説明

衝撃低減部材

【課題】外部からの衝撃入力信号に応じて外部磁界を変化させることであらかじめ流動特性を変化させることができる衝撃低減部材を提供する。
【解決手段】液体、直径15μm以上、長さ500μm以上の繊維、および粒子から構成される複合材料であって、前記粒子の少なくとも一部が、磁性を有する粒子であることを特徴とする衝撃低減部材によって、上記課題は解決される。袋状の封入容器7に液体、繊維としてのナイロン織布5、および粒子の混合物6を充填し、を圧着部分8をとって封入した封入体とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に設置される、衝突時に衝撃を受ける乗員もしくは歩行者の保護のための衝撃低減部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、自動車用の衝撃緩衝部材として、自動車の衝突後に乗員に加わる慣性力によって、ステアリング、内装材など二次衝突する際のエネルギーを緩和する装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の内装ピラーの裏面リブ構造に関する発明では、樹脂製のピラー裏面にエネルギー吸収に優れた構造を設け、短いストロークにして頭部障害値を低減できる構造が提案されている。
【0003】
また、歩行者保護に関しては、例えば特許文献2に記載のエンジンフード裏面に関する発明では当該部位に座屈構造を設け、特許文献1と同じく頭部障害値を低減できる構造が提案されている。
【0004】
しかしながら特許文献1、2のいずれの場合でも、これらの文献に記載されている従来構造より短いストロークでのエネルギー吸収は高いものの、座屈構造によるエネルギー吸収であるため、内装材料への設置にあっては、5cm程度の厚さが必要であり、見栄えが悪くなること、エンジンフードの設置にあっては、衝突初期に歩行者が接触するバンパーへの適用が極めて困難であるという欠点がある。これらの欠点は、レイアウトに影響を及ぼさないような、2cm以下の厚さでのエネルギー吸収がこれらの座屈構造では得られないことに起因する。
【0005】
一方、これらを改善する一手段として、衝突を事前に検知して作動するいわゆるプリクラッシュ型の安全装置が注目されるようになってきている。特許文献3に記載のシートベルトプリテンショナ機構、特許文献4に記載のステアリングの2次衝突防止機構がこれに該当する。
【特許文献1】特開平9−220985号公報
【特許文献2】特開平7−285464号公報
【特許文献3】特開平6−286581号公報
【特許文献4】特開2002−114157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら自動車内装のピラーや外装のバンパーフードにおいては、特許文献3や4に記載の装置を用いても、極めて衝突障害軽減が困難である。この理由として、障害値を大幅に軽減するために必要な部材の特性は、きめ細かく硬さ変化を起こすことが必要であるが、上記のようなプリクラッシュ機構を組み合わせた磁性流体をもってしても、衝突前から硬くすることはできても、衝突後にやわらかくすることは極めて高度な制御を要する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の従来構造が、座屈構造であるがゆえに、硬さ変化が小さく、しかも座屈に応じて底付きして硬さが急激に上昇することによるものであることをつきとめた。そこで、衝突時の歪速度の高いときに、硬くなることで衝突速度を低減しながら、徐々に柔らかくなっていく材料を用いた。衝撃を受けていないときに柔らかく、歪速度の高いときに硬くなり、徐々に柔らかくなっていく材料としては、例えば、特開平6−20822号公報、特開平9−100110号公報、特開平10−152669号公報などに、液体、微粒子、および分散剤を混合した流体が開示されている。
【0008】
本発明者らは、液体、直径15μm以上、長さ500μm以上の繊維、および粒子から構成される複合材料において、前記粒子の少なくとも一部に、磁性を有する粒子を用いることによって、外部からの衝撃入力信号に応じて外部磁界を変化させることであらかじめ前記複合材料の流動特性を変化させることができることを見出し、従来の欠点を解決するに至った。この解決手段は、従来のプリクラッシュ機構とも異なるもので、衝突前に硬くすることに加えて、衝突後に材料そのものが柔らかくなっていく点が最大の差異である。
【0009】
すなわち本発明は、液体、直径15μm以上、長さ500μm以上の繊維、および粒子から構成される複合材料であって、前記粒子の少なくとも一部が、磁性を有する粒子であることを特徴とする衝撃低減部材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来にない薄い構造で、衝突のエネルギーを吸収し、乗員、歩行者の負傷を低減することができる。本発明と同様の効果を得るためには、事前検知に加えて、衝突の瞬間、衝突後のストロークの検出まで必要となるが、これらのうち事前検知のみが必要となり、大幅なシステムの簡素化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、下記の形態のみに制限されることはない。
【0012】
本発明の衝撃低減部材は、液体、直径15μm以上、長さ500μm以上の繊維、および粒子から構成される複合材料であって、前記粒子は磁性を有する粒子を含む。粒子は、通常時は液体に分散したコロイド状態で存在し、繊維もまたこの液体中に存在している。
【0013】
本発明の衝撃低減部材において、粒子は、圧縮方向に高い歪速度を与えることによって、凝集し、連鎖構造をとる。粒子近傍に繊維が存在することによって、粒子は繊維に沿って凝集、あるいは繊維を端点にして凝集する。このような粒子の凝集によって、衝撃低減部材の圧縮弾性率が変化する。したがって、前記衝撃低減部材は、衝突時の歪速度の高いときに、硬くなることで衝突速度を低減しながら、徐々に柔らかくなっていく特性を示す。
【0014】
本発明の衝撃低減部材は、前記粒子の少なくとも一部が、磁性を有する粒子であることを特徴とする。粒子に高い歪速度を与えて凝集させるためには、ある一定以上の粒子の濃度が必要であるが、磁性を有する粒子を用いた場合、外部磁界を変化させて粒子を強制的に凝集させることができるため、凝集に必要な粒子量を低減することができる。また、衝撃低減部材を所望の硬さに調節することができる。
【0015】
さらに、磁性を有する粒子を含むことによって、外部からの衝撃入力を事前に検知し、これに応じて外部磁界を制御してあらかじめ粒子を凝集させることで衝突前に衝撃低減部材を硬くすることができる。衝突の事前検知については、例えば、ミリ波レーダーで事前に衝突を検知する方法や、特開2005−319912号公報などの手段を適用可能である。
【0016】
本発明の衝撃低減部材において、粒子の形状は特に制限されず、球状であっても針状であってもよいが、好ましくは、針状である。粒子が針状であれば、球状の粒子よりも表面エネルギーが大きいため、低い粒子濃度で凝集が起こる。粒子のアスペクト比は、高いほど凝集しやすい傾向があり、また粒子直径が小さいほど凝集しやすい傾向にある。粒子のアスペクト比は、好ましくは5〜100、より好ましくは20〜100、さらに好ましくは50〜100である。粒子が球状である場合、粒子直径は、好ましくは5nm〜1000nm、より好ましくは5nm〜50nm、さらに好ましく5nm〜20nmである。粒子が針状である場合、断面直径は、好ましくは5nm〜1000nm、より好ましくは5nm〜20nm、さらに好ましくは5nm〜10nmである。球状粒子の粒子直径が1000nm以下、または針状粒子の断面直径が1000nm以下であれば、自動車の衝突において、乗員、歩行者が受ける歪速度である10〜10000(1/s)の範囲内で粒子の凝集を起こすことができる。球状粒子の粒子直径が5nm以上、または針状粒子の断面直径が5nm以上であれば、分散前に粒子が凝集することなく、安定に液体に分散させることができ、本発明が意図する歪速度に応じて凝集状態が変化する、というメカニズムが得られる。また、粒子直径5nm未満の粒子は極めて製造が困難で、実質的に製造が困難である。ここで、粒子のアスペクト比および粒子直径は、透過型電子顕微鏡で観察した100個の粒子の平均値を意味する。針状粒子の断面直径は、楕円状の断面の長径の最大値を意味する。アスペクト比は、長径の最大値と、短径方向の断面の長径および短径の平均値との比として求められる。
【0017】
粒子濃度は、粒子の直径、アスペクト比に依存するが、歪速度10〜10000(1/s)の範囲内で粒子が凝集を起こすためには、粒子濃度、粒子直径、およびアスペクト比は、概ね下記式を満たすことが好ましい。後述する液体への分散安定性、およびの粒子濃度に従う凝集の度合いを考慮すると、粒子濃度は、液体、繊維、および粒子から構成される複合材料の体積に対して、好ましくは5〜40vol%、より好ましくは20〜40vol%である。
【0018】
【数1】

【0019】
磁性を有する粒子の材質は、特に限定されず、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、カルシア、などの粒子を酸化クロム、ヘマタイトなどの磁性材料で被覆して用いることができるが、上記の粒子直径、アスペクト比を経済的に有利に得るためには、アルミナ粒子を主たる原料とするのがもっとも相応しい。発明者らは、アルミナ原料を用いて、種々の温度、原料濃度で実施し、直径5〜1000nm、アスペクト比5以上のものを得ることができた。なお発明者らが製造したアルミナ粒子は、X線回折の結果から、ベーマイト(γアルミナ1水和物)であり、この表面をヘマタイトで被覆したものである。ヘマタイト被覆アルミナ粒子は、例えば、ベーマイトの種結晶を溶液中で作製したあと、水酸化鉄溶液を混合し、結晶化させることでベーマイトの表面にヘマタイトを析出させる方法で作製することができる。または、磁性を有する粒子として、Degussa社製Magsilicaに代表される市販の磁性粒子を用いてもよい。
【0020】
磁性を有する粒子は、全粒子中、好ましくは50〜100%、より好ましくは80〜100%、さらに好ましくは90〜100%である。磁性を有する粒子の割合が上述の範囲であれば、粒子を外部磁界の変化に応じて凝集させることができ、低い粒子濃度で凝集を起こすことができる。外部磁界を変化させる方法については、特に限定されず、従来公知の方法を適宜用いることができる。
【0021】
なお、安価に粒子を得るために、アスペクト比の高い粒子だけでなく、アスペクト比の低い粒子も併用し増量することである。一般に知られているシリカ粒子の場合、球体に近い形状のため、アスペクト比は低下してしまうが、粒子を増量する上で、安価なシリカ粒子を用いることで部材もまた安価に提供することが可能となる。
【0022】
次に繊維について説明する。
【0023】
繊維は粒子の凝集を補助する役目と、部材自体の形状安定性を担うものであることから、繊維の直径は、重要なパラメータとなる。しっかりしたものが必要な場合は、繊維直径は大きい方が良く、逆にしなやかなものが必要であれば、繊維直径の小さいものが好ましい。但し繊維直径が15μmを下回ると、粒子の凝集力が低下する傾向があるので、下限としては15μmが必要である。より好ましくは、繊維直径は20μm以上、さらに好ましくは25μm以上である。上限については、特に限定は無いが、本数が著しく減少し、粒子の凝集が起こりにくくなることから、実質的には1mm程度が上限となる。
【0024】
次に繊維の長さについて説明する。
【0025】
繊維の長さは、500μm以上が必要である。これは、繊維に粒子が集まるため、繊維が短いと粒子の凝集塊が小さくなり、凝集力が低下するためである。繊維を柱にして、粒子が凝集するため、上述の繊維直径15μm以上で、500μm以上が必要な範囲となる。より好ましくは、繊維長さは10,000μm以上、さらに好ましくは100,000μm以上である。長さの上限は、任意である。後述の織布の場合のように、限定はない。
【0026】
発明者らが種々の繊維で検討を行った結果、粒子の凝集に関しては、繊維の影響が、粒子濃度などの値に比べて極めて影響が小さいことが分かった。
【0027】
繊維の材質は、特に制限されず、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、アラミド繊維、ナイロン(登録商標)繊維、ガラス繊維などの繊維が用いられうる。但し、繊維の材質及び織り方の形態によって、この部材の貫通性は大きく影響を受けるため、特に耐貫通性を高めたい場合は、強度の高い繊維材料を選ぶことが望ましい。耐貫通性を高めたい場合は、アラミド繊維を用いることが好ましい。但し、耐貫通性については、設置される部位によって要求特性が変わるので、特にここでは限定しない。
【0028】
一方、繊維の形態については、織布であることが望ましい形態である。織布の場合、単繊維に比べて取り扱いが容易であり、混合しやすいため、液体、粒子、繊維の複合工程にあたって、繊維の供試が簡単に行えるようになる。また、織布の場合、一面に繊維が存在することになり、耐貫通性がもっとも有利になり、破壊強度を高めることに寄与する。特に自動車のドア部品などに設置する場合には、その利点を享受することができる。
【0029】
繊維の混合割合は、液体、繊維、および粒子から構成される複合材料の体積に対して、好ましくは3〜10vol%、より好ましくは5〜10vol%である。
【0030】
次に液体について説明する。
【0031】
液体は、粒子を安定的に分散させることおよび、環境温度に対して液体自体が変質、変態しないことが不可欠である。自動車用途としては、部位にもよるが−40℃〜90℃の温度域に対して、これらの特性を維持する必要がある。この点から、水系のものは使用が困難である。上述のアルミナ粒子、シリカ粒子などの粒子を安定的に分散する上で、エタノール、2−ブタノン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、エチレングリコール等の液体が好ましく用いられうるが、火災、揮発の防止という観点では、エチレングリコールが最も適している。
【0032】
粒子の分散を安定させるための粒子の処方については既存の任意の手法を用いることができる。上述のアルミナ粒子、シリカ粒子いずれにおいても、粒子表面には水酸基を有しているため、水以外の液体には分散しにくい傾向があるが、リン酸、スルホン酸、カルボン酸などの有機酸による処理、またはシランカップリング剤による疎水化処理によって、エチレングリコールなどの有機溶媒に分散可能になる。なお、必要に応じて、p−トルエンスルホン酸などの分散剤を加えてもよい。
【0033】
以上説明してきた、液体、粒子、繊維を内包する構造体、例えば樹脂製のシート、容器に内包したもの、金属製の容器に内包したものを自動車の内装、外装に用いることで、乗員、歩行者の障害を低減できる部品(自動車内装のピラーや外装のバンパーフードなど)を提供することができる。
【実施例】
【0034】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例に示す形態のみに制限されるわけではない。
【0035】
なお、以下の実施例、比較例における吸収エネルギーは、以下の方法にて計測した結果であり、撃芯が停止するまでに吸収されたエネルギーを計測した。
【0036】
吸収エネルギーの計測方法
ASTM D3763「Standard test method for high−speed punncture propertise of plastic」
試験条件
撃芯;φ1/2インチ
先端;R1/4インチ
荷重;125N
試験温度;23℃
衝突初期の歪速度;2200 1/s
(実施例1)
図1に記載の厚さ1mmの袋状のポリエステルシート1(外形10cm×10cm)に、下記の液体、繊維、および粒子の混合物160cmを充填し、図2、3記載のように全周5mmの圧着しろをとって封入し、封入体2を作製した。なお、図3における封入体2の厚さ(H)は約20mmである。さらに図4に記載のように撃芯3が当たらない側にネオジム磁石4(15mm×15mm×10mm、磁束密度3000G)4個を取り付けあらかじめ粒子を配列させてなる衝撃低減部材を作製した。磁石4は、撃芯3が当たった瞬間に離れるように取り付けた。
【0037】
液体;エチレングリコール
繊維;ガラス繊維;直径15μm 長さ500μm
粒子;直径50nmの磁性粒子(Degussa社製Magsilica)
体積混合割合;液体:繊維:粒子=90:5:5
上記の計測条件によって、撃芯3が停止するまでに吸収されたエネルギーを計測した結果、460Jのエネルギー吸収が計測された。
【0038】
(実施例2)
混合物を以下のものに代えたこと以外は、実施例1と同様に衝撃低減部材を作製し、吸収エネルギーを計測した。
【0039】
液体;エチレングリコール
繊維;ガラス繊維;直径15μm 長さ500μm
粒子;直径50nmの磁性粒子(Degussa社製Magsilica)
体積混合割合;液体:繊維:粒子=80:5:15
上記の計測条件によって、吸収エネルギーを計測した結果、490Jのエネルギー吸収が計測された。
【0040】
(実施例3)
混合物を以下のものに代えたこと以外は、実施例1と同様に衝撃低減部材を作製し、吸収エネルギーを計測した。
【0041】
液体;エチレングリコール
繊維;ガラス繊維;直径15μm 長さ500μm
粒子;直径50nmの磁性粒子(Degussa社製Magsilica)
体積混合割合;液体:繊維:粒子=55:5:40
上記の計測条件によって、吸収エネルギーを計測した結果、700Jのエネルギー吸収が計測された。
【0042】
(実施例4)
混合物を以下のものに代えたこと以外は、実施例1と同様に衝撃低減部材を作製し、吸収エネルギーを計測した。
【0043】
液体;エチレングリコール
繊維;ガラス繊維;直径15μm 長さ500μm
粒子;断面直径10nm、長さ100nmのアルミナ針状粒子の表面をヘマタイトで被覆したもの(ヘマタイト量5wt%)
体積混合割合;液体:繊維:粒子=70:5:25
上記の計測条件によって、吸収エネルギーを計測した結果、800Jのエネルギー吸収が計測された。
【0044】
(実施例5)
混合物を以下のものに代えたこと以外は、実施例1と同様に衝撃低減部材を作製し、吸収エネルギーを計測した。
【0045】
液体;エチレングリコール
繊維;ナイロン織布(縦90mm×横90mmの大きさ);繊維直径130μm 織布厚さ 270μm、糸間距離;155μm、空隙率;30%
粒子;直径50nmの磁性粒子(Degussa社製Magsilica)
体積混合割合;液体:繊維:粒子=70:5:25
図5記載のように、ナイロン織布5は2枚使用した。
【0046】
上記の計測条件によって、吸収エネルギーを計測した結果、920Jのエネルギー吸収が計測された。
【0047】
(実施例6)
混合物を以下のものに代えたこと以外は、実施例1と同様に衝撃低減部材を作製し、吸収エネルギーを計測した。
【0048】
液体;エチレングリコール
繊維;ナイロン織布(縦90mm×横90mmの大きさ);繊維直径130μm 織布厚さ 270μm、糸間距離;155μm、空隙率;30%
粒子;直径50nmの磁性粒子(Degussa社製Magsilica)
直径15nmのシリカ粒子
磁性粒子とシリカ粒子は、体積比1:1で混合した。
【0049】
体積混合割合;液体:繊維:粒子=70:5:25
図5記載のように、ナイロン織布5は2枚使用した。
【0050】
上記の計測条件によって、吸収エネルギーを計測した結果、850Jのエネルギー吸収が計測された。
【0051】
(比較例1)
従来構造を模擬したものとしてポリプロピレンにて、図6、7記載の形状を嵌めあわせ実施例1などと同じエネルギー吸収の計測を行った。
【0052】
ここで、図6はリブ10付き板9で、ベース部分の板は、板厚2mmであり、リブ10部分は、リブ肉厚1mm、リブ高さ16mmである。リブ10は、7mm間隔で9本設置されている。図7は図6に嵌め合わせる板11で、板厚2mmのリブなし板である。
【0053】
上記の計測条件によって、吸収エネルギーを計測した結果、280Jのエネルギー吸収が計測された。
【0054】
(比較例2)
実施例1に対して、混合物を次のものに変え、それ以外は全く同一の条件にて計測を行った。
【0055】
液体;エチレングリコール
繊維;ガラス繊維;直径15μm 長さ500μm
体積混合割合;液体:繊維:粒子=95:5:0
上記の計測条件によって、吸収エネルギーを計測した結果、20Jのエネルギー吸収が計測された。
【0056】
実施例1〜6、比較例1、2の結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例と比較例との比較から、本発明の衝撃低減部材は、薄い構造にもかかわらず、高いエネルギーを吸収する。このことから、自動車等の衝撃緩衝が必要な部位に好適であることが分かる。
【0059】
本発明を実施例により詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨内であれば種々の変形が可能である。液体、繊維、粒子の他に加える、酸化防止剤及び熱安定剤等の添加剤、これらを包む素材に関しても適宜用途に応じて改変可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例に使用した混合物の封入体(封入前)の斜視図である。
【図2】実施例に使用した混合物の封入体(封入後)の上面図である。
【図3】実施例に使用した混合物の封入体(封入後)の側面図である。
【図4】衝撃低減部材における磁石配置位置を表した図面であって、図4Aは断面図であって、図4Bは背面図である。
【図5】実施例4に使用した混合物の封入体(封入後)の断面図である。
【図6】比較例1に使用した混合物の構造体(リブあり側)の図面であって、図6Aは側面図であり、図6Bは上面図である。
【図7】比較例1に使用した混合物の構造体(リブなし側)の側面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 実施例に使用した混合物の封入容器、
2 実施例に使用した混合物の封入体(封入後)、
3 撃芯、
4 磁石、
5 ナイロン織布、
6 封入物(液体+粒子)、
7 封入容器、
8 圧着部分、
9 ベース部分の板、
10 リブ、
11 ベース部分の板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体、直径15μm以上、長さ500μm以上の繊維、および粒子から構成される複合材料であって、前記粒子の少なくとも一部が、磁性を有する粒子であることを特徴とする衝撃低減部材。
【請求項2】
前記繊維が、織布であることを特徴とする請求項1に記載の衝撃低減部材。
【請求項3】
外部からの衝撃入力を事前に検知し、これに応じて外部磁界を変化させることで流動特性を変化させることを特徴とする請求項1または2に記載の衝撃低減部材。
【請求項4】
前記磁性を有する粒子が、直径1000nm以下の球状粒子または断面直径1000nm以下の針状粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の衝撃低減部材。
【請求項5】
前記複合材料のうち、粒子が5〜40vol%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の衝撃低減部材。
【請求項6】
自動車の内装、外装に請求項1〜5のいずれか1項に記載の衝撃低減部材を封入した複合物を設置した歩行者もしくは乗員の衝撃低減部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−95709(P2008−95709A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274393(P2006−274393)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】