説明

表面実装用の水晶デバイス

【課題】水晶片の温度変化が起こりにくく、ファン等の風が当たる場合でも発振周波数の揺らぎの発生を抑えて周波数短期安定度を良好にする表面実装型の水晶発振器を提供する。
【解決手段】少なくとも水晶片4を収容して外底面に実装端子10が形成された凹部を有する容器本体2と、容器本体2の開口端面に接合されて水晶片4を密閉封入する金属蓋7とからなる表面実装用の水晶デバイスにおいて、表面実装用の水晶デバイスの外表面となる金属蓋7の一主面が断熱材18で覆われた構成とする事により、実装基板に実装された表面実装用の水晶デバイスにファン等の風が当たる場合でも、発振周波数の揺らぎの発生を抑えて周波数短期安定度を良好にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装用の水晶デバイスを技術分野とし、特に外熱の影響による発振周波数の揺らぎを回避する表面実装用の水晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
表面実装用の水晶デバイス例えば表面実装用の水晶発振器(以下、表面実装発振器とする)は周波数制御素子として周知され小型・軽量であることから、特に携帯電話に代表される携帯型の電子機器に周波数及び時間の基準源として広く用いられている。そして、近年では電子機器の小型化に伴い、表面実装発振器に対する小型化の要求が一層強まっている。このようなものの一つに、容器本体に水晶片及びICチップを収容して、金属蓋で密閉封入した表面実装発振器がある。
【0003】
(従来技術の一例)
第6図は一従来例を説明する表面実装発振器の断面図である。第6図に示す表面実装発振器1(特許文献1の「従来技術の一例」参照)は、容器本体2にICチップ3と水晶片4とを収容し、容器本体2の開口端面となる枠壁5上面に設けられた金属リング6に金属蓋7を接合してなる。容器本体2は凹部及び段部を有して、セラミックの枠壁5及び底壁8からなる。また、枠壁5は第1枠壁5a及び第2枠壁5bからなる。そして、底壁8及び第1枠壁5a、第2枠壁5bを積層・焼成して容器本体2が形成される。
【0004】
ICチップ3は発振回路を構成する増幅器等の各素子を集積し、図示しない各IC端子を回路機能面としての一主面に有する。そして、容器本体2の凹部底面に、ICチップ3の一主面側が例えばバンプ9を用いた超音波熱圧着によって固着される(所謂フリップチップボンディング)。ICチップ3の各IC端子(例えば電源、グランド、出力、AFC端子)は容器本体2の外底面の4隅に形成された実装端子10に電気的に接続する。
【0005】
水晶片4は、第7図に示すように、両主面の励振電極11から例えば一端部両側に引出電極12を延出する。そして、引出電極12を延出した一端部両側を導電性接着剤13によって段部に固着し、水晶保持端子14に電気的・機械的に接続する。水晶保持端子14はICチップ3の図示しない水晶端子に電気的に接続する。
【0006】
金属蓋7はシーム溶接やビーム溶接等によって、容器本体2の開口端面に設けられた金属リング6に接合される。なお、金属蓋7は、実装端子10の1つであるアース端子にビアホール(図示せず)等を経て電気的に接続する。そして、これらによる表面実装発振器1は、例えば携帯機器の実装基板に高熱炉を搬送しての半田等によって表面実装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−288268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の表面実装発振器1では、第8図に示すように実装基板15に実装したときに、他の電子部品16の発熱及びファン17の送風の影響を受けて発振周波数の揺らぎが発生するという問題があった。なお、ファン17は電子部品16の発熱によって携帯機器の内部温度が上昇することを防止する。
【0009】
具体的には、表面実装発振器1は例えば能動素子とした発熱する電子部品16と近接して実装基板15に実装される。このとき、実装基板15に形成された図示しないグランドパターンを含む導電路等を経由して電子部品16の熱が表面実装発振器1に伝わり、特に表面実装発振器1が底面から熱せされる。
【0010】
一方で、携帯機器内の熱を空冷するファン17からの送風によって、金属蓋7から表面実装発振器1が冷却される。このことから、以下の原因(推察)によって、表面実装発振器1の発振周波数に揺らぎが生じ、例えば100msecオーダでの周波数短期安定度を悪化させるという現象が確認された。
【0011】
すなわち、表面実装発振器1は、電子部品16の熱で底面から熱せされ、同時にファン17の送風(空冷)で金属蓋7から冷却される。しかし、ファン17からの送風による空冷熱は、導電路等を経ての実装基板15から加えられる熱と比較して安定しない。したがって、表面実装発振器1の内部温度は均一にならずに揺らぎが生じる。このことから、水晶振動子(水晶片4)の周波数温度特性等に基づき、発振周波数に揺らぎが生じると推察される。なお、ファン17がない場合、即ち、表面実装発振器1に風が当たらない場合は、発振周波数の揺らぎは殆ど無視できる。
【0012】
特に近年の表面実装発振器1の小型化によって、表面実装発振器1の熱容量が小さくなっている。したがって、ファン17による送風によって水晶片4が敏感に温度変化することになり、発振周波数に揺らぎが発生しやすい。例えば平面外形が2.5mm×2.0mm以下の表面実装発振器1においてこの問題が顕著である。これらは温度補償型とした場合でも同様の問題を生じる。
【0013】
(発明の目的)
本発明は、水晶片の温度変化が起こりにくく、ファン等の風が当たる場合でも発振周波数の揺らぎの発生を抑えて周波数短期安定度を良好にする表面実装発振器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、少なくとも水晶片を収容して外底面に実装端子が形成された凹部を有する容器本体と、前記容器本体の開口端面に接合されて前記水晶片を密閉封入する金属蓋とからなる表面実装用の水晶デバイスにおいて、前記表面実装用の水晶デバイスの外表面となる前記金属蓋の一主面が断熱材で覆われた構成とする。
【発明の効果】
【0015】
このような構成であれば、実装基板に実装された表面実装用の水晶デバイスにファン等の風が当たる場合でも、発振周波数の揺らぎの発生を抑えて周波数短期安定度を良好にすることができる。なぜなら、ファン等の風は主に水晶デバイスの上部となる金属蓋に当たるが、水晶デバイスの外表面となる金属蓋の一主面は断熱材で覆われている。したがって、水晶デバイス内部の温度が均一になり、水晶片の温度変化が生じにくいからである。
【0016】
(実施態様項)
本発明の請求項2では、請求項1において、前記容器本体の外側面が断熱材で覆われた構成とする。また、本発明の請求項3では、請求項2において、前記容器本体の前記実装端子を除く外底面が断熱材で覆われた構成とする。これにより、容器本体の外側面や外底面にファン等の風が当たっても、水晶片の温度変化が生じにくく、発振周波数の揺らぎの発生を一層抑えて周波数短期安定度を良好にすることができる。
【0017】
本発明の請求項4では、請求項1〜請求項3において、前記断熱材は樹脂である構成とする。また、本発明の請求項5では、請求項1〜請求項3において、前記断熱材は耐熱テープである構成とする。これにより、断熱材を明確にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態を説明する表面実装発振器の断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態を説明する表面実装発振器の断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態を説明する表面実装発振器の断面図である。
【図4】本発明での送風による周波数偏差の変化を表す図である。
【図5】一従来例での送風による周波数偏差の変化を表す図である。
【図6】一従来例を説明する表面実装発振器の断面図である。
【図7】水晶片の斜視図である。
【図8】実装基板に表面実装発振器や電子部品を実装したときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態、請求項1、4、5に相当)
第1図は本発明の第1実施形態を説明する表面実装発振器の断面図である。なお、従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0020】
第1図に示す表面実装発振器1は、容器本体2にICチップ3と水晶片4とを収容し、容器本体2の開口端面となる枠壁5上面に設けられた金属リング6に金属蓋7を接合してなる。容器本体2は凹部及び段部を有して、セラミックの枠壁5及び底壁8からなる。また、枠壁5は第1枠壁5a及び第2枠壁5bからなる。そして、底壁8及び第1枠壁5a、第2枠壁5bを積層・焼成して容器本体2が形成される。
【0021】
ICチップ3は容器本体2の凹部底面に例えばバンプ9を用いた超音波熱圧着によって固着される。水晶片4は、引出電極12を延出した一端部両側を導電性接着剤13によって水晶保持端子14に電気的・機械的に接続する。金属蓋7は、母材をコバールとして、シーム溶接やビーム溶接等によって、容器本体2の開口端面に設けられた金属リング6に接合される。
【0022】
このようなものでは、先ず、セラミックの底壁8及び第1枠壁5a、第2枠壁5bを形成する。底壁8及び第1枠壁5aには、タングステン(W)の印刷によって、それぞれ実装端子10及び水晶保持端子14のメタライズ層を形成する。そして、底壁8及び第1枠壁5a、第2枠壁5bを積層・焼成して容器本体2を形成する。
【0023】
次に、金属リング6を図示しないロウ材(例えば銀ロウ)を用いて容器本体2の開口端面に接合する。金属リング6は例えば母材をコバールとして、金型等を用いた打ち抜き加工によって形成される。そして、電解メッキ又は無電解メッキによって前記メタライズ層の表面にニッケル(Ni)膜を設け、さらに、ニッケル膜の表面に金(Au)膜を設けて、実装端子10及び水晶保持端子14を形成する。
【0024】
ICチップ3は回路機能面である一主面に形成された図示しないIC端子が、バンプ9を用いた超音波熱圧着によって容器本体2の凹部底面に電気的・機械的に固着させる。水晶片4は矩形状のATカット水晶振動板が用いられる。そして、真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成手段により、励振電極11及び引出電極12を形成する。
【0025】
その後、水晶片4は導電性接着剤13によって、容器本体2の段部に形成された水晶保持端子14に固着する。次に、シーム溶接によって金属蓋7を容器本体2の開口端面に形成された金属リング6に接合する。最後に、断熱材とする樹脂18を容器本体2の外表面である金属蓋7の一主面に塗布して硬化させる。
【0026】
このような構成であれば、実装基板に実装された表面実装発振器1にファン17の風が当たる場合でも、発振周波数の揺らぎの発生を抑えて周波数短期安定度を良好にすることができる。なぜなら、ファン17の風は主に表面実装発振器1の上部となる金属蓋7に当たるが、表面実装発振器1の外表面となる金属蓋7の一主面は樹脂18で覆われている。したがって、表面実装発振器1内部の温度が均一になり、水晶片の温度変化が生じにくいからである。
【0027】
ここで、容器本体2の母材はセラミックとしてアルミナを用いることが多い。そしてアルミナの熱伝導率は常温で約30(W/Km)である。一方、金属蓋7の母材はコバールであって、熱伝導率は常温で約17(W/Km)である。したがって、容器本体2より熱伝導率の小さい金属蓋7の一主面のみを樹脂18で覆っても効果が小さいようにも考えられる。しかし、例えば平面外形が2.5mm×2.0mmの表面実装発振器1においては、金属蓋7の一主面の面積は約5.0mm2であり、表面実装発振器1における長辺の一外側面面積は約2.0mm2である。よって、表面実装発振器1が一方向から風を受ける場合は、外側面よりも金属蓋7の方が多く風を受けることとなる。さらに、例えば第8図に示すファン17の配置では、風は主に金属蓋7に当たると考えられる。したがって、金属蓋7の一主面のみを樹脂18で覆った場合であっても、十分な効果を得ることができる。
【0028】
また、断熱材として樹脂18ではなく耐熱テープを用いても同じ効果を奏する。次に、断熱材として耐熱テープを用いたときの、送風による発振周波数の揺らぎに関する測定結果について説明する。第4図は、断熱材として耐熱テープを用いた第1実施形態の発振周波数の変化を示したグラフである。また、第5図は前述の従来例(金属蓋7等が断熱材で覆われていない)での発振周波数の変化を示したグラフである。この測定で使用した表面実装発振器1は温度45度で16MHzの発振周波数を出力するものである。そして、第8図に示す環境と実質的に同じ環境を用意し、表面実装発振器1の温度を45度にした状態で60秒程度(t1〜t2)ファン17から送風して、表面実装発振器1の100msecオーダでの周波数偏差を測定した。
【0029】
グラフから明らかなように、第1実施形態(断熱材は耐熱テープ)及び従来例ともに送風によって発振周波数に揺らぎが発生している。しかし、第1実施形態(断熱材は耐熱テープ)の表面実装発振器では発振周波数の揺らぎが約0.01ppmである。一方、従来例の表面実装発振器では発振周波数の揺らぎが約0.03ppmである。したがって、この例では、第1実施形態(断熱材は耐熱テープ)は従来例と比較して約3分の1に発振周波数の揺らぎを減少させることができた。これにより、発振周波数の短期安定度を良好にする。
【0030】
(第2実施形態、請求項1、2、4に相当)
第2図は本発明の第2実施形態を説明する表面実装発振器の断面図である。なお、前実施形態と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0031】
第2実施形態の表面実装発振器では、第1実施形態と同様にして表面実装発振器1を形成する。そして、第2実施形態では、容器本体2の外側面に断熱材とする樹脂18を塗布して硬化させる。これにより、容器本体2の外側面にファン17の風が当たっても、水晶片4の温度変化が生じにくく、発振周波数の揺らぎの発生を一層抑えて周波数短期安定度を良好にすることができる。
【0032】
(第3実施形態、請求項1、2、3、4に相当)
第3図は本発明の第3実施形態を説明する表面実装発振器の断面図である。なお、前実施形態と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0033】
第3実施形態の表面実装発振器では、第1実施形態と同様にして表面実装発振器1を形成する。そして、第2実施形態では、容器本体2の外側面及び容器本体2の実装端子10を除く外底面に断熱材とする樹脂18を塗布して硬化させる。これにより、容器本体2の外底面にファン17の風が当たっても、水晶片4の温度変化が生じにくく、発振周波数の揺らぎの発生を一層抑えて周波数短期安定度を良好にすることができる。
【0034】
(他の事項)
請求項5に示すように、第2、第3実施形態においても、第1実施形態と同様に断熱材として樹脂18の代わりに耐熱テープを用いてもよい。また、上記各実施形態では水晶デバイスとして表面実装発振器を例に示したが、温度補償回路を有するICチップ3を収容した温度補償水晶発振器(TCXO)の場合でも同様の効果を奏する。さらに、水晶デバイスとして表面実装用の水晶振動子を用いた場合でも同様である。
【符号の説明】
【0035】
1 表面実装発振器、2 容器本体、3 ICチップ、4 水晶片、5 枠壁、6 金属リング、7 金属蓋、8 底壁、9 バンプ、10 実装端子、11 励振電極、12 引出電極、13 導電性接着剤、14 水晶保持端子、15 実装基板、16 電子部品、17 ファン、18 樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水晶片を収容して外底面に実装端子が形成された凹部を有する容器本体と、前記容器本体の開口端面に接合されて前記水晶片を密閉封入する金属蓋とからなる表面実装用の水晶デバイスにおいて、前記表面実装用の水晶デバイスの外表面となる前記金属蓋の一主面が断熱材で覆われたことを特徴とする表面実装用の水晶デバイス。
【請求項2】
請求項1において、前記容器本体の外側面が断熱材で覆われた表面実装用の水晶デバイス。
【請求項3】
請求項2において、前記容器本体の前記実装端子を除く外底面が断熱材で覆われた表面実装用の水晶デバイス。
【請求項4】
請求項1〜請求項3において、前記断熱材は樹脂である表面実装用の水晶デバイス。
【請求項5】
請求項1〜請求項3において、前記断熱材は耐熱テープである表面実装用の水晶デバイス。

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−220152(P2010−220152A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67405(P2009−67405)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】