いという問題があった。すなわち、各光学系から、蛍光物質を捕捉した各プローブまでの距離が、被検面中の位置によって異なる場合には、全てのプローブを両光学系の焦点深度の範囲内に適正に配置することが困難である。したがって、実際の蛍光強度の変化と、ピントずれによる測定値の変動との判別が困難になり、蛍光強度の測定精度が低下するという問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、構造が簡単で安価に製造でき、焦点調整を行った後の蛍光検出時に焦点のずれが生じることを抑え、精度良く蛍光検出を行うことができる蛍光検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蛍光検出装置は、光源からの光を集光して被検面に光を照射する投影光学系と、被検面に存在する蛍光物質に光が照射されて発生した蛍光を、蛍光フィルターを通過させて受光装置に導く蛍光検出光学系と、光が被検面により反射されて生じる反射光を受光装置に導く焦点検出光学系とを有し、焦点検出光学系は蛍光検出光学系よりも浅い焦点深度を有する。
【0008】
また、本発明の蛍光検出装置は、蛍光標識された被検体を第一の領域に固定した基板を載置する載置部と、基板に対し光源からの光を集光して被検面に光を照射する投影光学系と、被検面に存在する蛍光物質に光が照射されて発生した蛍光を、蛍光フィルターを通過させて受光装置に導く蛍光検出光学系と、光が被検面により反射されて生じる反射光を受光装置に導く焦点検出光学系とを有し、蛍光検出時には、被検体と光の集光点を相対的に移動させて第一の領域を2次元走査し、焦点検知時には、第一の領域以外の部分に集光点を移動させて光軸方向の距離を変化させる構成であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の蛍光検出装置は、焦点深度の深い蛍光検出光学系と焦点深度の浅い焦点検出光学系を有している。焦点深度の浅い焦点検出光学系を用いて高精度に焦点位置を合わせた後に、焦点深度の深い蛍光検出光学系を用いて蛍光検出を行うため、蛍光検出時に受光装置へ至る光が、深い焦点深度の範囲内から外れるおそれが非常に小さくなる。これにより、装置の構造を複雑にしなくても、距離が均一でない被写体を用いる場合にも焦点ずれが問題にならずに精度良く蛍光強度を検出することができる。
【0010】
また、本発明の蛍光検出装置は、蛍光検知領域以外の位置に光学系を固定して励起光の反射光を用いて焦点検知を行うため、蛍光標識を褪色させることなく、共通の検出器を用いた簡単な構成で正確な焦点検出が可能になり、精度良く蛍光強度を検出することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(蛍光検出装置の構成)
図1は、本発明の蛍光検出装置の一実施形態であるDNAアレイスキャナーの構成図である。このDNAアレイスキャナーは、レーザー光源1a,1bと、波長分離ミラー2と、穴明きミラー3と、ミラー4と、対物レンズ5とから構成されているレーザー光投影光学系29を有している。レーザー光源1a,1bの光軸上には、開閉可能なシャッター27,28がそれぞれ配置されている。シャッター27,28は必要に応じて開閉してレーザー光の通過と遮断を切り替える制御装置である。レーザー光源1aの偏光面と、レーザー光源1bの偏光面はほぼ一致するように調整されている。波長分離ミラー2はレーザー光源1aの光軸とレーザー光源1bの光軸の交点に位置している。波長分離ミラー2は、レーザー光源1aから出射する波長λaの光は透過し、レーザー光源1bから出射する波長λbの光は反射する分光特性を有し、両レーザー光源1a,1bからの光をいずれも穴明きミラー3およびミラー4へ導く。ミラー4による反射方向に対物レンズ5が位置し、ミラー4と対物レンズ5は、主走査駆動装置6および駆動ベルト7に駆動されて一体的にX方向に往復運動可能である。
【0013】
穴明きミラー3の反射方向の光軸近傍には、2つの受光光学系が配置されている。一方の受光光学系は、蛍光フィルター8と、蛍光検出用の集光レンズ9と、蛍光検出用のピンホール部材(共焦点絞り)10とから構成されている蛍光検出光学系33である。他方の受光光学系は、偏光フィルター(偏光板)12と、焦点検出用の集光レンズ13と、焦点検出用のピンホール部材(共焦点絞り)14とから構成されている焦点検出光学系34である。この蛍光検出光学系33と焦点検出光学系34は、選択的に、穴明きミラー3の反射方向の光軸上に位置するように、不図示の駆動装置によって移動可能である。図示しないが、蛍光検出光学系33は蛍光検出鏡筒内に格納され、焦点検出光学系34は焦点検出鏡筒内に格納されて、それぞれ鏡筒ごと移動して切り替えられる構成であってもよい。偏光フィルター12は、レーザー光源1a,1bの偏光面を有する光を遮断するように角度が調整されて配置されている。
【0014】
蛍光検出光学系33が穴明きミラー3の反射方向の光軸上に位置している状態(図1参照)では、蛍光検出用のピンホール部材10の開口(ピンホール)が対物レンズ5の焦点位置とほぼ共役関係にある。焦点検出光学系34が穴明きミラー3の反射方向の光軸上に位置している状態(図5参照)では、焦点検出用のピンホール部材14の開口(ピンホール)が対物レンズ5の焦点位置とほぼ共役関係にある。焦点検出用のピンホール部材14の開口は蛍光検出用のピンホール部材10の開口よりも小さい。
【0015】
穴明きミラー3の反射方向の光軸上であって、蛍光検出光学系33または焦点検出光学系34を通過した位置に、光電変換器であるPMT11が設けられている。PMT11には、増幅回路15と、画像ボード16と、モニター17が接続されている。これらを総称して、ここでは受光装置という。なお、画像ボード16は、画像メモリー18、MPUボード19、メモリー(記憶装置)20、キーボード21、およびマウス22とともに、システムバス23に接続されている。
【0016】
対物レンズ5の光軸上には、基準位置にカセット30を配置可能なカセット置台24が設けられている。カセット置台24と対物レンズ5の距離を調節するための焦点調整装置24aが設けられており、カセット置台24上のカセット30は、焦点調整装置24aによって、対物レンズ5の光軸上をZ方向(図1上下方向)に往復移動可能である。また、カセット置台24は、副走査駆動装置25によって、ガイドレール26に沿ってY方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に移動可能である。一方、ミラー4および対物レンズ5は、主走査駆動装置6およびベルト7によってX方向(図1左右方向)に移動可能である。すなわち、主走査駆動装置6およびベルト7と、副走査駆動装置25およびガイドレール26によって、カセット置台24上のカセット30と対物レンズ5とを相対的に2次元的に移動させるXY走査装置(2次元走査装置)が構成されている。
【0017】
図2は、カセット30を拡大して示す図である。カセット30の下面にあたる位置にはDNAアレイ31が設けられ、DNAアレイ31の上面には多数のDNAプローブ31aが設けられている。この面が被検面となる。DNAアレイ31とカセット30の上面の間には、標識された検体が注入された時にDNAプローブ31aとの間でハイブリダイゼーション反応が行われる反応場となるチャンバー32が形成されている。
【0018】
(蛍光検出方法)
次に、このような構成のDNAアレイスキャナーを用いて、DNAアレイ31のDNAプローブ31aに捕捉された検体の蛍光標識から発せられる蛍光の強度を測定する方法について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0019】
まず、操作者はカセット30を、蛍光標識された検体とのハイブリダイゼーション反応が完了したDNAプローブ31aを有するDNAアレイ31が対物レンズ5側に位置するように、カセット置台24上に配置する(ステップ101)。
【0020】
そして、DNAアレイ31の下面(裏面)からレーザー光(励起光)を照射して蛍光画像の取得を行うが、その前に、カセット30毎に焦点合わせを行わなければならない。これは、DNAアレイ31をカセット置台24の基準位置に当接させてカセット30を配置しても、DNAアレイ31の板厚や平行度の誤差の影響により、DNAプローブ31aから対物レンズ5までの距離に誤差が生じるからである。
【0021】
そこで、操作者は、モニター17の画面を見ながら、標識として用いられた蛍光材の励起波長に応じてレーザー光源1a,1bのいずれかを選択し(ステップ102)、スタートボタン17aをクリックする。これにより、MPUボード19は、以下に記す焦点検出動作(ステップ103)を開始する。
【0022】
(焦点検出)
焦点検出動作(ステップ103)について図4のフローチャートを参照して説明する。
【0023】
まず、MPUボード19が、不図示の駆動装置を作動させて、図5に示すように焦点検出光学系34を穴明きミラー3とPMT11の間に位置させる(ステップ103a)。また、主走査駆動装置6と副走査駆動装置25を駆動して、対物レンズ5とDNAアレイ31の相対位置を調整する。それによって、励起光であるスポット光が、図6に示すDNAアレイ31上の、多数のDNAプローブ31aが配置されている領域(第一の領域)の外側に位置する第1の焦点合わせ位置31bに照射されるようにする(ステップ103b)。なお、図6では、多数のDNAプローブ31aが配置されている領域全体を符号31aで概略的に示している。それから、焦点調整装置24aによりカセット置台24を移動して、あらかじめ設定されたZ方向走査開始位置にカセット30を位置させる。さらに、PMT11のゲインをメモリー20より読み出し、焦点検出用の値に設定する(ステップ103c)。
【0024】
次に、レーザー光源1aまたは1bからレーザー光を照射する。具体的には、前記したように、標識として用いられた蛍光材の励起波長に応じたレーザー光源を選択する。レーザー光源1aを選択した場合にはシャッター27を開き(ステップ103d)、レーザー光源1bを選択した場合にはシャッター28を開く。なお、以下の説明ではレーザー光源1aを選択した場合について述べるが、レーザー光源1bが選択された場合の動作も実質的に同じである。
【0025】
レーザー光源1aから出射された平行光であるレーザー光は、波長分離ミラー2を透過し、穴明きミラー3の開口部3aを通り、ミラー4により反射され、対物レンズ5に入射する。そして、このレーザー光は対物レンズ5によってDNAアレイ31の焦点合わせ位置31b付近に集光させられる。焦点合わせ位置31bで反射された光(反射光)は、対物レンズ5を通って平行光にされ、ミラー4により反射され、穴明きミラー3の開口部3aの周囲の部分により下方に反射され、偏光フィルター12に達する。偏光フィルター12に到達した光のうち、DNAアレイ31による鏡面反射成分は偏光フィルター12によって遮断される。偏光フィルター12によって遮断されなかった光(拡散反射成分)は、集光レンズ13によって焦点検出用ピンホール部材14の開口に集光され、この開口を通過してPMT11に至る。PMT11に入射した光は電気信号に変換され、電気信号は増幅回路15で増幅され、画像ボード16によりデジタルデータに変換されてメモリー20に記憶される。
【0026】
こうして、メモリー20に記憶されたデジタルデータに基づいて、焦点調整装置24aにより、対物レンズ5とDNAアレイ31の距離、すなわち焦点位置を調整する。具体的には、予めメモリー20に記憶されている焦点検出時のZ方向走査開始点ZsとZ方向走査終了点Zeと移動ステップZincのデータに基づいてカセット置台24をZ方向(図5上下方向)に移動させる。カセット置台24を走査開始点Zsから走査終了点Zeまで移動ステップZincずつ断続的に移動させつつ、その都度、DNAアレイ31による反射光の拡散反射成分をPMT11に入射させる。そして、増幅回路15および画像ボード16を介してデジタルデータを得てメモリー20に記録する。このデジタルデータにより、Z方向の各位置に対応した光強度の情報が得られる。Z位置と光強度の関係の一例を図7に示しており、図7の横軸はカセット30のZ方向の位置であり縦軸は光強度である。
【0027】
焦点検出用のピンホール部材14の開口は、対物レンズ5の焦点位置とほぼ共役関係にあり、その開口径は対物レンズ5を通って照射されるスポット光の像よりも小さくなるように形成されている。したがって、DNAアレイ31の表面と対物レンズ5の焦点位置とが一致したときに、焦点検出用のピンホール部材14を通過してPMT11に達する光量が最大になる。Z方向の走査範囲を適切に設定すると、図2に示すDNAアレイ31の裏面31rと、DNAアレイ31の表面において、それぞれ光量のピークを示す。図7では、一方のピーク(Z=Zfの位置)がDNAアレイ31の表面の位置を示し、他方のピーク(Z=Zrの位置)がDNAアレイ31の裏面31rの位置を示している。したがって、Z=Zfの光量のピークを示す位置にカセット30の高さを決定すれば、DNAアレイ31の表面の位置に、スポット光の焦点を合せることができる。
【0028】
なお、反射強度の強いカセットの裏面30r(図2参照)がZ方向の走査範囲に含まれている場合には、DNAアレイの表面と、DNAアレイ31の裏面31rと、カセット30の裏面30rとに対応する3点においてそれぞれ光量のピークを示す。したがって、2つめのピークを示す位置にカセット30の高さを決定すれば、DNAアレイ31の表面にスポット光の焦点を合わせることができる。しかし、DNAアレイ31の形状および寸法の誤差は、DNAアレイ31の裏面31rからカセット30の裏面30rまでの距離に対して十分小さい。従って、図7に示すように、カセットの裏面30rを含まないようにZ方向の走査範囲を設定すると、効率良く焦点位置を求めることができる。
【0029】
以上のようにして焦点合わせ位置31bにおけるZ方向の焦点位置を求めて、そのZ方向の座標をメモリー20に記憶する(ステップ103e)。そして、シャッター27を一旦閉じる(ステップ103f)。
【0030】
次に、主走査駆動装置6およびベルト7と、副走査駆動装置25およびガイドレール26からなる2次元走査装置(XY走査装置)を作動させる。それによって、対物レンズ5の光軸が、DNAアレイ31のもう1つの焦点合わせ位置31cに位置するように位置調整する(ステップ103g)。シャッター27を開き(ステップ103h)、再びカセット置台31をZ方向の走査開始点Zsから走査終了点Zeまで移動ステップZincずつ断続的に移動させ、その都度、DNAアレイ31による拡散反射成分をPMT11に入射させる。そして、各位置に対応した出力値を求め、前記した焦点合わせ位置31bの焦点位置検出と同様な方法で、焦点合わせ位置31cの焦点位置検出を行う(ステップ103i)。シャッター27を閉じ(ステップ103j)、PMT11のゲインをリセットする(ステップ103k)。
【0031】
このように、2つの焦点合わせ位置31b,31cにおいて反射光量のピークを求め、それぞれのZ方向の焦点位置Za,Zbを求めたら、その中間位置Zc=(Za+Zb)/2を算出する。この中間位置Zcは、DNAアレイ31の表面を表しているが、蛍光画像を取得するための最良像面とは限らない。DNAプローブ31aに捕捉されている蛍光標識は、DNAアレイ31の表面から一定の距離だけ離れて位置しており、さらに、蛍光検出光学系33と焦点検出光学系34の調整誤差、および、励起光と蛍光の波長差による色収差があるからである。焦点検出光学系34により求めた中間位置Zcと最良像面との誤差(ずれ量)は常に一定量であるため、あらかじめこのずれ量δZをメモリー20に記憶しておくことができる。そして、このずれ量δZをメモリー20から読み出して、前記したように求めた中間位置Zcに加算して、補正位置Zc+δZを算出する(ステップ103l)。焦点調整装置24aによって、カセット30をこの補正位置Zc+δZに移動させる(ステップ103m)。なお、このずれ量δZは、レーザーの波長毎に設定しておくとさらに精度が向上する。このように複数の焦点合わせ位置31b,31cにおけるそれぞれの焦点検出データから最適焦点面を求めるための様々な計算は、MPUボード19に含まれている演算装置によって行われる。
【0032】
本実施形態では、図6に示すようにDNAプローブ31aが設けられている領域の外部に焦点合わせ位置31b,31cを設けて焦点検出を行う。本来、DNAプローブ31aが設けられている領域の真中で焦点調整を行うと、最も高精度の焦点合わせが行える。しかし、蛍光検出前のDNAプローブ31aに光を当てると、退色により蛍光が弱められるという現象が発生する。したがって、焦点調整時に光が照射されたDNAプローブ31aと、光が照射されていないDNAプローブ31aとが混在すると、両DNAプローブ31aの間に蛍光強度の測定誤差が生じる。このため本実施形態では、焦点検出時にはDNAプローブ31aに光が当たらないように、DNAプローブ31aが設けられている領域の外部に焦点合わせ位置31b,31cを設けている。また、本実施形態においては、DNAアレイ31上の2点で焦点検出を行ったが、より多くの点で測定をおこなうことにより精度が向上することはいうまでもない。
【0033】
なお、焦点検出光学系34が穴明きミラー3とPMT11の間に位置している状態では、シャッター27は、レーザー光が対物レンズ5から焦点合わせ位置31b,31cに導かれる時にのみ開き、それ以外は閉じる制御装置として働く。
【0034】
(蛍光検出動作)
次に蛍光検出動作(ステップ104、図3参照)を行う。この蛍光検出動作の蛍光画像スキャンのフローチャートを図8に示している。
【0035】
蛍光検出を行うにあたって、メモリー20にあらかじめ記憶されている蛍光検出用のPMT11のゲインを読み出して設定する(ステップ104a)。そして、図1に示すように蛍光検出光学系33を穴明きミラー3とPMT11の間の光軸上に配置する(ステップ104b)。図9に示す2次元(XY方向)走査の開始位置31sにスポット光を照射するように、2次元走査装置(XY走査装置)を駆動する。蛍光検出光学系33の移動とカセット30の相対位置調整の間は、DNAプローブ31aへの光の照射を避けるために、シャッター27を閉じてレーザー光を遮断しておく。
【0036】
そして、シャッター27を開き(ステップ104c)、DNAアレイ31上をXY方向にレーザー光を走査しつつ、蛍光の光強度を求める(ステップ104d)。図9は、DNAアレイ31上を2次元走査する(第一の領域を2次元走査する)時の軌跡31pを示している。XY方向の走査開始点31sから方向転換点31tまでは、主走査駆動装置6を駆動して対物レンズ5とミラー4を移動する。そのとき副走査駆動装置25は停止している。主走査駆動装置6が方向転換点31tを通過したことを検出すると、副走査駆動装置25を駆動して対物レンズ5とミラー4をY方向に1ライン分移動させて停止させる。それとともに、主走査駆動装置6を減速させて逆転させ、X方向の反対側への駆動を開始する。このようにして、次のラインの端部の点31uから端部の点31vまで対物レンズ5とミラー4をX方向へ移動させる。このような対物レンズ5とミラー4のX方向の走査とY方向の走査を繰返して、レーザー光を、DNAアレイ31上を走査開始点31sから走査終了点31eまで走査する。
【0037】
レーザー光源1aからのレーザー光(励起光)は、DNAアレイ31上を走査される間、DNAプローブ31aの位置に集光する。複数のDNAプローブ31aは、チャンバー32内に蛍光標識された検体が注入されてハイブリダイゼーション反応が行われた際に、それぞれ様々な割合で検体と結合している。蛍光標識された検体と多く結合しているDNAプローブ31aほど強い蛍光を発する。すなわち、蛍光光量を測定することによりそれぞれのDNAプローブ31aに結合している検体の量を求めることができる。
【0038】
前記したようにレーザー光を走査すると、レーザー光によって励起された蛍光物質は蛍光を発する。この蛍光とレーザー光は、DNAアレイ31の基板によって反射される。この反射光は、前記した焦点検出工程と同様に、対物レンズ5を通って略平行光にされ、ミラー4により反射され、穴明きミラー3の開口部3aの周囲の部分により下方に反射され、蛍光フィルター8に達する。蛍光フィルター8は、レーザー光の波長を遮断し蛍光のみを透過する特性を有しているため、蛍光のみが、集光レンズ9によって蛍光検出用のピンホール部材10の開口に集光され、この開口を通過してPMT11に至る。PMT11に入射した蛍光は電気信号に変換され、電気信号は増幅回路15で増幅され、画像ボード16によりデジタルデータに変換されて画像メモリー18に記憶される。
【0039】
レーザー光の、走査開始点31sから走査終了点31eまでの走査が完了し、その間の蛍光の光強度のデータが求められて記憶されたら、シャッター27を閉じる(ステップ104e)。そして、PMT11のゲインをリセットする(ステップ104f)。
【0040】
レーザー光の、走査開始点31sから走査終了点31eまでの走査の間に、蛍光の光強度を求めた結果をモニター17に画像表示する(ステップ104g)。モニター17に表示される画像の例が図10に示されている。
【0041】
DNAアレイ31には、多数のDNAプローブ31aが2次元マトリクス状に略等間隔に配列されており、図10に白いドットで示すように蛍光像は画像の明部となって現れる。その他の部分からの蛍光は微量であるため、暗部を形成する。この画像を、MPUボード19によって既知の画像解析手法を用いて解析することにより、各DNAプローブ31aの輝度をそれぞれ検出することができる。その検出結果に基づき、各DNAプローブ31aと蛍光標識のそれぞれの特性を考慮することによって、チャンバー32に注入された検体の種類を判定することができる(ステップ105、図3参照)。
【0042】
なお、蛍光物質は、1種類ではなく、用途に応じて複数種類用いられることがある。したがって蛍光物質に合わせて、波長の異なるレーザー光源1b(図1参照)を選択することにより、異なる種類の蛍光物質に対応することができる。その場合にも、点灯するレーザー光源1aまたは1bと、開閉するシャッター27または28が異なるのみであり、前記した一連の動作は共通である。
【0043】
ただし、2種類の光源として固体レーザーと半導体レーザーを用いる場合にはその特性に合わせて駆動制御する必要がある。すなわち、出力が安定するまでに時間がかかる固体レーザーは、実際に画像スキャンを行うよりも所定時間だけ前に点灯して、消灯させることなく、シャッターの開閉を制御して、焦点検出および蛍光検出を行えばよい。一方、半導体レーザーの場合には、長時間点灯し続けると、温度上昇により波長が長波長側にシフトするという性質がある。波長が長波長側にシフトすると、レーザー光が蛍光フィルター8のカットオフ波長に近づくため、レーザー光が漏れ光となって蛍光フィルター8を透過してしまい、画像のコントラストが低下する。したがって半導体レーザーを用いる場合は、レーザーの点灯時間をできるだけ短くするため、必要なときにのみレーザー光源をオンするように制御するとよい。
【0044】
蛍光フィルター8は、基体上に屈折率の異なる誘電体を何層も蒸着した、いわゆる干渉フィルターからなる構成である。干渉フィルターの特性として、光の入射角により分光透過特性が異なる。そのため、様々な角度の光線が通過する光路上にこの蛍光フィルター8を配置すると、レーザー光の一部が透過して漏れ光となり、画像のコントラスト低下の原因となる。そこで、蛍光フィルター8は、図1に示すように、ほぼ全ての光線が光軸と平行である、受光光学系中の穴明きミラー3と集光レンズ7の間に配置するのがよい。
【0045】
(焦点深度)
次に、図11を参照して、蛍光検出光学系33と焦点検出光学系34の焦点深度について説明する。図11(a)は、穴明きミラー3とPMT11の間に蛍光検出光学系33を配置した状態における、蛍光検出用ピンホール部材10の開口像10’を概略的に示している。この開口像10’の直径はC1である。これに対し、図11(b)は、穴明きミラー3とPMT11の間に焦点検出光学系34を配置した状態における、焦点検出用ピンホール部材14の開口像14’を概略的に示している。この開口像14’の直径は、C1よりも小さいC3である。本実施形態の蛍光検出光学系33および焦点検出光学系34は略共焦点光学系である。すなわち、投影光学系29の対物レンズ5の焦点位置と、焦点検出光学系34または蛍光検出光学系33のピンホール部材10,14の開口は光学的に共役な関係にある。
【0046】
図11(a),(b)に示すように、光r1は対物レンズ5の中心領域を通ってスポット光として被写体(例えばDNAアレイ31)に投射される。投射光束は、図示しているように、対物レンズ5のレンズ径に比べてかなり細い。被写体により反射された光および被写体の発する蛍光は、下向きの矢印で図示されているように、対物レンズ5のほぼ全面を通り略平行光に変換される。
【0047】
蛍光検出用ピンホール部材10の開口は大きいため、蛍光検出用ピンホール部材10に遮られずに開口を通過してPMT11に到達するのは、合焦面を中心とした比較的広い範囲である。すなわち、この場合の焦点深度C2は深い。これは、開口像10’の直径C1が大きいと、焦点位置から多少ずれた位置からの光も、焦点位置からの光と同様に開口を通過してPMT11に受光されるからである。
【0048】
一方、焦点検出用ピンホール部材14の開口は小さいため、焦点検出用ピンホール部材14に遮られずに開口を通過してPMT11に到達するのは、合焦面を含むごく狭い範囲である。すなわち、この場合の焦点深度C4は、C2よりも浅い。これは、開口像14’の直径C3が小さいと、焦点位置の直近の光しか開口を通過せず、PMT11により受光されないからである。
【0049】
なお、被写体に照射される光束r1のビーム径は、集光レンズ9,13の開口数(NA(Numerical Aperture)値)に対して細いため、焦点深度C2,C4の範囲内では、そのビームウェストは略均一である。従って、絞り(ピンホール部材10,14)の開口径を大きくして焦点深度を深くしても解像力はあまり低下しない。
【0050】
このように、本発明の蛍光検出光学系33は焦点深度が深く、焦点検出光学系34は焦点深度が浅い。焦点検出光学系34の焦点深度が浅いため、焦点検出時にはDNAアレイ31の表面の位置を高い精度で検出することができ、高精度に焦点合わせができる。こうして精度良く焦点調整した後に、蛍光検出に移行する。
【0051】
図12に示すように、DNAアレイ31の裏面を対物レンズ5に対して精度よく配置しても、ガラス等からなるDNAアレイ31の基板は厚み誤差と傾き誤差を持っているため、DNAプローブ31aの位置はDNAアレイ31毎に異なる。さらに、基板の傾きによって1つのDNAアレイ31の中でも、各DNAプローブ31aの位置はそれぞれ異なる。本実施形態の蛍光検出光学系33は焦点深度が深いため、最も遠くに位置するDNAプローブ31afからの蛍光も最も近くに位置するプローブ31anからの蛍光も、集光レンズ9によってPMT11上に集光する際に焦点深度C2の中に入れることができる。したがって、画像全面にわたってコントラストの高い画像が得られる。
【0052】
ただし、焦点深度を深くするにも限界がある。すなわち、あまり焦点深度を深く設定し過ぎると、DNAプローブ31aからの蛍光にカセット30の下面30rの発する蛍光が混入し、画像のコントラストが低下する。また、レーザー光のビームウェストとビーム径は密接な関係があり、焦点深度を深くするに連れ、ビーム径が大きくなり、画像の解像力が低下する。したがって、必要以上に焦点深度を深くすることは画質の低下を招く。焦点深度は、DNAアレイ31の基板の形状誤差を吸収できる最小限の深さに設定することが望ましい。そのためには、基板の形状誤差によってDNAプローブ31aの位置がずれたとしても、そのDNAプローブ31aの位置が効率的に焦点深度の中に収まるように焦点位置を調整する必要がある。
【0053】
本発明においては、焦点検出光学系34の焦点深度は浅く設定してあるため、DNAプローブ31aの位置を精度よく検出できる。焦点深度が浅い焦点検出光学系34によってシビアに焦点合わせした後に、焦点深度が深く多少の誤差を許容し得る蛍光検出光学系33によって蛍光検出を行う。したがって、焦点検出光学系34から蛍光検出光学系33の切り替えに伴う誤差や、その他の様々な誤差が生じたとしても、蛍光検出時に、広い焦点深度の範囲から外れるほど大きな誤差になることはほとんどない。こうして、本実施形態によると、DNAプローブ31aの位置を、蛍光検出時の焦点深度の範囲内に配置することが容易かつ効率的に行え、信頼性が非常に高い。
【0054】
(偏光フィルター)
焦点検出光学系には、DNAアレイ31の基板の表裏両面およびカセット30の下面30rにより反射された反射光が入射する。これらの反射光は、焦点検出のためのZ方向走査時に干渉を生じ、焦点検出のために求められる反射光量の変化量に誤差を生じさせることがある。このような誤差を除くため、偏光フィルター12が焦点検出光学系34に、レーザー光の偏光方向と直交する向きに配置されている。すなわち、レーザー光源1a,1bの偏光面と、偏光フィルター12の偏光面が直交している。これにより、さらに精度よく焦点を検出することができる。
【0055】
図1に示すように、波長の異なる2種類のレーザー光源1a,1bが用いられる場合には、それぞれのレーザー光の偏光方向を調整して合わせる。これにより、どちらのレーザー光源を使った場合にも、一つの偏光フィルター12で鏡面反射成分を取り除ける。このようにして、1つの投影光学系29で2種類のレーザー光源を使う場合にも精度よく焦点調整できる。また、集光レンズ13として、2種類のレーザー光の波長に対する焦点距離が略等しく設計された貼り合わせレンズ(色消しレンズ)を用いると、共通の共焦点絞り(ピンホール部材)を用いることができるため効率が良い。ただし、共通の共焦点絞りは開口径が可変であることが好ましい。
【0056】
以上説明した実施形態では、2種類のレーザー光を用いる場合について説明したが、レーザー光の種類がさらに増えても同様にして対応可能である。
【0057】
(PMTゲイン)
蛍光検出光学系33と焦点検出光学系34は、前記した通り、フィルターと絞り径(ピンホール部材の開口径)等が異なるため、PMT11に達する光量も異なる。従って、光学系の切り替えに連動してPMT11の光増幅のゲインを切換えると、アナログ/デジタル変換のダイナミックレンジを効率良く利用することができるため、蛍光画像の画質を損なうことなく、焦点検出の精度を向上することができる。表1は、3種類のレーザー光を用いる場合の、PMTゲインの設定方法の一例を示している。ここでは、ゲインは無単位の相対値として示している。
【0058】
【表1】

【0059】
(共焦点絞り)
前記した実施形態においては、フィルターと集光レンズとピンホール部材(絞り)を一体化した2つの光学系、すなわち、蛍光検出光学系33と焦点検出光学系34を切換える構成にした。焦点検出光学系34は共焦点光学系であり、焦点検出用ピンホール部材14の開口径(絞りの直径)はφ0.1mm程度と小さく、集光レンズ13との偏心に厳しい精度が要求される。これに対し、焦点検出用ピンホール部材14の開口と集光レンズ13の位置精度さえ保証できれば、集光レンズ13の光軸と偏光フィルター12の偏心精度は緩くてもよい。
【0060】
安価で精度のよい光学系を得るためには、前記した実施形態のように、集光レンズとピンホール部材を一体に構成し、さらにフィルターも一体に移動させる構成が好ましい。しかし、各ピンホール部材と各集光レンズの偏心精度が保証できるならば、焦点検出光学系34と蛍光検出光学系33で共通の集光レンズを用いることもできる。すなわち、1つの集光レンズを固定して配置し、ピンホール部材10,14とフィルター8,12のみをそれぞれ一体的に移動させて、蛍光検出光学系33と焦点検出光学系34を切換える構成にしてもよい。また、ピンホール部材10,14として、カメラレンズ用の絞りのような、開口径可変の絞りを用いれば、ピンホール部材10,14の切り替えに伴う偏心を未然に防ぐことができる。さらに、ピンホール部材10,14の退避用の空間を確保する必要がないため、装置全体を小型化することができる。
【0061】
なお、仮に蛍光検出光学系33と焦点検出光学系34が共焦点光学系でないとしても、焦点検出光学系34の焦点深度が蛍光検出光学系33よりも浅いことは有効である。すなわち、高精度に焦点検出ができ、蛍光検出時に被検面の一部が焦点深度の範囲外になることがかなり抑えられるからである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の蛍光検出装置の一実施形態であるDNAアレイスキャナーの蛍光検出状態を示す概略構成図である。
【図2】図1に示すDNAアレイスキャナーによって処理される被検体であるカセットの拡大断面図である。
【図3】図1に示すDNAアレイスキャナーを用いた蛍光検出方法を示すフローチャートである。
【図4】図3に示す蛍光検出方法の焦点検出動作を示すフローチャートである。
【図5】図1に示すDNAアレイスキャナーの焦点検出状態を示す概略構成図である。
【図6】図2に示すカセットのDNAアレイを示す拡大平面図である。
【図7】図2に示すカセットのZ方向の位置と、検出された光強度の関係を示すグラフである。
【図8】図3に示す蛍光検出方法の蛍光検出動作を示すフローチャートである。
【図9】図6に示すDNAアレイの2次元走査の経路を示す拡大平面図である。
【図10】蛍光検出結果を表す画像の一例を示す図である。
【図11】(a)は蛍光検出光学系の焦点深度を示す説明図、(b)は焦点検出光学系の焦点深度を示す説明図である。
【図12】DNAアレイ上の様々なDNAプローブの位置を示す拡大正面図である。
【符号の説明】
【0063】
1a,1b レーザー光源
8 蛍光フィルター
11 PMT(光電変換器)
29 投影光学系
33 蛍光検出光学系
34 焦点検出光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を集光して被検面に光を照射する投影光学系と、前記被検面に存在する蛍光物質に前記光が照射されて発生した蛍光を、蛍光フィルターを通過させて受光装置に導く蛍光検出光学系と、前記光が前記被検面により反射されて生じる反射光を前記受光装置に導く焦点検出光学系とを有し、
前記焦点検出光学系は前記蛍光検出光学系よりも浅い焦点深度を有する、蛍光検出装置。
【請求項2】
前記投影光学系は対物レンズを含み、前記蛍光検出光学系は、開口を有する蛍光検出用ピンホール部材と前記蛍光フィルターを含み、前記焦点検出光学系は、前記蛍光検出用ピンホール部材の前記開口よりも小さな開口を有する焦点検出用ピンホール部材を含み、
前記対物レンズから前記被検面までの距離を調整する焦点調整装置と、
前記対物レンズと前記被検面を、前記対物レンズから前記被検面に至る光軸に対して実質的に垂直な平面内で相対的に移動させる2次元走査装置と、
前記蛍光検出光学系と前記焦点検出光学系のいずれか一方を選択的に、前記対物レンズから前記受光装置に至る光路上に位置させて、前記焦点検出用ピンホール部材の前記開口または前記蛍光検出用ピンホール部材の前記開口が前記対物レンズの焦点位置と光学的に共役な関係になるように、前記蛍光検出光学系と前記焦点検出光学系を移動させる駆動装置と、
をさらに含む、請求項1に記載の蛍光検出装置。
【請求項3】
前記蛍光検出光学系は、前記対物レンズおよび前記蛍光フィルターを通過した前記蛍光を受光装置に集光する蛍光検出用の集光レンズを含み、前記蛍光検出用ピンホール部材の前記開口と前記蛍光フィルターは前記蛍光検出用の集光レンズの光軸上に位置しており、
前記焦点検出光学系は、前記対物レンズを通過した前記反射光を受光装置に集光する焦点検出用の集光レンズを含み、前記焦点検出用ピンホール部材の前記開口は前記焦点検出用の集光レンズの光軸上に位置している、
請求項2に記載の蛍光検出装置。
【請求項4】
前記焦点検出光学系が前記対物レンズから前記受光装置に至る光路上に位置している状態で、前記受光装置は前記反射光の強度を求め、前記焦点調整装置は、前記光が前記被検面上に合焦するように、前記対物レンズから前記被検面までの距離を調整し、
前記蛍光検出光学系が前記対物レンズから前記受光装置に至る光路上に位置している状態では、前記2次元走査装置が前記光を前記被検面上を2次元的に走査させつつ、前記受光装置が前記蛍光を検出して、前記被検面の蛍光画像を形成する、
請求項2または3に記載の蛍光検出装置。
【請求項5】
前記焦点調整装置は、前記被検面上の、蛍光検出に寄与しない部分の複数個所において焦点検出を行い、
前記受光装置には、前記複数箇所におけるそれぞれの焦点検出データから焦点面を演算する演算装置が接続されている、
請求項2から4のいずれか1項に記載の蛍光検出装置。
【請求項6】
前記焦点検出光学系は焦点検出鏡筒内に格納され、前記蛍光検出光学系は蛍光検出鏡筒内に格納されており、前記焦点検出鏡筒と前記蛍光検出鏡筒は、前記対物レンズと前記受光装置の間に交換可能に配置される、請求項1から5のいずれか1項に記載の蛍光検出装置。
【請求項7】
前記光源は、実質的に均一な偏光面を有するレーザー光源であり、
前記焦点検出光学系は、偏光面が前記レーザー光源の前記偏光面と直交する偏光フィルターを含む、
請求項1から6のいずれか1項に記載の蛍光検出装置。
【請求項8】
前記光源は、異なる波長を有する複数のレーザー光源であり、前記受光装置に前記蛍光または前記反射光を集光する集光レンズは、前記複数の波長において同一の焦点距離を有する色消しレンズである、請求項1から7のいずれか1項に記載の蛍光検出装置。
【請求項9】
前記受光装置が前記焦点検出光学系を介して求めた前記被検面の位置と、前記蛍光の最良像面の位置の差を記憶しておく記憶装置をさらに有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の蛍光検出装置。
【請求項10】
前記焦点検出光学系が前記対物レンズから前記受光装置に至る光路上に位置している状態では、前記被検面上の焦点合わせ位置にのみ前記光源からの光を導く制御装置をさらに有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の蛍光検出装置。
【請求項11】
蛍光標識された被検体を第一の領域に固定した基板を載置する載置部と、前記基板に対し光源からの光を集光して被検面に光を照射する投影光学系と、前記被検面に存在する蛍光物質に前記光が照射されて発生した蛍光を、蛍光フィルターを通過させて受光装置に導く蛍光検出光学系と、前記光が前記被検面により反射されて生じる反射光を前記受光装置に導く焦点検出光学系とを有し、
前記蛍光検出時には、前記被検体と光の集光点を相対的に移動させて前記第一の領域を2次元走査し、前記焦点検知時には、前記第一の領域以外の部分に集光点を移動させて光軸方向の距離を変化させる
ことを特徴とする蛍光検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−39605(P2008−39605A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214798(P2006−214798)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】