説明

表示装置、偏光制御方法

【課題】車両のフロントガラス等において発生する映り込みを防ぐ。
【解決手段】表示装置1において表示された画面は、符号4に示すような光路を通る光として、車両の運転者である観察者3に視認される以外にも、フロントガラス2によって反射され、観察者3の視界に入ることがある。このときの光路5および6における入射面に対して平行な方向と略一致するように、表示装置1からの光の偏光方向を設定することで、映り込みを防ぐようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の情報を表示する表示装置と、その表示装置における偏光制御方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイからの入射光をコンバイナガラスにより反射することで、液晶ディスプレイの表示内容をユーザに視認させる車両用ヘッドアップディスプレイがある。このような車両用ヘッドアップディスプレイにおいて、入射光の角度をブリュースター角(偏光角)で反射するようにコンバイナガラスを設けることで、液晶ディスプレイ側の偏光板をコンバイナガラスにより代用し、高輝度な表示を行うものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−131866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される車両用ヘッドアップディスプレイは、コンバイナガラスの反射を利用して高輝度な表示を行うことを目的とするものである。その一方で、たとえばナビゲーション装置の液晶ディスプレイのような表示装置を車両に搭載した場合に、車両のフロントガラス等によって表示装置からの光が反射され、運転者の視界に入って運転の妨げとなることがある。このような現象は映り込みと呼ばれており、車両の外が暗い夜間などにおいて特に顕著となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による表示装置は、反射面における映り込みを防止する表示装置において、光を発する光源と、光源より発せられた光に対して、特定の偏光方向の振幅成分を透過させ、他の方向の振幅成分を遮断する偏光手段とを備え、偏光手段を透過して反射面で反射された光が観察者に視認される際の光路における入射面に対して平行な方向と略一致するように、偏光手段の偏光方向が設定されるものである。
請求項2の発明は、請求項1に記載の表示装置において、偏光手段に対して偏光方向を変化させる偏光方向変化手段をさらに備えるものである。
請求項3の発明は、請求項1に記載の表示装置において、偏光手段として、第1の偏光方向を有する第1の偏光部材および第2の偏光方向を有する第2の偏光部材と、第1の偏光部材と第2の偏光部材の間に挟まれた液晶パネルとをさらに備え、光源より発せられた光に対して、第1の偏光部材により第1の偏光方向の振幅成分を透過させ、液晶パネルにより画素単位で偏光状態を制御した後に、第2の偏光部材により第2の偏光方向の振幅成分を透過させることで、情報を表示するものである。
請求項4の発明は、請求項3に記載の表示装置において、第1の偏光部材と第2の偏光部材に対して、第1の偏光方向と第2の偏光方向との方向差を維持した状態で、第1の偏光方向と第2の偏光方向をそれぞれ変化させる偏光方向変化手段をさらに備えるものである。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示装置において、上記の光路における反射面への入射角は、反射面の屈折率に応じたブリュースター角と略一致することとするものである。
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の表示装置において、反射面は車両のフロントガラスであり、車両に搭載されて用いられるものである。
請求項7の発明による偏光制御方法は、表示装置から出力され、情報として視認すべき光に対して、特定の偏光方向の振幅成分を透過させ、他の方向の振幅成分を遮断する表示装置の偏光制御方法であって、偏光方向の振幅成分の光が反射面で反射されて観察者に視認される際の光路における入射面に対して平行な方向と略一致するように、偏光方向を設定するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両のフロントガラス等において発生する映り込みを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一実施形態による表示装置を車両に搭載した様子を図1に示す。図1の表示装置1は、たとえばナビゲーション装置の地図画面などのように、様々な情報の画面表示を行う液晶ディスプレイ装置である。表示装置1は、車室内の見やすい位置、たとえばフロントガラス2の下のダッシュボード付近などに設置されている。表示装置1において表示された画面は、符号4に示すような光路を通る光として、車両の運転者である観察者3に視認される。
【0008】
ここで、映り込みについて説明する。表示装置1から発せられた光は、光路4を通って観察者3に直接視認される以外にも、車両のフロントガラス2によって反射され、観察者3の視界に入ることがある。このとき表示装置1からの光は、たとえばフロントガラス2に対して符号5に示すような光路で入射し、フロントガラス2において反射された後、符号6に示すような光路で観察者3の目に入る。すると、観察者3にとっては表示装置1の画面がフロントガラス2の向こう側に見えることとなり、運転の妨げとなる。このような現象は映り込みと呼ばれており、たとえば夜間などのように車両の外が暗い場合に、特に顕著となる。
【0009】
そこで本発明では、表示装置1からの光の偏光方向を、フロントガラス2において反射されにくい方向とすることで、上記のような映り込みを防ぐようにする。具体的には、映り込みが起こるときの光路5および6における入射面に対して平行な方向と略一致するように、表示装置1からの光の偏光方向を設定する。なお、このようにすることで映り込みを防ぐことができる理由については、後で詳しく説明する。
【0010】
次に、表示装置1の構成について説明する。図2は、表示装置1の構成を示す図である。図2に示すように、表示装置1は、バックライト11、偏光板12、液晶パネル13、偏光板14、制御部15および駆動部16を備えている。
【0011】
バックライト11は、表示装置1が画面表示を行う際の光源として働く部分であり、液晶パネル13を照明するための光を発する。このバックライト11には、液晶パネル13を均一に照明するために、たとえば冷陰極管や発光ダイオードなどの発光部材に加えて、発光部材からの光を面状に拡散するための導光板または拡散板が備えられている。なお、導光板を用いる方式はエッジライト方式と呼ばれ、拡散板を用いる方式は直下型方式と呼ばれている。
【0012】
偏光板12は、特定の偏光方向を有している。バックライト11より発せられた光は、様々な方向の振幅成分を含んでいる。この光に対して、偏光板12は、その偏光方向の振幅成分を透過させ、他の方向の振幅成分を遮断する。これにより、偏光板12を透過した光は、特定の振幅成分のみを有する直線偏光となる。
【0013】
液晶パネル13は、多数の透明電極が形成された2枚の透明基板の間に液晶材料を挟み込んだ構造を有しており、偏光板12と偏光板14の間に挟まれて設けられている。この透明電極を用いて、予め設定された画素単位で液晶材料に印加する電圧を制御することで、偏光板12を透過して液晶パネル13に入射された光の偏光状態が画素単位で制御される。液晶パネル13における印加電圧は、制御部15の制御によって決定される。なお、液晶パネル13にカラーフィルターを設け、カラー表示を行うようにしてもよい。
【0014】
偏光板14は、偏光板12と同様に特定の偏光方向を有しており、入射された光のうちその偏光方向の振幅成分を透過させ、他の方向の振幅成分を遮断する。偏光板12を透過した後に液晶パネル13を透過した光は、その偏光状態が上記のように画素単位で制御されている。この光を偏光板14に対して入射すると、偏光板14を透過する光の強度が画素単位で変化する。この光強度の変化を利用して、表示装置1に様々な情報を表示することができる。
【0015】
制御部15は、前述のように液晶パネル13において液晶材料に印加する電圧を制御することにより、表示装置1が表示する画面の内容を制御する。たとえば、ナビゲーション装置から出力される地図画像情報などを入力し、その地図画像情報に基づいて、地図画面を表示するための印加電圧制御を行う。
【0016】
駆動部16は、観察者3の操作に応じて、偏光板12および14を光軸回りの方向に任意の回転量だけ回転駆動させることにより、偏光板12および14に対してそれぞれの偏光方向を任意の変化量だけ変化させる。このとき駆動部16は、偏光板12の偏光方向と偏光板14の偏光方向との方向差を維持した状態で、これらの偏光方向をそれぞれ変化させる。これにより、表示装置1における画面表示状態を維持しつつ、表示装置1からの光の偏光方向を変化させることができる。
【0017】
以上説明したように、表示装置1は、バックライト11より発せられた光に対して、偏光板12によりその偏光方向の振幅成分を透過させ、制御部15の制御に基づいて、液晶パネル13により画素単位で偏光状態を制御する。その後に、偏光板14によりその偏光方向の振幅成分を透過させることで、様々な情報を画面表示する。
【0018】
また、表示装置1は、観察者3の操作に応じて、駆動部16により、偏光板12および14の偏光方向を任意の変化量だけ変化させる。これにより、観察者3は、表示装置1からの光の偏光方向を適切に調節して、前述のように映り込みを防ぐことができる偏光方向に設定することができる。すなわち、表示装置1からの光の偏光方向を図1の光路5および6における入射面に対して平行な方向と略一致するように設定することで、映り込みを防ぐことができる。
【0019】
次に、表示装置1からの光の偏光方向を光路5および6における入射面に対して平行な方向と略一致するように設定することで映り込みを防ぐことができる理由について、図3により説明する。図3は、フロントガラス2を反射面として、表示装置1からの光がその反射面において反射されるときの様子を示している。
【0020】
図3において、表示装置1から出力された光は、光路5を通って入射角θで反射面に入射される入射光として表されている。また、この入射光が反射面において反射された光は、光路6を通る反射光として表されている。この反射光が観察者3によって視認されることにより、前述のような映り込みが発生する。
【0021】
入射光の光路5および反射光の光路6を含む符号21に示す平面は、入射面と呼ばれる。この入射面21に対して平行な方向、すなわち符号22に示す方向の偏光成分は、p波と呼ばれる。一方、入射面21に対して垂直な方向、すなわち符号23に示す方向の偏光成分は、s波と呼ばれる。
【0022】
ここで、入射光である表示装置1からの光は、前述のように偏光板12および14を透過した直線偏光である。この入射光のp波が反射面において反射されるときの反射率は、入射角θが所定の角度に達するまでの範囲では入射角θに応じて徐々に減少し、当該角度において0になる。この角度は、ブリュースター角または偏光角と呼ばれる。そして、ブリュースター角(偏光角)よりも入射角θが大きくなると、入射角θに応じて反射率が増加する。一方、入射光のs波が反射面において反射されるときの反射率は、入射角θに応じて単調に増加する。
【0023】
上記のような反射率の性質を利用して、入射光の偏光成分がp波のみとなるように偏光板12および14の偏光方向を設定すると共に、入射角θがブリュースター角付近となるように表示装置1の設置位置を調節することで、反射光の強度を抑えることができる。すなわち、反射光の強度を抑えるために、偏光板12および14を透過して反射面(フロントガラス2)で反射された光が観察者3に視認される際の光路5および6における入射面21に対して平行な方向と略一致するように、偏光板12および14の偏光方向が設定される。このようにして、映り込みを防ぐことができる。
【0024】
以上説明した映り込みの防止方法においては、入射角θをなるべくブリュースター角と略一致させることが好ましいが、入射角θがブリュースター角に近ければ、略一致していなくても十分に効果を得ることができる。なお、ブリュースター角の大きさは、反射面の屈折率に応じて決定される。たとえば、反射面のフロントガラス2の屈折率をnとすると、ブリュースター角θは下記の式(1)で表される。ここで、nは空気の屈折率であり、1とほぼ等しい。式(1)において、屈折率nをたとえば1.5とすると、θは約56度と計算される。
θ=tan−1(n/n) (1)
【0025】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果を奏する。
(1)表示装置1は、バックライト11より発せられた光に対して、偏光板12および14により、特定の偏光方向の振幅成分を透過させ、他の方向の振幅成分を遮断する。このとき、偏光板12および14を透過して、フロントガラス2を反射面として反射された光が観察者3に視認される際の光路5および6における入射面21に対して平行な方向と略一致するように、偏光板12および14の偏光方向が設定されることとした。このようにしたので、車両のフロントガラスにおいて発生する映り込みを防ぐことができる。
【0026】
(2)表示装置1は、駆動部16により、偏光板12および14に対してその偏光方向を変化させることとした。このようにしたので、表示装置1からの光の偏光方向を適切に調節して、映り込みを防ぐことができる偏光方向に設定することができる。
【0027】
(3)表示装置1は、バックライト11より発せられた光に対して、偏光板12によりその偏光方向の振幅成分を透過させ、液晶パネル13により画素単位で偏光状態を制御した後に、偏光板14によりその偏光方向の振幅成分を透過させることで、情報を表示することとした。このようにしたので、既存の液晶ディスプレイの技術を用いて、様々な情報を表示可能な表示装置1を構成することができる。
【0028】
(4)駆動部16は、偏光板12と偏光板14に対して、偏光板12の偏光方向と偏光板14の偏光方向との方向差を維持した状態で、これらの偏光方向をそれぞれ変化させることとした。このようにしたので、表示装置1における画面表示の状態を維持しつつ、表示装置1からの光の偏光方向を変化させることができる。
【0029】
(5)光路5および6におけるフロントガラス2への入射角は、フロントガラス2の屈折率に応じたブリュースター角と略一致することが好ましい。このようにすれば、入射光の偏光成分をp波のみとした場合に、反射をほぼ0として映り込みを防ぐことができる。
【0030】
なお、以上説明した実施の形態では、車両に搭載されて用いられる表示装置1において、反射面が車両のフロントガラス2である例を説明した。しかし、反射面は車両のフロントガラスに限らず、サイドガラスなどであってもよい。また、車両に搭載されない表示装置であっても、映り込みが生じるような場所に設置される表示装置であれば、上記実施の形態と同様にして本発明を適用可能である。
【0031】
また、液晶ディスプレイのような表示装置でなく、発光ダイオードや電球などの光源と偏光板とを組み合わせて、上記実施の形態と同様の映り込み防止方法を実現することとしてもよい。その例を図4に示す。図4の変形例において、光源7の上側には偏光板8が設置されている。光源7から発せられた光は、観察者3に直接届く場合と、偏光板8を通過した後にフロントガラス2で反射されて観察者3に到達する場合とがある。
【0032】
図4では、偏光板8を透過してフロントガラス2で反射された光源7からの光が観察者3に視認される際の光路における入射面に対して平行な方向と略一致するように、偏光板8の偏光方向が設定される。このようにすれば、光源7からの光がフロントガラス2に映りこむのを防止することができる。なお、光源7としては、たとえばメーターパネルやフロントパネルに設置された様々な発光部材を対象とすることができる。あるいは、光源7の代わりに、光を反射しやすい光沢部分などを対象としてもよい。
【0033】
以上説明した実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態による表示装置を車両に搭載した様子を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による表示装置の構成を示す図である。
【図3】表示装置からの光が反射面において反射されるときの様子を示す図である。
【図4】本発明の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1:表示装置、2:フロントガラス、3:観察者、4〜6:光路、11:バックライト、12:偏光板、13:液晶パネル、14:偏光板、15:制御部、16:駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面における映り込みを防止する表示装置において、
光を発する光源と、
前記光源より発せられた光に対して、特定の偏光方向の振幅成分を透過させ、他の方向の振幅成分を遮断する偏光手段とを備え、
前記偏光手段を透過して前記反射面で反射された光が観察者に視認される際の光路における入射面に対して平行な方向と略一致するように、前記偏光手段の偏光方向が設定されることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記偏光手段に対して前記偏光方向を変化させる偏光方向変化手段をさらに備えることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置において、
前記偏光手段として、第1の偏光方向を有する第1の偏光部材および第2の偏光方向を有する第2の偏光部材と、
前記第1の偏光部材と前記第2の偏光部材の間に挟まれた液晶パネルとをさらに備え、
前記光源より発せられた光に対して、前記第1の偏光部材により前記第1の偏光方向の振幅成分を透過させ、前記液晶パネルにより画素単位で偏光状態を制御した後に、前記第2の偏光部材により前記第2の偏光方向の振幅成分を透過させることで、情報を表示することを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の表示装置において、
前記第1の偏光部材と前記第2の偏光部材に対して、前記第1の偏光方向と前記第2の偏光方向との方向差を維持した状態で、前記第1の偏光方向と前記第2の偏光方向をそれぞれ変化させる偏光方向変化手段をさらに備えることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示装置において、
前記光路における前記反射面への入射角は、前記反射面の屈折率に応じたブリュースター角と略一致することを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の表示装置において、
前記反射面は車両のフロントガラスであり、前記車両に搭載されて用いられることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
表示装置から出力され、情報として視認すべき光に対して、特定の偏光方向の振幅成分を透過させ、他の方向の振幅成分を遮断する表示装置の偏光制御方法であって、
前記偏光方向の振幅成分の光が反射面で反射されて観察者に視認される際の光路における入射面に対して平行な方向と略一致するように、前記偏光方向を設定することを特徴とする偏光制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−80321(P2009−80321A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249793(P2007−249793)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】