説明

計測装置

【課題】被検物の温度管理を行って高精度の形状測定が行える計測装置を提供すること。
【解決手段】被検物の形状を測定する計測装置であって、前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段を制御して、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度管理をして被検物の3次元形状を測定する計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検物の3次元形状を測定する計測装置として、例えば基盤上に水平一方向に移動するXステージとこれと直交する水平他方向に移動するYステージからなる移動テーブルを設け、また基盤上に垂直方向に移動するZステージにセンサヘッドを設けて、このセンサヘッドに移動テーブル上に載置された被検物に向けて測定光を発する光源と被検物から反射した測定光の反射光画像を取得するテレビカメラを内蔵した装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
上記装置では、被検物に対して光源から測定光を照射し、被検物から反射する測定光の反射光画像を、測定光が照射される方向とは異なる方向からテレビカメラで観察し、反射光画像中の測定光の形状と、光源の位置と、テレビカメラの位置とから、被検物の3次元形状を非接触で測定する。
【特許文献1】特開平11−125508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような計測装置によって被検物の3次元形状の測定を行う際には、通常、被検物の熱膨張による測定誤差を回避するために被検物の温度管理を行っている。この温度管理では、例えば、被検物の機械加工後、この機械加工時の熱などにより高温になった被検物を常温(室温)になるまで放置している。
【0005】
比較的熱容量が小さい被検物の場合、放置時間は比較的短時間で済むものの、熱容量が大きい被検物となると放置時間は1日あるいは数日に及ぶこともあるが、これは被検物の温度を測定してその測定結果に基づいて放置時間を決めている訳ではなく、経験的に決められているのが実情である。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、被検物の温度管理を行って高精度の形状測定が行える計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の請求項1に記載の計測装置は、被検物の形状を測定する計測装置であって、前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段を制御して、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に記載の計測装置は、被検物の形状を測定する計測装置であって、前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、前記温度計測手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する保持手段と、前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段を制御して、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に記載の計測装置は、被検物の形状を測定する計測装置であって、前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、前記気体流形成手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する保持手段と、前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段及び保持手段を制御して、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に記載の計測装置は、被検物の形状を測定する計測装置であって、前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、前記温度計測手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第一保持手段と、前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、前記気体流形成手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第二保持手段と、前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段及び第二保持手段を制御して、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に記載の計測装置は、被検物の形状を測定する計測装置であって、前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、前記温度計測手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第一保持手段と、前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、前記気体流形成手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第二保持手段と、前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段、前記第一保持手段及び第二保持手段を制御して、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被検物の温度管理を行って高精度の形状測定が行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の計測装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】図1の計測装置に装備されるモニターの表示内容を示す説明図である。
【図3】図1の計測装置に装備された制御回路を示すブロック図である。
【図4】図1の計測装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】図1の計測装置の動作の別の例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の計測装置の異なる実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の計測装置の一実施形態について図1乃至図5を参照して説明する。
【0015】
本発明の計測装置は、被検物の3次元形状を計測する装置で、空気温度が変化する雰囲気中に設置される。
【0016】
図1は本発明の計測装置の一実施形態を示す概略図である。
【0017】
本実施形態の計測装置には、被検物Mの形状情報を採取する検出部(検出手段)としての形状センサ20と、この形状センサ20が形状情報を採取する被検物Mの温度を計測する温度計測部(温度計測手段)を構成する赤外線カメラ30と、これら形状センサ20及び赤外線カメラ30を備えた計測装置本体10とが設けられている。
【0018】
また、計測装置には、被検物Mの温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段を制御して、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、が設けられている。
【0019】
或いは、計測装置には、前記温度計測手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第一保持手段と、前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、前記気体流形成手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第二保持手段と、前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段、前記前記第一保持手段及び第二保持手段を制御して、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、が設けられている。
【0020】
大きさや形状が異なる種々の被検物Mの温度制御を精度良く行うためには、前記温度計測手段と前記気体流形成手段の位置及び姿勢を変更可能に構成することが好ましい。
【0021】
そこで、前記温度計測手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第一保持手段と、前記気体流形成手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第二保持手段とを設ければよい。かかる保持手段としては、動きの自由度が大きい多関節ロボットアームが好ましい。
【0022】
動きの自由度が大きい多関節ロボットアームにより、前記温度計測手段と前記気体流形成手段の位置及び姿勢を調整することにより、被検物Mの温度制御を高精度に行うことができる。
【0023】
温度計測手段を構成する赤外線カメラは、4〜13μmの波長範囲で被検物Mからの温度を検知し、これ以外の波長周囲からの外乱光は誤差として検出してしまうので、ハイパスフィルターを赤外線カメラの前に配設し、そのハイパスフィルターを透過させて余計な波長の外乱光が赤外線カメラに入らないようすることが好ましい。
【0024】
被検物Mの温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段は、空気ブロアーにより構成される。被検物Mの温度を調整するために、所定温度または所定温度範囲に設定した空気を使用し、被検物Mに対する吹き付けを行う。
【0025】
なお、被検物Mを冷却する場合には、空気は室温以下に冷却して使用するか、或いは圧縮空気(ブロアー時の断熱膨張による冷却)を使用して、被検物の全体または一部に向けて、空気流の吹付けを行う。
【0026】
また、被検物Mの温度を調整するための補足手段として赤外線照射手段を設けても良い。赤外線照射手段は、少なくともハロゲンランプと反射鏡とを有して構成されている。赤外線照射手段からの赤外線は、加熱対象物である被検物Mの全体に向けて照射する。ここで、ハロゲンランプからの赤外線のうち長波長(例えば8μm以上)をローパスフィルターでカットすれば、被検物Mを効率よく加熱できるので好ましい。
【0027】
或いは、赤外線照射手段は、少なくともハロゲンランプと反射鏡と集光レンズとを有して構成されている。赤外線照射手段からの赤外線は、加熱対象物である被検物Mの一部に向けて照射する。この場合、集光レンズにより被検物Mに対する照射エリアを形成する。ここで、ハロゲンランプからの赤外線のうち長波長(例えば8μm以上)をローパスフィルターでカットすれば、被検物Mを効率よく加熱できるので好ましい。
【0028】
また、赤外線照射手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第三の保持手段を設けることが好ましい。かかる保持手段としては、動きの自由度が大きい多関節ロボットアームが好ましい。
【0029】
温度制御手段は、温度計測手段からの情報に基づいて、気体流形成手段、前記第一保持手段及び第二保持手段を制御して、被検物Mの温度を所定温度範囲に保持する。
【0030】
具体的には、温度制御手段は、温度計測手段及び気体流形成手段の位置及び姿勢を調整し、更に気体流形成手段からの空気の流量、温度及び吹付け範囲を調整することにより、或いは補足的に赤外線照射手段からの赤外線の強度及び照射範囲を調整することにより、被検物Mの温度を所定温度範囲に保持する。
【0031】
なお、計測装置には、計測装置本体10全体を制御し且つ赤外線カメラ30からの温度情報と形状センサ20から出力する内容に基づき計測結果を出力する制御手段としてのCPU40(図3参照)と、操作卓50が設けられている。
【0032】
計測装置本体10は、床11にベース12を配置し、このベース12上に、Xステージ14、Yステージ15及びZステージ16を配置している。
【0033】
Xステージ14は、被検物Mを載置する機構で、載置した被検物Mをベース12上で水平一方向(図1の矢印X方向参照)に平行移動させる。
【0034】
Yステージ15は、ベース12上でXステージ14と直交する水平方向(図1の矢印Y方向参照)に移動する水平部分15aと、この水平部分15a上に垂直に起立して設けられた垂直部分15bとを有している。この垂直部分15bにはZステージ16が移動可能に支持されて、Zステージ16を矢印Y方向に移動させる。
【0035】
Zステージ16は、Yステージ15の垂直部分15bに沿いベース13に対して垂直方向(図1の矢印Z方向参照)に移動可能な基部16aと、この基部16aからベース13に対して平行に延びるアーム部16bとを有している。アーム部16bにはその先端部に被検物Mと対向するようにして上述した形状センサ20が取り付けられ、また形状センサ20から離れて同じく被検物Mと対向するようにして上述した赤外線カメラ30が取り付けられていて、アーム部16bはこれら形状センサ20と赤外線カメラ30とを矢印Z方向に移動させる。
【0036】
なお、この例では、赤外線カメラ30がアーム部16bに取り付けられているが、前述したように赤外線カメラ30を別の多関節ロボットアームに取り付けてもよい。
【0037】
形状センサ20は、Yステージ15とZステージ16によってベース13に対して水平方向(矢印Y方向)及び垂直方向(矢印Z方向)に移動可能である。形状センサ20は、被検物Mの形状を光切断法によって計測する装置で、測定光を被検物Mに投影する投影ユニット21と、測定光が照射された被検物Mを撮像する撮像ユニット22とを有する。形状センサ20の位置は、Xステージ14、Yステージ15、Zステージ16それぞれの位置の合成された位置である。
【0038】
赤外線カメラ30は、被検物Mが放射する赤外線を赤外線に感度を持つ2次元撮像素子によって検出し、その赤外線の量に応じて被検物Mの表面温度を計測する温度計である。
【0039】
操作卓50には、赤外線カメラ30の出力(撮像画像)などを表示する液晶表示装置などからなるモニター51と、測定開始指令や測定を開始する温度(指定温度)などを入力する温度指定部としてのキーボード52が設けられている。なお、この指定温度は、何度から何度までという温度範囲であってもよい。
【0040】
図2はモニター51の表示内容(モニター画面51a)の一例を示している。図2に示すように、赤外線カメラ30の出力は、モニター52上に画像で表示される。温度は色に変換されてモニター52上に表示される。また、操作卓50には被検物Mの温度を計測する位置を指定する位置指定部としてのジョイスティック53(図3参照)が設けられており、このジョイスティック53によりモニター画面51aに表示されるカーソル51bの位置を変更できる。カーソル51bが示す位置が温度を計測する位置で、その温度が、色と温度の対応を表示する温度指標51cに数値で表示される。図2では、Xステージ14上に載置された被検物Mの画像51dがXステージ14の画像51eと共に表示され、この被検物Mの上面Maに相当する画像51d中の部位51fの温度が18℃であることが図示されている。Xステージ14は被検物Mの保持部として機能し、このXステージ14の赤外線画像を撮影する赤外線カメラ30は被検物Mの温度を計測する温度計測部として機能する他にXステージ14等の被検物Mの設置場所の周囲の温度を計測する周囲温度計測部としても機能する。 計測装置本体10には、図3に示すように、Xステージ14の動作と、Yステージ15の動作と、Zステージ16の動作とをそれぞれ制御するステージ駆動回路41が設けられている。このステージ駆動回路41は、CPU40から移動信号を入力してX、Y、Zステージ14、15、16にそれぞれ駆動信号を出力する他に、X、Y、Zステージ14、15、16の位置情報を形状測定回路42に出力する。
【0041】
形状測定回路42は、投影ユニット21のレーザー光源21aに制御信号を出力して該レーザー光源21aをON/OFF制御する一方、撮像ユニット22のビデオカメラ22aから画像データが入力される。形状測定回路42は、ビデオカメラ22aから入力した画像データと、ステージ駆動回路41から入力したX、Y、Zステージ14、15、16の位置情報とに基づいて被検物Mの形状を求めて、形状データをCPU40に出力する。
【0042】
赤外線カメラ30が撮影した被検物MとXステージ14の温度を表す赤外線画像データは温度測定回路43に出力され、ここで赤外線画像データが温度データに変換される。温度測定回路43が出力する温度データは、赤外線画像データの画面全体の温度である。
【0043】
CPU40は、温度測定回路43から温度データを入力してモニター51に温度画像を出力する。CPU40には、キーボード52から指定温度信号が入力し、ジョイスティック53から温度の測定位置信号が入力する。
【0044】
CPU40は、温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段、前記第一保持手段及び第二保持手段を制御して、被検物Mの温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段としての機能を有する。
【0045】
或いは、CPU40は、温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段、赤外線照射手段、前記第一保持手段、第二保持手段及び第三保持手段を制御して、被検物Mの温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段としての機能を有する。
【0046】
また、CPU40は、ジョイスティック53で指定した被検物M上の箇所の温度がキーボード52から入力した指定温度の範囲内にあるとき、形状センサ20を駆動して被検物Mの形状測定を開始する。
【0047】
すなわち、上述したように、CPU40は、駆動信号をステージ駆動回路41に出力してステージ駆動回路41を駆動する。これにより、ステージ駆動回路41は、X、Y、Zステージ14、15,16に駆動信号を送る一方、駆動されたX、Y、Zステージ14、15,16の各位置情報を形状測定回路42に送る。形状測定回路42は、投影ユニット21のレーザー21aに制御信号を出力して該レーザー21aをON/OFF制御する一方、撮像ユニット22のビデオカメラ22aから画像データを入力し、この画像データと、X、Y、Zステージ14、15、16の位置情報とに基づいて被検物Mの形状を求める。
【0048】
CPU40は、被検物Mの温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段としての機能を有するが、形状センサ20による形状測定の実行中、温度制御が旨くできなくて、ジョイスティック53で指定した被検物M上の箇所の温度がキーボード52から入力した指定温度の範囲から外れたとき、CPU40は、モニター51に警報を表示する一方、形状センサ20による被検物Mの形状測定を中止させる。モニター51は、赤外線カメラ30の撮影画像を表示する他に、被検物Mの温度が指定温度の範囲から外れたことを表示する警報部としても機能する。
【0049】
上述したように、CPU40は、温度測定回路43から入力する温度データに基づいてその出力内容を変更している。変更内容としては、例えば、形状測定結果の有無(形状データの出力の有無 形状測定の続行、中止など)であり、又は形状測定結果に対する警告(温度変化による熱膨張・収縮での形状変化を有する被検物Mの形状測定結果に対する警告)である。
【0050】
CPU40によって形状測定結果を出力しない方法としては、例えば、A:形状センサ20を駆動して形状データを取得するが、この形状データの移行処理を中断する、B:形状センサ20そのものを駆動せず、形状データに関する出力を一切しない、C:形状センサ20によって画像データを取得し、この画像データに基づいて被検物Mの形状データを作成するが、それを表示部(ディスプレイ)、印刷出力部(プリンタ)、CADなどの装置に出力しない、などの方法がある。
【0051】
次に、上記計測装置のCPU40の動作を図4のフローチャートに従って説明する。
【0052】
操作者が被検物をXステージ14に載せて、操作卓50で計測開始の操作をすると、図4フローチャートに示された内容がスタートする。
【0053】
Step1では、CPU40は温度測定回路43から赤外線カメラ30が撮影している被検物Mの温度データを入力する。
【0054】
Step2では、CPU40は、ジョイスティック53からカーソル51bの位置を、キーボード52から指定温度をそれぞれ入力する。
【0055】
Step3では、CPU40は、温度データが表すカーソル51bの位置の温度が、指定温度にあるかどうかを判断する。
【0056】
Step4では、カーソル51bが表す位置の温度が指定温度ではない場合には、指定温度になるまで、CPU40は、前記気体流形成手段、前記第一保持手段及び第二保持手段を制御するとともに、温度を計測し続ける。
【0057】
或いは、Step4では、カーソル51bが表す位置の温度が指定温度ではない場合には、指定温度になるまで、CPU40は、前記気体流形成手段、赤外線照射手段、前記第一保持手段、第二保持手段及び第三保持手段を制御するとともに、温度を計測し続ける。
【0058】
Step5では指定温度である場合には、CPU40は温度データが表すカーソル51bの位置の温度を監視しながら、形状センサ20を制御して、被検物Mの形状を計測する。
【0059】
このように、被検物Mの形状を測定する部位の温度が、所定の温度である場合に、被検物Mの形状を測定するので、被検物Mの熱膨張の量が常に一定の大きさの形状を測定できる。従って、被検物Mの形状を高精度に計測することができる。
【0060】
Step6では、CPU40は、カーソル51bが表す位置の温度が指定温度から外れたかどうかを判断する。
【0061】
Step7では、指定温度から外れた場合には、CPU40はモニター51上に警報を表示して、計測を中止する。
【0062】
このように、被検物Mの形状の計測中に被検物Mの温度が指定温度から外れた場合には計測を中止するので、被検物Mの熱膨張の量が一定の大きさからはずれた形状を測定しない。すなわち、測定誤差になるような形状データを取得しないようにしている。
【0063】
Step8では、指定温度にある場合は、被検物Mの全体の形状の計測が終了したかどうかを判断する。終了していなければ、Step5に戻って、形状計測を続ける。
【0064】
図5は上記計測装置の別の動作を示すフローチャートである。
【0065】
操作者が被検物MをXステージ14に載せて、操作卓50で計測開始の操作をすると、図5のフローチャートがスタートする。
【0066】
Step11では、CPU40は温度測定回路43から赤外線カメラ30が撮影している被検物Mの温度データと、被検物Mが置かれているXステージ14の温度データとを入力して、被検物Mの温度分布とXステージ14の温度分布とを作成する。
【0067】
Step12では、CPU40は、Xステージ14の温度分布の平均値と、被検物Mの温度分布の温度分布幅とを比較し、被検物Mの温度分布幅がXステージ14の温度の平均値の±1℃の範囲に収まっているかどうかを判断する。
【0068】
なお、必ずしも被検物Mの温度分布幅がXステージ14の温度の平均値の±1℃の範囲に収まっているかどうかを判断する必要はなく、Xステージ14の温度分布と被検物Mの温度分布との差が所定の範囲に収まっていればよく、例えば、被検物Mが置かれている周辺のXステージ14の温度がXステージ14近くの被検物Mの温度と所定の温度差に収まっているかどうかを判断しても良い。
【0069】
Step13では、被検物Mの温度分布幅がXステージ14の温度の平均値の±1℃の範囲に収まっていなければ、収まるまで、CPU40は、前記気体流形成手段、前記第一保持手段及び第二保持手段を制御するとともに、被検物Mの温度データと被検物Mが置かれているXステージ14の温度データとを入力し続ける。
【0070】
或いは、Step13では、被検物Mの温度分布幅がXステージ14の温度の平均値の±1℃の範囲に収まっていなければ、収まるまで、CPU40は、前記気体流形成手段、赤外線照射手段、前記第一保持手段、第二保持手段及び第三保持手段を制御するとともに、被検物Mの温度データと被検物Mが置かれているXステージ14の温度データとを入力し続ける。
【0071】
Step14では、被検物Mの温度分布幅がXステージ14の温度の平均値の±1℃の範囲に収まった場合には、CPU40は被検物Mの所定の領域の形状を計測する。
【0072】
なお、形状を計測する領域は、ジョイスティック53などから指定しても良い。
【0073】
このように、Xステージ14の温度と被検物Mの温度とが所定の範囲に収まってから形状の測定を開始するので、形状の計測中に被検物Mの温度がXステージ14の温度に近づくという被検物Mの温度変動がない状態で、被検物Mの形状を計測する。
【0074】
従って、この場合も上述した場合(図4参照)と同様に被検物Mの熱膨張の量が常に一定の大きさの形状を測定できるので、高精度に被検物の形状を計測することができる。
【0075】
本発明の異なる実施の形態として、例えば図6に示すような計測装置がある。これは、赤外線カメラ30の受光波長域に相当する波長の光を減衰する減衰部材としての減衰カバー17(図6中の点線で囲んだ部分参照)が被検物Mや赤外線カメラ30の周囲を覆うように配置された例である。
【0076】
なお、図6中、図1に示す部材と同一部材には同一番号を付してその説明を省略する。
【0077】
本計測装置の使用環境によっては、被検物Mから輻射された赤外線以外のエネルギー線が赤外線カメラ30に入射することがある。金属の場合、赤外線の反射高率が高い。そのため、被検物Mやその被検物Mを載置するXステージ14が金属製で光沢表面を持っている場合、これらに直接太陽光や白熱灯火が照射されていると、被検物Mやその周囲そのものの温度が正確に測れず、より高い温度を示すデータが赤外線カメラ30から得られてしまう。なお、温度測定時には、被検物Mの温度制御のための気体流吹付けや赤外線照射は行わない。
【0078】
そのために、本実施の形態では、Yステージ15を構成する垂直部分15bの上方で複数本(図6では2本)の減衰カバー支持梁18を、図6の紙面に対して垂直方向に延在させて、この減衰カバー支持梁18により、減衰カバー17を被検物Mおよび赤外線カメラ30の上方と側方4方向で覆うように支持してある。この減衰カバー17は、例えば、近赤外吸収用のポリカーボネート樹脂(例えば、住友ダウ株式会社製 ガリバー(TM)302−4)などのシート状パネルを用いることで、赤外線カメラ30の受光波長範囲である4〜13マイクロメートルの波長域を効率よく減衰することが可能となる。この波長範囲のエネルギー線を減衰することにより、外光からの影響が少ない状態で、赤外線カメラ30による温度測定が可能となる。
【0079】
この減衰カバー17は、Xステージ14、Yステージ15などの被検物Mの載置位置に近く、赤外線カメラ30の画像取得範囲になる部分と、赤外線カメラ30自身を覆うように設置して、温度計測部で感受するエネルギー線のほとんどが被検物Mとその周辺部からの輻射となるようにしている。
【0080】
本発明は上記実施形態に示したものに限定されるものではない。例えば、形状データと温度データの他に、被検物Mの比熱、熱伝導率、温度分布(熱勾配)などの熱特性データをCPU40に入力し、CPU40で形状測定値に温度補償を行うようにしてもよい。
【0081】
また、計測装置が設置された雰囲気中に含まれる塵やオイルミストが形状センサ20や赤外線カメラ30のレンズ面など付着して測定誤差が生じないようするために、これら形状センサ20や赤外線カメラ30にクリーンエアーを流して塵やオイルミストが付着しないようにしてもよい。
【0082】
また、本発明は以下の特徴を設けて構成してもよい。
【0083】
本発明の計測装置は、被検物の形状を測定する計測装置であって、前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段を制御して前記被検物の全体または一部に向けて、前記気体流の吹付けを行うことにより、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0084】
本発明の計測装置は、被検物の形状を測定する計測装置であって、前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、前記温度計測手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する保持手段と、前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段を制御して前記被検物の全体または一部に向けて、前記気体流の吹付けを行うことにより、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0085】
本発明の請求項3に記載の計測装置は、被検物の形状を測定する計測装置であって、前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、前記気体流形成手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する保持手段と、前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段及び保持手段を制御して、前記被検物の全体または一部に向けて、前記気体流の吹付けを行うことにより、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0086】
本発明の計測装置は、被検物の形状を測定する計測装置であって、前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、前記温度計測手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第一保持手段と、前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、前記気体流形成手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第二保持手段と、前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段及び第二保持手段を制御して、前記被検物の全体または一部に向けて、前記気体流の吹付けを行うことにより、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【0087】
本発明の計測装置は、被検物の形状を測定する計測装置であって、前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、前記温度計測手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第一保持手段と、前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、前記気体流形成手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第二保持手段と、前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段、前記第一保持手段及び第二保持手段を制御して、前記被検物の全体または一部に向けて、前記気体流の吹付けを行うことにより、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、を備えてなることを特徴とする。
【符号の説明】
【0088】
10 計測装置本体
11 床
12 ベース
14 Xステージ
15 Yステージ
16 Zステージ
17 減衰カバー(減衰部材)
20 形状センサ(検出手段)
21 投影ユニット
22 撮像ユニット
30 赤外線カメラ(温度計測部)
40 CPU(出力部)
41 ステージ駆動回路
42 形状測定回路
43 温度測定回路(温度計測部)
50 操作卓
51 モニター
52 キーボード(温度指定部)
53 ジョイスティック(位置指定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物の形状を測定する計測装置であって、
前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、
前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、
前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、
前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段を制御して、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、
を備えてなることを特徴とする計測装置。
【請求項2】
被検物の形状を測定する計測装置であって、
前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、
前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、
前記温度計測手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する保持手段と、
前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、
前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段を制御して、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、
を備えてなることを特徴とする計測装置。
【請求項3】
被検物の形状を測定する計測装置であって、
前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、
前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、
前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、
前記気体流形成手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する保持手段と、
前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段及び保持手段を制御して、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、
を備えてなることを特徴とする計測装置。
【請求項4】
被検物の形状を測定する計測装置であって、
前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、
前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、
前記温度計測手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第一保持手段と、
前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、
前記気体流形成手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第二保持手段と、
前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段及び第二保持手段を制御して、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、
を備えてなることを特徴とする計測装置。
【請求項5】
被検物の形状を測定する計測装置であって、
前記被検物の形状情報を採取する検出手段と、
前記被検物の温度を計測する温度計測手段と、
前記温度計測手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第一保持手段と、
前記被検物の温度を調整する気体流を形成する気体流形成手段と、
前記気体流形成手段の位置及び姿勢を変更可能に保持する第二保持手段と、
前記温度計測手段からの情報に基づいて、前記気体流形成手段、前記第一保持手段及び第二保持手段を制御して、前記被検物の温度を所定温度範囲に保持する温度制御手段と、
を備えてなることを特徴とする計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−257175(P2011−257175A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129836(P2010−129836)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】