説明

誘導プラズマ源

実施形態に係るプラズマ処理装置は、壁により境界された処理チャンバと、処理チャンバ内に設けられた基体ホルダと、チャンバ壁の外側の誘導RFエネルギーアプリケータとを有する。誘導RFエネルギーアプリケータは1つまたは複数のRF誘導結合素子(ICE)を有する。各誘導結合素子は、アプリケータ壁上の薄い誘電体窓の直近の磁束集中器を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願番号第61/236,081号(2009年8月21日出願)に基づく優先権の利益を主張するものであり、当該出願は全ての目的に関して本明細書中に参照により含まれる。
【0002】
本発明は、プラズマ生成に関し、より詳細には、高い結合効率を有するプラズマ源において処理する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
低圧の誘導結合プラズマ(ICP)は、集積回路、マイクロメカニカルデバイス、フラットパネルディスプレイや他のデバイスなどのデバイスの製造に用いられている。ICPにおける電流は関連するスカラー電圧差のない起電力により駆動されるため、誘導結合はこれらの用途に関して容量結合よりも好ましい。一方で、容量結合は種々の面に相対的にプラズマ電位を増加させる傾向があり、プラズマと処理チャンバの種々の面との間に、寄生電流、放電、アーク放電および/または他の望ましくない電流を生じる。容量結合は大電圧を生じ(すなわち、プラズマ電位を増加させ)、イオンを表面上へと高いエネルギーで加速させる。これにより、容量結合により、表面金属はスパッタリングされ、処理チャンバ内に汚染物が発生し、および/または、基体上のデバイスが損傷する可能性がある。さらに、統計的加熱による容量結合は、プラズマ密度が増加し、シースがより薄くなると、急速に減少するため、容量結合プラズマ(CCP)リアクタは生成可能なプラズマの密度に制限がある。
【0004】
一般に、処理に用いられるICPはアプリケータ(しばしばアンテナともいわれる)によりプラズマ処理装置内に維持され、プラズマ処理装置の大きな誘電体窓を介して高周波電磁エネルギーを結合させる。ある装置では、アプリケータは単一のコイルである。また他のICP処理装置は複数のコイルを備える。誘電体窓は、通常、比較的低損失の材料、たとえば、石英、アルミナ、他のセラミックから構成される。
【0005】
プラズマ処理は、しばしば比較的低圧で行われる。たとえば、プラズマエッチングおよび/またはプラズマ支援CVDに関する予め定めた作用圧力は、用途に依存して、たとえば、0.1ミリトール〜100トールの範囲である。しかし、この範囲外の圧力も用途によっては用いられる。
【0006】
従来のICP処理装置における大きな誘電体窓は、一般に、処理チャンバの上面を覆うように設けられている。この誘電体窓を介して結合された電磁束により、窓の下方のチャンバガス内のICPに電力を供給することができる。処理されるワークまたは基体は、一般に、誘電体窓の下方、チャンバ内の基体ホルダまたはチャック上に横方向に支持される。ICP処理装置の中にはドーム状の窓が用いられているものもあるが、誘電体窓は平坦なものであってよい。
【0007】
電磁理論によれば、誘導結合プラズマ電流は、電流搬送プラズマ空間を囲む高周波磁束における周期的変化により生じる起電力(EMF)によりエネルギー供給される。しかし、従来の処理装置は、プラズマの電流搬送領域を囲む磁束の量を最適化するためではなく、強い磁場を提供するようしばしば設計されていた。起電力はプラズマの電流搬送領域を囲む磁束の積分量に比例するため、強い磁場線を有することのみでは、効率的な結合は保証されない。
【0008】
デバイス製造用のプラズマエッチングやプラズマ支援CVDなどの多くの用途では、処理される基体の種々の領域の上方に比較的均一なプラズマを形成することが不可欠である。均一性に関して、平坦な窓によれば、プラズマが電力を受ける種々の位置と基体ホルダ上のワークとの間の比較的均一な距離が得られるため、平坦な誘電体窓がドーム状の窓よりもしばしば好ましい。しかし、平坦な窓の上のRFエネルギーアプリケータを拡張可能なものとし、および/または、比較的大きな基体領域の上方の効率的な結合および均一なプラズマ密度を実現することは困難であった。
【0009】
広い領域を覆う厚い窓を介して電力が結合される場合、様々な問題が生じうる。真空処理チャンバの上部を覆う平坦な誘電体窓は、外側の周囲圧力とチャンバ内の真空との間の差により生じる機械的な力に耐える程度に十分厚くなければならない。平坦な直径300mmの半導体ウェハを処理するのに十分大きいチャンバを覆う石英窓(典型的にはこのような窓は直径約0.5mである)は、この圧力に耐え、かつ、許容される安全域を提供するために少なくとも数cmの厚さでなければならない。実際、約2〜5cmの厚さが一般に用いられている。さらに、チャンバがより大きい基体サイズを処理するために拡張されると、誘電体窓の厚さに関する制約はチャンバの直径に比例して増す。
【0010】
厚い窓を介してプラズマ結合を行うことは非効率的であった。チャンバ空間上の厚い誘電体窓(たとえば1cm以上)に隣接するアプリケータコイルでは、生成されるかなりの割合の磁束線は、全体として、窓の中をループしてしまい、プラズマを構成する内側のチャンバ空間に達しないかおよび/またはほとんど達しない。磁束が局所化プラズマ電流を囲まない場合、電力結合はしばしば弱く、非効率である。
【0011】
弱い結合を和らげるため、プラズマ中に予め定めた量のプラズマを結合するようアプリケータは比較的高いRF電圧によって電力供給する必要がある。このような高いRF電圧は、有害なアーク放電および/または火花発生を引き起こすため、および、マッチングおよび電力結合システムにおける電力損失量は通常印加電圧の二乗となるため、問題である。さらに、高電圧では、純粋に誘導モードにおいて操作すること、および、実質的な容量結合を避けることが困難となり、または、実現不可能となりうる。これは、処理が比較的低い密度の誘導結合プラズマを必要とする場合に特に問題である。さらに、アプリケータおよび/またはマッチングネットワークにおける比較的高い電力損失により、プラズマを不安定なものとしうる。
【0012】
単一のコイル要素を有する誘導RFエネルギーアプリケータを拡張することは困難である。1つの困難性は、コイル巻線のインダクタンスはその直径に比例して増加するという物理法則から生じる。アプリケータコイルに予め定めた電流を励起するために必要なRF電力はそのインダクタンスに比例するため、特に均一に空間配置された巻線が存在する場合には、大きなコイルに電力供給するためには比例しない高RF電圧が必要であることは明らかである。この問題は、窓の上に分散された、それぞれ比較的低いインダクタンスを有するより小さい複数の誘導結合コイル素子を有するアプリケータを用いることにより部分的に緩和される。
【0013】
チャンバ内に達する磁束の相対量を増加させて、結合を改善するため、従来のICPアプリケータのコイルはプラズマの近くに配置されていた。たとえば、USP6,259,309(Bhardwajら)ではチャンバ上部壁の上の、狭く薄い誘電体窓の直上に従来の平面状の環状コイルが配置されている。周囲圧力を阻止するために十分な強さを有する個別の構造によって、狭い誘電体リングが支持されていた。
【0014】
この従来の構造によれば、窓を介してより量の多い磁束が達するようにすることができるが、残りの磁束線は、全体として、窓に平行に、窓の直近の薄い層内に存在する。
【0015】
誘電体窓に隣接する種々の位置に配置された異なる複数のアプリケータコイルに選択された量の電流を向けることにより、プラズマ処理装置内の空間均一性が改善可能であることが提案されていた。しかし、個々のコイル電流と各コイルに隣接するプラズマ密度との間には、比較的低い空間的な相関しか存在しないことが測定により示されていた。
【0016】
さらに、選択された電力量を異なるコイルに向けることは、典型的には、既存のアプリケータにおいて、コイルに関するマッチングネットワークにおいて行われる電力測定に基づいて行われ、プラズマに供給される有効電力に基づいて行われない。これらの電力測定は、コイルに印加される電流の変化に非常に敏感な場合がある。さらに、コイルの損失、アンテナケージの損失、隣接するコイル同士の干渉およびチャンバ内での損失を考慮しなければならない。パラメタは各コイルおよびアプリケータについて異なり、処理パラメタをコイル毎、および、アプリケータ毎に微調整する必要がある。つまり、このアプローチは問題であった。
【0017】
プラズマの不均一性は、不均一な供給ガスの導入からも生じる。容量プラズマ処理装置では、ワーク支持体上のアプリケータ電極は、処理チャンバに均一に供給ガスを選択的に導入するために用いられる「シャワーヘッド」ガス分散孔を有する。しかし、比較的厚い平坦なまたはドーム状の誘電体窓を有するICP処理装置において、構造的/機械的制約および/またはコストにより、このような窓に供給ガス孔を設けることは実用的ではなかった。さらに、供給ガス注入孔をアプリケータコイルの近くに配置することにより、処理チャンバに入る供給ガスの前の、供給ガスと相互作用する電磁エネルギーが生じうる。すなわち、供給ガスは、通常、他の方法でプラズマ処理装置に導入されていた。
【0018】
たとえば、基体の周縁の回りおよび/または基体ホルダの下方の種々の位置に設けられた複数の供給インジェクタを介して処理チャンバ内に供給ガスが導入されるICP処理装置も存在する。このような手段を用いて基体の上方に均一なガス分散を実現することは比較的困難であった。さらに、チャンバ内に挿し込まれるインジェクタはプラズマの均一性を低下させる。
【0019】
さらに、プラズマの不均一性は、プラズマとコイルとの寄生容量結合から生じうる。コイルとICPとの間の電磁シールドまたはファラデーシールドを、プラズマとコイルとの容量結合を低減するために用いることができる。しかし、ファラデーシールドは、誘導結合を大きく低減させ、RF電力における大きな損失を与える可能性があり、したがって、アプリケータに関する低減されたICP伝送効率を生じさせる。このようなシールドが結合効率を低下させる1つの基本的な理由は、シールドが薄すぎない限り、誘導結合素子と誘電体窓との間にシールドを介在させることが基本的にアプリケータとチャンバの内側との分離を増加させることである。USP6,056,848(Davietら)には薄膜の静電シールドが開示されており、この静電シールドは、容量結合が実質的に減少される一方で、プラズマが維持されるために、当該シールドを介して誘導電力が通過する程度に電磁的に薄い。しかし、本発明者らは、(チャンバ内側から結合素子を最小限に移動させるために)機械的に薄いが、電磁的に厚いシールドも、優れた性能を有することを見いだした。さらに、既存のファラデーシールドは容量結合を排除するために有効でありえるが、時には、スパッタリングを排除するために容量結合を低減することだけでなく、必要に応じて、小さく標的されたプラズマの不均一性を形成し、プラズマの点火を補助するためにいくぶんかの容量結合を残すことも望ましい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】USP6,259,309
【特許文献2】USP6,056,848
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
高い結合性を実現し、および/または、大型の基体サイズの処理用に拡張可能なICP処理装置および方法に対する長年のニーズが存在していた。また、高い電力伝送効率および広い領域にわたる処理均一性の高いレベルを提供するICP処理装置および方法に対するニーズが存在していた。さらに、低い電力および/または低いプラズマ密度において安定な拡張可能なICP処理装置および方法に対する長年のニーズが存在する。さらにまた、ICPに供給される有効電力に基づいた電力制御を提供するICP処理装置および方法に対するニーズが存在する。広い領域にわたって予め選択された供給ガス分散を実現可能であり、かつ、寄生容量結合を効率的に管理可能なICP処理装置および方法は特に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の態様および利点は、以下の詳細な説明において記載されており、または、場合によりこの詳細な説明から自明であり、または、場合により本発明の実施を通じて学ぶことができる。
【0023】
本発明の1つの例示的実施形態は、プラズマ中で基体を処理する装置に関する。この装置は、処理ガスを閉じこめる内側空間を有する処理チャンバと、処理チャンバの内側の、基体を保持する基体ホルダとを備える。この装置はさらに、処理チャンバの壁の一部を構成する少なくとも1つの誘電体窓を備える。この装置はさらに、処理チャンバの外側に設けられた誘導アプリケータを備える。誘導アプリケータは、少なくとも1つの誘導結合素子を有し、有利な実施形態では、複数の誘導結合素子を有する。誘導結合素子は、コイル部分と、透磁性材料から構成される磁束集中器と、を有する。磁束集中器は第1の極領域および第2の極領域を有する。第1の極領域および第2の極領域は全体として少なくとも1つの誘電体窓に面する。誘導結合素子は、磁束集中器を少なくとも部分的に囲む導電シールドをさらに有する。有利な実施形態では、導電シールドは、たとえば、アルミニウム、銅、銀または金から構成されている。
【0024】
上記有利な実施形態の態様によれば、誘導結合素子がエネルギー供給されたとき、RF周波数の磁束が磁束集中器から直接処理チャンバの内側に放射され、磁束の実質的な一部は第1の極領域から少なくとも1つの誘電体窓を介して処理チャンバの内側に発せられ、かつ、磁束の実質的な一部は処理チャンバの内側から少なくとも1つの誘電体窓を介して磁束集中器の第2の極領域に戻る。
【0025】
上記例示的実施形態の変形例では、たとえば、第1の極領域および第2の極領域はギャップ距離分だけ隔てられている。第1の極領域および第2の極領域は処理チャンバの内側からギャップ距離の約1/2未満、好ましくは、約1/4未満の位置、たとえば、ギャップ距離の約1/8未満の位置に設けられている。たとえば、有利な実施形態では、磁束集中器は少なくとも1つの静電窓の上に設けられている。誘電体窓の厚さは、たとえば、ギャップ距離の約1/4未満、たとえば、ギャップ距離の約1/8未満である。
【0026】
上記例示的実施形態の別の変形例では、この装置は、処理ガスを処理チャンバの内側に供給するよう構成された複数のガス供給導管をさらに備えてよい。複数のガス供給導管の少なくとも1つは、誘導結合素子の近傍に設けられた供給孔を介して処理チャンバの内側に処理ガスを供給可能である。誘導結合素子の導電シールドは、誘導結合素子のコイル部分を複数のガス供給導管の少なくとも1つから分離することができる。有利な実施形態では、複数のガス供給導管の少なくとも1つは、予め選択された流速の処理ガスを処理チャンバの内側へ通すよう制御されるよう構成可能である。
【0027】
上記例示的実施形態のさらに別の変形例では、誘導結合素子は、マッチング回路および少なくとも1つの共振コンデンサを介してRFエネルギー源に接続されている。この装置は、マッチング回路と少なくとも1つの共振コンデンサとの間に接続された電力測定装置を備えてよい。この装置は、電力測定装置から受信した信号に少なくとも部分的に基づいて、誘導結合素子に供給されるRF電力を制御するよう構成された制御ループを備えてよい。
【0028】
上記例示的実施形態のまた別の変形例では、この装置は誘導結合素子と処理チャンバの内側との間の、少なくとも1つの誘電体窓上に設けられた静電シールドをさらに備えてよい。静電シールドは、たとえば、少なくとも1つの誘電体窓上に設けられた薄い金属ストリップのアレイを有する。薄い金属ストリップのそれぞれは、たとえば、誘導結合素子のコイル部分に実質的に垂直な方向に設けられている。有利な実施形態では、薄い金属ストリップのアレイは、たとえば切断されまたは切断されていない導電ループにより接続されている。この有利な実施形態の変形例では、導電ループは接地されているか、浮動状態にあるか、または、電圧源に接続されていてよい。上記例示的実施形態の別の変形例では、静電シールドはたとえば誘導結合素子のコイル部分に平行に設けられた平坦なシートを有する。平坦なシートは少なくとも1つの不連続部分を有してよい。不連続部分のサイズおよび構造はたとえば循環電流を阻止するために十分なものである。
【0029】
本発明の別の例示的実施形態は、基体の処理方法に関する。この方法は、処理装置の処理チャンバの内側の基体ホルダ上に基体を戴置するステップと、処理チャンバの内側に処理ガスを通すステップと、処理チャンバ内を100トール未満の予め定めた圧力に維持するステップと、処理チャンバの内側に実質的な誘導プラズマを生成するために、処理チャンバの外側の少なくとも1つの誘導アプリケータをRF電力でもってエネルギー供給するステップと、処理チャンバ内で誘導プラズマにより基体を処理するステップと、を含む。
【0030】
上記例示的実施形態の有利な態様では、処理チャンバは処理チャンバの壁の一部を構成する少なくとも1つの誘電体窓を備える。誘導アプリケータは、少なくとも1つの誘導結合素子を有する。少なくとも1つの誘導結合素子は、コイル部分と、透磁性材料から構成される磁束集中器とを有する。磁束集中器は、第1の極領域および第2の極領域を有する。第1の極領域および第2の極領域は、全体として少なくとも1つの誘電体窓に面する。誘導結合素子は、磁束集中器の近傍に設けられた導電シールドを有する。有利な実施形態では、導電シールドは、たとえば、金、アルミニウム、銅または銀から構成されている。
【0031】
上記例示的実施形態の更に有利な態様では、誘導結合素子は、磁束集中器から少なくとも1つの誘電体窓を介して処理チャンバの内側にRF周波数の磁束を直接循環させ、磁束の実質的な一部は第1の極領域から少なくとも1つの誘電体窓を介して処理チャンバの内側に発せられ、かつ、磁束の実質的な一部は処理チャンバの内側から少なくとも1つの誘電体窓を介して磁束集中器の第2の極領域に戻る。
【0032】
上記例示的実施形態の変形例では、たとえば、第1の極領域および第2の極領域はギャップ距離分だけ隔てられている。第1の極領域および第2の極領域は処理チャンバの内側からギャップ距離の約1/4未満、たとえば、約1/8未満の位置に設けられている。たとえば、有利な実施形態では、磁束集中器はたとえば少なくとも1つの誘電体窓の上に設けられている。少なくとも1つの誘電体窓は、ギャップ距離の約1/4未満、たとえば、ギャップ距離の約1/8未満の厚さを有する。
【0033】
上記例示的実施形態の別の変形例では、この方法は、所定のプラズマプロファイルを実現するために、複数の誘導結合素子に電力を選択的に分散させるステップをさらに含んでよい。有利な実施形態では、選択的に電力を分散させるステップは、RFエネルギー源からマッチング回路および少なくとも1つの共振コンデンサを介して複数の誘導結合素子の少なくとも1つにエネルギー供給するステップと、マッチング回路と少なくとも1つの共振コンデンサとの間に接続された電力測定装置を用いて、複数の誘導結合素子の少なくとも1つに供給される有効電力を測定するステップと、を含んでよい。この方法は、電力測定装置を用いて測定された電力に少なくとも基づいてプラズマに供給される有効電力を決定するステップと、プラズマに供給される有効電力に少なくとも部分的に基づいて、RF電力源から複数の誘導結合素子の少なくとも1つに供給されるエネルギーを制御するステップと、をさらに含んでよい。
【0034】
上記例示的実施形態の他の変形例では、処理チャンバの内側に処理ガスを通すステップは、処理チャンバの内側に処理ガスを供給するよう構成された複数のガス供給導管を介して処理ガスを通すステップを含んでよい。複数のガス供給導管の少なくとも1つは、誘導結合素子の近傍に設けられた供給孔を介して処理チャンバの内側にガスを供給可能である。この方法は、プラズマ中の荷電種または中性種の分散を空間的に調節するために、複数のガス供給導管の少なくとも1つにおける処理ガスの流速を制御するステップをさらに含んでよい。
【0035】
上記例示的実施形態のさらに別の実施形態では、処理装置は、誘導結合素子と少なくとも1つの誘電体窓との間に設けられた静電シールドをさらに備えてよい。静電シールドは、たとえば、誘導結合素子のコイル部分に実質的に垂直な方向の、少なくとも1つの誘電体窓上に設けられた薄い金属ストリップのアレイを有する。有利な実施形態では、たとえば、薄い金属ストリップの複数のアレイが少なくとも1つの導電ループにより結合されている。この方法は、処理チャンバの内側の容量結合プラズマを調節するために、少なくとも1つの導電ループに印加される電圧を調整するステップを含んでよい。上記例示的実施形態の別の変形例では、たとえば、静電シールドは誘導結合素子のコイル部分に平行に設けられた平坦なシートを有する。平坦なシートはたとえば少なくとも1つの不連続部分を有する。不連続部分のサイズおよび構造は循環電流を阻止するために十分なものである。
【0036】
本発明の更に別の例示的実施形態は、プラズマ処理装置中で基体を処理する方法に関する。プラズマ処理装置は、少なくとも1つの誘導コイルを有するRFエネルギーアプリケータを備える。誘導コイルはたとえば少なくとも1つの共振コンデンサに接続されて、共振コイル回路を形成する。この方法は、処理装置の処理チャンバの内側の基体ホルダ上に基体を戴置するステップと、処理チャンバの内側に処理ガスを通すステップと、処理チャンバの内側に実質的な誘導プラズマを生成するために、RFエネルギー源からのRFエネルギーをマッチング回路および共振コンデンサを介して少なくとも1つの誘導コイルに送るステップと、実質的な誘導プラズマに供給される有効電力を決定するステップと、実質的な誘導プラズマに供給される有効電力に基づいて少なくとも1つの誘導コイルにおけるRFエネルギーを調節するステップと、を含む。この例示的実施形態の変形例において、プラズマに供給される有効電力は、マッチング回路と少なくとも1つの共振コンデンサとの間に設けられた電力測定装置による電力測定に少なくとも部分的に基づいて決定される。
【0037】
本発明の別の例示的実施形態は、プラズマ中で基体を処理する装置に関する。この装置は、処理ガスを閉じこめる内側空間を有する処理チャンバと、処理チャンバの内側の、基体を保持する基体ホルダとを有する。この装置は、さらに、RFエネルギー源と、RFエネルギー源に接続されたマッチング回路と、マッチング回路に接続された少なくとも1つの共振コンデンサとを有する。この装置は、少なくとも1つの誘導結合素子を有する、処理装置の外側に設けられた誘導アプリケータをさらに有する。誘導結合素子は、少なくとも1つの共振コンデンサおよびマッチング回路を介してRFエネルギー源に接続された少なくとも1つのコイルを有する。この装置は、マッチング回路と少なくとも1つの共振コンデンサとの間の有効電力を測定する電力測定装置をさらに有する。
【0038】
上記例示的実施形態の変形例において、この装置は、電力測定装置により測定される有効電力に少なくとも部分的に基づいて誘導結合素子に印加されるエネルギーを調整するよう構成された制御ループをさらに有する。
【0039】
本発明の更に別の例示的実施形態は、複数の誘導結合素子および複数の供給ガス導管を有するプラズマ処理装置内で基体を処理する方法に関する。この方法は、所定のプラズマプロファイルを実現するために、複数の誘導結合素子に選択的に電力を分散させるステップと、プラズマ中の荷電種および中性種の分散を空間的に調節するために、複数の供給ガス導管の少なくとも1つにおける処理ガスの流速を制御するステップとを含む。
【0040】
本発明のさらに他の例示的実施形態は、プラズマ処理装置とともに使用するための静電シールドに関する。静電シールドは少なくとも1つのコイルを含む誘導結合素子と処理チャンバの内側との間に設けられるよう構成されている。
【0041】
上記例示的実施形態の変形例では、静電シールドは、誘導結合素子の少なくとも1つに垂直な方向に設けられた薄い金属ストリップのアレイを含む。静電シールドは、たとえば少なくとも1つの導電ループを有する。有利な実施形態では、導電ループはたとえば切断されている。この特別な実施形態の変形例では、導電ループは、たとえば、接地されているか、浮動状態にあるか、または、特定の電圧に維持されている。
【0042】
上記例示的実施形態の別の変形例では、静電シールドは、たとえば、誘電結合素子のコイル部分に平行に設けられた平坦なシートを有する。平坦なシートは、たとえば、少なくとも1つの不連続部分を有する。この不連続部分のサイズおよび構成はたとえば循環電流を阻止するのに十分なものである。
【0043】
本発明の、これらのおよび他の特徴、態様および利点は以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲により、よりよく理解されるであろう。添付の図面は、この詳細な説明に含まれかつその一部を構成し、詳細な説明とともに本発明の実施形態を例示し、本発明の基本を説明するために役立つものである。
【0044】
当業者に向けられた、本発明の完全かつ実施可能な開示は、その最良の形態を含め、添付図面を参照して、詳細な説明に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1A】本発明の一実施形態に係るシリンダ状の誘導プラズマ処理装置の簡略化された部分断面図である。
【図1B】本発明の別の実施形態に係るシリンダ状の誘導プラズマ処理装置の簡略化された部分断面図である。
【図1C】本発明の別の実施形態に係るシリンダ状の誘導プラズマ処理装置の簡略化された部分断面図である。
【図2】図1Aに示されるアプリケータ壁の、上方から見た簡略化された断面図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係るチャンバのアプリケータ壁上の薄い誘電体窓に隣接して設けられた全体としてU字状の磁束集中器を有する例示的な誘導結合素子の簡略化された透視図である。
【図3B】図3Aの例示的な誘導結合素子の簡略化された断面図である。
【図3C】チャンバのアプリケータ壁上の厚い誘電体窓に隣接して設けられた全体としてU字状の磁束集中器を有する例示的な誘導結合素子の簡略化された透視図である。
【図4】本発明の例示的な実施形態に係るチャンバのアプリケータ壁上の全体としてE字状の磁束集中器を有する例示的な誘導結合素子の簡略化された透視図である。
【図5】本発明の例示的実施形態に係るシリンダ状の処理チャンバのアプリケータ壁上の簡略化された内側図である。
【図6】本発明の例示的実施形態に係る誘導結合素子に電力を供給する例示的回路図である。
【図7】本発明の例示的実施形態に係る静電シールドを有する誘電体窓に隣接する例示的誘導結合素子の下方から見た図である。
【図8】本発明の別の例示的実施形態に係る静電シールドを有する誘電体窓に隣接した例示的誘導結合素子を上から見た図である。
【図9】本発明の別の例示的実施形態に係る静電シールドを有する誘電体窓に隣接した例示的誘導結合素子を上から見た図である。
【図10】本発明の別の例示的実施形態に係る静電シールドを有する誘電体窓に隣接した例示的誘導結合素子を上から見た図である。
【図11】長方形状のスケーラブルなプラズマ処理装置の簡略化された図である。
【図12】図11のスケーラブルなプラズマ処理装置において用いられる例示的誘導結合素子の拡大図である。
【図13】図11のスケーラブルなプラズマ処理装置において用いられる複数の例示的誘導結合素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の実施形態について以下詳細に記載し、1つまたは複数のその実施例が図面中に例示されている。各例は本発明の説明として記載されているものであり、本発明を限定するものではない。実際、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、本発明において種々の変形および修正をなしうることは当業者には明らかであろう。たとえば、1つの実施形態の一部として例示または記載された特徴を別の実施形態とともに用いてさらに別の実施形態を実現することができる。したがって、本発明は、記載されている特許請求の範囲に含まれるこのような修正および変更およびその均等物を包含するものである。
【0047】
有効かつ拡張可能なRF誘導プラズマ処理を提供する方法および装置が開示される。いくつかの態様では、誘導RFエネルギーアプリケータとプラズマとの結合、および/または、アプリケータからの電力伝送の空間画定は大きく向上される。したがって、開示される方法および装置は、高い電気効率を実現し、寄生容量結合を低減しおよび/または処理の均一性を向上させる。
【0048】
種々の実施形態には、壁により境界された処理チャンバと、チャンバ内に設けられた基体ホルダと、チャンバ壁の外側の誘導RFエネルギーアプリケータとを有するプラズマ処理装置が開示されている。誘導RFエネルギーアプリケータは、1つまたは複数のRF誘導結合素子(ICE)を有する。各誘導結合素子は、アプリケータ壁上の薄い誘電体窓の直近に設けられた磁束集中器を有する。
【0049】
誘導結合素子は、薄い誘電体窓を介して集中器に指向的に磁束線を送り、磁束線の実質的な部分が誘電体窓から発せられ、アプリケータの下のチャンバ空間へと下方へ続く。磁束線はこの空間内で横方向に曲がり、その後上方に曲がり、誘電体窓に戻る。磁束線の大部分は、チャンバの内側から誘電体窓を介して誘導結合素子へと戻る。集中器からの高周波磁束線はしたがって誘導結合素子の直下の領域内のプラズマの一部を囲む。磁束は、この磁束により囲まれた領域の誘導結合されたプラズマ電流に電力を与える起電力を誘導する。
【0050】
有利な実施形態では、導電シールドは誘導結合素子の磁束集中器の少なくとも一部を囲む。導電シールドは、処理チャンバ内に磁束線をさらに集める機能、および、プラズマ処理装置の他の要素、たとえば他の誘導結合素子およびガス供給導管から誘導結合プラズマを分離する機能を有する。さらに、導電シールドはプラズマ処理装置の他の要素から生じる誘導結合素子における電力損失を低減し、プラズマに供給される有効電力の測定を容易とし、処理制御を強化する。
【0051】
本発明は、種々の異なる形態で実施可能である。以下の記載では、説明のため、多くの特定的な詳細が本発明の完全な理解のために記載されている。しかし、開示されている方法および装置は、これらの特定的な詳細によることなく実施可能であることは当業者には明らかであろう。他の例では、概念をあいまいとなることを避けるため、構造および装置が簡略化された形態で示されている。しかし、基本部分はこれらの特定的な詳細なしに種々の異なる形態で実施可能であることは当業者には理解されるであろう。すなわち、本発明の態様は、本明細書に記載された実施形態に限定されるものとみなされるべきではない。
【0052】
明細書における「一(1つの)実施形態」の記載は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。明細書中のいろいろな場所における「一実施形態」等の記載の出現は、すべて同じ実施形態を必ずしも意味するものではなく、他の実施形態と互いに排他的な別のまたは代替的実施形態を意味するものでもない。
【0053】
アプリケータおよび処理チャンバの実施形態について、図1Aに示されるシリンダ状チャンバによりさらに理解される。図2は図1Aに示されるシリンダ状チャンバ1000の線2−2’に沿った上方断面図である。処理チャンバ1000の内側には、静電チャックまたは他の基体ホルダなどの基体ホルダ130上に基体135が戴置されている。アプリケータは、チャンバ1000のアプリケータ壁内の薄い窓1010の上の種々の位置に設けられたICE1020、1070などの複数の誘導結合素子を有する。ICE1020、1070はチャンバ1000のアプリケータ壁上の各ICEの下に位置する環状領域1034、1035を介してRF磁束を循環させる。各ICE1020、1070からの磁束は以下のチャンバの各環状領域1034、1035において起電力を誘導しうる。誘導された起電力は一方で磁束により囲まれた領域の一部におけるプラズマ電流に電力を与える。この電流により、各ICE1020.1070から、下方の各局所化領域1034、1035に電力が効率的に伝送される。
【0054】
多くの実施形態において、供給ガスはアプリケータ壁の複数の供給ガス孔1041を介してチャンバ内に供給可能である。供給孔1041は供給ガス導管1040などの管を介して処理ガスを受ける。基体上方のICE間に散在する孔を介して供給ガスを導入することにより、優れた処理均一性およびプロファイル制御が得られることがわかった。たとえば、図1Aに記載されているように、供給ガス導管1040および供給孔1041は局所化された領域1034の近くに処理ガスを供給する。これにより、局所化領域1034に生成された誘導プラズマにおける中性種および荷電種の生成が強められる。
【0055】
さらに、いくつかの用途では、種々の孔1040を介して複数の適切な流速でガスを供給することにより処理の均一性を改善することができる。たとえば、図1Aおよび/または図2に記載の各供給ガス導管1040および供給孔1041を、予め選択された流速の処理ガスをチャンバ1000に通すように構成することができる。これらの流速は所望の処理パラメタに基づいて調整可能である。たとえば、異なるガス導管1040から処理チャンバ1000への種々の流速の供給ガスを制御することにより、プラズマ処理中の処理ガス中に生成される荷電種および中性種の空間分布を効率的かつ個別に調整することができる。
【0056】
いくつかの処理用途では、処理チャンバの内側空間は低圧に維持される。従来の圧力センサ装置(容量マノメータ、イオンゲージ、液体マノメータ、スピンロータゲージなど)、ポンプ(油圧ポンプ、ドライ機械ポンプ、拡散ポンプなど)、および、圧力制御手段(自動フィードバック制御システムおよび/または従来のマニュアル制御など)を用いて、予め選択されたチャンバ圧を維持することができる。種々の実施形態では、任意の特定の種類のポンプ系、圧力センサ手段または予め選択された圧力を用いることによらない。真空ポンプ系では、アプリケータ壁および横方向チャンバ壁は少なくとも1つの環境における圧力差を支える。
【0057】
アプリケータ壁の薄い誘電体窓領域上の2つの環状ICE1020、1070が、図1A、1B、1C、2に示されている。しかし、アプリケータ壁は、関連する薄い誘電体窓領域に隣接する、予め選択された種々の位置に設けられた、より多数のICEを有して構成されていてもよい。面積に比例してアプリケータ壁上の適切な位置に適切な数のICEを加えることにより、チャンバの断面積を拡張することができる。これらのICEは電力を分散し、処理の均一性を維持するようななり方で配置可能である。いくつかの実施形態では、拡張された面積の新たな増分毎に、比較的一定量の有効平均電力が増加する。
【0058】
アプリケータ壁内の誘電体窓領域との記載は、ICEの直近の薄い窓の部分を意味するものと理解され、この窓を介して、ICEからの磁束線の実質的な部分が比較的均一な方向で、チャンバ内から発せられ、および/または、チャンバ内に戻る。アプリケータ壁および/または薄い窓領域は、種々の異なる方向に構成可能であることは理解されたい。たとえば、図1Aに記載されているように、たとえば、石英またはセラミックなどの薄い誘電体窓ディスク1010が、チャンバの上面全体を覆うよう設けられ、上部層1125を用いて機械的結合により支持されている。
【0059】
種々の実施形態では、図1Bに示されるように、薄い誘電体窓1087上の、ICE1020、1070を設けるために用いられるキャビティを有する単一の誘電体ディスクから、一体型アプリケータ壁1085を構成することができる。この一体とされた比較的厚い領域は、上方のアプリケータ壁1085の上部全体にわたって周囲圧力を支えることができる。
【0060】
種々の実施形態では、薄い誘電体窓1087は比較的狭く、チャンバ内が真空にある場合に外側の周囲圧力を支えるのに十分な機械的強さを有する。したがって、一方で、図1Bの窓領域1087の幅は、十分な安全域をもってチャンバの真空に対して周囲圧力に耐えるのに十分な狭さである。
【0061】
他の実施形態では、チャンバ壁を保持する、比較的薄い負荷のくぼみおよび/またはチャネル内に設けられた、少なくとも1つの薄く比較的狭い一体型の誘電体窓部分が設けられている。くぼみ(溝)内の薄い誘電体窓がICEとプラズマ処理チャンバとの間に設けられている。薄い窓と受束チャネル幅は比較的薄い誘電体窓が周囲圧力に耐えることができるのに十分な薄さである。たとえば、図1Cに示されるように、薄い壁1093内のリップ1089は溝内の薄い誘電体窓1091を支持する。誘電体窓1091はチャンバ内の真空から外側周囲圧力を支えるのに十分な狭さである。
【0062】
いくつかの実施形態では、図1Aに示されるような大きく薄い窓を挟んだ低い圧力差は、窓の上の空間とつながるチャネルに、および/または、ICE(図示せず)のための溝を含む支持構造におけるチャネルに、流体圧力をかけおよび/または真空とすることにより維持可能である。窓を挟んだ適切な圧力差はチャンバ圧の検出に基づいてチャネル内に圧力をかけ、および/または、排気するよう動作する制御ループなどの種々の手段を用いて維持することができる。
【0063】
種々の実施形態では、チャンバプロファイルは、おおよそ、チャンバの上部内側端に設けられた平坦なアプリケータ壁内の誘電体窓上方の少なくとも1つのICEを有する環状のシリンダ状である。しかし、チャンバ形状は特許請求の範囲を限定するものではない。別の実施形態では、チャンバの断面は、長方形、楕円形、多角形等である。
【0064】
別の実施形態では、プラズマの均一性を最適化するよう、ならびに/あるいは、電子密度および/またはエネルギー分散、反応種の濃度プロファイル、供給ガスの分解度および/またはその他などの種々の他の処理特性を最適化するよう動作可能なように、種々のICEは選択的にエネルギー供給される。たとえば、いくつかの実施形態では、種の損失が補償され、チャンバ周囲の周縁壁および他の実施形態に対する拡散損失から濃度が低下されるように、比較的より大きい電力量が処理チャンバの周縁に割り当てられる。また別の実施形態では、ICEの一部および/または全部に送られる電力は、低応力膜のために前駆体種を生成するように、適切なレートおよびデューティでパルス化される。
【0065】
予め定めた電圧、電流および/または電力が適切なマッチングネットワークを用いて種々のICEに印加される。ICEに対する電圧、電流および/または電力制御のための例示的な電力回路および制御ループについて、図6を参照して以下詳細に述べる。さらに、種々のICEはチャンバ表面(基準接地)に比例する予め定めた値を有するDCおよび/またはRF電位で駆動可能である。1つのICEに印加される電流および/または電圧は、たとえば、異なるICEおよび/またはチャンバ表面に印加される電流および/または電圧のいずれかに比例する予め定めた位相を有する。1つまたは複数のICEに印加される電圧の大きさおよび/または位相は、予め定めた電子および/またはイオンエネルギーおよび/または数分散特性を実現するために選択することができる。さらに、大きさおよび位相は、チャンバ内の種々の導電性表面に比例して予め定めたプラズマ電位を実現するために選択することができる。多くの実施形態では、チャンバ表面のエネルギー粒子の衝突を避けるために比較的低いプラズマ電位が選択される。たとえば、各ICEに印加される電圧は、チャンバ接地などの共通基準電位に比例して平衡化される。平衡化は、ICEとプラズマとの間の容量結合およびチャンバに関するDCプラズマ電位オフセットを避けおよび/または緩和するのに役立つ場合がある。しかし、いくつかの用途において、1つまたは複数のICEに個別に、または、異なる複数のICEに印加される電圧は、互いに対しておよび/またはチャンバに対して選択的に非平衡化される。選択されたRF電圧の非平衡は、処理における、プラズマと、ウェハ、チャックおよび/または他のチャンバ表面との間の予め定めた時間平均DC電圧オフセットを実現するために役立つ場合がある。またさらに、電力波形特性、たとえば、振幅変調(パルス化を含む)、周波数変調および/または位相変調が、用途に応じて、1つまたは複数のICEに個別に、または、異なる複数のICEの間で異なるように選択的に印加されてもよい。たとえば、高周波RF励起の適切なパルス化は、シリコン窒化膜を堆積するプラズマに関し、化学的および/または機械的性質を修正するために用いることができる。
【0066】
磁束集中器を有するICEが、ICE直下の内側チャンバ内に比較的指向的にかつ深く磁束を送ることができることがわかった。さらに詳細には、ICEから薄い窓および誘電体窓の直下を介してチャンバ内に放射される磁束の指向性は、磁束集中器および十分に薄い窓によって制御可能である。
【0067】
磁束集中器およびこれに隣接する、アプリケータ壁上の薄い窓を有するICEの相乗作用は、さらに図3Aおよび3Bの簡略化された図によりさらに理解される。図示のように、ICE8070は磁束集中器8030および平坦なコイル8060を有する。ICE8070はさらにその境界領域の少なくともいくつかの部分(たとえばICE8070の上および/または横方向の周縁領域)の上に高導電性シールド8050を有する。
【0068】
磁束集中器8030は、強磁性金属、フェライトおよび/またはその他の透磁性材料から構成可能である。種々の実施形態では、たとえば、磁束集中器8030は真空に対して少なくとも10の透磁性を有する透磁性材料を含む。図3Aおよび3Bにおいて、導電シールド8050は、ICE8070の上および/または横方向の領域の少なくとも一部を覆うよう設けられている。種々の実施形態では、導電シールドはICEを収容する構造により実現可能である。たとえば、図1Aに関して、ICE1020および/または1070の回りの溝を画定する部材1025および/または1125の近い部分は、たとえば、アルミニウム、銅、銀および/または金などの高導電性金属から構成されている。種々の実施形態では、部材1025および/または1125は導電性金属材料であってよい。
【0069】
透磁性材料は、集中器の媒体中の磁束線に関して磁性経路抵抗を低減する。したがって、磁束線8085の上方部分は集中器内に全体として閉じこめられることがわかり、一方で、比較的少量の漏れが生じうる。上述のような高導電性シールドはICEにおける構造から発せられる電界線および磁界線に対するバリアとして効果的であることがわかった。種々の実施形態では、ICEの種々の部分を覆うシールドにより、磁束の閉じこめが向上されることがわかった。さらに、高導電性シールドは種々の実施形態において寄生電力損失および/または電磁干渉を低減および/または排除するために役立つ。
【0070】
ICE8070は、コイル8060の末端に印加される高周波電圧および/または電流によりエネルギー供給される。種々の実施形態では、コイルは平坦であってよい。薄い誘電体窓8020に隣接する平行導電体を有する平坦なコイル8060は、特に有効であることがわかった。コイル8060を流れる高周波電流は、処理チャンバ内の誘電体窓8020に隣接する局所化空間8080を介して循環する磁束線8085を刺激することができる。
【0071】
種々の実施形態では、コイル8060を通る高周波電流は、磁束集中器8030の第1の一時的極領域から薄い窓8020の一領域を介してチャンバ内に全体として発せられる磁束線8085に電力供給するよう作用可能である。磁束線8085はチャンバ内の窓領域に隣接する局所化空間8080を介して循環し、第1の極領域8035とは異なる第2の一時的極領域8037に向かう比較的均一な方向で窓領域に戻る。磁束集中器8030は、全体として第1の極領域8035から予め定めた第1の方向8071(図3B)に磁束線8085を放射し、全体として予め定めた第2の方向8072(図3B)に、循環する磁束線を第2の極領域8037に戻すように構成可能である。
【0072】
磁束がICEからこのように放射される場合、優れた電力結合および高い電力伝送効率が実現される。さらに、磁束集中器から循環される磁束はICEの直下のプラズマの空間において選択的にプラズマ電流を誘導しうるため、電力はICEからこの空間に直接伝送可能である。したがって、プラズマ電流および電力は、ICEから処理チャンバ内の予め選択された局所化空間に配置することができる。
【0073】
種々の実施形態では、磁束集中器の一時的極面8035、8037が薄い窓に全体的に面し、内側チャンバ空間下方の最小有用距離tw内であるようにすることにより、薄い窓チャンバを介して処理チャンバ内に磁束が発せられ、薄い窓を介してチャンバから戻るようにすることができる。図3Aに関して、集中器の極面8035、8037は、薄い窓8020に全体として面し、内側からほぼ1つの窓の厚さ8025の位置にある。最小有用距離twの値は、集中器の一時的極面8035、8037の間のギャップ距離(ギャップ距離8039)に依存することがわかった。
【0074】
たとえば、図3Aは、磁束集中器8030の一時的極面8035、8037がチャンバ内側の最小有用距離内にある場合を示す。図示のように、磁束8085の実質的な部分は、第1の極領域8035から発せられ、誘電体窓8020を介して処理チャンバの内側に入り、処理チャンバの内側から薄い誘電体窓8020を介して第2の極領域8037に戻る。本明細書において、磁束の実質的な部分とは、ICEから発せられる全磁束の少なくとも約10%を意味する。
【0075】
これに対し、図3Cには、磁束集中器8030の極面8035、8037がチャンバ内側の最小有用距離内に無いように、厚い誘電体窓8020に隣接して配置された磁束集中器8030を示す。図示のように、磁束線8085の一部は、誘電体窓8020を介してチャンバの内側に入らない。むしろ、磁束8085の多くは誘電体窓8020の内側にあるままであり、チャンバの内側に達することはない。
【0076】
図3Aに関して、一時的極面8035および8037の間のギャップ距離Dg(磁束が放射される領域とこれを受ける領域との間の境界から測定される)は、参照番号8039で示されている。twがチャンバの内側から距離約Dg/4未満であるとき(たとえばICEとチャンバの内側8020との間の距離が一時的極面の間の距離の1/4以下であるとき)、磁束は薄い窓を介してチャンバの内側に発せられ、チャンバの内側から薄い窓へ戻ることができることがわかった。より好ましくは、薄い窓領域へ入る全磁束のうちの大部分を発しおよび/または受けるICEの各連続領域は、チャンバの内側空間から約Dg/8の距離tw未満である。しかし、約Dg/2の距離twでも、許容される結果が得られる。
【0077】
図3Aおよび3Bに関する種々の実施形態では、磁束集中器はU字状および/またはC字状を有する。この構成では、磁束は、U字状および/またはC字状の集中器の一方の脚部を終端する領域から全体として放射され、他方の脚部において終端する領域において受けられる。両脚部の極領域の端部は、たとえば、示されるように、アプリケータ壁上の薄い窓に平行である。別の構成では、磁束集中器は、薄い窓に面した、磁束を放射するおよび/または磁束を受ける複数の領域を有する。
【0078】
ICEから窓を介して窓の直下でチャンバ内に放射される磁束の指向性は、磁束集中器、磁束集中器周囲の導電シールドおよび誘電体窓の形状および物理特性に依存する。磁束集中器を有するICEは、誘電体窓を介してICE直下でチャンバ内に磁束を深く放射することができることがわかった。磁束集中器の回りの材料もまた重要な役割を有する。この材料中に誘導されうる電流は磁束に影響し、材料の導電性に依存して、損失は性能を向上させまたは性能を低下させる場合がある。たとえば、高導電性シールドが少なくとも部分的に磁束集中器を囲む場合には、表面に誘導される電流はなんら大きな損失をもたらさないものの、磁束集中器内側の磁束を増大させ、したがって、誘電体窓に隣接するプラズマ内の磁束を増大させることができる。一方で、導電性が低い場合には、磁束への影響は低い場合もあるが、シールド中に誘導される損失も大きくなる可能性がある。最後に、磁束集中器の材料および形状には、好ましくは、高い磁束密度、低い損失係数、および、U字状またはC字状の磁束集中器の基部における比較的広いフットが含まれる。そうでなければ、磁束線は、好ましい垂直な方向に近い角度で出入りせず、磁束集中器を広い角度で分散して出入りすることになる。
【0079】
異なる実施形態が、図4により理解される。図4には、平坦な平行コイル巻線8060、8062と、E字状の磁束集中器8030とを有するICE8070を開示されている。第1のRF電流が平坦なコイル巻線8060へと流され、第2の反相RF電流が平坦なコイル巻線8062へと流される(たとえば、各巻線への電流は位相が180°ずれている)。たとえば、巻線8060中の電流から得られる磁束線8085の一群は、第1の極領域8035から放射されおよび/または第2の極領域8037の一部において受けられる。たとえば、巻線8062中の電流から得られる磁束線8095の他の一群は、領域8075から放射されるか、および/または、第2の領域8037の一部において受けられる。磁束線の各群は、ICE8070下の各空間においてプラズマ電流8082、8092に電力を供給可能な、チャンバ内に起電力を誘導する。これらの誘導プラズマ電流8082、8092はICE下の薄い窓領域の下の各局所化空間、および、磁束集中器8030のいくつかの集中器極面の間にある。
【0080】
ここで、隣接する一時的極面の間の距離Dgには参照番号8035が付されている。また、チャンバ内側から極面を分ける距離は、おおよそ、薄い窓8025の厚さである。この構成では、極面8035および/または8075からの磁束は、極面から薄い窓8020を介して処理チャンバ内側に放射されうる。有利な構成では、薄い窓8020は約Dg/4未満、より好ましくはDg/8未満の厚さ8025を有する。
【0081】
一般に、外側のアプリケータとチャンバ内のICPとの間の比較的より高い結合係数は、アプリケータとチャンバ内側との間の距離が低減されるときに実現される。種々の実施形態では、薄い窓により、アプリケータは処理ガスに比較的近いものとされ、そこで処理チャンバ内にICPが維持される。アプリケータとICPとの間の比較的高い結合係数により、一般的に、より効率的な電力伝送が得られる。
【0082】
別の実施形態が図5により理解される。図5には、シリンダ状の処理チャンバ内のアプリケータ100を内側を下方から見た図が示されている。誘導アプリケータ100は、外側のリングにフェライトコア様の磁束集中器160を有する複数のICEを備える。同様の磁束集中器のそれぞれは、チャンバ空間に面する側に、円状の断面と、U字状のチャネル173とを有する。平行なコイル巻線180はチャネル173を介してコア内に延びている。各集中器のチャネル173は、図1A、1B、1Cに関して示したような、軸対象の環状ICEと実質的に類似する磁束線およびプラズマ電流を実現できるようなやり方で配置されている。誘導アプリケータ100はさらに、磁束集中器の中央脚部166と外側脚部165のとの間の溝における平坦な平行コイル導電体182を有する中心軸対称なICEをさらに有する。
【0083】
ICEおよびその支持構造の上には薄いディスク状の誘電体窓(明らかではない)が設けられる。薄い誘電体窓は種々のICEおよび平坦なコイル巻線と接触している。ガスが薄い窓中の供給ガス孔170を介してチャンバの内側190に供給可能である。薄い窓の厚さは、磁束集中器の磁束を放射する領域と受ける領域との間の距離(極ギャップ)160、166、165の約1/10未満である。したがって、各極面は、チャンバの内側から、極面間のギャップ距離の約1/10の距離の内にある。この実施形態は、各ICEから隣接する薄い窓領域を介して指向的に磁束線を送り、チャンバの内側の各局所化空間を介して磁束線を循環させ、これらの磁束線がICEに薄い窓領域を介して全体として垂直に戻るよう作用可能である。循環する磁束線は、外側の磁束集中器の配列された溝における平坦なコイル巻線の下の局所化チャンバ空間における外側プラズマ電流リングと、内側のICEの磁束集中器の溝内の平坦なコイルリング下の内側プラズマ電流リングと、を誘導する。
【0084】
種々の実施形態では、ICEは選択的にエネルギー供給可能である。いくつかの実施形態では、選択された位相関係を有する、異なる選択された量の電力は、アプリケータの種々の誘導結合素子に結合可能である。さらに、いくつかの実施形態では、基体に対する処理の均一性は、適切な量のRF電力を種々のICEに選択的に供給することにより実現可能である。たとえば、いくつかの実施形態には、薄い窓の下の種々の局所化領域の空間内に種々のICEから選択された量の電力を供給するよう作用させるやり方の制御ループに接続された処理診断測定が含まれる。
【0085】
図6は、ICEに電力を供給するための電力回路および制御ループの例を示す。図示されるように、RFエネルギー源610はTLT(伝送線路トランス)620または任意の他の種類のトランス(図示のレギュラートランス)を有するマッチングネットワークを介して、ICE640に電力を供給する。共振コンデンサ630はトランス620とICE640との間に接続されている。RFエネルギーがICE640に印加されるとき、実質的な誘導結合プラズマ650が処理チャンバ内に生成される。共振コンデンサ630は、基体の処理中、コンデンサ630のリアクタンスがICE640のリアクタンスおよび誘導結合プラズマを打ち消すようなサイズとされかつ配置されている。上記駆動回路を用いることにより、プラズマ650に供給される有効電力に基づいてICE640に供給される電力を監視し、制御することができる。
【0086】
システムに供給される電力を測定するすべての方法は、不正確さにより悪影響を受ける。既存の処理装置は、典型的には、マッチングネットワークに設けられた電力測定装置を用いて電力を監視する。この電力測定装置は、プラズマに供給される電力、ICEにおける損失、チャンバ外側のアンテナケージにおける損失、チャンバの内側における損失を捕捉する。これらのパラメタすべては異なるチャンバについて異なり、たとえば、ICEが置き換えられる毎に、および、異なるチャンバ毎に、処理制御パラメタの調整が必要となる。さらに、マッチングネットワークにおいて行われる測定は、有利には、任意の良好な(高Q値)コイルのためのマッチングネットワークにおける電圧と電流の波形の間の大きな位相角の差(90°に近い)により、ICEに印加される電流および電圧の波形に感度を有する。
【0087】
図6の電力回路および制御ループを用いることにより、上述の不具合無く、プラズマに供給される有効電力の効率的な監視を行うことができる。図示されるように、電流センサ662および電圧センサ664を有する電力測定装置660は、トランスマッチングネットワーク620と共振コンデンサ630との間の位置における電圧および電流を測定する。共振周波数に近い周波数を用いるとき、この位置では電流と電圧の位相のずれは0°に近く、電圧および電流の波形の位相における小さな変化は電力測定に実質的に影響せず、不規則な波形の場合でも正確である。
【0088】
さらに、共振コンデンサ630はICE640とプラズマ650とのインダクタンスと共振するため、電流はICEおよびプラズマの積極的抵抗によってのみ決定される。任意の要素(プラズマ、コイル、他の損失性の要素たとえばシールドで囲まれたICE)に供給される電力は、したがって単純に積Icoilである。磁束集中器とICEを囲む高導電性シールドとにより、ICEの壁における損失は小さく、コイルにおける損失からプラズマにおける損失を分離することはより容易となる。ICEを少なくとも部分的に囲む高導電性シールドを用いることにより、ICEは隣接する誘導結合素子および供給ガス導管からの干渉も低減させ、電力測定の制度をさらに向上させる。
【0089】
図6に示すように、電圧センサ664により行われる電圧測定および電流センサ662により行われる電流測定は、信号計算器670に対して提供される。信号計算器670は、演算増幅器(たとえばAD811)および広帯域乗算器(たとえばAD835)等の従来のアナログデバイスに基づいてよい。増幅器(いくつかの場合には単純な分割器を用いることができる)は、任意の瞬間tにおける信号RcoilI(t)を生成し、ついで、乗算器がV(t)−RcoilI(t)に電流I(t)を乗ずる。リアルタイムにプラズマに供給される電力に比例する積I(t)*[V(t)−RcoilI(t)]から準DC成分を抽出するためである。単純な積分RC回路を、RF成分を除去し、DC成分のみを残すために用いることができる。電流はしたがってRF周期の各部において即時に測定され、波形の形状に感度を有しない測定となる。有利な実施形態では、Rcoilは、ネットワークアナライザを用いて、プラズマを用いることなく、かつ、電力回路を共振周波数に調整することなく、決定可能である。
【0090】
プラズマに供給される有効電力を決定した後、信号計算器670は、プラズマに供給される有効電力を表す有効電力信号680を発する。この有効電力信号680は、ICEに供給される電力へのマニュアルまたは自動での調整のための制御ループにより用いることができる。プラズマに供給される有効電力の測定に基づいてICEに送られる電力を調整することにより、プラズマ処理のより正確かつ効率的な制御を行うことができる。
【0091】
このセンサ構成は、マッチング器の上流の電力を測定する、通常用いられるシステムと異なり、単一の電力発生器およびマッチング器からの複数の誘導結合素子を駆動する場合に、特に有利である。
【0092】
ICEは、ICE中の誘導素子の寄生容量結合による、無視できない量の容量結合プラズマを生成しうる。このような容量結合は望ましくない場合があり、処理の不均一性とアプリケータ窓のスパッタリングにつながる。ICEコイルのプラズマへの容量結合を低減するために、静電シールドまたはファラデーシールドがしばしば用いられる。既存の静電シールドは、プラズマへのICE結合を大きく低減させ、RF電力における大きな損失を生じ、このことは誘導結合プラズマの伝送効率を低減させてしまう。
【0093】
図7、8、9、10は、本発明に従うプラズマ処理装置における容量結合を低減するために使用可能な改善された静電シールドの種々の例示的実施形態を示す。図7は誘電体窓710に隣接して配置された例示的なICE740を下方から見た図を示す。ICE740はたとえばコイルおよび磁束集中器を有する。しかし、当業者には、本明細書中に記載の開示により、本明細書に記載される静電シールドの実施形態が、本発明の範囲から離れることなく、いかなるICEとともに用いることができることを理解すべきである。
【0094】
静電シールド720は誘電体窓710の上に設けられている。静電シールド720は任意の導電性材料、たとえば、銅、アルミニウムまたは他の適切な導電体から構成可能である。静電シールド720は任意の適切な処理により誘電体窓710に取り付けることができる。たとえば、静電シールド720は窓に、ネジ、接着剤、堆積により取り付け可能である。有利な実施形態では、静電シールド720は厚膜の堆積または自己粘着性の銅箔またはアルミニウム箔を用いて誘電体窓に取り付けることができる。
【0095】
静電シールド720は、全体として、誘導結合素子740のコイルに実質的に垂直な方向に設けられた薄い金属ストリップ722のアレイから構成される。薄い金属ストリップ722は、プロセスチャンバ内から電界を効果的に遮蔽するのに十分なように互いに近くに配置されている。静電シールド720は異方性導電性の条件をほぼ満たす。すなわち、静電シールド720の導電性は、誘導場の方向においてほぼ0であり、誘導場に垂直でありかつプラズマ表面に正接する方向において実質的に大きさを有する。
【0096】
図7に示されているように、薄い金属ストリップ722のアレイは、場のアプリケータの外側の導電ループ725と接続可能である。図7は2つの導電ループ725を示すが、より多くのまたはより少ない導電ループを本発明の範囲から離れることなく用いることができる。たとえば、有利な実施形態では、1つの導電ループは薄い金属ストリップのアレイを接続することができる。導電ループの位置も修正可能である。たとえば、導電ループは薄い金属ストリップのアレイのいずれかの端に沿って延びている。
【0097】
有利な実施形態では。導電ループ725はたとえば接地または基準電圧に接続されている。別の実施形態では、静電シールド720を介してわずかの量の容量結合を生成するため、導電ループ725は浮動状態に維持される。わずかな容量結合はプラズマの点火または持続を助けるために、または、意図的にプラズマ中に不均一性を導入するために望ましい場合がある。別の実施形態では、導電ループ725はたとえば電圧源に接続される。導電ループに印加される電圧は、静電シールドを介して容量結合を制御するために調整可能である。
【0098】
図8は、ギャップ727を形成するために導電ループ725が切断された静電シールド720の実施形態を示す。図8の静電シールド720は閉じた導電経路を有さず、したがって、RF電流を循環しない。これはRF電力損失の低減のために用いられる。図8の静電シールド720はコイルの一端が接地された場合の、非平衡化された複数巻線のアンテナコイルの遮蔽(screening)に適している。この場合、静電シールド720は接地された中間点を有する閉じてない単一の巻線として作用可能である。誘導結合起電力の半分に等しいが反対の位相のRF電圧は、ギャップ727を隔てる静電シールド720の両末端に進む。結果として、プラズマへの容量結合が低減される。
【0099】
図9は導電ループを含まない静電シールド720の実施形態を示す。この特定の遮蔽は、スパッタリングをなくすために容量結合を低減するためのみ十分であるが、いくぶんかの容量結合を残し、わずかなアジムス方向のプラズマ不均一性を形成し、プラズマを点火し、保持する。図9の静電シールド720は平衡化されたICEと関して特に効果的な場合がある。平衡化されたICEにより、金属ストリップ722のアレイの各金属ストリップは、プラズマからICEコイルを遮蔽するための仮想的な接地として機能する。
【0100】
図10は本発明の実施形態において用いることのできる静電シールド730のさらに別の実施形態を示す。静電シールド730は誘電結合素子のコイル部分に平行に延びる平坦なシートを有する。静電シールドは好ましくは誘電体窓720の上に設けられ、静電シールドは誘導結合素子の磁束集中器の極面の間に位置し、極面は覆われていない。図示のように、平坦なシートは、少なくとも1つの不連続部分735を含む。不連続部分735は好ましくは静電シールド730における循環電流を阻止するようなサイズとされ、寸法決めされている。1つの不連続部分735が図10に示されているが、より多くのまたはより少ない不連続部分が所望により含まれてよい。図10の静電シールド730は容量結合を十分に遮蔽しないものの、誘電体窓のスパッタリングは大きく低減される。さらに、容量結合のいかなる不均一性も、静電シールド730により影響されない。
【0101】
大きな長方形の基体についての拡張可能な処理の実施形態が図11および12により理解される。図11の上側は、長方形のチャンバの内側空間の上方の長方形の上方アプリケータ壁1695上の長方形のアレイにおける薄い誘電体ディスク状の窓の上方に設けられた種々のICEの上面図を示す。各ICEはU字状の磁束集中器1610を通る溝中に延びる平坦なコイル導電体1602を有する。種々の薄い誘電体ディスク窓1690は内側チャンバ空間上方の金属製の上方アプリケータ壁1695の下方表面に隣接するリップ上に支持されている。薄い誘電体ディスク窓1690はU字状の磁束集中器1610の脚部の間のギャップの約1/10より薄い。コイル部分の対応する導電体1602と隣接するICEの対とは相互に接続されてもよい。
【0102】
種々の実施形態では、ICEは別のやり方で接続および/または電力供給可能である。図11には、図示の直列−並列ICE接続の部分のみが示されている。他の実施形態では、ICEは異なるやり方で電力供給可能である。たとえば、種々のICEのそれぞれにRF電力が選択的に供給されてもよい。さらに別の実施形態では、複数のICEは並列に、直列に接続されるか、または、これらは直列接続および並列接続の種々の組み合わせに組み合わせてもよい。特許請求の範囲はICE接続の電力供給の方法により限定されない。さらに、アプリケータ壁には多数の供給ガス孔があってよく、種々のやり方でこれらの孔を介して処理ガスが選択的に導入されてもよい。
【0103】
本発明に対するこれらのおよび他の修正および変更は、添付の特許請求の範囲により詳細に記載された本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、当業者によってなしうる。さらに、種々の実施形態の態様が全体または一部において交換可能であることは理解されるべきであろう。さらに、当業者は上述の記載は、例示のみによるものであり、添付の特許請求の範囲にさらに記載された発明を限定することを意図しないことは理解されるであろう。
【符号の説明】
【0104】
1000 処理チャンバ、 1020、1070 ICE、 1091 誘電体窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ中で基体を処理する装置であって、
処理ガスを閉じこめる内側空間を有する処理チャンバと、
前記処理チャンバの内側の、基体を保持する基体ホルダと、
前記処理チャンバの壁の一部を構成する少なくとも1つの誘電体窓と、
前記処理チャンバの外側に設けられた誘導アプリケータと、を備え、
前記誘導アプリケータは、少なくとも1つの誘導結合素子を有し、
前記少なくとも1つの誘導結合素子は、コイル部分と、透磁性材料から構成される磁束集中器と、を有し、
前記磁束集中器は第1の極領域および第2の極領域を有し、
前記第1の極領域および前記第2の極領域は全体として前記少なくとも1つの誘電体窓に面し、
前記誘導結合素子は、前記磁束集中器を少なくとも部分的に囲む導電シールドを有し、
前記誘導結合素子がエネルギー供給されたとき、RF周波数の磁束が前記磁束集中器から直接前記処理チャンバの内側に放射され、前記磁束の実質的な一部は前記第1の極領域から前記少なくとも1つの誘電体窓を介して前記処理チャンバの内側に発せられ、かつ、前記磁束の実質的な一部は前記処理チャンバの内側から前記少なくとも1つの誘電体窓を介して前記磁束集中器の第2の極領域に戻る、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記誘導アプリケータは複数の誘導結合素子を有する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記第1の極領域および前記第2の極領域はギャップ距離分だけ隔てられており、前記第1の極領域および前記第2の極領域は前記処理チャンバの内側から前記ギャップ距離の約1/2未満の位置に設けられている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記第1の極領域および前記第2の極領域は前記処理チャンバの内側から前記ギャップ距離の約1/4未満の位置に設けられている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記第1の極領域および前記第2の極領域は前記処理チャンバの内側から前記ギャップ距離の約1/8未満の位置に設けられている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの誘電体窓は、前記ギャップ距離の約1/2未満の厚さを有する、請求項3記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの誘電体窓は、前記ギャップ距離の約1/4未満の厚さを有する、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの誘電体窓は、前記ギャップ距離の約1/8未満の厚さを有する、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記静電シールドは、アルミニウム、銅、銀または金から構成されている、請求項1から8のいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、処理ガスを前記処理チャンバの内側に供給するよう構成された複数のガス供給導管をさらに備え、
前記複数のガス供給導管の少なくとも1つは、前記誘導結合素子の近傍に設けられた供給孔を介して前記処理チャンバの内側に処理ガスを供給可能であり、
前記導電シールドは、前記誘導結合素子のコイル部分を前記複数のガス供給導管の少なくとも1つから分離する、
請求項1から9のいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記複数のガス供給導管の少なくとも1つは、予め選択された流速の処理ガスを前記処理チャンバの内側へ通すよう制御されるよう構成されている、請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記誘導結合素子は、マッチング回路および少なくとも1つの共振コンデンサを介してRFエネルギー源に接続されており、
前記装置は、前記マッチング回路と前記少なくとも1つの共振コンデンサとの間に接続された電力測定装置を備え、
前記装置は、前記電力測定装置から受信した信号に少なくとも部分的に基づいて、前記誘導結合素子に供給されるRF電力を制御するよう構成された制御ループを備える、
ことを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記装置は前記誘導結合素子と前記処理チャンバの内側との間の、前記少なくとも1つの誘電体窓上に設けられた静電シールドをさらに備える、請求項1から12のいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
前記静電シールドは、前記少なくとも1つの誘電体窓上に設けられた薄い金属ストリップのアレイを有し、
前記薄い金属ストリップのそれぞれは前記誘導結合素子のコイル部分に実質的に垂直な方向に設けられている、
請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記薄い金属ストリップのアレイは導電ループにより接続されている、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記導電ループは切断されている、請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記導電ループは接地されている、請求項15記載の装置。
【請求項18】
前記導電ループは浮動状態にある、請求項15記載の装置。
【請求項19】
前記静電シールドは前記誘導結合素子のコイル部分に平行に設けられた平坦なシートを有し、
前記平坦なシートは少なくとも1つの不連続部分を有する、
請求項13記載の装置。
【請求項20】
処理装置の処理チャンバの内側の基体ホルダ上に基体を戴置するステップと、
前記処理チャンバの内側に処理ガスを通すステップと、
前記処理チャンバ内を100トール未満の予め定めた圧力に維持するステップと、
前記処理チャンバの内側に実質的な誘導プラズマを生成するために、前記処理チャンバの外側の少なくとも1つの誘導アプリケータをRF電力でもってエネルギー供給するステップと、
前記処理チャンバ内で誘導プラズマにより前記基体を処理するステップと、
を含む基体の処理方法であって、
前記処理チャンバは前記処理チャンバの壁の一部を構成する少なくとも1つの誘電体窓を備え、
前記誘導アプリケータは、少なくとも1つの誘導結合素子を有し、
前記少なくとも1つの誘導結合素子は、コイル部分と、透磁性材料から構成される磁束集中器とを有し、
前記磁束集中器は、第1の極領域および第2の極領域を有し、
前記第1の極領域および前記第2の極領域は、全体として前記少なくとも1つの誘電体窓に面し、
前記誘導結合素子は、前記磁束集中器の近傍に設けられた導電シールドを有し、
前記誘導結合素子は、前記磁束集中器から前記少なくとも1つの誘電体窓を介して前記処理チャンバの内側にRF周波数の磁束を直接循環させ、前記磁束の実質的な一部は前記第1の極領域から前記少なくとも1つの誘電体窓を介して前記処理チャンバの内側に発せられ、かつ、前記磁束の実質的な一部は前記処理チャンバの内側から前記少なくとも1つの誘電体窓を介して前記磁束集中器の前記第2の極領域に戻る、
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記誘導アプリケータは、複数の誘導結合素子を有する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記第1の極領域および前記第2の極領域はギャップ距離分だけ隔てられており、前記第1の極領域および前記第2の極領域は前記処理チャンバの内側から前記ギャップ距離の約1/2未満の位置に設けられている、請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
前記第1の極領域および前記第2の極領域は前記処理チャンバの内側から前記ギャップ距離の約1/4未満の位置に設けられている、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記第1の極領域および前記第2の極領域は前記処理チャンバの内側から前記ギャップ距離の約1/8未満の位置に設けられている、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの誘電体窓は、前記ギャップ距離の約1/2未満の厚さを有する、請求項22記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの誘電体窓は、前記ギャップ距離の約1/4未満の厚さを有する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの誘電体窓は、前記ギャップ距離の約1/8未満の厚さを有する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
所定のプラズマプロファイルを実現するために、前記複数の誘導結合素子に電力を選択的に分散させるステップをさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項29】
前記選択的に電力を分散させるステップは、
RFエネルギー源からマッチング回路および少なくとも1つの共振コンデンサを介して前記複数の誘導結合素子の少なくとも1つにエネルギー供給するステップと、
前記マッチング回路と前記少なくとも1つの共振コンデンサとの間に接続された電力測定装置を用いて、前記複数の誘導結合素子の少なくとも1つに供給される有効電力を測定するステップと、
前記電力測定装置を用いて測定された電力に少なくとも基づいてプラズマに供給される有効電力を決定するステップと、
前記プラズマに供給される有効電力に少なくとも部分的に基づいて、前記RF電力源から前記複数の誘導結合素子の少なくとも1つに供給されるエネルギーを制御するステップと、
を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記処理チャンバの内側に処理ガスを通すステップは、
前記処理チャンバの内側に処理ガスを供給するよう構成された複数のガス供給導管を介して処理ガスを通すステップであって、前記複数のガス供給導管の少なくとも1つは、前記誘導結合素子の近傍に設けられた供給孔を介して前記処理チャンバの内側にガスを供給する、ステップと、
プラズマ中の荷電種または中性種の分散を空間的に調節するために、前記複数のガス供給導管の少なくとも1つにおける処理ガスの流速を制御するステップと、
をさらに含む、請求項20から29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記処理装置は、前記誘導結合素子と前記少なくとも1つの誘電体窓との間に設けられた静電シールドをさらに備え、
前記静電シールドは、前記誘導結合素子のコイル部分に実質的に垂直な方向の、前記少なくとも1つの誘電体窓上に設けられた薄い金属ストリップのアレイを有する、
請求項20から30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
前記薄い金属ストリップの複数のアレイが少なくとも1つの導電ループにより結合されており、
前記方法は、前記処理チャンバの内側の容量結合プラズマを調節するために、前記少なくとも1つの導電ループに印加される電圧を調整するステップを含む、
請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記処理装置は、前記誘導結合素子と前記少なくとも1つの誘電体窓との間に設けられた静電シールドをさらに備え、
前記静電シールドは前記誘導結合素子のコイル部分に平行に設けられた平坦なシートを有し、
前記平坦なシートは少なくとも1つの不連続部分を有する、
請求項20から32のいずれか1項記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−502696(P2013−502696A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525716(P2012−525716)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/046110
【国際公開番号】WO2011/022612
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(502278714)マットソン テクノロジー インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】Mattson Technology, Inc.
【住所又は居所原語表記】47131 Bayside Parkway, Fremont, CA 94538, USA
【Fターム(参考)】