説明

調整可能なガイド装置

調整可能なガイド・ベーンを有するガイド装置は、調整可能なガイド・ベーンための駆動装置を備えている。この駆動装置では、円筒状の駆動ピン(6)及び調整レバー(5)は、互いに適合された面の各々の対(62)を有し、これらの面は、作動中に、ガイド・ベーンの調整の際に互いに摺動する。ガイド・ベーンを調整するために、調整リング(4)が動かされる。このことによって、調整リングに取り付けられた駆動ピンは、調整レバーの縦長の溝部(51)の中で摺動し、力を調整レバーにかける。この解決策によって、容易に取り付けられる安価で且つ丈夫な構造物が生じる。相応に低い表面応力及び従って著しく減じられた磨耗を有する、面の支持が、結果として生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスが加えられる流体機械の分野に関する。
本発明は、調整力を、調整リングから、排気ターボチャージャの排気タービンまたはコンプレッサの調整可能なガイド装置の回転自在に取り付けられたガイド・ベーンのベーン・シャフトへ伝達するための装置、このような伝達装置を有するガイド装置、このようなガイド装置を有するコンプレッサ及び排気タービン、ならびにこのようなコンプレッサおよび/またはこのような排気タービンを有する排気ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
排気ターボチャージャは、内燃機関の出力を増大させるために用いられる。新式の内燃機関の場合、可変の操作条件への排気ターボチャージャの適合は、益々難しくなる。いわゆる可変のタービンジオメトリおよび/またはコンプレッサジオメトリは、適合のための広く普及した可能性を与える。可変のタービンジオメトリの場合、ガイド装置のガイド・ベーンは、タービンの出力需要に従って、タービン・ホイールの上流で、流れに対しほぼ急角度に整列されている。可変のコンプレッサジオメトリの場合、複数のディフューザ・ベーンは、コンプレッサ・ホイールの下流で、流れに対しほぼ急角度に整列されている。ベーンの調整は、通常、いわゆる調整レバーを介してなされる。調整レバーは、排気ターボチャージャの軸に対し同軸に設けられた調整リングによって動かされる。遠心タービンまたは遠心コンプレッサの場合、ガイド・ベーンまたはディフューザ・ベーンは、通常、シャフト軸に対し平行にある。ガイド・ベーンまたはディフューザ・ベーンのシャフトは、ハウジング中で、好ましくは2重に取り付けられ、二つの支持点の間でベーン・シャフトに作用する調整レバーによって回転される。調整レバーが、調整リングに形成された複数のリセスによって直接動かされることが意図されるとき、調整リングの端部は、例えばEP 1 520 959に示すように、円筒状に形成されねばならない。その目的は、調整リングが溝部に挟まらないようにするためである。
【0003】
調整リングが、調整レバーの、対応の溝部に係合するカムを有しても、これらのカムは、EP 1 234 951 に示すように、円筒状に、例えば、挿入された駆動ピンとして実施されていなければならない。
【0004】
ガイド・ベーンを調整するためには、調整リングは、同軸に、ターボチャージャの軸を中心として回転される。このことによって、ガイド・ベーンは、調整レバーによって回動される。
【0005】
この回転及び回動によって、調整レバーのまたは溝つきリングの円筒部が、溝つきリングのまたは調整レバーの溝面で移動する。調整レバーのまたは溝つきリングの溝部における円筒部の点状の支持により、法線力が僅かであるのに、非常に高いヘルツ応力が生じる。溝面における円筒部の相対運動及び高い表面応力によって、作動中に、すべり相手同士が磨耗する。
【0006】
US 4,741,666 は、調整力を、調整リングから、回転自在に取り付けられたガイド・ベーンのベーン・シャフトへ伝達するための装置であって、調整レバー、及び調整リングに接続可能であり且つピンに回転自在に取り付けられている駆動スリーブを有する装置を開示している。駆動スリーブ及び調整レバーの溝部は、夫々、対で互いに適合された接触面を有する。
【特許文献1】欧州特許出願公開第 EP 1 234 951 号明細書
【特許文献2】米国特許第 US 4,741,666 号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、調整可能なガイド・ベーンを有し、長い稼働時間に亘って確実に機能し、更に、容易に取り付けられおよび/または取り外されることが可能であるガイド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、調整可能なガイド・ベーンを有するガイド装置は、調整可能なガイド・ベーンための駆動装置を備えている。この駆動装置では、円筒状に形成された駆動ピン及び調整レバーは、面の、互いに適合された各々の対を有し、これらの面は、作動中に、ガイド・ベーンの調整の際に互いに摺動する。駆動ピンは、この目的のために、ジャケット面に形成されたリセスを有する。ガイド・ベーンを調整するために、調整リングが動かされる。このことによって、調整リングに取り付けられた駆動ピンは、調整レバーの縦長の溝部に沿って摺動し、力を調整レバーにかける。
【0009】
この解決策によって、安価で且つ丈夫な構造物が生じる。円筒状の駆動ピンは、一方では、両側で、調整リングに取り付けられており、更に、軸方向に形状によって調整レバーの溝部に取り付けられている。相応に低い表面応力及び、従って著しく減じられた磨耗を有する、面の支持が、結果として生じる。調整リングは、ガイド・ベーンの径方向に内側のみならず、径方向に外側に設けられていることが可能である。
【0010】
駆動ピンは、容易な方法で、非常に安価に製造され、更に、取付後に、調整リングまたは調整レバーに、外れないように接続されている。ジャケット面の複数のリセスは、駆動ピンを複数の支持孔の中に軸方向に押し込み、続いて、調整レバーによって軸方向に取り付けることを可能にする。かくして、軸方向のロックのためには、追加の構成部材が不要である。
【0011】
調整リングは、実施の形態では、溝部を備えたU字形の横断面と、ガイド・ベーンの数に対応する数の、駆動ピンを受け入れるための孔とを有する。
【0012】
調整レバーは、径方向に設けられており、端部に、好都合にも、ベーン・シャフトに同軸に設けられた複数の円弧状セグメントを有する。これらの円弧状セグメントは、調整リングの溝底に対応し、かくして、調整リングの径方向支持を引き起こす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の種々の実施の形態を詳述する。図1及び図2は、本発明に基づき形成された調整可能なガイド装置を有し、例えば排気ターボチャージャに用いられる排気タービンを示す。
【0014】
図示した遠心タービンは、支持ハウジング30に回転自在に取り付けられたシャフトに設けられているタービン・ホイールを有する。このタービン・ホイールは、多数のタービン・ロータ・ブレード12を有するハブ11を備えている。タービン・ホイール・ハブは、タービン・ハウジング31と共に、流路を区画している。流れ方向に、タービン・ホイールの上流で、流路は、支持ハウジング30及びタービン・ハウジング31によって区画されている。この領域に、調整可能なガイド装置が設けられている。
【0015】
ガイド装置は、複数の調整可能なガイド・ベーン21を有する。これらのガイド・ベーンは、夫々、回転自在に取り付けられたベーン・シャフト22を中心として回転可能である。ガイド・ベーン及びベーン・シャフトは、形状によって、力によってまたは材料によって互いに接続されていることが可能である。
【0016】
ベーン・シャフト22は、支持ハウジング30に回転自在に取り付けられている。ベーン・シャフトを駆動するために、ベーン・シャフトに接続された調整レバー5が設けられている。調整レバーは、力を、タービンの軸に関してベーン・シャフトの径方向に外側に設けられた調整リング4からベーン・シャフトへ伝達する。調整レバーは、形状によって、力によってまたは材料によってベーン・シャフトに接続されていることが可能である。
【0017】
図3及び図4は、本発明に係わるガイド装置を有し、例えば排気ターボチャージャに用いられるコンプレッサを示す。
【0018】
図示した遠心コンプレッサは、支持ハウジング30に回転自在に取り付けられたシャフトに設けられているコンプレッサ・ホイールを有する。コンプレッサ・ホイールは、多数のコンプレッサ・ロータ・ブレード120を有するハブ110を備えている。コンプレッサ・ホイール・ハブは、挿入壁33と共に、流路を区画している。流れ方向に、タービン・ホイールの下流で、流路は、支持ハウジング及びコンプレッサ出口ハウジング32によって区画されている。ディフューザの領域には、タービン・ホイールの下流で、調整可能なディフューザ・ガイド装置が設けられている。
【0019】
このガイド装置は、複数の調整可能なガイド・ベーン210を有する。これらのガイド・ベーンは、夫々、回転自在に取り付けられたベーン・シャフト22を中心として回転可能である。ガイド・ベーン及びベーン・シャフトは、形状によって、力によってまたは材料によって互いに接続されていることが可能である。
【0020】
ベーン・シャフトは、ハウジングに回転自在に取り付けられている。ベーン・シャフトを駆動するために、調整レバー5が設けられている。調整レバーは、力を、コンプレッサの軸に関してベーン・シャフトの径方向に外側に設けられた調整リング4からベーン・シャフトへ伝達する。調整レバーは、形状によって、力によってまたは材料によってベーン・シャフトに接続されている。
【0021】
二つの実施の形態では、内側のまたは外側の調整リングにおいて、図5に示すように、縦長の溝部51が、調整レバー5の自由端に形成されている。縦長の溝部には、駆動ピン6が受け入れられる。駆動ピンは、調整リングと共に、シャフトの軸に対し同軸に延びている円弧状セグメントに沿って動く。縦長の溝部は、スロットとして形成されていてもよい。スロットの中で、駆動ピンは揺動することができる。しかし、スロットは、駆動ピンが溝部から完全に引き出されることを阻止する。
【0022】
本発明では、駆動ピン6及び縦長の溝部51は、夫々、二つの平行な接触面を有する。円筒状に形成された駆動ピン6の二つの接触面62は、向かい合っており且つジャケット面に形成されたリセス61によって成形されており、互いに平行に設けられている。調整レバー5に形成された縦長の溝部の二つの接触面52は、同様に、互いに平行に設けられている。二つの接触面対の間隔は、駆動ピンが、二つのリセス61の領域で、調整レバーの溝部51へ挿入されることができ、両側で、溝部の表面と接触しているように、選択されている。一方では、駆動ピンの二つの接触面62は、出来る限り摩擦なしに、溝部の接触面52に沿って摺動するほうがよい。他方では、駆動ピンは、調整レバーに関して、接触面に対し垂直に動かないほうがよい。その目的は、調整レバーが、作動中に、駆動ピンの回りで振動しないためである。
【0023】
駆動ピンは、調整リングに、1重または2重に取り付けられている。図示した2重の取付では、調整リングは、U字形に形成されており、調整レバーは、U字形の形材の真中に延びている。駆動ピンは、真中の且つ両側のリセスを有する。リセスを介して、調整リングが移動可能である。駆動ピンは、二つのリセス61の側壁が調整レバー5に面一に接触していることによって、軸方向にロックされている。このことによって、調整装置の取付が容易になる。駆動ピンは、図5の下方に示すように、調整リング4に形成された孔41へ軸方向に挿入され、続いて、調整レバー5は、駆動ピンの視点から、径方向に、両側のリセスへ押し入れられる。駆動ピンのこれ以上の軸方向のロックは不要である。
【0024】
図6に示すように、駆動ピンに形成された複数のリセス61は、異なって実施されていることが可能である。3本の駆動ピンが左から右へ示されている。夫々二つの丸くなったリセス(左)と、二つの先細りのV字形のリセス(真中)と、二つの矩形のリセス(右)とが示されている。任意の或る駆動ピンは、二つの、異なって形成されたリセス、例えば、一方の側では、矩形のリセス、他方の側では、丸くなったリセスを有することができる。かようにして、駆動ピンの整列を、調整レバーに関して規定することができる。調整レバーの溝部の表面は、駆動ピンの各々のリセスに従って成形されている。1つまたは二つのリセスの代わりに、駆動ピンが、1つまたは二つの突起部を有することも可能である。これらの突起部は、調整レバーの縦長の溝部の側壁に相応に形成されたリセスと協働する。
【0025】
調整リングの溝部での駆動ピンの摺動性を改善するために、駆動ピンのおよび/または調整レバーの接触面が、特別に硬化されているか、摺動補助材で被覆されていることが可能である。
【0026】
本発明に係わるガイド装置は、2サイクルまたは4サイクル内燃機関に過給するための排気ターボチャージャのコンプレッサおよび/またはタービンのみならず、内燃機関の排気ガスで駆動されるパワー・タービンにおけるタービンにも挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に基づいて形成された調整可能なガイド装置を有する遠心タービンの、軸に沿って切った断面図を示す。
【図2】図1に示した遠心タービンの調整可能なガイド装置の、軸に対し垂直の断面を示す。
【図3】本発明に基づいて形成された調整可能なガイド装置を有する遠心コンプレッサの、軸に沿って切った断面図を示す。
【図4】図3に示した遠心コンプレッサの調整可能なガイド装置の、軸に対し垂直の断面図を示す。
【図5】調整レバー及び駆動ピンを有する、本発明に基づいて形成されたガイド装置の等角図を示す。
【図6】図5に示した駆動ピンの3つの異なった実施の形態を示す。
【符号の説明】
【0028】
11…タービン・ホイール・ハブ、110…コンプレッサ・ホイール・ハブ、12…タービン・ロータ・ブレード、120…コンプレッサ・ロータ・ブレード、21…ガイド・ベーン、210…ディフューザ・ベーン、22…ベーン・シャフト、30…支持ハウジング、31…タービン・ハウジング、32…コンプレッサ・ハウジング、33…挿入壁、4…調整リング、41…孔、5…調整レバー、51…溝部、52…接触面、6…駆動ピン、61…リセス、62…接触面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整力を、調整リング(4)から、調整可能なガイド装置の回転自在に取り付けられたガイド・ベーン(21,210)のベーン・シャフト(22)へ伝達するための装置であって、
調整レバー(5)、及び前記調整リングに接続可能な駆動ピン(6)を有し、
前記調整レバーは、一端で、調整可能なガイド装置の回転自在に取り付けられたガイド・ベーン(21,210)のベーン・シャフト(22)に接続可能であり、前記調整レバーの他端には、前記駆動ピン(6)を受け入れるための縦長の溝部(51)が形成されており、
前記駆動ピン(6)及び前記溝部(51)は、夫々二つの接触面(52,62)を有し、前記駆動ピンの前記複数の接触面(62)及び前記溝部の前記複数の接触面(52)は、夫々対で、互いに適合されており、
前記駆動ピン(6)は、円筒形状を有すること、及び、前記複数の接触面(62)は、前記駆動ピンのジャケット面の複数のリセス(61)によって形成されていること、
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記駆動ピンのジャケット面の前記複数のリセス(62)は、矩形のまたは丸くなったまたはV字形の形状を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記駆動ピンのジャケット面の前記二つのリセス(62)は、異なった形状を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記溝部の前記複数の接触面(52)および/または前記駆動ピンの前記複数の接触面(62)は、硬化されているか、摺動補助材で被覆されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
複数の調整可能なガイド・ベーン(21,210)を有するガイド装置であって、
これらのガイド・ベーンは、夫々、回転自在に取り付けられたベーン・シャフト(22)に接続されていて、このベーン・シャフトに接続され且つこのベーン・シャフトに作用し且つ調整リング(4)によって駆動される調整レバー(23)によって、前記ベーン・シャフトを中心として回転自在であり、
調整力を前記調整リング(4)から前記ベーン・シャフト(22)へ伝達するためのガイド装置は、請求項1から5のいずれか1項に記載の装置を有することを特徴とするガイド装置。
【請求項6】
前記駆動ピン(6)は、前記調整リング(4)の孔(41)に回転自在に取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載のガイド装置。
【請求項7】
複数の調整可能なディフューザ・ベーンを有するディフューザを備えたコンプレッサにおいて、
このディフューザは、請求項6または7に記載のガイド装置を有することを特徴とするコンプレッサ。
【請求項8】
請求項6または7に記載のガイド装置を有することを特徴とする排気タービン。
【請求項9】
請求項8に記載のコンプレッサ及び請求項9に記載の排気タービンを有することを特徴とする排気ターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−523957(P2009−523957A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551613(P2008−551613)
【出願日】平成19年1月3日(2007.1.3)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000001
【国際公開番号】WO2007/082397
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(501405177)アーベーベー ターボ システムズ アクチエンゲゼルシャフト (37)
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 71a, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】