説明

計測装置

【課題】高速かつ高精度に被検面の形状を計測することが可能な計測装置を提供すること
【解決手段】計測装置は、光コム光源101から射出された光束を、被検光束と参照光束に分割するPBS15と、前記参照光束と前記被検光束の光路長差を変化させる遅延素子9と、前記被検光束と前記参照光束が干渉して形成する干渉縞を撮像する撮像素子24と、遅延素子が光路長差を変化させて撮像された干渉縞の信号に基づいて被検面23の位置を算出する解析器25と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検面の位置を計測する計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、被検面位置の走査を広域計測間隔と微小計測間隔に分離し、微小計測間隔の走査を広域計測間隔毎に実施する白色干渉計を提案している。特許文献2は、被検光束と参照光束に光コムを用い、それぞれを異なる周波数間隔とすることで、被検面または参照面の走査なしで被検面位置を計測する光コム干渉計を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4554385号公報
【特許文献2】特許第3739987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の白色干渉計は、広域計測間隔を数μm程度にしたとしても計測レンジ100mmを実現するためには10以上の撮像枚数が必要になり、膨大な計測回数と計測時間のために実用性がない。特許文献2の光コム干渉計は、2つの光コム光源を用いるために計測装置が高価になると共に、2つの光コム光源間の相対位相雑音によって計測精度が制限される。また、特許文献2の光コム干渉計は被検面上に被検光束を集光させて被検面の位置を計測するために、被検面の形状を計測するためにはスポット位置を走査する必要があり、計測に時間がかかる。
【0005】
本発明は、高速かつ高精度に被検面の形状を計測することが可能な計測装置を提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の計測装置は、等しい周波数間隔で並んだ複数の周波数成分を有する光コムを発する光コム光源と、前記光コム光源から射出された光束を、被検面に照射される被検光束と参照面に照射される参照光束に分割する光束分割素子と、前記参照光束と前記被検光束の光路長差を変化させる光路長差変化素子と、前記被検光束と前記参照光束が干渉して形成する干渉縞を撮像する撮像素子と、前記光路長差変化素子が前記光路長差を変化させて撮像された干渉縞の信号に基づいて前記被検面の位置を算出する解析器と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高速かつ高精度に被検面の形状を計測することが可能な計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の計測装置のブロック図である。(実施例1)
【図2】図1に示す解析器の動作フローである。(実施例1)
【図3】干渉信号の時間波形を示した図である。(実施例1)
【図4】干渉信号の周波数波形を示した図である。(実施例1)
【図5】本発明の計測装置のブロック図である。(実施例2)
【図6】図5に示す解析器の動作フローである。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1の計測装置のブロック図である。計測装置は、単一の光コム光源101、被検光束と参照光束を分割する偏光ビームスプリッタ(PBS)15、被検光束と参照光束に時間遅延を印加する遅延素子9、干渉縞を撮像する撮像素子24、被検面位置を算出する解析器25を有する。解析器25は、計測装置の各部の動作を制御すると共に計測結果から被検面の形状(位置)を算出する演算処理を行う制御手段であり、マイクロコンピュータによって具現化される。
【0011】
光コム光源101は、分布帰還型(Distributed−Feedback:DFB)レーザ1、光周波数コム発信器(OpticalFrequency Comb Generator:OFCG)2、発振器3を有し、光コムを射出する。特許文献2と異なり、光コム光源101の数は一つなので、計測装置の高価化を防止している。
【0012】
DFBレーザ1は、発振波長1.5μmのDFB半導体レーザであり、電流ドライバ(不図示)により駆動される。DFBレーザ1は、中心周波数fにおいて数MHz以下程度の線幅を有する単一縦モードレーザであり、光通信用のレーザ素子を安価に入手可能である。被検面に照射される被検光束と参照面に照射される参照光の光路長差が長く、DFBレーザ1の波長安定性による測定誤差が無視できない場合には、ガス吸収線やエタロンに安定化を行えばよい。
【0013】
DFBレーザ1から射出した光束はOFCG2に入射する。OFCG2は、ファブリペロー共振器の共振器間に電気光学変調素子が配置された構成を有し、波長1.5μmではニオブ酸リチウムの導波路型の素子が使用可能である。
【0014】
OFCG2は、発振器3により周波数fmで変調され、ファブリペロー共振器のフリースペクトラルレンジ(FSR)はfmの整数倍に制御される。この結果、OFCG2から射出する光束は周波数fの両側に周波数間隔fmの等間隔に並んだ複数の周波数成分であるサイドバンドを有する光コムとなる。光コムは周波数空間では均等な周波数間隔の櫛歯状のスペクトルを有し、時間空間では周波数間隔の逆数の時間周期のパルス光となる。ここでは、発振器3の周波数fmは25GHzであり、光コムの周波数間隔も25GHzとなる。
【0015】
OFCG2から射出された光束は、PBS4によって直交する直線偏光成分を有する2光束に分割される。以下、PBS4を透過する光束を「参照光束」、PBS4で反射される光束を「被検光束」と呼ぶ。
【0016】
参照光束は、発振器6で変調された音響光学変調素子(AcousticOptical Modulator:AOM)5により、光コムの全ての周波数成分において均等に周波数dfだけシフトされる。発信器6による周波数のシフト量dfは解析器25によって調節される。なお、AOM5は、参照光束と前記被検光束の少なくとも一つの周波数成分を均等にシフトさせる周波数シフト素子として設けられれば足りる。
【0017】
AOM5(周波数シフト素子)から射出された光束は、PBS7を透過し、λ/4板(QWP)8で円偏光となった後、遅延素子9で反射され、再びQWP8で直線偏光となり、PBS7、11を反射する。
【0018】
遅延素子(光路長差変化素子)9は、エンコーダ等で遅延量が高精度に保証されたリニアステージとリニアステージ上のミラーを有し、被検光束と参照光束間の遅延時間の走査に用いる。遅延素子9は、参照光束と被検光束の光路長差を、光速cを光コム光源の周波数間隔fmで除して得られる合成波長以上で被検面23の高さを計測可能な範囲である計測レンジ未満の量だけ変化させる。遅延素子9は解析器25からの指令により等速走査を行う。走査速度vと走査量ΔDについては後述する。
【0019】
被検光束はPBS4で反射されて偏向ミラーで90°偏向された後、λ/2板(HWP)10で直交方向の偏光に回転され、PBS11によって参照光束と合波される。
【0020】
PBS11で合波された被検光束と参照光束は、結合レンズ12で偏波面保持ファイバ(PolarizationMaintainingFiber:PMF)13に結合され、PMF13によって伝送される。ここで、被検光束と参照光束の偏光はPMF13の偏波モードと一致するように調整され、PMF13による伝送中も被検光束と参照光束の偏光の直交関係が維持される。
【0021】
PMF13を射出した光束は、コリメータレンズ14で平行光束に変換され、PBS(光束分割素子)15によって再び被検光束と参照光束に分割される。
【0022】
参照光束は、PBS15を反射した後でQWP16を透過し、参照面17で反射された後で再びQWP16を透過して撮像素子24に入射する。
【0023】
被検光束は、PBS15を透過した後でQWP18を透過し、コンデンサレンズ19と偏向ミラー21を経て、放物面鏡22でビーム径を拡大された後、平行光束となって被検面23を照明する。被検面23からの散乱光は放物面鏡22、折り返しミラー21、コンデンサレンズ19、QWP18をそれぞれ通過し、PBS15で反射された後、撮像素子24に入射する。
【0024】
コンデンサレンズ19の焦点位置には絞り20が配置され、被検面23からの散乱光の空間周波数成分の一部を切り出して計測に利用する。被検面23が粗面、つまり計測波長より大きな面粗さを有する場合、撮像素子24上には大きさ2λF/Aのスペックルが発生する。ここで、λは光コム光源101の中心波長、Fはコンデンサレンズ19の焦点距離、Aは絞り20の直径である。一般に、絞り20の直径が大きいほど、多くの散乱光量を受光できる反面、被検光束と参照光束の干渉縞の信号(干渉信号)のコントラストが低減する。これらを両立する絞り20の直径として、撮像素子24の画素サイズがスペックルサイズの1/2〜3倍程度になるように設定する。
【0025】
撮像素子24は、被検面23とほぼ共役な位置に配置され、被検光束と参照光束が撮像素子上で干渉することで両光束の干渉縞を撮像してこれを光電変換して干渉信号を解析器25に出力する。撮像素子24による撮像タイミングは遅延素子9の走査と同期するように解析器25によって制御される。撮像素子24で得られる干渉信号は数式1で表わされる。解析器25は、撮像素子24が出力する干渉信号から被検面23の形状を算出する。
【0026】
【数1】

【0027】
ここで、pは光コム光源101の有する周波数成分の番号、Hは被検面23の位置(形状)、Dは光束中心における被検光束と参照光束の光路長差/2である。
【0028】
本実施例は遅延素子9を走査しながら干渉縞を撮像する。以下、遅延素子9の走査速度vと走査量ΔDの関係について説明する。時刻t=0において光路長差Dが0になるとすると、干渉信号は数式2で表わされる。
【0029】
【数2】

【0030】
干渉信号位相の第1項はビート周波数成分、第2項は包絡線成分、第3項は固定位相成分を表わしている。
【0031】
遅延素子9の走査速度vは数式2の第1項により決定される。干渉縞の撮像1枚当たりの位相走査量は、干渉縞のコントラストを維持するためにλ/4以下程度が必要であるため、走査速度v(即ち、ビート周波数の絶対値)は撮像周波数fcに対して数式3を満たす必要がある。
【0032】
【数3】

【0033】
白色干渉計ではdfの項が存在しないため、遅延素子9の走査によるドップラシフト周波数(数式3の左辺第2項)により走査速度vが制限される。一方、本実施例では、AOM5の周波数シフトを逆符号に設定することによりビート周波数を低減させることができるため、同一の撮像周波数fcに対して、従来よりも高速に遅延素子9を走査することが可能である。このため、AOM5を白色干渉計に設けても効果がある。
【0034】
走査量ΔDは数式2の第2項により決定される。第2項は周波数成分pに依存するため、全ての周波数成分で強め合う位置をピークとする包絡線を形成する。白色干渉計の場合には、H(x、y)―vt=0なる時刻のみにピークが存在する。光コムの場合には、周波数が離散的であるため、周波数間隔fm毎に2πの整数倍の光路長差となる場合には、光路長差が0の場合と同様のピークを生成する。その結果、光コムの干渉信号は、遅延素子9の走査に対して周期的となり、その周期v・Δtはc/fm/2と表わされる。
【0035】
干渉信号の包絡線ピークを検出するためには遅延素子9により1周期以上の光路長走査が必要である。また、後述する位相算出ステップでフーリエ変換を用いるため、光路長差は干渉信号周期の整数倍であると共に、撮像間隔は光路長差の整数分の1倍とする必要がある。従って、整数Mを用いて光路長差ΔOP及び遅延素子9の走査量ΔDは数式4の条件を満たすことが必要となる。
【0036】
【数4】

【0037】
白色干渉計では被検面の計測レンジの全域に亘って遅延素子を走査する必要があるが、本実施例では数式4で定まる範囲のみを走査すればよいため、計測の高速化を実現することができる。以下、光速cを光コムの周波数間隔fmで除して得られる波長を「合成波長Λ」と称し、合成波長Λの1/2を信号周期と称す。
【0038】
図3は、本実施例の干渉信号を示す。干渉信号の時間間隔はc/(2vfm)で表わされ、包絡線内部のビート周波数は、点線で示される白色干渉信号よりも低周波となっている。
【0039】
本実施形態は遅延素子9の走査量ΔDを信号周期Λ/2に低減できるが、信号周期Λ/2の整数倍の被検面23の位置については区別がつかない。具体的には、被検面23の位置H(x、y)は数式5に示すように、整数の干渉次数Nと端数位相ψの和に信号周期を乗じた形で表わされるが、干渉次数Nについては不定となる。干渉次数Nについて別途決定する必要があるが、これについては後述する。
【0040】
【数5】

【0041】
図2は、解析器25の動作を説明するためのフローチャートである。なお、「S」はステップ(工程)の略であり、これは後述する図6でも同様である。
【0042】
まず、解析器25は、遅延素子9の走査を走査速度v、信号周期Λ/2に相当する遅延量ΔDで開始し(S101)、撮像素子24から干渉信号を取得する(S102)。
【0043】
次に、解析器25は端数位相ψを算出する(S103)。干渉信号は数式2で表わされるため、これをフーリエ変換することにより、位相の周波数依存性を算出することができる。フーリエ変換後の干渉信号の振幅を図4(a)に示す。図4(a)の横軸は周波数(任意単位)であり、縦軸は干渉信号の周波数の振幅(任意単位)である。中心周波数df−(v/c)・fにピークを有する。周波数間隔Δfは、走査量ΔD=Λ/2より数式6で表わされる。
【0044】
【数6】

【0045】
従って、フーリエ変換後の周波数成分の位相が光コムの周波数成分毎の位相に一致する。フーリエ変換により算出される周波数成分毎の位相は、図4(b)に示すように、ラップされており、これを周波数方向に1次元位相接続すると、図4(c)に示す位相が得られる。図4(b)、(c)の横軸は周波数(任意単位)であり、縦軸は干渉信号の位相(ラジアン)である。
【0046】
端数位相ψは周波数間隔fm毎の干渉信号の位相差に対応するため、図4(c)の位相傾斜から算出可能である。具体的には、解析器25は回帰直線や平均値を用いることで端数位相ψの算出を行う。一般に、光コムの周波数成分は均一でなく、位相検出精度は光量に依存するため、周波数振幅を用いて重みづけを行ってもよい。合成波長位相ψの算出は被検面全面にわたって実施する。
【0047】
次に、解析器25は、干渉次数Nを位相接続により算出する(S104)。被検面23の位置Hの有する段差が信号周期よりも小さく、撮像素子24の隣接画素間の位相変化が0.5より小さい場合には、光学面形状検査において一般的に使用されている2次元位相接続により干渉次数Nの分布を決定することができる。
【0048】
被検面23が粗面の場合にはスペックルが発生するが、スペックル暗部では、干渉信号強度が低下することによるSN低下と、スペックルが波長に対して変化することによる位相誤差は発生しやすくなるため、位相計測精度が低下する。粗面計測では、これらの低精度な位相計測結果により位相接続誤差が発生しないように、位相接続時の重み付けにスペックル強度や干渉信号コントラストを用いる必要がある。または、S103の位相計測時にスペックル強度やコントラストに閾値を設け、条件を満たさない画素を予め欠落点にしてもよい。
【0049】
次に、解析器25は、S103で算出された端数位相ψとS104で算出された干渉次数Nから数式5を使用して被検面23の形状(位置)を算出し(S105)、測定を完了する。
【0050】
本実施例は、光コムを用いて遅延素子9の走査量ΔDを低減すると共に、遅延素子9によるドップラシフトを周波数シフトにより低減することによって高速な計測装置を実現している。また、光コムを1つしか用いないために相対位相雑音の影響を受けずに安価に高精度な計測装置を実現することができる。
【実施例2】
【0051】
図5は、実施例2の計測装置のブロック図である。本実施例の計測装置は、光コム光源102の内部に周波数間隔を拡大するエタロン201が設けられている点と、遅延素子9が撮像中に停止する点が実施例1の計測装置と異なる。図5において、図1と同一の部材には同一の参照符号を付している。
【0052】
光コム光源102は、光コム光源101のOFCG2にエタロン201を取り付けている。光コム光源102の数は一つである。
【0053】
OFCG2までは実施例1と同様であり、OFCG2からは中心周波数f、周波数間隔fmの光コムが射出されてエタロン201へ入射する。エタロン201はfmの整数N倍のFSRを有し、エタロン201の透過スペクトルがOFCG2の射出スペクトルに一致するように制御される。
【0054】
エタロン201の分解能をfmより十分に小さくすることによって、エタロン201を透過した後の光コムの周波数間隔をN×fmとすることができる。本実施例では、OFCG2のfmは25GHzであるが、N=10となるようにエタロン201を設計することによって周波数間隔は250GHzに拡大する。この結果、合成波長は1.2mmに減少し、遅延素子9の変化量は0.6mmに縮小し、更なる計測の高速化を図ることができる。
【0055】
光コム周波数発生器以外の光コム光源としてモードロックレーザが知られているが、一般のモードロックレーザの周波数間隔は100MHz程度で合成波長が長いが、本実施例のようにエタロンを使用すれば合成波長を短くすることができる。エタロンによる光量損失が問題となる場合には、エタロン201を透過した後にエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)や半導体光増幅器(SOA)等の光アンプにより増幅すればよい。
【0056】
光コム光源102からの光コムは、PBS4により被検光束と参照光束に分離され、実施形態1と同様に、遅延素子9によって参照光束には遅延が与えられる。この参照光束の光路(遅延光路)は、AOM5を省略したことを除いては実施例1と同一である。
【0057】
PBS11で合波された被検光束と参照光束は偏向ミラー群によって空間伝送され、ビームエクスパンダ202によってビーム径を拡大される。PBS15へ入射した後の干渉光学系は、偏向ミラー21と放物面鏡22をコリメータレンズ203に変更した以外は、実施例1と同一である。
【0058】
撮像素子24では被検光束と参照光束の干渉縞を撮像して干渉信号を出力し、解析器25は遅延素子9を駆動して得られる干渉信号の変化から被検面23の被検面の形状(位置)を算出する。
【0059】
図2は、解析器25の動作を説明するためのフローチャートである。
【0060】
まず、解析器25は遅延素子9のステップ駆動を行う(S201、S202)。遅延素子9のステップ量δDを、整数N1、N2を用いて数式7を満たすように設定する。Nを1以上とすることにより、ステップ量δDは光コム光源102の中心波長よりも広くとることができ、従来の白色干渉計よりも計測を高速に行うことができる。また、走査していないため、干渉信号のコントラストが低減する影響はない。
【0061】
【数7】

【0062】
次に、解析器25は、遅延素子9の静止を確認した後、干渉信号を取得する(S203)。i番目の計測ループの遅延素子位置Dに対する干渉信号は数式8で表わされる。
【0063】
【数8】

【0064】
数式8の第1項は位相定数項、第2項は2πの整数倍であるため、その存在を無視できる。第3項はキャリア周波数成分、第4項が包絡線成分となる。
【0065】
解析器25は干渉信号を取得するとS201に戻り、遅延素子9の駆動量がΔDになるまでS202とS203を繰り返す。
【0066】
次に、解析器25は、干渉信号の遅延量に対する変化から端数位相ψを算出する(S204)。撮像素子24の画素毎に得られる干渉信号の計測ループに対する変化をフーリエ変換すると実施例1の図4と同等のスペクトルが得られる。但し、包絡線ピークの周波数はステップ量δDで定まるN1となる。端数位相ψは実施例1と同様の手法で算出すればよい。
【0067】
次に、解析器25は、発振器3の周波数を変更することによって光コム光源102の合成波長ΛをΛ’に変更し(S205)、S201〜S205と同様のステップを繰り返し、合成波長Λ’における端数位相ψ’の算出を行う(S206〜S209)。
【0068】
次に、解析器25は、干渉次数Nの算出を行う(S210)。2つの異なる合成波長Λ、Λ’から合成される合成波長Λsは数式9で表わされる。合成波長ΛとΛ’の差が小さければΛs>>Λとすることができ、Λ/2>計測レンジとすることによってΛに対する干渉次数は0であることが確定する。
【0069】
【数9】

【0070】
被検面の位置Hは合成波長Λ,Λにより数式10で表わされる。
【0071】
【数10】

【0072】
干渉次数Nは数式11で算出される。
【0073】
【数11】

【0074】
端数位相の計測精度により、一回の合成波長の変更で計測レンジ以上の合成波長を生成することが困難な場合には、複数個の合成波長を生成することによって干渉次数を決定することができる。
【0075】
解析器25は、端数位相と干渉次数から被検面形状を算出して(S211)、計測を完了する。
【0076】
本実施例によれば、光コムを周波数フィルタで間引くことによって遅延素子9の走査量を更に低減すると共に、走査間隔をステップ動作により低減して測定数を低減することによって、高速かつ高精度な計測装置を安価に実現することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の計測装置は、被検面の形状を計測する用途に適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
9…遅延素子(光路長差変化素子)、15…PBS(光束分割素子)、17…参照面、23…被検面、24…撮像素子、25…解析器(制御手段)、101…光コム光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
等しい周波数間隔で並んだ複数の周波数成分を有する光コムを発する光コム光源と、
前記光コム光源から射出された光束を、被検面に照射される被検光束と参照面に照射される参照光束に分割する光束分割素子と、
前記参照光束と前記被検光束の光路長差を変化させる光路長差変化素子と、
前記被検光束と前記参照光束が干渉して形成する干渉縞を撮像する撮像素子と、
前記光路長差変化素子が前記光路長差を変化させて撮像された干渉縞の信号に基づいて前記被検面の位置を算出する解析器と、
を有することを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記解析器は、光速を前記光コム光源の前記周波数間隔で除して得られる合成波長の整数分の1倍だけ前記光路長差を変化させるたびに前記撮像素子から前記干渉縞の信号を取得することを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
光源から射出された光束を、被検面に照射される被検光束と参照面に照射される参照光束に分割する光束分割素子と、
前記参照光束と前記被検光束の少なくとも一つの周波数成分を均等にシフトさせる周波数シフト素子と、
前記参照光束と前記被検光束の光路長差を変化させる光路長差変化素子と、
前記被検光束と前記参照光束が干渉して形成する干渉縞を撮像する撮像素子と、
前記光路長差変化素子が前記光路長差を変化させて撮像された干渉縞の信号に基づいて前記被検面の位置を算出する解析器と、
を有し、
前記周波数シフト素子によるシフトがない場合の前記干渉縞の信号のビート周波数の絶対値よりも前記周波数シフト素子によるシフトがある場合の前記干渉縞の信号のビート周波数の絶対値が小さくなるように前記周波数シフト素子によるシフト量が設定されていることを特徴とする計測装置。
【請求項4】
前記被検面の位置をH(x、y)、光速を前記光コム光源の前記周波数間隔で除して得られる合成波長をΛ、干渉次数をN(x、y)、前記周波数間隔ごとの前記干渉縞の信号の位相差に対応する端数位相をψ(x、y)とすると、前記解析器は、以下の式を使用して前記被検面の位置を算出し、


前記解析器は、前記干渉次数を前記端数位相の位相接続により決定することを特徴とする請求項1または2に記載の計測装置。
【請求項5】
前記被検面の位置をH(x、y)、光速を前記光コム光源の前記周波数間隔で除して得られる合成波長をΛ、干渉次数をN(x、y)、前記周波数間隔ごとの前記干渉縞の信号の位相差に対応する端数位相をψ(x、y)とすると、前記解析器は、以下の式を使用して前記被検面の位置を算出し、


前記解析器は、異なる2つの合成波長ΛとΛ’に対応する端数位相ψ(x、y)とψ’(x、y)から、前記干渉次数を以下の式を使用して決定することを特徴とする請求項1または2に記載の計測装置。

【請求項6】
前記光コム光源は、前記光コムの周波数間隔を整数倍にするエタロンを有することを特徴とする請求項1または2に記載の計測装置。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−61255(P2013−61255A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200097(P2011−200097)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】