説明

表面欠陥検査装置

【課題】表面欠陥検査装置において、被検体の検査レシピを効率よく作成することができ、検査効率を向上することができるようにする。
【解決手段】パターンを撮像して表面欠陥を抽出する検査部と、制御パラメータに基づいて検査部の動作を制御する制御部1Bとを備える基板検査装置において、制御パラメータをパターンの形成条件を表す設計データから算出する制御パラメータ算出手段32を備え、レシピファイル編成部36によりそれら制御パラメータをレシピファイルに編成する。レシピファイルは、調光結果に基づき、レシピファイル修正部35によって修正可能とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面欠陥検査装置に関する。例えば、表面にパターンが形成された液晶基板、半導体ウエハなどの基板に好適に用いることができる表面欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶基板や半導体ウエハなどの規則的なパターンを有する基板は、フォトリソグラフィ・プロセスにより基板表面にパターニングを繰り返し、多層のパターンを形成することにより製造される。それらパターンに欠陥が生じると、最終的な製品が正しく動作しない不良品となるので、一般には表面欠陥検査装置を用いて、各製造工程で正常なパターンが形成されているかどうか検査している。
このような表面欠陥検査装置は、被検体に適宜の波長の照明光を照射して、その反射光、散乱光、回折光による被検体表面の像を撮像し、正常なパターンを有する被検体の画像と比較することにより、表面欠陥の有無を検査できるようになっている。
こうした装置で、精度よく検査を行うためには、被検体に形成されたパターンに応じて、適切な検査条件を設定する必要がある。すなわち、照明光の光量、波長、入射角度などの条件や、撮像条件、照明光を照射する位置などの制御パラメータを適切に設定する必要がある。
これらの制御パラメータは、基板の品種、製造工程、ロットなどにより異なるので、検査すべき被検体の検査条件に係る制御パラメータの全体を、検査レシピあるいは単にレシピと称して被検体ごとに管理する場合が多い。
従来、このような検査レシピは、作業者が、装置のキーボードなどから個々に入力して作成するか、データファイルの形で装置に入力していた。装置によっては、後者のデータファイルの編集機能を備えており、既存の他の検査レシピをコピーして、検査条件の変更部分のみを作業者が変更することで入力の手間が省けるようになっている。
例えば、特許文献1には、SEMを用いた半導体基板の検査装置において、検査レシピのうち、検査パターンを探索するために用いられる、パターンの繰り返しピッチを、予めオペレータが指示するかあるいは設計データなどから自動的に算出して入力するものが記載されている。
【特許文献1】特開2003−7786公報(第6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の表面欠陥検査装置には、以下のような問題があった。
検査レシピは、被検体の品種、製造工程、ロットなどにより異なるため、多品種を並行的に生産する場合、膨大な検査レシピを作成しなくてはならないので、作業者の負担が大きく、その管理や維持の手間もたいへんであるという問題がある。
また、インライン装置により、検査レシピ入力を行う場合、検査工程を停止しなくてはならないので、不効率であるという問題がある。また、手動入力や手動修正では、入力ミスが起こりやすく、そのために検査ラインがストップするなどして、検査効率が悪化するという問題がある。
特に製造工程が不安定な場合、パターンや工程が同一でもロットごとに検査条件を変えねばならない場合があり、その都度、検査レシピを変更して対応しなければならないという問題がある。
また、検査レシピは被検体ごとに作成されていたので、基板内のパターン同士では、同一の検査条件で検査しており、その場合、必ずしもパネルごとに最適の検査条件となっていないという問題がある。
特許文献1に記載の技術によれば、設計データにより繰り返しピッチを自動的に算出する場合、作業者が手動入力する場合に比べれば手間を省くことができるものの、検査レシピ全体の作成効率を向上できるものではないという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、被検体の検査レシピを効率よく作成することができ、検査効率を向上することができる表面欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、被検体に形成されたパターンの表面欠陥を検査する表面欠陥検査装置であって、前記パターンを撮像して表面欠陥を抽出する検査手段と、制御パラメータに基づいて前記検査手段の動作を制御する制御手段と、前記制御パラメータを前記パターンの形成条件を表す設計データから算出する制御パラメータ算出手段とを備えた構成とする。
この発明によれば、制御パラメータ算出手段により、パターンの形成条件を表す設計データから制御パラメータを算出するので、手動入力などの手間を要することなく、パターンの形成条件に即した正確な制御パラメータを容易に得ることができる。また、制御手段により、そのような制御パラメータに基づいて検査手段を制御するので、パターンの形成条件に即した適切な検査を行うことができる。
【0006】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の表面欠陥検査装置において、前記検査手段が、被検体に照明光を照射して被検体表面からの出射光による像を撮像する画像取込部と、該画像取込部を前記被検体に対して相対的に移動させて画像取込位置を移動させる画像取込位置移動部とを備え、前記制御手段が、前記画像取込部の照明条件および撮像条件、ならびに前記画像取込位置移動部による前記画像取込部の移動位置を制御する構成とする。
この発明によれば、検査手段が、画像取込部と画像取込位置移動部とを備え、制御手段により、画像取込部の照明条件および撮像条件、ならびに画像取込位置移動部による画像取込部の移動位置を制御されるので、検査を行うために、制御パラメータ算出手段により設計データから適切な画像取込位置を算出することができるとともに、画像取込位置の形成条件から照明条件および撮像条件を容易かつ適切に設定することできるため、検査の精度を向上することができる。
【0007】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の表面欠陥検査装置において、前記制御パラメータ算出手段が、前記設計データから、前記照明光の初期発光値と、前記照明光を調光するための調光位置とを算出するとともに、調光を行った結果に基づいて、検査時における前記照明光の発光値を算出できるようにした構成とする。
この発明によれば、制御パラメータ算出手段により、照明光の初期発光値、調光位置を算出して調光できるようにし、調光を行った結果に基づいて検査時の照明光の発光値を算出できるので、初期発光値が最適の発光量とならない場合でも、検査時の照明光の発光値を適切な値とすることができる。その結果、検査を容易かつ高精度に行うことができる。
【0008】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の表面欠陥検査装置において、被検体内に、前記パターンが形状の異なる複数のパターンとして設けられ、前記制御パラメータ算出手段が、前記複数のパターンのそれぞれの設計データに応じて制御パラメータを算出する構成とする。
この発明によれば、被検体内に形状の異なる複数のパターンが設けられている場合に、制御パラメータ算出手段が、それぞれのパターンの設計データに応じた制御パラメータを算出することができるので、各パターンに適した制御パラメータを設定して、検査を行うことができる。その結果、検査の精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表面欠陥検査装置によれば、制御パラメータ算出手段により、検査手段を制御する制御パラメータを被検体の設計データに基づいて算出するので、手動入力などの手間のかかる作業をなくすことができるとともに、パターンの形成条件に即した正確な制御パラメータを効率よく作成することができ、検査効率を向上することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0011】
本発明の実施形態に係る表面欠陥検査装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る表面欠陥検査装置が用いられる検査システムの概略構成について説明するための概念図である。図2は、本発明の実施形態に係る表面欠陥検査装置の概略構成について説明するための概念図である。図3は、本発明の実施形態に係る表面欠陥検査装置の制御系について説明するための機能ブロック図である。
【0012】
本実施形態の基板検査装置1(表面欠陥検査装置)は、図1に示すように、検査部1A(検査手段)と制御部1B(制御手段)とからなり、例えば液晶基板や半導体ウエハなどの表面に規則的パターンが形成された基板表面の画像を撮像して表面欠陥を検査するためのものである。
基板検査装置1は、単独で用いてもよいし、製造システムに組み込まれてもよいが、以下では、液晶基板14(被検体)の製造ラインの近傍に配置され、オンラインモードでは、製造システムの一部として自動搬入される液晶基板14の自動検査を行い、オフラインモードでは、作業者によるマニュアル操作で検査を行ったり、検査条件の入力作業を行ったりできるようになっている場合を例にとって説明する。
【0013】
液晶基板14は、カセット7に収納され、露光装置など製造工程に用いる装置と基板検査装置1との間をカセット搬送装置6により搬送される。
カセット搬送装置6と基板検査装置1との間には、カセットポート5a、5bと、ローダ3が設けられている。
カセットポート5a、5bは、カセット7を搬送台6aから受け取って、検査終了後搬送台6aに戻すためのもので、通信回線9上でカセット搬送装置6の制御などを行うホストコンピュータ8により制御される。
ローダ3は、カセット7と基板検査装置1との間で液晶基板14を受け渡しするための移載装置であり、ローダ制御部4により制御される。ローダ制御部4は、通信ケーブル11を介して、通信ネットワークを構成する通信回線9に接続され、ホストコンピュータ8と通信可能とされている。
ローダ制御部4には、通信ケーブル10を介して制御部1Bが通信可能に接続されている。
そして、制御部1Bの制御信号に応じて、ローダ3のカセット7から取り出した液晶基板14の設計データをホストコンピュータ8から取得し、制御部1Bに伝送できるようになっている。
【0014】
ここで、設計データとは、液晶基板14の製造に必要な設計情報のうち、露光工程の実行に必要となる設計情報、例えば、パターンの形状情報、材質情報などを表すデータを意味する。これらは通常、露光装置に入力するデータとして所定フォーマットで用意され、ホストコンピュータ8により管理されている。
【0015】
検査部1Aは、図2に示すように、画像取込部として照明ユニット15および撮像ユニット16を、画像取込位置移動部としてステージ13を備えている。
ステージ13は、液晶基板14を載置して、例えば真空吸着などの吸着手段により吸着固定し、照明ユニット15、撮像ユニット16に対する所定の画像読取位置に液晶基板14を相対移動する移動手段である。すなわち、液晶基板14を移動させるステージでもよいし、固定した液晶基板14に対して照明ユニット15および撮像ユニット16を移動させるステージでもよい。
【0016】
照明ユニット15は、例えば、切替可能に設けられた複数の波長選択フィルタなどにより適宜の波長帯域とされた照明光17を、液晶基板14上でライン状に照射するものである。液晶基板14に対する入射角θは、不図示の回動機構により可変できるようになっている。
撮像ユニット16は、照明光17の正反射光、回折光、散乱光などとして、液晶基板14の法線Nに対する角度θ方向に射出される出射光18を適宜の結像光学系により結像し、その像をラインセンサなどの撮像素子で撮像し、光電変換して液晶基板14の表面の画像信号を取得するためのものである。角度θは、不図示の回動機構により可変できるようになっている。
【0017】
制御部1Bは、画像取込制御部19、移動制御部20、入力手段2a、モニタ2b、記憶部2cおよびメイン制御部2からなる。
画像取込制御部19は、照明ユニット15および撮像ユニット16に接続され、それらを制御して、液晶基板14の表面の画像を適切な検査条件で取得するためのものである。検査条件としては、例えば、照明光の光量、波長帯域、入射角θ、撮像方向の角度θ、露光時間などがある。
移動制御部20は、ステージ13に接続され、ステージ13を制御して、画像取込位置の移動制御を行うものである。
入力手段2aは、基板検査装置1の操作入力を行うためのもので、例えばキーボード、マウス、操作パネルなどからなる。
モニタ2bは、操作入力情報、取り込まれた画像、検査結果などの出力情報を表示する出力手段である。
記憶部2cは、例えばハードディスクなどからなる外部記憶媒体であり、検査に必要な情報や検査結果を記憶できるようになっている。
【0018】
メイン制御部2は、基板検査装置1の全体制御を行うもので、画像取込制御部19および移動制御部20に制御信号を送ることにより、それぞれを通じて照明ユニット15および撮像ユニット16の照明条件、撮像条件を設定し、画像取込位置の移動制御を行うとともに、撮像ユニット16で撮像された画像の画像信号を画像処理して欠陥抽出を行うことができるようになっているものである。
【0019】
メイン制御部2の構成について、図3の機能ブロック図を参照して説明する。
メイン制御部2は、CPU30、メモリ31および制御パラメータ算出手段32からなる。
CPU30は、画像取込制御部19、移動制御部20、入力手段2a、モニタ2b、記憶部2cおよび通信ケーブル10に接続され、それぞれとの間で、適宜のインターフェースを介して制御信号や画像信号の授受を行うとともに、それら信号の演算処理を実行する手段である。
メモリ31は、CPU30を動作させるためのOSや、各制御動作を行うためのプログラムがロードされ、信号の演算結果などが記憶される記憶手段である。
【0020】
制御パラメータ算出手段32は、通信ケーブル10を介してローダ制御部4から取得された設計データに基づいて画像取込制御部19、移動制御部20を制御するための制御パラメータを集めたレシピファイル27(図7参照)を作成する手段であり、データ演算部33、データベース参照部34、レシピファイル編成部36およびレシピファイル修正部35からなる。
データ演算部33は、設計データに含まれるパターンの形状データを演算するためのもので、形状データをステージ13の基準座標系に座標変換したり、予め記憶された演算式により設計データから制御パラメータを算出したりできるようになっている。例えば、検査の露光条件を設定するための画像取込位置(以下、調光位置と称する)を算出できるようになっている。また、例えば、回折光の画像により検査する場合には、パターンの繰り返しピッチ、照明光17の波長から、適切な回折光を撮像するための入射角θ、撮像方向の角度θを算出できるようになっている。
【0021】
データベース参照部34は、設計データに含まれる搬入された液晶基板14の製造工程情報と、製造工程により決まる制御パラメータを予め記憶部2cなどに記憶した工程データベースとを参照して、制御パラメータを求めるものである。例えば、照明光17の波長帯域、初期発光量、撮像ユニット16の初期露光時間、表面欠陥を抽出するためのサイズ、形状、輝度の閾値などの制御パラメータを設定できるようになっている。
なお、必要に応じて、工程データベースから取得した参照値と設計データとをデータ演算部33に予め用意された演算式で演算して制御パラメータを求めるようにしてもよい。
【0022】
レシピファイル編成部36は、データ演算部33およびデータベース参照部34により求められた検査に必要な制御パラメータの全体、すなわち検査レシピを所定形式のレシピファイル27に編成し、CPU30を介して記憶部2cに記憶するための手段である。
レシピファイル修正部35は、レシピファイル27内の制御パラメータに基づいて調光を行ったとき、その調光結果に基づいて、レシピファイル27内の照明条件、撮像条件に関する制御パラメータを修正するための手段である。
【0023】
ここで、本実施形態の表面欠陥検査装置で検査する液晶基板14について説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る表面欠陥装置の被検体の一例について説明するための平面説明図である。図5(a)は、図4の一部を拡大した拡大模式図、図5(b)は、図5(a)の一部を拡大した拡大模式図である。
液晶基板14は、図4に示すように、L×Lの矩形のガラス基板14A上で6分割された領域(図示の分割線Dで示す領域)内において、それぞれ略矩形領域のパネルA1〜A6が形成された6面取の基板である。
液晶基板14は、互いに交差する2辺を基準として、ステージ13上に設けられた位置決め部21で位置決めして吸着保持される。本実施形態では、位置決め部21で位置決めされた2辺の交点Oがステージ13上に固定されたXY直角座標系の原点(0,0)と一致されている。
また、パネルA〜Aは、長手方向がX軸と平行で、短手方向がY軸と平行な矩形とされている。そのため、パネルA(n=1、2、…、6)の領域は、矩形の対角位置の矩形始点Pn1、矩形終点Pn2の座標により表現することができる。
このような配置において、照明光17はX軸に平行に照射され、ステージ13により画像取込位置がY軸正方向に移動されることにより、液晶基板14を走査して撮像することが可能とされている。
【0024】
液晶基板14の寸法の一例としては、L=L=1000mm、パネルA〜Aのサイズがそれぞれ400mm×250mmとすることができる。
このとき、パネルA〜Aの配置は、下記の配置を採用できる。
パネルA: P11(50,100)、P12(450,350)
パネルA: P21(50,400)、P22(450,650)
パネルA: P31(50,700)、P32(450,950)
パネルA: P41(550,100)、P42(950,350)
パネルA: P51(550,400)、P52(950,650)
パネルA: P61(550,700)、P62(950,950)
【0025】
パネルA〜Aは、図5(a)に示すように、矩形領域のパターン形成部22とその外周を取り囲む領域に設けられた回路配線部23に分かれる。
パターン形成部22は、液晶表示の画素を形成する電極パターンであり、パターン画像は製造工程により異なるが、例えば、図5(b)に示すようなY方向に長い矩形の先端に突出部を備えるような表示電極24…がX方向、Y方向にピッチx、yで配列された繰り返しパターンからなる。
回路配線部23は、画素電極などに駆動電圧を印加するための駆動回路パターンなどからなる。このため、パターン形成部22に比べて反射率が高くなっている。
そこで、パターン形成部22を検査する場合と、回路配線部23を検査する場合とでは、照明光17の光量を変えることが好ましい。
【0026】
次に、基板検査装置1の動作について説明する。
図6は、本実施形態の表面欠陥検査装置による表面欠陥検査の全体工程を説明するためのフローチャートである。図7が、本実施形態のパラメータファイルのファイル構造を説明するための概念図である。図8は、本実施形態の調光工程について説明するためのフローチャートである。
【0027】
基板検査装置1が入力手段2aによりオンラインモードに設定されると、図6のフローにしたがって検査を行うことが可能になる。
ステップS1では、ホストコンピュータ8の制御により、検査すべき液晶基板14…を搭載したカセット7がカセット搬送装置6により搬送され、カセットポート5aに載置される。載置完了が検知されると、ホストコンピュータ8から、ローダ制御部4にカセットポート5aにカセット7が搬入されたことが通知される。
カセット7に収められた液晶基板14…は、ホストコンピュータ8により、それぞれの基板情報が、カセット7内の配置位置とともに記憶されている。基板情報としては、例えば、基板品種を識別するための品種識別番号、ロットID、基板ID、パターンが形成された製造工程を識別するための工程番号、パターンの設計データ、およびそれら全体を他の設計データと識別するためのパターン設計情報IDなどが含まれる。
ローダ制御部4は、ホストコンピュータ8と通信を行い、カセット7内に配置されている液晶基板14…の基板情報をカセット7内の位置情報と関係づけて認識するマッピングを行う。
【0028】
ステップS2では、基板検査装置1の制御部1Bと液晶基板14を搬入するための確認通信が行われる。すなわち、ローダ制御部4から通信ケーブル10を通して、制御部1Bに基板搬入を通知する制御信号が送られた後、基板情報が送信される。
【0029】
ステップS3では、制御部1Bが基板情報をすべて受け取り、検査レシピ作成に必要な設計データが取得できたかどうかが判断される。
設計データが取得できたと判断された場合は、基板情報に基づき、搬入された液晶基板14に対して、過去に作成された検査レシピが記憶部2cに記憶されているかどうかの判定を行う(ステップS4)。
何らかの原因で設計データが取得できないと判断された場合は、ステップS13を行う。
【0030】
ステップS4で判定した結果、検査レシピが記憶されていない場合には、ステップS5のレシピ作成工程を実行する。検査レシピが記憶されている場合には、ステップS6を実行する。
【0031】
ステップS13が実行されるのは、ホストコンピュータ8に設計データがないか、通信が正確に行われなかったなどの異常が発生した場合である。そこで、レシピ作成不可を制御部1Bからローダ制御部4に通知し、検査部1Aのモニタ2bなどに適宜異常発生のメッセージを表示する。そして、ステップS12を実行する。
【0032】
ステップS5では、取得された設計データを含む基板情報に基づいて、制御パラメータ算出手段32(図3参照)により制御パラメータを算出し、レシピファイル27を編成する。
レシピファイル27は、図7に示すように、親ディレクトリ25の元に作成された複数の子ディレクトリ26のいずれかに作成され、階層構造にまとめられている。
親ディレクトリ25は、液晶基板14の品種の単位で設けられる。子ディレクトリ26は、特定品種の液晶基板14の工程ごとに設けられる。予め、親ディレクトリ25、子ディレクトリ26が作成されていない場合は、必要に応じて自動作成される。
各レシピファイル27には、体系的なレシピ番号が付与される。例えば、親ディレクトリ25には、品種識別番号に基づく品種番号(例えば、2桁の記号AA、AB、…)が付与され、子ディレクトリ26には、工程を識別する工程番号(例えば、2桁の番号01、02、…)が付与される。例えば、品種AAの工程01を終了した場合の検査レシピは、レシピ番号は、AA01が付与される。
ステップS4における検査レシピの有無の判定は、レシピ番号に対応するレシピファイル27が記憶部2cに存在するかどうかで判定する。
【0033】
ここで、制御パラメータの例について簡単に説明する。
照明光17の入射角θは、正反射光、回折光、散乱光のいずれにより検査するかにより予め設定されている。
撮像方向の角度θは、入射角θと検査に用いる光の種類により設定される。特に、回折光を用いる場合は、設計データのパターンピッチから、データ演算部33により回折方向角を演算して設定する。
【0034】
調光位置T〜T(図4参照)は、本実施形態では、それぞれパネルAおよびA、AおよびA、ならびにAおよびAのY方向の中心位置に設定される。データ演算部33により、設計データから、矩形始点Pi1、矩形終点Pi2(i=1,2,…,6)の座標がステージ13の基準座標系による座標に変換されるので、例えば、調光位置TのY座標は、矩形始点P11、矩形終点P12のY座標P11Y、P12Yを用いて、Y=(P11Y+P12Y)/2=225(mm)として算出される。その他も同様である。
ただし、調光位置T〜Tは、パターンに応じて、露光条件を設定しやすい位置に設定すればよく、この位置に限るものではない。また、1つのパネルに対して1箇所と限定されるものでもない。例えば、パターンの反射率にムラがあるような場合は、同一パターンであっても複数の調光位置を設けることが好ましい。
【0035】
照明光17の波長帯域、初期発光量、撮像ユニット16の初期露光時間などの制御パラメータは、データベース参照部34により、設計データの工程情報から、予め記憶部2cなどに記憶された工程データベースを参照して取得したり、必要に応じてそれらをデータ演算部33で演算して算出したりしてそれぞれ設定する。
例えば、波長帯域は、設計データ中のパターンピッチの情報などを演算して適切な波長帯域が選択されるが、レシピファイル27にはその波長帯域を選択するフィルタの番号などが書き込まれる。また、例えば表面欠陥を抽出するためのサイズ、形状、輝度などの閾値は、工程に応じて工程データベースから参照した値がレシピファイル27にそのまま書き込まれる。
【0036】
ステップS6では、レシピファイル27が記憶部2cに記憶された状態になるので、検査が可能となったことを制御部1Bから通信ケーブル10を介してローダ制御部4に通知する。
ステップS7では、ローダ3を駆動し、検査する液晶基板14を検査部1Aに搬入する。そしてステージ13の所定位置に載置し、吸着固定する。
【0037】
ステップS8では、検査に先立って調光工程を行い、露光条件の設定し、レシピファイル27を修正する。
以下、ステップS8の詳細について、図8を参照して説明する。
ステップS20では、レシピファイル27から調光位置の座標を取得する。
ステップS21では、移動制御部20によりステージ13を駆動して照明光17が調光位置に照射されるように液晶基板14の移動を行う。そして、レシピファイル27から、照明ユニット15の初期発光量、波長帯域、撮像ユニット16の初期露光時間などの露光条件を取得して露光条件を初期化する。
【0038】
ステップS22では、光量設定を行って、照明ユニット15を点灯する。調光位置移動後、最初にステップS22を実行する場合は、初期発光量で点灯される。2回目以降の実行時は、後述するステップS24で算出される平均輝度と目標輝度との差の大きさに応じて光量が増減される。
ステップS23では、撮像ユニット16により調光位置でのライン画像を撮像する。撮像された画像は、画像取込制御部19により光電変換された画像信号となって、メイン制御部2に伝送され、メモリ31に順次格納される。
【0039】
ステップS24では、CPU30によりメモリ31内の画像信号を演算し、ラインの平均輝度を算出する。その際、平均輝度のノイズとなる領域のデータは適宜省略して演算する。例えば、図4における領域R、R以外の画像信号は、パネルのパターンとは関係ないので、平均輝度から除くようにする。パターン形成部22の検査を行う場合には、回路配線部23の領域の画像信号を平均輝度から除くなどしてもよい。
【0040】
ステップS25では、ステップS24で算出された平均輝度が設定範囲内かどうか判定する。平均輝度の設定範囲は、欠陥画像が精度よく抽出できるように設定する。例えば、撮像ユニット16の撮像素子の階調数が256階調(0〜255)の場合には、最高輝度を255として、平均輝度の目標値を150程度とすることが好ましい。したがって、設定範囲を、例えば140〜170の範囲とすることができる。
平均輝度が設定範囲内にない場合は、ステップS22〜S25を繰り返す。このとき、ステップS22では、ステップS24で求めた平均輝度を用いて、例えば、輝度偏差=(平均輝度目標値−平均輝度)を算出し、輝度偏差に比例して発光量を増減させるように光量を変更する。
平均輝度が設定範囲内にある場合は、その発光量をメモリ31上の調光位置と関係づけられた配列などに記憶してから、ステップS26を実行する。
【0041】
ステップS26では、レシピファイル27を参照して、未調光の調光位置があるかどうか判定する。
未調光の調光位置がある場合は、ステップS21〜S26を繰り返す。
すべての調光位置で調光が終了した場合は、ステップS27を実行する。
【0042】
ステップS27では、メモリ31の配列に記憶された各発光量を呼び出し、それらの値から検査時の照明光17の発光量(以下、取込発光量と称する)を決定する。本実施形態では、液晶基板14の全体を同一露光条件で検査するので、各発光量の平均値とする。
ステップS28では、ステップS27で求めた取込発光量の値をレシピファイル27に保存し、レシピファイル27を修正する。
以上で、レシピ自動調整工程(図6のステップS8)を終了する。
【0043】
次に、ステップS9(図6参照)では、表面欠陥検査を行う。
まず、画像取込位置がY軸方向の原点に位置するようにステージ13を移動し、レシピファイル27を参照して、各制御パラメータを初期化する。このとき、照明ユニット15の発光量はレシピ自動調整工程で設定された取込発光量とする。
そして、画像取込位置を順次Y軸正方向に移動しつつ、ライン画像の撮像を繰り返し、液晶基板14の全面画像を取得する。
そして、この全面画像に対して適宜の画像処理を行って、欠陥抽出を行う。その際、欠陥抽出に用いる制御パラメータ、例えば、表面欠陥のサイズ、形状、輝度などの閾値は、レシピファイル27から取得した値を用いることができる。欠陥抽出のアルゴリズムは適宜のアルゴリズムを用いることができる。上記以外にもアルゴリズムの実行に必要な制御パラメータがあれば、予めレシピファイル27に記憶しておくことは言うまでもない。
抽出された欠陥は、例えば欠陥辞書などを参照して、最終的な欠陥判定を行い、判定結果をモニタ2bや記憶部2cに出力する。
以上でステップS9の表面欠陥検査工程が終了する。
【0044】
ステップS10では、液晶基板14の吸着を解除して、ローダ3により、ステージ13から搬出し、搬出用のカセット7に収納する。
ステップS11では、ローダ制御部4のマッピング情報を参照して、搬入されたカセット7内に他に検査すべき液晶基板14があるかどうか判断する。
他に検査する液晶基板14があれば、ステップS7〜S11を繰り返す。
検査する液晶基板14がないと判断される場合は、検査済みの液晶基板14を収納したカセット7をカセット搬送装置6上に搬出する(ステップS12)。
以上で、本実施形態の基板検査装置1による検査工程が終了する。
上記工程は、他の検査条件、例えば、撮像方向θを変えて異なる次数の回折光で検査する、などがあれば、必要な回数だけ、上記を繰り返すものである。また、検査すべき液晶基板14の数だけ繰り返すことができる。
カセット7内のすべての液晶基板14の検査が終了した場合は、オフラインモードにしたり、電源を切断したりすることもできる。
【0045】
以上に説明したように、本実施形態の基板検査装置1によれば、制御パラメータ算出手段32を備えることにより、設計データから検査レシピを作成できるので、人手により検査レシピを作成しなくてよいので、検査時間が短縮でき、入力ミスによるトラブルを回避することもできて、検査効率を向上することができる。
特に、他品種が混合生産される場合には、正確な検査レシピを作成、維持する手間も膨大となるので、格段に作業効率を改善することができるという利点がある。
また、製造工程が不安定な時期は、本来同一品種の被検体であっても、製造ロットによっては、微妙に製造条件が異なる。そのため、従来は、検査レシピを人手により微調整しており、検査レシピが増大する原因になっていた。本実施形態によれば、このような製造ロットごとの品種なども設計データに応じて自動的に検査レシピが作成され、レシピ番号などにより容易に管理できるからきわめて好都合である。
【0046】
また、本実施形態では、検査レシピによる初期条件下で調光してから、検査時の露光条件を決定し、検査レシピを自動調整できるようにしている。そのため、設計データが同じ被検体の製造ロットバラツキなどがあっても最適の露光条件に調整できるから、検査精度を向上することができるという利点がある。
【0047】
なお、上記の説明では、ガラス基板14Aに6分割された領域に同形状のパネルが形成された例で説明したが、パネルの数、大きさ、パターンなどは異なってもよいことは言うまでもない。
そのような被検体の他の例として図9に液晶基板140(被検体)を示した。
図9は、本発明の実施形態に係る表面欠陥検査装置に用いることができる他例の被検体について説明するための平面説明図である。
液晶基板140は、ガラス基板14Aに、X軸方向を長手方向とする400mm×250mmの矩形状のパネルB〜Bと、同じく400mm×650mmの矩形状のパネルBが設けられた4面取の基板である。パネルB(m=1,2,3,4)の領域は、液晶基板14と同様に矩形始点Qm1、矩形終点Qm2により表現され、例えば次のような座標で表される。
パネルB: Q11(50,100)、Q12(450,350)
パネルB: Q21(50,400)、Q22(450,650)
パネルB: Q31(50,700)、Q32(450,950)
パネルB: Q41(550,200)、Q42(850,950)
【0048】
このような液晶基板140の調光位置は、図9に示すように、パネルB〜Bでは、Y軸方向の中間部2箇所に調光位置Si1、Si2(i=1,2,3)を設定し、パネルBでは、Y軸方向の中間部3箇所に調光位置S41、S42、S43のように設定している。それぞれのX軸方向は、パネル外のデータを除くようにしている。
また、液晶基板140でも基板全体を走査して検査を行ってもよいが、それぞれのパネルに適した露光条件で複数回の走査を行い、それぞれの走査で各パネルだけの画像を撮像するようにしてもよい。
例えば、調光位置Si1、Si2(i=1,2,3)で第1回目の調光工程を行って、パネルB〜Bのパターンを撮像する第1の取込発光量を求め、調光位置S41、S42、S43で第2回目の調光工程を行って、パネルBのパターンを撮像する第2の取込発光量を求め、2回の走査を行ってパネルB〜Bと、パネルBを別々に撮像して、検査のための画像を取得してもよい。
このようにすれば、調光位置の指定などは複雑になるものの、設計データから自動的に設定することができるので、人手などの手間がかかることはない。そして、各パネルの条件に合わせた検査ができるので検査精度を向上することができるという利点がある。
【0049】
また、上記の説明では、取込発光量を設定する場合、各調光位置での平均輝度が所定範囲に入る条件で求める例で説明したが、パターンや、抽出すべき欠陥の種類などによっては、他の条件、例えば、ピーク輝度などが所定範囲に入る条件などにより設定してもよい。
【0050】
また、上記の説明では、照明光の発光量を調節して露光条件を設定する例で説明したが、撮像手段側の露光時間を可変するようにしてもよく、さらには発光量と露光時間との両方を可変するようにしてもよい。
【0051】
また、上記の説明では、基板検査装置1の記憶部2cに検査レシピがない場合に、検査レシピを作成する例で説明したが、基板検査装置1が、ホストコンピュータ8や、他の基板検査装置と接続されて通信ネットワークを構成するシステムにおいて、基板検査装置1にネットワーク検索機能を持たせ、必要なレシピファイル27をネットワーク上で相互に検索できるようにしてもよい。
このようにすれば、作成したレシピファイル27が汎用的に利用できるので、検査効率を一層向上させることができる。
【0052】
また、上記の説明では、被検体として液晶基板を例にとって説明したが、パターンが表面に形成された基板であれば、液晶基板に限定されない。例えば、半導体ウエハなどの基板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る表面欠陥検査装置が用いられる検査システムの概略構成について説明するための概念図である。
【図2】本発明の実施形態に係る表面欠陥検査装置の概略構成について説明するための概念図である。
【図3】本発明の実施形態に係る表面欠陥検査装置の制御系について説明するための機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る表面欠陥装置の被検体の一例について説明するための平面説明図である。
【図5】図4の一部を拡大した拡大模式図、図5(b)は、図5(a)の一部を拡大した拡大模式図である。
【図6】本実施形態の表面欠陥検査装置による表面欠陥検査の全体工程を説明するためのフローチャートである。
【図7】本実施形態のパラメータファイルのファイル構造を説明するための概念図である。
【図8】本実施形態の調光工程について説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る表面欠陥検査装置に用いることができる他例の被検体について説明するための平面説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 基板検査装置(表面欠陥検出装置)
1A 検査部(検査手段)
1B 制御部(制御手段)
2 メイン制御部
2c 記憶部
3 ローダ
4 ローダ制御部
7 カセット
8 ホストコンピュータ
9 通信回線
10 通信ケーブル
13 ステージ(画像取込位置移動部)
14、140 液晶基板(被検体)
15 照明ユニット(画像取込部)
16 撮像ユニット(画像取込部)
17 照明光
18 出射光
19 画像取込制御部
20 移動制御部
、A、A、A、A、A、B、B、B,B パネル
、T、T、S11、S12、S21、S22、S31、S32、S41、S42、S43 調光位置
22 パターン形成部
23 回路配線部
27 レシピファイル
32 制御パラメータ算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に形成されたパターンの表面欠陥を検査する表面欠陥検査装置であって、
前記パターンを撮像して表面欠陥を抽出する検査手段と、
制御パラメータに基づいて前記検査手段の動作を制御する制御手段と、
前記制御パラメータを前記パターンの形成条件を表す設計データから算出する制御パラメータ算出手段とを備えたことを特徴とする表面欠陥検査装置。
【請求項2】
前記検査手段が、被検体に照明光を照射して被検体表面からの出射光による像を撮像する画像取込部と、該画像取込部を前記被検体に対して相対的に移動させて画像取込位置を移動させる画像取込位置移動部とを備え、
前記制御手段が、前記画像取込部の照明条件および撮像条件、ならびに前記画像取込位置移動部による前記画像取込部の移動位置を制御することを特徴とする請求項1に記載の表面欠陥検査装置。
【請求項3】
前記制御パラメータ算出手段が、
前記設計データから、前記照明光の初期発光値と、前記照明光を調光するための調光位置とを算出するとともに、
調光を行った結果に基づいて、検査時における前記照明光の発光値を算出できるようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の表面欠陥検査装置。
【請求項4】
被検体内に、前記パターンが形状の異なる複数のパターンとして設けられ、
前記制御パラメータ算出手段が、前記複数のパターンのそれぞれの設計データに応じて制御パラメータを算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−14650(P2008−14650A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183157(P2006−183157)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】