説明

表示パネルの製造方法

【課題】基板を一方的にマスクに押し付けても基板とマスクを十分に密着させることができない。静電吸着により基板とマスクの双方を引き合わせることで、基板とマスクを十分に密着させて真空成膜(蒸着、スパッタリング等)を行うことにより、パターン精度の高い表示パネルを提供する。
【解決手段】1または複数の表示パネル用回路が形成される基板420とマスク520とを重ねて配置し、当該基板が前記マスクに静電吸着するように、当該マスクに電圧を印加し、当該基板に当該マスクを介して真空成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示パネルの製造工程のうちの1工程として、マスクを用いて有機色素材料をTFT基板に蒸着する方法が知られており(特許文献1)、当該マスクを使用することで3色の発光層をTFT基板に別々に蒸着している。
【0003】
図14は、有機色素材料のTFT基板への蒸着過程を示す図である。図14に示すように、真空チャンバー(図示せず)内には、マスク支持体110によって支持されたマスク120、及び、蒸着源130が設置されている。蒸着源130は、有機色素材料131を入れた坩堝132の周りにヒーター133を設置するようにして構成されている。
【0004】
蒸着過程においては、TFT基板140が当該マスク120上に設置され、有機色素材料131が、TFT基板上の適切な位置に蒸着されるよう、当該マスク120の開口部121とTFT基板140が精密に位置合わせされる。次に、坩堝132内の有機色素材料131がヒーター133により加熱蒸発され、マスク120の開口部を介して、TFT基板140上に蒸着される。
【0005】
この際、図15に示すように、TFT基板140は、TFT形成過程において加わった熱歪みや、膜応力の影響で若干反っており、TFT基板140をマスク120上に設置したとしても、全体的にはマスク120と密着しない。具体的には、例えば、TFT基板140の中心部では、図15に示すように、TFT基板140とマスク120は密着しているが、TFT基板140の端部においては、図16に示すように、TFT基板140の反りにより、TFT基板140とマスク120は密着しない。
【0006】
このような状態で有機色素材料131をTFT基板140に蒸着させたとしても、上記中心部分では適切に有機色素材料131が蒸着されるものの、端部においては、マスク120の開口部121よりも大きく蒸着されてしまう。具体的には、例えば、TFT基板140の中心部においては、図16に示すように、適切にマスク120の開口部121にあわせて、適切に有機色素材料131が形成されるが、TFT基板140の端部においては、図17に示すように、有機色素材料131がマスク120の開口部121からすそを引いてはみだして蒸着される。結果として、上記のように有機色素材料が蒸着された表示パネルを点灯させた場合には、発光色が混ざったり、発光が弱められてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−59757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、上記のような蒸着過程において、マスク120とTFT基板140を密着させるために、機械的にTFT基板140をマスク120に押し付ける方法が考えられる。
【0009】
しかしながら、このような方法では、TFT基板140を一方的にマスク120に押し付けるのみであり、全体的にTFT基板140とマスク120を密着することは困難であり、結果として、ますますTFT基板140が歪めることにもなりかねない。また、例え密着できたとしてもTFT基板を介してマスクを押し込み歪めてしまい、パターンズレを生じてしまう結果となる。マスクは平面であるときに正しいパターンを成しているのであって、歪めるとパターンそのものも歪んでしまい、正しいパターンを保つことはできない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みて、静電吸着により基板とマスクの双方を引き合わせることで、基板とマスクを十分に密着させて真空成膜(蒸着、スパッタリング等)を行うことにより、パターン精度の高い表示パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る表示パネルの製造方法は、1または複数の表示パネル用回路が形成される基板とマスクとを重ねて配置し、前記基板が前記マスクに静電吸着するように、前記マスクに電圧を印加し、前記基板に前記マスクを介して真空成膜することを特徴とする。 当該構成により、静電吸着により基板とマスクの双方を引き合わせ、基板とマスクを十分に密着させてから真空成膜を行うことにより、パターン精度の高い表示パネルを製造することができる。
【0012】
(2)(1)に記載された表示パネルの製造方法において、前記真空成膜後に、前記マスクを接地することを特徴としてもよい。
【0013】
(3)(1)に記載された表示パネルの製造方法において、前記基板の前記マスクと重ならない面に、導電膜を形成し、前記導電膜を、接地することを特徴としてもよい。
【0014】
(4)(3)に記載された表示パネルの製造方法において、前記導電膜のシート抵抗値は、10乃至10Ω/□であることを特徴としてもよい。
【0015】
(5)(1)に記載された表示パネルの製造方法において、前記マスクを絶縁膜で覆うことを特徴としてもよい。
【0016】
(6)(5)に記載された表示パネルの製造方法において、前記絶縁膜に、接地されたアース端子を形成し、前記基板に、端子フレームを形成し、前記端子フレームは前記アース端子と接触することを特徴としてもよい。
【0017】
(7)(6)に記載された表示パネルの製造方法において、前記基板は、薄膜トランジスタ回路を有し、前記薄膜トランジスタ回路を、抵抗体を介して、前記端子フレームに接続することを特徴としてもよい。
【0018】
(8)(7)に記載された表示パネルの製造方法において、前記薄膜トランジスタ回路は、駆動用電力線を有し、前記駆動用電力線を、前記抵抗体を介して、前記端子フレームに接続することを特徴としてもよい。
【0019】
(9)(7)に記載された表示パネルの製造方法において、前記抵抗体は、10乃至10Ωであることを特徴としてもよい。
【0020】
(10)(6)に記載された表示パネルの製造方法において、前記端子フレームは、前記1または複数の表示パネル用回路を囲むように前記基板の外周に設けられ、かつ、アース端子と接触する外周部を含むことを特徴としてもよい。
【0021】
(11)(10)に記載された表示パネルの製造方法において、前記端子フレームは、矩形であって、前記端子フレームは、更に、前記外周部のうち、対向する辺を接続する接続部とを有することを特徴としてもよい。
【0022】
(12)(1)に記載された表示パネルの製造方法において、前記マスクを、マスク支持体によって支持することを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0023】
静電吸着により基板とマスクの双方を引き合わせ、基板とマスクを十分に密着させてから真空成膜を行うことにより、パターン精度の高い表示パネルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる実施の形態における表示パネルの概略を示す図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図1の表示領域における各画素のレイアウトの概略を示す図である。
【図4】第1の実施の形態における表示パネルの断面の概略を示す図である。
【図5】第1の実施の形態における蒸着装置の概略を示す図である。
【図6】第1の実施の形態における静電吸着圧と印加電圧の関係を示す図である。
【図7】第1の実施の形態における静電吸着によりマスク及びTFT基板に働く力の概略を示す図である。
【図8】第2の実施の形態における表示パネルの断面の概略を示す図である。
【図9】第2の実施の形態における蒸着装置の概略を示す図である。
【図10】第3の実施形態におけるTFT基板及びマスク等の概略を示す図である。
【図11】第3の実施の形態における蒸着装置の概略を示す図である。
【図12】第3の実施形態における表示パネル周辺を拡大した概略を示す図である。
【図13】第3の実施の形態における静電吸着圧と印加電圧の関係を示す図である。
【図14】従来の蒸着装置の概略を示す図である。
【図15】従来の方法におけるマスク及びTFT基板に働く力の概略を示す図である。
【図16】図15におけるTFT基板中心部の拡大図である。
【図17】図15におけるTFT基板端部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本実施の形態では、マスクを使用して、基板に対して真空成膜(蒸着、スパッタリング等)を行う。有機EL表示パネルの製造工程においては、有機色素材料の蒸着によって発光層を形成する。液晶表示パネルの製造工程では、酸化インジウムスズ又は酸化インジウム亜鉛のスパッタリングによって透明電極を形成する。いずれの場合も、成膜しようとする領域が開口し、成膜しない領域を覆う形状のマスクを使用し、パターニングしながら成膜を行う。真空成膜の対象となる基板は、1または複数の表示パネルを形成する薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)が形成されたTFT基板である。なお、当該TFT基板は、特許請求の範囲に記載の1または複数の表示用パネル回路が形成される基板に対応するものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1は、本実施形態における表示パネルの製造方法にて製造された表示パネルの概略図を示す図である。図2は図1のII−II断面図である。図1及び図2に示すように、TFT基板150上に、表示領域160が形成され、表示領域160からの配線161はTFT基板150端部の端子162に接続される。表示領域160を形成する有機EL210は、湿気に弱いことから、図1に示すように透明の封止ガラス170でその上部を覆うとともに、当該封止ガラス170とTFT基板150の間は封止シール材180で封止されている。
【0027】
更に、図2に示すように、有機EL210上部と封止ガラス170の間には、透明の乾燥材220を設置して、湿気を吸収する構成を加えてもよい。なお、表示パネル100の点灯時には、表示領域160から発光された各色の光が、透明の乾燥材220及び透明の封止ガラス170を介して、図2上方に発光される。
【0028】
図3は、図1に記載した表示領域160における各画素のレイアウトを示した概略図である。図3に示すように、光の3原色である赤色、緑色、青色からなる各画素310、320、330が、順に行列上に並んで形成される。なお、画素の数は例示であって、本発明は図3に示した画素の数に限定されるものではなく、所望の表示パネルの大きさ等に応じた数に調整される。以下、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
[第1の実施形態]
図4は、第1の実施形態において製造された表示パネルの断面を示す概略図である。図4に示すように、ガラス基板401上には、複数の薄膜トランジスタが形成されたTFT基板420が構成され、当該薄膜トランジスタの配列に対応して、TFT基板420の上に有機EL素子430が形成されている。
【0030】
詳細には、図4に示すように、ガラス基板401上に、多結晶シリコン402、ゲート電極403、ゲート絶縁膜層間絶縁膜404、ソース及びドレイン電極405、パッシベーション膜406が順次積層されることにより、複数の薄膜トランジスタが形成されたTFT基板420が形成される。
【0031】
また、各画素の有機EL素子430は、上記TFT基板420上に形成された平坦化膜407の上部に形成され、バンク材408により互いに隔離されている。具体的には、各有機EL素子430は、平坦化膜407上部に反射メタル409、アノード410、ホール輸送層411、赤色、緑色、青色の各発光層412、413、414、電子輸送層415、カソード416が順に積層されて形成される。
【0032】
次に、本実施形態における表示パネル400の製造方法について説明する。まず、ガラス基板401上に、アルミニウム等の有色の導電膜や、半導体膜、絶縁膜の積層やパターニング等の処理を繰り返して、走査信号線、映像信号線、薄膜トランジスタ等を含むTFT基板420を形成する。そして、これらの薄膜トランジスタ等を保護するため窒化シリコンのパッシベーション膜406を、さらにTFT基板420を平坦化するために、アクリルやポリイミドなどの樹脂平坦化膜407を積層する。
【0033】
次に、反射メタル409とアノード410が、例えば、フォトリソグラフィを用いてパターニングされることにより、画素領域毎に設けられる。また、アノード410の積層後は、各画素領域を格子状に区画するようにバンク材408が設けられ、当該バンク材408で区画された領域に、例えば蒸着法によって、ホール輸送層411、発光層412、413、414、及び、電子輸送層415が順次積層されて設けられる。ここで、発光層412、413、414は、赤色、緑色、青色の3色に塗り分けるためマスクを3回用いて蒸着されるが、この点は後に詳述する。そして、カソード416は、バンク材408を介して各画素領域の発光層412、413、414を共通に覆うように形成される。このようにして、1または複数の表示パネル400が1つのガラス基板401上に形成される。なお、上記した表示パネル400の製造方法は、その概略を示すものであって、必要に応じてその他の工程が追加され得る。
【0034】
なお、ホール輸送層411に用いるホール輸送性を示す物質としては、例えば、テトラアリールベンジシン化合物(トリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、銅フタロシアニン誘導体等が用いられる。また、各発光層412、413、414に用いる発光材料としては、電子、ホールの輸送能力を有するホスト材料に、電子、ホールの再結合により蛍光、もしくは、りん光を発するドーパントを添加したもので共蒸着により第3の層として形成できるものであれば特に限定は無く、例えば、ホストとしてはトリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)]メタンのような錯体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、等であってもよい。また、ドーパントとしてはホスト中で電子とホールを捉えて再結合させ発光するものであって、例えば赤ではピラン誘導体、緑ではクマリン誘導体、青ではアントラセン誘導体などの蛍光を発光する物質、もしくは、イリジウム錯体、ピリジナート誘導体などりん光を発する物質であってもよい。電子輸送層415は、例えばトリス(8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)−4−フェニルフェノラート−アルミニウム、ビス[2−[2−ヒドロキシフェニル]ベンゾオキサゾラート]亜鉛などの金属錯体や2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン等が用いられる。電子注入層としてはLiF等が用いられる。
【0035】
次に、上記各発光層412、413、414を形成するための工程について、下記に詳述する。図5は、マスク520を用いて、TFT基板420に、有機色素材料を蒸着するための蒸着装置500を示すための概略図である。
【0036】
図5に示すように、真空チャンバー510内には、TFT基板420やマスク520、蒸着源530等が設置される。具体的には、マスク520は、マスク支持体540によってマスク520の外周部分で支持されて設置される。また、当該マスク520の下方には、有機色素材料をTFT基板420に蒸着するための、蒸着源530が設置される。一方、マスク520の上部には、TFT基板420が有機色素材料が蒸着される面を下にして、マスク520上に重ねて設置される。更に、TFT基板420の上方には、当該TFT基板420に近接して導体580が設置される。当該導体580は、当該真空チャンバー510上部から導体支持体590を介して配置される。導体580は平面形状であって、TFT基板420と略同一の面積を有し、TFT基板420の上部を覆うように、TFT基板420に近接して配置される。
【0037】
一方、真空チャンバー510外には、高圧電源560が設置され、高圧電源560のプラス側は、スイッチ550及び金属配線570を介してマスク支持体540に接続される。一方、高圧電源560のマイナス側は、真空チャンバー510の外壁に接続される。このように構成されることにより、スイッチ550がオンされると、マスク支持体540を通じてマスク520に高圧電源560の高電圧を印加される。
【0038】
なお、TFT基板420と蒸着源530の位置は互いに固定されているものであってもよく、相対的に移動する形式であってもよい。また、図5においては、蒸着源530は2つ設けられているが、2つに限られるものではない。更に、導体590は真空チャンバー510外壁の上部から導体支持体590により延長されて設置されているが、適切に有機色素材料が蒸着できるように配置されている限り、図5に示した配置に限定されるものではない。なお、マスク520及びマスク支持体540は、例えば、ニッケル等の金属により形成され、互いに電気的に接続されている。
【0039】
次に、当該蒸着装置500を用いて、TFT基板420をマスク520に設置してから、有機色素材料を蒸着し、TFT基板420を取り外すまでの工程について説明する。
【0040】
まず、蒸着源530から加熱蒸発された有機色素材料が、TFT基板420上の適切な位置に蒸着されるよう、当該マスク520の開口部521とTFT基板420を位置合わせして、マスク520とTFT基板420を設置する。なお、図5には図示していないが、この際、上述したように、TFT基板420は、TFT形成過程において加わった熱歪みや、膜応力の影響等により歪んだ形状になっている。
【0041】
次に、高圧電源560のスイッチ550をオンにし、TFT基板420とマスク520を、静電吸着する。この際、TFT基板420の様子を観察し、TFT基板420とマスク520が十分に密着されたことが確認されるまで、高圧電源560の電圧を上げる。このときの、静電吸着圧と印加した電圧の関係を図6に示す。約1000VぐらいからTFT基板420とマスク520は吸着し始め、約7000Vで適切に有機色素材料を蒸着するのに十分な密着が得られる。
【0042】
その後、TFT基板420上に、有機色素材料の蒸着を行う。具体的には、蒸着源530中の有機色素材料が蒸着源530のヒーター(図示せず)により加熱蒸発された後、当該加熱蒸発された有機色素材料がマスク520の開口部521を介して、TFT基板420上の適切な位置に蒸着される。蒸着終了後は、高圧電源560のスイッチ550を切りTFT基板420をマスク520から取り外す。
【0043】
上記工程は、例えば、赤色、緑色、青色の3色の発光層412、413、414をTFT基板420に形成する際には、各色毎に準備されたマスク520、蒸着源530、有機色素材料を用いて、各色毎に行われる。なお、各色毎の真空チャンバー510を設け、TFT基板420に1の有機色素材料が蒸着される度に、次の色の有機色素材料を蒸着させるための真空チャンバー510に搬送する構成としてもよいし、1つの真空チャンバー510内で、マスク520及び蒸着源530を交換する構成としてもよい。更に、上記各色毎の有機色素材料を蒸着する際に、各色毎のホール輸送層(図示せず)を蒸着してもよい。
【0044】
上記のように、TFT基板420とマスク520を双方から静電吸着により引き合わせることで、TFT基板420とマスク520とを十分に密着させて各色の有機色素材料の蒸着を行うことができる。具体的には、静電吸着により図7矢印B及びCで示すように、TFT基板420は全体としてマスク520側へ静電吸着力を受けるとともに、マスク520も全体としてTFT基板420側へ静電吸着力を受ける。つまり、TFT基板420及びマスク520が全体として双方から引き寄せられることとなり、TFT基板420を一方的にマスク520へ押し付ける従来の場合と比べ、TFT基板420とマスク520を十分に密着させることが可能となる。このように、TFT基板420とマスク520を十分に密着させてから各色の有機色素材料の蒸着を行うことにより、よりパターン精度の高い表示パネル400を製造することができる。
【0045】
[第2の実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態において製造された表示パネルの断面を示す概略図である。図9は、第2の実施形態において、マスクを用いて、TFT基板に、有機色素材料を蒸着するための蒸着装置を示す概略図である。第2の実施形態では、図8及び図9に示すように、ガラス基板401に導電膜810を形成した点、当該導電膜810が接地されている点が主に相違する。以下に第2の実施の形態について詳述するが、第1の実施形態と同様となる点については、説明を省略する。
【0046】
図8に示すように、ガラス基板401の薄膜トランジスタ等が形成される側とは反対側の面に導電膜810が形成される。当該導電膜810は、例えばスパッタリング等により形成される。なお、導電膜810は、TFT基板820をマスク520に位置合わせし赤色、緑色、青色の有機色素材料を蒸着する前に形成される。また、表示パネル800においては、導電膜810が上記のように形成されている以外の点においては、第1の実施の形態における表示パネル400と同一の構成を有する。
【0047】
また、図9に示すように、導電膜810は、金属線等910を介して、真空チャンバー(図示せず)外に接地され、TFT基板820のマスクの開口部521よりも大きい面積を有するように形成される。また、真空チャンバー(図示せず)外には、高圧電源560が設置されており、高圧電源560のプラス端子は、スイッチ930を介して金属配線920に接続される。当該金属配線920は、更に、真空チャンバー(図示せず)内に引き込まれた後、マスク支持体540に接続される。一方、高圧電源560のマイナス端子は、真空チャンバー(図示せず)外で接地される。
【0048】
スイッチ930は、金属配線920に接続された端子931、接地された端子933、高圧電源560に接続された端子932を有する。そして、スイッチ930により、金属配線920に接続された端子931を、接地された端子933または高圧電源560に接続された端子932に接続するかを切り替えることができる。このように構成することにより、マスク520に高圧電源560の高電圧を印加するか、マスク520を接地するかをスイッチ930により切り替えることができる。
【0049】
次に、当該第2の実施形態における蒸着装置900を用いて、TFT基板820をマスク520上に重ねて設置してから、有機色素材料を蒸着し、TFT基板820を取り出すまでの工程について説明する。
【0050】
まず、有機色素材料が、TFT基板820上の適切な位置に蒸着されるよう、当該マスク520の開口部521とTFT基板820を位置合わせして設置した後、TFT基板820に形成された導電膜810を接地する。なお、導電膜810を接地した後、マスク520とTFT基板820を位置合わせして設置する構成としてもよい。
【0051】
次に、第1の実施形態と同様に、スイッチ930を高圧電源560によりマスク520に高電圧が印加されるように切替え、マスク520とTFT基板820とを静電吸着する。その後、TFT基板820上に、有機色素材料の蒸着を行う。
【0052】
蒸着終了後、スイッチ930をマスク520が接地されるように切り替えて、TFT基板820を取り出す。
【0053】
上記のような工程により、静電吸着後TFT基板820に形成された導電膜810を接地し、かつ、マスク520を蒸着終了後に接地していることから、TFT基板820に貯まった電荷が容易に放出され、容易かつ速やかにTFT基板820をマスク520から取り外すことができる。
【0054】
なお、ここで、上記導電膜810の抵抗値が低すぎるとTFT基板820の外周部で沿面放電しやすくなる。当該放電を起こすと電圧バランスが崩れ、TFT基板820に形成され、ゲート電極413、ドレイン及びソース電極5等で構成されたTFT回路のトランジスタ特性に変調をきたしたり、TFT回路が壊れたりする。逆に、高すぎるとTFT基板820を取り外す際に、時間がかかるようになる。したがって、このような問題を避けるため、上記導電膜810の抵抗値は適切に調整されることが必要であり、例えば、導電膜810のシート抵抗値は、10乃至10Ω/□を有するように構成するのが好ましい。なお、放電を起こしにくくするために、マスク520表面を絶縁膜(図示せず)で覆ってもよい。
【0055】
上記のように、導電膜810の抵抗値を適切に調整することで、上記工程において、TFT基板820に形成されたTFT回路内の電位差をほとんどなくすことができ、上記のような問題がさけられるとともに、TFT基板820をマスク520から容易かつ速やかに取り外すことができる。また、静電吸着により、TFT基板820とマスク520とを双方から十分に密着させて、各色の有機色素材料の蒸着を行うことにより、パターン精度の高い表示パネルを製造することができる。
【0056】
[第3の実施形態]
図10は、第3の実施形態において用いるTFT基板、及び、マスク及びマスク支持体を示す概略図である。図11は、第3の実施形態において、マスクを用いて、TFT基板に、有機色素材料を蒸着するための装置を示す概略図である。図10及び図11に示すように、第3の実施形態では、TFT基板230に端子フレーム240を設けた点、マスク260表面を絶縁膜280で覆い、当該絶縁膜280上に、当該端子フレームに対応するアース端子を設けた点が、第1及び第2の実施の形態と、主に相違する。また、第3の実施の形態においては、第2の実施の形態のように、表示パネルに導電膜417を設けない点が、主に相違する。以下第3の実施の形態について詳述するが、第1及び第2の実施形態と同様となる点については、説明を省略する。
【0057】
図10に示すように、TFT基板230には、端子フレーム240が形成されている。当該端子フレーム240は、TFT基板230の外周に沿って、TFT基板230上に行列上に配列された複数の表示パネル350を囲むように形成された外周部241と、当該外周部241の対向する辺を接続する接続部242とを有する。具体的には、例えば、図12に示すように、TFT基板230に行列上に配列されている複数の表示パネル350の1行毎、かつ、複数列毎に接続部242が形成される。
【0058】
なお、接続部242は、図10または図12に示した形状に限定されるものではなく、1または複数の表示パネル350を取り囲むように形成されていればよい。また、TFT基板230の断面構造については、端子フレーム240が形成されている点、後述する高抵抗体360が形成されている点を除き、図4で示した第1の実施の形態の断面構造と同様である。
【0059】
図10及び図11に示すように、マスク260及びマスク支持体270表面には絶縁膜280が形成されており、当該絶縁膜280のうちTFT基板230と重なる面に、アース端子250が形成される。なお、アース端子250は、絶縁膜280上に金属により形成されてもよい。また、アース端子250は、TFT基板230がマスク260に重ねられた際に、TFT基板230の端子フレーム240の外周部241とアース端子250が接触するように形成される。つまり、端子フレーム240の外周部241の形状とアース端子250の形状は同様である。また、アース端子250は金属配線251を介して、真空チャンバー(図示せず)外に接地される。
【0060】
図12に示すように、各表示パネル350は表示領域340及び端子361を有し、各表示領域340の1つの端子361は、各表示領域340内のTFT回路をアース電位に保つように、高抵抗体360を介して端子フレーム240に接続される。なお、高抵抗体360の抵抗値は、10乃至10Ωを有するように構成するのが好ましい。具体的には、例えば、端子フレーム240は、表示領域340内に形成された有機EL駆動電力線(図示せず)に、リンをドープした多結晶シリコン配線(図示せず)を介して接続される。また、例えば、当該多結晶シリコン配線は約10MΩの抵抗値を有する。このように、高抵抗体360、端子フレーム240、アース端子250を介して表示領域340のTFT回路を接地しアース電位に保つことで、表示パネル表面のTFT回路と蒸着マスクの間の電界で静電吸着することが可能となる。また、表示パネル350内のTFT回路が、印加される高電圧により破壊等されることを防止する効果もある。
【0061】
なお、図11に示すように、マスク支持体270は、金属配線290を介して、スイッチ291に接続され、さらに、スイッチ291は、高圧電源292または接地293を切り替えることができるように構成されている点は第2の実施形態と同様であるが、上記のように、第3の実施の形態においては、マスク260及びマスクフレーム270が、絶縁膜280で覆われている点が異なる。また、図11において、真空チャンバー及び蒸着源は、省略されている。
【0062】
次に、当該第3の実施形態における蒸着装置200を用いて、TFT基板230をマスク260に重ねて設置してから、当該TFT基板230に有機色素材料を蒸着し、マスク260からTFT基板230を取り外すまでの工程について説明する。
【0063】
まず、有機色素材料が、TFT基板230上の適切な位置に蒸着されるよう、当該マスク260の開口部261とTFT基板230を位置合わせして設置し、TFT基板230に形成されたアース端子250を接地する。このとき、TFT基板230の端子フレーム240の外周部241と、マスク260のアース端子250は、接触する。なお、アース端子250を接地した後、マスク260とTFT基板230を位置合わせして設置してもよい。
【0064】
次に、第1の実施の形態と同様に、スイッチ291を、マスク260に高圧電源292の電圧が印加されるように切り替えて、TFT基板230をマスク260に静電吸着させ、その後、TFT基板230上に、有機色素材料の蒸着を行う。このとき、第3の実施の形態では、高圧電源292の電圧は、約300Vまで上げるのみで十分な吸着を得ることができる。具体的には、図13に示すように、同様の静電吸着圧を得るのに、第1及び第2の実施の形態では約7000Vの電圧を必要とするのに対し、比較的低電圧である約300Vの電圧で足りる。即ち、第3の実施形態のおいては、約300Vの電圧にて、十分にTFT基板230とマスク260を吸着させることができる。これは、第1及び第2の実施形態と異なり、TFT基板230に形成され、アース端子250を通じて接地された端子フレーム240の電荷とマスク260の間の静電吸着による引力を利用していることによるものである。
【0065】
蒸着終了後は、第2の実施の形態と同様に、スイッチ291をマスク260が接地するように切り替えて、TFT基板230を取り外す。その後、端子フレーム240と表示パネル350の端子を接続する高抵抗体360は、例えば切断することにより、取り除かれる。
【0066】
上記のような工程により、第3の実施形態においては、端子フレーム240が接地され、かつ、静電吸着後、スイッチ291を切り替えてマスク260を接地されることによりTFT基板230に貯まった電荷が容易に放出され、結果として、静電吸着後、容易かつ速やかにTFT基板230をマスク260から取り外すことができる。また、約300Vという比較的低電圧にてマスク260とTFT基板230を十分に密着させることができる。更に、静電吸着により、TFT基板230とマスク260とを十分に密着させてから各色の有機色素材料の蒸着を行うことで、パターン精度の高い表示パネルを製造することができる。
【0067】
本発明は、上記実施の形態1乃至3に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態1乃至3で説明した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0068】
110 マスク支持体、120 マスク、130 蒸着源、150 TFT基板、160 表示領域、170 封止ガラス、180 封止シール材、220 透明の乾燥材、240 端子フレーム、250 アース端子、310、320、330 赤色、緑色、青色からなる各画素、360 高抵抗体、401 ガラス基板、402 多結晶シリコン、403 ゲート電極、404 ゲート絶縁膜層間絶縁膜、405 ソース及びドレイン電極、406 パッシベーション膜、430 有機EL素子、407 平坦化膜、409 反射メタル、410 アノード、411 ホール輸送層、412、413、414 各色発光層、415 電子輸送層、416 カソード、510 真空チャンバー、520 マスク、550 スイッチ、560 高圧電源、810 導電膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の表示パネル用回路が形成される基板とマスクとを重ねて配置し、前記基板が前記マスクに静電吸着するように、前記マスクに電圧を印加し、前記基板に前記マスクを介して真空成膜することを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項2】
前記真空成膜後に、前記マスクを接地することを特徴とする請求項1記載の表示パネルの製造方法。
【請求項3】
前記基板の前記マスクと重ならない面に、導電膜を形成し、前記導電膜を、接地することを特徴とする請求項1記載の表示パネルの製造方法。
【請求項4】
前記導電膜のシート抵抗値は、10乃至10Ω/□であることを特徴とする請求項3記載の表示パネルの製造方法。
【請求項5】
前記マスクを絶縁膜で覆うことを特徴とする請求項1記載の表示パネルの製造方法。
【請求項6】
前記絶縁膜に、接地されたアース端子を形成し、前記基板に、端子フレームを形成し、前記端子フレームは前記アース端子と接触することを特徴とする請求項5記載の表示パネルの製造方法。
【請求項7】
前記基板は、薄膜トランジスタ回路を有し、前記薄膜トランジスタ回路を、抵抗体を介して、前記端子フレームに接続することを特徴とする請求項6記載の表示パネルの製造方法。
【請求項8】
前記薄膜トランジスタ回路は、駆動用電力線を有し、前記駆動用電力線を、前記抵抗体を介して、前記端子フレームに接続することを特徴とする請求項7記載の表示パネルの製造方法。
【請求項9】
前記抵抗体は、10乃至10Ωであることを特徴とする請求項7記載の表示パネルの製造方法。
【請求項10】
前記端子フレームは、前記1または複数の表示パネル用回路を囲むように前記基板の外周に設けられ、かつ、アース端子と接触する外周部を含むことを特徴とする請求項6記載の表示パネルの製造方法。
【請求項11】
前記端子フレームは、矩形であって、前記端子フレームは、更に、前記外周部のうち、対向する辺を接続する接続部とを有することを特徴とする請求項10記載の表示パネルの製造方法。
【請求項12】
前記マスクを、マスク支持体によって支持することを特徴とする請求項1記載の表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−181462(P2011−181462A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46974(P2010−46974)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】