説明

貼り合せウェーハの検査方法

【課題】十分に高い精度で貼り合せ不良部分を検出することができる貼り合せウェーハの検査方法を提供する。
【解決手段】貼り合せウェーハの貼り合せ不良部分の有無を検査する方法であって、貼り合せウェーハに対して超音波を照射した際の貼り合せウェーハ内部からの反射波を用いて貼り合せ不良部分を検出する超音波検査工程と、超音波検査工程を実施した後の貼り合せウェーハに対して粘着テープを貼り付けた後、粘着テープを剥離して貼り合せ不良部分を検出するピーリング検査工程とを含むことを特徴とする貼り合せウェーハの検査方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼り合せウェーハの検査方法に関し、特に、貼り合せウェーハの貼り合せ不良部分の有無を検査する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、貼り合せウェーハにおいて、貼り合せ界面に空隙などの非接合部分(以下「ボイド欠陥」という。)が存在すると、該ボイド欠陥が存在する部位では、デバイス製造プロセス中に活性層が剥離・脱落し易く、ボイド欠陥は、デバイス不良や発塵の原因となることが知られている。
【0003】
このため、デバイス製造プロセスにおける歩留まり向上を目的として、貼り合せウェーハのボイド欠陥の有無を検査するための様々な方法が提案されている。
【0004】
例えば、貼り合せウェーハのボイド欠陥の有無を検査する方法として、赤外線(IR)検査、超音波検査およびピーリング検査が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、赤外線検査と超音波検査とを組み合わせた検査方法として、まず、2枚のウェーハを貼り合せる際に貼り合せ面の状態を赤外線検査し、次に、赤外線検査でボイド欠陥が検出されなかった貼り合せウェーハのみを熱処理して貼り合せ面の接合を強化した後、接合強化した貼り合せ面の状態を超音波検査することにより、ボイド欠陥を有する貼り合せウェーハを熱処理前の赤外線検査で予め検出して該ウェーハを再利用に供しつつ、熱処理後の超音波検査でより確実にボイド欠陥を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
ここで、近年では、半導体デバイス製造プロセスの歩留まりを更に向上する観点から、より高い精度でボイド欠陥を検出することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−21408号公報
【特許文献2】特開平7−161596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、赤外線検査では、通常、直径が約300〜500μm程度の大きなボイド欠陥を検出することはできるものの、例えば直径が100μm以下の微小なボイド欠陥を検出することができなかった。また、ピーリング検査でも同様に、直径が100μm以下の微小なボイド欠陥を検出することができなかった。
【0008】
一方、超音波検査は、検査に時間がかかるものの、数10〜100μm程度の微小なボイド欠陥も検出することができる。従って、超音波検査を用いれば、赤外線検査やピーリング検査に比べて高い精度でボイド欠陥を検出することができた。
【0009】
しかしながら、本発明者らの研究によれば、微小なボイド欠陥を検出することが可能な超音波検査を適用した従来の検査(超音波検査のみ、或いは、赤外線検査と超音波検査とを組み合わせた検査)においてボイド欠陥が検出されなかった貼り合せウェーハであっても、デバイス製造プロセスにおいて活性層の剥離・脱落が生じ、歩留まりの低下を招く場合があることが明らかとなった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは、超音波検査においてボイド欠陥が検出されなかった貼り合せウェーハであってもデバイス製造プロセスにおいて活性層の剥離・脱落が発生する原因ついて鋭意検討した結果、貼り合せ界面には、超音波検査で検出することが可能な空隙(ボイド欠陥)とは異なる、貼り合わせの接合強度が弱い部分が存在している場合があり、デバイス製造プロセスでは該接合強度が弱い部分においても活性層の剥離・脱落が発生することを見出した(以下、「ボイド欠陥」と「接合強度が弱い部分」とを併せて「貼り合せ不良部分」という。)。また、本発明者らは、接合強度が弱い部分は、超音波検査では検出することができないが、ピーリング検査を用いれば検出できることも見出した。
【0011】
なお、超音波検査で貼り合せの接合強度が弱い部分を検出できないのは、超音波検査が、接合強化熱処理後であって薄厚化前の貼り合せウェーハ表面に純水を媒介として超音波を発信し、ウェーハ表面および裏面での反射ピークの間に現れる、貼り合わせ界面に存在する空隙(ボイド欠陥)での反射ピークを拾うことでボイド欠陥を検出する手法であり、超音波検査では、十分な厚さの空隙でなければボイド欠陥として認識することができないからであると推察される。一方、ピーリング検査で貼り合せの接合強度が弱い部分を検出できるのは、ピーリング検査が、活性層を薄厚化した後に行う検査であって、接合強度が低い部位の活性層までを強制的に剥離して検査できる手法であるからであると推察される。
【0012】
そして、本発明者らは、上記の新規知見に基づき、超音波検査とピーリング検査とを組み合わせることで互いの検査方法の欠点を補い合い、十分に高い精度で貼り合せ不良部分を検出し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の貼り合せウェーハの検査方法は、貼り合せウェーハの貼り合せ不良部分の有無を検査する方法であって、前記貼り合せウェーハに対して超音波を照射した際の貼り合せウェーハ内部からの反射波を用いて貼り合せ不良部分を検出する超音波検査工程と、前記超音波検査工程を実施した後の貼り合せウェーハに対して粘着テープを貼り付けた後、該粘着テープを剥離して貼り合せ不良部分を検出するピーリング検査工程とを含むことを特徴とする。このように、貼り合せウェーハに対して超音波検査とピーリング検査との双方を実施して貼り合せ不良部分を検出すれば、十分に高い精度で貼り合せ不良部分の有無を検査することができる。
【0014】
ここで、本発明の貼り合せウェーハの検査方法は、前記超音波検査工程では、前記貼り合せウェーハの外周部について貼り合せ不良部分を検出し、前記ピーリング検査工程では、前記貼り合せウェーハの全面について貼り合せ不良部分を検出することが好ましい。一般に、ボイド欠陥などの貼り合せ不良部分は貼り合せウェーハの外周部、特に貼り合せ終端位置側に発生し易いので、検査対象範囲内で超音波の照射位置を走査する必要があり、検査に時間がかかる超音波検査工程では貼り合せ不良が発生し易い貼り合せウェーハの外周部のみを検査し、短時間で貼り合せウェーハ全面の検査をすることができるピーリング検査工程で貼り合せウェーハの全面を検査すれば、十分に高い精度で貼り合せ不良部分を検出しつつ、短時間で検査を実施することができるからである。なお、本発明において「外周部」とは、ウェーハの最外周からウェーハ中心に向かって5mmまでの部分を指す。
【0015】
また、本発明の貼り合せウェーハの検査方法は、前記貼り合せウェーハが、2枚のウェーハを貼り合せ始端位置から貼り合せ終端位置に向けて貼り合せたものであり、前記超音波検査工程では、貼り合せウェーハの前記貼り合せ終端位置側について貼り合せ不良部分を検出し、前記ピーリング検査工程では、貼り合せウェーハの全面について貼り合せ不良部分を検出することが好ましい。貼り合せ不良部分は特に貼り合せウェーハの貼り合せ終端位置側に発生し易いので、検査に時間がかかる超音波検査工程では貼り合せ不良が発生し易い貼り合せ終端位置側のみを検査し、短時間で貼り合せウェーハ全面の検査をすることができるピーリング検査工程で貼り合せウェーハの全面を検査すれば、十分に高い精度で貼り合せ不良部分を検出しつつ、短時間で検査を実施することができるからである。
【0016】
そして、本発明の貼り合せウェーハの検査方法は、前記超音波検査工程および前記ピーリング検査工程の前であって、且つ、貼り合せウェーハを熱処理して接合強化する前に、貼り合せウェーハに対して赤外線を照射し、貼り合せウェーハを透過した赤外線または貼り合せウェーハで反射した赤外線を用いて貼り合せ不良部分を検出する赤外線検査工程を更に含むことが好ましい。貼り合せウェーハを熱処理して接合強化する前に赤外線検査を行えば、貼り合せ不良部分を有する貼り合せウェーハを予め検出して該ウェーハを再利用に供することができるからである。また、接合強化後に超音波検査およびピーリング検査を行えば、赤外線検査では検出できなかった微小なボイド欠陥などの貼り合せ不良部分を十分に高い精度で検出することができるからである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、十分に高い精度で貼り合せ不良部分を検出することが可能な貼り合せウェーハの検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に従う代表的な貼り合せウェーハの検査方法を適用して貼り合せウェーハを製造する過程を示す説明図である。
【図2】本発明の貼り合せウェーハの検査方法を構成するピーリング検査工程で、貼り合せウェーハのテラス部まで粘着テープを貼り付ける様子を示す説明図である。
【図3】本発明に従う別の貼り合せウェーハの検査方法を適用して貼り合せウェーハを製造する過程を示す説明図である。
【図4】貼り合せウェーハの貼り合せ始端位置と貼り合せ終端位置とを示す図であり、(a)は2枚のウェーハを外周付近の一点から一方向に向けて貼り合せた場合の貼り合せ始端位置と貼り合せ終端位置を示し、(b)は2枚のウェーハをウェーハ中心から外周縁に向けて貼り合せた場合の貼り合せ始端位置と貼り合せ終端位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の貼り合せウェーハの検査方法は、貼り合せウェーハの貼り合せ不良部分の有無の検査に用いられる。そして、本発明の貼り合せウェーハの検査方法は、少なくとも超音波検査とピーリング検査とを組み合わせて貼り合せ不良部分の有無を検査することを特徴とする。
【0020】
ここで、本発明の貼り合せウェーハの検査方法の第一実施形態を適用して貼り合せウェーハを製造する工程を図1に示す。この貼り合せウェーハの製造工程では、まず、表面にシリコン酸化膜10Aを有するシリコンウェーハからなる活性層用ウェーハ10と、シリコンウェーハからなる支持基板用ウェーハ20とを貼り合せて貼り合せウェーハ30とする(図1(a),(b)参照)。次に、貼り合せウェーハ30を熱処理して貼り合せ界面の接合を強化する前に、赤外線検査を行って熱処理前の貼り合せウェーハ30の貼り合せ不良部分(ボイド欠陥)の有無を検査する(赤外線検査工程)。そして、赤外線検査で貼り合せ不良部分が検出された貼り合せウェーハ30は、熱処理することなく再利用する。一方、赤外線検査で貼り合せ不良部分が検出されなかった貼り合せウェーハ30については、熱処理を施して貼り合せ界面の接合を強化し(図1(c)参照)、超音波検査を行って貼り合せ不良部分の有無を検査する(超音波検査工程)。続いて、活性層用ウェーハ10の外周の面取り加工とエッチングによりテラス部30Aを形成した後(図1(d)参照)、活性層用ウェーハ10の表面を研削して活性層用ウェーハ10を薄厚化する(図1(e)参照)。そして最後に、ピーリング検査を行った後(ピーリング検査工程)、活性層用ウェーハ10の表面を研磨する(図1(f)参照)。なお、本発明の貼り合せウェーハの検査方法を適用した貼り合せウェーハの製造工程では、活性層用ウェーハおよび支持基板用ウェーハは上述したウェーハに限定されることはない。
【0021】
なお、この一例の貼り合せウェーハの製造工程では、超音波検査において貼り合せ不良部分が検出されなかったウェーハのみがピーリング検査を受け、更にピーリング検査において貼り合せ不良部分が検出されなかったウェーハのみが後段のデバイス製造プロセスへと送られる。そして、超音波検査またはピーリング検査において貼り合せ不良部分が検出されたウェーハは、デバイス製造プロセスへの出荷ラインから除外され、廃棄またはSi資源として再利用される。
【0022】
ここで、表面にシリコン酸化膜10Aを有する活性層用ウェーハ10と、支持基板用ウェーハ20とは、既知の方法で製造したものを使用することができる。また、活性層用ウェーハ10と支持基板用ウェーハ20との貼り合せは既知の手法を用いて行うことができ、例えば、図4(a)に示すように、活性層用ウェーハ10と、支持基板用ウェーハ20とを外周付近の1点(貼り合せ始端位置S)で接触させた状態から、貼り合せ終端位置F(図4(a)に太線で示す位置)へ向かって一方向(図4(a)では左方向)に貼り合せても良いし、図4(b)に示すように、活性層用ウェーハ10と支持基板用ウェーハ20とを互いの中心位置(貼り合せ始端位置S)で接触させた状態から、外周縁(貼り合せ終端位置F)に向かって貼り合せても良い。
【0023】
赤外線検査は、貼り合せウェーハ30に対して赤外線を照射し、貼り合せウェーハ30を透過した赤外線または貼り合せウェーハ30で反射した赤外線を用いて貼り合せ不良部分としてのボイド欠陥を検出する検査である。そして、赤外線検査では、透過または反射した赤外線を例えば赤外線カメラ等で撮影、検出することにより、ボイド欠陥を画像表示することができる。
【0024】
なお、赤外線検査は、貼り合せウェーハ30に熱処理を施して貼り合せ界面の接合を強化した後に行っても良いが、貼り合せ界面の接合強化前に行えば、貼り合せ不良部分が検出された場合に、貼り合せ不良が検出された部分の付近のみを部分的に剥離して再び貼り合せる、或いは、貼り合せた2枚のウェーハを完全に剥離した後、研磨、洗浄して再利用に供することができる。従って、本発明の貼り合せウェーハの検査方法では、赤外線検査は貼り合せ界面の接合強化前に行うことが好ましい。
【0025】
熱処理を用いた貼り合せ界面の接合強化は、既知の方法で実施することができ、例えば、酸素雰囲気下、800℃以上の温度で貼り合せウェーハ30を熱処理して、貼り合せ界面の接合を強化することができる。なお、酸素雰囲気下で熱処理を行った場合、図1(c)に示すように、支持基板用ウェーハ20の表面にもシリコン酸化膜20Aが形成される。
【0026】
超音波検査は、貼り合せウェーハ30に対して超音波を照射した際の貼り合せウェーハ30の内部からの反射波を用いて貼り合せ不良部分としてのボイド欠陥を検出する検査であり、一般に純水などの液体中に貼り合せウェーハを浸漬した状態で実施される。従って、貼り合せ界面への液体の侵入を防止する観点から、超音波検査は貼り合せウェーハの貼り合せ界面の接合強化後(熱処理後)に行う必要がある。なお、超音波検査で必要となるゲート幅を確保する観点からは、貼り合せウェーハの活性層用ウェーハ厚みは、50μm以上とすることが望ましい。
【0027】
ここで、貼り合せウェーハ30の全面を超音波検査する場合、貼り合せウェーハ30の表面全体に対して超音波が照射されるように超音波の照射位置を走査しなければならず、検査に時間がかかる。そこで、本発明の貼り合せウェーハの検査方法では、貼り合せウェーハの一部、特に超音波検査で検出可能な貼り合せ不良部分であるボイド欠陥が生じやすい部分のみを超音波検査することが好ましい。本発明の貼り合せウェーハの検査方法では、超音波検査に加えてピーリング検査も用いて貼り合せ不良部分を検出しているところ、ピーリング検査では、接合強度が弱い部分と、ある程度以上のサイズのボイド欠陥との双方を検出することができるので、貼り合せ不良部分が生じ難い部分についてはピーリング検査のみを行い、貼り合せ不良部分が生じ易い部分については超音波検査とピーリング検査との双方を行えば、超音波検査を行う面積を減らして検査時間を低減しつつ、十分に高い精度で貼り合せ不良部分を検出することができるからである。
【0028】
なお、本発明者らの研究によれば、ボイド欠陥が生じやすい部分としては、貼り合せウェーハ30の外周部、例えばウェーハの最外周からウェーハ中心に向かって5mmまでの部分や、貼り合せウェーハ30の貼り合せ終端位置側が挙げられる。
【0029】
活性層用ウェーハ10の外周の面取り加工は、活性層用ウェーハ10および支持基板用ウェーハ20の外周部形状に起因した貼り合せ不良領域を除去することを目的としたものである。そして、活性層用ウェーハ10の外周は、貼り合せ界面に達しない深さまで面取り加工される。
【0030】
アルカリエッチングは、活性層用ウェーハ10の外周の面取り加工時に削り残した部分を、KOH等のアルカリエッチング液を用いて除去することを目的としたものである。
【0031】
ここで、活性層用ウェーハ10の外周の面取り加工およびアルカリエッチングにより、貼り合せウェーハ30の支持基板用ウェーハ20の外周領域にはテラス部30Aが形成されるが、このテラス部30Aには、面取り加工およびアルカリエッチングでは除去できなかったシリコン酸化膜の残渣10Bが残存してしまう。しかし、このシリコン酸化膜の残渣10Bは、後で詳細に説明するように、粘着テープをテラス部30Aまで貼り付けてピーリング検査を行うことで、ピーリング検査時に除去することができる。
【0032】
活性層用ウェーハ10の薄厚化は、既知の手法で活性層用ウェーハ10の表面を研削して、活性層用ウェーハ10の厚さを例えば約50μm以下とすることで達成される。
【0033】
ピーリング検査は、貼り合せウェーハ30に対して粘着テープを貼り付けた後、該粘着テープを剥離して貼り合せ不良部分としての接合強度が弱い部分等を検出する検査であり、このピーリング検査によれば、貼り合せ界面に貼り合せ不良部分が存在する場合、貼り合せ不良部分の上部に位置する活性層用ウェーハが粘着テープに付着して剥離除去されるので、粘着テープ剥離後の貼り合せウェーハ30の表面または剥離した粘着テープを観察することにより、貼り合せ不良部分の有無を検査することができる。なお、ピーリング検査では、前述した通り、接合強度が弱い部分以外にある程度以上のサイズのボイド欠陥も検出することができるが、ボイド欠陥の検出精度は超音波検査の方が高い。従って、超音波検査工程において貼り合せウェーハの全面を検査した場合には、ボイド欠陥を有する貼り合せウェーハは超音波検査工程で全て検出されて出荷ラインから除外され、ピーリング検査を受けることはないので、ピーリング検査においてボイド欠陥が検出されることはない(ピーリング検査では接合強度が弱い部分のみが検出される)。一方、超音波検査工程において貼り合せウェーハの一部のみを検査した場合には、ピーリング検査において、超音波検査を行っていない部分でボイド欠陥が検出されることがある。
【0034】
ここで、通常、ピーリング検査では、薄厚化された活性層用ウェーハの表面に対して粘着テープの貼り付けおよび剥離を行えば良いが、この一例の貼り合せウェーハの製造工程では、テラス部30Aに残存しているシリコン酸化膜の残渣10Bを除去するために、活性層用ウェーハ10の表面のみならずテラス部30Aにも粘着テープ40を貼り付けてから、粘着テープ40を剥離する。
【0035】
具体的には、図2に示すように、貼り合せウェーハ30を構成する活性層用ウェーハ10の表面に粘着テープ40を貼り付けた後、例えば、断面が右に90°回転させたT字形の押圧部41Aが先端に設けられたクランク状の押圧部材41を、粘着テープ40を介して活性層用ウェーハ10の外周縁近傍および支持基板用ウェーハ20の外周縁近傍に押し付けることにより、活性層用ウェーハ10の表面のみならずテラス部30Aにも粘着テープ40を貼り付ける。そして、テラス部30Aにも粘着テープ40が貼り付けられた状態から粘着テープ40を剥離することにより、貼り合せ不良部分の有無を検査しつつ、テラス部30Aに残存しているシリコン酸化膜の残渣10Bを粘着テープ40に付着させて剥離除去する。なお、テラス部30Aにゴミなどが付着している場合には、該ゴミも残渣10Bと一緒に除去される。
【0036】
なお、粘着テープ40としては、例えば、テープ基材がポリエチレン系基材であり、粘着剤がアクリル系粘着剤である、接着強度が2〜14N/mmの粘着テープを用いることができる。
【0037】
なお、ピーリング検査における貼り合せ不良部分の検出精度をより高める観点からは、本発明の貼り合せウェーハの検査方法では、同一の貼り合せウェーハに対し、粘着テープの貼り付け方向および剥離方向を異ならせてピーリング検査を複数回行うことが好ましい。
【0038】
ピーリング検査後の活性層用ウェーハ10の表面の研磨は、既知の手法を用いて行うことができる。
【0039】
そして、この一例の貼り合せウェーハの製造工程では、本発明の貼り合せウェーハの検査方法の第一実施形態を適用し、貼り合せウェーハ30の熱処理前に赤外線検査を行っており、比較的大きな貼り合せ不良部分(ボイド欠陥)を有する貼り合せウェーハを熱処理前に検出し、再利用することができるので、廃棄する貼り合せウェーハの数を減らして製造コストを低減することができる。また、熱処理後の貼り合せウェーハに対して超音波検査とピーリング検査との双方を行っているので、赤外線検査では検出することが困難な小さいボイド欠陥を検出することができると共に、接合強度が弱い部分を検出することができないという超音波検査の欠点を接合強度が弱い部分を検出することができるピーリング検査で補いつつ、超音波検査ほど微小なボイド欠陥を検出することができないというピーリング検査の欠点を超音波検査で補って、高い精度で貼り合せ不良部分(ボイド欠陥および接合強度が弱い部分の双方)を検出することができる。従って、デバイス製造プロセスでの歩留まりを向上させることができる。更に、テラス部に存在するシリコン酸化膜の残渣をピーリング検査時に除去しているので、シリコン酸化膜の残渣を除去するための研磨やエッチングを実施する必要がない。なお、超音波検査およびピーリング検査は、赤外線検査と異なり貼り合せウェーハ中で赤外線が減衰して検査精度が落ちることがないので、この一例の貼り合せウェーハの製造工程は、赤外線が減衰しやすい低抵抗の貼り合せウェーハ、例えば0.1Ω・cm以下の貼り合せウェーハにも適用できる。
【0040】
次に、本発明の貼り合せウェーハの検査方法の第二実施形態を適用して貼り合せウェーハを製造する工程を図3に示す。なお、図3では、図1に示すものと同一の部材には同一の符号を用いている。
【0041】
この貼り合せウェーハの製造工程では、まず、活性層用ウェーハ10と、支持基板用ウェーハ20とを貼り合せて貼り合せウェーハ30とする(図3(a),(b)参照)。次に、貼り合せウェーハ30を熱処理して貼り合せ界面の接合を強化する前に、赤外線検査を行って貼り合せウェーハ30の貼り合せ不良部分(ボイド欠陥)の有無を検査する(赤外線検査工程)。そして、赤外線検査で貼り合せ不良部分が検出された貼り合せウェーハ30は、熱処理することなく再利用する。一方、赤外線検査で貼り合せ不良部分が検出されなかった貼り合せウェーハ30については、熱処理を施して貼り合せ界面の接合を強化し(図3(c)参照)、超音波検査を行って貼り合せ不良部分の有無を検査する(超音波検査工程)。続いて、活性層用ウェーハ10の表面を研削して活性層用ウェーハ10を薄厚化する(図3(d)参照)。次に、ピーリング検査を行った後(ピーリング検査工程)、活性層用ウェーハ10の外周の面取り加工およびアルカリエッチングによりテラス部30Aを形成し、その後、活性層用ウェーハ10の表面を研磨する(図3(e)参照)。なお、テラス部30A上に酸化膜の残渣が残った場合には、テラス部30Aの表面に研磨などの加工処理を施して除去すればよい。
【0042】
ここで、活性層用ウェーハ10と支持基板用ウェーハ20との貼り合せ、赤外線検査、貼り合せウェーハ30の熱処理、超音波検査および貼り合せ不良が検出された貼り合せウェーハの処理は、前述した本発明の貼り合せウェーハの検査方法の第一実施形態を適用した製造工程と同様にして行うことができる。
【0043】
活性層用ウェーハ10の薄厚化は、外周を面取り加工していない活性層用ウェーハ10の表面を既知の手法で研削して、活性層用ウェーハ10の厚さを例えば約50μm以下とすることで達成される。
【0044】
ピーリング検査は、薄厚化した活性層用ウェーハ10の表面に粘着テープを貼り付けた後、該粘着テープを剥離し、貼り合せ不良部分の上部に位置する活性層用ウェーハを粘着テープに付着させて剥離除去することで行う。なお、粘着テープとしては、先の第一実施形態を適用した製造工程と同様の粘着テープを用いることができる。
【0045】
薄厚化した活性層用ウェーハ10の外周の面取り加工は、先の第一実施形態を適用した製造工程と同様に、薄厚化した活性層用ウェーハ10および支持基板用ウェーハ20の外周部形状に起因した貼り合せ不良領域を除去することを目的としたものである。そして、薄厚化した活性層用ウェーハ10の外周は、貼り合せ界面に達しない深さまで面取り加工される。また、アルカリエッチングも、先の第一実施形態を適用した製造工程と同様に、活性層用ウェーハ10の外周の面取り加工時に削り残した部分を、KOH等のアルカリエッチング液を用いて除去することを目的としたものである。
【0046】
ピーリング検査後の活性層用ウェーハ10の表面の研磨は、前述した本発明の貼り合せウェーハの検査方法の第一実施形態を適用した製造工程と同様にして行うことができる。
【0047】
そして、この別の例の貼り合せウェーハの製造工程では、本発明の貼り合せウェーハの検査方法の第一実施形態を適用した製造工程と同様に、熱処理前に赤外線検査を行っているので、廃棄する貼り合せウェーハの数を減らして製造コストを低減することができる。また、超音波検査とピーリング検査との双方を用いているので、高い精度で貼り合せ不良部分(ボイド欠陥および接合強度が弱い部分の双方)を検出することができる。従って、高品質な貼り合せウェーハをデバイス製造プロセスに送ってデバイス製造プロセスでの活性層の剥離・脱落の発生を抑制し、歩留まりを向上させることができる。
【0048】
以上、本発明の貼り合せウェーハの検査方法について、第一実施形態および第二実施形態を用いて説明したが、本発明の貼り合せウェーハの検査方法は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の貼り合せウェーハの検査方法には、適宜変更を加えることができる。
【0049】
具体的には、本発明の貼り合せウェーハの検査方法では、赤外線検査を実施しなくても良い。また、シリコン酸化膜の残渣は研削等により除去しても良い。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
直径200mmのシリコンウェーハを用いて、接合強化熱処理を行った貼り合せウェーハ719枚作製した。なお、活性層用シリコンウェーハには、酸化膜を形成した。
そして、作製した貼り合せウェーハ719枚について、既知の条件で超音波検査を実施したところ、28枚の貼り合せウェーハで貼り合せ不良部分(ボイド欠陥)が検出された。
次に、超音波検査においてボイド欠陥が検出されなかった691枚の貼り合せウェーハに対して、薄圧化処理後にピーリング検査を行ったところ、3枚の貼り合せウェーハで貼り合せ不良部分(接合強度が弱い部分)が検出された。
そして、超音波検査およびピーリング検査で貼り合せ不良部分が検出されなかった688枚の貼り合せウェーハをデバイス製造プロセスへと送ったところ、不良は発生しなかった。
【0052】
(実施例2)
実施例1と同様にして、直径200mmのシリコンウェーハを用いて、接合強化熱処理を行った貼り合せウェーハを131枚作製した。
そして、作製した貼り合せウェーハ131枚について、各ウェーハのウェーハ貼り合せ終端側の半面のみ(図4(a)では左半面)に対して既知の条件で超音波検査を実施したところ、5枚の貼り合せウェーハで貼り合せ不良部分(ボイド欠陥)が検出された。なお、超音波検査に要した時間は実施例1の半分であった。
次に、超音波検査においてボイド欠陥が検出されなかった126枚の貼り合せウェーハに対して、薄圧化処理後にピーリング検査を行ったところ、1枚の貼り合せウェーハで貼り合せ不良部分が検出された。
そして、超音波検査およびピーリング検査で貼り合せ不良部分が検出されなかった125枚の貼り合せウェーハをデバイス製造プロセスへと送ったところ、不良は発生しなかった。
【0053】
(比較例1)
実施例1と同様にして、直径200mmのシリコンウェーハを用いて、接合強化熱処理を行った貼り合せウェーハを300枚作製した。
次に、作製した貼り合せウェーハ300枚について、既知の条件で超音波検査を実施したところ、2枚の貼り合せウェーハで貼り合せ不良部分(ボイド欠陥)が検出された。
そして、超音波検査で貼り合せ不良部分が検出されなかった298枚の貼り合せウェーハをデバイス製造プロセスへと送ったところ、不良が発生した。
【0054】
実施例1,2および比較例1より、本発明の検査方法を適用すれば、高い精度で貼り合せ不良部分を検出して、デバイス製造プロセスにおける歩留まりを向上し得ることが分かる。また、実施例1および2より、超音波検査を貼り合せ終端側のみに対して行えば、高い精度で貼り合せ不良部分を検出しつつ、検査に要する時間を短縮することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、十分に高い精度で貼り合せ不良部分を検出することが可能な貼り合せウェーハの検査方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 活性層用ウェーハ
10A シリコン酸化膜
10B 残渣
20 支持基板用ウェーハ
20A シリコン酸化膜
30 貼り合せウェーハ
30A テラス部
40 粘着テープ
41 押圧部材
41A 押圧部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
貼り合せウェーハの貼り合せ不良部分の有無を検査する方法であって、
前記貼り合せウェーハに対して超音波を照射した際の貼り合せウェーハ内部からの反射波を用いて貼り合せ不良部分を検出する超音波検査工程と、
前記超音波検査工程を実施した後の貼り合せウェーハに対して粘着テープを貼り付けた後、該粘着テープを剥離して貼り合せ不良部分を検出するピーリング検査工程と、
を含むことを特徴とする貼り合せウェーハの検査方法。
【請求項2】
前記超音波検査工程では、前記貼り合せウェーハの外周部について貼り合せ不良部分を検出し、
前記ピーリング検査工程では、前記貼り合せウェーハの全面について貼り合せ不良部分を検出することを特徴とする、請求項1に記載の貼り合せウェーハの検査方法。
【請求項3】
前記貼り合せウェーハが、2枚のウェーハを貼り合せ始端位置から貼り合せ終端位置に向けて貼り合せたものであり、
前記超音波検査工程では、貼り合せウェーハの前記貼り合せ終端位置側について貼り合せ不良部分を検出し、
前記ピーリング検査工程では、貼り合せウェーハの全面について貼り合せ不良部分を検出することを特徴とする、請求項1に記載の貼り合せウェーハの検査方法。
【請求項4】
前記超音波検査工程および前記ピーリング検査工程の前であって、且つ、貼り合せウェーハを熱処理して接合強化する前に、貼り合せウェーハに対して赤外線を照射し、貼り合せウェーハを透過した赤外線または貼り合せウェーハで反射した赤外線を用いて貼り合せ不良部分を検出する赤外線検査工程を更に含むことを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の貼り合せウェーハの検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−42431(P2012−42431A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186502(P2010−186502)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】