説明

表面金属膜材料、その作製方法、金属パターン材料、その作製方法、ポリマー層形成用組成物、及び新規ポリマー

【課題】熱衝撃耐性が高く、平滑な基板との密着性に優れる金属膜又は金属パターンを簡便な工程により形成しうる表面金属膜材料の作製方法、及び金属パターン材料の作製方法を提供すること。
【解決手段】(a1)基板上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有し、該基板に直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を形成する工程と、(a2)該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(a3)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする表面金属膜材料の作製方法、及び、該表面金属膜材料の作製方法で得られた金属膜をパターン状にエッチングする工程を有する金属パターン材料の作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面金属膜材料、その作製方法、金属パターン材料、その作製方法、ポリマー層形成用組成物、及び新規ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に形成された金属膜は、パターン状にエッチングされることで様々な電化製品に、配線などとして使用されている。基板上に形成された金属膜(金属基板)は、基板表面を凹凸処理してアンカー効果により基板と金属層との密着性向上を図っていた。その結果、形成された金属膜は、基板界面部が凹凸状となり、電気配線として使用する際には、高周波特性が悪くなるという問題点があった。更に、基板表面を凹凸処理するために、クロム酸などの強酸で基板を処理するという煩雑な工程が必要であり、改良が望まれていた。
【0003】
この問題を解決する為に、基板にモノマーを含む塗布液を塗布し、電子線やUV光を照射することにより、基板上に表面グラフトポリマーを導入し、無電解めっきにより金属膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば、基板表面に凹凸を形成することなく、金属膜を形成しうるが、グラフトポリマーの形成にあたっては、基板に液状のモノマーを塗布し、液状のモノマーが存在している状態で電子線やUV光を照射する工程を必要としており製造上のハンドリングが困難であることが予想される。また、ここでは、実際の基板表面の状態や、基板と金属層との密着性について詳細な検討は未だなされていなかった。
【0004】
また、基板上にグラフトポリマーを導入して基板と金属層との密着性を向上する手法に関しては、ポリイミド基板にプラズマ処理を行って、ポリイミド基板表面に重合開始基を導入し、この重合開始基からモノマーを重合させてグラフトポリマーを基板上に導入し、当該グラフトポリマー上に金属層(銅層)を形成することで、ポリイミド基板と銅層との密着性を改良する方法が開示されている(例えば、非特許文献1及び2参照。)。しかしながら、この方法では、プラズマ処理という大掛かりな処理が必要であり、処理には大きなエネルギーが必要であり、より簡便な方法が求められていた。
また、形成された金属層を用いて電気配線を形成する場合には、熱衝撃(ヒートサイクル試験)耐性が求められおり、用途の選択性を拡げるためにも、金属膜の基板に対する密着性と共に、熱衝撃耐性に優れる金属膜が望まれているのが現状である。
【特許文献1】特開昭58−196238号公報
【非特許文献1】En Tang Kang,Yan Zhang,”Advanced Materials”,20,p1481−p1494
【非特許文献2】N.Inagaki,S.Tasaka,M.Matsumoto,”Macromolecules”,29,p1642−p1648
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の欠点を考慮してなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の第1の目的は、熱衝撃耐性が高く、平滑な基板との密着性に優れる金属膜又は金属パターンを簡便な工程により形成しうる表面金属膜材料の作製方法、及び金属パターン材料の作製方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、熱衝撃耐性が高く、平滑な基板との密着性に優れる金属膜又は金属パターンを有する表面金属膜材料、及び金属パターン材料を提供することにある。
更に、本発明の第3の目的は、熱衝撃耐性が高く、平滑な基板との密着性に優れる金属膜又は金属パターンを形成する際に好適に用いられるポリマー層形成用組成物を提供することにある。
加えて、本発明の第4の目的は、前記ポリマー層形成用組成物に好適な新規ポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討の結果、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有し、基板と直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を形成し、該ポリマー層にめっきを行うことで、簡便、少エネルギー、かつ、容易に基板表面に、熱衝撃耐性が高い表面グラフトポリマーを導入でき、また、基板界面の凹凸が少ない場合であっても、密着性に優れた金属膜や、金属パターンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の表面金属膜材料の作製方法は、(a1)基板上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有し、該基板に直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を形成する工程と、(a2)該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(a3)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の表面金属膜材料の作製方法において、(a1)工程が、基板上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物を接触させた後、エネルギーを付与することにより、当該基板上に該化合物を直接化学結合させてポリマー層を形成する工程であることが好ましい。
また、本発明の表面金属膜材料の作製方法において、(a1)工程が、(a1−1)基材上に重合開始剤を含有する重合開始層が形成された基板を作製する工程と、(a1−2)該重合開始層上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物を接触させた後、エネルギーを付与することにより、当該重合開始層上に該化合物を直接化学結合させてポリマー層を形成する工程であることが好ましい態様である。
更に、(a1)工程で用いられるめっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物が、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有するポリマーであることが好ましい。
加えて、(a1−1)工程における重合開始層が、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを用いてなるものであることが好ましい。
【0009】
本発明の表面金属膜材料の作製方法では、(a2)工程において用いられるめっき触媒又はその前駆体が、無電解めっき触媒又はその前駆体であり、(a3)工程におけるめっきが無電解めっきにて行われることが好ましい。また、この無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
なお、このような(a3)工程の後、更に、乾燥工程を実施することができる。
【0010】
前述の(a1)〜(a3)工程の後に、形成されためっき膜を所望の領域をエッチングすることで金属パターンを有する金属パターンを有する金属パターン材料を形成することができる。
即ち、本発明の金属パターン材料の作製方法は、(b1)基板上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有し、該基板に直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を形成する工程と、(b2)該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(b3)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、(b4)該(b3)工程により形成されためっき膜をパターン状にエッチングする工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の金属パターン材料の作製方法において、前記(b1)工程が、基板上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物を接触させた後、エネルギーを付与することにより、当該基板上に該化合物を直接化学結合させてポリマー層を形成する工程であることが好ましい。
また、本発明の金属パターン材料の作製方法において、前記(b1)工程が、(b1−1)基材上に重合開始剤を含有する重合開始層が形成された基板を作製する工程と、(b1−2)該重合開始層上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物を接触させた後、エネルギーを付与することにより、当該重合開始層上に該化合物を直接化学結合させてポリマー層を形成する工程であることも好ましい態様である。
更に、(b1)工程で用いられるめっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物が、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有するポリマーであることが好ましい。
加えて、(b1−1)工程における重合開始層が、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを用いてなるものであることが好ましい。
【0012】
本発明において、ポリマー層を構成するポリマー中のメソゲン基が、以下の構造を有することが好ましい。なお、Aで表される環構造は、アルキル基、ハロゲン原子や、酸素原子、窒素原子などを含む官能基により置換されていてもよい。
【0013】
【化1】

【0014】
上記の方法により形成された金属膜、又は金属パターンは、基板との密着性が0.2kN/m以上であることが好ましく、更に、0.5kN/m以上であることがより好ましい。
また、本発明の表面金属膜材料の作製方法、本発明の金属パターン材料の作製方法には、表面の凹凸が500nm以下である基板が好適である。即ち、これらの方法によれば、表面の凹凸が小さい基板を用いた場合であっても、その基板との密着性に優れた金属膜、金属パターンを得ることができる。
また、基板の好ましい態様としては、1GHzにおける誘電正接が0.01以下である絶縁性樹脂からなる基板、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。また、基板の好ましい他の態様としては、1GHzにおける誘電率が3.5以下である絶縁性樹脂からなる基板、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板が挙げられる。
【0015】
本発明における基材とは、金属膜、又は金属パターンを形成するための支持部材となりうるポリイミドフィルム等の材料そのものを指す。
また、本発明における基板とは、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物が、その上に直接化学的に結合しうるものを指す。例えば、基材上に重合開始層等の中間層を設けて、その上にポリマー層やパターン状のポリマー層を形成する場合であれば、基板とは、基材及び該基材上に設けられた中間層(例えば、重合開始層)を包含したものを指し、また、基材上にポリマー層を直接生成する場合であれば、基板とは基材そのものを指す。
そのため、本発明においては、基板が、基材と該基材上に設けられた中間層とからなる場合、その中間層の表面の凹凸が500nm以下となることが好ましい。
【0016】
本発明の表面金属膜材料は、基板と、該基板表面に直接結合し、且つ、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有するポリマーからなるポリマー層と、該ポリマー層の内部及び上部に形成されためっき膜と、を有することを特徴とする。
この表面金属膜材料は、本発明の表面金属膜材料の作製方法により作製することができる。
本発明の表面金属膜材料における金属膜は、基板との密着性が0.2kN/m以上であることが好ましく、更に、0.5kN/m以上であることがより好ましい。
【0017】
本発明の金属パターン材料は、基板と、該基板表面に直接結合し、且つ、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有するポリマーからなるポリマー層と、該ポリマー層の内部及び上部に形成されたパターン状のめっき膜と、を有することを特徴とする。
この金属パターン材料は、本発明の金属パターン材料の作製方法により作製することができる。
【0018】
本発明の金属パターン材料における金属パターンは、基板との密着性が0.2kN/m以上であることが好ましく、更に、0.5kN/m以上であることがより好ましい。
【0019】
本発明のポリマー層形成用組成物は、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物と、該化合物を溶解しうる溶剤と、を含有することを特徴とする。ここで、溶剤としては、非プロトン系の溶剤を用いることが好ましい。
このポリマー層形成用組成物を用いることで、本発明におけるポリマー層を形成することができるため、金属膜や金属パターンを形成する際に好適である。
【0020】
本発明における他の金属パターン材料の作製方法は、(b1’)基板上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有し、該基板に直接化学結合したポリマーからなるポリマー層をパターン状に形成する工程と、(b2)該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(b3)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
つまり、この金属パターン材料の作製方法では、前述の本発明の表面金属膜材料の作製方法の(a1)工程に代えて、ポリマー層の形成を基板上の全面に行わず、所望のパターン状のポリマー層を形成する(b1’)工程を有する。
【0021】
本発明の第1の新規ポリマーは、下記式(1)で表されるユニット、下記式(2)で表されるユニット、及び下記式(3)で表されるユニットを含むポリマーである。この新規ポリマーは、本発明の表面金属膜材料の製造方法や、本発明の金属パターン材料の作製方法に用いられることが好ましい。
【化2】

【0022】
上記式(1)〜(3)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Y〜Yは、夫々独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。)を表し、L〜Lは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。また、Zは、チオエーテル基、フォスフィン基、イミダゾール基、水酸基、ピリジン基、アミノ基、ピロリドン基、シアノ基、エーテル基、又は不飽和エチレン基を表す。更に、Aは、環構造を表し、Xは、単結合、又は二価の連結基を表し、Rは、水素原子、置換若しくは無置換の、アルキル基、アルコキシカルボニル基、又はアリール基を表す。を表す。
中でも、Zとしては、シアノ基、又はエーテル基が好ましい。
【0023】
また、本発明の第2の新規ポリマーは、下記式(1)で表されるユニット、及び下記式(4)で表されるユニットを含むポリマーである。この新規ポリマーは、本発明の表面金属膜材料の製造方法や、本発明の金属パターン材料の作製方法に用いられることが好ましい。
【化3】

【0024】
上記式(1)及び(4)中、R、R、及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Y、Y、及びYは、夫々独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。)を表し、L、及びLは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。また、Aは、環構造を表し、Xは、単結合、又は二価の連結基を表し、Rは、チオエーテル基、フォスフィン基、イミダゾール基、水酸基、ピリジン基、アミノ基、ピロリドン基、シアノ基、エーテル基、不飽和エチレン基、又はそれらが置換されたアルキル基若しくはアリール基を表す。
中でも、Rとしては、シアノ基、又はシアノ基が置換されたアルキル基が好ましい。
【0025】
本発明の第3の新規ポリマーは、下記式(1)で表されるユニット、下記式(2)で表されるユニット、及び下記式(5−1)で表されるユニットを含むポリマーである。この新規ポリマーは、本発明の表面金属膜材料の製造方法や、本発明の金属パターン材料の作製方法に用いられることが好ましい。
【0026】
【化4】

【0027】
上記式(1)、(2)、及び(5−1)中、R〜R、及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Y〜Y、及びYは、夫々独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。)を表し、L、L、及びLは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。また、Zは、チオエーテル基、フォスフィン基、イミダゾール基、水酸基、ピリジン基、アミノ基、ピロリドン基、シアノ基、エーテル基、又は不飽和エチレン基を表す。更に、Bは、アルキル基、ヒドロキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はアルコキシ基を表す。
中でも、Zとしては、シアノ基、又はエーテル基が好ましい。
【0028】
本発明の第4の新規ポリマーは、下記式(1)で表されるユニット、下記式(2)で表されるユニット、及び下記式(5−2)で表されるユニットを含むポリマーである。この新規ポリマーは、本発明の表面金属膜材料の製造方法や、本発明の金属パターン材料の作製方法に用いられることが好ましい。
【0029】
【化5】

【0030】
上記式(1)、(2)、及び(5−2)中、R〜R、及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Y〜Y、及びYは、夫々独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。)を表し、L、L、及びLは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。また、Zは、チオエーテル基、フォスフィン基、イミダゾール基、水酸基、ピリジン基、アミノ基、ピロリドン基、シアノ基、エーテル基、又は不飽和エチレン基を表す。更に、B’は、酸素原子、硫黄原子、又は=NR’(R’は、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。)を表す。
中でも、Zとしては、シアノ基、又はエーテル基が好ましい。
【0031】
本発明の作用は明確でないが、以下のように推定される。
本発明において、ポリマー層の形成に用いられるポリマー中に存在するメソゲン基は、ポリマー分子間の相互作用を形成し易く、ポリマー層の熱膨張係数を低くすることができる。その結果、ポリマー層は熱による形態変化が少なく、ポリマー層に対しめっきを行うことで形成されためっき膜(金属膜)の熱衝撃耐性が向上するものと推測される。
また、本発明において、基板と金属膜又は金属パターンとの間には、基板に結合した、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有するポリマーからなるポリマー層が形成されていることから、基板と金属膜又は金属パターンとの界面では、前記ポリマー(ポリマー層)めっき膜とのハイブリッド状態が形成される。このため、基板表面が平滑であっても金属膜又は金属パターン(めっき膜)と基板との密着性が高いものと考えられる。
【0032】
また、本発明の表面金属膜材料の作製方法、金属パターン材料の作製方法において形成されるポリマー層は、ポリマー自体の高い運動性により、めっき液がポリマー層の内部に浸透し易いという利点を有する。そのため、めっき工程において、めっきがポリマー層内部や上部で進行し、該めっき膜と、基板に直接結合しているポリマー(ポリマー層)と、の間でハイブリッド状態が形成され易い。その結果、金属膜又は金属パターン(めっき膜)と基板との密着性の向上に寄与しているものと推測される。
【0033】
本発明の表面金属膜材料の作製方法、金属パターン材料の作製方法における好適な態様は、基材上に重合開始剤を含有する重合開始層を設けてなる基板を用いる態様である。このように、基材上に、重合開始剤を含有する重合開始層を設けてなる基板を用いることにより、UV光などの汎用的に使用されている露光源で照射するだけで、基板表面に発生するラジカル種の量が増加し、より多くのポリマーを基板に結合させることができる。
【0034】
更に、本発明の表面金属膜材料の作製方法、金属パターン材料の作製方法において、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有するポリマーを基板表面に塗布し、その表面全体に又は所望のパターン状にグラフトポリマーを生成させる場合には、基板にモノマー溶液を塗布しエネルギー付与する方法と比較して、モノマー溶液を塗布する場合に必要な、基板上に液状モノマーの厚みを均一に保持するという煩雑な工程を実施することなく、基板上に均一な固体状の塗膜として形成させてエネルギー付与することができるために、膜厚が均一なポリマー層を容易に形成することができ、その工程の簡易性から、大量生産も可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、熱衝撃耐性が高く、平滑な基板との密着性に優れる金属膜又は金属パターンを簡便な工程により形成しうる表面金属膜材料の作製方法、及び金属パターン材料の作製方法を提供することができる。
また、本発明によれば、熱衝撃耐性が高く、平滑な基板との密着性に優れる金属膜又は金属パターンを有する表面金属膜材料、及び金属パターン材料を提供することができる。
更に、本発明によれば、金属膜、金属パターンを形成する際に好適に用いられるポリマー層形成用組成物を提供することができる。
加えて、本発明によれば、前記ポリマー層形成用組成物に好適な新規ポリマーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
<表面金属膜材料の作製方法>
本発明の表面金属膜材料の作製方法は、
(a1)基板上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有し、該基板に直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を形成する工程と、
(a2)該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(a3)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を有することを特徴とする。
以下、上記(a1)〜(a3)の各工程について順次説明する。
【0037】
〔(a1)工程〕
(a1)工程では、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有し、該基板に直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を形成する。
本発明において、ポリマー層を形成するためには、一般的な表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いる。
【0038】
[グラフトポリマーの生成]
(表面グラフト)
一般に、グラフト重合とは、高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する化合物を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法である。中でも、特に、活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には、表面グラフト重合と呼ばれる。
【0039】
本発明に適用される表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、p135には表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695には、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法が記載されている。
光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。より多くの表面グラフトポリマーを生成する観点からは、光グラフト重合法が好ましく、簡便な装置で形成可能である点でUV光を用いるのが好ましい。
【0040】
本発明においては、ポリマー層を形成する手段として、具体的には、基板上にめっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物(以下、適宜、「特定重合性化合物」と称する。)を接触させた後、基板表面にエネルギー付与を行い、活性種(ラジカル)を発生させ、基板表面の活性種と特定重合性化合物の重合性基とを反応させる方法が用いられる。
このように、基板表面の活性種と特定重合性化合物の重合性基との間で表面グラフト重合反応が引き起こされることにより、本発明では、特定重合性化合物を用いて生成したグラフトポリマーによるポリマー層が形成される。
【0041】
[基板]
まず、本発明において用いられる基板について説明する。
本発明における基板とは、その表面に、特定重合性化合物が化学的に結合する機能を有する、つまり、グラフトポリマーが生成しうるものであり、基材自体がこのような表面特性を有するものであってもよく、また、該基材上に、別途中間層(例えば、重合開始層)を設け、該中間層がこのような特性を有するものであってもよい。
【0042】
本発明においては、上記の如く、基板表面に活性種を与え、それを起点として特定重合性化合物を重合させてグラフトポリマーを生成させるため、基材上に重合開始剤を含有する重合開始層を形成すること〔(a1−1)工程〕で得られた基板を用いることが、活性点を効率よく発生させ、より多くの表面グラフトポリマーを生成させるという観点から好ましい。
【0043】
(重合開始層)
重合開始層は、高分子化合物と重合開始剤とを含む層や、重合性化合物と重合開始剤とを含む層であることが好ましい。
本発明における重合開始層は、必要な成分を、溶解可能な溶媒に溶解し、塗布などの方法で基材表面に設け、加熱又は光照射により硬膜することで、形成することができる。
【0044】
本発明における重合開始層に用いられる化合物としては、基材との密着性が良好であり、且つ、活性光線照射などのエネルギー付与により、活性種を発生するものであれば特に制限なく用いることができる。具体的には、多官能モノマーや分子内に重合性基を有する疎水性ポリマーと、重合開始剤とを混合したものが用いることができる。
【0045】
このような分子内に重合性基を有する疎水性ポリマーとしては、具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリぺンタジエンなどのジエン系単独重合体、アリル(メタ)アクリレー卜、2−アリルオキシエチルメタクリレー卜などのアリル基含有モノマーの単独重合体;
ブタジエン、イソプレン、ペンタジエンなどのジエン系単量体又はアリル基含有モノマーを構成単位として含む、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルなどの二元又は多元共重合体;
不飽和ポリエステル、不飽和ポリエポキシド、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリル、高密度ポリエチレンなどの分子中に炭素−炭素二重結合を有する線状高分子又は3次元高分子類;などが挙げられる。
なお、本明細書では、「アクリル、メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある。
これらの重合性化合物の含有量は、重合性層中、固形分で10〜100質量%の範囲が好ましく、10〜80質量%の範囲が特に好ましい。
【0046】
重合開始層には、エネルギー付与により重合開始能を発現させるための重合開始剤を含有する。ここで用いられる重合開始剤は、所定のエネルギー、例えば、活性光線の照射、加熱、電子線の照射などにより、重合開始能を発現し得る公知の熱重合開始剤、光重合開始剤などを、目的に応じて、適宜選択して用いることができる。中でも、光重合を利用することが製造適性の観点から好適であり、このため、光重合開始剤を用いることが好ましい。
光重合開始剤は、照射される活性光線に対して活性であり、これを含む重合開始層から表面グラフト重合が可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などを用いることができるが、反応性の観点からはラジカル重合開始剤が好ましい。
【0047】
そのような光重合開始剤としては、具体的には、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン(4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、の如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類、などが挙げられる。
重合開始剤の含有量は、重合開始層中、固形分で0.1〜70質量%の範囲が好ましく、1〜40質量%の範囲が特に好ましい。
【0048】
上記重合性化合物及び重合開始剤を塗布する際に用いる溶媒は、それらの成分が溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテートなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
【0049】
重合開始層を基材上に形成する場合の塗布量は、十分な重合開始能の発現、及び、膜性を維持して膜剥がれを防止するといった観点からは、乾燥後の質量で、0.1〜20g/mが好ましく、更に、0.5〜15g/mが好ましい。
【0050】
本発明においては、上記のように、基材上に上記の重合開始層形成用の組成物を塗布などにより配置し、溶剤を除去することにより成膜させて重合開始層を形成するが、この時、加熱及び/又は光照射を行って硬膜することが好ましい。特に、加熱により乾燥した後、光照射を行って予備硬膜しておくと、重合性化合物のある程度の硬化が予め行なわれるので、重合開始層上にグラフトポリマーが生成した後に重合開始層ごと脱落するといった事態を効果的に抑制し得るため好ましい。
加熱温度と時間は、塗布溶剤が充分乾燥し得る条件を選択すればよいが、製造適正の点からは、温度が100℃以下、乾燥時間は30分以内が好ましく、乾燥温度40〜80℃、乾燥時間10分以内の範囲の加熱条件を選択することがより好ましい。
【0051】
加熱乾燥後に所望により行われる光照射は、後述するグラフトポリマーの生成反応に用いる光源を用いることができる。引き続き行われるグラフトポリマー生成工程において、エネルギー付与により発生する重合開始層の活性点と、グラフトポリマーの生成を阻害しないという観点からは、重合開始層中に存在する重合開始剤が重合性化合物を硬化する際にラジカル重合しても、完全に消費しない程度に光照射することが好ましい。光照射時間については、光源の強度により異なるが、一般的には30分以内であることが好ましい。このような予備硬化の目安としては、溶剤洗浄後の膜残存率が80%以下となり、且つ、予備硬化後の開始剤残存率が1%以上であることが、挙げられる。
【0052】
また、上記の重合性化合物及び重合開始剤を含有する重合開始層以外に、重合開始剤として、特開2004−161995公報に記載の重合開始基が側鎖にペンダントしてなるポリマーを用いた重合開始層も好ましい。このポリマーは、具体的には、側鎖に重合開始能を有する官能基(重合開始基)及び架橋性基を有するポリマー(以下、特定重合開始ポリマーと称する。)であり、このポリマーにより、ポリマー鎖に結合した重合開始基を有し、かつ、そのポリマー鎖が架橋反応により固定化された形態の重合開始層を形成することができる。
このようにして形成される重合開始層も、本願の重合開始層として好適である。
【0053】
ここで用いられる特定重合開始ポリマーは、特開2004−161995号公報の段落番号〔0011〕〜〔0158〕に記載にものが挙げられる。特定重合開始ポリマーの特に好ましいものの具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0054】
【化6】

【0055】
【化7】

【0056】
−重合開始層の成膜−
本発明における特定重合開始ポリマーを用いてなる重合開始層は、上述の特定重合開始ポリマーを適当な溶剤に溶解し、塗布液を調製し、その塗布液を基材上に塗布などにより配置し、溶剤を除去し、架橋反応が進行することにより成膜する。つまり、この架橋反応が進行することにより、特定重合開始ポリマーが固定化される。この架橋反応による固定化には、特定重合開始ポリマーの自己縮合反応を使用する方法、及び架橋剤を併用する方法があり、架橋剤を用いることが好ましい。特定重合開始ポリマーの自己縮合反応を使用する方法としては、例えば、架橋性基が−NCOである場合、熱をかけることにより自己縮合反応が進行する性質を利用したものである。この自己縮合反応が進行することにより、架橋構造を形成することができる。
【0057】
また、架橋剤を併用する方法に用いられる架橋剤としては、山下信二編「架橋剤ハンドブック」に掲載されているような従来公知のものを用いることができる。
特定重合開始ポリマー中の架橋性基と架橋剤との好ましい組み合わせとしては、(架橋性基,架橋剤)=(−COOH,多価アミン)、(−COOH,多価アジリジン)、(−COOH,多価イソシアネート)、(−COOH,多価エポキシ)、(−NH,多価イソシアネート)、(−NH,アルデヒド類)、(−NCO,多価アミン)、(−NCO,多価イソシアネート)、(−NCO,多価アルコール)、(−NCO,多価エポキシ)、(−OH,多価アルコール)、(−OH,多価ハロゲン化化合物)、(−OH,多価アミン)、(−OH,酸無水物)が挙げられる。中でも、架橋の後にウレタン結合が生成し、高い強度の架橋が形成可能であるという点で、(官能基,架橋剤)=(−OH,多価イソシアネート)が、更に好ましい組み合わせである。
【0058】
本発明における架橋剤の具体例としては、以下に示す構造のものが挙げられる。
【0059】
【化8】

【0060】
このような架橋剤は、重合開始層の成膜の際、上述の特定重合開始ポリマーを含有する塗布液に添加される。その後、塗膜の加熱乾燥時の熱により、架橋反応が進行し、強固な架橋構造を形成することができる。より詳細には、下記のex1.で示される脱水反応やex2.で示される付加反応により架橋反応が進行し、架橋構造が形成される。これらの反応における温度条件としては、50℃以上300℃以下が好ましく、更に好ましくは80℃以上200℃以下である。
【0061】
【化9】

【0062】
また、塗布液中の架橋剤の添加量としては、特定重合開始ポリマー中に導入されている架橋性基の量により変化するが、架橋度合や、未反応の架橋成分の残留による重合反応への影響の観点から、通常、架橋性基のモル数に対して0.01〜50当量であることが好ましく、0.01〜10当量であることがより好ましく、0.5〜3当量であることが更に好ましい。
【0063】
また、重合開始層を塗布する際に用いる溶媒は、上述の特定重合開始ポリマーが溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテートなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50重量%が適当である。
【0064】
特定重合開始ポリマーを用いてなる重合開始層の塗布量は、表面グラフト重合の開始能や、膜性の観点から、乾燥後の重量で、0.1〜20g/mが好ましく、更に、1〜15g/mが好ましい。
【0065】
(基材、基板)
本発明に使用される基材は、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂が好ましく、特に、ガラス繊維などを内部に含有しているもの(ガラエポ材料など)が好ましい。
なお、これらの基材上に特定重合性化合物が直接化学結合しうる場合には、これらの基材そのものを基板として用いてもよい。
【0066】
本発明において、特に上記のような重合開始層を用いずに、骨格中に重合開始部位を有するポリイミド(以下、適宜、特定ポリイミドと称する。)を含んでなる基板を用いることもできる。
このような骨格中に重合開始部位を有するポリイミドを含んでなる基板としては、特開2005−307140号公報の段落番号〔0018〕〜〔0078〕に記載のものを用いることができる。
この特定ポリイミドを含んでなる基板は、ポリイミド前駆体化合物の作製し、このポリイミド前駆体化合物を所望の基板形状に成形した後、加熱処理を施し、ポリイミド前駆体のポリイミド構造(特定ポリイミド)へ変化させることで作製することができる。
なお、この特定ポリイミドを用い、重合開始層を形成することもできる。その場合、基材上に、特定ポリイミドとなりうるポリイミド前駆体化合物を塗布した後、加熱処理を施すことで、重合開始層が形成される。
【0067】
上記のようにして作製される特定ポリイミドの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0068】
【化10】

【0069】
【化11】

【0070】
また、本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料(本発明の表面金属膜材料)は、形成された金属膜をエッチングによりパターン化することで、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を基板として用いることが好ましい。
絶縁性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル又は変性ポリフェニレンエーテル、シアネートエステル化合物、エポキシ化合物などの樹脂が挙げられる。これらの樹脂の1種以上を含む熱硬化性樹脂組成物により形成される基板が好ましく用いられる。これらの樹脂を2種以上組み合わせて樹脂組成物とする場合の好ましい組み合わせとしては、ポリフェニレンエーテル又は変性ポリフェニレンエーテルとシアネートエステル化合物、ポリフェニレンエーテル又は変性ポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物、ポリフェニレンエーテル又は変性ポリフェニレンエーテルとシアネートエステル化合物とエポキシ化合物などの組み合わせが挙げられる。
このような熱硬化性樹脂組成物により基板を形成する場合には、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムからなる群より選ばれる無機充填剤を含まないことが好ましく、また、臭素化合物又はリン化合物を更に含む熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい
【0071】
また、その他の絶縁性樹脂としては、1,2−ビス(ビニルフェニレン)エタン樹脂、若しくはこれとポリフェニレンエーテル樹脂との変性樹脂が挙げられる。このような樹脂については、例えば、天羽悟ら著,「Journal of Applied Polymer Science」第92巻、p1252−1258(2004年)に詳細に記載されている。
更に、クラレ製の「ベクスター」などの名称で市販品としても入手可能な液晶性ポリマーやポリ4フッ化エチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂なども好ましく挙げられる。
これらの樹脂のうち、フッ素樹脂(PTFE)は高分子材料の中で最も高周波特性に優れる。ただし、Tgが低い熱可塑性樹脂であるために熱に対する寸法安定性に乏しく、機械的強度なども熱硬化性樹脂材料に比べて劣る。また、形成性や加工性にも劣るという問題がある。また、ポリフェニレンエーテル(PPE)などの熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂などとのアロイ化を行なって用いることもできる。例えば、PPEとエポキシ樹脂、トリアリルイソシアネートとのアロイ化樹脂、或いは重合性官能基を導入したPPE樹脂とそのほかの熱硬化性樹脂とのアロイ化樹脂としても使用することができる。
エポキシ樹脂はそのままでは誘電特性が不充分であるが、かさ高い骨格の導入などで改善が図られており、このようにそれぞれの樹脂の特性を生かし、その欠点を補うような構造の導入、変性などを行った樹脂が好ましく用いられる。
例えば、シアネートエステルは熱硬化性の中ではもっとも誘電特性の優れる樹脂であるが、それ単独で使用されることは少なく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、熱可塑性樹脂などの変性樹脂として使用される。これらの詳細に関しては、「電子技術」、2002年第9号、p35に記載されており、これらの記載もまた、このような絶縁性樹脂を選択する上で参照することができる。
【0072】
本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料(本発明の表面金属膜材料)を、半導体パッケージ、各種電気配線用途等に適用する場合、大容量データを高速に処理するという観点で、信号の遅延と減衰とを抑制するためには、基板の誘電率及び誘電正接のそれぞれを、低くすることが有効である。低誘電正接材料については、「エレクトロニクス実装学会誌」第7巻、第5号、p397(2004年)に詳細に記載されている通りであり、特に、低誘電正接特性を有する絶縁性材料を採用することが高速化の観点から好ましい。
【0073】
このような用途に用いる場合の基板として、具体的には、1GHzにおける誘電率(比誘電率)が3.5以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。また、1GHzにおける誘電正接が0.01以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。
絶縁性樹脂の誘電率及び誘電正接は、常法により測定することができる。例えば、「第18回エレクトロニクス実装学会学術講演大会要旨集」、2004年、p189、に記載の方法に基づき、空洞共振器摂動法(例えば、極薄シート用εr、tanδ測定器、キーコム株式会社製)を用いて測定することができる。
このように、本発明においては誘電率や誘電正接の観点から絶縁樹脂材料を選択することも有用である。誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.01以下の絶縁性樹脂としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビス(ビスフェニレン)エタン樹脂などが挙げられ、更にそれらの変性樹脂も含まれる。
【0074】
本発明の表面金属膜材料の作製方法に適用される基板表面の凹凸は500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、最も好ましくは20nm以下である。この基板の表面の凹凸は、得られた金属膜を配線等として用いた場合に、表面凹凸が小さくなるほど高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
【0075】
本発明において、基板として、基材上に重合開始剤を含有する重合開始層が形成された〔(a1−1)工程〕ものを用いる場合、該重合開始層上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物を接触させた後、エネルギーを付与することにより、当該重合開始層に該化合物を直接化学結合させてポリマー層を形成する〔(a1−2)工程〕ことが好ましい態様である。
即ち、特定重合性化合物を重合開始層上に接触させた後、該重合開始層にエネルギー付与を行い、活性種(ラジカル)を発生させ、重合開始層表面と特定重合性化合物と重合反応させる方法が用いることが好ましい態様である。
【0076】
[めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物(特定重合性化合物)]
本発明において、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基(以下、適宜、「相互作用性基」と称する。)、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物としては、モノマー、マクロモノマー、ポリマーのいずれの形態あってもよく、中でも、ポリマー層の形成性と、制御の容易性の観点から、ポリマーを用いることが好ましい。
本発明におけるめっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基(相互作用性基)としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、それらの塩や4級アンモニウム塩、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、エーテル基、シアノ基などの官能基が挙げられる。
【0077】
(相互作用性基、重合性基、及びメソゲン基を有するポリマー)
特定重合性化合物の1つである、相互作用性基、重合性基、及びメソゲン基を有するポリマー(以下、適宜、「特定重合性ポリマー」と称する。)としては、相互作用性基を有するモノマーを1種以上と、メソゲン基を有するモノマーを1種以上と、用いて得られるコポリマーに重合性基を導入したもの、相互作用性基を有するモノマーを1種以上と、メソゲン基を有するモノマーを1種以上と、重合性基を有するモノマーと、を共重合したもの、相互作用性基及びメソゲン基を有するモノマーを1種以上用いて得られるホモポリマー又はコポリマーに重合性基を導入したものや、相互作用性基及びメソゲン基を有するモノマーを1種以上と、重合性基を有するモノマーと、を共重合したものが挙げられる。
導入する重合性基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基が挙げられる。
【0078】
このような本発明の特定重合性ポリマーを合成するために用いられる、相互作用性基を有するモノマーとしては、以下に示されるものが挙げられる。
即ち、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート若しくはその4級アンモニウム塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドンなどのカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、それらの塩や4級アンモニウム塩、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、エーテル基、シアノ基などの官能基を有するモノマーが挙げられる。
ただし、親水性官能基を多く有するポリマーを形成すると電気基板材料として使用する際に吸水率が上がってしまい電気絶縁性に懸念が生じる。そのため、吸水性は低いが相互作用性がある官能基として、エーテル基やシアノ基を有するモノマーを用いることが好ましい。これらのモノマーは、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
シアノ基を有するモノマーの例としては、シアノメチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、1−シアノエチル(メタ)アクリレート、4−シアノブチル(メタ)アクリレート、5−シアノペンチル(メタ)アクリレート、6−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、7−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、8−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル−(3−(ブロモメチル)アクリルレート)、2−シアノエチル−(3−(ヒドロキシメチル)アクリルレート)、p−シアノフェニル(メタ)アクリレート、o−シアノフェニル(メタ)アクリレート、m−シアノフェニル(メタ)アクリレート、5−(メタ)アクリロイル−2−カルボニトリロ−ノルボルネン、6−(メタ)アクリロイル−2−カルボニトリロ−ノルボルネン、1−シアノ−1−(メタ)アクリロイル−シクロヘキサン、1,1−ジメチル−1−シアノ−(メタ)アクリレート、1−ジメチル−1−エチル−1−シアノ−(メタ)アクリレート、o−シアノベンジル(メタ)アクリレート、m−シアノベンジル(メタ)アクリレート、p−シアノベンジル(メタ)アクリレート、1−シアノシクロヘプチルアクリレート、2−シアノフェニルアクリレート、3−シアノフェニルアクリレート、シアノ酢酸ビニル、1−シアノ−1−シクロプロパンカルボン酸ビニル、シアノ酢酸アリル、1−シアノ−1−シクロプロパンカルボン酸アリル、N,N−ジシアノメチル(メタ)アクリルアミド、N−シアノフェニル(メタ)アクリルアミド、アリルシアノメチルエーテル、アリル−o−シアノエチルエーテル、アリル−m−シアノベンジルエーテル、アリル−p−シアノベンジルエーテル等が挙げられる。
【0080】
次に、本発明の特定重合性ポリマーを合成するために用いられる、メソゲン基を有するモノマーについて説明する。
本発明において「メソゲン基」とは、サーモトロピック液晶層を形成する物質の中で、芳香環などの環が2環以上連結した構造の剛直性に富むユニットのことを意味する。このメソゲン基は、比較的低極性ではあるが分子間での相互作用性が高い。また、自由体積理論から、ポリマーのTgと熱膨張係数には反比例関係が生じることが知られている。これは、ポリマーが高Tgであると、低熱膨張係数であることを意味する。メソゲン基同士の高い相互作用性をポリマー分子中に導入することで、ポリマー分子内或いはポリマー分子間におけるポリマー側鎖間相互作用により、ポリマー側鎖の運動性が抑制され、更にポリマーのTgを向上させることが可能となる。そのため、このメソゲン基を有するポリマーからなるポリマー層は、低吸湿性で、且つ、熱膨張係数の低いものとなる。例えば、25℃−50%相対湿度環境下における飽和吸水率が5質量%以下、特に低吸湿性が要求される場合には、1質量%以下に制御することができる。また、熱膨張係数についても25℃〜100℃の熱膨張係数(α)が120ppm以下、特に低熱膨張係数が要求される場合には、80ppmに制御することもできる。
【0081】
本発明におけるメソゲン基としては、丸善より出版されている「液晶便覧」(液晶便覧編集委員会著)に記載されているメソゲンユニットを使用することができ、より具体的には、例えば、下記一般式(I)、一般式(II−1)、又は、一般式(II−2)で表される構造を有するものが挙げられる。
【0082】
【化12】

【0083】
上記一般式(I)中、Aは、環構造を表し、Xは、単結合、又は二価の連結基を表す。なお、複数存在するAは、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0084】
前記Aで表される環構造としては、芳香族環、脂肪族基、複素環基などの単環又は複環構造が挙げられる。
また、前記Xで表される二価の連結基としては、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2つ以上の元素が組み合わさって形成されるものが好ましく、具体的には、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、イミノ基(−C=N−)、アゾ基(−N=N−)などが好ましいものとして挙げられる。
【0085】
【化13】

【0086】
上記一般式(II−1)及び一般式(II−2)で表される構造を有する化合物は、ステロイド系化合物誘導体である。
上記一般式(II−1)中、Bは、アルキル基、ヒドロキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はアルコキシ基を表す。
【0087】
前記Bで表されるアルキル基は、直鎖または分岐アルキル基を指し、置換基を有していても無置換であってもよく、また、その鎖中に不飽和結合を有していてもよい。また、このアルキル基に導入される置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられ、例えば、カルボキシル基、ホルミル基、ヒドロキシル基、アミノ基等が挙げられる。
Bで表されるアルキル基のより具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、1,5−ジメチル−4−エチルヘキシル基、1,5−ジメチル−4−エチルヘキセニル基、ノニル基、デカニル基などが挙げられる。
【0088】
上記一般式(II−2)中、B’は、酸素原子、硫黄原子、又は=NR’(R’は、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。)を表す。
【0089】
ここで、本発明に用いられるメソゲン基は、特に制限はないが、具体例としては、前記一般式(I)で表される構造において、以下に示される「Aの具体例(1)〜(15)」と「Xの具体例(1)〜(11)」とを任意で組み合わせたものが挙げられる。
【0090】
【化14】

【0091】
上記の具体例の中で、Aで表される環構造としては、吸水率の観点から炭化水素のみからなる構造が好ましく、中でも、前記(1)、(2)、及び(5)で表される構造がより好ましく、特に、前記(1)で表される構造が最も好ましい。
また、Xとしては、吸水率の観点から、炭化水素、及び酸素のみからなる構造が好ましく、中でも、前記(1)、(2)、及び(11)で表される構造がより好ましく、(2)、及び(11)で表される構造が更に好ましく、特に、前記(11)で表される構造(単結合)が最も好ましい。
また、Aで表される環構造にはいかなる置換基を有していても問題はなく、前述した、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基(相互作用性基)を有していてもよい。
なお、Aで表される環構造の一方が分子の末端基になる場合には、一般式(I)において、「*」で表される結合手(Aの具体例では一方の結合手)には水素原子が結合することになる。
【0092】
また、本発明に用いられるメソゲン基の具体例としては、前記一般式(II−1)で表される構造においては、以下に示される「Bの具体例(1)〜(6)」を組み合わせたもの、また、一般式(II−2)で表される構造においては、以下に示される「B’の具体例(7)」を組み合わせたものが挙げられる。
なお、以下のB及びB’の具体例中、波線が付されている箇所は、前記一般式(II−1)又は一般式(II−2)との結合部位を示す。
【0093】
【化15】

【0094】
上記具体例の中では、原料入手の観点からは、前記一般式(II−1)で表される構造において、「Bの具体例(1)〜(6)」を組み合わせたもの、及び、一般式(II−2)で表される構造において、「B’の具体例(7)」を組み合わせたものが好ましく、疎水性の観点からは、前記一般式(II−1)で表される構造において、「Bの具体例(1)〜(3)」を組み合わせたものがより好ましい。
【0095】
前記一般式(I)、一般式(II−1)、又は、一般式(II−2)で表される構造を有するモノマーは、一般式中の「*」で表される結合手と、重合性不飽和結合と、の間に、以下に示す(1)〜(23)の基、又はこれらを組み合わせてなる連結基を有していることが好ましい。
なお、以下の基において、波線が付されている箇所は、前記一般式(II−1)又は一般式(II−2)中の「*」で表される結合手との結合部位を示す。
【0096】
【化16】

【0097】
このようなメソゲン基を有するモノマーとしては、以下に示されるものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
【化17】

【0099】
【化18】

【0100】
【化19】

【0101】
【化20】

【0102】
本発明における特定重合性ポリマーは、以下に示す合成方法を用いることで合成することができる。
合成方法としては、i)相互作用性基を有するモノマーとメソゲン基を有するモノマーと重合性基を特定位置に有するモノマーとを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマーとメソゲン基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基及びメソゲン基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。
上記3手法の中で好ましいのは、合成適性の観点から、ii)相互作用性基を有するモノマーとメソゲン基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基及びメソゲン基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0103】
前記i)の合成方法で用いられる重合性基を有するモノマーとしては、以下の化合物などが挙げられる。
【0104】
【化21】

【0105】
前記ii)の合成方法で用いられる二重結合前駆体を有するモノマーとしては下記式で表される化合物などが挙げられる。
【0106】
【化22】

【0107】
(上記式中、Aは重合性基を有する有機原子団、R〜Rは水素原子、及び/又は、1価の有機基、X、Zは脱離反応により除去される脱離基であり、ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりZが引き抜かれ、Xが脱離するものである。Xはアニオンとして、Zはカチオンとして脱離するものが好ましい。)
具体的には以下の化合物を挙げることができる。
【0108】
【化23】

【0109】
【化24】

【0110】
また、前記ii)の合成方法において、二重結合前駆体を二重結合に変換するには、下記に示すように、X、Zで表される脱離基を脱離反応により除去する方法、つまり、塩基の作用によりZを引き抜き、Xが脱離する反応を使用する。
【0111】
【化25】

【0112】
上記の脱離反応において用いられる塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミ化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。アルカリ金属類の水素化物、水酸化物、又は炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1、8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。金属アルコキシド化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。これらの塩基は、1種或いは2種以上の混合であってもよい。
【0113】
また、前記脱離反応において、塩基を付与(添加)する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独或いは2種以上混合してもよい。
【0114】
使用される塩基の量は、化合物中の特定官能基(X、Zで表される脱離基)の量に対して、当量以下であってもよく、また、当量以上であってもよい。また、過剰の塩基を使用した場合、脱離反応後、余剰の塩基を除去する目的で酸などを添加することも好ましい形態である。
【0115】
前記iii)の合成方法において、相互作用性基及びメソゲン基を有するポリマーと反応させる重合性基を有するモノマーとしては、相互作用性基及びメソゲン基を有するポリマー中の相互作用性基の種類によって異なるが、以下の組合せの官能基を有するモノマーを使用することができる。
即ち、(ポリマーの相互作用性基、モノマーの官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基,イソシアネート基)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)等を挙げることができる。
具体的には以下のモノマーを使用することができる。
【0116】
【化26】

【0117】
本発明における特定重合性ポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲において、相互作用性基を有するモノマー、メソゲン基を有するモノマー以外のモノマーを共重合性分として用いて、合成されてもよい。
なお、本発明における特定重合性ポリマーは、ポリマー分子間の相互作用性を向上させるために、該ポリマー分子中に、「メソゲン基」を有するユニットが20質量%以上含まれている事が好ましく、30質量%以上含んでいることがより好ましく、より好ましくは40質量%以上である。20質量%以下だと分子間相互作用が作用せず効果が低くなる。メソゲン基を有するユニットの量が増えるほど分子間相互作用がしやすくなり、効果を発揮しやすくなる。
また、特定重合性ポリマーは相互作用性基を有し、めっき触媒を吸着する機能が必要であり、この機能を発現させるために、相互作用性基を有するユニットが20質量%以上含まれていることが好ましく、30質量%以上含んでいることがより好ましく、より好ましくは40質量%以上である。20質量%以下だとめっき触媒吸着性が低く、ユニットの量が増えるほどメッキ触媒吸着性が高くなり好ましい。
【0118】
本発明における特定重合性ポリマーの最も好ましいものの1つとして、下記式(1)〜式(3)で表されるユニットを含むポリマー(本発明の第1の新規ポリマー)を挙げることができる。
【0119】
【化27】

【0120】
上記式(1)〜(3)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Y〜Yは、夫々独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。)を表し、L〜Lは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の連結基を表す。また、Zは、チオエーテル基、フォスフィン基、イミダゾール基、水酸基、ピリジン基、アミノ基、ピロリドン基、シアノ基、エーテル基、又は不飽和エチレン基を表す。更に、Aは、環構造を表し、Xは、単結合、又は二価の連結基を表し、Rは、水素原子、置換若しくは無置換の、アルキル基、アルコキシカルボニル基、又はアリール基を表す。
【0121】
本発明の第1の新規ポリマーにおいて、式(1)で表されるユニットの含有量としては、1mol%〜40mol%であることが好ましく、より好ましくは5mol%〜30mol%である。また、式(2)で表されるユニットの含有量としては、5mol%〜80mol%であることが好ましく、より好ましくは10mol%〜60mol%である。更に、式(3)で表されるユニットの含有量は、5mol%〜80mol%であることが好ましく、より好ましくは10mol%〜60mol%である。
【0122】
本発明における特定重合性ポリマーの最も好ましいものの1つとして、下記式(1)、及び式(4)で表されるユニットを含むポリマー(本発明の第2の新規ポリマー)も挙げることができる。
【0123】
【化28】

【0124】
上記式(1)及び(4)中、R、R、及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Y、Y、及びYは、夫々独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。)を表し、L、及びLは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。また、Aは、環構造を表し、Xは、単結合、又は二価の連結基を表し、Rは、チオエーテル基、フォスフィン基、イミダゾール基、水酸基、ピリジン基、アミノ基、ピロリドン基、シアノ基、エーテル基、不飽和エチレン基、又はそれらが置換されたアルキル基若しくはアリール基を表す。
【0125】
本発明の第2の新規ポリマーにおいて、式(1)で表されるユニットの含有量としては、1mol%〜40mol%であることが好ましく、より好ましくは5mol%〜30mol%である。また、式(4)で表されるユニットの含有量としては、20mol%〜90mol%であることが好ましく、より好ましくは30mol%〜90mol%である。
なお、本発明の第2の新規ポリマーは、前記式(2)で表されるユニットを含んで構成されていてもよい。その場合、この前記式(2)で表されるユニットの含有量は、5mol%〜80mol%であることが好ましく、より好ましくは10mol%〜60mol%である。
【0126】
本発明における特定重合性ポリマーの最も好ましいものの1つとして、下記式(1)、式(2)、及び式(5−1)で表されるユニットを含むポリマー(本発明の第3の新規ポリマー)を挙げることができる。
【0127】
【化29】

【0128】
上記式(1)、(2)、及び(5−1)中、R〜R、及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Y〜Y、及びYは、夫々独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。)を表し、L、L、及びLは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の連結基を表す。また、Zは、チオエーテル基、フォスフィン基、イミダゾール基、水酸基、ピリジン基、アミノ基、ピロリドン基、シアノ基、エーテル基、又は不飽和エチレン基を表す。更に、Bは、アルキル基、ヒドロキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はアルコキシ基を表す。
【0129】
本発明における特定重合性ポリマーの最も好ましいものの1つとして、下記式(1)、式(2)、及び式(5−2)で表されるユニットを含むポリマー(本発明の第4の新規ポリマー)を挙げることができる。
【0130】
【化30】

【0131】
上記式(1)、(2)、及び(5−2)中、R〜R、及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Y〜Y、及びYは、夫々独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。)を表し、L、L、及びLは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の連結基を表す。また、Zは、チオエーテル基、フォスフィン基、イミダゾール基、水酸基、ピリジン基、アミノ基、ピロリドン基、シアノ基、エーテル基、又は不飽和エチレン基を表す。更に、B’は、酸素原子、硫黄原子、又は=NR’(R’は、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。)を表す。
【0132】
本発明の第3及び第4の新規ポリマーにおいて、式(1)で表されるユニットの含有量としては、1mol%〜40mol%であることが好ましく、より好ましくは5mol%〜30mol%である。また、式(2)で表されるユニットの含有量としては、5mol%〜80mol%であることが好ましく、より好ましくは10mol%〜60mol%である。更に、式(5−1)又は式(5−2)で表されるユニットの含有量は、5mol%〜80mol%であることが好ましく、より好ましくは10mol%〜60mol%である。
【0133】
式(1)、(2)、(3)、(4)、(5−1)、及び(5−2)で表されるユニットにおいて、以下の態様であることが好ましい。
〜R、R、及びRとしては、水素原子、又はメチル基が好ましい。
〜Yとしては、酸素原子が好ましい。
が置換若しくは無置換の二価の有機基である場合、該二価の有機基としては、飽和脂肪族炭素基、不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を含むものが挙げられ、好ましくは、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、総炭素数1〜9であるものが好ましい。また、−(CH−(nは1〜5の整数)で表される有機基も好ましい。
が置換若しくは無置換の二価の有機基である場合、該二価の有機基としては、飽和脂肪族炭素基、不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基を含むものが挙げられ、好ましくは、−(CH−(nは1〜5の整数)で表され、更に好ましくは、−CH−、−(CH−、−(CH−で表される二価の有機基である。
〜Lが置換若しくは無置換の二価の有機基である場合、該二価の有機基としては、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子から選ばれる原子を組み合わせてなる二価の有機基が挙げられ、好ましくは、−(CH−(nは1〜5の整数)、−(CH−CH−O)−(nは1〜3の整数)である。また、Lとしては単結合も好ましい。
としては、水素原子、又は、総炭素数1〜5の置換若しくは無置換のアルキル基が好ましい。
としては、シアノ基、又はシアノ基が置換されたアルキル基が好ましい。
Zとしては、シアノ基、又はエーテル基が好ましい。
A及びXは、前記一般式(I)におけるA及びXと同義であり、好ましい例(具体例)も同様である。
Bは前記一般式(II−1)におけるBと、また、B’前記一般式(II−2)におけるB’と、それぞれ同義であり、好ましい例(具体例)も同様である。
【0134】
以下、本発明における特定重合性ポリマーとして好適なもの(本発明の新規ポリマー)の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下に示す本発明の新規ポリマーの具体例の重量平均分子量は、いずれも、5000〜300000の範囲である。
【0135】
【化31】

【0136】
【化32】

【0137】
【化33】

【0138】
【化34】

【0139】
【化35】

【0140】
本発明の新規ポリマーの合成方法は重合性基部分の構造により異なるが、前述の特定重合性ポリマーの合成方法を適用することができる。なお、他のユニットに関しては共重合させることで、本発明の新規ポリマーを合成することができる。
【0141】
例えば、500ml三口フラスコにN−メチルピロリドン:35gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱し、2−ヒドロキシエチルアクリレート:2.32g、2−シアノエチルアクリレート:11.26g、ジフェニルアクリレート:20.2g、V−601(和光純薬製):0.0921gのN−メチルピロリドン:35g溶液を、2.5時間かけて滴下し、滴下終了後、80℃まで加熱し、更に3時間撹拌する。その後、室温まで、反応溶液を冷却し、ジターシャリーブチルハイドロキノン:0.16g、U−600(日東化成製):0.4g、カレンズAOI(昭和電工(株)製):12.25g、N−メチルピロリドン:12.25gを加え、55℃、6時間反応を行い、その後、反応溶液にメタノールを2.05g加え、更に1.5時間反応を行うことで、前記構造のポリマー(7)が生成する。
【0142】
300ml三口ナスフラスコに、N−メチルピロリドン:16gを入れ、窒素気流下、80℃まで加熱し、2−ヒドロキシエチルメタクリレート:2.08g、2−シアノエチルメタクリレート:4.45g、ジフェニルメタクリレート:7.62g、V−601(和光純薬製):0.184gのN−メチルピロリドン:16g溶液を、4時間かけて滴下し、滴下終了後、更に3時間撹拌する。その後、室温まで反応溶液を冷却し、ジターシャリーブチルハイドロキノン:0.16g、U−600(日東化成製):0.31g、カレンズAOI (昭和電工(株)製):9.31g、N−メチルピロリドン:24gを加え、55℃、6時間反応を行い、その後、反応溶液にメタノールを2.05g加え、更に1.5時間反応を行うことで、前記構造のポリマー(13)が生成する。
【0143】
300ml三口ナスフラスコに、トルエン:13gを入れ、窒素気流下、80℃まで加熱し、2−ヒドロキシエチルメタクリレート:1.30g、2−シアノエチルメタクリレート:2.78g、コレステロールメタクリレート:9.09g、V−601(和光純薬製):0.115gのトルエン:13g溶液を、4時間かけて滴下し、滴下終了後、更に3時間撹拌する。その後、室温まで反応溶液を冷却し、ジターシャリーブチルハイドロキノン:0.16g、U−600(日東化成製):0.31g、カレンズAOI(昭和電工(株)製):9.11g、トルエン:26gを加え、55℃、6時間反応を行った。その後、反応溶液にメタノールを2.05g加え、更に1.5時間反応を行うことで、前記構造のポリマー(15)が生成する。
【0144】
前述の本発明の新規ポリマーを含む特定重合性ポリマーの分子量(Mw)としては、3000〜30万が好ましく、3000〜20万がより好ましく、4000から10万が更に好ましい。
合成された特定重合性ポリマーの構造はH−NMRにて、また、分子量はポリスチレンを標準物質として用いてGPCにより解析を行えばよい。
【0145】
(相互作用性基、重合性基、及びメソゲン基を有するモノマー、又はマクロモノマー)
また、本発明における特定重合性化合物は、上述のような特定重合性ポリマー以外にも、モノマーやマクロモノマーが用いられる。
特定重合性化合物の一つであるモノマーは、分子内に、相互作用性基、重合性基、及びメソゲン基が存在しているものであれば、特に制限はなく、前述の特定重合性ポリマーを合成する際に用いられるモノマーのうち、これに該当するものが好ましいものとして挙げられる。
また、特定重合性化合物の一つであるマクロモノマーは、分子内に、相互作用性基、重合性基、及びメソゲン基が存在しているものであれば、特に制限はない。
【0146】
本発明における特定重合性化合物を基板(重合開始層)に接触させる方法としては、任意の方法で行うことができるが、具体的には、特定重合性化合物を含有する液状組成物中に基板を浸漬する方法や、特定重合性化合物を含有する液状組成物を基板(重合開始層)上に塗布する方法が挙げられる。
また、取り扱い性や製造効率の観点からは、特定重合性化合物を含有する液状組成物を基板(重合開始層)上に塗布・乾燥させて、グラフトポリマー前駆体層を形成する態様が好ましい。
また、グラフトポリマー前駆体層の塗布量は、十分なめっき触媒又はその前駆体との相互作用性、及び、均一な塗布膜を得る観点からは、固形分換算で0.1〜10g/mが好ましく、特に0.5〜5g/mが好ましい。
【0147】
上記のように、本発明におけるポリマー層を形成するためには、特定重合性化合物を含有する液状組成物、即ち、本発明のポリマー層形成用組成物を用いることが好ましい。この本発明のポリマー層形成用組成物は、特定重合性化合物と、特定重合性化合物を溶解しうる溶剤と、を含有するものである。
特定重合性化合物を溶解しうる溶剤としては、例えば、非プロトン性の溶剤が好ましく、例えば、酢酸の如き酸、アセトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、NMP(N−メチルピロリドン)の如きアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピオンニトリルの如きニトリル系溶剤などが挙げられる。
【0148】
また、本発明のポリマー層形成用組成物には、必要に応じて、界面活性剤を添加してもよい。使用可能な界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0149】
[エネルギー付与]
基板(重合開始層)へのエネルギー付与方法としては、重合開始パート(部位)にもよるが、例えば、加熱や露光等の輻射線照射を用いることができる。例えば、UVランプ、可視光線などによる光照射、ホットプレートなどでの加熱等が可能である。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。また、g線、i線も使用される。エネルギー付与に要する時間としては、目的とするグラフトポリマーの生成量及び光源により異なるが、通常、10秒〜10分の間である。
【0150】
[特定重合性ポリマー中の重合性基の反応率の制御]
本発明においては、上記記載のエネルギー付与により、特定重合性ポリマー中の重合性基同士が反応し、架橋構造が形成される。その架橋度が異なることで、ポリマー層の物性(特に、膜Tgや線膨張係数)が変化するため、特定重合性ポリマー中の重合性基の反応率を制御する必要がある。重合性基の反応率は、例えば、光照射時間或いはエネルギー付与後の加熱(後加熱)等により制御可能である。重合性基の反応率制御に要する時間としては、光源、加熱機器及び目的とする架橋度により異なるが、通常、光照射では10秒〜10分、後加熱では140℃〜200℃で1分〜90分の間が好ましい。なお、後加熱は、(a3)工程のめっき後の乾燥工程と兼ねることもできる。
【0151】
以上説明した(a1)工程により、基板上に特定重合性化合物を用いてなるグラフトポリマーが生成し、ポリマー層を形成することができる。
【0152】
〔(a2)工程〕
(a2)工程においては、前記(a1)工程により形成されたポリマー層に、より具体的には、ポリマー層中の相互作用性基に、めっき触媒又はその前駆体が付与される。
ここで、めっき触媒又はその前駆体としては、後述する(a3)工程におけるめっきの触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒又はその前駆体は、(a3)工程におけるめっきの種類により決定される。
なお、ここで、本工程において用いられるめっき触媒又はその前駆体は、無電解めっき触媒又はその前駆体であることが好ましい。
【0153】
(無電解めっき触媒)
本工程において用いられる無電解めっき触媒とは、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。これらを相互作用性基に固定する手法としては、例えば、ポリマー層中の相互作用性基と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、ポリマー層に適用する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように荷電を調節した金属コロイドを、ポリマー層中の相互作用性基と相互作用させると、相互作用性基は主に極性基である為に、ポリマー層に選択的に金属コロイド(無電解めっき触媒)を吸着させることができる。
【0154】
(無電解めっき触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、ポリマー層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0155】
実際には、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩の状態でポリマー層上に付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCln、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
【0156】
無電解めっき触媒である金属コロイド、或いは、無電解めっき前駆体である金属塩をポリマー層に付与する方法としては、金属コロイドを適当な分散媒に分散、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その溶液をポリマー層上に塗布するか、或いは、その溶液中にポリマー層が形成された基板を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、ポリマー層中の相互作用性基に、イオン−イオン相互作用、又は、双極子−イオン相互作用を利用して金属イオンを吸着させること、或いは、ポリマー層中に金属イオンを含浸させることができる。このような吸着又は含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液中の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は、0.01〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、1分〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0157】
(その他の触媒)
本発明において、後述の(a3)工程において、ポリマー層に対して、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、特に、Pd、Ag、Cuが、その取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。
0価金属を、ポリマー層の相互作用性基に固定する手法としては、例えば、ポリマー層中の相互作用性基と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、ポリマー層に適用する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように荷電を調節した金属コロイドを、ポリマー層中の相互作用性基と相互作用させると、相互作用性基は主に極性基であるために、ポリマー層に選択的に金属コロイド(めっき触媒)を吸着させることができる。
【0158】
以上説明した(a2)工程を経ることで、ポリマー層中の相互作用性基とめっき触媒又はその前駆体との間に相互作用を形成することができる。
【0159】
〔(a3)工程〕
(a3)工程では、無電解めっき触媒又はその前駆体が付与されたポリマー層に対し、めっきを行うことで、金属膜を形成する。形成された金属膜は、優れた導電性、密着性を有する。
本工程において行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、前記(a2)工程において、ポリマー層との間に相互作用を形成しためっき触媒又はその前駆体の機能によって、選択することができる。
つまり、本工程では、めっき触媒又はその前駆体が付与されたポリマー層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
その中でも、本発明においては、ポリマー層中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき膜を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
【0160】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体がポリマー層に吸着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
【0161】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0162】
このようにして形成される金属膜の膜厚は、めっき浴の金属塩又は金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0163】
以上のようにして得られた金属膜は、SEMによる断面観察により、ポリマー層中に無電解めっき触媒やめっき金属からなる微粒子が確認され、更にポリマー層上にめっき金属が析出していることが確認された。基板と金属膜(めっき膜)との界面は、ポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板(有機成分)と無機物(無電解めっき触媒又はめっき金属)との界面の凹凸差が500nm以下であっても、密着性が良好であった。この断面状況の詳細は、前述の本発明の金属膜の説明において詳述した通りである。
【0164】
(電気めっき)
本工程おいては、(a2)工程において付与されためっき触媒又はその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒又はその前駆体が付与されたポリマー層に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成された金属膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた金属膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0165】
本発明における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0166】
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0167】
〔乾燥工程〕
本発明においては、前記(a3)工程を行うことで、ポリマー層上にめっき膜が形成された後、乾燥工程を行うことが密着性向上の観点から好ましい。
【0168】
乾燥工程における乾燥処理は如何なる手段であってもよく、具体的には、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥、送風乾燥などの手段により行うことができる。これらの中でも、乾燥に起因するポリマー層の変質を抑制するという観点からは、常温又はその近傍の温度条件で乾燥処理を行うことが好ましい。具体的には、前記(a3)工程終了後に、金属膜形成後の材料を、常温下に保存する自然乾燥、常温条件下での減圧乾燥、及び常温送風乾燥の各乾燥処理が好ましい。
加温を行うことなく水分を可能な限り除去するという観点からは、これらの乾燥処理を、1時間以上、更には24時間以上実施することが好ましい。乾燥処理条件は、必要とされる密着性などを考慮して適宜選択すればよいが、具体的には、金属膜形成後の材料を、例えば、25℃前後の温度雰囲気下で1〜3日程度、1〜3週間程度、或いは、1〜2ヶ月程度保存して乾燥する方法、通常の真空乾燥機による減圧下に1〜3日程度、或いは、1〜3週間程度、保存して乾燥する方法、また、100〜170℃で10分〜3時間加熱する方法等が挙げられる。
【0169】
このような乾燥処理を行うことにより、基板と金属膜との密着性が向上する作用は明確ではないが、充分な乾燥を行うことにより、密着性を低下させる要因である水分が金属膜とポリマー層との界面に保持されるのを防ぐことで、水分に起因する密着性の低下を抑制しうるものと推定している。
また、乾燥中における銅等からなる金属膜表面の酸化防止のために、乾燥工程の前に、酸化防止剤を金属膜表面に塗布することが好ましい。酸化防止剤としては、一般的に使用されるものが適用でき、例えば、アジミドベンゼン等が使用できる。
【0170】
<金属パターン材料の作製方法>
本発明の金属パターン材料の作製方法は、(b1)基板上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有し、該基板に直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を形成する工程と、(b2)該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(b3)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、(b4)該(b3)工程により形成されためっき膜をパターン状にエッチングする工程と、を有することを特徴とする。つまり、本発明の表面金属膜材料の作製方法の(a1)〜(a3)工程を経ることで得られた金属膜(めっき膜)を、パターン状にエッチングすることを特徴とする。
【0171】
ここで、本発明の金属パターン材料の作製方法における(b1)工程、(b2)工程、及び(b3)工程は、本発明の表面金属膜材料の作製方法における(a1)工程、(a2)工程、及び(a3)工程とそれぞれ同様であり、好ましい態様も同様であるため、ここでは、説明を省略する。
また、本発明の金属パターン材料の作製方法においても、本発明の表面金属膜材料の作製方法と同様に、(b3)工程後、乾燥工程を施すこともできる。この乾燥工程も、本発明の表面金属膜材料の作製方法における乾燥工程と同様の方法で行われるため、ここでは、説明を省略する。
以下、(b4)工程について説明する。
【0172】
〔(b4)〕
(b4)工程では、(b1)〜(b3)工程を経ることにより得られた金属膜(めっき膜)の不要部分をエッチングで取り除くことで、金属パターンが形成される。
(b1)工程におけるエッチング法には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディティブ法が用いられる。
【0173】
サブトラクティブ法とは、金属膜(めっき膜)上にドライフィルムレジスト層を設けパターン露光、現像により金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとしてエッチング液で金属膜を除去し、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、湿式エッチングが、装置などが簡便で好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
【0174】
セミアディティブ法とは、金属膜(めっき膜)上にドライフィルムレジスト層を設けパターン露光、現像により非金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジソトパターンをマスクとして電気めっきを行い、ドライフィルムレジソトパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、金属膜をパターン状に除去することで、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジソト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電気めっき手法としては前記(a3)工程に記載の手法が使用できる。
【0175】
以上のように、本発明の表面金属膜材料の作製方法、及び、本発明の金属パターン材料の作製方法によれば、基板に直接結合したポリマーからなるポリマー層との間にハイブリット状態でめっき膜(金属膜、金属パターン)が形成されていることから、基板とめっき膜(金属膜、金属パターン)との密着性が高い。
また、ポリマー層を構成するポリマーがメソゲン基を有することから、ポリマー分子間の相互作用が形成され、その結果、熱衝撃耐性に優れた金属膜、及び金属パターンを得ることができる。
更に、平滑性の高い基板を用いることができることから、導電材料として用いた場合、高周波特性に優れるため、その応用範囲は広い。ここで、高周波特性とは、特に、伝送損失が低くなる特性であり、更には、伝送損失の中でも導体損失が低くなる特性である。
【0176】
<他の金属パターン材料の作製方法>
本発明においては、前述の本発明の金属パターン材料の作製方法以外にも、以下の好適な態様がある。
本発明における他の金属パターン材料の作製方法は、(b1’)基板上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有し、該基板に直接化学結合したポリマーからなるポリマー層をパターン状に形成する工程と、(b2)該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(b3)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
つまり、この金属パターン材料の作製方法では、前述の本発明の表面金属膜材料の作製方法の(a1)工程に代えて、ポリマー層の形成を基板上の全面に行わず、所望のパターン状のポリマー層を形成する(b1’)工程を有する。
【0177】
他の金属パターン材料の作製方法における(b1’)工程では、パターン状のポリマー層を形成するために、基板上に特定重合性ポリマーを接触させた後、基板表面に対しパターン状にエネルギー付与を行い、活性種(ラジカル)を部分的に発生させ、基板表面の活性種と特定重合性ポリマーの重合性基とを反応させる方法が用いられる。
このように、基板表面に部分的に発生した活性種と特定重合性化合物の重合性基との間で表面グラフト重合反応が引き起こされることにより、この工程では、特定重合性化合物を用いて生成したグラフトポリマーによるポリマー層がパターン状に形成される。
【0178】
この(b1’)工程において、パターン状にエネルギーを付与する方法としては、紫外線や可視光線などを用いた走査露光や、所定のマスクパターンを介した全面露光を適用することができる。
エネルギー付与に要する時間としては、目的とするグラフトポリマーの生成量及び光源により異なるが、通常、10秒〜10分の間である。
このように、基板(重合開始層)に対してパターン状のエネルギー付与を行うことで、特定重合性化合物を用いたグラフトポリマーが基板表面のエネルギー付与された領域にのみ生成し、パターン状のポリマー層が形成される。
【0179】
他の金属パターン材料の作製方法における(b1’)工程は、上記のようにパターン状のエネルギー付与を行う点のみが異なるが、それ以外の方法、それに用いられる特定重合性ポリマーや基板については、本発明の表面金属膜材料の作製方法と同様であるため、ここでは、説明を省略する。
また、(b2)工程、及び(b3)工程についても、本発明の表面金属膜材料の作製方法における(a2)工程、及び(a3)工程と同様の方法で行われるため、ここでは、説明を省略する。
また、他の金属パターン材料の作製方法においても、本発明の表面金属膜材料の作製方法と同様に、めっき膜形成後、乾燥工程を施すこともできる。この乾燥工程も、本発明の表面金属膜材料の作製方法における乾燥工程と同様の方法で行われるため、ここでは、説明を省略する。
【0180】
このような他の金属パターン材料の作製方法の効果として、前述の本発明の表面金属膜材料、及び、本発明の金属パターン材料の作製方法で挙げられた効果以外に、以下のように点が挙げられる。
即ち、他の金属パターン材料の作製方法によれば、本発明の金属パターン材料の作製方法のようにめっき膜をエッチングする必要がないため、そのエッチングによる金属パターンのにじみやかすれ、断線等の懸念がなく、例えば、線幅30μm以下である微細な金属パターンを形成することができる。また、エッチングにより生じる金属廃液処理の問題も生じないため、環境や価格面においても優れるものである。
【0181】
−具体的な態様−
ここで、他の金属パターン材料の作製方法の具体的な態様について説明する。
ポリイミド基板の上に、ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート825(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)5g、大日本インキ化学工業(株)製フェノライトLA−7052(トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂のMEKワニス)2g、東都化成(株)製、YP−50EK35(フェノキシ樹脂MEKワニス)10.7g、2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン2.3g、MEK5.3g、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール0.053gの溶液を塗布して、170℃で30分間乾燥する。その上に、化合物1(下記構造)をアセトンで溶解した溶液を、塗布・乾燥させ、続いて、フォトマスクを用いて1.5kW高圧水銀灯を用いて1分露光を行う。その後、露光されたポリイミド基板をアセトンに30分浸漬する。
これにより、ポリイミド基板の所定の領域にのみグラフトポリマーが生成し、パターン状のポリマー層が形成される。
【0182】
【化36】

【0183】
その後、パターン状のポリマー層が形成された基板を、硝酸パラジウムの1%アセトン溶液に5分浸漬した後に、アセトンで洗浄し、無電解メッキ液(蒸留水:859g、メタノール:850g、硫酸銅:18.1g、エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム塩:54.0g、ポリオキシエチレングリコール(分子量1000):0.18g、2,2’ビピリジル:1.8mg、10%エチレンジアミン水溶液:7.1g、37%ホルムアルデヒド水溶液:9.8g)に浸漬することで、めっきパターンが形成される。
形成されためっきパターンに対しては、本発明の金属パターン材料の作製方法と同様に、電気めっきと更に施してもよいし、乾燥工程を施すこともできる。
【0184】
<表面金属膜材料、金属パターン材料>
本発明の表面金属膜材料は、基板と、該基板表面に直接結合し、且つ、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有するポリマーからなるポリマー層と、該ポリマー層の内部及び上部に形成されためっき膜と、を有することを特徴とする。
このように、基板に結合したポリマーからなるポリマー層の内部及び上部にめっき膜が形成されているため、該めっき膜からなる金属膜は、基板との密着性に優れるという優れた効果を有する。
【0185】
また、本発明の金属パターン材料は、基板と、該基板表面に直接結合し、且つ、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有するポリマーからなるポリマー層と、該ポリマー層の内部及び上部に形成されたパターン状のめっき膜と、を有することを特徴とする。
更に、前述の他の金属パターン材料の作製方法によれば、以下に示す金属パターン材料を得ることができる。
即ち、他の金属パターン材料は、基板と、該基板表面に直接結合し、且つ、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有するポリマーからなるパターン状のポリマー層と、該ポリマー層の内部及び上部に形成されたパターン状のめっき膜と、を有することを特徴とする。
このように、基板に結合したポリマーからなるポリマー層の内部及び上部にめっき膜が形成されているため、該めっき膜からなる金属パターンは、基板との密着性に優れるという優れた効果を有する。
【0186】
本発明の表面金属膜材料における金属膜、本発明の金属パターン材料における金属パターンは、基板との密着力が0.2kN/m以上であることが好ましく、0.35kN/m以上であることがより好ましい、その上限値としては、2.0kN/m程度である。なお、従来法により基板を粗面化した上に形成された金属膜や金属パターンにおいては、基板との密着性は、0.2〜3.0kN/m程度が一般的な値である。このことを考慮すれば、本発明の表面金属膜材料における金属膜、及び、本発明の金属パターン材料における金属パターンは、基板に対して実用上充分な密着性を有していることが分かる。
【0187】
ところで、従来の金属膜や金属パターンにおいては、基板表面の凹凸を減らすと、基板と金属膜又は金属パターンとの密着性が低下してしまうため、やむを得ず基材表面を種々の方法により粗面化し、その上に金属膜又は金属パターンを設けるといった手法が取られていた。そのため、従来の金属膜又は金属パターンが形成される基板の凹凸は、2000nm以上であることが一般的であった。
一方、本発明の表面金属膜材料、及び本発明の金属パターン材料では、基板に対して直接結合してなるポリマーからなるポリマー層と、めっき膜と、がハイブリッド状態を形成しているため、平滑な基板を用いても、その基板と金属膜又は金属パターン(めっき膜)との間であっても、優れた密着性を得ることができる。
【0188】
また、本発明の表面金属膜材料、及び本発明の金属パターン材料では、ポリマー層が、ポリマー分子間の相互作用を形成することが可能なメソゲン基を有するポリマーからなるため、熱衝撃耐性が優れた金属膜、及び金属パターンとすることができる。
更に、本発明の金属パターン材料では、平滑性の高い基板を用いることで、高周波特性に優れたものとすることができる。
【0189】
本発明の金属パターン材料は、例えば、電磁波防止膜等として用いることができる。
また、本発明の金属パターン材料は、半導体チップ、半導体パッケージ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。
【0190】
以上説明した、本発明の表面金属膜材料は、前述の本発明の表面金属膜材料の作製方法により得ることができる。
一方、本発明の金属パターン材料は、前述の本発明の金属パターン材料の作製方法により得ることができる。
【0191】
本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料、及び、本発明の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料は、前述の特定重合性ポリマー(好ましくは、前記第1〜第4の新規ポリマー)を用いて形成されていることから、以下のような効果を有する。
まず、基板に対して優れた密着性を有する。この優れた密着性とは、JIS C 6481に基づいた90度剥離実験により測定された基板と金属膜(金属パターン)との密着性が、0.3kN/m以上となることを意味する。
また、表面金属膜材料、及び、金属パターン材料は熱衝撃耐性に優れる。これは、熱衝撃試験であるヒートサイクル試験(例えば、「100℃1時間」→「−10℃1時間」を50回繰り返す)に供しても、金属膜(金属パターン)の剥がれやクラックなどが確認されないことを意味する。
【実施例】
【0192】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
【0193】
〔基板1の作製〕
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量176、ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート825):5g、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂のMEKワニス(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライトLA−7052、不揮発分62%、不揮発分のフェノール性水酸基当量120):2g、フェノキシ樹脂MEKワニス(東都化成(株)製、YP−50EK35、不揮発分35%):10.7g、重合開始剤として2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン:2.3g、MEK:5.3g、2−エチル−4−メチルイミダゾール:0.053gを混合し、攪拌して完全に溶解させて重合開始層塗布液1を作製した。
【0194】
上記重合開始層塗布液1(エポキシ樹脂組成物)を、基材である、ガラエポ基板上にスピン塗布し、170℃で、30分乾燥させて、重合開始層を形成した。得られた重合開始層の膜厚は10μmであった。
【0195】
〔基板2の作製〕
(ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の合成)
窒素下にてN−メチルピロリドン(30ml)中にジアミン化合物として、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(28.7mmol)を溶解させ室温にて約30分間撹拌した。この溶液に3,3’,4,4”−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(28.7mmol)を0℃にて加え5時間撹拌した。反応液を再沈してポリイミド前駆体1を得た。生成物はH−NMR、FT−IRによりその構造を確認した。
【0196】
(基板の成形)
上記手法で合成したポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を、DMAc(和光純薬(株)社製)に溶かし、30質量%のポリイミド前駆体溶液とした。
得られたポリイミド前駆体溶液をポリイミド基板(カプトン、東レ・デュポン(株)製)上に塗布、100℃で5分間乾燥後、250℃で30分間加熱して固化させた。これにより、骨格中に重合開始部位を有するポリイミドからなる基板2を得た。
【0197】
〔基板3の作製〕
基材であるポリイミドフィルム(製品名:カプトン500H、東レデュポン社製)の上に、下記の重合開始層塗布液2を、ロッドバー18番を用いて塗布し、110℃で10分乾燥・架橋反応させた。得られた重合開始層の膜厚は9.3μmであった。
【0198】
(重合開始層塗布液2)
・下記重合開始ポリマーA 0.4g
・TDI(トリレン−2,4−ジイソシアネート) 0.16g
・メチルエチルケトン(MEK) 1.6g
【0199】
(重合開始ポリマーAの合成)
300mlの三口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)30gを加え75℃に加熱した。そこに、[2−(Acryloyloxy)ethyl](4−benzoylbenzyl)dimethyl ammonium bromide8.1gと、2−Hydroxyethylmethaacrylate9.9gと、isopropylmethaacrylate:13.5gと、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート):0.43gと、MFG:30gと、の溶液を2.5時間かけて滴下した。その後、反応温度を80℃に上げ、更に2時間反応させ、重合開始ポリマーAを得た。
【0200】
〔特定重合性ポリマー1の合成〕
前記iii)の合成方法を用い、下記のようにして、特定重合性ポリマー1を合成した。
1000mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド:35gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。ヒドロキシエチルアクリレート:4.64g、シアノエチルアクリレート:10.01g、下記構造のモノマー:23.46g、V−601(和光純薬製):0.46gのN,N−ジメチルアセトアミド:35g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
【0201】
【化37】

【0202】
続いて、上記の反応溶液に、ジターシャリーペンチルハイドロキノン:0.2g、ジブチルチンジラウレート:0.25g、カレンズAOI(昭和電工(株)製):12.7g、N,N−ジメチルアセトアミド:12.7gを加え、55℃、6時間反応を行った。その後、反応液にメタノールを3.0g加え、更に2時間反応を行った。反応終了後、水再沈を行い、固形物を濾取し、メタノールで洗浄、乾燥して、下記構造の特定重合性ポリマー1を18g得た。
なお、「カレンズAOI」は、前記iii)の合成方法で用いられる重合性基を有するモノマーの1つであり、イソシアネート基を有する。
得られた特定重合性ポリマー1の分子量測定を、東ソー製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて行ったところ、ポリスチレン換算でMw=5.0万であることが確認された。また、特定重合性ポリマー1の構造の同定は、H−NMRにて行った。
【0203】
【化38】

【0204】
〔特定重合性ポリマー2の合成〕
(モノマーaの合成)
500mlの三口フラスコに、酢酸エチル:300mlを加え、p−フェニルフェノール:30gを入れ、撹拌した。ピリジン:16.7g、p−メトキシフェノール:0.1gを添加した後に、氷水を入れた氷浴にて冷却した。混合液温度が5℃以下になった後に、アクリル酸クロライド:19.11gを滴下ロートにて30分かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外してさらに3時間撹拌した。反応混合液を水750mlに投入し、水混合液を分液ロートを用いて、酢酸エチル:500mlで3回抽出した。有機層を水1L、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液:1L、飽和食塩水:500mlで順次洗浄した。有機層に硫酸マグネシウム:100gを入れ、脱水乾燥した後、濾過した。溶媒を減圧留去し再結晶することで、モノマーaを18g得た。
【0205】
(特定重合性ポリマー2の合成)
500ml三口フラスコに、N−メチルピロリドン:35gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。2−ヒドロキシエチルアクリレート:2.32g、2−シアノエチルアクリレート:11.26g、モノマーa:20.2g、V−601(和光純薬製):0.0921gのN−メチルピロリドン:35g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン:0.16g、U−600(日東化成製):0.4g、カレンズAOI(昭和電工(株)製):12.25g、N−メチルピロリドン:12.25gを加え、55℃、6時間反応を行った。その後、反応溶液にメタノールを2.05g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、水により再沈を行い、反応物を濾取、乾燥し、下記構造の特定重合性ポリマー2を20g得た。
得られた特定重合性ポリマー2の分子量測定を、東ソー製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて行ったところ、ポリスチレン換算でMw=5.2万であることが確認された。また、特定重合性ポリマー2の構造の同定は、H−NMRにて行った。
【0206】
【化39】

【0207】
〔特定重合性ポリマー3の合成〕
(モノマーbの合成)
500mlの三口フラスコに、酢酸エチル:300mlを加え、2−(2−フェニルエチレン)フェノール〔J.Med.Chem.1990,33,1818−1823記載の手法で合成〕:34.6gを入れ、撹拌した。ピリジン:16.7g、p−メトキシフェノール:0.1gを添加した後に、氷水を入れた氷浴にて冷却した。混合液温度が5℃以下になった後に、アクリル酸クロライド:19.11gを滴下ロートにて30分かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外してさらに3時間撹拌した。反応混合液を水:750mlに投入し、水混合液を分液ロートを用いて、酢酸エチル:500mlで3回抽出した。有機層を水:1L、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液:1L、飽和食塩水:500mlで順次洗浄した。有機層に硫酸マグネシウム:100gを入れ、脱水乾燥した後、濾過した。溶媒を減圧留去しカラム精製することで、モノマーbを20g得た。
【0208】
(特定重合性ポリマー3の合成)
500ml三口フラスコに、N−メチルピロリドン:35gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。2−ヒドロキシエチルアクリレート:2.32g、2−シアノエチルアクリレート:11.26g、モノマーb:22.5g、V−601(和光純薬製):0.0921gのN−メチルピロリドン:35g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン:0.16g、U−600:0.41g、カレンズAOI(昭和電工(株)製):12.47g、N−メチルピロリドン:12gを加え、55℃、6時間反応を行った。その後、反応溶液にメタノールを2.05g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、水により再沈を行い、反応物を濾取、乾燥し、下記構造の特定重合性ポリマー3を23g得た。
得られた特定重合性ポリマー3の分子量測定を、東ソー製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて行ったところ、ポリスチレン換算でMw=4.9万であることが確認された。また、特定重合性ポリマー3の構造の同定は、H−NMRにて行った。
【0209】
【化40】

【0210】
〔特定重合性ポリマー4の合成〕
1000mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド:50gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。ヒドロキシエチルアクリレート:4.64g、化23のモノマー:46.93g、V−601(和光純薬製):0.46gのN,N−ジメチルアセトアミド:50g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
続いて、上記の反応溶液に、ジターシャリーペンチルハイドロキノン:0.2g、U600(日東化成製):0.46g、カレンズAOI(昭和電工(株)製):14g、N,N−ジメチルアセトアミド:14gを加え、55℃、6時間反応を行った。その後、反応液にメタノールを3.0g加え、更に2時間反応を行った。反応終了後、水再沈を行い、固形物を濾取し、メタノールで洗浄、乾燥して、下記構造の特定重合性ポリマー4を15g得た。
得られた特定重合性ポリマー4の分子量測定を、東ソー製高速GPC(HLC−8220GPC)を用いて行ったところ、ポリスチレン換算でMw=5.1万であることが確認された。また、特定重合性ポリマー4の構造の同定は、H−NMRにて行った。
【0211】
【化41】

【0212】
[実施例1]
<ポリマー層の形成>
基板1に、下記組成からなる塗布液1をロッドバー#18を用いて塗布し、乾燥させた。これにより得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は、0.8μmだった。
【0213】
(塗布液1の組成)
・前記特定重合性ポリマー1 0.25g
・アセトン 3.0g
【0214】
次に、基板表面(グラフトポリマー前駆体層表面)に対し、1.5kW高圧水銀灯を使用し、80秒間全面露光を行った。その後、表面をアセトンにて洗浄し、特定重合性ポリマー1が表面グラフト重合してなる基板Aを得た。
【0215】
<めっき触媒の付与>
上記のようにして形成されたポリマー層を有する基板Aを、硝酸パラジウム(II)の1%アセトン溶液に、30分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。
【0216】
<無電解めっき>
上記のようにして、めっき触媒前駆体が付与されたポリマー層を有する基板Aに対し、下記組成の無電解めっき浴を用い、60℃で10分間、無電解めっきを行った。
【0217】
(無電解めっき浴の組成)
・蒸留水 859g
・メタノール 850g
・硫酸銅 18.1g
・エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム塩 54.0g
・ポリオキシエチレングリコール(分子量1000) 0.18g
・2,2−ビピリジル 1.8mg
・10%エチレンジアミン水溶液 7.1g
・10%ホルムアルデヒド水溶液 9.8g
【0218】
<電気めっき、及び乾燥>
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電気めっき浴を用い、3A/dmの条件で、電気めっきを20分間行った。その後、150℃で30分間、後加熱を行った。なお、得られた電気銅めっき膜の厚みは18μmであった。
以上のようにして、金属膜1を有する表面金属膜材料を得た。
【0219】
(電気めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0220】
[実施例2]
<ポリマー層の形成>
基板2に、実施例1と同じ塗布液1をロッドバー#18を用いて塗布し、乾燥させた。これにより得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は、0.8μmだった。
次に、基板表面(グラフトポリマー前駆体層表面)に対し、1.5kW高圧水銀灯を使用し80秒間全面露光を行った。その後、表面をアセトンにて洗浄し、特定重合性ポリマー1が表面グラフト重合してなる基板Bを得た。
【0221】
<めっき触媒の付与、無電解めっき、電気めっき、及び乾燥>
上記のようにして形成されたポリマー層を有する基板Bを、硝酸パラジウム(II)の1%アセトン溶液に10分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。
その後、実施例1と同様な手法で、無電解めっき、電気めっき、及び乾燥を行った。
以上のようにして、金属膜2を有する表面金属膜材料を得た。
【0222】
[実施例3]
<ポリマー層の形成>
基板3に、実施例1と同じ塗布液1をロッドバー#18を用いて塗布し、乾燥させた。これにより得られたグラフトポリマー前駆体層の膜厚は、0.8μmだった。
次に、基板表面(グラフトポリマー前駆体層表面)に対し、1.5kW高圧水銀灯を使用し80秒間全面露光を行った。その後、表面をアセトンにて洗浄し、特定重合性ポリマー1が表面グラフト重合してなる基板Cを得た。
【0223】
<めっき触媒の付与、無電解めっき、電気めっき、及び乾燥>
上記のようにして形成されたポリマー層を有する基板Cを、硝酸パラジウム(II)の1%アセトン溶液に5分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。
その後、実施例1と同様な手法で、無電解めっき、電気めっき、及び乾燥を行った。
以上のようにして、金属膜3を有する表面金属膜材料を得た。
【0224】
[実施例4]
<ポリマー層の形成>
実施例1において、基板1に対し下記の組成の塗布液2を用いてグラフトポリマー前駆体層を形成した以外は、実施例1と同様にしてポリマー層を形成した。
これにより、特定重合性ポリマー2が表面グラフト重合してなる基板Dを得た。
【0225】
(塗布液2の組成)
・前記特定重合性ポリマー2 0.25g
・アセトン 3.0g
・DMAc 0.1g
【0226】
<めっき触媒の付与、無電解めっき、電気めっき、及び乾燥>
上記のようにして形成されたポリマー層を有する基板Dに対し、実施例1と同様な手法で、めっき触媒の付与、無電解めっき、電気めっき、及び乾燥を行った。
以上のようにして、金属膜4を有する表面金属膜材料を得た。
【0227】
[実施例5]
<ポリマー層の形成>
実施例1において、基板1に対し下記の組成の塗布液3を用いてグラフトポリマー前駆体層を形成した以外は、実施例1と同様にしてポリマー層を形成した。
これにより、特定重合性ポリマー3が表面グラフト重合してなる基板Eを得た。
【0228】
(塗布液3の組成)
・前記特定重合性ポリマー3 0.25g
・アセトン 3.0g
・DMAc 0.1g
【0229】
<めっき触媒の付与、無電解めっき、電気めっき、及び乾燥>
上記のようにして形成されたポリマー層を有する基板Eに対し、実施例1と同様な手法で、めっき触媒の付与、無電解めっき、電気めっき、及び乾燥を行った。
以上のようにして、金属膜5を有する表面金属膜材料を得た。
【0230】
[実施例6]
実施例1で得られた表面金属膜材料における金属膜1の表面に、感光性ドライフィルム(富士フイルム(株)製)をラミネートし、所望の導体回路パターンが描画されたマスクフィルム(金属パターン部分が開口部、非金属パターン部がマスク部)を通して紫外線露光させ、画像を焼き付け、現像を行った。次に、塩化第二銅エッチング液を用いてレジストが除去された部分の金属膜(銅薄膜)をエッチングした。その後、ドライフィルムを剥離し、金属パターン1を有する金属パターン材料を得た。
【0231】
<評価>
(密着性)
得られた金属膜1〜5について、幅が5mmになるようにカッターで傷をつけ、端を剥がし、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行った(実験器:テンシロン剥離機、(株)オリエンテック製)。また、得られた金属パターン1については、そのままの状態で同様の剥離実験を行った。
結果を下記表1に示す。
【0232】
(最小パターン幅の確認)
得られた金属パターン1の最小パターン幅を、光学顕微鏡(ニコン製、OPTI PHOTO−2)にて測定した。
結果を下記表1に示す。
【0233】
(熱衝撃試験)
得られた金属膜1〜5、及び金属パターン1をソルダーレジストで保護した後、「100℃1時間」→「−10℃1時間」のヒートサイクル試験を50回行った。
試験後の各サンプルを目視にて観察し、銅金属膜の剥がれやクラックの有無を観察した。
結果を下記表1に示す。
【0234】
【表1】

【0235】
上記表1の結果によれば、実施例1〜6により得られた各金属膜、及び金属パターンは密着性に優れ、また、実施例6により得られた金属パターンの幅が微細であることが分かる。
更に、熱衝撃試験においては、いずれの銅金属膜についても、剥がれやクラックなどは確認されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)基板上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有し、該基板に直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を形成する工程と、
(a2)該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(a3)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を有することを特徴とする表面金属膜材料の作製方法。
【請求項2】
前記(a1)工程が、基板上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物を接触させた後、エネルギーを付与することにより、当該基板上に該化合物を直接化学結合させてポリマー層を形成する工程であることを特徴とする請求項1に記載の表面金属膜材料の作製方法。
【請求項3】
前記(a1)工程が、(a1−1)基材上に重合開始剤を含有する重合開始層が形成された基板を作製する工程と、(a1−2)該重合開始層上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物を接触させた後、エネルギーを付与することにより、当該重合開始層上に該化合物を直接化学結合させてポリマー層を形成する工程であることを特徴とする請求項1に記載の表面金属膜材料の作製方法。
【請求項4】
前記(a3)工程が無電解めっきにより行われることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の表面金属膜材料の作製方法。
【請求項5】
前記無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことを特徴とする請求項4に記載の表面金属膜材料の作製方法。
【請求項6】
(b1)基板上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有し、該基板に直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を形成する工程と、
(b2)該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(b3)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、
(b4)該(b3)工程により形成されためっき膜をパターン状にエッチングする工程と、
を有することを特徴とする金属パターン材料の作製方法。
【請求項7】
前記(b1)工程が、基板上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物を接触させた後、エネルギーを付与することにより、当該基板上に該化合物を直接化学結合させてポリマー層を形成する工程であることを特徴とする請求項6に記載の金属パターン材料の作製方法。
【請求項8】
前記(b1)工程が、(b1−1)基材上に重合開始剤を含有する重合開始層が形成された基板を作製する工程と、(b1−2)該重合開始層上に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物を接触させた後、エネルギーを付与することにより、当該重合開始層上に該化合物を直接化学結合させてポリマー層を形成する工程であることを特徴とする請求項6に記載の金属パターン材料の作製方法。
【請求項9】
めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、重合性基、及びメソゲン基を有する化合物と、該化合物を溶解しうる溶剤と、を含有することを特徴とするポリマー層形成用組成物。
【請求項10】
基板と、該基板表面に直接結合し、且つ、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有するポリマーからなるポリマー層と、該ポリマー層の内部及び上部に形成されためっき膜と、を有する表面金属膜材料。
【請求項11】
基板と、該基板表面に直接結合し、且つ、めっき触媒又はその前駆体と相互作用する官能基、及びメソゲン基を有するポリマーからなるポリマー層と、該ポリマー層の内部及び上部に形成されたパターン状のめっき膜と、を有する金属パターン材料。
【請求項12】
下記式(1)で表されるユニット、下記式(2)で表されるユニット、及び下記式(3)で表されるユニットを含むポリマー。
【化1】

〔上記式(1)〜(3)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Y〜Yは、夫々独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。)を表し、L〜Lは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。また、Zは、チオエーテル基、フォスフィン基、イミダゾール基、水酸基、ピリジン基、アミノ基、ピロリドン基、シアノ基、エーテル基、又は不飽和エチレン基を表す。更に、Aは、環構造を表し、Xは、単結合、又は二価の連結基を表し、Rは、水素原子、置換若しくは無置換の、アルキル基、アルコキシカルボニル基、又はアリール基を表す。〕
【請求項13】
下記式(1)で表されるユニット、及び下記式(4)で表されるユニットを含むポリマー。
【化2】

〔上記式(1)及び(4)中、R、R、及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Y、Y、及びYは、夫々独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。)を表し、L、及びLは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。また、Aは、環構造を表し、Xは、単結合、又は二価の連結基を表し、Rは、チオエーテル基、フォスフィン基、イミダゾール基、水酸基、ピリジン基、アミノ基、ピロリドン基、シアノ基、エーテル基、不飽和エチレン基、又はそれらが置換されたアルキル基若しくはアリール基を表す。〕

【公開番号】特開2009−35809(P2009−35809A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37697(P2008−37697)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】