複数の物質の送達のための粒子
少なくとも1種の活性物質がポリマーに結合している、2種またはそれ以上の活性物質を含む送達組成物が提供される。該送達組成物は、様々な溶解度、電荷および/または分子量を有する活性物質を含む、複数の活性物質の制御放出を可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本願は、2009年12月16日に出願された米国特許出願番号61/287,188の優先権を主張し、その全内容を出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
連邦政府に支援された研究に関する言明
本発明は、アメリカ国立衛生研究所により授与された助成番号EB003647およびU54−CA119349の政府の支援により行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本発明は、2種またはそれ以上の活性物質を含む粒子状薬物送達組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
個々の分子標的を対象とする抗癌剤は、限られた効力、乏しい安全性および乏しい耐性プロフィールを示すことが多い。ゲノム解析およびシステムの進歩により、生物学は、癌のより有効な処置のために同時に利用し得る潜在的な相乗作用的治療を見出した。しかしながら、複数の治療物質の標的化された送達は、困難であると明らかになった。薬物をポリマー性ナノ粒子に非共有結合的に封入し、それらを制御された方法で放出することができる一方で、組合せの薬物送達に対する封入戦略の使用は、特に、溶解性、電荷および分子量の異なる薬物を使用するとき、複数の薬物の封入および放出におけるバッチ毎の変動性をもたらし得る。
【発明の概要】
【0005】
概要
複数の薬物または薬物候補を特定の病んだ細胞および組織に、例えば、癌細胞に、例えば、特定の器官または組織の癌細胞に、時間空間的に(tempospatially)制御された方法で有効に送達するためのナノ技術の発展は、今日までに直面した治療的挑戦を潜在的に克服する。本発明は、送達組成物の形成と、送達組成物、例えば粒子からの、活性物質の放出を制御するための方法および組成物を提供する。ある実施態様では、本発明は、薬物送達組成物、例えば、ペンダント(pendant)官能基を有するポリマーなどのポリマーに結合した活性物質を含む粒子の製造方法を提供する。本発明の1つの利点は、薬物で官能化した、または、リガンドで官能化した別個のポリマーを設計し、配合することにより、2種、3種またはそれ以上の薬物を送達できる粒子を再現可能に設計し、特徴付けられることである。加えて、これらの方法は、例えば、それぞれの物質のタイプについて別々に、例えば、活性物質の特徴、例えば、溶解性、電荷、分子量、半減期および/または生体分布プロフィールに関係なく、薬物放出および薬物動態の特徴を調整することを可能にする。さらに、薬物を負荷した粒子を特定の組織または細胞、例えば癌細胞に標的化することにより、活性物質の生体分布を変えられる相乗作用的な薬物の効果が達成できる。これは、より良好な効力および耐容性と言い換えることができ、活性物質を可能性のある臨床開発に適合させる。
【0006】
ある態様では、本発明は、第1の活性物質および第2の活性物質を含有するポリマーマトリックスを含む粒子を特徴とし、該ポリマーマトリックスは、37℃で中性の水性溶液、例えば、緩衝塩溶液(例えばPBS)に粒子を懸濁してから最初の2時間(例えば、最初の4、6、8、10、12、15、20、25または30時間)の内に第1および第2の活性物質の各々の50%未満が放出されるように、第1および第2の活性物質の各々の放出速度を提供するように形成される。いくつかの実施態様では、ポリマーマトリックスは、1種またはそれ以上のさらなる活性物質をさらに含み、制御された、例えば類似の、さらなる活性物質の1種またはそれ以上の放出速度を提供するように形成することもできる。いくつかの実施態様では、第1の活性物質の50%未満が最初の2時間(例えば、最初の4、6、8、10、12、15、20、25または30時間)の内に放出され、第2の活性物質の50%未満が最初の2時間(例えば、最初の4、6、8、10、12、15、20、25または30時間)の内に放出されるように、マトリックスは、第1および第2の活性物質の各々の放出速度を独立して提供するように形成される。
【0007】
他の態様では、本発明は、第1の活性物質および第2の活性物質を含有するポリマーマトリックスを含む粒子を特徴とし、該ポリマーマトリックスは、第1および第2の活性物質の各々が、少なくとも30分間、1時間または2時間(例えば、少なくとも4、6、8、10、12、15、20、25または30時間)の、対象の循環中での半減期を有するように形成される。いくつかの実施態様では、ポリマーマトリックスは、さらに、1種またはそれ以上のさらなる活性物質を含み、1種またはそれ以上のさらなる活性物質の類似の放出速度を提供するように形成することもできる。いくつかの実施態様では、ポリマーマトリックスは、粒子内にあるとき第1の活性物質が少なくとも30分間、1時間または2時間(例えば、少なくとも4、6、8、10、12、15、20、25、30時間)の対象の循環中での半減期を有し、粒子内にあるとき第2の活性物質が独立して少なくとも30分間、1時間または2時間(例えば、少なくとも4、6、8、10、12、15、20、25、30時間)の対象の循環中での半減期を有するように形成する。いくつかの実施態様では、ポリマーマトリックスは、第1の活性物質および/または第2の活性物質がポリマーマトリックスのない活性物質よりも少なくとも30分間、1時間または2時間(例えば、4、6、8、10、12、15、20、25、30時間)長い対象の循環中での半減期を有するように形成する。
【0008】
上記の粒子のいくつかの実施態様では、第1および/または第2の活性物質を、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合させる。任意のさらなる活性物質も、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合させることができる。
【0009】
いくつかの態様では、本発明は、複数の活性物質を有する粒子を特徴とし、該粒子は、(a)(i)生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合した第1の活性物質、および;(ii)第2の活性物質を含有する疎水性ポリマーコア;および、(b)表面に露出した親水層、を含む。いくつかの実施態様では、生物分解性ポリマーは、比較的疎水性の第1末端および比較的親水性の第2末端を有するブロックコポリマーであり、疎水性コアは、第1の活性物質に結合したブロックコポリマーの第1末端を含み、親水層は、ブロックコポリマーの第2末端を含む。いくつかの実施態様では、親水層は、疎水性ポリマーコアと相互作用する相対的に疎水性の末端および表面に露出した相対的に親水性の末端を各々有する複数の両親媒性ブロックコポリマーを含む。いくつかの実施態様では、生物分解性ポリマーおよび結合した活性物質は、完全に疎水性コアに含まれる。他の実施態様では、生物分解性ポリマーは両親媒性であり、疎水性コアおよび親水層の両方に存在する。当然、これらの実施態様は相互に排他的ではない。
【0010】
ある態様では、本発明は、複数の活性物質を有する粒子を特徴とし、該粒子は、(a)(i)生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合した第1の活性物質(例えば、親水性活性物質または疎水性活性物質)および;(ii)第2の活性物質(例えば、親水性活性物質または疎水性活性物質)を含有する疎水性ポリマーコア;および、(b)疎水性ポリマーコアと相互作用する疎水性末端および表面に露出した親水性末端を有する複数の両親媒性ブロックコポリマーを含む、両親媒性の殻、を含む。いくつかの実施態様では、両親媒性の殻は、さらに、疎水性ポリマーコアと相互作用する疎水性末端および標的化物質に結合した親水性末端を各々有する複数の標的化ブロックコポリマーを含む。いくつかの実施態様では、第2の活性物質は、また、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合している。いくつかの実施態様では、第2の活性物質は、生物分解性ポリマーに結合していない疎水性活性物質である。
【0011】
上記粒子のいくつかの実施態様では、標的化物質は、アプタマー、核酸、核酸リガンド、ポリペプチド、タンパク質リガンド、低分子、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、抗体、抗体断片、インテグリン、フィブロネクチン受容体、炭水化物、p−糖タンパク質受容体、ペプチド、ペプチド模倣物、炭化水素、小モジュラー免疫医薬、細胞結合配列、アフィボディ(Affibody)、ナノボディ(Nanobody)、アドネクチン(Adnectin)、ドメインアンチボディ(Domain Antibody)またはアビマー(Avimer)またはこれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、標的化物質は8個未満のアミノ酸を含むペプチドである。
【0012】
上記粒子のいくつかの実施態様では、標的化物質は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合する。非限定的な例では、標的化物質はA10アプタマーであり得る。
【0013】
上記粒子のいくつかの実施態様では、生物分解性ポリマーには、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ酸無水物またはポリ(ラクチド−コ−グリコール酸)またはそれらの誘導体が含まれる。上記粒子のいくつかの実施態様では、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーには、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ酸無水物またはポリ(ラクチド−コ−グリコール酸)が含まれる。いくつかの実施態様では、生物分解性ポリマーは、コポリマー、例えばブロックコポリマーである。
【0014】
例示的な親水性活性物質には、シスプラチン、カルボプラチン、ミタプラチン(mitaplatin)、オキサリプラチン、ジャスモン酸メチル、ジクロロ酢酸またはイリノテカン、並びにそれらの誘導体またはプロドラッグが含まれる。例示的な疎水性活性物質には、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲフィチニブ、ツバシン(tubacin)、ベツリン酸、レスベラトロール、アルファ−コハク酸トコフェロールまたはコンブレタスタチンおよびそれらの誘導体またはプロドラッグが含まれる。
【0015】
いくつかの実施態様では、第1の活性物質および第2の活性物質は、生体分子、生体活性物質、低分子、薬物、プロドラッグ、薬物誘導体、タンパク質、ペプチド、ワクチン、アジュバント、造影剤(例えば、蛍光部分)またはポリヌクレオチドから独立して選択される。
【0016】
本明細書に記載の活性物質のいずれも、本明細書に記載の任意の他の活性物質または他の活性物質と共に粒子に含まれ得る。いくつかの実施態様では、第1および第2の活性物質は、各々、パクリタキセルまたはドセタキセルおよびゲフィチニブ;ゲフィチニブおよびパクリタキセルまたはドセタキセル;オキサリプラチン(またはオキサリプラチンプロドラッグ)およびイリノテカン;イリノテカンおよびオキサリプラチン(またはオキサリプラチンプロドラッグ);パクリタキセルおよびツバシン;ツバシンおよびパクリタキセル;ロニダミン、ジクロロ酢酸、アルファ−コハク酸トコフェロール、ベツリン酸、または、レスベラトロールおよびヘキサン酸Pt(IV);ヘキサン酸Pt(IV)およびロニダミン、ジクロロ酢酸、アルファ−コハク酸トコフェロール、ベツリン酸またはレスベラトロール;アルファ−コハク酸トコフェロールまたはジャスモン酸メチルおよびドセタキセル;または、ドセタキセルおよびアルファ−コハク酸トコフェロールまたはジャスモン酸メチルである。これらの粒子は、さらに、第3の活性物質、例えば、コンブレタスタチンを含み得る。
【0017】
本明細書に開示の粒子は、さらなる活性物質、例えば、3種、4種、5種、6種またはそれ以上の活性物質を含み得る。いくつかの実施態様では、さらなる活性物質の1種またはそれ以上(例えば、第3の活性物質)は、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合している。
【0018】
いくつかの実施態様では、本明細書に開示の粒子は、約100μmまたはそれ以下、例えば、約10μmまたはそれ以下、約1000nmまたはそれ以下、約800nmまたはそれ以下、約600nmまたはそれ以下、約500nmまたはそれ以下、約400nmまたはそれ以下、約300nmまたはそれ以下、約250nmまたはそれ以下、約200nmまたはそれ以下、約100nmまたはそれ以下、約80nmまたはそれ以下、約60nmまたはそれ以下、約50nmまたはそれ以下、または、約40nmまたはそれ以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様では、本明細書に開示の複数の粒子が提供される。複数の粒子は、約100μmまたはそれ以下、例えば、約10μmまたはそれ以下、約1000nmまたはそれ以下、約800nmまたはそれ以下、約600nmまたはそれ以下、約500nmまたはそれ以下、約400nmまたはそれ以下、約300nmまたはそれ以下、約250nmまたはそれ以下、約200nmまたはそれ以下、約100nmまたはそれ以下、約80nmまたはそれ以下、約60nmまたはそれ以下、約50nmまたはそれ以下または約40nmまたはそれ以下の平均の特徴的寸法(characteristic dimension)を有し得る。いくつかの実施態様では、複数の粒子は、0.8またはそれ以下、例えば、0.6またはそれ以下、0.4またはそれ以下、0.2またはそれ以下または0.1またはそれ以下の多分散指数を有する。
【0019】
いくつかの実施態様では、本発明は、任意の上記の粒子および1種またはそれ以上の医薬的に許容し得る担体および/または希釈剤を含む医薬組成物を特徴とする。医薬組成物は、例えば、静脈内、動脈内、経口、経皮、経粘膜、腹腔内、頭蓋内、眼内、硬膜外、くも膜下腔内、局所、浣腸、注射、肺経路または点滴送達用に製剤化できる。
【0020】
いくつかの態様では、本発明は、複数の活性物質を有するナノ粒子の製造方法を特徴とする。それらの方法は、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合した第1の活性物質(例えば、親水性活性物質または疎水性活性物質)を、揮発性の水混和性有機溶媒に溶解し、第1の溶液を形成させること;第2の活性物質(例えば、親水性活性物質または疎水性活性物質)を、揮発性の水混和性有機溶媒に溶解し、第2の溶液を形成させること;両親媒性ブロックコポリマーを水混和性有機溶媒に溶解し、第3の溶液を形成させること;および、両親媒性ブロックコポリマーに囲まれた疎水性ポリマーコアを有するナノ粒子が形成されるように第1、第2および第3の溶液を組み合わせること、を含み得る。
【0021】
いくつかの態様では、本発明は、少なくとも2種の活性物質を含む粒子の製剤化方法を特徴とする。それらの方法は、第1および第2の活性物質を提供すること;第1の活性物質またはそのプロドラッグもしくは誘導体を、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合させること;および、結合した第1の活性物質および第2の活性物質を含む粒子を調製すること、を含み得る。いくつかの実施態様では、それらの方法は、さらに、第2の活性物質またはそのプロドラッグもしくは誘導体を、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合させることを含む。いくつかの実施態様では、第1および第2の活性物質は、生物分解性ポリマーの非存在下で、粒子の形成に適合しない。そのような場合、第1の活性物質および/または第2の活性物質を生物分解性ポリマーに結合させることは、第1および第2の活性物質の粒子形成への適合性を与え得る。上記の方法のいくつかの実施態様では、粒子は、沈降、乳液化または乳液化および溶媒蒸発により形成できる。いくつかの実施態様では、粒子は、マイクロフルイディクス(microfluidics)の装置を使用して形成させる。
【0022】
いくつかの態様では、本発明は、複数の活性物質を対象内の生物学的標的に送達する方法を特徴とする。それらの方法は、標的化物質を含む本明細書に開示の複数の粒子を含む医薬組成物を得ること、ここで、標的化物質は生物学的標的に特異的に結合するものである;および、粒子中の活性物質を生物学的標的に送達するのに有効な量で対象に医薬組成物を投与すること、を含み得る。いくつかの実施態様では、標的化物質は、腫瘍細胞または腫瘍脈管構造に特異的に結合する。
【0023】
他の態様では、本発明は、複数の活性物質を対象に送達する方法を特徴とする。これらの方法は、本明細書に開示の複数の粒子を含む医薬組成物を得ること;および、活性物質を送達するのに有効な量で対象に医薬組成物を投与すること、を含み得る。
【0024】
さらなる態様では、本発明は、それを必要としている対象における、障害、例えば、癌または本明細書に開示の他の障害の処置方法を特徴とし、その方法は、対象に有効量の上記の粒子を投与することを含み、ここで、第1および第2の活性物質は、その障害を処置するように選択される。
【0025】
いくつかの態様では、本発明は、2種またはそれ以上の活性物質の対象への時間空間的な制御投与の方法を特徴とする。それらの方法は、第1の活性物質および第2の活性物質を含むポリマーマトリックスを含む粒子を提供すること、ここで、ポリマーマトリックスは、第1および第2の活性物質の各々の所望の時間空間的放出速度を提供するように形成されている;第1および第2の活性物質が所望の時間空間的放出速度で粒子から放出されるように、粒子を対象に投与すること、を含み得る。いくつかの実施態様では、所望の時間空間的放出速度は、所望の場所、例えば、器官、組織または細胞、または、腫瘍または腫瘍脈管構造での薬物の放出を含む。いくつかの実施態様では、所望の時間空間的放出速度は、第1および第2の活性物質の各々の所望の投与量が対象に提供されるように、第1および第2の活性物質の放出を含む。いくつかの実施態様では、第1および第2の活性物質の一方または両方は、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合している。
【0026】
上記の投与方法のいずれにおいても、粒子または複数の粒子は、静脈内に、動脈内に、経口で、経皮で、経粘膜で、腹腔内に、頭蓋内に、眼内に、硬膜外に、くも膜下腔内に、局所に、浣腸により、注射により、肺経路により、または、点滴により送達できる。
【0027】
本明細書で使用するとき、「親水性活性物質」は、水中、20℃、および1気圧で、50mg/Lまたはそれ以上、例えば、100mg/Lまたはそれ以上、200mg/Lまたはそれ以上、500mg/Lまたはそれ以上、1.0g/Lまたはそれ以上、2.0g/Lまたはそれ以上、または、5.0g/Lまたはそれ以上の溶解度を有するものである。
【0028】
本明細書で使用するとき、「疎水性活性物質」は、水中、20℃、および1気圧で、50mg/L未満、例えば、20mg/L未満、10mg/L未満、5.0mg/L未満、2.0mg/L未満、または、1.0mg/L未満の溶解度を有するものである。
【0029】
いくつかの場合では、2種またはそれ以上の活性物質の親水性を、相互に相対的に測定できる。即ち、第1の活性物質は、第2の活性物質よりも親水性であり得る。例えば、第1の活性物質は、第2の活性物質よりも高い水溶解性を有し得る。
【0030】
断りのない限り、本明細書で使用するすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載のものに類似または相当する方法および材料を使用できるが、適する方法および材料を後述する。本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、出典明示により全体を本明細書の一部とする。矛盾がある場合は、定義を含めて、本明細書が統括する。加えて、材料、方法および実施例は、例示目的のみであり、限定することを意図しない。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から、そして特許請求の範囲から、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図面の説明
【図1】図1Aは、薬物(円形、四角形または三角形)と結合したヒドロキシル官能化ポリラクチド(PLA−OH)、および、標的化リガンドに結合した様々なポリラクチド−ポリエチレングリコール(PLA−PEG)およびPLA−PEGの概略図である。図1Bは、薬物(円形、四角形または三角形)と結合したヒドロキシル官能化ポリラクチドを含む標的化されたナノ粒子およびその組合せの癌細胞の死亡に対する効果の概略図である。
【図2】図2は、官能化ポリラクチドの変換の1H−NMR特徴解析を示す。PLA−OHは、PLA−OBnからベンジル基の脱保護により創製し、7.3ppmでのフェニル環の強度の減少により可視化した。PLA−Ptにおけるプラチナプロドラッグの存在を、プラチナ(IV)一コハク酸塩プロドラッグとの結合後の6.3ppmでのアミノプロトンの出現により可視化した。
【図3】図3は、インビトロのPLA−OHナノ粒子(PLA−OH−NP)の毒性を示す線グラフである。
【図4】図4A−4Bは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)−ポリエチレングリコール−COOH(PLGA−PEG−COOH)を、Pt(IV)一コハク酸塩(ポリ−Pt)およびドセタキセルに結合したPLA−OHと共に含有する例示的ナノ粒子の形成を示す概略図である。ナノ粒子を、ナノ沈降(4A)またはマイクロフルイディクス(4B)の方法により製造できる。
【図5】図5Aは、動的光散乱により測定したPoly−Pt−Doce−NPのサイズを示す柱状図である。図5Bは、Poly−Pt−Doce−NPの透過型電子顕微鏡像である。
【図6】図6A−6Bは、様々なスキャン速度での、DMF−0.1M TBAPF6中のc,c,t[Pt(NH3)Cl2(OH)(コハク酸)](6A)およびDMF−0.1M TBAPF6中のPoly−Pt(IV)(6B)のサイクリックボルタモグラムである。図6C−6Dは、各々、図6Aおよび6Bのボルタモグラムの各最大還元ピーク電位(reduction peak potential maxima)対、ボルタモグラムのスキャン速度のプロットである。
【図7】図7A−7Bは、デュアル薬物Poly−Pt−Doce−NPからのインビトロのプラチナ(7A)およびドセタキセル(7B)の放出を示す。
【図8】図8A−8Bは、Pt(IV)一コハク酸塩(一コハク酸)、シスプラチン、PolyPt−NPおよびPolyPt−NP−AptのLNCaP(8A)およびPC3(8B)細胞に対する細胞毒性を示す線グラフである。
【図9】図9は、PolyPt−NPおよび標的化PolyPt−NP−AptのLNCaP細胞による取り込みを示す一組の顕微鏡像である。DIC、微分干渉コントラスト法;FITC、フルオレセインイソチオシアネート;EEA1、マウスモノクローナル抗体。
【図10】図10Aは、プラチナ−DNA付加体の形成の概略図である。図10Bは、細胞をPolyPt−Doce−NP−AptまたはPolyPt−NP−Aptで処理した後の、LNCaP細胞におけるPt−GG付加体の検出を示す一組の顕微鏡像である。
【図11】図11は、PLA−OH、PLA−COOHおよびPLA−薬物の例示的合成の概略図である。PLA−OHおよびPLA−COOHへの結合について、他の化学を利用できる(例えば、T−NH2)。
【図12】図12は、PLA−OHからのPLA−Ptの形成を示す概略図である。
【図13】図13は、場合により標的化リガンド(A10アプタマー)に結合しているPLA−Ptおよびドセタキセルを含むデュアル薬物ナノ粒子の構築の概略図である。
【図14】図14は、標的化ポリマー性ナノ粒子を開発するためのコンビナトリアル半自動化工程の概略図である。複数の入口のあるマイクロフルイディクスのシステムを、異なる薬物−官能化ポリマー、リガンド−官能化ポリマー、遊離ポリマーおよび遊離薬物の導入に使用し、所望の前駆物質を混合する。混合比は、PCと連結したシリンジポンプにより自動的に制御される投入の流速により管理される。得られるポリマーおよび薬物の前駆物質を、マイクロフルイディクスのチャネル中の流路集束(flow focusing)を介して水性溶液中で沈殿させる。各前駆物質流の組合せは、別個のナノ粒子製剤をもたらし、さらなる精製および分析のために、それを96ウェルプレートに自動的に集める。
【図15】図15Aは、PLA−COOHの合成の概略図である。図15Bは、PLA−COOHの1H−NMR特徴解析を示す。
【図16】図16Aは、PLA−ロニダミンの合成の概略図である。図16Bは、PLA−ロニダミン(PLA−Loni)の1H−NMRスペクトルの重ね合わせを示す。
【図17】図17Aは、PLA−ジクロロ酢酸(PLA−DCA)の合成の概略図である。図17Bは、触媒量の塩基N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下のジクロロ酢酸無水物とPLA−OHの反応により得られるPLA−DCAの1H−NMRスペクトルの重ね合わせを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
本願は、2種またはそれ以上の活性物質を含み、少なくともその一方が生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合している薬物送達組成物を提供する。送達組成物は、複数の薬物、例えば、異なる特徴を有するもの、例えば、親水性および疎水性の薬物を、各薬物の放出パラメーターを独立して制御する能力をもって、同時送達することを可能にする。加えて、送達組成物は、システムを所望の細胞標的に送達するために、標的化物質を含み得る。一例として、プラチナで修飾されたPLAポリマーの内側にドセタキセルを組合せ、適度に高い負荷量(loading)のシスプラチンおよびドセタキセルを同時に前立腺癌細胞に送達するのに適するサイズの粒子を得ることにより、PLA−官能化デュアル薬物送達組成物が開発された。
【0033】
送達組成物
ある態様では、送達組成物は、2種またはそれ以上の活性物質を含む粒子である。活性物質は、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合していることができる。粒子は、また、複数の両親媒性分子、例えば、両親媒性脂質または両親媒性コポリマーを含有する疎水性コアを囲む両親媒性の殻を含み得る。粒子は、さらに、粒子の表面に標的化物質を含み得る。
【0034】
加えて、粒子、例えば、ポリマー性マイクロおよびナノ粒子は、生物分解性であるように、FDAにより既に認可された材料を含むように、そして、サブミクロンのサイズ(例えば、10nm−1000nmまたは他の範囲、例えば、25nm−250nm、例えば、15nm−50nm、10nm−500nm)または、ミクロン規模のサイズになるように、製造できる。ナノ規模の粒子は、本発明では、その最大の断面の寸法で、1000nmまでであるとみなされる。ミクロン規模の粒子は、その最大の断面の寸法で1.0ミクロンを超え(例えば、1.0ミクロンから100ミクロンまで、またはそれ以上、例えば、1.0ないし2.0ミクロン、1.0ないし10.0ミクロン、5ないし25ミクロンおよび25ないし50ミクロン)、また、本明細書に記載の方法に従って製造できる。
【0035】
いくつかの場合では、粒子は、ナノ粒子である、即ち、粒子は、1マイクロメーターより小さい特徴的寸法を有し、ここで、特徴的寸法は、粒子の最大の断面の寸法である。例えば、粒子は、いくつかの場合では、約500nmより小さい、約400nmより小さい、約250nmより小さい、約200nmより小さい、約150nmより小さい、約100nmより小さい、約50nmより小さい、約30nmより小さい、約10nmより小さい、約3nmより小さい、または、約1nmより小さい特徴的寸法を有し得る。
【0036】
いくつかの場合では、粒子集団が存在し得る。本発明の様々な実施態様は、そのような粒子集団を対象とする。例えば、いくつかの実施態様では、粒子集団は、いくつかの場合では、約500nmより小さい、約400nmより小さい、約250nmより小さい、約200nmより小さい、約150nmより小さい、約100nmより小さい、約50nmより小さい、約30nmより小さい、約10nmより小さい、約3nmより小さい、または、約1nmより小さい平均の特徴的寸法を有し得る。いくつかの実施態様では、粒子は、各々、実質的に同じ形状および/またはサイズ(「単分散」)であり得る。例えば、粒子は、約5%または約10%以下の粒子が、粒子の平均の特徴的寸法よりも約10%大きいものを超える特徴的寸法を有するように、そして、いくつかの場合では、約8%、約5%、約3%、約1%、約0.3%、約0.1%、約0.03%または約0.01%以下の粒子が、粒子の平均の特徴的寸法よりも約10%大きいものを超える特徴的寸法を有するように、特徴的寸法の分布を有し得る。いくつかの場合では、約5%以下の粒子が、粒子の平均の特徴的寸法よりも約5%、約3%、約1%、約0.3%、約0.1%、約0.03%または約0.01%大きいものを超える特徴的寸法を有する。
【0037】
いくつかの実施態様では、製造された粒子の25%以下の直径が、平均粒子直径の150%、100%、75%、50%、25%、20%、10%または5%まで平均粒子直径と異なる。各粒子が類似の特性を有するように、サイズ、形状および/または組成の観点で比較的均一な粒子集団を製造することがしばしば望ましい。例えば、本明細書に記載の方法を使用して製造した粒子の少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%が、平均直径または最大寸法の5%、10%または20%以内にある直径または最大寸法を有し得る。いくつかの実施態様では、粒子集団は、サイズ、形状および/または組成に関して不均一であり得る。例えば、出典明示により全体を本明細書の一部とするPCT公開WO2007/150030を参照せよ。
【0038】
いくつかの実施態様では、粒子集団の多分散指数は、0.6またはそれ以下、例えば、0.5それ以下、0.4それ以下、0.3それ以下、0.2それ以下、0.1それ以下または0.05それ以下である。
【0039】
多くの実施態様では、制御放出用に粒子を製剤化する。制御放出は、薬物が後の放出のために予め定められた方法でポリマー系の内に保持されるように、天然または合成ポリマーを活性物質と組み合わせるときに起こる。粒子として設計されたポリマー性薬物送達組成物は、時間または条件依存的に、表面または全体の侵食、拡散および/または膨潤に続く拡散により、結合した活性物質を放出できる。活性物質の放出は、長期または短期間にわたって一定であり得るか、長期または短期間にわたって周期性であり得るか、または、環境または外部事象により引き起こされ得る(例えば、Langer and Tirrell, 2004, Nature, 428:487-492 参照)。一般に、制御放出のポリマー系は、他の薬物送達方法よりも長い期間にわたって特定の範囲の薬物レベルを提供でき、従って、薬物の効力を高め、患者のコンプライアンスを最大にする。
【0040】
PLAおよびPLGAは、非共有結合的に薬物を封入し、制御された方法でそれらを放出するために使用できる一方で、組合せの薬物送達のための戦略の使用は、特に、様々な特徴、例えば、溶解性、電荷、分子量、半減期、生体分布プロフィールを有する薬物を使用するとき、複数の薬物の放出におけるバッチ毎の変動性をもたらし得る。対照的に、本明細書に記載の薬物−ポリマー結合体(conjugate)を含む送達組成物の使用は、特に、異なる溶解性、電荷および分子量の薬物を送達するとき、薬物の充填および放出に対してさらなる制御を与える。
【0041】
理論により縛られることは望まないが、粒子のパラメーター、例えば、サイズ、電荷などは、粒子からの活性物質の送達(例えば、負荷量の喪失、薬物の流出、凝集、所望の場所への送達など)を変更できる。いくつかの場合では、大きい粒子は小さい粒子よりも早くそれらの負荷量を失う傾向があり、かつ/または、薬物流出は大きい粒子より小さい粒子からの方が迅速であり得る。小さい粒子は、いくつかの場合では、大きい粒子よりも凝集し易い。粒子のサイズは、体中の粒子の分布に影響し得る。例えば、血流に注入された大きい粒子は、小さい粒子よりも、小血管にひっかかりやすい。いくつかの例では、大きい粒子は、小さい粒子よりも生物学的障壁(例えば、毛細血管壁)を通過しにくい。送達組成物において使用する粒子のサイズは、その応用に基づいて選択でき、当業者に容易に理解される。例えば、小さいサイズ(例えば、<200nm)の粒子は、患者の血流全体への粒子の全身的送達が望ましい場合に選択できる。別の例として、大きいサイズ(例えば、>200nm)の粒子は、患者の網内皮系による粒子の捕捉(例えば、肝臓、脾臓などにおける粒子の捕捉)が望ましい場合に選択できる。送達時間の望ましい長さは、粒子サイズを選択するときにも考慮され得る。例えば、小さい粒子は大きい粒子よりも長い期間にわたり血流中を循環する傾向がある。
【0042】
いくつかの実施態様では、粒子は、特定の標的、例えば腫瘍の部位に実質的に蓄積するように設計される。いくつかの実施態様では、これは、少なくとも部分的に、本明細書に記載の粒子に結合した標的化部分の存在に起因し得る。いくつかの実施態様では、これは、少なくとも部分的に、粒子が腫瘍部位に特異的に蓄積することを可能にする、増強された透過性および保持(EPR)の効果に起因し得る。EPR効果は、当業者に知られており、それにより、ある種のサイズの物質(例えば、粒子)が正常組織においてよりも遙かに腫瘍組織に蓄積しやすい傾向にある特性を表す。
【0043】
ポリマー
いくつかの実施態様では、送達組成物は、1種またはそれ以上のポリマー性基本成分(例えば、ポリマー)を含む。本明細書で使用する「ポリマー」は、その通常の意味、即ち、共有結合により連結された1種またはそれ以上の繰り返し単位(モノマー)を含む分子構造、を与えられている。繰り返し単位はすべて同一であり得るか、または、いくつかの場合では、1種を超えるタイプの繰り返し単位がポリマー内に存在できる。いくつかの場合では、ポリマーは、生物由来である、即ち、バイオポリマーである。いくつかの場合では、さらなる部分もポリマー中に存在でき、例えば、本明細書に記載のものなどの標的化部分である。
【0044】
ポリマー内に1種を超えるタイプの繰り返し単位が存在するならば、ポリマーは「コポリマー」であると言われる。ポリマーを用いるいかなる実施態様においても、用いるポリマーは、いくつかの場合ではコポリマーであり得ることが理解される。コポリマーを形成する繰り返し単位は、いかなる様式で並べることもできる。例えば、繰り返し単位は、無作為の順序で、交互の順序で、または、「ブロック」コポリマーとして、即ち、第1の繰り返し単位(例えば、第1ブロック)を各々含む1個またはそれ以上の領域、および、第2の繰り返し単位(例えば、第2ブロック)を各々含む1個またはそれ以上の領域を含めて、並べることができる。ブロックコポリマーは、2種(ジブロックコポリマー)、3種(トリブロックコポリマー)またはそれ以上の数の異なるブロックを有し得る。
【0045】
いくつかの実施態様では、ポリマーは両親媒性である、即ち、親水性部分と疎水性部分、または、相対的に親水性の部分と相対的に疎水性の部分を有する。親水性ポリマーは、一般的に水を引き付けるものであり、疎水性ポリマーは、一般的に水を追い払うものである。親水性または疎水性ポリマーは、例えば、ポリマーのサンプルを製造し、その水との接触角を測定することにより同定できる(典型的には、親水性ポリマーは、約50°より小さい接触角を有し、一方、疎水性ポリマーは、約50°より大きい接触角を有する)。いくつかの場合では、2種またはそれ以上のポリマーの親水性は、相互に相対的に測定できる、即ち、第1のポリマーは、第2のポリマーよりも親水性であるか、親水性ではないことができる。例えば、第1のポリマーは、第2のポリマーよりも小さい接触角を有することができる。2種を超えるポリマーを含む実施態様では、ポリマーを、それらの溶解パラメーターの比較により順番に順位付けることができる。
【0046】
ある実施態様の組では、ポリマー性基本成分(例えば、ポリマー)は、生体適合性であり得る、即ち、典型的には、生きている対象に挿入または注射されたときに有害反応を誘導しない、例えば、有意な炎症、および/または、例えばT細胞反応を介する免疫系によるポリマーの急性拒絶がないポリマーである。当然、「生体適合性」は相対的な用語であり、生体組織と非常に適合するポリマーについてさえ、ある程度の免疫反応は予測されると認識される。しかしながら、本明細書で使用するとき、「生体適合性」は、少なくとも免疫系の一部による物質の急性拒絶、即ち、対象に移植された非生体適合物質が、免疫系による物質の拒絶が適当に制御できないほど激しく、しばしば対象から物質が除去されなければならない程度の免疫反応を誘発すること、の欠如を表す。生体適合性を測定する1つの簡単な試験は、ポリマーを細胞にインビトロで曝すことである;生体適合性ポリマーは、典型的には、適度な濃度で、例えば、約50マイクログラム/106細胞の濃度で、有意な細胞死をもたらさないポリマーである。例えば、生体適合性ポリマーは、線維芽細胞または上皮細胞などの細胞に曝されたときに、そのような細胞により貪食またはその他の方法で取り込まれても、約20%より少ない細胞死を引き起こし得る。本発明の様々な実施態様において有用であり得る生体適合性ポリマーの非限定的な例には、ポリジオキサノン(PDO)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(グリセロールセバシン酸(sebacate))、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリ酸無水物、または、これらのポリマーおよび/または他のポリマーを含むコポリマーまたは誘導体が含まれる。
【0047】
ある種の実施態様では、生体適合性ポリマーは生物分解性である、即ち、ポリマーは、化学的および/または生物学的に、体内などの生理的環境で分解できる。例えば、ポリマーは、水に曝露されると(例えば、対象内で)自然に加水分解するものであり得、ポリマーは、熱(例えば、約37℃の温度で)に曝露されると分解できる。ポリマーの分解は、使用するポリマーまたはコポリマーによって様々な速度で起こり得る。例えば、ポリマーの半減期(ポリマーの50%がモノマーおよび/または他の非ポリマー部分に分解される時間)は、ポリマーに応じて、日、週、月または年の規模であり得る。ポリマーは、例えば、酵素活性または細胞の機構により、いくつかの場合では、例えば、リゾチーム(例えば、比較的低いpHを有する)への曝露を介して、生物学的に分解できる。いくつかの場合では、ポリマーは、細胞に有意な毒性作用を与えずに細胞が再利用または処分できるモノマーおよび/または他の非ポリマー部分まで分解され得る(例えば、ポリラクチドは、加水分解されて乳酸を形成でき、ポリグリコリドは、加水分解されてグリコール酸を形成できる、など)。生物分解性ポリマーの例には、ポリ(ラクチド)(またはポリ(乳酸))、ポリ(グリコリド)(またはポリ(グリコール酸))、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、ポリリジン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ウレタン)、ポリ(酸無水物)、ポリ(エステル)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ウレタン)、ポリ(ベータアミノエステル)など、および、これらおよび/または他のポリマーのコポリマーまたは誘導体、例えば、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
他の実施態様の組では、本発明のポリマーは免疫原性を制御でき、例えば、ポリ(プロピレングリコール)などのポリ(アルキレングリコール)(ポリ(アルキレンオキシド)としても知られる)、または、ポリ(エチレンオキシド)、式−(CH2−CH2−O)n−(ここで、nは任意の整数である)を有するポリ(エチレングリコール)(「PEG」)である。いくつかの実施態様では、分枝状PEGを使用できる(例えば、Veronese et al., 2008, Biodrugs, 22:315-329; Hamidi et al., 2006, Drug Deliv., 13:399-409 参照)。ポリ(エチレングリコール)単位は、ポリマー性基本成分内に任意の適する形態で存在できる。例えば、ポリマー性基本成分はブロックコポリマーであり得、ブロックの1つはポリ(エチレングリコール)である。ポリ(エチレングリコール)繰り返し単位を含むポリマーは、「PEG化」ポリマーとも呼ばれる。そのようなポリマーは、ポリ(エチレングリコール)基の存在のために、炎症および/または免疫原性(即ち、免疫反応を誘発する能力)を制御できる。いくつかの場合では、PEG化は、例えばポリマーの表面に親水層を創製することにより、ポリマーと生物学的部分との間の電荷相互作用を減少するためにも使用でき、このことは、生物学的部分との相互作用からポリマーを遮蔽できる。例えば、PEG化は、粒子の外側よりも疎水性である内部を含む粒子を創製するために使用できる。いくつかの場合では、ポリ(エチレングリコール)繰り返し単位の添加は、例えば、食作用系によるポリマーの取り込みを減らし、一方で形質転換/細胞による取り込み効率を高めることにより、ポリマー結合体の血漿半減期を高めることができる。当業者は、例えば、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)およびNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)を使用して、ポリマーをアミンで終わるPEG基に反応させることにより、例えば、開環重合技法(ROMP)などにより、ポリマーをPEG化する方法および技法を知っているであろう。加えて、本発明のある種の実施態様は、ポリ(エステル−エーテル)を含有するコポリマー、例えば、エステル結合(例えば、R−C(O)−O−R'結合)およびエーテル結合(例えば、R−O−R'結合)により連結された繰り返し単位を有するポリマーを対象とする。
【0049】
本明細書に記載のポリマーは、活性物質に結合するために、ペンダント官能基、即ち、ポリマーの長さに沿って、例えば、ポリマーの一部に存在する官能基をもって製造できる。いくつかの実施態様では、ポリマーは、ポリマーの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15または20個のモノマー単位毎に、約1個の官能基(例えば、結合した官能基)を有する。官能基は、ポリマーの一部に、例えば、ブロックコポリマーに限定されていてもよい。いくつかの実施態様では、官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、アミド、カルバメート、マレイミド、チオール、ハライド、アジド、プロパルジル、アリルなどである。加えて、官能基は、リンカーによりポリマーに結合していてもよい。
【0050】
共有結合(σ−結合、π−結合、金属と非金属の結合、アゴスティック相互作用、ジスルフィド結合および3中心2電子結合などを含む)を使用して、異種官能性(heterofunctional)リンカーを活性物質に結合させる様々な方法が知られている。一例では、結合、例えば、架橋は、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩/N−ヒドロキシスクシンイミド(EDC/NHS)またはベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート/N−ヒドロキシベンソトリアゾール(pyBOP/HOBt)を使用することにより、カルボキシル(またはマレイミド)と第一級アミンの間にアミド結合を形成することにより達成できる。この反応は、水性および有機性溶媒(例えば、限定されないが、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン類、ジオキサンまたはジメチルスルホキシド)の両方に耐えられる。
【0051】
他の例では、結合、例えば、架橋は、マレイミドとスルフヒドリル(チオール)基の間で、水性および有機性溶媒の両方の中で形成される。還元開裂できる架橋は、スルフヒドリル(チオール)基の間で、ピリジルチオール基、3−ニトロ−2−ピリジルチオ(Npys)基およびBoc−S−tert−ブチルメルカプト(StBu)基を介して、達成できる。この反応は、水性および有機性溶媒(例えば、限定されないが、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン類、ジオキサンまたはジメチルスルホキシド)の両方に耐えられる。
【0052】
ペンダント官能基を有する官能化ポリマーの製造方法は、当分野で知られている。例えば、官能化ポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリエステルアミド類の製造方法は、Gerhardt et al., 2006, Biomacromolecules, 7:1735-42 に記載されている。官能化ジラクトン類の合成、並びに、ヒドロキシル官能基を有するポリエステル類、ポリ(乳酸−コ−ヒドロキシメチルグリコール酸)およびポリ(乳酸−コ−グリコール酸−コ−ヒドロキシメチルグリコール酸)の製造における使用は、Leemhuis et al., 2007, Biomacromolecules, 8:2943-49; Leemhuis et al., 2003, Eur. J. Org. Chem., 3344-49; および Leemhuis et al., 2006, Macromolecules, 39:3500-08 に記載されている。ヒドロキシメチルおよびスクシニル化PLAポリマーは、Noga et al., 2008, Biomacromolecules, 9:2056-62 に記載されている。ポリヘキシル−置換ラクチドは、Trimaille et al., 2005, Chimia 59:348-352; および Trimaille et al., 2007, J. Biomed. Mater. Res., 80A:55-65 に開示されている。 Jing and Hillmyer, 2008, J. Am. Chem. Soc., 130:13826-27 は、官能性二環式エステル類を有するPLAを記載している。ペンダントカルボキシル基を有するポリ(α−ヒドロキシ酸)は、Kimura et al., 1988, Macromolecules, 21:3338-40 に記載されている。さらに、生物分解性エステル類は、Kolitz et al., 2009, Macromolecules, DOI: 10.1021/ma900464g; Cohen-Arazi et al., 2008, 41:7259-63 に記載の通り、アミノ酸から誘導できる。いくつかの実施態様では、ポリマーは、Jiang et al., 2008, Macromolecules, 41:1937-44 に記載の通り、「クリック」法により官能化できる。
【0053】
ポリマーの合成および結合のさらなる方法は、US20080248126に開示されており、その全体を出典明示により本明細書の一部とする。
【0054】
活性物質に結合するポリマー、例えばペンダント官能基を有するポリマーの長さは、所望のパラメーターを提供するために変更できる。典型的には、ポリマーの長さを増やすと、活性物質の放出速度は下がる。いくつかの実施態様では、ポリマーは、活性物質への結合前に、約2000g/mol、例えば、約3000g/mol、約4000g/mol、約5,000g/mol、約10,000g/mol、約20,000g/mol、約50,000g/molまたは約100,000g/molの分子量を有する。
【0055】
結合を形成できる反応性官能基の導入は、別個の薬物の結合およびその後の生理的条件でのこの結合の加水分解を可能にし、制御された方法での薬物放出をもたらす。図11は、ペンダントヒドロキシル基を有する生物分解性ポリラクチド誘導体の開発の例示的アプローチを示す。簡単に述べると、酸の存在下で亜硝酸ナトリウムを使用するジアゾ化反応により、アミンをヒドロキシルに変換する。得られるモノマー2を乳酸と共に縮合重合に直接使用でき、ポリラクチドコポリマー、ポリ−OBnを与える。同じポリマーは、環状ラクチドモノマー3の開環重合(ROP)を使用して製造でき、それは、パラ−トルエンスルホン酸を含むトルエン中、非常に希釈された反応条件下で、α−ヒドロキシル酸の脱水反応により製造される。高分子量ポリマーの合成には、ROPアプローチが好ましい。ベンジル保護基は、重合中のヒドロキシル基の副反応を防止する。次いで、Pd/C触媒を使用するベンジル脱保護により、ヒドロキシル官能化生物分解性ポリラクチド(PLA−OH)を合成できる。カルボキシル官能化ポリラクチドの合成には、PLA−OHを無水物、例えば、無水コハク酸または無水イタコン酸で処理できる(図15A参照)。
【0056】
図12は、シスプラチンプロドラッグの結合のための例示的戦略を示す。シスプラチンのプロドラッグである白金一コハク酸塩(Platinum monosuccinate)4を、DCC/HOBTカップリングを使用してPLA−OHポリマーと結合させ、最終のPLA−Ptを生成させる(図12)。同様の戦略を、他の薬物分子の結合に使用できる。
【0057】
活性物質
粒子は、2種またはそれ以上の活性物質を含み、その少なくとも1種は、ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有するポリマーに結合している。選択される活性物質は、幅広い適用(例えば、治療的、画像化的および診断的適用)での使用に適していてよく、タンパク質、ペプチド、糖、脂質、ステロイド、DNA、RNA、低分子薬物および本明細書に記載する任意の物質のプロドラッグが含まれる。本明細書で使用するとき、プロドラッグは、インビボで医薬的に活性な形態に代謝される薬理的物質である。いくつかの場合では、プロドラッグは、医薬的に不活性であるか、または、医薬的に活性な形態よりも有意に活性が低い。
【0058】
いくつかの実施態様では、活性物質は、低分子薬物である。用語「低分子」は、当分野で認識されており、約2000g/モルより小さい、約1500g/モルより小さい、約1000g/モルより小さい、約800g/モルより小さい、約700g/モルより小さい、約600g/モルより小さい、約500g/モルより小さい、約400g/モルより小さい、約300g/モルより小さい、約200g/モルより小さい、約100g/モルより小さい、またはそれより小さい分子量を有する成分を表す。当業者は、低分子薬物がポリマー、例えば、ペンダント官能基を有するポリマーで官能化されるのに適するか否かを判定できるであろう。
【0059】
いくつかの実施態様では、活性物質は、親水性または疎水性である。親水性または疎水性ポリマーは、例えば、活性物質の水中での溶解度を測定することにより同定できる。いくつかの場合では、2種またはそれ以上の活性物質の親水性を相互に比較して測定できる、即ち、第1の活性物質は、第2の活性物質よりも親水性であり得る。例えば、第1の活性物質は、第2の活性物質よりも水中で高い溶解度を有することができる。2種より多い活性物質を含有する実施態様では、溶解度パラメーターを比較することにより活性物質を順位付けできる。
【0060】
いくつかの実施態様では、活性物質の組合せは、障害の処置のために相乗的である。薬物作用と応答の分子ベースの詳細な研究は、多くの薬物および化合物の実験的に決定された薬物に媒介される分子的相互作用のプロフィールおよび調節活性について、実質的な量の情報をもたらした(例えば, Drews, 2000, Science, 287:1960-64; Imming et al., 2007, Nature Rev. Drug Discov. 5,:821-834; Robertson, 2005, Biochemistry, 44:5561-71; Zybarth et al., 2006, Curr. Drug Targets, 7:387-395; Wishartet al., 2006, Nucleic Acids Res., 34:D668-D672; Ya, et al., 2006, Appl. Bioinformatics, 5:131-139; Liu et al., 2007, Nucleic Acids Res., 35:D198-D201; and Ji et al., 2003, Drug Discov. Today, 8:526-529 参照)。薬物の分子の相互作用プロフィールは、その薬力学的、毒性学的、薬物動態学的および組合せの作用に寄与する、個々の生体分子、経路および過程との相互作用を説明する。分子の相互作用プロフィールは、活性物質の組合せの開発を導くために使用できる。
【0061】
使用できる適当な非限定的な活性物質の例には、5−フルオロウラシル(5−FU)、即ち、癌の処置に一般的に使用される代謝拮抗薬が含まれる。典型的な投薬は、15分間にわたるボーラスとしての400mg/m2(即ち、算出された体表面積の平方メートル当たり)での静脈内処置で始まり、次いで、携帯型ポンプが連続的点滴として46時間にわたり2,400mg/m2を送達する。適する化学療法薬を、以下のクラスに分けることができる:アルキル化剤、代謝拮抗薬、アントラサイクリン系薬剤、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、モノクローナル抗体および他の抗癌剤。上記の化学療法薬、即ち、ドキソルビシン、パクリタキセルに加えて、他の適する化学療法薬には、チロシンキナーゼ阻害剤メシル酸イマチニブ(Gleevec(登録商標)またはGlivec(登録商標))、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、アザチオプリン、メルカプトプリン、ピリミジン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン(L01CB)、エトポシド、ドセタキセル、トポイソメラーゼ阻害剤(L01CBおよびL01XX)、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド、エトポシドリン酸塩、テニポシド、ダクチノマイシン、ロニダミンおよびモノクローナル抗体、例えば、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、セツキシマブ、ベバシズマブおよびリツキシマブ(Rituxan(登録商標))などが含まれる。さらなる例示的活性物質には、PARP阻害剤、サバイビン阻害剤、エストラジオールおよびジクロロ酢酸が含まれる。
【0062】
活性物質の他の例には、抗菌剤、鎮痛剤、抗炎症剤、反対刺激剤、凝固調節剤、利尿剤、交感神経模倣薬、代謝調節剤、食欲減退剤、制酸剤および他の胃腸薬;抗寄生虫薬、抗うつ薬、抗高血圧薬、抗コリン薬、刺激剤、抗ホルモン剤、中枢および呼吸刺激剤、薬物拮抗剤、脂質調節剤、尿酸排泄薬、強心配糖体、電解質、麦角およびその誘導体、去痰薬、睡眠薬および鎮静薬、抗糖尿病薬、ドーパミン作用薬、制吐薬、筋弛緩薬、副交感神経刺激薬、抗痙攣薬、抗ヒスタミン剤、ベータ遮断薬、下剤、抗不整脈薬、造影剤、放射性医薬品、抗アレルギー薬、精神安定剤、血管拡張薬、抗ウイルス薬および抗悪性腫瘍薬または細胞分裂阻害薬または抗癌特性を有する他の物質、またはそれらの組合せが含まれるがこれらに限定されない。他の適する活性物質には、避妊薬およびビタミン類並びに微量栄養素および多量栄養素が含まれる。また他の例には、抗菌薬および抗ウイルス薬などの抗感染薬;鎮痛薬および鎮痛薬の組合せ;食欲減退剤;駆虫薬;抗関節炎薬;抗喘息薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗利尿薬;止痢薬;抗ヒスタミン剤;抗炎症剤;抗片頭痛製剤;抗嘔吐剤;抗悪性腫瘍薬;抗パーキンソン症候群の薬物;鎮痒薬;抗精神病薬;解熱薬、鎮痙薬;抗コリン薬;交感神経模倣薬;キサンチン誘導体;カルシウムチャネル遮断薬およびピンドロールなどのベータ遮断薬および抗不整脈薬を含む心血管系製剤;抗高潔薬剤;利尿薬;一般的な冠、末梢および中枢を含む血管拡張薬;中枢神経系刺激薬;うっ血除去薬を含む咳および風邪用製剤;コルチコステロイドを含む、エストラジオールおよび他のステロイドなどのホルモン;睡眠薬;免疫抑制剤;筋弛緩薬;副交感神経遮断薬;覚醒剤;鎮静薬;および精神安定剤;および天然由来または遺伝子操作されたタンパク質、ポリサッカライド、糖タンパク質またはリポタンパク質が含まれる。
【0063】
例示的な代謝調節剤には、ロニダミン、ジクロロ酢酸、アルファ−コハク酸トコフェロール、ジャスモン酸メチル、ベツリン酸およびレスベラトロールが含まれる。いくつかの実施態様では、粒子は、抗癌剤および代謝調節剤を含む。
【0064】
ある種の実施態様では、粒子は、コレステロール低下および心臓病の活性物質であるロバスタチンを含むことができ、それは、本明細書に記載のナノ粒子の内に含まれ得る。他の態様では、粒子のコアに含まれる適当な活性物質は、抗痙攣薬のフェニトイン(米国で Dilantin(登録商標)として、英国で Epanutin(登録商標)として、Pfizer, Incにより販売されている)である。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)によるものを含めて、感染の処置に頻用されるバンコマイシンなどの抗菌剤を、粒子に組み込むことができる。粒子は、場合により、同種間臓器移植後に患者の免疫系の活動および臓器拒絶のリスクを低減するために広く使用される免疫抑制剤である親油性薬物のシクロスポリンを含む(Novartis により、当初の製剤が商品名 Sandimmune(登録商標)として、新しいマイクロエマルジョン製剤が Neoral(登録商標)として販売されている)。シクロスポリンを含む粒子は、乾性角結膜炎の処置用の局所用エマルジョンとして同様に使用できる。これに関して、そのような薬物を組み込んでいる多官能性表面ドメインを有する粒子は、様々な薬物の同等の用量を癌細胞に直接送達するように設計でき、かくして、患者に全身的に送達される量を潜在的に最小化でき、他の組織への付帯的損害を最小化できる。
【0065】
ある種の特別な態様では、本開示の粒子には、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、鎮痛薬、COX−IおよびII阻害剤などの1種またはそれ以上が含まれる。例えば、インドメタシンは、本開示の多相ナノ成分(multiphase nano-component)に導入するのに適するNSAIDである。
【0066】
治療剤の形態の他の活性物質はWO2008/124632に記載されており、その全体を出典明示により本明細書の一部とする。
【0067】
補助的な適合する部分により官能化され得る親水性薬物の非限定的な例には、シスプラチン、カルボプラチン、ミタプラチン(mitaplatin)、オキサリプラチン、ピリプラチン(pyriplatin)、Pt(IV)ヘキサノエート、イリノテカン、ジャスモン酸メチル、リン酸デキサメタゾン、塩酸ニカルジピン、メチルサリチル酸、ジクロロ酢酸、ニトログリセリン、親水性セロトニン5−HT3受容体アンタゴニスト(例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン)、アミノテトラリン類(例えば、S(−)−2−(N−プロピル−N−2−チエニルエチルアミン)−5−ヒドロキシテトラリン)、アントラサイクリンなどが含まれる。いくつかの実施態様では、薬物または薬物前駆物質は、無機または有機金属化合物、例えば、白金化合物(本明細書に記載の通り)、ルテニウム化合物(例えば、trans−[RuCl2(DMSO)4]、trans−[RuCl2(イミダゾール)2]−など)、コバルト化合物、銅化合物、鉄化合物などを含み得る。
【0068】
いくつかの実施態様では、核酸修復の阻害剤は、DNA損傷剤、例えば、白金化合物と組み合わせて製剤化される。
【0069】
一例として、シスプラチンプロドラッグ(白金一コハク酸塩)を、ペンダントヒドロキシル基を有するPLAに官能化した(実施例1参照)。加えて、ドセタキセルをPLA−Ptと組み合わせ(薬物負荷量w/w%:ドセタキセル3%;Pt5%)、シスプラチンおよびドセタキセルのナノ粒子からの制御放出を数日間にわたり立証した。
【0070】
同様のアプローチを、他の活性物質の結合に使用できる。例えば、ペンダントオキサリプラチンを有するポリラクチドの開発のために、オキサリプラチンプロドラッグを、軸方向の位置にカルボキシル基をもって合成でき、それをPLA−OHにカップリングさせる。PLA−OHの無水コハク酸処理でポリラクチドを含有するカルボキシル基を生成させ、この化合物をパクリタキセルのヒドロキシル基に直接カップリングさせることにより、パクリタキセルペンダント基を有するポリラクチドを製造した。ツバシン官能化ポリマーの場合、同じカルボキシル基含有ポリラクチドを、ツバシンのヒドロキシル基に結合させることができる。
【0071】
ある態様では、本発明は、異なる化学的特性を有する複数の活性物質を、例えば、同時に、安全、有効かつ制御された方法で、患者に投与することを可能にする組成物および方法を提供する。複数の活性物質を単一の送達組成物に組み合わせることは、特定の細胞標的、例えば腫瘍細胞への活性物質の標的化も可能にする。実際に、個々の薬物の用量規制毒性(DLT)は2種の薬物が併用して投与される場合に、それらが個別に投与される場合よりも低いので、多くの伝統的な併用療法(例えば、2種またはそれ以上の薬物を使用する癌の処置)の処置効力は、しばしば限定される。そのような場合、各薬物の用量を併用療法では減らす必要があり、それにより、包括的処置効力への個々の薬物の貢献は少なくなる。加えて、これは、新規の相乗作用を同定する機会を妨害する。本発明は、併用治療剤の1種またはそれ以上として生物分解性ポリマーに結合した活性物質を使用することにより、この課題を解決する。これらの結合体は薬物を標的化して送達するので、薬物自体よりも高い用量規制毒性を有する。従って、結合体を併用療法剤の1つまたはそれ以上として使用することにより、組合せの薬物の1種またはそれ以上の用量を増やすことができる。ある実施態様では、異なる薬物を担持する2種またはそれ以上の結合体を組み合わせて投与する。ある実施態様では、1種またはそれ以上の結合していない薬物と共に結合体を投与する。これらの実施態様のいずれかにおいて、組合せ中の1種のみまたは数種の薬物(例えば、2種の組合せ中の1種または両方の薬物)の用量を増やせることを理解すべきである。結合した薬物の用量および/または結合していない薬物の両方を増やせることも理解すべきである。
【0072】
本発明の方法および組成物は、特定の薬物、特定の薬物の組合せ、または、特定の疾患に全く限定されないが、本明細書に開示するある種の組合せは、有益かつ/または相乗的な結果をもたらし得る。
【0073】
例えば、限定ではないが、既知の相乗作用を有するある種の物質を、単一の送達組成物中に組み合わせ得る。例えば、パクリタキセルまたはドセタキセルとゲフィチニブは、乳癌MCF7/ADR細胞において強力な相乗作用を有すると示された;オキサリプラチンとイリノテカンは、AZ−521およびNUGC−4細胞において相乗的抗癌作用を有する;そして、パクリタキセルとツバシンは、チューブリンのアセチル化を相乗的に増強する。加えて、コンブレタスタチンまたは血管新生を阻害する他の物質を、PSMAに特異的な標的化物質を含む送達組成物を含む、送達組成物に組み込むことができる。組み込むことができる他の組合せは、例えば、Jia et al., 2009, Nat. Rev. Drug. Discov., 8:111-128 に見出すことができ、DL−サイクロセリンと没食子酸エピガロカテキン;パクリタキセルとNU6140;ゲフィチニブとタキサン;ゲフィチニブとPD98059;AZTと非ヌクレオシドHIV−1逆転写酵素阻害剤;アプリジン(aplidin)とシタラビン;ゲフィチニブとST1926;シルデナフィルとイロプロスト;デクスメデトミジンとST−91;ミコフェノール酸モフェチルとミゾリビン;パクリタキセルとディスコデルモリド;アンピシリンとダプトマイシン;カンデサルタン−シレキセチルとラミプリル;ジアゾキシドとジブチリル−cGMP;プロポフォールとセボフルラン;アンピシリンとイミペネム;アルテミシニンとクルクミン;ドキソルビシンとトラベクテジン;および、アジスロマイシンとイミペネムを含む。Jia et al., Nat. Rev. Drug. Discov., 8:111-128 の全体を、出典明示により本明細書の一部とする。
【0074】
例えば、限定ではないが、ある種の転移性乳癌は、現在、シクロホスファミド、メトトレキサートおよびフルオロウラシル(CMF)の組合せ、または、シクロホスファミド、ドキソルビシンおよびフルオロウラシル(CAF)の組合せにより処置されている。従って、ある実施態様では、これらの併用療法の上記の物質の2種または3種を、単一の粒子中で投与できる。
【0075】
膀胱、頭頸部および子宮内膜の癌を、M−VAC(メトトレキサート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチン)またはCMV(シスプラチン、メトトレキサート、ビンブラスチン)の2種またはそれ以上の個々の薬物を単一の粒子中で投与することにより、同様に処置できる。
【0076】
当業者は、他の伝統的な併用療法(例えば、限定ではないが、"Combination Cancer Therapy: Modulators and Potentiators", Schwartz, Ed., Humana Press, 2004; "Combination Therapy of AIDS", Ed. by DeClerq et al., Birkhauser, 2004 などに記載されるもののいずれか)について、これらの実施態様の変形物を認識するであろう。
【0077】
標的化物質
ある種の実施態様では、本発明の結合体を、本発明の結合体を特定の細胞タイプ、細胞の集合体または組織に導く標的化物質を含むように改変できる。好ましくは、標的化物質は、粒子の表面に結合している。様々な適する標的化物質が当分野で知られている(Cotten et al., Methods Enzym. 217:618, 1993; Torchilin, Eur. J. Pharm. Sci. 11:881, 2000; Garnett, Adv. Drug Deliv. Rev. 53:171, 2001)。例えば、標的細胞の表面の抗原に結合する任意の数の異なる物質を用いることができる。細胞表面抗原を標的とする抗体は、一般的に、必要な標的への特異性を示す。抗体に加えて、Fab、Fab'またはF(ab')2などの適する免疫反応性断片も用いることができる。標的化メカニズムの形成において使用するのに適する多くの抗体断片は、当分野で既に利用可能である。同様に、標的細胞の表面にある任意の受容体のリガンドは、標的化物質として適当に用いることができる。これらには、任意の天然または合成の低分子または生体分子が含まれ、それは、所望の標的細胞の表面に見出される細胞表面の受容体、タンパク質または糖タンパク質に特異的に結合する。
【0078】
アプタマーなどの核酸リガンドなどの他の標的化物質があり、それは、ある種の標的分子に特異的に結合し、前立腺癌細胞などの癌細胞で過剰発現されるタンパク質を標的化する潜在的な候補である小型オリゴヌクレオチドである。核酸リガンドは、特定の分子に結合するのに使用できる核酸である。例えば、ペガプタニブは、ペグ化抗VEGFアプタマーであり、高い特異性で特定の標的に結合する一本鎖核酸である。ペガプタニブアプタマーは元々FDAにより2004年に加齢黄斑変性(AMD)疾患の処置に認可されたが、腫瘍の血管新生の鍵となる誘導物質として認められたタンパク質であるVEGF165に特異的に結合するので、前立腺癌を処置する可能性を有する。Latil et al., Int. J. Cancer, 89, 167-171 (2000) は、VEGF発現は、早期段階の腫瘍の診断マーカーとして使用できることを示唆する。特異的アプタマーには、例えば、骨芽細胞に結合するアプタマーO−7;前立腺癌細胞に結合するA10 RNAアプタマー;乳癌細胞に結合するアプタマーTTA1;および、拡張されたA9 RNAアプタマーが含まれる(Javier et al., Bioconjug. Chem. 2008 June 18; 19(6):1309-1312)。Wilson らの米国特許出願公開番号20090105172も参照されたい。一般に、アプタマーは、幅広いpH(約4−9)、生理的条件および溶媒で安定である。アプタマーは、抗体よりも免疫原性が低いと知られており、サイズのためにより容易に腫瘍に浸透できる。溝と間隙を含むアプタマー結合部位の形状は、高度に特異的な特徴および薬物様の能力をもたらす。しかしながら、有効な標的化は、RNAアプタマーが癌細胞を正常な細胞から識別することを必要とする。
【0079】
他の例示的標的化物質には、ペプチド、例えば、CLT1およびCLT2が含まれ、これらは、血栓中のフィブリン−フィブロネクチン複合体に結合する。脳、腎臓、肺、皮膚、膵臓、腸、子宮、副腎および前立腺の細胞に結合するための、様々なペプチドが当分野で周知であり、例えば、Pasqualini et al., Mol. Psychiatry, 1:421-2 (1996) および Rajotte et al., J. Clin. Invest., 102:430-437 (1998) に記載のものが含まれる。
【0080】
本発明のある態様では、粒子の表面に結合した2種またはそれ以上の別個の標的化物質が存在し得る。第1の標的は、白血球またはT細胞などの免疫系細胞であり得、第2の標的は、標的領域である腫瘍内の悪性癌細胞であり得る。粒子の表面の標的化物質は、第1の標的細胞に高い選択性で結合し、一方、第2の部分は、一般的な腫瘍標的化表面ドメインを有する。動物に関連する標的と結合するのに適する部分には、本明細書に記載のものが含まれる。従って、本発明の多官能性粒子の標的組織への送達後、腫瘍標的化部分を有する粒子は、一度元の標的化細胞から離れると、第2の標的(例えば癌)細胞と結合できる。ある種の態様では、長期間循環し、選択性が高く、複雑な放出速度論で複数の薬物の放出を可能にする活性物質送達のために、粒子送達組成物が提供される。
【0081】
他の標的化物質には、特定の免疫系細胞(例えば、T細胞またはB細胞)、タンパク質、酵素または対象に関連する他の循環性物質などの生物学的標的に特異的に結合する物質が含まれる。以下は、本明細書に記載の多官能化粒子と共に使用するのに適する標的化部分の例示および非限定的な例を提供する。タンパク質、例えば、樹状細胞のための熱ショックタンパク質HSP70および癌細胞を標的化するための葉酸。ポリサッカライドまたは糖、例えば、白血球を標的化するためのシリル酸、標的化毒素、例えば、サポリン、CD2、CD3、CD28を含む抗体、T細胞、および他の適する抗体は、ワールドワイドウェブ"researchd.com/rdicdabs/ cdindex.htm,"で、インターネット上で入手できる表に列挙されており、これを出典明示により本明細書の一部とする。
【0082】
用語「結合」は、本明細書で使用するとき、相互の親和性または結合能力を示す対応する分子またはその部分の対の間の相互作用を表し、それは、典型的には特異的または非特異的な結合または相互作用によるものであり、生化学的、物理的および/または化学的相互作用を含むが、これらに限定されない。「生物学的結合」は、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモンなどを含む分子対間で起こる相互作用のタイプを定義する。用語「結合パートナー」は、特定の分子との結合を受け得る分子を表す。「特異的結合」は、他の類似の生物学的物質よりも実質的に高い程度で、結合パートナー(または、限られた数の結合パートナー)に結合できるか、またはそれを認識する分子、例えば、ポリヌクレオチド、抗体および他のリガンドによる結合を表す。ある実施態様の組では、標的化部分は、約1マイクロモル濃度、少なくとも約10マイクロモル濃度または少なくとも約100マイクロモル濃度より低い特異性(解離定数により測定する)を有する。
【0083】
標的化物質の非限定的な例には、ペプチド、タンパク質、酵素、核酸、脂肪酸、ホルモン、抗体、炭水化物、ペプチドグリカン、糖ペプチドなどが含まれる。これらおよび他の標的化物質を、下記で詳細に論ずる。いくつかの場合では、例えば、ペプチド、核酸などについて、生物学的標的化部分は比較的大きくてもよい。例えば、生物学的部分は、少なくとも約1,000Da、少なくとも約2,500Da、少なくとも約3000Da、少なくとも約4000Daまたは少なくとも約5,000Daなどの分子量を有し得る。比較的大きい標的化物質は、細胞間で区別を生じるために、いくつかの場合で有用であり得る。例えば、いくつかの場合では、より小さい標的化物質(例えば、約1000Daより小さい)は、標的化適用などのある種の標的化適用のために適当な特性を有さないことがある。対照的に、より大きい分子量の標的化物質は、はるかに高い標的化親和性および/または特異性を与えることができる。例えば、標的化物質は、より小さい解離定数、例えば、密接な結合を与えることができる。しかしながら、他の実施態様では、標的化物質は、比較的小さく、例えば、約1,000Daより小さい、または、約500Daより小さい分子量を有することができる。
【0084】
ある実施態様では、標的化物質は、タンパク質またはペプチドを含む。「タンパク質」および「ペプチド」は、当分野で周知の用語であり、各々が含むアミノ酸の数に関して、当分野で正確に定義されていない。本明細書で使用するとき、これらの用語は、当分野で通常の意味を与えられる。一般的に、ペプチドは、約100アミノ酸より短いアミノ酸配列であるが、300アミノ酸までの配列を含み得る。タンパク質は、一般的に、少なくとも100アミノ酸の分子であるとみなされる。例えば、タンパク質は、タンパク質薬物、抗体、抗体断片、組換え抗体、組換えタンパク質、酵素などであり得る。いくつかの場合では、タンパク質またはペプチドのアミノ酸の1個またはそれ以上は、いくつかの例では例えば、炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、結合、感応化または他の修飾などのためのリンカーなどの化学的部分の付加により、修飾されていてもよい。
【0085】
ペプチドまたはタンパク質の他の例には、アンキリン類、アレスチン類、細菌の膜タンパク質、クラスリン、コネキシン類、ジストロフィン、エンドセリン受容体、スペクトリン、セレクチン、サイトカイン類;ケモカイン類;増殖因子、インシュリン、エリスロポエチン(EPO)、腫瘍壊死因子(TNF)、ニューロペプチド類、ニューロペプチドY、ニューロテンシン、トランスフォーミング増殖因子アルファ、トランスフォーミング増殖因子ベータ、インターフェロン(IFN)およびホルモン類、成長抑制物質、例えば、ゲニステイン、ステロイドなど;糖タンパク質、例えば、ABCトランスポーター類、血小板糖タンパク質、GPIb−IX複合体、GPIIb−IIIa複合体、ビトロネクチン、トロンボモジュリン、CD4、CD55、CD58、CD59、CD44、CD168、リンパ球機能関連抗原、細胞間接着分子、血管細胞接着分子、Thy−1、対向輸送体、CA−15−3抗原、フィブロネクチン類、ラミニン、ミエリン関連糖タンパク質、GAPおよびGAP43が含まれるが、これらに限定されない。他の例には、アフィボディ(affibody)、ナノボディ(nanobody)、アビマー(Avimer)、アドネクチン(Adnectin)、ドメイン抗体および小モジュラー免疫医薬(small modular immunopharmaceutical)(SMIP(商標))(Trubion Pharmaceuticals Inc., Seattle, WA)が含まれる。
【0086】
本明細書で使用するとき、「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的にコードされる1個またはそれ以上のポリペプチドからなるタンパク質または糖タンパク質を表す。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域の遺伝子、並びに、無数の免疫グロブリン可変領域の遺伝子が含まれる。軽鎖は、カッパまたはラムダと分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロンと分類され、それは、次いで、免疫グロブリンのクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを各々定義する。典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、テトラマーを含むと知られている。各テトラマーは、2個の同一のポリペプチド鎖の対で構成され、各対は、1個の「軽鎖」(約25kD)および1個の「重鎖」(約50−70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識を担う約100ないし110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を定義する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)の用語は、これらの軽鎖および重鎖を各々表す。抗体は、そのままの免疫グロブリンとして、または、様々なペプチダーゼによる切断により産生される数々の十分に特徴付けられた断片として存在する。
【0087】
抗体および他の適する標的化物質の非限定的な例には、分化抗原CD−1ないしCD−166およびこれらの分子のリガンドまたは対抗受容体の抗クラスター(anti-cluster);抗サイトカイン抗体、例えば、抗IL−1ないし抗IL−18およびこれらの分子の受容体;抗免疫受容体抗体、T細胞受容体、主要組織適合複合体IおよびII、B細胞受容体、セレクチンキラー細胞抑制受容体、キラー細胞活性化受容体(killer activating receptor)、OX−40、MadCAM−1、Gly−CAM1、インテグリン類、カドヘリン類、シアロアドヘリン(sialoadheren)類、Fas、CTLA−4、Fc−ガンマ受容体、Fc−アルファ受容体、Fc−イプシロン受容体、Fc−ミュー受容体、およびそれらのリガンドに対する抗体;抗メタロプロテイナーゼ抗体、例えば、コラゲナーゼ、MMP−1ないしMMP−8、TIMP−1、TIMP−2;抗細胞溶解/炎症促進性分子、例えば、パーフォリン、補体成分、プロスタノイド、亜酸化窒素、トロンボキサン;または、抗接着性分子、例えば、癌胎児抗原、ラミン類またはフィブロネクチン類が含まれる。
【0088】
標的化物質の他の例には、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−1受容体、IL−2受容体、IL−3受容体、IL−4受容体、IL−5受容体、IL−6受容体、IL−7受容体、IL−8受容体、IL−9受容体、IL−10受容体、IL−11受容体、IL−12受容体、IL−13受容体、IL−14受容体、IL−15受容体、IL−16受容体、IL−17受容体、IL−18受容体、リンホカイン阻害因子、マクロファージコロニー刺激因子、血小板由来増殖因子、幹細胞因子、腫瘍増殖因子ベータ、腫瘍壊死因子、リンホトキシン、Fas、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマなどのサイトカインまたはサイトカイン受容体が含まれる。
【0089】
標的化物質のまた他の例には、増殖因子およびタンパク質ホルモン、例えば、エリスロポエチン、アンジオゲニン、肝細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、神経成長因子、腫瘍増殖因子アルファ、トロンボポエチン、甲状腺刺激因子、甲状腺放出ホルモン(thyroid releasing hormone)、ニューロトロフィン、上皮増殖因子、VEGF、毛様体神経栄養因子、LDL、ソマトメジン、インシュリン増殖因子、または、インシュリン様増殖因子IおよびIIが含まれる。
【0090】
標的化物質のさらなる例には、ケモカイン、例えば、ENA−78、ELC、GRO−アルファ、GRO−ベータ、GRO−ガンマ、HRG、LIF、IP−10、MCP−1、MCP−2、MCP−3、MCP−4、MIP−1アルファ、MIP−1ベータ、MIG、MDC、NT−3、NT−4、SCF、LIF、レプチン、RANTES、リンホタクチン、エオタキシン−1、エオタキシン−2、TARC、TECK、WAP−1、WAP−2、GCP−1、GCP−2、アルファ−ケモカイン受容体、例えば、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7、または、ベータ−ケモカイン受容体、例えば、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6またはCCR7が含まれる。
【0091】
他の実施態様では、標的化物質には核酸が含まれる。用語「核酸」または「オリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用するとき、ヌクレオチドのポリマーを表す。本明細書で使用するとき、「ヌクレオチド」は、当分野で使用されるその通常の意味、即ち、糖部分、リン酸基および塩基(通常、窒素性)を含む分子、を与えられる。典型的には、ヌクレオチドは、糖−リン酸主鎖に連結した1個またはそれ以上の塩基を含む(糖部分のみに連結したリン酸基のない塩基は、「ヌクレオシド」である)。ヌクレオチド内の糖は、例えば、リボース糖(「リボ核酸」または「RNA」)またはデオキシリボース糖(「デオキシリボ核酸」または「DNA」)であり得る。いくつかの場合では、ポリマーは、リボースおよびデオキシリボースの両方の糖を含み得る。塩基の例には、天然産生塩基(例えば、アデノシンまたは「A」、チミジンまたは「T」、グアノシンまたは「G」、シチジンまたは「C」またはウリジンまたは「U」)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの場合では、ポリマーは、ヌクレオシド類似体(例えば、アラシチジン、イノシン、イソグアノシン、ネブラリン(nebularine)、プソイドウリジン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、2−チオチミジン、3−デアザ−5−アザシチジン、2'−デオキシウリジン、3−ニトロピロール、4−メチルインドール、4−チオウリジン、4−チオチミジン、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、2−チオウリジン、5−ブロモシチジン、5−ヨードウリジン、イノシン、6−アザウリジン、6−クロロプリン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−アザアデノシン、8−アジドアデノシン、ベンゾイミダゾール、M1−メチルアデノシン、ピロロ−ピリミジン、2−アミノ−6−クロロプリン、3−メチルアデノシン、5−プロピニルシチジン、5−プロピニルウリジン、5−ブロモウリジン、5−フルオロウリジン、5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、2−チオシチジンなど)、化学的または生物学的に改変された塩基(例えば、メチル化塩基)、インターカレートされた塩基、修飾された糖(例えば、2'−フルオロリボース、2'−アミノリボース、2'−アジドリボース、2'−O−メチルリボース、L−鏡像異性のヌクレオシド類、アラビノース、ヘキソースなど)、修飾されたリン酸部分(例えば、ホスホロチオエートまたは5'−N−ホスホラミダイト結合)、および/または、置換および非置換芳香族性部分を含む、ポリマーに置換し得る他の天然または非天然産生塩基も含み得る。他の適する塩基および/またはポリマー修飾は、当業者に周知である。いくつかの場合では、ポリヌクレオチドは、DNA、RNA、修飾DNA、修飾RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、発現プラスミド系、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、ヌクレオシド、修飾ヌクレオシド、未変化の遺伝子またはこれらの組合せを含み得る。ポリヌクレオチドの他の例には、干渉RNA、天然または非天然siRNA、shRNA、ミクロRNA、リボザイム、DNAプラスミド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、無作為化オリゴヌクレオチドまたはリボザイムが含まれる。
【0092】
腫瘍標的化粒子は、受動的および能動的過程で腫瘍に送達され得る。前者では、ナノ粒子は、受動的拡散または対流により、漏出性の腫瘍毛細血管開窓を通して、腫瘍の間質および細胞に入る。後者は、分子認識に基づく特異的部位への薬物送達を伴う。最も一般的なアプローチは、標的化リガンドをナノ粒子に結合させることである。標的化リガンドは、ナノ粒子と標的細胞部位の受容体の相互作用を増強し、局所的薬物濃度を高める。上記の通り、抗体、トランスフェリン受容体、葉酸受容体および幅広い生体分子を含む多くのリガンドが、成功裏にナノ粒子に結合させられてきた。
【0093】
分子標的化細胞外マトリックス(「ECM」)の例には、グリコサミノグリカン(「GAG」)およびコラーゲンが含まれる。カルボキシ官能基を有する粒子の外表面を、遊離アミン末端を有する病原体関連分子パターン(PAMP)に連結できる。PAMPは、細胞または組織の表面のToll様受容体(TLR)または細胞または組織内部のシグナルを標的とし、それにより、潜在的に取り込みを高める。粒子表面に結合する、または、粒子内に含まれるPAMPには、非メチル化CpGDNA(細菌性)、二本鎖RNA(ウイルス性)、リポポリサッカライド(細菌性)、ペプチドグリカン(細菌性)、リポアラビノマンニン(lipoarabinomannin)(細菌性)、ザイモサン(酵母)、マイコプラズマのリポタンパク質、例えばMALP−2(細菌性)、フラゲリン(細菌性)、ポリ(イノシン酸−シチジル酸)(細菌性)、リポテイコ酸(細菌性)またはイミダゾキノリン類(合成)が含まれ得る。
【0094】
レクチン類も、ムチンおよび粘膜細胞層に標的化するために新しい粒子のリンカーに共有結合できる標的化物質として使用できる。そのようなレクチン類は、トウアズキ(Abrus precatroius)、ツクリタケ(Agaricus bisporus)、ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、パンデイラエア・シンプリシフォリア(Pandeiraea simplicifolia)、ムラサキソシンカ(Bauhinia purpurea)、オオムレスズメ(Caragan arobrescens)、ヒヨコマメ(Cicer arietinum)、ミル(Codium fragile)、チョウセンアサガオ(Datura stramonium)、ドリコスマメ(Dolichos biflorus)、エリスリナ・コラロデンドロン(Erythrina corallodendron)、デイゴマメ(Erythrina cristagalli)、ユーオニムス・ユーロパエウス(Euonymus europaeus)、ダイズ(Glycine max)、へリックス・アスペルサ(Helix aspersa)、へリックス・ポマチア(Helix pomatia)、ジャコウエンドウ(Lathyrus odoratus)、レンズマメ(Lens culinaris)、アメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)、トマト(Lysopersicon esculentum)、マクルラ・ポミフェラ(Maclura pomifera)、ナガレイシ(Momordica charantia)、マイコプラズマ・ガリセプチクム(Mycoplasma gallisepticum)、ナジャ・モカムビク(Naja mocambique)、並びに、レクチン類のコンカナバリンA、スクシニル-コンカナバリンA、トリチカム・ブルガリス(Triticum vulgaris)、ハリエニシダ(Ulex europaeus)I、IIおよびIII、セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)、イヌエンジュ(Maackia amurensis)、コウラナメクジ(Limax fluvus)、ホマルス・アメリカヌス(Homarus americanus)、キャンサー・アンテンナリウス(Cancer antennarius)およびロータス(Lotus tetragonolobus)から単離できる。
【0095】
数種の細胞表面マーカーは、例えば、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、HER−2、HER−3、EGFRおよび葉酸受容体を含む腫瘍ホーミング(tumor-homing)治療剤の可能性のある標的として提唱されてきた。PSMAは、十分に確立された腫瘍マーカーであり、前立腺癌、特に、進行したホルモン非依存性の転移性疾患で上方調節される(Ghosh and Heston, 2004, J. Cell. Biochem., 91:528-539)。PSMAは、転移性前立腺癌の画像化用の腫瘍マーカーとして、そして、実験的免疫治療剤の標的として、用いられてきた。PSMAは、前立腺癌転移の診断画像化用に認可されたモノクローナル抗体を基礎とする造影剤である ProstaScint(登録商標)の分子標的である。PSMAの外部ドメインを標的とする脱免疫化モノクローナル抗体であるJ591は、放射性免疫治療および放射性免疫画像化のための物質として、臨床的に評価された。放射性標識されたJ591は、急速に骨および軟組織の前立腺癌転移に標的化し、抗腫瘍活性を示すと報告されている。興味深いことに、PSMAは、乳癌および肺癌を含むほとんどの非前立腺の固形腫瘍の新血管構造に高レベルで差次的に発現され、非前立腺癌についてのPSMA標的化の臨床的実施可能性が、2つの別個の臨床試験で最近示された(Morris et al., 2007, Clin. Cancer Res., 13:2707-13; Milowsky et al., 2007, J. Clin. Oncol., 25:540-547)。高度に限定された前立腺癌細胞および非前立腺固形腫瘍でのPSMAの存在は、細胞毒性物質のほとんどの固形腫瘍への送達のために、それを魅力的な標的にする。
【0096】
さらなる標的化物質は、WO2008/124632に記載されており、その全体を出典明示により本明細書の一部とする。当分野で知られているか、または開発されるであろう他の標的化部分は、本開示に伴う使用を企図されている。
【0097】
送達組成物の製造方法
本明細書に記載の送達組成物は、当分野で知られている任意の方法、例えば、ナノ沈降およびエマルジョン方法により製造できる。加えて、新しい送達組成物を製造するために、マイクロフルイディクス法を使用できる。
【0098】
単一工程のナノ沈降法は、米国特許第5,118,528号に記載されており、これを出典明示により本明細書の一部とする。これらの方法を使用して、ある物質を含有する溶液を、その物質の溶解度が低い他の溶液(即ち、非溶媒)と混合することによりナノ粒子を合成できる。例えば、ポリマー性(例えば、PLGA−PEG)ナノ粒子を製造でき、そこでは、水非混和性または水混和性の溶媒中のポリマー溶液を、水性の液体(即ち、非溶媒)に添加する。そのようなナノ沈降法は、例えば、全体を出典明示により本明細書の一部とするWO2007/150030にも記載されている。非限定的な例では、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合した親水性活性物質を揮発性の水混和性有機溶媒に溶解して第1の溶液を形成し、疎水性活性物質を揮発性の水混和性有機溶媒に溶解して第2の溶液を形成する。複数の両親媒性ブロックコポリマーを水混和性有機溶媒に溶解することにより第3の溶液を製造し、両親媒性ブロックコポリマーに囲まれた疎水性ポリマーコアを有するナノ粒子が沈降により形成されるように、第1、第2および第3の溶液を合わせる。
【0099】
粒子を製造するダブルエマルジョン法は、Mundargi et al., 2008, Control. Release, 125:193-209 に概説されており、その全体を出典明示により本明細書の一部とする。
【0100】
我々は、ナノ粒子の核形成および集合の均一な条件をもたらす迅速な混合によりPLGA−PEG NPの製造を可能にする、マイクロフルイディクス技法を開発した(Karnik et al., 2008, Nano. Lett., 8:2906-12)。さらに、別々のポリマー性前駆物質のマイクロフルイディクス装置への流入速度を変化させることにより、得られるナノ粒子の特性を体系的かつ再現可能に制御できる。この技法は、薬物官能化ポリマーおよびリガンド官能化ポリマーをコンビナトリアルに混合し、各々が2種またはそれ以上の別個の活性物質、例えば抗癌剤を有する、様々な生物物理化学的特性を有する異なる標的化ポリマー性ナノ粒子のライブラリーを生成するために用いることができる。
【0101】
ナノ粒子は、十分に定義された前駆物質のバッチから出発して、別個の特性をもって、単一の工程で製造できる(Anderson et al., 2004, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101:16028-33)。微量流体の迅速な混合を使用する単一の制御されたナノ沈降工程は、再現可能な自己集合を提供でき、滴下して混合することによる変化性を取り除く。すべての化学的結合工程は、ポリマーからナノ粒子を製剤化する前に行うことができ、さらに変化性を最小化する。様々な前駆物質の割合を変えることにより、様々なサイズ、電荷、PEG被覆度およびリガンド密度を有するナノ粒子を得ることができる。マイクロフルイディクス装置は、ナノ粒子前駆物質溶液の水への迅速な混合を可能にし、再現可能なナノ沈降をもたらす。このアプローチは、頑強であり、設計において極度に簡潔であり、そのため、この方法は、別個の特性を有する均一なナノ粒子製剤を、自動化された高処理量の方法で製造するのに十分に適するものである。制御可能かつ迅速に反応物質を混合し、均一な反応環境を提供する能力は、マイクロフルイディクスシステムを、単分散ナノ粒子の合成に理想的に適するものにしている(DeMello and DeMello, 2004, Lab on a Chip, 4:11N-15N)。マイクロフルイディクス技法の使用は、混合時間にわたる制御のない従来のナノ沈降と比較して、得られるナノ粒子の均一性における劇的な増強および再現性における有意な改善を提供できる。これらの方法は、恐らく、より疎水性のコアを有するより密集したナノ粒子の形成のために、高い薬物負荷量および遅い薬物放出を伴うナノ粒子をもたらす。さらに、方法が簡潔であるために、それは自動化しやすく、そこでは、流入速度を変化させてナノ粒子の組成および特性を制御できる。
【0102】
コンビナトリアル半自動的ナノ粒子合成のための他のマイクロフルイディクスシステムは、別個の生物物理化学的特性を有するナノ粒子のライブラリーを迅速に合成するためにも使用できる。ある例示的なシステムは、4つのコンピューター制御されたシリンジポンプからなり、それは、異なる前駆物質のポリマー、薬物、溶媒および水を、4つの前駆物質(例えば、PLA−薬物A、PLA−薬物B、薬物CおよびPLA−PEG−リガンド)の流入を取り込むように設計されたマイクロフルイディクス装置に送達できる。各前駆物質の流速に依存して、最初にある割合で前駆物質を混合し、別個の前駆物質の組合せをもたらす。この混合工程に続き、フローフォーカシング(flow focusing)を使用するナノ沈降により、与えられた前駆物質の組合せからナノ粒子を合成し、独特の前駆物質の組合せにより決定される特徴を有するナノ粒子製剤を得る。
【0103】
異なる製剤を有する粒子のライブラリーの製造のために、ナノ粒子の1つのバッチの合成後、流速を変化させ、他の別個の製剤をもたらす。相対的な前駆物質の流速を体系的に変化させるためにシリンジポンプをプログラムでき、各流速のセットについて別個のナノ粒子製剤を得る。短時間(例えば、1−5分間)の後、流速を変化させ、1時間当たり10ないし30の別個の製剤の割合で、新しいナノ粒子製剤の生成を連続的にもたらす。
【0104】
送達組成物の使用方法
本発明は、さらに、本明細書に記載の任意の組成物を含む調製物、製剤、キットなどを含む。いくつかの場合では、疾患の処置(例えば、癌)は、本明細書に記載の組成物または「物質」の使用を伴い得る。即ち、本発明の1つの態様は、疾患(例えば、癌または腫瘍)の処置に有用な一連の組成物(例えば、医薬組成物)または物質を含む。これらの組成物は、場合によりそのような症状の処置用の組成物の使用のための指示書を含むキットに包装することもできる。これらおよび他の本発明の実施態様は、本明細書に記載の任意の技法および組成物および組成物の組み合わせに従う、疾患(例えば、癌または腫瘍)の処置の進行も伴い得る。
【0105】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物および方法を使用して、腫瘍または癌の増殖を防止でき、かつ/または、腫瘍または癌の転移を防止できる。いくつかの実施態様では、本発明の組成物を使用して、癌を縮小または破壊できる。本発明の組成物を単独で、または1種またはそれ以上のさらなる抗癌剤または処置(例えば、化学療法剤、標的化された治療剤、偽性標的化(pseudo-targeted)された治療剤、ホルモン、放射線、手術など、または、これらの2つまたはそれ以上の任意の組合せ)と組み合わせて使用できることを理解すべきである。いくつかの実施態様では、本発明の組成物は、手術、放射線および/または化学療法を含む処置を受けた患者に投与できる。ある種の実施態様では、本発明の組成物は、癌の再発を防止するために、または、そのリスクを低減するために、慢性的に投与できる。
【0106】
本発明の粒子を含む組成物は、いくつかの実施態様では、本発明の他の態様に従って、医薬組成物を形成する医薬的に許容し得る担体と組み合わせることができる。当業者に理解される通り、担体は、下記の投与経路、標的組織の位置、送達される薬物、薬物送達の時間経過などに基づいて選択できる。
【0107】
「医薬組成物」または「医薬的に許容し得る」組成物は、本明細書で使用するとき、1種またはそれ以上の医薬的に許容し得る担体(添加物)および/または希釈剤と共に製剤化された、治療的に有効な量の1種またはそれ以上の本明細書に記載の組成物を含む。詳述する通り、本発明の医薬組成物は、固体または液体の形態での投与のために特別に製剤化でき、以下に適応されたものを含む:経口投与、例えば、水薬(水性または非水性の液剤または懸濁剤)、錠剤、例えば、頬内、皮下および全身的吸収に標的化されたもの、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌に適用するためのペースト;非経腸投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射、例えば、滅菌液剤または懸濁剤、または、持続放出製剤として;局所適用、例えば、皮膚、肺または口腔に適用されるクリーム、軟膏または制御放出パッチまたはスプレーとして;膣内または直腸内に、例えば、ペッサリー、クリームまたはフォームとして;舌下に;眼内に;経皮で;または、鼻腔内に、肺に、そして、他の粘膜表面に。
【0108】
語句「医薬的に許容し得る」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題または合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適し、合理的な利益/リスク比に見合う化合物、物質、組成物および/または投与形を表す。
【0109】
語句「医薬的に許容し得る担体」は、本明細書で使用するとき、対象化合物を1つの器官または身体の一部から、他の器官または身体の一部に運搬または輸送するのに関与する、医薬的に許容し得る物質、組成物または媒体、例えば、液体または固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、または、溶媒物質を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合し、患者に有害でないという意味で、「許容し得る」ものでなければならない。医薬的に許容し得る担体として役立ち得る物質の例には、糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースアセテート;粉末状トラガント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、カカオバターおよび坐剤用蝋;油、例えば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油;グリコール類、例えば、プロピレングリコール;ポリオール類、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル類、例えば、エチルオレエートおよびエチルラウレート;アガー;緩衝化剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンを含まない水;等張塩水;リンガー液;エチルアルコール;pH緩衝化溶液;ポリエステル類、ポリカーボネート類、および/または、ポリ酸無水物;および、医薬製剤で用いられる他の非毒性の適合する物質が含まれる。
【0110】
湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、並びに、着色剤、放出剤、被覆剤、甘味料、香味料および香料、保存料および抗酸化剤も、組成物中に存在できる。
【0111】
医薬的に許容し得る抗酸化剤の例には、水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、素ステイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;脂溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロール(例えば、アルファ−コハク酸トコフェロール)など;および、金属キレート化剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが含まれる。
【0112】
本発明の組成物は、一般的に、起こり得る有害な副作用を回避または最小化しながら、最大量の用量で与えられ得る。組成物は、単独で、または、他の化合物、例えば、疾患(例えば、癌)の処置に使用できる他の化合物と混合して、有効量で投与される。有効量は、一般的に、対象内の疾患(例えば、癌)を阻害するのに十分な量である。
【0113】
当業者は、本明細書に記載の任意のアッセイまたは他の既知のアッセイを使用して組成物をスクリーニングすることにより、組成物の有効量が何であるかを決定できる。有効量は、当然、処置される症状の重篤度;年齢、健康状態、サイズおよび体重を含む個々の患者のパラメーター;併用する処置;処置の頻度;または、投与の様式などの要因に依存し得る。これらの要因は当業者に周知であり、日常的な程度の実験で対処できる。いくつかの場合では、最大用量、即ち、健全な医学的判断に従う最高の安全な用量を使用する。
【0114】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の用量レベルは、患者に毒性ではなく、特定の患者、組成物および投与様式について所望の治療応答を達成するのに有効な有効成分の量を得るように、変更できる。
【0115】
選択された用量レベルは、用いる特定の本発明の化合物、または、そのエステル、塩またはアミド、投与経路、投与時間、用いる特定の化合物の排出または代謝の速度、処置期間、用いる特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的健康および以前の医学的歴史、および、医学の分野で周知の同様の要因などの要因を含む様々な要因に依存し得る。
【0116】
当分野で通常の技術を有する医師または獣医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定および処方できる。例えば、医師または獣医師は、医薬組成物において用いる本発明の化合物の投与を、所望の治療効果を達成するのに必要とされるものよりも低いレベルで開始し、次いで、所望の効果が達成されるまで、徐々に用量を増やすことができる。
【0117】
いくつかの実施態様では、本発明の化合物または医薬組成物を、慢性的に対象に提供する。慢性投与は、延長された期間にわたって繰り返される任意の投与形態、例えば、1ヶ月またはそれ以上、1ヶ月以上1年未満、1年またはそれ以上、またはそれより長い期間にわたる繰り返し投与を含む。多くの実施態様では、慢性の処置は、本発明の化合物または医薬組成物を、対象の生涯にわたり繰り返し投与することを含む。例えば、慢性の処置は、規則的な投与を含み得る。例えば、1日1回またはそれ以上、週に1回またはそれ以上、または、月に1回またはそれ以上などの回数繰り返し投与することを含む。一般に、本発明の化合物の一日量などの適する用量は、治療効果を奏するのに有効な最低用量である化合物の量である。そのような有効用量は、一般的に、上記の要因に依存する。
【0118】
所望により、活性化合物の有効な一日量は、1日にわたって適当な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6またはそれ以上の下位用量として、場合により単位投与形で、投与できる。
【0119】
本発明の組成物を単独で投与することが可能である一方、上記の医薬製剤(組成物)として投与できる。
【0120】
本発明の組成物は、いくつかの実施態様では、異常細胞増殖、疾患(例えば、癌)または腫瘍の処置に奨励できるか、または、上記の通り、付随する細胞増殖、癌または腫瘍の処置用の指示書を含む。他の態様では、本発明は、本発明の組成物およびホモログ、アナログ、誘導体、エナンチオマーおよび機能的に同等の組成物のいずれかの投与を介して、疾患(例えば、癌)の予防または処置を奨励することを含む方法を提供し、その方法では、該組成物は疾患を処置できる。「指示書」は、奨励の成分を定義でき、典型的には、本発明の組成物の包装に書かれた、またはそれに伴う、書面の指示を含む。指示書は、任意の方法で提供される任意の口頭または電子的指示も含み得る。「キット」は、典型的には、1つの本発明の組成物またはその組合せおよび指示書、または、ホモログ、アナログ、誘導体、エナンチオマーおよび機能的に同等の組成物を含む包装物を定義するが、本発明の組成物、および、組成物に関して、臨床の専門家が、その指示書が特定の組成物と関連すると明確に認識するように提供される任意の形態の指示書を含み得る。
【0121】
本明細書に記載のキットは、また、上記の種、シグナル伝達成分、生体分子および/または粒子などの化合物を含み得る1個またはそれ以上の容器を含み得る。キットは、また、化合物の混合、希釈および/または投与のための指示書を含み得る。キットは、また、1種またはそれ以上の溶媒、界面活性剤、保存料および/または希釈剤(例えば、生理食塩水(0.9%NaCl)または5%デキストロース)を含む他の容器、並びに、成分を混合、希釈、または、サンプルもしくはそのような処置を必要としている患者に投与するための容器を含み得る。
【0122】
キットの組成物は、適当な形態で、例えば、液体の溶液または乾燥粉末として提供され得る。提供される組成物が乾燥粉末である場合、粉末は、適当な溶媒の添加により再構成でき、溶媒もまた提供できる。液体形態の組成物が使用される実施態様では、液体形態は、濃縮されていても、すぐに使用できるものでもよい。溶媒は、化合物および使用または投与の様式に依存し得る。薬物の組成物に適する溶媒は周知であり、文献から利用できる。
【0123】
キットは、ある実施態様の組では、1個またはそれ以上の容器手段、例えば、バイアル、チューブなどを近い配置で受け入れるように区分されている運搬手段を含み得、容器手段の各々は、特定の組成物を含む。加えて、キットは、他の成分用、例えば、アッセイにおいて有用なバッファー用の容器を含み得る。
【0124】
本明細書で使用するとき、「対象」または「患者」は、任意の哺乳動物(例えば、ヒト)、例えば、疾患(例えば、癌)に罹りやすい哺乳動物を表す。例には、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、または、齧歯類、例えば、マウス、ラット、ハムスターまたはモルモットが含まれる。対象は、疾患を診断された対象、または、他の方法で疾患(例えば、癌)を有すると知られた対象であり得る。いくつかの実施態様では、対象は、疾患を発症するリスクにあると診断され得るか、または、そう知られ得る。ある種の実施態様では、対象は、対象の既知の疾患に基づく処置のために選択され得る。いくつかの実施態様では、対象は、対象で疑われる疾患に基づく処置のために選択され得る。いくつかの実施態様では、疾患は、生物学的サンプル(例えば、尿、痰、全血、血清、便など、または、それらの任意の組合せ)に伴う突然変異の検出により診断され得る。従って、本発明の化合物または組成物は、少なくとも部分的に、対象から得られた少なくとも1つのサンプル(例えば、生検サンプルまたは任意の他の生物学的サンプル)に突然変異が検出されるという事実に基づいて、対象に投与され得る。いくつかの実施態様では、癌は対象において検出または位置づけできないが、少なくとも1つの生物学的サンプルにおける、癌に伴う突然変異の存在は、1種またはそれ以上の本発明の組成物を対象に処方または投与するのに十分であり得る。いくつかの実施態様では、組成物は、癌などの疾患の発展を防止するために投与できる。しかしながら、いくつかの実施態様では、既存の疾患の存在が疑われ得るが、未だ同定されておらず、疾患のさらなる増殖または発展を防止するために本発明の組成物を投与できる。
【0125】
癌などの疾患に関連する突然変異および/または過剰発現を同定または検出するのに、任意の適する技法を使用できることを理解すべきである。例えば、核酸検出技法(例えば、配列解読、ハイブリダイゼーションなど)またはペプチド検出技法(例えば、配列解読、抗体に基づく検出など)を使用できる。いくつかの実施態様では、癌の存在を検出または推論するのに、他の技法を使用できる(例えば、組織診断など)。癌の存在は、癌のシグナル伝達経路に関連する1つまたはそれ以上の他の座位での、突然変異、過剰発現、増幅またはこれらの任意の組合せの検出により、検出または推論できる。
【実施例】
【0126】
実施例
特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定しない以下の実施例で、本発明をさらに説明する。
実施例1. PLA−Ptの合成
薬物で官能化されたポリマーを開発するための1つの戦略は、アミノ酸をそれらの対応するα−ヒドロキシル酸(i)に単純に変換することに基づく(図11)。第1段階は、酸の存在下で6時間にわたり亜硝酸ナトリウムを使用するジアゾ化反応による、アミンのヒドロキシルへの変換を伴う。これは、得られたモノマーを乳酸との縮合重合に直接使用し、ポリラクチドコポリマー、ポリ−OBnを得る高収量の反応である。150℃、3時間、連続的アルゴンパージでバルクの反応条件を使用し、続いて、さらに3時間減圧下で、縮合重合を実施した。1%パラ−トルエンスルホン酸を含むトルエン中の非常に希釈された反応条件下でのα−ヒドロキシル酸の脱水反応により製造した環状ラクチドモノマー(ii)の開環重合(ROP)を使用して、同じポリマーを製造した。
【0127】
高分子量ポリマーの合成には、ROPのアプローチの方が好ましい。ベンジル保護基は、重合中のヒドロキシル基の副反応を防止する。次いで、Pd/C触媒を50psiの圧力で8時間使用するベンジル脱保護により、ヒドロキシル官能化生物分解性ポリラクチド(PLAOH)を合成した。ベンジル基の完全な脱保護を、1H−NMR分光法で、7.3ppmのピークを監視することにより確認した(図2)。カルボキシル官能化ポリラクチドの合成のために、PLAOHを無水コハク酸または無水イタコン酸で処理する。ペンダント親水性薬物を有する生物分解性ポリマーの開発の立証として、シスプラチンのプロドラッグである白金一コハク酸塩を、DCC/HOBTカップリングを使用してポリマーと結合させ、最終のPLA−PtをDMF中、室温で、12時間の反応の後に生成させた(図12)。PLA−Ptにおける白金プロドラッグの存在を、プロドラッグの結合後の6.3ppmでのアミンプロトンの出現により、1H−NMR分光法で可視化した(図2)。
【0128】
実施例2. PLA−OHおよびPLA−Ptナノ粒子の合成および特徴解析
ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)−ポリエチレングリコール(PLGA−PEG)を有するナノ粒子を合成することにより、PLA−OHポリマーのインビトロの毒性を試験した。粒子は、比較的非毒性であり、せいぜい27mg/mLのIC50値であった(図3)。マイクロフルイディクスのアプローチを使用して、2種の薬物を送達できるナノ粒子をナノ沈降により製造した(図4B)。本発明では、我々は、ポリラクチドに沿ってカルボキシルなどの官能基を有する標準的なPLGA−PEGを使用し、それは、親水性薬物をペンダントとして含有し、疎水性薬物の存在下でナノ沈降に使用された。一度ナノ粒子を製造したら、粒子をカップリングにより標的化リガンドで官能化した。シスプラチンプロドラッグを親水性薬物として、ドセタキセルを疎水性薬物として、A10−アプタマーを、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を過剰発現する前立腺癌細胞株に標的化する標的化リガンドとして使用した(図13)。
【0129】
遊離PLGAの存在は、典型的には、PLGA−PEGのナノ沈降中にナノ粒子のサイズを大きくする。マイクロフルイディクスのアプローチを使用して、遊離PLGAの存在下でさえ、より小さいサイズのナノ粒子を達成した(図5A、表1)。バルクのナノ沈降は、150nmを超えるサイズの粒子をもたらし、一方、マイクロフルイディクスのアプローチを使用して、我々は、約100nmのサイズを得ることができた。これらの粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)でさらに特徴解析した(図5B)。TEMの結果は、これらの粒子の約100nmのサイズを裏付けた。白金およびドセタキセルの負荷量は、これらの粒子中で各々5%および1%であった。これらの値は、最初の供給を変えることにより、容易に変更できる。
【0130】
表1. ナノ粒子の特徴解析
【表1】
【0131】
実施例3. ポリ−Ptの電気化学
25℃で、EG&G PAR Model 263 ポテンショスタット(Potentiostat)/ガルバノスタット(Galvanostat)において、電気化学分析ソフトウェア270、並びに、ガラス状炭素作用電極、白金ワイヤー補助電極およびAg/AgCl基準電極を含む3電極設定を用いて、電気化学的測定を行った。電気化学的データは、接合部電位について補正しなかった。KClを支持電解質として使用した。ポリ−Ptは、酸化還元活性を有し、pH7.4でPt(IV)/Pt(II)カップルに−0.801V vs Ag/AgCl付近で非可逆的サイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetric)応答を示し、同じ条件下で、白金一コハク酸塩プロドラッグの値は、−0.850 vs.Ag/AgClであった(図6A−6D)。これらの還元電位は、ポリマー性主鎖の存在が白金中心の電気的または立体的環境に影響を与えず、この構築物が効果的に白金の有効用量を放出して抗癌活性を増強することを示唆する。ポリ−Ptの還元電位の値は、それが血中での早まった還元を回避し、細胞内で還元されることを示す。
【0132】
実施例4. PolyPt−Doce−NPからの白金およびドセタキセルのインビトロ放出
ナノ粒子からの白金(IV)およびドセタキセルの制御放出の速度論を研究した。候補薬物のナノ粒子からの制御放出は、薬物が送達媒体から放出された後で初めて活性になるので、新しい粒子の重要な利点である。放出研究のために、我々は、白金およびドセタキセルのナノ粒子を、PBS(pH7.4)20lで、37℃で透析し、生理的条件を模倣した。PolyPt−Doce−NPの水中の懸濁液を、いくつかの半透性小型透析チューブ(分子量カットオフ100kDa、Pierce)に分注し(各100μL)、リン酸緩衝塩水(PBS)(pH7.4)20lで、37℃で透析した。予め定めた時間で、ナノ粒子懸濁液のアリコートを取り出し、アセトニトリルに溶解した。放出された白金含有量を、原子吸光分析により測定し、購入できるタキソールで得られた標準較正曲線を使用して、ドセタキセル放出をHPLCにより定量した。これらのナノ粒子からの白金(図7A)およびドセタキセル(図7B)の両方の制御放出が観察された。結果は、このシステムが、共有結合した白金中心よりもドセタキセルが早く放出される時間的様式で薬物を放出できることを示した。放出のタイミングは、ポリマー主鎖の長さを伸ばすことにより、さらに延長できる。
【0133】
実施例5. ナノ粒子の細胞毒性
標的化薬物放出構築物のナノ粒子が細胞死を促進する能力を、ヒト前立腺癌LNCaPおよびPC3細胞を使用するMTTアッセイを使用して測定し、標準化合物のシスプラチンおよびPt(IV)一コハク酸塩プロドラッグと比較した。ヒト前立腺癌LNCaPおよびPC3細胞をATCCから入手した。LNCaP細胞はPSMAを過剰発現し、PC3細胞はしない。細胞を37℃、5%CO2、10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMI増殖培地でインキュベートした。細胞を3ないし4日毎に植え継ぎ、植え継ぎ回数が20回に達したら、凍結ストックから再開した。MTTアッセイを使用して構築物の細胞毒性活性を評価した。異なる構築物の溶液を、滅菌PBSで使用前に新しく調製した。すべての白金調製物を、原子吸光分析により定量した。LNCaPおよびPC3細胞を100μLRPMI培地中で96ウェルプレートに播き、24時間インキュベートした。
【0134】
次いで、細胞を様々な濃度の異なる構築物で処理し、12時間37℃でインキュベートした。新鮮な培地を12時間のナノ粒子でのインキュベーション後に置き換え、細胞をさらに48時間インキュベートした。次いで、細胞を3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)(5mg/mL、PBS中)20μLで処理し、5時間インキュベートした。培地を除去し、DMSO100μLの添加により細胞を溶解し、マイクロプレート分光光度計を使用して紫色のホルマザンの吸光を550nmで記録した。各サンプルを、各細胞株につき、3回の独立した実験で、トリプリケートでアッセイした。各細胞株につき、Pt(IV)一コハク酸塩プロドラッグ(一コハク酸)は、生存能に対して最小の効果を有した(図8A−8B)。
【0135】
PC3について、非標的化粒子(PolyPt−NP)および標的化粒子(PolyPt−NP−Apt)の効力は、非結合のシスプラチンのものとほぼ同等であった(図8B)。PSMAを過剰発現するLNCaP細胞について、非標的化粒子(PolyPt−NP)の効力は、非結合のシスプラチンのものとほぼ同等であったが、標的化粒子(PolyPt−NP−Apt)の効力は、約5倍高かった(図8A)。標的化アプタマーの添加も、ドセタキセルまたはドセタキセルとPolyPtの両方を含むナノ粒子のLNCaP細胞における効力を高めた(表2)。この実施例は、標的化ナノ粒子および標的化デュアル薬物ナノ粒子が、PSMAを発現する癌細胞を殺すのに有効であることを立証する。
【0136】
表2.IC50値の比較
【表2】
【0137】
実施例6. PolyPt−NP−Aptの標的化エンドサイトーシス
ポリマー性ナノ粒子は、ファゴサイトーシスおよびエンドサイトーシスを含む様々な過程で細胞に取り込まれ得る。PolyPt−NP−Aptの内在化を研究するために、緑色のフルオレセインをベースとするコレステロールである22−NBD−コレステロールを粒子に含めた。22−NBD−コレステロールを含有する非標的化ポリ−Pt−NPを対照として使用した。LNCaP細胞を顕微鏡のカバースリップ(1.0cm)に、カバースリップ当たり1×105細胞のコンフルエンスで播き、終夜、加湿インキュベーターで、5%CO2で、37℃で、RPMI中で増殖させた。培地を交換し、NBD−コレステロール−PolyPt−NP−Aptの懸濁液を最終フルオロフォア濃度10μMで添加した。次いで、細胞を2.0時間37℃でインキュベートした。培地を除去し、2%パラホルムアルデヒド溶液を使用して、1時間室温で細胞を固定した。細胞をPBS(pH7.4)で3回洗浄した。次いで、細胞をPBS中の0.1%TRITON−X100で10分間透過処理し、続いて、PBSを使用して5回洗浄した。次いで、ブロッキングバッファー(PBS、0.1%ヤギ血清、0.075%グリシン)で、30分間室温(RT)で細胞をブロックした。製造業者の推奨する手順に従い、細胞を初期エンドソームマーカーであるマウスモノクローナルEEA−1と、湿った箱の中で、1時間37℃でインキュベートした。PBSで2回洗浄した後、細胞をブロッキングバッファーで、30分間RTでブロックし、次いで、二次Cy5ヤギ抗マウス抗体と1時間37℃でインキュベートした。PBSで4回洗浄し、水で2回洗浄した後、画像化のためにマウント液[20mM Tris(pH8.0)、0.5%没食子酸N−プロピルおよび70%グリセロール]を使用して細胞を顕微鏡のスライドに乗せた。FITCとローダミンのチャンネルの両方につき、500msecで画像を集めた。
【0138】
緑色蛍光標識コレステロール誘導体である22−NBD−コレステロールを含有するPolyPt−NP−Aptを使用することにより、PSMAを過剰発現する前立腺癌LNCaP細胞による、エンドサイトーシスを介するPolyPt−NP−Aptの標的化された取り込みの明確な証拠が観察された(図9)。LNCaP細胞をコレステロールPolyPt−NP−Aptと2時間インキュベートすること、および、初期エンドソームマーカーEEA−1抗体の使用は、アプタマー標的化ナノ粒子のエンドサイトーシスを介する、エンドソームにおけるこれらのナノ粒子の完全な内在化を示した(図9)。対照的に、非標的化ポリ−Pt−NPは、細胞質全体への蓄積を示した(図9)。この実施例は、標的化ナノ粒子がエンドサイトーシスにより取り込まれたことを立証する。
【0139】
実施例7.細胞毒性量のシスプラチンの放出およびPt−GG付加体の形成
シスプラチンの抗癌活性は、核DNAにおける白金化(platination)生成物の形成に基づく。これらの付加体のいくつかは構造的に同定され、グアニン−グアニン鎖内架橋cis−Pt(NH3)2d(GpG)(図10A)であり、総DNA白金化の>75%を占める。細胞内の白金1,2−d(GpG)付加体の検出は、この付加体に特異的な抗体の使用により実施した。簡潔に述べると、LNCaP細胞を、RPMI培地を使用して6ウェルプレートに播き、終夜37℃でインキュベートした。様々な構築物を最終濃度20μMで添加し、37℃で12時間インキュベートした。次いで、細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄し、HAES−STERIL−PBSに1×106/mLの密度で再懸濁し、予め被覆したスライド(ImmunoSelect, Squarix)に乗せ、空気乾燥させた。細胞の固定を、−20℃で、メタノール中、45分間実施した。5分間、0℃のアルカリ(70mM NaOH、140mM NaCl、40%メタノールv/v)処理で核DNAを変性させ、2段階のタンパク分解手順により細胞のタンパク質を除去した。
【0140】
細胞を最初にペプシンで、37℃で10分間、次いで、プロテイナーゼKで、37℃で5分間消化した。ミルク(1%、PBS中、30分間、25℃)でブロックした後、スライドを抗−(Pt−DNA)Mabs(R−C180.1mg/mL、ミルク中)と、終夜4℃でインキュベートした。PBSで洗浄した後、FITC標識化ヤギ抗(ラットIg)抗体と、37℃で1時間インキュベートすることにより、免疫染色を実施した。ヘキスト(Hoechst)(H33258)(250μg/L)を使用して細胞の核を染色し、画像化用のマウント液を使用して乗せた。我々は、この付加体に特異的なモノクローナル抗体R−C18を使用して、PolyPt−NP−Aptから放出されたシスプラチンが核DNAとこの付加体を形成するか否かを調べた。PSMA+LNCaP細胞をPolyPt−NP−Aptと12時間インキュベートした後、1,2−d(GpG)鎖内架橋の形成が、これらの細胞の核内で、抗体に由来する緑色蛍光として観察された(図10B)。この実施例は、シスプラチンプロドラッグの標的化ナノ粒子で細胞を処理することは、核DNAと共に期待される付加体を形成することを立証する。
【0141】
実施例8. 標的化ナノ粒子のライブラリーのスクリーニング
マイクロフルイディクスのシステムを使用して、PSMA−アプタマー標的化ナノ粒子を含有する約500の薬物のライブラリーを製造し、所望の特徴についてスクリーニングした。前駆物質の水混和性溶液(コ−ブロックポリマー、薬物など)を水に混合することを含むナノ沈降法により、ナノ粒子を作成する。水は薬物およびポリマーには不十分な溶媒であるので、ナノ粒子の沈降が起こる。(a)前駆物質溶液の組成を制御すること、および、(b)混合時間、温度および水流の前駆物質の流れに対する流速の比率などの混合条件を制御することにより、ナノ粒子の特性を制御する。次いで、ナノ粒子に取り込まれた蛍光染料を使用して、PSMA−陰性前立腺癌(PC3)および非前立腺(HeLa)細胞株に対して、PSMAを発現する前立腺癌細胞株(LNCaP)による優先的な取り込みについて、これらの製剤を試験する。このアプローチは、全身投与後にマクロファージを回避でき、かつ、前立腺癌細胞により差次的に取り込まれ得る最適化されたナノ粒子を提供できる。
【0142】
PEGをナノ粒子の表面に加えることにより、ナノ粒子の循環中での半減期は劇的に増加する。最小のマクロファージ取り込みと癌細胞への最大の特異的薬物送達を達成する、粒子のサイズ、表面の修飾、表面の電荷およびリガンド密度を含むナノ粒子の最適な物理および化学的特性を同定する。使用する前駆物質溶液は、(a)表面の電荷および疎水性の制御のために、PLGA−mPEG3400およびPLGA−PEG−COOH、(b)サイズを制御するためのPLGA(c)前駆物質の濃度を制御するためのアセトニトリル、(d)薬物/蛍光レポーター、(e)標的化のために、PLGA−PEG−リガンド結合体、(f)薬物−A官能化PLGAおよび(g)薬物−B官能化PLGAである。前駆物質濃度、混合時間、溶媒と水の比などのパラメーターも、ナノ粒子のサイズおよびゼータ電位に対するこれらの製剤化パラメーターの効果を研究するために、変更した。PCa細胞による好適な結合および取り込みのプロフィールを立証するこれらの製剤の薬物負荷量および放出速度論を、さらに評価し、細胞を基礎とする細胞毒性をMTTアッセイで測定する。各薬物の組合せについて少なくとも5種の候補製剤を同定し、優先的なPCa取り込みについてさらに試験する。
【0143】
実施例9. 動物モデルにおける送達組成物の評価
本明細書に記載の送達組成物を、前立腺癌の動物モデルで評価する。重症複合免疫不全(SCID)マウス(Taconic, Germantown, NY, USA)に、マトリゲル(Matrigel)100μlと混合した1×105LNCaP細胞を両後肢に皮下注射する。平均腫瘍体積が約150mm3に達する6日後に、各グループの平均腫瘍体積が匹敵するように、マウスをグループに分類する(グループ当たり5匹のマウス)。6、9および14日目に、動物をPolyPt−Doce−NP、PolyPt−NP、Doce−NPs、Pt−一コハク酸塩、シスプラチン(5mg/kg)、PolyPt−NP−Apt、PolyPt−Doce−NP−AptおよびDoce−NP−Aptで、I.P.またはi.v.注射により処置する。腫瘍体積の測定を1日目(腫瘍接種)に開始し、腫瘍の体積が身体のサイズの10%を超えるまで、週に2回継続する。腫瘍の増殖に対する最大の効果は、両方の薬物を含有し、LNCaP細胞上のPSMAに標的化されるPolyPt−Doce−NP−Aptで観察される。
【0144】
実施例10. インビボの特徴解析
用量増大研究を実施し、異種移植片および遺伝子改変マウスモデル(GEMM)における腫瘍の減少および/または腫瘍増殖の減速に必要とされる組合せの薬物用量を決定する。同所性腫瘍サイズ比較および効力測定のために、バイオコンジュゲート(bioconjugate)処置の前およびその後に定期的に、マウス前立腺のMRI画像化を実施する。一度有効な用量を決定したら、比較効力研究を実施し、異種移植モデルおよびGEMMで、ナノ粒子−アプタマーバイオコンジュゲートを含有する薬物を、アプタマーを標的化する基を欠く同様のナノ粒子;並びに、遊離の薬物およびプラセボと比較する。111In−標識化バイオコンジュゲートを使用して、腫瘍を有するマウスで生体分布研究も実施し、腫瘍組織におけるバイオコンジュゲートの存在および相対的濃度を評価する。
【0145】
加えて、放出された薬物の腫瘍組織における濃度を評価する研究を実施し、放出速度論を決定する。PLA系から生成したバイオコンジュゲートは、PLGA系からの同様のバイオコンジュゲートと比較して、遅い放出速度を有すると期待される。ポリマーMWも、薬物放出の速度論を変化させる。PCa組織を特異的に標的化でき、腫瘍増殖に対する効力をもたらすバイオコンジュゲートを開発する。
【0146】
ナノ粒子−アプタマーバイオコンジュゲートのインビボの急性投与毒性学的スクリーニング:18匹の動物のコホート(3匹のグループ6個)を、様々な濃度のバイオコンジュゲートポリマーの注射の毒性作用についてアッセイするために確立した。後続の生体分布研究において、LD50より低い濃度を使用する。
【0147】
生体分布:薬物動態および生体分布の分析のために、非腫瘍BALB/cマウスを有する動物に、外側尾静脈注射により、111In−標識化ナノ粒子−アプタマーバイオコンジュゲートまたはアプタマー標的化基を持たない同様のナノ粒子を投与する。生体分布を、最初にSPECT−CT画像化(Gammamedica, X-SPECT)で注射後1−24時間にわたり追跡し、動物を殺す。脳、心臓、腸、肝臓、脾臓、腎臓、筋肉、骨、肺、リンパ節、腸管および皮膚を切除し、重量を測定し、ホモジナイズし、ウェルカウンターで計測する(Wallace, Turku, Finland)。組織濃度を、注射した用量/組織グラムの百分率(%ID/g)で表す。動物に注射した後の様々な時点(1、2、4、8、12、18および24時間)の血液の放射活性から、血中半減期を算出する。
【0148】
異種移植による腫瘍誘導:BALB/cnu/nu動物を、アベルチン(avertin)(225−240mg/kgIP)で麻酔し、後足に圧力を加えることにより、感覚消失を確認する。摂取の直前に、背中の皮膚の部位をポビジン(povidine)またはクロルヘキシジン石鹸でこすり洗いし、70%エタノールで拭った。清潔な手術用マットに、マウスを横向きに置いた。腎臓は体壁を通して認識でき、背中の皮下領域に入る腎臓の長軸に沿って側腹切開を行う。鋭的および鈍的切開を通して腎臓を露出させ、体壁に置く。鋭い切れ目およびそれに続く火で丸めたガラスピペットによる鈍的切開により形成された小さいポケットを介して、一次的腫瘍検体から新しく調製した約0.5−1.0mm3の腫瘍組織を、腎被膜下に移植する。腎臓を体腔に戻し、創傷クリップで皮膚を閉じる。腫瘍は3−4週間以内に発達し、約5−10mmの直径(MRIにより測定)に増殖すると予測される。このサイズは、典型的な25−30gのマウスの体積の1%より小さい。
【0149】
PCaのGEMM:強力なウイルス性癌遺伝子SV40Tagが前立腺の上皮細胞で特異的に発現されるPCaの遺伝子改変マウスモデルを確立した。ヒト腫瘍で見られるように、腫瘍の発達と同時に腫瘍細胞の表面でhPSMAの発現が引き起こされる。
【0150】
用量増大研究:腫瘍が確立された後、増大する用量の薬物(2種または3種の薬物送達システム)ナノ粒子−アプタマーバイオコンジュゲート(0.5−5mg/0.1mL)を外側尾静脈注射により7日間の間隔で3回投与する。腫瘍の体積をMRIにより48時間毎に28日間測定する。
【0151】
比較効力研究:腫瘍が確立された後、4種の異なるタイプのナノ粒子および2種のさらなる対照を外側尾静脈注射により7日間の間隔で3回投与する:1)薬物ナノ粒子−アプタマーバイオコンジュゲート、2)プラセボ(デキストラン)ナノ粒子−アプタマーバイオコンジュゲート、3)アプタマーのない薬物ナノ粒子、4)アプタマーのないプラセボ(デキストラン)ナノ粒子、4)薬物単独、および、5)プラセボ単独。PBSに再懸濁した一定量の化合物(用量増大研究で決定された0.5−5mg/粒子0.1mL、しかし、LD50の50%を超えない)またはPBS単独を、外側尾静脈を介して動物に注射する。次いで、動物を分析前に、温めた回復ケージ中で回復させる。腫瘍の体積をMRIにより48時間毎に28日間測定する。
【0152】
実施例11. 組合せの粒子
白金を基礎とする薬物、即ち、シスプラチンおよびオキサリプラチンの作用に対する様々な代謝活性化因子の相乗効果を評価するために、官能化PLA誘導体を使用することにより、数々の組合せを調査した(表3)。我々は、インビボ研究を使用して、ロニダミン、ジクロロ酢酸と組み合わせたときの、オキサリプラチンおよびシスプラチンの効果を比較した。
【0153】
表3. 白金化合物と代謝モジュレーターの組合せ
【表3】
【0154】
PLA−COOHの合成
−COOH官能基を有する新しいラクチド誘導体を、PLA−OHと無水コハク酸の反応により合成した(図15A)。この新しいPLA誘導体は、−OH、−NH2官能基を有する様々な薬物を結合する機会を提供した。1H分光法を使用して官能化ラクチドPLA−COOHを特徴解析した(図15B)。
【0155】
シスプラチン−ロニダミンの組合せ
ロニダミンは、ミトコンドリアのヘキソキナーゼを阻害する化合物であり、癌細胞の変化した代謝を選択的に攻撃する。研究は、シスプラチンを含むいくつかの他の化学療法薬との組合せでそれが相乗効果を有することを示した。PLA−ロニダミン(PLA−Loni)結合体(図16A)を合成することを目的とした。PLGA−PEG−COOHの存在下でのナノ沈降により、Pt(IV)−ヘキサノエートをPLA−ロニダミンポリマーコアの内側に封入した。ロニダミンを結合したPLAを、1H NMRにより特徴解析した(図16B)。
【0156】
ナノ沈降法を使用して、ロニダミンおよびPt(IV)−ヘキサノエートを共封入したナノ粒子を合成した。簡潔に述べると、PLA−Loni、PLGA−PEG−COOHおよびPt(IV)−ヘキサノエートをアセトニトリルに溶解し、一緒に混合した。この溶液をゆっくりと水に添加し、室温で3時間撹拌した。これらの粒子を超遠心分離法により精製し、最終的に、粒子を脱イオン水に分散させた。動的光散乱法を使用して、粒子のサイズおよび多分散指数を測定した。白金およびロニダミンの封入の効率およびパーセントの負荷量を、白金には原子吸光分析(AAS)を、ロニダミンには逆相液体クロマトグラフィーを使用して測定した。
【0157】
デュアルの薬物の組合せの前立腺細胞におけるインビトロの細胞毒性を、MTTアッセイを使用して評価した(表4)。ナノ粒子内部のロニダミンおよびPt(IV)プロドラッグの組合せは、ナノ粒子内部の単独の物質よりも増強された細胞毒性をもたらした。例えば、前立腺癌LNCaP細胞におけるデュアルの薬物の組合せの毒性は、Ptに関して5倍高かった。PC3細胞における毒性は、Ptに関して約2倍高かった。DU145細胞における毒性は、Ptに関して約2倍高かった。3種すべてのタイプの細胞株において、ロニダミンに関して効力は1000倍を超えて高かった。
【0158】
表4. MTTアッセイにより測定されるLNCaP、PC3およびDU145細胞に対する様々なNPおよび薬物のIC50値の比較
【表4】
【0159】
シスプラチン−DCAの組合せ
ジクロロ酢酸(DCA)は、ミトコンドリアのピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)を阻害し、かくして解糖によるグルコース酸化を促進する小型有機分子である。この現象は、腫瘍細胞のアポトーシスに貢献する。高い割合のDCAを含むシスプラチン−DCAの組合せのために、我々はPLA−DCA誘導体を合成した(図17A)。PLGA−PEG−COOHの存在下でのPLA−DCAにおけるPt(IV)−ヘキサノエートの共封入は、白金とDCAの両方を有するナノ粒子をもたらす。PLA−DCA結合体を、1H分光法により特徴解析した(図17B)。
【0160】
実施例12. 官能化ポリマーの分子量
上記の研究に加えて、官能化ポリマー(PLA−OBn)の分子量を変化させる様々な研究を実施した。この目的で、3つの異なる変数、希釈、触媒濃度およびイニシエーター濃度を使用した。下表は、研究から得られた結果をまとめる。これらの結果から、触媒濃度の変更は、得られる分子量に有意に影響するが、モノマーに関するイニシエーター濃度の変動は有意な変動を示した。典型的な開環重合の速度論に従って、イニシエーターの濃度を下げることにより、得られるポリマーの分子量は増加した(表5)。一方、重合の溶媒を変えることにより、分子量はわずかに変化したが、いかなる傾向にも従わなかった。
【0161】
表5. ポリマーの分子量
【表5】
【0162】
他の実施態様
本発明の数々の実施態様を記載した。それでもなお、本発明の精神と範囲から逸脱せずに、様々な改変を行い得ることが理解される。従って、他の実施態様は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本願は、2009年12月16日に出願された米国特許出願番号61/287,188の優先権を主張し、その全内容を出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
連邦政府に支援された研究に関する言明
本発明は、アメリカ国立衛生研究所により授与された助成番号EB003647およびU54−CA119349の政府の支援により行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本発明は、2種またはそれ以上の活性物質を含む粒子状薬物送達組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
個々の分子標的を対象とする抗癌剤は、限られた効力、乏しい安全性および乏しい耐性プロフィールを示すことが多い。ゲノム解析およびシステムの進歩により、生物学は、癌のより有効な処置のために同時に利用し得る潜在的な相乗作用的治療を見出した。しかしながら、複数の治療物質の標的化された送達は、困難であると明らかになった。薬物をポリマー性ナノ粒子に非共有結合的に封入し、それらを制御された方法で放出することができる一方で、組合せの薬物送達に対する封入戦略の使用は、特に、溶解性、電荷および分子量の異なる薬物を使用するとき、複数の薬物の封入および放出におけるバッチ毎の変動性をもたらし得る。
【発明の概要】
【0005】
概要
複数の薬物または薬物候補を特定の病んだ細胞および組織に、例えば、癌細胞に、例えば、特定の器官または組織の癌細胞に、時間空間的に(tempospatially)制御された方法で有効に送達するためのナノ技術の発展は、今日までに直面した治療的挑戦を潜在的に克服する。本発明は、送達組成物の形成と、送達組成物、例えば粒子からの、活性物質の放出を制御するための方法および組成物を提供する。ある実施態様では、本発明は、薬物送達組成物、例えば、ペンダント(pendant)官能基を有するポリマーなどのポリマーに結合した活性物質を含む粒子の製造方法を提供する。本発明の1つの利点は、薬物で官能化した、または、リガンドで官能化した別個のポリマーを設計し、配合することにより、2種、3種またはそれ以上の薬物を送達できる粒子を再現可能に設計し、特徴付けられることである。加えて、これらの方法は、例えば、それぞれの物質のタイプについて別々に、例えば、活性物質の特徴、例えば、溶解性、電荷、分子量、半減期および/または生体分布プロフィールに関係なく、薬物放出および薬物動態の特徴を調整することを可能にする。さらに、薬物を負荷した粒子を特定の組織または細胞、例えば癌細胞に標的化することにより、活性物質の生体分布を変えられる相乗作用的な薬物の効果が達成できる。これは、より良好な効力および耐容性と言い換えることができ、活性物質を可能性のある臨床開発に適合させる。
【0006】
ある態様では、本発明は、第1の活性物質および第2の活性物質を含有するポリマーマトリックスを含む粒子を特徴とし、該ポリマーマトリックスは、37℃で中性の水性溶液、例えば、緩衝塩溶液(例えばPBS)に粒子を懸濁してから最初の2時間(例えば、最初の4、6、8、10、12、15、20、25または30時間)の内に第1および第2の活性物質の各々の50%未満が放出されるように、第1および第2の活性物質の各々の放出速度を提供するように形成される。いくつかの実施態様では、ポリマーマトリックスは、1種またはそれ以上のさらなる活性物質をさらに含み、制御された、例えば類似の、さらなる活性物質の1種またはそれ以上の放出速度を提供するように形成することもできる。いくつかの実施態様では、第1の活性物質の50%未満が最初の2時間(例えば、最初の4、6、8、10、12、15、20、25または30時間)の内に放出され、第2の活性物質の50%未満が最初の2時間(例えば、最初の4、6、8、10、12、15、20、25または30時間)の内に放出されるように、マトリックスは、第1および第2の活性物質の各々の放出速度を独立して提供するように形成される。
【0007】
他の態様では、本発明は、第1の活性物質および第2の活性物質を含有するポリマーマトリックスを含む粒子を特徴とし、該ポリマーマトリックスは、第1および第2の活性物質の各々が、少なくとも30分間、1時間または2時間(例えば、少なくとも4、6、8、10、12、15、20、25または30時間)の、対象の循環中での半減期を有するように形成される。いくつかの実施態様では、ポリマーマトリックスは、さらに、1種またはそれ以上のさらなる活性物質を含み、1種またはそれ以上のさらなる活性物質の類似の放出速度を提供するように形成することもできる。いくつかの実施態様では、ポリマーマトリックスは、粒子内にあるとき第1の活性物質が少なくとも30分間、1時間または2時間(例えば、少なくとも4、6、8、10、12、15、20、25、30時間)の対象の循環中での半減期を有し、粒子内にあるとき第2の活性物質が独立して少なくとも30分間、1時間または2時間(例えば、少なくとも4、6、8、10、12、15、20、25、30時間)の対象の循環中での半減期を有するように形成する。いくつかの実施態様では、ポリマーマトリックスは、第1の活性物質および/または第2の活性物質がポリマーマトリックスのない活性物質よりも少なくとも30分間、1時間または2時間(例えば、4、6、8、10、12、15、20、25、30時間)長い対象の循環中での半減期を有するように形成する。
【0008】
上記の粒子のいくつかの実施態様では、第1および/または第2の活性物質を、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合させる。任意のさらなる活性物質も、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合させることができる。
【0009】
いくつかの態様では、本発明は、複数の活性物質を有する粒子を特徴とし、該粒子は、(a)(i)生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合した第1の活性物質、および;(ii)第2の活性物質を含有する疎水性ポリマーコア;および、(b)表面に露出した親水層、を含む。いくつかの実施態様では、生物分解性ポリマーは、比較的疎水性の第1末端および比較的親水性の第2末端を有するブロックコポリマーであり、疎水性コアは、第1の活性物質に結合したブロックコポリマーの第1末端を含み、親水層は、ブロックコポリマーの第2末端を含む。いくつかの実施態様では、親水層は、疎水性ポリマーコアと相互作用する相対的に疎水性の末端および表面に露出した相対的に親水性の末端を各々有する複数の両親媒性ブロックコポリマーを含む。いくつかの実施態様では、生物分解性ポリマーおよび結合した活性物質は、完全に疎水性コアに含まれる。他の実施態様では、生物分解性ポリマーは両親媒性であり、疎水性コアおよび親水層の両方に存在する。当然、これらの実施態様は相互に排他的ではない。
【0010】
ある態様では、本発明は、複数の活性物質を有する粒子を特徴とし、該粒子は、(a)(i)生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合した第1の活性物質(例えば、親水性活性物質または疎水性活性物質)および;(ii)第2の活性物質(例えば、親水性活性物質または疎水性活性物質)を含有する疎水性ポリマーコア;および、(b)疎水性ポリマーコアと相互作用する疎水性末端および表面に露出した親水性末端を有する複数の両親媒性ブロックコポリマーを含む、両親媒性の殻、を含む。いくつかの実施態様では、両親媒性の殻は、さらに、疎水性ポリマーコアと相互作用する疎水性末端および標的化物質に結合した親水性末端を各々有する複数の標的化ブロックコポリマーを含む。いくつかの実施態様では、第2の活性物質は、また、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合している。いくつかの実施態様では、第2の活性物質は、生物分解性ポリマーに結合していない疎水性活性物質である。
【0011】
上記粒子のいくつかの実施態様では、標的化物質は、アプタマー、核酸、核酸リガンド、ポリペプチド、タンパク質リガンド、低分子、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、抗体、抗体断片、インテグリン、フィブロネクチン受容体、炭水化物、p−糖タンパク質受容体、ペプチド、ペプチド模倣物、炭化水素、小モジュラー免疫医薬、細胞結合配列、アフィボディ(Affibody)、ナノボディ(Nanobody)、アドネクチン(Adnectin)、ドメインアンチボディ(Domain Antibody)またはアビマー(Avimer)またはこれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施態様では、標的化物質は8個未満のアミノ酸を含むペプチドである。
【0012】
上記粒子のいくつかの実施態様では、標的化物質は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合する。非限定的な例では、標的化物質はA10アプタマーであり得る。
【0013】
上記粒子のいくつかの実施態様では、生物分解性ポリマーには、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ酸無水物またはポリ(ラクチド−コ−グリコール酸)またはそれらの誘導体が含まれる。上記粒子のいくつかの実施態様では、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーには、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ酸無水物またはポリ(ラクチド−コ−グリコール酸)が含まれる。いくつかの実施態様では、生物分解性ポリマーは、コポリマー、例えばブロックコポリマーである。
【0014】
例示的な親水性活性物質には、シスプラチン、カルボプラチン、ミタプラチン(mitaplatin)、オキサリプラチン、ジャスモン酸メチル、ジクロロ酢酸またはイリノテカン、並びにそれらの誘導体またはプロドラッグが含まれる。例示的な疎水性活性物質には、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲフィチニブ、ツバシン(tubacin)、ベツリン酸、レスベラトロール、アルファ−コハク酸トコフェロールまたはコンブレタスタチンおよびそれらの誘導体またはプロドラッグが含まれる。
【0015】
いくつかの実施態様では、第1の活性物質および第2の活性物質は、生体分子、生体活性物質、低分子、薬物、プロドラッグ、薬物誘導体、タンパク質、ペプチド、ワクチン、アジュバント、造影剤(例えば、蛍光部分)またはポリヌクレオチドから独立して選択される。
【0016】
本明細書に記載の活性物質のいずれも、本明細書に記載の任意の他の活性物質または他の活性物質と共に粒子に含まれ得る。いくつかの実施態様では、第1および第2の活性物質は、各々、パクリタキセルまたはドセタキセルおよびゲフィチニブ;ゲフィチニブおよびパクリタキセルまたはドセタキセル;オキサリプラチン(またはオキサリプラチンプロドラッグ)およびイリノテカン;イリノテカンおよびオキサリプラチン(またはオキサリプラチンプロドラッグ);パクリタキセルおよびツバシン;ツバシンおよびパクリタキセル;ロニダミン、ジクロロ酢酸、アルファ−コハク酸トコフェロール、ベツリン酸、または、レスベラトロールおよびヘキサン酸Pt(IV);ヘキサン酸Pt(IV)およびロニダミン、ジクロロ酢酸、アルファ−コハク酸トコフェロール、ベツリン酸またはレスベラトロール;アルファ−コハク酸トコフェロールまたはジャスモン酸メチルおよびドセタキセル;または、ドセタキセルおよびアルファ−コハク酸トコフェロールまたはジャスモン酸メチルである。これらの粒子は、さらに、第3の活性物質、例えば、コンブレタスタチンを含み得る。
【0017】
本明細書に開示の粒子は、さらなる活性物質、例えば、3種、4種、5種、6種またはそれ以上の活性物質を含み得る。いくつかの実施態様では、さらなる活性物質の1種またはそれ以上(例えば、第3の活性物質)は、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合している。
【0018】
いくつかの実施態様では、本明細書に開示の粒子は、約100μmまたはそれ以下、例えば、約10μmまたはそれ以下、約1000nmまたはそれ以下、約800nmまたはそれ以下、約600nmまたはそれ以下、約500nmまたはそれ以下、約400nmまたはそれ以下、約300nmまたはそれ以下、約250nmまたはそれ以下、約200nmまたはそれ以下、約100nmまたはそれ以下、約80nmまたはそれ以下、約60nmまたはそれ以下、約50nmまたはそれ以下、または、約40nmまたはそれ以下の平均直径を有する。いくつかの実施態様では、本明細書に開示の複数の粒子が提供される。複数の粒子は、約100μmまたはそれ以下、例えば、約10μmまたはそれ以下、約1000nmまたはそれ以下、約800nmまたはそれ以下、約600nmまたはそれ以下、約500nmまたはそれ以下、約400nmまたはそれ以下、約300nmまたはそれ以下、約250nmまたはそれ以下、約200nmまたはそれ以下、約100nmまたはそれ以下、約80nmまたはそれ以下、約60nmまたはそれ以下、約50nmまたはそれ以下または約40nmまたはそれ以下の平均の特徴的寸法(characteristic dimension)を有し得る。いくつかの実施態様では、複数の粒子は、0.8またはそれ以下、例えば、0.6またはそれ以下、0.4またはそれ以下、0.2またはそれ以下または0.1またはそれ以下の多分散指数を有する。
【0019】
いくつかの実施態様では、本発明は、任意の上記の粒子および1種またはそれ以上の医薬的に許容し得る担体および/または希釈剤を含む医薬組成物を特徴とする。医薬組成物は、例えば、静脈内、動脈内、経口、経皮、経粘膜、腹腔内、頭蓋内、眼内、硬膜外、くも膜下腔内、局所、浣腸、注射、肺経路または点滴送達用に製剤化できる。
【0020】
いくつかの態様では、本発明は、複数の活性物質を有するナノ粒子の製造方法を特徴とする。それらの方法は、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合した第1の活性物質(例えば、親水性活性物質または疎水性活性物質)を、揮発性の水混和性有機溶媒に溶解し、第1の溶液を形成させること;第2の活性物質(例えば、親水性活性物質または疎水性活性物質)を、揮発性の水混和性有機溶媒に溶解し、第2の溶液を形成させること;両親媒性ブロックコポリマーを水混和性有機溶媒に溶解し、第3の溶液を形成させること;および、両親媒性ブロックコポリマーに囲まれた疎水性ポリマーコアを有するナノ粒子が形成されるように第1、第2および第3の溶液を組み合わせること、を含み得る。
【0021】
いくつかの態様では、本発明は、少なくとも2種の活性物質を含む粒子の製剤化方法を特徴とする。それらの方法は、第1および第2の活性物質を提供すること;第1の活性物質またはそのプロドラッグもしくは誘導体を、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合させること;および、結合した第1の活性物質および第2の活性物質を含む粒子を調製すること、を含み得る。いくつかの実施態様では、それらの方法は、さらに、第2の活性物質またはそのプロドラッグもしくは誘導体を、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合させることを含む。いくつかの実施態様では、第1および第2の活性物質は、生物分解性ポリマーの非存在下で、粒子の形成に適合しない。そのような場合、第1の活性物質および/または第2の活性物質を生物分解性ポリマーに結合させることは、第1および第2の活性物質の粒子形成への適合性を与え得る。上記の方法のいくつかの実施態様では、粒子は、沈降、乳液化または乳液化および溶媒蒸発により形成できる。いくつかの実施態様では、粒子は、マイクロフルイディクス(microfluidics)の装置を使用して形成させる。
【0022】
いくつかの態様では、本発明は、複数の活性物質を対象内の生物学的標的に送達する方法を特徴とする。それらの方法は、標的化物質を含む本明細書に開示の複数の粒子を含む医薬組成物を得ること、ここで、標的化物質は生物学的標的に特異的に結合するものである;および、粒子中の活性物質を生物学的標的に送達するのに有効な量で対象に医薬組成物を投与すること、を含み得る。いくつかの実施態様では、標的化物質は、腫瘍細胞または腫瘍脈管構造に特異的に結合する。
【0023】
他の態様では、本発明は、複数の活性物質を対象に送達する方法を特徴とする。これらの方法は、本明細書に開示の複数の粒子を含む医薬組成物を得ること;および、活性物質を送達するのに有効な量で対象に医薬組成物を投与すること、を含み得る。
【0024】
さらなる態様では、本発明は、それを必要としている対象における、障害、例えば、癌または本明細書に開示の他の障害の処置方法を特徴とし、その方法は、対象に有効量の上記の粒子を投与することを含み、ここで、第1および第2の活性物質は、その障害を処置するように選択される。
【0025】
いくつかの態様では、本発明は、2種またはそれ以上の活性物質の対象への時間空間的な制御投与の方法を特徴とする。それらの方法は、第1の活性物質および第2の活性物質を含むポリマーマトリックスを含む粒子を提供すること、ここで、ポリマーマトリックスは、第1および第2の活性物質の各々の所望の時間空間的放出速度を提供するように形成されている;第1および第2の活性物質が所望の時間空間的放出速度で粒子から放出されるように、粒子を対象に投与すること、を含み得る。いくつかの実施態様では、所望の時間空間的放出速度は、所望の場所、例えば、器官、組織または細胞、または、腫瘍または腫瘍脈管構造での薬物の放出を含む。いくつかの実施態様では、所望の時間空間的放出速度は、第1および第2の活性物質の各々の所望の投与量が対象に提供されるように、第1および第2の活性物質の放出を含む。いくつかの実施態様では、第1および第2の活性物質の一方または両方は、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合している。
【0026】
上記の投与方法のいずれにおいても、粒子または複数の粒子は、静脈内に、動脈内に、経口で、経皮で、経粘膜で、腹腔内に、頭蓋内に、眼内に、硬膜外に、くも膜下腔内に、局所に、浣腸により、注射により、肺経路により、または、点滴により送達できる。
【0027】
本明細書で使用するとき、「親水性活性物質」は、水中、20℃、および1気圧で、50mg/Lまたはそれ以上、例えば、100mg/Lまたはそれ以上、200mg/Lまたはそれ以上、500mg/Lまたはそれ以上、1.0g/Lまたはそれ以上、2.0g/Lまたはそれ以上、または、5.0g/Lまたはそれ以上の溶解度を有するものである。
【0028】
本明細書で使用するとき、「疎水性活性物質」は、水中、20℃、および1気圧で、50mg/L未満、例えば、20mg/L未満、10mg/L未満、5.0mg/L未満、2.0mg/L未満、または、1.0mg/L未満の溶解度を有するものである。
【0029】
いくつかの場合では、2種またはそれ以上の活性物質の親水性を、相互に相対的に測定できる。即ち、第1の活性物質は、第2の活性物質よりも親水性であり得る。例えば、第1の活性物質は、第2の活性物質よりも高い水溶解性を有し得る。
【0030】
断りのない限り、本明細書で使用するすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載のものに類似または相当する方法および材料を使用できるが、適する方法および材料を後述する。本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、出典明示により全体を本明細書の一部とする。矛盾がある場合は、定義を含めて、本明細書が統括する。加えて、材料、方法および実施例は、例示目的のみであり、限定することを意図しない。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から、そして特許請求の範囲から、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図面の説明
【図1】図1Aは、薬物(円形、四角形または三角形)と結合したヒドロキシル官能化ポリラクチド(PLA−OH)、および、標的化リガンドに結合した様々なポリラクチド−ポリエチレングリコール(PLA−PEG)およびPLA−PEGの概略図である。図1Bは、薬物(円形、四角形または三角形)と結合したヒドロキシル官能化ポリラクチドを含む標的化されたナノ粒子およびその組合せの癌細胞の死亡に対する効果の概略図である。
【図2】図2は、官能化ポリラクチドの変換の1H−NMR特徴解析を示す。PLA−OHは、PLA−OBnからベンジル基の脱保護により創製し、7.3ppmでのフェニル環の強度の減少により可視化した。PLA−Ptにおけるプラチナプロドラッグの存在を、プラチナ(IV)一コハク酸塩プロドラッグとの結合後の6.3ppmでのアミノプロトンの出現により可視化した。
【図3】図3は、インビトロのPLA−OHナノ粒子(PLA−OH−NP)の毒性を示す線グラフである。
【図4】図4A−4Bは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)−ポリエチレングリコール−COOH(PLGA−PEG−COOH)を、Pt(IV)一コハク酸塩(ポリ−Pt)およびドセタキセルに結合したPLA−OHと共に含有する例示的ナノ粒子の形成を示す概略図である。ナノ粒子を、ナノ沈降(4A)またはマイクロフルイディクス(4B)の方法により製造できる。
【図5】図5Aは、動的光散乱により測定したPoly−Pt−Doce−NPのサイズを示す柱状図である。図5Bは、Poly−Pt−Doce−NPの透過型電子顕微鏡像である。
【図6】図6A−6Bは、様々なスキャン速度での、DMF−0.1M TBAPF6中のc,c,t[Pt(NH3)Cl2(OH)(コハク酸)](6A)およびDMF−0.1M TBAPF6中のPoly−Pt(IV)(6B)のサイクリックボルタモグラムである。図6C−6Dは、各々、図6Aおよび6Bのボルタモグラムの各最大還元ピーク電位(reduction peak potential maxima)対、ボルタモグラムのスキャン速度のプロットである。
【図7】図7A−7Bは、デュアル薬物Poly−Pt−Doce−NPからのインビトロのプラチナ(7A)およびドセタキセル(7B)の放出を示す。
【図8】図8A−8Bは、Pt(IV)一コハク酸塩(一コハク酸)、シスプラチン、PolyPt−NPおよびPolyPt−NP−AptのLNCaP(8A)およびPC3(8B)細胞に対する細胞毒性を示す線グラフである。
【図9】図9は、PolyPt−NPおよび標的化PolyPt−NP−AptのLNCaP細胞による取り込みを示す一組の顕微鏡像である。DIC、微分干渉コントラスト法;FITC、フルオレセインイソチオシアネート;EEA1、マウスモノクローナル抗体。
【図10】図10Aは、プラチナ−DNA付加体の形成の概略図である。図10Bは、細胞をPolyPt−Doce−NP−AptまたはPolyPt−NP−Aptで処理した後の、LNCaP細胞におけるPt−GG付加体の検出を示す一組の顕微鏡像である。
【図11】図11は、PLA−OH、PLA−COOHおよびPLA−薬物の例示的合成の概略図である。PLA−OHおよびPLA−COOHへの結合について、他の化学を利用できる(例えば、T−NH2)。
【図12】図12は、PLA−OHからのPLA−Ptの形成を示す概略図である。
【図13】図13は、場合により標的化リガンド(A10アプタマー)に結合しているPLA−Ptおよびドセタキセルを含むデュアル薬物ナノ粒子の構築の概略図である。
【図14】図14は、標的化ポリマー性ナノ粒子を開発するためのコンビナトリアル半自動化工程の概略図である。複数の入口のあるマイクロフルイディクスのシステムを、異なる薬物−官能化ポリマー、リガンド−官能化ポリマー、遊離ポリマーおよび遊離薬物の導入に使用し、所望の前駆物質を混合する。混合比は、PCと連結したシリンジポンプにより自動的に制御される投入の流速により管理される。得られるポリマーおよび薬物の前駆物質を、マイクロフルイディクスのチャネル中の流路集束(flow focusing)を介して水性溶液中で沈殿させる。各前駆物質流の組合せは、別個のナノ粒子製剤をもたらし、さらなる精製および分析のために、それを96ウェルプレートに自動的に集める。
【図15】図15Aは、PLA−COOHの合成の概略図である。図15Bは、PLA−COOHの1H−NMR特徴解析を示す。
【図16】図16Aは、PLA−ロニダミンの合成の概略図である。図16Bは、PLA−ロニダミン(PLA−Loni)の1H−NMRスペクトルの重ね合わせを示す。
【図17】図17Aは、PLA−ジクロロ酢酸(PLA−DCA)の合成の概略図である。図17Bは、触媒量の塩基N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下のジクロロ酢酸無水物とPLA−OHの反応により得られるPLA−DCAの1H−NMRスペクトルの重ね合わせを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
本願は、2種またはそれ以上の活性物質を含み、少なくともその一方が生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合している薬物送達組成物を提供する。送達組成物は、複数の薬物、例えば、異なる特徴を有するもの、例えば、親水性および疎水性の薬物を、各薬物の放出パラメーターを独立して制御する能力をもって、同時送達することを可能にする。加えて、送達組成物は、システムを所望の細胞標的に送達するために、標的化物質を含み得る。一例として、プラチナで修飾されたPLAポリマーの内側にドセタキセルを組合せ、適度に高い負荷量(loading)のシスプラチンおよびドセタキセルを同時に前立腺癌細胞に送達するのに適するサイズの粒子を得ることにより、PLA−官能化デュアル薬物送達組成物が開発された。
【0033】
送達組成物
ある態様では、送達組成物は、2種またはそれ以上の活性物質を含む粒子である。活性物質は、生物分解性ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合していることができる。粒子は、また、複数の両親媒性分子、例えば、両親媒性脂質または両親媒性コポリマーを含有する疎水性コアを囲む両親媒性の殻を含み得る。粒子は、さらに、粒子の表面に標的化物質を含み得る。
【0034】
加えて、粒子、例えば、ポリマー性マイクロおよびナノ粒子は、生物分解性であるように、FDAにより既に認可された材料を含むように、そして、サブミクロンのサイズ(例えば、10nm−1000nmまたは他の範囲、例えば、25nm−250nm、例えば、15nm−50nm、10nm−500nm)または、ミクロン規模のサイズになるように、製造できる。ナノ規模の粒子は、本発明では、その最大の断面の寸法で、1000nmまでであるとみなされる。ミクロン規模の粒子は、その最大の断面の寸法で1.0ミクロンを超え(例えば、1.0ミクロンから100ミクロンまで、またはそれ以上、例えば、1.0ないし2.0ミクロン、1.0ないし10.0ミクロン、5ないし25ミクロンおよび25ないし50ミクロン)、また、本明細書に記載の方法に従って製造できる。
【0035】
いくつかの場合では、粒子は、ナノ粒子である、即ち、粒子は、1マイクロメーターより小さい特徴的寸法を有し、ここで、特徴的寸法は、粒子の最大の断面の寸法である。例えば、粒子は、いくつかの場合では、約500nmより小さい、約400nmより小さい、約250nmより小さい、約200nmより小さい、約150nmより小さい、約100nmより小さい、約50nmより小さい、約30nmより小さい、約10nmより小さい、約3nmより小さい、または、約1nmより小さい特徴的寸法を有し得る。
【0036】
いくつかの場合では、粒子集団が存在し得る。本発明の様々な実施態様は、そのような粒子集団を対象とする。例えば、いくつかの実施態様では、粒子集団は、いくつかの場合では、約500nmより小さい、約400nmより小さい、約250nmより小さい、約200nmより小さい、約150nmより小さい、約100nmより小さい、約50nmより小さい、約30nmより小さい、約10nmより小さい、約3nmより小さい、または、約1nmより小さい平均の特徴的寸法を有し得る。いくつかの実施態様では、粒子は、各々、実質的に同じ形状および/またはサイズ(「単分散」)であり得る。例えば、粒子は、約5%または約10%以下の粒子が、粒子の平均の特徴的寸法よりも約10%大きいものを超える特徴的寸法を有するように、そして、いくつかの場合では、約8%、約5%、約3%、約1%、約0.3%、約0.1%、約0.03%または約0.01%以下の粒子が、粒子の平均の特徴的寸法よりも約10%大きいものを超える特徴的寸法を有するように、特徴的寸法の分布を有し得る。いくつかの場合では、約5%以下の粒子が、粒子の平均の特徴的寸法よりも約5%、約3%、約1%、約0.3%、約0.1%、約0.03%または約0.01%大きいものを超える特徴的寸法を有する。
【0037】
いくつかの実施態様では、製造された粒子の25%以下の直径が、平均粒子直径の150%、100%、75%、50%、25%、20%、10%または5%まで平均粒子直径と異なる。各粒子が類似の特性を有するように、サイズ、形状および/または組成の観点で比較的均一な粒子集団を製造することがしばしば望ましい。例えば、本明細書に記載の方法を使用して製造した粒子の少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%が、平均直径または最大寸法の5%、10%または20%以内にある直径または最大寸法を有し得る。いくつかの実施態様では、粒子集団は、サイズ、形状および/または組成に関して不均一であり得る。例えば、出典明示により全体を本明細書の一部とするPCT公開WO2007/150030を参照せよ。
【0038】
いくつかの実施態様では、粒子集団の多分散指数は、0.6またはそれ以下、例えば、0.5それ以下、0.4それ以下、0.3それ以下、0.2それ以下、0.1それ以下または0.05それ以下である。
【0039】
多くの実施態様では、制御放出用に粒子を製剤化する。制御放出は、薬物が後の放出のために予め定められた方法でポリマー系の内に保持されるように、天然または合成ポリマーを活性物質と組み合わせるときに起こる。粒子として設計されたポリマー性薬物送達組成物は、時間または条件依存的に、表面または全体の侵食、拡散および/または膨潤に続く拡散により、結合した活性物質を放出できる。活性物質の放出は、長期または短期間にわたって一定であり得るか、長期または短期間にわたって周期性であり得るか、または、環境または外部事象により引き起こされ得る(例えば、Langer and Tirrell, 2004, Nature, 428:487-492 参照)。一般に、制御放出のポリマー系は、他の薬物送達方法よりも長い期間にわたって特定の範囲の薬物レベルを提供でき、従って、薬物の効力を高め、患者のコンプライアンスを最大にする。
【0040】
PLAおよびPLGAは、非共有結合的に薬物を封入し、制御された方法でそれらを放出するために使用できる一方で、組合せの薬物送達のための戦略の使用は、特に、様々な特徴、例えば、溶解性、電荷、分子量、半減期、生体分布プロフィールを有する薬物を使用するとき、複数の薬物の放出におけるバッチ毎の変動性をもたらし得る。対照的に、本明細書に記載の薬物−ポリマー結合体(conjugate)を含む送達組成物の使用は、特に、異なる溶解性、電荷および分子量の薬物を送達するとき、薬物の充填および放出に対してさらなる制御を与える。
【0041】
理論により縛られることは望まないが、粒子のパラメーター、例えば、サイズ、電荷などは、粒子からの活性物質の送達(例えば、負荷量の喪失、薬物の流出、凝集、所望の場所への送達など)を変更できる。いくつかの場合では、大きい粒子は小さい粒子よりも早くそれらの負荷量を失う傾向があり、かつ/または、薬物流出は大きい粒子より小さい粒子からの方が迅速であり得る。小さい粒子は、いくつかの場合では、大きい粒子よりも凝集し易い。粒子のサイズは、体中の粒子の分布に影響し得る。例えば、血流に注入された大きい粒子は、小さい粒子よりも、小血管にひっかかりやすい。いくつかの例では、大きい粒子は、小さい粒子よりも生物学的障壁(例えば、毛細血管壁)を通過しにくい。送達組成物において使用する粒子のサイズは、その応用に基づいて選択でき、当業者に容易に理解される。例えば、小さいサイズ(例えば、<200nm)の粒子は、患者の血流全体への粒子の全身的送達が望ましい場合に選択できる。別の例として、大きいサイズ(例えば、>200nm)の粒子は、患者の網内皮系による粒子の捕捉(例えば、肝臓、脾臓などにおける粒子の捕捉)が望ましい場合に選択できる。送達時間の望ましい長さは、粒子サイズを選択するときにも考慮され得る。例えば、小さい粒子は大きい粒子よりも長い期間にわたり血流中を循環する傾向がある。
【0042】
いくつかの実施態様では、粒子は、特定の標的、例えば腫瘍の部位に実質的に蓄積するように設計される。いくつかの実施態様では、これは、少なくとも部分的に、本明細書に記載の粒子に結合した標的化部分の存在に起因し得る。いくつかの実施態様では、これは、少なくとも部分的に、粒子が腫瘍部位に特異的に蓄積することを可能にする、増強された透過性および保持(EPR)の効果に起因し得る。EPR効果は、当業者に知られており、それにより、ある種のサイズの物質(例えば、粒子)が正常組織においてよりも遙かに腫瘍組織に蓄積しやすい傾向にある特性を表す。
【0043】
ポリマー
いくつかの実施態様では、送達組成物は、1種またはそれ以上のポリマー性基本成分(例えば、ポリマー)を含む。本明細書で使用する「ポリマー」は、その通常の意味、即ち、共有結合により連結された1種またはそれ以上の繰り返し単位(モノマー)を含む分子構造、を与えられている。繰り返し単位はすべて同一であり得るか、または、いくつかの場合では、1種を超えるタイプの繰り返し単位がポリマー内に存在できる。いくつかの場合では、ポリマーは、生物由来である、即ち、バイオポリマーである。いくつかの場合では、さらなる部分もポリマー中に存在でき、例えば、本明細書に記載のものなどの標的化部分である。
【0044】
ポリマー内に1種を超えるタイプの繰り返し単位が存在するならば、ポリマーは「コポリマー」であると言われる。ポリマーを用いるいかなる実施態様においても、用いるポリマーは、いくつかの場合ではコポリマーであり得ることが理解される。コポリマーを形成する繰り返し単位は、いかなる様式で並べることもできる。例えば、繰り返し単位は、無作為の順序で、交互の順序で、または、「ブロック」コポリマーとして、即ち、第1の繰り返し単位(例えば、第1ブロック)を各々含む1個またはそれ以上の領域、および、第2の繰り返し単位(例えば、第2ブロック)を各々含む1個またはそれ以上の領域を含めて、並べることができる。ブロックコポリマーは、2種(ジブロックコポリマー)、3種(トリブロックコポリマー)またはそれ以上の数の異なるブロックを有し得る。
【0045】
いくつかの実施態様では、ポリマーは両親媒性である、即ち、親水性部分と疎水性部分、または、相対的に親水性の部分と相対的に疎水性の部分を有する。親水性ポリマーは、一般的に水を引き付けるものであり、疎水性ポリマーは、一般的に水を追い払うものである。親水性または疎水性ポリマーは、例えば、ポリマーのサンプルを製造し、その水との接触角を測定することにより同定できる(典型的には、親水性ポリマーは、約50°より小さい接触角を有し、一方、疎水性ポリマーは、約50°より大きい接触角を有する)。いくつかの場合では、2種またはそれ以上のポリマーの親水性は、相互に相対的に測定できる、即ち、第1のポリマーは、第2のポリマーよりも親水性であるか、親水性ではないことができる。例えば、第1のポリマーは、第2のポリマーよりも小さい接触角を有することができる。2種を超えるポリマーを含む実施態様では、ポリマーを、それらの溶解パラメーターの比較により順番に順位付けることができる。
【0046】
ある実施態様の組では、ポリマー性基本成分(例えば、ポリマー)は、生体適合性であり得る、即ち、典型的には、生きている対象に挿入または注射されたときに有害反応を誘導しない、例えば、有意な炎症、および/または、例えばT細胞反応を介する免疫系によるポリマーの急性拒絶がないポリマーである。当然、「生体適合性」は相対的な用語であり、生体組織と非常に適合するポリマーについてさえ、ある程度の免疫反応は予測されると認識される。しかしながら、本明細書で使用するとき、「生体適合性」は、少なくとも免疫系の一部による物質の急性拒絶、即ち、対象に移植された非生体適合物質が、免疫系による物質の拒絶が適当に制御できないほど激しく、しばしば対象から物質が除去されなければならない程度の免疫反応を誘発すること、の欠如を表す。生体適合性を測定する1つの簡単な試験は、ポリマーを細胞にインビトロで曝すことである;生体適合性ポリマーは、典型的には、適度な濃度で、例えば、約50マイクログラム/106細胞の濃度で、有意な細胞死をもたらさないポリマーである。例えば、生体適合性ポリマーは、線維芽細胞または上皮細胞などの細胞に曝されたときに、そのような細胞により貪食またはその他の方法で取り込まれても、約20%より少ない細胞死を引き起こし得る。本発明の様々な実施態様において有用であり得る生体適合性ポリマーの非限定的な例には、ポリジオキサノン(PDO)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(グリセロールセバシン酸(sebacate))、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリ酸無水物、または、これらのポリマーおよび/または他のポリマーを含むコポリマーまたは誘導体が含まれる。
【0047】
ある種の実施態様では、生体適合性ポリマーは生物分解性である、即ち、ポリマーは、化学的および/または生物学的に、体内などの生理的環境で分解できる。例えば、ポリマーは、水に曝露されると(例えば、対象内で)自然に加水分解するものであり得、ポリマーは、熱(例えば、約37℃の温度で)に曝露されると分解できる。ポリマーの分解は、使用するポリマーまたはコポリマーによって様々な速度で起こり得る。例えば、ポリマーの半減期(ポリマーの50%がモノマーおよび/または他の非ポリマー部分に分解される時間)は、ポリマーに応じて、日、週、月または年の規模であり得る。ポリマーは、例えば、酵素活性または細胞の機構により、いくつかの場合では、例えば、リゾチーム(例えば、比較的低いpHを有する)への曝露を介して、生物学的に分解できる。いくつかの場合では、ポリマーは、細胞に有意な毒性作用を与えずに細胞が再利用または処分できるモノマーおよび/または他の非ポリマー部分まで分解され得る(例えば、ポリラクチドは、加水分解されて乳酸を形成でき、ポリグリコリドは、加水分解されてグリコール酸を形成できる、など)。生物分解性ポリマーの例には、ポリ(ラクチド)(またはポリ(乳酸))、ポリ(グリコリド)(またはポリ(グリコール酸))、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、ポリリジン、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ウレタン)、ポリ(酸無水物)、ポリ(エステル)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ウレタン)、ポリ(ベータアミノエステル)など、および、これらおよび/または他のポリマーのコポリマーまたは誘導体、例えば、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
他の実施態様の組では、本発明のポリマーは免疫原性を制御でき、例えば、ポリ(プロピレングリコール)などのポリ(アルキレングリコール)(ポリ(アルキレンオキシド)としても知られる)、または、ポリ(エチレンオキシド)、式−(CH2−CH2−O)n−(ここで、nは任意の整数である)を有するポリ(エチレングリコール)(「PEG」)である。いくつかの実施態様では、分枝状PEGを使用できる(例えば、Veronese et al., 2008, Biodrugs, 22:315-329; Hamidi et al., 2006, Drug Deliv., 13:399-409 参照)。ポリ(エチレングリコール)単位は、ポリマー性基本成分内に任意の適する形態で存在できる。例えば、ポリマー性基本成分はブロックコポリマーであり得、ブロックの1つはポリ(エチレングリコール)である。ポリ(エチレングリコール)繰り返し単位を含むポリマーは、「PEG化」ポリマーとも呼ばれる。そのようなポリマーは、ポリ(エチレングリコール)基の存在のために、炎症および/または免疫原性(即ち、免疫反応を誘発する能力)を制御できる。いくつかの場合では、PEG化は、例えばポリマーの表面に親水層を創製することにより、ポリマーと生物学的部分との間の電荷相互作用を減少するためにも使用でき、このことは、生物学的部分との相互作用からポリマーを遮蔽できる。例えば、PEG化は、粒子の外側よりも疎水性である内部を含む粒子を創製するために使用できる。いくつかの場合では、ポリ(エチレングリコール)繰り返し単位の添加は、例えば、食作用系によるポリマーの取り込みを減らし、一方で形質転換/細胞による取り込み効率を高めることにより、ポリマー結合体の血漿半減期を高めることができる。当業者は、例えば、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)およびNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)を使用して、ポリマーをアミンで終わるPEG基に反応させることにより、例えば、開環重合技法(ROMP)などにより、ポリマーをPEG化する方法および技法を知っているであろう。加えて、本発明のある種の実施態様は、ポリ(エステル−エーテル)を含有するコポリマー、例えば、エステル結合(例えば、R−C(O)−O−R'結合)およびエーテル結合(例えば、R−O−R'結合)により連結された繰り返し単位を有するポリマーを対象とする。
【0049】
本明細書に記載のポリマーは、活性物質に結合するために、ペンダント官能基、即ち、ポリマーの長さに沿って、例えば、ポリマーの一部に存在する官能基をもって製造できる。いくつかの実施態様では、ポリマーは、ポリマーの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15または20個のモノマー単位毎に、約1個の官能基(例えば、結合した官能基)を有する。官能基は、ポリマーの一部に、例えば、ブロックコポリマーに限定されていてもよい。いくつかの実施態様では、官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、アミド、カルバメート、マレイミド、チオール、ハライド、アジド、プロパルジル、アリルなどである。加えて、官能基は、リンカーによりポリマーに結合していてもよい。
【0050】
共有結合(σ−結合、π−結合、金属と非金属の結合、アゴスティック相互作用、ジスルフィド結合および3中心2電子結合などを含む)を使用して、異種官能性(heterofunctional)リンカーを活性物質に結合させる様々な方法が知られている。一例では、結合、例えば、架橋は、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩/N−ヒドロキシスクシンイミド(EDC/NHS)またはベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート/N−ヒドロキシベンソトリアゾール(pyBOP/HOBt)を使用することにより、カルボキシル(またはマレイミド)と第一級アミンの間にアミド結合を形成することにより達成できる。この反応は、水性および有機性溶媒(例えば、限定されないが、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン類、ジオキサンまたはジメチルスルホキシド)の両方に耐えられる。
【0051】
他の例では、結合、例えば、架橋は、マレイミドとスルフヒドリル(チオール)基の間で、水性および有機性溶媒の両方の中で形成される。還元開裂できる架橋は、スルフヒドリル(チオール)基の間で、ピリジルチオール基、3−ニトロ−2−ピリジルチオ(Npys)基およびBoc−S−tert−ブチルメルカプト(StBu)基を介して、達成できる。この反応は、水性および有機性溶媒(例えば、限定されないが、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン類、ジオキサンまたはジメチルスルホキシド)の両方に耐えられる。
【0052】
ペンダント官能基を有する官能化ポリマーの製造方法は、当分野で知られている。例えば、官能化ポリラクチド類、ポリグリコリド類、ポリエステルアミド類の製造方法は、Gerhardt et al., 2006, Biomacromolecules, 7:1735-42 に記載されている。官能化ジラクトン類の合成、並びに、ヒドロキシル官能基を有するポリエステル類、ポリ(乳酸−コ−ヒドロキシメチルグリコール酸)およびポリ(乳酸−コ−グリコール酸−コ−ヒドロキシメチルグリコール酸)の製造における使用は、Leemhuis et al., 2007, Biomacromolecules, 8:2943-49; Leemhuis et al., 2003, Eur. J. Org. Chem., 3344-49; および Leemhuis et al., 2006, Macromolecules, 39:3500-08 に記載されている。ヒドロキシメチルおよびスクシニル化PLAポリマーは、Noga et al., 2008, Biomacromolecules, 9:2056-62 に記載されている。ポリヘキシル−置換ラクチドは、Trimaille et al., 2005, Chimia 59:348-352; および Trimaille et al., 2007, J. Biomed. Mater. Res., 80A:55-65 に開示されている。 Jing and Hillmyer, 2008, J. Am. Chem. Soc., 130:13826-27 は、官能性二環式エステル類を有するPLAを記載している。ペンダントカルボキシル基を有するポリ(α−ヒドロキシ酸)は、Kimura et al., 1988, Macromolecules, 21:3338-40 に記載されている。さらに、生物分解性エステル類は、Kolitz et al., 2009, Macromolecules, DOI: 10.1021/ma900464g; Cohen-Arazi et al., 2008, 41:7259-63 に記載の通り、アミノ酸から誘導できる。いくつかの実施態様では、ポリマーは、Jiang et al., 2008, Macromolecules, 41:1937-44 に記載の通り、「クリック」法により官能化できる。
【0053】
ポリマーの合成および結合のさらなる方法は、US20080248126に開示されており、その全体を出典明示により本明細書の一部とする。
【0054】
活性物質に結合するポリマー、例えばペンダント官能基を有するポリマーの長さは、所望のパラメーターを提供するために変更できる。典型的には、ポリマーの長さを増やすと、活性物質の放出速度は下がる。いくつかの実施態様では、ポリマーは、活性物質への結合前に、約2000g/mol、例えば、約3000g/mol、約4000g/mol、約5,000g/mol、約10,000g/mol、約20,000g/mol、約50,000g/molまたは約100,000g/molの分子量を有する。
【0055】
結合を形成できる反応性官能基の導入は、別個の薬物の結合およびその後の生理的条件でのこの結合の加水分解を可能にし、制御された方法での薬物放出をもたらす。図11は、ペンダントヒドロキシル基を有する生物分解性ポリラクチド誘導体の開発の例示的アプローチを示す。簡単に述べると、酸の存在下で亜硝酸ナトリウムを使用するジアゾ化反応により、アミンをヒドロキシルに変換する。得られるモノマー2を乳酸と共に縮合重合に直接使用でき、ポリラクチドコポリマー、ポリ−OBnを与える。同じポリマーは、環状ラクチドモノマー3の開環重合(ROP)を使用して製造でき、それは、パラ−トルエンスルホン酸を含むトルエン中、非常に希釈された反応条件下で、α−ヒドロキシル酸の脱水反応により製造される。高分子量ポリマーの合成には、ROPアプローチが好ましい。ベンジル保護基は、重合中のヒドロキシル基の副反応を防止する。次いで、Pd/C触媒を使用するベンジル脱保護により、ヒドロキシル官能化生物分解性ポリラクチド(PLA−OH)を合成できる。カルボキシル官能化ポリラクチドの合成には、PLA−OHを無水物、例えば、無水コハク酸または無水イタコン酸で処理できる(図15A参照)。
【0056】
図12は、シスプラチンプロドラッグの結合のための例示的戦略を示す。シスプラチンのプロドラッグである白金一コハク酸塩(Platinum monosuccinate)4を、DCC/HOBTカップリングを使用してPLA−OHポリマーと結合させ、最終のPLA−Ptを生成させる(図12)。同様の戦略を、他の薬物分子の結合に使用できる。
【0057】
活性物質
粒子は、2種またはそれ以上の活性物質を含み、その少なくとも1種は、ポリマー、例えば、ペンダント官能基を有するポリマーに結合している。選択される活性物質は、幅広い適用(例えば、治療的、画像化的および診断的適用)での使用に適していてよく、タンパク質、ペプチド、糖、脂質、ステロイド、DNA、RNA、低分子薬物および本明細書に記載する任意の物質のプロドラッグが含まれる。本明細書で使用するとき、プロドラッグは、インビボで医薬的に活性な形態に代謝される薬理的物質である。いくつかの場合では、プロドラッグは、医薬的に不活性であるか、または、医薬的に活性な形態よりも有意に活性が低い。
【0058】
いくつかの実施態様では、活性物質は、低分子薬物である。用語「低分子」は、当分野で認識されており、約2000g/モルより小さい、約1500g/モルより小さい、約1000g/モルより小さい、約800g/モルより小さい、約700g/モルより小さい、約600g/モルより小さい、約500g/モルより小さい、約400g/モルより小さい、約300g/モルより小さい、約200g/モルより小さい、約100g/モルより小さい、またはそれより小さい分子量を有する成分を表す。当業者は、低分子薬物がポリマー、例えば、ペンダント官能基を有するポリマーで官能化されるのに適するか否かを判定できるであろう。
【0059】
いくつかの実施態様では、活性物質は、親水性または疎水性である。親水性または疎水性ポリマーは、例えば、活性物質の水中での溶解度を測定することにより同定できる。いくつかの場合では、2種またはそれ以上の活性物質の親水性を相互に比較して測定できる、即ち、第1の活性物質は、第2の活性物質よりも親水性であり得る。例えば、第1の活性物質は、第2の活性物質よりも水中で高い溶解度を有することができる。2種より多い活性物質を含有する実施態様では、溶解度パラメーターを比較することにより活性物質を順位付けできる。
【0060】
いくつかの実施態様では、活性物質の組合せは、障害の処置のために相乗的である。薬物作用と応答の分子ベースの詳細な研究は、多くの薬物および化合物の実験的に決定された薬物に媒介される分子的相互作用のプロフィールおよび調節活性について、実質的な量の情報をもたらした(例えば, Drews, 2000, Science, 287:1960-64; Imming et al., 2007, Nature Rev. Drug Discov. 5,:821-834; Robertson, 2005, Biochemistry, 44:5561-71; Zybarth et al., 2006, Curr. Drug Targets, 7:387-395; Wishartet al., 2006, Nucleic Acids Res., 34:D668-D672; Ya, et al., 2006, Appl. Bioinformatics, 5:131-139; Liu et al., 2007, Nucleic Acids Res., 35:D198-D201; and Ji et al., 2003, Drug Discov. Today, 8:526-529 参照)。薬物の分子の相互作用プロフィールは、その薬力学的、毒性学的、薬物動態学的および組合せの作用に寄与する、個々の生体分子、経路および過程との相互作用を説明する。分子の相互作用プロフィールは、活性物質の組合せの開発を導くために使用できる。
【0061】
使用できる適当な非限定的な活性物質の例には、5−フルオロウラシル(5−FU)、即ち、癌の処置に一般的に使用される代謝拮抗薬が含まれる。典型的な投薬は、15分間にわたるボーラスとしての400mg/m2(即ち、算出された体表面積の平方メートル当たり)での静脈内処置で始まり、次いで、携帯型ポンプが連続的点滴として46時間にわたり2,400mg/m2を送達する。適する化学療法薬を、以下のクラスに分けることができる:アルキル化剤、代謝拮抗薬、アントラサイクリン系薬剤、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、モノクローナル抗体および他の抗癌剤。上記の化学療法薬、即ち、ドキソルビシン、パクリタキセルに加えて、他の適する化学療法薬には、チロシンキナーゼ阻害剤メシル酸イマチニブ(Gleevec(登録商標)またはGlivec(登録商標))、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、アザチオプリン、メルカプトプリン、ピリミジン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン(L01CB)、エトポシド、ドセタキセル、トポイソメラーゼ阻害剤(L01CBおよびL01XX)、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド、エトポシドリン酸塩、テニポシド、ダクチノマイシン、ロニダミンおよびモノクローナル抗体、例えば、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、セツキシマブ、ベバシズマブおよびリツキシマブ(Rituxan(登録商標))などが含まれる。さらなる例示的活性物質には、PARP阻害剤、サバイビン阻害剤、エストラジオールおよびジクロロ酢酸が含まれる。
【0062】
活性物質の他の例には、抗菌剤、鎮痛剤、抗炎症剤、反対刺激剤、凝固調節剤、利尿剤、交感神経模倣薬、代謝調節剤、食欲減退剤、制酸剤および他の胃腸薬;抗寄生虫薬、抗うつ薬、抗高血圧薬、抗コリン薬、刺激剤、抗ホルモン剤、中枢および呼吸刺激剤、薬物拮抗剤、脂質調節剤、尿酸排泄薬、強心配糖体、電解質、麦角およびその誘導体、去痰薬、睡眠薬および鎮静薬、抗糖尿病薬、ドーパミン作用薬、制吐薬、筋弛緩薬、副交感神経刺激薬、抗痙攣薬、抗ヒスタミン剤、ベータ遮断薬、下剤、抗不整脈薬、造影剤、放射性医薬品、抗アレルギー薬、精神安定剤、血管拡張薬、抗ウイルス薬および抗悪性腫瘍薬または細胞分裂阻害薬または抗癌特性を有する他の物質、またはそれらの組合せが含まれるがこれらに限定されない。他の適する活性物質には、避妊薬およびビタミン類並びに微量栄養素および多量栄養素が含まれる。また他の例には、抗菌薬および抗ウイルス薬などの抗感染薬;鎮痛薬および鎮痛薬の組合せ;食欲減退剤;駆虫薬;抗関節炎薬;抗喘息薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗利尿薬;止痢薬;抗ヒスタミン剤;抗炎症剤;抗片頭痛製剤;抗嘔吐剤;抗悪性腫瘍薬;抗パーキンソン症候群の薬物;鎮痒薬;抗精神病薬;解熱薬、鎮痙薬;抗コリン薬;交感神経模倣薬;キサンチン誘導体;カルシウムチャネル遮断薬およびピンドロールなどのベータ遮断薬および抗不整脈薬を含む心血管系製剤;抗高潔薬剤;利尿薬;一般的な冠、末梢および中枢を含む血管拡張薬;中枢神経系刺激薬;うっ血除去薬を含む咳および風邪用製剤;コルチコステロイドを含む、エストラジオールおよび他のステロイドなどのホルモン;睡眠薬;免疫抑制剤;筋弛緩薬;副交感神経遮断薬;覚醒剤;鎮静薬;および精神安定剤;および天然由来または遺伝子操作されたタンパク質、ポリサッカライド、糖タンパク質またはリポタンパク質が含まれる。
【0063】
例示的な代謝調節剤には、ロニダミン、ジクロロ酢酸、アルファ−コハク酸トコフェロール、ジャスモン酸メチル、ベツリン酸およびレスベラトロールが含まれる。いくつかの実施態様では、粒子は、抗癌剤および代謝調節剤を含む。
【0064】
ある種の実施態様では、粒子は、コレステロール低下および心臓病の活性物質であるロバスタチンを含むことができ、それは、本明細書に記載のナノ粒子の内に含まれ得る。他の態様では、粒子のコアに含まれる適当な活性物質は、抗痙攣薬のフェニトイン(米国で Dilantin(登録商標)として、英国で Epanutin(登録商標)として、Pfizer, Incにより販売されている)である。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)によるものを含めて、感染の処置に頻用されるバンコマイシンなどの抗菌剤を、粒子に組み込むことができる。粒子は、場合により、同種間臓器移植後に患者の免疫系の活動および臓器拒絶のリスクを低減するために広く使用される免疫抑制剤である親油性薬物のシクロスポリンを含む(Novartis により、当初の製剤が商品名 Sandimmune(登録商標)として、新しいマイクロエマルジョン製剤が Neoral(登録商標)として販売されている)。シクロスポリンを含む粒子は、乾性角結膜炎の処置用の局所用エマルジョンとして同様に使用できる。これに関して、そのような薬物を組み込んでいる多官能性表面ドメインを有する粒子は、様々な薬物の同等の用量を癌細胞に直接送達するように設計でき、かくして、患者に全身的に送達される量を潜在的に最小化でき、他の組織への付帯的損害を最小化できる。
【0065】
ある種の特別な態様では、本開示の粒子には、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、鎮痛薬、COX−IおよびII阻害剤などの1種またはそれ以上が含まれる。例えば、インドメタシンは、本開示の多相ナノ成分(multiphase nano-component)に導入するのに適するNSAIDである。
【0066】
治療剤の形態の他の活性物質はWO2008/124632に記載されており、その全体を出典明示により本明細書の一部とする。
【0067】
補助的な適合する部分により官能化され得る親水性薬物の非限定的な例には、シスプラチン、カルボプラチン、ミタプラチン(mitaplatin)、オキサリプラチン、ピリプラチン(pyriplatin)、Pt(IV)ヘキサノエート、イリノテカン、ジャスモン酸メチル、リン酸デキサメタゾン、塩酸ニカルジピン、メチルサリチル酸、ジクロロ酢酸、ニトログリセリン、親水性セロトニン5−HT3受容体アンタゴニスト(例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン)、アミノテトラリン類(例えば、S(−)−2−(N−プロピル−N−2−チエニルエチルアミン)−5−ヒドロキシテトラリン)、アントラサイクリンなどが含まれる。いくつかの実施態様では、薬物または薬物前駆物質は、無機または有機金属化合物、例えば、白金化合物(本明細書に記載の通り)、ルテニウム化合物(例えば、trans−[RuCl2(DMSO)4]、trans−[RuCl2(イミダゾール)2]−など)、コバルト化合物、銅化合物、鉄化合物などを含み得る。
【0068】
いくつかの実施態様では、核酸修復の阻害剤は、DNA損傷剤、例えば、白金化合物と組み合わせて製剤化される。
【0069】
一例として、シスプラチンプロドラッグ(白金一コハク酸塩)を、ペンダントヒドロキシル基を有するPLAに官能化した(実施例1参照)。加えて、ドセタキセルをPLA−Ptと組み合わせ(薬物負荷量w/w%:ドセタキセル3%;Pt5%)、シスプラチンおよびドセタキセルのナノ粒子からの制御放出を数日間にわたり立証した。
【0070】
同様のアプローチを、他の活性物質の結合に使用できる。例えば、ペンダントオキサリプラチンを有するポリラクチドの開発のために、オキサリプラチンプロドラッグを、軸方向の位置にカルボキシル基をもって合成でき、それをPLA−OHにカップリングさせる。PLA−OHの無水コハク酸処理でポリラクチドを含有するカルボキシル基を生成させ、この化合物をパクリタキセルのヒドロキシル基に直接カップリングさせることにより、パクリタキセルペンダント基を有するポリラクチドを製造した。ツバシン官能化ポリマーの場合、同じカルボキシル基含有ポリラクチドを、ツバシンのヒドロキシル基に結合させることができる。
【0071】
ある態様では、本発明は、異なる化学的特性を有する複数の活性物質を、例えば、同時に、安全、有効かつ制御された方法で、患者に投与することを可能にする組成物および方法を提供する。複数の活性物質を単一の送達組成物に組み合わせることは、特定の細胞標的、例えば腫瘍細胞への活性物質の標的化も可能にする。実際に、個々の薬物の用量規制毒性(DLT)は2種の薬物が併用して投与される場合に、それらが個別に投与される場合よりも低いので、多くの伝統的な併用療法(例えば、2種またはそれ以上の薬物を使用する癌の処置)の処置効力は、しばしば限定される。そのような場合、各薬物の用量を併用療法では減らす必要があり、それにより、包括的処置効力への個々の薬物の貢献は少なくなる。加えて、これは、新規の相乗作用を同定する機会を妨害する。本発明は、併用治療剤の1種またはそれ以上として生物分解性ポリマーに結合した活性物質を使用することにより、この課題を解決する。これらの結合体は薬物を標的化して送達するので、薬物自体よりも高い用量規制毒性を有する。従って、結合体を併用療法剤の1つまたはそれ以上として使用することにより、組合せの薬物の1種またはそれ以上の用量を増やすことができる。ある実施態様では、異なる薬物を担持する2種またはそれ以上の結合体を組み合わせて投与する。ある実施態様では、1種またはそれ以上の結合していない薬物と共に結合体を投与する。これらの実施態様のいずれかにおいて、組合せ中の1種のみまたは数種の薬物(例えば、2種の組合せ中の1種または両方の薬物)の用量を増やせることを理解すべきである。結合した薬物の用量および/または結合していない薬物の両方を増やせることも理解すべきである。
【0072】
本発明の方法および組成物は、特定の薬物、特定の薬物の組合せ、または、特定の疾患に全く限定されないが、本明細書に開示するある種の組合せは、有益かつ/または相乗的な結果をもたらし得る。
【0073】
例えば、限定ではないが、既知の相乗作用を有するある種の物質を、単一の送達組成物中に組み合わせ得る。例えば、パクリタキセルまたはドセタキセルとゲフィチニブは、乳癌MCF7/ADR細胞において強力な相乗作用を有すると示された;オキサリプラチンとイリノテカンは、AZ−521およびNUGC−4細胞において相乗的抗癌作用を有する;そして、パクリタキセルとツバシンは、チューブリンのアセチル化を相乗的に増強する。加えて、コンブレタスタチンまたは血管新生を阻害する他の物質を、PSMAに特異的な標的化物質を含む送達組成物を含む、送達組成物に組み込むことができる。組み込むことができる他の組合せは、例えば、Jia et al., 2009, Nat. Rev. Drug. Discov., 8:111-128 に見出すことができ、DL−サイクロセリンと没食子酸エピガロカテキン;パクリタキセルとNU6140;ゲフィチニブとタキサン;ゲフィチニブとPD98059;AZTと非ヌクレオシドHIV−1逆転写酵素阻害剤;アプリジン(aplidin)とシタラビン;ゲフィチニブとST1926;シルデナフィルとイロプロスト;デクスメデトミジンとST−91;ミコフェノール酸モフェチルとミゾリビン;パクリタキセルとディスコデルモリド;アンピシリンとダプトマイシン;カンデサルタン−シレキセチルとラミプリル;ジアゾキシドとジブチリル−cGMP;プロポフォールとセボフルラン;アンピシリンとイミペネム;アルテミシニンとクルクミン;ドキソルビシンとトラベクテジン;および、アジスロマイシンとイミペネムを含む。Jia et al., Nat. Rev. Drug. Discov., 8:111-128 の全体を、出典明示により本明細書の一部とする。
【0074】
例えば、限定ではないが、ある種の転移性乳癌は、現在、シクロホスファミド、メトトレキサートおよびフルオロウラシル(CMF)の組合せ、または、シクロホスファミド、ドキソルビシンおよびフルオロウラシル(CAF)の組合せにより処置されている。従って、ある実施態様では、これらの併用療法の上記の物質の2種または3種を、単一の粒子中で投与できる。
【0075】
膀胱、頭頸部および子宮内膜の癌を、M−VAC(メトトレキサート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチン)またはCMV(シスプラチン、メトトレキサート、ビンブラスチン)の2種またはそれ以上の個々の薬物を単一の粒子中で投与することにより、同様に処置できる。
【0076】
当業者は、他の伝統的な併用療法(例えば、限定ではないが、"Combination Cancer Therapy: Modulators and Potentiators", Schwartz, Ed., Humana Press, 2004; "Combination Therapy of AIDS", Ed. by DeClerq et al., Birkhauser, 2004 などに記載されるもののいずれか)について、これらの実施態様の変形物を認識するであろう。
【0077】
標的化物質
ある種の実施態様では、本発明の結合体を、本発明の結合体を特定の細胞タイプ、細胞の集合体または組織に導く標的化物質を含むように改変できる。好ましくは、標的化物質は、粒子の表面に結合している。様々な適する標的化物質が当分野で知られている(Cotten et al., Methods Enzym. 217:618, 1993; Torchilin, Eur. J. Pharm. Sci. 11:881, 2000; Garnett, Adv. Drug Deliv. Rev. 53:171, 2001)。例えば、標的細胞の表面の抗原に結合する任意の数の異なる物質を用いることができる。細胞表面抗原を標的とする抗体は、一般的に、必要な標的への特異性を示す。抗体に加えて、Fab、Fab'またはF(ab')2などの適する免疫反応性断片も用いることができる。標的化メカニズムの形成において使用するのに適する多くの抗体断片は、当分野で既に利用可能である。同様に、標的細胞の表面にある任意の受容体のリガンドは、標的化物質として適当に用いることができる。これらには、任意の天然または合成の低分子または生体分子が含まれ、それは、所望の標的細胞の表面に見出される細胞表面の受容体、タンパク質または糖タンパク質に特異的に結合する。
【0078】
アプタマーなどの核酸リガンドなどの他の標的化物質があり、それは、ある種の標的分子に特異的に結合し、前立腺癌細胞などの癌細胞で過剰発現されるタンパク質を標的化する潜在的な候補である小型オリゴヌクレオチドである。核酸リガンドは、特定の分子に結合するのに使用できる核酸である。例えば、ペガプタニブは、ペグ化抗VEGFアプタマーであり、高い特異性で特定の標的に結合する一本鎖核酸である。ペガプタニブアプタマーは元々FDAにより2004年に加齢黄斑変性(AMD)疾患の処置に認可されたが、腫瘍の血管新生の鍵となる誘導物質として認められたタンパク質であるVEGF165に特異的に結合するので、前立腺癌を処置する可能性を有する。Latil et al., Int. J. Cancer, 89, 167-171 (2000) は、VEGF発現は、早期段階の腫瘍の診断マーカーとして使用できることを示唆する。特異的アプタマーには、例えば、骨芽細胞に結合するアプタマーO−7;前立腺癌細胞に結合するA10 RNAアプタマー;乳癌細胞に結合するアプタマーTTA1;および、拡張されたA9 RNAアプタマーが含まれる(Javier et al., Bioconjug. Chem. 2008 June 18; 19(6):1309-1312)。Wilson らの米国特許出願公開番号20090105172も参照されたい。一般に、アプタマーは、幅広いpH(約4−9)、生理的条件および溶媒で安定である。アプタマーは、抗体よりも免疫原性が低いと知られており、サイズのためにより容易に腫瘍に浸透できる。溝と間隙を含むアプタマー結合部位の形状は、高度に特異的な特徴および薬物様の能力をもたらす。しかしながら、有効な標的化は、RNAアプタマーが癌細胞を正常な細胞から識別することを必要とする。
【0079】
他の例示的標的化物質には、ペプチド、例えば、CLT1およびCLT2が含まれ、これらは、血栓中のフィブリン−フィブロネクチン複合体に結合する。脳、腎臓、肺、皮膚、膵臓、腸、子宮、副腎および前立腺の細胞に結合するための、様々なペプチドが当分野で周知であり、例えば、Pasqualini et al., Mol. Psychiatry, 1:421-2 (1996) および Rajotte et al., J. Clin. Invest., 102:430-437 (1998) に記載のものが含まれる。
【0080】
本発明のある態様では、粒子の表面に結合した2種またはそれ以上の別個の標的化物質が存在し得る。第1の標的は、白血球またはT細胞などの免疫系細胞であり得、第2の標的は、標的領域である腫瘍内の悪性癌細胞であり得る。粒子の表面の標的化物質は、第1の標的細胞に高い選択性で結合し、一方、第2の部分は、一般的な腫瘍標的化表面ドメインを有する。動物に関連する標的と結合するのに適する部分には、本明細書に記載のものが含まれる。従って、本発明の多官能性粒子の標的組織への送達後、腫瘍標的化部分を有する粒子は、一度元の標的化細胞から離れると、第2の標的(例えば癌)細胞と結合できる。ある種の態様では、長期間循環し、選択性が高く、複雑な放出速度論で複数の薬物の放出を可能にする活性物質送達のために、粒子送達組成物が提供される。
【0081】
他の標的化物質には、特定の免疫系細胞(例えば、T細胞またはB細胞)、タンパク質、酵素または対象に関連する他の循環性物質などの生物学的標的に特異的に結合する物質が含まれる。以下は、本明細書に記載の多官能化粒子と共に使用するのに適する標的化部分の例示および非限定的な例を提供する。タンパク質、例えば、樹状細胞のための熱ショックタンパク質HSP70および癌細胞を標的化するための葉酸。ポリサッカライドまたは糖、例えば、白血球を標的化するためのシリル酸、標的化毒素、例えば、サポリン、CD2、CD3、CD28を含む抗体、T細胞、および他の適する抗体は、ワールドワイドウェブ"researchd.com/rdicdabs/ cdindex.htm,"で、インターネット上で入手できる表に列挙されており、これを出典明示により本明細書の一部とする。
【0082】
用語「結合」は、本明細書で使用するとき、相互の親和性または結合能力を示す対応する分子またはその部分の対の間の相互作用を表し、それは、典型的には特異的または非特異的な結合または相互作用によるものであり、生化学的、物理的および/または化学的相互作用を含むが、これらに限定されない。「生物学的結合」は、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモンなどを含む分子対間で起こる相互作用のタイプを定義する。用語「結合パートナー」は、特定の分子との結合を受け得る分子を表す。「特異的結合」は、他の類似の生物学的物質よりも実質的に高い程度で、結合パートナー(または、限られた数の結合パートナー)に結合できるか、またはそれを認識する分子、例えば、ポリヌクレオチド、抗体および他のリガンドによる結合を表す。ある実施態様の組では、標的化部分は、約1マイクロモル濃度、少なくとも約10マイクロモル濃度または少なくとも約100マイクロモル濃度より低い特異性(解離定数により測定する)を有する。
【0083】
標的化物質の非限定的な例には、ペプチド、タンパク質、酵素、核酸、脂肪酸、ホルモン、抗体、炭水化物、ペプチドグリカン、糖ペプチドなどが含まれる。これらおよび他の標的化物質を、下記で詳細に論ずる。いくつかの場合では、例えば、ペプチド、核酸などについて、生物学的標的化部分は比較的大きくてもよい。例えば、生物学的部分は、少なくとも約1,000Da、少なくとも約2,500Da、少なくとも約3000Da、少なくとも約4000Daまたは少なくとも約5,000Daなどの分子量を有し得る。比較的大きい標的化物質は、細胞間で区別を生じるために、いくつかの場合で有用であり得る。例えば、いくつかの場合では、より小さい標的化物質(例えば、約1000Daより小さい)は、標的化適用などのある種の標的化適用のために適当な特性を有さないことがある。対照的に、より大きい分子量の標的化物質は、はるかに高い標的化親和性および/または特異性を与えることができる。例えば、標的化物質は、より小さい解離定数、例えば、密接な結合を与えることができる。しかしながら、他の実施態様では、標的化物質は、比較的小さく、例えば、約1,000Daより小さい、または、約500Daより小さい分子量を有することができる。
【0084】
ある実施態様では、標的化物質は、タンパク質またはペプチドを含む。「タンパク質」および「ペプチド」は、当分野で周知の用語であり、各々が含むアミノ酸の数に関して、当分野で正確に定義されていない。本明細書で使用するとき、これらの用語は、当分野で通常の意味を与えられる。一般的に、ペプチドは、約100アミノ酸より短いアミノ酸配列であるが、300アミノ酸までの配列を含み得る。タンパク質は、一般的に、少なくとも100アミノ酸の分子であるとみなされる。例えば、タンパク質は、タンパク質薬物、抗体、抗体断片、組換え抗体、組換えタンパク質、酵素などであり得る。いくつかの場合では、タンパク質またはペプチドのアミノ酸の1個またはそれ以上は、いくつかの例では例えば、炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、結合、感応化または他の修飾などのためのリンカーなどの化学的部分の付加により、修飾されていてもよい。
【0085】
ペプチドまたはタンパク質の他の例には、アンキリン類、アレスチン類、細菌の膜タンパク質、クラスリン、コネキシン類、ジストロフィン、エンドセリン受容体、スペクトリン、セレクチン、サイトカイン類;ケモカイン類;増殖因子、インシュリン、エリスロポエチン(EPO)、腫瘍壊死因子(TNF)、ニューロペプチド類、ニューロペプチドY、ニューロテンシン、トランスフォーミング増殖因子アルファ、トランスフォーミング増殖因子ベータ、インターフェロン(IFN)およびホルモン類、成長抑制物質、例えば、ゲニステイン、ステロイドなど;糖タンパク質、例えば、ABCトランスポーター類、血小板糖タンパク質、GPIb−IX複合体、GPIIb−IIIa複合体、ビトロネクチン、トロンボモジュリン、CD4、CD55、CD58、CD59、CD44、CD168、リンパ球機能関連抗原、細胞間接着分子、血管細胞接着分子、Thy−1、対向輸送体、CA−15−3抗原、フィブロネクチン類、ラミニン、ミエリン関連糖タンパク質、GAPおよびGAP43が含まれるが、これらに限定されない。他の例には、アフィボディ(affibody)、ナノボディ(nanobody)、アビマー(Avimer)、アドネクチン(Adnectin)、ドメイン抗体および小モジュラー免疫医薬(small modular immunopharmaceutical)(SMIP(商標))(Trubion Pharmaceuticals Inc., Seattle, WA)が含まれる。
【0086】
本明細書で使用するとき、「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的にコードされる1個またはそれ以上のポリペプチドからなるタンパク質または糖タンパク質を表す。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域の遺伝子、並びに、無数の免疫グロブリン可変領域の遺伝子が含まれる。軽鎖は、カッパまたはラムダと分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロンと分類され、それは、次いで、免疫グロブリンのクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを各々定義する。典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、テトラマーを含むと知られている。各テトラマーは、2個の同一のポリペプチド鎖の対で構成され、各対は、1個の「軽鎖」(約25kD)および1個の「重鎖」(約50−70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識を担う約100ないし110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を定義する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)の用語は、これらの軽鎖および重鎖を各々表す。抗体は、そのままの免疫グロブリンとして、または、様々なペプチダーゼによる切断により産生される数々の十分に特徴付けられた断片として存在する。
【0087】
抗体および他の適する標的化物質の非限定的な例には、分化抗原CD−1ないしCD−166およびこれらの分子のリガンドまたは対抗受容体の抗クラスター(anti-cluster);抗サイトカイン抗体、例えば、抗IL−1ないし抗IL−18およびこれらの分子の受容体;抗免疫受容体抗体、T細胞受容体、主要組織適合複合体IおよびII、B細胞受容体、セレクチンキラー細胞抑制受容体、キラー細胞活性化受容体(killer activating receptor)、OX−40、MadCAM−1、Gly−CAM1、インテグリン類、カドヘリン類、シアロアドヘリン(sialoadheren)類、Fas、CTLA−4、Fc−ガンマ受容体、Fc−アルファ受容体、Fc−イプシロン受容体、Fc−ミュー受容体、およびそれらのリガンドに対する抗体;抗メタロプロテイナーゼ抗体、例えば、コラゲナーゼ、MMP−1ないしMMP−8、TIMP−1、TIMP−2;抗細胞溶解/炎症促進性分子、例えば、パーフォリン、補体成分、プロスタノイド、亜酸化窒素、トロンボキサン;または、抗接着性分子、例えば、癌胎児抗原、ラミン類またはフィブロネクチン類が含まれる。
【0088】
標的化物質の他の例には、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−1受容体、IL−2受容体、IL−3受容体、IL−4受容体、IL−5受容体、IL−6受容体、IL−7受容体、IL−8受容体、IL−9受容体、IL−10受容体、IL−11受容体、IL−12受容体、IL−13受容体、IL−14受容体、IL−15受容体、IL−16受容体、IL−17受容体、IL−18受容体、リンホカイン阻害因子、マクロファージコロニー刺激因子、血小板由来増殖因子、幹細胞因子、腫瘍増殖因子ベータ、腫瘍壊死因子、リンホトキシン、Fas、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマなどのサイトカインまたはサイトカイン受容体が含まれる。
【0089】
標的化物質のまた他の例には、増殖因子およびタンパク質ホルモン、例えば、エリスロポエチン、アンジオゲニン、肝細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、神経成長因子、腫瘍増殖因子アルファ、トロンボポエチン、甲状腺刺激因子、甲状腺放出ホルモン(thyroid releasing hormone)、ニューロトロフィン、上皮増殖因子、VEGF、毛様体神経栄養因子、LDL、ソマトメジン、インシュリン増殖因子、または、インシュリン様増殖因子IおよびIIが含まれる。
【0090】
標的化物質のさらなる例には、ケモカイン、例えば、ENA−78、ELC、GRO−アルファ、GRO−ベータ、GRO−ガンマ、HRG、LIF、IP−10、MCP−1、MCP−2、MCP−3、MCP−4、MIP−1アルファ、MIP−1ベータ、MIG、MDC、NT−3、NT−4、SCF、LIF、レプチン、RANTES、リンホタクチン、エオタキシン−1、エオタキシン−2、TARC、TECK、WAP−1、WAP−2、GCP−1、GCP−2、アルファ−ケモカイン受容体、例えば、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CXCR7、または、ベータ−ケモカイン受容体、例えば、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6またはCCR7が含まれる。
【0091】
他の実施態様では、標的化物質には核酸が含まれる。用語「核酸」または「オリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用するとき、ヌクレオチドのポリマーを表す。本明細書で使用するとき、「ヌクレオチド」は、当分野で使用されるその通常の意味、即ち、糖部分、リン酸基および塩基(通常、窒素性)を含む分子、を与えられる。典型的には、ヌクレオチドは、糖−リン酸主鎖に連結した1個またはそれ以上の塩基を含む(糖部分のみに連結したリン酸基のない塩基は、「ヌクレオシド」である)。ヌクレオチド内の糖は、例えば、リボース糖(「リボ核酸」または「RNA」)またはデオキシリボース糖(「デオキシリボ核酸」または「DNA」)であり得る。いくつかの場合では、ポリマーは、リボースおよびデオキシリボースの両方の糖を含み得る。塩基の例には、天然産生塩基(例えば、アデノシンまたは「A」、チミジンまたは「T」、グアノシンまたは「G」、シチジンまたは「C」またはウリジンまたは「U」)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの場合では、ポリマーは、ヌクレオシド類似体(例えば、アラシチジン、イノシン、イソグアノシン、ネブラリン(nebularine)、プソイドウリジン、2,6−ジアミノプリン、2−アミノプリン、2−チオチミジン、3−デアザ−5−アザシチジン、2'−デオキシウリジン、3−ニトロピロール、4−メチルインドール、4−チオウリジン、4−チオチミジン、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、2−チオウリジン、5−ブロモシチジン、5−ヨードウリジン、イノシン、6−アザウリジン、6−クロロプリン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−アザアデノシン、8−アジドアデノシン、ベンゾイミダゾール、M1−メチルアデノシン、ピロロ−ピリミジン、2−アミノ−6−クロロプリン、3−メチルアデノシン、5−プロピニルシチジン、5−プロピニルウリジン、5−ブロモウリジン、5−フルオロウリジン、5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、7−デアザグアノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニン、2−チオシチジンなど)、化学的または生物学的に改変された塩基(例えば、メチル化塩基)、インターカレートされた塩基、修飾された糖(例えば、2'−フルオロリボース、2'−アミノリボース、2'−アジドリボース、2'−O−メチルリボース、L−鏡像異性のヌクレオシド類、アラビノース、ヘキソースなど)、修飾されたリン酸部分(例えば、ホスホロチオエートまたは5'−N−ホスホラミダイト結合)、および/または、置換および非置換芳香族性部分を含む、ポリマーに置換し得る他の天然または非天然産生塩基も含み得る。他の適する塩基および/またはポリマー修飾は、当業者に周知である。いくつかの場合では、ポリヌクレオチドは、DNA、RNA、修飾DNA、修飾RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、発現プラスミド系、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、ヌクレオシド、修飾ヌクレオシド、未変化の遺伝子またはこれらの組合せを含み得る。ポリヌクレオチドの他の例には、干渉RNA、天然または非天然siRNA、shRNA、ミクロRNA、リボザイム、DNAプラスミド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、無作為化オリゴヌクレオチドまたはリボザイムが含まれる。
【0092】
腫瘍標的化粒子は、受動的および能動的過程で腫瘍に送達され得る。前者では、ナノ粒子は、受動的拡散または対流により、漏出性の腫瘍毛細血管開窓を通して、腫瘍の間質および細胞に入る。後者は、分子認識に基づく特異的部位への薬物送達を伴う。最も一般的なアプローチは、標的化リガンドをナノ粒子に結合させることである。標的化リガンドは、ナノ粒子と標的細胞部位の受容体の相互作用を増強し、局所的薬物濃度を高める。上記の通り、抗体、トランスフェリン受容体、葉酸受容体および幅広い生体分子を含む多くのリガンドが、成功裏にナノ粒子に結合させられてきた。
【0093】
分子標的化細胞外マトリックス(「ECM」)の例には、グリコサミノグリカン(「GAG」)およびコラーゲンが含まれる。カルボキシ官能基を有する粒子の外表面を、遊離アミン末端を有する病原体関連分子パターン(PAMP)に連結できる。PAMPは、細胞または組織の表面のToll様受容体(TLR)または細胞または組織内部のシグナルを標的とし、それにより、潜在的に取り込みを高める。粒子表面に結合する、または、粒子内に含まれるPAMPには、非メチル化CpGDNA(細菌性)、二本鎖RNA(ウイルス性)、リポポリサッカライド(細菌性)、ペプチドグリカン(細菌性)、リポアラビノマンニン(lipoarabinomannin)(細菌性)、ザイモサン(酵母)、マイコプラズマのリポタンパク質、例えばMALP−2(細菌性)、フラゲリン(細菌性)、ポリ(イノシン酸−シチジル酸)(細菌性)、リポテイコ酸(細菌性)またはイミダゾキノリン類(合成)が含まれ得る。
【0094】
レクチン類も、ムチンおよび粘膜細胞層に標的化するために新しい粒子のリンカーに共有結合できる標的化物質として使用できる。そのようなレクチン類は、トウアズキ(Abrus precatroius)、ツクリタケ(Agaricus bisporus)、ヨーロッパウナギ(Anguilla anguilla)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、パンデイラエア・シンプリシフォリア(Pandeiraea simplicifolia)、ムラサキソシンカ(Bauhinia purpurea)、オオムレスズメ(Caragan arobrescens)、ヒヨコマメ(Cicer arietinum)、ミル(Codium fragile)、チョウセンアサガオ(Datura stramonium)、ドリコスマメ(Dolichos biflorus)、エリスリナ・コラロデンドロン(Erythrina corallodendron)、デイゴマメ(Erythrina cristagalli)、ユーオニムス・ユーロパエウス(Euonymus europaeus)、ダイズ(Glycine max)、へリックス・アスペルサ(Helix aspersa)、へリックス・ポマチア(Helix pomatia)、ジャコウエンドウ(Lathyrus odoratus)、レンズマメ(Lens culinaris)、アメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)、トマト(Lysopersicon esculentum)、マクルラ・ポミフェラ(Maclura pomifera)、ナガレイシ(Momordica charantia)、マイコプラズマ・ガリセプチクム(Mycoplasma gallisepticum)、ナジャ・モカムビク(Naja mocambique)、並びに、レクチン類のコンカナバリンA、スクシニル-コンカナバリンA、トリチカム・ブルガリス(Triticum vulgaris)、ハリエニシダ(Ulex europaeus)I、IIおよびIII、セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)、イヌエンジュ(Maackia amurensis)、コウラナメクジ(Limax fluvus)、ホマルス・アメリカヌス(Homarus americanus)、キャンサー・アンテンナリウス(Cancer antennarius)およびロータス(Lotus tetragonolobus)から単離できる。
【0095】
数種の細胞表面マーカーは、例えば、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、HER−2、HER−3、EGFRおよび葉酸受容体を含む腫瘍ホーミング(tumor-homing)治療剤の可能性のある標的として提唱されてきた。PSMAは、十分に確立された腫瘍マーカーであり、前立腺癌、特に、進行したホルモン非依存性の転移性疾患で上方調節される(Ghosh and Heston, 2004, J. Cell. Biochem., 91:528-539)。PSMAは、転移性前立腺癌の画像化用の腫瘍マーカーとして、そして、実験的免疫治療剤の標的として、用いられてきた。PSMAは、前立腺癌転移の診断画像化用に認可されたモノクローナル抗体を基礎とする造影剤である ProstaScint(登録商標)の分子標的である。PSMAの外部ドメインを標的とする脱免疫化モノクローナル抗体であるJ591は、放射性免疫治療および放射性免疫画像化のための物質として、臨床的に評価された。放射性標識されたJ591は、急速に骨および軟組織の前立腺癌転移に標的化し、抗腫瘍活性を示すと報告されている。興味深いことに、PSMAは、乳癌および肺癌を含むほとんどの非前立腺の固形腫瘍の新血管構造に高レベルで差次的に発現され、非前立腺癌についてのPSMA標的化の臨床的実施可能性が、2つの別個の臨床試験で最近示された(Morris et al., 2007, Clin. Cancer Res., 13:2707-13; Milowsky et al., 2007, J. Clin. Oncol., 25:540-547)。高度に限定された前立腺癌細胞および非前立腺固形腫瘍でのPSMAの存在は、細胞毒性物質のほとんどの固形腫瘍への送達のために、それを魅力的な標的にする。
【0096】
さらなる標的化物質は、WO2008/124632に記載されており、その全体を出典明示により本明細書の一部とする。当分野で知られているか、または開発されるであろう他の標的化部分は、本開示に伴う使用を企図されている。
【0097】
送達組成物の製造方法
本明細書に記載の送達組成物は、当分野で知られている任意の方法、例えば、ナノ沈降およびエマルジョン方法により製造できる。加えて、新しい送達組成物を製造するために、マイクロフルイディクス法を使用できる。
【0098】
単一工程のナノ沈降法は、米国特許第5,118,528号に記載されており、これを出典明示により本明細書の一部とする。これらの方法を使用して、ある物質を含有する溶液を、その物質の溶解度が低い他の溶液(即ち、非溶媒)と混合することによりナノ粒子を合成できる。例えば、ポリマー性(例えば、PLGA−PEG)ナノ粒子を製造でき、そこでは、水非混和性または水混和性の溶媒中のポリマー溶液を、水性の液体(即ち、非溶媒)に添加する。そのようなナノ沈降法は、例えば、全体を出典明示により本明細書の一部とするWO2007/150030にも記載されている。非限定的な例では、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合した親水性活性物質を揮発性の水混和性有機溶媒に溶解して第1の溶液を形成し、疎水性活性物質を揮発性の水混和性有機溶媒に溶解して第2の溶液を形成する。複数の両親媒性ブロックコポリマーを水混和性有機溶媒に溶解することにより第3の溶液を製造し、両親媒性ブロックコポリマーに囲まれた疎水性ポリマーコアを有するナノ粒子が沈降により形成されるように、第1、第2および第3の溶液を合わせる。
【0099】
粒子を製造するダブルエマルジョン法は、Mundargi et al., 2008, Control. Release, 125:193-209 に概説されており、その全体を出典明示により本明細書の一部とする。
【0100】
我々は、ナノ粒子の核形成および集合の均一な条件をもたらす迅速な混合によりPLGA−PEG NPの製造を可能にする、マイクロフルイディクス技法を開発した(Karnik et al., 2008, Nano. Lett., 8:2906-12)。さらに、別々のポリマー性前駆物質のマイクロフルイディクス装置への流入速度を変化させることにより、得られるナノ粒子の特性を体系的かつ再現可能に制御できる。この技法は、薬物官能化ポリマーおよびリガンド官能化ポリマーをコンビナトリアルに混合し、各々が2種またはそれ以上の別個の活性物質、例えば抗癌剤を有する、様々な生物物理化学的特性を有する異なる標的化ポリマー性ナノ粒子のライブラリーを生成するために用いることができる。
【0101】
ナノ粒子は、十分に定義された前駆物質のバッチから出発して、別個の特性をもって、単一の工程で製造できる(Anderson et al., 2004, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101:16028-33)。微量流体の迅速な混合を使用する単一の制御されたナノ沈降工程は、再現可能な自己集合を提供でき、滴下して混合することによる変化性を取り除く。すべての化学的結合工程は、ポリマーからナノ粒子を製剤化する前に行うことができ、さらに変化性を最小化する。様々な前駆物質の割合を変えることにより、様々なサイズ、電荷、PEG被覆度およびリガンド密度を有するナノ粒子を得ることができる。マイクロフルイディクス装置は、ナノ粒子前駆物質溶液の水への迅速な混合を可能にし、再現可能なナノ沈降をもたらす。このアプローチは、頑強であり、設計において極度に簡潔であり、そのため、この方法は、別個の特性を有する均一なナノ粒子製剤を、自動化された高処理量の方法で製造するのに十分に適するものである。制御可能かつ迅速に反応物質を混合し、均一な反応環境を提供する能力は、マイクロフルイディクスシステムを、単分散ナノ粒子の合成に理想的に適するものにしている(DeMello and DeMello, 2004, Lab on a Chip, 4:11N-15N)。マイクロフルイディクス技法の使用は、混合時間にわたる制御のない従来のナノ沈降と比較して、得られるナノ粒子の均一性における劇的な増強および再現性における有意な改善を提供できる。これらの方法は、恐らく、より疎水性のコアを有するより密集したナノ粒子の形成のために、高い薬物負荷量および遅い薬物放出を伴うナノ粒子をもたらす。さらに、方法が簡潔であるために、それは自動化しやすく、そこでは、流入速度を変化させてナノ粒子の組成および特性を制御できる。
【0102】
コンビナトリアル半自動的ナノ粒子合成のための他のマイクロフルイディクスシステムは、別個の生物物理化学的特性を有するナノ粒子のライブラリーを迅速に合成するためにも使用できる。ある例示的なシステムは、4つのコンピューター制御されたシリンジポンプからなり、それは、異なる前駆物質のポリマー、薬物、溶媒および水を、4つの前駆物質(例えば、PLA−薬物A、PLA−薬物B、薬物CおよびPLA−PEG−リガンド)の流入を取り込むように設計されたマイクロフルイディクス装置に送達できる。各前駆物質の流速に依存して、最初にある割合で前駆物質を混合し、別個の前駆物質の組合せをもたらす。この混合工程に続き、フローフォーカシング(flow focusing)を使用するナノ沈降により、与えられた前駆物質の組合せからナノ粒子を合成し、独特の前駆物質の組合せにより決定される特徴を有するナノ粒子製剤を得る。
【0103】
異なる製剤を有する粒子のライブラリーの製造のために、ナノ粒子の1つのバッチの合成後、流速を変化させ、他の別個の製剤をもたらす。相対的な前駆物質の流速を体系的に変化させるためにシリンジポンプをプログラムでき、各流速のセットについて別個のナノ粒子製剤を得る。短時間(例えば、1−5分間)の後、流速を変化させ、1時間当たり10ないし30の別個の製剤の割合で、新しいナノ粒子製剤の生成を連続的にもたらす。
【0104】
送達組成物の使用方法
本発明は、さらに、本明細書に記載の任意の組成物を含む調製物、製剤、キットなどを含む。いくつかの場合では、疾患の処置(例えば、癌)は、本明細書に記載の組成物または「物質」の使用を伴い得る。即ち、本発明の1つの態様は、疾患(例えば、癌または腫瘍)の処置に有用な一連の組成物(例えば、医薬組成物)または物質を含む。これらの組成物は、場合によりそのような症状の処置用の組成物の使用のための指示書を含むキットに包装することもできる。これらおよび他の本発明の実施態様は、本明細書に記載の任意の技法および組成物および組成物の組み合わせに従う、疾患(例えば、癌または腫瘍)の処置の進行も伴い得る。
【0105】
いくつかの実施態様では、本発明の組成物および方法を使用して、腫瘍または癌の増殖を防止でき、かつ/または、腫瘍または癌の転移を防止できる。いくつかの実施態様では、本発明の組成物を使用して、癌を縮小または破壊できる。本発明の組成物を単独で、または1種またはそれ以上のさらなる抗癌剤または処置(例えば、化学療法剤、標的化された治療剤、偽性標的化(pseudo-targeted)された治療剤、ホルモン、放射線、手術など、または、これらの2つまたはそれ以上の任意の組合せ)と組み合わせて使用できることを理解すべきである。いくつかの実施態様では、本発明の組成物は、手術、放射線および/または化学療法を含む処置を受けた患者に投与できる。ある種の実施態様では、本発明の組成物は、癌の再発を防止するために、または、そのリスクを低減するために、慢性的に投与できる。
【0106】
本発明の粒子を含む組成物は、いくつかの実施態様では、本発明の他の態様に従って、医薬組成物を形成する医薬的に許容し得る担体と組み合わせることができる。当業者に理解される通り、担体は、下記の投与経路、標的組織の位置、送達される薬物、薬物送達の時間経過などに基づいて選択できる。
【0107】
「医薬組成物」または「医薬的に許容し得る」組成物は、本明細書で使用するとき、1種またはそれ以上の医薬的に許容し得る担体(添加物)および/または希釈剤と共に製剤化された、治療的に有効な量の1種またはそれ以上の本明細書に記載の組成物を含む。詳述する通り、本発明の医薬組成物は、固体または液体の形態での投与のために特別に製剤化でき、以下に適応されたものを含む:経口投与、例えば、水薬(水性または非水性の液剤または懸濁剤)、錠剤、例えば、頬内、皮下および全身的吸収に標的化されたもの、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌に適用するためのペースト;非経腸投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射、例えば、滅菌液剤または懸濁剤、または、持続放出製剤として;局所適用、例えば、皮膚、肺または口腔に適用されるクリーム、軟膏または制御放出パッチまたはスプレーとして;膣内または直腸内に、例えば、ペッサリー、クリームまたはフォームとして;舌下に;眼内に;経皮で;または、鼻腔内に、肺に、そして、他の粘膜表面に。
【0108】
語句「医薬的に許容し得る」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題または合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適し、合理的な利益/リスク比に見合う化合物、物質、組成物および/または投与形を表す。
【0109】
語句「医薬的に許容し得る担体」は、本明細書で使用するとき、対象化合物を1つの器官または身体の一部から、他の器官または身体の一部に運搬または輸送するのに関与する、医薬的に許容し得る物質、組成物または媒体、例えば、液体または固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、または、溶媒物質を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合し、患者に有害でないという意味で、「許容し得る」ものでなければならない。医薬的に許容し得る担体として役立ち得る物質の例には、糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロースアセテート;粉末状トラガント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、カカオバターおよび坐剤用蝋;油、例えば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油;グリコール類、例えば、プロピレングリコール;ポリオール類、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル類、例えば、エチルオレエートおよびエチルラウレート;アガー;緩衝化剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンを含まない水;等張塩水;リンガー液;エチルアルコール;pH緩衝化溶液;ポリエステル類、ポリカーボネート類、および/または、ポリ酸無水物;および、医薬製剤で用いられる他の非毒性の適合する物質が含まれる。
【0110】
湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、並びに、着色剤、放出剤、被覆剤、甘味料、香味料および香料、保存料および抗酸化剤も、組成物中に存在できる。
【0111】
医薬的に許容し得る抗酸化剤の例には、水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、素ステイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;脂溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロール(例えば、アルファ−コハク酸トコフェロール)など;および、金属キレート化剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが含まれる。
【0112】
本発明の組成物は、一般的に、起こり得る有害な副作用を回避または最小化しながら、最大量の用量で与えられ得る。組成物は、単独で、または、他の化合物、例えば、疾患(例えば、癌)の処置に使用できる他の化合物と混合して、有効量で投与される。有効量は、一般的に、対象内の疾患(例えば、癌)を阻害するのに十分な量である。
【0113】
当業者は、本明細書に記載の任意のアッセイまたは他の既知のアッセイを使用して組成物をスクリーニングすることにより、組成物の有効量が何であるかを決定できる。有効量は、当然、処置される症状の重篤度;年齢、健康状態、サイズおよび体重を含む個々の患者のパラメーター;併用する処置;処置の頻度;または、投与の様式などの要因に依存し得る。これらの要因は当業者に周知であり、日常的な程度の実験で対処できる。いくつかの場合では、最大用量、即ち、健全な医学的判断に従う最高の安全な用量を使用する。
【0114】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の用量レベルは、患者に毒性ではなく、特定の患者、組成物および投与様式について所望の治療応答を達成するのに有効な有効成分の量を得るように、変更できる。
【0115】
選択された用量レベルは、用いる特定の本発明の化合物、または、そのエステル、塩またはアミド、投与経路、投与時間、用いる特定の化合物の排出または代謝の速度、処置期間、用いる特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的健康および以前の医学的歴史、および、医学の分野で周知の同様の要因などの要因を含む様々な要因に依存し得る。
【0116】
当分野で通常の技術を有する医師または獣医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定および処方できる。例えば、医師または獣医師は、医薬組成物において用いる本発明の化合物の投与を、所望の治療効果を達成するのに必要とされるものよりも低いレベルで開始し、次いで、所望の効果が達成されるまで、徐々に用量を増やすことができる。
【0117】
いくつかの実施態様では、本発明の化合物または医薬組成物を、慢性的に対象に提供する。慢性投与は、延長された期間にわたって繰り返される任意の投与形態、例えば、1ヶ月またはそれ以上、1ヶ月以上1年未満、1年またはそれ以上、またはそれより長い期間にわたる繰り返し投与を含む。多くの実施態様では、慢性の処置は、本発明の化合物または医薬組成物を、対象の生涯にわたり繰り返し投与することを含む。例えば、慢性の処置は、規則的な投与を含み得る。例えば、1日1回またはそれ以上、週に1回またはそれ以上、または、月に1回またはそれ以上などの回数繰り返し投与することを含む。一般に、本発明の化合物の一日量などの適する用量は、治療効果を奏するのに有効な最低用量である化合物の量である。そのような有効用量は、一般的に、上記の要因に依存する。
【0118】
所望により、活性化合物の有効な一日量は、1日にわたって適当な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6またはそれ以上の下位用量として、場合により単位投与形で、投与できる。
【0119】
本発明の組成物を単独で投与することが可能である一方、上記の医薬製剤(組成物)として投与できる。
【0120】
本発明の組成物は、いくつかの実施態様では、異常細胞増殖、疾患(例えば、癌)または腫瘍の処置に奨励できるか、または、上記の通り、付随する細胞増殖、癌または腫瘍の処置用の指示書を含む。他の態様では、本発明は、本発明の組成物およびホモログ、アナログ、誘導体、エナンチオマーおよび機能的に同等の組成物のいずれかの投与を介して、疾患(例えば、癌)の予防または処置を奨励することを含む方法を提供し、その方法では、該組成物は疾患を処置できる。「指示書」は、奨励の成分を定義でき、典型的には、本発明の組成物の包装に書かれた、またはそれに伴う、書面の指示を含む。指示書は、任意の方法で提供される任意の口頭または電子的指示も含み得る。「キット」は、典型的には、1つの本発明の組成物またはその組合せおよび指示書、または、ホモログ、アナログ、誘導体、エナンチオマーおよび機能的に同等の組成物を含む包装物を定義するが、本発明の組成物、および、組成物に関して、臨床の専門家が、その指示書が特定の組成物と関連すると明確に認識するように提供される任意の形態の指示書を含み得る。
【0121】
本明細書に記載のキットは、また、上記の種、シグナル伝達成分、生体分子および/または粒子などの化合物を含み得る1個またはそれ以上の容器を含み得る。キットは、また、化合物の混合、希釈および/または投与のための指示書を含み得る。キットは、また、1種またはそれ以上の溶媒、界面活性剤、保存料および/または希釈剤(例えば、生理食塩水(0.9%NaCl)または5%デキストロース)を含む他の容器、並びに、成分を混合、希釈、または、サンプルもしくはそのような処置を必要としている患者に投与するための容器を含み得る。
【0122】
キットの組成物は、適当な形態で、例えば、液体の溶液または乾燥粉末として提供され得る。提供される組成物が乾燥粉末である場合、粉末は、適当な溶媒の添加により再構成でき、溶媒もまた提供できる。液体形態の組成物が使用される実施態様では、液体形態は、濃縮されていても、すぐに使用できるものでもよい。溶媒は、化合物および使用または投与の様式に依存し得る。薬物の組成物に適する溶媒は周知であり、文献から利用できる。
【0123】
キットは、ある実施態様の組では、1個またはそれ以上の容器手段、例えば、バイアル、チューブなどを近い配置で受け入れるように区分されている運搬手段を含み得、容器手段の各々は、特定の組成物を含む。加えて、キットは、他の成分用、例えば、アッセイにおいて有用なバッファー用の容器を含み得る。
【0124】
本明細書で使用するとき、「対象」または「患者」は、任意の哺乳動物(例えば、ヒト)、例えば、疾患(例えば、癌)に罹りやすい哺乳動物を表す。例には、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、または、齧歯類、例えば、マウス、ラット、ハムスターまたはモルモットが含まれる。対象は、疾患を診断された対象、または、他の方法で疾患(例えば、癌)を有すると知られた対象であり得る。いくつかの実施態様では、対象は、疾患を発症するリスクにあると診断され得るか、または、そう知られ得る。ある種の実施態様では、対象は、対象の既知の疾患に基づく処置のために選択され得る。いくつかの実施態様では、対象は、対象で疑われる疾患に基づく処置のために選択され得る。いくつかの実施態様では、疾患は、生物学的サンプル(例えば、尿、痰、全血、血清、便など、または、それらの任意の組合せ)に伴う突然変異の検出により診断され得る。従って、本発明の化合物または組成物は、少なくとも部分的に、対象から得られた少なくとも1つのサンプル(例えば、生検サンプルまたは任意の他の生物学的サンプル)に突然変異が検出されるという事実に基づいて、対象に投与され得る。いくつかの実施態様では、癌は対象において検出または位置づけできないが、少なくとも1つの生物学的サンプルにおける、癌に伴う突然変異の存在は、1種またはそれ以上の本発明の組成物を対象に処方または投与するのに十分であり得る。いくつかの実施態様では、組成物は、癌などの疾患の発展を防止するために投与できる。しかしながら、いくつかの実施態様では、既存の疾患の存在が疑われ得るが、未だ同定されておらず、疾患のさらなる増殖または発展を防止するために本発明の組成物を投与できる。
【0125】
癌などの疾患に関連する突然変異および/または過剰発現を同定または検出するのに、任意の適する技法を使用できることを理解すべきである。例えば、核酸検出技法(例えば、配列解読、ハイブリダイゼーションなど)またはペプチド検出技法(例えば、配列解読、抗体に基づく検出など)を使用できる。いくつかの実施態様では、癌の存在を検出または推論するのに、他の技法を使用できる(例えば、組織診断など)。癌の存在は、癌のシグナル伝達経路に関連する1つまたはそれ以上の他の座位での、突然変異、過剰発現、増幅またはこれらの任意の組合せの検出により、検出または推論できる。
【実施例】
【0126】
実施例
特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定しない以下の実施例で、本発明をさらに説明する。
実施例1. PLA−Ptの合成
薬物で官能化されたポリマーを開発するための1つの戦略は、アミノ酸をそれらの対応するα−ヒドロキシル酸(i)に単純に変換することに基づく(図11)。第1段階は、酸の存在下で6時間にわたり亜硝酸ナトリウムを使用するジアゾ化反応による、アミンのヒドロキシルへの変換を伴う。これは、得られたモノマーを乳酸との縮合重合に直接使用し、ポリラクチドコポリマー、ポリ−OBnを得る高収量の反応である。150℃、3時間、連続的アルゴンパージでバルクの反応条件を使用し、続いて、さらに3時間減圧下で、縮合重合を実施した。1%パラ−トルエンスルホン酸を含むトルエン中の非常に希釈された反応条件下でのα−ヒドロキシル酸の脱水反応により製造した環状ラクチドモノマー(ii)の開環重合(ROP)を使用して、同じポリマーを製造した。
【0127】
高分子量ポリマーの合成には、ROPのアプローチの方が好ましい。ベンジル保護基は、重合中のヒドロキシル基の副反応を防止する。次いで、Pd/C触媒を50psiの圧力で8時間使用するベンジル脱保護により、ヒドロキシル官能化生物分解性ポリラクチド(PLAOH)を合成した。ベンジル基の完全な脱保護を、1H−NMR分光法で、7.3ppmのピークを監視することにより確認した(図2)。カルボキシル官能化ポリラクチドの合成のために、PLAOHを無水コハク酸または無水イタコン酸で処理する。ペンダント親水性薬物を有する生物分解性ポリマーの開発の立証として、シスプラチンのプロドラッグである白金一コハク酸塩を、DCC/HOBTカップリングを使用してポリマーと結合させ、最終のPLA−PtをDMF中、室温で、12時間の反応の後に生成させた(図12)。PLA−Ptにおける白金プロドラッグの存在を、プロドラッグの結合後の6.3ppmでのアミンプロトンの出現により、1H−NMR分光法で可視化した(図2)。
【0128】
実施例2. PLA−OHおよびPLA−Ptナノ粒子の合成および特徴解析
ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)−ポリエチレングリコール(PLGA−PEG)を有するナノ粒子を合成することにより、PLA−OHポリマーのインビトロの毒性を試験した。粒子は、比較的非毒性であり、せいぜい27mg/mLのIC50値であった(図3)。マイクロフルイディクスのアプローチを使用して、2種の薬物を送達できるナノ粒子をナノ沈降により製造した(図4B)。本発明では、我々は、ポリラクチドに沿ってカルボキシルなどの官能基を有する標準的なPLGA−PEGを使用し、それは、親水性薬物をペンダントとして含有し、疎水性薬物の存在下でナノ沈降に使用された。一度ナノ粒子を製造したら、粒子をカップリングにより標的化リガンドで官能化した。シスプラチンプロドラッグを親水性薬物として、ドセタキセルを疎水性薬物として、A10−アプタマーを、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を過剰発現する前立腺癌細胞株に標的化する標的化リガンドとして使用した(図13)。
【0129】
遊離PLGAの存在は、典型的には、PLGA−PEGのナノ沈降中にナノ粒子のサイズを大きくする。マイクロフルイディクスのアプローチを使用して、遊離PLGAの存在下でさえ、より小さいサイズのナノ粒子を達成した(図5A、表1)。バルクのナノ沈降は、150nmを超えるサイズの粒子をもたらし、一方、マイクロフルイディクスのアプローチを使用して、我々は、約100nmのサイズを得ることができた。これらの粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)でさらに特徴解析した(図5B)。TEMの結果は、これらの粒子の約100nmのサイズを裏付けた。白金およびドセタキセルの負荷量は、これらの粒子中で各々5%および1%であった。これらの値は、最初の供給を変えることにより、容易に変更できる。
【0130】
表1. ナノ粒子の特徴解析
【表1】
【0131】
実施例3. ポリ−Ptの電気化学
25℃で、EG&G PAR Model 263 ポテンショスタット(Potentiostat)/ガルバノスタット(Galvanostat)において、電気化学分析ソフトウェア270、並びに、ガラス状炭素作用電極、白金ワイヤー補助電極およびAg/AgCl基準電極を含む3電極設定を用いて、電気化学的測定を行った。電気化学的データは、接合部電位について補正しなかった。KClを支持電解質として使用した。ポリ−Ptは、酸化還元活性を有し、pH7.4でPt(IV)/Pt(II)カップルに−0.801V vs Ag/AgCl付近で非可逆的サイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetric)応答を示し、同じ条件下で、白金一コハク酸塩プロドラッグの値は、−0.850 vs.Ag/AgClであった(図6A−6D)。これらの還元電位は、ポリマー性主鎖の存在が白金中心の電気的または立体的環境に影響を与えず、この構築物が効果的に白金の有効用量を放出して抗癌活性を増強することを示唆する。ポリ−Ptの還元電位の値は、それが血中での早まった還元を回避し、細胞内で還元されることを示す。
【0132】
実施例4. PolyPt−Doce−NPからの白金およびドセタキセルのインビトロ放出
ナノ粒子からの白金(IV)およびドセタキセルの制御放出の速度論を研究した。候補薬物のナノ粒子からの制御放出は、薬物が送達媒体から放出された後で初めて活性になるので、新しい粒子の重要な利点である。放出研究のために、我々は、白金およびドセタキセルのナノ粒子を、PBS(pH7.4)20lで、37℃で透析し、生理的条件を模倣した。PolyPt−Doce−NPの水中の懸濁液を、いくつかの半透性小型透析チューブ(分子量カットオフ100kDa、Pierce)に分注し(各100μL)、リン酸緩衝塩水(PBS)(pH7.4)20lで、37℃で透析した。予め定めた時間で、ナノ粒子懸濁液のアリコートを取り出し、アセトニトリルに溶解した。放出された白金含有量を、原子吸光分析により測定し、購入できるタキソールで得られた標準較正曲線を使用して、ドセタキセル放出をHPLCにより定量した。これらのナノ粒子からの白金(図7A)およびドセタキセル(図7B)の両方の制御放出が観察された。結果は、このシステムが、共有結合した白金中心よりもドセタキセルが早く放出される時間的様式で薬物を放出できることを示した。放出のタイミングは、ポリマー主鎖の長さを伸ばすことにより、さらに延長できる。
【0133】
実施例5. ナノ粒子の細胞毒性
標的化薬物放出構築物のナノ粒子が細胞死を促進する能力を、ヒト前立腺癌LNCaPおよびPC3細胞を使用するMTTアッセイを使用して測定し、標準化合物のシスプラチンおよびPt(IV)一コハク酸塩プロドラッグと比較した。ヒト前立腺癌LNCaPおよびPC3細胞をATCCから入手した。LNCaP細胞はPSMAを過剰発現し、PC3細胞はしない。細胞を37℃、5%CO2、10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMI増殖培地でインキュベートした。細胞を3ないし4日毎に植え継ぎ、植え継ぎ回数が20回に達したら、凍結ストックから再開した。MTTアッセイを使用して構築物の細胞毒性活性を評価した。異なる構築物の溶液を、滅菌PBSで使用前に新しく調製した。すべての白金調製物を、原子吸光分析により定量した。LNCaPおよびPC3細胞を100μLRPMI培地中で96ウェルプレートに播き、24時間インキュベートした。
【0134】
次いで、細胞を様々な濃度の異なる構築物で処理し、12時間37℃でインキュベートした。新鮮な培地を12時間のナノ粒子でのインキュベーション後に置き換え、細胞をさらに48時間インキュベートした。次いで、細胞を3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)(5mg/mL、PBS中)20μLで処理し、5時間インキュベートした。培地を除去し、DMSO100μLの添加により細胞を溶解し、マイクロプレート分光光度計を使用して紫色のホルマザンの吸光を550nmで記録した。各サンプルを、各細胞株につき、3回の独立した実験で、トリプリケートでアッセイした。各細胞株につき、Pt(IV)一コハク酸塩プロドラッグ(一コハク酸)は、生存能に対して最小の効果を有した(図8A−8B)。
【0135】
PC3について、非標的化粒子(PolyPt−NP)および標的化粒子(PolyPt−NP−Apt)の効力は、非結合のシスプラチンのものとほぼ同等であった(図8B)。PSMAを過剰発現するLNCaP細胞について、非標的化粒子(PolyPt−NP)の効力は、非結合のシスプラチンのものとほぼ同等であったが、標的化粒子(PolyPt−NP−Apt)の効力は、約5倍高かった(図8A)。標的化アプタマーの添加も、ドセタキセルまたはドセタキセルとPolyPtの両方を含むナノ粒子のLNCaP細胞における効力を高めた(表2)。この実施例は、標的化ナノ粒子および標的化デュアル薬物ナノ粒子が、PSMAを発現する癌細胞を殺すのに有効であることを立証する。
【0136】
表2.IC50値の比較
【表2】
【0137】
実施例6. PolyPt−NP−Aptの標的化エンドサイトーシス
ポリマー性ナノ粒子は、ファゴサイトーシスおよびエンドサイトーシスを含む様々な過程で細胞に取り込まれ得る。PolyPt−NP−Aptの内在化を研究するために、緑色のフルオレセインをベースとするコレステロールである22−NBD−コレステロールを粒子に含めた。22−NBD−コレステロールを含有する非標的化ポリ−Pt−NPを対照として使用した。LNCaP細胞を顕微鏡のカバースリップ(1.0cm)に、カバースリップ当たり1×105細胞のコンフルエンスで播き、終夜、加湿インキュベーターで、5%CO2で、37℃で、RPMI中で増殖させた。培地を交換し、NBD−コレステロール−PolyPt−NP−Aptの懸濁液を最終フルオロフォア濃度10μMで添加した。次いで、細胞を2.0時間37℃でインキュベートした。培地を除去し、2%パラホルムアルデヒド溶液を使用して、1時間室温で細胞を固定した。細胞をPBS(pH7.4)で3回洗浄した。次いで、細胞をPBS中の0.1%TRITON−X100で10分間透過処理し、続いて、PBSを使用して5回洗浄した。次いで、ブロッキングバッファー(PBS、0.1%ヤギ血清、0.075%グリシン)で、30分間室温(RT)で細胞をブロックした。製造業者の推奨する手順に従い、細胞を初期エンドソームマーカーであるマウスモノクローナルEEA−1と、湿った箱の中で、1時間37℃でインキュベートした。PBSで2回洗浄した後、細胞をブロッキングバッファーで、30分間RTでブロックし、次いで、二次Cy5ヤギ抗マウス抗体と1時間37℃でインキュベートした。PBSで4回洗浄し、水で2回洗浄した後、画像化のためにマウント液[20mM Tris(pH8.0)、0.5%没食子酸N−プロピルおよび70%グリセロール]を使用して細胞を顕微鏡のスライドに乗せた。FITCとローダミンのチャンネルの両方につき、500msecで画像を集めた。
【0138】
緑色蛍光標識コレステロール誘導体である22−NBD−コレステロールを含有するPolyPt−NP−Aptを使用することにより、PSMAを過剰発現する前立腺癌LNCaP細胞による、エンドサイトーシスを介するPolyPt−NP−Aptの標的化された取り込みの明確な証拠が観察された(図9)。LNCaP細胞をコレステロールPolyPt−NP−Aptと2時間インキュベートすること、および、初期エンドソームマーカーEEA−1抗体の使用は、アプタマー標的化ナノ粒子のエンドサイトーシスを介する、エンドソームにおけるこれらのナノ粒子の完全な内在化を示した(図9)。対照的に、非標的化ポリ−Pt−NPは、細胞質全体への蓄積を示した(図9)。この実施例は、標的化ナノ粒子がエンドサイトーシスにより取り込まれたことを立証する。
【0139】
実施例7.細胞毒性量のシスプラチンの放出およびPt−GG付加体の形成
シスプラチンの抗癌活性は、核DNAにおける白金化(platination)生成物の形成に基づく。これらの付加体のいくつかは構造的に同定され、グアニン−グアニン鎖内架橋cis−Pt(NH3)2d(GpG)(図10A)であり、総DNA白金化の>75%を占める。細胞内の白金1,2−d(GpG)付加体の検出は、この付加体に特異的な抗体の使用により実施した。簡潔に述べると、LNCaP細胞を、RPMI培地を使用して6ウェルプレートに播き、終夜37℃でインキュベートした。様々な構築物を最終濃度20μMで添加し、37℃で12時間インキュベートした。次いで、細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄し、HAES−STERIL−PBSに1×106/mLの密度で再懸濁し、予め被覆したスライド(ImmunoSelect, Squarix)に乗せ、空気乾燥させた。細胞の固定を、−20℃で、メタノール中、45分間実施した。5分間、0℃のアルカリ(70mM NaOH、140mM NaCl、40%メタノールv/v)処理で核DNAを変性させ、2段階のタンパク分解手順により細胞のタンパク質を除去した。
【0140】
細胞を最初にペプシンで、37℃で10分間、次いで、プロテイナーゼKで、37℃で5分間消化した。ミルク(1%、PBS中、30分間、25℃)でブロックした後、スライドを抗−(Pt−DNA)Mabs(R−C180.1mg/mL、ミルク中)と、終夜4℃でインキュベートした。PBSで洗浄した後、FITC標識化ヤギ抗(ラットIg)抗体と、37℃で1時間インキュベートすることにより、免疫染色を実施した。ヘキスト(Hoechst)(H33258)(250μg/L)を使用して細胞の核を染色し、画像化用のマウント液を使用して乗せた。我々は、この付加体に特異的なモノクローナル抗体R−C18を使用して、PolyPt−NP−Aptから放出されたシスプラチンが核DNAとこの付加体を形成するか否かを調べた。PSMA+LNCaP細胞をPolyPt−NP−Aptと12時間インキュベートした後、1,2−d(GpG)鎖内架橋の形成が、これらの細胞の核内で、抗体に由来する緑色蛍光として観察された(図10B)。この実施例は、シスプラチンプロドラッグの標的化ナノ粒子で細胞を処理することは、核DNAと共に期待される付加体を形成することを立証する。
【0141】
実施例8. 標的化ナノ粒子のライブラリーのスクリーニング
マイクロフルイディクスのシステムを使用して、PSMA−アプタマー標的化ナノ粒子を含有する約500の薬物のライブラリーを製造し、所望の特徴についてスクリーニングした。前駆物質の水混和性溶液(コ−ブロックポリマー、薬物など)を水に混合することを含むナノ沈降法により、ナノ粒子を作成する。水は薬物およびポリマーには不十分な溶媒であるので、ナノ粒子の沈降が起こる。(a)前駆物質溶液の組成を制御すること、および、(b)混合時間、温度および水流の前駆物質の流れに対する流速の比率などの混合条件を制御することにより、ナノ粒子の特性を制御する。次いで、ナノ粒子に取り込まれた蛍光染料を使用して、PSMA−陰性前立腺癌(PC3)および非前立腺(HeLa)細胞株に対して、PSMAを発現する前立腺癌細胞株(LNCaP)による優先的な取り込みについて、これらの製剤を試験する。このアプローチは、全身投与後にマクロファージを回避でき、かつ、前立腺癌細胞により差次的に取り込まれ得る最適化されたナノ粒子を提供できる。
【0142】
PEGをナノ粒子の表面に加えることにより、ナノ粒子の循環中での半減期は劇的に増加する。最小のマクロファージ取り込みと癌細胞への最大の特異的薬物送達を達成する、粒子のサイズ、表面の修飾、表面の電荷およびリガンド密度を含むナノ粒子の最適な物理および化学的特性を同定する。使用する前駆物質溶液は、(a)表面の電荷および疎水性の制御のために、PLGA−mPEG3400およびPLGA−PEG−COOH、(b)サイズを制御するためのPLGA(c)前駆物質の濃度を制御するためのアセトニトリル、(d)薬物/蛍光レポーター、(e)標的化のために、PLGA−PEG−リガンド結合体、(f)薬物−A官能化PLGAおよび(g)薬物−B官能化PLGAである。前駆物質濃度、混合時間、溶媒と水の比などのパラメーターも、ナノ粒子のサイズおよびゼータ電位に対するこれらの製剤化パラメーターの効果を研究するために、変更した。PCa細胞による好適な結合および取り込みのプロフィールを立証するこれらの製剤の薬物負荷量および放出速度論を、さらに評価し、細胞を基礎とする細胞毒性をMTTアッセイで測定する。各薬物の組合せについて少なくとも5種の候補製剤を同定し、優先的なPCa取り込みについてさらに試験する。
【0143】
実施例9. 動物モデルにおける送達組成物の評価
本明細書に記載の送達組成物を、前立腺癌の動物モデルで評価する。重症複合免疫不全(SCID)マウス(Taconic, Germantown, NY, USA)に、マトリゲル(Matrigel)100μlと混合した1×105LNCaP細胞を両後肢に皮下注射する。平均腫瘍体積が約150mm3に達する6日後に、各グループの平均腫瘍体積が匹敵するように、マウスをグループに分類する(グループ当たり5匹のマウス)。6、9および14日目に、動物をPolyPt−Doce−NP、PolyPt−NP、Doce−NPs、Pt−一コハク酸塩、シスプラチン(5mg/kg)、PolyPt−NP−Apt、PolyPt−Doce−NP−AptおよびDoce−NP−Aptで、I.P.またはi.v.注射により処置する。腫瘍体積の測定を1日目(腫瘍接種)に開始し、腫瘍の体積が身体のサイズの10%を超えるまで、週に2回継続する。腫瘍の増殖に対する最大の効果は、両方の薬物を含有し、LNCaP細胞上のPSMAに標的化されるPolyPt−Doce−NP−Aptで観察される。
【0144】
実施例10. インビボの特徴解析
用量増大研究を実施し、異種移植片および遺伝子改変マウスモデル(GEMM)における腫瘍の減少および/または腫瘍増殖の減速に必要とされる組合せの薬物用量を決定する。同所性腫瘍サイズ比較および効力測定のために、バイオコンジュゲート(bioconjugate)処置の前およびその後に定期的に、マウス前立腺のMRI画像化を実施する。一度有効な用量を決定したら、比較効力研究を実施し、異種移植モデルおよびGEMMで、ナノ粒子−アプタマーバイオコンジュゲートを含有する薬物を、アプタマーを標的化する基を欠く同様のナノ粒子;並びに、遊離の薬物およびプラセボと比較する。111In−標識化バイオコンジュゲートを使用して、腫瘍を有するマウスで生体分布研究も実施し、腫瘍組織におけるバイオコンジュゲートの存在および相対的濃度を評価する。
【0145】
加えて、放出された薬物の腫瘍組織における濃度を評価する研究を実施し、放出速度論を決定する。PLA系から生成したバイオコンジュゲートは、PLGA系からの同様のバイオコンジュゲートと比較して、遅い放出速度を有すると期待される。ポリマーMWも、薬物放出の速度論を変化させる。PCa組織を特異的に標的化でき、腫瘍増殖に対する効力をもたらすバイオコンジュゲートを開発する。
【0146】
ナノ粒子−アプタマーバイオコンジュゲートのインビボの急性投与毒性学的スクリーニング:18匹の動物のコホート(3匹のグループ6個)を、様々な濃度のバイオコンジュゲートポリマーの注射の毒性作用についてアッセイするために確立した。後続の生体分布研究において、LD50より低い濃度を使用する。
【0147】
生体分布:薬物動態および生体分布の分析のために、非腫瘍BALB/cマウスを有する動物に、外側尾静脈注射により、111In−標識化ナノ粒子−アプタマーバイオコンジュゲートまたはアプタマー標的化基を持たない同様のナノ粒子を投与する。生体分布を、最初にSPECT−CT画像化(Gammamedica, X-SPECT)で注射後1−24時間にわたり追跡し、動物を殺す。脳、心臓、腸、肝臓、脾臓、腎臓、筋肉、骨、肺、リンパ節、腸管および皮膚を切除し、重量を測定し、ホモジナイズし、ウェルカウンターで計測する(Wallace, Turku, Finland)。組織濃度を、注射した用量/組織グラムの百分率(%ID/g)で表す。動物に注射した後の様々な時点(1、2、4、8、12、18および24時間)の血液の放射活性から、血中半減期を算出する。
【0148】
異種移植による腫瘍誘導:BALB/cnu/nu動物を、アベルチン(avertin)(225−240mg/kgIP)で麻酔し、後足に圧力を加えることにより、感覚消失を確認する。摂取の直前に、背中の皮膚の部位をポビジン(povidine)またはクロルヘキシジン石鹸でこすり洗いし、70%エタノールで拭った。清潔な手術用マットに、マウスを横向きに置いた。腎臓は体壁を通して認識でき、背中の皮下領域に入る腎臓の長軸に沿って側腹切開を行う。鋭的および鈍的切開を通して腎臓を露出させ、体壁に置く。鋭い切れ目およびそれに続く火で丸めたガラスピペットによる鈍的切開により形成された小さいポケットを介して、一次的腫瘍検体から新しく調製した約0.5−1.0mm3の腫瘍組織を、腎被膜下に移植する。腎臓を体腔に戻し、創傷クリップで皮膚を閉じる。腫瘍は3−4週間以内に発達し、約5−10mmの直径(MRIにより測定)に増殖すると予測される。このサイズは、典型的な25−30gのマウスの体積の1%より小さい。
【0149】
PCaのGEMM:強力なウイルス性癌遺伝子SV40Tagが前立腺の上皮細胞で特異的に発現されるPCaの遺伝子改変マウスモデルを確立した。ヒト腫瘍で見られるように、腫瘍の発達と同時に腫瘍細胞の表面でhPSMAの発現が引き起こされる。
【0150】
用量増大研究:腫瘍が確立された後、増大する用量の薬物(2種または3種の薬物送達システム)ナノ粒子−アプタマーバイオコンジュゲート(0.5−5mg/0.1mL)を外側尾静脈注射により7日間の間隔で3回投与する。腫瘍の体積をMRIにより48時間毎に28日間測定する。
【0151】
比較効力研究:腫瘍が確立された後、4種の異なるタイプのナノ粒子および2種のさらなる対照を外側尾静脈注射により7日間の間隔で3回投与する:1)薬物ナノ粒子−アプタマーバイオコンジュゲート、2)プラセボ(デキストラン)ナノ粒子−アプタマーバイオコンジュゲート、3)アプタマーのない薬物ナノ粒子、4)アプタマーのないプラセボ(デキストラン)ナノ粒子、4)薬物単独、および、5)プラセボ単独。PBSに再懸濁した一定量の化合物(用量増大研究で決定された0.5−5mg/粒子0.1mL、しかし、LD50の50%を超えない)またはPBS単独を、外側尾静脈を介して動物に注射する。次いで、動物を分析前に、温めた回復ケージ中で回復させる。腫瘍の体積をMRIにより48時間毎に28日間測定する。
【0152】
実施例11. 組合せの粒子
白金を基礎とする薬物、即ち、シスプラチンおよびオキサリプラチンの作用に対する様々な代謝活性化因子の相乗効果を評価するために、官能化PLA誘導体を使用することにより、数々の組合せを調査した(表3)。我々は、インビボ研究を使用して、ロニダミン、ジクロロ酢酸と組み合わせたときの、オキサリプラチンおよびシスプラチンの効果を比較した。
【0153】
表3. 白金化合物と代謝モジュレーターの組合せ
【表3】
【0154】
PLA−COOHの合成
−COOH官能基を有する新しいラクチド誘導体を、PLA−OHと無水コハク酸の反応により合成した(図15A)。この新しいPLA誘導体は、−OH、−NH2官能基を有する様々な薬物を結合する機会を提供した。1H分光法を使用して官能化ラクチドPLA−COOHを特徴解析した(図15B)。
【0155】
シスプラチン−ロニダミンの組合せ
ロニダミンは、ミトコンドリアのヘキソキナーゼを阻害する化合物であり、癌細胞の変化した代謝を選択的に攻撃する。研究は、シスプラチンを含むいくつかの他の化学療法薬との組合せでそれが相乗効果を有することを示した。PLA−ロニダミン(PLA−Loni)結合体(図16A)を合成することを目的とした。PLGA−PEG−COOHの存在下でのナノ沈降により、Pt(IV)−ヘキサノエートをPLA−ロニダミンポリマーコアの内側に封入した。ロニダミンを結合したPLAを、1H NMRにより特徴解析した(図16B)。
【0156】
ナノ沈降法を使用して、ロニダミンおよびPt(IV)−ヘキサノエートを共封入したナノ粒子を合成した。簡潔に述べると、PLA−Loni、PLGA−PEG−COOHおよびPt(IV)−ヘキサノエートをアセトニトリルに溶解し、一緒に混合した。この溶液をゆっくりと水に添加し、室温で3時間撹拌した。これらの粒子を超遠心分離法により精製し、最終的に、粒子を脱イオン水に分散させた。動的光散乱法を使用して、粒子のサイズおよび多分散指数を測定した。白金およびロニダミンの封入の効率およびパーセントの負荷量を、白金には原子吸光分析(AAS)を、ロニダミンには逆相液体クロマトグラフィーを使用して測定した。
【0157】
デュアルの薬物の組合せの前立腺細胞におけるインビトロの細胞毒性を、MTTアッセイを使用して評価した(表4)。ナノ粒子内部のロニダミンおよびPt(IV)プロドラッグの組合せは、ナノ粒子内部の単独の物質よりも増強された細胞毒性をもたらした。例えば、前立腺癌LNCaP細胞におけるデュアルの薬物の組合せの毒性は、Ptに関して5倍高かった。PC3細胞における毒性は、Ptに関して約2倍高かった。DU145細胞における毒性は、Ptに関して約2倍高かった。3種すべてのタイプの細胞株において、ロニダミンに関して効力は1000倍を超えて高かった。
【0158】
表4. MTTアッセイにより測定されるLNCaP、PC3およびDU145細胞に対する様々なNPおよび薬物のIC50値の比較
【表4】
【0159】
シスプラチン−DCAの組合せ
ジクロロ酢酸(DCA)は、ミトコンドリアのピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)を阻害し、かくして解糖によるグルコース酸化を促進する小型有機分子である。この現象は、腫瘍細胞のアポトーシスに貢献する。高い割合のDCAを含むシスプラチン−DCAの組合せのために、我々はPLA−DCA誘導体を合成した(図17A)。PLGA−PEG−COOHの存在下でのPLA−DCAにおけるPt(IV)−ヘキサノエートの共封入は、白金とDCAの両方を有するナノ粒子をもたらす。PLA−DCA結合体を、1H分光法により特徴解析した(図17B)。
【0160】
実施例12. 官能化ポリマーの分子量
上記の研究に加えて、官能化ポリマー(PLA−OBn)の分子量を変化させる様々な研究を実施した。この目的で、3つの異なる変数、希釈、触媒濃度およびイニシエーター濃度を使用した。下表は、研究から得られた結果をまとめる。これらの結果から、触媒濃度の変更は、得られる分子量に有意に影響するが、モノマーに関するイニシエーター濃度の変動は有意な変動を示した。典型的な開環重合の速度論に従って、イニシエーターの濃度を下げることにより、得られるポリマーの分子量は増加した(表5)。一方、重合の溶媒を変えることにより、分子量はわずかに変化したが、いかなる傾向にも従わなかった。
【0161】
表5. ポリマーの分子量
【表5】
【0162】
他の実施態様
本発明の数々の実施態様を記載した。それでもなお、本発明の精神と範囲から逸脱せずに、様々な改変を行い得ることが理解される。従って、他の実施態様は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の活性物質および第2の活性物質を含むポリマーマトリックスを含む粒子であって、該ポリマーマトリックスが、約37℃で中性の水性溶液に粒子を懸濁してから最初の2時間の内に第1および第2の活性物質の各々の50%未満が放出される第1および第2の活性物質の各々の放出速度をもたらすように形成されている、粒子。
【請求項2】
ポリマーマトリックスが1種またはそれ以上のさらなる活性物質をさらに含む、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
第1の活性物質および第2の活性物質を含むポリマーマトリックスを含む粒子であって、該ポリマーマトリックスが、第1および第2の活性物質の各々が少なくとも2時間の対象の循環中での半減期を有するように形成されている、粒子。
【請求項4】
ポリマーマトリックスが1種またはそれ以上のさらなる活性物質をさらに含む、請求項3に記載の粒子。
【請求項5】
第1の活性物質が生物分解性ポリマーに結合している、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の粒子。
【請求項6】
第1の活性物質がペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合している、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の粒子。
【請求項7】
第2の活性物質が生物分解性ポリマーに結合している、請求項6または請求項7に記載の粒子。
【請求項8】
第2の活性物質がペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合している、請求項6または請求項7に記載の粒子。
【請求項9】
複数の活性物質を有する粒子であって、
(a)
(i)生物分解性ポリマーに結合した第1の活性物質、および
(ii)第2の活性物質
を含む、疎水性ポリマーコア、および、
(b)表面に露出した親水層
を含む粒子。
【請求項10】
第1の活性物質が、生物分解性ポリマーに、ポリマー上のペンダント官能基を介して結合している、請求項9に記載の粒子。
【請求項11】
生物分解性ポリマーが、比較的疎水性の第1末端および比較的親水性の第2末端を有するブロックコポリマーであり、疎水性コアが、第1の活性物質に結合したブロックコポリマーの第1末端を含み、親水層が、ブロックコポリマーの第2末端を含む、請求項9または請求項10に記載の粒子。
【請求項12】
親水層が、疎水性ポリマーコアと相互作用する相対的に疎水性の末端および表面に露出した相対的に親水性の末端を各々含む複数の両親媒性ブロックコポリマーを含む、請求項9または請求項10に記載の粒子。
【請求項13】
標的化物質をさらに含む、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の粒子。
【請求項14】
第1の活性物質および第2の活性物質が、生体分子、生体活性物質、低分子、薬物、プロドラッグ、薬物誘導体、タンパク質、ペプチド、ワクチン、アジュバント、蛍光分子またはポリヌクレオチドから独立して選択される、請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の粒子。
【請求項15】
第1および第2の活性物質が、各々、パクリタキセルまたはドセタキセルおよびゲフィチニブ;ゲフィチニブおよびパクリタキセルまたはドセタキセル;オキサリプラチン(またはオキサリプラチンプロドラッグ)およびイリノテカン;イリノテカンおよびオキサリプラチン(またはオキサリプラチンプロドラッグ);パクリタキセルおよびツバシン;ツバシンおよびパクリタキセル;ロニダミン、ジクロロ酢酸、アルファ−コハク酸トコフェロール、ベツリン酸またはレスベラトロールおよびPt(IV)ヘキサノエート;Pt(IV)ヘキサノエートおよびロニダミン、ジクロロ酢酸、アルファ−コハク酸トコフェロール、ベツリン酸またはレスベラトロール;アルファ−コハク酸トコフェロールまたはジャスモン酸メチルおよびドセタキセル;または、ドセタキセルおよびアルファ−コハク酸トコフェロールまたはジャスモン酸メチルである、請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の粒子。
【請求項16】
少なくとも2種の活性物質を含む粒子の製造方法であって、
第1および第2の活性物質を提供すること;
第1の活性物質またはそのプロドラッグもしくは誘導体を、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合させること;および、
結合した第1の活性物質および第2の活性物質を含む粒子を製造すること、
を含む方法。
【請求項17】
第2の活性物質またはそのプロドラッグもしくは誘導体を、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合させることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1の活性物質および/または第2の活性物質をペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合させることが、第1および第2の活性物質の粒子形成への適合性を与える、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
2種またはそれ以上の活性物質を時間空間的に制御して対象に投与する方法であって、
第1の活性物質および第2の活性物質を含むポリマーマトリックスを含む粒子を提供すること、ここで、ポリマーマトリックスは、第1および第2の活性物質の各々の所望の時間空間的放出速度を提供するように形成されている;および、
第1および第2の活性物質が所望の時間空間的放出速度で粒子から放出されるように、粒子を対象に投与すること、
を含む方法。
【請求項20】
請求項1ないし請求項15のいずれかに記載の複数の粒子を含む、静脈内に、動脈内に、経口で、経皮で、経粘膜で、腹腔内に、頭蓋内に、眼内に、硬膜外に、くも膜下腔内に、局所に、浣腸により、注射により、肺経路により、または、点滴により送達するための医薬組成物。
【請求項1】
第1の活性物質および第2の活性物質を含むポリマーマトリックスを含む粒子であって、該ポリマーマトリックスが、約37℃で中性の水性溶液に粒子を懸濁してから最初の2時間の内に第1および第2の活性物質の各々の50%未満が放出される第1および第2の活性物質の各々の放出速度をもたらすように形成されている、粒子。
【請求項2】
ポリマーマトリックスが1種またはそれ以上のさらなる活性物質をさらに含む、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
第1の活性物質および第2の活性物質を含むポリマーマトリックスを含む粒子であって、該ポリマーマトリックスが、第1および第2の活性物質の各々が少なくとも2時間の対象の循環中での半減期を有するように形成されている、粒子。
【請求項4】
ポリマーマトリックスが1種またはそれ以上のさらなる活性物質をさらに含む、請求項3に記載の粒子。
【請求項5】
第1の活性物質が生物分解性ポリマーに結合している、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の粒子。
【請求項6】
第1の活性物質がペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合している、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の粒子。
【請求項7】
第2の活性物質が生物分解性ポリマーに結合している、請求項6または請求項7に記載の粒子。
【請求項8】
第2の活性物質がペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合している、請求項6または請求項7に記載の粒子。
【請求項9】
複数の活性物質を有する粒子であって、
(a)
(i)生物分解性ポリマーに結合した第1の活性物質、および
(ii)第2の活性物質
を含む、疎水性ポリマーコア、および、
(b)表面に露出した親水層
を含む粒子。
【請求項10】
第1の活性物質が、生物分解性ポリマーに、ポリマー上のペンダント官能基を介して結合している、請求項9に記載の粒子。
【請求項11】
生物分解性ポリマーが、比較的疎水性の第1末端および比較的親水性の第2末端を有するブロックコポリマーであり、疎水性コアが、第1の活性物質に結合したブロックコポリマーの第1末端を含み、親水層が、ブロックコポリマーの第2末端を含む、請求項9または請求項10に記載の粒子。
【請求項12】
親水層が、疎水性ポリマーコアと相互作用する相対的に疎水性の末端および表面に露出した相対的に親水性の末端を各々含む複数の両親媒性ブロックコポリマーを含む、請求項9または請求項10に記載の粒子。
【請求項13】
標的化物質をさらに含む、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の粒子。
【請求項14】
第1の活性物質および第2の活性物質が、生体分子、生体活性物質、低分子、薬物、プロドラッグ、薬物誘導体、タンパク質、ペプチド、ワクチン、アジュバント、蛍光分子またはポリヌクレオチドから独立して選択される、請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の粒子。
【請求項15】
第1および第2の活性物質が、各々、パクリタキセルまたはドセタキセルおよびゲフィチニブ;ゲフィチニブおよびパクリタキセルまたはドセタキセル;オキサリプラチン(またはオキサリプラチンプロドラッグ)およびイリノテカン;イリノテカンおよびオキサリプラチン(またはオキサリプラチンプロドラッグ);パクリタキセルおよびツバシン;ツバシンおよびパクリタキセル;ロニダミン、ジクロロ酢酸、アルファ−コハク酸トコフェロール、ベツリン酸またはレスベラトロールおよびPt(IV)ヘキサノエート;Pt(IV)ヘキサノエートおよびロニダミン、ジクロロ酢酸、アルファ−コハク酸トコフェロール、ベツリン酸またはレスベラトロール;アルファ−コハク酸トコフェロールまたはジャスモン酸メチルおよびドセタキセル;または、ドセタキセルおよびアルファ−コハク酸トコフェロールまたはジャスモン酸メチルである、請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の粒子。
【請求項16】
少なくとも2種の活性物質を含む粒子の製造方法であって、
第1および第2の活性物質を提供すること;
第1の活性物質またはそのプロドラッグもしくは誘導体を、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合させること;および、
結合した第1の活性物質および第2の活性物質を含む粒子を製造すること、
を含む方法。
【請求項17】
第2の活性物質またはそのプロドラッグもしくは誘導体を、ペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合させることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1の活性物質および/または第2の活性物質をペンダント官能基を有する生物分解性ポリマーに結合させることが、第1および第2の活性物質の粒子形成への適合性を与える、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
2種またはそれ以上の活性物質を時間空間的に制御して対象に投与する方法であって、
第1の活性物質および第2の活性物質を含むポリマーマトリックスを含む粒子を提供すること、ここで、ポリマーマトリックスは、第1および第2の活性物質の各々の所望の時間空間的放出速度を提供するように形成されている;および、
第1および第2の活性物質が所望の時間空間的放出速度で粒子から放出されるように、粒子を対象に投与すること、
を含む方法。
【請求項20】
請求項1ないし請求項15のいずれかに記載の複数の粒子を含む、静脈内に、動脈内に、経口で、経皮で、経粘膜で、腹腔内に、頭蓋内に、眼内に、硬膜外に、くも膜下腔内に、局所に、浣腸により、注射により、肺経路により、または、点滴により送達するための医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6−1】
【図6−2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6−1】
【図6−2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【公表番号】特表2013−514977(P2013−514977A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544838(P2012−544838)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060814
【国際公開番号】WO2011/084620
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(503146324)ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060814
【国際公開番号】WO2011/084620
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(503146324)ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
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