説明

複素環化合物およびその使用法

本発明はチオフェンまたはフラン骨格を有する化合物ならびにその使用法を提供する。本発明は、被験体における様々な疾患および望ましくない状態の治療におけるその化合物および/または組成物の使用法を提供する。本発明の化合物を含むキットもまた提供する。本明細書で開示する化合物および組成物は、好ましくは神経変性疾患、心疾患、増殖性疾患、および視力障害の治療において使用される。特に、脳卒中の治療のための方法および組成物を本明細書で開示する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年5月16日に出願された米国特許仮出願第60/471,425号、2003年6月20日に出願された米国特許仮出願第60/480,289号、2003年7月16日に出願された米国特許仮出願第60/488,178号、2003年7月16日に出願された米国特許仮出願第60/488,172号、2003年6月20日に出願された米国特許仮出願第60/480,475号、2003年10月30に出願された米国特許仮出願第60/516,610号、2003年10月30日に出願された米国特許仮出願第60/516,651号および2003年10月30日に出願された米国特許仮出願第60/516,616号の恩典を主張する。これらはすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
序文
ホスホジエステラーゼ6δ(PDE6D)は最初、酵素PDE6の調節(非触媒性)サブユニットとして同定された。PDE6は光受容体細胞においてのみ発現され、網膜光情報伝達において重要な役割を果たす(Stryer、L.(1991)J.Biol.Chem.266:10711-14;(Florio、S.K. et al.(1996)J.Biol.Chem.271:24036-47)。PDE6ホロ酵素は膜結合形態および溶解形態の両方として存在する。膜結合形態のみが光情報伝達において活性である。重要なことには、溶解形態のみがPDE6Dサブユニットを含む。PDE6Dは細胞内局在性を調節し、このためPDE6の活性を調節し、膜からのPDE6の放出はPDE6Dにより媒介される。PDE6Dは、おそらく、膜からPDE6ホロ酵素を除去することにより、桿体外節での光誘発cGMP加水分解を減少させることが観察されている(Cook et al.、J.Biol.Chem 276(7):5248-5255(2001))。PDE6Dは、PDE6AおよびPDE6BサブユニットのC末端付近のプレニル化ペプチド配列に特異的に結合することによりPDE6を可溶化する。PDE6Dは科学論文において、いくつかの異なる表記で示されており、例えば、PDEデルタ、PDEδ、PDE6デルタ、PDE6δ、PDE6DおよびPDEDである。
【0003】
PDE6Dは、コレステロール生合成経路の産物であるイソプレノイド中間体による翻訳後修飾により、重要な細胞シグナル伝達タンパク質のホストと特異的に相互作用する。そのような修飾の1つはプレニル化と呼ばれ、翻訳後のタンパク質、特に大きなクラスのGTP結合タンパク質へのリン脂質の付加が含まれる。プレニル基は適切な細胞内局在化および輸送にとって重要である。GTP結合タンパク質のプレニル化に対するイソプレノイド中間体の有効性は、様々な心血管性、炎症性、癌性および神経性疾患と関連する。有効なプレニル基の量の減少は、内皮機能の改善、酸化ストレスの減少、炎症の減少および神経保護効果の増加と関連する。
【0004】
いくつかの疾患におけるPDE6の可能な役割のために、PDE6調節物質(modulator)を開発する必要がある。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、疾患、特にPDE6関連疾患を治療および予防するための方法および組成物を提供する。チオフェンまたはフラン構造を有する本発明の化合物は単独で、または追加の薬剤と組み合わせて送達させることができ、疾患の治療および/または予防のために使用される。したがって、1つの局面では、本発明は治療または予防の必要な被験体において、そのような疾患を治療または予防するための方法に関する。方法は、薬学的有効量のチオフェンまたはフラン骨格を有する化合物を被験体に投与する段階を含む。
【0006】
別の局面では、本発明は、チオフェンまたはフラン骨格を有する化合物によりホスホジエステラーゼ6D(PDE6D)の活性を調節するための方法を提供する。
【0007】
本発明の化合物および組成物は、PDE6の活性を調節し、そのため、プレニル化タンパク質の局在化および機能により引き起こされるか、または悪化する状態および疾患のための治療薬または予防薬として有益である。そのような状態および疾患は、例えば、心疾患、例えば動脈硬化、高血圧、不整脈(例えば、虚血性不整脈、心筋梗塞による不整脈、気絶心筋、心筋機能障害、不整脈など)、狭心症、心臓肥大、心筋梗塞、心不全(例えば、鬱血性心不全、急性心不全、心臓肥大など);腎疾患、例えば、糖尿病、糖尿病性腎症、虚血性急性腎不全、急性腎不全など;脳血管疾患、例えば虚血性脳卒中、脳出血など;および脳虚血性疾患、例えば、脳梗塞と関連する障害、脳出血後に引き起こされる障害、例えば続発症、または脳浮腫である。
【0008】
別の局面では、本発明は神経変性状態および疾患を治療および予防するための組成物および方法を提供する。本明細書で開示した化合物は単独で、または別の薬剤と組み合わせて送達させることができ、神経変性状態および疾患、例えば虚血性脳卒中により生じる状態を治療および/または予防するために使用される。神経変性状態および疾患としては、虚血性脳卒中、基底核またはパーキンソン病、てんかんまたは脳もしくは脊髄虚血あるいは外傷;アルツハイマー病、糖尿病性末梢神経障害、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、脊髄損傷、ハンチントン病、心不全(例えば、鬱血性心不全、急性心不全、心臓肥大など)、腎臓疾患、虚血性脳卒中、外傷性脳損傷、またはパーキンソン病が挙げられる。本発明のチオフェン含有およびフラン含有化合物は、好ましくは、薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物として投与される。
【0009】
さらに別の局面では、本発明は、中枢神経系疾患、例えば脳卒中および外傷性脳損傷を患う患者のリハビリテーションのための方法および組成物を提供する。したがって、1つの態様では、本発明は、治療および予防の必要な被験体において神経変性状態または疾患を治療または予防する、または任意で、疾患のさらなる進行を阻止するための方法に関する。チオフェン含有およびフラン含有化合物は、神経変性状態または疾患から回復するのに必要な長さの期間、例えば、約1ヶ月〜約3ヶ月〜約1年または必要であればもっと長く、投与することができる。神経変性状態または疾患としては、虚血性脳卒中、基底核またはパーキンソン病、てんかんまたは脳もしくは脊髄虚血あるいは外傷、アルツハイマー病、糖尿病性末梢神経障害、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、脊髄損傷、ハンチントン病が挙げられる。
【0010】
本発明のこれらのおよび他の局面は、下記の詳細な説明を参照すれば明らかになる。さらに、様々な引例を本明細書で記述する。その中では、より詳細に一定の手順または組成物について記述してあり、それらは参照により全体が本明細書に組み入れられる。
【0011】
詳細な説明
I.定義
特に記載がなければ、明細書および請求の範囲を含む本出願において使用する下記用語は、下記の定義を有する。明細書および添付の請求の範囲において使用されるように、単数形形態「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈で特に明確に記述されていなければ、複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。標準化学用語の定義は、Carey and Sundberg(1992)“Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.”Vols. A and B、Plenum Press, New Yorkを含む参考資料において見いだすことができる。本発明の実施では、特に記載がなければ、当技術分野の技術内の、質量分析、タンパク質化学、生物化学、組み換えDNA技術および薬理学の従来の方法を使用する。
【0012】
「有効量」または「薬学的有効量」という用語は、所望の生物学的、治療、および/または予防結果を提供する、非毒性であるが十分な量の薬剤を示す。その結果、疾患の徴候、症状、または原因の減少および/または緩和、または任意の他の望ましい生体系の変化が生じる。例えば、治療的使用に対する「有効量」は、疾患の臨床的に有意な減少を提供するのに必要な、本明細書で開示したチオフェンまたはフラン骨格を有する化合物または化合物を含む組成物の量である。各々の場合のいずれにおいても適当な有効量は、通常の実験を使用して当業者により決定することができる。
【0013】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という用語により、生物学的または非生物学的に、望ましくないものではない材料を意味し、すなわち、材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こさず、または組成物中に含まれる成分のいずれとも有害な相互作用をすることなく、個人に投与することができる。
【0014】
化合物の「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容され、親化合物の所望の薬理学的活性を有する塩を意味する。そのような塩として、例えば、以下のものが挙げられる:
(1)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などと形成される;または有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクト-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4'-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などと形成される、酸付加塩;
(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、またはアルミニウムイオンにより置換されるか、または有機塩基により配位結合すると、形成される塩。許容される有機塩基としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどが挙げられる。許容される無機塩基としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。薬学的に許容される塩というと、その溶媒付加形態または結晶形態、特に溶媒和物または多形体が含まれることを理解すべきである。溶媒和物は、溶媒を化学量論量、または非化学量論量含み、しばしば、結晶化過程で形成される。水和物は溶媒が水である場合に形成され、アルコラートは溶媒がアルコールである場合に形成される。多形体は化合物の同じ元素組成の異なる結晶充填配列を含む。多形体は通常異なるX線回折パターン、赤外スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形状、光学および電気特性、安定性ならびに溶解性を有する。様々な因子、例えば再結晶化溶媒、結晶化速度、および貯蔵温度により、単一の結晶形態が支配的に形成される。
【0015】
上記で規定したようにR1、R2、R3およびR4部分を有する化合物において不斉中心が存在する場合、本発明は、不斉中心の結果生じる鏡像異性化合物、およびそのラセミ混合物を含む。
【0016】
本明細書で使用されるように、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0017】
本明細書で使用されるように「アルキル」という用語は、置換または非置換直鎖、分枝、または環状炭化水素鎖フラグメントまたはラジカルを示し、好ましくは約1〜約20炭素原子、より好ましくは約1〜約10炭素原子を含む(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、シクロブチル、アダマンチル、ノルアダマンチルなど)。10またはそれ以下の炭素原子を有する直鎖、分枝、または環状炭化水素鎖もまた、本明細書で「低級アルキル」と呼ばれる。炭化水素鎖はさらに、1つまたは複数の不飽和度、すなわち、1つまたは複数の二重もしくは三重結合を有してもよい(例えば、ビニル、プロパルギル、アリル、2-ブテン-1-イル、2-シクロペンテン-1-イル、1,3-シクロヘキサンジエン-1-イル、3-シクロヘキセン-1-イルなど)。このように二重結合を含むアルキル基はまた、本明細書では「アルキレン」と呼ばれる。
【0018】
本明細書で使用されるように「アリール」という用語は、20またはそれ以下の炭素原子を有する環状芳香族炭化水素鎖を示し、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニルおよびアントラセニルである。アリール基の1つまたは複数の炭素原子は、例えば、アルキル;アリール;複素環;ホルミル;ハロゲン;ニトロ;シアノ;ヒドロキシル、アルコキシルまたはアリールオキシル;チオまたはメルカプト、アルキル-またはアリールチオ;アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキル-、ジアリール-、またはアリールアルキルアミノ;アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、ジアリールアミノカルボニルまたはアリールアルキルアミノカルボニル;カルボキシル、またはアルキル-もしくはアリールオキシカルボニル;カルボキシアルデヒド、またはアリール-もしくはアルキルカルボニル;イミニル、またはアリール-もしくはアルキルイミニル;スルホ;アルキル-またはアリールスルホニル;ヒドロキシイミニル、またはアリール-またはアルコキシイミニル;ウレイド;あるいはチオウレイドにより置換されてもよい。さらに、アリール基の2またはそれ以上のアルキルまたはヘテロアルキル置換基は結合されて、縮合アリール-アルキルまたはアリール-ヘテロアルキル環構造(例えば、テトラヒドロナフチル)を形成してもよい。複素環基を含む置換基(例えば複素環オキシ、ヘテロアリールオキシ、およびヘテロアラルキルチオ)は上記用語に対する類推により規定される。
【0019】
本明細書で使用されるように、「脂肪族」という用語はアルカン、オレフィン(アルケンまたはアルキルジエン)、およびアルキンを含む。
【0020】
脂環は、置換または非置換シクロパラフィン(飽和)、シクロオレフィン(2またはそれ以上の二重結合を有し不飽和)、および少なくとも1つの三重結合を有するシクロアセチレン(シクリン(cyclyne))を含む。非制限的例としては、シクロプロパン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、およびシクロオクタテトラエン(cycloctatetraene)が挙げられる。
【0021】
芳香族は、1つまたは複数の環の置換または非置換不飽和環状炭化水素を示し、典型的にはフェニル、ナフタリル、フェナントレニル、およびアントラセニルなど(それらに限定されない)のアリール構造が挙げられる。非制限的な芳香族例としては、6員(典型的にはベンゼン)および5員(典型的には、フラン、チオフェン、ピロールおよびインドール)環が挙げられる。
【0022】
複素環は環状構造内の少なくとも1つの非炭素原子の存在を示す。非制限的例としては、窒素、酸素、硫黄原子の存在を含む複素環が挙げられ、例えば、フェニル、ナフチル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チエニル、フリル、テトラヒドロフリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズピラゾリル、ベンゾチオフラニル、シノリニル、プテリジニル、フタラジニル、ナフチピリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、プリニルおよびインダゾリル(ここで、そのようなフェニル、ナフチルまたは複素環は下記からなる群より選択される1〜5の官能基により置換されてもよい:C1〜6分枝または非分枝アルキル、フェニル、ナフチル、上記群から選択される複素環、部分的にまたは完全にハロゲン化されていてもよいC1〜6分枝または非分枝アルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンタニル、シクロヘキサニル、シクロヘプタニル、ビシクロペンタニル、ビシクロヘキサニル、ビシクロヘプタニル、フェニルC1〜5アルキル、ナフチルC1〜5アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、C1〜3アルキルオキシ(部分的にまたは完全にハロゲン化されてもよい)、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ヘテロアリールオキシ(ヘテロ環部分は上記の群から選択される)、ニトロ、アミノ、モノ-またはジ-(C1〜3)アルキルアミノ、フェニルアミノ、ナフチルアミノ、ヘテロシクリルアミノ(ヘテロシクリル部分は上記の群から選択される)、NH2C(O)、モノ-またはジ-(C1〜3)アルキルアミノカルボニル、C1〜5アルキル-C(O)-C1〜4アルキル、アミノ-C1〜5アルキル、モノ-またはジ-(C1〜3)アルキルアミノC1〜5アルキル、アミノ-S(O)2、またはジ-(C1〜3)アルキルアミノ-S(O)2);または下記からなる群より選択される縮合アリール:ベンゾシクロブタニル、インダニル、インデニル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、ベンゾシクロヘプタニルおよびベンゾシクロヘプテニル、または下記から群より選択される縮合複素環部分:シクロペンテノピリジン、シクロヘキサノピリジン、シクロペンタノピリミジン、シクロヘキサノピリミジン、シクロペンタノピラジン、シクロヘキサノピラジン、シクロペンタノピリダジン、シクロヘキサノピリダジン、シクロペンタノキノリン、シクロヘキサノキノリン、シクロペンタノイソキノリン、シクロヘキサノイソキノリン、シクロペンタノインドール、シクロヘキサノインドール、シクロペンタノベンズイミダゾール、シクロヘキサノベンズイミダゾール、シクロペンタノベンゾキサゾール、シクロヘキサノベンゾキサゾール、シクロペンタノイミダゾール、シクロヘキサノイミダゾール、シクロペンタノチオフェンおよびシクロヘキサノチオフェン(ここで、縮合アリールまたは縮合複素環は下記からなる群より独立して選択される0〜3の官能基により置換される:フェニル、ナフチルおよび下記からなる群より選択される複素環部分:ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チエニル、フリル、イソキサゾリル、およびイソチアゾリル、C1〜6分枝または非分枝アルキル(部分的または完全にハロゲン化されていてもよい)、ハロ、シアノ、C1〜3アルキルオキシ(部分的または完全にハロゲン化されていてもよい)、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ヘテロシクリルオキシ(複素環部分は上記の群から選択される)、ニトロ、アミノ、モノ-またはジ-(C1〜3)アルキルアミノ、フェニルアミノ、ナフチルアミノ、ヘテロシクリルアミノ(複素環部分は上記の群から選択される)、NH2C(O)、モノ-またはジ-(C1〜3)アルキルアミノカルボニル、C1〜4アルキル-OC(O)、C1〜5アルキル-C(O)-C1〜4分枝または非分枝アルキル、アミノ-C1〜5アルキル、またはモノ-もしくはジ-(C1〜3)アルキルアミノ-C1〜5アルキル);またはc)下記からなる群より選択されるシクロアルキル:シクロペンタニル、シクロヘキサニル、シクロヘプタニル、ビシクロペンタニル、ビシクロヘキサニルおよびビシクロヘプタニル(ここで、シクロアルキルは部分的にまたは完全にハロゲン化されていてもよく、1〜3個のC1〜3アルキル基により置換されてもよい);またはアゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリノ、ピペラジニル、ヘキサヒドロアゼピニルまたはオクタヒドロアゾシニルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0023】
上記脂肪族、カルボキシアルキル、カルボアルコキシアルキル、アルコキシ、脂環、アリール、芳香族、および複素環部分はすべて、もちろん、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、アルキル、およびアルコキシから独立して選択される1〜3の置換基により置換されてもよい。
【0024】
スルホニルは硫黄原子の存在を示し、硫黄原子は他の部分、例えば、脂肪族基、芳香族基、アリール基、脂環式基、または複素環基に結合されていてもよい。アリールまたはアルキルスルホニル部分は化学式-SO2R'を有し、アルコキシ部分は化学式-O-R'を有し、ここで、R'は上記で規定したようなアルキルであり、またはアリールであり、ここで、アリールは任意に、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、低級アルキル(1〜6C)および低級アルコキシ(1〜6C)から独立して選択される1〜3の置換基により置換されてもよいフェニルである。
【0025】
II.化合物
本発明はチオフェン含有およびフラン含有化合物およびそれらの薬剤としての使用方法に関する。本明細書で記述した化合物を、様々な疾患を治療するために使用してもよい。好ましくは、本明細書で記述した化合物をPDE6関連状態の治療に使用する。特定の態様では、本発明の化合物は好ましくは、PDE6を調節し、HMG CoAレダクターゼに対し最低限効果を有する。一定の他の態様では、PDE6が調節され、HMG CoAレダクターゼに対する効果が最低限であることが望ましい状態において使用される。
【0026】
当業者であれば、本明細書で記述した化合物が互変異性、立体配座異性、幾何異性および/または光学異性の現象を示すことがあることを認識する。本発明は、本明細書で記述した化合物の互変異性体、立体配座異性体、光学異性体および/または幾何異性体すべて、ならびにこれらの様々な異なる形態の混合物を含むことを理解すべきである。例えば、本発明の化合物は複数の不斉原子を有し、本発明の可能な立体異性体およびラセミ混合物を全て含むものとする。したがって、本明細書で記述した化合物は、鏡像異性的に純粋な形態で、または鏡像異性体混合物、例えばラセミ混合物として投与してもよい。
【0027】
多くの場合において、チオフェン含有およびフラン含有化合物は代謝されて活性化合物が生成されることも認識される。活性代謝産物の使用もまた、本発明の範囲内にある。
【0028】
1つの局面では、本発明はチオフェン骨格を有する化合物、またはそのような化合物の薬学的に許容される塩を提供する。チオフェン含有化合物は下記化学式Iを有する:

(式中、
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NR5C(O)R7、C(O)NR5R6、C(O)R7およびC(O)OR7からなる群より選択され、ここで、R5、R6およびR7は、それぞれ、水素、低級アルキル、シクロアルキルまたはアリールとなるように選択され、かつR5およびR6またはR5およびR7は共に、1つまたは複数の置換を有してもよい3、4、5、6または7員環を形成することができる。このように、R5およびR6またはR5およびR7は共に、任意で、置換もしくは非置換アジリジノ、置換もしくは非置換ピペリジノ、置換もしくは非置換モルホリノ、置換もしくは非置換イミダゾリル、置換もしくは非置換ピリジル、または置換もしくは非置換ピロリジノ環を形成することができる)。
【0029】
化学式Iの例であるチオフェン含有化合物を図1に、対応する化合物識別番号と共に示す。
【0030】
本発明の別の局面では、化学式IIのチオフェン含有化合物、またはそのような化合物の薬学的に許容される塩が提供される:

(式中、
R10およびR11は、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NR5C(O)R7、C(O)NR5R6、C(O)R7およびC(O)OR7からなる群より選択され、ここで、R5、R6およびR7は、それぞれ、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールとなるように選択され、かつR5およびR6またはR5およびR7は共に、1つまたは複数の置換を有してもよい3、4、5、6または7員環を形成することができる。このように、R5およびR6またはR5およびR7は共に、任意で、置換または非置換アジリジノ、置換もしくは非置換ピペリジノ、置換もしくは非置換モルホリノ、置換もしくは非置換イミダゾリル、置換もしくは非置換ピリジル、または置換もしくは非置換ピロリジノ環を形成することができる)。
【0031】
化学式IIの例であるチオフェン含有化合物を図2に、対応する化合物識別番号と共に示す。
【0032】
1つの局面では、本発明は、フラン骨格を有する化合物、またはそのような化合物の薬学的に許容される塩を提供する。フラン含有化合物は一般式IIIを有する:

(式中、R1、R2、R3およびR4は化学式Iに対し上記で規定した通りである)。
【0033】
化学式IIIの例であるフラン含有化合物を図3に、対応する化合物識別番号と共に示す。
【0034】
本発明はまた、上記化合物のプロドラッグを提供する。この場合、プロドラッグはインビボで代謝され、上記で記述した誘導体が生成する。実際、上記誘導体のいくつかは別の誘導体または活性化合物に対するプロドラッグであってもよい。本発明はさらに、本明細書で開示した化合物の、特に分子中の不斉炭素原子により得られる光学異性体を提供する。本発明の別の態様では、一準備工程、組み合わせ、または相互交換により得られる鏡像異性体および/またはジアステレオマーの混合物が提供される。
【0035】
III.合成方法
本発明の化合物は本明細書で記述されるようにチオフェン含有およびフラン含有化合物を含む。化合物は、商業的供給源、例えば、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee、Wis.)、Sigma Chemical Co.(St.Louis、Mo.)、またはMaybridge(Cornwall、England)から入手でき、または化合物は合成することができる。本発明の化合物、および上記方法のいずれかにより識別される異なる置換基を有する他の関連化合物は、例えば、March、ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 4th Ed.、(Wiley 1992);Carey and Sundberg、ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY 3rd Ed.、Vols. A and B(Plenum 1992)、およびGreen and Wuts、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS 2nd Ed.(Wiley 1991)において記述されているように、当業者に公知の技術および材料を用いて合成することができる。本発明の化合物のための出発材料は、標準技術および市販の前駆体材料、例えば、Aldrich Chemical Co.、Sigma Chemical Co.、Lancaster Synthesis(Windham、N.H.)、Apin Chemicals、Ltd.(New Brunswick、N.J.)、Ryan Scientific(Columbia、S.C.)、およびMaybridgeから入手可能なものを用いて得てもよい。本発明の化合物およびそれらの中間体を調製するのに有益な出発材料は市販されており、周知の合成法により調製することもできる。

【0036】
本発明の化合物を合成するための、本明細書で記述した手順は、保護および脱保護の1つまたは複数の段階を含んでもよい(例えば、アセタール基の形成および除去)。保護基の例は、Green and Wuts、Protective Groups in Organic Chemistry、3nd Ed.、1999、John Wiley & Sons、NY and Harrison et al.、Compendium of Synthetic Organic Methods、Vols. 1-8、1971-1996、John Wiley & Sons、NYにおいて見いだすことができる。代表的なアミノ保護基としては、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(“CBS”)、tert-ブトキシカルボニル(“Boc”)、トリメチルシリル(“TMS”)、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル(“SES”)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(“FMOC”)、ニトロ-ベラトリルオキシカルボニル(“NVOC”)などが挙げられるが、それらに限定されない。代表的なヒドロキシル保護基としては、ヒドロキシル基がアセチル化(例えば、メチルおよびエチルエステル、酢酸もしくはプロピオン酸基、またはグリコールエステル)またはアルキル化されているもの、例えば、ベンジルおよびトリチルエーテル、ならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル(例えば、TMSまたはTIPPS基)およびアリルエーテルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0037】
さらに、合成手順には様々な精製、例えば、カラムクロマトグラフィ、フラッシュクロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ(TLC)、再結晶化、蒸留、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)などが含まれる。また、化学反応生成物の同定および定量のための化学分野において周知の様々な技術、例えば、プロトンおよび炭素-13核磁気共鳴(1Hおよび13C NMR)、赤外および紫外分光法(IRおよびUV)、X線結晶法、元素分析(EA)、HPLCおよび質量分析(MS)もまた、同様に使用することができる。保護および脱保護、精製ならびに同定および定量法は化学分野では周知である。
【0038】
IV.チオフェンおよびフラン化合物の活性
別の局面では、本発明の化合物について、PDE6Dに結合する能力、およびタンパク質の活性を調節する能力のスクリーニングが可能であり、すなわち、PDE6Dポリペプチドまたはフラグメント、一部、またはその類似体の機能および/または活性を増加させる(刺激する)または減少させる(阻害する)化合物を識別することができる。本方法は、2004年5月17日に出願された整理番号第30583-715.201号の“Pyrrole compounds and uses thereof”と題する同時係属中の米国特許出願第 号において詳細に記述されているように、インビトロまたはインビボで実施してもよい。簡単に言うと、チオフェン含有またはフラン含有化合物がPDE6Dに結合し、その活性を調節することができるかどうかを識別するための1つの方法は、PDE6Dポリペプチドまたはフラグメント、一部またはその類似体を含む指標組成物を提供する段階、指標組成物を1つまたは複数の上記で開示した化合物(可能性のあるPDE6D活性化剤または阻害剤)と接触させる段階、および指標組成物中のPDE6D活性に対する化合物の効果を決定し、標的の活性または機能を刺激または阻害する化合物を識別する段階を含む。方法は、好ましくは、本明細書で開示した疾患の治療および/または予防に使用するための刺激剤および阻害剤を識別するために使用する。
【0039】
いくつかの態様では、化合物はPDE6Dの機能および/または活性に影響し、そのため、PDE6Dの機能および/または活性の変化を必要とする、被験体、好ましくはヒトに投与することができる。このように、本発明は、不十分な、または望ましくない、あるいは過剰のPDE6D活性、例えば、PDE6Dのその結合パートナーへの結合または他のタンパク質、特にプレニル化タンパク質との結合により媒介される疾患または望ましくない状態の治療を提供する。本発明の化合物は、PDE6Dにより媒介される細胞シグナル伝達カスケードの調節に有益な化合物、ならびに癌および無仙椎の治療または予防のための化合物を含むことが期待される。
【0040】
本発明の別の局面では、虚血性細胞死に関連する状態、例えば心筋梗塞、脳卒中、緑内障および他の神経変性状態を予防および治療するために有益である化合物および組成物を提供する。神経変性状態は、脳、脊髄および末梢神経系により媒介される機能の喪失に至る、ニューロンの機能障害および死により特徴づけられる。他の慢性神経変性疾患の例としては、糖尿病性末梢神経障害、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、脊髄損傷、ハンチントン病およびパーキンソン病が挙げられる。正常な脳の老化も正常な神経機能の喪失と関連し、一定のニューロンの欠乏を伴うことがある。
【0041】
「脳卒中」という用語は広く、原因に関係なく、脳への血流障害に関連する神経学的欠損の発症を示す。可能性のある原因としては、血栓症、出血および塞栓症が挙げられるが、それらに限定されない。血栓、塞栓および全身低血圧症は脳虚血症状の発現の最も一般的な原因である。他の傷害は、高血圧、高血圧脳血管疾患、動脈瘤の破裂、血管腫、血液疾患、心不全、心停止、心原性ショック、敗血症ショック、頭部外傷、脊髄損傷、てんかん、腫瘍からの出血、または他の血液減少により引き起こされるかもしれない。損傷した脳の領域によっては、脳卒中により昏睡、麻痺、会話障害および痴呆が引き起こされることがある。脳梗塞の主原因のいくつかは血管内血栓、脳塞栓、低血圧、高血圧性出血、および酸素欠乏/低酸素症である。本明細書で開示した化合物は脳卒中の治療において有益である。
【0042】
本発明によれば、本明細書で開示した化合物は、虚血性細胞死、例えば心筋梗塞、脳卒中、緑内障および他の神経変性疾患に関連する状態を予防および治療するために有益である。アポトーシス性細胞死に関係する様々な神経変性状態としては、アルツハイマー病、ALSおよび運動ニューロン変性症、パーキンソン病、末梢神経障害、ダウン症候群、年齢関連性黄斑変性症(ARMD)、外傷性脳損傷、脊髄損傷、ハンチントン病、脊髄性筋萎縮症、およびHIV脳症が挙げられるが、それらに限定されない。チオフェン含有またはフラン含有化合物を、神経を保護する、および神経変性疾患を治療するための方法および組成物において使用することができる。
【0043】
V.生物活性
哺乳類、好ましくはヒト、ネコ、家畜類またはイヌにおける、関節炎(例えば、骨関節炎、変形性関節炎、脊椎関節炎、痛風性関節炎、全身性エリテマトーデス、若年性関節炎および関節リウマチ)、風邪、月経困難、月経けいれん、炎症性大腸炎、クローン病、気腫、急性呼吸窮迫症、喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病、臓器移植毒性、悪液質、アレルギー反応、アレルギー性接触過敏症、癌(例えば、結腸癌、乳癌、肺癌および前立腺癌を含む充実性腫瘍;白血病およびリンパ腫を含む造血器悪性腫瘍;ホジキン病;再生不良性貧血、皮膚癌および家族性腺腫様ポリープ)、組織潰瘍、消化性潰瘍、胃炎、限局性腸炎、潰瘍性大腸炎、憩室炎、再発消化管病変、消化管出血、凝固、貧血、滑膜炎、痛風、強直性脊椎炎、再狭窄、歯周病、表皮水疱症、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症(例えば、アテローム斑崩壊)、大動脈瘤(例えば異常大動脈瘤および脳大動脈瘤)、結節性動脈周囲炎、鬱血性心不全、心筋梗塞、脳卒中、脳虚血、頭部外傷、脊髄損傷、神経痛、神経変性疾患(急性および慢性)、自己免疫疾患、ハンチントン病、パーキンソン病、片頭痛、うつ病、末梢神経障害、疼痛(例えば、腰痛および頸痛、頭痛ならびに歯痛)、歯肉炎、脳アミロイド・アンギオパチー、向知性または認知亢進、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、眼血管形成、角膜損傷、黄斑変性症、結膜炎、異常創傷治癒、筋肉または関節のねんざまたは筋違い、腱炎、皮膚疾患(例えば、乾癬、湿疹、強皮症および皮膚炎)、重症筋無力症、多発性筋炎、筋炎、滑液包炎、熱傷、糖尿病(I型およびII型糖尿病、糖尿病性網膜症、ニューロパシーおよびネフロパシーを含む)、腫瘍浸潤、腫瘍増殖、腫瘍転移、角膜瘢痕化、強膜炎、免疫不全症(例えば、ヒトにおけるAIDSおよびネコにおけるFLV、FIV)、敗血症、早産、低プロトロンピン血症、血友病、甲状腺炎、サルコイドーシス、ベーチェット症候群、過敏性、腎臓病、リケッチア感染症(例えばライム病、エールリヒア症)、原虫感染症(例えば、マラリア、ジアルジア、コクシジウム)、繁殖障害(好ましくは家畜類において)、および敗血性ショック(好ましくは、関節炎、発熱、風邪、疼痛および癌)からなる群より選択される状態を予防および/または治療するための薬学的組成物において、化学式I、IIおよびIIIの化合物を使用することができる。薬学的組成物は、そのような予防および/または治療に有効な一定量の化学式I、IIもしくはIIIの化合物またはその薬学的に許容される塩を、任意で薬学的に許容される担体と共に含む。
【0044】
化学式I、IIおよびIIIの1つまたは複数の化合物の、ホスホジエステラーゼ6D(PDE6D)に結合しPDE6Dの活性を調節する能力は、当業者に周知の方法を使用して容易に決定することができる。例えば、化合物を、タンパク質を発現する細胞と(インビトロまたはインビボで)接触させ、その後、細胞培養物における表現型の変化について、化合物に曝露していない対照生物と比較して評価することができる。
【0045】
生物学的標的-PDE6δ(PDE6D)
PDE6型ファミリーメンバーは網膜光情報伝達に関連する(Stryer、L、et al.、J. Biol. Chem. 266:10711-14(1991))。光情報伝達では、光受容体細胞は光を吸収し、PDE6によるcGMP加水分解に至る生物化学反応の細胞内カスケードの活性化を介して神経シグナルを引き起こす。cGMPが減少すると、光受容体細胞における膜結合cGMP依存性陽イオンチャネルが閉じ、神経シグナルが生成する。PDE6非活性化、グアニルシクラーゼ活性化およびcGMPレベルの修復により細胞の暗状態が回復する。
【0046】
PDE6は、2つの触媒サブユニット(αおよびβ)ならびに2つの阻害(γ)サブユニットからなる四量体タンパク質である。PDE6複合体からのγサブユニットの放出は、酵素を活性化するトランスデューシンにより媒介される。γサブユニットの再結合は、酵素を不活性化するリカバリンにより媒介される。PDE6が網膜細胞中の桿体外節の円板膜と主に結合し、酵素の可溶形態は第4(δ)サブユニットを含む(Florio、S.K. et al.(1996)J. Biol. Chem. 271:24036-47)。
【0047】
PDE6ホロ酵素は、膜結合形態および可溶形態の両方として存在し、膜結合形態のみが光情報伝達において活性である。重要なことは、可溶形態のみがPDE6Dサブユニットを含むということである。PDE6DはPDE6の細胞内局在化および活性を調節し、膜からのPDE6の放出がPDE6Dにより媒介される。実際、おそらく、膜からPDE6ホロ酵素を除去することにより、PFE6Dは桿体外節において光誘発cGMP加水分解を減少させることが観察されている(Cook et al.、J. Biol. Chem 276(7):5248-5255(2001))。PDE6Dは、PDE6AおよびPDE6BサブユニットのC末端付近のプレニル化ペプチド配列に特異的に結合することによりPDE6を可溶化する。1つの態様では、本発明は、cGMP加水分解へのPDE6関与の調節により、視力障害疾患、特に光情報伝達カスケードと関連する疾患の治療を提供する。
【0048】
PDE6δ(PDE6D)は、膜結合PDE6と関連して見いだされてはいないが、膜結合PDE6を可溶化することが観察されている17kDaのサブユニットである。桿体膜からのPDE6の放出は、PDE6のC末端部分へのδサブユニットの結合を介すると考えられ、膜結合トランスデューシング(transducing)によるPDE6活性化の可能性を減少させると考えられる。δサブユニットはまた、別の酵素調節レベルを提供すると仮定される。
【0049】
ヒトPDEδ遺伝子産物(PDE6D)は、触媒PDEαおよびβサブユニットに対するシャペロンとして認識されている。プレニル化PDEαおよびβサブユニットは、おそらく視覚カスケードの調節メカニズムとして、PDE6Dにより結合されること、膜から可溶化されることが見いだされている。網膜色素変性症(RP)は、暗順応障害および視力の著しい低下により特徴づけられる遺伝性網膜ジストロフィーである。RP遺伝子は、網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子(RPGR)タンパク質として識別されており、このタンパク質は、プレニル化がなくてもPDE6ファミリーのメンバーに対し結合親和力を有することが観察されている(Linari M. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:1315-1320(1999))。PDE6Dは温度感受性様式で、網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子(RPGR)と相互作用する。相互作用は、RPGRのRCC1-ドメインにおける突然変異により廃止される。1つの態様では、本発明はPDE6のRPGRおよび光情報伝達カスケードに関与する他の分子との相互作用の調節により、RPの治療を提供する。
【0050】
PDE6Dは多くの細胞型で発現され、細胞内局在化およびプレニル化タンパク質、例えば、H-Ras、Rheb、Rho6、Rac、Rap、およびPDE6の輸送を調節する際に全般的な役割を有する(Hanzal-Bayer et al.、EMBO J. 21(9):2095-2106(2002)およびLinari et al. Proc. Natl. Acad. Sci.、USA96(4):1315-1320)。これらのプレニル化タンパク質の膜局在化の調節におけるPDE6Dの役割は依然明確ではないが、PDE6Dが内膜(小胞体およびゴルジ)からのタンパク質を、最終的な膜コンパートメントへ確実に正確に送達する輸送構造に送達すると提案されている。
【0051】
PDE6DはGTPアーゼと相互作用する。GTPアーゼは細胞膜で分子スイッチとして重要な役割を果たすタンパク質の大きなスーパーファミリーであり、GTPが結合すると活性化され、GDPが結合すると不活性化される。これらのGTPアーゼの大部分は、細胞膜の細胞内側へ付着するための共有結合により結合したプレニル基を有する。膜付着型とフリーのサイトゾル型との間の往復により機能する。δサブユニットは、小Rab13 GTPアーゼのイソプレニル化領域に結合し、原形質膜から移動させることができる(Marzesco et al.、J. Biol. Chem. 273(35):22340-22345(1998))。さらに、PDE6DはRasおよびRap GTPアーゼの両方のC末端領域と相互作用し、原形質膜との結合を調節することができる。Ras結合では、PDE6DはC末端のプレニル化領域を必要とする(Nancy et al.、J. Biol. Chem. 277(17):15076-15084(2002))。
【0052】
PDE6Dはまた、H-Ras、Rheb、Rho6およびGα(i1)と相互作用することが観察されており、プレニル化タンパク質、例えば、PDEのサブユニットおよび小GTP結合タンパク質に対する輸送因子として示唆されている(Hanzal-Bayer et al.、EMBO J. 21(9):2095-2106(2002))。PDE6およびPDE5上で作用するcGMP PDE特異阻害薬としては、ザプリナスト、デスメチルシルデノフィル、ビノポセチン、ミルリノン、アムンリノン、ピモベンダン、シロスタミド、エノキシモン、ペロキシモン、ベスナリノン、ロリプラン、R020-1724、およびジピリダモールが挙げられる。本発明の化合物は、プレニル化タンパク質および/またはGTP結合タンパク質の誤細胞内輸送に起因する医学的障害または疾患を治療するために投与することができる。
【0053】
プレニル基(例えば、ファルネシルおよびゲラニル-ゲラニル)およびコレステロールに対する生合成経路は一部重複し、どちらもHMG-CoAレダクターゼ活性を必要とする。PDE6Dはまた、プレニル化経路の重要な成分と考えることができる。というのは、PDE6Dはプレニル化タンパク質の輸送および局在化を調節するからである。プレニル化タンパク質は、シグナル伝達において重要な役割を果たし(例えば、Ras)、神経毒性におけるプレニル化タンパク質の役割を示唆する証拠が存在する(Liao J. K. J. Clinical Investigation、110:285-288(2002))。このように、PDE6Dに結合し、その活性を調節する化合物は、直接、プレニル化タンパク質の局在化および機能を撹乱し、状態および疾患の予防および治療において有益なはずである。
【0054】
PDE6Dは桿体外節における光誘導cGMP加水分解を減少させることが観察されている(Cook et al., J. Biol. Chem 276(7):5248-5255(2001))。δサブユニットは、光受容体に特異的な、2つのGタンパク質結合ロドプシンキナーゼ、GRK1およびGRK7のプレニル化C末端領域と直接相互作用する(Zhang et al.、J. Biol. Chem. 279(1):407-413(2004))。ロドプシンキナーゼは膜光受容体をリン酸化し、光情報伝達を調節する。1つの態様では、本発明は、ロドプシンキナーゼおよび光情報伝達シグナル伝達カスケードに関与する他の分子とのPDE6相互作用を調節することにより、視力障害を治療する方法を提供する。
【0055】
PDE6Dはまた、翻訳後プレニル化のない他のタンパク質と相互作用することがわかっている。例えば、PDE6Dは網膜色素変性症GTPアーゼ制御因子(RPGR)タンパク質の非プレニル化領域と相互作用する(Linari et al.、Proc. Natl. Acad. Sci.、USA 96(4):1315-1320(1999))。さらに、δサブユニットはArlタンパク質またはARF(ADP-リボシル化因子)様タンパク質として公知のGTPアーゼサブファミリーの2つのメンバーと相互作用することができる。PDE6Dは、いずれの翻訳後修飾とは関係なく、Arl2およびArl3タンパク質と相互作用する(Hanzal-Bayer et al.、EMBO J. 21(9):2095-2106(2002)およびLinari et al.、FEBS Letter 458:55-59(1999))。それらの構造-機能研究に基づき、Hanzal-Bayerらは、δサブユニットが膜結合プレニル化タンパク質、例えばGTP結合分子に対する輸送因子であり、Arl2/3はプレニル化タンパク質の放出および/または取り込みにおけるδサブユニットのメディエータとして機能すると推測した。1つの態様では、本発明は、Arl2/3分子活性を調節することにより、PDE6関連および/またはGTP結合タンパク質関連疾患を治療する方法を提供する。本明細書で「PDE6」という用語を使用し、その活性および/または調節に言及する場合、PDE6との相互作用のない、PDE6Dの活性および/または調節も含むものとする。
【0056】
VI.化合物の臨床用途
化学式I、IIおよびIIIの化合物は、様々な疾患および望ましくない状態を治療するのに使用してもよい。好ましくは、本明細書で記述した化合物をPDE6関連状態の治療に使用する。本明細書で記述した化合物を用いて治療することができる疾患としては、脳偶発症候(または脳血管偶発症候、例えば脳卒中)、炎症(例えば、自己免疫疾患による炎症)、多発性硬化症、血管増殖(血管形成)、骨形成/骨成長、免疫系刺激、急性冠不全症候群(心筋梗塞、非Q波心筋梗塞および不安定狭心症を含む)、および心疾患が挙げられるが、それらに限定されない。1つの局面では、本発明の化合物を使用して、脳卒中または心疾患の可能性を減少させ、脳および/もしくは心筋梗塞または他の外傷後の損傷を減少させることができる。別の局面では、それらの化合物を使用し、被験体において、脳卒中または心疾患により引き起こされる損傷の重篤度を減少させてもよい。それらの化合物により得られる非制限的な利益としては、脳梗塞および/または心筋梗塞の減少が挙げられる。本明細書で記述した化合物の使用は、PDE6関連状態またはPDE6の調節に限定されるものではなく、本発明の化合物は、他の状態を治療し、他の生物学的標的を調節するために使用することができる。
【0057】
本明細書で使用されるように、「PDE6関連状態」という用語は、PDE6分子の活性および/または産生を直接または間接的に調節することが望ましい状態を示す。この調節には、PDE6の上流または下流シグナル伝達カスケードにおける1つまたは複数の分子の調節が含まれる。例えば、PDE6関連状態には、1つまたは複数のプレニル化PDE6サブユニット、例えば、PDE6D、プレニル化PDE6αもしくはPDE6βまたは光情報伝達(PDE6αおよびPDE6βに対する応答およびそれらの発現を含む)に関連する細胞シグナル伝達経路の他の化学メッセンジャーの過剰産生または望ましくない産生が関与するかもしれない。
【0058】
いくつかの態様では、本発明の方法はPDE6調節化合物を使用する。本明細書で使用されるように「PDE6調節化合物」という用語およびその文法的活用形は、例えば、PDE6に結合することにより、好ましくはPDE6Dに結合することにより、好ましくはPDE6を調節する化合物を示す。例えば、PDE6調節化合物は、1つまたは複数のプレニル化PDE6サブユニット、例えば、PDE6D、プレニル化PDE6αもしくはPDE6β、または光情報伝達(PDE6αおよびPDE6βに対する応答およびそれらの発現を含む)に関連する細胞シグナル伝達経路の他の化学メッセンジャーを調節してもよい。いくつかの態様では、「好ましい調節」という用語およびその文法的活用形は、PDE6の特異的な調節を示す。別の態様では、その用語は、HMG Co Aレダクターゼの調節が最低限である、PDE6の好ましい調節を示す。「最低限の調節」という用語は本質的には調節がないことを示すが、調節が完全にない必要はなく;本質的には観察可能なまたは測定可能な活性がないことを示す。治療計画では、「最低限の調節」は調節されていない活性により引き起こされる状態において治療および/または予防的効果を得るには十分ではない調節を示す。
【0059】
PDE6分子の活性の調節には、これらの分子の活性を減少、増加または安定化することが含まれる。PDE6の活性の減少は、分子の「阻害」とも呼ばれる。「阻害する」という用語およびその文法的活用形、例えば、「阻害の」は、PDE6活性の完全な減少を必要とするものではない。そのような減少は好ましくは、阻害効果のない、例えば、阻害剤がない場合の分子活性の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、およびより好ましくは少なくとも95%の減少である。最も好ましくは、その用語は活性の観察可能なまたは測定可能な減少を示す。治療計画では、好ましくは、阻害は、治療すべき状態において治療的および/または予防的利益が生成するのに十分である。「阻害しない」という語句およびその文法的活用形は、活性に対し完全な効果の欠如を必要としない。例えば、本発明の化合物などの阻害剤が存在した場合のPDE6活性の減少の少なくとも約20%未満、約10%未満、好ましくは約5%未満である状態を示す。
【0060】
本発明のPDE6調節剤を哺乳類被験体に投与し、PDE6Dのプレニル化GTPアーゼへの結合を調節し、これによりGTPアーゼ依存性シグナル伝達経路を調節することにより疾患を治療することができる。GTPアーゼ依存性経路の破壊は、様々な医学的状態、例えば、血管過形成、トロンビン誘導細胞死、膀胱癌の発症および進行、慢性炎症疾患、心疾患における内皮機能不全、心臓肥大、脳の虚血領域への脳血流の変化、アルツハイマー病患者におけるアミロイド-β原線維のファゴサイトーシス、免疫不全および大動脈血管平滑筋細胞におけるフリーラジカル産生の増大の一因となる。
【0061】
PDE6関連状態はまた、神経変性疾患を含むことがあり、例えば、虚血性脳卒中、大脳基底核またはパーキンソン病、てんかんまたは脳もしくは脊髄虚血もしくは外傷;アルツハイマー病、痴呆、糖尿病性末梢神経障害、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、脊髄損傷、ハンチントン病、心不全(例えば、鬱血性心不全、急性心不全、心臓肥大など)または腎臓疾患が挙げられる。
【0062】
PDE6関連状態は視覚障害疾患を含むことができ、例えば、黄斑変性症、弱視、眼瞼炎、Bietti結晶ジストロフィー(Crystalline Dystrophy)、角膜疾患、糖尿病性眼疾患、緑内障、ヒストプラズマ症、および網膜色素変性症が挙げられる。PDE6関連状態は心血管関連状態を含むことができ、例えば、アテローム性動脈硬化、心筋梗塞、鬱血性心不全、虚血再かん流傷害および他の血管炎症状態が挙げられる。PDE6関連状態はまた、増殖性疾患を含むことができ、例えば、癌、例えば白血病、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、ならびに膀胱癌、乳癌、結腸癌、子宮内膜癌、頭部および頸部癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌および直腸癌が挙げられる。
【0063】
PDE6関連状態はまた、原因に関係なく、脳卒中により誘導された脳への血流障害から発症する神経学的欠損を含む。可能性のある原因としては、血栓症、出血および塞栓症が挙げられるが、それらに限定されない。血栓、塞栓および全身低血圧症は脳虚血症状の発現の最も一般的な原因の一つである。他の傷害は、高血圧、高血圧脳血管疾患、動脈瘤の破裂、血管腫、血液疾患、心不全、心停止、心原性ショック、敗血症ショック、頭部外傷、脊髄損傷、てんかん、腫瘍からの出血、または他の血液減少により引き起こされるかもしれない。
【0064】
1つの態様では、PDE6調節剤は、細胞の増殖における役割において、小GTP結合タンパク質Rhoの活性を調節する。Rhoタンパク質は、非腫瘍膀胱よりも腫瘍膀胱内に多く存在し、卵巣癌では上方制御されることが報告されている(Kamai T、et al.、Clin. Cancer Res. Jul;9(7):2632-41(2003)およびHoriuchi A.、et al.、Lab Invest. 2003 Jun;83(6):861-70(2003))。
【0065】
Rho GTP結合活性の阻害は、脳の虚血領域への脳血流を増大させる神経保護効果を有することがわかっている(Laufs U、et al.、J. Clin. Invest. 106(1):15-24(2000))。研究により、rho-依存性アクチン細胞骨格張線維形成が存在しない、または減少すると、eNOSは上方制御され、脳虚血の重篤度が減少することが証明された。本発明の1つの態様は、本発明の化合物によるRho調節による、虚血性脳卒中の治療を提供する。
【0066】
研究者により、細胞内酸化が必要な心臓肥大が、Rhoファミリーの小Gタンパク質の翻訳後調節のスタチン誘導阻害により減少するかもしれないことが報告されている(Takemoto M、et al.、J. Clin. Invest. 108(10):1429-37(2001))。Takemoto Mらは、Rhoイソプロニル化の阻害により、細胞内抗酸化剤効果が発生し、心臓肥大が阻止されることを観察した。本発明の1つの態様は本発明の化合物によるRhoの調節による心臓肥大の治療を提供する。
【0067】
別の態様では、PDE6調節剤は、アルツハイマー病に関与する小GTP結合タンパク質Racの活性を調節する。Racは、細胞外老人斑由来のアミロイド-β原線維のファゴサイトーシスに関与することが観察された(Kitamura Y、et al、J. Pharmacol. Sci. 92(2):115-23 2003))。
【0068】
本発明の化合物I、IIおよびIIIを用いて様々な疾患および望ましくない状態、例えば、脳偶発症候(または脳血管偶発症候、例えば脳卒中)、炎症(例えば、自己免疫疾患による炎症)、多発性硬化症、血管増殖(血管形成)、骨形成/骨成長、免疫系刺激、急性冠不全症候群(心筋梗塞、非Q波心筋梗塞および不安定狭心症を含む)、および心疾患(それらに限定されない)を治療することができる。1つの態様では、本発明の化合物を使用して、脳卒中または心疾患の可能性を減少させ、脳および/もしくは心筋梗塞または他の外傷後の損傷を減少させることができる。別の態様では、化合物を使用し、被験体において、脳卒中または心疾患により引き起こされる損傷の重篤度を減少させてもよい。化合物により得られる非制限的な利益としては、脳梗塞および/または心筋梗塞の減少が挙げられる。
【0069】
VII.製剤、投与経路、および有効用量
化学式I、IIおよびIIIの化合物は好ましくは、当技術分野で一般に公知の技術を用いて被験体に投与するための薬学的組成物に製剤化するなど、薬剤を調製するために使用される。そのような薬学的組成物をまとめたものは、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PAにおいて見いだすことができる。本発明の化合物は単独でまたは混合物の成分として使用することができる。化合物の好ましい形態は、全身投与に対するもの、および局所または経皮投与に対するものである。持続放出および/または遅延放出用に設計された製剤もまた、本発明の範囲内にある。
【0070】
そのような薬学的組成物を使用して、上記で詳細に記述したようなPDE6関連状態を治療することができる。必要または所望であれば、調節物質または阻害剤を他の治療薬と組み合わせて投与してもよい。本発明の組成物と同時に投与することができる治療薬の選択は、部分的には、治療される状態に依存する。
【0071】
調節物質は、それ自体で、または、活性化合物が1つまたは複数の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤との混合物中に存在する薬学的組成物の形態で投与してもよい。本発明に従い使用するための薬学的組成物は、従来の様式で、活性化合物を薬学的に使用することができる調製物へと加工するのを促進する、賦形剤および佐剤を含む1つまたは複数の生理的に許容される担体を使用して製剤化してもよい。適した製剤は、選択した投与経路に依存する。本発明で有益な調節物質は、経口、口腔、局所、直腸、経皮、経粘膜、皮下、静脈内、および筋内適用、ならびに吸入を含む多くの投与経路または投与方法を使用して患者に送達させることができる。
【0072】
本発明の化合物を含む組成物の調製法は、誘導体を1つまたは複数の不活性な、薬学的に許容される担体と共に製剤化し、固体または液体を形成させる段階を含む。固体組成物としては、粉末、錠剤、分散顆粒、カプセル、カシェ剤、および坐薬が挙げられるが、それらに限定されない。液体組成物としては、溶液、エマルジョン、または本明細書で開示した化合物を含むリポソーム、ミセル、またはナノ粒子を含む溶液が挙げられる。
【0073】
本発明の化合物また、特定の患者集団で、可溶化、投与、および/または服薬遵守を促進するために、食品、例えば、クリームチーズ、バター、サラダドレッシング、またはアイスクリーム中に組み入れてもよい。
【0074】
本発明の化合物は(例えば、放射性同位体を用いて)同位体標識してもよく、または他の手段、例えば、発色団または蛍光部分の使用、生物発光ラベル、または化学発光ラベル(これらに限定されない)により標識してもよい。組成物は従来の形態、液体溶液もしくは懸濁液、使用前に液体中に溶解または懸濁させるのに適した固体形態として、またはエマルジョンとして存在してもよい。適した賦形剤または担体は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、アルコール、アロエゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンAおよびE油、鉱物油、プロピレングリコール、プロピオン酸PPG-2ミリスチルなどである。当然、これらの組成物はまた、少量の非毒性の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などを含んでもよい。
【0075】
経口投与では、化合物は、活性化合物を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることにより容易に製剤化することができる。そのような担体により、本発明の化合物は、治療を受ける患者が経口摂取できるように、錠剤として、例えば、咀嚼錠、ピル、糖衣錠、カプセル、ロゼンジ、ハードキャンディ、液体、ゲル、シロップ、スラリー、粉末、懸濁液、エリキシル、ウエハースなどとして、製剤化することができる。そのような製剤は、薬学的に許容される担体、例えば、固体希釈剤または充填剤、滅菌水溶性媒質および様々な非毒性有機溶媒を含むことができる。適した賦形剤は、特に、乳糖、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;香味要素、セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。所望であれば、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを添加してもよい。化合物はまた、持続放出調製物として製剤化してもよい。
【0076】
糖衣錠コアには適当なコーティングを提供することができる。このために、高濃度の糖溶液を使用してもよく、任意でアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適した有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい。識別のために、または活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴づけるために、染料または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0077】
経口で使用することができる薬学的調製物としては、ゼラチンで形成された押し込み型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤、例えばグリセロールまたはソルビトールにより形成されたソフトな密封カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および任意に安定化剤との混合物中に活性成分を含むことができる。ソフトカプセル中では、活性化合物は適した液体、例えば脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコール中に溶解または懸濁させてもよい。さらに、安定化剤を添加してもよい。経口投与用の製剤は全て、投与に適した投与量であるべきである。
【0078】
水性懸濁液は本発明の化合物を、薬学的に許容される賦形剤、例えば懸濁化剤(例えば、メチルセルロース)、湿潤剤(例えば、レシチン、リゾレシチンおよび/または長鎖脂肪アルコール)、ならびに着色剤、保存剤、香味剤などと共に含んでもよい。
【0079】
注入用に、本発明の化合物は水溶液、好ましくは生理的に適合可能な緩衝液、例えばHank溶液、Ringer液、または生理食塩水緩衝液中で製剤化してもよい。そのような組成物はまた、1つまたは複数の賦形剤、例えば、保存剤、可溶化剤、充填剤、潤滑剤、安定化剤、アルブミンなどを含んでもよい。製剤化法は当技術分野で公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、latest edition、Mack Pubulishing Co.、Easton P.に開示されている。これらの化合物はまた、経粘膜投与、口腔投与用に、吸入による投与用に、非経口投与用に、経皮投与用に、および直腸投与用に製剤化してもよい。
【0080】
前述した製剤以外に、化合物はまた、デポー製剤として製剤化してもよい。そのような長期作用製剤は、移植または経皮送達(例えば、皮下または筋内)、筋肉注射または経皮パッチの使用により、投与してもよい。このように、例えば、化合物は適したポリマー材料または疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂と共に、またはやや溶けにくい誘導体、例えば、やや溶けにくい塩として製剤化してもよい。
【0081】
いくつかの態様では、本発明の化合物を含む薬学的組成物は、炎症の特別な部位に、またはその付近に局所投与または注入されると、局所的な抗炎症効果をもたらす。例えば、アレルギー性の目の炎症状態および/または自己免疫状態は、1つまたは複数の本発明の化合物を含む眼科用の溶液、懸濁液、軟膏または挿入物により効果的に治療することができる。耳のアレルギー性の炎症および/または自己免疫状態は、1つまたは複数の本発明の化合物を含む耳用の溶液、懸濁液、軟膏または挿入物により効果的に治療することができる。皮膚および皮膚構造のアレルギー性の炎症および/または自己免疫状態は、油脂性炭化水素基剤、無水吸収基剤、油中水吸収基剤、水中油水除去可能基剤および/または水溶性基剤中に1つまたは複数の本発明の化合物を含む皮膚用軟膏により効果的に治療することができる。アレルギー性の胃腸の炎症および/または自己免疫状態は、1つまたは複数の本発明の化合物を含む、経口または直腸送達される溶液、懸濁液、軟膏、浣腸および/または坐薬により効果的に治療することができる。呼吸器の、アレルギー性の炎症および/または自己免疫状態は、1つまたは複数の本発明の化合物を含むエアロゾル溶液、懸濁液または乾燥粉末により効果的に治療することができる。
【0082】
例えば、炎症および/または自己免疫状態を治療するために、本発明の化合物を含むクリームを、患部、例えば、乾癬における赤色斑または乾燥鱗屑を示す部位、または皮膚炎における炎症および乾燥領域に局所適用してもよい。別の例として、炎症性大腸炎を治療するために、本明細書で開示した化合物の坐薬製剤を使用することができる。そのような態様では、活性成分は、PDE6、例えばPDE6Dを調節することにより、全身的ではなく、適用部位で、またはその付近で局所的に効果を発揮する。
【0083】
例えば、局所的および/または局部的な効果を得るために、例えば、粘稠液、ゲル、ゼリー、クリーム、ローション、軟膏、坐薬、泡、またはエアロゾルスプレーの直接的な局所適用を使用して、局所投与してもよい。そのような製剤のための薬学的に適した溶剤(vehicle)としては、例えば、低級脂肪族アルコール、ポリグリコール(例えば、グリセロールまたはポリエチレングリコール)、脂肪酸のエステル、油、脂肪、シリコーンなどが挙げられる。そのような調製物はまた、保存薬(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エステル)および/または抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸およびトコフェロール)を含んでもよい。Dermatological Formulations:Percutaneous absorption、Barry(Ed.)、Marcel Dekker Incl、1983も参照のこと。
【0084】
いくつかの好ましい態様では、本発明の化合物は、懸濁液形態よりもむしろ溶解形態で送達され、これにより、作用部位へより迅速に定量的に吸収されうる。一般に、ゼリー、クリーム、ローション、坐薬および軟膏などの製剤は、ある領域を、本発明の化合物により長く曝露させることができ、溶液形態、例えばスプレーの製剤は、より即効性の短期曝露を提供する。
【0085】
製剤はまた、本発明の阻害化合物が皮膚の透過障壁を横切って浸透するのを増加させ、またはその送達を支援する、適した固体またはゲル相担体または賦形剤を含んでもよい。これらの浸透増強化合物の多くは、局所製剤の技術分野で公知である。そのような担体および賦形剤の例としては、湿潤剤(例えば、尿素)、グリコール(例えば、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール)、アルコール(例えば、エタノール)、脂肪酸(例えば、オレイン酸)、界面活性剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピルおよびラウリル硫酸ナトリウム)、ピロリドン、グリセロールモノラウレート、スルホキシド、テルペン(例えば、メントール)、アミン、アミド、アルカン、アルカノール、ORGELASE、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、他のポリマーおよび水が挙げられる。いくつかの態様では、薬学的組成物は1つまたは複数の浸透増強剤、例えば、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、テトラデシルメチルスルホキシド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピロリドン、ラウロカプラム、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフルフリルアルコール、L-α-アミノ酸、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、脂肪酸、脂肪アルコール、クロフィブリン酸アミド、ヘキサメチレンラウルアミド、タンパク質分解酵素、α-ビサボロール、d-リモネン、尿素、N,N-ジエチル-m-トルアミドなどが挙げられる。
【0086】
いくつかの態様では、薬学的組成物は1つまたは複数の抗菌保存剤、例えば第四アンモニウム化合物、有機水銀剤、p-ヒドロキシベンゾエート、芳香族アルコール、クロロブタノールなどを含む。
【0087】
本発明において使用するのに適した薬学的組成物としては、活性成分が有効量、すなわち、PDE6関連状態のうちの少なくとも1つにおいて治療的および/または予防的効果を達成するのに有効な量で存在する組成物が挙げられる。特別な用途に対して効果的な実際の量は、治療される状態、被験体の状態、製剤、および投与経路、ならびに当業者に公知の他の因子に依存する。PDE6調節物質の有効量の決定は、本明細書の開示を考慮すると、当業者の能力の範囲内であり、通常の最適化技術を用いて決定される。
【0088】
治療的な使用では、本発明の化合物は被験体に、約0.05mg/kg〜約10.0mg/kg体重/日の用量レベルで投与される。約70kgのヒト被験体では、約40mg〜約600mg/日の用量を非制限的例として使用してもよい。好ましい用量としては、約1mg/kg、約2.5mg/kg、約5mg/kgおよび約7.5mg/kgが挙げられる。本明細書で開示した以外のより低いまたはより高い用量を、必要に応じて使用してもよい。しかしながら、そのような用量は、多くの変数により変更してもよく、例えば、使用した化合物の活性、治療すべき状態、投与方法、個々の被験体の要件、治療される状態の重篤度、施術者の判断が挙げられるが、それらに限定されない。前述の範囲は示唆的なものにすぎず、個々の治療計画に関して変数の数は膨大であり、これらの推奨値からの大きな逸脱は珍しくない。
【0089】
ヒトにおいて使用するための有効量は、モデル動物から決定することができる。例えば、ヒトに対する用量を、動物において効果的であることがわかっている循環、肝臓、局所および/または胃腸濃度が達成されるように製剤化することができる。
【0090】
本発明の阻害剤に関しては、有効量は一般に、医学または薬学分野の様々な規制機関または諮問機関(例えば、FDA、AMA)のいずれかにより、または製造者もしくは供給者により推奨または承認された用量範囲、投与方法、製剤などを意味する。
【0091】
いくつかの態様では、本発明の化合物の投与は断続的であり、例えば、2日、3日、5日に1回、週1回、または1ヶ月に1回もしくは2回の投与などとしてもよい。いくつかの態様では、量、形態、および/または異なる形態の量は、様々な投与時点で変動させてもよい。
【0092】
VIII.キット/製造物品
本明細書で記述した治療用途において使用するために、キットおよび製造物品もまた本発明の範囲内である。そのようなキットは、1つまたは複数の容器、例えばバイアル、管など(各々の容器は本発明の方法で使用される別個の要素の1つを含む)を収容するように区切られたキャリア、パッケージ、または容器を含むことができる。適した容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジおよび試験管が挙げられる。容器は様々な材料、例えばガラスまたはプラスチックから形成することができる。
【0093】
例えば、容器は1つまたは複数の本発明のチオフェン含有またはフラン含有化合物を、任意で、本明細書で開示したように組成物として、または他の薬剤と組み合わせて含むことができる。容器は任意に、滅菌アクセスポートを有する(例えば、容器は静脈注射用溶液バッグ、または皮下注射用注射針により貫通可能な栓を有するバイアルとすることができる)。そのようなキットは任意に、識別説明もしくはラベルまたは本発明の方法における使用に関する取扱説明書と共にチオフェン含有またはフラン含有化合物を含む。
【0094】
本発明のキットは典型的には、1つまたは複数の追加の容器を含んでもよく、各々が、本発明のチオフェン含有またはフラン含有化合物の使用に対し商業的および使用者の見地から望ましい1つまたは複数の様々な材料(例えば試薬(任意で濃縮形態)、および/または装置)を有する。そのような材料の非制限的な例としては、緩衝剤、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ;内容物および/または使用上の注意を列挙したキャリア、パッケージ、容器、バイアルおよび/または管ラベル、および使用上の注意を有する添付文書が挙げられるが、それらに限定されない。1組の取扱説明書もまた、典型的に含められる。
【0095】
ラベルは容器上に、または容器と関連させることができる。ラベルを形成する文字、数または他の文字が容器自体に付着、成形またはエッチングされる場合、ラベルは容器上に存在することができ;容器を保持する入れ物またはキャリア内に、例えば、添付文書として存在する場合、ラベルを容器と結合させることもできる。ラベルを使用して、内容物を特別な治療用途に使用すべきであることを示すことができる。ラベルはまた、例えば本明細書で記述した方法における、内容物の使用のための指示を示すことができる。
【0096】
「キット」および「製造物品」という用語は同義語として使用してもよい。
【0097】
実施例
以上、一般的に本発明について記述してきたが、本発明は下記実施例を参照するとより容易に理解される。下記実施例は例示目的で提供したものにすぎず、決して本発明の範囲を制限しようとするものではない。使用した数値(例えば、量、温度など)に関しては精度を確実するよう努力したが、当然いくらかの実験誤差および偏差は許容されるべきである。
【0098】
実施例1
PDE6Dに対するチオフェン含有化合物の親和性
ヒトPDE6DおよびCLB2をディスプレイするT7ファージを、2001年3月15日に発行されたWO 01/18234、ならびに2002年4月2日に出願された「Phage Display Affinity Filter and Forward Screen」と題する米国特許出願第10/115,442号の手順に従い、獲得した。簡単に説明すると、アトルバスタチンがビオチニル化リンカー部分に化学的に結合した場合(アトルバスタチンのストレプタビジンでコートした磁性ビーズへの付着が可能となる)に、T7ファージ-ディスプレイに基づくアフィニティクロマトグラフィーを使用した。アトルバスタチンでコートした磁性ビーズを、アフィニティマトリクスとして使用し、アトルバスタチン結合タンパク質に対しヒトプロテオームをプローブした。ヒトプロテオームを広くカバーするT7ファージディスプレイをアトルバスタチンアフィニティマトリクスと混合し、非結合クローンを洗浄により除去した。アフィニティマトリクスを可溶アトルバスタチンとインキュベートすることにより、アトルバスタチン結合クローンを溶離した。ファージ溶離液をその後、大腸菌の増殖により増幅させ、アフィニティ濃縮手順を繰り返した。4回のアフィニティ濃縮後、主要なアトルバスタチン結合クローンが出現し、DNA配列決定によりヒトPDE6DおよびCLB2と同定した。アトルバスタチンのPDE6DおよびCLB2への結合はさらに、競合結合アッセイ法により確認した。この場合、可溶性アトルバスタチン(非固定、リンカー部分なし)とタンパク質との間の相互作用に対するKdを測定したところ、PDE6DおよびCLB2に対し、それぞれ65nMおよび500nMであった。
【0099】
チオフェン化合物と新規標的との間の相互作用に対する、解離定数Kdを、同時係属中の特許出願である、2002年4月2日に出願された米国特許出願第10/115,442号、「Pharge Display Affinity Filer and Forward Screen」、および2003年6月20日に出願された同第60/480,587号、「Protein Family Profiling Tool and Methods」の手順に従い得た。Kd値を測定するために、上記で詳細に記述したように、ヒトPDE6DおよびCLB2をディスプレイするT7ファージをアトルバスタチンでコートしたアフィニティマトリクスと共に、様々な濃度の本発明の可溶性(非固定)チオフェン化合物の存在下でインキュベートした。PDE6Dおよび/またはCLB2に結合する可溶性チオフェン化合物は、PDE6Dおよび/またはCLB2ファージのアフィニティマトリクスへの結合を阻害し;このため、有効な競合物質が存在する方が、有効な競合物質が存在しない場合に比べ、ファージ溶離液中に回収されるファージ数が少なくなる。可溶性チオフェン化合物(競合物質)分子とPDE6DまたはCLB2との間の相互作用に対するKdは、可溶性競合物質のない対照試料と比べた場合に、溶離液中に回収されるファージ数を50%減少させる可溶性競合物質分子の濃度と等しい。表1はPDE6Dに対する特定のチオフェン化合物のμM Kdを示す。
【0100】
【表1】

【0101】
実施例2
齧歯類MCAoモデルにおける化合物の有効性研究
概略
この研究の目的は、Chen et al、Stroke、17:4(1986)に従い、中大脳動脈の電気凝固法および頸動脈縦列閉塞(tandem carotid artery occlusion)により誘発させたラットの中大脳動脈閉塞(MCAo)モデルにおける、本明細書で記述した化合物の有効性を評価することである。対照溶剤の体積との梗塞体積比較を使用して化合物の有効性を評価する。少数の動物(n=5/群)を使用して、48時間後の梗塞サイズの減少における潜在的有効性について試験する。
【0102】
方法
動物の準備
体重300〜350gの、45匹の雄の成体Sprague-Dawleyラット(Taconic Farms)を研究に使用する。動物を標準的な動物設備に収容し、市販の齧歯類用の食餌を自由に与えた。正確なランダム化および外科的処置による死亡率を見込んで、余分に動物を注文する。ラットは研究室に到着した際に約10週齢である。
【0103】
動物は全て、順応目的で、手術前7日間飼育する。訓練の終了時に、動物をランダム化し、異なる群に割り当てる。動物に尾部マーキングにより固有の識別番号を与える。尾部番号およびケージカードにより動物を識別する。
【0104】
外科的準備
中大脳動脈閉塞(MCAo)
雄Sprague-Dawleyラット(300〜350g)は、ケタミン(25mg/mL)、キシラジン(1.3mg/mL)およびアセプロマジン(0.33mg/mL)を含む「カクテル」の筋内注射(4ml/kg)により麻酔する。一般に、総頸動脈は、頸部での腹側正中頸部切開により露出させる。目と鼓膜管との間の中程で形成した切開により、側頭筋を二分し、折り曲げる。頬骨弓と側頭鱗骨との接合部で3mmの骨孔を形成し、中大脳動脈の前頭骨と頭頂枝の分岐を露出させる。前頭骨と頭頂枝の分岐の真下、MCA上の鼻腔血管の上位で電気凝固法を用いて、右中大脳動脈を永久的に閉塞させ、総頸動脈は、1時間、組織を傷つけない動脈瘤クリップを用いて一時的に閉塞させる。体温は、全手順を通して、38±1℃に維持する。MCA閉塞後、様々な期間で、動物を安楽死させ、脳を取り出し、組織学的分析を実施する。
【0105】
形態計測分析
局所虚血を誘発して48時間後、ラットを、CO2を用いて深く麻酔し、頭部を除去する。脳を除去し、氷冷(〜4℃)生理食塩水中に15分間入れる。7つの2.0mm冠状切片を、脳切断マトリクスを使用して切断し、2%の2,3,5トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)中で20分間、37℃でインキュベートする。切片を除去し、生理食塩水中で洗浄し、組織分析前24時間10%ホルマリン中に入れる。(TTCは機能的ミトコンドリア酵素に対する確立されたマーカーであり、正常組織内で可視の深紅色を生じる)。ミトコンドリア活性のない虚血性組織は未染色のままであり、白色である。これは、切片化した脳の画像分析およびMCAo後の虚血領域の定量化において使用するための標準法である)。
【0106】
梗塞体積測定
Image Pro-Plusイメージングシステムを用いて、各切片の前頭骨と頭頂側の両方の脳あたり、総数14の画像を、デジタル解析により解析する。総梗塞体積を、下記式を用いて左半球に対し計算する。デジタル化および計算は盲式条件下で実施する。

解析した側の番号
【0107】
総梗塞体積を各動物に対し計算し、その後、群平均を領域体積として決定する(mm3)。組織収縮および起こりうる浮腫について説明するために、梗塞体積の間接法を、下記化学式を用いて計算する:
総対側半球体積 − 総梗塞半球体積(mm3)
【0108】
体温および体重
全ての動物の体温を手術中モニターし、正常値(37〜38℃)付近で維持する。全ての動物の体重を手術前、および安楽死直前の研究終了時に測定し、記録する。
【0109】
臨床的観察
異常行動、例えば回旋、傾眠、呼吸喘鳴または排出物、脱毛、および早期死亡(それらに限定されない)について、毎日動物を観察する。異常は全て記録する。同様に、正常な行動も正常と書き留める。
【0110】
統計解析
全てのデータは平均±SEMで表す。梗塞体積を、両側t検定およびDunnett多重比較を用いて解析する。行動試験、温度および体重を1方向ANOVA、続いてpost hoc Bonferroni多重比較検定を用いて解析する。≦0.05のp値は、統計学的に有意の差と考える。
【0111】
実験計画
実験群および化合物投与
本明細書で記述した化合物から選択した1つまたは複数の化合物について試験する。15匹の動物を用いて、3群の動物(各群n=5動物)により化合物の試験を実施する。MCAoの2時間前に開始し、MCAのo3時間後、およびMCAoの24時間後に、腹腔内投与を介し、1つの群は1mg/kg体重が投与され、第2の群は10mg/kg体重が投与され、第3の群は、被験物質と同じ時間点で、溶剤のみが投与される。
【0112】
動物は全て、盲式ランダム研究において、化合物/溶剤を用いて処置する。表2は、本明細書で記述した化合物のうちの1つを試験するための実験計画をまとめて示したものである。
【0113】
【表2】

【0114】
1週間あたり、30匹の動物を用いて2つの化合物をスクリーニングする速度では、この研究の技術的作業を完了するのに約5週間かかると予測される。
【0115】
実施例3
齧歯類MCAoモデルにおける化合物の有効性研究
この研究の目的は、本明細書で記述した化合物の有効性をさらに評価することである。対照体積と比較した化合物処置動物の梗塞体積を用いて、本明細書で記述した化合物の有効性を評価する。
【0116】
方法
動物の準備
体重300〜350gの、112匹の雄の成体Sprague-Dawleyラット(Taconic Farms)を研究に使用する。動物を標準的な動物設備に収容し、市販の齧歯類用の食餌を自由に与える。正確なランダム化および外科的処置による死亡率を見込んで、余分に動物を注文する。ラットは研究室に到着した際に約10週齢である。
【0117】
動物は全て、順応目的で、手術前7日間飼育する。訓練の終了時に、動物をランダム化し、異なる群に割り当てる。動物に尾部マーキングにより固有の識別番号を与える。尾部番号およびケージカードにより動物を識別する。
【0118】
外科的準備
中大脳動脈閉塞(MCAo)
雄Sprague-Dawleyラット(300〜350g)は、ケタミン(25mg/ml)、キシラジン(1.3mg/mL)およびアセプロマジン(0.33mg/mL)を含む「カクテル」の筋内注射(4mL/kg)により麻酔する。一般に、総頸動脈は、頸部での腹側正中頸部切開により露出させる。目と鼓膜管との間の中程で形成した切開により、側頭筋を二分し、折り曲げる。頬骨弓と側頭鱗骨との接合部で3mmの骨孔を形成し、中大脳動脈の前頭骨と頭頂枝の分岐を露出させる。前頭骨と頭頂枝の分岐の真下、MCA上の鼻腔血管の上位で電気凝固法を用いて、右中大脳動脈を永久的に閉塞させ、総頸動脈は、1時間、組織を傷つけない動脈瘤クリップを用いて一時的に閉塞させる。体温は、全手順を通して、38±1℃に維持する。MCA閉塞後、様々な期間で、動物を安楽死させ、脳を取り出し、組織学的分析を実施する。
【0119】
形態計測分析
局所虚血を誘発して48時間後、ラットを、CO2を用いて深く麻酔し、頭部を除去する。脳を除去し、氷冷(〜4℃)生理食塩水中に15分間入れる。7つの2.0mm冠状切片を、脳切断マトリクスを使用して切断し、2%の2,3,5トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)中で20分間、37℃でインキュベートする。切片を除去し、生理食塩水中で洗浄し、組織分析前24時間10%ホルマリン中に入れる。(TTCは機能的ミトコンドリア酵素に対する確立されたマーカーであり、正常組織内で可視の深紅色を生じる)。ミトコンドリア活性のない虚血性組織は未染色のままであり、白色である。これは、切片化した脳の画像分析およびMCAo後の虚血領域の定量化において使用するための標準法である)。
【0120】
梗塞体積測定
Image Pro-Plusイメージングシステムを用いて、各切片の後側の脳あたり、総数14の画像を、デジタル解析により解析する。総梗塞体積を、下記式を用いて左半球に対し計算する。デジタル化および計算は盲式条件下で実施する。

解析した側の番号
【0121】
総直接梗塞体積を各動物に対し計算し、その後、群平均を領域体積として決定する(mm3)。
【0122】
体温および体重
各動物の体温を手術中モニターし、正常値(37〜38℃)付近で維持する。動物の体重を手術前、および安楽死直前の研究終了時に測定し、記録する。
【0123】
臨床的観察
異常行動、例えば回旋、傾眠、呼吸喘鳴または排出物、脱毛、および早期死亡(それらに限定されない)について、毎日動物を観察する。異常は全て記録する。同様に、正常な行動も正常と書き留める。
【0124】
統計解析
全てのデータは平均±SEMで表す。梗塞体積を、両側t検定およびDunnett多重比較を用いて解析する。行動試験、温度および体重を1方向ANOVA、続いてpost hoc Bonferroni多重比較検定を用いて解析する。≦0.05のp値は、統計学的に有意の差と考える。
【0125】
実験計画
実験群および化合物投与
全ての被験物質の皮下投与を用い、多くの動物にMCAoを引き起こす。予め決めた1つの用量の、本明細書で開示した化合物から選択した1つまたは複数の化合物を対照または溶剤と比較し、MCAo時に対し3つの異なる投与時間計画を割り当てる。
【0126】
全ての処置群の投与の時間スケジュールは下記のように分ける:
2時間前、3時間後、および25時間後
1時間後、3時間後、および25時間後
3時間後、6時間後、および25時間後
【0127】
全ての動物を、盲式ランダム調査のように、化合物/溶剤で処置する。
【0128】
実施例4
齧歯類MCAo(Tamura)モデルにおける化合物の有効性研究
MCAoのTamuraモデルを使用して、運動技能能力として明示される神経学的欠損の緩和における、1つまたは複数の本明細書で記述した化合物の効果を決定する。対照(溶剤)体積動物と比較した化合物処置動物の行動評価および梗塞体積を用いて、7日間にわたり化合物の有効性を評価する。
【0129】
方法
動物準備
体重300〜350gの80匹の成体Sprague-Dawleyラット(Taconic Farms)を研究に使用する。動物を標準的な動物設備に収容し、市販の齧歯類用の食餌を自由に与える。正確なランダム化および外科的処置による死亡率を見込んで、余分に動物を注文する。ラットは研究室に到着した時、約10週齢である。
【0130】
動物は全て、順化目的で手術前7日間行動評価のために取り扱う。訓練期間の終わりに、動物をランダム化し異なる群に割り当てる。動物に尾部マーキングにより固有の識別番号を与える。尾部番号およびケージカードにより動物を識別する。
【0131】
外科的準備
中大脳動脈閉塞(MCAo)、Tamuraモデル
Tamuraらの方法の改良を用いて、近位右中大脳動脈の永久的閉塞により、局所性脳梗塞を引き起こす。雄Sprague-Dawleyラット(300〜350g)を2%イソフルランを含む50%空気/50%O2で麻酔し、1〜1.5%イソフルランを用いて維持する。目と鼓膜管との間の中程で形成した切開により、側頭筋を二分し、折り曲げる。頬骨弓を除去せずに、顔面神経を切断せずに、側頭下頭蓋骨切除術により近位MCAを露出させる。その後、嗅索の直近位から下大脳静脈まで、マイクロ双極凝固法により動脈を閉塞させ、切断する。処置全体を通して、体温を38℃±1に維持する。MCA閉塞後様々な時間で、動物を麻酔し、脳を除去し、組織学的分析を実施する。
【0132】
脳血流測定
血流モニタリングを40匹の動物の1つの群で実施し、MCAoに関する一定の時間での、本明細書で開示した化合物から選択した3つの実験化合物の脳血流に対する効果を決定する。Perimedレーザードップラーシステム(Laser Doppler System)500を使用して、MCAo前、MCAo後60分、ならびにMCAo後1日および5日での大脳血の変化の割合を決定する。
【0133】
動物をイソフルランで簡単に麻酔し、準備刺激された(primed)流量プローブを、MCAoの同側の下記定位座標付近に作成した骨孔を通して挿入する:ブレグマまで-1.0mmおよび正中線まで側方+6mm。プローブの先端を1mm挿入し、シアノアクリレート接着剤を用いて定位置に固定する。5分にわたり記録する。筋肉弁と皮膚をランニング(running)4-0シルクで縫合し、動物をケージに戻す。3つの被験化合物で処置した群の結果を溶剤処置ラットと比較する。
【0134】
行動分析
2つの行動試験、肢置き直し(limb placing)および身体スイング試験を実施する。この試験は手術直後およびMCAoから1、3、7日後に実施する。
【0135】
肢置き直し
肢置き直し試験は前肢試験と後肢試験の両方に分割される。前肢置き直し試験では、試験官はラットを卓上付近で保持し、ラットの、ひげ、視覚、触覚または固有受容性刺激に応答して前肢を卓上に置くことができる能力について評点を記録する。同様に、後肢置き直し試験では、試験官は、ラットの、触覚および固有受容性刺激に応答して後肢を卓上に置くことができる能力について評価する。各モードの感覚入力に対し別個のサブスコアが得られ、これを加算すると、総スコアが得られる(前肢置き直し試験では:0=正常、10=最大損傷;後肢置き直し試験では:0=正常、6=最大損傷)。典型的には、脳卒中後最初の1ヶ月中に、肢置き直し行動が徐々に着実に回復する。
【0136】
身体スイング試験
尾の基部から約1インチのところで動物を保持する。その後、テーブル表面から1インチ上まで上昇させる。動物を垂直軸内に、左側または右側のどちらに対しても10°以内と規定して保持する。動物が垂直軸からどちらかの側に頭部を動かすと1スイングとして記録する。次のスイングを試みる前に、動物は垂直位置に戻り、次のスイングをカウントしなければならない。全部で30スイングをカウントする。正常な動物は典型的には両側に等しい数のスイングを有する。局所性脳卒中後、動物は反対側にスイングする傾向がある。脳卒中後最初の1か月中に身体スイングは徐々に自然治癒する。
【0137】
形態計測分析-脳灌流
局所虚血を誘発して7日後、ラットをケタミンおよびキシラジンカクテルを用いて深く麻酔する。その後、梗塞体積測定のために(H&E染色)、正常生理食塩水(ヘパリン2単位/mlを含む)、続いて4% パラホルムアルデヒドで経心的に灌流させる。脳を除去し、10%ホルマリン中で保存し、切片化し、ヘモトキシリンおよびエオシンで染色する。
【0138】
梗塞体積測定
Image Pro-Plusイメージングシステムを用いて、各切片の後方側の脳に対し総数7の画像をデジタル解析により解析する。総直接梗塞体積を、下記式を用いて左半球に対し計算する。デジタル化および計算は盲式条件下で実施する。

解析した側の番号
【0139】
総梗塞体積を各動物に対し計算し、その後群平均を領域体積(mm3)として決定する。組織収縮および可能性のある浮腫を説明するために、梗塞体積の間接的な方法を、下記式を用いて計算する:
総対側半球体積 − 総梗塞半球体積(mm3)
【0140】
体温および体重
全ての動物の体温を手術中モニターし、正常値(37〜38℃)付近で維持する。動物の体重を手術前、および安楽死直前の研究終了時に測定し、記録する。
【0141】
臨床的観察
行動評価に加えて、異常行動、例えば回旋、傾眠、呼吸喘鳴または排出物、脱毛、および早期死亡(それらに限定されない)について、毎日動物を観察する。異常は全て記録する。同様に、正常な行動も正常と書き留める。
【0142】
統計解析
行動スコアおよび体重を、分散の2方向反復測定解析(ANOVA;処置X時間)により解析する。梗塞体積を1方向ANOVAにより解析する。≦0.05のp値は、統計学的に有意の差と考える。
【0143】
実験計画
実験群および化合物投与
全ての被験物質の皮下投与を用い、多くの動物にMCAoを引き起こす。予め決められた用量の、本明細書で開示した化合物から選択した1つまたは複数の化合物を、対照または溶剤と比較し、MCAoの時間に対し2つの異なる投与時間スケジュールに割り当てる。全ての処置群の投与に対する時間スケジュールは下記のように分割する:
a.3時間後、6時間後および25時間後ならびに2〜7日後1日2回
b.6時間後、9時間後および25時間後ならびに2〜7日後1日2回
【0144】
動物は全て、盲式ランダム研究として、化合物/溶剤を用いて処置する。
【0145】
実施例5
錠剤の調製
図1、2または3の化合物(10.0g)を乳糖(85.5g)、ヒドロキシプロピルセルロースHPC-SL(2.0g)、ヒドロキシプロピルセルロースL-HPC、LH-22(2.0g)および精製水(9.0g)と混合し、得られた混合物を顆粒化、乾燥および選別し、このようにして得られた顆粒をステアリン酸マグネシウム(0.5g)と混合し、錠剤形成すると、これにより、1錠剤あたり化合物を10mg含む錠剤が得られる。
【0146】
実施例6
被験体への投与
実施例5で調製した錠剤を被験体に時間0で投与する。24時間毎に1錠剤を、1週間投与する。第3の錠剤を投与した後被験体に、神経変性を発症させる。処置した被験体の示した神経変性疾患の症状は、処置しない被験体に比べ、重篤度が軽い。
【0147】
本明細書で引用した全ての参考文献、特許、特許出願は、各刊行物または特許出願が、具体的におよび個別に、参照により組み入れられることが示されるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0148】
本発明について十分記述したが、当業者であれば、本発明の意図および範囲から逸脱せずに、過度の実験をせずに、様々な範囲の等価なパラメータ、濃度および条件内で同じことを実施できることは認識される。
【0149】
本発明について特定の態様に関して記述してきたが、さらなる改変が可能であることは理解される。この出願は一般に、本発明の原理に従う本発明の任意の変形、使用または適合を含み、本発明が関係する技術範囲内の公知のまたは慣例的な実施の範囲内にあり、前述した本質的な特徴に適用してもよければ、本発明の開示からのそのような逸脱は含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本明細書で示す化学式Iを例示するチオフェン含有化合物を、対応する化合物識別番号と共に示した図である。
【図2】本明細書で示す化学式IIを例示するチオフェン含有化合物を、対応する化合物識別番号と共に示した図である。
【図3】本明細書で示す化学式IIIを例示するフラン含有化合物を、対応する化合物識別番号と共に示した図である。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の化学式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、治療の必要な被験体に投与する段階を含む、疾患の治療法:

(式中、
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NR5C(O)R7、C(O)NR5R6、C(O)R7およびC(O)OR7からなる群より選択され、ここで、R5、R6およびR7は、それぞれ、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールとなるように選択され、かつR5およびR6またはR5およびR7は共に、1つまたは複数の置換を有してもよい3、4、5、6または7員環を任意に形成することができる)。
【請求項2】
化合物が以下の化合物から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1記載の方法:

【請求項3】
有効量の化学式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩を、治療の必要な被験体に投与する段階を含む、疾患の治療法:

(式中、
R10およびR11は、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NR5C(O)R7、C(O)NR5R6、C(O)R7およびC(O)OR7からなる群より選択され、ここで、R5、R6およびR7は、それぞれ、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールとなるように選択され、かつR5およびR6またはR5およびR7は共に、1つまたは複数の置換を有してもよい3、4、5、6または7員環を任意に形成することができる)。
【請求項4】
化合物が、化合物781372および783146から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
有効量の化学式IIIの化合物またはその薬学的に許容される塩を、治療の必要な被験体に投与する段階を含む、疾患の治療法:

(式中、
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NR5C(O)R7、C(O)NR5R6、C(O)R7およびC(O)OR7からなる群より選択され、ここで、R5、R6およびR7は、それぞれ、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールとなるように選択され、かつR5およびR6またはR5およびR7は共に、1つまたは複数の置換を有してもよい3、4、5、6または7員環を任意に形成することができる)。
【請求項6】
化合物が以下の化合物から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1記載の方法:

【請求項7】
疾患がPDE6関連状態である、請求項1、3または5のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
疾患が、PDE6またはそのサブユニットのいずれかを調節することにより有益な効果が得られる状態である、請求項1、3または5のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
疾患が、PDE6Dを調節することにより有益な効果が得られる状態である、請求項1、3または5のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
疾患が、異常または望ましくないホスホジエステラーゼ活性に関連する、請求項1、3または5のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
疾患が脳卒中である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
PDE6調節化合物が、脳卒中後に被験体に急性投与される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
PDE6調節化合物が、脳卒中を予防するために被験体に予防的に投与される、請求項11記載の方法。
【請求項14】
疾患が、癌、視力障害、酸化ストレス疾患、炎症、および多発性硬化症から選択される少なくとも1つの疾患である、請求項1、3または5のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
疾患が、脳血管偶発症候、神経変性疾患、および心疾患から選択される少なくとも1つの疾患である、請求項1、3または5のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
脳血管偶発症候が脳卒中である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
心疾患の治療により、心筋梗塞の頻度および/または損傷の重篤度が軽減される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
神経変性疾患が、虚血性脳卒中、アルツハイマー病、糖尿病性末梢神経障害、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病およびパーキンソン病の少なくとも1つである、請求項15記載の方法。
【請求項19】
化合物が、血管成長、骨成長、または免疫系を刺激する、請求項1、3または5のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
薬学的に許容される賦形剤および化学式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、薬学的組成物:

(式中、
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NR5C(O)R7、C(O)NR5R6、C(O)R7およびC(O)OR7からなる群より選択され、ここで、R5、R6およびR7は、それぞれ、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールとなるように選択され、かつR5およびR6またはR5およびR7は共に、1つまたは複数の置換を有してもよい3、4、5、6または7員環を任意に形成することができる)。
【請求項21】
化合物が以下の化合物から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項20記載の薬学的組成物:

【請求項22】
薬学的に許容される賦形剤および化学式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、薬学的組成物:

(式中、
R10およびR11は、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NR5C(O)R7、C(O)NR5R6、C(O)R7およびC(O)OR7からなる群より選択され、ここで、R5、R6およびR7は、それぞれ、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールとなるように選択され、かつR5およびR6またはR5およびR7は共に、1つまたは複数の置換を有してもよい3、4、5、6または7員環を任意に形成することができる)。
【請求項23】
化合物が、化合物781372および783146から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項22記載の薬学的組成物。
【請求項24】
薬学的に許容される賦形剤および化学式IIIの化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、薬学的組成物:

(式中、
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NR5C(O)R7、C(O)NR5R6、C(O)R7およびC(O)OR7からなる群より選択され、ここで、R5、R6およびR7は、それぞれ、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールとなるように選択され、かつR5およびR6またはR5およびR7は共に、1つまたは複数の置換を有してもよい3、4、5、6または7員環を任意に形成することができる)。
【請求項25】
化合物が以下の化合物から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項24記載の薬学的組成物:


【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2007−500219(P2007−500219A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533154(P2006−533154)
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/015450
【国際公開番号】WO2004/110357
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505046846)アンビット バイオサイエンシス コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】