説明

認識装置および認識方法

【課題】静止物体との誤検出を一層防止しつつ対象物を認識することができる認識装置および認識方法を提供する。
【解決手段】撮像装置2による物体の撮像画像により対象物識別部6は物体が対象物か否かを識別し、静止物判定部7は物体が静止しているか否かを判定する。対象物位置検出装置3は物体の位置を測定し、地図データベース9は位置と静止物体の画像とを対応付けて記憶し、地図データ参照部8は物体の位置に対応する静止物体の画像を地図データベース9から抽出する。画像一致度比較部10は、物体の撮像画像と物体の位置に対応する静止物体の画像との一致度を比較し、対象物識別部3は一致度が閾値以上のときは、対象物と識別した物体を以後対象物と識別しない。これにより物体の撮像画像と地図データベースの静止物体の画像とを比較して一致度が高い物は対象物から除き、静止物体との誤検出を一層防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路上の歩行者等の物体を認識する認識装置および認識方法に関し、特には静止物体との誤検出を防止しつつ対象物を認識することができる認識装置および認識方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の歩行者等の物体を認識するための技術としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。この技術では、地図データベースに登録された静止物の位置情報を利用し、地図データベースから求めた装置から静止物までの距離である基準距離と、装置に設けられた複数のカメラの画像をステレオ処理して求めた視認距離とを比較する。そして、この技術では、視認距離が基準距離より短い静止物の手前の画素のみを抽出し、抽出された画素のみで構成される画像から物体を検出することで、画像処理の負担を軽減することが提案されている。
【特許文献1】特開2004−171165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の技術では、静止物の手前の画素のみで構成される画像から物体を検出しているものの、当該画像から物体を検出する手法自体は、連続する画像の差分と背景の動きとに基づいて移動物体の領域を検出し、移動物体の領域を抽出する手法を用いているため、歩行者等の対象物が静止している場合には、対象物を静止物体と誤認しやすいという欠点がある。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、静止物体との誤検出を一層防止しつつ対象物を認識することができる認識装置および認識方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、物体を撮像する撮像手段と、撮像手段により取得した物体の撮像画像によって、物体が対象物か否かを識別する対象物識別手段と、物体が静止しているか否かを判定する静止物判定手段と、物体の位置を測定する対象物位置検出手段と、位置と、当該位置における静止物体の画像とを対応付けて記憶可能な地図データベースと、対象物位置検出手段により測定された物体の位置に対応する静止物体の画像を、地図データベースから抽出する地図データ参照手段と、対象物識別手段により対象物と識別され静止物判定手段により静止していると判定された物体の撮像画像と、地図データ参照手段により抽出された物体の位置に対応する静止物体の画像との一致度を比較する画像一致度比較手段と、を備え、対象物識別手段は、一致度が閾値以上のときは、対象物と識別した物体を以後対象物と識別しない認識装置である。
【0006】
この構成によれば、撮像手段は物体を撮像し、対象物識別手段は物体が対象物か否かを識別し、静止物判定手段は対象物識別手段により対象物と識別された物体が静止しているか否かを判定するため、検証する対象を静止物と誤認しやすい物体に絞ることができる。
【0007】
また、対象物位置検出手段は物体の位置を測定し、地図データベースは位置と静止物体の画像とを対応付けて記憶し、地図データ参照手段は対象物位置検出手段により測定された物体の位置に対応する静止物体の画像を地図データベースから抽出するため、地図データベースから検証の基礎となる静止物体の画像を抽出することができる。
【0008】
そして、画像一致度比較手段は、物体の撮像画像と物体の位置に対応する静止物体の画像との一致度を比較し、対象物識別手段は、一致度が閾値以上のときは、対象物と識別した物体を以後対象物と識別しないため、撮像した物体の画像と地図データベースに登録された静止物体の画像とを直接比較して、一致度が高い物は静止物体として対象物から除くことができ、静止物体との誤検出を一層防止しつつ対象物を認識することができる。
【0009】
この場合、静止物判定手段により静止していると判定された物体の撮像画像を、対象物位置検出手段が測定した物体の位置と対応付けて、地図データベースに静止物体候補の画像として登録する地図データ登録手段をさらに備えることが好適である。
【0010】
この構成によれば、静止物判定手段により静止していると判定され、実際に静止物である可能性がある物体の撮像画像を地図データベースに静止物体候補の画像として登録するため、地図データベースの内容を更新することができる。
【0011】
この場合、地図データ参照手段は、対象物位置検出手段により測定された物体の位置に対応する静止物体候補の画像を、地図データベースから抽出し、画像一致度比較手段は、静止物判定手段により静止していると判定された物体の撮像画像と、地図データ参照手段により抽出された物体の位置に対応する静止物体候補の画像との一致度を比較し、地図データ登録手段は、一致度が閾値以上のときは、静止物体候補の一致回数として、1を加えた数値を地図データベースに登録する、ことが好適である。
【0012】
この構成によれば、静止物体候補の画像に基づいて、物体が実際に静止物体か否かを判定し、一致度が閾値以上のときは一致回数に1を加えた数値を地図データベースに登録するため、静止物体候補が実際に静止物体である可能性の高さを更新することができる。
【0013】
この場合、地図データ登録手段は、静止物体候補の一致回数が閾値以上のときは、地図データベースに静止物体候補の画像を静止物体の画像として登録することが好適である。
【0014】
この構成によれば、地図データ登録手段は、静止物体候補の一致回数が閾値以上のときは、地図データベースに静止物体候補の画像を静止物体の画像として登録するため、静止物体候補の内で実際に静止物体である信憑性が高い物体を静止物体として登録し直すことができる。
【0015】
また、本発明の別の態様によれば、物体を撮像する撮像ステップと、撮像ステップで取得された物体の撮像画像によって、物体が対象物か否かを識別する対象物識別ステップと、物体が静止しているか否かを判定する静止物判定ステップと、物体の位置を測定する対象物位置検出ステップと、対象物位置検出ステップで測定した物体の位置に対応する静止物体の画像を、位置と当該位置における静止物体の画像とが対応付けて記憶された地図データベースから抽出する地図データ参照ステップと、対象物識別ステップで対象物と識別され静止物判定ステップで静止していると判定された物体の撮像画像と、地図データ参照ステップで抽出した物体の位置に対応する静止物体の画像との一致度を比較する画像一致度比較ステップと、を含み、対象物識別ステップでは、一致度が閾値以上のときは、対象物と識別した物体を以後対象物と識別しない認識方法が提供される。
【0016】
この場合、静止物判定ステップで静止していると判定された物体の撮像画像を、対象物位置検出ステップで測定された物体の位置と対応付けて、地図データベースに静止物体候補の画像として登録する地図データ登録ステップと、をさらに含むことが、地図データベースの内容を更新することができるため、好適である。
【0017】
この場合、地図データ参照ステップは、対象物位置検出ステップで測定された物体の位置に対応する静止物体候補の画像を、地図データベースから抽出し、画像一致度比較ステップは、対象物識別ステップで対象物と識別された物体の撮像画像と、地図データ参照ステップで抽出された物体の位置に対応する静止物体候補の画像との一致度を比較し、地図データ登録ステップは、一致度が閾値以上のときは、静止物体候補の一致回数として、1を加えた数値を地図データベースに登録することが、静止物体候補が実際に静止物体である可能性の高さを更新することができるため、好適である。
【0018】
この場合、地図データ登録ステップは、静止物体候補の一致回数が閾値以上のときは、地図データベースに静止物体候補の画像を静止物体の画像として登録することが、静止物体候補の内で実際に静止物体である信憑性が高い物体を静止物体として登録することができるため、好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の認識装置および認識方法によれば、静止物体との誤検出を一層防止しつつ対象物を認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る認識装置および認識方法について添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明に係わる認識装置の一実施形態の構成を示す機能ブロック図である。本実施形態の認識装置1は、例えば自動車等の車両に搭載され、道路上の歩行者等の物体を道路上のガードレール、看板、電柱、樹木等と区別して認識するものである。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の認識装置1は、撮像装置(撮像手段)2と、対象物位置検出装置(対象物位置検出手段)3と、データ処理装置4とを備えている。撮像装置2は、歩行者等の物体を撮像して撮像画像を取得する物である。本実施形態においては、撮像装置2は可視光カメラであっても、赤外線カメラであっても良い。
【0023】
対象物位置検出装置3は、物体の緯度および経度等の絶対位置を測定する物である。あるいは対象物位置検出装置3は、緯度、経度以外にも高さ(Altitude)を測定する物であっても良い。対象物位置検出装置3は、例えばGPS(Global Positioning System)のような自己位置測定システムとレーザーレーダーのような測距装置とを組み合わせることで実現できる。簡易には、対象物位置検出装置3は、複数のカメラで構成された撮像装置2から取得した画像をステレオ処理することで求めた距離と、自己位置測定システムとを組み合わせた物でも良い。なお、ランドマークとして設計された物体等であって、物体そのものに絶対位置が設定されている場合は、当該絶対位置の値をそのまま認識装置1で適用しても良い。
【0024】
データ処理装置4は、撮像装置2により取得された撮像画像と、対象物位置検出装置3により得られた位置情報とを処理する物である。
【0025】
以下、図1に基づいてデータ処理装置4について説明する。データ処理装置4は、対象物候補探索部5と、対象物識別部(対象物識別手段)6と、静止物判定部(静止物判定手段)7と、地図データ参照部(地図データ参照手段)8、地図データベース9と、画像一致度比較部(画像一致度比較手段)10と、一致回数カウント部(一致回数カウント手段)11と、地図データ登録部(地図データ登録手段)12とを有している。
【0026】
対象物候補探索部5は、撮像装置2から入力された撮像画像に対して、画像の一部を抽出し、学習パターンを収集すべき対象物の候補を探索する物である。
【0027】
対象物識別部6は、対象物候補探索部5から入力された画像により、当該物体が対象物であるか否かの識別を行う物である。この識別を、対象物識別部6は、以前に学習によって獲得した識別手法を用いて行う。当該学習手段は、SVMやVoila & Jones法を適用することができる。後述するように対象物識別部6は、画像一致度比較部10または地図データ登録部12から物体が静止物体である旨の指令を受けたときは、当該物体の対象物としての認識を中断し、以後、当該物体を対象物と識別しない。
【0028】
静止物判定部7は、物体が静止しているか否かを判定する物である。この静止しているか否かの判定は、簡単には、撮像装置2からの撮像画像を判定に利用し、少なくとも2回以上ある誤差以下の絶対位置の範囲内に同一の物体が観測されることをもって、静止と判定すれば良い。画像を利用した同一の物体であるか否かの判定は、複数回の観測が十分な時間内に行われているのであれば、単純なテンプレートマッチングを適用することができる。静止の判定には、その他にも、画像処理で追跡を行うことや、物体の動きをオプティカルフローから求める方法等を適用することができる。
【0029】
地図データ参照部8は、対象物位置検出装置3により測定された物体の位置に対応する静止物体あるいは静止物体候補の画像を、地図データベース9から抽出する物である。地図データ参照部8は、測定された物体の絶対位置をクエリーにして、地図データベース9に静止物体等の画像データが存在するか否かの検索を行う。地図データ参照部8は、地図データベース9のデータサイズを大きくできる場合には、物体の絶対位置と認識装置1自体の絶対位置との組をクエリーにして検索する物であっても良い。認識装置1からの物体の見え方は、認識装置1の絶対位置によっても変わってくるため、認識装置1の絶対位置を考慮することにより、より正確な認識が可能となる。
【0030】
地図データベース9は、絶対位置と、当該絶対位置における静止物体あるいは静止物体候補の画像とを対応付けて記憶する物である。図2は、図1に示す地図データベース9に記憶された情報の一例を示す表である。図2に示すように、地図データベース9に記憶される情報には、具体的な道路地図が含まれている必要はなく、物体の絶対位置(緯度,経度)、静止物体あるいは静止物体候補の画像(図2には画像データNoで示す)、一致回数および静止物体か静止物体候補であるかの対応関係が含まれていれば十分である。
【0031】
物体の絶対位置には物体の高度が含まれていても良い。また、地図データ参照部8が物体の絶対位置と認識装置1自体の絶対位置との組をクエリーにする物である場合は、物体の絶対位置、静止物体等の画像、一致回数に加えて認識装置1自体の絶対位置が対応付けて記憶される。あるいは地図データベースは、静止物体候補の画像を取得および参照した時間や、物体の大きさ等の属性を含めて記憶しても良い。例えば、時間も含めて記憶した場合、定期的(6ヶ月等)に地図データの保守をする際に、ある時間の経過を境に参照されていないデータの削除をすることが可能となる。
【0032】
地図データベース9は、地図データベース参照部8からのクエリーである絶対位置に測定誤差を加えた範囲内に該当する静止物体の画像データがあるときは、その画像データを地図データ参照部8に返す。この返される画像データは複数であっても良い。
【0033】
図1に戻り、画像一致度比較部10は、静止物判定部7により静止していると判定された物体の撮像画像と、地図データ参照部8により抽出された物体の位置に対応する静止物体あるいは静止物体候補の画像との一致度を比較する物である。地図データ参照部8により抽出された一つの絶対位置に対応する画像データが複数あるときは、一致度の判定をそれらの画像データごとに行う。この一致度の判定は、簡易にはテンプレートマッチングやその拡張手法を適用することができる。また一致度の判定方法には、その他にも、画像の特徴点を抽出し特徴点同士で対応をとる方法等を適用することができる。画像一致度比較部10は、判定された一致度が所定の閾値以下の場合は一致と判定する。画像一致度比較部10は、物体の撮像画像と静止物体の画像とが一致すると判定した場合は、対象物識別部6に当該物体は静止物体である旨の指令を送信し、対象物識別部6は、以後、当該物体を対象物と認識しない。
【0034】
一致回数カウント部11は、物体の画像と、その位置に対応する静止物体候補の画像とが画像一致比較部10によって一致と判定された回数を計数する物である。
【0035】
地図データ登録部12は、静止物判定部7により静止していると判定された物体の撮像画像と、対象物位置検出装置3が測定した物体の位置と、一致回数カウント部11により計数された一致回数とを対応付けて、地図データベース9に静止物体候補の画像として登録する物である。また、地図データ登録部12は、一致回数カウント部11が計数した一致回数が所定の閾値以上となったときは、地図データベース9に登録されていた静止物体候補の画像を静止物体の画像として登録する。閾値の最小値は、1である。これは、ある物体の撮像画像が新たに静止物体候補(一致回数0)として登録された後、同じ撮像画像が静止画像候補の画像と一致していると判定された場合は、以後、当該物体を静止物体として扱うことを意味する。実際には静止物体ではない物を誤って静止物体として登録しないために、一般的には、閾値は10回以上であることが望ましい。さらに、地図データ登録部12は、一致回数カウント部11が計数した一致回数が閾値以上となったときは、当該物体は静止物体である旨の指令を対象物識別部6に送信し、対象物識別部6は、当該物体の対象物としての認識を中断し、以後、当該物体を対象物と認識しない。
【0036】
図3は、上記の認識装置1による処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートを用いて認識装置1の動作を説明する。
【0037】
まず、撮像装置2から入力された物体の撮像画像に対して、対象物候補探索部5は対象物候補探索を行う(図3のS1)。対象物候補探索は、撮像画像の全体あるいは一部をサブウィンドウのような撮像画像より小さい領域で切り出すような処理である。例えば、この対象物候補探索は、図4(a)〜(d)に示すように、対象物候補となり得るカードレール21、看板22、歩行者23、電柱24、樹木25等を囲う処理枠20で撮像画像を切り出すことにより行うことができる。あるいは、この対象物候補探索は、撮像画像の全体あるいは一部に対して、特徴点抽出処理(例えばコーナー検出)を行い、抽出された特徴点の近傍の画像を切り出すことによっても行うことができる。図4の例では、図4(c)において歩行者23を処理枠20内に捉えている以外は、ガードレール21等の静止物体を誤って対象物候補として認識している。
【0038】
図3に戻り、対象物候補探索により切り出された画像に対して、対象物識別部6は対象物識別を行い、当該画像にかかる物体が対象物であるか否かを判定する(図3のS2)。対象物識別部6は、対象物識別を行った後、当該画像と識別結果とを静止物判定部7に送る。
【0039】
対象物位置検出装置3は、対象物として識別された物体の絶対位置を測定する(図3のS3)。対象物位置検出装置3は、検出した物体の絶対位置を地図データ参照部8に送る。静止物判定部7は、対象物として識別された物体が静止しているか否かの判定を行う(図3のS4)。なお、図3の例では、S1,S2,S3,S4の順に処理を行っているが、S1,S2およびS4の各々の処理の前後に、S3の対象物位置測定の処理を行うことができ、その順序は問わない。
【0040】
地図データ参照部8は、静止物判定部7により静止していると判定された物体について、対象物位置検出装置3により測定された当該物体の絶対位置(緯度、経度)をクエリーにして、地図データベース9に当該絶対位置に対応する画像データが存在するか否かの検索を行う(図3のS5)。地図データベース9は、当該絶対位置に対応する静止物体あるいは静止物体候補の画像データを返す。
【0041】
画像一致度比較部10は、絶対位置に対応する静止物体あるいは静止物体候補の画像データが存在する場合は、それらの撮像装置2による物体の撮像画像との一致度を判定する(図3のS6)。もし、図3のS5の処理で対応する画像データが存在しない場合、あるいは図3のS6の処理で不一致と判定された場合は、一致回数カウント部11は一致回数を0に計数し、地図データ登録部12は、当該物体の撮像画像を静止物体候補の画像として、当該絶対位置、一致回数0と対応付けて地図データベース9に登録する(図3のS7)。
【0042】
もし、図3のS6の処理で一致と判定された場合は、物体の撮像画像が静止物体の画像と一致するときは(図3のS8)、画像一致度比較部10は、当該物体は静止物体である旨の指令を対象物識別部6に送信し、対象物識別部6は、以後、当該物体を対象物と認識しない(図3のS11)。図3のS6の処理で一致と判定された場合であって、物体の撮像画像が静止物体候補の画像と一致するときは、その画像データの一致回数と設定した閾値との比較を行う(図3のS9)。この場合、図3のS9の処理で一致回数が閾値未満であった場合は、一致回数カウント部11は一致回数に1を加算する(図3のS10)。一方、図3のS8の処理で一致回数が閾値以上であった場合は、その物体は静止物体であると判定し、地図データ登録部12は、当該画像データを静止物体の画像として地図データベース9に登録する。また、地図データ登録部12は、当該物体は静止物体である旨の指令を対象物識別部6に送信し、対象物識別部6は、当該物体の対象物としての認識を中断し、以後、当該物体を対象物と認識しない(図3のS11)。
【0043】
本実施形態では、撮像装置2は物体を撮像し、対象物識別部6は物体が対象物か否かを識別し、静止物判定部7は対象物識別部6により対象物と識別された物体が静止しているか否かを判定するため、検証する対象を静止物と誤認しやすい物体に絞ることができる。
【0044】
また、対象物位置検出装置3は物体の位置を測定し、地図データベース9は位置と静止物体の画像とを対応付けて記憶し、地図データ参照部8は対象物位置検出装置3により測定された物体の位置に対応する静止物体の画像を地図データベース9から抽出するため、地図データベース9から検証の基礎となる静止物体の画像を抽出することができる。
【0045】
そして、画像一致度比較部10は、物体の撮像画像と物体の位置に対応する静止物体の画像との一致度を比較し、対象物識別部6は、一致度が閾値以上のときは、対象物と識別した物体を以後対象物と識別しないため、撮像した物体の画像と地図データベース9に登録された静止物体の画像とを直接比較して、一致度が高い物は静止物体として対象物から除くことができ、静止物体との誤検出を一層防止しつつ対象物を認識することができる。
【0046】
また、本実施形態では、静止物判定部7により静止していると判定され、実際に静止物である可能性がある物体の撮像画像を地図データベース9に静止物体候補の画像として登録するため、地図データベース9の内容を更新することができる。また、静止物体候補の画像に基づいて、物体が実際に静止物体か否かを判定し、一致度が閾値以上のときは一致回数に1を加えた数値を地図データベース9に登録するため、静止物体候補が実際に静止物体である可能性の高さをも更新することができる。
【0047】
さらに、地図データ登録部12は、静止物体候補の一致回数が閾値以上のときは、地図データベース9に静止物体候補の画像を静止物体の画像として登録するため、静止物体候補の内で実際に静止物体である信憑性が高い物体を静止物体として登録し直すことができる。
【0048】
本実施形態においては、地図データベース9に記憶される静止物体は高い頻度で検出対象物として誤検出されるものに限定しているため、コンパクトなデータベースを実現できる。また、地図データベース9の利用方法は、物体の撮像画像と静止物体の画像とを直接比較する方法であるため、物体の撮像画像は単眼カメラで取得したものでも適用でき、必ずしも複数のカメラによるステレオ処理等を必要としない。
【0049】
尚、本発明の認識装置および認識方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係わる認識装置の一実施形態の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に示す地図データベースに記憶された情報の一例を示す表である。
【図3】図1に示す認識装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す撮像装置から入力された画像に対して対象物候補探索を行った例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1…認識装置、2…撮像装置、3…対象物位置検出装置、4…データ処理装置、5…対象物候補探索部、6…対象物識別部、7…静止物判定部、8…地図データ参照部、9…地図データベース、10…画像一致度比較部、11…一致回数カウント部、12…地図データ登録部、20…処理枠、21…ガードレール、22…看板、23…歩行者、24…電柱、25…樹木。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により取得した前記物体の撮像画像によって、前記物体が対象物か否かを識別する対象物識別手段と、
前記物体が静止しているか否かを判定する静止物判定手段と、
前記物体の位置を測定する対象物位置検出手段と、
位置と、当該位置における静止物体の画像とを対応付けて記憶可能な地図データベースと、
前記対象物位置検出手段により測定された前記物体の位置に対応する静止物体の画像を、前記地図データベースから抽出する地図データ参照手段と、
前記対象物識別手段により対象物と識別され前記静止物判定手段により静止していると判定された前記物体の撮像画像と、前記地図データ参照手段により抽出された前記物体の位置に対応する静止物体の画像との一致度を比較する画像一致度比較手段と、
を備え、
前記対象物識別手段は、前記一致度が閾値以上のときは、前記対象物と識別した物体を以後対象物と識別しない認識装置。
【請求項2】
前記静止物判定手段により静止していると判定された前記物体の撮像画像を、前記対象物位置検出手段が測定した前記物体の位置と対応付けて、前記地図データベースに静止物体候補の画像として登録する地図データ登録手段をさらに備える請求項1に記載の認識装置。
【請求項3】
前記地図データ参照手段は、前記対象物位置検出手段により測定された前記物体の位置に対応する前記静止物体候補の画像を、前記地図データベースから抽出し、
前記画像一致度比較手段は、前記静止物判定手段により静止していると判定された前記物体の撮像画像と、前記地図データ参照手段により抽出された前記物体の位置に対応する静止物体候補の画像との一致度を比較し、
前記地図データ登録手段は、前記一致度が閾値以上のときは、前記静止物体候補の一致回数として、1を加えた数値を前記地図データベースに登録する、
請求項2に記載の認識装置。
【請求項4】
前記地図データ登録手段は、前記静止物体候補の一致回数が閾値以上のときは、前記地図データベースに前記静止物体候補の画像を静止物体の画像として登録する、
請求項3に記載の認識装置。
【請求項5】
物体を撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップで取得された前記物体の撮像画像によって、前記物体が対象物か否かを識別する対象物識別ステップと、
前記物体が静止しているか否かを判定する静止物判定ステップと、
前記物体の位置を測定する対象物位置検出ステップと、
前記対象物位置検出ステップで測定した前記物体の位置に対応する静止物体の画像を、位置と当該位置における静止物体の画像とが対応付けて記憶された地図データベースから抽出する地図データ参照ステップと、
前記対象物識別ステップで対象物と識別され前記静止物判定ステップで静止していると判定された前記物体の撮像画像と、前記地図データ参照ステップで抽出した前記物体の位置に対応する静止物体の画像との一致度を比較する画像一致度比較ステップと、
を含み、
前記対象物識別ステップでは、前記一致度が閾値以上のときは、前記対象物と識別した物体を以後対象物と識別しない認識方法。
【請求項6】
前記静止物判定ステップで静止していると判定された前記物体の撮像画像を、前記対象物位置検出ステップで測定された前記物体の位置と対応付けて、前記地図データベースに静止物体候補の画像として登録する地図データ登録ステップと、
をさらに含む請求項5に記載の認識方法。
【請求項7】
前記地図データ参照ステップは、前記対象物位置検出ステップで測定された前記物体の位置に対応する前記静止物体候補の画像を、前記地図データベースから抽出し、
前記画像一致度比較ステップは、前記対象物識別ステップで対象物と識別された前記物体の撮像画像と、前記地図データ参照ステップで抽出された前記物体の位置に対応する静止物体候補の画像との一致度を比較し、
前記地図データ登録ステップは、前記一致度が閾値以上のときは、前記静止物体候補の一致回数として、1を加えた数値を前記地図データベースに登録する、
請求項6に記載の認識方法。
【請求項8】
前記地図データ登録ステップは、前記静止物体候補の一致回数が閾値以上のときは、前記地図データベースに前記静止物体候補の画像を静止物体の画像として登録する、
請求項7に記載の認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−310572(P2007−310572A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137907(P2006−137907)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】