説明

表面評価装置及び表面評価方法

【課題】 表面の状態を適切に評価する。
【解決手段】 波長380nm〜500nmの光を出射し、該範囲以外の可視光領域の光を出射しない光源と、光源を出射した光を集光する集光光学系と、集光光学系で集光された光の光路上に配置され、評価対象物を保持し、集光光学系で集光された光が評価対象物の表面に入射するように、評価対象物を移動させることのできるステージと、集光光学系で集光された光がステージに保持された評価対象物の表面に入射して生じる光のうち、正反射光と透過光とを除いた結像されない光の、ある立体角内へ散乱する分のパワーを計測する計測装置とを有する半導体薄膜の表面評価装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価対象物の表面を評価する装置及び方法に関する。たとえば、レーザアニールでアモルファスシリコン薄膜を多結晶化する際に発生する表面の性状及び結晶状態を評価する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アニール加工後の多結晶薄膜表面における結晶性や結晶化状態の均一性は、従来たとえば薄膜表面の色の差を視覚的に検知して判断、評価されてきた。しかしこの方法では定量的な評価をなしえないという問題がある。
【0003】
他にも多結晶薄膜表面のむらを評価する種々の技術が知られている。しかしそのいずれによっても薄膜表面の状態を正確に把握することは困難であり、測定精度も十分とはいえなかった。
【0004】
多結晶膜の結晶状態に関する面内ばらつきを迅速かつ正確に評価する方法の発明が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1記載の発明においては、無偏光の白色光を測定光として多結晶膜の形成された評価対象基板に照射する。多結晶膜からの散乱光は結像レンズによって撮像センサに結像され、A/D変換器によって画像データに変換されて画像解析が行われる。特許文献1に記載されている評価装置では、評価対象基板を透過した測定光がステージ表面で散乱する散乱光を排除することができない。
【0005】
また、レーザ光を照射して形成した結晶質半導体薄膜を簡易かつ高精度に評価する工程を含む半導体薄膜の形成方法の発明が開示されている(たとえば、特許文献2参照)。特許文献2記載の発明においては、結晶質半導体薄膜が形成された透明基板の裏面から発光ダイオード(Light Emitting Diode; LED)による光を照射して結晶質半導体薄膜の透過画像を取得し、これに基づいて半導体薄膜の選別を行う。この方法では、光源にLEDを用いているため測定範囲を絞り込むことが困難である。また、透過画像に現れるむらと視覚的に見えるマクロなむらとは一致しない。
【0006】
更に、熟練者による光学素子の光散乱計測の検査を、数値化し定量化することで容易に行う目的でなされた光学素子評価装置及び評価方法の発明が公知である(たとえば、特許文献3参照)。特許文献3記載の発明においては、He−Neレーザから出射された波長632nmのレーザビームを光学素子に照射して、その散乱光から光学素子表面の画像を結像レンズを介してCCDカメラで取得し、画像処理を行って光学素子性能を評価する。
【0007】
また、たとえばガラス基板上に成膜された半導体膜に線状レーザビームを照射して行うレーザアニールにおいて、基板表面を照明し、その反射光をCCDカメラで検出して線状ビームの照射位置のずれを補正するレーザ照射装置及び照射方法の発明が知られている(たとえば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−10058号公報
【特許文献2】特開2009−65146号公報
【特許文献3】特開2006−29833号公報
【特許文献4】特開2007−194604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、評価対象物表面の状態を適切に評価することのできる評価装置及び評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によれば、波長380nm〜500nmの光を出射し、該範囲以外の可視光領域の光を出射しない光源と、前記光源を出射した光を集光する集光光学系と、前記集光光学系で集光された光の光路上に配置され、評価対象物を保持し、前記集光光学系で集光された光が前記評価対象物の表面に入射するように、前記評価対象物を移動させることのできるステージと、前記集光光学系で集光された光が前記ステージに保持された評価対象物の表面に入射して生じる光のうち、正反射光と透過光とを除いた結像されない光の、ある立体角内へ散乱する分のパワーを計測する計測装置とを有する半導体薄膜の表面評価装置が提供される。
【0011】
また、本発明の他の観点によれば、(a)波長380nm〜500nmの光であって、該範囲以外の可視光領域の光を含まない光を、第1のビームスポットサイズに集光して評価対象物表面に入射させながら、前記評価対象物を前記光に対して相対的に移動させる工程と、(b)前記工程(a)で前記光が前記評価対象物表面に入射して生じる光のうち、正反射光と透過光とを除いた結像されない光の、ある立体角内へ散乱する分のパワーを計測する工程とを有する半導体薄膜の表面評価方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、評価対象物表面の状態を適切に評価可能な評価装置及び評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例による表面評価装置を示す概略図である。
【図2】(A)は、アニール基板(多結晶シリコン膜)表面をスキャナで取り込んだ画像であり、(B)は、(A)に示した画像の左右にのびる直線に沿ってレーザビーム30を照射して作成した、一次元の散乱光強度分布を示す。
【図3】(A)は、アニール基板(多結晶シリコン膜)表面をスキャナで取り込んだ画像であり、(B)は、(A)に示したアニール基板(多結晶シリコン膜)表面にレーザビーム30を照射して作成した、二次元の散乱光強度分布を示す。
【図4】(A)〜(C)は、実施例による表面評価装置に青色の波長領域のレーザビームを出射するレーザ光源を使用することの効果について説明するための図である。
【図5】(A)〜(C)は、多結晶半導体薄膜に入射するレーザビームのビームスポットのサイズを変更したときの散乱光強度分布の変化について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は実施例による表面評価装置を示す概略図である。実施例による表面評価装置は、レーザ光源10、可動レンズ11、揺動ミラー12、XYステージ13、ビームダンパ14a、14b、PINフォトダイオード15、データロガー16、及びPC(Personal Computer)17を含んで構成され、たとえば半導体薄膜の表面の評価に用いられる。
【0015】
レーザ光源10は、青色の波長(可視光の波長領域内、すなわち380nm〜770nmにおける短波長)領域、たとえば波長473nmのレーザビーム30を出射する半導体レーザである。レーザビーム30は、空間モードTEM00(M<1.1)の連続波のレーザビームであり、出力10mWで出射される。レーザビーム30は、可動レンズ11を透過し、揺動ミラー12で反射され、XYステージ13に保持されたアニール基板20表面上に、点状のビームスポットを形成して入射する。アニール基板20は、たとえばガラス等の透明基板上に多結晶シリコン膜が形成された評価対象物である。多結晶シリコン膜はアモルファスシリコン膜にレーザビームを照射して行うレーザアニールによって形成される。
【0016】
可動レンズ11は、集光機能を有する2枚の単レンズ11a、11bを備える。単レンズ11a、11bの焦点距離は、たとえばそれぞれ200mm、100mmである。単レンズ11a、11bの少なくとも一方はレーザビーム30の光軸方向に移動可能であり、このため両レンズ11a、11bのレンズ間距離は可変である。両レンズ11a、11bのレンズ間距離を変えることで、アニール基板20に入射するレーザビーム30のビームスポットのサイズ(入射領域の面積)を変化させることができる。
【0017】
揺動ミラー12は、揺動ミラー12に入射するレーザビーム30の入射角が変化するように、揺動軸12aの周囲に揺動可能である。揺動ミラー12を、揺動軸12aの周囲に揺動することでレーザビーム30のアニール基板20への入射角θを変化させることができる。入射角θはたとえば45°である。
【0018】
レーザビーム30がアニール基板20の多結晶シリコン膜へ入射することにより、正反射光30a、透過光30b、及び散乱光30cが発生する。正反射光30a、散乱光30cは、それぞれレーザビーム30がアニール基板20(多結晶シリコン膜)表面で正反射、散乱されて生じる光、透過光30bはレーザビーム30のうちアニール基板20を透過する光である。正反射光30aの光路上にはビームダンパ14aが配置されている。正反射光30aはビームダンパ14aに入射し、これに吸収される。アニール基板20の裏面側、透過光30bの光路上にはビームダンパ14bが配置されている。透過光30bはビームダンパ14bに入射し、これに吸収される。
【0019】
たとえばレーザビーム30がアニール基板20に入射する固定位置の鉛直上方で、正反射光30a、透過光30bが到達しない位置に、PINフォトダイオード15が配置される。PINフォトダイオード15は、これに入射する散乱光30cの強度を検出するセンサである。PINフォトダイオード15の代わりに分光器とフォトマル(PMT)をあわせて使用してもよい。PINフォトダイオード15で検出された散乱光30cの強度のデータは、データロガー16に送信される。
【0020】
データロガー16はデータを計測、保存する計器である。データロガー16は、PINフォトダイオード15で得られた散乱光30cの強度を計測し、電圧値に変換して保存する。
【0021】
PINフォトダイオード15とデータロガー16とを用いて、可動レンズ11で集光されたレーザビーム30がXYステージ13に保持されたアニール基板20の表面に入射して生じる光のうち、正反射光30aと透過光30bとを除いた結像されない散乱光30cの、ある所定の立体角内(PINフォトダイオード15の受光領域内)へ散乱する分のパワーが計測される。
【0022】
XYステージ13は、PC17の制御により、アニール基板20を基板の面内方向に移動させることができる。移動速度は、たとえば一定である。アニール基板20は、XYステージ13によりレーザビーム30に対して走査され、走査中に継続して生じる散乱光30cの強度がデータロガー16により計測され、電圧値に変換後、保存される。電圧値に変換された散乱光30cの強度データは、PC17に送信される。PC17は当該データと、XYステージ13の位置情報とから一次元または二次元の散乱光強度分布を作成する。なお、アニール基板20の走査中、レーザビーム30のアニール基板20への入射角θは一定(45°)である。
【0023】
図2(A)は、アニール基板(多結晶シリコン膜)表面をスキャナで取り込んだ画像であり、図2(B)は、図2(A)に示した画像の左右にのびる直線に沿ってレーザビーム30を照射して作成した、一次元の散乱光強度分布を示す。図2(B)の横軸は位置を単位「mm」で示し、縦軸は電圧値に変換された散乱光の強度を単位「mV」で示す。
【0024】
図2(A)のスキャナ取り込み画像は、人間の視覚によって観察されるアニール基板(多結晶シリコン膜)表面と近似する。白っぽく見える領域が凸部(表面高さが高い部分)であり、黒っぽく見える領域が凹部(表面高さが低い部分)である。図2(B)においては、電圧値の大きい部分、すなわち散乱光強度の強い部分が凸部を示し、電圧値の小さい部分、すなわち散乱光強度の弱い部分が凹部を示す。図2(A)のアニール基板(多結晶シリコン膜)表面の視覚的なむらと、図2(B)の青色レーザビーム30の散乱光30cの強度分布がほぼ一致しているのが認められる。
【0025】
図3(A)は、アニール基板(多結晶シリコン膜)表面をスキャナで取り込んだ画像であり、図3(B)は、図3(A)に示したアニール基板(多結晶シリコン膜)表面にレーザビーム30を照射して作成した、二次元の散乱光強度分布を示す。図3(B)においては、左右の黒っぽい領域が最も散乱光強度(電圧値)が弱く(この領域の散乱光強度を、後の説明の便宜のために強度1とする。)、そこからやや中央寄りの灰色の領域が次に散乱光強度が弱い(この領域の散乱光強度を強度2とする。)。中央付近の白っぽい領域は、前記灰色の領域よりも散乱光強度が強く(この領域の散乱光強度を強度3とする。)、白っぽい領域の内部に存在する黒味を帯びた領域が最も散乱光強度が強い(この領域の散乱光強度を強度4とする。)。なお、図3(A)に示すアニール基板は、図2(A)に示したそれとは異なる。また、図3(B)には散乱光強度を濃淡で表示したが、図2(B)と同様に、二次元位置に対応した電圧値(数値)で散乱光強度を表すことも可能である。
【0026】
図3(A)及び(B)を比較参照すると、レーザアニールで形成された多結晶シリコン膜表面のむらの視覚的な二次元分布と、散乱光30cの強度測定結果との略一致が見られる。ここでたとえば図3(A)の左から3分目あたりに形成され、上部から右斜め下方向に白っぽく見えるむらは、図3(B)の散乱光強度分布には現れていないが、これは当該むらがレーザアニールによって形成されたむらではないためである。
【0027】
図2(A)〜図3(B)に示した結果より、青色の波長領域のレーザビームであって、出力の安定した連続波のレーザビームを点状に集光し、レーザアニールで形成された半導体薄膜(多結晶シリコン膜)に照射して、正反射光及び透過光を除去した散乱光を計測することで、レーザアニールによる結晶化の際に発生する、視覚的なむらの分布を定量的に高精度で計測することができることがわかる。アニール加工された結晶化薄膜について、人間の視覚による認識に近い凹凸の分布を定量的に計測することが可能である。
【0028】
図4(A)〜(C)を参照して、実施例による表面評価装置に青色の波長領域のレーザビームを出射するレーザ光源を使用することの効果について説明する。
【0029】
図4(A)は、アニール基板表面をスキャナで取り込んだ画像であり、図4(B)は、図4(A)に示したアニール基板表面に波長473nmの青色波長領域のレーザビーム30を照射して作成した、二次元の散乱光強度分布を示す。図4(A)、(B)は、それぞれ図3(A)、(B)と等しい図面である。また、図4(C)は、図1に示す実施例による表面評価装置のレーザ光源10(波長473nmのレーザビーム30を出射する半導体レーザ)に代えて、波長632nmの赤色の波長領域のレーザビームを出射するHe−Neレーザを用いて作成した、アニール基板20(多結晶シリコン膜)表面の二次元散乱光強度分布を示す。
【0030】
図4(A)に示される多結晶シリコン膜表面のむらの視覚的な二次元分布と、図4(B)に示される二次元の散乱光強度分布とは略一致している。
【0031】
図4(C)に示す散乱光強度分布においては、右端部の鉤状領域、及び点在する10〜20個の点状領域を除くほとんどずべての領域における散乱光強度は、上述の強度1より弱い強度である。また、点状領域の散乱光強度は、強度1〜2である。更に、鉤状領域のそれは強度2〜4である。鉤状領域に対応する位置のアニール基板20には傷が存在し、点状領域の多くに対応する位置のアニール基板20には汚れが認められた。
【0032】
図4(C)の散乱光強度分布から、レーザ光源10にHe−Neレーザを用いた場合には、レーザアニールで形成される多結晶シリコン膜のむらに対応した散乱光強度分布は得られず、アニール基板20表面の傷や汚れなど大きな凹凸による散乱光のみが強調されることがわかる。赤色レーザを使用した場合には、レーザアニールで形成される多結晶薄膜のむらに起因する散乱光の強度が非常に弱いためである。
【0033】
図4(B)と図4(C)との比較により、青色の波長領域のレーザビームを半導体薄膜表面に照射し、その散乱光の強度をもとに作成した強度分布によれば、レーザアニールで形成される半導体薄膜表面のむらを、目視で確認できるむらに近い態様で、定量的に表現できることがわかる。
【0034】
青色波長領域のレーザビームを使用する実施例による表面評価装置を用いると、レーザアニール加工された多結晶半導体薄膜の表面性状に起因した散乱光強度を強い強度で得ることができる。散乱光強度を薄膜表面の状態のシグナルとして使用することにより、半導体薄膜の表面の状態を簡易的かつ定量的に評価することができる。
【0035】
図5(A)〜(C)を参照し、多結晶半導体薄膜に入射するレーザビームのビームスポットのサイズを変更したときの散乱光強度分布の変化について説明する。多結晶半導体薄膜(アニール基板20)に入射するレーザビーム30のビームスポットのサイズは、たとえば前述のように、可動レンズ11に含まれる単レンズ11a、11b間の距離を変えることで変更することができる。
【0036】
図5(A)は、アニール基板(多結晶シリコン膜)表面をスキャナで取り込んだ画像であり、図5(B)及び図5(C)は、図5(A)に示した画像の左右にのびる枠内にレーザビーム30を照射して作成した、一次元の散乱光強度分布を示す。図5(B)、(C)は、それぞれ点状のビームスポットを1.0mm径、0.1mm径に形成してアニール基板に入射させて得られた散乱光強度分布である。図5(B)、(C)ともに、横軸は位置を単位「mm」で示し、縦軸は電圧値に変換された散乱光の強度を単位「V」で示す。
【0037】
図5(A)と図5(B)とを比較参照する。図5(A)に示される多結晶半導体薄膜の表面むらの視覚による認識と、図5(B)のスポット径1.0mmのレーザビームの散乱光強度分布とはほぼ一致している。
【0038】
図5(A)と図5(C)とを比較参照する。図5(C)に示す散乱光強度分布は、図5(A)に示す視覚で把握される表面むらに加重して、人間の視覚では認識することが困難な半導体薄膜の表面性状をも評価していることがわかる。このようにスポット径の小さいレーザビームを用いることによって、半導体薄膜の表面状態を高分解能、高精度で評価することができる。
【0039】
実施例による表面評価装置によれば、半導体薄膜に入射するレーザビームのビームスポットのサイズを変更することで、計測分解能を変化させることができる。たとえば計測分解能を高めるために、フォトディテクタ等の受光装置の分解能を高くする必要はない。また、ビームスポットサイズを大小させて計測分解能を変化させた場合でも、同じ方法で散乱光強度の分布を把握し、半導体薄膜表面の評価を行うことができる。たとえば図5(B)、(C)いずれの結果を得る場合にも、レーザビームを集光してアニール基板に照射しながら、アニール基板に対し一次元方向に走査すればよい。ビームスポットサイズを変更することにより、分解能及びむらのサイズに応じた測定が可能となる。
【0040】
上述の内容とも重複するが、実施例による表面評価装置を用いて、大略以下の表面評価方法が可能である。
【0041】
まず、半導体薄膜表面のむらのサイズや、所望の分解能(評価レベル)に応じた計測を可能にするビームスポットのサイズを決定する。
【0042】
そして青色の波長領域の光、たとえば波長473nmのレーザビームを評価対象物に集光して入射させ、レーザビームが一定の入射角で評価対象物の表面に入射するように、評価対象物をレーザビームに対して相対的に移動させながら、評価対象物表面で散乱された散乱光を検出し、その強度を計測して、評価対象物表面の評価を行う。
【0043】
また、次のような表面評価方法も可能である。
【0044】
まず、青色の波長領域の光、たとえば波長473nmのレーザビームを評価対象物に、たとえばビームスポットサイズが1.0mm径となるように集光して入射させ、レーザビームが一定の入射角で評価対象物の表面に入射するように、評価対象物をレーザビームに対して相対的に移動させながら、評価対象物表面で散乱された散乱光を検出し、その強度を計測して、評価対象物表面の評価を行う。
【0045】
次にビームスポットサイズを異ならせ、たとえばビームスポットサイズを0.1mm径として、同様の計測、評価を行う。
【0046】
異なるビームスポットサイズで得られた計測結果を参照し、多面的、多角的な表面の評価を行う。
【0047】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0048】
たとえば、実施例においては、レーザ光源10に、青色の波長領域、一例として波長473nmのレーザビーム30を出射する半導体レーザを用いたが、半導体レーザではなく、その他のレーザやLEDを使用してもよい。波長380nm〜500nmの光を出射し、その範囲以外の可視光領域の光を出射しない光源を使用することができる。たとえば波長500nmを超える緑色波長領域の光、一例としてNd:YAGレーザの2倍高調波(波長532nm)を使用した場合、半導体薄膜表面のむらに対応する散乱光のシグナルを、青色波長領域の光を使用した場合と比べて同等以上の強度及び検出効率で得ることは困難であろう。
【0049】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0050】
対象物の表面性状、たとえば表面の凹凸分布の計測に広く利用することができる。殊に、レーザアニールで多結晶化された半導体薄膜の表面状態の把握に好適に利用することができる。
【0051】
また、半導体薄膜を結晶化するレーザアニールにおいて、オンタイムで薄膜の表面状態を計測し、計測結果をレーザアニール加工にフィードバックするレーザアニール装置にも利用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 レーザ光源
11 可動レンズ
11a、11b 単レンズ
12 揺動ミラー
12a 揺動軸
13 XYステージ
14a、14b ビームダンパ
15 PINフォトダイオード
16 データロガー
17 PC
20 アニール基板
30 レーザビーム
30a 正反射光
30b 透過光
30c 散乱光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長380nm〜500nmの光を出射し、該範囲以外の可視光領域の光を出射しない光源と、
前記光源を出射した光を集光する集光光学系と、
前記集光光学系で集光された光の光路上に配置され、評価対象物を保持し、前記集光光学系で集光された光が前記評価対象物の表面に入射するように、前記評価対象物を移動させることのできるステージと、
前記集光光学系で集光された光が前記ステージに保持された評価対象物の表面に入射して生じる光のうち、正反射光と透過光とを除いた結像されない光の、ある立体角内へ散乱する分のパワーを計測する計測装置と
を有する半導体薄膜の表面評価装置。
【請求項2】
前記集光光学系は、前記光源を出射した光の光軸方向に移動可能なレンズを含み、前記ステージに保持された評価対象物の表面に入射する光のスポットサイズを変化させることができる請求項1に記載の半導体薄膜の表面評価装置。
【請求項3】
更に、
前記集光光学系で集光された光が前記ステージに保持された評価対象物の表面に入射して生じる正反射光の光路上に配置されるダンパと、
前記集光光学系で集光された光のうち、前記ステージに保持された評価対象物を透過する透過光の光路上に配置されるダンパと
を有する請求項1または2に記載の半導体薄膜の表面評価装置。
【請求項4】
前記光源が、レーザ発振器またはLEDを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体薄膜の表面評価装置。
【請求項5】
(a)波長380nm〜500nmの光であって、該範囲以外の可視光領域の光を含まない光を、第1のビームスポットサイズに集光して評価対象物表面に入射させながら、前記評価対象物を前記光に対して相対的に移動させる工程と、
(b)前記工程(a)で前記光が前記評価対象物表面に入射して生じる光のうち、正反射光と透過光とを除いた結像されない光の、ある立体角内へ散乱する分のパワーを計測する工程と
を有する半導体薄膜の表面評価方法。
【請求項6】
更に、
(c)波長380nm〜500nmの光であって、該範囲以外の可視光領域の光を含まない光を、前記第1のビームスポットサイズとは異なる第2のビームスポットサイズに集光して評価対象物表面に入射させながら、前記評価対象物を前記光に対して相対的に移動させる工程と、
(d)前記工程(c)で前記光が前記評価対象物表面に入射して生じる光のうち、正反射光と透過光とを除いた結像されない光の、ある立体角内へ散乱する分のパワーを計測する工程と
を有する請求項5に記載の半導体薄膜の表面評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−75517(P2011−75517A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230118(P2009−230118)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】